「 COVID-19関連の規制状況及び入国規制並び解雇手続き」 TNY Group Newsletter No.3
第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制 |
1.日本
(1) 入国規制
6月29日、日本において「水際対策強化に係る新たな措置」が決定され、入国拒否対象地域に新たに18か国が追加されました。入国拒否措置の期間は当面の間とされています。検疫の強化、査証の制限、航空機の到着空港の限定等及び到着旅客数の抑制の措置については、7月末日まで延長されました。
今後は一般の国際的往来とは別に、ビジネス上の出入国について例外的な枠を設置することを予定しています。感染状況が落ち着いている入国拒否対象地域を対象国として、追加的な防疫措置を条件とし、ビジネス上の往来を可能にするような仕組みを協議・調整中です。
・日本における新型コロナウイルスに関する水際対策強化(新たな措置)(外務省海外安全ホームページ)
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C057.html
・第38回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020618.pdf
・第39回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020629.pdf
(2) 外出自粛の緩和
6月19日に全国を対象に県をまたぐ移動の自粛が解除されました。外出自粛の段階的緩和は、7月31日までを移行期間としており、これが終了した8月1日を目途に、通常に戻ることを予定しています。
・第36回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020525.pdf
2.タイ
(1) COVID-19関連の規制
6月15日より、タイ政府は非常事態令を緩和し、以下の事項を適用しています。
- 夜間外出禁止令の撤廃
6月14日23時以降より、タイ全土における夜間外出禁止令を解除しました。
- 学校及び教育機関の施設使用の緩和
インターナショナルスクール、外国の教育課程の大学等や、生徒数が120名以下の学校について、学習や授業のための施設使用を認めました。
- 施設の営業及び活動の実施
以下の活動等について、その実施を認めました。
・会議、研修、セミナー、コンサート、ホテル、劇場、映画館等の施設での活動
・食堂、フードコート、ホテル、レストラン、アルコールの提供が認められた場所における、営業時間内でのアルコール飲料の消費(パブ、バー、カラオケ等の活動は認められていません)
・託児所、保育所、幼稚園、高齢者施設、介護施設等の福祉施設での、デイケア活動
・健康増進施設内での、サウナ、スパ、タイ古式マッサージ施設等の営業
・公園、公共の活動場所、屋外のスポーツ競技場等における集団での運動
・ウォーターパーク、児童公園、遊技場の営業
・スポーツ指導のための競技場、運動用の施設での活動
- 県境をまたぐ移動に関する基準の制定
車両、鉄道、航空機等の移動制限の緩和に伴い、待合場所、座席および乗客数の制限等が緩和されています。
(2) 入国規制
タイ民間航空公社(CATT)は、タイに到着する全ての国際旅客便の飛行を禁止する措置を取っており、その期限は6月30日までとなっています。7月1日以降の詳細については、まだ発表されておりませんが、外国人渡航者の入国制限を一部緩和する方向で検討に入ったとの報道がなされています。
3.マレーシア
(1) 回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)
2020年6月10日、回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)(以下「RMCO」)が施行されました。このRMCOは、同年8月31日まで効力を有するものとされています。
RMCOの施行により、州間の移動や理髪店の営業等多くの活動を再開することが可能となります。他方、強化された移動制限令(enhanced movement control order)の対象となる場所への出入りや行列・行進への参加のほか、以下の行為はなお禁止されています。
- スポーツイベント・大会への参加及びそれらの開催
- 接触型スポーツ
- ウォーターテーマパークやウォーターパークでの活動
- スイミングプールでの活動(個人の住宅及び宿泊施設での活動、東京オリンピックに参加する代表選手の練習を除く)
- マレーシア国民による観光目的での海外渡航及び外国人による観光目的でのマレーシアへの入国
