「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに競争法(独禁法)に関する法規制の概要」 TNY Group Newsletter No.13
第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制 |
1.日本
4月23日に、東京都、京都府、大阪府、兵庫県を対象として、緊急事態宣言が発出されました。また、まん延防止等重点措置の区域の追加及び期間の変更が決定され、現在、宮城県、沖縄県、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、愛媛県が実施区域に指定されています。緊急事態宣言、まん延防止等重点措置ともに実施期間は5月11日までとなっています。飲食店への休業又は時短要請、商業施設の休業要請、イベントの無観客での実施、在宅勤務の奨励、学校の部活動などの制限・自粛要請など、各都道府県の自治体が措置を講じています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))
(2) 入国規制
1 検疫の強化
(a) 検査証明書の提示
海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。
(b) 誓約書の提出
検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。
(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用
誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。
(d) 新たな水際対策(4月28日)
「新型コロナウイルス変異株流行国・地域」に、新たに以下の3か国・地域を指定されました。
(1) 米国(テネシー州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州)
(2) インド
(3) ペルー
上記3か国・地域からのすべての入国者及び帰国者については、これまでは自宅等で入国後14日間の待機としてきたところですが、今後は、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。その上で、陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の残りの期間を、自宅等で待機することになりました。
2 上陸の拒否
日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。
(新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP))
(新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP))
(3) 国際的な人の往来の再開
政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。
(国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP))
2.タイ
(1) COVID-19関連の規制状況
タイのCOVID-19の累計感染者数は63,570名です。この内、35,394名が回復し、累計死亡者数は188名となっています。また、非常事態宣言は、5月31日まで延長されています。
4月25日、バンコク都は、5月9日までのバンコク都内の施設の一時的閉鎖に関する告示及び、外出時の常時マスク着用を義務付ける告示を発表しています。
1 施設の閉鎖
学校等の教育施設、バーやカラオケ等の娯楽施設、入浴施設、映画館、遊技場、フィットネス場、博物館、美術館、図書館、託児所、介護施設、ムエタイ場、ネイル店、ダンス場、スパ、マッサージ店、貸会議室、公園、スポーツ施設、ゴルフ場、美容室(洗髪、カット、セットのみ可能)等が閉鎖となっています。
2 飲食店、屋台、フードコート等は午後9時まで店内飲食可能、午後11時まで持ち帰り形式での販売可能。
酒類の店内消費は禁止。
ショッピングセンター等は午後9時まで営業可能。
コンビニエンスストア、スーパー等は午後10時まで営業可能。営業開始時間は午前5時以降。
3 外出時は、マスクを着用すること。違反者には、2万バーツ以下の罰金が科されます。
(2) 4月以降のタイ入国後の隔離期間の短縮
3月26日、タイ保健省は、タイ入国後の隔離期間を14日間から10日間に短縮することを発表しています(COVID-19の変異株が確認されている国からの入国者については、隔離期間短縮の対象外)。4月1日以降、Fit to Flyは不要となり、渡航72時間以内発行のPCR検査結果(陰性証明書)のみが必要となります。隔離期間中は、引き続き2度のPCR検査が実施されます。
また、ワクチンパスポート所持者について、以下のとおり発表がなされています。
・タイ到着以前の期間(14日前~3カ月前)にワクチンパスポートを取得、かつ陰性証明書あり
隔離期間7日間、隔離期間中1度のPCR検査実施
・ワクチンパスポートのみ(陰性証明書なし)
隔離期間7日間、隔離期間中2度のPCR検査実施
3.マレーシア
(1) COVID-19関連の規制状況
4月28日のCOVID-19の新規感染者数は、3,142人であり、2か月ぶりに3,000人を上回りました。アクティブ感染者数は2万6,719人で、類型感染者数は40万1,539人となっています。
また、以下の地域の別にMCO(活動制限令)、CMCO(条件付き活動制限令)、RMCO(回復のための活動制限令)が5月17日まで延長される旨の公表がありました。
