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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに労務における休日・休暇の法制度」 TNY Group Newsletter No.18

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

27の都道府県に実施されていた緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置は、9月30日にすべて解除されることが発表されました。解除後も1カ月をめどに飲食店の営業時間短縮要請やイベントなど一定の制限を設け、対策の緩和は段階的に行うとされています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 検疫の強化

1 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

2 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

3 スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

4 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

5 ワクチン接種証明書の「写し」の提出

 入国時・帰国時の検疫で、有効なワクチン接種証明書の「写し」を提出する場合、検疫所が確保する宿泊施設での3日間の待機の免除や、入国後14日間の待機期間の一部が短縮されます(ワクチン接種証明書の「写し」の提出について(厚生労働省))

6 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

検疫措置として、「水際対策上特に対応すべき変異株等に対する指定国・地域」及び「水際対策上特に対応すべき変異株以外の新型コロナウイルスに対する指定国・地域」からの入国者は、検疫所長の指定する場所での3日間又は6日間の待機が求められます。本Newsletterでご紹介する国のうち対象国は、フィリピン(6日間待機)、マレーシア及びバングラデシュ(ともに3日間待機)です(対象の国又は地域については、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

(2) 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は1,591,829名です。この内、1,459,786名が回復し、累計死亡者数は16,620名となっています。また、非常事態宣言は、11月30日まで延長されています。

タイ政府は、9月27日、規制を緩和する措置を発表しており、ダークレッド・ゾーンについて、10月1日より、外出禁止措置の開始時間を、午後9時から午後10時へ変更し、午後10時から翌朝午前4時まで外出禁止とするとしています。そして、スーパーやデパート、ショッピングモール、コンビニエンスストアなど、午後9時まで営業可能としています。

また、以下の各施設について、緩和措置が発表されています。

  • 公共図書館、私立図書館、美術館、博物館、教育科学センター、科学文化センター

常にマスクを着用し、4平方メートルあたり1人、定員の75%以下など、限られた人数での利用可。食事禁止。

  • ネイルサロン

事前予約で利用可能。

  • タトゥーショップ

事前予約で利用可能。ワクチン接種証明か、72時間以内のPCR検査結果が必要。

  • マッサージ、スパ

事前予約にて2時間以内の利用に限る。ワクチン接種証明か、72時間以内のPCR検査結果が必要。

  • 映画館

常にマスクを着用し、少なくとも1メートルの距離を置くか、定員の50%以下など、限られた人数での利用可。食事禁止。21時までの営業可。

  • レストランでの音楽の演奏

演奏者は3人以下。演奏家は常にマスクを着用。歌手は歌う時のみ、マスクを外すことが可能。

2.2 入国規制

 タイ政府は、9月27日、タイへの入国者の隔離措置について、10月1日から、ワクチン接種証明書を条件として14日間から7日間に短縮する方針を決定しました。また、ワクチン未接種者で空路での入国者については、10日間に短縮するとされています。陸路での入国の場合は、14日間の隔離措置とされています。また、隔離期間中に2回のPCR検査が義務付けられます。

この入国規制の変更については、随時最新の情報を確認する必要がありますので、在東京タイ王国大使館又は、在タイ日本大使館のHPをご参照下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連の規制状況

 9月27日の新規感染者数は、10,959人であり、ピーク時の6割ほどに落ち着いています。現在マレーシア国内で施行されているFMCO(完全ロックダウン)は、第一段階から第四段階まで設定され、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。現在、第一段階はケダ州のみであり、ペラ州、クランタン州、ペナン州、サバ州(南部エリアを除く)、マラッカ州、スランゴール州、クアラルンプール州、プトラジャヤ州、ジョホール州が第二段階、ペルリス州、サラワク州、トレガンヌ州、パハン州が第三段階、ラブアン、ヌグリ・スンビラン州が第四段階となっております。

 この段階的な規制は、第二段階において出勤率最大80%を上限に経済活動を段階的に許可し、第三段階において出勤率最大80%を上限に全ての産業の稼働、議会開会、教育・社会・スポーツ活動を段階的に許可し、第四段階において全ての産業の稼働、州間移動が許可するとしています。

 第二段階の規制では、生活必需品のための外出は、一世帯から2名までと制限がありますが、ワクチン接種完了者については、地区間移動も許可されています。また、ワクチン接種完了者は、店内飲食も許可されています。

3.2 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。もっとも、ワクチン接種完了等の一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19 の陽性者数は1日あたり2,000人以下、陽性率は約8%と落ち着きを見せています。感染予防のための祝日も9月10日で終了したことから、政府機関も動き出しており、ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらない状況に戻ってきています。

4.2 入国規制

9月は 10日及び 24 日の ANA便が飛びました。10月は 8日、15日、22日、29日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっています。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。またミャンマー入国後のホテル隔離について、これまで隔離日数は 10 日でしたが、今後 11 日に変更になりました。(ヤンゴン保健当局から各ホテルに、到着日の翌日を1日目とカウントし、隔離先ホテルのチェックアウト日は 11 日目であるとの通知が出されたためです)

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

COVID-19感染者数の増加は落ち着きを見せ始め、メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、9月6日の更新で、赤の州が0州になりました。9月20日の更新では黄色の州が24州となるなど、改善を見せています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、10月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路(ただし、フェリーでの移動を除く)での移動については適用しないとされています。また、3月19日から実施されているメキシコ政府によるグアテマラ及びベリーズ国境における陸路での不要不急の移動制限についてついては、6月21日以降その延長は発表されていないものの、在メキシコ日本大使館によると、解除の通知が為されていないことからこれまでと同様の制限が継続されると考えられるとのことです。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置としての渡航や入国規制(8月16日付)が、継続されています。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループAに属する国(モンゴルやマレーシアなどの計11か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了していない者の入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(英国やタイなどの計16か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了している者は、自宅での14日間の隔離、ワクチン接種が完了していない者は、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。なお、トランジット先によっては「出発48時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明」の提示を求めている国もありますので、注意が必要です。

その他、バングラデシュ‐インド間のエアバブル(二国間の商用旅客便の再開を目的とした取り決め)フライトが9月5日に再開しました。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

フィリピンのCOVID-19感染者は累計2,552,965人で、死者数は累計37,686人です。新規感染者は9月初旬をピークにやや減少傾向がみられるものの、依然として高い数値です。フィリピン政府はコミュニティ隔離措置として、地域ごとに、移動の制限や飲食店の営業制限等を課しています。マニラについては、「NCRにおけるCOVID-19対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。

7.2 入国規制

(1) 入国が認められる区分及び条件

1 外交官と外国政府職員、その家族

  • 有効な9(e)ビザを保有すること
  • 有効な47(a)(2)ビザを保有すること(外交ならびにそれに準じる業務を行う者に発給される)

2 フィリピン国籍を有する重国籍者

  • 次のいずれかを保有すること

(a) 有効なフィリピン政府発行のパスポート

(b) フィリピン国籍者であることの身分証明書(IC)

(c) フィリピン国籍者認定証明書(RC)、もしくは、2003年(共和国法9225)による国籍維持・再取得証明書(CRPC)

3 入国時に有効かつ現存するビザを保有する外国籍者(9aビザを除く。5、6を参照すること)

  • 有効な9(c)ビザを保有すること
  • 有効な長期滞在ビザを保有すること (永住権(移民)ビザ、特別非移民ビザ、SRRV,9g、47a2ビザ含む)

4 バリクバヤンプログラムによる入国が認められた外国籍者(行政令408号の査証免除国の国籍者であること)(元フィリピン国籍者と渡航する元フィリピン国籍者の配偶者とその子供(年齢不問)、フィリピン国籍者と渡航するフィリピン国籍者の配偶者とその子供(年齢不問))

  • 無査証
  • フィリピン国籍者との家族関係を証明できる書類の提示が必要

5 フィリピン国籍者と渡航しないが、フィリピン入国後にフィリピン国籍者と一緒に滞在する予定の外国籍者(フィリピン国籍者の外国人配偶者、フィリピン国籍者の外国籍の子供(未成年)、フィリピン国籍者の介助等が必要な外国籍の子供(年齢問わず)、介助等を必要とするフィリピン国籍者(年齢問わず)の外国籍の親)

  • 有効な9(a)ビザまたはSRRVビザを保有すること
  • フィリピン国籍者との家族関係を証明できる書類の提示が必要

6 有効かつ現存する9(A)ビザ保有者(上記5番に記載の者を除く)

※ 到着時にフィリピン入国管理局に入国免除文書を提示することが条件。

注意:入国免除文書は、関連するフィリピン官庁(NGA)や機関より推薦を受けた上で、フィリピン外務省(DFA)より発行されます。

  • 有効な9(a)ビザを保有すること
  • フィリピン外務省(DFA)発行の入国免除の文書が必要

(2) 入国が許可されない場合

新型コロナウィルス感染症に関する省庁間タスクフォース(IATF-EID)第136号に従い、ワクチンの接種状況に関わらず、レッドリストに分類された国(現時点で日本は含まれていません)から出発した全ての外国籍のフィリピン入国を禁止されています。入国禁止が免除されるのは、ビザ発給国政府が実施する送還、民間による送還、バヤニハンフライトで帰国するフィリピン国籍者です。

ワクチン接種の状況に関わらず、日本からフィリピンへの渡航者は、14日間の強制隔離が求められ、検査結果が陰性であれば、11日目から14日目まで自宅または宿泊施設にて隔離措置を継続することができます。

第2.各国の労務における休日・休暇の法制度

1.日本

(1) 休日

1 休日とは

休日とは、労働義務のない日として、使用者が労働者全体に付与するものです。労働基準法(以下「労基法」)では、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日か、4週間を通じて4日以上の休日(変形週休制)を与えなければならないと定めており(労基法第35条)、それを法定休日と呼びます。変形週休制を採用する場合は、就業規則その他において、4日以上の休日を与えることとする4週間の起算日を明らかにする必要があります(労基法施行規則第12条の2第2項)。休日の曜日は定められていません。また、法定休日以外に、会社が任意で与えている休日を所定休日と呼びます。週休2日制の会社の場合いずれか1日、(法定休日と重複する日を除く)会社の創立記念日やお盆や年末年始の休業日は、所定休日です。

2 法定休日に労働させること(休日労働)の要件

労働者を法定休日に労働させることができる要件として、以下が定められています。

(a) 労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ること(労基法第36条第1項))

「使用者」と「事業場の労働者の過半数を組織する労働組合」又は「労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」との間で書面による協定をし、労働基準監督署に届け出ること。

(b) 割増賃金を支払うこと

法定休日に勤務した場合は、通常の賃金の1.35倍以上の割増賃金を支払う必要があります(労基法第37条第1項、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。なお、法定休日に深夜労働となる午後10時から午前5時までの間において労働させた場合は、割増賃金が加算されます。

3 所定休日に労働させる場合

所定休日の労働は「休日労働」に該当しないため、割増賃金を支払う必要はありませんが、法定労働時間(1日8時間又は週40時間)を超えた分について、通常の賃金の1.25倍以上の割増賃金を支払う必要があります(労基法第37条第1項、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。所定休日を含む法定時間外労働が月60時間を超えた場合は、割増率は1.5倍以上です(ただし、一定の要件を満たした中小企業は、2023年3月末までは最低の割増率は1.25倍です(労働基準法附則第138条))。所定休日に深夜労働となる午後10時から午前5時までの間において労働させた場合も、割増賃金は加算されます。

4 振替休日・代休

 法定休日に出勤する代わりに、別の出勤日をあらかじめ振替休日に設定する場合、休日労働の割増賃金は発生しません。一方、あらかじめ振替休日を設定せずに、法定休日に出勤した場合は、休日労働として割増賃金が発生します。休日労働の前に振替休日を設定するか、後に代休を設定するかで、割増賃金の扱いが異なりますので、注意が必要です。

(2) 休暇

1 休暇とは

 使用者が労働者に対して、労働義務を免除する期間をいい、法定休暇(法律上定めがある)と特別休暇に分類されます。法定休暇として、年次有給休暇(労基法第39条)、産前産後の休業(労基法第65条)、生理日の休暇(労基法第68条)、育児・介護休業(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育児・介護休業法」)、子の看護休暇(育児・介護休業法)、介護休暇(育児・介護休業法)が定められています。特別休暇としては、夏季休暇や慶弔休暇、年末年始休暇等が挙げられます。なお、産休・育休の詳細につきましては、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

2 年次有給休暇

使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません(労基法第39条第1項)。さらに勤続年数が増えていくと、8割以上の出勤の条件を満たしている限り、20日を上限とし、1年ごとに取れる休暇日数は増えていきます(労基法第39条第2項)。また、本Newsletterの冒頭に記載の通り、2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました(労基法第39条第7項)。

 有給休暇は、原則として、利用目的を問わず、取得することができますが、会社の正常な運営を妨げるときに限っては、別の時期に休暇日を変更させることができます(労基法第39条第5項)。また、使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはなりません(労働基準法附則第136条)。

 なお、年次有給休暇は、発生の日から2年間で時効により消滅します(労働基準法第115条)。有給休暇は労働者を休ませることを目的としているため、会社が有給休暇の買い取りをすることは原則として認められませんが、転職等を理由に退職する労働者が退職時点で消化していない有給休暇や、2年が経過して時効消滅した有給休暇の買い取りなど、労働者の不利益にならない場合は、例外的に認められることがあります。なお、会社には有給休暇の買い取り義務はありません。

 パートタイム労働者(短時間労働者)でも、(a) 6か月間の継続勤務、(b) 全労働日の8割以上の出勤、という要件を満たせば、週の所定労働時間や所定労働日数に応じた日数の有給休暇が付与されることになります。

3 産前産後の休業

 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者を就業させることはできず(労基法第65条第1項)、また、産後8週間を経過しない女性を就業させることはできないと定められています(ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合で、その者について、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは可能)(労基法第65条第2項)。

4 生理日の休暇

使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならないと規定されています(労基法第68条)。

5 育児・介護休業

労働者は、その養育する1歳に満たない子について、事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができます。有期契約労働者については、雇用期間など一定の要件が定められています(育児・介護休業法第5条第1項)。育児休業の期間は、子が1歳に達するまでの間で本人が申し出た期間ですが、期間の延長や特例(パパ・ママ育休プラス)が定められています。育児休業期間中の賃金の支払い義務はありません。

また、労働者は、事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができます。有期契約労働者については、雇用期間など一定の要件が定められています(育児・介護休業法第11条第1項)。利用期間は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業することができます。介護休業期間中の賃金の支払い義務はありません。

なお、令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日から段階的に施行されます。主な改正点は以下の通りですが、適宜、省令を確認し、必要に応じて法律事務所へ相談するなどして、就業規則等の見直しや、必要に応じて改正が必要です。

  1. 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
  2. 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
  3. 育児休業の分割取得
  4. 育児休業の取得の状況の公表の義務付け
  5. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

6 子の看護休暇

 小学校就学前の子を養育する労働者が、病気やケガをした子の世話のほか、予防接種や健康診断の受診のために取得できる休暇で、1年度につき5日(小学校就学前の子供が2人以上の場合は10日)の休暇取得が認められており(育児・介護休業法第16条の2第1項)、使用者は、労働者から子の看護休暇の申し出があったときは、その申し出を拒むことはできません(育児・介護休業法第16条の3第1項)。

7 介護休暇

 要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者が、通院の付き添いや介護保険に関する手続き等のために取得することができる休暇で、1年度につき5日(対象家族が2人以上の場合は10日)の休暇取得が認められています(育児・介護休業法第16条の5)。なお、「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態を意味します(育児・介護休業法第2条第3号)。使用者は、労働者から介護休暇の申し出があったときは、その申し出を拒むことはできません(育児・介護休業法第16条の6第1項)。

 

2.タイ

 タイにおいては、労働者保護法(Labour Protection Act B.E.2541 以下、「法」といいます)にて、休日・休暇に関する定めがなされています。

(1) 休日

法上、週休日、祝日及び年次休暇日が、休日と定められています。

  1. 週休日

週休日は、原則として1週間に1日以上付与する必要があります。また、週休日と次の週休日との間隔は、6日以内である必要があります。

     2. 祝日

祝日は、国民労働者の日(5月1日)を含め、年間13日以上を定め、事前に従業員に対して周知する必要があります。祝日と週休日が重複した場合、その翌労働日に、祝日の振替休日を付与する必要があります。

     3. 年次休暇日

年次休暇は、満1年以上継続して勤務した労働者に対して、年間6労働日以上を付与する必要があります。法上、会社と従業員は、その年に使用しなかった年次休暇を翌年に繰越すことについて事前に合意することができると定められていますが、未使用の年次休暇の繰越し、買取りについては会社の義務とはなっていません。

     4. 休日労働

会社は、業務の内容又は性質上、継続して作業を行う必要があり、作業を中断すると損害が生じる可能性がある場合、又は緊急の作業である場合を除き、従業員に休日労働をさせてはならないとされています(ホテル業、運送業、飲食業、医療機関、その他省令で定められた事業においては休日に労働させることは可能とされています)。ただし、 時間外・休日労働の合計時間は、週 36時間を超えてはならないとされています。

    5. 休日労働手当

休日に賃金を受領する権利を有する従業員に、休日労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の1倍以上の休日労働手当を支払う必要があります。

休日に賃金を受領する権利を有しない従業員に、休日労働をさせた場合には、労働日の時間当たりの賃金の2倍以上の休日労働手当を支払う必要があります。

    6. 休日時間外労働手当

休日の労働時間外に、従業員に休日時間外労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の3倍以上の休日時間外労働手当を支払う必要があります。

(2) 休暇

 法上、従業員は以下の各休暇を取得することができると定められています。法に定めのない休暇日を会社が独自に設定することもでき、出家休暇等を定める会社もみられます。

  1. 病気休暇

従業員は、病気である場合には、病気休暇を取得することができます。しかし、3労働日以上連続で病気休暇を取得する場合には、会社は従業員に対して、第1級医師免許を有する医師又は公立病院による診断書の提出を求めることができます。会社は、年間30日までは、病気休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。

    2. 不妊手術休暇

従業員は、第1級医師免許を有する医師が定める期間について、不妊手術のための休暇を取得することができます。会社は、当該期間に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。

    3. 用事休暇

従業員は、就業規則に基づき、年間3日以上、必要な用事のための用事休暇を取得することができます。会社は、年間3日までは、用事休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。従前は、用事休暇の日数について、法上定められていませんでしたが、2019年の法改正により、年間3日以上の取得が認められました。

    4. 兵役休暇

従業員は、兵役に関する法律に基づく、検査、軍事訓練又は招集のために、兵役休暇を取得することができます。会社は、年間60日までは、兵役休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。

    5. 研修休暇

従業員は、労働省令で定める規則、手続きに基づき、研修又は技能開発のための、研修休暇を取得することができます。この休暇に対して、会社は労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う義務はありません。

    6. 出産休暇

従業員は、1回の出産につき、98日まで(休暇期間中の休日も含む)出産休暇を取得することができます(同法改正により、従前の90日から98日まで延長されました)。この出産休暇には、出産前の検査のための休暇も含まれます。会社は、年間45日までは、出産休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

 

3.マレーシア

(1) 休日

マレーシアの雇用法(Employment Act 1955)は、使用者は労働者に週に1日の休日を与えなければならないと規定しています(雇用法59条1項)。そして、使用者は、原則として休日における勤務を労働者に強いることはできませんが、一定の場合(時間外労働を認める場合と同様の場合等)には例外が認められます(雇用法60条1項)。

 使用者が労働者を休日に労働させた場合には、休日割増手当を支払わなければなりません。具体的には、月給制により雇用されている労働者の場合、休日における労働時間が「所定労働時間」の半分以下であれば賃金の半日分、労働時間が「所定労働時間」の半分を超えて1日以下の場合は通常の賃金の1日分、労働時間が「所定労働時間」を上回る場合には通常の時間給の2倍以上の時給額で計算された金額を支払う必要があります(雇用法60条3項)。

(2) 祝日

労働者は、雇用法に基づき、1 公示された祝日のうち11日、及び2 祝日法(Holidays Act 1951)に基づいて指定される祝日について、有給休暇を取得する権利を有します(雇用法60D条1項)。1については、国家記念日・国王誕生日・州首長の誕生日(又は連邦直轄市デー)・メーデー・マレーシアデーの5日間が必ず含まれます(同項)。残りの6日については一次的には雇用者が指定しますが、雇用者と労働者の合意により他の日に置き換えることができます(同条1A項)。また、2についても、使用者は指定された祝日に代えて、別の日を休みとすることができます(同項)。

 使用者は労働者に対して祝日における勤務を求めることができますが、その場合には、有給休暇としての1日分の賃金の支払いに加え(実際の就業時間が「所定労働時間」下回る場合も含む)通常の賃金額の2日分を支払わなければならなりません(60D条3項)。また、その日の勤務時間が「所定労働時間」を超える場合、使用者は通常の時給額の3倍以上の時給額で計算した金額を支払わなければならなりません(同項)。

(3) 年次有給休暇

 労働者には、勤続年数が2年未満の場合は年8日、2年以上5年未満の場合は年12日、5年以上は年16日の年次有給休暇が与えられます(雇用法60E条1項)。また、労働者は、有給取得権を与えられた年又はそれに続く1年の間に有給休暇を取得しなければならず、当該期間内に有給休暇を取得しなかったときはその権利を喪失することとなります(雇用法60E条2項)。もっとも、労働者が会社の要請により有給休暇の取得権の全部又は一部を行使しない旨を書面により同意した場合は、労働者は会社から有給休暇に代わる手当の支払いを受けることができます(同項)。

 不正行為を理由とする解雇による場合を除き、雇用契約がいずれかの当事者からの申入れによって終了されたときは、使用者には労働者に対し未取得の有給休暇の日数に対応する賃金相当額を支払う義務が生じます(雇用法60E条3A項)。

(4) 病気休暇

 病気休暇は医師による診断を条件に付与される(雇用法60F条1項)もので、その日数は勤続年数が2年未満の場合には年14日、2年以上5年未満の場合は年18日、5年以上の場合は年22日まで取得が認められます(同項(b))。また、入院が必要な場合には、年60日まで取得が認められます(同項)。

 病気休暇は医師による診断を受けていることを条件とするものであるため、そもそも医師による診断を受けていない場合には無断欠勤とみなされます(雇用法60F条2項)。また、診断を受けていたとしても休暇の開始から48時間以内に使用者に連絡をせず、かつ、連絡をしようとしなかった場合も同様に扱われます(同項)。

(5) 出産休暇

雇用法は、前記の休日・休暇のほかに、女性労働者に対して60日間の出産休暇を取得する権利を付与しています(雇用法37条1項)。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

