「COVID-19 関連の規制状況及び入国規制並びに商標出願の概要」 TNY Group Newsletter No.6
第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制 |
1.日本
都市部を中心に飲食店の営業時間の短縮を要請するほか、イベント開催制限など、各自治体で独自の対応がとられていますが、9月に入り、規制が解除される傾向にあります。政府によるGo Toキャンペーンの実施が本格化され、Go Toトラベル(旅行代金の補助)で除外されていた東京が10月1日から対象になり、Go Toイート(飲食店でのポイント付与や食事券)は9月中旬から開始予定です。
(2) 入国規制
8月28日に決定された日本における水際対策措置が現在も有効で、主な措置は以下の通りです。
1 上陸拒否(日本上陸前14日以内に、指定する国・地域に滞在歴のある者等。日本国籍者は対象外)
新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(法務省)http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00099.html
2 検疫の強化(日本国籍者も対象)
14日以内に、上記1の上陸拒否対象国に滞在歴のある入国者は、PCR検査の実施対象となります。また、全ての地域からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で14日待機し、国内において公共交通機関を使用しないよう要請されます。
水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00098.html
3 査証に関する制限(既に発給された査証の効力停止、査証免除措置の停止)
新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html
5 航空機の到着空港の限定等
報道によると、政府はCOVID-19の影響を受けた海外への渡航中止勧告を10月以降、段階的に解除します。オーストラリア、ニュージーランド、ベトナムなど新規感染者数が少ない10以上の国・地域が候補に挙げられています。渡航の可否は受け入れ国が決めます。また、10月1日からは、3か月以上にわたり日本に滞在できる在留資格をもつ外国人の新規入国を認めていくと報道されています。日本からの出国を緩めることで相手国の入国制限の撤廃につながることが期待されます。
日本における新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(8月28日)
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C069.html
新型コロナウイルス感染症対策本部資料(第43回・9月25日)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020925.pdf
2.タイ
タイのCOVID-19の累計感染者数は3,564名です。この内、3,374名が回復し、現在医療機関で治療中の者は131名となっています。帰国者を除いた、タイ国内での新規感染者は100日間連続で0人となっていましたが、9月3日に新規感染者が確認されています。
- COVID-19関連の規制状況
9月28日、タイ政府は9月30日までとしていた非常事態宣言を、10月31日までさらに1か月延長することを承認しました。また、同日、商用および観光目的での訪タイを希望する外国人の入国制限をさらに緩和する方向で大筋合意したと伝えられています。
9月29日、タイ政府は、COVID-19の感染拡大の影響で帰国できない外国人の滞在猶予期間を、9月26日から10月31日まで延長する旨の閣議決定をしました。
2. 入国規制 (日本からタイへの特別航空便)
現在、日本からタイ入国のための特別便が準備されています。在東京タイ王国大使館のHPにおいて、随時情報が発表されています。
http://site.thaiembassy.jp/jp/news/announcement/
10月の特別便については、14便が特別便として運航を予定しています。10月22日の特別便については、10月5日午前10時より予約受付開始となっています。10月25日、29日の特別便については、現時点、受付開始日時の発表はなされていません。それ以外の便については、すでに予約受付が開始されています。
この特別便により渡航を希望する者は、入国許可書(COE)をタイ王国大使館に申請する必要があります。
全体の流れとしては、以下のとおりとなります。
3. ホテル予約・航空券予約・ビザ申請予約、2 COE申請、3 ビザ申請、4 COE取得・PCR検査・入国
出入国の際には、以下の書類を提示しなければなりません。
- ビザもしくは再入国許可証印のあるパスポート
- 入国許可証(COE)
- 記入、署名済みの申告書(Declaration Form)(原本)
- 英文の搭乗可能健康証明書(Fit to Fly or Fit to Travel Health Certificate)(原本)
- 渡航前72時間以内に発行された英文のRT-PCR検査によるCOVID-19非感染証明書(原本)
- COVID-19及び関連疾患の治療費を含む10万米ドル以上もしくは1,100万円以上の治療補償額の英文医療保険証
- ASQホテル予約確認書