1 MCO(活動制限令)
クランタン州全域、サバ州のLahad Datu地区(5月8日まで)、ジョホール州のMukim Endau 及び Mukim Triangのみ(5月3日まで)
2 CMCO(条件付き活動制限令)
スランゴール州、ジョホール州(Mukim Endau 及び Mukim Triangを除く)、ペナン州、クアラルンプール、ヌグリ・スンビラン州(スレンバン地区のみ)、ケダ州(クアラ・ムダ地区のみ)、サラワク州、サバ州(一部地域を除く)
3 RMCO(回復のための活動制限令)
ペルリス州、パハン州、トレガンヌ州、マラッカ州、ペラ州、ケダ州(クアラ・ムダ地区を除く)、ヌグリ・スンビラン州(スレンバン地区を除く)プトラジャヤ、ラブアン
4 CMCO及びRMCO対象地域での規制(SOP)
(a) CMCO対象地域
同一のCMCO対象地域内での移動は許可され、異なるCMCO対象地域、MCO及びEMCO対象地域への移動は警察の許可を得れば認められます。また、スランゴール州、クアラルンプール及びプトラジャヤは一つの地域とみなされるため、これらの地区間の移動は認められます。
スーパーマーケット、ショッピングセンター、レストラン、屋台、市場、ガソリンスタンド、ドラッグストアなど深夜12時までの営業が許可されます。ただし、ラマダン期間中は全ての飲食店は午前6時まで営業が許可されます。
(b) RMCO対象地域
州をまたがない同対象地域内の移動は認められ、MCO、CMCO及びEMCO対象地域への移動は警察の許可を得れば認められます。
レストラン等の飲食店、市場、ガソリンスタンド、ドラッグストア等の施設は関係当局の営業許可の範囲内で営業が許可されます。ただし、ラマダン期間中は全ての飲食店は午前6時まで営業が許可されます。
(2) 入国規制
2020年3月18日から、外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能。)。
例外的に入国が許可される外国人のマレーシア入国に際しては、政府指定の隔離センターでの10日間の隔離等、回復のための活動制限令(RMCO)の全ての規定を遵守する必要があるほか、類型毎に以下の条件を満たす必要があります。
1 MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国に際しては、以下の措置をとることが条件となる。
- 出発前の所定のオンラインフォームの提出及びマレーシア入国管理局からの許可受領
- マレーシア到着時のPCR検査結果が陰性であること
- 隔離
- 接触者追跡アプリのダウンロード
※隔離については、マレーシアへの出発前にPCR検査(スワブ検査)を受検し陰性証明を取得した者は7日間、取得していない者は10日間の強制隔離となっています。
2 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者。)に当たっては、マレーシア到着前到着時のPCR検査結果が陰性であること、入国後の隔離等が条件となる。
3 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国に際しては、マレーシア到着時のPCR検査結果が陰性であること、接触者追跡アプリのダウンロード、当局への事前登録等が条件となる。
4 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族(累積感染者数が15万人を超える国(※2020年9月7日時点で15万人以上の国を指し、米国、インド、ブラジル等23か国。なお、日本は含まれていない。)からの渡航者を除く。)は、入管通過直後に必要なビザ申請等を行うことで入国を許可する。
5 永住者は、事前登録申請なしでの入国を許可する。
(3) 変異株の影響による入国規制
この他、4月24日、イスマイル・サブリ上級大臣兼国防大臣は、国防省のツイッター上で、変異株(Variant of Concern、VOC)の流行が確認されている国からの渡航者に対する規制(SOP)を発表しました。
これによると、変異株ウィルスの流行が確認されている国からの入国時の隔離期間は10日から14日になるとのことです。そして、大臣は、世界保健機関(WHO)は、現在、変異株について最初に1南アフリカで報告されたもの、2最初にイギリスで報告されたもの、3最初にブラジル・日本で報告されたものの3種類があると述べています。この規制に関する詳細な情報はまだ発表されていませんが、日本もこの規制対象国に含まれる可能性があります。
4.ミャンマー
(1) COVID-19及びクーデターの規制状況
2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。COVID-19関連の規制ではなく、クーデター関連の規制として、一部の地区へ戒厳令が出されたことに伴う19時~5時の外出禁止令、5名以上の集会禁止等が国軍から出されています。これに対してCRPHからも徴税の半年間停止、電気代支払停止等の法令が出されています。
(2) 入国規制
4月は1日及び22日にANA便が飛びました。5月は13日に救援便が運航予定ですが、現在、CDMの関係で空港で燃料補給が出来ないことやインターネット遮断等の影響から飛行機の就航数が非常に減っています。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は今後の日本からの救援便に日本人搭乗枠が認められるか次第となります。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。
5.メキシコ
