TNY国際法律事務所グループ TNY国際法律事務所グループ

「各国における意匠制度の概要」 TNY Group Newsletter No.61

1.日本

(1) 概要

日本の意匠制度は意匠法によって規定されています。同法上、「意匠」とは、物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物の等又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの、と定義されています(意匠法2条1項)。

意匠権の存続期間は、出願日から25年間です(同法21条1項)。

また、日本はパリ条約に加盟しており、パリ条約締約国で申請してから6か月以内であれば、優先権を主張することもできます。

(2) 登録手続き

意匠権の登録手続きは特許庁に対し行います。

出願を行うと、まず、書類の形式面等を審査する方式審査が行われ、次に、出願にかかる意匠が意匠法上の登録要件を満たしているかを審査する実体審査が行われます。

実体審査において、意匠の登録を認めることのできない拒絶理由が発見されない場合には、特許庁の審査官は、意匠登録をすべき旨の査定をしなければなりません(意匠法18条)。他方、拒絶理由があると判断された場合、審査官は、拒絶理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければなりません(意匠法19条が準用する特許法50条)。拒絶理由が解消されない場合には、拒絶の査定がなされます(意匠法17条)。

 

(3) 意匠権侵害

意匠権侵害に対しては、民事上の救済策として、侵害行為の差止め(意匠法37条)や損害賠償請求等の措置をとることが可能です。損害賠償請求にあたっては、実際上、損害額の立証が困難な場合も多くあります。 

そこで、意匠法では、損害額の算定規定や推定規定等を設け、立証の困難性を緩和することが試みられています(同法39条)。

また、意匠権侵害は刑事罰の対象ともなり得、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金又はその両方が科せられます(同法69条)。

2.タイ

(1)  意匠法の概要

タイにおいて意匠制度は特許法にその規定があります。特許法56条から65条は、意匠についての特別法を規定しており、その他については特許における規定を準用しています。

同法は、「意匠とは、製品に特別な外観を与え,工業製品又は手工芸製品に対する型として役立つ線又は色の形態又は構成をいう」と定義しています(特許法3条)。また、意匠権の保護の客体について、「手工芸意匠を含む新しい工業意匠」(特許法56条)である旨を規定しています。

(2)  登録審査

意匠の出願は、省令に定められる要件および手続に従わなければならず、各意匠出願書類には、意匠の表示、意匠が用いられる製品の表示、明確かつ正確なクレーム、省令に定められるその他の事項が含まれなければなりません(特許法59条)。

その後、商務省知的財産部(DIP) において審査を受け、所定の要件を満たしたとされる意匠のみが特許法上の保護をうけることができます(特許法61条)。

⑶ 意匠権の内容

同法は、「特許権者以外の何人も、調査研究を目的とする意匠の使用を除き、製品の製造において特許 意匠を使用する権利又は特許意匠を具現した製品を販売し、販売のため所持し、販売のため供給し若しくは輸入する権利を有さない。」と規定し(特許法63条)、意匠権者に排他的権利を認めています。

3.マレーシア

(1)  概要

マレーシアにおける意匠制度は、意匠法(Industrial Designs Act 1996)により規律されています。同法は、意匠を「工業的方法または手段により物品に適用される形状、輪郭、模様もしくは装飾の特徴であって、完成した物品において視覚に訴え、視覚によって判断されるもの」と定義しています(意匠法3条1項)。

(2)  登録審査

意匠登録手続は、以下の2段階で進められます。

(a) 方式要件審査

意匠登録出願が意匠法および意匠規則で定められた要件を満たしているかを審査します(意匠法21条1項)。出願が要件を満たしていない場合、出願人に対しその旨の通知がなされ、補正のための期間が与えられます(同条2項)。補正が行われない場合、聴聞の機会が付与された上で出願は拒絶されます(同条3項)。

(b) 新規性審査

意匠の登録を受けるためにはその意匠が登録日において新規の意匠でなければなりません(意匠法12条(1))。そして、出願しようとする意匠が、出願の優先日前に、出願意匠と同一または関係する取引において一般的に使用される、重要でない細部もしくは特徴においてのみ当該意匠と異なる意匠が、以下のいずれかに該当する場合、新規性は認められません(同条12条(2)(a)・(b))。

・     マレーシアのいずれかの場所で公に開示されていた場合

・     当該意匠が、異なる出願人によって先出願された意匠登録申請の対象となっており、かつその出願に基づいて登録が認められている場合。

(3)  意匠権の内容

意匠権者は、登録意匠が適用されている物品を、①製造、輸入、販売もしくはその申出、賃貸もしくはその申出、陳列することの排他的権利を有します。

そして、上記権利に対する侵害が現に存在するか、またはそのおそれがあることを証明することにより、損害賠償請求、利益返還請求、または差止命令請求を裁判所に対して求めることができます(意匠法34条1項)。

