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「各国のトピック、最新の法令等の紹介」TNY Group Newsletter No.75

1.日本

(1) AI法
 近年、人工知能(AI)技術の目覚ましい発達により、企業でもAIを活用する例が増えてきています。
従来、日本にAIに関する法制度は存在していませんでしたが、昨年6月より、日本で初めてのAI関連法である「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(以下「AI法」といいます。)の施行が始まっています。
同法では、「人工知能関連技術」を、人工的な方法により人間の認知、推論及び判断に係る知的な能力を代替する機能を実現するために必要な技術並びに入力された情報を当該技術を利用して処理し、その結果を出力する機能を実現するための情報処理システムに関する技術、と定義しています(AI法2条)。
AI法の主な対象は国や地方公共団体であり、国よる人工知能基本計画の策定、政府における人工知能戦略本部の設置、地方公共団体による地域の特性を活かした施策の策定等、人工知能の研究開発や開発の促進のための取り組みが定められています。
他方、一部、AIを活用する企業を対象とした条項も存在します。
AI法は、人工知能関連技術を活用した製品又はサービスの開発又は提供をしようとする者その他の人工知能関連技術を事業活動において活用しようとする者を「活用事業者」と定義しており、活用事業者の責務として、自ら積極的な人工知能関連技術の活用により事業活動の効率化及び高度化並びに新産業の創出に努める責務及び国・地方公共団体の施策に協力する責務を定めています(AI法7条)。
これらの責務は罰則を伴うものではなく、あくまでも努力義務的な性格を有するものです。
ただし、国は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の動向に関する情報の収集、不正な目的又は不適切な方法による人工知能関連技術の研究開発又は活用に伴って国民の権利利益の侵害が生じた事案の分析等、様々な調査・研究を行い、その結果に基づいて、活用事業者等に指導、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずる権限があります(AI法16条)。
 どのような指導等が行われるのかは今後の動きを見ていく必要がありますが、罰則を伴わずとも、行政から指導を受けた場合には、当該企業の社会的信用にも影響を与える可能性があるので注意が必要です。

2.タイ

(1)タイの個人情報保護法に違反した場合の行政罰について
タイの個人情報保護法(以下「PDPA」といいます。)は、違反時のペナルティが多様です。「行政罰」「刑事罰」「懲罰的損害賠償制度」が定められていますが、場合によっては多層的に責任を負う場合があります。このうち、今回は「行政罰」についてご紹介します。
PDPAにおける行政罰金(以下「過料」といいます。)は、第82条から第90条にかけて規定されており、違反の深刻度や扱うデータの性質に応じて「100万バーツ」「300万バーツ」「500万バーツ」の3段階の上限額が設定されていますが、個々の違反行為に対して過料が個別に算定されるため、それらが併せて科せられることもあります。
例えば、サイバー攻撃や内部不正を防ぐためのセキュリティ対策を怠ったこと(第37条1項違反)、インシデント発覚後72時間以内に当局への報告を行わなかったこと(第37条4項違反)、そして法定義務であるデータ保護責任者を任命していなかったこと(第41条違反)などが同時に発覚した場合、それぞれの過料が合算されます。
(2)事例のご紹介
実際にタイ個人情報保護委員会(PDPC)が公表した摘発事例では、この条文の重ね掛けにより、オンライン販売の大手民間企業に対して総額700万バーツ(約3,100万円)という過料命令が下されました。700万バーツの内訳は、安全管理措置の不備(第85条違反)に関して300万バーツ、72時間以内の報告義務違反(第86条違反)に関して300万バーツ、データ保護責任者の未設置(第89条違反)に関して100万バーツでした。また、データ管理者の責任は自社内だけに留まりません。民間病院がカルテの廃棄を外部業者に委託したものの、業者が適切に破棄せず情報が流出した事例では、委託先に対する管理監督義務(第37条5項)を怠ったとして、病院側に121万バーツの過料が科されました。委託先業者に対しても、16,940バーツの過料が科されています。

3.マレーシア

⑴ 1:3インターンシップポリシーの概要

 2026年1月15日、マレーシア人的資源省(KESUMA)は、「1:3インターンシップポリシー(1:3 Internship Policy)」を公表しました。これは、雇用許可(Employment Pass、以下「EP」といいます)保持者1人につき最大3人の学生インターンを有給で受け入れることをEP承認企業に義務付けるものです。本ポリシーは2026年6月1日より正式に導入されています。

