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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに産休・育休に関する法制度の概要」 TNY Group Newsletter No.10

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

2月7日までを対象期間とし、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県を対象に、緊急事態宣言が行われました(首都圏の一都三県は1月8日から、その他の府県は1月14日から)。対象都府県では、新規感染報告が過去最多を記録し続け、医療体制がひっ迫しており、緊急事態宣言の期間延長の可能性が議論されています。

今回の緊急事態宣言は、社会経済活動を幅広く止めるものではなく、具体的には、飲食を伴うものを中心として対策が講じられています。飲食店に対する営業時間短縮要請を行うと共に、外出自粛の要請、テレワークの推進などが行われています。(新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。加えて、検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。(水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は16,221名です。この内、11,287名が回復し、現在医療機関で治療中の者は4,858名となっています。また、非常事態宣言は、2月28日まで延長されています。

1月4日、バンコク都は、午後9時以降のレストランなどでの店内飲食を規制し、テイクアウトのみの提供を可能とする措置を発表しています。

1月6日、タイ政府は、サムットサコーン県、チョンブリ県、ラヨーン県、チャンタブリ県、トラット県の5県を対象として、往来許可証の提示や、検温等をチェックポイントで実施する、移動の制限等の規制を発表しています。

1月21日、バンコク都は、一時閉鎖されていた以下の施設の使用再開を発表しています。

ボードゲーム場、ゲームセンター、インターネットカフェ、高齢者介護施設、競技場(ボクシング場、競馬場等は含まない)、宴会場及び類似の施設、美容施設、フィットネス・ジム、スパ、マッサージ施設、ボウリング場、スケート・ローラーブレード場、類似の遊戯場、ダンス場

(2) 入国許可証(COE)の新登録システム

1月以降のタイ入国に関するCOEの申請について、新しいCOE申請システムが運用されています。手続きの流れは以下のとおりとなります。

  1. ビザ申請(再入国許可をすでに所持している場合は不要)
  2. COE新システムよりCOE申請
  3. COE登録の承認後、医療保険、航空券及びASQホテル予約確認書をオンラインシステムにて登録
  4. COE発行後、オンラインシステムよりCOEをダウンロード
  5. Fit to Fly(英文)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(英文)を用意

3.マレーシア

(1) 入国手続

1 出国前

2 到着時

3 到着後

体温測定、健康状態の結果及び出国前のPCR検査(スワブ検査)結果の有無により、扱いが異なります。

(a) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がある場合

(b) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がない場合

(c) 症状があった場合

(2) 移動制限令

1 はじめに

2021年感染症の予防と管理規則(感染地域内での措置)(移動制限)(No. 2)(PREVENTION AND CONTROL OF INFECTIOUS DISEASES (MEASURES WITHIN INFECTED LOCAL AREAS)(MOVEMENT CONTROL)(NO. 2) REGULATIONS 2021)が1月21日に公布され、同月22日から施行されています。

2 適用対象地域

  本規則は、1月22日から同年2月4日の間、以下の地域を対象に適用されます。

3 移動制限

感染地域内のある場所から別の場所への又はある感染地域から別の感染地域への移動は禁止されています。ただし、(a)の目的のために、(b)の条件を遵守して移動をすることは認められています。

(a) 移動目的

  1. 食品、医薬品、栄養補助食品、又は日用品を購入するため
  2. 食品、医薬品、栄養補助食品、又は日用品を供給又は配達するため
  3. ヘルスケア又は医療サービスを受けるため
  4. (a)及び(c)以外のエッセンシャルサービス提供者から商品を購入する又はサービスを受けるため
  5. 公務、司法上の義務又は権限を与えられた公務員により承認されたその他の義務を遂行するため
  6. エッセンシャルサービスを提供する、又はエッセンシャルサービスに関連する義務を履行するため
  7. 自然災害により影響を受けた人に人道援助を提供するため 又は
  8. 学習機関での学習に参加する、又は学習機関における義務を遂行するため

(b)移動の条件

  1. エッセンシャルサービスの提供者から食品、医薬品、栄養補助食品、日用品、又はその他の商品を購入する場合
  2. 住居から半径10 km以内(半径10km以内に購入できる場所がない場合、最寄りの場所)
  3. 同行者は1名のみ(同居者に限る)
  4. ヘルスケア又は医療サービスを受ける場合
  5. 住居から半径10 km以内(半径10km以内にサービスを受けられる場所がない場合、最寄りの場所)
  6. 同行者は2名まで
  7. 公務又は司法上の義務を遂行する場合

