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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに不動産法制度の概要」 TNY Group Newsletter No.15

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点で沖縄県に緊急事態宣言が実施されており、7月11日までが実施期間となっています。また、まん延防止等重点措置は、埼玉県、千葉県、神奈川県、北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県で7月11日までを対象に実施されています。飲食店への休業又は時短要請、酒類提供の制限、イベントの収容率及び人数制限、テレワークの推進など、各都道府県の自治体が措置を講じるほか、ワクチン接種の円滑化・加速化の取り組みが進められています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

(e) 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

インド、ネパール、パキスタン、モルディブ、スリランカ及びアフガニスタン(6月1日に追加)の6か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。また、これらの国からの在留資格保持者の再入国は原則拒否されます。

インドネシア、ウガンダ、マレーシア、英国、エジプト、バングラデシュの5か国からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で6日間待機し、入国後3日目及び6日目に改めて検査を受けることになります。

以下の国又は地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)当面待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。

アイルランド、オランダ、ギリシャ、フランス、ヨルダン、カザフスタン、チュニジア、デンマーク、タイ、ベルギー、ラトビア、アラブ首長国連邦、エストニア、キルギス、スウェーデン、ブラジル、ペルー、ポルトガル、南アフリカ共和国、スペイン、ナイジェリア、フィリピン、ベトナム、アメリカ合衆国(16州)、ロシア(モスクワ市、モスクワ州、サンクトペテルブルク市)、カナダ(オンタリオ州)、スイス、ルクセンブルク

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連規制

6月中旬以降、1日あたりの新たな感染者数は、連日3000人を超えています。このような状況をうけて、タイ政府は、6月27日、バンコク都とバンコク近郊県において、規制を最強化することを決定し、この規制の再強化は28日より実施されています。

 再強化された規制の概要は、下記ととおりです。

(2) 入国規制

 5月1日以降の運用に特段変更はなく、タイ入国後の隔離期間については、入国許可証(COE)を取得した者は、14日間以上の隔離期間が義務付けられています。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連規制

 6月28日の新規感染者数は、5,218 人でした。ムヒディン首相は、6月27日、翌28日に期限を迎える予定だったFMCO(完全ロックダウン)を解除せず延長すると発表しました。このFMCOは、新規感染者数及びワクチン接種率を基準に、段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。政府の発表では、新規感染者数が4000人以下となり、ICUの治療人数が減り、ワクチン接種率が国民の10%を超えた場合において、一段階規制を緩和するとしていました。

 なお、FMCOが施行された6月1日から、必要不可欠なサービスとして指定されたものを除き全ての社会・経済活動は許可されません。また、州・地区間の移動は原則禁止されています。

(2) 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発3日前にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19の陽性者数が増加傾向にあり、病院の稼働状況もCDMの関係でまだ完全に元通りにはなっていないことから感染予防対策が重要です。

クーデターと関連して、政府関連施設での爆発事件が増加しており、外出時には注意する必要があります。

(2) 入国規制

 6月は3日及び24日のANA便が飛びました。7月は8日及び22日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週以降、最も深刻な赤を示す州が0州の状態が続いていますが、信号色が緑から黄色、黄色から橙へと後退する州もいくつか見られます。ワクチン接種は、6月27日時点で43,912,990回の接種が行われ、30,078,813人の人が少なくとも1回の接種を終えたとされています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、7月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染が再拡大していることを受け、6月27日に新たな行動規制を発表しました。今回内閣府が発表した行動規制は、7月1日午前6時までの期間が対象で、報道によると、それ以降は更に厳しい行動規制が実施される予定です。今回発表された7月1日までの行動規制の主な内容は以下の通りです。