 同省傘下の人材開発公社タレントコープ(TalentCorp、以下「タレントコープ」といいます)は、本ポリシーの概要を説明するウェブサイト(The Progressive Policy on Expatriate Contribution to Local Talent Development)およびFAQsなどを公表しています。

⑵ 導入の背景

 マレーシアでは、年間25万~28万人の学生が卒業要件の一環としてインターンシップへの参加を求められています。本ポリシーの導入は、学生のスキルと産業界のニーズとの間のギャップを埋め、学生の効果的な職業訓練の機会を確保することを目的としています(FAQs第2問)。

⑶ インターン受け入れ比率

 EPのカテゴリに応じて、以下の割合によるインターンシップ枠の提供が義務付けられます(FAQs第21問)。

カテゴリI(EPI)  :EP 1件につきインターン 3名

カテゴリII(EPII) :EP 1件につきインターン 2名

カテゴリIII(EPIII):EP 1件につきインターン 1名

 なお、本ポリシーの試験導入段階では、EP比率計算で算出された受け入れインターン数は総従業員数の2%を上限とする措置が自動適用されていましたが、2026年6月1日以降、同措置は自動適用される標準方式ではなくなりました(FAQs第22問)。同措置の利用を希望する企業はMyNextプラットフォームを通じて申請(Appeal)し、事務局の審査・承認を受ける必要があります(FAQs第23問)。

⑷ 対象企業

 本ポリシーの適用対象となるのは、以下のいずれかの機関を通じてEPの承認を受けた企業です(FAQs第8問)。

・MYXpats(Malaysia Expatriate Services Centre)

・MDEC(Malaysia Digital Economy Corporation)

・MIDA(Malaysian Investment Development Authority)

・IRDA(Iskandar Regional Development Authority)

 本ポリシーはEP カテゴリI・II・IIIのすべてに適用されます(FAQs第10問)。対象企業は、タレントコープから参加に関する公式通知を受領した後、30日以内にMyNextプラットフォームへの登録およびインターンシップ担当者(PIC)の選任を完了する必要があります(FAQs第8問)。

 ただし、以下に該当する企業は適用除外の申請が可能です(FAQs第11問、第12問)。

・マレーシアでの操業開始から 2年未満の新設企業

・駐在員事務所・地域統括事務所(RERO)に該当する企業

・政府より税制免除を受けている企業(Pioneer StatusおよびITA:最初の5年間、Malaysia Digital:最初の2年間)

⑸ 対象学生および受け入れ要件

  受け入れ対象となる学生は、公私立高等教育機関およびTVET機関に在籍し、学士・ディプロマ・修了証(Certificate)レベルの課程において産業研修(Industrial Training)を必要とするマレーシア国内の学生です(FAQs第5問)。

インターンシップの受け入れに際しては、以下の要件を充足する必要があります(FAQs第14問、第17問、第19問)。

期間:最低10週間以上

報酬:月額最低RM500またはRM600(学業レベルによる)

形式:体系的・品質保証されたプログラムであること

承認:タレントコープによるMySIP(National Structured Internship Programme)フレームワーク下での正式認定されていること

配置分野:部門・職種を問わずインターン生の配置可能。外国人就労者への直属報告は不要。

法定拠出金:EPF・SOCSOその他の法的拠出金は、インターン生への義務的適用なし

 なお、受け入れ企業は、MySIP に基づく二重税控除(Double Tax Deduction)インセンティブを受けることができ(FAQs第17問)、HRD Corp の産業研修制度(Industry Training Scheme)との併用請求も可能となっています(レヴィ残高が50%以上の場合に限られます)(FAQs第18問)。

⑹ 違反に対する取り扱い  現時点において、本ポリシー違反に対する独立した行政罰則規定は明示されていません。ただし、本ポリシー不遵守の事実は将来のEP承認審査において相当の比重をもって考慮されることが明記されています(FAQs 第30問)。事実上、継続的なEP取得を必要とする企業にとっては、将来の外国人採用に直接影響するリスクとなり得ることに留意が必要です。

