「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに株式譲渡手続きの概要」 TNY Group Newsletter No.22
第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制 |
1.日本
現在、以下の期間・区域において、まん延防止等重点措置が実施されています。
1月9日から2月20日まで: 広島県、山口県、沖縄県
1月21日から2月13日まで: 群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、岐阜県、愛知県、三重県、香川県、長崎県、熊本県、宮崎県
1月27日から2月20日まで: 北海道、青森県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、石川県、長野県、静岡県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、岡山県、福岡県、佐賀県、大分県、鹿児島県
感染拡大防止のための取り組みとして、各都道府県の知事の判断による、飲食店等に対する制限(時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。
1.2 入国規制
オミクロン株対応の水際対策措置として、「特段の事情」がある場合を除く、全ての国・地域からの外国人の新規入国の停止が、2月末までの間、継続されています。
(1) 検疫の強化
「オミクロン株(B.1.1.529系統の変異株)に対する指定国・地域」、「水際対策上特に対応すべき変異株等に対する指定国・地域」、「水際対策上特に対応すべき変異株以外の新型コロナウイルスに対する指定国・地域」として、それぞれ措置を講じていますので、日本入国に当たっては、出発する国がどの指定国・地域に該当するか確認したうえで対応する必要があります。
(参考サイト)
外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について
厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について
出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について
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2.タイ
2.1 COVID-19関連の規制状況
タイのCOVID-19の累計感染者数は2,415,472名です。この内、2,309,648名が回復し、累計死亡者数は22,129名となっています。1月に入ってからオミクロン株の感染が拡大しておりますが、新規感染者は1日7千人程度で推移している状況です。
タイ政府は、1月21日、管理区域の再指定を行っています。バンコク都を含む26都県は、引き続き「ブルーゾーン」に指定されています。バーや娯楽施設については営業が認められておりません。イエローゾーン、ブルーゾーンは、飲食店でのアルコールの提供について、認証を受けた施設は午後11時までの提供が認められています。
2.2 入国規制
タイ政府は、2月1日(火)午前9時より、隔離免除でのタイ入国(Test and Go)を再開することを発表しています。従前の手続きと同様、Thailand Passにより登録を行う必要があります。
タイ入国後のPCR検査について、以前はタイ到着日の1回の検査のみでしたが、今後は、タイ入国後5日目にも、指定場所にてPCR検査を行う必要があります。
1日目:タイ到着後、政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。
陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。
5日目:政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。
陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。
(参考サイト)
在タイ日本国大使館HP:Test and Goによるタイ入国手続き登録再開のお知らせ
3.マレーシア
3.1 COVID-19関連規制
1月27日の新規感染者数は、5,439人であり、ピーク時の4分の1程度となっています。現在は、オミクロン株の感染者数を他の東南アジア諸国に比べ抑えられていますが、これから流行していくとみられています。
新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限であるNRP(National Recovery Plan(これまではFMCOと呼ばれていました))では、全ての州が一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。
3.2 入国規制
外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下①~⑤に該当する場合の入国を許可しています。
- MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
- 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
- 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
- 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
- 永住者の入国
- ランカウイ島へのトラベルバブル制度を利用した入国
- 目的を限定とした14日以内の短期商用(潜在的な投資家・既存の投資家・ビジネス顧客・技術者)での入国
すべての渡航者は、出発前2日以内にPCR検査(スワブ検体)を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。隔離期間は、ブースター接種済みの成人又は単独で渡航する若年者(12歳から17歳)は5日間、ブースター未接種のワクチン接種完了者は7日間、ワクチン接種未完了者は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。
