TNY国際法律事務所グループ TNY国際法律事務所グループ

「各国のトピック、最新の法令等の紹介」TNY Group Newsletter No.73

1.日本

(1) 個人情報保護法

 個人情報保護法は、個人情報の適正な取扱いに関し、個人情報を取り扱う事業者及び行政機関の遵守すべき義務等を定め、個人の権利利益を保護することを目的としています。

 同法上、「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいいます(個人情報保護法2条)。

  ① 氏名、生年月日等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

  ② 番号、記号、符号などで、その情報単体から特定の個人を識別できる情報で、政令・規則で定められたもの(個人識別符号。顔や指紋の認証データ、マイナンバーやパスポート番号等が例)。

(2) 事業者の義務

 個人情報データベース等を事業の用に供している者を個人情報取扱事業者といいます(個人情報保護法16条2項)。

 なお、「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物であって、特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの、又は特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるものをいいます(同条1項)。

 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければなりません(個人情報保護法17条1項)。また、あらかじめ本人の同意を得ないで、利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱うことはできません(個人情報保護法18条1項)。

 また、個人データの管理・保管にあたって、個人情報取扱事業者は、漏えい、滅失又は毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる必要があります(個人情報保護法23条)。

 更に、個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合や、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき等の一定の場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはなりません(個人情報保護法27条)。

(3) 個人情報保護法の見直し

 個人情報保護法の附則では3年に1度の見直しが規定されています。

 この点、2022年4月に改正法が施行されており、2025年4月で3年が経ちますが、AI技術の進展等を踏まえ論点を再整理する必要などから、2025年の通常国会では改正法案の提出は見送られました。 

 しかし、高市首相は2026年の通常国会で改正法案を提出するよう指示を出しており、個人情報保護委員会も、2026年1月には、「いわゆる3年ごと見直しの制度改正方針」等を策定する等、政府において検討が進んでおり、今年の通常国会で改正法が提出される可能性が想定されるため、今後の動向を注視する必要があります。

2.タイ

(1)タイの個人情報保護法第5条

タイの個人情報保護法(Personal Data Protection Act B.E. 2562 (2019)、以下「PDPA」といいます。)の第5条は法の適用範囲を定めたものであり、本条項は、PDPAが、タイ国内の事業者のみならず、タイ国内の個人のデータを管理又は処理するタイ国外の事業者に対しても適用され得ることを定めています。

ア 基本的な適用範囲(PDPA第5条第1項)

原則として、PDPAはタイ国内に所在するデータ管理者およびデータ処理者が行う、個人データの収集・利用・開示に適用されます。これは、対象となる個人(データ主体)がタイ国内にいるか国外にいるかを問いません。

イ タイ国外の事業者に対する適用(PDPA第5条第2項)

第5条第2項は、タイ国内に拠点を持たない国外の事業者であっても、以下のいずれかに該当する活動を行う場合には、本法が適用されると規定しています。

①タイ国内の個人に対する商品またはサービスの提供

②タイ国内における個人の行動監視(Monitoring)

①は、タイ国内の個人(データ主体)を対象として、物品の販売やサービスの提供を行う場合です。有償である場合と無償である場合を問いません。②は、タイ国内で行われるデータ主体の行動を追跡し、そのデータを収集・分析する場合です。具体的には、クッキー(Cookie)等を用いたウェブサイト上の行動追跡、位置情報の取得、利用傾向のプロファイリングなどが考えられます。

(2)代理人の選任

PDPA第37条第5項は、第5条第2項の適用対象となるタイ国外の事業者に対し、個人データ管理者の代理人を任命することを義務付けています。この代理人は、タイ国内に所在している必要があります。この代理人に対しては、データ管理者の目的に従った個人データの収集、利用または開示に関して、責任を制限することなく、データ管理者に代わって行動する権限を付与する必要があります。

3.マレーシア

⑴ 従業員社会保障法の改正法案

2025年10月30日に、従業員社会保障〈改正〉法案2025(Employees’ Social Security (Amendment) Bill 2025、以下「改正法案」という)が下院に提出されました。改正案は新たな社会保障制度である非就労傷害制度(Non-Employment Accident Injury Scheme)を導入することを主たる目的としています。