    権限を与えられた公務員からの要求を受けた場合、承認書の作成を受ける

       1 エッセンシャルサービスを提供するため、又はエッセンシャルサービスに関連する義務を遂行する場合

権限を与えられた公務員の要求に応じて、必要な証拠を提供する

  1. ヘルスケア又は医療サービス以外のエッセンシャルサービスを受ける場合

 権限を与えられた公務員の要求に応じて、必要な証拠を提供する

  1. 自然災害により影響を受けた者に人道援助を提供する場合
  2. 権限を与えられた公務員の要求に応じて、必要な証拠を提出する
  3. 関係当局の指示に従い、他の者を同伴することができる
  4. 学習機関での学習に参加するため、又は学習機関での義務を遂行する場合 

   権限のある役員の要求に応じて必要な証拠を提出する

(c) その他

その他に、試験を受けるための移動や特別な理由での移動に対する個別の許可についての定めが置かれています。

4 行列の禁止

行列への参加・関与は禁止されています。

5 集会の禁止

目的を問わず、感染地域内の施設での集会は禁止されています。ただし、関係当局の指示に従うことを条件に、モスク等での宗教活動及び葬儀のための集会は認められています。

6  エッセンシャルサービス

本規則におけるエッセンシャルサービスとは、以下の事業をいうものとされています。

(a) 製造業

(b) サービス業

(c) 建設

(d) 流通取引

(e) 農業生産物

(f) その他

その他保健大臣によって決定された事業

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点のCOVID-19関連の規制としては、30名以上の集会禁止措置(通勤等は除外されます)及びヤンゴン地域における深夜0時から午前4時までの夜間外出禁止措置が維持されています。法令上、工場、店舗、飲食店等においてはガイドラインを順守し、グレードAを取得した場合にのみ操業を再開できるとされているものの、事実上多くの店舗がグレードAを取得しないまま操業を再開するなど、規制の一部は有名無実化しています。徐々に感染者数が減少しており、一時期は公園も封鎖されましたが、1月下旬より一定の時間帯は公園の封鎖が解除されるようになりました。

(2) 入国規制

国際旅客機の着陸禁止措置が続いております。12月下旬より、入国時のホテル隔離期間が15日間に延長されました。2月の日本からの救援便は4日・11日・18日・25日の4便が運航予定です。

(3) クーデター

 2月1日未明に与党NLDの幹部が拘束されました。正午(日本時間)時点において、1年間の非常事態宣言が発令され、国軍出身のミン・スエ副大統領が大統領代理として就任しました。立法・行政・司法の全権がミン・アウン・フライン国軍総司令官に移るとみられます。また、電話回線が遮断されており、空港等も一時的に閉鎖されており、今後の動向を注視する必要があります。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19感染者は、引き続き増加傾向にあり、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)では、1月18日の週には、赤が10州、橙19州、黄2州、緑1州となり、後退する州が多く出ています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、感染が拡大傾向にある州では、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、1月12日にメキシコ政府合意のもと2月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。なお、米国疾病予防センター(CDC)は、1月26日より米国への空路での入国に際し、2歳以上のすべての人に対して、出発前3日以内に実施したウイルス検査の陰性証明を提示することを義務付けています。メキシコへの出入国に際し米国を経由する場合にも適用されます。また、メキシコにおいては、空路による出入国に際し、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ内務省が発表した2020年9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国の産休・育休に関する法制度の概要

1.日本

(1) 産休(産前産後休業)

1 産休期間

労働基準法では、母体の保護の観点から必要な産休を定めています。使用者は、6週間(双子以上の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者を就業させることはできません(第65条(1))。また、使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させることができません(第65条(2))。産後休業は、本人が就業を希望しても与えられなければならない強制休業ですが、産後6週間を経過した女性が請求した場合、医師が支障がないと認めた業務に就かせても差し支えありません(第65条(2但書))。また、産前産後休業期間中及びその後30日間は懲戒理由であっても解雇することはできません(第19条)。

2 労働時間

妊産婦(妊娠中の女性および産後一年を経過しない女性)については、就業時間の制限に関する規定があります。妊産婦から請求があった場合は変形労働時間制であっても週40時間、1日8時間以上の労働をさせてはなりません(第66条(1))。また、36協定を締結していても、時間外労働、休日労働、深夜労働が禁止されています(第66条(2)(3))。使用者は、妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければなりません(第65条(3))。