4.ミャンマー
4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況
COVID-19 の陽性率は落ち着いてきています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらず、日常化している印象を受けます。
4.2 入国規制
1月は 6日、20日にANA 便が飛びました。2月は 3 日、17 日に救援便が運航予定です。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。
5.メキシコ
1月に入りメキシコのCOVID-19感染者は急増し、1月19日には一日の新規感染者数が60,552人を記録しました。リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)も後退を見せ、1月24日の週は、赤が1州、橙が9週、黄色が10州、緑が12州となり、日系企業も多いアグアスカリエンテス州はこれまでの黄色から赤に変更されました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられており、マスクの着用などの要請は継続されています。
5.2 入国規制
メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。
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6.バングラデシュ
バングラデシュでは新規感染者数が急増しており、1月26日の政府発表によると、新たに確認された感染者数は15,517人で、検査陽性率も31.64%と相当に高く、一部の病院ではCOVID-19用の病床稼働率が高い水準になっている模様です。
2022年1月13日付で、住居の外でのマスク着用、レストランでの飲食やホテル滞在及び教育機関への入構にあたってワクチン接種証明書を提示すること、鉄道、バス、船舶は定員の半分で運行すること、社会的、政治的、宗教的行事又は集会の停止、などの行動規制が発表されました。
1月21日付の行動規制では、2月6日までの教育機関の閉鎖、100名以上の集会の禁止かつ参加者は必ず新型コロナウイルスワクチン接種証明書と24時間以内のPCR陰性証明書を持参しなければならないこと、政府や民間オフィス、工場において、従業員は新型コロナウイルスワクチン接種証明書を取得しなければならないこと、などが定められています。
さらに、1月23日、以下を含む新たな行動規制が発表されました。
全ての政府系機関及び民間事務所は、感染予防規則を遵守し、半数の従業員により営業しなければならない。その他の従業員は自らの居所に留まり、オンラインで、業務を遂行する。
6.2 入国規制
現在、日本からの渡航者については、隔離が免除されていますが、入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗前48時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明の提示が求められます。また、政府より、1月13日から有効となる行動規制に「外国からの旅行者を含め全ての者は新型コロナウィルスワクチン接種証明書を必ず提示しなければならず、迅速抗原検査を受検しなければならない」が含まれますが、13日以降に入国した日本人渡航者によりますと、実際には、ワクチン接種証明書の提示も抗原検査の受検も求められていないようです。
7.フィリピン
7.1 COVID-19関連の規制状況
フィリピンの COVID-19 感染者は累計349万3447人で、死者数は累計53,736人です(2022年1月27日現在)。新規感染者は2021年9月初旬をピークとして減少傾向にありましたが、同年の年末以降急激に増加し、2022年1月18日をピークとして、現在は1日約2万人前後の新規感染者が報告されています。
1月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル3」とされています。フェイス・シールド使用に関する規則によると、現時点で警戒レベル3以下の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。
7.2 入国規制
- フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「グリーン」国(管轄区域・地域)に該当します。2022年1月16日以降、グリーン国から入国する場合は出国前48時間以内に受検したPCR検査の陰性結果が必要です。詳細は以下のとおりです。
- 完全にワクチン接種した、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果を提示する渡航者は、到着後、検疫所指定の施設における強制的検疫隔離の対象とはならない。ただし、到着日を初日として、7日目までセルフ・モニタリングを行う必要がある。
- ワクチン接種を受けていない、部分的にワクチン接種を受けた、またはワクチン接種状況の有効性、信憑性が検証・確認できないが、出発国出発前48時間以内の陰性のRT-PCR検査結果を提示する渡航者は、到着日を初日として、5日目に行われるRT-PCR検査の陰性結果を受けるまで検疫所指定の施設における検疫隔離を受ける必要がある。その後、到着日を初日として、14日目までセルフ・モニタリングを行う必要がある。
- 出発国出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果は2022年1月19日午前0時1分まで有効とみなされる(グリーン国・イエロー国・レッド国共通)。
- 上記の影響を受けないIATF決議第154-C号のすべての規定は、引き続き有効である(グリーン国・イエロー国・レッド国共通)。
- また、フィリピン政府は、フィリピンに入国する渡航者の検査・検疫規則の変更を決定し、2022年2月16日以降、フィリピンに入国するすべての外国人については、完全なワクチン接種の証明を入国の要件とすることとしました。