メキシコ国内のCOVID-19新規感染確定者数は、全国的に減少の傾向にあり、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週以降、最も深刻な赤を示す州が0州の状態が続いています。また、医療従事者や60代以上の方へのワクチン接種に続き、50代の方へのワクチン接種の事前登録が始まりました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。
(2) 入国規制
メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、5月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、グアテマラ、ベリーズとの国境において3月19日から4月21日の間実施するとしていた陸路での不要不急の移動制限について、政府は、5月21日まで延長することを発表しました。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。
6.バングラデシュ
(1) COVID-19関連の規制状況
バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染再拡大の予防措置として、4月5日からロックダウンの措置を講じており、14日からは更に強い下記の措置が講じられています。5月5日までの措置とされていますが、これまで1週間のロックダウンが、繰り返し延長されており、5日以降も延長の可能性があります。
- すべての政府系機関および政府系機関に準ずるもの、民間の事務所・金融機関は閉鎖される。すべての職員は自らの居所に留まらねばならない。ただし、空港、港。陸の通関施設とその関係の事務所は措置の対象外。
- 最高裁判所は、裁判所についての命令を発出する。
- すべての公共交通機関(道路・水路・鉄道と国内および国際航空便)は停止される。ただし、商品の輸送、生産活動、緊急のサービスのための交通は措置の対象外。
- 工場及び製造業は感染対策を講じた上で営業することができる。ただし、従業員の通勤にあたっては職場が手配した交通手段を用いなければならない。
- 治安、緊急のサービス、例えば肥料・種苗・農薬・農業機器などの農業製品、穀物及び食料品、救援活動、保健サービス、新型コロナウイルスのワクチン接種、電気、水道、ガス、燃料、消防、港湾サービス(陸上、河川、海上)、電話、インターネット(公営・民営を含む)、マスメディア(紙媒体・オンラインを含む)、民間警備、郵便、及びその他の緊急のサービス・物資の供給について、そのための職員と交通は措置の対象外とされる。
- 薬や日用品の購入、医療サービス、遺体の埋葬等の緊急の場合を除き、いかなる場合にも屋外に出てはならない。ただし、ワクチンカードを提示すればワクチン接種のために外出することができる。
- ホテル・レストランその他の飲食店は正午から午後7時まで及び午前0時から午前6時まで、持ち帰りまたはオンラインでのみ営業できる。ショッピングモールなどの商店は閉鎖される。
- 生鮮食料品・生活必需品を扱う店は午前9時から午後3時まで感染対策を講じた上で営業できる。
- ボロ米の収穫のための労働者の交通手段について、関係の県が協力を行う。
- すべての県及び地域の行政機関は本件措置の適切な実施のための対応を行う。治安維持部隊は通常のパトロールを強化する。
- 保健サービス総局の長は県の行政機関及び警察に法的措置を講じるための権利を付与する。
- 感染対策を講じた上でのジュンマとタラビのお祈りのための集会については宗教省が命令を発出する。
- 本件措置の適切な運用のため、各省・局は必要に応じ補完的な措置を講じることができる。
(2) 入国規制
バングラデシュ民間航空局(CAAB)は、4月14日からの1週間、バングラデシュ発着のすべての国際線フライトを運航停止すると発表し、その措置は5月5日まで延長されています。
- バングラデシュ発着の全ての国際旅客便を停止する。
- 措置の対象は、一部の特別許可便を除く商用旅客便で、医療目的や人道支援目的のフライト、貨物便などは今回の規制の対象外。
また、バングラデシュ保健サービス局は、新型コロナウイルスの更なる感染蔓延を防ぐため、「すべてのバングラデシュ入国者(外国人含む)は、政府指定の施設(ホテル含む)にて、費用自己負担で14日間の施設隔離をしなければならない」と発表しました。4月20日時点で政府が指定している施設一覧は、こちらをご確認ください。
第2.各国の独占禁止法(競争法)の概要 |
1.日本
(1) 概要
「独占禁止法(正式名称:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、以下「独禁法」」は、昭和22年7月に施行され、これまで経済や産業構造などの変化に伴って強化・改正されてきました。同法は、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業活動を盛んにし、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としています(独禁法第1条)。独占禁止法を運用するための行政機関として、公正取引委員会が設置されました(独禁法第27条)。
(2) 独占・寡占
1 私的独占の禁止(独禁法第3条、第2条第5項)
事業者が単独又は他の事業者と手を組み、不当な低価格販売、差別価格による販売などの手段を用いて、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為は「排除型私的独占」として禁止されています。また、有力な事業者が、株式の取得、役員の派遣などにより、他の事業者の事業活動に制約を与えて、市場を支配しようとすることも「支配型私的独占」として禁じられています。
