「製造物責任に関する法制度の概要について」TNY Group Newsletter No.67
第1.【お知らせ】ウェビナーのご案内
ウェビナーの開催についてご案内いたします。
インド事務所の松下智宗弁護士、Medhiyaa Ramesh弁護士が、インド進出をご検討中の日本企業様向けにインド法務ウェビナーを行います。
今回のウェビナーでは、インドの労務について現地の法令に基づき説明いたします。
参加は無料となっておりますので、奮ってお申込みください。
本ウェビナーがインドへの進出を検討中の日系企業様のビジネスに少しでも貢献できれば幸甚です。
【日程】
日時:2025年11月26日(水)
12時30分~13時30分(インド時間)、16時~17時(日本時間)
※申込締切は2025年11月19日(水)までとなっております。
※開催方法:オンライン(Zoom)
※ 参加費:無料
申込方法につきましては、下記URLからご確認ください。
第2.製造物責任に関する法制度の概要
1.日本
(1) 製造物責任法
日本における製造物責任については、製造物責任法が規定しています。
同法は、製造物の欠陥が原因で、生命・身体・財産に関する損害が生じた場合における製造業者等の損害賠償責任について定めるものであり、不法行為責任(民法709条)の特則として位置づけられています。
通常、不法行為に基づく損害賠償を請求する場合には、加害者の過失を立証することが求められますが、製造物責任法では、このような過失の立証を不要とし(無過失責任)、消費者の保護を強化しています。
製造物責任法上、「製造物」とは、「製造又は加工された動産」と定義されています(製造物責任法2条1項)。
また、「欠陥」とは、「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます(同法2条2項)。
製造物責任に基づく損害賠償を請求する場合には、かかる製造物の欠陥を立証する必要があります。
(2) 責任主体
製造物責任法上、製造物責任を負う者は以下のとおりです(製造物責任法2条3項)。
①当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者
②自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者又は当該
製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
③上記②のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造
物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者
(3) 免責事由
製造物責任法上、製造物責任を負う場合であっても、以下の事由を立証することができる場合には、倍賞
責任は免責されます(製造物責任法4条)。
①当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。
②当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。
2.タイ
タイでは、製造物責任に関し、Liability for Damages Arising from Unsafe Products Act B.E. 2551が制定されています。
(1) 対象物
「製造物」とは、販売のために製造または輸入されたあらゆる種類の動産をいい、農作物を含みます。「製造」には、製作、混合、調理、装飾、組立、発明、変形、改造、選別、再包装、冷凍、放射線照射その他これに類する行為が含まれます。また、「農作物」とは、農業(耕作、園芸、畜産、水産、養蚕、きのこの栽培など)によって生産された製品(ただし、天然作物は除く)をいうとされています(同法第4条)。
(2) 責任主体
全ての事業者は、消費者に販売された危険な製造物によって損害が生じた場合、故意または過失の有無を問わず、連帯してその損害を賠償する責任を負うとされています(同法第5条)。「事業者」とは、次のいずれかに該当する者をいうとされています(同法第4条)。
- 製造者または製造を請け負った者
- 輸入者
- 製造者、請負者または輸入者が特定できない製品の販売者
- 自らの名称、商号、商標、表示、またはその他の方法により、製造者、請負者または輸入者であると示している者
このように、単なる販売者であっても、製造者を特定できない場合や、自らを製造者と見せかけるような表示を行っている場合には、責任を問われる可能性があります。
(3) 消費者の立証責任
事業者に対して責任を問うためには、被害を受けた消費者または第10条に定める代理人は、当該製造物を通常の方法で使用・保存していたにもかかわらず損害が生じたことを証明すれば足り、どの事業者によって損害が生じたかを証明する必要はないとされており(同法第6条)、消費者の立証責任が比較的軽減されています。
