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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びにテレワーク導入にあたっての法的留意点」 TNY Group Newsletter No.11

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

2月7日までを対象期間とし、11都府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県、栃木県)を対象に出されていた緊急事態宣言が、栃木県を除き、3月7日まで延長されました。今回の緊急事態宣言は、社会経済活動を幅広く止めるものではなく、具体的には、飲食を伴うものを中心として対策が講じられています。飲食店に対する営業時間短縮要請を行うと共に、外出自粛の要請、テレワークの推進などが行われています。(新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。加えて、検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。(水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は25,692名です。この内、24,542名が回復し、現在医療機関で治療中の者は1,067名となっています。また、非常事態宣言は、2021年3月31日まで延長されています。

 2月22日、タイ政府は、COVID-19の感染拡大を防ぐために、感染状況に応じたゾーニングに関する措置を発表しています。規制の強い順に以下のようなゾーニングとなります。

管理区域:バンコク、ノンタブリ、パトゥムタニ、サムットプラカーン等を含む、合計8都県

高監視区域:カンチャナブリ、チョンブリ、アユタヤ、ラヨーン等を含む、合計14県

監視区域:その他の合計54県

 2月23日、バンコク都は、規制緩和措置を発表しています。この規制緩和措置により、飲食店、フードコート等、午前6時から午後11まで店内での飲食が可能となっています。また、店内でのアルコールの提供も可能となりました。パブやバーなども午後11まで営業可能となっています。

(2) 入国許可証(COE)の新登録システム

 2021年1月以降のタイ入国に関するCOEの申請について、新しいCOE申請システムが運用されています。手続きの流れは以下のとおりとなります。

  1. ビザ申請(再入国許可をすでに所持している場合は不要)
  2. COE新システムよりCOE申請
  3. COE登録の承認後、医療保険、航空券及びASQホテル予約確認書をオンラインシステムにて登録
  4. COE発行後、オンラインシステムよりCOEをダウンロード
  5. Fit to Fly(英文)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(英文)を用意

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

1 移動制限

2月19日から同年3月4日の間、State of Johore、State of Penang、State of Selangor、Federal Territory of Kuala Lumpurを対象に規則に基づき移動制限が定められています。

2 条件付き移動制限

2月19日から3月4日の間、State of Kedah、State of Kelantan、State of Malacca、State of Negeri Sembilan、State of Pahang、State of Perak、State of Sabah、State of Terengganu、Federal Territory of Putrajaya、Federal Territory of Labuanを対象に条件付き移動制限が定められています。

3 移動条件

前記1及び2の規則の対象となる地域は、移動が制限されるため、感染地域内のある場所から別の場所への又はある感染地域から別の感染地域への移動は禁止されます。ただし、以下の場合に定められた条件を遵守して移動をすることは認められています。

  1. 食品、医薬品、栄養補助食品、又は日用品を供給又は配達する場合

権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

       2. ヘルスケア又は医療サービスを受ける場合

住んでいる州内に利用可能なヘルスケア又は医療サービスがなければ一番近い州へ移動することは       認められる

       3. 働く場合

権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

      4. 公務又は司法上の業務を遂行する場合

権限を与えられた公務員からの要求を受けた場合、雇用主からの承認書(authorization letter)を提出すること

      5. 自然災害により影響を受けた人に人道援助を提供する場合

ⅰ.権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

ⅱ.関係当局の指示に従い、他の者を同行させることができる。

      6. 学習機関での学習に参加する、又は学習機関における義務を遂行するため

権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

なお、関係当局の指示に従い居住州内での移動が許可されます。

(2) 入国手続

1 出国前

2 到着時

3 到着後

体温測定、健康状態の結果及び出国前のPCR検査(スワブ検査)結果の有無により、扱いが異なります。

(a) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がある場合

(b) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がない場合

(c) 症状があった場合

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。COVID-19関連の規制ではなく、クーデター関連の規制として、20時から4時の外出禁止令、5名以上の集会禁止、さらには刑法等の複数の法改正がデモや不服従運動の取り締まりのために行われています。

(2) 入国規制

 1月までは救援便に日本人の搭乗枠があったものの、2月に入ってからは19日の便までANA便は欠航となりました。19日及び26日の便は飛ぶことになったものの、18日の成田→ヤンゴン便への日本人の搭乗枠はありませんでした。現在もマレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は今後の日本からの救援便に日本人搭乗枠が認められるか次第となります。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19新規感染確定者数は、2月に入り全国的に減少の傾向に転じ、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、2月15日の週には、赤が前回の13州から2州になるなど、状況は改善の傾向を見せています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、各州において、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、2月19日に3月21日までの延長が発表されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、メキシコにおいては、空路による出入国に際し、体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ内務省が発表した2020年9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国のテレワーク導入に関する法的留意点

