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「 COVID-19 関連の規制状況及び入国規制並びに汚職に関する法規制の概要」 TNY Group Newsletter No.7

 

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

10月に入ってから、首都圏を中心に1日あたり300~700人程度の新規感染者が報告されています。政府によるGo Toキャンペーンとして、Go Toトラベル(旅行代金の補助)、Go Toイート(飲食店でのポイント付与や食事券)、Go To商店街(商店街のイベント等の支援)、Go Toイベント(イベントのチケットの割引・クーポンの付与)が実施され、経済の活性化への取組みが進められています。

(2) 入国規制

8月28日に決定された日本における水際対策措置が現在も有効で、主な措置は以下の通りです。

1 上陸拒否(日本上陸前14日以内に、指定する国・地域に滞在歴のある者等。日本国籍者は対象外)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(法務省)

2 検疫の強化(日本国籍者も対象)

14日以内に、上記1の上陸拒否対象国に滞在歴のある入国者は、PCR検査の実施対象となります。また、全ての地域からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で14日待機し、国内において公共交通機関を使用しないよう要請されます。

水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)(厚生労働省)

3 査証に関する制限(既に発給された査証の効力停止、査証免除措置の停止)

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省)

4 航空機の到着空港の限定等

(3) 国際的な人の往来の再開 (外務省の関連サイト

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域(タイ、ベトナム、豪州、ニュージーランド、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、ブルネイ、韓国、中国、香港、マカオ、モンゴル)との協議を開始し、以下の国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用が開始されています。

1 ビジネストラック

入国後14日間の自宅等待機期間中も行動範囲を限定した形でのビジネス活動を可能とするスキーム

シンガポール、韓国

2 レジデンストラック

入国後14日間の自宅等待機は維持しつつ、双方向の往来を再開するスキーム

タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、ブルネイ、韓国

また、10月1日から、全ての国・地域のビジネス上必要な人材、留学、家族滞在等の在留資格の者について、防疫措置を確約できる受入企業・団体がいることを条件に入国を認めています。

2.タイ

タイのCOVID-19の累計感染者数は3,763名です。この内、3,570名が回復し、現在医療機関で治療中の者は134名となっています。

(1) COVID-19関連の規制状況

10月28日、タイ政府は10月31日までとしていた非常事態宣言を、11月30日までさらに1か月延長することを閣議決定しました。

(2) 日本からタイへの特別航空便

現在、日本からタイ入国のための特別便が準備されています。在東京タイ王国大使館のHPにおいて、随時情報が発表されています。11月の特別便については、13便が特別便として運航を予定しています。

また、11月より新たに、関西国際空港発特別便が4便追加となっています。こちらについては、タイ王国大阪総領事館のHPにおいて情報が発表されています。

この特別便により渡航を希望する者は、入国許可書(COE)をタイ王国大使館に申請する必要があります。

(3) 特別観光ビザ(STV)・観光ビザ(TR)によるタイ入国

特別観光ビザ(STV)と観光ビザ(TR)は、タイ保健省が定めるCOVID-19感染拡大国リストの「低度感染危険国」から入国する者のみ申請可能です。10月22日現在、日本は、「低度感染危険国」に指定されており、当該ビザ所持者によるタイ入国が可能です。こちらについても、在東京タイ王国大使館のHPにおいて、随時情報が発表されています。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

2020年12月31日まで2020年感染予防管規則(感染地域における措置)(第8版)(Prevention and Control of Infectious Diseases (Measures within Infected Local Areas) (No.8) Regulations 2020)が引き続き適用され、以下の行為及び行列が禁止されています。

上記に加えて、 現在、サバ州及びスランゴール州、クアラルンプール及びプトラジャヤの全域において条件付き活動制限令(CMCO)が施行されています。

対象地域内においても事業活動を継続することは可能とされていますが、業種によっては営業時間に制限が課せられています。

移動については、同CMCOの施行を受けて2020年感染予防管規則(感染地域における措置)(第8版)が改正されCMCOの対象地域への出入りが原則として禁止されています。また、対象地域内における地区間の移動も禁止される旨が発表されていますが、被用者は雇用主からの許可証等を提示することで出退勤や業務のために地区間を移動することができるものとされています。

