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「COVID-19関連の入国規制および労働災害に関する法制度の概要」 TNY Group Newsletter No.34

第1.各国のCOVID-19関連の入国規制

1.日本

(1) 外国人の入国制限について

2022年10月11日以降、全ての外国人の新規入国について、日本国内に所在する受入責任者による入国者健康確認システム(ERFS)における申請は求められなくなり、68の国・地域に対する査証免除措が再開されました。以下の国・地域に対するAPEC・ビジネス・トラベル・カード取り決めに基づく査証免除も再開されました。

地域 国・地域
アジア インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、台湾
大洋州 オーストラリア、パプアニューギニア、ニュージーランド
中南米 チリ、ペルー、メキシコ
欧州 ロシア

外務省HP新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について|外務省 (mofa.go.jp)

(2) 日本入国時の検疫措置について

 2022年10月11日から、日本入国時の検疫措置は原則として実施せず、入国後の待機等を求めないこととなりました。ただし、全ての帰国者・入国者について、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの接種証明書または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提出が必要とされています。

 また、2023年1月12日以降、中国(マカオを含む、香港を除く)からの直行便での入国者については、ワクチン接種証明書の有無にかかわらず、出国前検査証明書が必要とされ、入国時の検査も行われる臨時的な水際措置が講じられています。

有効なワクチン接種証明 陰性証明書
(出国前検査)
質問票 入国時検査 入国後の待機期間
あり 不要
必要
なし
なし
なし 必要

厚生労働省HP 水際対策

 

2.タイ

タイでは、2022年10月1日から入国規制等が以下のとおり緩和されています。

(1) タイ入国時の規制緩和

(2) タイ国内における感染対策緩和

 

3.マレーシア

 2022年8月1日以降、ワクチン接種完了の有無に関係なく渡航前の陰性証明書の取得、入国後検査、及び隔離が不要となっています。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、マレーシア政府開発のMySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力しアクティベートさせておくことが要請されています。

 

4.ミャンマー

2022年12月1日より、ミャンマー入国の条件となっている「到着 14 日以上前に接種した承認済み ワクチンの(2 回)接種証明書」又は「到着前 48 時間以内に発行された RT-PCR 陰性証明書」を所持している方は、5 月 1 日より求められていた、 ミャンマー到着後の空港における RDT 検査の受検が不要となりました。(ただ し、入国時のスクリーニング(検温)で新型コロナウイルス感染症の症状 がある場合は、引き続き、RDT 検査が実施されます。)

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。

 

5.メキシコ

メキシコへの入国について、政府による入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。なお、1月にVOA(アライバルビザ)による入国者全員を対象に空港で抗原検査が実施されました。抗原検査の対象者や対象期間について政府による通知は出されていませんが、アライバルビザで入国する出張者などは注意が必要です。

 

7.フィリピン

 フィリピン検疫局は、改定されたフィリピン入国ガイドラインを発表しました。

(1) 完全にワクチンを接種した者(Fully vaccinated)

以下の条件を両方満たす場合は、完全にワクチンを接種した者と見なされ、出発国出発前の検査を免除されます。

  1. 出発国からの出発日時から遡って14日以上前に、ファイザーなど2回接種する種類のワクチンを2回接種済み、またはヤンセンなど1回接種する種類のワクチンを接種済みのこと。
  2. 以下のいずれかで発行したワクチン接種の証明書を携帯/所持していること。

 ア 世界保健機関(WHO)が発行した国際ワクチン接種証明書(ICV)

 イ VaxCertPH

 ウ 外国政府の国または州の紙面/デジタルの接種証明書

 エ その他のワクチン接種証明書

(2) ワクチン未接種、一部ワクチン未接種、ワクチン接種状況を検証できない者

  1. 15歳以上の者および同伴者のいない15歳未満の未成年者

 ア フィリピン到着時に、出発国の出発日時から遡って24時間以内(経由便利用者は乗り継ぎ空港の敷地外ないし乗り継ぎ国に入域・入国していないことが条件)の陰性の抗原検査結果を提示することが必要です。

 イ 上記アの抗原検査で陰性の証明を提示できない者は、空港到着時に医療施設、研究所、診療所、薬局、又はその他の同様の施設で医療専門家によって実施および認定された検査室の抗原検査を受ける必要があります。