⑵ 改正法案のポイント

① 非就労傷害制度(Non-Employment Accident Injury Scheme)の導入

「非就労傷害(non-employment injury)」とは、業務中または業務に起因して生じたものでない事故によって従業員に生じた人身傷害のことをいいます。ただし、他の社会制度(2017年自営業者社会保障法、2022年主婦社会保障法)の適用がある場合、または、当該傷害が疾病により引き起こされたものである場合にはこれに該当しないものとされています(改正法案2条(a)、96条B)。

② 給付対象外事由の明確化

 改正法案により、給付対象外事由が明確化されました(改正法案13条)。具体的には、マレーシア国外で発生した事故により生じた非就労傷害、給付を得るために虚偽の報告を行った場合、外国人労働者が移民総局長により発行された通行証もしくは許可証を不正利用した場合などがあげられています。

③ 拠出制度の変更

改正後の拠出制度では、新たにフェーズ制が導入され、拠出額は賃金水準に応じた区分と各フェーズとを組み合わせて算出される仕組みに変更されます。

フェーズ制とは、被保険者の賃金が支払われる期間の長さに応じて拠出額の基準を三段階に区分するものであり、フェーズごとに賃金水準に応じた拠出額区分が適用され、最終的な拠出額が決定される構造となっています。負担すべき拠出額は、賃金水準およびフェーズの段階が高くなるにつれて増加するように規定されています。具体的な負担額については、改正法案第三附則(Third Schedule)が細かく規定しています。なお、各段階の具体的な適用期間については改正法案で明確にされていません。担当大臣による通達等により、今後具体化されるものと考えられます。

④ 二重給付の禁止

同一期間における同一の傷害や死亡に対して複数の給付を重複して受給することが禁止されます。ただし、複数の受給資格がある場合には、従業員に選択権が与えられ、その決定が最終のものとされます(改正法案15条[96条改正]、16条[96条C新設])。

4.ミャンマー

(1)車両使用規制の概要

ミャンマーでは、2021年のクーデター以降、燃油の供給不安が毎年のように繰り返されています。

これまでの危機の主な原因は外貨不足だったとされていましたが、今回の危機は中東危機が主因であり、終息の時期が見通せず、かつ影響がミャンマーだけでなく世界各国に及んでいます。

2026年3月3日、国防治安評議会(NDSC)は、中東情勢を背景に燃油不足を受け、3月7日から車両使用規制を実施する旨発表しました(以下、「3月3日発表規制」という)。

(2) 3月3日発表規制の主な内容

①民間車両は、偶数日は偶数番号、奇数日は奇数番号の車両のみ使用可能。ただし、電気自動車(EV)やEVバイクは毎日使用可能

②公共交通機関、タクシー、燃油運搬タンクローリー、建設機械、物流車両、救急車、霊柩車、ゴミ収集車などは使用可能

③燃油の備蓄や高額転売は禁止

(3) 3月4日追加発表

2026年3月4日、国防治安評議会から追加発表があり、職員送迎車両、物品配送車両、業務運営車両、学校送迎車両も使用可能となりました。これらの車両と搭乗者は所属部署発行の有効な証明書または推薦状を携帯する必要があります。

規制の違反者には懲役1か月および罰金2万チャットが科されるとのことです。

(4) 3月12日発表

3月12日付国営紙(Global New Light of Myanmar)は、3月12日から燃料管理のために携帯電話アプリケーション(以下「アプリ」という。)を用いた検証システムの試験導入に係るエネルギー省の公告を報じました。公告の概要は以下のとおりです。

①3月12日から、ネーピードー、マンダレー及びヤンゴンの主要都市において、燃料不足を防ぎ、真に必要な人が円滑にガソリンを購入でき、給油所の行列を減らすことを目的としてアプリを用いた検証システムを試験導入する。なお、給油所が燃料の購入状況を確認するため、市民側のアプリ登録や操作は不要である。

②自動車については、自動車税納税証明書のバーコードをスキャンし、当日の購入履歴を照合することで1日1回のみ給油可能となり、同日に別の給油所での購入は認められない。

