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「各国における懲戒処分の種類・内容・手続きに関する法規制の概要」 TNY Group Newsletter No.56

 

1.日本

(1) 懲戒処分の種類

懲戒処分の種類は会社ごとに様々ですが、一般的には、戒告、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇等が挙げられます。

(2) 懲戒処分に関する規制

懲戒処分にあたっては、あらかじめ、就業規則において懲戒処分の種類と懲戒事由を定めてくことが必要とされます(フジ興産事件。最高裁昭和平成15年10月10日)。なお、就業規則は、労働者への周知と内容の合理性を要件にその有効性が認められるため(労働契約法7条)、懲戒に関する就業規則の規定についても、その内容が合理的であることが求められます。

また、懲戒処分を行うにあたっては、対象となる労働者に対し懲戒事由を告知し弁明の機会を与える等適正な手続きが履践されていることが必要であり、そのような手続きを就業規則中に定めておくべきです。

なお、懲戒権の行使が権利の濫用とならないよう注意が必要です。この点、懲戒処分の内容が不相当に重い場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認できず、権利の濫用と判断される可能性があります(ネスレ(日本)懲戒事件。最高裁平成18年10月6日)。

 

2.タイ

(1) 懲戒処分の種類

労働者の懲戒処分に関しては、労働者保護法に規定があります。同法には懲戒解雇等の規定はあるものの、懲戒処分の種類や手続き等に関して法令上の明確な定めはありません。そのため、タイの実務上は、懲戒処分の種類や手続きに関して、自社の就業規則において記載するケースが多く見られます。

タイの実務上、一般的に行われている懲戒処分として、口頭または書面による警告、停職、普通解雇(解雇予告や解雇補償金の支払いを伴う解雇)、懲戒解雇(解雇予告や解雇補償金の支払いなく行う解雇)が挙げられます。その他、会社内の就業規則において、懲戒処分としての減給を定めている会社も見受けられますが、減給処分については、労働者保護法に反するという見解もあり、注意が必要です。

(2) 懲戒処分の手続きについて

前述のように、労働者保護法上、懲戒処分の手続き等を定めた明文規定は存在しません。そのため、懲戒処分の手続きは、会社と労働者間の契約内容や就業規則の定めによることとなるため、就業規則中では、何が懲戒事由にあたるかを具体的に定め、懲戒を行う際の手続きも明確化しておくことが大切です。

(3) 懲戒解雇について

通常、労働者を解雇するにあたっては、事前の解雇予告(労働者保護法17条2項)と解雇補償金の支払い(同法118条)が必要です。もっとも、解雇理由が、労働者保護法119条1項所定のいずれかに該当する場合には、事前の解雇予告と解雇補償金は不要とされています。同条の定める非違行為は以下のとおりです。① 職務上の不正または使用者に対する故意の犯罪行為。

② 故意に使用者に損害を与えた場合。

③ 過失により使用者に重大な損害を与えた場合。

④ 使用者が文書で警告したにもかかわらず就業規則、社内規定、使用者の合法的な命令に違反した場合。ただし、重大な違反の場合は警告を要しない。文書の有効期限は、労働者が違反行為を行った日から1年間である。

⑤ 正当な理由なく、間に休日を挟むか否かを問わず、三日間連続して職務を放棄した場合。

⑥ 最終判決で禁固刑を受けた場合。(ただし、過失犯や軽犯罪の場合は使用者に損害を与えた場合に限る。(同条2項))

なお、労働裁判においては、タイの裁判所は労働者側に有利に判断する傾向にあり、労働者側が不当解雇であると主張するケースは少なくありません。労働者側から、後に、不当解雇であると主張されるリスクを減らすためにも、懲戒解雇を行うにあたっては慎重に準備を進めておくことが必要です。

 

3.マレーシア

(1) 懲戒処分の種類

従業員の懲戒処分について規定する法令は雇用法(Employment Act 1955)です。同法14条によれば、従業員が非違行為(misconduct inconsistent)を行った場合、使用者は、当該非違行為の事実について適正な調査を行った上、当該従業員に対して、懲戒処分を行うことができます。