- カラオケ、ショッピングモールでの子供向け運動場、家族向けエンターテイメント施設での活動
- パブ及びナイトクラブでの活動(パブ及びナイトクラブ内のレストラン営業を除く)
- 服のフィッティング、服飾店内での試着室の利用、店内でのアクセサリーの試着、店内での化粧品テスターの提供
- 美容健康施設内でのリフレクソロジー及びマッサージ
- クルーズ船での活動
- その他一か所に多くの人が集まりソーシャルディスタンスの実現及び公衆衛生局長の指示の遵守を困難にする活動
もっとも、マッサージ店の営業再開を許可する見通しであるとの発表が6月15日になされていること等から、8月31日を待たずに禁止行為に該当する行為が再開できるようになる可能性もあります。
また、RMCOの施行により、集会を開くこと及び集会に参加することも可能となりましたが、公衆衛生局長の指示に従うことが必要とされています。
(2) 外国人の入国について
ア 入国許可の要否
(ア) 入国許可が不要なパス
以下の区分に該当する場合、マレーシア入国管理局からの入国許可は不要とされています。
- 雇用パス(カテゴリー1)(Employment Pass Category I (EP I))、その扶養家族(Dependants)及び外国人メイド(Foreign Maids)
- 居住者パス(技能)(Residence Pass-Talent (RP-T))、その扶養家族及び外国人メイド
(イ) 入国許可が必要なパス
以下の区分に該当する場合、マレーシア入国管理局からの入国許可が必要となります。
- 専門職訪問パス(Professional Visit Pass (PVP))
- 雇用パス(カテゴリー2)(Employment Pass Category II (EP II))及び扶養家族
- 雇用パス(カテゴリー3)(Employment Pass Category III (EP III))
- 長期ソーシャルビジットパス(Long Term Social Visit Pass (LTSVP))を有する18歳以上の子供、両親及び義理の両親
(ウ) マレーシアマイセカンドホーム(MM2H)パスについて
現在公表されている情報によれば、MM2Hパスの保有者は、入国管理局からの入国許可によってではなく、観光・芸術・文化省からの入国許可に基づき入国が可能とされています。
イ 入国許可のための手続
- 事業に関係する省庁の駐在者委員会(EC)から承認状(Approval Letter)を受領する(新規でない駐在者については不要)。
- 事業に関係する省庁からサポートレター(Support Letter)を受領する。
- 電子メールで入国許可申請を行い、入国承認状(Entry Approval Letter)を受領する。
- 入国前3日以内にPCR検査を受け,陰性証明書を受領する(※日本国籍者については6月24日から適用除外。もっとも、入国後に「PCR検査陰性結果」が無い者として抗原検査を受ける必要がある。)。
- マレーシア到着時に入国承認状を提示する。
ウ 入国後の手続
- 14日間の自宅隔離を行う。
- 自宅隔離に際しては、給付されたリストバンドを着用する。
- 自宅隔離13日目に抗体検査を行う。
4.ミャンマー
ミャンマーのCOVID-19の感染者数は299名です。新規の市中感染者は1週間以上存在せず、海外から戻ってきた者のみです。ミャンマー国内においては、職場やレストランにおけるCOVID-19予防のためのガイドラインが出されており、それを順守すれば事業を行うことができます。そのため、5月下旬よりレストランは徐々に再開しており、6月からは多くの日系企業も徐々に在宅から事務所勤務に戻りつつあります。もっとも、未だに1地区における自宅待機措置及び夜間外出禁止要請は残っており、7月15日まで延長されています。
他方、海外からの入国については、7月31日まで国際商業航空機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも7月末まで運休する旨発表済みです。そのため、現実的にミャンマーに行くための飛行機がない状況ですが、飛行機の運航が再開された際の入国に関する規制が6月9日に在日本ミャンマー大使館より以下のとおり発表されております。
1.出国前に準備すべき書類
a. 新型コロナウイルス陰性証明書(Laboratory Evidence of Absence of COVID-19)
この医療機関の証明書(Laboratory Certificate)は、国立国際医療研究センター病院やトラベルクリニック等で発行が可能です。証明書は搭乗前72時間以内に発行される必要があります。以下の国立国際医療研究センター病院のホームページを確認の上参考としてください。
