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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに外資奨励政策の概要」 TNY Group Newsletter No.30

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

9月27日、全国で105人の死亡、4万3594人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

ただし、この入国制限は、2022年10月11日に撤廃され、上記の新規入国申請をする外国人についてのERFS申請は不要となります(厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/content/000993077.pdf)。

(2) 日本入国時の検疫措置について

厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。ただし、2022年10月11日以降、有効なワクチン接種証明がある場合には、これらの区分に関係なく、出国前・入国時の検査及び待機は原則撤廃されます。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(なし)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は5日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,679,022名です。この内、4,639,886名が回復し、累計死亡者数は32,729名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は500人程度で推移しており、減少傾向にあります(9月28日現在)。

2.2 入国規制

10月1日より、入国時のワクチン接種証明書または陰性証明書の提示についても不要となり、外国からの入国制限はすべて撤廃されます。

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

9月26日の新規感染者数は、1,186人でした。直近7日間(19日~25日)の平均は1,830人であり先月よりも減少しています。マレーシア政府は、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。また、これまでは屋内でのマスク着用義務がありましたが、9月7日より電車・バス・タクシー等の公共交通機関や医療機関等一部を除き撤廃されました。

3.2 入国規制

3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

これまで、ワクチン接種未完了者には、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要とされていましたが、8月1日からはこれらの手続が不要となりました。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、MySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力が引き続き要請されています。また、ショッピングモール等施設によっては、ワクチン接種歴を確認されることがあるため、MySejahteraアプリへワクチン接種証明を反映させておくことが推奨されます。

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。入国後の隔離措置について、2回以上のワクチン接種を行っている場合には入国48時間前の陰性証明書が不要となっていましたが、8月1日より再度必要になりました。空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)も必要です。もっとも、指定の施設等での隔離は陽性にならない限りは不要となっています。

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

9月に入り一日当たりのCOVID-19新規感染者数は3,000人以下となる日がほとんどとなりました。連邦政府は9月20日、職場でマスク着用や手指の消毒などを行うことを定めるガイドラインを撤廃する方針であることを公表しました。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュでは、9月28日時点で、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は1名、陽性者は737名で、陽性率は15.42%です。

6.2 入国規制

WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

フィリピンの COVID-19 感染者は累計393万8203人で、死者数は累計62,790人です(2022年9月26日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあるものの、最近はやや増加傾向にあります。現在は1日約1,000~2,000人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

ベトナムにおける2022年9月27日午前9時の時点での累計感染者数は1147万3733人で、1か月前の8月26日の時点より8万0874人増加しました。毎日の新規感染者数は、概ね2000人前後〜3000人前後の間で推移しています。

ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。また、ベトナム保健省は、9月6日、マスク着用に関する規制を緩和するガイダンスを決定しました(2447/QD-BYT)。これによると、これまで公共の場ではマスク着用が必須とされていましたが、急性呼吸器感染症の症状がある者、新型コロナ感染者・感染の疑いのある者、飛行機、バス、タクシーなどの公共交通機関を利用する場合などを除き、公共の場でマスク着用は不要とされました。

8.2 入国規制

新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の外資奨励政策の概要

1. 日本

日本では、OECD加盟国と比較しても対内直接投資残高が低く(2021年末時点で、対GDP比が加盟国平均67%に対して、日本は8.0%)、少子高齢化の進展に伴う人口減少を克服する経済成長の実現のため、海外からの人材・技術・資金を呼び込むことで日本経済全体の成長力の強化や地域経済の活性化を図るべく、2021年6月に「対日直接投資促進戦略」を策定し、目標値を設定して、様々な施策を実施しています。

  1. 政策目標(Key Performance Indicator)・補助指標

対日直接投資残高を2030年に80兆円、対GDP比12%を達成することを政策目標としています。また、量的拡大以外の補助指標として、①外国企業・外資系企業の日本での事業活動の成果としての付加価値額を2030年度34兆円(2018年度17兆円)にすること、②東京集中の緩和として、東京以外の外資系企業数を2026年に10,000社(2016年4.262社42.9%)にすること、③海外からの経営・管理人材の入国者数を2030年に20万人(2019年95,248人)に増加させることを目安として掲げています。

2. 3つの柱

戦略では、以下の3点を基本的な柱として、国内の産業・教育体制の改革や地方自治体支援策等と組み合わせた形で、担当省庁の下で施策を実施しています。

(1)デジタル・グリーンの新市場の創造とイノベーション・エコシステムの構築

(2)グローバルな環境変化に対応したビジネス環境整備の加速

(3)地域の強みを生かした官民連携による投資環境の整備

4. 具体的な対応

日本への投資を検討している、または日本での事業拡大を検討している外国人・企業に対する具体的な対応のため、JETROの対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC: Invest Japan Business Support Center)(https://www.jetro.go.jp/invest/jetros_support/ibsc/)を外資系企業からの規制・制度に関する要望や各種相談等を受け付ける一元的窓口と位置づけて、各種の情報発信を行っています。