雇用法上想定されている懲戒処分には、①予告期間を設けない解雇、②降格、③2週間を超えない無給停職その他の適切な処分(ただし、解雇・降格より緩やかな処分)があります(雇用法14条⑴(a)~(c))。

(2) 適切な懲戒処分の選択

どのような懲戒処分が当該従業員にとって適切であるのか、使用者は慎重に検討する必要があります。とりわけ、懲戒解雇を選択するような場合には、より慎重な判断が必要となります。すなわち、マレーシアにおいても、従業員に対する解雇が有効となるためには、解雇することについて正当な事由(just cause or excuse)が必要であるとされています。

また、非違行為には、犯罪行為のほか、職務命令違反、常習的な遅刻・欠席、セクシュアルハラスメント等多岐にわたり、会社に対する不利益の程度も様々です。使用者としては、従業員の非違行為の内容、動機、当該非違行為により会社が被った不利益等事情を総合考慮した上、適切な懲戒処分を選択する必要があります。これらの事情に比して懲戒処分の内容が重すぎる場合、当該懲戒処分が無効となる可能性があります。

(3) 懲戒処分を行うために必要な手続

使用者が懲戒処分を実施するためには、当該処分の前に、due inquiryと呼ばれる社内審問手続を実施しなければなりません(雇用法14条⑴柱書)。ところが、会社がdue inquiryとして、具体的にどのような手続を実施すればよいかについては、雇用法上明確に規定されてはいません。

実務上は、当該非違行為の有無を調査のうえ、当該従業員に問題となっている非違行為の具体的内容を通知するとともに、理由提示命令書を送付する等により、当該従業員に対して弁明の機会を付与すべきとされています。

このような手続に瑕疵があると、懲戒処分自体が無効となる場合があります。裁判例には、懲戒解雇を正当化できるだけの重大な非違行為があったとしても、適切な時期に警告等を行わなかったことを理由として、または、due inquiryが適切に行われなかったことを理由として、当該解雇の効力を否定したものがあります。

(4) 解雇手当について

雇用法上、従業員を解雇する場合には、使用者は12か月以上継続して雇用した労働者との間の雇用契約を終了させる場合、原則として勤務年数に応じた解雇手当を支払う必要があります(雇用規則3条1項)。もっとも、適切なdue inquiryを行った上、雇用契約の明示又は黙示の条件に反する労働者の不正行為に基づき使用者が雇用契約を終了させた場合には、当該解雇手当の支払は免除されます(雇用規則4条以下)。

 

4.ミャンマー

⑴ 懲戒処分の種類・内容・手続きに関する法規制

ミャンマーでは、懲戒処分の種類・内容・手続きに関して法令上規定されておらず、各会社の就業規則等で詳細を定める運用となっております。懲戒解雇についても特段の法令上の規定は存在しません。

(2)  減給

労働者が引き起こした損害又は不履行を保証するために罰金として賃金から控除する場合、賃金支払法に基づき、控除額は月給の5%を超えてはならない旨規定されています。

 

5.メキシコ

⑴ 懲戒処分の種類

メキシコでは、連邦労働法に懲戒処分の規定があります。

同法によれば、懲戒処分としての停職は8日間を超えてはならない旨や、懲戒処分を受けようとする労働者は事前に意見を述べる権利を有する旨が規定されています(連邦労働法第423条)。

