「各国のトピック、最新の法令等の紹介」TNY Group Newsletter No.72
1.日本
(1) 女性活躍推進法改正
2026年4月1日より、改正女性活躍推進法が施行されます。
女性活躍推進法は、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性が個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍することの重要性に鑑み、女性の職業生活における活躍を推進し、豊かで活力ある社会を実現することを目的としています。
同法は時限立法であり、従来は有効期限が令和8年3月31日までとされていましたが、今般の改正で令和18年3月31日までに延長されました。
(2) 改正点
女性活躍推進法は、一定の企業に対し、女性の活躍に関する社内の状況等について、情報を公表することを義務付けています。
今般の改正で、その公表義務の対象となる企業及び公表が求められる情報の範囲について変更があります。
これまで、従業員数301人以上の企業に対し公表が義務付けられていた「男女間賃金格差」に関する情報について、新たに従業員数101人以上300人以下の企業に対しても公表が義務付けられました。
また、公表すべき項目として、新たに「女性管理職比率」が設定され、従業員数101人以上の企業に公表が義務付けられます。
情報の公表義務についてのより具体的な詳細は以下の表のとおりとなります。
【表I】
改正前
改正後
従業員数301人以上
・男女間の賃金格差
・表IIから1項目以上
・表IIIから1項目以上
・男女間の賃金格差
・女性管理職比率(New)
・表IIから1項目以上
・表IIIから1項目以上
従業員数101人以上~
300人以下
・表IIまたは表IIIから1項目以上
・男女間の賃金格差(New)
・女性管理職比率(New)
・表IIまたは表IIIから1項目以上
【表II】
女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績
採用した労働者に占める女性労働者の割合
男女別の採用における競争倍率
雇用する労働者及びその指揮命令の下に労働させる派遣労働者に占める女性労働者の割合
係長級にある者に占める女性労働者の割合
役員に占める女性の割合
男女別の職種の転換又は雇用形態の転換及びその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の男女別の雇入れの実績
男女別の再雇用又は中途採用の実績
【表III】
職業生活と家庭生活との両立に資する
雇用環境の整備に関する実績
男女の平均継続勤務年数の差異
男女別の継続雇用割合
男女別の育児休業取得率
一人当たりの時間外労働及び休日労働の一月当たりの合計時間数
雇用管理区分ごとのその雇用する労働者及びその指揮命令の下に労働させる派遣労働者一人当たりの時間外労働及び休日労働の一月当たりの合計時間数
有給休暇取得率
雇用管理区分ごとの有給休暇取得率
2.タイ
(1) タイの個人情報保護法の概要
タイの個人情報保護法(Personal Data Protection Act B.E. 2562 (2019)、以下「PDPA」といいます。)は、2019年に成立、一部施行されました。その後、数回の施行延期を経て、最終的に2022年6月1日から、企業などが対応しなければならない規定を含め、全面施行されています。今回は、このPDPAの概要及び、押さえるべきポイントを3つ、ご紹介します。
(2) PDPAのポイント
ア PDPAの適用は「タイ国内」にいる事業者だけではない
PDPAは、タイ国内に拠点を置く組織・事業者はもちろん、国外の組織・事業者にも適用されます。タイ国内の個人に対して商品・サービスを提供したり、彼らの行動をモニタリングしたりする場合、日本からのリモートサービスであっても対象となる点に注意が必要です。
イ 「同意」が原則、かつ「機微情報」はより厳格
個人情報の収集・利用・開示には、原則としてデータ主体(本人)の明示的な同意が必要です。特に、人種、信条(宗教・政治)、遺伝データ、生体データ、健康状態、犯罪歴などの「機微情報(Sensitive Data)」についても収集・利用・開示はできますが、その場合がより制限されています。
ウ 三重の罰則・制裁リスク
PDPAは、違反時のペナルティが多様です。このため事案によっては多層的に罰則や賠償責任を負う場合があり得ます。規定されている違反対象は行政罰、刑事罰により異なり、その罰則及び制裁の概要は以下の通りです。
・行政罰:最大500万バーツの制裁金