4.ミャンマー

⑴ 概要

 2019年1月30日に意匠法は成立しました。意匠権利者と創作者の権利・利益の保護、産業の発展・技術開発、技術の普及促進などを目的としています。管轄の商業省は、2023年9月29日付で意匠登記規則を公布しました。2023年10月18日、国家行政評議会(SAC)は、意匠法が2023年10月31日より施行される旨を通知しました。その後、2024年1月31日、知的財産庁は、意匠の出願を2024年2月1日から受け付けると発表しました。

(2) 登録手続

意匠登録出願の手続は、出願、方式審査、出願公開、実体審査、登録という流れで進められます。願書に添付する意匠の図面や写真、説明文には、所定の要件が定められています。

(3) 意匠権侵害

意匠権の侵害行為には、意匠登録の対象となる製品を、権利者またはライセンス保持者の同意なく製造・制作する行為のほか、登録された意匠が用いられた製品を無断で販売・流通・使用する行為が含まれます。

5.メキシコ

(1) 概要

メキシコにおける意匠制度は、産業財産権法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial)によって規定されています。その中で意匠は、「装飾目的で工業製品または手工芸品に用いられ、独特で適切な外観を与える図形、線、または色の任意の組合せである工業図案、および工業製品または手工芸品を製造するための型または図形として機能する任意の立体で構成される工業用型であり、技術的な効果をもたない特別な外観を与えるもの」と定義されています。

意匠権の存続期間は出願日から5年間であり、所定の更新手続および更新料の納付により、5年ごとの延長が可能です。ただし、存続期間の上限は最大25年間とされています。更新は、各存続期間満了の6か月前から行うことができます。

メキシコは、1976年にパリ条約に加盟しており、これに基づく優先権主張が可能です。優先日(基礎出願日)から6か月以内であれば、優先権を主張しての出願が認められます。また、2020年6月にはハーグ協定(ジュネーブ改正協定)がメキシコにおいて発効しており、これにより国際意匠登録出願の指定国としてメキシコを選択することも可能となっています。

(2) 登録手続

意匠登録出願の手続は、原則として特許に関する規定が準用されており、出願、方式審査、出願公開、実体審査、登録という流れで進められます。願書に添付する意匠の図面や写真、説明文には、所定の要件が定められています。特許出願と異なり、方式審査を通過した意匠出願は早期に公開されますが、出願人からの早期公開請求は認められていません。

メキシコでは一意匠一出願制が採用されており、単一の意匠または関連する一つの意匠群として出願する必要があります。仮に一つの出願に複数の意匠が含まれる場合であっても、それらが同じ名称で識別でき、共通して新しい特徴を提示し、全体として同一の一般的印象を与える場合には、単一の意匠とみなされます。

(3) 意匠権侵害

意匠権の侵害行為には、意匠登録の対象となる製品を、権利者またはライセンス保持者の同意なく製造・制作する行為のほか、登録された意匠が用いられた製品を無断で販売・流通・使用する行為が含まれます。また、登録意匠と実質的に同一と認められる意匠を、許諾なく使用する行為も侵害に該当します。

このような権利侵害は行政違反とされており、権利侵害を犯した者には、最大でUMA(罰金等の金額算定にあたり参照する経済的基準)の25万倍の制裁金、最大90営業日の施設の一時閉鎖や恒久的閉鎖といった制裁が科される可能性があります。なお、こうした行政制裁が科された場合でも、権利者は別途、損害賠償を請求することが可能です。

6.バングラデシュ

⑴ 概要

バングラデシュでは、バングラデシュ意匠法(Bangladesh Industrial Design Act, 2023)により、意匠の保護が規定されています。この法律で「意匠」とは、製品の特長的な形状、線、色、視覚的な表面などの美的な視認性と定義されています(以下、断らない限りバングラデシュ意匠法の条文番号を意味します。第2条(m))。

バングラデシュは、パリ条約に加盟しており、これに基づく優先権主張が可能です。

⑵ 保護対象・新規性・申請権

意匠は、新規性と独自性があり、産業的に生産または使用できる場合に登録可能です(第5条第1項)。

ただし、技術的・実用的な側面のみを重視した意匠、公序良俗に反する可能性がある意匠、未登録の意匠、国章などを模した意匠は保護対象外となります(第4条)。

「新規性」は、出願日または優先日前に世界において公開されていない場合、複合製品の場合は通常の使用中に見える部分である必要があります(第5条第3項)。たとえ出願前に公開された場合でも、申請者の許可がない公開の場合は、新規性の判断に影響しません(第5条第4項)。