3 賃金の支払い

産休中の賃金の支払いについては労働基準法の規定はありませんが、産休中の給与が支払われない又は給与の満額が支払われない場合は、健康保険から賃金の3分の2相当額の出産手当金が支給されます(健康保険法第102条)。また、産休中は、事業主の年金事務所への申出により、厚生年金・健康保険料が本人負担分及び事業者負担分がともに免除されます。

(2) 育休(育児休業)

1 育休期間

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育介法」といいます)」により、1歳に満たない子供を養育する男女労働者は、会社に申し出ることにより、子供が1歳になるまでの間で希望する期間、育児のために休業できる旨が定められています(育介法第5条(1))(一定の場合は2年まで延長が可能。後述)。家族などで、事実上、子供の世話が可能な者がいても、関係なく取得することができます。有期契約労働者が育児休業を取得できる要件(育介法第5条(1但書))は以下の通りです。

(a) 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されること

(b) 子供が1歳6か月(2歳までの休業の場合は2歳)に達するまでに労働契約の期間が満了することが明らかでないこと

使用者は、取得の要件を満たす労働者から請求があった場合、育児休業を拒むことはできません(育介法第6条)。また、使用者は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(育介法第10条)。

 子供が1歳に到達した日において当該労働者又は配偶者が育児休業をしている場合で、以下のいずれかに該当する場合は、1歳6か月に達する日まで育児休業をすることができます(育介法第5条(3)、施行規則第6条)(有期契約労働者でその配偶者で子供の1歳到達日において育児休業をしている場合は、上記(a)、(b)のいずれにも該当し、かつ下記(a)、(b)のいずれにも該当していることが必要となります。)。さらに、1歳6か月到達時点において当該労働者又は配偶者が育児休業をしている場合で、これらの事情がある場合は、再度申請することにより2歳到達日まで育児休業を延長することができます(育介法第5条(4)、施行規則第6条の2)。

(a) 保育所に入所を希望し、申込みをしているが、子供が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合

(b) 子の養育を行っている子の親である配偶者で、子供が1歳に達する日後の期間について、常態として当該子供の養育を行う予定であった者が、死亡や健康上の理由により子供の養育が困難になった場合等、一定の事情に該当する場合

育児休業は原則として同一の子について労働者一人につき1回限り取得することができますが(育介法第5条(2))、産後8週間以内の期間内に父親が育児休業を取得した場合は、再度父親が育児休業を取得することができるようになりました(育介法第5条(2括弧書))。

2 賃金の支払い

 雇用保険から「育児休業給付」が支給されます(雇用保険法第61条の7(1))。

3 その他の関連制度

3歳までの子供を養育している労働者が利用できる制度として、短時間勤務制度の義務化(育介法第23条)、所定外労働の免除の義務化(育介法第16条の8)、子供の看護休暇(育介法第16条の2)の拡充などの制度があります。

働き方改革、少子化対策、男性の育児参加の推進などの政府による取り組みや社会の変化に応じて、関連法令の改正が進んでおり、改正に応じた、就業規則の見直しや労働環境の改善が求められます。法令の規定を上回る制度や独自の子育て支援制度を設けている企業も増えており、優秀な人材の確保のために、重要な取り組みのひとつと言えます。

2.タイ

(1) 産休

 労働者保護法(Labor Protection Act)第41条第1項により、1回の出産につき、98日まで産休を取得することができます。出産前の検査のための休暇も、当該産休に含まれます。この産休期間中について、最大45日分まで、労働日と同額の賃金を受け取ることができます(同59条)。

(2) 育休

 タイにおいては、育休についての法制度は存在していません。両親や祖父母に子供を預け、産休後すぐに職場に復帰することも多いようです。会社によっては、育休制度を用意している場合もあるようです。

(3) 社会保険による給付金

 上記法制度とは別に、社会保険による給付金制度が存在しています。

  1. 出産手当

出産前の15か月間に、少なくとも5か月間の社会保険料を支払っている必要があります。

・ 出産一時金:一回の出産につき15,000バーツ(回数制限なし)

・ 産休補償給付金:平均賃金の50%を90日分(2回まで)

・ 妊婦検診費用:以下の通り、5回、合計1,500バーツまで

  妊娠12週目まで  実際に支払った額(上限500バーツ)

  妊娠12週目を超え20周目まで  実際に支払った額(上限300バーツ)

  妊娠20週目を超え28周目まで  実際に支払った額(上限300バーツ)

  妊娠28週目を超え30周目まで  実際に支払った額(上限200バーツ)