また、タイ入国時には、以下が求められます。
- T.8 formの記入(タイ空港公社(AOT)の携帯アプリにてオンライン登録可能)
- タイ当局に指定された医療従事者から医療検査を受け、隔離施設にて14日間以上の検疫隔離
3.マレーシア
(1) 入国前後の手続等
外国から到着し監視下に置かれる者の入国及び隔離手続についてのガイドライン(GUIDELINES ENTRY AND QUARANTINE PROCESS PERSON UNDER SURVEILLANCE (PUS)ARRIVING FROM ABROAD)(7月24日公布)及びその後の発表によれば、入国前後の手続は以下のとおりとなります。
1 出発前の手続
(ア) 到着後の強制隔離の宿泊費用の支払いに関する約定書(Letter of Undertaking and Indemnity)の提出
提出は出発日の3日前までに、マレーシア外務省のHP等から書式を入手のうえ 必要事項を記入し、旅券や航空便旅程表等の他の必要書類とともにPDF等の形式で電子メールにより提出します。日本から渡航する場合、提出先は駐日マレーシア大使館となります。
(イ) マレーシアへの入国承認状(Letter of Approval)/渡航通知書(Travel Notice)の受領
マレーシアへの渡航が許可されると、提出先の大使館等から入国承認状/渡航通知書が電子メールで送付されます。
(ウ) アプリ(MySejahtera)への登録
マレーシアへの入国前に、アプリ(MySejahtera)(https://mysejahtera.malaysia.gov.my )をダウンロードし、出発日の前日までに渡航情報(日時、フライト情報、入国地点)、健康状態等の登録を行います。
(エ) 出発前のCOVID-19検査
同ガイドラインは、マレーシア政府は入国者に対し出発のCOVID-19検査を求めないものとしています。もっとも、航空会社が搭乗条件として出発前の検査を要求していることがあるため、各航空会社に対して確認をする必要があります。
2 到着時の手続
(ア) 到着時のCOVID-19検査等
マレーシアへの到着時に、COVID-19検査を受ける必要があります。検査費用は、自身で負担をすることとなります。検査の結果、COVID-19の症状がみられる場合は病院に搬送されます。
(イ) 入国審査等
検査の結果COVID-19の症状がみられなかった場合、強制隔離の宿泊費用の支払いに関する約定書を係員に提示した後、入国審査及び税関検査を受け入国します。
3 到着後の手続
到着後、14日間又はマレーシア保健省が別途定めた期間の強制隔離に付されます。
強制隔離先は、マレーシア政府が指定したホテル等の施設で、強制隔離の対象者が隔離先の施設を選ぶことはできません。原則として1人1部屋ですが、保険省の検疫官が認めた場合には配偶者や家族等との同室が可能となります。
空港等の入国地点から強制隔離先までの交通手段は、原則としてマレーシア政府が手配します。自家用車両による移動も可能ではあるものの、当局の監督下で移動する必要があり単独での移動は認められず、また、隔離施設でのチェックイン時に車両のキーを預ける必要があります。
隔離施設のチェックイン時に約定書の原本を提出し、隔離費用を支払います(クレジットカードの使用可)。9月24日から非マレーシア国籍者の隔離費用が値上げされ、合計4,700リンギット(固定費(隔離施設運営費)2,600リンギット+ 宿泊費(隔離1日あたり150リンギット×14日))の支払が必要とされています。
部屋からの外出、喫煙、集会及び訪問者との面会は禁止されています。
食事及び飲料は1日3回(朝食、昼食、夕食)提供されます。フードデリバリーサービスの利用はガイドラインでは禁止されていますが、同意書への署名及び食中毒等になった場合は自己責任とすることを条件に利用を認める旨が発表されています。
4 パス区分ごとの手続
上記手続とは別に、パスの区分や出国時期に応じて必要となる手続があります。以下、EP及びPVPについて抜粋しますが、詳細及びパス区分についてはマレーシア入国管理局等をご確認ください。従来EP1については、新規入国及び7月11日よりも前に出国済みの場合における再入国については入国承認状の取得が不要とされていましたが、9月18日付の発表により9月21日以降はEP1についても入国承認状の取得が必要となったことに注意が必要です。
新規入国 | 7月11日よりも前に出国し、 有効な在留資格を保有している 者の再入国 |
在留資格が失効しているが、 駐在員委員会の承認残余 期間がある者の再入国 |
再入国を前提とする出国 | |
EP1 | (9月21日以降)入国 承認状の取得が必要。 |
(9月21日以降)入国 承認状の取得が必要。 |
入国承認状の取得が必要。 |
出国・再入国許可状の
取得が必要。 |
EP2 |
入国承認状の取得が必要。
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入国承認状の取得が必要。
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EP3 | ||||
PVP |
*入国が認められるためには、承認機関又は規制機関から重要な役職(key posts)又は技術職(technical posts)と評価される必要があります。
(2) 感染者数15万人超の国の国籍者・居住者等の入国拒否
