「各国における倒産法制度に関する法令の概要」 TNY Group Newsletter No.60
第1. 各国における倒産法制度に関する法令の概要
1.日本
(1) 会社倒産制度の概要
会社の倒産手続きには、法人破産、特別清算、民事再生、会社更生があります。このうち、法人破産と特別清算では法人を消滅させますが、民事再生と会社更生では法人を存続させたまま再建を図っていきます。
(2) 法人破産
法人破産の申立ての要件は、法人が支払不能(支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)または債務超過(債務者がその債務につき、その財産をもって完済することができない状態のこと)であることです(破産法15条1項、16条1項)。また、法人破産の申立権者は、債権者または債務者です(同法18条1項)。なお、債権者が申立てを行うにあたっては、その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければなりません(同条2項)。
裁判所が申立てを受理し、破産開始決定をする際には、破産管財人が選任されます(同法31条1項)。破産管財人は、法人の資産を調査し、財産を換価処分する等の役割を担い、破産開始決定がされると、破産者の財産、相続財産、信託財産の管理・処分をする権利は、破産管財人に専属することとなり、破産者は管理・処分権を失います(同法2条14項、78条1項)。
換価処分によって配当できる財産がある場合には、債権者に対し配当が行われます。
配当手続きが終了し、または、配当できる財産がないことが確定した場合には、破産手続きの終結決定がなされます。破産手続きの終結決定をもって、法人は消滅し、債務も消滅します。
(3) 特別清算
特別清算は、会社が債務超過に陥っている場合等に利用される手続きで、法人破産同様、法人の消滅を伴います。特別清算は会社法に定められる手続きであり、特別清算の対象となるのは株式会社のみです。特別清算の申立権者は債権者、清算人、監査役または株主です(会社法511条)。
法人破産の場合、手続きは、裁判所が選任した破産管財人によって進められますが、特別清算の場合、株主総会で選任された清算人によって手続きが進められます。
特別清算は、法人破産に比べて、簡易迅速な手続きであることがメリットとされています。他方、対象となるのが株式会社に限定されていることや、特別清算に先立って、株主総会で会社の解散を決議しなければならず、当該決議は株主の議決権数の3分の2以上の賛成が必要となる特別決議でなければならない(同法309条2項11号)といったデメリットもあります。
(4) 民事再生
民事再生は、法人を消滅させることなく、存続させながら、再建を図っていく手続きです。
破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき、債務者または債権者は民事再生の申立てをすることができます(民事再生法21条1項、2項)。また、債務者については、事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも申立てができます(同条1項)。
民事再生においては、債権者によって可決され、裁判所によって認可された再生計画案に基づき、債務が圧縮され、同計画に基づく弁済が行われることとなります。
(5) 会社更生
会社更生は、民事再生と同様、法人を消滅させることなく、存続させながら、再建を図っていく手続きで、更生計画に基づき債務が圧縮され、同計画に基づき弁済が行われます。
民事再生との違いとしては、会社更生は、多数の債権者や多額の債務を抱える大規模な会社を想定した制度であり、対象は株式会社に限られています。また、民事再生では、経営陣は引き続き経営を行うことが可能ですが、会社更生の場合、経営陣は退任し、管財人に経営権や会社財産の処分権が専属する(会社更生法72条1項)等、民事再生よりも厳格な手続きとなっています。
2.タイ
(1) 倒産法の概要
タイでは、債務超過にある個人や法人を清算するための手続き(破産手続き)と、債務者である法人の事業の再建・更生を目的とする手続き(事業更生手続き)が存在します。
タイにおける倒産制度の特徴として、破産手続きにおいては、債務者自身からの破産宣告の申立てが認められていない点や、管財人が民事執行局という公務員から選任されるという点が挙げられます。
(2) 倒産手続きの主な流れ
ア 破産手続きについて
タイの破産手続きついては、破産法にその定めがあり、主に以下のような流れを経て、破産手続きが進行します。
まず、同法においては、債務者が、①債務超過であること、②債権者に対する債務の合計額が、債務者が自然人の場合は100万バーツ超、法人の場合は200万バーツ以上であること、③債務額を確定できることが破産宣告原因と規定されています(破産法9条)。