 ウ 上記イの抗原検査で陽性となった場合には、フィリピン保健省(DOH)の検疫、隔離規則に従うことになります。

      2. 同伴者のいる15歳未満の未成年者

同伴する成人又は保護者の検疫規則に従うとされています。

 

8.ベトナム

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(観光目的、ビジネス目的いずれであっても)、

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の労働災害に関する法制度の概要

1. 日本

 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)は、業務上または通勤による労働者の負傷、疾病、傷害、死亡等に対して保険給付を行うことを目的としています(第1条)。

  1. 労災事故

労災保険給付の対象となる事故は、事業の遂行においての事故や事業に起因する疾病です。そのため、身体的な傷害だけではなく、心理的な要因による精神障害やいわゆる「過労死」等も労働災害と判断される場合があります。

労働災害は、その傷害、疾病、傷害、死亡が生じた場面に応じて業務災害と通勤災害に分けられます。

業務災害は、事業所内での作業に起因するものにとどまらず、出張や社外業務中に遭遇した事故も含み、一般的に、労働者に発症した疾病で、①労働の場に有害因子が存在し、②健康障害を起こしうるほどの有害因子にさらされ、③発症の経過及び医学的にみて妥当である場合には、業務上疾病と認められます。

通勤災害は、就業に関し、㋐住居と就業場所の往復、㋑就業場所から他の就業場所への移動、または㋒単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動時に生じた事故を指し、合理的な経路及び方法で行った通勤であることが要件とされます(ただし、業務の性質を有する移動は、業務災害となります)。そのため、通常と異なる通勤路を使用したり、立ち寄りをしていた場合には、個別具体的な事情を考慮して、通勤災害と認められるかが判断されます。

 2. 事業者の義務

 労災事故が発生した場合、事業者は、労働基準法により賠償責任を負いますが、労災保険に加入している場合、労災保険による補償がなされます。ただし、休業1~3日目については、休業補償の対象外となるため、事業者が平均賃金の60%を直接被災労働者に支払う必要があります。

労災保険は強制加入であり、業種や規模にかかわらず、常時1人でも従業員(パートを含む)を雇用している事業者すべてに適用されます。事業者は、事業の種類により定められた割合の保険料を全額負担しなければなりません。故意または重大な過失によって労災保険の加入を懈怠していた場合には、発生した労災事故について支給された保険給付の全額または40%を徴収されることがあります。

 事業者には、労災事故が発生した際に労働基準監督署に労働者死傷病報告をする義務もあります。

      3. 労災給付

 労災事故により、負傷・疾病があったときの給付は大きく分けて、療養に関する給付と休業に関する給付があります。

 療養(補償)給付は、治療に関する費用の補償で、労災保険指定医療機関以外で療養を受けるときは被災労働者が支払った医療費が支払われます。労災指定医療機関で受診するときには療養費を支払う必要はなく、直接医療機関に給付請求書を提出することで足ります。療養の結果、後遺障害が残る場合には、その等級によって一時金または年金の形で障害(補償)等給付がされます。

 傷病の療養のために労働できず、賃金を受けていない期間について、休業4日目以降は、それに先立つ3月間の平均賃金(日額)の80%(60%が休業補償、20%が休業特別支給金)に休業した日数を乗じて給付が保証されます。療養開始後1年6月を超えても治癒せず、傷害の程度が傷病等級に該当する場合には傷病(補償)等年金が給付され、障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金の受給者で介護を要する場合には介護(補償)等給付もされます。

 被災労働者が死亡した場合には、葬祭料の他、遺族に対して遺族補償給付として年金と一時金が給付されます。年金の額は遺族の人数に応じて変動しますが、遺族補償給付は最も優先順位の高い人に対して支給されます。

 労災保険の給付には、指定の請求書に事業者及び医療機関から証明を受けて、労働基準監督署に提出する必要があります。事業者が証明を拒否した場合でも、被災労働者がその旨を告げて請求書を提出すれば、労働基準監督署が事業者に対して事実調査を行い、その結果、労災認定が下りれば、給付を受けることができます。労災認定に不服がある場合には、行政手続である審査請求をすることができます。

 

2.タイ

(1) 労働災害に関する法制度について

労働災害が発生した際の法律として、労働安全衛生環境法(Occupational Health and Safety and Environment Act, B.E2554(A.D.2011))および労働者災害補償法 (Workmen’s Compensation Act, B.E. 2537 (A.D.1994))があります。労働安全衛生環境法では、労災事故後の使用者の義務を定め、労働者災害補償法では、労災基金や労災補償金の支給について定めており、業務に起因した死亡事故や傷害が発生した場合または病気に罹患した場合に、従業員が受け取ることのできる補償金等について規定されています。

