「インサイダー取引規制の概要」TNY Group Newsletter No.62
1.日本
(1) 会社関係者に対する規制
インサイダー取引は金融商品取引法によって禁止されています。
同法は、「会社関係者」が、その業務等に関する「重要事実」を知った場合には、当該重要事実が公表された後でなければ、当該上場会社等の株式の売買等の取引を行ってはならないとしています(金融商品取引法166条1項)。また、「会社関係者」から「重要事実」の伝達を受けた者(情報受領者)についても、同様に、「重要事実」の公表後でなければ、株式の取引を行うことができません(同条3項)。
「会社関係者」の例としては、①上場会社(上場会社の親子会社並びに当該上場会社が上場投資法人等である場合における当該上場会社の資産運用会社及びその特定関係法人を含む)の役職員(役員、従業員、アルバイト等)、②上場会社に対して会計帳簿閲覧請求権を有する株主、③上場会社と契約を締結中又は締結交渉中の者(取引先、顧問弁護士、会計監査を行う公認会計士等)が含まれます。
「重要事実」については、同法166条2項に列挙されており、新株発行や合併等、上場会社の株価に影響を与える情報が含まれます。
(2) 公開買付者等関係者に対する規制
公開買付者等関係者(公開買付者の役員等を含みます)が、公開買付の実施または中止に関する未公表の事実を知った場合には、当該事実が公表された後でなければ、当該公開買付にかかる上場会社の株式の売買等の取引を行ってはなりません(金融商品取引法167条1項)。また、公開買付等関係者から公開買付の実施または中止に関する未公表の事実の伝達を受けた者(情報受領者)についても同様の規制に服します(同条3項)。
(3) 罰則
インサイダー取引を行った者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその両方が科せられ(金融商品取引法197条の2第13号)、また、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業員等がインサイダー取引を行った場合には、当該個人が処罰対象となるほか、法人に対しても5億円以下の罰金が科せられます(同法207条1項2号)。このほか、インサイダー取引で得た財産は没収の対象となります(同法198条の2第1項1号)。
2.タイ
(1) インサイダー取引について
インサイダー取引については、証券取引法にその規定があります。
同法によれば、「インサイダー情報」とは、一般に公に開示されていない情報であって、有価証券の価格または価値の変動に重要な影響を及ぼす情報をいうと規定されています(証券取引法第239条)。
そのうえで、証券取引法は、一定の場合を除き、インサイダー情報を知っている者または保有している者が、自己または他人のために証券の売買やデリバティブ取引を行うことを禁止しています(証券取引法第242条1項)。また、相手方が、インサイダー情報を使って証券取引を行うことを知っている、または合理的に知り得る場合には、当該相手方にインサイダー情報を直接または間接的に伝達することも禁止しています(同条第2項)。
なお、証券取引法によれば、会社の取締役やその他の内部者においては、インサイダー情報を保有している者と推定され(証券取引法第243条)、またその近親者が、通常の取引とは異なる証券取引を行った場合には、インサイダー情報を保有していた者と推定されます(同法244条)。
(2) インサイダー取引を行った場合の罰則
証券取引法上、取締役その他インサイダー情報を開示した者と、当該インサイダー情報を証券取引に利用した者の双方に対して、懲役または罰金刑の刑事罰が存在します(証券取引法第296条)。また、他人に自身の名義の証券口座を使用させる等の名義貸し行為についても同様の刑事罰が課せられています。
その他、裁判所から、証券取引等の停止等の命令がなされることもあります(証券取引法第297/1条)。
3.マレーシア
(1) インサイダー取引について
マレーシアにおけるインサイダー取引は、2007年資本市場・サービス法(Capital Markets and Services Act 2007、以下「CMSA」といいます)によって規制されています。CMSAによれば、インサイダー(insider)とは、以下の条件を満たす者を指します(CMSA188条⑴)。
a. 一般に入手可能でない情報を保有しており、その情報が公に知られるようになった場合に、合理的な一般人をして、当該情報によって証券の価格や価値に重要な影響を及ぼすと考えられる情報であること。