その後、裁判所において破産宣告の原因が存在すると判断された場合、裁判所は財産保全命令を発令し(同法14条)、管財人を選任します。選任を受けた管財人は、速やかに債権者集会を招集し(同法31条1項)、同集会において、裁判所に対して破産の申立てを行うか否かを検討します。同集会において、破産宣告を求める決議がなされれば(同法61条)、その結果を踏まえ、裁判所が破産宣告をします。
破産宣告後、管財人は、債権者への配当を行い(破産法124条)、債権者は破産手続き内で弁済請求を行ったうえ破産配当を受けることになります。
イ 事業更生手続きについて
事業更生手続きについても、破産法に定めがあり、主に以下のような流れを経て、事業更生手続きが進行します。
まず、同法においては、債務者(非公開会社、公開会社およびその他規則により規定された法人)が、①債務超過であること、②債権者に対する債務の合計額が、1,000万バーツ以上であること、③事業更生の合理的な見込みがあることの要件を満たす場合には、債権者、債務者または監督庁が、裁判所に対して、事業更生の申立てを行うことが可能です。(破産法90/4条)。この点、事業更生手続きにおいては、破産手続きと異なり、債務者自身による申立ても可能とされています。
裁判所が申立てを受理した後、裁判所は、事業更生手続開始の要件が充足されているか審理し、理由があると認められる場合には、事業手続開始決定を行います(破産法90/10条)。開始決定時または開始決定後の一定の手続を経たのち、裁判所は更生計画作成者を選任し(破産法90/17条)、更生計画の提出を受けた管財人が更生計画の承認を判断するため債権者集会を招集することになります(破産法第90/44条)。債権者集会の承認を受けた更生計画は、裁判所が当該計画を承認するか否かを決定し、更生計画を実行することになります。更生計画の遂行予定期間が経過し、計画が遂行されたと判断された場合には、更生手続廃止決定がなされることになり(破産法90/70条)、これにより更生手続きが終了します。
3.マレーシア
(1) 清算型の倒産手続
マレーシアでは、会社が事業を閉鎖し、かつ債務の弁済が不可能な場合、清算型の倒産手続が適用されます。この手続には、裁判所の関与なしに清算を進める①債権者による自主清算手続(Creditor’s Voluntary Winding Up)と、裁判所の命令により清算を行う②強制清算手続(Compulsory Winding Up)の2種類があります。手続の進行中は、支払不能の状況下で行われた取引の一部を無効とすることで債権者の保護が図られ、債権者平等の原則に基づき債権者への配当が実施されます。
(2) 再建型の倒産手続
会社の事業継続が可能な場合、再建型の倒産手続が適用されます。これには、以下の方法があります。
(a) スキーム・オブ・アレンジメント(Scheme of Arrangement: SOA)
申立人が提案する再生計画案をもとに会社再建を図る手続きであり、返済猶予を内容とするもの(Moratorium Scheme of Arrangement)と、債権カット等の和議を内容とするものがあります(Compromise Scheme of Arrangement)。提案されたスキーム・オブ・アレンジメントは、債権者集会に出席した債権者の債権合計額の75%以上の同意を得た場合、裁判所の許可を条件に債権変更の効果が生じます。
(b) ジュディシャル・マネジメント手続(Judicial Management)
裁判所の命令によりジュディシャル・マネージャー(Judicial Manager)を選任し、その管理のもとで会社再建を進める手続です。ジュディシャル・マネージャーが作成した再建案について、承認された債権額ベースで75%以上の債権者が同意した場合、当該再建案に基づき債権変更の効果が生じます。
(c) 会社任意整理手続(Corporate Voluntary Arrangement: CVA)
以上のほか、裁判所を経由せず、専門家(Insolvency Practitioner)の監督のもとで実施される会社任意整理手続(Corporate Voluntary Arrangement: CVA)もあります。この手続では、提案された会社任意整理案が、株主の過半数の賛成および債権額ベースで75%の債権者の同意を得た場合、当該整理案に基づき債権変更の効果が生じます。
4.ミャンマー
⑴ 倒産法の運用状況
倒産法は2020年2月14日に公布され、同年3月25日に施行されました。倒産法施行規則は最高裁判所より2020年4月に公布されました。しかし、倒産法の施行後も、倒産法に基づく手続きを進めるための倒産実務家の登録ができず、倒産法の実務的運用がなされていない状況が続いていました。その後、最高裁判所は2024年1月31日に倒産実務家の登録に関する通知が発布されました。