  1. リキシャや物資を輸送する車両を除く、すべての公共交通機関を全国で停止する。法執行機関は、定期的なパトロールを通じてこれを徹底する。
  2. すべてのショッピングモール、マーケット、観光地、リゾート、コミュニティセンター、娯楽施設等の営業は停止される。
  3. レストランは、デリバリーやテイクアウトのみの営業とし、営業時間は午前8時から午後8時までとする。
  4. 政府や非政府機関は、必要な数の職員が出勤できるよう交通手段を提供すること。
  5. マスク着用の啓発活動を徹底させ、必要であれば法的措置を取ることもできる。

(2) 入国規制

 6月1日、バングラデシュ民間航空局(CAAB)は、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置として、渡航や入国規制について発表しました。主要な発表内容は、下記の通りです。なお、グループAやBに属する具体的な国名など、詳細については( https://www.immi.gov.bd/docs/caab_circular_4June21.pdf )をご参照ください。

  1. グループAに属する国(インドやマレーシアなどの計11か国)へのバングラデシュからの出国、グループAの国からのバングラデシュ入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(ベルギーやデンマークなどの計8か国)へのバングラデシュからの出国、グループBの国からのダッカへの渡航は認められる。ただし、入国後、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。

第2.各国の不動産法制度の概要

1.日本

日本では、土地・建物共に外国人の不動産所有が認められており、所有権の期限は無く、自由に売買することができ、贈与、相続させることも可能です。今国会で土地利用を規制する法案が可決成立しましたが、安全保障関連施設周辺の土地を対象としており、一般的な不動産に関する外資規制としては、1925年に定められた外国人土地法が外資の土地取得を政令で制限できると規定しているものの、現在、政令による指定はなく、同法以外に一般的な不動産に関する外資の土地取得規制はありません。

不動産取引に関する法律は、土地の利用、建物の建築、不動産会社に対する規制、土地や建物に対する権利、売買や賃貸借の契約、不動産登記等の目的によって複数の異なる法律が運用されており、日本の法人や個人と同様に外国法人や個人にも適用されます。今回は、ビジネス及び生活においても関わる機会のある不動産の売買や賃貸借の契約に関する法律についてご紹介します。

(1) 民法

民法では、契約の成立要件や手付け、瑕疵担保責任など、契約の基本的な考え方が規定されており、契約内容について、当事者間で争いがあった場合や事前の取り決めがない場合には、原則として民法に基づき解決することになります。日本では、民法176条より、所有権の移転は、当事者の意思表示のみにより効力を生じます。したがって、当事者間での売買契約等の意思表示の合致のみで所有権は売主から買主へ移転します。もっとも、民法177条より、所有者が所有権を第三者に対抗するためには、不動産登記法等に基づき登記をすることが必要です。

(2) 借地借家法

民法では、契約関係にある当事者同士が対等・公平であることが原則とされていますが、賃借人保護等の観点から、土地(建物の所有を目的とするもの)及び建物の賃貸借契約に関して、民法の規定に優先して適用される法律です。借地借家法には、法の規定と異なる当事者間の合意で賃借人に不利なものは無効になり、借地借家法の規定が適用される条項(強行規定)も含まれています。

1 借地権[1]の存続期間及び更新

 借地権の存続期間は30年で、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間となります(借地借家法3条)。当事者が借地契約を更新する場合において、その期間は更新の日から10年で(借地権の設定後の最初の更新の場合は20年)、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間となります(借地借家法4条)。(a) 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者[2]が契約の更新を請求したとき、及び、(b) 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するとき、(a)(b)ともに建物がある場合に限り、4条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法5条1項2項)。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りではありません(同条1項但書)。これに対し、借地権設定者は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当な事由があると認められる場合でなければ、異議を述べることができません(借地借家法6条)。

2 借地権の対抗力

 借地権は、その登記がなくても、借地権者が、土地の上に登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができると規定されており(借地借家法10条1項)、仮に土地の所有権が第三者に移転した場合でも、借地権者が、その土地上に、登記されている建物を所有している場合は、借地権について対抗することができます。