1.日本

 厚生労働省では、テレワークの形態として、1在宅勤務(労働者の自宅で業務を行う)、2サテライトオフィス勤務(労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用する)、3モバイル勤務(ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行う)、と分類し、労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働基準関係法令が適用されます。

また、厚生労働省は、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を策定しており、同ガイドラインがテレワーク導入における労働基準関係法令を適用する際の法的留意点を説明しています。

(1) 労働条件の明示

使用者は、労働契約を締結する際、労働者に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければなりません(労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条第1項第1の3号)。労働者に対し、就労の開始時にテレワークを行わせることとする場合には、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示しなければなりません。また、労働契約締結後にテレワークを導入する場合には、労働条件の変更となります。労働条件を変更する場合は、テレワークを導入する際の労働条件を明示し、使用者と労働者の間での個別の合意が必要です(労働契約法第8条)。

なお、使用者は、個別の合意によらなくとも、就業規則に就業の場所を定めており、かつテレワーク導入に関して労働条件である就業の場所が変更される場合には、就業規則の変更により労働条件を変更することが可能です。就業規則を変更する場合、使用者は変更した就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出て(労働基準法第89条第1号)、かつ書面の交付やパソコン等の電子機器の設置による公開などの方法(労働基準法施行規則第52条の2)により就業規則を周知させなければならなりません(労働基準法第106条第1項)。

もっとも、就業規則に就業の場所として「会社、その他会社が指定する場所」というように柔軟に定めていた場合は、テレワークの導入により労働条件が変更されたとはいえないので、就業の場所については個別の合意及び就業規則の変更は不要となります(テレワーク導入に伴い就業の場所以外にも労働条件に変更点がある場合は、個別合意や就業規則の変更が必要となります)。

(2) 労働時間制度

使用者は、適切な労務管理のために、労働時間の管理を行う責任があります。テレワークの導入に伴い始業や終業の時刻の変更が行われることがある場合、労働条件の変更となるため使用者は労働者に変更後の始終業時刻を明示し、両者の間で合意することが必要です。始終業時刻について、就業規則で定めている使用者は、当該変更について就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長へ届出て、労働者に変更後の就業規則を周知させなければなりません。

1 中抜け時間

一定程度労働者が業務から離れる中抜け時間について、使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、当該時間を自由に利用することが保障されている場合、(i) 休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じ、始業時間を繰り上げる又は終業時間を繰り下げる、(ii) 時間単位の年次有給休暇(5日以内に限る)として扱うこと、が可能です。時間単位の年次有給休暇(5日以内に限る)を与える場合には、労使協定の締結が必要です(労働基準法第39条第4項)。

2 通勤時間や出張旅行中の移動時間中のテレワーク

使用者の明示又は黙示の指揮命令下で行われるものについては労働時間に該当します。

3 勤務時間の一部でテレワークを行う際の移動時間

使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じており、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、労働時間に該当します。

4 みなし労働時間制

労働時間の把握ができない場合、みなし労働時間制(労働基準法第38条の2)も利用できますが、以下の要件を満たす必要があります。

 その他、テレワークにおけるフレックスタイム制の活用や、裁量労働制の対象となる労働者のテレワークも可能ですが、使用者は各労働者の労働時間や勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う責務を有します。

5 休憩時間の取り扱い

労働基準法第34条第2項では、原則として休憩時間を労働者に一斉に付与することを規定していますが、テレワークを行う労働者について、労使協定により、一斉付与の原則を適用除外とすることが可能です(労働基準法第34条第2項但書)。また、労使の合意により、これ以外の休憩時間を任意に設定することも可能です(労働契約法第8条)。

6 時間外・休日労働の労働時間管理について

テレワークにおける時間外労働又は休日出勤は、会社における勤務と同様、時間外労働・休日出勤に関する協定(36協定)の締結、届出(労働基準法第36条第1項)及び割増賃金の支払いが必要です(労働基準法第37条第1項)。また、深夜に労働した場合は、深夜労働にかかる割増賃金の支払いが必要です(労働基準法第37条第4項)。

(3) 賃金制度、社内教育の取扱い

 賃金制度について、会社で勤務する労働者と異なる制度を用いるのであれば、その取扱い内容について就業規則を作成又は変更し、届け出なければなりません(労働基準法第89条第2号)。また、テレワークを行う労働者に社内教育や研修制度に関する定めをする場合は、就業規則に規定しなければなりません(労働基準法第89条第7号)。

(4) テレワークで要する通信費・水道光熱費などの費用負担

労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、その事項を就業規則に定めなければなりません(労働基準法第89条第5号)。情報通信機器の費用、通信回線費用、文具や部品等の費用、水道光熱費が考えられます。