もっとも、現時点においても倒産法に基づく更生手続き等は運用されていない状況です。
5.メキシコ
⑴ 倒産に関する法律と制度の概要
メキシコの倒産制度は主に商業倒産法(Ley de Concursos Mercantiles:LCM)によって規定されており、企業の財務的困難や倒産に対応するための法的枠組みを提供しています。LCMは、財政的に困難な状況にある企業の存続を図りながら、債権者の公平な取り扱いを確保することを目的としています。
メキシコシティには、倒産事件を管轄する特別連邦裁判所が2か所あり、LCMに基づき手続きを監督します。また、連邦商業倒産専門機関(Instituto Federal de Especialistas en Concursos Mercantiles:IFECOM)は、倒産手続の円滑な運営を支援するため、専門家の認定や技術的監督を行い、公正な倒産手続きを促進します。
⑵ 倒産手続の段階
企業は、支払い義務を履行できなくなった場合、倒産状態にあるとみなされます。LCMの規定では、企業が以下の条件を満たした場合、倒産状態(concursos mercantiles)であると判断されます。
・ 企業が支払不能の状態にあり、総債務の35%以上について30日以上の延滞がある場合。
・ 申請時点で、負債の80%以上を支払うのに十分な資産を有していない場合。
LCMでは、倒産手続について、2つの主要な段階を定めています。
① 再生手続(Conciliación)段階
この段階の主な目的は、企業の債務を再構築し、債務者と債権者の間で合意を交渉して財政的安定を回復することです。裁判所に任命された調停人が債権者と債務者の交渉を仲介します。交渉が成功し、裁判所の承認を得られた場合、企業は倒産手続から抜け出すことが可能です。和解手続の期間は通常185日間ですが、最大365日まで2回の90日延長が認められています。
② 清算手続(Quiebra)段階
和解が成立しない場合、裁判所は企業を倒産と宣告し、清算手続が開始されます。裁判所が任命した管財人が資産の売却を監督し、法律で定められた優先順位に基づいて債権者への分配を行います。企業の資産は清算され、労働債権(従業員への賃金や福利厚生の未払い分)、担保付債権者(抵当権や質権を有する債権者)、無担保債権者の順に返済されます。
⑶ 倒産手続の影響
倒産が宣言されると、債務者に対するすべての司法執行や債権回収行為が一時的に停止されます。また、和解手続き中は、企業の経営陣はそのまま存続できますが、財務運営については調停人の監督下に置かれることがあります。進行中の契約は、裁判所の承認を得て再交渉、解除、または継続される場合があります。
6.バングラデシュ
バングラデシュの企業の倒産は、1994年会社法によって定められており、1997年倒産法は個人に適用されます。清算は、商業登記所(RJSC)が会社名を登記簿から削除し、会社の法的存在を終了させたときに確定します。会社の清算は、裁判所による清算、任意清算、裁判所の監督下での清算の3つの方法が規定されています。
⑴ 裁判所による清算
裁判所による清算は、バングラデシュ最高裁判所高等裁判所部への申立てから始まります。申立書は、会社自身、債権者、株主、場合によっては商業登記所の登記官によって提出されます。裁判所は、会社が支払い不能で債務を返済できないと判断した場合又は清算が正義と公平の利益のために必要であると判断した場合に、会社の解散を命じ、清算人を任命してその手続きを監督することができるとされています。清算命令は、法的承認を受けるために30日以内に商業登記所に提出する必要があり、通知は官報に掲載されます。裁判所による清算は、1994年会社法第241条に規定されており、法定報告書の提出又は法定会議の開催の不履行、債務の返済不能、清算特別決議の可決、設立後 1 年以内に事業を開始しないこと、1年間の事業停止、法定最小人数を下回る株主数の減少(非公開会社の場合は 2人未満、その他の会社の場合は7人未満)、及び裁判所が、会社を解散することが公正かつ公平であると判断した状況などが含まれます。
⑵ 任意清算
任意清算は、会社が株主の決議により清算を決定した場合、通常、会社が事業目的を達成した場合、財政的に存続不可能になった場合又は再編を希望する場合に行われます。清算手続きは決議の日から開始され、清算を管理するために清算人が任命され、残りの資産を株主に分配する前にすべての負債が確実に清算されるようにします。任意清算は一般に内部手続きですが、特に債権者の権利を保護するために、必要に応じて裁判所が介入して裁判所の監督下に置くことがあります。
⑶ 裁判所の監督下での清算