3 建物の賃貸借契約の期間や更新・終了

 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、更新を希望しない当事者は、期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨を通知しなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。また、建物の賃貸人が賃貸借の解約の申し入れをした場合、建物の賃貸借は、当該申し入れの日から6か月を経過することによって終了します(借地借家法27条1項)。建物の賃貸人による更新をしない旨の通知又は解約の申し入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができません(借地借家法28条)。

4 建物賃貸借の対抗力

建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力が生じます(借地借家法31条)。例えば、建物の所有権が第三者に移転する前に、当該建物に居住している者は、当該第三者に対して、賃貸借について登記がなくても、その賃借権について対抗することができます。

(3) 宅地建物取引業法

宅地建物取引業法は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的としています(宅地建物取引業法1条)。

宅地建物取引業者が自ら売り主となる売買契約について、消費者保護の観点から、民法の規定にかかわらず、契約内容の一部に制限を加えるなどの規制があります。具体的には、手付金や違約金等の金額の制限、瑕疵担保責任に関する制限が設けられており、これらの制限に違反する契約条項は無効となります。一方、賃貸借契約の内容に関しては、宅地建物取引業法に特別な規制はありません。

1 違約金の制限等

宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2をこえることとなる定めをすることはできません(宅地建物取引業法38条1項)。

2 手付の額の制限等

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができません(宅地建物取引業法39条1項)。

3 担保責任についての特約の制限

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法566条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をすることはできません(宅地建物取引業法40条)。

(4) 消費者契約法

消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(消費者契約法1条)。

事業者の不適切な行為の結果、消費者が誤認、困惑したまま契約を締結した場合は、その契約を取り消すことができる、など、不動産の売買や賃貸借の契約を含む一般的な消費者契約について定めており、契約内容に消費者の権利を不当に害する条項がある場合には、その契約条項を無効とすることなどが規定されています。

2.タイ

(1)主な関連法

 不動産に関する法律としては、主なものとして土地法(Land Code B.E.2497)、投資奨励法(Investment Promotion Act B.E.2520)、タイ工業団地法(Industrial Estate Authority of Thailand Act B.E. 2522)、民商法典(Commercial and Civil Code B.E.2535)及びコンドミニアム法(Condominium Act B.E.2522) などが存在します。

(2)不動産の所有権に関する登記制度など

私人も土地及び建物を所有することができます。民商法典上、「不動産」とは、土地及び建物の定着物または土地と一体のもの、とされています(民商法典100条)。土地と建物は、別々の不動産として、取引することが可能です。しかしながら、登記制度自体は、土地についてのみ存在し、建物についての登記制度は存在しません。つまり、土地については土地局で登記を行い、土地の完全な所有権を証する証書として、権原証書(Title Deed)を発行してもらうことが可能であるものの、建物については登記制度がなく、土地の権原証書のように、所有権を証する証書などの書類は存在しません。もっとも、建物の譲渡は、売買契約を土地局に登記することにより行います。このため、対象となる建物について、過去に登記された売買契約書を土地局で確認することにより、その所有者の確認を行うことが一般的です。また、建物が過去に譲渡されていない場合には、当該建物を建築した際の「建築許可証」が、所有権を証する書類として用いられています。

(3) 外資規制

 外国人(タイ国外における法人と、登録資本金のうち外国資本49%を超えるタイで登記された法人を含む)は、原則として土地を所有することができません(土地法第86条)。もっとも、投資奨励法やタイ工業団地法などで、一定の要件を満たす場合には、外国人であっても土地を所有することが認められています。

 建物については、外国人も特に制限なく所有することが認められています。しかし、コンドミニアムについては、各ユニットの区分所有権を取得することになり、コンドミニアムの各ユニットについての所有権のみでなく、その建物の敷地を含めた共用部分についても所有権を取得することになるため、外国人が所有できるコンドミニアムの区分所有の割合は、全ての区分の49%まで、と定められています(コンドミニアム法19条Bis)。