7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制
2022年1月7日、日本において新たな水際対策措置が決定され、フィリピンからのすべての入国者及び帰国者は、1月10日午前0時(日本時間)から、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で3日間待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになっています。
第2.各国の株式譲渡手続の概要 |
1.日本
株式譲渡について、主に会社法にて定められています。
(1) 株式譲渡にあたって確認すべき事項
- 株券発行会社であるか
株券発行会社であるか株券不発行会社であるかによって、株式譲渡の方法および対抗要件が異なるため、事前に確認する必要があります。株券発行会社で、実際に株券を発行していない会社もありますので、注意が必要です。株券発行会社か否かについては、登記簿謄本で確認することができます。
2. 株式に譲渡制限があるか
株主は株式を譲渡することができますが(会社法第127条)、譲渡制限がある場合、会社の承認が必要です。
(2) 株式譲渡の手続き
- 株式譲渡承認の請求
前述の通り、譲渡制限株式の譲渡については、会社から承認を得なければなりません。譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法第136条)。また、譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法第137条1項)。
2. 株式譲渡の承認にかかわる決議
譲渡制限株式の譲渡を承認するか否かの決定をするには、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会(取締役会設置会社の場合は、取締役会)の決議によらなければなりません(会社法第139条1項)。また、株式会社は、譲渡等承認請求をした者に決定の内容を通知しなければなりません(会社法第139条2項)。
株式会社が、譲渡制限株式の譲渡を承認しない旨の決定をした場合で、承認請求者から「不承認時に会社または指定買取人が買い取る請求」を受けた会社は、次のいずれかで、当該譲渡制限株式を買い取らなければなりません。(i) 会社が買い取る(会社法第140条1項)、(ii) 指定買取人が買い取る(対象株式の全部又は一部を買い取る者)(会社法第140条4項)、(iii) 指定買取人が一部を買い取り、残りを会社が買い取る(同項)。
3. 株式譲渡契約の締結
譲渡の当事者間で譲渡契約を締結します。譲渡契約は法律にて義務づけられていませんが、特に株券が発行されない場合は、株式の売買を確実なものにするために、株式譲渡契約を締結するのが一般的です。
4. 代金決済
譲渡契約に基づき、譲渡対価の支払いをします。株券発行会社の株式の譲渡の場合は、譲渡人から譲受人に株券を交付します。当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じません(会社法第128条1項)。
5. 株式名義書換請求
原則として、譲受人と譲渡人が共同で(株券発行会社の場合は、株券を提示すれば譲受人単独でも可能です(会社法施行規則第22条2項1号))、会社に対して株主名簿を書き換えるように請求し(会社法第133条1項2項)、会社は請求に基づき、株主名簿を書き換えます。
株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができませんので(会社法第130条1項)、株主名簿の書換えの手続きを行う必要があります。株券発行会社の場合、株券の交付が会社以外の第三者に対する対抗要件となり、名簿の書換えが会社に対する対抗要件となります(会社法第130条2項)。
6. 株主名簿記載事項証明書の交付請求
譲受人は会社に対して、株主名簿記載事項証明書を交付するよう請求することができ、会社は請求に基づき、譲受人に株主名簿記載事項証明書を交付します(会社法第122条1項)。
(3) その他の留意点
株式の売却時について、譲渡所得が出た場合には、譲渡所得税がかかります。株式を取得した側については、原則として税金は発生しませんが、相続税に該当するとみなされる場合や、「時価」と乖離した価格で譲渡された場合等は、税務上の対応が必要となります。
2.タイ
タイにおける株式譲渡手続等については、民商法典(Civil and Commercial Code, CCC)にて定められています。
- 株券の発行
タイにおいては、会社は株主に株券を交付しなければならないとされており、全ての株券には少なくとも取締役の1名が署名し、会社印が押印されている必要があります。また、会社名称、株式番号、1株当たりの価格、株主名等が記載されている必要があります(CCC第1127条、1128条)。
2. 株主名簿
株主名簿は、会社登記日以降、会社の登記住所にて備え付けておく必要があります(CCC第1139条)。この株主名簿には、株主の氏名、住所、株券番号、払込額、株主登録年月日、株主が抹消された場合にはその抹消年月日等を記載する必要があります(CCC第1138条)。
3. 株式譲渡手続き
タイにおいては、定款にて株式譲渡制限を定めている場合等を除き、原則自由に株式を譲渡することができます。しかし株式譲渡については書面で行われる必要があり、当該書面には譲渡人及び譲受人それぞれが署名し、1人以上の証人による署名が必要となります。また、当該株式譲渡は、譲渡の事実、譲受人の氏名及び住所が、会社備付の株主名簿に記載されるまで、会社及び第三者に対して対抗することができません(CCC第1129条)。
4. 株主リストの登録
少なくとも毎年1回、定時株主総会後14日以内に、当該総会時の株主名簿のリストをDBD(商務省)に登録する必要があります(CCC第1139条)。このDBDに登録されている株主リストが、BOJ5(Bor Or Jor 5)と呼ばれるものです。ただ、このBOJ5は最新の株主を証明するものではなく、あくまでも会社備付の株主名簿に記載されている株主が、最新の株主を証明するものとなります。
3.マレーシア