(4) 免責規定
事業者は、次のいずれかを証明した場合には、責任を免れることができるとされています(同法第7条)。
- 当該製造物が危険な製造物ではないこと
- 被害を受けた消費者が製造物の危険性を認識していたこと
- 製造物に正確かつ明確な使用方法、保存方法、警告または関連情報が表示されているにもかかわらず、不適切な使用または保存によって損害が生じたこと
(5) 懲罰的損害賠償
事業者が製造物の危険性を認識しながら製造・輸入・販売した場合、または重大な過失により認識しなかった場合、または危険性を認識した後に適切な措置を講じなかった場合には、裁判所は懲罰的損害賠償を命ずることができるとされており、注意が必要です。この懲罰的損害賠償は、実際の損害額の2倍を超えないものとされています(同法第11条2項)。
3.マレーシア
⑴ 概要
製造物責任は、1999年消費者保護法(Consumer Protection Act 1999、以下「CPA」といいます。)によって規律されており、同法の第X部(第66条から第72条)がこれを定めています。この部分において、欠陥製品に対する無過失責任(strict liability)制度が導入されています。その中心的な原則は、CPA第68条⑴において「製品の欠陥により損害が全部または一部生じた場合には、責任が課される」と規定されている点にあります。すなわち、請求者が立証すべき事項は、以下の3点のみで、加害者の過失を立証する必要はありません。
- 製品に欠陥があること
- 損害が生じたこと
- 欠陥と損害との間に因果関係があること
なお、ここにいう「損害」とは、CPA第66条⑴において「死亡または人身傷害、または土地を含む財産の喪失または損害」と定義されています。さらに、CPAに基づく責任は、通知や契約によって免除または制限することはできません(CPA第71条)。
⑵ 責任の主体
CPAの下では、次の者が損害に対して責任を負う可能性があります(CPA第68条⑴)。
- 製品の製造業者
- 自己の氏名または商標その他の標章を製品に付することにより、当該製品の製造業業者であることを表示した者
- 業として製品を流通させるために当該製品を輸入した者
この包括的な規定により、いずれの流通段階にある者も責任を免れることができない仕組みとなっています。
4.ミャンマー
(1) 製造物責任の枠組み
ミャンマー法には、製造物責任を独立に定める特別法は存在せず、当該責任は主としてコモンローに基づく不法行為責任等に基づくものです。契約当事者間においては契約上の瑕疵担保責任が併せて問題となる場合があります。
また、2019年 消費者保護法に基づき、製造者・販売者・輸入業者などが、保証期間内の欠陥商品に対して責任を負い、回収義務・表示義務・補償権などが認められています。
(2) 消費者救済
消費者保護法上は、保証された商品が保証期間内に品質を満たさないまたは商品情報が完全でない場合、消費者は、修理、交換または返品、商品価格の返還、もしくは当該商品と同等の品質の商品との代替を請求できます。また、損害が商品情報の不提供・誤表示による場合は、損害賠償を請求する権利が認められています。
5.メキシコ
(1) 製造物責任の枠組み
メキシコ法には、製造物責任を独立に定める特別法は存在せず、当該責任は主として民法上の不法行為責任等の規定に基づくものです。契約当事者間においては契約上の瑕疵担保責任が併せて問題となる場合があります。メキシコは連邦制を採用しており、各州において、製品の欠陥に起因する損害について製造者等の民事責任が定められています。
また、連邦消費者保護法(Ley Federal de Protección al Consumidor)には供給者が消費者に対して責任を負う旨の規定が含まれており、消費者と供給者との関係を規律する枠組みを提供しています。同法は消費者の生命・健康・安全の保護や、財産的・精神的損害の防止および救済を基本原則として掲げており、これに基づき連邦消費者保護庁(Procuraduría Federal del Consumidor:PROFECO)が製品安全に関する監督や違反行為への是正措置を担っています。
(2) 責任主体
メーカーのみならず、流通経路に関与した複数の当事者が責任主体となり得ます。製品の製造・流通に関わる者は、その行為または不作為が欠陥や損害の発生につながった場合には責任を問われる可能性が否定できません。例えば部品サプライヤーが提供した部品の欠陥に起因して損害が生じた場合には当該サプライヤーが、流通業者の不適切な表示や指示欠如によって事故が生じた場合には当該業者が、それぞれ責任主体とみなされるのが相当です。なお、行政上は消費者保護法により供給者全般に対し安全な製品を提供する義務が課されており、違反行為は行政処分や制裁の対象ともなります。
(3) 消費者救済