(4) 不動産の賃貸借

 民商法典上、土地や建物の賃貸借期間は、原則として最長30年とされており、さらに30年の更新を定めることは可能です(民商法典540条)。商業または工業用の不動産については、商工業用不動産賃貸法(Act on Lease Immovable Property for Commercial and Industrial Purposes, B.E.2542)に基づき、一定の条件を充足した場合に、最長50年の賃貸借が可能となりますが、同制度は手続きが煩雑となるためか、実務上はあまり利用されていません。

3.マレーシア

(1) 適用法令

 憲法(Malaysian Federal Constitution)上、不動産に関する事項については州政府の管轄下に置かれ、不動産法制の統一性を確保するため、連邦法が定められています。具体的には、国家土地法(National Land Code 1965)、区分所有権法(Strata Titles Act 1985)、土地取得法(Land Acquisition Act 1960)等があります。ただし、東マレーシアを構成するサバ州とサラワク州については連邦法である国家土地法等は適用されず、独自の州法が適用されます。

(2) 外資規制

国家土地法及び首相府傘下の経済企画庁(Economic Planning Unit:EPU)発行によるガイドラインにより規制されています。国家土地法により、全ての外国会社及び非マレーシア市民は、不動産取得に際して、事前に州当局への承認を取得しなければなりません。またEPUのガイドラインにより規定された類型に該当する場合にはEPUの承認も必要となります。

(3) 所有権

 土地の所有権は州政府に帰属し、私人の土地に関する権利は州政府から譲渡を受けることにより生じ、取引の対象となります。譲渡の形態としては、99年を超えない期間に限り譲渡を行なうリースホールド(Leasehold)及び永久的に譲渡を行なうフリーホールド(Freehold)とがあります。いずれの場合も土地に対する排他的支配権を取得することとなります。

土地の譲渡に際しては、通常、地代(土地の固定資産税に相当)の支払、利用形態の制限といった条件や制限が課されます。リースホールドの形態により譲渡された土地は、期間の延長がされない限り、期間満了時に州政府に復帰することとなります。

土地には、一般に、農業用地、工業用地、商業用地、住宅用地と使用目的が設定され、権利簿に記載されており、一定の場合に使用目的を変更することは可能です。

 また、建物は土地の一部を構成すると考えられていることから、原則として独立した売買取引・登記の対象とはなりません。

(4) 区分所有制度

区分所有権法による区分所有(Strata Title)制度が存在します。同法により、1つの土地上の2階以上の建物は複数の区分に分譲することが可能となります。この区分所有制度により、個々のユニット(コンドミニアムの各部屋)に区分所有権が認められます。

区分所有権法によれば、コンドミニアムの個々のユニットは購入者に所有権が認められ、このユニットの所有権をStrata Titleといいます。そして、ユニット所有者は、Strata Titleにより自身の所有権を証明することができます。Strata Titleは土地所有者/開発者が土地事務所に対して、分譲(Subdivision)の申請を行い、承認されれば発行されます。

もっとも、マレーシアでは実務上、土地所有者/開発者の分譲申請手続の遅れ、又は土地事務所の発行手続の遅れを理由にユニット購入者へのStrata Titleが未発行であることは少なくありません。Strata Titleが発行されていない場合、登記簿上では開発者又は土地所有者がコンドミニアム全体について所有権を有しており、ユニット所有者には登記簿上の所有権は認められません。改正区分所有権法では、このようなユニット所有者の権利が不安定な状況を改善するため分譲申請手続の期間を短縮する等の改正が行われました。

4.ミャンマー

(1) 主な関連法

不動産法制における主要な法律としては、不動産譲渡制限法(The Transfer of Immoveable Property Restriction Act、1987)、登記法(The Registration Act, 1908)、投資法(The Myanmar Investment Law, 2016)、コンドミニアム法(The Condominium Law, 2016)等が存在します。

