TNY国際法律事務所グループ TNY国際法律事務所グループ

「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに取締役に関する法規制の概要」 TNY Group Newsletter No.26

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の新規入国制限の見直しについて

外国人の新規入国について、これまで下記(a)又は(b)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めていましたが、5月26日付で(c)が追加され、6月10日より開始されます。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合に限る)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(a) 入国後の自宅等待機期間の変更

  1. 検疫所の宿泊施設での待機対象となっている国・地域(以下「指定国・地域」)から帰国・入国する方で、COVID-19のワクチンを3回接種していない方は、指定の宿泊施設での3日間待機が求められます。宿泊施設で受けた検査の結果が陰性であれば、退所後の自宅等待機は求められません。
  2. 指定国・地域から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  3. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していない方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  4. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、入国後の自宅等待機を求められません。

厚生労働省HP 検疫所が確保する宿泊施設で待機を求める指定国・地域

     (2)入国後の公共交通機関の使用について

 上記(a) ii)及びiii)に該当する方は、入国後の待機のため自宅等まで移動する際は、公共交通機関の使用が可能となります。

厚生労働省 HP 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,434,515名です。この内、4,358,396名が回復し、累計死亡者数は29,913名となっています。現在、1日の感染者数の平均は5,000人程度で推移しており、減少傾向にあります。

2.2 タイ入国規制

 5月1日より、タイ入国規制が緩和されております。ただ、Thailand Passによる事前申請は継続となっています。内容は以下のとおりです。

・ワクチン規定回数接種済の者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

規定回数のワクチン接種を証明するワクチン接種証明書

COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ渡航前および入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

・ワクチン規定回数未了、未接種者で、渡航前72時間以内のRT-PCR検査結果陰性の者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

渡航前72時間以内に実施したRT-PCR検査陰性証明書

COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

・ワクチン規定回数未了、未接種者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

隔離施設予約書類(5日間以上)

タイ入国後のRT-PCR検査1回分の費用支払書類

COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

2.3 日本入国規制

5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 5月26日の新規感染者数は、1,845人でした。直近7日間(20日~26日)の平均も1,948人であり現在は落ち着いている印象です。新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限令であるNRP(National Recovery Plan(以前はFMCOと呼ばれていました))では、ケランタンとサラワクは第三段階の規制下にあり、この2つの州以外の全ての州は一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報等の必要事項を入力しておくことが必要となります。5月1日からは、18歳以上のワクチン接種完了者(2回以上)、17歳以下の者、COVID-19に感染し回復から6~60日以内の者は、渡航前の陰性証明書の取得及び渡航後の入国時検査が不要となりました。18歳以上のワクチン接種未完了者(健康上の理由で接種できない者を除く)は、陰性証明書の取得が必要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開される予定です。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。入国後の隔離措置について、5月1日より空港到着時に迅速抗原検査(RDT 検査)を行い、検査結果が出るまで 1 時間ほど空港内で待機し、陰性であれば即時入国が可能となり、指定の施設等での隔離は不要なりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

 4月26日にエンデミックが宣言され、多くの州でマスク着用などの要請が緩和されています。

5.2 入国規制

 メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が減少し、5月26日は、24時間以内の死者は0名で、陽性率は0.65%です。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)が、5月17日から全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計368万9865人で、死者数は累計60,455人です(2022年5月27日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約100~200人程度の新規感染者が報告されています。

 また、5月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル1」とされています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

 日本においては、6月1日以降、以下のとおり新たな水際対策措置が実施されます。水際対策措置の見直しにより、「赤」・「黄」・「青」の区分が決定され、フィリピンは「青」に指定されることとなりました。したがいまして、フィリピン出国前72時間以内に受けた検査結果証明書を提出することにより、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機を求めないこととなります。ワクチン接種の有無は問いません。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年5月28日時点での累計感染者数は1071万6361人で、1か月前の時点(4月28日)より7万7729人増加しました。3月末から4月末の1か月間では100万人以上増加していたことに比べると、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しており、5月に入ってからは、多い日で3000人程度、少ない日では1000人程度となっています。

 以前より死者数や重傷者数の増加が抑えられていたことに加え、新規感染者数も大幅に減少したことから、社会・経済活動、市民生活において新型コロナに関連する規制の多くが撤廃されています。最大都市ホーチミン市でも、少し前までは大規模なビルや商業施設の入口で検温や健康申告アプリの確認、 QRコードのスキャン などが実施されていましたが、現在ではそのような光景はほとんど見られません。

