「労働者派遣制度の概要」TNY Group Newsletter No.68
1.日本
(1) 労働者派遣法
日本における派遣労働(労働者派遣)は労働者派遣法によって規律されています。
同法上、「労働者派遣」とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいいます(労働者派遣法2条1号)。
そのため、派遣労働者の雇用主は派遣元となりますが、派遣労働者の指揮命令については派遣先の指揮命令に服す形となります。
なお、労働者派遣業を行うためには、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません(労働者派遣法5条)。
また、港湾運送業務、建設業務、警備業といった一定の業務については、労働者派遣業を行うことが禁止されています(労働者派遣法4条1項)。
(2) 派遣元と派遣先の責任
派遣労働者の雇用主は派遣元であり、雇用主としての責任は原則として派遣元が負い、就業規則も派遣元のものが適用されます。そのため、派遣元は、賃金の支払いや有給休暇の付与等、雇用主としての基本的な責任を負います。
他方で、派遣先も、派遣労働者を指揮命令して労働させる立場として一定の責任を負っており、労働時間、休憩、休日、時間外及び休日労働に関して労働基準法に遵守する責任があります(労働者派遣法44条2項)。
なお、妊娠・出産等や育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取扱いの禁止や職場におけるハラスメントを防止するための雇用管理上の措置等については派遣元と派遣先がともに責任を負います(労働者派遣法47条の2、47条の3、47条の4)。
(3) 派遣労働者の雇用安定措置
派遣元は、期間を定めて雇用される派遣労働者であって、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における同一の組織単位の業務について継続して1年以上の期間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがあるもの等に対し、以下の措置を講ずるように努めなければならない努力義務があります。また、3年以上の期間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがあるもの等については、以下の措置を必ず講じなければなりません(労働者派遣法30条1項)。
①派遣先に対し、当該派遣労働者の直接雇用の依頼をすること
②新たな派遣先(当該派遣労働者等の能力、経験等に照らして合理的なものに限る)への就業の機会を確保し提供すること
③派遣下での無期雇用の機会を確保し提供すること
④その他の雇用の安定を図るために必要な措置
なお、①を講じた場合に、直接雇用されなかったときは、②から④までのいずれかを講ずるものとされています(省令25条の2第2項)。
2.タイ
(1) 労働者保護法
タイでは、日本の労働者派遣法のような派遣労働を規律する法令は存在していませんが、労働者保護法(the Labor Protection Act)第11/1条が派遣労働に関して規定しています。
まず、同条1項によると、「事業者が労働者の就職あっせんを業とする者でない者に労働者を派遣させ、その労働が、事業者が責任を有する生産工程または事業の一部であり、その者が労働を管理監督、または派遣された労働者の賃金の支払いについて責任を負うか否かにかかわらず、事業者は、当該派遣された者の使用者とみなす」とされています。つまり、派遣労働者を受け入れた会社は、派遣労働者の労働の管理監督や賃金の支払いの有無に関わらず、当該派遣労働者の使用者として扱われることになり、労働者保護法上の使用者としての責任を負うこととなります。
つぎに、同条2項によると、「事業者は、直接雇用契約に基づく労働者と同様の労働を提供する派遣労働者に対し、差別なく公平な権利利益および福利厚生を与えなければならない」とされています。派遣労働者に他の労働者と同様の福利厚生等が与えられない場合には、労働者保護法違反となるため、注意が必要です。
(2) 人材派遣業ライセンス
タイには、人材紹介、人材斡旋に関するライセンスは存在していますが、人材派遣業に関するライセンスは存在していません。
3.マレーシア
(1) 派遣に関する業法の有無
日本のように「派遣元(労働者派遣事業者)」「派遣先(受入企業)」「派遣労働者」という三者関係を法制度上明確に定めた派遣法類似の法令は存在しません。
(2) 実務上の留意点
実務上、人材派遣会社により労働者を使用者に派遣することが行われています。ただし、政府は、外国人労働者を対象とするアウトソース・エージェンシー(雇用元ではなく、エージェンシーが雇用し他企業へ派遣提供する形)は禁止する運用をしているようです。
4.ミャンマー
(1) 派遣に関する業法の有無
日本のように「派遣元(労働者派遣事業者)」「派遣先(受入企業)」「派遣労働者」という三者関係を法制度上明確に定めた派遣法類似の法令はミャンマーには存在していません。
(2) 実務上の留意点