4.ミャンマー

倒産法(Insolvency Law)に基づくミャンマー法人の清算手続き

近年のミャンマーにおけるビジネス環境の変化に伴い、現地事業の縮小や撤退、法人清算を検討する日系企業が増加しています。ミャンマーにおける法人の清算・解散手続きは、従来は2017年ミャンマー会社法に基づいて実施されていましたが、2020年倒産法(Insolvency Law)および同規則(Insolvency Rules 2020)に基づく手続きへと完全に移行しています。それに伴い、会社法時代は、清算人の資格要件に厳格な法定基準がありませんでしたが、倒産法下では、ミャンマー倒産管財人規制評議会から正式に倒産管財人登録証(Insolvency Practitioner Registration Certificateを取得した専門家を清算人に選任しなければなりません。

本稿では、企業が清算を計画する上で不可欠となる倒産法に基づく清算手続きの重要ポイントと具体的なプロセスを、実務的な観点から解説します。

(1) 株主による自主的清算の流れ

日系企業が現地法人を閉鎖する際、最も一般的である株主による自主的清算の基本的な流れは以下の通りです。

①取締役会による資産負債状態の宣言(Statutory Declaration)

取締役会を開催し、会社の資産・負債を精査します。取締役の過半数が「会社は1年以内に債務を完済できる」旨の法定宣言書および資産負債計算書を承認します。

②株主総会における特別決議と清算人の選任

株主総会(臨時株主総会)を開催し、会社の清算に関する特別決議を可決します。同時に、倒産管財人を清算人に選任します。

③DICAへの登記および公告

清算人は、選任から2日以内にDICAに対して選任通知を登記します。また、選任から5営業日以内に、現地の日刊新聞紙上にて清算開始の一般公告を行います。

④債権回収・資産処分および税務クリアランス

取締役の権限は清算人に移譲されます。清算人は会社の残余資産を売却・処分し、債権者への弁済を行います。並行して、税務監査(Tax Clearance)を完了させます。

⑤最終株主総会の開催と解散登記

清算手続きが完了後、清算人は計算報告書を作成し、最終株主総会を招集します。総会後1週間以内にDICAに最終報告書を提出し、受理から3ヶ月が経過することで、法人資格が正式に「消滅(Dissolved)」します。

(2) 日系企業が留意すべき実務上の注意点

①税務クリアランス(Tax Clearance)の長期化

法律上の手続きは1年以内の完了を目指すよう規定されています(1年を超える場合は年次報告が必要)。しかし、ミャンマーの税務当局による過去の未払税金の精査や税務クリアランスの取得には、現在も膨大な時間を要するケースが大半です。実務上は、清算開始の数ヶ月前から事前準備(バックタックスの整理等)を行うことが推奨されます。

② 従業員への解雇補償金 清算に伴い現地従業員を解雇する場合、ミャンマーの労働法に基づく勤続年数に応じた解雇補償金の支払いに加え、事前の通知義務を遵守する必要があります。