③オートバイについては、給油所が車両番号と有効期限を入力しQRコードを発行し、所有者はQRコードを保管し毎回提示しなければならない。これにより、同日複数回の購入を阻止する。

④エネルギー省がオンライン監視センターで輸入・貯蔵・流通・販売を厳格に監視し、主要都市の給油所で車種・登録番号、燃料の種類・数量、価格を適時把握する。計画的措置に沿って国内供給を確保する。

5.メキシコ

(1) 関税法改正

2025年11月19日に公布されたメキシコ関税法(Ley Aduanera)の改正は、2026年1月1日に施行されました。ただし、一部の規定については、施行日と異なる日から適用されることとされています。

関税法は、一般輸入・輸出税法その他の関連法令とともに、物品及びその輸送手段の入出国、通関、ならびにこれに付随する行為・事実を規律するものです。また、関税法には、関税実務上の基本概念や税関制度に関する定義も定められています。連邦税法は、関税法に対して補充的に適用されます。

(2) 主な改正点

今回の改正では、税関実務の電子的管理と監視体制の強化が大きな柱です。税関当局は、技術管理やデータ分析のため、情報処理及び情報技術の分野において、デジタル変革・電気通信庁と協定を締結する旨が定められています。また、税務行政庁が認可する特例の入出国地点や倉庫・保税施設等についても、在庫管理、警備、追跡、リアルタイムモニタリング等を統合した技術システムの整備が求められています。これらのシステムは、税関電子システムと相互運用可能であり、税関当局が遠隔で継続的にアクセスできるものでなければなりません。

 また、改正法の下では、輸出入を行う者や、通関手続に関与する者等に対して、送信又は提示を行った情報及び関連書類を電子的に管理し、当局の求めに応じて提示できる体制を整えることが求められます。貨物の価額その他の商業情報についても、電子インボイス(CFDI)、商業インボイス又はこれに相当する書類その他の関連資料を適切に保存し、必要に応じて提示できるようにしておくことが重要です。企業としては、通関書類の保存、整合性の確保、社内管理体制の整備がこれまで以上に重視すべき事項といえます。

さらに、通関代理人及び通関代理店に関する制度も見直されています。通関代理人の免許及び通関代理店の許可には、20年の有効期間と更新制度が設けられました。従来は明確な有効期間の定めがなかったため、この点は制度上の大きな変更です。加えて、施行時点で既に有効であった免許・許可についても、経過措置により同様の取扱いが及ぶこととされています。また、通関手続における行為に起因する違反については、原則として、当該通関代理人又は通関代理店が罰金を負担することとされています。もっとも、この点には法の定める例外があるため、個別事案ごとの確認が必要です。

6.バングラデシュ

⑴ 広告規制の概要

 バングラデシュでは、広告規制について包括的に定めた法令は存在しませんが、広告およびその関連事項を管理する主要な法令としては、わいせつ広告禁止法、消費者権利保護法、サイバーセキュリティー法、喫煙及びタバコ製品の使用(規制)法、医薬品及び化粧品法などがあります。これらの法令に加えて、倫理基準と慣習法が補完することになります。

⑵ 各法律の概要

① わいせつ広告禁止法

 公序良俗を維持することを目的として制定され、わいせつまたは公序良俗に反する可能性があるとみなされる広告の作成、発行、配布について定めています。同法に違反した場合は、会社または会社役員が責任を負う可能性があることに注意が必要です。

② 消費者権利保護法

 消費者保護を包括的に規定しており、誤解を招く広告を規制し、消費者への情報提供の透明性を促進し、基準を満たさない商品またはサービスに対して補償を求めるメカニズムを確立するための事項を定めています。また、消費者が消費者権利に特化した裁判所を通じて救済を求める権限を与え、紛争の迅速な解決を保証することとされています。

同法に基づき、国家消費者権利保護局が設立されています。消費者が企業に対して苦情を申し立てるプラットフォームとして機能し、違反が判明した企業に罰金を科す権限を有しています。