派遣と称される人材供給・受入れの形態については、実務的に「雇用契約+使用委託/業務委託」「人材紹介・斡旋」「アウトソーシング(業務委託)」のいずれか・またはグレーゾーン的な運用になっているケースが多いです。
したがって、ミャンマーで派遣スキームを採用する場合、業務委託契約の形式で運用することになると解されます。
5.メキシコ
メキシコでは単なる労働者供給を目的とする派遣は禁止され、労働者派遣は「専門的なサービス・業務」の提供に限定されています。このような専門的サービスを行う事業者は、労働社会保障省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)への登録が義務付けられており、登録制度は「REPSE(Registro de Prestadoras de Servicios Especializados u Obras Especializadas)」として運用されています。登録は専用ウェブサイトを通じて行われ、有効な電子署名、法人情報、IMSS(社会保険機構)登録番号、従業員数、主要事業活動などの情報の提出が求められます。この登録は3年間有効であり、違反行為があった場合は取り消される可能性があります。
また、連邦労働監督局(Dirección General de Inspección Federal del Trabajo)は、REPSE登録事業者およびそのサービス利用者に対し、労働法の遵守状況を監視する権限を有します。監督官は、登録情報と実態の一致、専門業務の範囲、契約書面の有無、社会保険加入および賃金支払いの適正性などを確認します。違反が発見された場合、登録の取消しが行われることがあります。
(2) 要件と義務
労働者派遣を利用するためには、①派遣元企業がREPSEに登録されていること、②派遣先の主要な経済活動または事業目的に該当しない範囲の専門業務であること、の2点が要件となります。専門的サービスとは、特定の技術・設備・認証・経験等により特徴づけられる付加価値の高い業務を指し、登録事業者の専門性を基礎として判断されます。労働社会保障省は、業種ごとに派遣が認められない主要業務を定めています。たとえば、観光・宿泊産業においては、客室清掃、顧客登録、料理・接客・リネン業務などはホテル業の主要な経済活動とされ、派遣は原則として認められません。
また、派遣を利用する際には、契約書の締結が必須です。契約書には、提供されるサービス内容、派遣人員数、REPSE登録番号、経済活動識別番号などを記載しなければなりません。また、派遣労働者は識別可能なIDコードやバッジ等を携帯し、派遣先従業員と区別できるようにする必要があります。
(3) 実務上の注意点
労働者派遣を利用する事業者は、当該派遣される労働者に対し、雇用主である専門サービス・業務提供事業者と連帯して責任を負います。したがって、労働者派遣を利用する場合は、派遣元企業が法令を遵守する事業者であるかどうかといった事前の確認が重要となります。
6.バングラデシュ
バングラデシュでは、労働者派遣に関する 独立した法律は存在せず、労働法および労働規則によって規定されています。
(2) 関連する法規制
派遣会社は、工場・事業所検査局(Department of Inspection for Factories and Establishments)への 登録が必須とされています(労働法3A条、労働規則7条)。
派遣社員は、運転手や門番などを含め、派遣会社に雇用される労働者として労働法の保護をうけます(労働法3A条)。
派遣社員の給与は、同等の業務に従事する派遣先従業員の賃金を下回ってはならず、かつ、派遣社員の基本給は派遣会社が派遣先に請求する金額の50%以上である必要があります(労働規則16条)。
派遣会社は派遣社員のために 労働者社会保障基金を設ける義務があります(労働規則17条)。
派遣会社には、派遣先の職場が労働安全衛生に関して 関係法令を遵守しているか確認する義務があります。本義務に違反した場合、派遣会社と派遣先会社の双方が法的責任を負う とされています(労働法16条3項、4項)。
派遣会社の規定自体は、2013年の改正から導入されたものであり、比較的新しいものです。そのため、派遣会社を利用する際には、派遣会社の遵法性の確認に加え、派遣社員と会社の従業員とが明確に分けられるような仕組みなどについても十分配慮する必要があります。
7.フィリピン
フィリピンに子会社を持つ日系企業の多くは、現地の雇用リスクを低減するため、マンパワーエージェンシーや外注業者の活用を検討しています。従業員の管理を外部に委ねられるうえ、労務トラブルも軽減できるようにみえるからです。しかし、現地法令を知らず外注業者を利用するうちに、企業が意図せずフィリピン労働法に違反してしまっているケースがあります。
フィリピンでは、日本で一般的な「労働者派遣(派遣先の指揮命令で働く形態)」は、そもそも禁止されている点に注意が必要です。
日本の労働者派遣法では、「自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受けて従事させること」(労働者派遣法第2条1号)と定義され、派遣会社と労働者が雇用契約を結び、派遣先が労働者に指揮命令する構造が合法的に認められています。