 

4.ミャンマー

ミャンマーでは、休暇及び休日法(Leave and Holidays Act)において休日・休暇について規定されています。

(1) 週休

使用者は、労働者に1週間に1日以上有給休暇を与えなければなりません(休暇及び休日法第3条(4))。

労働者が週休に労働した場合、当該労働者は祝日でない週休前後3日のうち1日を代休として付与されます。当該代休に関し、残業代は支払われません。また、労働者が連続して10日間を超えて労働することになる代替を行ってはいけません。

(2) 休暇

 休暇及び休日法では、法定休暇として、有給休暇、臨時休暇、医療休暇、出産休暇が定められています。

1 有給休暇

年間10日の有給休暇が認められており、有給休暇は、12カ月連続の業務期間を完了し、かつ各月20日以上働いた場合に付与されます。20日間働いていない月においては、月ごとに1日の有給休暇を失います(休暇及び休日法第4条(2))。

労働者が有給休暇を全て取得する前に、退職、解雇、死亡した場合、残存有給休暇日数に対して当該事由発生日直前の30日間の平均日給により計算した額を使用者は労働者に対して支払わなければなりません。当該支払いは、退職又は解雇の場合は2日以内に、死亡の場合には請求受領後できる限り早く支払わなければなりません(同法第4条(5)及び休暇及び休日規則第40条)。

2 臨時休暇

1年で合計6日間の有給の臨時休暇が認められていますが、臨時休暇1回あたりの取得期間は最大3日間となっています。臨時休暇は他の種類の休暇と合わせて取得することは認められておらず、また翌年に繰り越すことはできません(休暇及び休日法第5条)。

3 医療休暇

全ての労働者は、1年間に30日を超えない範囲で有給の医療休暇が認められています。社会保障の対象でなく、かつ、6か月の勤務を完了していない労働者は、無給の医療休暇を要求することができます(休暇及び休日法第6条(1))。医療休暇は翌年に繰り越すことはできません(同法第6条(4))。

4 産休

休暇及び休日法にて、産前6週間、産後8週間の有給での産休が認められており、産休は、医療休暇と合わせて取得することができます(休暇及び休日法第7 条(A))。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

 

5.メキシコ

メキシコでは、休日及び休暇は、連邦労働法上に規定されるため、以下、その内容を紹介します。なお妊娠した女性が取得できる産前産後各6週間の休暇については、TNY Group Newsletter No.10において解説していますので、そちらをご参照ください。

(1) 休日

労働者は、6日の勤務毎に、少なくとも1日の休日を享受できます。労働者と使用者は、合意により、週休日を定めなければならず、また、労働者は、この週休日に労務を提供する義務を負いません。この規定に違反した場合、使用者は労働者に対し、通常の賃金のほか、賃金の2倍の額の手当を支払わなければなりません。

なお、法定の週休日は日曜日と定められています。日曜日に勤務する労働者は、通常の労働日の給与に加え、少なくとも25%の追加割増賃金を受ける権利を有します。

 義務的な休日(いわゆる祝日)は、1月1日(新年)、2月の第1月曜日(憲法記念日)、3月の第3月曜日(ベニートフアレス生誕日)、5月1日(メーデー)、9月16日(独立記念日)、11月の第3月曜日(革命記念日)、大統領の任期の6年ごとの12月1日、12月25日(クリスマス)、連邦及び地方選挙の選挙投票日と定められています。義務的な休日には労働の義務がありません。しかし、労働者を働かせる必要がある場合には、労働者及び使用者は、その役務を提供する労働者の数を定めなければならないとされています。また、この日に働く労働者は、労務を提供する義務があり、通常の賃金のほか、賃金の2倍の額の手当を支払われる権利を有します。

(2) 有給休暇

勤続年数が1年以上の労働者は、有給休暇取得の権利を得ます。この有給休暇は6労働日未満であってはならず、その後の勤続年数ごとに2日ずつ増加し、勤続5年以降は5年ごとに2日が追加されます。なお、季節的な労働者は、年間の労働日数に比例して、有給休暇を得る権利を有します。労働者は、有給休暇を取得すると、有給休暇手当として賃金の25%以上の額の手当を受け取る権利を有します。

有給休暇は、労働者の1年間の勤務が経過した日から、6ヶ月以内に行使する機会を与えなければなりません。使用者は毎年、労働者の勤続年数とそれに基づく休暇日数、その取得(推奨)日を記載した証明書を労働者に交付するものとされています。

(3) 癌と診断された子どものための休暇

癌と診断された16歳までの子の父親又は母親は、その子が療養や入院を必要とする場合には、治療を担当する医師の指示に従って、治療に付き添うことを目的として、休暇を受ける権利を有します。これに該当する場合は、社会保障法(Ley del Seguro Social)の定めるところにより、社会保険庁が発行する証書を以て、休暇を取得することができます。証書の有効期間は最大28日間であり、合計364日を超えない範囲で最大3年間申請することができます。なお、使用者は、この休暇取得中の労働者に対して給与を支払う義務はなく、労働者にとっては無給の休暇となりますが、一定の条件を満たす労働者は社会保険の受給が可能です。

(4) 制裁

6日の勤務毎の1日の休日、勤続1年以上の労働者が有する有給休暇取得の権利及び季節労働者の有給休暇取得の権利に関する規定の違反の場合には、UMA(罰金や制裁金、社会保障費の支払い額など様々に使用される単位)の50から250倍の過料が定められています。

 

6.バングラデシュ

バングラデシュでは、労働法にて、休日・休暇について規定されていますが、同法で保護の対象とされている「労働者」に、管理職レベルの従業員は含まれないとされています。

(1) 週休

店舗や商業施設、工業施設の労働者は週に1.5日、工場の労働者は週に1日、週休を取得する権利が与えられています。いずれも、週休に対して賃金から控除することはできません(労働法第103条)。事情により週休が取得できない場合は、3日以内に他の日に代替して取得させなければならず(労働法第104条、労働規則第101条)、週休をとらずに連続して10日以上の労働をさせることはできません(労働規則第101条)。なお、バングラデシュでは、政府機関や銀行を含め、一般的な週休は金曜日及び土曜日です。

(2) 休暇

 労働法では、法定休暇として、年次有給休暇、臨時休暇、病気休暇、祝祭休暇のほか産前産後休業が定められています。

1 年次有給休暇

1年間継続勤務した労働者に対し、翌年から、直近12か月の勤務日数を基本に、店舗、商業施設、工業施設、工場、道路交通施設の労働者は、18日の勤務日数ごとに1日有給休暇が与えられます(労働法第117条(1))。年次有給休暇の間に週休や祝祭日があたる場合は、これらの休日も年次有給休暇に含まれます(同条(3))。労働者が12か月以内に有給休暇を消化しなかった場合は、翌年に繰り越すことができますが(同条(4))、有給休暇が一定の日数に達した場合は、それ以上取得することはできません。年次有給休暇取得の条件である勤務期間について、次の理由で勤務が中断された場合も、継続勤務期間とみなされます。

a) 週休や祝日、b) 有給休暇、c) 病気又は事故による有給又は無給の休暇、d) 16週を超えない産休、e) 一時解雇期間、f) 合法ストライキ又は違法なロックアウト(同条(8))。

労働者が未消化の年次有給休暇の換金を希望した場合、年に1回まで、全年次有給休暇の半分まで換金ができます(労働規則第107条(2))。労働者が死亡した場合、未消化の休暇分の賃金は、指定又は法定の受取人に支払われます(同条(3))。

2 臨時休暇

年間10日の有給の臨時休暇が認められており、翌年に繰り越すことはできません(労働法第115条)。年の途中で採用された労働者は、勤務期間の割合に応じた日数を臨時休暇として取得することができます(労働規則第106条)。

3 病気休暇

新聞労働者を除き、全ての労働者は年間14日の有給の病気休暇が認められています。病気休暇の取得にあたり、使用者が指定した医師による診断が必要で、診断書に記載されている療養に必要な期間の休暇を取得することができます。病気休暇は翌年に繰り越すことはできません(労働法第116条)。また、臨時休暇と同様に、年の途中で採用された労働者は、割合に応じた日数を病気休暇として取得することができます(労働規則第106条)。

4 祝祭休暇

年間11日の有給の祝祭休暇が認められており、祝祭休暇に勤務する場合は、2日の補償休暇及び代休が与えられなければならないとされています(労働法第118条)。使用者は、団体交渉代理人と協議のうえ、毎年12月31日までに翌年の祝祭休暇(11日以上)を決定しなければなりません。団体交渉代理人が存在しない場合は参加委員会と協議し、同委員会が存在しない場合は、労働者と可能な限り協議し、使用者が祝祭休暇を決定しなければなりません(労働規則第110条)。

5 産休

労働法にて、産前産後8 週間ずつの産休が定められています(労働法第47 条(3))。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

⑥ 未消化の年次有給休暇の扱い

 退職又は解雇で雇用が終了した労働者で、利用していない年次有給休暇がある場合は、相当する賃金が支払われます(労働法第11条)。

 

7.フィリピン

(1) 週休に関するルール

フィリピンでは、使用者は従業員に6日の労働日ごとに24時間以上の休日を与えることとされています(労働法91条(a))。予定された休日に労働者が働く場合には30%の休日手当を支払う必要があります。

(2) 祝日に関するルール

フィリピンでは労働法の規定によって、原則あらゆる職種の従業員が、有給休暇及び祝日労働における給与支払ルールの対象となります。また、ボーナスやインセンティブのように使用者が自由に定められるものとは異なり、有給休暇は労働者に認められた当然の権利とされています(労働法94条)。ただし、政府職員、マネジメント層の従業員、事業所外従業員、使用者の家族である従業員、家事使用人、他人に対して個人的なサービスを提供する者、及び、出来高払いを受けるものとして労働雇用長官が決定した者についてはこの適用を受けないとされています(労働法82条)。

1 通常祝日

従業員が通常祝日に労働した場合、通常の日給の200%相当額が支給されなければならず、労働しなかった場合でも有給(通常の日給の100%)扱いとなります(労働法94条)。ただし、小売又はサービス業で、常時雇用する従業員が10人未満の事業を除きます。通常祝日は以下のとおりです(共和国法第9492号及び9849号)。

 

(1) 正月(New Years Day) – 1月1日

(2) 聖木曜日(Maundy Thursday) – 年ごとに異なる

(3) 聖金曜日(Good Friday) – 年ごとに異なる

(4) 勇者の日(Araw ng Kagitingan) – 4月9日に一番近い月曜日

(5)メーデー(Labor Day) – 5月1日に一番近い月曜日

(6) 独立記念日(Independence Day) – 6月12日に一番近い月曜日

(7) イスラム教断食明け大祭(Eidul Fitr) – 年ごとに異なる

(8) イスラム教犠牲祭(Eidul Adha) – 年ごとに異なる

(9) 英雄の日(National Heroes Day) – 8月の最後の月曜日

(10) ボニファシオ記念日(Bonifacio Day) – 11月30日に一番近い月曜日

(11) クリスマス(Christmas Day) – 12月25日

(12) リサール記念日(Rizal Day) – 12月30日に一番近い月曜日

2 特別祝日

特別祝日に労務を提供した場合には、通常の日給の130%相当額が支給されなければなりません。通常祝日とは異なり、既存の会社慣行又は労働協約(CBA)がない限り、ノーワーク・ノーペイ原則が適用されますが、実際には通常祝日と同様、労務の提供をしなくても有給としている企業が多くみられます。フィリピンにおける特別祝日は以下のとおりです(共和国法第9492号及び10966号)。

(1) ニノイ・アキノの日(Ninoy Aquino Day) – 8月21日に一番近い月曜日

(2) 諸聖人の日(All Saints Day) – 11月1日

(3) 無原罪の聖マリアの日(Feast of the Immaculate Conception of Mary) – 12月8日

(4) 大晦日(Last Day of the Year) – 12月31日

(3) 休暇に関するルール

以下、フィリピン労働法によって労働者に付与される休暇とその取扱いについて説明します。

1 サービスインセンティブ休暇

勤続1年以上の労働者はサービスインセンティブ休暇(通称SIL)を取得できます(労働法第95条(a))。これはいわゆる年次有給休暇にあたるものです。「勤続1年以上」とは勤務開始日から起算して12ヶ月以上の勤続(承認された欠勤、休日、有給の通常祝日を含む)を意味し、勤務は連続的に行われなくてもかまいません。年末時点で消化されなかった分については使用者に買取を要求することができます。

2 一人親休暇

父親であるか母親であるかを問わず、一人親は1年あたり7日の育児休暇を有給で取得することができます(共和国法第8972号)。当該休暇の取得には、勤続1年以上であること、十分な余裕をもって雇用者に通知をしていること、さらに一人親証明書(居住地の社会福祉・開発省のオフィスで取得可能)を雇用者に提示していることが必要となります。当該権利を現金に代えることはできません。

3 出産休暇

出産休暇は105日分が有給で付与され、労働者の意思で無給分をさらに30日分取得することができます(共和国法第11210号)。当該権利は非公式な労働(課税されず、国民総生産にも現れない種類の労働)を含むあらゆる女性労働者について、さらに民法上の身分、嫡出子であるかどうかなどに関わらず認められており、流産や緊急妊娠中絶に至った場合も対象となります。また一人親の出産である場合にはさらに15日分が追加されます。なお、婚姻関係にない男性パートナーに対して7日分までの有給を分け与えることもできます。

4 婦人疾患に関わる休暇

婦人疾患に関する手術を受けた女性労働者は、2ヶ月間の有給休暇を取得する権利を有します(共和国法第9710号)。労働雇用省(DOLE)のガイドラインによれば、婦人疾患には、子宮内容除去術、子宮摘出、卵巣摘出又は乳房切除その他の外科的処置を要するものを含みます。この休暇を取得するためには、手術直前の12ヶ月間で少なくとも6ヶ月間の継続勤務を行ったこと、婦人疾患に関する休暇の申請を行っていること、及び資格を有する医師による婦人疾患の手術を受けたことが必要となります。

5 父親休暇

法律上婚姻している男性の労働者は、7日間の父親休暇を有給で取得する権利があります(共和国法第8187号)。この休暇を取得するためには、当該労働者が出産時に雇用状態にあること、妻の妊娠及び出産予定日について使用者に通知すること、妻が出産、流産又は中絶に至ったことが必要となります。当該権利を現金に代えることはできません。

⑥ 家庭内暴力の被害女性のための休暇

家庭内暴力の被害を受けた女性は、通常の有給休暇に加えて10日間まで有給休暇を取得することができ、保護命令の内容によってはさらに延長が可能です(共和国法9262号)。当該休暇の取得には、バランガイ議長若しくは議員、検察官、裁判所事務官から、被害者の使用者に対して証明書が提示される必要があります。当該権利を現金に代えることはできません。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

Newsletterの記載内容は2021年9月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現時点で沖縄県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、茨城県、栃木県、群馬県、静岡県、京都府、兵庫県、福岡県、北海道、宮城県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、岡山県、広島県に緊急事態宣言が実施されており、まん延防止等重点措置は、石川県、徳島県、熊本県、富山県、山梨県、香川県、愛媛県、鹿児島県、高知県、佐賀県、長崎県、宮崎県を対象に実施されています。ともに、9月12日までが実施期間となっています。また、外出・移動の自粛、テレワークの促進、飲食店への休業又は時短要請、酒類提供の制限、イベントの収容率及び人数制限など、各都道府県の自治体が措置を講じるほか、ワクチン接種の円滑化・加速化の取り組みが進められています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

1.2 入国規制

(1) 検疫の強化

1 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

2 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

3 スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

4 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

5 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

インドネシア、キルギス2か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。

バングラデシュ、アラブ首長国連邦、ミャンマー、アフガニスタン、インド、ザンビア、スリランカ、ネパール、モルディブの9か国・地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で6日間待機し、入国後3日目及び6日目に改めて検査を受けることになります。

その他、別途指定される国又は地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)当面待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。

(対象の国又は地域については、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

(2) 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は1,190,063名です。この内、1,002,527名が回復し、累計死亡者数は11,399名となっています。また、非常事態宣言は、9月30日まで延長されています。

タイ政府は、8月28日、規制措置を緩和する措置を公表しており、この緩和措置は9月1日から適用されます。バンコク等の29都県をダークレッド・ゾーン、37県をレッド・ゾーン、11県をオレンジ・ゾーンとして引き続き指定しています。

ダークレッド・ゾーンについては、午後9時から翌朝午前4時までの外出禁止措置が9月14日まで延長されています。ただ、COVID感染防止措置等の条件を満たした場合、飲食店は午後8時まで店内飲食が可、ショッピングモールも午後8時まで営業可、理髪店、マッサージ店も一部営業可、公園・運動場・プール・屋内外運動施設についても午後8時まで営業可とされています。詳細情報については、在タイ日本大使館のHPを参照下さい。

2.2 入国規制

タイへの入国については、引き続き、オンラインでの入国許可証(COE)申請システムを用いて手続きを進める必要があります。渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、及びCOVID-19の関連疾患を含む医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等が必要です。タイ入国後は、隔離(ASQ)ホテルにて14日間の隔離となります。

 7月1日よりプーケットサンドボックス制度が、7月17日よりサムイ・プラス制度が開始されています。これは、渡航日の14日前までに、COVID-19ワクチン接種を規定回数終えている者を、検疫隔離なしでプーケット又はサムイ島・パンガン島・タオ島に受け入れる、検疫隔離免除の制度となります。ワクチン接種証明書の提示が必要となります。また、通常の入国時と同様、COEの申請、渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等の提示も必要となります。詳細情報については、在京タイ王国大使館のHPを参照下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 8月29日の新規感染者数は、20,579人でした。現在マレーシア国内で施行されているFMCO(完全ロックダウン)は、第一段階から第四段階まで設定され、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。

7月中に、ペラ州、クランタン州、トレガンヌ州、パハン州、ペナン州、サバ州、8月中にヌグリ・スンビラン州が第二段階に移行しました。また、8月中に、ペルリス州、サラワク州が第三段階へ、ラブアンが第4段階へ移行しました。これら以外の地域は、現在も第一段階の規制が施行されます。第一段階の規制では、必要不可欠なサービスとして指定されたものを除き全ての社会・経済活動は許可されません。また、州・地区間の移動は原則禁止されています。

また、これまで必要不可欠な経済活動に分類されていなかった製造業にも、従業員のワクチン接種率を基準に以下の稼働率の限度での操業が許容されました。

・全従業員のうちワクチン接種率40%~59%で60%の稼働率

・全従業員のうちワクチン接種率60%~79%で80%の稼働率

・全従業員のうちワクチン接種率80%~100%で100%の稼働率 

 さらに、ワクチン接種完了者には、デジタルワクチン接種証明書の提示、人数や時間の制限があるものの、レストラン内での食事や、スポーツ・レクリエーション活動等様々な社会活動に対する規制が緩和されてきています。

3.2 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19の陽性者数は、7月のピーク時と比較すると減少傾向にあります。しかし未だ陽性率は25%前後と低くない水準が継続しており、病院の稼働状況もCDMの関係でまだ完全に元通りにはなっていないことから感染しても入院できず、感染予防のため、7月19日からの祝日が8月31日まで延長されました。

4.2 入国規制

 8月は6日、13日及び20日のANA便が飛びました。9月は10日、24日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっています。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

8月以降もCOVID-19感染者数は増加傾向にあり、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いの実施など、予防策の徹底が呼びかけられています。

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、8月9日の更新で、赤の州が7州と前回の1州から大幅に増加しました。8月23日から2週間適用される信号色は、赤7州、橙17州、黄7州、緑1州となりました。メキシコシティやメキシコ州は赤から橙に、シナロア州は赤から黄へと改善を見せる一方、タバスコ州は黄から赤へ、タマウリパス州やプエブラ州は橙から赤へ後退を見せるなど、一進一退の状況が続いています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、9月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路(ただし、フェリーでの移動を除く)での移動については適用しないとされています。また、3月19日から実施されているメキシコ政府によるグアテマラ及びベリーズ国境における陸路での不要不急の移動制限についてついては、6月21日以降その延長は発表されていないものの、在メキシコ日本大使館によると、解除の通知が為されていないことからこれまでと同様の制限が継続されると考えられるとのことです。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府による行動規制は緩和され、ショッピングモール等の商業施設の時短営業(午前10時から午後8時まで)、飲食店の時短営業(座席数を半数にしたうえで午前8時から午後10時まで)、観光施設、リゾート、集会所及び娯楽施設の収容定員の制限(半数)等、一定の制限があるものの、営業が認められています。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置としての渡航や入国規制(8月16日付)は、下記の通りです。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループAに属する国(モンゴルやマレーシアなどの計11か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了していない者の入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(英国やタイなどの計16か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了している者は、自宅での14日間の隔離、ワクチン接種が完了していない者は、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。

第2.各国の著作権法の概要

1.日本

著作権法は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とし(著作権法第1条)、昭和45年に制定されました。その後、インターネットの普及やデジタル化等の社会の変化や、関連法令の改正に応じて、改正されています。

(1) 著作物について

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいうと定義されています(著作権法第2条1項1号)。

(2) 著作者について

 著作物を創作する者をいうと定義されています(著作権法第2条1項2号)。

(3) 著作者の権利の発生及び保護期間について

 著作権の存続期間は、著作物を創作した時点で始まり(著作権法第51条第1項)、原則として著作者の死後70年を経過するまで存続します(著作権法第51条第2項)。例外として、無名・変名(周知の変名等、一定の場合を除く)の著作物は、公表後70年を経過するまで存続するほか(その前に死後70年経過が認められれば、その時点まで)(著作権法第52条第1項、第2項)、団体名義の著作物及び映画の著作物は、原則として公表後70年(創作後70年以内に公表されなかったときは、創作後70年)を経過するまで存続します(著作権法第53条及び第54条)。このほか、国際条約等の規定が適用される場合の保護期間については、特例が設けられています(著作権法第58条)。

(4) 著作者の権利の内容について

1 著作者人格権(著作者の人格的利益を保護する権利)

著作者は、公表権(著作権法第18条第1項)、氏名表示権(著作権法第19条第1項)、同一性保持権(その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないこと)(著作権法第20条)を有します。

2 著作権(財産権)(著作物の利用を許諾したり禁止する権利)

著作者は、その著作物について、複製権(第21条)、上演権及び演奏権(第22条)、上映権(第22条の2)、公衆送信権等(第23条第1項、第2項)、口述権(第24条)、展示権(第25条)、頒布権(第26条第1項、第2項)、譲渡権(第26条の2第1項)、貸与権(第26条の3)、翻訳権、翻案権等(第27条)、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、これら著作権に含まれる権利について当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有すること)(第28条)を専有します。