9月7日以降、以下の国の国籍者又は以下の国の長期滞在パスを保有する者で、これらの国に居住又は滞在している者の入国を拒否する旨が発表されています。
米国、ブラジル、インド、ロシア、ペルー、コロンビア、南アフリカ、メキシコ、スペイン、アルゼンチン、チリ、イラン、英国、バングラデシュ、サウジアラビア、パキスタン、フランス、トルコ、イタリア、ドイツ、イラク、フィリピン、インドネシア
この規制は、以下のマレーシアの長期滞在パスを保有する者を対象にするものとされています。
- 永住者(Permanent Resident)
- マレーシア・マイ・セカンドホーム(Malaysia My Second Home)
- 駐在者(Expatriates)(9月7日より前に得られた入国・一時出国・再入国許可は引続き有効):
- 就労パス(カテゴリー1、2及び3)(Employment Pass (I, II and III))
- 居住者パス―技能(Resident Pass – Talent)
- 専門職訪問パス(専門家カテゴリー)(Professional Visit Pass (Specialist Category))
- 扶養家族パス(Dependent Pass)
- 居住者パス(Resident Pass)
- マレーシア国籍者の配偶者又は子供
- 学生パス(Student Pass)
- 一時就労訪問パス(Temporary Employment Visitor’s Pass)
4.ミャンマー
(1) COVID-19関連の規制状況
これまで抑え込みに成功していましたが、9月初めから市中感染が増加し、9月8日よりヤンゴン内のレストランは店内飲食が禁止されました。その後、9月21日からはヤンゴン管区内ほぼ全域で自宅待機措置が命じられ、27日からはタウンシップ間の移動も原則として禁止されるなど、非常に厳格な規制がとられております。
(2) 入国規制
海外からの入国については、10月31日まで国際旅客機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも11月末まで運休する旨発表済みです。
10月の救援便(特別便)は1日・7日・22日・29日の4便の予定ですが、今後の状況によっては変更の可能性があり、かつ、日本人枠は少ない予定です。
5.メキシコ
(1) COVID-19関連の規制状況
メキシコ国内のCOVID-19感染者の増加は鈍化の傾向を見せ始め、メキシコ政府のCOVID-19感染リスクを示す信号システムは、9月14日の週に、このシステムを導入後初めて赤の州がなくなり、橙24州、黄8州となりました。また、9月28日の週には、システム導入後初めて、カンペチェ州が緑に指定され、橙15州、黄16州となっています。ただ、キンタナロー州は前回が黄に対して、今週橙に指定されるなど、まだまだ予断を許さない状況です。なお、連邦政府における新たな規制は見られません。
(2) 入国規制
メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、9月18日にメキシコ政府合意のもと10月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。
6.バングラデシュ
(1) COVID-19関連の規制状況
バングラデシュ内務省が発表した9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、主なものは以下のとおりです。
1 これまでにバングラデシュ政府機関が発表したCOVID-19拡大予防措置については、新たな期間延長はされない。また、今後の感染拡大予防措置については、バングラデシュ政府の各省庁の判断に委ねられる。※ 現時点では、内務省以外の各省庁からは、感染拡大予防措置等について発出されておりません。
2 どのような状況においても外出の際にはマスクを着用し、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じなければならない。違反した場合には法的措置を受けなければならない。
(2) 入国規制
9月27日に、サウジアラビア及びシンガポールからの国際便の乗入停止措置が解除され、以下の国からの、バングラデシュへの国際便の乗入が許可されています。
(対象国及び地域)バーレーン,中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国
バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については,渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があります。
第2.各国の商標出願の概要 |
1.日本
日本の現行の商標法は1959年(昭和34年)に制定され、その後数年ごとに改正されています。商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。商標とは、(1) 事業者が使用するマーク、(2) 自己の商品・サービスと他人の商品・サービスを区別するために使用するマークを満たすものを指し、「マーク」+「使用する商品・サービス」のセットで登録されます。商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体的形状や音等も含まれます。権利の存続期間は10年ですが、存続期間は申請により更新することができます。