しかしフィリピンでは、この“派遣”構造が「労働力のみの請負(Labor‐Only Contracting)」に該当しフィリピン労働法第106条により禁止されています。つまり、日本と同じ感覚で「アウトソース」や「人材派遣会社活用」を行うと、フィリピンでは違法となる可能性があります。
Labor-Only Contractingの横行と2017年省令(DO‐174)
フィリピンでは従来から、日本で適法な労働者派遣が禁じられていますが実際にはこれに違反する状態が多く存在しました。直接雇用によって生じる使用者責任(社会保障手続・有給付与・雇用終了プロセス等)を回避し、都合の良いタイミングで契約を終了させられるスキームとして広まっていたからです。
この労働者搾取の問題を是正するため、フィリピン労働雇用省(DOLE)は2017年に新省令DO‐174を発表し、「労働力のみの請負」をより明確に規定しました。
- 以下は、偽装請負(Labor-Only Contracting)とみなされる主な要件です。
①請負業者(労働者派遣でいうところの、派遣業者です。)が業務遂行に必要な設備・機材を保有していない
自前の資本・設備投資がなく、人材提供だけを行っている場合、請負とは認められず、発注者と人材との間で雇用契約が成立する
②請負業者の労働者が、発注者の中核業務に従事している
本来、業務は“付帯業務”に限られます。主たる事業領域に従事する場合、実態は派遣に近く、発注者と人材との間で雇用契約が成立すると判断される可能性が高まります。
③請負業者が労働者に対して指揮命令を行わず、発注者が実質的に管理している。
勤怠管理・業務指示・評価などが発注者主導で行われている場合、発注者と人材との間で雇用契約が成立するとみなされます。
- 一方、“合法的な請負”の要件(DO‐18A)には現時点で大きな変更なし
旧省令(DO‐18A)で定義されていた「正当な請負」の要件は以下の通りで、大きな変更はありませんでした。
①請負業者として会社登録をしていること
②自立した事業として成立していること
③自ら方法で、自らの責任の下サービスを提供すること
④業務遂行に関して発注者から管理監督を受けない(結果の評価は除く)
⑤請負業者として相応の資本を有する
⑥労働法に基づく労働者の権利・便益が確保されている
これらの条件を満たせば、外部請負は合法となります。
以上の要点を踏まえ、「労働力のみの請負」が問題となった判例を紹介します。
あるフィリピン企業A社がマンパワーエージェンシーB社と経理・事務職についての業務契約を締結しB社を通じてフィリピン人スタッフCらがA社で経理・事務としてサービスを提供しました。契約期間は6か月ごとの更新でしたが、1回目の更新のタイミングでA社はB社との業務委託契約を更新しないことを決定しました。これを受け、CらはA社が実質的な雇用主であると主張し「正社員化」等を求めて訴えを起こしました。
結果としては、最高裁はB社が「正当な請負業者」と認め、A社の実質的雇用主としての責任はないと判断されました。
判決において以下(1)~(3)が重要な要素となりました。
(1) B社は請負業者として会社登録をしており、相当の資本及び投資があった
まず、業務請負を行う場合、設備や資本を備えているのが当然である。
(2) B社は複数の取引先を持っておりA社のみ対象としたものではない
「1社専属」の請負は、偽装請負と判断されやすい
(3) Cらの勤怠管理はB社が実施しており、A社のCらの業務に対する指示も指揮命令権の行使とまではいえず、あくまで指針を示したに過ぎないものであった。
フィリピンでは、日本で一般的な派遣労働は違法となります。新省令(DO‐174)で基準が明確になりましたが、外注業者と名乗りつつ「労働力のみの請負」を行っている業者が依然多いのが現状であり、「知らぬ間に違法派遣の構造ができあがっていた」というケースが起こるため注意が必要です。
8.ベトナム
ベトナム
(1) 定義
ベトナム労働法によれば、労働者派遣とは「労働者が派遣企業と雇用契約を締結し、雇用契約を締結した派遣企業との間の労働関係を維持しながら、その後、派遣企業がその労働者を他の使用者(クライアント企業)に派遣して就労させる仕組み」と定義されています。
なお、労働者派遣は外国人労働者受入サービスとは異なる概念であり、後者については外国投資家に対し市場参入が制限されています。
(2) 労働者派遣事業を行う際の原則
適法に労働者派遣取引を行うためには、関係当事者は以下の原則を考慮する必要があります。
- 労働者派遣サービス提供者(派遣企業)は、労働者派遣ライセンスを保有している場合にのみ、当該サービスを提供することができます。
- 労働者派遣サービス利用者(クライアント企業)は、ライセンスを有しない派遣企業から派遣労働者を受け入れること、また派遣労働者を別のクライアント企業へ派遣し直すことが禁止されています。
- クライアント企業は、以下の場合に派遣労働者を使用することができます。
- 一定期間、労働需要が急増して雇用が必要な場合
- 産前産後休業を取得している従業員、労働災害または職業病を負った従業員、または公民としての義務履行する必要がある従業員の代替として派遣労働者が配置される場合
- 業務が高度な技能を要する場合