また、寡占状態にある産業において、一部の事業者が特に大規模であるなどの理由で、競争が有効に機能していない場合、独占的な状態にあるとして、競争を回復するための措置が命じられることがあります。
(3) カルテル・入札談合
1 不当な取引制限の禁止(独禁法第3条、第2条第6項)
事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決め、競争を制限する行為は「カルテル」として禁止されています。公共工事や物品の公共調達に関する入札の際、入札に参加する事業者たちが事前に相談して、受注事業者や受注金額などを決めてしまう「入札談合」も不当な取引制限のひとつとして禁止されています。
2 国際カルテルへの参加禁止(独禁法第6条)
国内の事業者がカルテルなどを内容として、海外の事業者と国際的協定を結ぶことは禁止されていま す。例えば、国内の事業者と海外の事業者の間でそれぞれの商品をお互いの国に輸出しないという市場 分割カルテルが行われた場合、競争を実質的に制限することになるため、違反行為となります。
3 事業者団体の活動規制(独禁法第8条、第2条第2項)
カルテルは、事業者団体の活動として行われる場合が少なくありません。例えば、事業者団体がその分野における事業者の数を制限して新規参入を認めなかったり、価格の引上げ・数量の制限、取引相手・販売地域の割当てを指示するなど、事業者の自主的な事業活動を不当に制限する行為は禁じられています。
(4) 不公正な取引方法(独禁法第19条、第2条第9項)
「不公正な取引方法」とは、独禁法第2条第9項で定められる行為、及び同項第6号に基づく公正取引委員会の告示により指定される行為(以下、「一般指定」)をいいます。
1 取引拒絶(独禁法第2条第9項第1号、一般指定第1項、第2項)
新規事業者の開業を妨害する目的などで、複数の事業者が共同で特定の事業者との取引を拒絶したり、第三者に特定の事業者との取引を拒絶させたりする行為は禁止されています。また、小売店に販売価格を指示して守らせるなど、事業者が単独で取引拒絶を行うような場合も違法となります。
2 差別対価・差別取扱い(独禁法第2条第9項第2号、同項第6号イ、一般指定第3項、第4項、第5項)
取引先や販売地域によって、商品やサービスの対価に不当に著しい差をつけたり、その他の取引条件で差別することは禁じられています。例えば、有力な事業者が競争相手を排除する目的で、競争相手の取引先に対してのみ廉売をして顧客を奪ったり、競争相手と競合する地域でのみ過剰なダンピングを行ったりするような行為がこれに該当します。
3 不当廉売(独禁法第2条第9項第3号、同項第6号ロ、一般指定第6項)
商品を不当に低い価格で、継続して販売し、他の事業者の事業活動を困難にさせることは禁じられています。ただし、公正な競争手段としての安売り、キズ物・季節商品等の処分等正当な理由がある場合は、違法とはなりません。
4 再販売価格の拘束(独禁法第2条第9項第4号)
指定した価格で販売しない小売業者等に経済上の不利益を課したり、出荷を停止したりするなどして小売業者等に自社の商品を指定した価格で販売させることは、原則として禁止されています。また、指定した価格で販売することを小売業者等と合意して、自社の商品を指定した価格で販売させることも禁じられています。ただし、書籍、雑誌、新聞、音楽用CDなどの著作物については、例外となっています。
5 優越的地位の濫用(独禁法第2条第9項第5号、同項第6号ホ、一般指定第13項)
取引上優越的地位にある事業者が、取引先に対して不当に不利益を与える行為は禁じられています。下請取引で問題が起きる場合が多く、独占禁止法の補完法の「下請法」(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)で規制されています。下請法は、下請代金の支払遅延や減額など、下請事業者に対する親事業者の不当な行為を規制しています。幅広い事業分野における親事業者の禁止行為を明確に定め、下請事業者を守る法律となっています。
6 抱き合わせ販売(一般指定第10項)
商品やサービスを販売する際に、不当に他の商品やサービスを一緒に購入させる行為は、取引の強制に当たりますので禁止されています。
7 排他条件付取引(一般指定第11項)
自社が供給する商品のみを取り扱うことを条件として取引を行うなどにより、不当に競争相手の取引の機会や流通経路を奪ったり、新規参入を妨げるおそれがある場合は、違法となります。
8 拘束条件付取引(独禁法第2条第9項第4号、同項第6号二、一般指定第12項)
取引相手の事業活動を不当に拘束するような条件を付けての取引は禁止されています。販売地域や販売方法などを不当に拘束するような場合がこれに該当します。
9 競争者に対する取引妨害(独禁法第2条第9項第6号ヘ、一般指定第14項)
事業活動に必要な契約の成立を阻止したり、契約不履行へと誘引する行為を行ったりするなどして、競争者の事業活動を不当に妨害することは禁じられています。
10 不当顧客誘引(独禁法第2条第9項第6号ハ、一般指定第8項、第9項)
自社の商品・サービスを虚偽・誇大な表示や広告で不当に顧客を誘引したり、過大な景品を付けて商品を販売したりするようなことは、買い手の適切な商品選択を妨げるため禁止されています。
11 不当高価購入(一般指定第7項)
競争相手を妨害することを目的に、競争相手が必要としている物品(原材料など)を市場価格を著しく上回る価格で購入し、入手困難にさせるような行為は禁じられています。
12 競争会社に対する内部干渉(一般指定第15項)
ある事業者が、競合関係にある会社の株主や役員にその会社の不利益になる行為を行うよう不当に誘引したり、そそのかしたりするようなことは禁じられています。
(5) 届出・報告の義務