(2) 不動産の所有権に関する規制

 憲法上、国家は、国内のすべての土地の所有者である旨規定されています(憲法37条1項)。したがって、個人または会社に土地の所有権は認められていません。

 しかし、国は自由土地保有地(freehold land)、許可地(permit land)、宗教許可地(religious grant land)等の使用を認めています。土地の種類に応じて、期限の定めなく使用が認められていたり、90年、60年等の形で使用権の期限が規定されている土地も存在します。この場合、原則として使用権の期間は更新されることとなっています。かかる土地の使用権は、所有権とは異なるものの、賃借権とも異なるため、実務上かかる権利を所有権と称して取引がなされています。

不動産には、土地、建物、その他土地または土地に付着した物から生じる利益が含まれると定義されています(登記法2条6項)。ミャンマーでは、日本と異なり、原則として建物は独立した不動産所有権が認められるものではなく、土地の付着物として扱われ、原則として土地の所有者と建物の所有者は同一に帰します。例外として、コンドミニアム法上のコンドミニアムについては区分所有権の登記が認められ、かつ、外国人であっても40%を超えない範囲で取得することが認められます。もっとも、コンドミニアム法の適用を受ける物件は現時点ではごくわずかです。

その上で、外国会社または外国人は売買、贈与、質、交換または譲渡のいずれの方法によっても不動産を取得することはできないと規定されています。

なお、不動産譲渡制限法においては、外国会社はミャンマー国民によって管理もしくは支配されていない会社もしくはパートナーシップ、または過半数の株式もしくは持分がミャンマー国民に保有されていない会社もしくはパートナーシップと定義されています。しかし、実務上は、会社法上のミャンマー会社の定義を満たす必要があります。

なお、ミャンマーにおいても日本と同様に土地の種類が規定されており、農地、森林地、空地・休閑地・未開墾地、それら以外の土地が存在し、それら以外の土地上においてのみ商業ビルの建設が認められます。

(3) 不動産の賃貸借に関する規制

不動産の賃貸借に関し、外国人または外国会社に対して1年を超える賃借権は認められない旨規定されています。

例外として、投資法に基づく投資許可またはエンドースメントを取得した場合、外国会社であっても、最大50年の土地賃借が認められ、10年の延長が2回まで認められます。

また、経済特区において事業を行う場合には、経済特区法に基づき、最大50年の賃借が認められ、更に25年の延長が認められます。なお、土地の転貸借、譲渡担保権設定、交換又は譲渡を行う場合、管理委員会の許可を得る必要があります。

上記規制の関係上、長期の賃借が必要となる製造業、ホテル業などの事業においては投資法または経済特区法の活用を検討することとなります。

5.メキシコ

(1) 不動産法制度

メキシコにおける不動産の概念や売買、登記などの原則は連邦民法(Código Civil Federal)に規定されており、本稿ではその概略をご紹介します。なお、細目については州によって異なる場合もありえますので、ご留意ください。

1 不動産の考え方

日本においては建物と土地は別の不動産とされていますが、メキシコにおいては、建物は土地の一部とされています。そのため、基本的には、土地の所有者が、土地上の建物の所有者になります。

ただし、建物の一部を住戸ごとに購入することも可能です。つまり、登記(Registro Público de la Propiedad: RPP)された土地上の建物を区分ごとに分割することができ、このような分割も登記が可能となります。この建物の一区分の所有者は、他の区分の所有者の同意を要せずに、所有する区分を譲渡や担保に供することができます。

2 不動産取得手続の概要

不動産取得に際し売買契約を締結する際には、公証人に売買契約公正証書の作成を依頼し、その公正証書に署名後、その謄本をもって登記を行うこととなります。なお、取得金額がUMA日額(Unidad de Medida y Actualización、2021年度の日額は89.62ペソ)の365倍の額より小さい場合は、登記を省略することも可能です。なお、不動産登記簿はその不動産の所在地を管轄する登記所において第三者も閲覧可能です。閲覧の際は、その不動産の住所もしくは区画や街区、地籍コードもしくは以前の登録証(謄本または原本)などが必要となります。