http://travelclinic.ncgm.go.jp/009/index.html
b. 1週間の自宅隔離を行ったことについての所属機関による推薦書(Office Recommendation Letter on One Week Home Quarantine)
今次渡航前1週間の間に他国へ渡航していないこと及び自宅に滞在していたことを証明する書類。
2.ヤンゴン国際空港到着後の隔離措置
a. 指定された施設での1週間の隔離措置を実施していただきます。隔離中に、PCR検査のための検体を採取します。
b. 施設隔離中に行われたPCR検査の結果が陰性だった場合、職務復帰前に1週間の自宅隔離を行うことが義務づけられます。
5.メキシコ
(1) Nueva normalidad始動
3月24日から続いた「Jornada Nacioanl de Sana Distacia」の期間が終わり、6月1日より、5月14日、15日、29日に官報公示された保健省令に基づく、社会活動再開に向けた「Nueva normalidad」の期間が始まりました。
社会活動再開に向けたレベルを赤・橙・黄・緑と4つの色で示し、連邦政府が発表する色に基づき、段階的に活動の範囲を広げていく計画で、経済活動においては、以下の範囲で活動が許されうるとしています。
Máximo 赤 | Alto 橙 | Intermedio 黄 | Cotidiano 緑 |
必要不可欠な事業のみ
◆1.5mの間隔の維持もしくは保護具の提供 |
必要不可欠な事業、その他の事業については出勤率30%での活動可◆1.5mの間隔の維持もしくは保護具の提供 |
全事業活動可 (在宅勤務の推奨) ◆1.5mの間隔の維持 |
全事業活動可 (全従業員の出勤可) ◆感染防止策の徹底 |
ただ、依然としてメキシコ国内の感染者数は増加傾向を見せており、特に、これまで比較的感染者が少なかった地域でも感染者の増加が目立ち国土全体への感染拡大が懸念されています。6月15日の週はメキシコ全32州(メキシコシティ含む)の内、半数の16州が橙とされ、翌週には赤15州、橙17州、6月29日の週は赤14州、橙18州となりましたが、それぞれ、これまで赤だったコリマ州とイダルゴ州が橙になった一方、前週に橙だったタバスコ州が赤に、これまで赤だったメキシコ市やケレタロ州など4州が橙に,前週に橙だったヌエボレオン州、イダルゴ州、コリマ州が橙から赤になり、一進一退の状況です。
また企業活動の再開にあたっては、連邦政府が発表したガイドラインに従い、経済活動の種類、事業所の規模、事業所の特徴を鑑みた対策が必要となりますが、具体的な方針は州政府が決めることとなり、また連邦政府の発表する色とは異なる対応をとる州政府もあることから、事業所所在地における州政府の指針も踏まえた内容の対策をとることが必要です。
例えば、メキシコシティの場合、連邦政府が定める産業に加え、ビール製造業と自転車販売業を「必要不可欠な活動」として6月1日から赤色下での操業を認めています。また、メキシコシティ独自に社会活動再開に向けた赤・橙・黄・緑のレベルを設定し社会活動再開を進めていくこととしていますが、特設プラットフォームでの事業者登録や市が定める産業別衛生対策の実施、経済活動再開後の事業者に対しては、新型コロナウイルス感染が疑われる労働者を発見した場合の報告や従業員が30人以上の事業所の場合の感染の有無を確認する検査の実施(毎週もしくは隔週1回)を義務付けています。メキシコシティは6月26日の定例首長会見で6月29日より再開レベルを橙とし、商業施設や飲食店、ホテルなどの部分的営業再開を発表し、同日付の同市官報にて公示されました。例えば、7月1日よりホテルは宿泊客30%まで、レストランは収容人数30~40%まで、7月6日よりショッピングセンターや百貨店が収容人数30%までで事業を再開することができますが、前述の通り市が定める衛生対策の実施等のルールに従った対応が必要です。
(2) 入国規制
メキシコ政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、6月16日にメキシコ政府合意のもと7月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされていますが、在メキシコ米国大使館の発表では、米墨間の航空便の運航状況は、今年1月と比較し80%減少していることから、渡航にあたっては十分な計画が必要とされています。なお、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。