2.タイ

タイでは、投資奨励及び産業振興を目的として、1977年に投資奨励法が制定されています。また、産業振興法に基づき、首相府の下にタイ投資委員会(BOI)が設置されています。タイ投資委員会は、投資奨励法に基づき、奨励産業や恩典等の投資奨励政策を定めるとともに、投資に関する支援を行っています。タイ投資委員会には、日本(東京、大阪)を含む16か所の海外事務所があり、事務局のほか、ワンストップサービスセンター(ビザ・労働許可証)、ワンスタートワンストップ投資センター(OSOS)、7つの地方事務局があり、様々な投資に関する支援を受けることができます。

また、タイでは、投資奨励政策として、基礎的恩典、メリットによる追加恩典及びその他の政策、特別措置が設けられています。

  1. 基礎的恩典

基礎的恩典には、業種に基づく恩典と技術に基づく恩典があります。

① 業種に基づく恩典

農業・バイオ・医療産業、先進製造業、基礎・裾野産業および創造・デジタル産業・高付加価値サービスに関する事業に対して最長8年間法人税が免除されます。また、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典(外国人技術者・専門家の入国・就労許可、土地の所有権の許可、タイ国外への外貨送金の許可等)があります。

② 技術に基づく恩典

バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、先端材料技術およびデジタルテクノロジーに関する事業に対して最長10年間法人税が免除されます。また、同様に、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典があります。

2. メリットによる追加恩典

メリットによる追加恩典には、競争力向上のための追加恩典、地方分散のための追加恩典及び工業用地開発のための追加恩典があります。

(1)競争力向上のための追加恩典

以下のとおり法人税が免税されます(投資または支出に対する金額)。

(2)地方分散のための追加恩典

特定の業種につき、1人当たりの国民所得の低い20県に立地する場合に、5年間にわたり法人税を50%減税又は法人税免除期間が3年間追加されます。

(3)工業用地開発のための追加恩典

特定の業種につき、工業団地又は奨励される工業地区に立地する場合に、法人税免除期間が1年追加されます。

3. その他の政策および特別措置

(1)南部国境地域における投資奨励措置および南部国境地域におけるモデル都市企画に基づく投資奨励措置

南部国境県における投資の促進およびモデル都市計画の実現を行い、住民所得を創出することを目的とした制度です。対象業種は、ボディケア製品の製造、建築資材製造事業及び公共施設プロジェクトのための高圧コンクリート製品の製造、日用品用プラスティック製品の製造、パルプあるいは紙による製品の製造、工場・倉庫用建物の開発等です。条件として、最低投資金額(土地代及び運転資金を除く)が50万バーツ以上であること、タイ国内中古機械の使用は、その上限を1000万バーツとし、中古機械の金額の4分の1以上を新品の機械に投資することが必要です。

恩典としては、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代水道代の2倍までを15年又は20年間控除、インフラの設置費または建設費の25%控除等の措置を受けることができます。同措置の適用を受けるためには、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

(2)特別経済開発区(SEZ)における投資奨励措置

近隣国との経済的連携の構築とASEAN経済共同体の発足に備えて設けられた、特別経済開発区における投資措置です。

特定の業種につき、投資額に相当した金額を上限として8年間の法人税免除、追加の法人税の5年間50%減税、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代及び水道代の2倍までを10年間控除、インフラの設置費又は建設費の25%控除等の措置を受けることができます。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

(3)効率向上措置

生産効率の向上を目的とした、省エネ、代替エネルギー使用、環境負荷軽減のための機械の入れ替えや、研究開発やエンジニアリングデザインへの支援及びデジタル技術の導入を促進することを目的とした制度です。本措置の対象となるのは、タイ投資委員会が発表した投資奨励対象業種に該当する事業であり、法人所得税の免除または減税期間が終了し、もしくは法人所得税免除の恩典が付与されていない事業です。

条件として、土地代及び運転資金を除く投資金額が100万バーツ以上であることが必要です。ただし、中小企業(タイ国籍自然人による株主比率は資本金の51%以上であること、奨励申請者の全部の被奨励事業と非奨励事業の収入を合算し、被奨励事業の運営により初めて収入が発生した日から最初の3年間の年間収入が合計5億バーツ未満であること)による事業は土地代及び運転資金を除く投資金額が50万バーツ以上であることが必要です。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