(5) 交通費・手当の扱い

交通費や手当について、支給要件が不明確である場合は、テレワークの対象者についても、会社で勤務する労働者と同様に扱う義務(交通費の支給等)を負う可能性があるため、就業規則等で支給要件を明確にする必要があります(労働基準法第89条10号)。

(6) 安全衛生関係法令の適用

労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を講じる必要があります。具体的には、以下のような措置をとり、労働者の健康確保を図ることが重要です。

(7) 自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備

自宅等、テレワークを行う作業場について、部屋の明るさや温度や湿度等、適切な作業環境の確保を図る必要があります。「事務所衛生基準規則」、「労働安全衛生規則」及び「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」等に衛生基準が規定されています。

(8) 労働災害の補償に関する留意点

テレワークを行う労働者については、会社における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負う(労働基準法第75条)ことから、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります(労働者災害補償保険法第3条)。ただし、私的行為等業務以外が原因であるものについては、業務上の災害とは認められません(労働者災害補償保険法第7条参照)。また、通勤災害とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所の往復等を合理的な経路及び方法で行うこと等によって被った負傷等をいい(労働者災害補償保険法第7条第2項)、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務では、通勤災害が認められる場合も考えられます。

(9) 情報セキュリティに関する留意点

会社の外で仕事を行う際には、端末の紛失・盗難、重要情報の盗聴、不正アクセス、外部サービスの利用等、その形態に応じて様々なリスクがあるため、それらリスクについての対策を講じる必要があります。

(10) 参考資料

テレワークモデル就業規則(厚生労働省)

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)

テレワークセキュリティガイドライン第4版(総務省)

作業環境整備のイメージ図(厚生労働省)

2.タイ

 2021年1月、タイ国内のCOVID-19の感染拡大を受け、タイ政府より、民間企業へテレワークを検討するよう要請が発せられています。しかし、具体的にテレワークに関する法令やガイドライン等は発せられておりません。

 従業員との間で締結している雇用契約書において、就業場所を定めている場合には、テレワークを行うことについて従業員から同意を得ておく必要があると解されます。また、タイ労働者保護法(Labor Protection Act)上、雇用契約書で定められた勤務時間を超過した場合には、超過時間分について割増賃金を支払う必要がありますので、テレワーク期間中においても、従業員の勤務時間を適切に管理・把握することが重要です。PC操作ログの確認、勤務開始時、終了時のWeb会議ツールによるミーティングの開催などの方法が考えられます。

 また、テレワーク時のセキュリティ対策についても注意する必要があります。ウィルス対策ソフトが確実に導入・機能しているかについての確認、USBなどの持ち運び可能な記憶媒体の紛失対策の制定、社外からの会社クラウドへのアクセス時の認証設定などの対策をすることが考えられます。

3.マレーシア

マレーシアでは、テレワークの導入に際して労働関係法令の改正はなく、新たなガイドラインも発行されていません。そして、テレワークについてもオフィスで働く場合と同様に労働関係法令は適用されます。

もっとも、MITI(国際貿易産業省)により発表されたプレスリリースとともに出されたFAQによると、テレワークは、それぞれの企業のニーズに沿ったWFH(Work From Home、在宅勤務)のガイドラインに従って実施されると規定されています。このプレスリリース及びFAQは、MITIが管轄する企業・事業所に適用されます。

 マレーシアでは日本のように就業規則を作成・届け出る法令上の義務はありませんが、未然に紛争を防止するため、多くの会社で社内規則をはじめとする就業規則が定められています。テレワークの導入についても、未然に紛争を防止するために必要がある項目は、社内(就業)規則に定めて法的拘束力を生じさせることが望ましいといえます。社内(就業)規則に法的な拘束力を持たせるためには、社内(就業)規則記載の労働条件につき労働者との間で合意が成立していると言えることが必要となるため、雇用契約書において社内(就業)規則記載の労働条件が適用される旨を記載すること、配布などの方法により社内(就業)規則の内容を認識させることが必要となります。具体的に記載する項目として、通信費や光熱費の負担、変更がある場合の始終業時刻、情報通信機器の貸与、情報セキュリティ対策等の事項について明確にしておくことが望ましいと考えられます。