グアテマラ、ベリーズ国境においては、各政府によるその閉鎖が継続されています。
6.バングラデシュ
バングラデシュのCOVID-19の感染者は13万7787名です。依然として感染は拡大しており、6月10日からは連日1日あたり3,000~4,000名の新規感染者が報告されております。
新型コロナウイルスの蔓延を防ぐための措置として、バングラデシュ全土で、6月30日まで、午後8時から翌日午前6時までは、真に必要な場合を除き外出禁止です。外出の際はマスク着用等の衛生措置を講じることが必要で、違反者に対しては法的措置(罰金、懲役刑)が取られます。同期間、教育機関は開校できません。また、6月15日、バングラデシュ政府はゾーン分け規制を含む感染拡大予防措置を講じると発表しました。赤、黄、緑ゾーンに分けて、赤ゾーンに指定された地域では、政府機関や民間企業などは政府指定休日となり、人々の移動や生活も厳格に制限されます、黄・緑ゾーンでは政府機関や民間企業は限定的に業務を行うことができますが、人々の移動や生活も一部制限されます。
バングラデシュへの入国については、一部の国・地域(中国、英国、カタール、アラブ首長国連邦)を除いて、無期限での国際フライトの乗り入れ停止措置をとっております。海外投資家およびビジネス関係者はオンアライバルビザの発給が再開されていますが、ビザの申請時には、これまでの必要申請書類に加え、渡航前72時間以内に取得したPCR検査で新型コロナウイルス陰性であることが記載された英訳付きの診断書、投資・ビジネス目的を立証する書類が必要です。また、コロナ感染国からの入国者に対しては、入国後2週間の自主的な隔離措置が要請されます。
第2.各国の解雇手続き |
1.日本
(1) 解雇の通則
「使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了」を解雇といい、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)と規定されています。
日本において解雇は、使用者が自由に行えるものではなく、「社会通念上相当」と認められる客観的で合理的な理由が必要です。
(2) 解雇の種類
解雇には下記の3種類があります。
1.普通解雇
能力不足、勤務成績不良、業務命令・指示違反、傷病、私生活上の非行を理由とする解雇
2.懲戒解雇
使用者の懲戒権発動による解雇
3.整理解雇
経営上の必要性から行われる解雇
(3) 整理解雇
上記(2)の3種類の解雇のうち、COVID-19による経営難による人員整理等を理由とする解雇は、「整理解雇」となります。整理解雇を行う為には下記の4要件を満たすことが必要です。
1.人員削減(解雇)の必要性
2.解雇回避の努力
3.人選の基準及び人選の合理性
4.手続の合理性
この4要件に照らして、上記(1)解雇の通則(労働契約法第16条)の「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない」かどうかにより、整理解雇が有効であるか否かが判断されます。
(4) 解雇予告手当
通常、使用者が従業員を解雇しようとする場合、30日前までには、解雇の予告をしなければなりません。この予告を行わずに解雇する場合、使用者には最低30日分の平均賃金を従業員に支払う義務が生じます。
(5) 有期契約における解雇
「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむをえない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」(労働契約法第17条)と規定されています。
有期契約の契約期間途中に従業員を解雇しようとする場合、労働契約法第16条で定められた解雇の通則の規定に加え、「やむをえない事由」が必要となってくることから、解雇の有効性はより厳しく判断されることとなります。
2.タイ
タイ労働者保護法上、解雇とは、「雇用契約の終了、またはその他理由を問わず、使用者が労働者を以後働かせず、賃金を支払わない行為のことをいい、使用者が事業を継続することができないために労働者が労働せず、かつ賃金を受け取らない場合を含む」とされており、解雇する場合には、通常、以下の手続を取る必要があります。
- 事前通告
雇用契約に期間の定めがない場合、使用者は、労働者に対して、一賃金支払期間前の書面による解雇通告をする必要があります。
例外的に、事前通告から雇用契約終了の日までに得られるはずの賃金と同額の金銭を支払う場合には、即時の解雇が可能です。また、後述する、119条に定める違反行為がある場合についても、事前通告が不要となります。