・刑事罰:他者に損害や名誉毀損を引き起こす可能性のある違反行為等について、最大1年以下の禁錮刑、または100万バーツ以下の罰金、またはその両方が科される(法人の代表者が対象になる可能性あり)
・民事責任:実際の損害額に加え、最大2倍の懲罰的損害賠償(PDPA独自の懲罰的損害賠償制度)
個人情報を取り扱う事業者としては、まずは自社が保有する個人情報の棚卸しから始め、個人情報漏えい防止のための対策、また漏えい時の対応方法について対策を進めることが重要でしょう。
3.マレーシア
(1) 改正個人情報保護法の概要
2024年に個人情報保護法(以下、「法」といいます)の改正があり、個人情報漏洩時の報告義務化、データ保護責任者(Data Protection Officer)制度の導入、データ・ポータビリティ権の新設、個人情報の越境移転等が盛り込まれました。改正は順次施行され、2025年2月以降には各ガイドラインも順次公表されています。以下は、改正のポイントになります。
(2) 改正のポイント
ア データ漏洩報告の義務化
個人情報の漏洩、紛失、悪用等が発生した場合には、データ管理者(Date Controller)は、当該事実をコミッショナー(Personal Data Protection Commissioner)及び個人情報漏洩の影響をうける本人に対して報告する義務を負うことになりました(法12B条[新設]、同4条[改正])。ただし、当該義務は「重大な損害」(significant harm)を引き起こす又は引き起こす可能性がある場合のみとされています(個人情報漏洩時の報告義務に関するガイドライン)。なお、ガイドラインには「重大な損害」に該当する事由が例示列挙されています。
当該義務を怠った場合、最大25万リンギ(約1025万円、1リンギ=約41円)の罰金もしくは最長2年の禁固刑、あるいはその両方が科されることになります。
イ データ管理責任者の選任及び届出の義務化
一定の条件に該当するデータ管理者及びデータ処理業者に対し、データ保護責任者(Data Protection Officer、DPO)を選任し、これをコミッショナーへ届出を行うことが義務化されました(法12A条[新設])。DPOの具体的な業務、適格者要件については、データ保護責任者の選任に関するガイドラインで述べられています。
ウ データ・ポータビリティ権の新設
データ・ポータビリティ権とは、情報提供者側が、データ管理者等に対し、技術的な実現可能性およびデータ形式の互換性を条件として、当該個人情報を別の利用者へ転送するよう請求できる権利をいい、改正により情報提供者に当該権利が認められました(法43A条[新設])。
エ 個人情報の越境移転
改正により、個人情報の越境移転規制が緩和され、個人情報の移転先が「個人情報保護法と本質的に類似する法令が存在する場所」であるか、「個人情報の処理に関して、個人情報保護法によって提供されるものと同等の適切な保護レベルを保証する場所」であれば、原則として越境移転が認められることになります(法129条⑵)。当該場所の該当性については、越境個人データ移転に関するガイドラインには記載がありませんが、「移転影響評価(TIA)」の実施が推奨されていることから、これをもって判断するものと思われます。
4.ミャンマー
(1)新酒税法(New Excise Law)の概要
2026年3月7日、連邦行政評議会は新酒税法(Law No.13/2026)を公布しました。本法は、大統領が別途通知で指定する日に施行される予定であり、現時点ではまだ施行されていません。
酒類ライセンスは通常1年間有効で、一律3月31日に期限を迎えます。現在のライセンス保持者は、例年通り更新手続きを行う必要があります。
本法が施行されると、酒類ライセンス制度に大幅な変更がもたらされる可能性が高いですが、詳細は今後策定される実施規則によって具体化されることになります。
(2) ライセンスの種類
1917年制定の現行酒税法および1928年制定の施行規則と同様、新法でも様々なアルコール関連活動に対して異なる種類のライセンスを規定していますが、その区分は現在使用されているものとは異なります。
新法の条文によれば、施行後は「活動」および「酒類の種類」ごとに、個別のライセンスが必要になると解釈されます。
少なくとも2010年以降、ショップでの販売やレストランでの提供に必要な新規の酒類ライセンスは発行されていないと認識されています。そのため、現在は、廃業したショップやレストランから既存のライセンスを買い取り、総合行政局に対して新所在地への正式な移転(または非公式な使用許可)を申請しなければなりません。これは不透明なプロセスであり、新法の施行に伴い、新たな酒税ライセンスの発行が再開されることが期待されます。