10月30日時点では同CMCOは11月9日まで有効とされていますが、再度の延長の可能性を考慮しておく必要があります。

(2) 入国規制

10月8日より、駐在者の出入国申請等の手続がWebサイト(My Travel Pass)上で行えるようになりました。

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

9月の下旬から一部の業種を除き、原則として事業運営が禁止されていましたが、10月12日より一定の基準を満たすことで事業の再開が認められました。もっとも、基準の詳細が不明確であり、多くのサービス業が現時点においても在宅勤務を行っています。11月8日には5年ぶりの総選挙が予定されており、それまでは厳格な規制が継続され、予定通り投票を実施することを最優先すると思われます。

(2) 入国規制

海外からの入国については、11月30日まで国際旅客機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAが12月から毎週木曜日に日本から貨物便、翌日その折り返し便を商業便として飛ばす予定です。この貨物便が救援機になるか否かについては今後の政府間の協議次第ですが、3便の救援便が見込まれています。

11月の救援便は12日・19日・25日の3便の予定ですが、日本人枠は少ない状況です。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19感染者の増加は鈍化の傾向を見せ始めていますが、10月半ばより新規感染者が増加傾向を見せており、10月26日の週には、チワワ州が、感染リスクを示す連邦政府の信号システムにおいて最大の警戒対象となる赤となりました。ほか、橙19州、黄11州、緑1州となり、橙の州も増えています。なお、連邦政府における新たな規制は見られません。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、10月19日にメキシコ政府合意のもと11月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。なお、10月21日に保健省は、海外旅行をする際の注意事項を通知するとともに、不要不急の海外旅行の自粛を呼びかけました。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

10月に入ってから、1日あたり1000人~1700人程度の新規感染者が報告されております。新規感染者・死亡者ともに、前月と比較するとやや減少傾向にあります。バングラデシュ内務省が発表した9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があります。

第2.各国の汚職に関する法規制の概要

1.日本

(1) 国内の賄賂罪

1 定義

日本では、賄賂の罪について、刑法で収賄罪(刑法第197条~第197条の4)と贈賄罪(刑法第198条)が規定されています。収賄罪は、賄賂を受け取る罪で、主体は公務員(公務員になろうとする者や公務員とみなされる者を含む)です。贈賄罪は、賄賂を贈る罪で、賄賂を贈って便宜を図ってもらう人であれば、民間人でも主体になり得ます。

2 賄賂罪が成立する要件

刑法第197条1項前段に「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」と規定されており、賄賂を受け取らなくても、要求や約束をしただけでも収賄罪が成立します。また、賄賂は金品に限られず、入学のあっせんや飲食の提供など一切の利益が含まれます。賄賂と社交儀礼としての贈与の区別について、私生活において、子供の面倒をみてもらったお礼に、公務員の友人にコーヒーをごちそうするといった行為は、通常「賄賂」にあたりません。

3 罰則規定

賄賂罪が成立した場合、単純な収賄罪の刑罰は「5年以下の懲役」ですが、不正行為をした場合には、加重収賄罪として「1年以上20年以下の懲役」が法定刑になります。賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者について、刑法198条(贈賄罪)は3年以下の懲役又は250万円以下の罰金が法定刑として定められています。

4 その他の規制

会社法第967条では取締役等の贈収賄罪について規定しています。同条1項は取締役等の収賄罪で、「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」が定められ、同条2項では、取締役等に利益を供与し、又はその申込みもしくは約束をした者について、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」を定めています。

さらに、取締役等が、自己若しくは第三者の利益を図り、又は会社に損害を与える目的で、任務に背く行為をし、会社に財産上の損害を与えたときは、取締役等の特別背任罪にあたり、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科」の刑が定められています(同法960条)。役員等の身分がない一般の社員であっても、会社に対して損害を発生させたことを理由に、刑法247条が定める背任罪が成立することがありますので注意が必要です。

(2) 外国公務員贈賄罪

汚職・腐敗は、持続可能な開発にとって大きな障害となり、貧困地域に悪影響を及ぼし、社会の構造を腐食するということから、汚職・腐敗防止は、国際社会にとって重要な課題となっており、国際的な法規制の枠組みのなかで取り組みが進められています。日本は、OECDの国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約を国内で実施するため、不正競争防止法に外国公務員贈賄罪を規定しています。

1 定義

不正競争防止法第18条は「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない」と規定しています。「外国公務員等」とは、国や地方自治体の公務員のみならず、公的な企業の事務に従事する者や、公的国際機関の公務に従事する者なども含まれます。また、現地のエージェントを介して贈賄することも禁止されています。