- 有給休暇の買取り
119条に定める場合によらず使用者が労働者を解雇する場合、使用者は労働者が有する年次有給休暇に応じた賃金を支払う必要があります。
繰越年次休暇がある場合は、それに応じた賃金を支払う必要があります。
2. 解雇補償金
使用者は、解雇する労働者に対して、以下の解雇補償金を支払う必要があります。有期雇用契約が満了により終了する場合についても支払義務があることに注意が必要です(特定の条件に該当する有期の雇用契約を除く)。しかし、労働者側からの辞職の場合は、解雇補償金の支払義務は生じません。
また、使用者に対して故意に損害を与えた場合や、過失により重大な損害を与えた場合等、119条に定められている事項により労働者を解雇する場合については、解雇補償金の支払義務は生じません。
勤続期間120日以上1年未満: 最終賃金の30日分以上
勤続期間1年以上3年未満: 最終賃金の90日分以上
勤続期間3年以上6年未満: 最終賃金の180日分以上
勤続期間6年以上10年未満: 最終賃金の240日分以上
勤続期間10年以上20年未満: 最終賃金の300日分以上
勤続期間20年以上: 最終賃金の400日分以上
3. 事業移転に伴う解雇
使用者が事業所を移転する場合で、労働者が新たな事業所での就労を望まない場合、労働者は書面により雇用契約の終了を通知することができます。その場合、使用者は当該労働者に対して、(3)の解雇補償金の額と同額以上の特別解雇補償金を支払う必要があります。
4. 機械導入、技術更新に伴う解雇
機械導入、技術更新等により、使用者が組織、製造工程等を改変し、使用者が労働者を減少させる必要があることを理由として、労働者を解雇する場合、使用者は、解雇の日の60日以上前に、労働監督官及び当該労働者に対して、解雇日、解雇理由、当該労働者名を通知する必要があります。
上記の事前通知をしない場合、使用者は当該労働者に対して、(3)の解雇補償金に加えて、最終賃金の60日分と同額の特別解雇補償金を支払う必要があります。
当該労働者が6年以上勤続している場合には、勤続満1年あたり最終賃金の15日分以上の特別解雇補償金を支払う必要があります(最大360日分)。
3.マレーシア
マレーシアにおける解雇も、日本と同様に、概ね1.普通解雇、2.懲戒解雇、3.整理解雇の3つの類型に分けることができます。いずれの類型においても、解雇が有効となるためには解雇を正当化できるだけの事由が必要となります。
(1) 普通解雇
労働者が雇用契約に基づく労務の提供をしない(又は、できない)場合に雇用契約を解消するものです。懲戒解雇・整理解雇以外の解雇と表現されることもあります。
雇用契約で定める予告期間に従って、事前通知の形で解雇を通知します。雇用法が適用される労働者(月額賃金RM2,000以下の労働者や肉体労働者等)の場合で、契約において予告期間の定めがない場合等には、雇用法が定める予告期間を下回ることができません(勤続2年未満の場合4週間、勤続2年以上5年未満の場合6週間、勤続5年以上の場合8週間)。ただし、対応する期間の賃金の支払いをすることで、予告期間を短縮することはできます。
また、雇用法が適用される労働者については、法定の解雇手当を支払う必要があります(勤続1年以上2年未満の場合1年につき10日分、勤続2年以上5年未満の場合1年につき15日分、勤続5年以上の場合1年につき20日分)。
(2) 懲戒解雇
懲戒解雇は、懲戒処分の1つとして行われる解雇です。
雇用法14条は、不正行為があった場合には適正な調査を行ったうえで労働者を予告なく解雇することができるとしています(この場合には、解雇予告手当の支払いも不要とされています)。実務上は、雇用法の適用の有無に拘らず、不正行為があったと使用者が考える場合には、不正行為の有無を調査のうえ、当該労働者に問題となっている不正行為について理由呈示書(Show Cause Letter)の発行を通じて弁明の機会を付与し、社内審問手続(Domestic Inquiry)を経た上で解雇をするという流れが一般的です。
雇用法は、懲戒処分の決定まで2週間を限度として停職処分を行うことも可能であるとしていますが、当該期間について賃金の半額以上を支払わなければならないとしています。雇用法の適用がない労働者については、雇用契約において特段の定めを置いていない限り、停職期間中も賃金の全額につき支払義務が存続するものと考えらます。
(3) 整理解雇
人員が余剰であることを理由として行われる解雇です。