会社の株式取得、合併、分割、共同株式移転、事業の譲受けなどによって、競争が実質的に制限されることとなる場合、こうした企業結合は禁止されています(独禁法第9条第1項、第10条第1項、第15条第1項、第15条の2第1項、第15条の3第1項、第16条第1項)。この他、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立、銀行及び保険会社による議決権保有の制限も規制されています(独禁法第11条第1項)。
一定規模以上の会社が株式取得などにより企業結合を行う際、公正取引委員会に届出・報告をする必要があります(外国会社についても同様です。)株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業等の譲受けの届出、一定の会社(一定の総資産を超える会社及びその子会社等)の事業報告・設立の届出が該当します(独禁法第10条第2項、第15条第2項、第15条の2第2項、第15条の3第2項、第16条第2項)。
(6) 公正取引委員会による措置
独占禁止法に違反する行為が行われている疑いがある場合、公正取引委員会は、事業者への立入検査、事 情聴取などを行い、調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められると、違反を行っていた事業者に対して排除措置を採るよう命じています(独禁法第7条第1項、同条第2項、第8条の2第1項ないし第3項、第17条の2第1項、同条第2項、第20条1項、同条第2項)。また、カルテルなどの悪質な行為については、課徴金や刑事罰などの厳しい措置が採られます(独禁法第7条の2、第20条の2ないし第20条の6)。
(7) その他ガイドライン
公正取引委員会では、市場の規模や環境の変化に合わせ、各種ガイドライン等を取りまとめて公表しています。
1 フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン
独占禁止法では、取引の発注者が事業者である場合、下請法では、取引の発注者が資本金 1,000 万円超の法人の事業者である場合、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引には独占禁止法や下請法を広く適用することが可能です。 他方、これらの法律の適用に加えて(又は代わって)、フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上 「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用されます。同ガイドラインでは、フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項(報酬、発注、成果物の取扱い、取引条件等)、仲介事業者が遵守すべき事項、「雇用」に該当する場合の判断基準等について定められています。
事業連携によるイノベーションを成功させるため、スタートアップと連携事業者との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを目的としており、特にNDA(秘密保持契約)、PoC契約(技術検証)、共同研究契約及びライセンス契約の4つの契約において生じる問題事例とその事例に対する独占禁止法上の考え方を整理するとともに、それらの具体的改善の方向として、 問題の背景及び解決の方向性を示したものです。
2.タイ
タイでは、1999年に取引競争法(Trade Competition Act B.E. 2542)が施行され、その後、2017年に改正がなされています(Trade Competition Act B.E. 2560)。取引競争法は、(1)支配的地位の濫用、(2)企業結合、(3)競争制限的行為、(4)不公正な取引方法を規制しています。概要は以下のとおりです。
- 支配的地位の濫用
「支配的地位を有する事業者」とは、以下のいずれかの条件に当てはまる事業者をいいます。
-
- 市場における50%以上のシェア率を有し、前事業年度の売上額が10億バーツ以上の事業者
- 市場シェア上位3社の内の1社であり、上位3社の前事業年度の市場シェア率合計が75%以上であり、当該各事業者の前事業年度の売上額が10億バーツ以上であること
上記条件に当てはまる事業者は、市場における支配的地位を以下の方法で行使することはできません。
- 商品やサービスの仕入れ価格や販売価格を不当に固定または維持すること
- 取引先である他の事業者に対して不当な条件を課すことにより、サービス、生産、物品の購入・販売を制限したり、物品の購入・販売、サービスの受領・提供、他の事業者に債権を求める機会を制限したりすること
- 正当な理由なく、サービスの提供、生産、販売、配送、輸入を停止、削減、制限したり、市場の需要よりも数量を減らす目的で商品を破壊したり、毀損させたりすること
- 正当な理由なく、他人の事業活動に介入すること
- 企業結合
- 取引競争委員会の通知に定められた基準に基づき、市場における競争を実質的に減少させる可能性のある企業結合を行う事業者は、当該企業結合の日から7日以内に、その結果を取引競争委員会に通知しなければなりません(事後届出)。
- 市場において独占を引き起こし、又は結果として支配的な地位を得る可能性のある企業結合を行おうとする事業者は、取引競争委員会の許可を得なければなりません(事前届出)。
ここでの「企業結合」には、以下のものが含まれます。
- 合併
- 他の事業者の方針、事業運営、方向性、経営を支配するために、他の事業者の資産の全部または一部を取得すること
- 他の事業者の政策、経営管理、指揮、管理を統制するために、直接的または間接的に、他の事業者の株式の全部または一部を取得すること