2 罰則規定

罰則は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、又はこれの併科、法人両罰は3憶円以下の罰金と規定されています。外国公務員等への贈賄は、日本の不正競争防止法違反として罰せられるだけでなく、日本以外の国の法律で処罰される可能性もあります。

(3) 海外の法令の域外適用

米国は、米国の企業等が、米国以外の公務員等に対して賄賂を行うことを禁止する「海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practice Act (FCPA)」を贈賄行為の一部が米国内で行われた場合にも適用しており、日本企業も適用対象となります。

2011年に制定された英国の「贈収賄禁止法(Bribery Act)」は、公務員等に限られず民間企業同士の取引も規制対象になるなど適用範囲が広く、日本企業にも域外適用される可能性がありますので、留意すべき法令です。

2.タイ

(1) 汚職に関する法規制

タイにおける主な法規制として、以下が挙げられます。

1 刑法

公務員に対して、義務に反して職務を行わせ、行わせず、または遅延させるよう仕向けるために、財産またはその他の利益を与え、申込み、もしくは約束した者は、5年以下の懲役、もしくは10万バーツ以下の罰金またはその両方が科されます(144条)

2 汚職防止法

2018年に改正法“Act Supplementing the Constitution Relating to the Prevention and Suppression of Corruption B.E. 2561 (2018)”が施行されています。

(2) 汚職防止法による規制

同法によると、贈賄を行う者の定義が以前の汚職防止法から拡大され、タイ国内で事業を営む外国法人も含まれることになりました。したがって、同法の対象としては、個人、タイ法人、タイで事業を営む外国法人となります。

法人の従業員だけでなく、その代理人、子会社従業員、及び法人のために行動する他の者により、当該法人の利益のために贈賄行為がなされ、後述する内部統制に関するガイドラインについて当該法人が充たしていない場合には、罰則の対象となります。

(3) 内部統制に関するガイドライン

タイの主要な汚職防止執行機関である、国家汚職防止委員会(NACC)が、以下の内部統制に関するガイドラインを制定しています。法人は、以下のガイドラインに従い、適切な内部統制システムを構築、実施していることを証明することで、贈賄の責任を軽減することができます。

(4) 罰則

汚職防止法においても、贈賄を行った個人については、5年以下の懲役、もしくは10万バーツ以下の罰金またはその両方が科されます。法人の場合、発生した損害額または当該法人が得た利益の1倍以上、2倍以下の罰金が科されます。

3.マレーシア

マレーシアにおける汚職に関する法規制の概要

(1) 概要

マレーシアにおいては刑法(Penal Code)が公務員等の収賄罪について定めているほか、2009年マレーシア汚職防止委員会法(Malaysia Anti-Corruption Commission Act 2009)が民間人・民間企業への贈賄を含めた贈収賄全体について広く規制しています。

(2) 2009年マレーシア汚職防止委員会法における贈収賄罪

同法は、A)ある者が何らかの事項について何らかの行為を行い又は行わないこと、若しくはB)公務員がその所属する公的機関にかかわりのある業務について何らかの行為を行い又は行わないことの誘因又は見返りとして、汚職の意図をもって(corruptly)、a)自分自身又は他の人のために、利益(gratification)を要求した、受領した又は受領の同意をした、若しくはb)自分自身又は他の人のために、何人かに利益(gratification)を与えた、与える約束又は申出をした場合には、罰則の適用がある旨を規定しています。

また、同法は、このような一般的・包括的な規定の他に、公務員(officer of a public body)に対する贈賄罪について個別的な禁止規定が置かれています。

(3) 2009年マレーシア汚職防止委員会法における企業の責任

2020年6月1日から、2018年の改正により追加された17a条が施行されています。この17a条は、会社を含む商業団体の関係者が汚職行為を行った場合における当該商業団体及びその取締役等の刑事責任について定めるものであり、今まで曖昧であった法人の責任を明確に定めるものです。

1 同条の適用対象となる商業団体

17a条の対象となる商業団体は、以下のとおりとされています。

2 適用要件

(a) 商業団体の関係者

商業団体の関係者とは、商業団体の取締役、共同経営者又は従業員、若しくは商業団体の委託を受けた者又は商業団体を代理する者を意味するものとされています。ある者が商業団体の委託を受けた者又は商業団体を代理する者に該当するか否かは、その者と商業団体との関係性だけではなく、関連する全ての状況を考慮して決せられます。