③ サイバーセキュリティー法

 2018年デジタルセキュリティ法に代わるものとして、安全なデジタル環境を促進しながら、サイバー犯罪に対処し、犯罪を軽減するための法的手段として制定されました。サイバーセキュリティー法では、デジタルプラットフォーム、データ保護、ハッキング、個人情報の盗難、虚偽の情報の拡散等のサイバー犯罪と闘うための措置について定めています。

④ 喫煙及びタバコ製品の使用(規制)法

 世界的な反タバコ運動とタバコが公衆衛生に及ぼす影響についての懸念の高まりを背景に制定され、タバコ製品の使用を規制および管理するための措置を定めています。タバコの広告、促進販売に対する制限を設けており、未成年者への販売を禁止し、教育機関付近での広告行為に制限を課すほか、映画館、政府および非政府のラジオおよびテレビチャンネルでのタバコ製品の広告の表示を制限し、タバコの広告を含むフィルムやビデオテープの販売を禁止しています。

⑤ 医薬品及び化粧品法

 1940年医薬品法と1982年医薬品(管理)条例に代わるものとして、2023年に制定されました。国内の医薬品と化粧品を管理する枠組みを定めています。

また、ライセンスの発行、生産プロセスの監督、医薬品および化粧品の品質管理基準の確保を担当する主要当局として、医薬品総局(DGDA)が設立されています。医薬品総局から事前の承認を得ることなく、薬物の使用または健康に関する内容を含む広告の発行または宣伝に従事することは禁止されています。

7.フィリピン

(1) フィリピンにおける整理解雇

フィリピンにおいて、会社の都合による整理解雇は労働法上認められていますが、一定の要件を満たす必要があります。特に、解雇理由の内容によって、解雇手当の計算方法が異なるため、事前に整理しておくことが重要です。

(2) 整理解雇の類型

会社は、以下の理由により整理解雇を実施することができます。

①設備導入による労働力削減(installation of labor-saving devices)

②余剰人員の削減(redundancy)

③損失防止のための人員削減(retrenchment to prevent losses)

④事業の閉鎖・停止(closing or cessation of operation)

(3) 解雇手当の計算方法

整理解雇の類型に応じて、解雇手当の水準が以下のとおり異なります。

①設備導入による労働力削減(installation of labor-saving devices)・余剰人員の削減(redundancy)

以下のいずれか高い方

・1か月分の給与

・勤続1年につき1か月分の給与(勤続年数×1か月分の給与)

※6か月以上の端数は1年として計算されます

② 損失防止のための人員削減(retrenchment to prevent losses)・事業閉鎖の場合(closing or cessation of operation)

以下のいずれか高い方

・1か月分の給与(one month pay)

・勤続1年につき1/2か月分の給与(勤続年数×1/2か月分の給与)

※6か月以上の端数は1年として計算されます

(4) 通知義務

整理解雇を行う場合、会社は以下の通知を解雇予定日の少なくとも1か月前に書面で通知する必要があります。

・従業員への通知

・労働雇用省(DOLE)への通知

(5) まとめ

フィリピンで整理解雇を検討する場合、類型に応じた解雇手当の支払いが必要となるため、まずは解雇理由がどの類型に該当するかを整理することが重要です。

8.ベトナム

(1) 商事契約の終了について

2015年民法第422条によると、商事契約が終了する場合について、次のとおり規定されています。

① 所定の義務の履行完了

当事者が契約上の権利義務を完全かつ正確に履行した場合、商事契約は終了します。

② 当事者間の合意

契約期間中、義務の履行がまだ完了していない段階であっても、当事者は合意により契約を終了させることができます。この場合、当事者は、契約終了に伴って生じる問題の解決方法について合意する必要があります。第三者の利益のために締結された契約の場合、契約終了には当該第三者の同意が必要となります。

③ 契約当事者である個人の死亡または法人の消滅

契約当事者に専属する権利義務を内容とする契約が締結された場合、当該契約当事者である個人が死亡し、または法人が消滅したときは、契約の履行を継続することができず、契約は終了します。