他方、使用者が労働者の給与を減額した場合、労働者は雇用契約を終了させることが可能であり、補償金を受け取る権利があるとされています(同法51条)。

⑵ 懲戒解雇について

使用者は、以下の正当な事由がある場合は、いつでも雇用関係を終了させることが可能とされています(同法47条)。

  1. 労働者が就労の際に虚偽を用いた場合(ただし、就労の開始から30日以内に限る)
  2. 自衛行為を除き、労働者が業務中に不正行為または脅迫、侮辱等を含む暴力的行為を行った場合
  3. 労働者が同僚に対し職場の規律を乱すような不正行為または脅迫、侮辱等を含む暴力的行為を行った場合
  4. 業務時間外において、労働者が使用者、顧客や取引先、またはその家族に対する正当な理由のない脅迫、侮辱等を含む暴力的行為を行い、その結果、雇用関係を維持することが困難となった場合
  5. 労働者が、業務中、故意に建物、機械、原材料等業務に関する物体に被害を与えた場合
  6. 労働者が重大な過失によって建物、機械、原材料等業務に関する物体に影響を与えた場合
  7. 労働者に不注意による職場の安全を脅かす行為があった場合
  8. 労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントやいじめ等の非道徳的行為を行った場合
  9. 労働者が企業秘密や守秘義務を負う情報について漏洩した場合
  10. 労働者に30日間のうち4日以上の正当な理由のない欠勤があった場合
  11. 労働者が正当な理由なく業務命令に従わない場合
  12. 労働者が職場における安全規則に従わない場合
  13. 労働者に職場での酩酊または薬物の使用があった場合(ただし、薬物の使用について、労働者が事前に使用者に対して医師の診断書をもって使用を申請していた場合を除く)
  14. 労働者が懲役刑に処された場合
  15. 労働者に起因する事由によって、就労に必要な書類が欠如しており、使用者がこれを知ってから2か月を経過しても改善されない場合
  16. その他これらに類する重大な行為があった場合

使用者は当該労働者に対して、当該事由およびその事由が発生した日付や期間を記した書面によって解雇を即日かつ直接通知するか、解雇日から5営業日以内に管轄の労働裁判所に当該労働者の住所とあわせて届け出る必要があります。この場合、使用者に代わって当該労働裁判所が労働者に当該解雇通知を送達することとなり、労働者が通知を受け取った時にこの解雇の効果が生じることになります。

 

6.バングラデシュ

バングラデシュ労働法及びEPZ労働法において、懲戒の種類、懲戒の理由、手続きが定められています。

(1) 懲戒処分の種類(労働法23条2項)

① 退職(懲戒解雇と異なり、勤務年数に応じた補償金が支払われます)

② 1年を超えない期間の降格・減給

③ 1年を超えない期間の昇進の保留

④ 1年を超えない期間の昇給の保留

⑤ 罰金

⑥ 7日を超えない期間の賃金または特別手当なしの停職

⑦ 厳重注意および警告

(2) 懲戒の理由(労働法23条1項、4項)

使用者は、労働法で定められた懲戒処分の対象となる不正行為が、労働法24条の手続きで認められた場合、懲戒理由とすることができます。また、懲戒解雇に限り、犯罪行為で有罪になった場合も懲戒理由とすることができます。

懲戒処分の対象となりうる不正行為は次のとおりです。(労働法23条4項)

① 上長からの適法又は正当な指示に対して、個人又は複数で故意に従わないこと

② 事業や使用者の資産に関連した窃盗、横領、詐欺、不正行為

③ 業務に関連した贈収賄

④ 常習的及び一度に10日を超える無断欠勤

⑤ 常習的な遅刻

⑥ 常習的なルール違反や規則違反

⑦ 事業所における無秩序、暴動、放火、破壊行為

⑧ 常習的な職務怠慢

⑨ DIFEから承認を受けた、業務遂行や規律を含む雇用に関するルールの常習的な違反

⑩ 使用者の公的な記録の改変、偽造、不当な変更、損傷、損害をもたらすこと

(3) 懲戒の手続き(労働法24条)

まず、使用者は、不正行為と思料される事実を記載した書面を作成します。(労働法24条1項a)。次に、労働者に対して同書面を交付して7日以上の釈明する期間を与えます(同項b)。その期間内に、労働者に聴聞の機会を与えます(同項c)。労働者の釈明により不正行為がないと使用者が判断した場合はその時点で手続きは終了し、本行為について以後不問とされます。釈明しても疑義が解消されない場合は、同数の使用者代表者及び労働者代表者で構成された調査委員会を立ち上げて、60日以内で調査を行います(労働法24条1項d、労働規則25条1項)。