- 競争制限的行為
- 同一市場で競合する事業者は、以下の方法で市場の競争を独占、縮小、制限する行為を共同で行ってはなりません。
- 商品やサービスの価格に影響を与える仕入れ価格や販売価格、取引条件を、直接的にも間接的にも固定すること
- 各事業者が生産、購入、販売、提供する商品やサービスの量を制限すること
- 競売や入札で一方が勝つために、故意に合意や条件を設定すること
- 各事業者が商品やサービスを販売したり、購入したりする地域を割り当てたり、購入者や販売者を割り当てたりすること
- 事業者は、以下の方法で市場の競争を独占、縮小、制限する行為を共同で行ってはなりません。
- 同一市場の競争相手ではない事業者間で、(3)1(a), (b), (d) に規定する条件を設定すること
- 商品またはサービスの品質を、以前に生産、販売、または提供されたものよりも低い状態にすること
- 同一の商品を独占的に販売したり、同一サービスを提供したり、同一種類の商品を独占的に販売する者を指名したり、委託したりすること
- 合意された内容に従うように、商品やサービスの購入や生産に関する条件や行為を設定すること
- 取引委員会の通知に定められたその他の方法で共同契約を結ぶこと
- 同一市場で競合する事業者は、以下の方法で市場の競争を独占、縮小、制限する行為を共同で行ってはなりません。
- 不公正な取引方法
事業者は、次のいずれかの方法により、他の事業者に損害を与える行為をしてはなりません。
-
- 他の事業者の事業活動を不当に阻害すること
- 優良な市場原理や交渉力を不当に利用すること。
- 不当に取引条件を設定し、他者の事業活動を制限または阻止すること
- その他、取引委員会の通知に定める行為を行うこと
- 罰則
取引委員会は、当該行為が違反行為であると信じるに足る証拠を有する場合、当該事業者に対し、当該行為の停止、中止、または修正もしくは変更を命令する権限を有します。また、違反類型毎に、刑事罰、行政罰が規定されています。
3.マレーシア
マレーシアでは、競争法(Competition Act 2010)が2012年1月に施行され、また同法の施行機関である競争委員会について規定した競争委員会法(Competition Commission Act 2010)が2011年1月に施行されています。同委員会は、競争法の考え方を明らかにするためにガイドラインを制定しています。
(1) 反競争的合意
競争法4条は、市場での競争を著しく妨げ、制限し又は歪曲する目的若しくは効果がある限り、企業間の水平的又は垂直的合意は禁止されると定めています。
1 水平的合意
競争法は、以下の目的を有する水平的合意は、市場での競争を著しく妨げ、制限し又は歪曲する目的若しくは効果があるものとみなしています。
- 間接又は直接に売買価格その他取引条件を拘束すること
- 市場又は供給元を分け合うこと
- 生産、市場への販売経路、市場へのアクセス、技術、技術的発展、投資への制限又は支配
- 入札談合行為を行うこと
2 垂直的合意
垂直的な合意については、水平的合意と異なり、みなし規定は置かれていません。
もっとも、競争委員会作成のガイドラインは、反競争的効果が問題となり得る行為として以下の行為を挙げています。
- 再販価格の維持
- 供給品の全て又はほとんどを特定の供給者から購入しなければならない旨を定める合意
- 地理的範囲における独占販売を定める合意
- 顧客の独占的割当を定める合意
- 小売販売網の利用にかかる費用の前払い
3 免責
ある合意が反競争的な合意にあたるとしても、当該合意が以下の要件を充足する場合には、合意の当事者は免責を受けることができます。
- 当該合意が重大かつ確認可能な技術上、効率上又は社会的な便益を直接的に引き起こすこと
- 当該合意が競争を妨げ制限し又は歪曲する効果を有しない限り当該合意の当事者は当該便益を合理的に提供することができないこと
- 競争への有害な影響が便益と均衡していること
- 当該合意商品及びサービスに関する重要な部分についての競争を完全には排除するものではないこと
(2) 支配的地位の濫用
競争法10条は、企業が単独又は共同で支配的地位を濫用することを禁止しており、支配的地位の濫用にあたる行為の例として以下の行為を挙げています。
- 直接又は間接に不公正な購入・販売価格その他の不公正な取引条件を取引相手に課すこと
- 製品、販売経路又は市場へのアクセス、技術開発、投資を制限・支配することにより消費者を害すること
- 特定の企業、グループ、企業部門に対して供給を拒絶すること
- 以下の場合に、他の取引相手との間の取引と同等の取引について異なる条件を適用すること
- 新規参入又は既存の競争相手による拡大若しくは投資を阻害する
- 支配的地位を有する企業よりも効率性の低い既存の競争相手を市場から排除する又は深刻な損害を与える
- 支配的地位を有する企業が参加している市場又はその上流若しくは下流の市場において競争相手を害する
- 契約の主題とは関係のない慣習に基づく又はその性質に基づく付随的な条件についての他方当事者の同意を契約締結の条件とすること
- 競合他社に対する略奪行為
- 合理的な商業的理由を有しないにも拘わらず支配的地位にある企業が、競争相手が必要とする供給が十分ではない中間財又は資源を買い占めること
もっとも、支配的な地位にある企業が、合理的な商業的理由をもって行動することや、競合相手の市場参入又は市場行動に対して合理的な商業的対応措置を講じることは禁止されていません。
また、一般的には、マレーシアにおける関連市場のシェアが60%を超える事業者は、支配的地位を有するとされていますが(支配的地位の濫用に関するガイドライン第2条第2項)、支配的地位の判断にあたっては、市場の参入の容易性等の他の要素も考慮されます(同ガイドライン第2第14項)。