5.メキシコ

2026年6月11日から7月19日まで、FIFAワールドカップ2026が、メキシコ、アメリカおよびカナダの3か国で開催されています。メキシコは、1970年大会および1986年大会に続き、2026年大会で史上初めて3回目の開催国となりました。メキシコでは、メキシコシティ、グアダラハラおよびモンテレイが開催都市となっています。
(1) メキシコ入国について
メキシコ国家移住庁は、ワールドカップ開催に関連して、550万人を超える来訪者を受け入れる準備を進めている旨を公表しており、大会期間中は、通常時よりも多くの外国人がメキシコに入国することが見込まれます。
もっとも、ワールドカップ開催期間中のメキシコ入国管理については、観戦者向けの包括的な特別入国制度が設けられているわけではなく、通常の制度を前提として、大量渡航に対応する運用が行われています。日本国籍者については、観光、商用等の目的でメキシコに180日以内滞在する場合、報酬を受ける活動を行わない限り、査証は免除されます。なお、査証免除の対象となる場合でも、入国時に必ず180日間の滞在が認められるわけではありません。外務省海外安全情報によると、滞在許可日数は、滞在目的、帰国便の日付、その他提出書類により判断されるため、入国時に許可日数を確認する必要があるとされています。
(2) 開幕日における特別措置
 連邦官報で公示された政令に基づき、2026年6月11日のワールドカップ開幕戦当日には、メキシコシティに拠点を置く連邦行政機関に対し、業務上必要な範囲を除き、公務員についてテレワーク等の柔軟な勤務形態を実施するよう命じました。ただし、医療、災害対応、国家安全保障、公共安全、出入国管理、交通・通信・エネルギー等の重要インフラ、ワールドカップ運営に直接関係する業務、住民対応など、現場での対応が必要な業務は対象とされていません。また、メキシコシティの民間部門および社会部門に対しては、不要不急の事務系業務についてテレワーク等の柔軟な勤務形態を実施することが要請されました。さらに、同日、メキシコシティに所在する公立・私立学校は休校措置が取られました。
(3) 大会期間中の注意喚起
ワールドカップ期間中の多数の来訪者を見据え、メキシコ政府は、健康管理、安全確保および詐欺被害防止に関する情報発信を行っています。保健省は、ウェブサイト上で複数言語により、メキシコ滞在中にワールドカップの試合を観戦する際の健康上のアドバイスや全国病院ネットワークを紹介しています。また、市民安全・保護省は、情報・サイバー捜査・技術作戦部門を通じて、ワールドカップ開催に際し、デジタル媒体を通じて宿泊施設、交通機関、観光サービスを手配する際の詐欺被害を防ぐための推奨事項を公表しました。同省は、実在しない宿泊施設や交通サービス、偽のウェブサイト、過度に安価なサービス等に注意し、公式サイトまたは信頼できる事業者を通じて予約を行うことなどを推奨しています。さらに、メキシコ政府とFIFAは、ワールドカップの安全確保に向けた調整テーブルを設置しており、大会期間中の安全対策について、政府機関と大会関係者の間で連携が行われています。
(4) 産業財産権の保護
ワールドカップの開催に伴い、公式ロゴ、エンブレム、出場国のユニフォーム等に関連する商品や広告・販促活動が増加しています。開幕に先立ち、メキシコ産業財産庁は、ワールドカップに向けた知的財産保護の取組みとして、メキシコシティにおいて模倣品取締りを実施し、FIFAの文字商標および大会エンブレム、スポーツ用品ブランド等に関連する商標権侵害の疑いがある商品約66,000点を押収した旨を公表しました。また、産業財産庁は、ワールドカップに関連して、商業施設、一般市民およびメディアに対し、産業財産権を尊重し、法令を遵守するよう呼びかけています。

6.バングラデシュ

⑴ 2026年バングラデシュ証券取引委員会(企業再編)規則草案の概要
 2026年5月23日、バングラデシュ証券取引委員会(以下、「BSEC」という)は、上場会社が関与する企業再編を規律する「2026年バングラデシュ証券取引委員会(企業再編)規則草案(the draft corporate restructuring rules, 2026)(以下、「本規則案」という)」を公表しました。本規則案は、これまで1994年会社法の一般規定に委ねられていた上場会社の合併・分割・買収等の手続に対し、BSECが証券規制の観点から正面から関与する枠組みを新たに構築するものであり、バングラデシュの資本市場規制において重要な転換点となります。
なお、本規則案は草案段階であり、意見公募期間を経て修正される可能性がある点に留意が必要です。

⑵ BSECによる事前審査権限の明確化
 本規則案の最大の特徴は、BSECによる事前審査権限の明確化です。上場会社は取締役会による組織再編の草案計画の承認から30日以内にBSECおよび証券取引所へ提出義務を負います(本規則案3条⑴)。証券取引所はこれを審査し、一定期間内に意見を発出します(同規則案6条⑵)。その後、BSECが草案計画及び証券取引所の意見を審査し、一定期間内に意見を発出します(同条⑶)。この意見は草案計画に反映させることが求められています(本規則案3条⑶)。また、BSECは裁判所手続への当事者参加権限を明示的に与えられています(同条⑹)。