調査委員会の調査の結果、不正行為が認められた場合、使用者は、懲戒処分の決定を行うことができ(労働法24条1項e)、懲戒処分の決定を労働者に対して書面にて通知します(労働法24条8項)。

(4) EPZ労働法及びEPZ労働規則

EPZ内で適用されるEPZ労働法及びEPZ労働規則においても、懲戒についてはおおむね同様の内容が定めらています(EPZ労働法21条、EPZ労働規則23条乃至26条)。

懲戒の対象となる不正行為には、(2)の①乃至⑩に加えて次の項目が追加され、より具体的かつ詳細になっている点が特徴です(EPZ労働規則23条j乃至r)。

① 使用者の公式記録を改ざん、不当に改変、損傷、または紛失させること

② 工場の禁止区域での喫煙

③ 会社、企業、工場、またはEPZ内で薬物を摂取または消費し、秩序を乱す行為

④ 性的嫌がらせまたは身体的暴行

⑤ 使用者の同意なしに、会社、企業、または工場の敷地内で何らかの目的で募金活動またはキャンペーンを行うこと

⑥ 氏名、年齢、学歴、前職について虚偽の情報を提供すること

⑦ 求人応募に虚偽の情報を提供し、証明書を偽造すること

⑧ 会社、企業、または工場の敷地内で金銭を貸し借りしたり、金融業務を行ったりすること

⑨ 適切な当局の承認なしに、会社、企業、または工場の敷地内でチラシ、パンフレット、またはポスターを配布または掲示すること

 

7.フィリピン

(1) フィリピンにおける懲戒処分の概要

フィリピンでは、日本と同様に従業員に対して懲戒処分を行うことができます。処分の内容は基本的に会社の裁量に任されており、訓告、減給、降格、解雇など日本と類似の処分を下すことができます。

会社は就業規則などで懲戒処分について定めることができますが、処分の内容は合理的である必要があります。不合理に重い罰則は無効とされる可能性があります。特に解雇に関しては、適用条件や手続が労働法によって規定されており、会社はこれらの規定を遵守する必要があります。

従業員が会社からの懲戒に対して納得ができない場合、労働関係委員会(National Labor Relations Commission)などに対して異議を申し立てることができます。

(2) 懲戒に関する判例

懲戒に関する判例を紹介します。最高裁で問題になるケースの多くは、不適切な行為を行った従業員に対する解雇に関するものです。

・Perez v. Philippine Telegraph and Telephone Company, G.R. No. 152048, April 7, 2009

フィリピン法上、従業員は解雇される際に聴聞と弁明の機会を与えられる必要があります。この点について、判例は、解雇手続において必ずしも正式な聴聞会を実施する必要はないことを判示しています。従業員に対して聴聞および弁明の機会を提供することが必要ですが、これには正式な聴聞会を通じて行う場合だけではなく、解雇に関する通知後に書面で説明を提出する方法も認められています。

他方で、判例は、例えば以下の場合において正式な聴聞会が例外的に必要とされる場合があることも認めています。

・従業員が書面で要求した場合

・根拠に関して争いがある場合

・会社の規則や慣行で義務付けられている場合

・その他の状況で正当化される場合

・Malcaba, et al, v. ProHealth Pharma Philippines, Inc., G.R. No. 209085, June 06, 2018

この判例は、解雇が最後の手段であるべきであることから、会社は解雇を行う際は状況を十分に把握して評価したうえで、解雇の理由が事実かつ重大なものであることを確認する必要があることを判示しています。

 

8.ベトナム

ベトナムの労働法において、懲戒処分は、使用者が、法令で認められている範囲内で、就業規則において定めるべきものとされています。就業規則で定めることができる懲戒処分の内容としては、譴責、最長6か月の昇給猶予、降格、解雇の4つがありますが、1つの違反行為に対して複数の懲戒処分を課すことは禁止されています。懲戒処分の時効期間は、違反行為が行われた日から6か月、財務、資産、技術・営業秘密の漏洩に直接関係する違反の場合は12か月です。懲戒処分の手続の概要は次のとおりです。

