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バングラデシュの2025年労働法に関するQA

Ⅰ 総論・改正の概要

Q1 2025年労働法改正は、いつ公布・施行されましたか。

A1. 2025年11月17日に公布され、同日即時施行されています。改正は2006年バングラデシュ労働法を対象とするものです。

Q2 今回の改正は法律(Act)ですか、それとも政令ですか。

A2. 憲法第93条第1項に基づくOrdinance(大統領令)として制定されています。

Q3 政府による公式英訳は存在しますか。

A3. 現時点では政府公式の英訳は存在しません。実務上は非公式英訳や専門家による対訳を参照する必要があります。

Ⅱ 「労働者」「使用者」の範囲拡大

Q4 2025年改正で「労働者(Worker)」の定義はどのように変わりましたか。

A4. 見習いを含み、直接雇用・請負業者経由を問わず、賃金又は報酬を得て業務に従事する者が広く「労働者」に含まれることが明確化されました。

Q5 管理職は引き続き「労働者」から除外されますか。

A5. はい。ただし、書面で正式に管理・監督権限を付与されている者に限定され、形式的な職位名のみでは除外されません。

Q6 「使用者(Employer)」の定義にも変更はありますか。 A6. あります。管理責任を負う者の範囲が明確化され、実質的に管理・統制を行う者が使用者に該当し得る点が強調されています。

Ⅲ 農業労働者・家庭内労働者

Q7 農業労働者は労働法の適用対象になりましたか。

A7. 一定の定義が新設され、農場(5人以上雇用)で賃金を得て働く者は農業労働者として明確に位置付けられました。

Q8 家庭内労働者も労働法の対象ですか。 A8. はい。雇用主の住宅(食堂・寮を含む)で家事を行う者が家庭内労働者として定義され、口頭契約も含まれます。

Ⅳ 新設された重要定義(事故・ハラスメント等)

Q9 「事故(Accident)」とはどのように定義されましたか。

A9. 業務中または使用者の指揮下で発生し、身体的・精神的損害または死亡を伴う突然の出来事と定義されました。

Q10 強制労働の定義は新設されましたか。

A10. はい。脅迫や搾取の下で、本人の同意なく行われる労働が明確に定義されました。

Q11 「ブラックリスト化」とは何を意味しますか。 A11. 退職労働者を他の事業所で雇用不可とするリストやデータベースを作成する行為を指し、明確に違法行為として位置付けられました。

Ⅴ 就業規則・勤務期間の算定

Q12 就業規則(Service Rule)の承認期間は変更されましたか。

A12. はい。主任監督官の承認期限が90日から120日に延長されました。

Q13 120日以内に承認されない場合、会社はどうすればよいですか。

A13. 政府に対して異議申立てが可能となりました。

Q14 「1年」「6か月」の勤務期間の考え方は変わりましたか。

A14. はい。過去12か月で240日、過去6か月で120日実働すれば、それぞれ「1年」「6か月」とみなされます。

Ⅵ 祝祭日・休暇

Q15 祝祭日の数は増えましたか。 A15. はい。年11日から13日へ増加しました。

Ⅶ 雇用終了・補償の大幅変更

Q16 事業停止時の補償は義務化されましたか。

A16. 3営業日を超える事業停止の場合、レイオフ補償の支払義務が明文化されました。

Q17 レイオフ補償を受けられる労働者の要件は緩和されましたか。

A17. はい。勤務3か月以上で名簿記載があれば対象となります。

Q18 代替労働者の扱いは変わりましたか。

A18. 継続勤務が1年を超えると代替労働者とはみなされません。

Q19 死亡補償の要件はどう変わりましたか。

A19. 必要な継続勤務期間が2年から1年に短縮されました。

Q20 勤続5年未満で退職した場合も補償されますか。 A20. はい。改正により、**勤続3年以上で法定退職補償(例:3年×7日分賃金)**が発生します。

Ⅷ 産休制度の実務ポイント

Q21 産休期間は変更されましたか。

A21. はい。**合計120日(産前60日+産後60日)**が明確化されました。

Q22 産休の対象者は誰ですか。

A22. 「女性」ではなく、**「妊娠中の女性」**と明確化されています。

Q23 産休給付金の支払方法は。 A23. 現金、銀行振込、**電子送金(EFT)**が認められ、実務が現代化されました。

Ⅸ 安全配慮義務・事故報告

Q24 危険作業を拒否した労働者を懲戒できますか。

A24. できません。合理的に重大な危険がある場合、拒否しても不利益取扱いは禁止されます。

Q25 重大事故の報告期限は。

A25. 2営業日以内に関係当局へ書面または電子的手段で報告する必要があります。

Q26 安全委員会の設置義務は拡大されましたか。

A26. はい。50人以上の労働者を雇用するすべての事業場が対象です。

Ⅹ ハラスメント・差別禁止

Q27 性的嫌がらせはどのように定義されましたか。

A27. 身体的接触、発言、電子メッセージ、画像、quid pro quo型ハラスメントなど、非常に詳細に列挙されています。

Q28 ハラスメントに関する社内委員会は必要ですか。

A28. はい。**差別・暴力・ハラスメント苦情解決委員会(5名、過半数女性)**の設置が義務です。

Q29 差別の立証責任は誰にありますか。 A29. 使用者側にあります。差別でないことを説明できなければなりません。

Ⅺ 基金・福利厚生制度

Q30 雇用災害補償基金(Employment Injury Scheme Fund)とは何ですか。

A31. 政府が設立する基金で、特定産業では使用者個別責任が免除される可能性があります。

Q31 積立基金(Provident Fund)は義務化されましたか。

A31. はい。常用労働者100人以上で、年金制度(Progoti)未導入の場合は義務です。

Q32 国民皆年金「プラガティ(Progoti)」とは何ですか。 A32. 国家年金庁が運営する年金制度で、労働者が書面同意すれば積立基金の代替となります。

Ⅻ 実務上の注意点

Q33 2025年改正に対応するため、企業は何を優先すべきですか。

A33. ①就業規則・社内規程の改訂

②ハラスメント方針と委員会設置

③退職・レイオフ計算方法の見直し

④基金・年金制度の導入判断 が特に重要です。