加えて、製造または流通のライセンス保持者は、以下の行為について別途許可を申請する必要があります。
・ライセンスで許可された場所以外でのアルコールの保管
・流通または販売のライセンス保持者へのアルコールの輸送
(3) 外資規制
現在、100%外資の企業であっても、ミャンマー国籍の取締役が関連する酒類ライセンスを取得していれば、酒類の販売や提供が可能です。新法では「外資比率が49%以下の企業に限り酒税ライセンスを取得できる」と規定されているため、施行後も現行の運用が維持されるかどうかは注視する必要があります。
(4) オンライン販売
新法は原則として、流通ライセンス保持者から他の流通・販売ライセンス保持者へのアルコールのオンライン販売を認めています。ただし、個人の最終消費者へのオンライン販売は禁止されています。
(5) 輸出入
流通ライセンス保持者はアルコールの輸出入が可能であり、製造または付加価値製品としての製造ライセンス保持者は輸出が可能です。
(6) 販売制限
僧侶、泥酔者、および18歳未満への販売は禁止されています。さらに、自動販売機による販売、アルコールの広告、および特定の販売手法も禁止されています。
5.メキシコ
(1) アンチマネーロンダリング法改正の概要
2025年7月に、「不正資金の取引の防止および識別に関する連邦法(Ley Federal para la Prevención e Identificación de Operaciones con Recursos de Procedencia Ilícita、以下「アンチマネーロンダリング法」という)」が改正されました。今回の改正では、「脆弱活動」の対象拡大、実質的支配者の把握義務の強化、監査や情報保存義務の充実が図られています。
同法は、FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)の40の勧告との整合を目的とし、金融機関のみならず一般企業も含めて、不正資金の流入防止と高リスク取引の報告を求めるものです。メキシコでは他の法令でもマネーロンダリング規制が設けられていますが、アンチマネーロンダリング法がその中核をなしています。
(2) 主な改正内容
今回の改正でまず重要なのは、「脆弱活動」に関する規律が見直され、その対象範囲が広がった点です。アンチマネーロンダリング法では、一定の業種や取引を「脆弱活動」と定義し、所定の条件のもとで、大蔵公債省(Secretaría de Hacienda y Crédito Público)への報告義務を課しています。対象には、金融機関の業務のほか、賭博等、金融機関以外による一定の金融関連業務、不動産取引や不動産開発資金の受領、貴金属・宝石・時計等の販売、美術品の販売やオークション、車両・船舶・航空機の販売、装甲サービス、公証行為、一定額以上の寄付の受領、通関関連業務、不動産の使用または収益に関する権利の設定、仮想資産関連サービスなどが含まれます。これらの活動を行う事業者には、所定の報告義務に加え、顧客・利用者の本人確認、法人の場合は実質的支配者の確認、関連情報の保存、内部統制の整備が求められます。
また、実質的支配者に関する規律の強化も、今回の改正の大きな柱です。実質的支配者とは、脆弱活動によって生じる財やサービスを最終的に享受する自然人またはそのグループ、あるいは当該取引を行う法人を最終的に実効支配する自然人またはそのグループをいいます。そして、総会における意思決定の支配、取締役等の任免、25%超の議決権保有、経営方針の決定といった事情が「支配」の判断要素とされています。商事会社は、当局の定める要件に従って実質的支配者を特定し、その根拠資料を保存しなければならず、さらに必要な情報を経済省のポータルサイトに登録する義務も負います。加えて、株式や持分の譲渡や権利設定があった場合には、株主登録簿に関する通知も必要とされており、会社法上の制度とも相まって、情報開示の対象と管理が一段と強化されたといえます。
さらに、大蔵公債省は過去5年間に遡って監督・検査を行う権限を有しており、義務違反や報告懈怠、実質的支配者規制違反には高額の罰金が科されるおそれがあります。そのため、自社の活動が脆弱活動に当たるかを確認し、該当する場合には各種義務を確実に履行し、十分な記録を保管しておくことが重要です。
6.バングラデシュ
(1)最近の政情
バングラデシュでは、3月19日までラマダン期間であり、その後イード休暇が続いたため、政治・経済ともに大きな動きは見られませんでした。