(b) 汚職行為

商業団体の関係者が以下の意図をもって賄賂の提供の合意、約束、申出をした場合、その商業団体も違反をしたものとして扱われます。

もっとも、商業団体は、商業団体の関係者のそのような行為を防ぐための適切な手続を備えていたことを証明することで、処罰を免れうるものとされています。この適切な手続の詳細については、マレーシア汚職防止委員会がガイドラインを発行しています。

3 罰則

違反の対象となった賄賂の額又は価値の10倍以上の罰金(違反の対象となった賄賂が金銭的な性質を有するか金銭的に評価できるものの場合)又は100万リンギの罰金のいずれか高い方、又は20年を超えない懲役、若しくはその両方が科されるものとされています。

4.ミャンマー

(1) 定義

ミャンマーにおいても贈収賄を禁止する法令が存在し、その中心となる法律が、2013年から施行された汚職禁止法(以下「本法」という。)です。

本法において、「贈収賄」とは、職務の不正利用、適法行為の不作為、利益供与、または法律に基づく権利の不法な禁止等を目的として、権限を有する者が、自己、第三者、もしくは組織のため、利害関係者から、直接もしくは間接に、賄賂の提供、受領、取得、要求、申込、約束、もしくはその他の手段により賄賂を入手するための協議を意味します。次に、「賄賂」とは、贈収賄を目的として、金銭、財物、贈物、サービス、もしくは娯楽その他の違法な利益を正当な対価を得ることなく受領又は提供することと規定されています。

刑罰は主体によって異なる重さが規定されており、政治家が贈収賄の主体の場合には最も重く15年以下の懲役又は罰金の併科、次いで権限者の場合には10年以下の懲役又は罰金の併科、政治家及び権限者以外の者の場合には7年以下の懲役又は罰金の併科が規定されています。

(2) 汚職禁止法の適用範囲

ミャンマー国内の行為又はミャンマー国民およびミャンマーの永住者が国内若しくは海外において行う行為が適用対象となる旨規定されています。したがって、ミャンマー国内の行為については、行為主体がミャンマー国民であるか外国人であるかにかかわらず処罰対象となる。他方、ミャンマー国外の行為については、ミャンマー国民およびミャンマーの永住者のみが処罰対象となり、外国人の行為については処罰対象外とされます。

(3)その他の法令

汚職禁止法以外の汚職に関する一般的として刑法が存在します。しかし、刑法は収賄に関する処罰のみ規定しており、贈賄に関する処罰規定を有していません。それ以外の特別法としては、商業税法などが特定の場面や特定の者との間における贈収賄行為を処罰する旨規定しています。また、汚職禁止に関する条約の加盟状況について、ミャンマーは、国際連合腐敗防止条約に2005年に署名し、2012年に批准しています。

なお、汚職禁止法上は贈収賄に関する例外は規定されていないものの、2016年4月に大統領府より各省庁に出された指令においては、以下の場合は例外として認められる旨規定されています。

(a) 25,000チャットを超えない贈物(1年間に団体又は個人が100,000チャットを超えて贈物を受領してはならない)

(b) 贈物が公的な役職によるものではなく、家族又は個人的関係に基づく場合(当該贈物は5条の禁止規定に影響を与えない)

(c) ティンジャンやクリスマスなどの特別な日における1年に1回の表敬としての贈物は100,000チャットを超えてはならない

(4) おわりに

以上のとおり、汚職禁止法は贈収賄に関する処罰対象行為を広範に規定しており、ミャンマーにおいても、他の先進国と同様に政府の職員等と接触する際には細心の注意が必要であり、社交的儀礼行為についていかなる範囲の行為が除外されるか等を慎重に見極める必要があります。

5.メキシコ

メキシコにおいて、汚職は連邦刑法(Código Penal Federal)や各州の刑法に規定されており、各州知事や地方議員、地方裁判所の行政官等であっても、連邦レベルの問題に関しては連邦刑法が適用されることとなります。本稿では、連邦刑法(以下、「刑法」という。)について取り上げます。

刑法において、汚職は、無権限行為や不誠実な職務遂行といった「公務における不法行為」、「権限濫用」、公務員等が連帯して、法規制に反する措置を講じて、職務を放棄し(正当な手続きを経たストライキを除く)、あるいは職務執行を妨害するといった「公務員連合」、「職権の違法使用」、自らの利益のために行う恣意的な賦課金(法で定める額よりも高い税や罰金等を要求する行為)である「コンクシオン」、「不正な給与等の支払い」、「脅迫」、「不当な優遇措置」、「贈収賄」、「外国公務員に対する贈収賄」、「公金費消」、「不法な資産形成」が規定されており、公職に就く者、すなわち、連邦行政機関及びメキシコ市行政機関、それらの出先機関、国営企業等の組織や公的信託、メキシコ憲法が独立性を付与した機関、連邦議会、連邦司法機関、経済資源を管理する連邦機関等において、地位を与えられた者もしくは職務や任務を遂行する者の行為を規定しています。