商標登録は特許庁に出願します。書類による出願及びインターネットでの出願が可能です。商標審査の流れは右図の通りです。出願人は、1商標登録出願、⑥意見書・補正書の提出、⑨登録料納付(図の黄色枠の手続き)が必要です。
1 商標登録出願前には先行商標調査を行うことが大切です。他人が既に同一・類似の商標を登録している場合には、登録を受けることができないだけでなく、無断で使うと商標権の侵害となる可能性があります。独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供しているJ-PlatPat等で、商標に関する出願・登録情報や商品・役務名等を検索することができます。また、次の(1)~(3)に該当する商標は、登録を受けることができませんので、出願前に確認が必要です。
(1) 自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの
(2) 公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの
(3) 他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの
審査後に5拒絶理由通知を受けた場合は、拒絶理由を理解し、記載された応答期限内に⑥意見書を提出するか、指定商品や役務等を修正して⑥手続補正書を提出します(両方を提出することもできます)。対応しない場合は、登録査定を受けることができませんので、応答期間経過後に、⑧拒絶査定が送付されます。
2.タイ
(1) 出願人
商標登録の出願人は、自然人、法人いずれでもなることができます。ただし、出願人または代理人のいずれかは、DIP(Department of Intellectual Property)の登録官が連絡を取ることのできる事務所または住所をタイにおいて有していなければなりません(商標法10 条)。したがって、出願人が会社の場合は、会社がタイ国内にあるか、タイ国内で代理人を選任することが必要となります。
(2) 商標要件
商標登録を受けるためには、以下の登録要件を満たす必要があります(6条)。
- 識別力のある商標であること(7条)
- 商標法に基づき、禁止されていない商標であること(8条)
- 他人が登録した商標と同一、または類似する商標でないこと(13条)
1の「識別力」のある商標とは、その商標が使用されている商品が、他の商品とは異なることを識別することを可能にする商標とされています。他人の商品と自分の商品を区別する機能(自他商品識別機能)を発揮し得ない商標は、識別力のある商標とは認められません。装飾化された文字または数字、特別な様式で表示されている色彩の組み合わせなどを用いることで識別力のある商標と認められやすくなります。しかし、タイにおいては日本以上に識別力がないと判断される傾向があるため、留意が必要となります。
2については、国の紋章や王室の印章、官公庁印、王や王妃の肖像、公序良俗に反する商標などが規定されています。
3については、最初に出願した者に権利を与える先願主義を明らかにしたものです。
(3) 審査
商標出願を行うと、方式審査および登録要件についての審査が行われます。商標が登録要件を満たしていると判断された場合、登記官は当該出願の公告を命じ(29 条)、出願が商標公報に公告されます。利害関係を有する者は、商標公報に公開された日から60 日以内に異議申し立てをすることができます(35 条)。出願公告において異議申し立てがなかった場合、登録が可能となり、登記官は出願人に商標の登録について書面で通知し、出願人は通知を受領した日から60 日以内に、登録手数料を支払わなければなりません。支払われない場合には、当該出願は放棄されたものとみなされます(40 条)。補正命令や異議申し立てがない場合、約10ヶ月から1年程度で登録となります。
(4) 商標権者の権利
商標権者として登録される者は、当該商標を使用する排他的権利を有することになります(44 条)。
また商標が登録される場合、当該商標は登録出願を行った日に登録されたものとみなされます(42条)。登録された商標は登録出願の日から10 年間有効であり、また更新が可能です(53 条)。
(5) 出願費用
1区分(区分=商品役務を区切る大きなグループのこと)の出願の場合、日本円で約13万~20万円程度が必要となります。これは代理人費用・公的費用含みます。費用は指定する指定商品・役務の数、拒絶理由通知・補正指令の有無等によっても変動します。
1区分の出願を前提として、具体的な費用の内訳としてはまず、出願時に1指定商品あたり千バーツ(6指定商品以上を記載する場合は一律9千バーツ)、登録時に1指定商品あたり6百バーツ(6指定商品以上を記載する場合は一律5千4百バーツ)の公的費用がかかります。
公的費用に加えて、代理人に依頼した場合は代理人費用が必要となります。この点、日本の特許事務所に依頼すると、一般的には日本国内の代理人費用(弁理士費用)とタイの代理人費用が二重に発生し、費用が高額になることが多いです。
(6) その他
2016年7月の法改正により、1出願で多区分を指定した出願が可能となっています。ただし、分割出願ができないため、一部の区分に拒絶理由がある場合に、その区分の削除か、出願全体について拒絶理由を争うことしかできず、現在でも区分ごとの出願を行うことが多いです。
また、タイはマドリッド協定に加盟しているため、国際出願が可能となっています。
3.マレーシア