3.マレーシア

(1) 優遇税制

マレーシアでは、投資促進法(Promotional of Investment Act 1986)、所得税法、関税法、物品税法など、様々な法令により税制上の優遇措置が認められます。

  1. パイオニアステータス

パイオニアステータスは、奨励事業または奨励製品にかかる事業(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)から得た所得の全部または一部について、生産開始日から5年間に限り、法定所得の70%が免税となる措置です。同政策の下では、国家的・戦略的に重要なプロジェクトについては、所得税の全額免除が10年間認められる場合があります。パイオニアステータス期間中の未処理損失および未処理控除は、パイオニアステータス期間の終了から7年間を上限に繰り越し可能であり、同一の奨励事業または奨励製品に関する事業の所得から控除することができます。

2. 投資控除(ITA)

投資控除は、奨励事業を営むまたは奨励製品を生産する会社(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)につき、最初に適格資本的支出が発生した日から5年間に発生した適格資本的支出(工場、機械設備などに対する支出)の60%の投資控除が認められます。この控除額を用いて、各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができます。また、未利用の控除額は、翌年以降に繰越すことができます。ただし、この投資控除制度はパイオニアステータスと併用することはできません。

3. 再投資控除(RA)

再投資控除は、36カ月以上事業を営んでいる居住会社であることなどの一定の条件を満たす会社に対し、工場や機械設備などへの適格資本的支出の60%の投資控除を認めています。

この控除額を用いて各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができ、未利用の控除額は翌年以降に繰り越すことができます。パイオニアステータスまたは投資税額控除を利用している会社は、その期間中再投資控除を併用することはできません。

(2) 自動化に関する優遇措置

労働集約型の製造業を対象として自動化を促すための優遇措置が設けられています。

ゴム、プラスティック、木材、家具、繊維の製造業(これらをカテゴリー1とする)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM400万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。また、カテゴリー1以外の製造業(カテゴリー2とされる)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM200万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。

マレーシアで設立され、36カ月以上製造事業を行っている法人が対象となります。自動化の設備は直接製造に使用されるものでなければなりません。

(3) インダストリー4.0(Industry 4WRD)

インダストリー4.0は、マレーシアの中小企業の生産性向上およびスマートマニュファクチュアリング化を目指す方針です。

インダストリー4.0の導入を検討する企業は、生産現場の技術導入に対する準備状況を診断する実現可能性評価(RA:Readiness Assessment)を行います。RAを実施した企業のうちインダストリー4.0のための研究開発や教育訓練、設備の現代化や更新、新技術のライセンス取得や購入、国際標準/認証の取得に係る費用に対して、補助金を申請することができます。政府と企業が補助金を出し合うマッチング補助金となり、負担率は政府:企業=60:40となっています。

(4) 環境技術(グリーン・テクノロジー)に関する優遇措置

マレーシア環境技術公社(MyHIJAU)のリストにおいて承認された環境投資減税(GITA)対象資産を取得する場合に、申請により当該対象資産について100%の投資控除を受けることができます。環境投資減税対象資産は、エネルギー効率、再生可能エネルギー、ごみ処理、水処理、建物のいずれかの領域で環境に資する資産となります。環境技術プロジェクトを行う会社や環境技術関連のサービスを提供する会社は、申請によりサービスから得る所得の免税などを受けられる可能性があります。

4.ミャンマー

(1) 投資法

  1. 租税優遇措置

(a)所得税の免税対象業種

投資促進分野通達に規定された業種に該当する場合、所得税の免税措置の申請が可能となります(投資法75条(c))。

(b)関税およびその他の内国税の免税および減税

投資家からの申請によって、ミャンマー投資委員会は、関税その他の国内税の免税または減税を許可することができます(投資法77条)。

2. 土地の長期賃貸借

MIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可を得ることで、土地または建物を最大50年間賃借でき、さらに10年の延長を2回まで認められます(投資法50条)。