  妊娠32週目を超え40周目まで  実際に支払った額(上限200バーツ)

       2. 育児手当

手当の対象となる月の前36か月間に、少なくとも12か月間の社会保険料を支払っている必要があります。

・ 子供1人につき毎月800バーツ(子供の出生から6歳になるまで。同時に3人まで。養子を除く。)

3.マレーシア

(1)出産休暇

 マレーシアの雇用法(Employment Act 1955)は、女性労働者に対して60日間の出産休暇を取得する権利を認めています。

 産休・育休という区分はなく、この60日間の出産休暇を産前・産後にどのように振り分けるかは各労働者に委ねられていますが、原則として、出産の30日よりも前から取り始めることはできず出産後から取り始めることもできないものとされています。

(2) 出産手当

 また雇用法は、

  1 出産の直前9カ月の間に合計90日以上その雇用主に雇用されており、

  2 出産の直前4カ月のいずれかの時点でその雇用主に雇用されていたこと

を条件として、出産休暇の間、女性労働者は雇用主から出産手当を受け取ることができる旨を定めています。出産手当の額は、1日の通常の賃金額又は人的資源大臣が定める計算方法で計算した額のうち有利な方の金額とされています。ただし、その出産の時点で既に5人以上の生存する子どもを有する女性労働者は、出産手当を受給する権利を有しません。

 また、女性労働者は出産予定日の直前60日の間にその雇用主に出産予定日及び出産休暇を開始しようとする日を通知しなければならず、通知を行わないままそのような休暇を開始したときは、雇用主は通知がなされるまで女性労働者に対する出産手当の支払いを留保することができます。

 なお、退職を控えた女性労働者であってその退職の日から4カ月以内に出産することを知っているかそう信じる理由がある者は退職の前にその雇用主に対して妊娠を通知しなければならず、これを行なわなかった場合には女性労働者はその雇用主から出産手当を受給する権利を与えられないものとされています。もっとも、通知を行わなかったことに合理的な理由がある場合等にはこの限りではありません。

(3) 解雇規制

 雇用主は、女性労働者が出産休暇を取得する権利を有する期間中にその女性労働者の雇用契約を終了することはできません(廃業を理由とする終了の場合を除く)。また、女性労働者が妊娠・出産に起因する疾病により業務に適さない旨の登録医療従事者の診断を得て期間満了後も引き続き欠勤をするときは、期間満了後の欠勤が90日間を超えるまでは、その雇用主は当該女性労働者を解雇し、又は解雇の予告を行なうことができないとされています。

(4)適用範囲

 マレーシアの雇用法は本来賃金が一定額(月額RM2,000)以下の労働者等に対してのみ適用されるものとされていますが、上記(1)から(3)で述べた規制は所得に関係なく雇用契約に基づいて勤務する全ての女性労働者に適用されます。

4.ミャンマー

(1) 産休・育休に関する法規制

産休・育休に関しては、社会保障法(Social Security Law)及び休暇及び休日法(Leave and Holidays Act)により規定されています。

(2) 社会保障法(Social Security Law)

社会保障基金(Social Security Board)に加入している被保険者の労働者には、同法が適用されます。

1 産休・育休の期間

拠出期間が12か月間のうち6か月以上の場合、妊娠中の女性は合計14週間(産前6週間、産後8週間)の産休を取得することができます。双子の場合は追加で4週間取得することができ、流産の場合は最大6週間の産休を取得することができます。

一歳未満の子どもを養子に迎えた場合、最大8週間の育休を取得することができます。父親の育休は15日間取得することができます。

拠出期間が12カ月間のうち6か月に満たない場合、妊娠中の女性は合計12週間(産前6週間、産後6週間)の産休を取得することができます。流産の場合は最大6週間の産休を取得することができます。育休は認められません。

2 給付金

拠出期間が12か月間のうち6か月以上の被保険者の労働者の場合、以下の現金給付を社会保障基金から受けることができます。

出産給付金…年間平均賃金の70%

出産費用手当…1人の場合1カ月の平均賃金の50%、双子の場合1カ月の平均賃金の75%、三つ子の場合1カ月の平均賃金の100%

流産の場合…産休の期間の平均賃金の70%

父親の育休給付金…年間平均賃金の70%

父親の育休の出産費用手当…1人の場合1カ月の平均賃金の25%、双子の場合1カ月の平均賃金の37.5%、三つ子の場合1カ月の平均賃金の50%。母親も被保険者である場合、同手当は受け取ることはできません。