⑶ 評価方法の統一・厳格化
 株式の評価方法について、絶対評価・相対評価それぞれ2手法以上の併用が義務付けられるとともに(本規則案附則B⑴、⑵)、割引率は10年物国債利回り以上、ターミナル成長率は長期GDP成長率以下とする数値基準が設定されました(本規則案附則B⑸)。さらに、評価人は当該会社の法定監査人・企業顧問を兼ねることができず(同規則案5条⑴)、市場価格のみを根拠とした評価も禁止されています(同条⑷(d))。

⑷ 少数株主保護の制度化および禁止行為の明文化
 少数株主保護の観点から、企業再編計画はスポンサー・取締役・5%以上の株式保有者を除いた一般株主の75%以上の賛成による特別決議が承認要件とされています(本規則案附則A第20項)。加えて、バックドア上場、評価の人工的引き上げ、市場価格操作、一般株主への負債の不公正な移転、証券法の潜脱・回避等を目的とした再編は明示的に禁止されています(本規則案4条⑷)。

7.フィリピン

① 広告業の外資規制について
広告業は、ネガティブリストに分類される外資制限業種であり、外国人・外国法人の出資比率は合計30%が上限です。フィリピン人が70%以上の株式を保有する必要があります。

② 広告業の範囲
「広告業」は一般に広告枠の売買や広告の制作、それから広告代理店も対象となります。

③広告コンサルが規制対象となるか
なお、広告枠の売買・制作を自ら行わない純粋なコンサルティング(PR・マーケティング助言)は規制外と一般に解釈されていますが、実態に基づき判断されますので注意が必要です。広告テクノロジープラットフォーム(DSP・SSP等)についても、フィリピン事業者向けに広告枠の売買・配信を主業とする場合は規制対象となるリスクがあります。

8.ベトナム

ベトナムの国際金融センターで働く外国人労働者に対する優遇措置に関する新規制についてご紹介します。ベトナムでは現在、ベトナム国際金融センターが下記2拠点に設立されています(本センターの正式な英語名称は、政令 No. 323/2025/ND-CP第3条2項に規定されています)。
・ ダナン市:ベトナム語の正式名称は「Trung tâm tài chính quốc tế Việt Nam tại thành phố Đà Nẵng」、英語では「Viet Nam International Financial Center in Da Nang City」、略称はVIFC-DNです。
・ ホーチミン市:ベトナム語の正式名称は「Trung tâm tài chính quốc tế Việt Nam tại thành phố Hồ Chí Minh」、英語では「Viet Nam International Financial Center in Ho Chi Minh City」、略称はVIFC-HCMCです(以下、これらを総称して「VIFC」といいます)。

VIFCの発展及び運営を促進するため、ベトナムでは、VIFC内で活動する企業・機関等及びその従業員、特に外国人労働者に対して、重要な優遇措置を提供する専用の法的枠組みが整備されています。

(1) 外国人労働者の採用に関する雇用政策の柔軟性
VIFC内で活動する企業・機関等は、国家安全保障が確保されることを条件として、外国人労働者に対する割当制限を受けることなく、具体的な職務要件に基づき、ベトナム人及び外国人の双方の人材を積極的に採用することが認められています(政令 325/2025/ND-CP第3条2項及び第3条3項)。

(2) 労働関連承認手続の簡素化及び有効期間の延長
・ 各VIFC当局は、VIFC内で活動する企業・期間等の外国人労働者に対する労働許可証発行及び労働許可証免除を含むすべての労働関連の承認について、最終的な意思決定権限を有します(政令 325/2025/ND-CP第4条)。
・ VIFC制度に基づく労働許可証免除の適用範囲は、政令 219/2025/ND-CPにより定められた現行の国家基準を大きく上回ります(政令 325/2025/ND-CP第5条1項)。さらに、通常の労働許可証申請について、VIFC内で活動する企業・機関等は、外国人労働需要の説明書の提出、ベトナム人応募者向けの現地求人広告の掲載、及び従来の雇用前労働承認の取得を完全に免除されます(政令 325/2025/ND-CP第8条1項)。
・ 申請は迅速化された手続の対象となり、管轄当局が完全な申請書類一式を受領した日から処理期間は、わずか3営業日以内と義務づけられています(政令 325/2025/ND-CP第6条2項及び第8条2項)。
・ 発給された労働許可証や労働許可証免除の有効期間は、従来の2年から、最長10年に延長されました(政令 325/2025/ND-CP第7条及び第9条)。