整理解雇については、労使協調のための行為規範(The Code of Conduct for Industrial Harmony 1975)及び整理解雇管理ガイドライン(Guidelines on Restrnchment Management)といった規定が用意されており、整理解雇に臨む際にはこれらの規定に沿って手続を進める必要があります。
これらの規定は、労働者の余剰が生じた場合、まずは解雇を回避するための措置(新規雇用の停止、残業・休日出勤の制限等)をとる必要があるとしています。またこれらの規定は、そのような解雇回避措置をとったにもかかわらず一部の従業員の解雇が必要になった場合には解雇の30日以上前に労働局に届出をしなければならないものと定めるほか、解雇の対象となる従業員の選定に関するルール(直近に雇用された者から順に解雇の対象とすべきという「Last In, First Out」等)についても定めています。
整理解雇における解雇予告期間・解雇手当については、普通解雇に準じます。
4.ミャンマー
日本と異なり、解雇理由及び手続きに関する法令上の明確な規制は存在しません。また、COVID-19を理由とする特別な対応や整理解雇も存在しません。したがって、一般的な解雇規制について、解雇手当を支払う場合と不要な場合に分けてご説明します。
1.解雇手当を支払う場合
実務上、合理的理由が必要とされていますが、その理由について明確な規定や裁判例も特に存在しません。手続きとしては、1か月前の通知が必要であり、かつ、労働者の勤続期間に応じて以下の解雇手当を支払う必要があります。
(a)勤続期間が6か月以上1年未満の場合、0.5か月分の給与の支払い
(b)勤続期間が1年以上2年未満の場合、1か月分の給与の支払い
(c)勤続期間が2年以上3年未満の場合、1.5か月分の給与の支払い
(d)勤続期間が3年以上4年未満の場合、3か月分の給与の支払い
(e)勤続期間が4年以上6年未満の場合、4か月分の給与の支払い
(f)勤続期間が6年以上8年未満の場合、5か月分の給与の支払い
(g)勤続期間が8年以上10年未満の場合、6か月分の給与の支払い
(h)勤続期間が10年以上20年未満の場合、8か月分の給与の支払い
(i)勤続期間が20年以上25年未満の場合、10か月分の給与の支払い
(j)勤続期間が25年以上の場合、13か月分の給与の支払い
2.解雇手当が不要な場合
解雇手当が不要な場合について、刑事罰に該当する行為を行うような非常に悪質な場合には直ちに懲戒解雇が可能です。
他方、懲戒解雇に該当する程悪質でない場合には、通常解雇となります。
通常解雇の手続きについて、法令上の規定はないものの、労働・入国管理・人口省が出しているモデル雇用契約書第15条(b)(ii)において、「雇用契約の規則に違反した従業員に対して、1 度目は口頭での警告、2 度目は書面による警告がなされる。3 度目は、通常の規定違反に関する誓約書に署名を命じられることとなる。3 度目の警告から、12 か月以内に、労働者が通常の違反を再度犯した場合、使用者は、当該労働者との契約を、解雇手当を与えることなく解除できる。」と規定されています。したがって、4回目の違反で漸く解雇できることから、非常に時間がかかる手続きとなっております。
5.メキシコ
(1) 使用者の都合による雇用契約の終了
労働法では、使用者の破産や財務状況の悪化を理由とした雇用契約の終了や、機械の導入や業務改善による雇用契約の終了が認められています。この場合、労働調停仲裁委員会の許可もしくは承認を得たうえで解雇(雇用契約の終了)を実施することが可能です。
解雇時には、未払分の給与や解雇する年の勤務日数に応じた割合の有給休暇手当の額とアギナルド(年次法定賞与)額、その他、会社独自に定めた手当などがある場合はそれらの受け取り分等の精算を行い、加えて、3か月分(機械の導入や業務改善が理由の場合は、4か月分)の給与額や勤続年数に応じた勤続手当額(給与額が最低賃金の2倍を超える場合は、勤続年数に応じて12日分の最低賃金額の2倍の額、給与額が最低賃金の2倍以下の場合は、勤続年数に応じて12日分の賃金額)を解雇手当として支払う必要があります。
(2) 労働者の責めに帰すべき事由による解雇
労働者が就労の際に虚偽を用いた場合や、不正行為または脅迫、侮辱などを含む暴力的行為を行った場合、企業秘密や守秘義務を負う情報について漏洩した場合、30日間のうち4日以上の正当な理由のない欠勤があった場合など、労働法第47条に定める事由による場合は、使用者はその責めを負うことなく解雇することが可能です。すなわち、使用者は、解雇時に未払い給与や手当の精算のみ行うこととなります。