登録の権利は、原則として意匠の所有者またはデザインをした者に帰属します。共同作成の場合は共同所有となり(第6条第2項)、この権利は譲渡や相続が可能です(第6条第3項)。

⑶ 保護期間

登録された意匠は、出願日または優先日から最長10年間保護されます(第15条第1項)。

この保護は5年ごとの更新が可能で、最大3回まで延長できます(第15条第2項)。登録の有効期限が切れた場合でも、追加料金を支払えば6か月の猶予期間が設けられています。

⑷ 登録手続

申請者は、所定の申請書などを工業省特許意匠商標局(Department of Patents, Designs & Trademarks, Ministry of Industries「DPDT」)に提出して手続きを開始します(第7条第1項)。

また、パリ条約締約国で申請してから6か月以内であれば、優先権を主張することもできます(第8条)。

申請後、その内容はWEB上に30日間掲載され、第三者から異議がないか確認されます(第10条)。

その後、DPDTが、新規性・独自性・産業上の利用可能性について審査を行います(第11条第1項)。不備があった場合、申請者は2か月以内に修正する必要があります(第11条第3項)。

審査基準を満たし、異議もなければ、登録が認められ、証明書が発行されます(第12条第1項)。却下された場合は、申請者に通知されます(第12条第2項)。

⑸ 意匠権侵害

登録された意匠または類似する意匠を、同一または類似の商品・サービスに使用した場合、混同や誤認を引き起こした場合には、侵害と見なされます(第21条)。使用には、製造、販売、輸入などが含まれます。(第2条(p))

侵害が起きた場合、所有者はDPDTに対し行政補償を求めることができ、行政は補償金の支払い命令や、関連製品・材料の没収命令が出すことができます(第22条)。

補償が支払われない場合は、裁判所に訴訟を起こすことが可能です。裁判所は、補償金の支払いや、さらなる侵害を防ぐための差止命令を出すことができます。また、偽造品の破壊や押収、さらには損害賠償も命じることもできます(第23条)。

7.フィリピン

(1) フィリピンで保護される意匠

フィリピンにおいて意匠権の対象となるのは、代工業デザイン(Industrial Designs)です。工業デザインとは、線や色彩の構成、あるいは立体的な形状を指します。

工業デザインが意匠権として保護されるには、以下の条件を満たす必要があります。

(2) 意匠権を保護するための手続

意匠権を保護するには、フィリピン知的財産庁(Intellectual Property Office of the Philippines)に対して工業デザインの登録申請を行う必要があります。登録されると、第三者による無断の製造や販売等を禁止する権利が付与されます。

(3) 保護期間

工業デザインの保護期間は以下のとおりです。

初回登録:5年間

更新:2回まで可能(1回につき5年間)。更新には所定の更新料の支払いが必要。

最大保護期間:合計15年間

⑷ 意匠権侵害に対する対応

登録された意匠が侵害された場合、権利者は以下のような対応をとることができます。

(1) 意匠として保護を受けるための一般的条件

知的財産に関する現行の規定では、工業意匠は「製品または複合製品を構成する部品の外観であって、三次元の形状、線、色彩、またはそれらの要素の組み合わせにより表され、製品または複合製品の使用状態において視認することができるもの」と定義されています。

意匠として保護を受けるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 新規性があること:当該意匠が、当該意匠の登録出願の出願日または優先日(該当する場合)前に、ベトナム国内外において、使用、文書による記載、またはその他のいかなる形式によって公に開示された他の意匠と著しく異なるものであること。
  2. 創作性があること:当該意匠が、登録出願の出願日または(該当する場合)優先日前に、ベトナム国内外において、使用、文書による記載、またはその他いかなる形式によってすでに公に開示された他の意匠に基づいて、並みの芸術的技能しか持たない者が容易に創作できないほどに複雑であること。
  3. 産業上の利用可能性があること:当該意匠が、その意匠を具現化した外観を有する製品を、工業的または手工業的手段により大量生産するためのモデルとして使用可能であること。