8.2 入国規制

 ベトナム政府は、2022年3月15日より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限を撤廃し、コロナ前の入国手続に戻しました。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は2020年7月1日から撤廃されています。

第2.各国における取締役に関する法規制の概要

1.日本

(1) 取締役の要件

(a) 人数

 株式会社は、1名又は2名以上の取締役を置かなければならないと規定されていますが(会社法326条1項(以下、本項において会社法については条文番号のみを記すものとします))、取締役会設置会社において、取締役は3名以上とする必要があります(331条5項)。さらに、取締役会において特別取締役による決議の定めを設ける場合は、6名以上(うち1名以上が社外取締役であること)とする必要があります(373条1号2号)。株式譲渡制限会社である非公開会社は、取締役会設置の義務がなく、取締役会不設置の場合、取締役の人数は1名以上となります。

(b) 国籍

 取締役の国籍について特に規定はありませんので、外国籍の方も代表取締役を含む取締役になることは可能です。

(c) 常駐等の規制

 代表取締役のうち少なくとも1名は日本に住所を有していなければならないという取扱いは廃止され、代表取締役を含む取締役の常駐の規制はありません。

(d) 資格の規制

 取締役の欠格事由として、以下の者が定められています(331条1項)。

  1. 法人
  2. 会社法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法に規定されている一定の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  3. 上記iii)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者は除かれます)

 その他、未成年であることは欠格事由とされていませんので、未成年者でも取締役になることができますが、会社との間で委任関係を結ぶことになりますので(330条)、法定代理人の同意が必要です(民法5条1項)。また、破産者も、取締役になることができますが、同じく、会社と取締役の関係は委任関係であるため(330条)、取締役が破産手続開始の決定を受けると当然に委任が終了し(民法653条2号)、すなわち取締役の地位にある者が破産手続開始の決定を受けると、取締役を自動的に退任することになります。破産した後も取締役に就くためには、再度、株主総会決議で選任されなければなりません。

 また、社外取締役については、平成26年の改正会社法において、より社外性が求められる要件が加わっておりますので、社外取締役の選任を検討される場合は、法令にて求められる要件の確認が必要です。

(2) 取締役の主な権限と義務

(a) 取締役の権限

 取締役は、取締役会を構成する一員としての役割を担います。取締役会は、取締役会設置会社の業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職に関する職務を行うと定められており(362条2項)、取締役会の構成員である取締役は、取締役会に出席し、議論に参加することによって、これらの職務を担う役割があると言えます。取締役会において意思決定しなければならない項目として、会社法は、i) 重要な財産の処分及び譲り受け、ii) 多額の借財、iii) 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任、iv) 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止等を定めています(362条4項)。

 取締役は単独で、取締役会を招集し(366条)、また、株主総会等の決議の取消しの訴え(831条)、会社の組織に関する行為の無効の訴え(828条1項)をする権限を有します。

(b) 会社との関係

 前述の通り、取締役は、株式会社とは委任の関係に立ち(330条)、会社に対し善良なる管理者の注意義務をもって委任事務を処理する義務を負い(民法644条)、法令及び定款並びに株式会社の決議を順守し、株式会社のために忠実に職務を遂行しなければなりません(355条)。

 また、取締役が自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとする場合(競業取引)や株式会社との間で取引をしようとする場合(利益相反直接取引)、株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において、株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとする場合(利益相反間接取引)には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項)。取締役会設置会社では、当該競業取引や利益相反取引についての承認は取締役会が行うことができます(365条1項)。

 取締役の責任は、従来、過失が無くても会社に損害を与えた場合には責任を問われる「無過失責任」でしたが、平成26年の改正会社法により、会社に損害を与えないように注意を尽くしたことが示されれば、賠償の義務を負わない「過失責任」に改められ、責任が緩和されました(120条4項、423条、462条2項、465条等)。

(3) 取締役の解任

 取締役は、いつでも、株主総会の決議による解任が可能です(339条1項)。株主総会での解任決議が否決された場合でも、一定の要件を満たす株主は、取締役の職務執行に不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実があるなどの解任理由がある場合、取締役の解任請求を提訴することが可能です(854条1項)。一方、株主総会にて、正しい手続きで解任した場合であっても、解任について正当な理由がない場合は、解任された取締役は会社に損害賠償を請求することができます(339条2項)。