4.ミャンマー
ミャンマーの競争法は、2015年2月に公布され、2017年2月より施行されました。その後、2017年10月に商業省より競争法施行規則が施行されています。2018年10月31日に2018年106号通知で競争委員会が設置されています。競争法は、1競争を制限する行為、2独占、3不公正な競争、4一定の事業間の共同行為を規制しており、概要は以下のとおりです。
(1) 目的及び定義
本法は、公平な競争を排除することを目的とした経済活動組織による独占又は価格操作によって生じる不公平を防ぎ消費者を保護すること、国内外の取引及び経済発展における不公平な競争を規制すること、市場での支配的な立場を利用した独占の防止等を目的としています。本法における「競争」とは、商品及びサービスについて、より多くの顧客、シェア及び市場での影響力を獲得するための経済活動における競争であると定義されています。また、「経済活動」とは、製造、分配、購入、販売、輸入、輸出及び交換等の事業又はサービスと定義されており、事業全般が対象に含まれることとなります。
(2) 競争を制限する行為
「競争を制限する行為」は、市場における経済活動組織の競争を減少又は阻害することを目的とした行為であり、競争を制限する合意、市場での支配的立場の濫用及び独占が含まれると定義されています。具体的には競争を制限する合意、支配的立場の利用等が禁止されています。但し、消費者の利益を意図したと認められる一定の場合には、期限を特定した上で例外として認められることがあります。
(3) 独占
市場を独占するとして、以下の行為等が禁止されています。
- 商品の購入価格、販売価格又はサービス料を規制すること
- 価格統制を目的とした製造またはサービスの制限、購入又は販売過程における機会の制限、事業者が強制的に遵守しなければならない規制を直接的又は間接的に定めること
(4) 不公正な競争
「不公正な競争」とは、国家又は経済活動組織の利益、消費者の利益及び法的に付与されている権利を侵害又は侵害しうる競争を意味すると定義されています。具体的には消費者の混乱を生じさせる行為及び企業秘密の漏洩行為等が禁止されています。
(5) 事業間の共同行為
事業間の共同行為として、事業間の合併、買収、合弁等が規定されています。当該共同行為自体は禁止されないものの、「一定期間、市場での影響力を高める共同行為」及び「独占的又は寡占的な市場を得るために競争を低下させる共同行為」は原則として禁止されています。また、共同行為の市場シェアが競争委員会によって制限されている市場シェアを超えた場合にも、共同行為は認められません。
5.メキシコ
メキシコの独占禁止法(競争法)は、2014年に施行された経済競争に関する連邦法(Ley Federal de Competencia Económica:以下、競争法)となります。競争法の概要は次の通りです。
(1) 目的及び定義
競争法の目的は、自由な市場へのアクセスと経済競争を促進、保護、保証すること、ならびに独占や独占的慣行、競争や市場の効率的な運営の制限を厳しく罰し、排除することにあります。
(2) 管轄機関
管轄機関は、連邦競争委員会(COFECE: Comisión Federal de Competencia Económica)と連邦電気通信機関(IFETEL: Instituto Federal de Telecomunicaciones)の2つが存在します。
連邦電気通信機関が電気通信及び放送分野を担い、連邦競争委員会がそれ以外の分野を担当しています。
(3) 制限される行為
競争法において、特に重要となる制限される行為は、絶対的独占行為、相対的独占行為や企業結合が挙げられます。
1 絶対的独占行為
絶対的独占行為は、競争事業者間で、提供する商品やサービスの供給や価格を共同で取り決め、それを操作することや、政府が行う調達において事前にそれらを取り決める行為(入札談合)や、これらの行為に関する情報交換を行う行為を指します。絶対的独占行為に該当する行為は違法であり、無効となります。絶対的独占的行為を行った場合、事業者の収入の10%に相当する額の罰金が命じられる可能性があります。
2 相対的独占行為
相対的独占行為は、市場を支配する企業がその力を使用して、他者が参入するのを不適切に防止したり、競合する人を排除したりして、価格の上昇や商品やサービスの供給の減少を招く行為を指します。具体的には、競合していない主体間での流通の制限や、抱合せ販売などの条件を課すこと、特定の他者に対する取引の拒絶、特定の事業者からの商品やサービスの取得を拒否するよう勧誘すること、同等の条件にある異なる買い手や売り手に対して、異なる価格や売買条件を設定すること、不可欠な施設や材料の取引拒否又は制限、マージンスクイーズ(川上における利鞘の縮小のことを指し、一つまたは複数の事業者が提供する必要不可欠な供給物の入手価格と、同事業者が同じ供給物を使って生産し、最終消費者に提供する商品またはサービスの価格との間の、既存のマージンを削減すること)などがあります。相対的独占行為に該当する行為は違法ではありますが、無効とはなりません。ただし、相対的独占行為を行った場合、事業者の収入の8%に相当する額の罰金が科される可能性があります。
3 企業結合
企業結合とは、合併、支配権の取得その他の企業等が競争事業者等と合体する一切の行為と広く定義されており、企業結合が企業再編などグループ企業間で行われる場合といった一部の例外を除き、次の基準を満たす場合に届出を行い事前に承認を得ることとされています。
(a) 対象となる取引の価値がUMA※日額の1800万倍超
(b) UMA日額の1800万倍超の資産又は売上を有する当事会社の資産又は株式の35%以上の取得