(2) 意匠として保護を受けることができない対象

以下のいずれかに該当する場合は、意匠として保護を受けることができません。

  1. 製品の技術的特徴や仕様により必然的に定まる製品の外観
  2. 土木または工業用の建築物の外観
  3. 製品の使用状態において視認できない製品の形状

(3) 意匠登録の有効期間

意匠登録は、登録日から起算して、出願日から5年が経過する日まで有効とされます。また、5年ごとの期間で2回、連続して更新することができます。

(4) 意匠登録の基本的な手続き

意匠登録の手続きは、基本的に以下の5つのステップからなります。

  1. ステップ1:意匠登録のための出願書類を提出します。出願は、ハノイ市の知的財産庁本部、またはホーチミン市およびダナン市の代表事務所に対して、直接提出または郵送により行うことができます。
  2. ステップ2:方式審査
  3. ステップ3:工業所有権公報での出願の公開
  4. ステップ4:実体審査
  5. ステップ5:意匠特許の付与または拒絶の決定を受け、国家意匠登録簿に記録されるとともに、工業所有権公報に掲載されます。

(5) 意匠侵害の構成要素

製品または製品の一部が、その外観において登録意匠とわずかしか異ならない場合には、当該登録意匠を侵害しているとみなされる可能性があります(例えば、登録意匠または保護されている製品セットのうち少なくとも1つの製品のコピー、あるいは実質的にコピーであり、違いが事実上識別できない程度のものなど)。疑義を避けるために付け加えると、当該意匠登録に記載された意匠の保護範囲が、意匠の侵害構成要素を判断する基礎となります。

9.インド

⑴ 概要

インドにおける意匠制度は、2000年意匠法(Design Act, 2000。以下「意匠法」といいます。)によって規定されています。同法によると、「意匠」とは、二次元、三次元又はその双方の形態かを問わず、手工芸的、機械的、若しくは化学的手段によって、分離若しくは結合の如何にかかわらず、物品に施される線又は色彩の形状、輪郭、模様、装飾又は構成の特徴の特徴に限られるものであって、完成品において視覚に訴え、視覚によってのみ判断されるものと定義されています(意匠法2条(d))。

意匠権の存続期間は出願日から10年間です(同法11条(1))。更新は1回のみ可能で、所定の更新手続を経ることで、前記10年の期間の満了日から更に5年の延長が可能です(同法11条(2))。

また、インドはパリ条約に加盟しており、パリ条約締約国で申請してから6か月以内であれば、優先権を主張することもできます(同法44条(1))。

(2) 登録手続き

出願は特許庁(Patent Office)に対し行われます。

審査の結果、拒絶理由がない場合には、特許庁は意匠の登録を行い当該意匠を官報で公告します(特許法7条)。また、意匠権者に対しては、登録証が発行されます(同法9条)。

一方、審査の結果、拒絶事由が認められる場合には、出願人に対し、書面でその旨が通知されます。この場合、出願人は当該通知の日から3か月以内に当該拒絶理由の解消をするか、聴聞の申請をしなければならず、このような対応がなされない場合には、出願が取り下げられたものとみなされます(意匠法規則(The Design Rules, 2001)18条(1))。

(3) 意匠権侵害 

登録された意匠について、無断での販売、販売目的での模倣、輸入等を行うことは意匠権侵害に該当します(意匠法21条(1))。

また、意匠権侵害が生じた場合、意匠権者は侵害者に対し、違反行為ごとに最大で25,000ルピーの支払を求めるか(ただし、1意匠について回収可能な額は最大で合計50,000ルピーまでとされています)、または、意匠権者が違犯に対する損害賠償と差止めを求める訴訟を提起し、判決で命じられた額の賠償金の回収と違反行為の差止めを図ることができます(同法22条(2))。

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

(1) 概要

 アラブ首長国連邦(UAE)では、産業財産権の規制と保護に関する法(2021年法連邦法第11号)において意匠について規定されています。同法は、フリーゾーンを含むUAE全域に適用されます。

 意匠とは、装飾的・審美的な二次元または三次元の創造物で産業または工芸製品に用いられるものと定義されます(第1条)。意匠権として保護されるには、新規性及び公序良俗に反しないことが要件とされ(第43条1項、2項)、経済省所管の登録簿に登録されねばなりません(第40条)。出願前1年以内の公開は新規性があるとみなされ(第43条4項)、UAEと協定・合意を有する国で出願したことによる優先権の主張は、最初に出願した日から6か月間とされます(第42条)。