(2) 労働災害として対応が必要となる場合

使用者は、業務に起因した従業員の死亡事故や傷害が発生した場合または病気に罹患した場合の他、火災等により事業所が危険な状態に陥った場合や、それにより負傷者等が発生した場合に、以下の責任を負うこととされています。

(3) 労災事故が発生した場合の使用者の義務

使用者は、労働災害により従業員が死亡した場合、直ちに安全検査官に電話、FAX、またはその他の手段で通知をし、従業員が死亡した日から7日以内に労働災害の内容及び原因を書面で報告しなければなりません(労働安全衛生環境法34条1項)。

火災や爆発、流出物の発生やその他の重大な事故の発生の結果、事業所が損害を受けたり、生産を停止しなければならない場合、または人がいる事業所内が危険な状態に陥った場合や、負傷者等が発生した場合、使用者は直ちに安全検査官に電話、FAX、またはその他の手段で当該事実を通知しなければなりません。また、事故発生から7日以内に、当該事故等の原因及び再発防止措置を書面で報告しなければなりません(同条2項)。

従業員が労働災害補償法所定の危機に直面し、または病気に罹患した場合、使用者は7日以内に社会保険事務所に通知し、その写しを安全検査官に送付しなければなりません(同条3項)。

(4) 労働災害が発生した場合の給付

従業員が生命の危険または疾病に罹患した場合、使用者は直ちに従業員の治療を手配する必要があります。また、省令規定の範囲内で医療費やリハビリ代、葬祭費を使用者が負担することとなり(労働者災害補償法13条、15条、16条、17条)、労働災害に遭った従業員または当該従業員の親族に対して、毎月補償金を支払わなければならないとされています(同法18条)。

一般的に、使用者は補償基金の規定に従って従業員に補償金を支払う必要がありますが、従業員が酩酊物質やその他の中毒性物質(アルコールや大麻等)を摂取したため意識をコントロールできない場合、または従業員が自ら労働災害を招いた場合や第三者に発生させるよう仕向けた場合には、使用者は補償金を支払う必要はありません。

 

3.マレーシア

 マレーシアでは、労働災害に関する法令として労災給付制度を定めた労働者社会保障法(The Employees’ Social Security Act 1969)があります。

(1) 概要

労働者社会保障法は、怪我等の理由で就労ができなくなった場合の収入の填補について規定しています。同法に基づく労働者社会保障制度はSOCSO(Social Security Organization)によって運用されています(同法58条)。

同法は、以下の2つの制度を提供しています。

(2) 加入義務者

使用者は同法に基づき自身とその労働者(雇用契約又は見習契約に基づき就労する全ての者)の登録を行わなければなりません(同法4条、5条)。家事労働者を除く外国人労働者も加入義務の対象です。

本制度の対象者は2つのカテゴリーに分けられます(同法6条2項)。

  1. 第一カテゴリー:雇用傷害保険制度及び障害年金の被保険者たる労働者
  2. 第二カテゴリー:雇用傷害保険制度の被保険者たる労働者

(3) 給付内容

同法では以下のとおり給付内容が定められています(同法15条)。

 ア 障害年金(Invalidity Pension)

医療委員会から(永続的な)就労不能との認定を受けた被保険者に対する定期給付です。

 イ 障害手当(Disablement Benefit)

業務上の負傷に起因する障害(Disable)を受けた被保険者に対する定期給付です。

この手当には、以下の種類があります。

  1. 一時障害手当
  2. 永続的部分障害手当
  3. 永続的全部障害手当

使用者は、労働者が一時障害手当を受給している期間中は、労働者を解雇又は罰することができず、同期間中になされた解雇、減給に関する通知は無効であり効力を有しないとされています(同法53条)。

 ウ 遺族手当(Dependants’ Benefit)

業務上の負傷の結果死亡した被保険者の遺族に対する定期給付です。

    エ 葬儀手当(Funeral Benefit)

業務上の負傷により被保険者が死亡した場合、受給権を有する近親者に支払われます。

 オ 継続看護手当(Constant-Attendance Allowance)