(5) 著作隣接権

著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている者(実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者)に与えられる権利です(著作権法第89条)。その保護期間は、実演、レコードの固定、放送又は有線放送を行った時点で発生し、実演、レコード発行が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過したとき、放送又は有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過したときに満了します(著作権法第101条第1項、第2項)。

(6) 著作物が自由に使える場合

 著作権法は、一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して、著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条〜第47条の8)。しかし、著作権が制限される場合でも、著作者人格権は制限されません(著作権法第50条)。また、上記著作権法が許容する例外規定に基づき複製されたものを同例外規定の目的外に使うことは禁止されており(著作権法第49条第1項、第2項)、利用にあたっては、原則として出所の明示をする必要があると定められているなど(著作権法第48条)、著作権者等の利益を不当に害さないように、また、著作物等の通常の利用が妨げられることのないよう、その条件が定められています。

 著作物が自由に使える場合の例として、私的使用のための複製(著作権法第30条)、図書館等における複製(著作権法第31条)、教科用図書等への掲載(著作権法第33条)、視覚障害者等のための複製等(著作権法第37条)、営利を目的としない上演等(著作権法第38条)、時事の事件の報道のための利用(著作権法第41条)、裁判手続き等における複製(著作権法第42条)、情報公開法等における開示のための利用(著作権法第42条の2)等が挙げられ、該当する場合は、利用が認められる条件について規定を確認する必要があります。

(7) 著作物の利用方法

他人の著作物は、上述(6)の通り、著作権が制限を受けている場合を例外として、原則として、著作権者に無断で利用することはできません。他人の著作物を利用する方法としては、以下の方法があります。

1 著作者からの利用の許諾(著作権法第63条)

2 出版権の設定(著作権法第79条~第88条)

3 著作権の譲渡(著作権法第61条)

4 文化庁長官の裁定(著作権法第67条~第69条)

(8) 著作権の侵害、罰則規定、紛争処理

著作権法に定められている権利を侵害された者は、差し止め請求、損害賠償請求、名誉回復の措置の請求等の権利侵害に対する救済を請求することができます(著作権法第112条~第118条)。また、著作権法の規定に違反した者は、罰則規定として、最大10年以下の懲役、又は1,000万円以下の罰金が科せられます(著作権法第119条~第124条)。

そのほか、著作権に関する紛争につきあっせんによりその解決を図るため、文化庁に著作権紛争解決あっせん委員が置かれており(著作権法第105条第1項)、当事者は文化庁長官に対し、あっせんの申請をすることができます(著作権法第106条)。

(9) 日本が加盟している国際条約

1 著作権条約

  • ベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)
  • 万国著作権条約

2 著作隣接権条約

  • 実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約
  • 許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約

3 マラケシュ条約

  • 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約

4 著作権・著作隣接権関係条約

  • TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)
  • WIPO著作権条約(著作権に関する世界知的所有権機関条約)
  • WIPO実演・レコード条約(実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)
 

2.タイ

 タイにおける著作物を保護する法律として、著作権法(Copyright Act B.E.2537)が制定されています。著作権法は、2015年と、2018年に改正がなされています。

(1) 著作物

 本法律における著作物とは、その表現の方法又は形式を問わず、文学、演劇、美術、音楽、視聴覚、映画、録音、放送その他の文学的、科学的又は芸術的分野の著作物をいうとされ、著作権の保護は、アイデア、手順、プロセス、システム、使用方法、操作方法、概念、原則、発見、科学的・数学的理論には及ばないとされています(第6条)。

(2) 著作権の発生

 著作権は、登録によって権利が発生する特許権や商標権と異なり、登録がなくとも著作物の創作の時点から発生します。

(3) 著作権者

 著作権者は、本法律により著作権の対象となる作品を創作した者をいいます(第4条)。

使用者に雇用されている従業員が雇用の過程で創作した著作物(職務著作)については、著作権が使用者に帰属するとの書面による合意がない限り、著作物を創作した従業員に著作権が帰属します。ただ、その場合でも使用者は雇用の目的に従い、当該著作物を公衆に伝達する権利を有します(第9条)。

 委託契約に基づき創作された著作物については、創作した者と委託者との間で別段の合意がない限り、著作権は委託者に帰属します(第10条)。

(4) 著作権者の権利

 著作権者は、以下の排他的権利を有します(第15条)。

  1. 複製又は翻案
  2. 公衆への伝達
  3. コンピュータプログラム、視聴覚著作物、映画著作物、録音物の原作品又は複製物の貸与
  4. 著作権から生じる利益の他者への供与
  5. 上記1、2、3の排他的権利を条件付き又は条件なしで他者に使用許諾すること

(5) 著作権の譲渡

 著作権者は、自己の著作権の全部又は一部を他人に譲渡することができます。著作権の譲渡が相続によるものではない場合、譲渡人及び譲受人が署名した書面により行われなければなりません。譲渡期間が明記されていない場合は、譲渡は10年間となります(第17条)。

(6) 著作権の保護期間

 著作権は、原則、著作者の生存中及びその死後50年間存続します(第19条)。

 ただ、著作物毎に、保護期間が制定されています(第19条~26条、第49条、50条)。

(7) 著作権の侵害行為

 著作権者の許諾を得ずに行われた以下の行為は、著作権の侵害とみなされます(第27条)。

  1. 複製又は翻案
  2. 公衆への伝達

ただ、著作物毎に、侵害行為が規定されています(第28条~31条)。

(8) 侵害行為への対応

  1. 損害賠償請求(第64条)
  2. 差止請求(第65条)
  3. 刑事罰(第69条~77条)

(9) ベルヌ条約

ベルヌ条約は、いわば世界著作権を認めるものであり、ベルヌ条約の加盟国は互いの国の著作物を保護し合うという点を取り決めている条約となります。日本もタイも、このベルヌ条約に加盟しているため、互いの国の著作物は互いの国の著作権法で保護を受けられることになります。

したがって、日本の著作物もタイ国内においてタイ著作権法による保護を受けることが可能となります。しかし、あくまでもタイ著作権法による保護であるため、保護期間や権利の内容などはタイ著作権法の規定によることになります。

 

3.マレーシア

(1) 概要及び目的

 著作権制度は、著作権者に著作権の独占的な使用権を与えることで著作者の保護ひいては著作物の創作活動の誘因を保護するとともに、権利侵害となる利用行為類型や権利の存続期間を制限することで著作物の自由な利用を一定の範囲で保護しています。マレーシアにおける著作権制度は著作権法(Copyright Act 1987)によって規律されています。

(2) 要件

 マレーシアにおいて著作権が保護を受けるために登録を受ける必要はありません。但し、以下の要件を満たす必要があります。

1 独創性

 独創性とは、作品が著作者の一部ともいえる労働、技術、判断等から成り立っていることを意味し、同要件が認められるためには、作品が著作者に由来し、かつ、十分な努力が費やされていなければなりません。

2 録音又は記録

著作物は、有形の物であるか、記録・録音されてなければなりません(著作権法7条(3)(b))。

3 カテゴリー該当性

以下のカテゴリーに該当する著作物が、著作権による保護の対象となります(著作権法7条(1))。

  • 言語作品(同項(a))
  • 音楽作品(同項(b))
  • 美術作品(映像、写真、長億、コラージュ、建築物等)(同項(c))
  • 映画(同項(d))
  • 録音物(同項(e))
  • 放送(同項(f))

4 適格性

著作権法は、次の3つの場合に同法に基づく保護が与えられます。

(a) 著作者がマレーシア人等の場合

著作者は適格者でなければなりません。適格者とは、自然人の場合にはマレーシア国民又はマレーシアの永住者を意味し、法人の場合にはマレーシアにおいて設立されマレーシアの法律に基づき法人格を与えられた団体であることを意味します(著作権法3条)。

(b) 最初に発行された場所がマレーシアの場合等

言語作品、音楽作品、美術作品、映画、録音物については最初にマレーシアで発行された場合に、放送の場合にはマレーシアから放送をしている場合に適格性が認められます(著作権法10条(2)(a)、同項(c))。建築物については、マレーシアにおいて建築される場合、その他の美術作品についてはマレーシア国内の建物に組み込まれた場合にも適格性が認められます(同項(b))。作品が他の場所で発行された後、その日から30日以内にマレーシアで発行された場合は、最初にマレーシアで発行されたものとみなされます(著作権法4条(3)(b))。

(c) 作品がマレーシアにおいて製作された場合

国籍、居住又は発行地とは関係なく、当該作品がマレーシアで制作された場合には、著作権による保護が与えられます(著作権法10条(3))。

5 他国への拡張

 著作権(他の諸国への適用)規則(COPYRIGHT (APPLICATION TO OTHER COUNTRIES) REGULATIONS 1990)により、ベルヌ条約加盟国において最初に公開された言語作品、音楽作品、芸術作品、映画等についても著作権法の保護が及びます(著作権法59A条(1)(a))。

(3) 著作権に対する保護

 言語作品、音楽作品、芸術作品、映画、録音及びその派生作品に対する著作権は、以下の事項に関する排他的支配権をその内容とします(著作権法13条(1))。

  • 何らかの有形的形式による複製(同項(a))
  • 公衆への発信(同項(aa))
  • 実演、公衆への展示又は上演(同項(b))
  • 販売その他所有権の移転による公衆への複製物の頒布(同項(e))
  • 公衆への商業的貸与(同項(f))

(4) 著作権侵害に対する救済手続

 著作権者は、著作権に対する侵害行為又は著作権法36条A及び同条Bに反する行為があれば訴訟を提起することができます。著作権法は、以下の種類の救済手段を規定しています(著作権法37条(1))。

  • 差止命令(同項(a))
  • 損害賠償(同項(b))
  • 利益の計算(同項(c))
  • 作品ごとにRM25,000を超えない損害賠償(但し、総額でRM500,000を超えてはならない)(同項(d))
  • その他裁判所が適当と考える命令(同項(e))
 

4.ミャンマー

ミャンマーでは、著作権法(Copyright Law)が2019年5月24日に制定されていますが、現時点でまだ施行されておりません。そのため以下にて著作権法の概要を説明致しますが、まだこれら保護はミャンマーにて受けられないことにご留意ください。

(1) 権利保護の対象

著作権法において「著作権」とは、文学又は芸術作品の著作者が、本法に含まれる規定に則って得た、文学及び芸術に係る個別の権利をいうと規定されております。

著作権の保護を受ける文学又は芸術作品には、(a) 書籍、配布資料、詩、小説、記事、コンピュータープログラム及びその他書かれたもの (b) 告示、訓示、演説、説法及びその他の発話 (c) 劇、舞台音楽作品、独自の挙動による演技、振り付け作品、舞台上で上演するその他の文学又は芸術作品 (d) 書面を含むか否か問わず、演奏及び演奏作品 (e) 映画作品を含む映像音声作品 (f) 建築作品 (g) 書くこと、書き刻むこと、装飾、木彫、石細工彫刻、彫刻、多彩なグラス、宝石等で装飾した作品、木製作品、陶器技術で作った作品、金属品、土器、宝石の装飾品、工芸品、古代の衣装、民族衣装及び服飾全般 (h) 石板印字、コンピュータープログラムその他の芸術作品 (i) 劇作品 (j) 実用的芸術作品 (k)反物の柄 (l)地理的状態、図面における表現、建築作品又は科学技術により、該当する模型、地図、計画、素描及び立体的作品が含まれます。

また、文学又は芸術作品の著作権を損なわせることのない二次的著作物には、(a) 文学又は芸術作品の翻訳、引用、整理及びその他の方法で変更すること又は修正すること (b) 伝統遺産の表現の収集を含む文学又は芸術作品を収集すること (c) 選択又は整理により事実を読み取る機械又はその他の方法で収集し、当該対象を収集する際に創作を含むことが含まれます。ただし、収集する際に含まれる情報を保護することとは関係がありません。

一方、著作権の保護を受けない文学又は芸術作品若しくは著作隣接権に関する作品には、(a) 考え、工程、行為手段、数式、基本原則、発見又は事実 (b) 関連する日付のニュース又は印刷された新聞の事実と定義できる特徴をもつ様々な情報 (c) 憲法及び法律 (d) 政府当局、政府団体及び局から発表する規則、施行細則、通達、命令、指令、及び法的手続き (e) 判決及び裁判所の命令 (f) 前(c)から(e)項までに含まれる情報を政府から正式に翻訳すること及び収集することが該当します。

(2) 著作権の存続期間

経済的権利を保護する期間について、著作者の生存期間及び死亡年から50年と規定されており、著作者人格権の保護期間は著作者の生存期間及び死亡した日付から起算して無期限であると規定されております。

(3) 罰則

権利者の許可なく営利目的で、著作権又は著作隣接権の保護を受ける作品を直接又は間接的に複製し、公衆と接続すること及び公衆へ頒布する行為、著作権又は著作隣接権を侵害した対象物を所有すること又は販売する行為、著作権又は著作隣接権を侵害した対象物を国内に向けて輸入する行為、著作権又は著作隣接権管理情報及び技術的保護措置に関する禁止行為を行う行為、著作権又は著作隣接権を侵害した対象物を製作する際、主に使用した物又は道具を所有する行為により有罪判決を受けた者には、3年以下の懲役若しくは100万チャット以下の罰金、又はその両方が科せされます。

また、上記を含む行為のいずれかに違反すること、有罪判決を受けて当該罪状において再犯を行うこと、有罪判決を受けた場合に、当該人物は3年以上10年以下の懲役かつ1000万チャット以下の罰金に処されると規定されております。

さらに、著作権又は著作隣接権の登録証の偽造すること又は偽造させること、著作権又は著作隣接権の登録簿に不誠実に不実を記載すること又はさせる行為により有罪判決を受けた者には、2年以下の懲役若しくは200万チャット以下の罰金、又はその両方が科せられます。

 

5.メキシコ

メキシコにおける著作権は、主に連邦著作権法(Ley Federal del Derecho de Autor)とその規則(Reglamento de la Ley Federal del Derecho de Autor)によって保護されます。

(1) 権利保護の対象

著作権とは、いかなる文書や登録も要せず、形式に準拠する必要もなく認められるものであり、作家や芸術家、演出家、演者に、それらの文芸作品や芸術作品といった著作物に対する保護を付与するものです。独創的に創作された著作物であって、いずれかの形式又は媒体によって知覚され、伝達され、又は複製することができる著作物が保護の対象とされており、1文学、2音楽作品(歌詞の有無は問わない)、3劇、4ダンス、5絵画・デッサン、⑥彫刻及び立体芸術、⑦風刺画・漫画、⑧建築、⑨映画などの映像作品、⑩ラジオ・テレビ番組、⑪コンピュータプログラム、⑫写真、⑬グラフィック又はテキスタイルデザインを含む応用美術作品、⑭百科事典・アンソロジー・データベースなどの編集物に区分されます。

一方、1アイデア、公式、解決策、概念など一般的発明、2著作物に具現化されたアイデアの産業的又は商業的利用、3精神的行為、競技、事業を行うための枠組み、計画、規則、4(独創的なデザインとならない)文字、数字、色彩、5名称及びタイトル又はフレーズ、⑥情報の種類を問わず、それを記入するためのフォーマット及びその指示、⑦国、州、市町村あるいは同等の政治区分の紋章、旗、又は記章の無許諾の複製品あるいは模造品、又は政府間組織や国際非政府組織その他いずれかの公認機関の名称、略称、シンボルあるいは記章及びそれらの呼称、⑧立法上、規制上、行政上、司法上等の原文及びそれらの公的翻訳。これらの原文及び公的翻訳が出版される場合には、それらは、公的原文に合致していなければならず、かつ、それらは、排他的出版権を与えません。(ただし、対応する原文、解釈、比較研究、注釈、解説その他著作者側による原著作物の創作を伴う類似の著作物は保護の対象となり得えます)、⑨ニュースの情報内容(ただし、その表現形式は保護されます)。⑩格言、ことわざ、伝説、事実、カレンダー及び計量表などの日常使用される情報などは、著作権保護の対象とはなりません。

(2) 著作権の種類

著作権は大きく、著作者人格権と経済的権利に分けられます。

著作者人格権は、著作者に帰属し、不可侵で不滅の、放棄も押収もされない権利であり、1著作物をどのような形で公表するか、あるいは著作物を非公開にするかの決定、2著作物に著作者を表示することの要請、もしくは著作物を匿名又は仮名で公表することの決定、3著作物の変形や削除、その他の変更、及び著作物や著作者の評判を下げる行為に対して異議を唱え、著作物の尊重を要求すること、4著作物を変更すること、5著作物を市場から回収すること、⑥自身が創作していない著作物の著作者とされることに異議を唱える、といった行為を認めるものです。この権利は著作者本人のほか、その相続人も行使できますが、後者の場合、1~4に限定されます。

一方、経済的権利は、法が定める範囲内で、著作者人格権を損なうことなく、自身の著作物を独占的に利用し、又は他者にそれを利用することを許可する権利であり、1あらゆる手段によって実施される著作物の複製、出版、編集又はその他の表現、2文学的及び美術的著作物における表現、朗読又は講演、一般公開の展示、インターネット等の電気通信によるパブリック・アクセス、利用者の選択した場所、時間に当該著作物にアクセスできるようにした一般公開による著作物の公開、3ケーブル、光ファイバー、マイクロ波、衛星、その他の既知の手段による送信又は再送信を含む、あらゆる形式の著作物の公開送信又は放送、4販売など著作物を含む物理的物質の移転や使用、利用の移転を含む著作物の配布、5著作者の許可を得ずに制作された著作物の模造品のメキシコ国内への輸入、⑥翻訳、改作、言い換え、編曲、変換など、あらゆる形式の二次的著作物の普及、⑦法に規定された場合を除く、著作物の公的利用、を実施又は禁止すること、を認めます。これらは、著作者自身、その相続人や権利取得者が行使でき、著作者の生存中及び死後100年間(共同著作物の場合は最も長く生きた共同著作者の死後100年間)有効となります。

(3) 著作権の登録

著作権は、前述の通り、いかなる文書や登録も要せず、形式に準拠する必要もなく認められるものですが、著作者、関連する権利の所有者、及びそれぞれの経済的権利の所有者とその後継者の法的安全を保証するために、文化省(Secretaría de Cultura)の下部組織となる国家著作権庁(Instituto Nacional del Derecho de Autor、以下「INDAUTOR」という)に登録することもできます。なお、前述の経済的権利を譲渡する場合には、これを登録しなければ第三者に対抗することができません。

(4) 著作権の効果

著作権の侵害があった場合、著作者や著作権保有者は民事的、行政的、刑事的措置をとることができます。

例えば、経済的権利の侵害があった場合、民事的措置として、損害賠償や、講演、公開の中止、権利を侵害して得られた収入等の差し押さえなどの承認と実施を裁判所に対し要求することができます。

行政的措置については、事案に応じてINDAUTORもしくはメキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial)が管轄します。出版社、起業家、プロデューサー、雇用主、放送機関、又は実施権者が、法の規定に違反して著作権を譲渡することを目的とした契約を締結すること、放送機関が有する強制実施権の条件を侵害すること、文学的著作物の編集や印刷において、出版社の情報や出版年等の情報を省略し、もしくは誤って記載すること、著作者、翻訳者、編集者等の名前を記載せずに、著作物を公開すること、著作者や翻訳者、編集者等の評判を損なうように、著作物を公開すること、以前に公開された別の作品との混乱につながる作品のタイトルを不正に使用することなどが行政制裁の対象となっており、制裁金は、事案に応じてUMA 日額(Unidad de Medida y Actualización、2021年の日額は89.62ペソ)の1,500倍から22,000倍の額となります。また、著作者や著作権所有者の事前の明示的な許可なしに、著作物を利用可能にし又は公に使用すること、本人やその相続人の許可なしに肖像を使用すること、書籍、映画、レコード、ビデオグラム、その他の視聴覚作品といった著作物の複製物を、著作権者もしくは著作権保有者の許可を得ずに、製作し、製造し、仕入れ、頒布し、輸送し、又は販売すること、著作権保有者の許可を得ずに改変、変更、又は削除されている著作物を、販売、仕入れ、輸送又は頒布のために提供すること、コンピュータプログラムの電子保護装置を機能させないことを目的とする装置又はシステムの輸入、販売、貸与又はそれを占有させること、放送機関の放送を、許可を得ずに、再送信し、複製し、及び公衆に配信することなどが、直接的又は間接的な利益のために実行された場合、著作権保護のために施された効果的な技術的保護手段を回避し、侵害行為等を行った場合などは、商業的侵害に該当し、事案に応じてUMA日額の500倍から40,000倍の制裁金が課されます。

連邦著作権法の他、連邦刑法(Código Penal Federal)にも著作権侵害に対する刑罰が規定されており、事案に応じて、6か月以上10年以下の懲役やUMA日額の300倍以上30,000倍以下の罰金が科されます。

(5) 国際条約

 メキシコが加盟する著作権に係る主な国際条約は次の通りです。

・文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約ブリュッセル改正条約

・文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約

・万国著作権条約(パリ改正条約への批准を含む)

・実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約

・許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約

・視聴覚著作物の国際登録に関する条約

・著作権に関する世界知的所有権機関条約

・実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約

 

6.バングラデシュ

著作権法(Copy Right Act, 2000)は2000年に制定され(2005年に一部改正)、同法により、執行機関として「著作権局」が設置されました。2006年に著作権法規則が制定され、著作権の登録、利用許諾や各種申請に関する手数料及び様式が規定されるほか、著作権委員会の任期、著作権団体の登録や監査について定めています。

著作権の管轄機関としては、著作権法を執行する著作権局のほか、手続き等を規定する著作権委員会が設置されています(著作権法9条、11条、12条)。

(1) 著作権の範囲

著作権は、以下の種類の著作物に対してバングラデシュ全域に及ぶものとすると規定されていますが(著作権法15条(1))、著作物の発行日又は作成期間に、著作者がバングラデシュに居住していたか、バングラデシュ国民であるか等の一定の要件が定められています(同条(2)(3))。

1 創作的な文学、演劇、音楽及び美術著作物

2 映画フィルム、ならびに

3 録音物

(2) 著作権の登録

著作物の著作者が最初の著作権者になると規定されていますが(著作権法17条)、当事者の同意に従います。合意がない場合、新聞等の定期刊行物については、業務又は徒弟契約に基づく著作者の雇用の過程において作成された著作物の場合は、定められた目的の範囲内に限り、経営者が最初の著作権者となりますが、その他全てに関しては著作者が最初の著作権者となります(著作権法17条(a))。また、依頼により有償の対価をもって撮影された写真、描かれた絵画もしくは肖像画、又は作成された版画もしくは映画フィルムの場合には、当該依頼者がその最初の著作権者となります(同条(b))。政府著作物の場合や、公共事業体により又はその指示や管理の下に作成、発行された著作物の場合には、政府又は公共事業体がその最初の著作権者となります(同条(e)(f))。また、コンピュータプログラムの場合は、プログラムを作成することを任命された者又は機関がその最初の著作権者となります(同条(h))。その他、国際著作権の規定が適用される著作物の場合には、これに関連する国際機関がその最初の著作権者となります(同条(g))。