④ 契約の解除または履行の一方的終了

契約の履行期間中、当事者は、損害賠償を伴うことなく契約を解除し、または履行を一方的に終了させることができます。これは、当事者間の合意に基づく場合もあれば、法令の規定に基づく場合もあります。

(a) 商事契約の解除

一方当事者は、次のような場合には、損害賠償の責任を負うことなく、契約を解除する権利を有します。

(b) 商事契約の履行の一方的終了

商事契約の履行の一方的終了は、適法な一方的終了と違法な一方的終了の二つに分類されます。

いずれの当事者も、2015年民法第428条第1項に定める場合に該当するときは、損害賠償を支払うことなく契約を一方的に終了させる権利を有します。具体的には次の場合です。

⑤  契約目的物の不存在

商事契約の目的物は必須の要素であり、契約内容において中核的な役割を果たします。この目的物が存在しなくなった場合、当該契約の前提を欠くことになるため、契約は履行不能となって終了します。

⑥ 事情変更

商事契約は、2015年民法第420条第1項に定めるすべての条件を満たす場合、事情の基本的変更により終了することがあります。具体的には、次のとおりです。

上記条件を全て満たし、事情の基本的変更が認められた場合、利益を害された当事者は、相手他方当事者に対し、合理的な期間内に契約の再交渉を求める権利を有します。そして、この期間内に契約の変更について合意に至らなかった場合には、裁判所に対し、契約の終了または変更を請求することができます。

9.インド

(1) BIS規制について

BISとはインドの国家機関である「インド標準規格局」(Bureau of Indian Standards)の略称で、製品の安全性や品質に関する規格を定め、認証を行う機関です。

 BISの認証には任意認証と強制認証の二つの制度があります。

BISの認証制度は原則的には任意のものとされています(任意認証)。しかし、一定の製品については、公益・健康保護・環境保全・国家安全保障等の様々な観点に基づき、BIS認証が中央政府によって義務付けられています(強制認証)。

強制認証品目については、中央政府が発出する品質管理令(QCO:Quality Control Order)によって指定されており、これに該当する製品はBISの認証を得なければ、インド国内に輸入し、又はインド国内で流通させることができません。

(2) BIS認証手続き

BIS認証手続きについては、製品の性質に応じて、異なるスキームが適用されます。

主なスキームとしては、以下のものがあります。

①スキームI:鉄鋼、繊維、家電、食品等多くの製品がQCOに基づき、スキームIによる強制認証品目に指定されています。製品ごと、製造工場ごとに認証の取得が求められ、手続きの過程ではBISの担当者が製造工場を訪問する工場監査が行われます。

 

②スキームII:主に電子・IT機器を対象としたスキームで、工場監査は不要です。

 

③スキームX:主に機械類を対象としたスキームで、技術文書の作成と工場監査が求められます。強制認証品目は設備・電気機器安全(包括的技術規制)規則(OTR:Machinery and Electrical Equipment Safety(Omnibus Technical Regulation)によって指定されており、OTRの施行時期は従来、2026年9月1日までとされていました。そのため、対象となる品目については、同期限までにスキームXによる認証取得が求められていたところ、政府は2026年1月にOTRを全面撤回しました。これによって、現状、スキームXに基づく認証取得の義務はなくなりましたが、今後、類似の規制が発出されないか動向を注視する必要があります。

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

(1) 地域情勢

2026年2月28日に勃発したアメリカ合衆国とイスラエルによるイラン・イスラム共和国に対する軍事攻撃は、(本稿執筆時点で)停戦期間が無期限延長され、当事国間での交渉に期待が持たれる一方で、ペルシャ湾とインド洋を結ぶホルムズ海峡が事実上封鎖される状況が継続した状況が継続しています。

(2) 緊急措置

アラブ首長国連邦(UAE)では、緊急避難としてとられていた、2月28日以降に有効期間が切れた国外滞在中の居住ビザ保有者に対する罰金の免除措置が、当初予定通り3月31日に終了しました。