b. 当該情報が一般的に入手不可能であることを知りまたは合理的に知り得べき立場にあること。
なお、インサイダーという用語は、通常、会社や証券取引所の役員、代理人、従業員を指しますが、裁判例(R v Evans & Doyle[1999]VSC 488事件)によれば、会社と無関係の第三者であっても該当する可能性があります。
(2) 規制内容
インサイダーは、当該情報に関連する証券について、次の行為を行うことが禁止されています(CMSA188条⑵)。
当該証券の取得または処分、あるいはそれを目的とした契約の締結
直接的または間接的に、他人による取得や処分、またはそれを目的とした契約の締結をあっせん・助長すること
さらに、当該情報に関連する証券が証券取引所において取引可能なものである場合には、インサイダーは当該情報を他人に伝達したり、そのような伝達を引き起こしたりすることが禁止されています(CMSA188条⑶)。
(3) 罰則
CMSAは、インサイダー取引に対して厳格な罰則を定めており、違反者は、最長10年の懲役および最低100万リンギット(RM1,000,000)の罰金が科される可能性があります(CMSA188条⑷)。
4.ミャンマー
⑴ インサイダーに関する規制の概要
ミャンマーの証券取引法第49条第1項(c)では、以下の行為を禁止しています。
- 未公開の重要な内部情報を基に、自らまたは他者のために証券を売買すること。
- 未公開の重要な内部情報を開示または提供し、他者に証券の売買を助言すること。
また、証券取引規則第183条では、虚偽または誤解を招く情報の拡散や、価格操作を目的とした取引も禁止されています。
5.メキシコ
(1) インサイダーに関する法律の概要
メキシコにおけるインサイダー取引の規制は、主に証券市場法(Ley del Mercado de Valores:LMV)に基づいて行われます。LMVは2005年に制定された連邦法であり、証券市場を公正、効率的かつ透明性の高い方法で発展させること、投資家の利益を保護すること、システミックリスクを最小限に抑えること、および健全な競争を促進することを目的としています。
(2) インサイダー情報の保有者に該当する者
インサイダー情報を保有しているとみなされる者の範囲は、主に以下のとおりです。
・ 株式等の発行元企業の内部関係者(取締役、監査役、CEO、重要役員、外部監査人など)
・ 当該企業の資本の10%(特定の場合は5%)以上を直接的又は間接的に保有する者または、その者が属する法人の内部関係者
・ 発行元企業と密接な関係を有する法人の役員や監査人
・ 発行元企業に対して重要な影響力を持つ者
・ 発行元企業に対して指揮権限を有する者
・ 上記の者と密接な関係を有する配偶者、親族、共同所有者、またはこれらの者と接触があった者
これらの者は、取得した情報について守秘義務を負っており、職務・地位・委任等に基づき正当な理由がある場合を除き、当該情報を使用したり第三者に伝達したりしてはなりません。なお、出資比率を計算する際には、親権下にある者が保有する株式や、信託に帰属し、信託者または受益者として関係する株式も含まれます。
(3) インサイダー取引として禁止される行為
インサイダー情報を保有する者は、以下の行為が禁止されています。
・ 株式等の発行元企業が発行する有価証券や、それを表す証券、またはその価格や相場がインサイダー情報の影響を受ける可能性がある金融派生商品(オプション証券やデリバティブ等)について、当該情報が公開されていない間に、直接または間接に売買やその指示を行うこと。
・ 当該インサイダー情報を職務上知る必要がある場合を除き、他人に提供または伝達すること。
・ 発行元企業が発行する有価証券や、それを表す証券、またはこれらを原資産とする金融派生商品について、情報がインサイダー情報である間に、投資判断に影響を与えるような助言や推奨を行うこと。
インサイダー情報を利用して行われた取引の相手方は、裁判所に対して損害賠償を請求することが可能です。この請求権は、取引が行われた日から5年間で時効となります。なお、メキシコ国外で行われた取引であっても、国内に何らかの影響を及ぼす場合には本法の適用対象となり、処罰の対象となることがあります。
6.バングラデシュ