一方で、2025年の労働法改正を受け、3月12日には2015年労働規則の改正に向けた委員会が設置されるなど、来月以降の動きが注目されています。
(2)収賄・汚職に関する対応
バングラデシュでは、ビジネスを行う上で収賄・汚職の排除が、他国と比べても特に重要です。
2026年2月10日に発表された2025年の腐敗認識指数(CPI)では、スコアは24、順位は150位となりました。昨年よりスコアは改善しているものの、依然として南アジアの中でも特に汚職の多い国とされています。
そこで、以下では汚職・収賄に関する主な法令と予防措置を紹介します。
ア 関連法令
・2004年汚職防止委員会法
2004年に制定されましたが、これまで政治的・手続的な問題により十分に機能していませんでした。暫定政権下の2025年11月27日、委員会の人数を3人から5人に増やすなど、実効性を高めるための権限強化が行われています。
・1860年刑法 第161条乃至第165条
公務員が職務に関連して利益や報酬を受け取ること、また公務員以外の者が公務員に対する利益供与によって公務に影響を与える行為などを広く禁止しています。
・1974年汚職防止法
贈収賄や汚職の防止を目的とし、公務員による汚職行為の具体的内容を定めています。
・2012年マネーロンダリング防止法
犯罪収益の移転や、違法な海外送金などを規制しています。
イ 予防措置
収賄・汚職を関わらないようにするため、一般的に以下のような施策を実施されています。
・従業員に対するコンプライアンス研修の実施
・収賄・汚職を禁止する旨の社内宣言
・収賄や不正要求を受けた場合の対応マニュアルの整備
特に、コンプライアンス研修は重要です。日本企業が求めるコンプライアンス概念はまだバングデシュでは一般的なものではありません。
しかし、研修を通してコンプライアンスの概念を従業員が理解することで、日常業務にも労務にも良い効果をもたらします。弊社ではバングデシュ弁護士によりベンガル語又は英語で実施しておりますが、お客様からの反響を多くいただきます。
7.フィリピン
(1) はじめに
フィリピンで小売業や飲食業への進出を検討する場合、外資規制の確認は重要事項です。特に注意したいのは、外国人の出資比率によって、必要となる資本金が変わる点です。
(2) 小売業とは
フィリピン法上、「小売業」とは、消費者に対して商品を反復継続して直接販売する事業をいいます。そのため、一般消費者向けの販売は小売に該当し、卸売業はこれに含まれません。また、レストランも小売業に含まれるものとして扱われています。
(3) 外資が入る小売業の主な規制
① 40%超を外国人が保有する場合の資本金規制
外国人が40%を超えて株式を保有する小売事業では、払込資本金(Paid-up Capital)を2,500万PHP以上とする必要があります。もっとも、この規制は、あくまで外国人が40%超を保有する小売事業に適用されるものです。したがって、たとえばフィリピン人60%・外国人40%の出資構成であれば、この要件は問題になりません。
② 1店舗あたりの最低投資額
また、外資規制の適用対象となる小売業では、1店舗あたり最低1,000万PHPの投資額も求められます。ここでいう投資額には、店舗建物、リース資産、家具、設備、在庫などが含まれます。オンラインで行う小売では、商品を保管する倉庫が「店舗」とみなされます。
(4) 小売規制の除外
小売の外資規制には一定の除外があります。たとえば、ホテルに付随するレストランです。実務上、これに該当するケースは多くないと考えられますが、規制の適用対象外となる可能性があるので、実施予定の事業の位置付けは念のため確認しておくことが望ましいです。
(5) まとめ
フィリピンの小売業に関する外資規制は、以下の流れで整理することができます。
・その事業が「小売業」に該当するかを確認する
→ 該当する場合、次に進む。なお、該当しない場合でも、他の外資規制が適用される可能性がある。
・小売の外資規制の適用対象外に該当しないかを確認する
→ 例外に該当しない場合、次に進む
・外国人の出資比率が40%を超えるかを確認する
→ 40%を超える場合、次に進む
・払込資本金2,500万PHP以上を満たしているかを確認する
→ 満たしていない場合、小売業を行うことはできない
8.ベトナム
(1) ベトナムの知的財産権の動向