ただし、クライアント企業は以下の場合に派遣労働者を使用することはできません。
- ストライキ中または労働争議解決中の従業員の代替として派遣労働者が配置される場合
- 派遣企業との間で、派遣労働者の労働災害および職業病に関する補償責任について合意がない場合
- 組織構造の変更、技術的変更、経済的理由、会社の全部または一部の分割、統合または合併により解雇された従業員の代替として派遣労働者が配置される場合
- 労働者派遣の最長期間は12か月です。
- 労働者派遣の対象となる業務範囲は、政令145/2020/ND-CP付属書II(リスト)に規定される20職種に限定されます。これらには、通訳/翻訳/速記、秘書/アシスタント、受付、ツアーガイド、販売支援、プロジェクトアシスタント、生産機械システムのプログラミング、テレビ・通信の製造および設置、建設機械および産業用電気システムの運転/点検/修理、建物・工場の清掃、文書編集、ボディーガード/警備、電話によるマーケティング/顧客サポート、財務・税務処理、自動車修理/運転検査、工業図面の作成およびスキャン/インテリアデザイン、運転手、船舶の管理・運転・保守・サービス、油田施設の管理・監督・運転・修理・保守・サービス、パイロット、客室乗務員/航空機および機器の整備・修理/運航管理・運航監督などが含まれます。
リストが市場需要を満たしていない可能性があり、立法者は労働派遣の認可職種の拡大に非常に慎重であり続けているものの、派遣企業がリストに記載されていない業務に労働者を従事させた場合、違反となり、ライセンス取消しにつながる可能性があります。
-
- クライアント企業と派遣企業の間の契約(労働者派遣契約)は書面で作成し、少なくとも2部を作成して各当事者が原本1部を保有する必要があります。労働者派遣契約の内容は労働法第55条2項で定められた事項を含まなければならず、派遣労働者と派遣企業間の労働契約に規定されるものより不利な労働者の権利および福利厚生に関する合意を排除しなければならない。
- 派遣労働者は、同等の資格を持ち同一または同等の職務に従事する直接雇用の従業員より低い賃金とされてはならず、また労働条件において異なる取り扱いを受けてはなりません。
9.インド
(1) 労働安全衛生法典における派遣労働制度
日本の派遣労働に類似するものとして、インドでも、雇用主が労働者を直接雇用するのではなく、派遣元(contractor)から派遣労働者(contract labour)の派遣を受ける仕組みがあります。
派遣労働者(contract labour)の直接の雇用主は派遣元(contractor)であり、派遣労働者(contract labour)と派遣先の間に直接の雇用関係は生じないため、派遣先が 派遣労働者(contract labour)の使用を停止したとしても解雇には当たりません。派遣労働者(contract labour)は、厳しい解雇規制の対象とならない等、派遣先にとっては利用しやすい制度であり、多くの日系企業が利用しています。
派遣労働者に関しては、これまで、1970年派遣労働(規制及び禁止)法(Contract Labour(Regulation and
Abolition)Act,1970。以下「派遣労働法」といいます)によって規律されていましたが、2025年11月21日より、複数の労働法を整理統合し改正した労働安全衛生法典(Occupational Safety, Health and Working Conditions Code, 2020)が施行され、派遣労働(規制及び禁止)法も同法に統合されることとなりました。
以下では、労働安全衛生法典に基づき、インドの派遣労働制度について解説していきます。
(2) 中核的業務の禁止
労働安全衛生法典は、過去12ヶ月間のいずれかの日に50人以上の派遣労働者(contract Labour)を雇用しているまたは雇用していた全ての派遣元(contractor)に対し、免許の取得を義務付けています(労働安全衛生法典45条(1)、47条)。
また、一部の例外を除いて、「中核的業務」(core activities)と呼ばれる業務における派遣労働者の使用は原則禁止とされています(労使関係法典57条)。この点、「中核的業務」とは、当該事業所が設立された目的となる活動を意味し、当該活動に不可欠なあらゆる活動も含まれます(労使関係法典2条(p))。ただし、以下のものは中核業務に含まれません。
①清掃、掃除などの衛生業務
②警備業務
③食堂及びケータリング業務
④荷積み及び荷降ろし業務
⑤病院、教育訓練施設、ゲストハウス、クラブなどの運営(事業所の支援業務の性質を有する場合)
⑥宅配便業務(事業所の支援業務の性質を有する場合)
⑦土木工事およびその他の建設工事(保守を含む)
⑧庭や芝生の手入れ、その他これらに類する業務
⑨ハウスキーピング、ランドリーサービス、その他これらに類する業務(事業所の支援業務の性質を有する
場合)
⑩救急車を含む輸送業務
⑪中核的業務であっても断続的な性質を有するもの
なお、中核的業務であっても、当該業務が、1日の労働時間の大部分又は状況に応じてより長い期間、フルタイムの労働者を必要としない場合等、一定の場合には例外的に中核的業務における派遣労働者の使用が認められます。