著作権は、登録官に登録を申請することができ、著作権者は、その権利を譲渡(著作権法18条(1))又は利用許諾(著作権法48条)をすることができます。著作権は発行年又は著作者の死亡年の翌年から60年間有効です(著作権法24条、26条~32条)。

(3) 著作権の侵害に対する救済措置

 著作権侵害に対して、差し止め命令、損害賠償、利益分配その他法が認める救済を受けることができます(著作権法76条(1))。また、著作権法に罰則規定が定められており、4年以下の拘禁及若しくは50万タカ以下の罰金、又はその両方が科せられます(著作権法82条~88条)。

(4) 国際条約

 バングラデシュが加盟している主な知的財産権関連の条約として、(1) 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約、(2) 工業所有権の保護に関するパリ条約、(3) WIPO設立条約、(4) 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)が挙げられます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年8月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点で沖縄県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府に緊急事態宣言が実施されており、8月31日までが実施期間となっています。また、まん延防止等重点措置は、北海道、石川県、京都府、兵庫県、福岡県で8月31日までを対象に実施されています。飲食店への休業又は時短要請、酒類提供の制限、イベントの収容率及び人数制限など、各都道府県の自治体が措置を講じるほか、ワクチン接種の円滑化・加速化の取り組みが進められています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

(e) 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

インド、ネパール、モルディブ、スリランカ、アフガニスタン、インドネシア、キルギス、ザンビアの8か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。

マレーシア、英国、バングラデシュ、アラブ首長国連邦、ロシア(モスクワ市)、パキスタン、ミャンマーの7か国・地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で6日間待機し、入国後3日目及び6日目に改めて検査を受けることになります。

その他、別途指定される国又は地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)当面待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります(新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は578,375名です。この内、381,170名が回復し、累計死亡者数は4,679名となっています。また、非常事態宣言は、9月30日まで延長されています。

タイ政府は、7月17日、新たな措置を公表し、13都県(バンコク、チョンブリ、アユタヤ、サムットプラカーン、ノンタブリー、パトゥムタニー等)をダークレッドゾーンに再指定しました。ダークレッドゾーンでは、レストラン等での店内飲食が禁止で、持ち帰りのみの営業が可能となっています。ショッピングモール等はドラッグストアやスーパーマーケット等を除き閉鎖、コンビニ等を含む全ての店舗が20時から翌4時まで閉店とされています。また、21時から翌4時までの夜間外出禁止措置も発表されています。

バンコク都は、7月21日に新たな規制として施設の閉鎖措置を発表しています。屋内外の競技施設、運動場、公園、展示場、美術館、図書館、博物館、託児所、理髪店、美容院、ネイルサロン、プール等が閉鎖対象となっています。

(2) 入国規制

 タイへの入国については、引き続き、オンラインでの入国許可証(COE)申請システムを用いて手続きを進める必要があります。渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、及びCOVID-19の関連疾患を含む医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等が必要です。タイ入国後は、隔離(ASQ)ホテルにて14日間の隔離となります。

 7月1日よりプーケットサンドボックス制度が、7月17日よりサムイ・プラス制度が開始されています。これは、渡航日の14日前までに、COVID-19ワクチン接種を規定回数終えている者を、検疫隔離なしでプーケットまたはサムイ島・パンガン島・タオ島に受け入れる、検疫隔離免除の制度となります。ワクチン接種証明書の提示が必要となります。また、通常の入国時と同様、COEの申請、渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等の提示も必要となります。詳細情報については、在京タイ王国大使館のHPを参照下さい。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

 7月29日の新規感染者数は、17,170人でした。現在マレーシア国内で施行されているFMCO(完全ロックダウン)は、第一段階から第四段階まで設定され、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。7月中に、ペルリス州、ペラ州、クランタン州、トレガンヌ州、パハン州、ペナン州、サバ州、サラワク州が第二段階に移行しました。これら以外の地域は、現在も第一段階の規制が施行されます。

 第一段階の規制では、必要不可欠なサービスとして指定されたものを除き全ての社会・経済活動は許可されません。また、州・地区間の移動は原則禁止されています。

(2) 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19の陽性者数が急増しており、死者も増加しています。病院の稼働状況もCDMの関係でまだ完全に元通りにはなっていないことから感染しても入院できず、感染予防のため、7月19日~8月1日までの2週間が祝日となりました。

(2) 入国規制

 7月は3日のANA便が飛び、24日は見送りとなりました。8月は6日、13日及び20日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっています。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

6月以降、増加傾向を見せていたメキシコ国内のCOVID-19新規感染者数は、7月に入り急増し、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いの実施など、予防策の徹底が呼びかけられています。

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、7月19日の更新が見送られ、7月23日付で 「COVID-19感染リスクを示す地域別信号の決定指針」を更新し、その評価基準が見直されました。新たな基準のもと発表された7月26日から2週間適用される信号は、赤1州、橙13州、黄15州、緑3州と多くの州で警戒色が引き上げられました。また、7月27日には保健省令が公布され、感染リスクの高い人(60歳以の人、妊娠中、授乳中の女性、5歳未満の子供、障がいのある人、肥満の人、高血圧、腎不全、癌、糖尿病、肝臓または代謝不全、心臓病などを患う人)とされる人のうち、ワクチンの接種を完了し2週間が経過した人は、この感染リスクの高い人とみなす必要がないとし、更に、2020年5月14日付保健省令に付属されていた地域別信号色及び認められる経済活動の表が廃止されました。なお、当該指針(7月27日付Ver.6.1が最新)に示される社会経済活動の推奨事項において、これまで赤信号下では認められていなかった必要不可欠でない経済活動について、「当局の指示に基づく操業」と赤信号下での操業の可能性が示されています。しかしながら、最終的には州が定める規制に従うことになりますので、事業活動を行う州の決定に注視する必要があります。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、8月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、3月19日から実施されているメキシコ政府によるグアテマラ及びベリーズ国境における陸路での不要不急の移動制限についてついては、6月21日以降その延長は発表されていないものの、在メキシコ日本大使館によると、解除の通知が為されていないことから、これまでと同様の制限が継続されると考えられるとのことです。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染状況を受け、7月23日以降、全ての政府系機関、民間の事務所の閉鎖、全ての産業活動および工場の稼働の停止など、厳格な行動規制が発表されましたが、8月1日から、輸出向け縫製工場は再開が認められました。

(2) 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置としての渡航や入国規制は、下記の通りです。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループAに属する国(インドやマレーシアなどの計11か国)へのバングラデシュからの出国、グループAの国からのバングラデシュ入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(ベルギーやデンマークなどの計8か国)へのバングラデシュからの出国、グループBの国からのダッカへの渡航は認められる。ただし、入国後、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。

第2.各国のフランチャイズによってビジネス展開を試みる場合の注意すべき規制

1.日本

フランチャイズとは、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によると、「事業者(「フランチャイザー」)が他の事業者(「フランチャイジー」)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう」と定義されています。

フランチャイズに関する主な法律として、中小小売商業振興法及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」)が挙げられます。

(1) 中小小売商業振興法

 商店街の整備、店舗の集団化、共同店舗等の整備等の事業の実施を円滑にし、中小小売商業者の経営の近代化を促進すること等により、中小小売商業の振興を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(中小小売商業振興法1条)。中小小売商業振興法4条5項に「連鎖化事業(主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に、商品を販売し、又は販売をあっせんし、かつ、経営に関する指導を行う事業をいう。以下同じ。)を行う者は、当該連鎖化事業の用に供する倉庫その他の施設又は設備を設置する事業について、連鎖化事業計画を作成し、これを主務大臣に提出して、当該連鎖化事業計画が政令で定める基準に適合するものである旨の認定を受けることができる」とあり、「連鎖化事業」にフランチャイズ・システムが含まれます。

1 特定連鎖化事業の運営の適正化(中小小売商業振興法11条、12条)

連鎖化事業のなかで、フランチャイズ・システムは「特定連鎖化事業」にあたり、中小小売商業振興法で、運営の適正化について定められています(中小小売商業振興法11条1項)。本部が加盟者と契約を締結する際に含めなければならない事項が定められ、従わない場合は、勧告を受け、勧告に従わない場合は、その旨を公表されることがあります(中小小売商業振興法12条1項、2項)。以下の通り、規定されています。

(a) 中小小売商業振興法11条1項

1 連鎖化事業であって、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの(以下「特定連鎖化事業」という。)を行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。

一 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項

二 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項

三 経営の指導に関する事項

四 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項

五 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項

六 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項

(b) 中小小売商業振興法12条1項2項)

1 主務大臣は、特定連鎖化事業を行なう者が11条1項の規定に従っていないと認めるときは、その者に対し、同項の規定に従うべきことを勧告することができる(中小小売商業振興法12条1項)。

2 主務大臣は、前項の規定による勧告をした場合において、特定連鎖化事業を行なう者がその勧告に従っていないと認めるときは、その旨を公表することができる(中小小売商業振興法12条2項)。

(2) 独禁法

 フランチャイズ・システムでは、本部と加盟者は、あたかも通常の企業における本店と支店のような外観を呈していますが、両者は法律的には独立した事業者であり、本部と加盟者間の取引関係については独占禁止法が適用されます。独禁法に規定されている不正な取引方法を行った場合は、課徴金の対象となるほか、被害者に対する損害賠償の責任を負います。

1 優越的地位の濫用

  1. 独禁法2条9項5号

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

  1. 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
  2. 継続して取引する相手方に対して自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
  3. 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
  4. 該当する又は該当しうる行為の例

本部による加盟者に対する取引先の制限、仕入れ数量の強制、見切り販売の制限、営業時間の短縮にかかる協議拒絶、フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更などが該当します。

2 拘束条件付取引

  1. 独禁法2条9項6号

独禁法2条9項1号から5号において「不公正な取引方法」と定めているもののほか、次のいずれかに該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

  1. 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
  2. 不当な対価をもつて取引すること。
  3. 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
  4. 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
  5. 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
  6. 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。
  7. 不公平な取引方法12項

(拘束条件付取引)

独禁法2条9項4号(再販価格の拘束・次項参照)又は不公平な取引方法11項(排他条件付取引)に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。

※ 11項 (排他条件付取引) 不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。

(c) 該当する又は該当しうる行為の例

フランチャイズ契約に基づく営業のノウハウの供与に併せて、本部が、加盟者に対し、自己や自己の指定する事業者から商品、原材料等の供給を受けさせるようにすることが該当する場合があります。

3 再販価格の拘束

  1. 独禁法2条9項4号

自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。

  1. 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
  2. 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
  3. 該当する又は該当しうる行為の例

本部が加盟者に商品を供給している場合、加盟者の販売価格(再販売価格)を拘束すること等が該当します。

4 不当な取引拒絶

  1. 独禁法2条9項1号

正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。

  1. ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
  2. 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
  3. 不公平な取引方法1項・2項

(共同の取引拒絶)

正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。

一 ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

二 他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。

(その他の取引拒絶)

不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。

5 ぎまん的顧客誘引

  1. 不公正な取引方法8項

(ぎまん的顧客誘引)

自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。

  1. 該当する又は該当しうる行為の例

加盟者に対する事業活動上の指導や費用負担に関する事項、加盟後のロイヤルティに関する事項、契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項、その他重要な事項について、十分な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行い、これらにより、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、ぎまん的顧客誘引に該当します。

2.タイ

(1) フランチャイズガイドライン

タイでは、フランチャイズ事業における不公正な取引方法の検討に関するガイドライン(The Trade Competition Commission Notice on Guidelines for the Assessment of Unfair Trade Practices in Franchising B.E. 2562 (2019))が2020年2月4日に発効されています。本ガイドラインは、フランチャイズを許諾するフランチャイザーが、フランチャイズ加盟者(フランチャイジー)に損害を与える可能性のある、過度に制限的で不公正な契約条件が採用されることを防ぐことを目的としています。本ガイドラインは、取引競争法(Trade Competition Act B.E. 2560)に基づき設置されている取引競争委員会により発効されています。

(2) フランチャイザーの義務

 本ガイドラインは、フランチャイザーに以下の2つの主な義務を課しています。

  1. フランチャイズに関する重要情報の開示義務(本ガイドライン第3条)

フランチャイズ契約を締結する前に、フランチャイザーはフランチャイジーに対して、フランチャイズ・システムの性質及び運営に関する重要な関連情報を開示しなければなりません。

例えば、(a)フランチャイズ事業の運営に関連するロイヤリティおよびその他の費用、(b)フランチャイズの事業計画、(c)関連する知的財産権、(d)フランチャイズ契約の更新および終了に関する事項などです。

    2. 近隣のフランチャイジーへの通知および優先権の提供義務(同第4条)

フランチャイザーが、フランチャイジーの営業地域の近隣に新たな店舗を開設しようとする場合、フランチャイザーはまず、その近隣地域のフランチャイジーに新店舗開設に関して通知を行い、当該店舗の経営権を優先的に提案することが求められます。

(3) 不公正取引に関するガイドライン(同第5条)

また、本ガイドラインでは、取引競争法第57条の不公正取引に該当するかどうかの評価に関するガイドラインとして、フランチャイザーがフランチャイジーに損害を与える可能性のある以下の行為を挙げています。

  1. フランチャイジーに対して、正当な理由なく、以下のような制限的な条件を設定すること。
  2. フランチャイズ契約で指定された製品/サービスとは無関係の製品/サービスを、フランチャイザーまたはフランチャイザーが指定した者からのみ購入することをフランチャイジーに要求すること。
  3. フランチャイジーに対して、実際のフランチャイジーの事業に必要な量を超える製品または原材料を購入することを要求し、それら過剰な量の製品または原材料の返品を禁止すること。
  4. フランチャイズ契約が締結された後に、フランチャイジーに他の製品やサービスの購入、フランチャイズ契約に明記されている以上の行為を行うことを要求するなど、フランチャイジーが遵守すべき追加条件を課すこと。ただし、合理的なビジネス上の理由がある場合、またはフランチャイズの評判、品質、水準を維持する目的がある場合はこの限りではなく、これらの追加条件は書面で作成されるものとする。
  5. フランチャイジーが、正当な理由なく、同等の品質でより低価格の商品を提供する他の事業者から商品を購入することを制限すること。
  6. 正当な理由なく、フランチャイジーが生鮮品や賞味期限切れ間近の商品を値引きすることを制限すること。
  7. 正当な理由なく、フランチャイジー間で差別的な条件を課し、取引上の不当な差別を引き起こすこと。
  8. フランチャイザーの評判、品質、水準を維持する以外の目的で、不当な条件を課すこと。

3.マレーシア

(1) フランチャイズ法

フランチャイズ契約とは、対価の支払いを条件として、フランチャイザーが確立したフランチャイズシステム及びフランチャイザーの商標、知見、知的財産権等を利用して事業を運営する権利(以下「フランチャイズ」といいます)をフランチャイジーに与える契約をいいます。フランチャイズの形態による進出については、フランチャイズ法(Franchise Act 1998)による規制があります。以下、フランチャイズ法の規制を紹介いたします。

(2) 登録

外国企業がマレーシア国内で又はマレーシア国民に対してフランチャイズの販売を行う場合、フランチャイズ登録局に対し登録申請を行い、承認を得なければなりません。

この登録の申請には、以下の書面を添付する必要があります。

  1. レター・オブ・インテント(Letter of Intent)
  2. 会社の設立証明書(認証付き写し)
  3. 商標の登録証明書(認証付き写し)
  4. 会社のパンフレット
  5. 事業所の写真

同申請に対し、フランチャイズ登録官は理由を示すことなく登録を承認又は拒否することができます。また、外国企業のフランチャイジーも、そのフランチャイズ事業の登録申請をし、承認を得なければなりません。

(3) 契約内容の規制

フランチャイズ法は、フランチャイズ契約書の記載事項について詳細な規定を置いています(対象商品・事業、地域、ロイヤリティその他の報酬、契約期間及び更新等)。

フランチャイズ契約の契約期間は5年以上とされており、正当な理由がある場合を除き解約はできません。また、同法はフランチャイジーの更新請求権やフランチャイザーが更新を拒絶する場合の補償についても定めています。

(4) 年次報告書の提出

フランチャイザーは、フランチャイズ事業の各会計年度の年度末から6カ月以内に、所定の形式でフランチャイズ登録官に報告書を提出する必要があります。

(5) 2020年フランチャイズ改正法

 2020年3月6日に2020年フランチャイズ改正法(Franchise (Amendment) Act 2020)が公布されました。以下で、改正法の中でも重要な規制を紹介いたします。

1 外国人フランチャイザーの登録

 現行法6条は、フランチャイザーは、そのフランチャイズ事業の運営・販売申出に先立ち、フランチャイズの登録を行わなければならないものとしており、同現行法54条は、マレーシア国内で又はマレーシア国民にフランチャイズを販売しようとする外国籍の者(以下「外国人フランチャイザー」という。)は、あらかじめフランチャイズ登録局に申請をし、承認を得なければならない旨を定めています。

 外国人フランチャイザーが同法54条に基づく承認の取得のほかに同法6条に基づく登録をする必要があるか否かについては現行法上不明確であり、運用上登録は不要とされてきましたが、改正法は6条を改め外国人フランチャイザーについても6条に基づく登録が必要である旨を明示しました。そのため、改正法施行後は、外国人フランチャイザーは同法54条に基づく承認の取得のほか、同法6条に基づく登録を行う必要があります。

2 登録期間及び更新

 現行法は、フランチャイズ登録局による取消等が行われない限り、フランチャイズの登録は存続するものと定めています。これに対して、改正法は、登録は規則で定められた期間のみ有効とし、登録の継続を希望する者は有効期間の満了日から30日以内に更新の申請をしなければならない旨を定めています。

3 登録証の掲示

また、改正法は、フランチャイザー、フランチャイジー、フランチャイズブローカー、フランチャイズコンサルタントは、事業所の見えやすい場所に登録証を掲示しなければならない旨を定めています。

4.ミャンマー

ミャンマーでは、フランチャイズに対する外資規制はなく、通常の会社設立手続きで事業が可能です。但し、小売業については外資規制があるため、内国資本の会社との間でフランチャイズ契約を締結してミャンマー国内で展開する外国会社が存在します。

5.メキシコ

(1) フランチャイズに対する法的規制

メキシコにはフランチャイズビジネスに対する外資規制は存在しません。そのため、メキシコ人またはメキシコ法人とフランチャイズ契約を締結する、メキシコに現地子会社を設立のうえフランチャイズ契約を締結するといったいずれの方法も採りえます。ただし、後者の場合において、事業自体が外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)上規制を受ける場合には、当該子会社は外国投資法上の許可を要します。

 フランチャイズの内容は、連邦産業財産保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial、以下「法」といいます。)やその規則において規制をうけますので、以下でその内容を説明します。

(2) 情報開示

フランチャイザーは、契約締結の少なくとも30日前に、フランチャイジーに対し、自らの会社の状況に関する情報を提供しなければならないとされています。

提供しなければならない情報とは、(i)フランチャイザーの氏名、名称、会社名、住所、国籍、(ii)フランチャイズの説明、(iii)フランチャイザーおよび該当する場合にはマスターフランチャイザーの企業年齢、(iv)フランチャイズに関わる知的財産権、(v)フランチャイジーがフランチャイザーに支払わなければならない金額とその費目、(vi)フランチャイザーがフランチャイジーに提供しなければならない技術援助およびサービスの種類、(vii)フランチャイズを展開する営業地域の定義、(viii)フランチャイジーが第三者にサブフランチャイズを付与する権利、または付与しない権利、および該当する場合には、付与するために満たすべき要件、(ix)フランチャイザーから提供された機密情報に関するフランチャイジーの義務、(x)フランチャイズ契約の締結から派生するフランチャイジーの義務と権利全般です。

これらの情報に真実性がない場合、フランチャイジーは、(i)契約の無効を要求するほか、(ii)適切な情報開示を怠ったことによって生じた損害の支払いを要求することができます。フランチャージ―は、(ii)の損害賠償請求の権利を、契約締結から1年間行使することができます。この期間が経過した後は、フランチャイジーは(i)契約の無効を要求する権利しかありません。

(3) フランチャイズ契約に記載が要求される事項

フランチャイズ契約は書面で行われることが要求されます。法に規定される最低限の記載事項は、以下の通りです。

(i)フランチャイジーが活動を行う地域、(ii)フランチャイジーが契約の目的から派生した活動を行う施設に関する最小規模および特性、ならびにその場所、(iii)在庫管理、マーケティングおよび広告に関する方針、ならびに該当する場合には商品の供給およびサプライヤーとの契約に関する規定、(iv)返済、融資、その他の考慮事項に関する方針、手続、条件、(v)フランチャイジーの利益率または手数料の決定に適用される基準および方法、(vi)フランチャイジーの従業員に対する技術および業務上の研修の特徴、ならびにフランチャイザーが技術支援を行う方法または形態、(vii)フランチャイザーおよびフランチャイジーが担当するサービスの品質、パフォーマンスの監督、報告、評価に関する基準、方法および手順、(viii)当事者が合意した場合のサブフランチャイズに関する条件、(ix)フランチャイズ契約の解除となる事由、(x)フランチャイズ契約に関連する条件を修正し、該当する場合には相互の合意により修正することができる旨。

(4) フランチャイジーの義務

フランチャイジーの義務は、個々のフランチャイズ契約で設定することができます。ただし、法は、契約期間中及び契約期間後も、フランチャイジーに当該フランチャイズ事業に関連し知り得た情報や業務内容などについて秘密保持義務を課しています。

(5) フランチャイザーの権利

フランチャイザーは、契約で定められた内容に従って、管理基準およびフランチャイズイメージを守ることを保証する目的を以てのみ、フランチャイジーの組織および運営に干渉することができます。

フランチャイジーの合併、会社分割、組織変更、定款の変更、会社の持分または株式の譲渡、または担保の設定については、フランチャイズ契約を決定づける要因としてフランチャイジーの特性を変更する場合でも、契約で規定されていない限り、フランチャイザーはいかなる干渉もしないものとされています。