障害年金又は永続的全部障害手当の受給権を有する労働者は、その不能の程度が著しく他の人間の継続的な看護を必要とする場合、それぞれの給付の40%に相当する継続看護手当を受給することができます。

 カ 医療手当(Medical Benefit)

業務上負傷した労働者の治療費等の給付です。

 キ 遺族年金(Survivors’ Pension))

障害年金の受給中に亡くなった労働者等の遺族に対して支払われる定期給付です。

(4) 使用者の責任

一般的に、使用者が職場における安全性の確保に関する義務を怠り、その結果労働者が負傷し損害を負った場合、労働者は使用者に対して損害の賠償を求めることができますが、同法31条本文は、労働者は同法に基づき補償される雇用契約上の受傷については使用者から損害の賠償を受ける権利を有しない旨を定めています。したがって、職場における事故を理由に労働者が使用者に対して損害の賠償を求める事例は多くはないと考えられます。

ただし、同条ただし書は、同条本文の例外として、道路輸送法(Road Transport Act 1987)により使用者に第三者賠償保険加入が義務付けられている自動車の事故に起因する請求については同条本文を適用しない旨を定めているため、この場合には、労働者は使用者に対して損害の賠償を求めることができるとされています。

 

 

4.ミャンマー

(1) 社会保障法及び労働者災害補償法

労働災害に関して、社会保障法(The Social Security Law, 2012)及び労働者災害補償法が規定しています。社会保障に加入している労働者は社会保障法のみ適用され、労働者災害補償法は適用されません(社会保障法49条)。

(2) 社会保障法における労災の内容

社会保障に加入している労働者は、労災時の治療(社会保障法52条(a))、一時的に就労不能となった場合の無料の治療及び労災前4ヶ月の平均賃金の70%の一時就労不能給付(社会保障法55条)を最長12か月間受給できます(社会保障法施行細則180条、181条)。また、永久的に一部障害が生じた場合、障害により失った能力の程度に応じて平均賃金の70%を一定期間受給できます(社会保障法57条、58条)。

労災により死亡した場合、負担金を支払った期間に応じて、指定された遺族に対して給付が支払われます(社会保障法62条)。

(3) 労働者災害補償法の内容

本法は、労働者が就業中に負傷した場合は、使用者が補償しなければならない旨規定しています。具体的には、①死亡した場合、②全面的身体障害になった場合、③永久的部分的身体障害になった場合、④一時的身体障害になった場合、⑤他者の介助が常時必要になった場合、の各補償について規定しています。但し、例外として、負傷の原因が次のような事由に起因する場合には補償義務を負いません。すなわち、(a)負傷時に飲酒、薬物使用により精神喪失状態にあった場合、(b)安全管理の観点から明示的に与えられた業務命令や規則に対し負傷者が故意に従わなかった場合、(c)安全管理のために設けられたことが明らかな予防手段を負傷者が故意に取り除いたり、無視した場合です。なお、労働者が特定の業種において、少なくとも6か月以上継続的に雇用され、その職業に固有の職業病に罹患した場合は、雇用者がその反証を提示できない限り、当該疾患も就業上の負傷の場合と同様の取扱いとなります。

 (1)で述べた通り、社会保障法に加入していない労働者の労災についてのみ本法が適用されるため、現在では本法が適用される場面は極めて限られた場面となります。

 

5.メキシコ

(1) 関連する法令等

 労働災害については、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)および社会保険法(Ley Seguro Social)に規定されています。基本的には、連邦労働法で規定されている内容について社会保険法にも規定され、社会保険で補償されることになります。

 なお、使用者は、労働者を雇用した場合、当該労働者を社会保障に加入させなければなりません。

(2) どのような場合に労働災害としての対応が必要となるか

 労働災害(Riesgos de trabajos)とは、業務の過程でまたは業務に関連して発生する事故および疾病をいい、業務上の事故と業務上の疾病に分けらます。

業務上の事故(Accidente de trabajo)とは、業務の過程または業務に関連して突然発生した、即時又は事後の器質的損傷又は機能障害、死亡又は誘拐など第三者の法に反する行為に起因する失踪をいい、事故の発生場所及び時間帯は問われません。労働者が自宅・職場間、職場から他の職場へ直接移動する際に発生した事故は、この業務上の事故に含まれます。

業務上の疾病(Enfermedad de trabajo)とは、労働者がその労務を提供する義務を負う業務または環境において、業務に由来しまたは関連する要因の継続的作用により生じる病的状態をいいます。