一方、民間における汚職に関する規定は、現在のところありません。しかしながら、民間人であっても、公務員等に対して贈賄を行えば、刑法によって罰せられます。刑法上、賄賂の具体的な定義は規定されておらず、関連条文中に「金銭や利益、贈物」とあることから、行為が該当すれば、どのようなものでも「賄賂」に該当すると考えらます。更に、刑法はメキシコ国内で発生した行為に適用されることから、外国人であっても適用されます。贈賄の場合、賄賂の価値がUMA(Unidad de Medida y Actualización:メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が全国消費者物価指数の結果をもとに毎年発表する、罰金等の単位。2020年の日額は86.88ペソ)日額の500倍以下に相当する場合、3か月以上2年以下の懲役及びUMA日額の30倍以上100倍以下の罰金が、賄賂の価値がUMA日額の500倍超に相当する場合は、2年以上14年以下の懲役及びUMA日額の100倍以上150倍以下の罰金が科されます。

汚職の撲滅はメキシコが長年抱えてきた課題であり、米州腐敗防止条約(1997年5月27日批准)、OECD国際商取引における外国公務員に対する賄賂の防止に関する条約(1999年5月27日批准)、腐敗の防止に関する国際連合条約(2004年7月20日批准)に加盟し、国内法整備が図られています。現政権も汚職対策を大きく掲げており、2019年9月6日に汚職に対する内部・外部通報システムの運用と推奨に関するガイドラインを制定し、贈収賄、公金費消、公的資源の流用についての通報を受け付けるプラットフォームの運営を確立しています。また、2020年10月19日には汚職通報者保護に関するプロトコルを制定し、通報者を保護する体制づくりも始まりました。このように、メキシコでは汚職を防止し、摘発する体制づくりも進められています。

6.バングラデシュ

バングラデシュの汚職は、トランスペアレンシー・インターナショナル(腐敗・汚職に対して取り組むNGO)が公表している腐敗認識数によると180か国中146位と低く、深刻な問題となっています。汚職撲滅を担当する中立的な独立機関として、汚職防止委員会(Anti-Corruption Committee: ACC)が2004年に設立されましたが、政治的な介入を受けて、その機能を十分に果たせていないのが実情です。

(1) 国際的な法的及び制度的な枠組み

バングラデシュは、2007年に「腐敗の防止に関する国連条約」に加盟したほか、2011年には「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」に署名しています。

(2) 国内の法的枠組み

汚職を規制する主要な法律として、刑法、汚職防止法(Prevention of Corruption Act 1947)及びマネーロンダリング防止法(Prevention of Money Laundering Act, 2012)が挙げられ、汚職未遂、恐喝、能動的及び受動的賄賂、外国公務員等の贈収賄等を犯罪と規定しています。

刑法第161条に「公務員である又は公務員であるとみられる者で、公務の実施又は実施を控えること、公務を執行するうえで、特定の者に有利又は不利に見せる又は見せることを控えること、役務又は危害を与える又は与えようとすることに対する報酬として、自身又は他の者に対する、適法な報酬以外の便益を受領、取得、受領に合意、取得に合意した者は、3年以下の懲役もしくは罰金又はその両方に処せられる」と規定されています。

汚職防止法では、「公務員」について刑法の定義に加え、政府により設立された企業や団体、地方自治体、法律に基づいて設立された企業や組織の長、職員、その他関係者も対象に含めています(汚職防止法第2条)。収賄に加えて犯罪的違反行為をした場合は、7年以下の懲役若しくは罰金又はその併科と規定されています(汚職防止法第5条2項)。

公務員規則(Government Servants (Conduct) Rules)の第5条4項には「政府の秘書官又は同等の職員は、

外国政府の機関又は高官若しくはより高位の者から、バングラデシュ国内外で500タカ(現在のレートで620円程度)以下の価値の贈り物を受け取ることができる」と規定されていますが、同法が施行されたのは1979年であり、その後、具体的な金額は示されていません。

 

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