(6) 解約

フランチャイザーとフランチャイジーは、契約が無期限で合意されている場合や、正当な理由がある場合を除き、一方的に契約を解除または取り消すことはできません。フランチャイジーまたはフランチャイザーが契約期間満了前に契約を解除するためには、契約で合意された事由と手続きによる必要があります。

これに違反するフランチャイザーまたはフランチャイジーによる中途解約は、契約で合意された従来の違約金を支払うか、またはそれに代えて、生じた損害および不利益に対する補償を行うものとされています。

(7) 商標権

フランチャイズビジネスを展開するにあたっては、商標登録が重要です。フランチャイザーは、フランチャイジーに対し独自の経営ノウハウや商品を提供しビジネスを許諾することにより対価を得ますので、ブランド力の向上や独占的販売の効果を生むためには、関連する商標をメキシコ国内で登録することが必要となってきます(商標出願については、TNY Group Newsletter No.6を参照)。更に、フランチャイジーが当該商標を用いるにあたっては、メキシコ産業財産庁(IMPI)に対しその使用許諾を登録する必要があります。フランチャイズの商標使用許諾の登録申請書には、フランチャイズに係る契約書の原本または公証人により公証された写しを添付しなければなりません。なお、フランチャイジーが支払うロイヤルティ、秘密情報や商品やサービス、技術情報を含む部分は省略することができます。この登録申請は、フランチャイズに関わるいずれの当事者も提出することができます。

6.バングラデシュ

バングラデシュでは、フランチャイズに対する外資規制はなく、通常の会社設立手続きで事業が可能です。外資系の飲食店は、ケンタッキー・フライド・チキンやバーガーキングなど、小売店では、フットウェアのBATAや雑貨販売のMINISO(中国)などが進出しています。バングラデシュの2018-2019年度のGDP成長率は8.19%で他の南アジア諸国と比較しても高く、COVID-19感染拡大の影響により、2020年はGDPが減少したものの、2020-2021年度の一人当たりの収入は2,227ドルで、成長率は9%であり、回復傾向がみられます。バングラデシュの人口は1億6,500万人を超え、そのうち富裕層および中間層の数は平均で年10.5%増加しており、消費市場としての拡大も期待できます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年7月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点で沖縄県に緊急事態宣言が実施されており、7月11日までが実施期間となっています。また、まん延防止等重点措置は、埼玉県、千葉県、神奈川県、北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県で7月11日までを対象に実施されています。飲食店への休業又は時短要請、酒類提供の制限、イベントの収容率及び人数制限、テレワークの推進など、各都道府県の自治体が措置を講じるほか、ワクチン接種の円滑化・加速化の取り組みが進められています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

(e) 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

インド、ネパール、パキスタン、モルディブ、スリランカ及びアフガニスタン(6月1日に追加)の6か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。また、これらの国からの在留資格保持者の再入国は原則拒否されます。

インドネシア、ウガンダ、マレーシア、英国、エジプト、バングラデシュの5か国からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で6日間待機し、入国後3日目及び6日目に改めて検査を受けることになります。

以下の国又は地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)当面待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。

アイルランド、オランダ、ギリシャ、フランス、ヨルダン、カザフスタン、チュニジア、デンマーク、タイ、ベルギー、ラトビア、アラブ首長国連邦、エストニア、キルギス、スウェーデン、ブラジル、ペルー、ポルトガル、南アフリカ共和国、スペイン、ナイジェリア、フィリピン、ベトナム、アメリカ合衆国(16州)、ロシア(モスクワ市、モスクワ州、サンクトペテルブルク市)、カナダ(オンタリオ州)、スイス、ルクセンブルク

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連規制

6月中旬以降、1日あたりの新たな感染者数は、連日3000人を超えています。このような状況をうけて、タイ政府は、6月27日、バンコク都とバンコク近郊県において、規制を最強化することを決定し、この規制の再強化は28日より実施されています。

 再強化された規制の概要は、下記ととおりです。

  • レストラン、百貨店等の建物の内部の飲食店、路上の飲食店、移動販売、歩き売り、市場、定期市、水上市場、これらの類似施設を含め、持ち帰り用の飲食物の販売のみ認める。
  • デパート等の営業は午後9時までとするが、その内部の劇場、映画館、ウォーターパークの営業を禁じ、休憩場所における物理的距離を拡大させる。
  • ホテル、展示会場、会議センター等の営業は認めるが、会議、セミナー、宴会の実施は禁ずる。
  • 当局が許可した、ないしは当局が主催する行事や活動を除き、20人以上の活動を禁ずる。

(2) 入国規制

 5月1日以降の運用に特段変更はなく、タイ入国後の隔離期間については、入国許可証(COE)を取得した者は、14日間以上の隔離期間が義務付けられています。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連規制

 6月28日の新規感染者数は、5,218 人でした。ムヒディン首相は、6月27日、翌28日に期限を迎える予定だったFMCO(完全ロックダウン)を解除せず延長すると発表しました。このFMCOは、新規感染者数及びワクチン接種率を基準に、段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。政府の発表では、新規感染者数が4000人以下となり、ICUの治療人数が減り、ワクチン接種率が国民の10%を超えた場合において、一段階規制を緩和するとしていました。

 なお、FMCOが施行された6月1日から、必要不可欠なサービスとして指定されたものを除き全ての社会・経済活動は許可されません。また、州・地区間の移動は原則禁止されています。

(2) 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発3日前にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19の陽性者数が増加傾向にあり、病院の稼働状況もCDMの関係でまだ完全に元通りにはなっていないことから感染予防対策が重要です。

クーデターと関連して、政府関連施設での爆発事件が増加しており、外出時には注意する必要があります。

(2) 入国規制

 6月は3日及び24日のANA便が飛びました。7月は8日及び22日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週以降、最も深刻な赤を示す州が0州の状態が続いていますが、信号色が緑から黄色、黄色から橙へと後退する州もいくつか見られます。ワクチン接種は、6月27日時点で43,912,990回の接種が行われ、30,078,813人の人が少なくとも1回の接種を終えたとされています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、7月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染が再拡大していることを受け、6月27日に新たな行動規制を発表しました。今回内閣府が発表した行動規制は、7月1日午前6時までの期間が対象で、報道によると、それ以降は更に厳しい行動規制が実施される予定です。今回発表された7月1日までの行動規制の主な内容は以下の通りです。

  1. リキシャや物資を輸送する車両を除く、すべての公共交通機関を全国で停止する。法執行機関は、定期的なパトロールを通じてこれを徹底する。
  2. すべてのショッピングモール、マーケット、観光地、リゾート、コミュニティセンター、娯楽施設等の営業は停止される。
  3. レストランは、デリバリーやテイクアウトのみの営業とし、営業時間は午前8時から午後8時までとする。
  4. 政府や非政府機関は、必要な数の職員が出勤できるよう交通手段を提供すること。
  5. マスク着用の啓発活動を徹底させ、必要であれば法的措置を取ることもできる。

(2) 入国規制

 6月1日、バングラデシュ民間航空局(CAAB)は、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置として、渡航や入国規制について発表しました。主要な発表内容は、下記の通りです。なお、グループAやBに属する具体的な国名など、詳細については( https://www.immi.gov.bd/docs/caab_circular_4June21.pdf )をご参照ください。

  1. グループAに属する国(インドやマレーシアなどの計11か国)へのバングラデシュからの出国、グループAの国からのバングラデシュ入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(ベルギーやデンマークなどの計8か国)へのバングラデシュからの出国、グループBの国からのダッカへの渡航は認められる。ただし、入国後、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。

第2.各国の不動産法制度の概要

1.日本

日本では、土地・建物共に外国人の不動産所有が認められており、所有権の期限は無く、自由に売買することができ、贈与、相続させることも可能です。今国会で土地利用を規制する法案が可決成立しましたが、安全保障関連施設周辺の土地を対象としており、一般的な不動産に関する外資規制としては、1925年に定められた外国人土地法が外資の土地取得を政令で制限できると規定しているものの、現在、政令による指定はなく、同法以外に一般的な不動産に関する外資の土地取得規制はありません。

不動産取引に関する法律は、土地の利用、建物の建築、不動産会社に対する規制、土地や建物に対する権利、売買や賃貸借の契約、不動産登記等の目的によって複数の異なる法律が運用されており、日本の法人や個人と同様に外国法人や個人にも適用されます。今回は、ビジネス及び生活においても関わる機会のある不動産の売買や賃貸借の契約に関する法律についてご紹介します。

(1) 民法

民法では、契約の成立要件や手付け、瑕疵担保責任など、契約の基本的な考え方が規定されており、契約内容について、当事者間で争いがあった場合や事前の取り決めがない場合には、原則として民法に基づき解決することになります。日本では、民法176条より、所有権の移転は、当事者の意思表示のみにより効力を生じます。したがって、当事者間での売買契約等の意思表示の合致のみで所有権は売主から買主へ移転します。もっとも、民法177条より、所有者が所有権を第三者に対抗するためには、不動産登記法等に基づき登記をすることが必要です。

(2) 借地借家法

民法では、契約関係にある当事者同士が対等・公平であることが原則とされていますが、賃借人保護等の観点から、土地(建物の所有を目的とするもの)及び建物の賃貸借契約に関して、民法の規定に優先して適用される法律です。借地借家法には、法の規定と異なる当事者間の合意で賃借人に不利なものは無効になり、借地借家法の規定が適用される条項(強行規定)も含まれています。

1 借地権[1]の存続期間及び更新

 借地権の存続期間は30年で、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間となります(借地借家法3条)。当事者が借地契約を更新する場合において、その期間は更新の日から10年で(借地権の設定後の最初の更新の場合は20年)、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間となります(借地借家法4条)。(a) 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者[2]が契約の更新を請求したとき、及び、(b) 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するとき、(a)(b)ともに建物がある場合に限り、4条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法5条1項2項)。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りではありません(同条1項但書)。これに対し、借地権設定者は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当な事由があると認められる場合でなければ、異議を述べることができません(借地借家法6条)。

2 借地権の対抗力

 借地権は、その登記がなくても、借地権者が、土地の上に登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができると規定されており(借地借家法10条1項)、仮に土地の所有権が第三者に移転した場合でも、借地権者が、その土地上に、登記されている建物を所有している場合は、借地権について対抗することができます。

3 建物の賃貸借契約の期間や更新・終了

 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、更新を希望しない当事者は、期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨を通知しなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。また、建物の賃貸人が賃貸借の解約の申し入れをした場合、建物の賃貸借は、当該申し入れの日から6か月を経過することによって終了します(借地借家法27条1項)。建物の賃貸人による更新をしない旨の通知又は解約の申し入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができません(借地借家法28条)。

4 建物賃貸借の対抗力

建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力が生じます(借地借家法31条)。例えば、建物の所有権が第三者に移転する前に、当該建物に居住している者は、当該第三者に対して、賃貸借について登記がなくても、その賃借権について対抗することができます。

(3) 宅地建物取引業法

宅地建物取引業法は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的としています(宅地建物取引業法1条)。

宅地建物取引業者が自ら売り主となる売買契約について、消費者保護の観点から、民法の規定にかかわらず、契約内容の一部に制限を加えるなどの規制があります。具体的には、手付金や違約金等の金額の制限、瑕疵担保責任に関する制限が設けられており、これらの制限に違反する契約条項は無効となります。一方、賃貸借契約の内容に関しては、宅地建物取引業法に特別な規制はありません。

1 違約金の制限等

宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2をこえることとなる定めをすることはできません(宅地建物取引業法38条1項)。

2 手付の額の制限等

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができません(宅地建物取引業法39条1項)。

3 担保責任についての特約の制限

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法566条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をすることはできません(宅地建物取引業法40条)。

(4) 消費者契約法

消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(消費者契約法1条)。

事業者の不適切な行為の結果、消費者が誤認、困惑したまま契約を締結した場合は、その契約を取り消すことができる、など、不動産の売買や賃貸借の契約を含む一般的な消費者契約について定めており、契約内容に消費者の権利を不当に害する条項がある場合には、その契約条項を無効とすることなどが規定されています。

2.タイ

(1)主な関連法

 不動産に関する法律としては、主なものとして土地法(Land Code B.E.2497)、投資奨励法(Investment Promotion Act B.E.2520)、タイ工業団地法(Industrial Estate Authority of Thailand Act B.E. 2522)、民商法典(Commercial and Civil Code B.E.2535)及びコンドミニアム法(Condominium Act B.E.2522) などが存在します。

(2)不動産の所有権に関する登記制度など

私人も土地及び建物を所有することができます。民商法典上、「不動産」とは、土地及び建物の定着物または土地と一体のもの、とされています(民商法典100条)。土地と建物は、別々の不動産として、取引することが可能です。しかしながら、登記制度自体は、土地についてのみ存在し、建物についての登記制度は存在しません。つまり、土地については土地局で登記を行い、土地の完全な所有権を証する証書として、権原証書(Title Deed)を発行してもらうことが可能であるものの、建物については登記制度がなく、土地の権原証書のように、所有権を証する証書などの書類は存在しません。もっとも、建物の譲渡は、売買契約を土地局に登記することにより行います。このため、対象となる建物について、過去に登記された売買契約書を土地局で確認することにより、その所有者の確認を行うことが一般的です。また、建物が過去に譲渡されていない場合には、当該建物を建築した際の「建築許可証」が、所有権を証する書類として用いられています。

(3) 外資規制

 外国人(タイ国外における法人と、登録資本金のうち外国資本49%を超えるタイで登記された法人を含む)は、原則として土地を所有することができません(土地法第86条)。もっとも、投資奨励法やタイ工業団地法などで、一定の要件を満たす場合には、外国人であっても土地を所有することが認められています。

 建物については、外国人も特に制限なく所有することが認められています。しかし、コンドミニアムについては、各ユニットの区分所有権を取得することになり、コンドミニアムの各ユニットについての所有権のみでなく、その建物の敷地を含めた共用部分についても所有権を取得することになるため、外国人が所有できるコンドミニアムの区分所有の割合は、全ての区分の49%まで、と定められています(コンドミニアム法19条Bis)。

(4) 不動産の賃貸借

 民商法典上、土地や建物の賃貸借期間は、原則として最長30年とされており、さらに30年の更新を定めることは可能です(民商法典540条)。商業または工業用の不動産については、商工業用不動産賃貸法(Act on Lease Immovable Property for Commercial and Industrial Purposes, B.E.2542)に基づき、一定の条件を充足した場合に、最長50年の賃貸借が可能となりますが、同制度は手続きが煩雑となるためか、実務上はあまり利用されていません。

3.マレーシア

(1) 適用法令

 憲法(Malaysian Federal Constitution)上、不動産に関する事項については州政府の管轄下に置かれ、不動産法制の統一性を確保するため、連邦法が定められています。具体的には、国家土地法(National Land Code 1965)、区分所有権法(Strata Titles Act 1985)、土地取得法(Land Acquisition Act 1960)等があります。ただし、東マレーシアを構成するサバ州とサラワク州については連邦法である国家土地法等は適用されず、独自の州法が適用されます。

(2) 外資規制

国家土地法及び首相府傘下の経済企画庁(Economic Planning Unit:EPU)発行によるガイドラインにより規制されています。国家土地法により、全ての外国会社及び非マレーシア市民は、不動産取得に際して、事前に州当局への承認を取得しなければなりません。またEPUのガイドラインにより規定された類型に該当する場合にはEPUの承認も必要となります。

(3) 所有権

 土地の所有権は州政府に帰属し、私人の土地に関する権利は州政府から譲渡を受けることにより生じ、取引の対象となります。譲渡の形態としては、99年を超えない期間に限り譲渡を行なうリースホールド(Leasehold)及び永久的に譲渡を行なうフリーホールド(Freehold)とがあります。いずれの場合も土地に対する排他的支配権を取得することとなります。

土地の譲渡に際しては、通常、地代(土地の固定資産税に相当)の支払、利用形態の制限といった条件や制限が課されます。リースホールドの形態により譲渡された土地は、期間の延長がされない限り、期間満了時に州政府に復帰することとなります。

土地には、一般に、農業用地、工業用地、商業用地、住宅用地と使用目的が設定され、権利簿に記載されており、一定の場合に使用目的を変更することは可能です。

 また、建物は土地の一部を構成すると考えられていることから、原則として独立した売買取引・登記の対象とはなりません。

(4) 区分所有制度

区分所有権法による区分所有(Strata Title)制度が存在します。同法により、1つの土地上の2階以上の建物は複数の区分に分譲することが可能となります。この区分所有制度により、個々のユニット(コンドミニアムの各部屋)に区分所有権が認められます。

区分所有権法によれば、コンドミニアムの個々のユニットは購入者に所有権が認められ、このユニットの所有権をStrata Titleといいます。そして、ユニット所有者は、Strata Titleにより自身の所有権を証明することができます。Strata Titleは土地所有者/開発者が土地事務所に対して、分譲(Subdivision)の申請を行い、承認されれば発行されます。

もっとも、マレーシアでは実務上、土地所有者/開発者の分譲申請手続の遅れ、又は土地事務所の発行手続の遅れを理由にユニット購入者へのStrata Titleが未発行であることは少なくありません。Strata Titleが発行されていない場合、登記簿上では開発者又は土地所有者がコンドミニアム全体について所有権を有しており、ユニット所有者には登記簿上の所有権は認められません。改正区分所有権法では、このようなユニット所有者の権利が不安定な状況を改善するため分譲申請手続の期間を短縮する等の改正が行われました。

4.ミャンマー

(1) 主な関連法

不動産法制における主要な法律としては、不動産譲渡制限法(The Transfer of Immoveable Property Restriction Act、1987)、登記法(The Registration Act, 1908)、投資法(The Myanmar Investment Law, 2016)、コンドミニアム法(The Condominium Law, 2016)等が存在します。

(2) 不動産の所有権に関する規制

 憲法上、国家は、国内のすべての土地の所有者である旨規定されています(憲法37条1項)。したがって、個人または会社に土地の所有権は認められていません。

 しかし、国は自由土地保有地(freehold land)、許可地(permit land)、宗教許可地(religious grant land)等の使用を認めています。土地の種類に応じて、期限の定めなく使用が認められていたり、90年、60年等の形で使用権の期限が規定されている土地も存在します。この場合、原則として使用権の期間は更新されることとなっています。かかる土地の使用権は、所有権とは異なるものの、賃借権とも異なるため、実務上かかる権利を所有権と称して取引がなされています。

不動産には、土地、建物、その他土地または土地に付着した物から生じる利益が含まれると定義されています(登記法2条6項)。ミャンマーでは、日本と異なり、原則として建物は独立した不動産所有権が認められるものではなく、土地の付着物として扱われ、原則として土地の所有者と建物の所有者は同一に帰します。例外として、コンドミニアム法上のコンドミニアムについては区分所有権の登記が認められ、かつ、外国人であっても40%を超えない範囲で取得することが認められます。もっとも、コンドミニアム法の適用を受ける物件は現時点ではごくわずかです。

その上で、外国会社または外国人は売買、贈与、質、交換または譲渡のいずれの方法によっても不動産を取得することはできないと規定されています。

なお、不動産譲渡制限法においては、外国会社はミャンマー国民によって管理もしくは支配されていない会社もしくはパートナーシップ、または過半数の株式もしくは持分がミャンマー国民に保有されていない会社もしくはパートナーシップと定義されています。しかし、実務上は、会社法上のミャンマー会社の定義を満たす必要があります。

なお、ミャンマーにおいても日本と同様に土地の種類が規定されており、農地、森林地、空地・休閑地・未開墾地、それら以外の土地が存在し、それら以外の土地上においてのみ商業ビルの建設が認められます。

(3) 不動産の賃貸借に関する規制

不動産の賃貸借に関し、外国人または外国会社に対して1年を超える賃借権は認められない旨規定されています。

例外として、投資法に基づく投資許可またはエンドースメントを取得した場合、外国会社であっても、最大50年の土地賃借が認められ、10年の延長が2回まで認められます。

また、経済特区において事業を行う場合には、経済特区法に基づき、最大50年の賃借が認められ、更に25年の延長が認められます。なお、土地の転貸借、譲渡担保権設定、交換又は譲渡を行う場合、管理委員会の許可を得る必要があります。

上記規制の関係上、長期の賃借が必要となる製造業、ホテル業などの事業においては投資法または経済特区法の活用を検討することとなります。

5.メキシコ

(1) 不動産法制度

メキシコにおける不動産の概念や売買、登記などの原則は連邦民法(Código Civil Federal)に規定されており、本稿ではその概略をご紹介します。なお、細目については州によって異なる場合もありえますので、ご留意ください。

1 不動産の考え方

日本においては建物と土地は別の不動産とされていますが、メキシコにおいては、建物は土地の一部とされています。そのため、基本的には、土地の所有者が、土地上の建物の所有者になります。

ただし、建物の一部を住戸ごとに購入することも可能です。つまり、登記(Registro Público de la Propiedad: RPP)された土地上の建物を区分ごとに分割することができ、このような分割も登記が可能となります。この建物の一区分の所有者は、他の区分の所有者の同意を要せずに、所有する区分を譲渡や担保に供することができます。

2 不動産取得手続の概要

不動産取得に際し売買契約を締結する際には、公証人に売買契約公正証書の作成を依頼し、その公正証書に署名後、その謄本をもって登記を行うこととなります。なお、取得金額がUMA日額(Unidad de Medida y Actualización、2021年度の日額は89.62ペソ)の365倍の額より小さい場合は、登記を省略することも可能です。なお、不動産登記簿はその不動産の所在地を管轄する登記所において第三者も閲覧可能です。閲覧の際は、その不動産の住所もしくは区画や街区、地籍コードもしくは以前の登録証(謄本または原本)などが必要となります。

また、後述のとおり、外国人がメキシコの土地を取得しようとする場合は、事前に外務省から許可を受ける必要があります。

(2) 不動産取得にあたっての外資規制

憲法(Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)および外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)によって、外国人や外国資本の企業による不動産取得に制限が設けられています。

1 所有権取得

メキシコにおいては、外国人は、(a)その財産に関してメキシコ国民と同等の扱いを受けること、(b)(a)に関して自国政府の保護を求めないこと、(c)これに違反した場合には当該権利等をメキシコ国に没収されることに同意することや、(d)外務省の許可を得ることを条件に、土地の所有権を取得することができます。また、法人の場合には、(a)乃至(c)を定款に含めることが求められます。

ただし、国境から100キロメートル、海岸から50キロメートルの範囲の制限区域内においては、外国人は土地を直接所有することができません。

なお、メキシコで設立されたメキシコ法人であっても、外国人排除条項(直接もしくは間接的にパートナーもしくは株主として外国人もしくは外国資本が参入する法人を受け入れないとする条項)を有せず、上記(a)乃至(c)の条項のみを有する法人の場合は、制限区域外の土地のほか、制限区域内の土地については居住以外の目的でのみ取得は可能となりますが、購入後60営業日以内に外務省に届出を行わなければなりません。