会社がすでに任意清算を行っているが、公正で透明な手続きを確実に行うために司法の監督が必要な場合に裁判所の監督下での清算が必要になることがあります。裁判所は、利害関係者の利益を保護するために条件を課し、指示を出すことがあります。これにより、法令の遵守が確保され、清算手続きにおける不正行為の可能性が防止されます。
⑷ 株主の責任
清算手続き中、会社の株主及び元株主は、未払いの債務、清算費用及びその他の義務を果たすために資金を拠出することが求められる場合があります。ただし、有限責任会社の場合、財務面の責任は、株式の未払い額に限定されます。株主が亡くなった場合、その法定代理人および相続人が未払いの義務の責任を負います。株主が破産宣告を受けた場合、その譲受人が財務の責任を引き継ぎ、当該株主に代わって支払われた金額は破産者の財産から差し引かれます。
7.フィリピン
(1) 倒産制度の概要
フィリピンにおける倒産・再生制度は、以下の法令・規則に基づいています。
・企業倒産法(Financial Rehabilitation and Insolvency Act)
・大統領令第902-A号(Presidential Decree No. 902-A)
・金融再生手続規則(Financial Rehabilitation Rules of Procedure)
企業が財政的に困難な状況に陥った場合、対応としては主に次の2つの方法があります。
企業再生(Rehabilitation):会社を存続させることを目的とした手続です。債務を再構築し、経営を立て直します。
清算(Liquidation):会社の資産を処分し、債務の返済に充てたうえで、会社を終了させる手続です。
(2) 再生手続
再生にはいくつかの方法がありますが、ここで裁判所を通じた再生手続(judicial rehabilitation)について説明します。再生手続は、以下のいずれかの方法で始まります。
①会社からの申立て(任意的再生)
会社から再生を申し立てる場合には、取締役会における過半数の同意に加え、発行済株式の3分の2以上を有する株主の賛成が必要です。申立てには、債務者が破産状態であり再生の見込みがあることを示すために、支払不能の事実や再生計画案などを提出する必要があります。
②債権者からの申立て(強制的再生)
債権者も、一定の条件を満たせば、会社に対して再生手続の開始を裁判所に申し立てることができます。会社からの申立てと同様に、再生計画案などを提出する必要があります。
【申立てが可能な債権者の条件】
(ⅰ)100万ペソ以上、(ⅱ)債務者である会社の払込資本金の25%以上相当する金額のうち、いずれか高い方の債権を有していること
【申立てが認められる条件】
・債務者が支払期日から60日以上にわたり支払を行っておらず、その債務について法律上の実質的な争いがない
・他の債権者によって差押え等の手続が始まり、その影響で債務者が支払不能になる可能性がある
債権者や裁判所によって再生計画が承認されると、会社はその計画に従って債務の支払いや業務の再構築を進めていきます。ただし、再生が難しいと判断された場合には、裁判所の判断により清算手続に移行することもあります。
(3) 清算
再生手続と同様に、清算にも2つの申立方法があります。
①会社からの申立て(任意的清算)
②債権者からの申立て(強制的清算)
一定の条件を満たす債権者は、裁判所に対して債務者の清算を申し立てることができます。
【申立条件】
以下の2つの要件をいずれも満たす必要があります:
・債権者が3人以上であること
・債権者の会社に対する債権の合計額が、(ⅰ)100万ペソ以上、または (ⅱ)債務者である会社の払込資本金の25%以上に相当する金額のいずれか高い方に相当していること
【申立の根拠となる事情】
申立ての際には、債務者が支払期日から180日以上にわたり債務を履行していないことや、債務者に再生の見込みがないことなどを示す必要があります。
8.ベトナム
(1) 倒産法および制度の概要
「企業法」第59/2020/QH14号の第214条では、企業の倒産は倒産に関する法律の規定に従って行われると規定しています。2014年「破産法」第4条第2項によると、倒産とは、企業が支払い不能に陥り、人民裁判所によって破産を宣告された状態を指します。倒産状態にある企業とは、支払期日から3か月以内に債務を履行できない企業であることに注意が必要です。
⑵ 倒産手続開始の申立をする権利および義務を有する者
倒産手続開始の申立をする権利および義務を有する者には、以下が含まれます。
- 無担保債権者、支払期日から3ヶ月経過後の一部有担保債権者
- 従業員、労働組合
- 企業の法定代理人
- 個人事業主、株式会社の取締役会長、2名以上の有限責任会社の社員総会会長など
- 普通株式の20%以上を連続して6か月以上所有する株主または株主グループなど
⑶ 管轄機関