バングラデシュは、2022年証券取引委員会規則(the Securities and Exchange Commission (Prohibition of Insider Trading) Rules, 2022)によってインサイダー取引が規制されています。同規則は、1969年証券取引条例(the Securities and Exchange Ordinance, 1969)、2012年マネーロンダリング防止法(The Money Laundering Prevention Act, 2012)と関連しています。
⑴ インサイダー取引の定義
インサイダー取引とは、証券取引委員会規則1条1項(n)で定義されており、「未公開の価格に敏感な情報に基づいて、受益者がファンドの証券またはユニットの購入、売却、またはその他の方法で譲渡する」こととされます。ただし、裁判所の命令、相続、または死亡した人からの没収によって行われた譲渡は含まれません。(同号但書)
受益者とは、同項(l)で定義されており、次の4つのカテゴリに該当する者、および、これらの該当する者から地位、関係などを通して価格に敏感な情報を知る機会がある者と定義されます。役員、取締役、従業員、近親者、さらに支配関係のある利害関係人、利害関係機関(同項(p))も含まれるため、定義上はかなり広範な範囲が対象となります。
・ 会社の取締役、スポンサー、大株主、経営代理人、銀行など
・ 会社のファンドマネージャーやファンドの保管などの契約に関する当事者であり、信用格付け会社、コンサルタントなど
・ 一般的な株式ブローカー、株式ディーラー、市場仲介者など
・ 金融商品の規制当局など
「価格に敏感な情報」とは、同規則3条1項で、定義されており、財務諸表や財務結果などの財務の基本的情報、配当に関する情報、合併などの企業構造に関する情報、資本構成の変更に関する情報、事業の拡大に関する情報、ファンド運用の情報、規定された委員会が価格に敏感な情報として定めた情報、および、同委員会が官報に掲載して指定する情報などの8種のカテゴリに含まれる情報が対象となります。
⑵ 禁止される行為
受益者または関連者が、直接的または間接的にインサイダー取引に関与したり、そのような取引を支援する、情報を提供したりすることは禁じられています(同法5条1項)。また、会社のスポンサー、取締役、主要な従業員、監査人、コンサルタント、および関係者などは、会計年度末の2か月前から取締役会による財務諸表の最終承認までの間、会社の株式、ファンドなどの取引はできません。(同法5条2項)
さらに、2012年のマネーロンダリング防止法 第2条(cc)(25)により、インサイダー取引を規制対象としているため、このような行為があった場合、金銭的利益が犯罪収益としてみなされ、調査、資産の差し押さえ、および起訴の対象となります。
7.フィリピン
(1) インサイダー取引とは
インサイダー取引とは、「インサイダー」(Insider)が「重要な未公表情報」(material nonpublic information)を保有した状態で、証券を売買する行為をいいます。
「重要な未公表情報」とは、以下のいずれかに該当する情報を指します。
・ 一般に公表されておらず、かつ公表された場合に市場が当該情報を消化する合理的な時間を経た後、当該証券の市場価格に影響を及ぼすと合理的に考えられる情報
・ 当該証券の「買い」「売り」または「保有」を判断するにあたり、通常の合理的な投資家であれば重要と判断するであろう情報
また、「インサイダー」とは以下の者を指します。
・ 発行体
・ 発行体の取締役、役員、または発行体を支配している者、発行体によって支配されている者、発行体と共通の支配下にある者
・ 発行体または証券に関する重要な未公表情報にアクセスできる関係者
・ インサイダーから重要な未公表情報を得た者であり、当該情報源がインサイダーであることを知る者
・ インサイダーの配偶者(内縁を含む。)および姻族、または二親等以内の親族
(2) インサイダー取引に関連する規制行為
インサイダー取引に関連して、以下の行為が規制されています。
・ 重要な未公表情報を保有した状態での売買
株主が重要な未公表情報を保有している状態で証券を売買することは違法とされます。ただし、以下のいずれかが証明されれば違法性が否定されます。
- 当該情報がインサイダーから得たものでないことが証明された場合
- 取引相手が特定されており、インサイダーがその相手に当該情報を開示していた等、その相手も当該情報を保有していたことが証明された場合。
・ 重要な未公表情報の伝達(Tipping)