2 信託(Fideicomiso)

前述の通り、制限区域内の土地の所有については制限があるものの、所有以外の方法で使用・収益する権利を取得することは可能です。具体的には、Fideicomisoという信託形式によって、制限区域内の土地の使用収益権を取得する方法であり、外国人排除条項のないメキシコ法人あるいは外国人または外国法人が受益者、銀行が受託者となり、銀行が制限区域内に所在する不動産の管理を受託することになります。

この信託により、使用、賃貸などの収益、抵当に充てるなどの処分、相続や贈与も可能となります。信託期間は最大50年とされていますが、更新をすることも可能です。

6.バングラデシュ

(1) 不動産の所有

バングラデシュでは、個人の土地・不動産の所有権が認められています。外国人の不動産取得については、憲法や関連する法令で特に規制されていませんが、実務において、政府からの許可等を求められることも多く、法令上、明示的に認められていないことから、外国人による不動産の取得は困難といえます。例えば、バングラデシュ首都整備庁(RAJUK)は、その所有する不動産賃借権を外国人に売却することを禁止しているため、外国人は、RAJUKが所有する土地区画に係る賃借権を取得することはできません。RAJUKは、ダッカ大都市圏の計画と開発管理について責任を負う組織で、中央政府によって指名された委員長及び5人の委員による委員会によって管理されています。

一方、外資企業による不動産の購入は制限されていません。輸出加工区(EPZ)の場合は購入できませんが、長期(30年間)使用権を獲得することができます。

(2) 不動産業への外資規制

不動産業への外資参入について、特別な許認可制度はありませんが、土地登記簿の信用性が低いことなどから、権利関係を明らかにするために時間を要するなど事業を実施するうえでの課題はあります。

(3) 不動産関連の法令

1 1882年財産移転法

不動産又は動産の移転、不動産の売却、不動産の抵当及び税金、不動産の賃貸、交換、贈与等について規定しています。

2 1950 年国家収用及び賃借法

バングラデシュの土地における賃借者の利益及びその他の特定の利益の国家による収用について定め、かかる収用後に国家の下で保持される賃借及びその他の関連事項について規定しています。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

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・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年6月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

  1. 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう(借地借家法2条1号)。「地上権」とは、他人の所有している土地を、工作物等を所有するため使用する権利(民法265条)。土地の所有者の許諾がなくても、原則的に、貸与、建物の売却や担保の設定が可能。

  2. 借地権を有する者をいう(借地借家法2条2号)。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点で緊急事態宣言が実施されている都道府県は、東京都、京都府、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡県、北海道、岡山県、広島県、沖縄県で、6月20日までが実施期間となっています。また、まん延防止等重点措置は、埼玉県、千葉県、神奈川県、岐阜県、三重県(それぞれ6月20日まで)、群馬県、石川県、熊本県(それぞれ6月13日まで)を対象に実施されています。飲食店への休業又は時短要請、商業施設の休業要請、イベントの無観客での実施、在宅勤務の奨励など、各都道府県の自治体が措置を講じています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

(e) インド変異株指定国・地域についての水際対策

インド、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、モルディブ及びスリランカの6か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。

英国、デンマーク、カザフスタン、チュニジア、アイルランド、オランダ、ギリシャ、フィンランド、フランス、ポーランド、ヨルダンの11か国からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で3日間待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は147,039名です。この内、95,809名が回復し、累計死亡者数は954名となっています。また、非常事態宣言は、7月31日まで延長されています。

 ダークレッドゾーンであるバンコク、ノンタブリー、パトゥムターニー、サムットプラーカーンの4都県については、学校等の教育施設の閉鎖期間を、6月14日まで延長しています。

タイ政府は、5月15日、新たな措置を公表し、ダークレッドゾーンである4都県については、レストラン等での店内飲食が午後9時まで可能となりました。ただし、引き続き店内でのアルコール飲料の提供は不可であり、店内飲食者数は、通常営業時の25%以下とすることとされています。持ち帰りについては、午後11時まで可能です。

レッドゾーンに指定されたアユタヤ、チョンブリ等の17県については、レストラン等での店内飲食は午後11時まで可能です。ただし、店内でのアルコール飲料の提供は不可となっています。

また、原則として、公共の場ではマスクを着用することとされています。

(2) タイ入国後の隔離期間の変更

 タイ保健省は、タイ入国後の隔離期間を14日間から10日間に短縮することを発表していましたが、5月1日以降に入国許可証(COE)を取得した者のタイ入国後の隔離期間を、原則14日間に戻すことが発表されています。COVID-19の感染拡大防止が理由とされています。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連規制

 5月27日の新規感染者数は、7,857人でした。同日時点の累計感染者数は54万人を超え、アクティブ陽性者数は7万人に迫っています。3日連続で新規感染者数が過去最多を更新し、人口100万人当たりの感染者数がインドを超え、感染が急拡大しているといえます。

 現在、マレーシア全域で期間を6月7日までとして活動制限令(MCO)が施行されています(サラワク州については6月11日までの延長が発表されています)。MCO期間中は、警察に許可を得た場合の緊急の移動等を除き、州・地区間の移動が禁止されます。また、関係省庁によって承認されたすべての経済及びビジネスセクターは営業可能ですが、従業員の移動には、登録/営業承認書、従業員パス/雇用主による確認書の携行が必要となります。民間部門の出勤上限は、操業・管理を含め60パーセントとなっています。また、レストラン(店内飲食不可)、食料品店、コンビニエンスストア、日用品店、薬局等の商業施設の多くは午後8時までの営業となっています。

(2) 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発3日前にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。外出禁止令は22時~4時に緩和されました。デモは少なくなってきたものの、爆発事件が増加しています。

(2) 入国規制

 5月は13日にANA便が飛びました。6月は3日及び24日の救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1)COVID-19関連の規制状況

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週以降、最も深刻な赤を示す州が0州となり、5月24日の週には半数の州が緑となりました。また、医療従事者や60代以上の方へのワクチン接種に続き、50代の方や教育従事者や妊婦へのワクチン接種が始まっています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、6月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、メキシコ政府は、グアテマラ、ベリーズとの国境において3月19日から実施されている陸路での不要不急の移動制限について、5月21日までとしていた期限を6月21日まで延長することを発表しました。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染再拡大の予防措置として、4月からロックダウンを含む行動規制の措置を講じています。現在、県境を越えるものを含むすべての公共交通機関は、座席数の50%を上限として、乗客等のマスクの着用を条件に運行が可能になり、レストランの営業も、席数を半分にすることを条件に営業が再開できることになるなど、一部規制が緩和されていますが、マスク着用の徹底や緊急時以外の外出禁止等は継続されています。

(2) 入国規制

 バングラデシュ保健サービス局は、新型コロナウイルスの更なる感染蔓延を防ぐため、「すべてのバングラデシュ入国者(外国人含む)は、政府指定の施設(ホテル含む)にて、費用自己負担で14日間の施設隔離をしなければならない」としています。

第2.各国の広告規制の概要

1.日本

広告規制について、代表的な不当景品類及び不当表示防止法のほか、医薬品、食品、酒類、電気用品、たばこ等、商品によって異なる法令が適用されますが、そのなかでも特に重要と考えられる以下の法律の目的及び広告規制についてご紹介します。広告規制は複数の法令が適用されうることに加え、悪意のある不当な広告表示や相手に損害を与えた場合などは、刑法・軽犯罪法や民法が適用されることもあります。法律以外にも、規則やガイドライン等で表示の規制や要件が詳細に定められていますので、実際に広告表示を行う際には、これらの規制や要件を確認することが必要です。また、ここでは、主に広告に関する「禁止事項」を紹介していますが、商品や役務の種類ごとに「表示しなければならない事項」も定められていますので、注意が必要です。

  法律名
1 不当景品類及び不当表示防止法(景表法)
2
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法(旧:薬事法))
3 健康増進法
4 食品衛生法
5 不正競争防止法
6 特定商取引に関する法律(特定商取引法)

(1) 不当景品類及び不当表示防止法(景表法)

1 目的

 商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とするとされています(景表法1条)。

2 広告規制

不当な表示の禁止として、事業者を対象とし、供給する商品又は役務の取引について、以下のいずれかに該当する表示をしてはならないと規定されています(景表法5条)。

(a) 優良誤認表示(同条1号)

商品・サービスの品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示し、又は事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると示すもので、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる不当表示

例) 「カシミヤ100%」→実際は70%だった

(b) 有利誤認表示(同条2号)

商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示や競争業者に係るものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる不当表示

例) 「この機能は当社製品だけ」→実際は他社でも同様の機能を有する製品を販売していた

(2) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法(旧:薬事法))

1 目的

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下、「医薬品等」という)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とすると規定されています(薬機法1条)。

いわゆる「健康食品」「サプリメント」と呼ばれるものは、直接薬機法の規制対象とはなっていませんが、景表法や健康増進法などが適用されます。

2 広告規制

(1)の景表法が事業者を対象とした広告規制を定めているのに対し、薬機法では、「何人も」誇大広告や承認前の医薬品や医療機器等を広告することが禁止されています。

(a) 誇大広告等の禁止

何人も、医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならないと定められており(薬機法66条1項)、医薬品等の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することも含まれます(同条2項)。また、医薬品等に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはなりません(同条3項)。

(b) 特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限

特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品で、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、指定された医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する当該医薬品等の適正な使用確保のために必要な措置が取られることがありますので(薬機法67条1項)、確認が必要です。

(c) 承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止

何人も、薬機法に規定する医薬品等で、認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をすることはできません(薬機法68条1項)。

(3) 健康増進法

1 目的

 急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康の増進の重要性が著しく増大していることにかんがみ、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ることを目的としています(健康増進法1条)。

2 広告規制

何人も、食品として販売に供する物に関して広告等するときは、その健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をすることは禁止されています(健康増進法65条1項)。

(4) 食品衛生法

1 目的

 食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、国民の健康の保護を図ることを目的としています(食品衛生法1条)。

2 広告規制

食品、添加物、器具又は容器包装に関して、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしてはならない(食品衛生法20条)として、禁止されています。

(5) 不正競争防止法

1 目的

 事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(不正競争防止法1条)。

2 広告規制

不正競争防止法2条にて、差し止めや損害賠償請求の措置等の対象となる不正競争を掲げています。

  1. 他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸出入等して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不正競争防止法2条1項1号)
  2. 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸出入等する行為(不正競争防止法2条1項2号)
  3. 商品・役務若しくはその広告等にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量等、若しくは役務の質、内容、用途、数量等について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸出入等して、若しくはその表示をして役務を提供する行為(不正競争防止法2条1項20号)

例) 外国から輸入したいちごを、栃木県の地形と、とちおとめの写真を印刷した包装箱に入れ、原産地を表示しないまま、とちおとめをイメージさせるような形態で販売した。

(6) 特定商取引に関する法律(特定商取引法)

1 目的

 特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引(*1)、特定継続的役務提供に係る取引(*2)、業務提供誘引販売取引(*3)並びに訪問購入に係る取引をいう)を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(特定商取引法1条)。

*1 個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるかたちで、販売組織を連鎖的に    

拡大して行う商品・役務の取引のこと

*2 長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと。 一定の金額及び期間を超えるエステティックサロン、語学教室などが対象とされています。

*3 「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと。

2 広告規制

(a) 通信販売についての広告

販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、その広告に、商品若しくは権利又は役務の価格やその支払い時期及び方法、提供時期等の事項を表示しなければなりません(特定商取引法11条)。

(b) 誇大広告等の禁止

販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、その商品の性能又は権利若しくは役務の内容、当該商品若しくは当該権利の売買契約の申込みの撤回又は解除に関する事項等について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると誤認させるような表示をすることは禁止されています(特定商取引法12条)。

2.タイ

 タイにおける広告に関する基本的な規制として、消費者保護法(Consumer Protection Act B.E.2522)があります。概要は以下のとおりです。

  1. 広告規制

広告には、消費者や社会全体に悪影響を及ぼす可能性のある文言が含まれてはならないと定められています。そして、以下の様な記述は、消費者や社会全体に悪影響を及ぼす文言とみなされます(第22条)。

  1. 虚偽または誇張された記述
  2. 商品またはサービスに関して根本的な誤解を招くような記述(虚偽または誇張されたものであるか否か を問わない)
  3. 法や道徳に反することを直接的または間接的に支持したり、国の文化的衰退を助長する記述
  4. 国民の不和を引き起こし、または国民の団結を害する記述
  5. その他、省令で定められた記述

広告委員会が特定の商品が消費者にとって有害である可能性があると考え、当該商品を広告規制商品として規定した場合には、広告委員会は以下のような命令を出す権限を有します(第24条)。

    1. 広告委員会が定める条件に従い、使用方法や有害性に関する助言や警告を行った上で、当該広告を行うこと
    2. 当該商品の広告媒体の使用を制限すること
    3. 当該商品の広告を禁止すること

     2. ラベル規制

工場法に基づいて工場が販売のために生産した商品、および販売のために注文またはタイに輸入した商品は、ラベル規制商品とされます。また、その用途や性質から健康を害したり、身体的・精神的な被害をもたらすおそれのある商品等について、ラベル規制委員会が、そのような商品をラベル規制品として規定する場合があります(第30条)。

ラベル規制商品のラベルは、以下の記述がなされる必要があります(第31条)。

    1. 真実を表す記述であり、商品について根本的な誤解を生じさせる記述がないこと
    2. 以下の内容を示すこと
      1. 生産者または販売のための輸入者の名前または商標
      2. 生産地または輸入事業者の所在地
      3. 商品が何であるかについての認識を可能にする記述、および輸入品の場合には、生産国
    3. 消費者の権利を保護するための必要な記述、すなわち、価格、数量、使用方法、説明、注意、有効期限など

ラベル委員会は、ラベルが第31条に適合していないと判断した場合、事業者に対して、当該ラベルの使用を中止し、または当該ラベルに対して是正措置を講じることを命じることができます(第33条)。

    3.  その他の規制

 その他、食品、医薬品、化粧品、アルコール飲料等については、個別の法令によって規制がなされているため、それら法令に従って、広告やラベルを表示する必要があります。

3.マレーシア

マレーシアには、広告に関する規制の代表的なものとして消費者保護法(Consumer Protection Act 1999)、取引表示法(Trade Description Act 2011)、及び薬事(広告及び販売)法(Medicines (Advertisement and Sale) Act 1956)があります。

(1) 消費者保護法(Consumer Protection Act 1999)

1 概要

消費者保護法は、その名の通り消費者の権利利益を保護することを目的とする法律であり、法第2条(2)に掲げる取引(有価証券や先物取引等)以外の取引において一人以上の消費者に提供または供給されるすべての商品及びサービスに関して適用されます(消費者保護法第2条(1))。同法は、第2部で「誤解しやすい、または、詐欺的な行為、不実の表示、及び不公正な手段」の表示を規制しています。

2 規制の内容

消費者保護法10条は、以下のような虚偽(false)又は誤解を招く(misleading)表示をしてはならないものとしています。

  1. 商品が特定の種類、基準、品質、等級、数量、構成、スタイル、又はモデルであること
  2. 商品に特定の履歴又は使用歴があったこと
  3. サービスが特定の種類、標準、品質、又は数量のものであること
  4. サービスが、特定の人物又は特定の職業、資格、又は技術スキルを持つ人物によって提供されること
  5. 特定の人物が商品又はサービスを取得することに同意したこと
  6. 商品が新品又は再生品であること
  7. 商品が特定の時期に製造、生産、処理、又は再調整されたこと
  8. 商品又はサービスに、スポンサーシップ、認証、推奨、性能特性、付属品、効用、又は利点があること
  9. その人がスポンサー、承認、支持、又は提携を持っていること
  10. 商品又はサービスの需要について
  11. 条件、保証、権利、又は救済の存在、免責、又は効果について
  12. 商品の原産地について

同法8条は、偽り(false)、誤解を招く(misleading)、又は欺瞞的(deceptive)な表現等には、消費者を誤解(error)させる可能性のある表現等が含まれるものと定めています。

3 罰則

 法人が消費者保護法10条に違反した場合、同法25条に基づき、初犯につきRM250,000を超えない罰金が、2回目以降の違反につきRM500,000を超えない罰金が科されます。また、判決後も違反を継続する場合、1日あたりRM1000を超えない罰金が追加的に科されます。

(2) 取引表示法(Trade Description Act 2011)

1 概要

取引表示法は、取引表示法は、商品およびサービスの供給に関連する虚偽の説明および虚偽または誤解を招く記載、行為、および慣行を禁止することによって良好な取引慣行を促進することを目的として、禁止の対象となる虚偽表示ないし不実表示の態様を定めるほか、2011年取引表示法の違反への処罰について規定しています。

2 規制の内容

 同法6条(1)は取引表示を、表示方法を問わず、物品に関する以下の表示と定義しています。

  1. 性質又は目的
  2. 数量、長さ、幅、高さ、面積、容積、容量、重量、寸法、規格
  3. 製造、生産、加工又は修理の方法
  4. 組成
  5. 目的適合性、強度、性能、動作、精度
  6. 貴金属製品の品質基準
  7. 上記の項目に含まれていない物理的又は技術的特性
  8. 物品の有効期限
  9. いずれかの者による試験及びその結果
  10. 上記各項に記載された以外の品質
  11. いずれかの者による承認又はいずれかの者が承認した種類への適合
  12. 製造、生産、加工又は修理の場所
  13. 物品の製造、生産、加工又は修理を行った者
  14. 過去の所有者又は使用を含めた他の履歴

また、同法7条(1)は、虚偽取引表示(false trade description)を、重大な虚偽を含む取引表示を意味するものと定義しています。

3 罰則

 取引表示法5条は、法人が以下の行為を行った場合、初犯につきRM250,000を超えない罰金を、2回目以降につきRM500,000を超えない罰金を科す旨規定しています。

  1. 物品に虚偽取引表示を行った場合
  2. 虚偽取引表示がなされた物品を提供し又は提供を申し出た場合
  3. 虚偽取引表示がなされた物品を供給し、あるいは供給の目的で所持、保管又は管理した場合

(3) 薬事(広告及び販売)法(Medicines (Advertisement and Sale) Act 1956)

1 概要

薬事(広告及び販売)法は、3条(1)及び4B条(1)において、商品を疾患及び健康状態についての処置及び予防のための薬剤、器具、治療法とすることを意図した表現を用いた広告を規制しています。

医薬品広告委員会(Medicine Advertisements Board: MAB )が発行する一般公衆に対する薬剤及び医薬品の広告に関するガイドライン(GUIDELINE ON ADVERTISING OF MEDICINES AND MEDICINAL PRODUCTS TO GENERAL PUBLIC)によれば、この広告には、ラベルや包装紙も含まれるものとされています。

2 規制の内容

同法3条(1)は、以下の事項については、公的機関又は大臣の許可を得た者以外による上記広告を禁止しています。

  1. 別紙記載の疾病及び健康状態についての処置及び予防
  2. 避妊
  3. 腎臓又は心臓の健康状態又は機能の改善、若しくは性機能又は性的能力の改善
  4. 別紙記載の疾患の診断

 また、同法4B条(1)は、MABの承認がない限り、何人も商品を疾患及び健康状態(3条(1)で指定されたものを除く)についての処置及び予防のための薬剤、器具、治療法とすることを意図した表現を用いた広告をすることはできない旨を定めています。

3 罰則

同法3条又は4B条に違反した場合、同法5条に基づき、初犯につきRM3,000を超えない罰金又は1年を超えない期間の懲役若しくはその両方が、2回目以降の違反につきRM5,000を超えない罰金又は2年を超えない期間の懲役若しくはその両方が科される旨規定されています。

4.ミャンマー

ミャンマーには広告を規制する法律として主に競争法と消費者保護法があります。概要は以下のとおりです。

(1) 競争法(Competition Law)

競争法は2015年2月に公布され、2017年7月より施行されています。同法第23条において、事業者は不公平な競争を目的として、以下の広告活動を実施してはならないと規定されております。

  1. 他のビジネスと同様の種類の商品またはサービスを直接比較すること
  2. 他の商品の広告を模倣することにより顧客の誤解を招くこと
  3. 以下の事項のいずれかについて顧客に嘘または誤解を招く情報を放送すること
  4. 価格、数量、品質、実用性、デザイン、品種、パッケージ、製造日、耐久性、原産国、製造業者、製造場所、加工業者または加工場所
  5. 使用方法、サービス、保証期間
  6. 他の嘘または誤解を招く情報
  7. 既存の法律により禁止されている他の広告活動

上記に違反した場合、3年以下の懲役または1,500万チャットの罰金またはその双方が科せられる可能性があります。

(2) 消費者保護法(Consumer Protection Law)

消費者保護法は2019年3月に公布、施行されました。同法第63条において、事業者は以下の種類の広告を行ってはならないと規定されております。

  1. 商品の品質、数量、成分、使用方法、価格、サービス価格、商品またはサービスの配送時間に関連する詐欺的広告。
  2. 商品またはサービスの保証に関する詐欺的な広告
  3. 商品またはサービスに関する不正確な情報を含む広告
  4. 商品またはサービスを使用することによる危険性を通知しない広告
  5. 関係する人物の許可なく当該人物または出来事を使用した広告
  6. 既存の法律及び社会的倫理に遵守していない広告

上記に違反した場合、6カ月以下の懲役または200万チャット以下の罰金に科せられる可能性があります。

(3) 明文にない規制

情報省管轄のPress Scrutiny and Registration Division (PSRD)が、人々の健康及び道徳を乱すとして酒類及びタバコに関する広告を禁止していますが、公に発表する形での通知は出されておらず、あくまでも国営紙に向けて内部通達として出している形です。

5.メキシコ

(1)広告規制の法律および管轄機関

メキシコにおける広告規制は、単一の法律により規制されているのではなく、様々な観点から複数の法律により規制されています。連邦レベルでの主な法令としては、連邦消費者保護法(Ley Federal de Protección al Consumidor)、連邦経済競争法(Ley Federal de Competencia Económica)、品質基盤法(Ley de Infraestructura de la Calidad)、広告に関する保健一般法規則(Reglamento de la Ley General de Salud en Materia de Publicidad)、プロモーション及びオファーに関する規則(Reglamento sobre Promociones y Ofertas)、連邦産業財産保護法(Ley Federal de la Protección a la Propiedad Industrial)、関連するメキシコ公式規格(NOM)などが挙げられます。なお、メキシコにおける広告情報の監視と分析を管轄する主な機関は、規制する法律により管轄機関が異なり、主なものを挙げると、経済省や保健省、消費者保護検察局(PROFECO)、連邦保険リスク保護委員会(COFEPRIS)などとなります。