(2) 経済特区法

  1. 租税優遇措置

投資家および開発者に対する租税優遇措置は下表のとおりです(経済特区法32条、40条、44条、45条、48条、49条、50条、51条、52条)。

投資家および開発者に対する租税優遇措置
税の種類等 投資家(フリーゾーン) 投資家(プロモーションゾーン) 開発者
所得税 営業開始日から7年間の所得税が免税される。
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
事業の利益の再投資を1年以内に行ったことにより
得た利益については、
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
営業開始日から5年間の所得税が免税される。
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
事業の利益の再投資を1年以内に行ったことにより
得た利益については、
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
営業開始日から8年間の所得税が免税される。
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
事業の利益の再投資を1年以内に
行ったことにより得た利益については、
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
関税 生産用の原材料および機械、その代替部品、工場、
倉庫および事務所を建設するための資材、
事業用車両の輸入について関税等は免除される。輸入する卸売等
のための商品および委託商品、車両
販売目的でない機械器具、その代替部品、
工場、倉庫および事務所を建設するための資材、
車両および事業に実際に必要な物品については、
それらの輸入開始時点から5年間、関税等が免除される。
次の5年間は、50%関税等が軽減される。
プロモーションゾーン向けの原材料の免税制
建設資材、機械、重機、
事業用車両ならびにインフラストラクチヤー
および自らの事務所を建設するための
資材の輸入について関税等は免除される。
商業税 免税される。
国内市場またはプロモーションゾーンから輸入した物品についても
免税を申請できる。
製造した商品を海外に輸出する場合、免税される。
所定の期間内のみ免税される。
製造した商品を海外に輸出する場合、免税される。
なし。

2. 土地の長期賃貸借

経済特区法に基づく投資許可を取得した会社は、土地を最大50年間賃借でき、さらに25年間の延長が認められます(経済特区法79条)。

5.メキシコ

メキシコには、外資のみに適用される税制優遇策などの外資奨励策はありませんが、外資・内資を問わず適用される優遇策がいくつかありますので、主要な3つを簡単に紹介します。

(1) 産業分野別促進プログラム (PROSEC; Programas de Promoción Sectorial)

特定の製品を製造する法人を対象とした税優遇策であり、特定の製品の生産に使用される部品・原材料、設備機器などを優遇関税率で輸入することができます。対象となる産業分野は、自動車および自動車部品、化学、ゴムおよびプラスティック製造、電機、食品など24種が指定されており、所定の製品の製造のために輸入される指定品目について、0%や5%などの優遇税率が適用されます。

(2) IMMEX(Industria Manufacturera, Maquiladora y de Servicios de Exportación)プログラム

製造、加工などの目的で商品を一時輸入する製造事業者や輸出関連サービスを提供する事業者が関税(Impuesto General de Importación)や付加価値税(Impuesto al Valor Agregado: IVA)の支払いを、所定の期間、留保されるなどの輸出促進のための税優遇策です。適用を受ける場合、次の5つのカテゴリーのいずれかにおいて認可を取得する必要があります。

(3) 経済特区

北部国境地帯特区(Zonas Libre de Frontera Norte)では、所得税(Impuesto sobre la Renta: ISR)について、当該地域内に税務住所または支店や出張所、その他の施設を有する場合で、当該地域での収入が総収入の少なくとも90%を占める場合、当該地域での収入に対して税率30%が20%に、また、IVAについては、当該地域の事業所や施設において物品の譲渡、サービス提供、物品のリースに関する活動を行う法人もしくは個人事業者の場合、税率16%が8%に引き下げられます。なお、金融業、農業、畜産業、漁業、林業、専門サービス・士業、マキラドーラ・オペレーション(保税委託加工)などを行う事業者や、不動産譲渡、無形資産の一時的使用や享受、デジタルコンテンツの提供などには適用されない、物品の引渡しやサービスの提供が当該地域内で実行されなければならないなどの一定の条件があることに留意する必要があります。

対象地域は、バハ・カリフォルニア州、ソノラ州、チワワ州、コアウイラ州、ヌエボレオン州、タマウリパス州の43市町村です。

同様に、南部のキンタナロー州、チアパス州、カンペチェ州、タバスコ州の23市町村でも、同じ減税措置が適用されます。

6.バングラデシュ

バングラデシュ政府は、外資・内資問わず投資を奨励するために、法人税の免除又は減税、資本設備及び原材料に対する輸入関税の減税、VATの減税等、様々な優遇措置をもうけています。毎年制定される財政法(Finance Act)及び通達(Statutory Regulatory Orders)にて優遇措置が見直されるため、確認が必要です。本稿では、主要なものとして、所得税条例に基づく免税措置、輸出志向産業に対する優遇措置、経済特区及び輸出加工区への進出企業に対する優遇措置を紹介します。

  1. 所得税条例第46BBに基づく免税措置

所得税条例(1984)第46BBに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に新規に設立された企業は事業分野及び事業地域によって、5年間又は10年間、一定の割合で法人税の免税を受けることができます。事業分野は、農業機械、自動車及びその部品、電子機器の基本部品、玩具、家具、LEDテレビ、家電製品、コンピューターハードウェア、電気変圧器の製造を含む33の事業が対象となります。