(3) 外国人材向け社会保険規制の最適化
強制社会保険及び失業保険の対象とならない外国人労働者については、本人の明示的な要請に基づき、任意に同意し加入する選択肢が付与されています(政令 325/2025/ND-CP第10条3項及び第11条2項)。強制社会保険の任意制度に関して、外国人労働者は、自らの加入の開始、一時停止、又は終了を独自の裁量で行うことができ、また、適用される法定条件を満たす限り、社会保険料の算定基礎となる給与基準を決定し調整する権利を有します(政令 325/2025/ND-CP第10条5項)。
現行法に基づき強制社会保険の対象となる外国人労働者は、ベトナムとそれぞれの本国との間で締結された二国間又は多国間条約に従い、海外の社会保障制度に過去に加入していたこと、又は現在加入していることを条件として、ベトナムにおける拠出義務の一部免除を受けることができます(政令 325/2025/ND-CP第10条6項)。

(4) 外国人駐在員の入国及び在留手続の円滑化
二段階の在留制度が導入されており、すべての在留手続について、わずか3営業日以内の迅速な義務的処理期間が設けられています(政令 327/2025/ND-CP第4条3項)。
・ 第一段階-主たる対象者(UD1 TRC):VIFC執行機関の推薦に基づき、(i)戦略的投資家、(ii)専門家、管理者及び上級幹部、又は(iii)高度技能労働者に該当する外国人労働者に対し、最長10年間の有効期間で発給されます(政令 327/2025/ND-CP第4条1項)。
・ 第二段階-家族(UD2 TRC):外国人労働者の家族に対し、対応するUD1 TRCの有効期間に直接連動する有効期間で発給されます(政令 327/2025/ND-CP第4条2項)。

(5) 国際的人材に対する個人所得税優遇措置の提供
VIFCで雇用され、すべての法定基準を満たす外国人管理職、専門家、科学者及び高度資格人材については、VIFCでの雇用から得られる給与及び賃金について、2030年12月31日まで個人所得税が免除されます。この免除は、所得が最初に発生した月から継続して適用され、月の途中で発生した所得は、免除の目的上、1か月分として扱われます(政令 324/2025/ND-CP第7条2項a及び第7条2項c)。

9.インド

(1) インドの外国直接投資規制の再調整

インドへの外国直接投資(FDI: Foreign Direct Investment)は、外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999)及び同法に基づくForeign Exchange Management (Non-Debt Instruments) Rules, 2019(NDI規則)等の施行規則によって規律されています。

インドの外国直接投資規制については、自動承認ルートと政府承認ルートの2種類があります。

政府承認ルートとは、一定の制限を付した事業分野について投資をする際には、管轄する管轄官庁から事前の承認を得ることが必要となるルートをいいます。

他方、このような事前の承認を不要とするルートが、自動承認ルートです。

この点、インド政府は2020年にプレスノート3号を公表し、インドと陸上の国境を接する国(中国、バングラデシュ、パキスタン、ネパール、ブータン、ミャンマー、アフガニスタン)の企業等、または当該国の企業等が「実質的所有者」(Beneficial Owner)となっている企業等からインドへ外国直接投資については、インド政府による事前承認を得る必要があるとしていました。

日本は、インドと陸上の国境を接する国ではありませんが、日本企業の株主に、例えば中国の企業や投資家が含まれている場合、当該中国の企業や投資家が「実質的所有者」となっている企業からインドへの外国直接投資として、政府承認ルートでの審査が求められる可能性があります。

 他方で、「実質的所有者」の定義が従来不明確であったため、政府承認ルートの対象なのか、承認が得られるのか等の点に不透明性があり、また、審査に時間を要し、投資の実行が遅れるといった不便が生じ得ました。

この点、インド政府は、2026年3月に、プレスノート3号の規制を見直すプレスノート2号を新たに公表しました。

プレスノート2号では、「実質的所有者」の定義が明確化されており、マネーロンダリング禁止規則(Prevention of Money Laundering Rules, 2005)の定義に準拠するものとされています。

 具体的には、当該企業に対して「支配権」(Control)を有しておらず、実質的な持ち分が10%以下である場合には「実質的所有者」に該当しません。なお、支配権には、株主間契約等に基づく取締役の過半数を任命する権利、または経営もしくは方針決定を支配する権利等が含まれます。