ベトナムの知的財産権を取り巻く制度環境は、大きな近代化の過程にあり、従来の権利中心の枠組みから、より技術の進展を意識した規制体系へと移行しつつあります。2026年3月現在、この変革は主として、2026年3月1日に施行された人工知能に関する法律(Law No. 134/2025/QH15)及び、2026年4月1日に施行された改正知的財産法(Law No. 131/2025/QH15)という二つの主要な立法動向によって推進されています。これらの動向は相まって、知的財産権の保護及び規制遵守を強化しつつ、ベトナムの法的枠組みを新たな技術に適応させるという戦略的な取り組みを示すものです。
(2) 知的財産関連規定に関する主なポイント
以下、知的財産関連規定に関する主なポイントをいくつかご紹介します。
① 知的財産行政における行政手続の簡素化及びデジタル化の推進
知的財産行政における行政手続の簡素化及び包括的なデジタル化は、新法によって導入された最も重要な改革の一つです。とりわけ同法は、出願公開や実体審査の段階を含む、ほとんどの種類の知的財産出願について、処理期間を大幅に短縮しています。
② 知的財産権の商業化促進
同法は、投資法、企業法、信用法、その他の関係法規に従い、知的財産権を出資持分や融資担保として活用することを含め、その商業的活用を促進しています。この改革は、知的財産権を単なる法的権利としてではなく、特に銀行取引や金融取引において、評価、移転及び商業化が可能な金融資産として認識する方向への転換を示すものです。
③ デジタル技術及び新興クリエイティブ分野における保護対象の拡大
同法は、デジタル技術及び新興クリエイティブ分野の発展に更に適合するよう、保護対象の範囲を拡大しています。具体的には、以下の内容が導入されています。
製品の分離不可能な部分を対象とする部分意匠の保護制度。これはベトナムにおいて全く新しい概念であり、複雑な製品の個々の構成部分について保護を可能にするものです。
グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)やデジタルアイコンを含む、非物理的製品に対する意匠保護。
暗号化されたプログラム搭載ケーブル信号に対する著作権及び著作隣接権の保護拡充。
④ 知的財産保護における「人間による創作」原則の採用
ベトナムは、知的財産法制の下で保護を受け得るのは、人間によって創作された成果物に限られるという原則を維持しています。したがって、対象が完全に人工知能(AI)によって生成されたものであると認められる場合、又は人間の著作者を特定できない場合には、権利付与が拒絶され、又は無効とされる可能性があります。政府には、AIを用いて生成された成果物に関する知的財産権の創設及び成立に関し、詳細な規定を定める権限が付与されています。
また、同法は、適法に公表されたテキスト及びデータについて、著作者又は権利者の正当な権利利益を不当に害しないことを条件として、AIシステムの研究、試験及び学習の目的で利用することを認めています。
⑤ デジタル環境における知的財産権保護の強化
同法は、以下の内容を導入しています。
オンライン上の権利侵害に対応するための新たな執行措置。これには、デジタルプラットフォーム事業者に対し、侵害コンテンツの防止及び削除に関する義務をより明確に課すことが含まれます。
抑止力を高め、デジタル環境において生じる損害の規模をより適切に反映させるための損害賠償額の引上げ。
9.インド
(1) インドにおける海外からの借入規制について
インド法人が海外の銀行や企業などから借入を受けることは、「対外商業借入」(External Commercial Borrowing。以下「ECB」といいます。)と呼ばれます。ECBを実施するにあたっては、1999年外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999)及びこれに基づき定められた外国為替(借入・貸付)管理規則(Foreign Exchange Management (Borrowing and Lending) Regulations, 2018)に従う必要があります。
ECBには、「外貨建て」と「ルピー建て」の二つの枠組みがあり、借入人の資格、貸付人の資格、借入期間、金利等に関する要件が定められています。
借入が、所定の要件を満たす場合(下記表参照)には、自動承認となり、口座を管理する銀行の審査のみで借入が可能です。他方で、借入が所定の要件を満たさない場合には、事前にインド準備銀行の承認を得なければなりません。
この点、2026年2月に、外国為替(借入・貸付)管理規則が改正され、要件が大きく緩和されました。
同改正によってECBの利便性が大きく向上することが期待されます。
(2) ECB規制の要件について
改正前
改正後
借入人