 

9.インド

インド労働法は、懲戒処分の規定を設けていません。1947年インド産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment (Standing Orders) Act, 1946)(以下、「産業雇用(就業規則)法」)4条及び同法スケジュールでは、解雇、停職に関する懲戒処分及び当該懲戒処分の対象となる非違行為を構成する作為又は不作為を就業規則の必要的記載事項としています。したがって、懲戒処分は就業規則に記載された事由に基づいて行われる必要があります。懲戒処分は、使用者から労働者へ書面による非違行為の通知、労働者の防御のための聴聞の機会が与えられ、記録された証拠に基づいて処分の正当性が決定される必要があります。こうした手続は、判例法に基づく原則 (Principles of Natural Justice) からの要請であり、非違行為の存在を認識したからといって手続を経ずに懲戒処分を行った場合、当該懲戒処分が違法無効となる可能性があります。

もっとも、産業雇用(就業規則)法は、 100人以上のワークマンを雇用している事業場に適用されます(マハラシュトラ州、グジャラート州、カルナータカ州、ハリヤナ州では、州法により50人以上のワークマンが雇用されている産業施設に適用されます)。ワークマンとは、雇用又は報酬を得るため、肉体労働、非熟練労働、熟練労働、技術労働、作業労働、事務労働、又は監督労働を行うために雇用される者(見習いを含む)をいい、主に1万ルピー以上の賃金を得て管理・監督の立場で雇用されている者は含みません(1947年産業紛争法(Industrial Disputes Act, 1947)2条)。

産業雇用(就業規則)法上、就業規則の作成が義務ではない事業場であっても非違行為を理由に労働者に不利益を科す処分については、判例法上の原則が適用されると考えられます。したがって、法令上の就業規則の作成義務に関わらず、全ての会社において、就業規則を策定し、懲戒処分に関する規定を定め、当該規定に従って懲戒処分を行うべきといえます。

 

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

アラブ首長国連邦(UAE)での私企業における懲戒については、労働関係に関する規則(2021年連邦令第33号。以下、「連邦労働法」といいます。)および同施行規則(2022年内閣令第1号)が以下の通り規定しています。なお、2つのフリーゾーン(Abu Dhabi Global Market及びDubai International Financial Center)で設立された会社には、連邦労働法の適用が除外されていますので、各フリーゾーンの規定によります。

(1)懲戒処分の種類

懲戒の種類は、①書面による通知、②書面による警告、③月5日以上の減給、④14日以内の出勤停止および停止期間の給与不支払、⑤1年以下の期間の定期賞与の剥奪(定期賞与システムがあり、雇用契約または会社内規で定期賞与の対象となる場合)、⑥2年以下の期間の昇級の剥奪(昇級システムがある場合)、⑦退職時手当の権利を温存しつつの雇用解除、とされます(連邦労働法第39条第1項)。

会社は、(i)業務関連情報の秘匿違反の程度、(ii)労働者の健康および安全への影響、(iii)財務上の影響、(iv)会社の評判およびその労働者への影響、(v) 労働者の権限濫用、(vi)再犯率、(vii)違反行為の刑事または道徳上の側面、の基準に基づき、違反行為の重大性を考慮して懲戒の種類を選択しなければならず(施行規則第24条1項)、各懲戒の内容を明らかとする表を作成しなければなりません(施行規則第24条第2項)。

(2) 懲戒対象

雇用者は、連邦労働法、同施行規則および決定に違反した労働者を懲戒に付すことができますが(連邦労働法第39条第1項)、業務に関連しない限り職場外での行為について懲戒することはできず、1つの違反行為に対しては、1つの懲戒しかできません(連邦労働法第41条)。