 従来は、「実質的所有者」の定義が不明確で、中国資本等がわずかに含まれている場合にも、事前承認を申請しなければなりませんでしたが、今般、「実質的所有者」の定義が明確化されたため、株主の中に中国の企業や投資家が含まれていても「実質的所有者」には該当しない場合、自動承認ルートで外国直接投資を行うことができ、規制が実質的に緩和されたことになります。


10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

(1) 地域情勢
2026年2月28日に勃発したアメリカ合衆国とイスラエルによるイラン・イスラム共和国に対する軍事攻撃は、6月18日にアメリカとイランが14項目の基本合意書に署名し、最長60日間に最終合意に向けて交渉することになり、ペルシャ湾とインド洋を結ぶホルムズ海峡の封鎖が解除されました。これを受けて、日本外務省もアラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビア王国(リヤド州及び東部州)、クウェート、バハレーン、オマーンの湾岸6か国について危険レベルを3(渡航中止勧告)から2(不要不急の渡航延期)に引き下げました。しかし、イスラエルのレバノン等への攻撃を合意違反として交渉が停止されるおそれがあり、以前の安定した状況に回復したとはいえません。

(2) 外国人労働者への対応
地域情勢の変化を受けて、アラブ首長国連邦(UAE)では、6月10日、連邦身分事項・市民権・関税及び港湾安全局(Federal Authority For Identity, Citizenship, Customs &Port Security)が、従前に2月28日以降の出国困難を理由に超過滞在罰金を免除された者に対して、7月9日までの30日間、再度超過滞在罰金を免除することを発表しました。攻撃開始直後の3月2日に取られた措置は出入国困難者への緊急避難対策でしたが、今回の措置は、引き続きUAEに適法に滞在するために必要な査証等の取得を促すことを目的としています。引き続きUAEに滞在を希望する場合には、追加的な事前手続なしに滞在または労働許可を修正することが可能とされます。もしくは7月9日までに出国することで、罰金の支払いを免除されます。当局は、地域全体の安定化を理由に、免除措置が正当化される状況はもはや存在しないと説明しており、今回の措置が最後の機会となることが予想されます。

11. インドネシア

(1) 商標手続きに関する新規則の概要
2026年2月23日、商標登録に関するインドネシア法務人権大臣令2026年第5号(以後、「新規則」といいます)が施行され、商標出願に関する手続きや要件について変更されています。新規則は、商標および地理的表示に関する法律2016年第20号(以下、「商標法」といいます)や2023年雇用創出法(オムニバス法)により改正された商標および地理的表示に関する法制度を具体化する実施規則として位置付けられており、商標登録制度の基本的枠組みを変更するものではなく、特に商標出願に係る要件の具体化が行われ、より効率的かつ予見可能性の高い制度運用を志向しています。

(2) 商標出願
商標出願は、願書、商標見本、宣誓書等を添えてインドネシア語で行われる必要があり、電子出願および、1つの出願で複数分類への出願も可能です(商標第4、6条)。この点新規則では、要件がより明確化されており、出願人の氏名または名称、住所、商標の表示、商品または役務の区分および内容といった基本情報に加え、出願人の属性に応じた補足書類である、a) 国民身分証明書(KTP、パスポート)、b)一時滞在許可証(KITAS)、c)永久滞在許可証(KITAP)、児童身分証明書(KIA)の提出が必要とされています(新規則第4条)。
また、法人の出願人の場合には、取締役の場合には身分証明書(パスポートのスキャンの写しなど)や、会社の定款が求められることが新たに規定されました。外国人による出願の場合は、インドネシアの代理人を通じて出願することが義務付けられており(商標法第5条)、その他、パリ条約に基づく優先権主張に基づく出願を、第一国出願の出願日から6カ月以内に出願することが認められています(商標法第9条)。優先権を主張する場合には、優先権証明書の提出が求められるとともに、当該証明書には宣誓翻訳者によるインドネシア語訳を添付する必要があることが新規則において新たに規定されています(新規則第4条)。なお、施行前に提出された商標出願については従前の規則に基づき処理される一方、施行後の出願については新規則が適用されます(新規則第75条)。