以上のように広告規制は様々な観点で行われていますが、ここでは、消費者保護の観点から連邦消費者保護法上の主な規制をご紹介します。

(2)連邦消費者保護法の規制

連邦消費者保護法における主な広告の規制は以下のとおりです。

・ 消費者に送付する広告には、サプライヤー(場合によっては、代理人やPROFECO)の氏名、住所、電話番号またはメールアドレスを表示しなければならない

・ マーケティングまたは広告以外の目的で消費者情報を使用すること、および広告を受け取らない意思を明示的に表明した消費者等に広告を送付してはならない

・ 商品、製品またはサービスに関する情報または広告は、真実であり、検証可能であり、誤解を招くような、または誤解を招く恐れのある文章、会話、音声、画像、標章、原産地呼称およびその他の記述を含んではならない※

・ 輸入された製品の情報は、その原産地及び必要に応じて修理可能な場所、使用方法及び保証について表示しなければならない

・ 製品またはそのラベル、包装、パッケージや広告の情報は、国内製、海外製を問わず、メキシコ国内の基準に基づき、スペイン語及びメキシコペソで表示しなければならない(ただし、他の言語や他国の基準に基づく情報の併記があっても良い)

・ 消費者にとって潜在的に危険であるか、環境に有害であるか、またはその危険性が予見できると考えられる製品またはサービスの場合、サプライヤーは、その有害な特性を警告する説明書を添付し、推奨される用途や使用方法及び推奨される方法以外での用途がもたらす可能性のある影響を明確に説明しなければならない

また、PROFECOは、1連邦消費者保護法の規定に違反する情報または広告の提供者、および必要に応じてそれを流布する媒体に対しそのような広告の一時停止を命令することができ、2連邦消費者保護法の規定に違反する情報または広告を修正するよう命じることができるとともに、3制裁を課すことができるとされています。制裁に関しては、違反した条項によりその重さが異なりますが、重大な違反と判断された場合は90日以内の全面的または部分的な事業所の閉鎖、および174,205.27ペソ から4,877,747.21ペソの罰金の制裁を科すことができるとされています。また、上述※の違反で特に重大な事案であるとみなされた場合は、前述の額、または、違反が行われた最終会計年度の、広告に含まれる商品、製品またはサービスの販売から得られる違反者の年間総収入の10%までの額の罰金が科されるとされています。

たとえば、2013年、PROFECOは、マクドナルドに対し、“Cajita Feliz”という商品で誤解を招くような広告を行ったとして、684,000ペソの罰金を科し、当該広告の停止を命じました。広告にデザートとしてフルーツが含まれていると誤認しうる不正確な画像と説明が使用されていた点を不適切と判断しています。

6.バングラデシュ

 バングラデシュの広告規制に関する法律として、以下が挙げられますが、特に(1)(2)については、バングラデシュ独立前の60年近く前の法律であり、現在の状況に応じた法令整備が期待されます。

  法律名
1 望ましくない広告規制法(1952年)
2 わいせつな広告禁止法(1963年)
3 喫煙及びたばこ製品使用管理法(2005年)
4 消費者権利保護法(2009年)

(1) 望ましくない広告規制法

 特定の疾病及び障害の治療に関する広告の発行を規制することを目的としています。

1 広告規制

 いかなる者も、広告という手段によって、性病、性的障害、月経不順またはその他の規定された病気、虚弱性または異常性を治療する又は治療を申し出ること、治療法を広告すること、治療法を処方することを申し出ること、またはその治療に関連してアドバイスを与えるまたは与えることを申し出ることは禁止されています(望ましくない広告規制法3条1項)。

また、あらゆる性病、性的障害、月経不順、その他の規定された病気、虚弱性又は異常性に対し、予防、治療または緩和する、それらに有用である、または使用される可能性がある、何らかの治療法、薬、薬用またはハーブ製剤、器具又はまじないを、推奨、主張、または暗示する、広告又は包装や容器等へのラベル又は一連の説明表示の配布又は印刷は禁止されています(同条2項)。

これらの規定に違反した場合は、当該広告を掲載した新聞やパンフレット等の没収や差し押さえに加え(望ましくない広告規制法4条(1))、1年以下の拘禁若しくは1,000タカ以下の罰金又はその両方に科せられます(望ましくない広告規制法5条)。

(2) わいせつな広告禁止法

 わいせつな広告を禁止する法律で、「わいせつ」とは、普通の気質の普通の人の心の不純な考えの官能性と興奮を動機づけ、そのような不道徳な影響に無防備な者を堕落、腐敗させる傾向があり、公の道徳に有害であるとみなされ、人の心の堕落において悪影響を生み出すと判断されるものを含むと定義されています(わいせつな広告禁止法2条(b))。

1 広告規制

いかなる者も、わいせつな広告の発行に関わってはならず、建物又は公共の場所の所有者、占有者又は管理者は、わいせつな広告であると知りながらその掲載を認めてはならないと規定されています(わいせつな広告禁止法3条(i)(ii))。違反した者は、当該広告を掲載した文書その他の物の没収や差し押さえに加え(わいせつな広告禁止法5条)、6か月以下の拘禁(再犯の場合は1年以下))若しくは罰金又はその両方が科せられます(わいせつな広告禁止法4条(a)(b))。

(3) 喫煙及びたばこ製品使用管理法

 喫煙及びたばこ製品の生産、使用、販売及び購入、広告を管理することを規定した法律です。バングラデシュは、WHOの「たばこの規制に関する枠組条約(FCTC)」に署名しており、同条約の規定を施行するために、喫煙、たばこ製品の生産、使用、販売、購入及び広告を規制する必要があると前文に記載されています。

1 広告規制

 広告に関して、以下の行為が禁止されています。

  1. 映画館、政府及び非政府のラジオやテレビチャンネルでたばこ製品を広告したり、写真を展示したりすること(喫煙及びたばこ製品使用管理法5条1項(a))
  2. たばこ製品の広告を含むフィルム、ビデオテープ、その他のものを販売または販売させること(同項(b))
  3. バングラデシュで発行された本、雑誌、チラシ、看板、新聞、または印刷物に広告を印刷、発行、または発行させること(同項(c))。
  4. たばこ製品のブランド名、色、ロゴ、商標、記号、シンボル、または広告を含む小冊子、チラシ、または文書を配布または一般に提供すること(同項(d)。なお、たばこ製品を販売する小売店又は業者は対象に含まれません。

これらの規定に違反したものは、3か月以下の交換若しくは1,000タカの罰金又はその両方を科せられる(同条5項)。

(4) 消費者権利保護法

 消費者の権利の保護、消費者の権利行使に反する行為の防止、およびそれに関連する事項について規定しています。消費者の権利行使に反する行為のひとつに「商品又は役務を販売する目的で不実又は不正な広告によって消費者を欺くこと」が含まれており(消費者権利保護法2条(20)(d))、その行為をした者は、1年以下の拘禁若しくは20万タカ以下の罰金又はその両方が科せられます(消費者権利保護法44条)。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

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・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

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・佐賀(TNY国際法律事務所)
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・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

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・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

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・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

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・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

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・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

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・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年5月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

4月23日に、東京都、京都府、大阪府、兵庫県を対象として、緊急事態宣言が発出されました。また、まん延防止等重点措置の区域の追加及び期間の変更が決定され、現在、宮城県、沖縄県、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、愛媛県が実施区域に指定されています。緊急事態宣言、まん延防止等重点措置ともに実施期間は5月11日までとなっています。飲食店への休業又は時短要請、商業施設の休業要請、イベントの無観客での実施、在宅勤務の奨励、学校の部活動などの制限・自粛要請など、各都道府県の自治体が措置を講じています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 新たな水際対策(4月28日)

「新型コロナウイルス変異株流行国・地域」に、新たに以下の3か国・地域を指定されました。

(1) 米国(テネシー州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州)

(2) インド

(3) ペルー

上記3か国・地域からのすべての入国者及び帰国者については、これまでは自宅等で入国後14日間の待機としてきたところですが、今後は、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。その上で、陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の残りの期間を、自宅等で待機することになりました。

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は63,570名です。この内、35,394名が回復し、累計死亡者数は188名となっています。また、非常事態宣言は、5月31日まで延長されています。

 4月25日、バンコク都は、5月9日までのバンコク都内の施設の一時的閉鎖に関する告示及び、外出時の常時マスク着用を義務付ける告示を発表しています。

1 施設の閉鎖

学校等の教育施設、バーやカラオケ等の娯楽施設、入浴施設、映画館、遊技場、フィットネス場、博物館、美術館、図書館、託児所、介護施設、ムエタイ場、ネイル店、ダンス場、スパ、マッサージ店、貸会議室、公園、スポーツ施設、ゴルフ場、美容室(洗髪、カット、セットのみ可能)等が閉鎖となっています。

2 飲食店、屋台、フードコート等は午後9時まで店内飲食可能、午後11時まで持ち帰り形式での販売可能。

酒類の店内消費は禁止。

ショッピングセンター等は午後9時まで営業可能。

コンビニエンスストア、スーパー等は午後10時まで営業可能。営業開始時間は午前5時以降。

3 外出時は、マスクを着用すること。違反者には、2万バーツ以下の罰金が科されます。

(2) 4月以降のタイ入国後の隔離期間の短縮

3月26日、タイ保健省は、タイ入国後の隔離期間を14日間から10日間に短縮することを発表しています(COVID-19の変異株が確認されている国からの入国者については、隔離期間短縮の対象外)。4月1日以降、Fit to Flyは不要となり、渡航72時間以内発行のPCR検査結果(陰性証明書)のみが必要となります。隔離期間中は、引き続き2度のPCR検査が実施されます。

 また、ワクチンパスポート所持者について、以下のとおり発表がなされています。

・タイ到着以前の期間(14日前~3カ月前)にワクチンパスポートを取得、かつ陰性証明書あり

隔離期間7日間、隔離期間中1度のPCR検査実施

・ワクチンパスポートのみ(陰性証明書なし)

隔離期間7日間、隔離期間中2度のPCR検査実施

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

 4月28日のCOVID-19の新規感染者数は、3,142人であり、2か月ぶりに3,000人を上回りました。アクティブ感染者数は2万6,719人で、類型感染者数は40万1,539人となっています。

 また、以下の地域の別にMCO(活動制限令)、CMCO(条件付き活動制限令)、RMCO(回復のための活動制限令)が5月17日まで延長される旨の公表がありました。

1 MCO(活動制限令)

クランタン州全域、サバ州のLahad Datu地区(5月8日まで)、ジョホール州のMukim Endau 及び Mukim Triangのみ(5月3日まで)

2 CMCO(条件付き活動制限令)

スランゴール州、ジョホール州(Mukim Endau 及び Mukim Triangを除く)、ペナン州、クアラルンプール、ヌグリ・スンビラン州(スレンバン地区のみ)、ケダ州(クアラ・ムダ地区のみ)、サラワク州、サバ州(一部地域を除く)

3 RMCO(回復のための活動制限令)

 ペルリス州、パハン州、トレガンヌ州、マラッカ州、ペラ州、ケダ州(クアラ・ムダ地区を除く)、ヌグリ・スンビラン州(スレンバン地区を除く)プトラジャヤ、ラブアン

4 CMCO及びRMCO対象地域での規制(SOP)

(a) CMCO対象地域

同一のCMCO対象地域内での移動は許可され、異なるCMCO対象地域、MCO及びEMCO対象地域への移動は警察の許可を得れば認められます。また、スランゴール州、クアラルンプール及びプトラジャヤは一つの地域とみなされるため、これらの地区間の移動は認められます。

スーパーマーケット、ショッピングセンター、レストラン、屋台、市場、ガソリンスタンド、ドラッグストアなど深夜12時までの営業が許可されます。ただし、ラマダン期間中は全ての飲食店は午前6時まで営業が許可されます。

(b) RMCO対象地域

州をまたがない同対象地域内の移動は認められ、MCO、CMCO及びEMCO対象地域への移動は警察の許可を得れば認められます。

レストラン等の飲食店、市場、ガソリンスタンド、ドラッグストア等の施設は関係当局の営業許可の範囲内で営業が許可されます。ただし、ラマダン期間中は全ての飲食店は午前6時まで営業が許可されます。

(2) 入国規制

2020年3月18日から、外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能。)。

例外的に入国が許可される外国人のマレーシア入国に際しては、政府指定の隔離センターでの10日間の隔離等、回復のための活動制限令(RMCO)の全ての規定を遵守する必要があるほか、類型毎に以下の条件を満たす必要があります。

1 MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国に際しては、以下の措置をとることが条件となる。

  1. 出発前の所定のオンラインフォームの提出及びマレーシア入国管理局からの許可受領
  2. マレーシア到着時のPCR検査結果が陰性であること
  3. 隔離
  4. 接触者追跡アプリのダウンロード

※隔離については、マレーシアへの出発前にPCR検査(スワブ検査)を受検し陰性証明を取得した者は7日間、取得していない者は10日間の強制隔離となっています。

2 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者。)に当たっては、マレーシア到着前到着時のPCR検査結果が陰性であること、入国後の隔離等が条件となる。

3 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国に際しては、マレーシア到着時のPCR検査結果が陰性であること、接触者追跡アプリのダウンロード、当局への事前登録等が条件となる。

4 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族(累積感染者数が15万人を超える国(※2020年9月7日時点で15万人以上の国を指し、米国、インド、ブラジル等23か国。なお、日本は含まれていない。)からの渡航者を除く。)は、入管通過直後に必要なビザ申請等を行うことで入国を許可する。

5 永住者は、事前登録申請なしでの入国を許可する。

(3) 変異株の影響による入国規制

この他、4月24日、イスマイル・サブリ上級大臣兼国防大臣は、国防省のツイッター上で、変異株(Variant of Concern、VOC)の流行が確認されている国からの渡航者に対する規制(SOP)を発表しました。

これによると、変異株ウィルスの流行が確認されている国からの入国時の隔離期間は10日から14日になるとのことです。そして、大臣は、世界保健機関(WHO)は、現在、変異株について最初に1南アフリカで報告されたもの、2最初にイギリスで報告されたもの、3最初にブラジル・日本で報告されたものの3種類があると述べています。この規制に関する詳細な情報はまだ発表されていませんが、日本もこの規制対象国に含まれる可能性があります。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。COVID-19関連の規制ではなく、クーデター関連の規制として、一部の地区へ戒厳令が出されたことに伴う19時~5時の外出禁止令、5名以上の集会禁止等が国軍から出されています。これに対してCRPHからも徴税の半年間停止、電気代支払停止等の法令が出されています。

(2) 入国規制

 4月は1日及び22日にANA便が飛びました。5月は13日に救援便が運航予定ですが、現在、CDMの関係で空港で燃料補給が出来ないことやインターネット遮断等の影響から飛行機の就航数が非常に減っています。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は今後の日本からの救援便に日本人搭乗枠が認められるか次第となります。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19新規感染確定者数は、全国的に減少の傾向にあり、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週以降、最も深刻な赤を示す州が0州の状態が続いています。また、医療従事者や60代以上の方へのワクチン接種に続き、50代の方へのワクチン接種の事前登録が始まりました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、5月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、グアテマラ、ベリーズとの国境において3月19日から4月21日の間実施するとしていた陸路での不要不急の移動制限について、政府は、5月21日まで延長することを発表しました。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染再拡大の予防措置として、4月5日からロックダウンの措置を講じており、14日からは更に強い下記の措置が講じられています。5月5日までの措置とされていますが、これまで1週間のロックダウンが、繰り返し延長されており、5日以降も延長の可能性があります。

  1. すべての政府系機関および政府系機関に準ずるもの、民間の事務所・金融機関は閉鎖される。すべての職員は自らの居所に留まらねばならない。ただし、空港、港。陸の通関施設とその関係の事務所は措置の対象外。
  2. 最高裁判所は、裁判所についての命令を発出する。
  3. すべての公共交通機関(道路・水路・鉄道と国内および国際航空便)は停止される。ただし、商品の輸送、生産活動、緊急のサービスのための交通は措置の対象外。
  4. 工場及び製造業は感染対策を講じた上で営業することができる。ただし、従業員の通勤にあたっては職場が手配した交通手段を用いなければならない。
  5. 治安、緊急のサービス、例えば肥料・種苗・農薬・農業機器などの農業製品、穀物及び食料品、救援活動、保健サービス、新型コロナウイルスのワクチン接種、電気、水道、ガス、燃料、消防、港湾サービス(陸上、河川、海上)、電話、インターネット(公営・民営を含む)、マスメディア(紙媒体・オンラインを含む)、民間警備、郵便、及びその他の緊急のサービス・物資の供給について、そのための職員と交通は措置の対象外とされる。
  6. 薬や日用品の購入、医療サービス、遺体の埋葬等の緊急の場合を除き、いかなる場合にも屋外に出てはならない。ただし、ワクチンカードを提示すればワクチン接種のために外出することができる。
  7. ホテル・レストランその他の飲食店は正午から午後7時まで及び午前0時から午前6時まで、持ち帰りまたはオンラインでのみ営業できる。ショッピングモールなどの商店は閉鎖される。
  8. 生鮮食料品・生活必需品を扱う店は午前9時から午後3時まで感染対策を講じた上で営業できる。
  9. ボロ米の収穫のための労働者の交通手段について、関係の県が協力を行う。
  10. すべての県及び地域の行政機関は本件措置の適切な実施のための対応を行う。治安維持部隊は通常のパトロールを強化する。
  11. 保健サービス総局の長は県の行政機関及び警察に法的措置を講じるための権利を付与する。
  12. 感染対策を講じた上でのジュンマとタラビのお祈りのための集会については宗教省が命令を発出する。
  13. 本件措置の適切な運用のため、各省・局は必要に応じ補完的な措置を講じることができる。

(2) 入国規制

バングラデシュ民間航空局(CAAB)は、4月14日からの1週間、バングラデシュ発着のすべての国際線フライトを運航停止すると発表し、その措置は5月5日まで延長されています。

  1. バングラデシュ発着の全ての国際旅客便を停止する。
  2. 措置の対象は、一部の特別許可便を除く商用旅客便で、医療目的や人道支援目的のフライト、貨物便などは今回の規制の対象外。

 また、バングラデシュ保健サービス局は、新型コロナウイルスの更なる感染蔓延を防ぐため、「すべてのバングラデシュ入国者(外国人含む)は、政府指定の施設(ホテル含む)にて、費用自己負担で14日間の施設隔離をしなければならない」と発表しました。4月20日時点で政府が指定している施設一覧は、こちらをご確認ください。

 

第2.各国の独占禁止法(競争法)の概要

1.日本

(1) 概要

「独占禁止法(正式名称:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、以下「独禁法」」は、昭和22年7月に施行され、これまで経済や産業構造などの変化に伴って強化・改正されてきました。同法は、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業活動を盛んにし、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としています(独禁法第1条)。独占禁止法を運用するための行政機関として、公正取引委員会が設置されました(独禁法第27条)。

(2) 独占・寡占

1 私的独占の禁止(独禁法第3条、第2条第5項)

事業者が単独又は他の事業者と手を組み、不当な低価格販売、差別価格による販売などの手段を用いて、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為は「排除型私的独占」として禁止されています。また、有力な事業者が、株式の取得、役員の派遣などにより、他の事業者の事業活動に制約を与えて、市場を支配しようとすることも「支配型私的独占」として禁じられています。

また、寡占状態にある産業において、一部の事業者が特に大規模であるなどの理由で、競争が有効に機能していない場合、独占的な状態にあるとして、競争を回復するための措置が命じられることがあります。

(3) カルテル・入札談合

1 不当な取引制限の禁止(独禁法第3条、第2条第6項)

 事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決め、競争を制限する行為は「カルテル」として禁止されています。公共工事や物品の公共調達に関する入札の際、入札に参加する事業者たちが事前に相談して、受注事業者や受注金額などを決めてしまう「入札談合」も不当な取引制限のひとつとして禁止されています。

2 国際カルテルへの参加禁止(独禁法第6条)

国内の事業者がカルテルなどを内容として、海外の事業者と国際的協定を結ぶことは禁止されていま す。例えば、国内の事業者と海外の事業者の間でそれぞれの商品をお互いの国に輸出しないという市場 分割カルテルが行われた場合、競争を実質的に制限することになるため、違反行為となります。

3 事業者団体の活動規制(独禁法第8条、第2条第2項)

カルテルは、事業者団体の活動として行われる場合が少なくありません。例えば、事業者団体がその分野における事業者の数を制限して新規参入を認めなかったり、価格の引上げ・数量の制限、取引相手・販売地域の割当てを指示するなど、事業者の自主的な事業活動を不当に制限する行為は禁じられています。

(4) 不公正な取引方法(独禁法第19条、第2条第9項)

   「不公正な取引方法」とは、独禁法第2条第9項で定められる行為、及び同項第6号に基づく公正取引委員会の告示により指定される行為(以下、「一般指定」)をいいます。

1 取引拒絶(独禁法第2条第9項第1号、一般指定第1項、第2項)

 新規事業者の開業を妨害する目的などで、複数の事業者が共同で特定の事業者との取引を拒絶したり、第三者に特定の事業者との取引を拒絶させたりする行為は禁止されています。また、小売店に販売価格を指示して守らせるなど、事業者が単独で取引拒絶を行うような場合も違法となります。

2 差別対価・差別取扱い(独禁法第2条第9項第2号、同項第6号イ、一般指定第3項、第4項、第5項)

 取引先や販売地域によって、商品やサービスの対価に不当に著しい差をつけたり、その他の取引条件で差別することは禁じられています。例えば、有力な事業者が競争相手を排除する目的で、競争相手の取引先に対してのみ廉売をして顧客を奪ったり、競争相手と競合する地域でのみ過剰なダンピングを行ったりするような行為がこれに該当します。

3 不当廉売(独禁法第2条第9項第3号、同項第6号ロ、一般指定第6項)

 商品を不当に低い価格で、継続して販売し、他の事業者の事業活動を困難にさせることは禁じられています。ただし、公正な競争手段としての安売り、キズ物・季節商品等の処分等正当な理由がある場合は、違法とはなりません。

4 再販売価格の拘束(独禁法第2条第9項第4号)

 指定した価格で販売しない小売業者等に経済上の不利益を課したり、出荷を停止したりするなどして小売業者等に自社の商品を指定した価格で販売させることは、原則として禁止されています。また、指定した価格で販売することを小売業者等と合意して、自社の商品を指定した価格で販売させることも禁じられています。ただし、書籍、雑誌、新聞、音楽用CDなどの著作物については、例外となっています。