インサイダーが重要な未公表情報を第三者に伝達し、その第三者が当該情報を保有した状態で証券取引を行う可能性があることを知っていた、または予見できた場合、そのような伝達行為は違法とされます。
・ 株式公開買付けに関して未公表情報を利用した取引
株式公開買付けに関連する重要な未公表情報を以下のいずれかの者から取得し、かつ当該情報が未公表であることを知っていた、またはその可能性を認識していた者は、当該証券を売買することは違法とされます。
- 株式公開買付けを行う者
- 株式公開買付けを行う者の代理人
- 発行体
- 発行体のインサイダー
(3) 民事責任
規制行為に違反した者は、その期間に同一の証券を売買した投資家に対して、民事上の賠償責任を負います。ただし、以下の事実を証明できれば責任を免れることができます。
・ 投資家が当該情報を知っていたこと
・ 仮に投資家が当該情報を知らなかったとしても、同じ価格で売買を行っていたであろうこと
また、重要な未公表情報を伝達した者も、当該情報に基づいて取引を行った者と連帯して責任を負います。
⑷ 刑事罰
違反行為をした者は、以下の罰則を受けるおそれがあります。
・ 5万ペソ以上500万ペソ以下の罰金
・ 7年以上21年以下の懲役
なお、違反者が法人である場合、当該法人だけでなく、その違反に関与した役員にも罰則が科される可能性があります。
8.ベトナム
(1) 2019年証券法に基づく法的規定
2019年証券法第12条第2項によると、インサイダー情報を使用して自己または他人のために証券を売買すること、インサイダー情報を開示または提供すること、インサイダー情報に基づいて他人に証券の売買を助言することが、厳格に禁止されています。
また、同法第4条第44項では、インサイダー情報とは、公開会社、上場組織、取引登録組織、公募ファンド、公募証券投資会社に関する情報のうち、公表されておらず、かつ公表された場合に当該組織の証券価格に重大な影響を及ぼす可能性のある情報を指すものと規定されています。
(2) 違反に対する制裁
① 行政責任
政令156/2020/ND-CP第5条第3項および第35条(政令128/2021/ND-CPにより改正)によれば、違法に得た利益額を基準に法人の場合は10倍の、個人の場合は5倍の行政罰金が科されますが、法人に対しては30億VND、個人に対しては15億VNDを超えないものとされています。違法に得た利益が存在しない場合、または算定された罰金額が、法人に対して30億VND、個人に対して15億VND未満である場合には、最大で法人に対して30億VND、個人に対して15億VNDの行政罰金が科されます。その後、違反当事者には、インサイダー取引により得た違法利益の返還という是正措置が適用されることがあります。
さらに、証券会社、ファンド運用会社、およびベトナムにおける外国証券会社またはファンド運用会社の支店に対しては、1か月から3か月の期間、証券業務またはサービスの停止処分が適用されます。
② 刑事責任
2015年刑法(2017年改正)第210条に基づく、証券取引におけるインサイダー情報の使用に対する刑事罰は以下のとおりです。
- 開示されていないインサイダー情報を使用して証券を取引する者、または当該情報を開示・提供する者、他人にその情報に基づいて取引を助言する者で、違法に3億VND以上10億VND未満の利益を得た場合、または投資家に5億VND以上15億VND未満の損失を与えた場合は、5億VND以上20億VND以下の罰金、または6か月以上3年以下の懲役に処されます。
- 加重事由がある場合:違反行為が以下のいずれかに該当する場合、20億VND以上50億VND以下の罰金、または2年以上7年以下の懲役に処されます。加重事由には、組織的に犯行を行った場合、違法利益が10億VND以上である場合、投資家の損害が15億VND以上である場合、再犯または危険な常習犯である場合が含まれます。
違反者には、5,000万VND以上2億VND以下の罰金や、1年から5年の間、一定の職務に就くことや特定の職業を行うことを禁止されるという付加的制裁を受ける場合もあります。
商業法人が当該違反行為を行った場合、(i) の違反に対しては、10億VND以上50億VND以下の罰金、(ii) の違反に対しては、50億VNDから100億VNDの罰金が科されます。さらに、特定の業種での事業活動または資金調達が。1年から3年の間、禁止される可能性があります。
9.インド
⑴ 概要