また、後述のとおり、外国人がメキシコの土地を取得しようとする場合は、事前に外務省から許可を受ける必要があります。

(2) 不動産取得にあたっての外資規制

憲法(Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)および外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)によって、外国人や外国資本の企業による不動産取得に制限が設けられています。

1 所有権取得

メキシコにおいては、外国人は、(a)その財産に関してメキシコ国民と同等の扱いを受けること、(b)(a)に関して自国政府の保護を求めないこと、(c)これに違反した場合には当該権利等をメキシコ国に没収されることに同意することや、(d)外務省の許可を得ることを条件に、土地の所有権を取得することができます。また、法人の場合には、(a)乃至(c)を定款に含めることが求められます。

ただし、国境から100キロメートル、海岸から50キロメートルの範囲の制限区域内においては、外国人は土地を直接所有することができません。

なお、メキシコで設立されたメキシコ法人であっても、外国人排除条項(直接もしくは間接的にパートナーもしくは株主として外国人もしくは外国資本が参入する法人を受け入れないとする条項)を有せず、上記(a)乃至(c)の条項のみを有する法人の場合は、制限区域外の土地のほか、制限区域内の土地については居住以外の目的でのみ取得は可能となりますが、購入後60営業日以内に外務省に届出を行わなければなりません。

2 信託(Fideicomiso)

前述の通り、制限区域内の土地の所有については制限があるものの、所有以外の方法で使用・収益する権利を取得することは可能です。具体的には、Fideicomisoという信託形式によって、制限区域内の土地の使用収益権を取得する方法であり、外国人排除条項のないメキシコ法人あるいは外国人または外国法人が受益者、銀行が受託者となり、銀行が制限区域内に所在する不動産の管理を受託することになります。

この信託により、使用、賃貸などの収益、抵当に充てるなどの処分、相続や贈与も可能となります。信託期間は最大50年とされていますが、更新をすることも可能です。

6.バングラデシュ

(1) 不動産の所有

バングラデシュでは、個人の土地・不動産の所有権が認められています。外国人の不動産取得については、憲法や関連する法令で特に規制されていませんが、実務において、政府からの許可等を求められることも多く、法令上、明示的に認められていないことから、外国人による不動産の取得は困難といえます。例えば、バングラデシュ首都整備庁(RAJUK)は、その所有する不動産賃借権を外国人に売却することを禁止しているため、外国人は、RAJUKが所有する土地区画に係る賃借権を取得することはできません。RAJUKは、ダッカ大都市圏の計画と開発管理について責任を負う組織で、中央政府によって指名された委員長及び5人の委員による委員会によって管理されています。

一方、外資企業による不動産の購入は制限されていません。輸出加工区(EPZ)の場合は購入できませんが、長期(30年間)使用権を獲得することができます。

(2) 不動産業への外資規制

不動産業への外資参入について、特別な許認可制度はありませんが、土地登記簿の信用性が低いことなどから、権利関係を明らかにするために時間を要するなど事業を実施するうえでの課題はあります。

(3) 不動産関連の法令

1 1882年財産移転法

不動産又は動産の移転、不動産の売却、不動産の抵当及び税金、不動産の賃貸、交換、贈与等について規定しています。

2 1950 年国家収用及び賃借法

バングラデシュの土地における賃借者の利益及びその他の特定の利益の国家による収用について定め、かかる収用後に国家の下で保持される賃借及びその他の関連事項について規定しています。

 

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  1. 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう(借地借家法2条1号)。「地上権」とは、他人の所有している土地を、工作物等を所有するため使用する権利(民法265条)。土地の所有者の許諾がなくても、原則的に、貸与、建物の売却や担保の設定が可能。

  2. 借地権を有する者をいう(借地借家法2条2号)。