地区レベルの人民裁判所は、その省または市の地区に本社を置く企業の倒産処理を行う権限を有します。省レベルの人民裁判所は、その省で事業登録をし、以下のいずれかに該当する企業の倒産処理を行う権限を有します。
- 海外に資産がある、または倒産手続に参加する者が海外にいる場合
- 企業が複数の地区、町、市に支店や代表事務所を持つ場合
- 企業が複数の地区、町、市に不動産を所有している場合
- 事件が複雑であるため、省レベルの人民裁判所が処理を引き受ける場合
⑷ 手続
①倒産手続開始の申立:倒産手続開始の申立を行うことができるのは、上記の関連権利および義務を持つ者に限られます。
②裁判所による申立の受領:倒産手続開始の申立を受領後、裁判所は申立内容を審査します。申立が有効であれば、申立者に対し、手数料の支払いおよび倒産手数料の前払いを通知します。
③裁判所による申立の正式受理:人民裁判所は、倒産手数料の支払いの受領および倒産費用の前払いの受領後、倒産手続開始の申立を正式に受理します。その後、裁判所は倒産手続を開始するか否かの決定を下します。
④倒産手続の開始:倒産手続の開始または不開始についての裁判所の決定は、関係者に通知しなければなりません。
⑤債権者会議:債権者会議は、倒産手続の中止、事業再建策の提案、破産宣告の提案のうち、いずれかの結論を下す権利があります。
⑥企業の破産を宣告する決定書の発行:企業が事業再建計画を実施できない場合、または事業再建計画の実施期限が過ぎても支払い不能状態が続く場合、裁判官は企業の破産を宣告する決定書を発行します。⑦倒産処理の執行:倒産処理には、倒産資産の清算、企業資産の売却による収益の対象者への分配(資産分配の優先順位に従う)が含まれます。
9.インド
⑴ 倒産手続き申立ての要件
インドでは、破産倒産法(Insolvency and Bankruptcy Code, 2016)が倒産手続きについて定めています。
同法上、倒産手続き申立ての要件として、債務者が10万ルピー以上の支払不履行(デフォルト)に陥っていることが必要とされています。
申立てができるのは、①金融債権者(Financial Creditor)、②取引債権者(Operational Creditor)、③債務者自身であり、会社法審判所(National Company Law Tribunal)に対し申立てを行います。
(2) 倒産手続きの流れ
会社法審判所は、手続きを開始する場合、モラトリアムを発令します。モラトリアム発令中は、債務者の資産を保全するために、債務者に対する訴訟手続き、担保権の実行、債務者による資産の処分等が禁止されます。
また、会社法審判所は、手続開始決定から14日以内に暫定再建専門家(Interim Resolution Professional)を選任します。暫定再建専門家の役割は会社資産の保全であり、その任期は30日間とされています。暫定再建専門家が選任されると、債務者である会社の取締役会の権限は停止され、暫定再建専門家が経営権を獲得します。暫定再建専門家は、債権者からの債権届を受理し、債権者リストを作成し、債権者委員会を組成します。
債権者委員会は、全ての金融債権者を構成員とし、最初の会議で、暫定再建専門家の職務を引き継ぐ再建専門家を選任し、再建専門家は、債務者の債権債務関係等の情報をまとめたインフォーメーション・メモランダムを作成し、これに基づき再建計画が策定されます。
債権者委員会が再建計画を承認した場合、同計画に基づいて会社再建が行われます。他方、債権者委員会が再建計画を承認しなかった場合は、清算手続きに移行します。
(3) 清算手続き
会社を清算する場合、以下の債権については優先弁済を受けられます。具体的な優先順位は以下のとおりです。
①清算費用
②清算手続開始日から24か月前までのワークマンに対する債務、担保権を放棄した担保付債権者に対する債務
③清算手続開始日から12か月前までの従業員(ワークマンを除く)に対する債務
④金融債権者の無担保債務
⑤清算手続開始日から2年前までの中央政府または州政府に対する債務、担保権を有する債権者に対する担保権実行後の残債務
⑥その他の債務
⑦優先株主に対する残余財産配分債務
⑧株主及び共同経営者に対する残余財産配分債務
10.アラブ首長国連邦(ドバイ)
(1) 倒産に関する法律と対象
アラブ首長国連邦(UAE)では、財務再編および倒産法(2023年連邦令第51号)によって、財務再編手続(Financial Restructuring)および倒産手続(Bankruptcy)が規定されています。
適用となるのは、会社法の対象となる法人および事業者としての自然人です。独自の倒産手続の規定を有する連邦若しくは地方政府が全部または一部を所有する会社または中央銀行により許可を受けている銀行、保険会社等の金融機関は除外される他、生活費に関する債務等債務者の個人または家庭の目的のために生じた債務も対象外とされます(第3条)。また、フリーゾーンで設立された会社に関しては、各フリーゾーンの倒産手続に関する規則によるため、同法の対象とはなりません。