マレーシアにおける株式譲渡は、会社法(Companies Act 2016)によって規定されています。
(1) 譲渡制限
非公開会社においては、株式の譲渡は制限されています(42条(3))。しかし、同項は、非公開会社は株式の譲渡を制限しなければならないとの規定を置くのみであり、制限の内容(譲渡の承認を行う機関)について具体的な規定を置いていません。
そのため、株式譲渡の条件・手続については、定款で規定する必要があることになます。
マレーシアの非公開会社においては、定款が株式譲渡の要件・手続について具体的な規定を置いていないことがあり、このような場合には株式を取得する際に必要な手続や満たすべき要件が不明確となり後の紛争の要因になることもあります。小規模な会社で、大多数の株主(このような場合、株主が取締役も兼ねていると思われます)の同意が取得できる場合には、株主総会決議や取締役会決議を得ることでリスクを回避できる場合が多くあります。決議が取得できないような事情が存在する場合には、後日発生しうるリスクについて慎重に検討する必要があります。
マレーシアの研究者や弁護士が執筆した文献においては、譲渡制限の例として、以下のものが挙げられています。
- 株主が株式の譲渡を希望する場合、最初に既存の株主に申込をしなければならない。
- 株式譲渡については、取締役(又は株主)の決定に従う。
- 株式の譲渡は、特定の者(創業者等)にのみ行うことができる。
- 株式譲渡の方式
- 株式を譲渡する場合、譲渡証書を作成し、法令に従った印紙税を納めた上で会社に提出する必要があります(105条(1))。また、株券が発行されている場合は、株券も一緒に提出しなければなりません(98条(2))。
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4.ミャンマー
株式譲渡手続きについては、買い手との間で株式譲渡の条件について合意すれば、法的手続きとしては非公開会社の場合には対象会社の取締役会による承認を行った上でMyCO (Myanmar Companies Online) で株主変更を行うことで可能です。申請から承認までの期間は通常は数日であり、オンラインでの申請となります。株式譲渡契約書はMyCOとの関係では不要ですが、株式譲渡後の対象会社の権利義務関係や株式譲渡の対価などで紛争が生じるのを避けるため、実務上は株式譲渡契約書を作成の上締結することが一般的です。
5.メキシコ
(1) 株式譲渡の流れ
メキシコにおける株式会社であるSociedad Anónimaにおける株式譲渡手続をご紹介します。
株式譲渡にあたっては、株式譲渡契約書の締結、株主総会決議(必要な場合)、取締役会決議(必要な場合)、株主間の株券引渡し、株主名簿の書換え、その他関係省庁への届出などの手続を行う必要があります。
(2) 株式譲渡契約書の締結
メキシコの法律上、株式譲渡にあたって、株式譲渡契約書の作成は義務付けられていません。しかし、権利義務を明確にするためにも、対象株式、譲渡金額、支払期日、譲受人の届出等の諸手続の義務などを定めた株式譲渡契約書を作成することが一般的です。
(3) 株式譲渡の自由とその制限
メキシコにおいても、株式会社の株主は、原則としてその有する株式について自由に他人に譲渡することができ、株式譲渡の自由が認められています。
ただし、株式の譲渡制限を行うこともでき、株式の譲渡が取締役会の承認を得てのみ行われる旨を定款に定めることもできます。譲渡承認請求を受けた取締役会は、現在の市場価格で株式を買い受ける者を指定することにより、承認を拒否することができます。
また、会社によっては、株主の情報が定款に記載されていることから、株式譲渡に伴い定款変更が必要となる場合もあります。この場合は、株主総会を開催する必要が生じます。
(4) 株券引渡し
株式譲渡が行われる際、譲渡人から譲受人に対し、株券の引渡しが行われることになります。ただし、株券が表象する株式数と譲渡株式数とが一致しない場合には、譲渡人は株券を株式会社に返却し、株式会社は新たな株券を発行することになります。
(5) 株主名簿の書換え
株式会社は、株主名簿に株主として記載されている者をその会社の株主として取り扱います 。そのため、株式の譲受人は株式会社に対し、自らが株主名簿に記載されるよう株主名簿の書換えを請求します。
(6) その他の届出
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- 国税庁(Servicio de Administración Tributaria、通称SATに対する手続
- 株主の情報が変更された日から30日以内に、株主情報の更新通知(Aviso de modificación o incorporación de socios, accionistas, asociados y demás personas que forman parte de la estructura orgánica de una persona moral, así como de aquéllas que tengan control, influencia significativa o poder de mando)が必要となります。
- また、関連取引の情報提供のための申告書(Declaración Informativa de Operaciones Relevantes)の提出が必要となる場合もあります。
- その他、譲受人が、RFC(納税者番号)を持たない場合には、メキシコ所在法人のRFC登録をしないことを選択した海外に所在する株主等の申告(Declaración de relación de los socios, accionistas o asociados residentes en el extranjero de personas morales residentes en México que optan por no inscribirse en el RFC)が必要となります。
- 経済省(Secretaría de Economía)に対する手続