(2) 登録手続

 出願は、意匠の名称等の所定事項を記載した申請書に意匠の図面等の必要書類を添えて提出することにより行います。意匠の説明はアラビア語及び英語で記載されねばならず、出願人が法人の場合の商業登記簿、意匠製作者でない場合の権利譲渡証明書、出願代理人の委任状等には公証を要します(施行規則にかかる閣議決定2022年第6号(以下「施行規則」といいます。)第57条)。出願手数料の支払後、施行規則第63条第1項記載の要件が満たされるかにつき形式審査されます。拒絶のときは理由が示され、再審査の機会が与えられます(施行規則第63条2項、3項)。資料の追加を求める通知から90日以内に出願人が追完しないときは、出願を取り下げたものとみなされます(第49条)。審査通過の通知後60日以内に公開手数料及び権利付与手数料を支払うことにより、意匠の登録は知財公報に掲載され、公報から90日後に登録証明書が発行されます(施行規則第41条、第44条)。

(3) 意匠権の内容

意匠権は、毎年の登録維持料を支払うことにより、出願日から20年間存続します(第45条第1項)。

登録された意匠は、第三者による製品製造における使用並びに意匠に関する商品の輸入、商業的目的の使用のための保管、販売のための展示及び販売が禁止されることにより、保護されます(第46条)。意匠権の侵害に対しては、裁判所における損害賠償(第67条)、侵害した製品等の差押命令(第68条)を請求することができ、裁判所は、差押した製品の他、侵害品及びその製造機具の没収、並びに判決の新聞広告掲載を命ずることができます(第70条)。また、不正確または虚偽の書類を用いて出願をした者や意匠権を侵害した者は、禁固及び10万UAEディルハム以上100万UAEディルハム以下の罰金、またはそのいずれかにより処罰される可能性があります(第69条)。

11. インドネシア

(1) 概要

インドネシアでは、意匠に関する法律2000年第31号(以下、「意匠法」といいます)により、規定されています。この法律で「意匠」とは、3次元又は平面の輪郭、色彩又はこれらの組み合わせによる形状、構造若しくは配置であって、美的印章を与え、一定の生産物、商品、工業製品又は手工芸品に適用できるものと定義されています(意匠法第1条)。

(2) 新規性・保護期間

意匠は、新規性と独自性があり、出願日以前に同一または実質的に同一の意匠が公開・使用されていないことが必要です(意匠法第2条)。ただし、展示会出展による公開や研究目的使用などは6カ月間までは新規制を保持できます(意匠法第3条)。また、意匠権の保護期間は10年間です(意匠法第5条)。

また、出願人がパリ協定に基づきパリ条約加盟国で先に出願していた場合には、優先権(Hak Prioritas)を行使することができ、最初の出願日がインドネシアにおいても実質的な出願日となります(意匠法第9条)。

(3) 申請

申請の際にはa.) 出願の日付、b.)意匠権者(Pendesain)の氏名、住所、および国籍、c.)出願人(Pemohon)の氏名、住所、および国籍、d.)優先権を主張する場合には、代理人の氏名と住所をインドネシア語で記載し、提出する必要があります(意匠法第11条)。また、a.)出願対象の意匠に関する実物、図面、または写真およびその説明書、b.)出願が代理人を通じて行われる場合には、委任状、c.)出願される意匠が出願人または意匠権者本人の所有物であることを証明書する宣誓書を提出する必要があります(意匠法第11条)。インドネシア国外からの出願には、国内での代理人を通じて出願を行わなければなりません(意匠法第14条)。

申請が受理されると3ヶ月以内に意匠広報などにて一般公開され、第三者から異議がないか確認されます(意匠法第26条)。異議申し立てがあった場合、法務人権大臣により任命された審査官(Pemeriksa)により審査が行われ、6カ月以内に異議の是非について判断されます(意匠法第26、27条)。審査基準を満たし、異議もなければ登録が認められ、登録証が発行されます(意匠法第29条)。

(4) 意匠権侵害

意匠権者は排他的権利を有し、研究および教育の目的での使用を除き、自らの同意なく、製造、使用、販売、輸出入、流通を行う者に対して、これを禁止する権利を有します(意匠法第9条)。

意匠権者は、故意かつ無断で、上記に関する行為を行った者に対して、損害賠償請求、該当する行為の差止め請求をすることができます(意匠法第46条)。また、違反した者には最長4年の拘禁および/または最大3億ルピアの罰金が科される可能性があります(意匠法第54条)。

発行 TNY Group

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: https://tny-lawfirm.com

・佐賀(TNY国際法律事務所)
 URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

 URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

 URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://gvalaw.jp/offices/philippines

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

・イギリス(TNY CONSULTING (UK) Ltd.)

 URL: https://uk.tny-legal.com/

・インド(TNY Services (India) Private Limited)

 URL:  https://tny-india.com/

・インドネシア(PT TNY CONSULTING INDONESIA)

 URL:  https://www.tny-indonesia.com/

Newsletterの記載内容は2025年4月25日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。