消費者保護法上は、製品またはサービスに、通常の使用目的に適さない隠れた欠陥・瑕疵があり、品質または使用可能性を低下させる、あるいはその性質上期待される安全性を欠く場合に、消費者は、契約物の返還、契約の解除、価格の減額を選択できるとされています。そして、いずれを選んだ場合でも、割増金または補償を請求することが可能です。なお、これらの規定は、損害が発生している場合の損害賠償請求を妨げるものではありません。
また、PROFECOは検査等により、法令違反や危険性が認められた商品・サービスについて消費者に警告を発し、他の当局が発した警告を公表するほか、供給者に対してリコールを命じることがあります。製品等が消費者の生命または健康を脅かすおそれがある場合には、修理や交換を命じ、必要に応じて市場からの撤退や廃棄を指示します。
さらに、集団訴訟(クラスアクション)による救済制度が設けられており、共通の被害を受けた消費者のグループが代表者を通じて訴訟を提起することが可能です。被害者グループ自身による集団訴訟提起のほかに、PROFECO等の行政機関も原告として集団訴訟を提起または支援する仕組みが整えられています。
6.バングラデシュ
(1) 製造物責任の枠組み
バングラデシュでは、製造物責任を独立に定める特別法は存在なく、主としてコモンローに基づく不法行為責任等に基づくものとなります。契約当事者間において生じた場合は、契約上の瑕疵担保責任が併せて問題となる場合があります。
2009年消費者保護法や2023年医薬品・化粧品法のように、特定の商品又は役務について、消費者が金銭、健康又は生命に損害を受けた場合に、製造者の責任を規定する法律があります。販売に直接起因する製造物責任の請求については、売買取引法(Sale of Goods Act, 1930)および契約法(Contract Act, 1872)が関連します。
(2) 責任主体
2009年消費者保護法では、製造者、販売者、提供者の責任を定め、行政上、刑事上の責任を負うことが定められています。
消費者にとって有害で倫理基準にも反する行為を反消費者的行為として定義しており(2条20項各号)、同行為には次のような行為が例として挙げられます。
- 商品、医薬品、またはサービスを、関連法規で定められた定価を超える価格で販売ないし提供すること
- 不純物が混入した商品や医薬品について、人の健康に極めて有害であり、既存の法によって禁止されている成分が含まれていることを知りながら販売ないし提供すること
- 商品やサービスを販売する目的で虚偽の広告を流すこと
- 合意した価格で商品やサービスの提供をしないこと
- 当初表示した数量または重量より少ない数量または重量で販売すること
- 商取引において計量器を操作して不正確な重量を表示すること
同法4章以下において、反消費者的行為に該当する各違法行為について、罰則が定められています。その中には、過失等により、サービスの利用者の財産、健康、生命等に損害を与える行為(同法53条)もあります。
(3) 消費者救済
2009年消費者保護法では、同一の係争事項について既に刑事訴訟が進行しており、地方管轄権を有する地方裁判所に対し、同法に基づく適切な提訴を行える場合、民事訴訟を提起する権利が認められています。
7.フィリピン
フィリピンでは、消費者法(The Consumer Act of the Philippines)によって、製品の欠陥により消費者(商品を購入する個人等)が損害を受けた場合の製造者等の責任(製造物責任)が定められています。
(1) 責任の主体(消費者法97条)
消費者法により、製造者(manufacturer)や輸入者(importer)等は、製品の欠陥によって消費者に生じた損害について責任を負います。また、製造者や輸入者を特定できない等の場合には、販売者(tradesman or seller)も同様の責任を負います(以下、「製造者等」といいます)。
(2) 過失の必要性(消費者法97条)
この責任は過失の有無に関係なく発生する無過失責任であり、消費者は製造者等の過失を立証する必要がありません。
(3) 欠陥の判断基準(消費者法97条)
製品が「正当に期待される安全性を備えていない」(the safety rightfully expected of it)とき、その製品は欠陥があると判断されます。判断にあたっては、通常想定される使用方法および危険性などが考慮されます。
(4) 免責事由(消費者法97条)
製造者・輸入者等は、「消費者または第三者のみに過失があること」等を証明した場合には、製造物責任を免れることができます。
(5) 消費者が選択できる救済手段(消費者法100条)
製品の品質に欠陥がある場合、製造者等は消費者の請求を受けてから原則として30日以内に欠陥を修理する必要があります。この期間内に修理が行われないときは、消費者は製品の交換や代金返還等を請求することができます。
(6) 免責の禁止(消費者法104条、106条)
消費者法は、製造者等が欠陥を知らなかったことを理由に責任を免れることを認めていません。また、契約書において製造者等の責任を免除・軽減する条項を定めても無効とされます。