しかしながら、地域の安定回復の目途が立たない中、商用航空便の減便や海路による輸送手段の断絶による経済的影響が顕在化し始めています。

このような地域の現況を反映して、ドバイのフリーゾーンの一つであるDIFC(Dubai International Financial Center)では、4月9日、同フリーゾーンに設置された事業者に対する短期的な運営および財務上の圧力軽減への支援を目的とした一時的な経済緩和措置を打ち出しました。措置の内容は、DIFC内の小売及び商業者に対する柔軟な支払計画、ライセンス更新料の分割支払計画、賃貸契約、会社登記およびデータ保護局に関連する手数料の一部の支払猶予並びにDubai Employee Workplace Savings(DEWS)プランへの従業員登録の猶予であり、これに加えてDubai Financial Services Authority(DFSA)による新たにライセンス取得を求める会社及びその監督下にある既存の会社に対する一時的な規制緩和措置の開始が含まれています。

11. インドネシア

(1) 事業分類番号(KBLIコード)に関する新規則の概要

2025 年 12 月 17 日、インドネシア事業分類に関する中央統計庁規則 2025 年第7号(以下、「新規則」といいます)が施行されました。新規則により、インドネシア事業分類に関する中央統計庁規則 2020 年第 2 号(以下、「旧規則」といいます)は廃止され、いくつかの事業分類番号(KBLIコード)が変更されました。本改正により、従来単一の KBLI コードで整理されていた事業分野が細分化、統合されています。

(2) 事業分類番号(KBLIコード)

事業分類番号(KBLI)とは、インドネシアにおける経済活動を、その生産する財またはサービスに基づいて事業分野ごとに分類するものとされています(新規則第 2 条)。事業ごとに 5 桁の番号が振り分けられており、実務上、会社設立時には定款およびオンライン単一申請システムである OSS の登録における事業内容の特定に用いられ、許認可取得時には当該事業のリスク区分および必要なライセンスの種類・要件を決定する基準等として機能しています。したがって、今回の法令改正のように、KBLI の細分化や再編が行われた場合、旧KBLI のままでは会社設立などのOSS 上での手続きや新規ライセンスの取得に支障が生じる可能性もあり、最新の分類との整合性を確認することが必要です。

(3) 主要な変更及び影響

新規則の主要な変更として、主に以下のKBLIコードについて変更、再分類等されています。

項目旧規則2020新規則2025変更点
デジタル仲介サービスデジタル仲介サービスの多くはウェブポータルに分 類医療、教育、輸送、ECなど、仲介対象の産業ごとに分類再分類
デジタル音声コンテンツ明示的な規定なし音声録音活動のKBLIコードにポッドキャストを明示明示的な定義の追加
再生可能エネルギーエネルギー発電として定義排出を伴うエネルギー発電、排出を伴わない非エネルギー発電、再生可能エネルギーに分類独立して分類
ファクトリーレス製造業分類が不明確で、主に商業や流通業に分類工場を持たない製品生産者も製造業であると明確に定義し、製品毎に対応するKBLIコードに分類新たな産業として分類
無人航空機(ドローン)規定なし無人航空機および関連エンジンの製造業に分類。ただし、娯楽目的での場合には、ゲーム用品および玩具製造業に分類独立して分類
倉庫・セルフストレージ賃貸不動産賃貸として包括的に分類倉庫業に明示的に分類。ただし、倉庫セルフストレージ賃貸は非居住用不動産の自己所有または賃借による不動産活動に明示的に分類された明示的に分類

KBLI コードに変更が生じた既存企業については、法令上においては、新規則の施行日から6ヵ月以内が変更期限とされ、2026 年 6 月 17 日までに適合するように変更手続を行う必要があることが規定されています(新規則第5条)。しかしながら、KBLI 2025への移行は、制度改正だけはではなく、インドネシア法務人権省の各種データベースの整合状況にも依拠します。行政システム間の連携が十分に確立されていない場合には、形式上は移行可能であっても、実務上の処理が進まないケースも想定され、実際の反映時期については、行政側のシステム運用状況も踏まえて検討する必要があります。また、これらの影響は当局の今後の運用および執行実務に依拠する部分が大きく、現時点では最終的な取扱いは未だ不透明な状況にあり、引き続き関連する規制動向や実務運用を注視することが必要です。