 以上のような、業務上の事故や業務上の疾病が生じた場合には、労働災害として対応が必要となります。

(3) 労災事故が発生した場合の使用者の義務

使用者は、応急処置を施し、労働者の自宅または病院への移送の手配をする義務を負います。

使用者は、労働災害が発生した場合は、その発生から72時間以内に労働社会保障省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)に書面もしくは電子的方法により届出なければならず、労働災害によって労働者が死亡した場合には、直ちに通知しなければなりません。ただし、当該労働者が社会保障機関に自ら提出した場合はその必要はありません。

また、労働者の死亡や後遺障害に至る労働災害が発生した場合は、各事業所に設置された労働安全衛生委員会はその発生から30日以内に原因の調査を行わなければなりません。

(4) 労働災害が発生した場合の給付

① 労働災害によって生じうる結果

労働災害により生じた結果は以下のように分類され、これに応じた社会保障給付等がなされます。

② 給付の種類

部分的な後遺障害の場合も、障害年金を得ることができます。

③ 使用者による補償

 使用者は、労働災害により生じた労働者の障害等に対し社会保障による補償を受けさせることができない場合、当該労働者に対し、次の補償を行わなければなりません。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、労働法および労働規則にて、労働災害補償について規定しています。輸出加工区(EPZ)および経済特区(EZ)については、EPZ労働法およびEPZ労働規則が適用されます。

(1) 労災の対象範囲

全ての一般労働者が対象となる日本の労災補償制度と異なり、バングラデシュでは、労災の対象となる労働者が限定されており、鉄道法3条に定義されている鉄道員又は労働法/EPZ労働法別表4に列挙されている業務に従事する者で、一般的なサービス業の労働者や事務員は含まれていません。労災補償の対象となる31項目(EPZ労働法では11項目)の職種は、a) 5人以上が雇用されている職場で、蒸気、水または他の機械的動力または電力が使用される製造工程、付随する業務、製造工程に関する業務に従事する者(製造工程が行われていない場所で事務作業のみに従事しているものは除く)、b) 5人以上が雇用されている職場で、建物または敷地内で、物品の使用、輸送または販売のために、製造、改造、修理、装飾、仕上げ、改良する業務に従事する者、c) 10人以上が雇用されている職場で、爆発物の製造または取扱いに従事している者、d) 建物等の建設、保守、修理または取り壊しに従事する者、e) 運転手、f) 倉庫で雇用されている又は10人以上雇用されている倉庫もしくはその他の場所で勤務している者、又は、100人以上が雇用されている市場もしくは場所で物品の取り扱いもしくは輸送に従事している者、g) 警備員、などが挙げられています(労働法150条(8)、EPZ労働法73条(8))。

労災補償の対象となる職種の労働者が、勤務中に生じた事故により、身体を負傷した場合、以下の場合を除き、使用者は補償金を支払う義務があります(労働法第150条(1)(2))(EPZ労働法第73条(1)(2))。

  1. 負傷による全体または部分的な労働能力の損失が3日を超えない場合
  2. 労働者の飲酒または薬物使用に起因する事故、労働者が安全確保を目的とした明確な指示または規則に故意に従わなかった場合、労働者の安全確保を目的として支給されていることを知りながら、労働者が故意に安全装備を外したり、無視した場合に直接起因する事故による負傷の場合

労働法/EPZ労働法により特定された業務により指定の職業病に罹患、特定された業務に6か月以上継続的に勤務し、指定の職業病に罹患した労働者は、労災とみなされ、使用者が反証しない限り、勤務中に生じたとみなされます(労働法第150条(3))(EPZ労働法第73条(3))。

(2) 補償金額

労働不能の程度に応じた補償金額が定められています。永久一部労働不能について、労働法/EPZ労働法別表1にて、負傷の程度に対する労働不能の割合が記載されています。一時労働不能の場合、労働不能となった日から4日の待機期間後の支払い月の初日に1か月の補償金が支払われ、労働不能の期間または別表5に指定される期間(1年、長期に亘る疾病の場合は2年)の短い方の期間支給されます(労働法151条(1)、EPZ労働法74条(1))。同一の事故により複数の負傷があった場合は、永久全労働不能による補償金額を超えない範囲で増額されます(同条(2))。

 