(7) 時効(消費者法169条)
製造物責任に関する請求は、取引が完結した日から2年以内に行う必要があります。ただし、隠れた欠陥(hidden defects)がある場合は、欠陥を発見した時点から2年以内に請求することができます。
また、時効の起算点について例外を認めた判例があります(MAZDA Quezon Avenue v. Alexander Caruncho)。この判例では、契約に3年間の保証期間が設けられていたことなどを考慮し、時効の起算点を取引完了時ではなく、保証期間の満了時とする判断が示されました。
8.ベトナム
(1) 商品によって生じた損害に対する責任
2007年製品および商品の品質に関する法律第60条に基づき、定められた品質基準を満たさない商品により生じた損害については、賠償が行われるものとされています。これに該当する損害には、以下のものが含まれます。
- 当該商品の価値に関する損失、およびそれによって損傷または破壊された財産の価値に関する損失
- 人命または健康に対する損害
- 当該商品または関連する財産の使用または利用に関連する利益の喪失
- 損害の防止、軽減、または回復のために要した合理的な費用
一般原則として、製品および商品の品質に関する規制に違反して生じた損害は、十分かつ適時に賠償されなければなりません。損害賠償は、当事者間の合意によって、または管轄権を有する裁判所または仲裁機関の決定に基づいて行われます。
さらに、2023年消費者権利保護法は、事業体または個人が提供した欠陥のある製品または商品によって消費者の生命、健康または財産に損害が生じた場合には、当該事業者または個人がその欠陥の存在を知らなかった場合や、過失がなかった場合であっても、損害を賠償する責任を負うことを規定しています。ただし、(3)③に示されている場合を除きます。
(2) 損害賠償責任を負う主体
製造業者および輸入業者は、当該製造業者または輸入業者の過失により、申告された適用基準または対応する技術規格に適合しない欠陥商品のために損害が生じた場合には、販売業者または消費者に対して損害を賠償する責任を負います。ただし、(3)①に示されている場合を除きます。
販売業者は、商品が申告された基準または適用される技術規格に適合していることを確保しなかった過失により損害が生じた場合には、購入者または消費者に対して損害を賠償する責任を負います。ただし、(3)②に示されている場合を除きます。
消費者権利保護法に基づく事業体および個人は、製品または商品に欠陥がある場合に損害を賠償する責任を負います。この事業体および個人には、製造行為、輸入行為、製品または商品に商号を付す行為、製品および商品の製造業者または輸入業者として識別可能となる商標その他の商業上の標識を使用する行為、製品および商品の商業上の仲介活動を行う行為、消費者に対して製品および商品を直接提供する行為、その他関連法令の規定により製品および商品に関して責任を負うとされる事業体および個人が含まれます。
(3) 損害賠償責任の免除
① 製造業者および輸入業者
製品または商品の製造業者および輸入業者は、損害が次のいずれかの事由に該当することを立証できる場合には、損害賠償責任を負いません。
- 消費者が、有効期限を過ぎた製品または商品を故意に使用した場合、または潜在的なリスクに対する明示的な警告があったにもかかわらず使用したことにより損害が発生した場合
- 苦情の申立てまたは訴訟提起の法定期間が経過している場合
- 損害発生時点における科学技術の水準からみて、当該製品または商品の欠陥を発見することが不可能であり、かつ消費者がその欠陥について十分な情報提供を受けたうえで故意に使用した場合
- 損害が専ら販売業者または消費者の過失により生じた場合
② 販売業者
販売業者は、以下の場合には損害賠償責任を負いません。
- 消費者が、有効期限を過ぎた商品を故意に使用した場合、または既に欠陥があることを認識しながら使用した場合に損害が発生した場合
- 苦情の申立てまたは訴訟提起の法定期間が経過している場合
- 当該商品の欠陥が、製造時または輸入時において、権限を有する国家機関が定めた強制的要件を製造業者または輸入業者が遵守したことにより生じた場合
- 損害が専ら消費者の過失により生じた場合
③ 事業体および個人
事業体および個人は、次の場合には損害賠償責任を免除されます。
- 製品または商品の欠陥が、当該製品または商品によって損害が発生する時点までの世界的な科学技術水準に照らして発見不可能であることが証明された場合
事業体または個人が法令に定める措置をすべて講じ、消費者が十分な情報提供を受けたにもかかわらず、欠陥のある製品または商品を故意に使用して損害を生じさせた場合
9.インド
インドにおける製造物責任については、2019年消費者保護法(Consumer Protection Act, 2019。以下「消費者保護法」といいます)が定めています。