この場合、使用者は当該労働者に対して、当該事由及びその事由が発生した日付や期間を記した書面によって解雇を即日かつ直接通知するか、解雇日から5営業日以内に労働紛争調停員会に当該労働者の住所と併せて届出なければなりません。この場合は、使用者に代わって当該労働紛争調停員会が労働者に当該解雇通知を送達することとなり、労働者が通知を受け取った時にこの解雇の効果が生じることとなります。
ただし、解雇通知を受け取った労働者は、解雇の日から2か月間、労働紛争調停員会を通じ、復職か3か月分の給与相当額の補償金の支払を請求する権利を有します。解雇事由の立証責任は使用者にあり、使用者がこれを証明することができず、不当解雇と認定された場合は、当該請求に加えて、復職するか否かにかかわらず、上限を12か月分として解雇日から調停が終了するまでに得られたであろう賃金額を支払わなければなりません。その調停が12か月以上に及んだ場合は、12か月分の賃金額の支払いに併せて、15か月分の賃金額の2%を超過月数分支払うこととなります。
また、一定の条件を満たす労働者の場合や労働裁判によって雇用関係の継続が困難と判断された場合には、使用者は、例えば無期雇用の場合は、20日分の給与額に勤続年数を乗じた額の補償金を支払うことによって、労働者の復職の希望を拒否することも可能です。
(3) 使用者の都合による解雇
以上のほか、使用者の都合によって労働者を解雇する場合は、労働者が享受できるすべての権利を害することなく解雇することになります。つまり、前述したような労働者が得られる補償金等のすべてを支払い解雇する方法です。なお、補償金の額は、雇用契約の形態や労働者の給与額、勤続年数、職種によって異なってきますので、個別具体的な確認、検討が必要になります。なお、メキシコの労働法では、雇用契約終了の事由として「使用者と労働者の合意による場合」を規定していますが、本規定は、一般に労働者が退職の意思を示し、これに使用者が同意した場合と考えられており、使用者の都合による退職要請への労働者の同意がある場合を含んでいないと解されています。
6.バングラデシュ
バングラデシュ労働法で規定されている解雇として、(1)使用者による雇用契約の終了、(2)一時解雇、(3)人員整理、(4)労働者の精神的または身体的な障害により就労が不能な場合、(5)労働者の不正行為や違法行為による解雇、が挙げられます。新型コロナウイルス感染拡大の影響による解雇の場合は、(1)使用者による雇用契約の終了、(2)一時解雇、(3)人員整理が該当すると考えられます。
(1) 使用者による雇用の終了
解雇の理由についての規制は定められておらず、使用者は、以下の措置をとることで、解雇が可能です。
- 無期雇用労働者の雇用を終了する場合
月給労働者の場合は、120日前までの書面による通知、その他の労働者は、60日前までの書面による通知が必要です。労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金または一時給付金の高額な方を補償金として支払わなければなりません。補償金は労働法にて定められている他の給付に加えて支払われます。
2. 非正規雇用労働者の雇用を終了する場合
月給労働者の場合は、30日前までの書面による通知、その他の労働者は、14日前までの書面による通知が必要です。
無期雇用および非正規雇用ともに、通知せずに労働者の雇用を終了したい場合は、上記の通知期間日数の賃金を支払うことで、可能です。
(2)一時解雇
感染症の拡大は、労働法で規定されている一時解雇の理由に該当しませんが、使用者の力が及ばない不測の事態による事業の停止が認められています。業務停止が3日を超える場合は、一時解雇の扱いとなり、更に一時解雇が45日を超える場合は、人員整理により解雇することができます。
勤務期間が1年以上の労働者を一時解雇する場合は、以下の補償金を支払わなければなりません。
1. 一時解雇の期間が1日から45日の場合
週休を除く一時解雇の期間、基本給および手当の半額と住宅手当全額
2. 一時解雇の期間が45日を超えた場合
別段の合意がない限り、46日目以降は、基本給および手当の4分の1と住宅手当の全額
(3)人員整理による解雇
勤務期間が1年以上の労働者に対しては、1か月前に文書による通知または1か月の賃金を支給し、検査官および労働組合(あれば)に通知を提出し、労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金にあたる補償金または一時給付金の高い方を支給しなければなりません。人員整理が一時解雇の代わりになされるときは、通知は不要ですが、さらに15日分の賃金にあたる補償金を上乗せして支払う必要があります。
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