(2) 手続
財務再編手続は、予防的和解(Preventive Settlement)の計画に基づき、業務を遂行しつつ債務の支払を行うもので、会社更生または民事再生に類似するものです。破産裁判所の監督の下、債務者の和解計画は、債務総額の過半数を有する債権者が出席する債権者集会において、当該債務の3分の2以上を有する債権者の賛成によって承認された後に(第72条)、破産裁判所により法定の要件の具備が確認されて認可されなければなりません(第75条)。債権者集会で否決された場合は、手続終了が決定されますが、破産裁判所の裁量により破産手続の開始を決定することもあります(第74条5項、6項)。
破産手続は、債務者の財産と事業を清算することを通じて債権者に対して債務を弁済するものです。債務者について、債務の履行不能、財務状況の債務超過および事業の存続不能が確認されれば、破産裁判所は破産手続開始を決定し(第120条)、管財人が破産者の財産を掌握し、法定の要件に従って管財人が立案し、債権者集会で承認された清算および配当計画に基づき、財産の換価と配当が行われます。
いずれの手続も、債務者、債権者または監督官庁が申立てることができます。債務者申立は、支払停止または債務者が支払期限に弁済することができないことを確知した日から60日以内にしなければなりません(第16条1項)。なお、支払停止とは、債務者が支払期限の到来した債務について10日経過後も弁済していないことを指し、債務者が弁済するに十分な財産を有していることや当該債務に十分な価値の担保が付されていることは問いません。
11. インドネシア
インドネシアの会社に対する倒産手続きは、破産及び債務の支払い停止に関する法律2004年第37号(以下「破産法」といいます)において規定されています。破産法において、清算型の破産手続きと、再生型の支払い猶予手続きが規定されています。以下の手続きにおいて、➀和議案が提示されなかった場合、②提案された和議案が受理されなかった場合、③和議案の承認が判決に基づき拒否された場合に、破産財産(Harta Pailit)は法的に倒産状態(keadaan insolvensi)にあると判断されます(破産法第178条)。
(1) 清算型の破産手続き
2名以上の債権者を有する債務者が、期限が到来した債務を履行することができない場合、債務者、債権者、公益を代表する検察官などは破産申立を行うことができます(破産法第2条)。破産申立は債務者の居住地を管轄する商事裁判所に対して行われます(破産法第3条)。 裁判所は破産申立の受理から60日以内に、破産宣告をするか否かの決定をします(破産法第8条)。2名以上の債権者が存在しており、支払い期日が到来している債権の1つが不履行で、裁判所が、当該債務者に対して、破産を宣告した場合には、破産管財人及び監督裁判官を指名し、また、債権者3名を選任して債権者委員会を組織することができます(破産法第13条)。
破産宣告がされた場合に、30日以内に債権者集会を開催する必要があります(破産法第15条)。集会では債務者は和議案を作成し、集会に出席した無担保債権者の過半数及び総債権額の3分の2以上の債権を有する者の同意によって、和議案の承認を得ることができ、破産手続きを終了させ、和議案の履行へと移行することが可能です(破産法第281条)。和議案が取り消された場合には、破産手続きが再開され、再提出は認められておりません(破産法291、292条)。
(2) 再生型の破産手続き
債務者及び債権者は、裁判所に債務者によるその全債務の支払いに関する支払猶予(PKPU: Penundaan Kewajiban Pembayaran Utang)を申し立てることができます(破産法222条)。支払猶予の決定がなされると、債務者及び債権者は、裁判所に和議案を提出することができます(破産法228条)。和議案が債権者集会の同意を得て裁判所によって承認された場合、和議案は全債権者を拘束します(破産法第286条)。和議案が債権者集会での同意を270日以内に得られなかった場合、裁判所が和議案を承認しなかった場合、また債務者が和議案を履行しなかった場合、裁判所は債務者に対して破産を宣告します(破産法第228、285、291条)。ただし、2021年の憲法裁判所の決定に基づき、➀PKPUが債権者によって開始された場合、②債務者の提案が却下された場合の二つを満たす決定については、債務者は最高裁判所に異議申し立てをすることが可能です(破産法に関する決定2021年第23号)。
発行 TNY Group
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