(3) 懲戒手続

懲戒を行うにあたって、まず、対象となる労働者に書面で対象となる行為を通知し、労働者を聴聞し、その申し開きについて調査し、これらを報告書にまとめて、最終的な処分とともに労働者のファイルに保管して、労働者に懲戒処分の種類と金額、その理由、再発時のありうべき懲戒につき書面で通知しなければなりません(施行規則第24条第3項)。発見されてから30日を経過した違反行為は懲戒対象にはできず、懲戒処分は、調査が終了して違反の認定後60日以内に課されなければなりません(同第4項)。

懲戒事由の調査のため必要がある場合、30日以内の範囲で労働者を暫定的な出勤停止、同期間中の給与半減にすることができます。ただし、調査が事件保存で終了、または違法性なしと判明、若しくは懲戒処分が警告となったときには、停止期間中の未払給与を支払わなければなりません(連邦労働法第40条第1項)。

(4) 不服申立

労働者は、懲戒処分に関し、労働審判を提起することの他、会社に不服申立をすることができ、会社はその結果を通知しなければならず、不服申立に対して不利益を与えてはなりません(施行規則第24条第5項)。

(5) 即時解雇

上記の懲戒処分の他、労働者が安全に関する会社の内規に違反する等の法定事由に該当した場合、会社は、労働者への書面調査の実施後に事前通知なく解雇することができます。即時解雇に当たっては、理由を付した解雇決定書を、雇用主またはその代理が労働者に手交しなければなりません(連邦労働法第44条)。

 
 

11.インドネシア

(1) 懲戒処分の種類

インドネシアの懲戒処分については、①警告、②減給、出勤停止、③懲戒解雇の種類があります。懲戒処分に関する法制には、労働法2003年第13号(2022年の雇用創出に関する政府規則に関する法律第2号を改正した労働法2003年第6号)、労使関係紛争解決法2004年第2号、および年政府規則2021年第35号(期間契約労働契約、アウトソーシング、労働時間および休憩時間、解雇に関する政府規則)、2023年法律第6号に定められており、規則と手順に従って実施しなければなりません。

(2) 懲戒処分のための手続き

警告書に関しては、労働法第161条第1項で規定されています。インドネシアでは、従業員が就業規則、雇用契約書などに違反したとしても、すぐに解雇することは難しく、警告書を3回発行する必要があります。3回目の警告書を発行してから6カ月以内に、再度従業員が違反した場合に、初めて解雇することができ、3回目までに発行された、それぞれの警告書の有効期間は6カ月間です。

3回目の警告書を発行した後に解雇となった場合、雇用主と従業員が支払額やその他の権利や義務について合意し、雇用主と従業員は合意契約書(Perjanjian Bersama)を作成する必要があります。その後、雇用主は合意契約と雇用契約解除の理由をインドネシアの労使関係裁判所(Pengadilan Hubungan Industrial Indonesia)に登録し、合意契約登録証明書(Akta Pendaftaran Perjanjian Bersama)を取得する必要があります。

(3) 解雇手当

会社が従業員を解雇することになると、①退職金、②功労金、③権利補償手当など、企業に対する特定の義務が生じます。解雇は雇用主と従業員の合意の下で決定され、規定としては以下があります。

①退職金は、勤続期間が1年未満で固定給の1ヶ月分、2年未満で2ヵ月分、3年未満 で3ヶ月分と勤続年数に比例して増えていき、8年以上からは9ヵ月分で一定です。 ②功労金は、3年以上6年未満で固定給の2ヵ月分、6年以上9年未満で3ヶ月分、9年以上12年未満で4ヵ月分と勤続年数に比例して増えていき、24年以上は10ヶ月分で一定です。 ③権利補償手当には、未消化分の有給休暇の買取など、勤務期間に受けられるはずだった権利を補償する義務を指します。

警告書を発行した懲戒解雇の場合、①退職金については計算した金額の0.5倍、②功労金、③権利補償手当は計算金額をそのまま支給する必要があります。(法律2023年第6号)

 

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