(c) UMA日額の840万倍超の資産又は資本金を取得する場合であって、2つ以上の当事会社が単独又は合算でUMA日額4800万倍超の資産又は売上を有すること。
なお、これらの基準に該当しない場合であっても、自主的な通知を行うことが求められています。
管轄機関は、市場環境への影響を評価し、競争や自由な参入を害さないことを確認し、当該企業結合を認可、条件付、または不認可にする権限が与えられています。
※UMAとは、Unidad de Medida y Actualizaciónという、メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が全国消費者物価指数の結果をもとに毎年発表する経済的基準単位であり、2021年の日額は89.62ペソです。
6.バングラデシュ
バングラデシュでは、バングラデシュ競争委員会(Bangladesh Competition Commission (BCC))が設立された後、競争法(Competition Act)が2012年に施行されました。
(1) 競争法の規制の概要
1 反競争的合意の禁止
直接的又は間接的に、市場における競争に悪影響を及ぼす、もしくは及ぼすおそれがある、又は、市場において独占若しくは寡占を引き起こす商品・役務の生産、供給、流通、保管又は取得に関する合意又は共謀をしてはならないと規定されています(第15条第1項)。ただし、以下を制限しません(同条第4項)。
- 知的財産法に基づいて付与された知的財産権の侵害を制限する又は保護するために、合理的な条件を課すための権利、及び
- 契約がもっぱら商品の生産、供給、流通若しくは管理、又は、輸出のためのサービスの提供に関連する範囲で、バングラデシュから商品を輸出するための権利
合意や,同一の若しくは類似した商品の取引又は役務の提供に従事する者又は団体の商慣行又は決定が以下に該当する場合には、市場における競争に悪影響を及ぼすとみなされます(同条第2項)。
- 直接的又は間接的に、正常ではない購入価格又は販売価格の決定をする場合、又は、入札談合を含む不正な価格を決定する場合
- 生産、供給、市場、技術開発、投資又は役務の提供を制限又は操作する場合
- 商品・役務の種類、原産地又は役務の提供元、市場の地理的領域,市場の顧客数又はその他類似の基準に基づいて市場を分割する場合
以下の取決め及び合意が競争に悪影響を及ぼす場合には,反競争的合意とみなされます(同条第3項)。
- 抱き合わせ販売 (同項(a))
商品の購入者に、購入の条件として、他の商品を購入すること、又は、販売者、他者若しくは関係する事業者から利益を得ることを要求する契約又は約束すること
2. 排他的供給契約 (同項(b))
取引の過程で購入者が販売者の商品以外の商品を取得すること又はその他の方法で取引することを何らかの方法で制限する契約
3. 排他的販売契約 (同項(c))
商品の産出若しくは供給を制限、制約若しくは保留すること、又は、商品の処分若しくは販売のために地域若しくは市場を割り当てる契約
4. 取引拒絶 (同項(d))
商品の販売者、購入者又はそれらの集団を何らかの方法で制約する契約
5. 再販売価格維持 (同項(e))
販売者が規定する価格よりも低い価格が設定される場合があることが明確に述べられていない限り、購入者が再販売時に設定する価格を販売者が規定する価格とする条件で商品を販売する契約
2 支配的地位の濫用の禁止
事業者はその支配的地位を濫用してはならないと規定されています(第16条第1項)。「支配的地位」とは,関連市場で事業者が有する強固な立場を意味し、(a) 関連市場において有力な競争圧力から独立して事業を展開すること、(b) 競争事業者、消費者又は関連市場に対し、自社に有利な影響を及ぼすことと定義されています。
以下に該当する場合は、支配的地位の濫用とみなされます(第16条第2項)。
- 商品・役務の購入・販売において、直接的又は間接的に、不公正若しくは差別的な条件を課す場合又は差別的な価格若しくは略奪的な価格を課す場合 (同項(a))。なお、「略奪的な価格」は、競争を排除することを目的として、商品の販売又は役務の提供を原価より安価で提供することと定義されています。
- 商品の生産、役務の提供、関連市場、又は、商品・役務に関連する技術的・科学的な開発を制限又は制約し、消費者の利益を損なう場合 (同項(b))
- 他者が市場にアクセスできないようにする又はし続ける場合 (同項(c))
- 本来的又は商業的利用により契約の主題とは関係のない追加的義務を他の当事者が受け入れることを条件として、契約を締結する場合 (同項(d))、又は
- ある関連市場での支配的な地位を利用して、他の関連市場に参入又は他の関連市場を保護する場合 (同項(e))
3 企業結合規制
商品又は役務市場における競争に悪影響を及ぼす又は及ぼすおそれのある企業結合は禁止されています。ただし、委員会は、審査実施後の申請に基づき,競争に悪影響を及ぼさない又は及ぼすおそれがない企業結合を承認することができ、企業結合審査規則にて、委員会の承認が必要とされる企業結合の要因が規定されます(第21条第1項)。他方で,委員会がいかなる企業結合も競争に悪影響を及ぼす又は及ぼすおそれがあると認めれば,委員会は当該企業結合を承認してはならないと定められています(同条第2項)。
(2) 罰則
委員会は、必要に応じて調査を行い、反競争的合意又は支配的地位の濫用を認める場合、それらをやめることを命令すること、及び/又は行政制裁金を課すことができます(第20条)。委員会の命令により不利益を受けた者は、不服申立てにより、再調査又は上訴を求めることができます(第29条)。
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