- 株主に関する情報は経済省のシステムに掲載しなければなりません。そのため、上記(5)株主名簿の書換えのほか、最新の株主情報を当該経済省システムにおいて公開しなければなりません(Aviso de inscripción en el libro especial de los socios o en el registro de acciones con la estructura accionaria vigente)。
- 経済省外資局(Registro Nacional de Inversiones Extranjeras、通称 RNIE)に対する手続
- 外国の個人又は法人の資本への参加に関する変更が2000万ペソを超える場合、経済省外資局に対する四半期更新通知(Aviso de Actualización Trimestral presentado al Registro Nacional de Inversiones Extranjeras Sociedades Mexicanas)を行わなければなりません。これは、譲渡実施日が属する四半期の最終日の翌日から起算し10営業日以内に報告書を提出することにより行います。なお、各四半期は1-3月、4-6月、7-9月、10-12月とされています。
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6.バングラデシュ
バングラデシュでは、株式は動産とみなされ、会社の定款に従い、譲渡することができます(会社法第30条(1))。非公開会社の株式譲渡の場合は、対象会社の取締役会決議による譲渡の承認決議を得たうえで、取締役会議事録や株式譲渡証書等の必要書類を商業登記所に提出し、承認を得る必要があります。株式譲渡の登録は、譲渡人又は譲受人のいずれかが、双方が署名し締結された譲渡証書その他必要書類を会社に提出して、申請します。会社が株式譲渡の登録を拒絶する場合は、譲渡証書が会社に提出された日から1か月以内に、拒絶通知を譲渡人及び譲受人に送付しなければなりません(会社法第38条(1)から(4))。
譲渡人又は譲受人がバングラデシュ在住でない場合は、代理人が手続きを行うことは可能ですが、提出書類について、当事者の居住国のバングラデシュ大使館による認証が必要です。また、譲渡先が海外の株主の場合は、株式譲渡の支払いについて着金証明を商業登記所へ提示する必要がありますが、譲渡先がバングラデシュ国内の株主の場合、提出は求められません。
7.フィリピン
フィリピンにおいて、株式は、個人財産として、売却、贈与、相続を原因として譲渡することが可能であり、担保権の対象とすることもできます。
フィリピン改正会社法第62条は、株式譲渡に関する要件を規定しています。
(1) 株券の交付
(2) 株券上の裏書
(3) 株式名簿上の名義書換
の三つの要件です。
株券の交付及び裏書によって譲渡は有効といえますが、会社及び第三者との間でもこれを有効とするためには、株主名簿上の名義が書換えられる必要があります。SEC(証券取引委員会)の見解によると、株主としての権利は、会社の株主名簿に名義が記載されて初めて発生します。
また、SECは、株券の交付及び裏書による方法によるほか、定款で特定の譲渡方法が指定されている場合を除き、証書(Deed)による譲渡も可能と指摘しています。 ただし、証書による譲渡は、株券が発行されておらず、それを株主が保有していない場合にのみ認められています。
さらに、 譲受人は、当該株式譲渡取引にかかる税金を支払い、その後、BIRから登録許可証(CAR)を取得する必要があります。
これらのBIR(内国歳入庁)に関する手続は必ず履践する必要があり、懈怠した場合、秘書役が税法の規定に基づいて責任を問われることになることに留意する必要があります。Revenue Memorandum Order No.15-03では、株主名簿の書換の前提としてCARを発行することが求められています。また、Revenue Regulations No.06-08の第11節では、納税したことを示す領収書が秘書役に提出されない限り、その株式移転を禁止しています。
BIRは対しキャピタルゲイン税と印紙税の支払いが完了した後、必要書類とともにCAR取得の申請を行います。未上場株式の譲渡の場合、これらの手続に関する必要書類は以下となります。
(1) TINナンバー、
(2) ノータライズ済の譲渡証書の原本及び写し、
(3) 株券の原本及び写し、
(4) 株式取得費用の証明、
(5) 支払証明としての領収書又は預金通帳、
(6) 取引日に最も近い発行会社の監査済財務諸表(AFS)
発行 TNY Group |
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・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所) URL: http://progress.tny-legal.com/ ・佐賀(TNY国際法律事務所) URL: http://www.tny-legal.com/ ・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.) URL: http://www.tny-malaysia.com/ ・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.) ・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.) ・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.) URL: http://www.tny-israel.com/ URL: http://estonia.tny-legal.com/ ・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh) URL: https://www.tny-bangladesh.com/ ・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.) URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html Newsletterの記載内容は2022年1月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。 |