消費者保護法は、製造物責任(product liability)を、製造物またはサービスの製造者または販売者が、製造または販売された製造物またはサービスの欠陥(defect)によって消費者に生じた損害を賠償する責任であると定義しています(消費者保護法2条(34))。
この点、欠陥(defect)とは、法律または(明示・黙示を問わず)契約に基づき維持することが求められている、または、当該製造物について事業者が主張している品質、数量、効力、純度、基準等に関する不備をいいます(消費者保護法2条(10))。
| 製造物製造者 (product manufacturer) | 製造物に関連するサービス の提供者 (product service provider:) | 製造物販売業者 (product seller) |
| ① 製造物に製造上の欠陥がある場合 ② 製造物に設計上の欠陥がある場合 ③ 製造仕様からの逸脱がある場合 ④ 製造物が明示的な保証に適合していない場合 ⑤ 製造物に損害を防止するための適切な使用方法の説明または不適切な使用や誤った使用に関する警告が含まれていない場合 | ① 提供したサービスが、現行法、契約、その他の規定に基づき求められる品質、性質、履行方法において、欠陥等があった場合 ② 作為・不作為、または、故意・過失による情報隠蔽により損害が発生した場合 ③ 損害を防止するための適切な指示または警告を発しなかった場合 ④ サービスが明示的な保証または契約条件に適合していなかった場合 | ① 損害を引き起こした製造物の設計、試験、製造、包装、またはラベル表示について実質的な支配力を行使していた場合 ② 製造物を変更または修正し、当該変更または修正が損害を引き起こす実質的な要因となった場合 ③ 製造物製造者による明示的な保証とは独立して、製造物について明示的な保証を行ったが、当該製造物が製造物販売業者の明示的な保証に適合していなかった場合 ④ 当該製造物の製造物製造者が不明であるか、または判明していても、通知、訴状、令状の送達が当該製造物製造業者に対して実施できないか、またはインドで施行されている法律の対象とならないか、または制定された、または制定される予定の命令が当該製造物製造業者に対して執行できない場合 ⑤ 当該製造物の組み立て、検査、または保守において合理的な注意を払わなかった、もしくは、当該製造物の販売中に、製造物に関連する危険性または適切な使用に関する製造物製造業者の警告または指示を伝えず、かつ、当該不履行が損害の直接の原因であった場合 |
同法のもと、各事業者は、以下の場合に賠償責任を負うことになります(消費者保護法84~86条)。
10.アラブ首長国連邦(ドバイ)
(1) 概要
アラブ首長国連邦(UAE)では、製造物責任を独立に定める特別法は存在しません。製造物の安全や消費者保護について、製造物安全法(2018年連邦法第10号)、消費者保護法(2020年連邦法第15号)及びこれらの施行令によって規定されています。
(2) 消費者救済
消費者保護法第4条は、購入・使用した商品・役務について正しい情報を得ること、紛争について公正かつ迅速な解決を得ること、商品・役務の購入・使用の結果生じた人的物的損害に対して公正な賠償を得ること等を消費者の権利として規定しています。その上で、商品または役務の利用の結果生じた人的および物的損害について、消費者が既存の法律に従って損害賠償を請求する権利を有する旨を確認するとともに、これに反する合意は無効であることを定めています(第24条第1項)。
(3) 製造者等の責任
消費者保護法は、消費者の行為に起因しない、仕様、製造、供給上の誤りの結果、消費者に損害を与え又はその使用を妨げる、商品・役務の品質、数量、効果、外観の違い、寸法又は構成を欠くことを欠陥(defect)、製造又は提供後に消費者に損害を与え又はその使用を妨げる商品・役務に生じるものを不備(flaw)、と定義し(第1条)、フリーゾーンを含むUAE内のあらゆる商品および役務並びにそれに関連した供給者、広告主、代理店(UAEに登録するeコマース提供者を含む)の行為に対して適用され(第3条)、供給者等には、販売した商品につき特定期間のあらゆる保証を、提供した役務につきその性質に相応した期間中に欠陥・不備がないことの保証を行う義務(第10条)、欠陥・不備が発見されたときには無償で修繕、交換、返金等の救済行為をとる義務(第12条)等が課され、違反者には、2年以下の拘禁刑および1万以上200万UAEディルハム(AED)以下の罰金が課され、再犯の場合にはその2倍とする(第29条)等の罰則が定められています。
また、製造物安全法は、製品の安全性につき定義し(第1条)、フリーゾーンを含むUAE全域で流通するあらゆる物品(医薬品、芸術作品、補修等を要する中古品を除く)に適用され(第3条)、物品の製造者、代理店、輸入者、および物品の安全に責任を有する物品流通に関与する者に、それぞれの物品に適用される法令、安全に関する基準を遵守する義務(第4条)、安全でない物品の国内流入を阻止し、物品が通常の使用において安全であることを保証し、安全でないことが発見された際には予防・是正措置を行う義務(第6条)等を課し、安全性を欠く物品を流通させた場合等には拘禁刑または50万以上300万AED以下の罰金とする(第8条)等の罰則を定めています。