インサイダー取引については、1992年インド証券取引委員会法(Securities and Exchange Board of India Act,1992。以下「法」といいます。)および2015年インド証券取引委員会(インサイダー取引禁止)規則(Securities and Exchange Board of India (Prohibition of Insider Trading) Regulations, 2015 。以下「規則」といいます。)が規制しています。
規則によると、「インサイダー」(insider)は、正当な目的、職務の遂行、または法的義務の履行を促進する場合を除き、上場会社または上場を予定している会社の「未公表価格感応情報」(unpublished price sensitive information)について、他者に対し、伝達、提供またはアクセスの提供をしたり、未公表価格感応情報を保有した上で株式の取引を行ったりすることが禁じられています(規則3条(1)、4条)。また、いかなる者であっても、正当な目的、職務の遂行、または法的義務の履行を促進する場合を除き、インサイダーから未公表価格感応情報を取得することはできません(規則3条(2))。
同規則上「インサイダー」(insider)とは、会社の関連者(取締役や従業員等、会社とつながりがあり、未公表価格感応情報にアクセスすることが合理的に予測される者)または未公表価格感応情報を保有している者をいいます(規則2条(g))。また、「未公表価格感応情報」(unpublished price sensitive information)とは、会社またはその株式に直接的または間接的に関連する一般に公表されていない情報であり、一般に公表されると株式の価格に重大な影響を及ぼす情報をいい、財務情報、配当に関する情報、資本構成の変更、合併・買収等に関する情報等が含まれます(規則2条(n))。
(2) 罰則
未公表価格感応情報に基づき株式の取引を行ったり、未公表価格感応情報を他者に伝達等した場合には、100万ルピー以上2億5千万ルピー以下または当該取引による利益の3倍のいずれか高い方の罰金が科せられます(法12G条)。
10.アラブ首長国連邦(ドバイ)
(1) インサイダー取引について
アラブ首長国連邦(UAE)では、連邦証券商品局及び市場に関する連邦法2000年第4号(以下「証券法」といいます。)に基づき設立された証券商品局(Securities and Commodities Authority:FCA)の下で、アブダビ証券取引所(Abu Dhabi Securities Exchange:ADX)とドバイ金融市場(Dubai Financial Market: DFM)の2つの市場があります。インサイダー取引に関しては、利益を得るために株価に影響を与える非公開情報を利用することを禁じ(第37条)、自らの地位を利用して取得した非公開または秘匿情報に基づき証券取引を行うことを禁じ、特に上場企業の社長、経営陣及び従業員については、市場における株式の売買に関して内部情報を利用することを禁じています(第39条)。また、インサイダー情報に基づく取引は無効とされます。
(2) 違反に対する措置
証券法第37条及び第39条の違反者には、3月以上3年以下の懲役、または10万AED(UAEディルハム)以上1000万AED以下の罰金、若しくはその双方が課されます(第41条)。
11. インドネシア
(1) 定義と対象
インドネシアでのインサイダー取引に関する規定は、1995年資本市場法第8号(以下、「資本市場法」といいます)に記載されています。
資本市場法において、インサイダー情報とは、内部者が保有しており、一般には公開されていない重要情報と定義され、内部者には、(a)上場会社または公開会社の取締役、監査役、または従業員、(b) 上場会社または公開会社の主要株主、(c)上場会社または公開会社との職務・専門職または業務関係により、インサイダー情報を得ることが可能な個人、(d) (a)〜(c)に該当していた者で、過去6か月以内にその地位を退いた者が含まれます(資本市場法第95条)。また、内部者から不正にインサイダー情報を取得した者も禁止規定の対象となります。
(2) 禁止規定と罰則
インサイダー情報を用いて、他者に当該証券の売買を促すこと、インサイダー情報を第三者に提供すること、不正にインサイダー情報を取得し、それを基に取引を行うことは禁止されています。(資本市場法第96、97条)。
上記に違反した場合、最長10年の拘禁および最大150億ルピア(Rp15,000,000,000)の罰金が科される可能性があります(資本市場法第104条)。