 

2.タイ

(1) 取締役の要件

取締役の人数は、非公開会社では、1名以上であれば良く(民商法典1144条)、国籍や居住要件は設けられておりません。一方で、公開会社では、5名以上の取締役が必要とされ、うち半数以上がタイ国内に居住地を有している者でなければなりません(公開株式会社法67条)。また、取締役は、自然人でかつ以下の資格要件を満たす必要があります(同法68条)。

(a)権利能力者である

(b)破産者、制限行為能力者ではない

(c)財産犯に対する確定判決により懲役刑に処せられていない

(d)公務における汚職行為を理由として官公庁、政府機関から罷免された、または解任されたことがない

(2) 権限及び義務

取締役の権限は、定款等によって設定することができます(民商法典1144条)。

取締役は、善管注意義務、株主に資本金の払い込みを遂行させる義務、法律で定められた会計帳簿及び文書を作成・管理する義務、法律で定められた配当・利子を適正に分配する義務、株主総会決議を適正に執行する義務、競業避止義務(該当する業務を行う場合には、株主総会の承認が必要)を負うことが定められています(民商法典1168条)。

(3) 解任

非公開会社では、株主総会の普通決議によって取締役を解任することができます(同法1151条)。公開会社では、株主総会の特別決議(総会に出席し、かつ、議決権を有する株主の四分の三以上及び総株式数の半数以上)によって取締役を解任することができます(公開株式会社法76条)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおける取締役に関する法規制は、会社法(Companies Act 2016)によって規律されます。

(1) 取締役の法定員数について

 非公開会社の取締役の法定人数は最低1名(196条1項(a))、公開会社の取締役の法定人数は最低2名(196条1項(b))と規定されています。また、非公開会社及び公開会社の双方とも、法定された数の取締役は、主たる居所をマレーシアに置く、通常マレーシアに居住する者である必要があります(196条4項(b))。

 ただし、定款で法定人数以上の人数を最低人数として定めた場合は、定款で規定した数の取締役を選任する必要があります。

(2) 取締役の資格について

 取締役は、18歳以上の個人である必要があり(196条2項)、かつ以下の欠格事由に該当する者は、原則取締役に就任することができません(198条1項)。

  1. 破産して免責を受けていない者(同条(a))
  2. 会社の設立、組織、運営に関する法令違反により有罪判決を受けた者(同条(b))
  3. 賄賂、詐欺により有罪判決を受けた者(同条(c))
  4. 213条等の違反により有罪判決を受けた者(同条(d))
  5. 199条に基づき裁判所から欠格の宣告を受けた者(同条(e))

(3) 取締役の選任及び解任について

 取締役は株主総会の普通決議により選任します(202条2項、291条)。ただし、定款で定めた場合には、取締役会決議により選任することが可能となります(202条3項)。 

 取締役の退任については、公開会社と非公開会社で異なります。公開会社の場合、選任時期が早いものから順番に定期総会ごとに3分の1の取締役が退任することとなります(205条3項(b))。退任する取締役は、欠格事由に該当しない限り原則再任が可能です(205条5項)。非公開会社の場合、定款又は選任の条件において取締役の任期が規定されない場合、取締役は、以下の事由が生じるまで取締役の地位にとどまることができます(205条2項)。

  1. 欠格事由に該当した
  2. 辞任した
  3. 解任された
  4. 退任の書面決議がなされた

(4) 取締役の権限及び義務について 

 211条が取締役の権限について規定しています。

  1. 会社の事業及び業務は取締役会により又は取締役会の指示のもと運営される(同条1項)
  2. 取締役会は、この法律又は会社の定款に含まれる変更、例外又は制限を条件として、会社の事業及び業務の運営並びに指揮監督に必要な全ての権限を有する(同条2項)

 主要な取締役の義務は、213条から228条に規定されています。213条1項は「会社の取締役は、常に、本法律に従い、適切な目的のために、かつ会社の最善の利益のために誠実に行動しなければならない」と定めており、取締役が会社に対して負う主要な義務の一つを規定しています。

 上記の義務は以下の4つの要素で構成されています。

  1. 取締役の権限は、同法に従って行使されなければならない
  2. 取締役の権限は、誠実に行使されなければならない
  3. 取締役の権限は、適切な目的のために行使されなければならない
  4. 取締役の権限は、会社の最善の利益のために行使されなければならない