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける労働災害に関する法制度の概要

労働安全衛生法に位置づけられる、共和国法第11058号the Occupational Health and Safety Law(以下「OSH法」といいます。)は、「安全で健康な労働力」に対する国の方針を表した法律になります。2018年8月17日に成立したこの法律は、フィリピン経済特区庁(Philippine Economic Zone Authority)圏内の企業も含むすべての民間企業を対象とした法律です。また、フィリピンにおける労働法は、その規定がOSH法と矛盾しない限り、労働安全衛生が問題となる場面で適用されることがあります。

  1. OSH法の概要

OSH法においては、労働安全を確保するため、使用者と労働者間の義務及び責任が定められています。OSH法において、一般的に、使用者は、従業員に安全な労働環境を提供する義務があり、労働者は、使用者が課す安全衛生に関する規則等を遵守する義務があります。

     2. フィリピンにおける労働災害に関する使用者の義務等

労働者は、使用者の過失、重過失又は悪意の有無に関わらず、業務上生じた障害や死亡に対する補償請求を行うことができるとされています。最高裁判所も、職場で負傷した労働者は、労働法に基づく損害賠償請求ができる旨を判示しています。なお、使用者の過失に起因する労働災害が生じた場合には、民法に基づく訴えを申し立てることができるとされています。労働災害が生じる前に、労働者に安全な労働環境を提供し、万が一事故が発生した場合は、必要に応じて応急処置を行うなどの体制を整えておく必要があります。

      3. フィリピンにおける労働災害に関するその他の制度

フィリピンにおいては、労働法に基づき、国家保険基金の制度が存在します。 この国家保険基金は、労働者が、業務に関連した障害の発生や死亡の場面において請求できる補償基金として創設されたものです。民間企業従業員(SSS)及び公共企業体従業員(GSIS)は加入が必須とされており、補償金の請求があった場合は、使用者の労働者に対する賠償金の支払義務が免除される可能性があります 。

 

8.ベトナム

 ベトナムでは、2016年7月から労働安全衛生法が施行され、その中で労働災害についても規定されています。

(1) 適用対象

 労働安全衛生法45条には、次の要件を満たす場合を労働災害と規定しています。

 ① 以下のいずれかに該当する事故に遭うこと

  ・ 職場において勤務時間内に発生した事故

  ・ 雇用主の指示に従い、職場以外の場所又は勤務時間以外において発生した事故

  ・ 適切な時間に適切なルートで通勤している途中で発生した事故

 ② 事故により、5%以上、労働能力を喪失したこと

 ③ 事故が次のいずれかの原因により発生したものではないこと

  ・ 労働者と事故の原因となった者との間で、業務に関係なく紛争が発生した場合

  ・ 労働者が故意に健康を害した場合

  ・ 労働者が法律で禁止されている薬物などを使用した場合

(2) 労働災害が発生した場合における使用者の責任

 労働災害が起こった場合における使用者の責任については、次のとおり規定されています。

 ・ 被災者の応急処置や救急搬送を速やかに行うこと

 ・ 労働災害を所轄官庁に届け出ること

 ・ 死亡労働災害や重大な労働災害の現場をそのまま保全すること

 ・ 応急処置を含む以下の治療費を負担すること

・ 健康保険加入者の場合

   自己負担分の医療費及び健康保険適用外の医療費

   医学鑑定評議会において労働能力喪失率が5%未満とされた場合における労働能力喪失率検査の費用

・健康保険未加入者の場合

   医療費全額

 ・ 治療やリハビリのために欠勤した被災者に対し、欠勤期間の給与を全額支払うこと

 ・ 労働者本人の過失によらない労働災害の場合、次のとおり補償金を支払うこと

・ 労働能力喪失率が5%〜10%の場合 月給の1.5倍以上の金額

・ 労働能力喪失率が11%〜80%の場合 月給の1.5倍以上の金額+喪失率1%あたり月給の0.4倍の金額

・ 労働能力喪失率が81%以上の場合 月給の30倍以上の金額

・ 労働者が死亡した場合 遺族に対し月給の30倍以上の金額

 ・ 労働者本人に過失がある場合、上記過失がない場合の40%以上の金額の補償金を支払うこと

 ・ その他、労働災害調査チームの設置や調査に対する情報提供、労働災害記録の作成、保管、従業員への労働災害に関する情報の提供など

発行 TNY Group

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・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

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