外国直接投資(Foreign Direct Investment:FDI)を受け入れることができる事業体
個人を除くインドに居住する全ての者で、連邦法又は州法に基づき設立又は登録された者
*借入人の要件が緩和された。
貸付人
インド国外の親会社などの法人や銀行等。
ただし、
金融活動作業部会(Financial Action Task Force:FATF)または
証券監督者国際機構(International Organisation of Securities Commission’s:IOSCO)
加盟国の居住者である必要がある。
*日本はいずれにも加盟している。
・インド国外の居住者
・インド準備銀行(RBI)によって規制されている貸付期間の海外支店
・インドの国際金融サービスセンター(International Financial Services Centre)に設置された金融機関又は金融機関の支店
*貸付人の範囲が拡大された
最低平均償却期間
原則3年。
*資金使途によって、1年、5年、7年、10年等の例外あり
原則3年で統一。
*ただし、製造業における1会計年度当たり1億5000万米ドルまでのECBの場合には1年~3年
最低平均償却期間とは、所定の計算式に基づいて、借入の総額や部分弁済の金額・期間等をもとに算出される期間をいう。
上限金利
【外貨建てECB】
・新規のECBの場合:ベンチマークレート+
500ベーシスポイント
・既存のECBの場合:ベンチマークレート+
550ベーシスポイント
【ルピー建てECB】
・ベンチマークレート+450ベーシスポイント
市場金利による
*市場金利に従って柔軟に金利を設定できるようになった。
*ベンチマークレートとは、外貨建てECBの場合、借入通貨に適用されるインターバンク・レートまたは6か月間の代替参照レートを指す。ルピー建てECBの場合、対応する期間の国債の金利を指す。
*ベーシスポイントとは、金利の表示単位で、1ベーシスポイント=0.01%を意味する。
資金使途
資金利用できない使途としては以下のものが含まれる。
1.不動産取引(商業用若しくは住宅用の不動産又は土地の売買又は賃貸を目的として自己の所有不動産又は賃貸不動産に関して行われるあらゆる活動)
2.資本市場への投資
3.運転資金(外国株主からの借入れの場合等は除く)
4.一般的な事業資金(外国株主からの借入れの場合等は除く)
等
資金利用できない使途としては以下のものが含まれる。
- 不動産事業(土地又は不動産を売買又は賃貸しそこから利益を得る活動)
- 農業・畜産
- 譲渡可能な開発権の取引
- 上場・非上場の有価証券の取引
等
*運転資金目的、事業資金目的の原則禁止が削除される等要件が緩和された。
10.アラブ首長国連邦(ドバイ)
(1) 地域情勢
2026年2月28日、アメリカ合衆国とイスラエルは「Epic Fury(壮絶な怒り)」作戦と称するイラン・イスラム共和国に対する軍事攻撃を開始し、これに対抗する形でイスラエルだけでなく、ドバイを含む湾岸各国の米国関連施設に対して反撃が行われるとともに、(本稿執筆時点で)ペルシャ湾とインド洋を結ぶホルムズ海峡がイランによって事実上封鎖される事態が継続しています。
中東地域では、2023年10月7日のハマスによる越境攻撃後、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区だけでなく、レバノン、シリアにおいて軍事作戦を展開し、2025年6月にはイラン核関連施設等への爆撃がありましたが、その中でも湾岸地域は安定な状況を保っていました。しかし、今回の軍事行動を受けて日本外務省は、3月5日にアラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビア王国(リヤド州及び東部州)、クウェート、バハレーン、オマーンの湾岸6か国について危険レベルを3(渡航中止勧告)に引き上げ、3月23日には中東以外の地域を含めた全世界を対象として、中東情勢の緊迫化に伴う注意喚起を発出しています。
アラブ首長国連邦(UAE)では、緊急避難として出入国困難者への対策が取られています。連邦身分事項・市民権・関税及び港湾安全局(Federal Authority For Identity, Citizenship, Customs &Port Security)は、3月2日に、2月28日以降に滞在ビザ期限中の出国が困難となった外国人に対して超過滞在罰金を免除する旨を発表しました。2月28日以降に有効期間が切れた国外滞在中の居住ビザ保有者に対しては、3月31日までは、罰金を科されることなく、新たな許可を得ずに入国を許可すること、このようにして帰国する従業員の円滑なビザ更新手続のため事前の電子申請を行うよう雇用主に対して勧告したとの報道があります。