 

4.ミャンマー

(1) 取締役の要件

 取締役は1名以上いれば足りるものの、そのうち少なくとも1名はミャンマーに常駐している必要があります。常駐の定義は1年間のうち183日以上ミャンマーに居住していることです。国籍要件は存在しないため、ミャンマー国籍である必要はありません。また、取締役については以下の資格要件を満たす必要があります(会社法175条)。

  1. 定款により取締役の株式保有要件を規定している場合、取締役に指名されてから2か月以内又は定款により規定された短い期間内に株式を保有していること
  2. 18歳以上の自然人であること
  3. 健全な精神状態であること
  4. 本法又はその他の法により取締役として行動する資格を剥奪された期間中でないこと
  5. 債務弁済未了の破産者でないこと

(2) 権限及び義務

 取締役は、本法又は定款により株主によって行使されることが要求されている権限以外の会社の権限の全てを行使することができます(同法160条)。また、帳簿閲覧権を有しています(同法161条)。

 取締役は、善管注意義務、会社の最善のために誠実に行動する義務、地位の利用に関する義務、情報の利用に関する義務、法及び定款を順守する義務、無謀な取引を避ける義務、会社の義務に関する義務、一定の利害関係を開示する義務が規定されています(同法166条~172条)。

(3) 解任

 株主総会の普通決議により取締役を解任することができます(同法174条)。

 

5.メキシコ

(1) 取締役の要件

 株式会社(Sociedad de Anónima)においては、取締役は1名以上選任される必要があります。

 国籍要件や駐在要件といった制限はなく、取締役はメキシコ国籍を有する必要もなく、またメキシコに常駐する必要もありません。唯一、取引の資格を失った者は取締役になることができないとされており、公的仲介人(Corredor Público:商取引において、鑑定人としての役割、法的助言を与える役割、紛争の仲介人としての役割および公証人としての役割を果たすメキシコ連邦政府から認可された法律の専門家)、更生していない破産者、偽造、横領、収賄、強要など財産に対する犯罪で有罪判決を受けた者がこれに該当します。

(2) 権限及び義務

 取締役は、業務執行の権限および権限の範囲内での委任、執行役(Gerente)の選解任の権限、株主総会の招集の権限を有します。

 また、取締役は、定時株主総会に先立つ事業報告や計算書類の提出義務、法令や定款への順守義務、利益相反時に取締役会の審議および決議を棄権しなければならない義務、守秘義務(在任期間及び退任後1年間)、不正に関する監査役への告発義務を負います。さらに、取締役は、株主による出資の真正、株主へ支払われる配当金に関する法的要件および定款の遵守、会計・管理・登録・記録文書または情報のシステムの存在と維持の確認、株主総会決議事項の遵守について、責任を負います。

(3) 解任

 取締役の解任は、通常株主総会で決議することによって行うことができます。

 

 

6.バングラデシュ

(1) 取締役の要件

 全ての非公開会社(公開会社の子会社を除く)は、2名以上の取締役が必要で(会社法90条(2))、公開会社及び公開会社の子会社である非公開会社は、3名以上の取締役が必要です(同条(1))。また、1人株主会社(One Person Company (OPC))は、当該1名の株主が取締役となります(会社法392E条(1))。

 取締役は自然人でなければなりませんが(同条(3))、国籍や常駐の要件はありませんので、バングラデシュ国外に居住する外国人も取締役になることができます。

取締役の欠格理由は、以下の通りです(会社法94条(1))。

(a) 管轄裁判所より精神に障害があると認められた場合

(b) 復権していない破産者であること

(c) 破産者であると申立て中であること

(d) 保有している株が未払いで、支払い期日を6か月以上経過していること

(e) 未成年であること

 その他、会社が、付属定款にて取締役の欠格理由を定めることができます(同条(2))。

(2) 取締役の主な権限と義務

 会社の事業や運営は、取締役によって行われ、会社法の規定に基づき、その権限を行使することができるとされています。取締役に対する制限として、i) 売買・商品供給契約等の締結に関し、取締役会の承認を得た場合を除き、取締役は自らまたは自らがパートナー、株主または取締役である他の法人との間で、売買、商品および原材料の購入または供給契約を締結することはできません(会社法105条)。また、ii) 利益相反取引に関する情報開示として、会社が締結する契約に直接的または間接的に利害関係がある取締役は、当該契約が承認される際に、取締役会にて、その利害について開示しなければなりません(会社法130条(1))。