マレーシアの商標登録手続は、2019年商標法(Trade Marks Act 2019)及びその下位規範によって規律されています。
(1) 申請権者
商標の真正な所有者であると主張する者は、以下の場合に商標の登録を出願することができます。
- 取引の過程で商標を使用している又は使用するつもりである場合
- 取引の過程で他の者に商標を使用することを許可する又は許可するつもりである場合
(2) 予備備的助言制度
商標登録の出願を希望する者は、登録官に対して当該商標が登録可能な商標であるかどうかについて予備的な助言及び調査結果を求めることができます。出願希望者が登録官から肯定的な助言を得たうえで一定期間内に当該商標の登録出願をしたものの、更なる調査又は審査の結果、登録可能な商標ではないという趣旨の拒絶の通知を受けた場合、一定期間内に出願を取り下げることにより納付済みの出願手数料の返還を受けることができるものとされています。
(3) 申請
1 申請の単位
1つの申請で複数の分類に属する商品又はサービスを対象とすることができます。
2 連続商標
商標登録の出願に際しては、本質的に同一である複数の商標を「連続商標」として単一の願書で出願することができるものとされています。
3 早期審査
商標の登録申請者は、所定の期間内に所定の料金の支払いとともに登録官に対し申請書を提出することにより、早期審査を請求することができます。旧商標法(1976年商標法)は同制度についての規定を置かず、商標規則(Trade Marks Regulations 1997)によってのみ定められていましたが、現行商標法は同制度について明文の規定を置いています。
(4)登録審査
1 形式審査
商標登録の申請に際しては申請書の提出や手数料の支払が必要となるほか、ローマ字以外で構成される商標については補足資料(音訳、翻訳、その他所定の資料)の提出が必要となります。形式審査においては、これらの資料に不備がないかが審査されます。申請後所定の期間内に手数料の支払いや補足資料の提出がされない場合、申請は取り下げられたものとみなされます。
2 実体審査
形式審査が終了すると、実体審査が開始されます。実体審査においては、絶対的登録拒絶事由及び相対的登録拒絶事由の有無が審査されます。
(5)審査後の手続
審査が終了した後、登録官は出願を受理するか否かを決定します。
登録官が出願を受理する場合にはそのまま公告がなされ、異議申立がなければそのまま登録へと進むこととなります。当該商標が商標登録の要件を満たしていないと登録官が判断した場合には、出願者に対し暫定拒絶の通知がされ、聴聞等を通じて更なる検討がなされることとなります。
(6)異議の申立手続
商標登録の出願の受理が公告された場合、当該商標の登録に異議がある者は異議申立をすることができます。異議申立は当該公告から2か月以内になされなければならないとされています。
(7)登録
出願が受理され、異議申立がなされないまま所定の期間が満了した場合又は異議申立に対して出願者に有利な決定がされた場合、登録官は商標の登録を行います。登録は出願の日付でなされ、同日が登録日とみなされます。
(8)登録の更新
商標登録の存続期間は登録日から10 年間であり、更新によりさらに10年間延長されます。
商標登録の存続期間満了後であっても、満了日から6か月以内であれば 更新の申請をすることが認められています。商標登録の存続期間満了から6か月以内に更新が行われない場合には商標は削除されたものとみなされますが、削除から6か月以内であれば復元の申請を行うことができるものとされています。
4.ミャンマー
これまで、ミャンマーには商標法が存在せず、登記法に基づく登記を行う以外に会社が積極的に自社の商標を保護する手段がありませんでした。しかし、2019年1月30日、ミャンマー商標法(以下、「商標法」という。)が成立しました。施行時期は未定であったものの、2020年8月28日に政府より2020年10月1日から商標法に基づく優先出願が開始される旨発表されました。優先出願期間中に申請可能な商標は1登記法に基づき登記済みの商標、又は2ミャンマー市場内で既に使用されている商標のみです。それ以外の商標は、商標法の施行後に出願可能となります。施行時期は未発表であるものの、関係者の情報によれば、優先出願期間は6ヶ月が予定されているため、2021年4月1日が施行日として予定されております。なお、ミャンマーの商標法に基づく出願はオンラインのみで可能であり、かつ、当該オンライン制度を利用するパスワードは現地で活動している法律事務所のみに付与される予定です。そのため、ミャンマーに拠点を有する数少ない日系法律事務所である当事務所に是非ご依頼下さい。上記のとおり、これまで商標法が存在しないという状態であったため、商標法の運用開始直後は出願が殺到することが予想されており、他社に貴社の大事な商標を取られないようご留意下さい。なお、ミャンマーはマドリッド協定に未加盟です。また、先願主義が取られております。
5.メキシコ
メキシコにおける現在の商標制度は、産業財産法(1991年制定、最終改正2018年5月18日)およびその施行規則に準拠していますが、2020年7月1日に連邦産業財産保護法が公示され2020年11月5日に施行されることから、同日、産業財産法は廃止されることとなり、以後は産業財産保護法に準拠することとなります。