(2) 対応・予防
外国への出張や現地駐在をする場合、自然災害だけでなく、人為的な騒乱に直面することは少なくありません。このような事態に遭遇したときには、外務省の海外安全情報をはじめとした情報の収集に努め、必要に応じて現地の日本大使館・領事館に支援を求めることが大切です。そして、事前の備えとして、日頃から地域情勢に関心を払い、自らの安全を確保するため「たびレジ」への登録、在留届の提出に加え、勤務先・知人等へ連絡先の伝達が勧められています。
ビジネスの面からは、中東地域に留まらない広範な影響と、その長期化が危ぶまれています。海上保険の適用停止・保険料の引き上げ、船舶運航の停止や航路変更、航空貨物輸送の遅延等によるサプライチェーンの乱れにより、価格変動や供給障害が生じたことを教訓として、短期的な対策に留まらず、海外取引を取り巻くリスク要因の分析・再評価を行うとともに、現契約の不可抗力条項で予想される危険を回避できるかを改めて見直すことが重要となっています。
11. インドネシア
(1) 投資要件に関する規制変更の概要
2025年10月2日に、投資に関する規制について変更があり、インドネシア投資・下流産業省(以下「BKPM」といいます)は BKPM規則2025年第 5 号(以下「新規則」といいます)を施行しました。本規則は従来のBKPM規則2021年第 3、4、5 号(以下「旧規則」といいます)を統一した形となります。旧規則では、外資系企業が会社設立後の事業許可取得に際して満たす必要がある最低払込資本金の金額基準が100億ルピアだったのに対し、新規則においては25億ルピアに引き下げられています。以下では、新規則におけるインドネシア投資に関する主要な変更点についてご紹介します。
(2) 最低払込資本金
旧規則では、外資系企業の会社設立時に最低払込資本金が 100 億ルピア必要と規定されていたのが、新規則において 25 億ルピアに引き下げられました(新規則第 26 条)。一方で、外資系企業の土地、建物を除いた最低投資額(Nilai Investasi)の基準については、引き続き100 億ルピア以上が必要となり、会社設立後、将来的に100億ルピア以上の投資を行うことが必要です(新規則第 26 条)。
ただし、事業への最低投資の判断基準において、一部規制緩和されており、旧規則では、飲食業において、1事業ロケーションごとに100億ルピアの投資が必要でしたが、事業ロケーションの定義が県 (Kebupatan)、または市(Kota)単位となり、同県・市内であれば、複数の店舗等を営むことが可能となり、また、電気自動車充電ステーション事業においても、投資額が州(Probinsi)単位で計算されることが規定され、同州内であれば複数拠点での事業運営が可能です(新規則第 26 条)。さらに、100億ルピアの投資額は、土地建物を除いた金額で計算することが通例ですが、a)不動産業、b)宿泊施設、c)プランテー ション、e) 畜産、f) 養殖に関する事業においては、土地、建物を投資額の判定に含めることが可能となりました(新規則第 26 条)。
(3) 経済特区(KEK)に関する規制
事業活動が製造・加工経済特区(以下、「KEK」といいます)、ロジスティクス・流通KEK、研究・デジタル経済・技術開発KEK、観光KEK、エネルギーKEK、および/またはその他のKEK 内の事業活動の場合は、投資事業分野に関する大統領令の規定に則るとされ(新規則第26 条)、現行の投資事業分野に関する大統領令2021年第10号では、KEK内の技術系スタートアップ企業の外国投資については、土地と建物を除く投資額が100億ルピア以下での投資が可能と規定されており(投資事業分野に関する大統領令 2021 年第 10 号第 8 条第 2 項)、今後、新規則の制定を受けて、新たに改訂されることが予想されます。
(4) 払込資本金の引き出し
払込資本金は、払込時点から12カ月間、事業体の銀行口座から移動してはならないことが新規則において、新たに、規定されています。ただし、資産の購入、建物の建設および/又は、事業運営のための支出に用いる場合はこの限りではありません。また、事業許可はオンラインシステム(OSS システム)において、取得されますが、OSSシステムでの事業許可取得申請時に、自己申告として申請内容や事業活動計画に虚偽がないことについて、表明手続きを実施することが新たに規定され、虚偽投資の防止についても強化しています(新規則第 27 条)。