2. 所得税条例第46CCに基づく免税措置

所得税条例(1984)第46CCに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に設立されたインフラ設備(輸出加工区、高架道路、ハイテクパーク、ITパーク、再生可能エネルギー地下鉄、廃棄物処理プラント等19分野)に従事した企業は操業開始日から10年間、法人税の減税を受けることができます。

3. 輸出志向産業に対する優遇措置

輸出志向産業(製品及びサービスの80%超の輸出)は、経済特区又は輸出加工区の内外問わず、以下の優遇措置を享受することができます(BIDAウェブサイト:https://bida.gov.bd/incentives)。

4. 経済特区への進出企業に対する優遇措置

ディベロッパーに対するインセンティブが15項目、投資家(Unit Investors)に対するインセンティブが、以下の項目を含む39項目挙げられています(BEZAウェブサイト:https://www.beza.gov.bd/investing-in-zones/incentive-package/)。

5. 輸出加工区への進出企業に対する優遇措置

投資家に対して、財政的インセンティブ、非財政的インセンティブ、優遇措置がもうけられています(BEPZAウェブサイト https://www.bepza.gov.bd/content/incentives-facilities)。

6. その他

ハイテクパークへの進出企業やIT企業に対する優遇措置や官民連携プロジェクト(PPP)に対するインセンティブなどが設けられています。

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける外資奨励政策の概要

企業復興税制(CREATE)法において、投資委員会(BOI)とフィリピン経済区庁(PEZA)における優遇制度が統一されました。具体的には、税制上の優遇措置を提供する分野を定めた「戦略的投資優先計画(SIPP)」が承認されています。

2. 企業復興税制(CREATE)法に基づく投資優遇措置の概要

投資優遇措置の概要は以下のとおりです。

(A) インカム・タックス・ホリデー(ITH)により、所得税の支払いが100%免除される場合があります。

(B) 特別法人所得税(SCIT)率の適用により、国税及び地方税に代えて、総所得5%が課される場合があります。

※適用を受けるには、事業内容、生産量、最低投資額その他の条件を満たす必要があります。

(C) 課税標準から許容される控除額が設定される場合があります。

例:課税年度に発生した人件費について、50%の控除

※控除を受けるには、重要国内市場企業に指定されていること等の条件が必要となります。

(D) 資本設備、原材料、予備部品、付属品等を輸入する際に免税となる場合があります。

(E) 輸入時の付加価値税(VAT)が免除される場合や、現地での購入時のVATゼロレートの適用の可能性があります。

3. SIPPが定める投資優遇分野

SIPPは、投資優遇措置を受けられる優先活動のリストを提供しています。産業や活動は、Tier I、Tier II、Tier IIIに分類されます。

【Tier I】

2020年度投資優先計画にて投資優先分野と指定されている活動。ただし、通達第61号でTier II若しくはTier IIIに該当する場合を除く。

【Tier II】

フィリピン経済の強靭(きょうじん)性、競争性を高める活動。具体的には、グリーン・エコシステム、ヘルスケア、防衛関連、食料安全等の分野を含むものとされています。

【Tier III】

経済の変革を加速させる上で重要な活動。具体的には、研究開発、技術的に高度な製造業、イノベーション創出を促進する施設の設置等の分野を含むものとされています。

4. 投資優遇措置の適用期間

企業は以下の期間において、税制優遇措置を受けることができます。なお、優遇措置を受けようとする企業は、戦略的投資優先計画及びガイドラインに別段の定めがない限り、登録日から3年以内に優遇措置を利用する必要があります。

・ 輸出企業と国内市場企業が「重要」に分類される場合

所在地と産業政策に応じて、4~7年間所得税が免除され、その後10年間法人税の特別税率又は控除が強化される場合があります。

・ 国内市場企業で「重要」に分類されない場合

4~7年間所得税が免除され、その後5年間特別法人税または控除が強化される場合があります。ただし、投資資本が5億ペソ以上の国内市場企業に限り、法人所得税の特別税率を適用することができます。

8.ベトナム

(1) 投資優遇分野

ベトナムでは、2021年1月施行の投資法(61/2020/QH14)に基づき、内資・外資にかかわらず共通の投資優遇措置が実施されています。同法が定める投資優遇分野は、次のとおりです(同法16条1項)。

投資優遇分野に関する詳細については、投資法の整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。

(2) 投資優遇地域

投資法が定める投資優遇地域は、次のとおりです(同法16条2項)。

投資優遇地域に関する詳細については、整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。

(3) 投資優遇措置の内容

投資法が定める投資優遇措置の内容は、次のとおりです(同法15条1項)。

発行 TNY Group
【TNYグループ及びTNYグループ各社】 ・TNY GroupURL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年9月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。