11. インドネシア
(1) 製造物責任の枠組み
インドネシアでの製造物責任は、消費者保護に関する法律1999年第8号(以下「消費者保護法」といいます)によって規定されています。
消費者保護法において、事業者が製造または販売した商品や提供したサービスによって、消費者に対する損害が生じた場合、事業者はその損害を賠償する責任を負います(消費者保護法第19条)。
(2) 責任主体
責任主体は、商品・サービスの製造・販売をする事業者、商品・サービスの輸入者です。ただし、損害が消費者の過失による場合には、免責されますが、事業者が消費者の過失を立証する必要があります(消費者保護法第22条)。
責任主体のうち、他の事業者に販売する者は、①販売先の他の事業者がいかなる変更を加えることもなく、商品および/またはサービスを消費者に販売した場合や、②販売先の他の事業者が、販売者により改編が加えられたことを知らずに、見本と不一致があることや、品質・成分に不一致があるような契約に適合しない、相当でない商品、サービスを消費者に提供し、損害が発生した場合にも、責任を負います(消費者保護法第24条)。
一方、製造事業者は、①商品の流通が意図されていなかった場合、②製品の欠陥が製造事業者の管理を離れた後、新たに生じた場合、③欠陥が品質基準に関する法令を遵守した結果である場合、④商品の購入から4年または、事業者と消費者で合意した期間を経過した場合には、免責されます(消費者保護法第27条)。
(3) 消費者救済
消費者は、受領した商品またはサービスが契約に適合しない、または相当でない場合に、修理、交換または返品、商品価格の返還、もしくは当該商品と同等の品質の商品との代替を請求できます。(消費者保護法第4、7条)。 また、損害が生じた場合には、取引日から7日以内に販売者による返金、交換等の対応が必要となり、本規定に応じない場合、消費者は、地方判所および消費者紛争解決機関(BPSK)に提訴できます(消費者保護法第19、45条)。
発行 TNY Group
【TNYグループ及びTNYグループ各社】
・TNY Group
URL: http://www.tnygroup.biz/
・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)
URL: https://tny-lawfirm.com
・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/
・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)
URL: http://www.tny-legal.com/
・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)
URL: http://www.tny-malaysia.com/
・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)
URL: http://tny-myanmar.com
・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)
URL: http://tny-mexico.com
・エストニア(TNY Legal Estonia OU)
URL: http://estonia.tny-legal.com/
・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)
URL: https://www.tny-bangladesh.com/
・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)
URL: https://gvalaw.jp/offices/philippines
・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)
URL: https://www.kt-vietnam.com/
・イギリス(TNY CONSULTING (UK) Ltd.)
URL: https://uk.tny-legal.com/
・インド(TNY Services (India) Private Limited)
URL: https://tny-india.com/
・インドネシア(PT TNY CONSULTING INDONESIA)
URL: https://www.tny-indonesia.com/
Newsletterの記載内容は2025年8月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。