医療保障…母親に対する認可を受けた病院又はクリニックでの無償治療。1歳までの子どもの治療

(3) 休暇及び休日法(Leave and Holidays Act)

社会保障基金に加入していない労働者には、同法が適用されます。

 3  産休・育休の期間

休暇及び休日法に基づき、妊娠中の女性は合計14週間(産前6週間、産後8週間)の産休を取得することができます。流産の場合は最大6週間の産休を取得することができます。

父親の育休は認められません。

5.メキシコ

メキシコでは、妊娠した女性は、産前産後各6週間の休暇を取得することができます。また、社会保険庁(Instituto Mexicano del Seguro Social: IMSS)の病院または産業医など使用者が労働者に対して提供する医療サービスの主治医の許可がある場合、当該労働者は、使用者の意向や当該労働者の仕事の性質を考慮し、産前休暇のうち最大4週間を産後休暇に変更することができます。さらに、子どもが何らかの障がいをもって生まれた場合や、入院が必要な場合は、それを証明する診断書を以て産後休暇を最大8週間まで延長することも可能です。この場合の休暇は給与100%が支給される有給休暇となります。

なお、社会保険の被保険者が妊娠した場合、1給付金の支給開始日(出産予定日の42日前)以前12か月の間に30週以上の社会保険料の納付があること、2IMSSの病院が発行する妊娠していること及び出産予定日が記された診断書があること、3給付金対象期間に報酬を伴う仕事を行わないことを条件として、出産予定日の前後42日間、基準給与額(給与額に福利厚生を含めた額/Salario Base de Cotización: SBC)の100%の額の給付金を受け取ることができます。出産日が予定日と異なった場合は、産後42日間については実際の出産日より起算され、これにより出産前の未就業期間が42日間を超える場合は、その超えた期間について、SBCの60%額が支給されます。この給付金を被保険者が受け取ることにより、使用者は、この休暇中の給与を、社会保障法で定められた限度額まで支払う義務を免除されます。

その他、妊娠や出産によって就業が困難な場合には、必要な期間この休暇を延長することが可能です。当該延長期間については、労働者は60日間を超えない期間において給与の50%の額を受け取る権利があります。

また、乳児を養子とした場合、親となる女性労働者は、迎え入れた日の翌日から6週間の有給休暇を取得できます。一方、男性の労働者に対しては、子どもが誕生した場合や養子を迎え入れた場合に5労働日の有給休暇を与えることが使用者の義務として定められています。

なお、 上記のほか、日本のように1歳未満の子を持つ労働者が子の養育のために取得する育児休業を認める法制度はありません。

6.バングラデシュ

(1) 産休期間

労働法にて、産前産後8週間ずつの産休が定められています(労働法第47条(3))。使用者は、産前10週間産後10週間以内の女性の労働者に、重労働や長時間の立ち仕事、健康を害する可能性のある仕事をさせることはできません(労働法第45条(3))。

(2) 出産給付金

出産前に6か月以上勤務している労働者は、産前8週間産後8週間について出産給付金を受ける権利があります(労働法第46条(1))。ただし、既に2人以上の子供がいる場合は、出産給付金支給の対象外です(同条(2))。年次有給休暇および医療休暇は与えられ、更に休暇が必要な場合は、使用者は無給休暇を与えることができます(労働規則第38条)。出産給付金支給の対象となっている労働者は、出産8週間前または産後7日以内に口頭もしくは書面にて使用者に申請しなければならず(同条(1)(2))、出産給付金の申請は、労働規則に様式(Form17、18、19)が提供されています(労働規則第39条)。出産給付金の支給時期について、対象となる労働者の希望に応じて、産前8週間以内である旨の医師による証明書の発行日から3日以内に産前8週間の出産給付金の支給、出産証明書の発行日から3日以内の産後8週間の出産給付金の支給等が可能です(労働法第47条(4))。出産給付金額は、申請があった日の直近3か月の実働賃金をもとに算出され、現金で支給されます(労働法第48条(1)(2))。産前6か月産後8週間以内に、十分な理由なく解雇が通知された場合でも、出産給付金を受ける権利は失われません(労働法第50条)。出産給付金に関する規定に違反した場合は、25,000タカ以下の罰金が科せられます(労働法第286条)。

(3) 育休

バングラデシュでは、育児休業・育児休暇についての規定はありませんが、独自に休暇制度をもうける民間企業もあり、使用者の裁量に任されています。

 

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