(3) 取締役の解任

 会社は、特殊決議(extraordinary resolution)にて、株を保有している取締役を任期満了前に解任することができ、普通決議で後任を任命することができます(会社法106条(1))。 

 

7.フィリピン

(1) 人数・資格・欠格事項

 改正会社法第23条は、取締役会の取締役の人数を15名以内と定めています。旧法における最低人数の規定は削除されました。取締役は、当法人の株式を少なくとも1株所有している必要があります。旧会社法における居住地規定が改正会社法では削除されたため、取締役の過半数あるいは全員が非居住者であっても問題ありません。取締役の国籍に関する制限もありません。ただし、1987年憲法、アンチ・ダミー法や外国投資法などの特別法、業界ごとの規制当局が定めた規則など、その他の関連規則や法律に従う必要があります。

(2) 権限の範囲

 取締役会は、会社のすべての業務を遂行し、財産を管理・保有する権限を有しており、株主の承認を特に必要とする場合を除き、原則として会社の主要な意思決定機関として機能します。また取締役会は、経営判断の枠内で会社役員を雇用・解雇したり、会社の役員、委員会、代理人にその権限の一部を委任する権限があります。

(3) 義務および禁止事項

 取締役は、(1)服従義務、(2)勤勉・注意義務、(3)忠誠義務の3つの義務に従わなければなりません。服従義務とは、取締役会が、実務上可能な限り、法律で定められた方法、手続の範囲内で行動すべきことを意味します。従って、会社のいかなる行為も、会社法または定款が認めている権限の範囲内で行われなければなりません。勤勉義務とは、取締役会が明白な違法行為に関与、あるいはそれに同意したり、承認したりすることを禁ずるものです。また、会社の業務を管理する上で、不誠実な行為や重大な過失を犯すことも認められません。忠実義務とは、取締役会のメンバーが会社の「特別な受託者」であるという考えを補強するものです。各取締役は、取締役としての義務と相反する個人的または金銭的な利益を得てはならず、自己のために取引することを禁じている事柄に関して、会社に不利な利益を得ようと試みたり、また実際に得たりしてはならないことを意味しています。この義務はまた、第三者から手数料や賄賂を受け取ることや、内部情報を利用して会社に不利益を及ぼすことも禁じています。ただし、利益相反取引に関しては3分の2を有する株主らによる承認がある場合はこの限りではありません。

(4) 選任・解任

 取締役を選出・解任する権限は株主総会にあります。

 

8.ベトナム

(1) 外資が設立する現地法人と業務執行機関

 ベトナムでは、外国人投資家、外国企業が現地法人を設立する場合に選択し得る会社の形態としては、①1人有限責任会社、②2人以上有限責任会社、③株式会社、④合名会社、⑤私営企業の5種類がありますが、これらのうち、外国投資家、外国企業がベトナム進出のために会社を設立する場合、①1人有限責任会社か②2人以上有限責任会社が通常選択されます。有限責任会社の場合、株式会社における取締役は設置されませんが、日常の業務を執行する機関として、社長及び法定代表者が任命されます。

(2) 有限責任会社の社長

 有限責任会社の社長は、社員総会又は会社の所有者(出資者)より任命された会長により任命されます。人数は1名のみで、国籍要件はありません。

 社長は、会社の日常的な経営活動を運営する者として社員総会で決議された事項を実施するほか、日常業務の処理、会社名義での契約締結、労働者の雇用などの権限、義務を有します。

 なお、1人有限会社の場合、社長の任期は最長5年とされています。

(3) 有限責任会社の法定代表者

 法定代表者は1名以上の個人であり、人数に制限はなく、国籍要件もありません。しかし、1名は必ずベトナム居住者でなければなりません。この居住者の要件については、一般的に、個人所得税法に定められている居住者に該当する要件である、1年に183日以上ベトナム国内に居住する者とされています。また、法定代表者が1名しかいない場合においてその者がベトナムから出国するときには、法定代表者の権限の行使及び義務の履行を他の個人に書面により委任しなければならないとされています。

 法定代表者は、会社の取引から発生する各権利を行使し、義務を履行する際、また仲裁手続や裁判手続において会社を代表します。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年5月27日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。