(3) 派遣先の義務
派遣労働者の直接の雇用主は派遣元であり、派遣労働者に対して雇用主としての責任を負うのは派遣先ではなく、派遣元です。
ただし、職場における健康・安全環境の整備や、福利施設の提供等は、派遣先の義務となっています(労使関係法典53条)。
また、派遣元(contractor)が派遣労働者(contract labour)に賃金を支払わない、または、少額しか支払わない場合には、派遣先が未払い分の賃金を支払う義務を負うこととなります。なお、派遣先がこのような賃金の支払いをした場合には、派遣元(contractor)に対して求償請求をしたり、派遣先から派遣元に対し支払われるべき対価から当該額を控除したりできます(労使関係法典55条(3))。
10. インドネシア
(1) 概要
インドネシアにおける、派遣労働(alih daya)は、オムニバス法2020年第11号(以下、「オムニバス法」といいます)、およびその実施規則である政令2021年第35号(以下、「オムニバス政令」といいます)において規定されています。
オムニバス法の制定以前は労働法2003第13号(以下、「労働法」といいます)において規定され、派遣労働が許される業務が派遣先の会社の主要業務(kegiatan utama)とは分離されている必要があり、清掃や警備、運転手など、補助業務(penunjang)とされるものに限定されていました(労働法第65号)。オムニバス法においては、補助業務に限定されるという条項が削除され、業務内容にかかわらず原則として全業務で派遣労働が可能となり、幅広い領域で派遣労働が活用されています。
(2) 要件と義務
派遣元の会社は、派遣会社と労働者間では雇用契約書の締結が必須です。契約は、有期雇用契約(PKWT)もしくは、無期雇用契約(PKWTT)に基づきます。労働条件等、契約内容に関する紛争の取り扱いは、雇用契約書、就業規則または労働協約に規定されなければならず、その責任は派遣先の会社ではなく、派遣元の会社が負うこととされています(オムニバス政令第18条)。
有期雇用契約(PKWT)に基づいて雇用されている派遣労働者については、派遣元の会社は、派遣先での業務が存続する限り、その雇用を継続させる義務を負います。そのため、派遣元会社の買収や派遣先企業の都合等によって、別の派遣元会社に切り替わる場合には、労働者の雇用は、新たに派遣先と契約した派遣元会社において継続されなければなりません。もし雇用の継続が保証されない場合には、当初の派遣元会社が、労働者に対して未払い給与の支払いなど、権利補償を行う義務を負います(オムニバス政令第19条)。
発行 TNY Group
【TNYグループ及びTNYグループ各社】
・TNY Group
URL: http://www.tnygroup.biz/
・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)
URL: https://tny-lawfirm.com
・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/
・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)
URL: http://www.tny-legal.com/
・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)
URL: http://www.tny-malaysia.com/
・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)
URL: http://tny-myanmar.com
・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)
URL: http://tny-mexico.com
・エストニア(TNY Legal Estonia OU)
URL: http://estonia.tny-legal.com/
・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)
URL: https://www.tny-bangladesh.com/
・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)
URL: https://gvalaw.jp/offices/philippines
・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)
URL: https://www.kt-vietnam.com/
・イギリス(TNY CONSULTING (UK) Ltd.)
URL: https://uk.tny-legal.com/
・インド(TNY Services (India) Private Limited)
URL: https://tny-india.com/
・インドネシア(PT TNY CONSULTING INDONESIA)
URL: https://www.tny-indonesia.com/