4.ミャンマー

COVID-19に対応した職場環境の整備についてのガイドライン等は発行されていますが、特にテレワークについての法令やガイドライン等は公布されていません。雇用契約書において勤務場所を記載する必要があり、今後は勤務場所について自宅と規定したり使用者が指定できるような記載を行う必要があると解されます。また、ミャンマーでは停電が頻繁に起こり、かつ、自宅にインターネット回線を引いておらず携帯電話のテザリングでインターネットを利用するケースも多いことから、テレワークに適した環境とは言えない状況です。しかし、クーデターに伴うデモの発生により安全の観点等から出勤させないようにしている企業も多く存在します。その場合、在宅勤務を行わせると通常と同じ給与を支給する必要があります。他方、職種によっては自宅では何もさせることがないこともあります。しかし、会社が在宅を命じた場合には原則として全額の給与の支給が必要となります。従業員の同意を得ることにより給与の減額も可能であり、現状が長引く可能性もあることから、長引いても問題ないような措置を検討して行う必要があります。減額の同意については必ず書面で取得するようにして下さい。

5.メキシコ

(1) 立法動向

メキシコにおいては、1月11日にテレワークに関する連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)の改正を内容とする法令が公布され、翌日施行されました。その概要は以下のとおりです。なお、テレワークに関する労働安全衛生の細目を定める規格NOM(Norma Oficial Mexicana、法的拘束力を持つ規格基準)は未制定であり、当該法改正の施行から18か月以内に公布される予定です。

(2) 定義

改正法におけるテレワークの定義は、テレワーク労働者と使用者との間の連絡及び指揮のために主として情報通信の技術を用いて、職場におけるテレワーク労働者の物理的な存在を必要としないように、使用者の事業所以外の場所で有給活動を行うことからなる二次的な業務組織の形態をいうとされています。

テレワークに関する規定は、テレワーク形態の下で労働者の自宅又は労働者が選択した所在地において、時間の四十パーセントを超えて行われる労使関係に適用されるとしています。ただし、時折、または散発的に行われる労働は、テレワークとはみなされません。

(3) 労働条件の書面交付等

労働条件は、契約書面に記載し、各当事者はその写しを保管しなければなりません。その記載事項としては、1当事者の氏名、国籍、年齢、性別、住所、2業務との性質と特徴、3給与の額、支給日、支給場所又は支給形態、4労働者に提供される機器等(安全衛生義務に関する物を含む)、5テレワークに関連し労働者が負担した費用の支払いについて、使用者がテレワーク下の労働者に支払う内容と金額、7当事者間の連絡及び監督の仕組みスケジュール等、7その他当事者が合意する事項になります。

また、テレワークが労働条件の内容となった労働協約について労働者にその写しの交付が求められるほか、労働者に団体交渉等の知識に関する情報共有などが求められます。

(4) 使用者の義務

テレワークにおいては、使用者は次の特別な義務を負います。1コンピュータ機器、人間工学に基づいた椅子、プリンター等のテレワークに必要な機器の提供、設置、メンテナンスの計らい、2適時に仕事を受領し、定められた方法で、定められた期日に賃金を支払うこと、3テレワークを通じた仕事から得られる費用を想定すること、4労働安全衛生に関する規定を遵守して、テレワークで労働者に提供された物品の記録を保管すること、5テレワークで労働者が使用する情報やデータのセキュリティを維持するための仕組みを実施すること、⑥テレワーク労働者の労働終了時のつながらない権を尊重すること、7社会保障制度にテレワーク労働者を登録すること、及び8テレワークにおける労働者の情報技術の適応、学習及び適切な利用を保証するために必要な訓練及び助言の仕組みを確立することなどとされています。

(5) 労働者の義務

 他方、労働者についても、使用者から支給された備品等の管理、テレワークに起因する電力消費量・費用等の報告、職場の安全衛生に関する規定の順守、監督を受ける仕組みや運用体制への留意、データ保護方針等への注意等について義務が定められています。

(6) 労務管理

テレワークを監督するために使用される情報通信技術は、その目的に比例したものでなければならず、テレワークの下で労働者のプライバシーの権利を保証しなければならず、ビデオカメラ及びマイクは、特別な理由で、またはテレワークの様式の下で労働者が行う機能の性質が必要とする場合にのみ、テレワークを監視するために使用することができると限定されています。

6.バングラデシュ

バングラデシュは、縫製業などテレワークが難しい製造業が多く、COVID-19に対応した職場環境の整備についてのガイドライン等は発行されていますが、特にテレワークについての法令は公布されていません。バングラデシュ労働法で定められている就業規則の項目に「労働時間および休暇」が含まれており、テレワークにより労働時間や休暇が変更となる場合は、労働者と合意のうえ、検査官の承認を得て、就業規則を変更する必要があります。テレワークを導入する際の留意点としては、交通費等の手当の支給、光熱費や通信費の負担、情報通信機器の貸与、業務報告等コミュニケーションの方法、情報セキュリティ対策の徹底等について、労働者と協議のうえ、手当や経費について疑義が生じないよう明確化し、適切に労務管理する必要があります。

 

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