メキシコでは、文字や図形といった伝統的な商標のほか、ホログラムや音、匂いなどの新しいタイプの商標登録も認められています。一出願一区分制をとっていることから、複数区分にまたがる商標を登録する場合は、区分の数だけ出願が必要となります。また、国籍に関係なく誰であっても商標を出願することができますが、メキシコ非居住者が出願する場合は、メキシコ居住者の代理人を置くことが必要となります。なお、出願の際に使用できる言語はスペイン語です。
出願に際し、必要な情報は、1出願人の名前、国籍および住所、電子メールアドレス、2登録対象となる標章、3指定商品または役務(ニース国際分類に準拠)、4メキシコにおける商標の使用開始日(該当する場合)となり、これらを含む願書や付属書面、申請料納付書などを併せて申請することとなります。なお、出願商標が出願日以前にメキシコ国内で使用されていた場合は、その使用開始日を願書に記載することで先使用を主張できます。商標を申請料は、2,457.79ペソ(付加価値税別)です。産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial)窓口での出願のほか、オンラインによる出願もできます。
商標出願が受付けられると、その受付から10営業日以内(2020年11月5日以降においては10日後以内)に商標公報に公示され、その公開の日から1か月の異議申立期間が設けられます。異議の申立がなく、異議申立期間が満了した場合、実体審査が開始され、拒絶の理由がない場合は登録となります。なお、異議申し立てが為された場合は、実体審査の過程において検討されることとなり、審査が保留されることはありません。また、実体審査において見つかった拒絶理由や異議申し立ては、出願人に送達され、出願人には応答書を提出するために2か月間の期間が与えられます。
登録となった場合は、商標公報にて公示されます。その権利の存続期間は、出願日から 10 年(2020年11月5日以降の出願、登録の場合は、登録日から10年)となり、10 年ごとに更新することができます。更新は期間満了日の前後6か月の間に申請することができ、申請時にはその登録商標の使用宣誓書を併せて提出しなければなりません。また、2018年8月10日以降に登録された商標はその登録から3年目となる日から3か月以内に使用宣誓書を提出しなければならず、この使用宣誓書の提出がない場合は、その登録商標は取消されることとなります。
メキシコはパリ条約やマドリッド協定議定書の締約国でもあります。したがって、パリ条約に基づく優先権を主張した出願や、マドリッド協定議定書に基づく国際商標出願も可能です。
6.バングラデシュ
バングラデシュでの商標に関する事項は、商標法2009年に規定されています。同法の規定に基づき、商標の所有者として登録簿へ有効に登録されることにより、商品又はサービスに関する商標を使用し、当該商標の侵害に関し救済を受ける排他的権利が与えられます。一方で、バングラデシュの特許意匠商標庁は、審査官の人員不足や、審査の電子化の遅れから審査に時間を要し、商標の登録まで2年から3年かかるというのが現状です。商標の出願は、「出願→審査→公告→登録」という流れになっており、商標登録に際して、登録官は出願人に対し商標登録局の印を押した登録証明書を発行します(商標法第20条)。商標登録の期間は7年間ですが、原登録または場合に応じて最新の更新の期間満了日から10年間更新することができます(商標法第22条)。一方、登録商標がバングラデシュにおいて5年間使用されない場合は、不使用を理由とする登録簿からの削除の対象となります(商標法第42条)。なお、バングラデシュはマドリッド協定に未加盟で、マドリッド協定議定書を締結していませんので、マドプロ制度を利用することはできません。また、現在、当局は一時的に、世界中で知られているような商標を除き、外国投資による会社又は個人の商標登録手続きを受け付けていません。
発行 TNY Group |
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【TNYグループおよびTNYグループ各社】 ・TNY Group ・日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所) ・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.) URL:https://www.tny-legal.com/ ・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.) URL:https://www.tny-malaysia.com/ ・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.) ・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.) ・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.) URL:http://www.tny-israel.com/ ・エストニア(TNY Legal Estonia OU) URL:https://estonia.tny-legal.com/ ・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.) https://www.tny-bangladesh.com/ Newsletterの記載内容は2020年9月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。 |