5 優越的地位の濫用(独禁法第2条第9項第5号、同項第6号ホ、一般指定第13項)

 取引上優越的地位にある事業者が、取引先に対して不当に不利益を与える行為は禁じられています。下請取引で問題が起きる場合が多く、独占禁止法の補完法の「下請法」(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)で規制されています。下請法は、下請代金の支払遅延や減額など、下請事業者に対する親事業者の不当な行為を規制しています。幅広い事業分野における親事業者の禁止行為を明確に定め、下請事業者を守る法律となっています。

6 抱き合わせ販売(一般指定第10項)

 商品やサービスを販売する際に、不当に他の商品やサービスを一緒に購入させる行為は、取引の強制に当たりますので禁止されています。

7 排他条件付取引(一般指定第11項)

 自社が供給する商品のみを取り扱うことを条件として取引を行うなどにより、不当に競争相手の取引の機会や流通経路を奪ったり、新規参入を妨げるおそれがある場合は、違法となります。

8 拘束条件付取引(独禁法第2条第9項第4号、同項第6号二、一般指定第12項)

 取引相手の事業活動を不当に拘束するような条件を付けての取引は禁止されています。販売地域や販売方法などを不当に拘束するような場合がこれに該当します。

9 競争者に対する取引妨害(独禁法第2条第9項第6号ヘ、一般指定第14項)

 事業活動に必要な契約の成立を阻止したり、契約不履行へと誘引する行為を行ったりするなどして、競争者の事業活動を不当に妨害することは禁じられています。

10 不当顧客誘引(独禁法第2条第9項第6号ハ、一般指定第8項、第9項)

 自社の商品・サービスを虚偽・誇大な表示や広告で不当に顧客を誘引したり、過大な景品を付けて商品を販売したりするようなことは、買い手の適切な商品選択を妨げるため禁止されています。

11 不当高価購入(一般指定第7項)

 競争相手を妨害することを目的に、競争相手が必要としている物品(原材料など)を市場価格を著しく上回る価格で購入し、入手困難にさせるような行為は禁じられています。

12 競争会社に対する内部干渉(一般指定第15項)

 ある事業者が、競合関係にある会社の株主や役員にその会社の不利益になる行為を行うよう不当に誘引したり、そそのかしたりするようなことは禁じられています。

(5) 届出・報告の義務

会社の株式取得、合併、分割、共同株式移転、事業の譲受けなどによって、競争が実質的に制限されることとなる場合、こうした企業結合は禁止されています(独禁法第9条第1項、第10条第1項、第15条第1項、第15条の2第1項、第15条の3第1項、第16条第1項)。この他、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立、銀行及び保険会社による議決権保有の制限も規制されています(独禁法第11条第1項)。

 一定規模以上の会社が株式取得などにより企業結合を行う際、公正取引委員会に届出・報告をする必要があります(外国会社についても同様です。)株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業等の譲受けの届出、一定の会社(一定の総資産を超える会社及びその子会社等)の事業報告・設立の届出が該当します(独禁法第10条第2項、第15条第2項、第15条の2第2項、第15条の3第2項、第16条第2項)。

(6) 公正取引委員会による措置

 独占禁止法に違反する行為が行われている疑いがある場合、公正取引委員会は、事業者への立入検査、事 情聴取などを行い、調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められると、違反を行っていた事業者に対して排除措置を採るよう命じています(独禁法第7条第1項、同条第2項、第8条の2第1項ないし第3項、第17条の2第1項、同条第2項、第20条1項、同条第2項)。また、カルテルなどの悪質な行為については、課徴金や刑事罰などの厳しい措置が採られます(独禁法第7条の2、第20条の2ないし第20条の6)。

(7) その他ガイドライン

 公正取引委員会では、市場の規模や環境の変化に合わせ、各種ガイドライン等を取りまとめて公表しています。

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン

独占禁止法では、取引の発注者が事業者である場合、下請法では、取引の発注者が資本金 1,000 万円超の法人の事業者である場合、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引には独占禁止法や下請法を広く適用することが可能です。 他方、これらの法律の適用に加えて(又は代わって)、フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上 「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用されます。同ガイドラインでは、フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項(報酬、発注、成果物の取扱い、取引条件等)、仲介事業者が遵守すべき事項、「雇用」に該当する場合の判断基準等について定められています。

スタートアップとの事業連携に関する指針

事業連携によるイノベーションを成功させるため、スタートアップと連携事業者との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを目的としており、特にNDA(秘密保持契約)、PoC契約(技術検証)、共同研究契約及びライセンス契約の4つの契約において生じる問題事例とその事例に対する独占禁止法上の考え方を整理するとともに、それらの具体的改善の方向として、 問題の背景及び解決の方向性を示したものです。

2.タイ

 タイでは、1999年に取引競争法(Trade Competition Act B.E. 2542)が施行され、その後、2017年に改正がなされています(Trade Competition Act B.E. 2560)。取引競争法は、(1)支配的地位の濫用、(2)企業結合、(3)競争制限的行為、(4)不公正な取引方法を規制しています。概要は以下のとおりです。

  1. 支配的地位の濫用

「支配的地位を有する事業者」とは、以下のいずれかの条件に当てはまる事業者をいいます。

    1. 市場における50%以上のシェア率を有し、前事業年度の売上額が10億バーツ以上の事業者
    2. 市場シェア上位3社の内の1社であり、上位3社の前事業年度の市場シェア率合計が75%以上であり、当該各事業者の前事業年度の売上額が10億バーツ以上であること

上記条件に当てはまる事業者は、市場における支配的地位を以下の方法で行使することはできません。

  1. 商品やサービスの仕入れ価格や販売価格を不当に固定または維持すること
  2. 取引先である他の事業者に対して不当な条件を課すことにより、サービス、生産、物品の購入・販売を制限したり、物品の購入・販売、サービスの受領・提供、他の事業者に債権を求める機会を制限したりすること
  3. 正当な理由なく、サービスの提供、生産、販売、配送、輸入を停止、削減、制限したり、市場の需要よりも数量を減らす目的で商品を破壊したり、毀損させたりすること
  4. 正当な理由なく、他人の事業活動に介入すること
  5. 企業結合
    1. 取引競争委員会の通知に定められた基準に基づき、市場における競争を実質的に減少させる可能性のある企業結合を行う事業者は、当該企業結合の日から7日以内に、その結果を取引競争委員会に通知しなければなりません(事後届出)。
    2. 市場において独占を引き起こし、又は結果として支配的な地位を得る可能性のある企業結合を行おうとする事業者は、取引競争委員会の許可を得なければなりません(事前届出)。

ここでの「企業結合」には、以下のものが含まれます。

  1. 合併
  2. 他の事業者の方針、事業運営、方向性、経営を支配するために、他の事業者の資産の全部または一部を取得すること
  3. 他の事業者の政策、経営管理、指揮、管理を統制するために、直接的または間接的に、他の事業者の株式の全部または一部を取得すること
  4. 競争制限的行為
    1. 同一市場で競合する事業者は、以下の方法で市場の競争を独占、縮小、制限する行為を共同で行ってはなりません。
      1. 商品やサービスの価格に影響を与える仕入れ価格や販売価格、取引条件を、直接的にも間接的にも固定すること
      2. 各事業者が生産、購入、販売、提供する商品やサービスの量を制限すること
      3. 競売や入札で一方が勝つために、故意に合意や条件を設定すること
      4. 各事業者が商品やサービスを販売したり、購入したりする地域を割り当てたり、購入者や販売者を割り当てたりすること
    2. 事業者は、以下の方法で市場の競争を独占、縮小、制限する行為を共同で行ってはなりません。
      1. 同一市場の競争相手ではない事業者間で、(3)1(a), (b), (d) に規定する条件を設定すること
      2. 商品またはサービスの品質を、以前に生産、販売、または提供されたものよりも低い状態にすること
      3. 同一の商品を独占的に販売したり、同一サービスを提供したり、同一種類の商品を独占的に販売する者を指名したり、委託したりすること
      4. 合意された内容に従うように、商品やサービスの購入や生産に関する条件や行為を設定すること
      5. 取引委員会の通知に定められたその他の方法で共同契約を結ぶこと
  5. 不公正な取引方法

事業者は、次のいずれかの方法により、他の事業者に損害を与える行為をしてはなりません。

    1. 他の事業者の事業活動を不当に阻害すること
    2. 優良な市場原理や交渉力を不当に利用すること。
    3. 不当に取引条件を設定し、他者の事業活動を制限または阻止すること
    4. その他、取引委員会の通知に定める行為を行うこと
  1. 罰則

  取引委員会は、当該行為が違反行為であると信じるに足る証拠を有する場合、当該事業者に対し、当該行為の停止、中止、または修正もしくは変更を命令する権限を有します。また、違反類型毎に、刑事罰、行政罰が規定されています。

3.マレーシア

マレーシアでは、競争法(Competition Act 2010)が2012年1月に施行され、また同法の施行機関である競争委員会について規定した競争委員会法(Competition Commission Act 2010)が2011年1月に施行されています。同委員会は、競争法の考え方を明らかにするためにガイドラインを制定しています。

(1) 反競争的合意

競争法4条は、市場での競争を著しく妨げ、制限し又は歪曲する目的若しくは効果がある限り、企業間の水平的又は垂直的合意は禁止されると定めています。

1 水平的合意

 競争法は、以下の目的を有する水平的合意は、市場での競争を著しく妨げ、制限し又は歪曲する目的若しくは効果があるものとみなしています。

  1. 間接又は直接に売買価格その他取引条件を拘束すること
  2. 市場又は供給元を分け合うこと
  3. 生産、市場への販売経路、市場へのアクセス、技術、技術的発展、投資への制限又は支配
  4. 入札談合行為を行うこと

2 垂直的合意

垂直的な合意については、水平的合意と異なり、みなし規定は置かれていません。

 もっとも、競争委員会作成のガイドラインは、反競争的効果が問題となり得る行為として以下の行為を挙げています。

  1. 再販価格の維持
  2. 供給品の全て又はほとんどを特定の供給者から購入しなければならない旨を定める合意
  3. 地理的範囲における独占販売を定める合意
  4. 顧客の独占的割当を定める合意
  5. 小売販売網の利用にかかる費用の前払い

3 免責

ある合意が反競争的な合意にあたるとしても、当該合意が以下の要件を充足する場合には、合意の当事者は免責を受けることができます。

  1. 当該合意が重大かつ確認可能な技術上、効率上又は社会的な便益を直接的に引き起こすこと
  2. 当該合意が競争を妨げ制限し又は歪曲する効果を有しない限り当該合意の当事者は当該便益を合理的に提供することができないこと
  3. 競争への有害な影響が便益と均衡していること
  4. 当該合意商品及びサービスに関する重要な部分についての競争を完全には排除するものではないこと

(2) 支配的地位の濫用

競争法10条は、企業が単独又は共同で支配的地位を濫用することを禁止しており、支配的地位の濫用にあたる行為の例として以下の行為を挙げています。

  1. 直接又は間接に不公正な購入・販売価格その他の不公正な取引条件を取引相手に課すこと
  2. 製品、販売経路又は市場へのアクセス、技術開発、投資を制限・支配することにより消費者を害すること
  3. 特定の企業、グループ、企業部門に対して供給を拒絶すること
  4. 以下の場合に、他の取引相手との間の取引と同等の取引について異なる条件を適用すること
  • 新規参入又は既存の競争相手による拡大若しくは投資を阻害する
  • 支配的地位を有する企業よりも効率性の低い既存の競争相手を市場から排除する又は深刻な損害を与える
  • 支配的地位を有する企業が参加している市場又はその上流若しくは下流の市場において競争相手を害する
  1. 契約の主題とは関係のない慣習に基づく又はその性質に基づく付随的な条件についての他方当事者の同意を契約締結の条件とすること
  2. 競合他社に対する略奪行為
  3. 合理的な商業的理由を有しないにも拘わらず支配的地位にある企業が、競争相手が必要とする供給が十分ではない中間財又は資源を買い占めること

もっとも、支配的な地位にある企業が、合理的な商業的理由をもって行動することや、競合相手の市場参入又は市場行動に対して合理的な商業的対応措置を講じることは禁止されていません。

また、一般的には、マレーシアにおける関連市場のシェアが60%を超える事業者は、支配的地位を有するとされていますが(支配的地位の濫用に関するガイドライン第2条第2項)、支配的地位の判断にあたっては、市場の参入の容易性等の他の要素も考慮されます(同ガイドライン第2第14項)。

4.ミャンマー

ミャンマーの競争法は、2015年2月に公布され、2017年2月より施行されました。その後、2017年10月に商業省より競争法施行規則が施行されています。2018年10月31日に2018年106号通知で競争委員会が設置されています。競争法は、1競争を制限する行為、2独占、3不公正な競争、4一定の事業間の共同行為を規制しており、概要は以下のとおりです。

(1) 目的及び定義

本法は、公平な競争を排除することを目的とした経済活動組織による独占又は価格操作によって生じる不公平を防ぎ消費者を保護すること、国内外の取引及び経済発展における不公平な競争を規制すること、市場での支配的な立場を利用した独占の防止等を目的としています。本法における「競争」とは、商品及びサービスについて、より多くの顧客、シェア及び市場での影響力を獲得するための経済活動における競争であると定義されています。また、「経済活動」とは、製造、分配、購入、販売、輸入、輸出及び交換等の事業又はサービスと定義されており、事業全般が対象に含まれることとなります。

(2) 競争を制限する行為

「競争を制限する行為」は、市場における経済活動組織の競争を減少又は阻害することを目的とした行為であり、競争を制限する合意、市場での支配的立場の濫用及び独占が含まれると定義されています。具体的には競争を制限する合意、支配的立場の利用等が禁止されています。但し、消費者の利益を意図したと認められる一定の場合には、期限を特定した上で例外として認められることがあります。

(3) 独占

市場を独占するとして、以下の行為等が禁止されています。

  1. 商品の購入価格、販売価格又はサービス料を規制すること
  2. 価格統制を目的とした製造またはサービスの制限、購入又は販売過程における機会の制限、事業者が強制的に遵守しなければならない規制を直接的又は間接的に定めること

(4) 不公正な競争

「不公正な競争」とは、国家又は経済活動組織の利益、消費者の利益及び法的に付与されている権利を侵害又は侵害しうる競争を意味すると定義されています。具体的には消費者の混乱を生じさせる行為及び企業秘密の漏洩行為等が禁止されています。

(5) 事業間の共同行為

事業間の共同行為として、事業間の合併、買収、合弁等が規定されています。当該共同行為自体は禁止されないものの、「一定期間、市場での影響力を高める共同行為」及び「独占的又は寡占的な市場を得るために競争を低下させる共同行為」は原則として禁止されています。また、共同行為の市場シェアが競争委員会によって制限されている市場シェアを超えた場合にも、共同行為は認められません。

5.メキシコ

メキシコの独占禁止法(競争法)は、2014年に施行された経済競争に関する連邦法(Ley Federal de Competencia Económica:以下、競争法)となります。競争法の概要は次の通りです。

(1) 目的及び定義

競争法の目的は、自由な市場へのアクセスと経済競争を促進、保護、保証すること、ならびに独占や独占的慣行、競争や市場の効率的な運営の制限を厳しく罰し、排除することにあります。

(2) 管轄機関

管轄機関は、連邦競争委員会(COFECE: Comisión Federal de Competencia Económica)と連邦電気通信機関(IFETEL: Instituto Federal de Telecomunicaciones)の2つが存在します。

連邦電気通信機関が電気通信及び放送分野を担い、連邦競争委員会がそれ以外の分野を担当しています。

(3) 制限される行為

競争法において、特に重要となる制限される行為は、絶対的独占行為、相対的独占行為や企業結合が挙げられます。

1 絶対的独占行為

絶対的独占行為は、競争事業者間で、提供する商品やサービスの供給や価格を共同で取り決め、それを操作することや、政府が行う調達において事前にそれらを取り決める行為(入札談合)や、これらの行為に関する情報交換を行う行為を指します。絶対的独占行為に該当する行為は違法であり、無効となります。絶対的独占的行為を行った場合、事業者の収入の10%に相当する額の罰金が命じられる可能性があります。

2 相対的独占行為

相対的独占行為は、市場を支配する企業がその力を使用して、他者が参入するのを不適切に防止したり、競合する人を排除したりして、価格の上昇や商品やサービスの供給の減少を招く行為を指します。具体的には、競合していない主体間での流通の制限や、抱合せ販売などの条件を課すこと、特定の他者に対する取引の拒絶、特定の事業者からの商品やサービスの取得を拒否するよう勧誘すること、同等の条件にある異なる買い手や売り手に対して、異なる価格や売買条件を設定すること、不可欠な施設や材料の取引拒否又は制限、マージンスクイーズ(川上における利鞘の縮小のことを指し、一つまたは複数の事業者が提供する必要不可欠な供給物の入手価格と、同事業者が同じ供給物を使って生産し、最終消費者に提供する商品またはサービスの価格との間の、既存のマージンを削減すること)などがあります。相対的独占行為に該当する行為は違法ではありますが、無効とはなりません。ただし、相対的独占行為を行った場合、事業者の収入の8%に相当する額の罰金が科される可能性があります。

3 企業結合

企業結合とは、合併、支配権の取得その他の企業等が競争事業者等と合体する一切の行為と広く定義されており、企業結合が企業再編などグループ企業間で行われる場合といった一部の例外を除き、次の基準を満たす場合に届出を行い事前に承認を得ることとされています。

(a) 対象となる取引の価値がUMA日額の1800万倍超

(b) UMA日額の1800万倍超の資産又は売上を有する当事会社の資産又は株式の35%以上の取得

(c) UMA日額の840万倍超の資産又は資本金を取得する場合であって、2つ以上の当事会社が単独又は合算でUMA日額4800万倍超の資産又は売上を有すること。

なお、これらの基準に該当しない場合であっても、自主的な通知を行うことが求められています。

管轄機関は、市場環境への影響を評価し、競争や自由な参入を害さないことを確認し、当該企業結合を認可、条件付、または不認可にする権限が与えられています。

※UMAとは、Unidad de Medida y Actualizaciónという、メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が全国消費者物価指数の結果をもとに毎年発表する経済的基準単位であり、2021年の日額は89.62ペソです。

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、バングラデシュ競争委員会(Bangladesh Competition Commission (BCC))が設立された後、競争法(Competition Act)が2012年に施行されました。

(1) 競争法の規制の概要

1 反競争的合意の禁止

直接的又は間接的に、市場における競争に悪影響を及ぼす、もしくは及ぼすおそれがある、又は、市場において独占若しくは寡占を引き起こす商品・役務の生産、供給、流通、保管又は取得に関する合意又は共謀をしてはならないと規定されています(第15条第1項)。ただし、以下を制限しません(同条第4項)。

  1. 知的財産法に基づいて付与された知的財産権の侵害を制限する又は保護するために、合理的な条件を課すための権利、及び
  2. 契約がもっぱら商品の生産、供給、流通若しくは管理、又は、輸出のためのサービスの提供に関連する範囲で、バングラデシュから商品を輸出するための権利

合意や,同一の若しくは類似した商品の取引又は役務の提供に従事する者又は団体の商慣行又は決定が以下に該当する場合には、市場における競争に悪影響を及ぼすとみなされます(同条第2項)。

  1. 直接的又は間接的に、正常ではない購入価格又は販売価格の決定をする場合、又は、入札談合を含む不正な価格を決定する場合
  2. 生産、供給、市場、技術開発、投資又は役務の提供を制限又は操作する場合
  3. 商品・役務の種類、原産地又は役務の提供元、市場の地理的領域,市場の顧客数又はその他類似の基準に基づいて市場を分割する場合

以下の取決め及び合意が競争に悪影響を及ぼす場合には,反競争的合意とみなされます(同条第3項)。

  1. 抱き合わせ販売 (同項(a))

商品の購入者に、購入の条件として、他の商品を購入すること、又は、販売者、他者若しくは関係する事業者から利益を得ることを要求する契約又は約束すること

      2. 排他的供給契約 (同項(b))

取引の過程で購入者が販売者の商品以外の商品を取得すること又はその他の方法で取引することを何らかの方法で制限する契約

      3. 排他的販売契約 (同項(c))

商品の産出若しくは供給を制限、制約若しくは保留すること、又は、商品の処分若しくは販売のために地域若しくは市場を割り当てる契約

      4. 取引拒絶 (同項(d))

商品の販売者、購入者又はそれらの集団を何らかの方法で制約する契約

      5. 再販売価格維持 (同項(e))

販売者が規定する価格よりも低い価格が設定される場合があることが明確に述べられていない限り、購入者が再販売時に設定する価格を販売者が規定する価格とする条件で商品を販売する契約

2 支配的地位の濫用の禁止 

事業者はその支配的地位を濫用してはならないと規定されています(第16条第1項)。「支配的地位」とは,関連市場で事業者が有する強固な立場を意味し、(a) 関連市場において有力な競争圧力から独立して事業を展開すること、(b) 競争事業者、消費者又は関連市場に対し、自社に有利な影響を及ぼすことと定義されています。

以下に該当する場合は、支配的地位の濫用とみなされます(第16条第2項)。

  1. 商品・役務の購入・販売において、直接的又は間接的に、不公正若しくは差別的な条件を課す場合又は差別的な価格若しくは略奪的な価格を課す場合 (同項(a))。なお、「略奪的な価格」は、競争を排除することを目的として、商品の販売又は役務の提供を原価より安価で提供することと定義されています。
  2. 商品の生産、役務の提供、関連市場、又は、商品・役務に関連する技術的・科学的な開発を制限又は制約し、消費者の利益を損なう場合 (同項(b))
  3. 他者が市場にアクセスできないようにする又はし続ける場合 (同項(c))
  4. 本来的又は商業的利用により契約の主題とは関係のない追加的義務を他の当事者が受け入れることを条件として、契約を締結する場合 (同項(d))、又は
  5. ある関連市場での支配的な地位を利用して、他の関連市場に参入又は他の関連市場を保護する場合 (同項(e))

3 企業結合規制

 商品又は役務市場における競争に悪影響を及ぼす又は及ぼすおそれのある企業結合は禁止されています。ただし、委員会は、審査実施後の申請に基づき,競争に悪影響を及ぼさない又は及ぼすおそれがない企業結合を承認することができ、企業結合審査規則にて、委員会の承認が必要とされる企業結合の要因が規定されます(第21条第1項)。他方で,委員会がいかなる企業結合も競争に悪影響を及ぼす又は及ぼすおそれがあると認めれば,委員会は当該企業結合を承認してはならないと定められています(同条第2項)。

(2) 罰則

 委員会は、必要に応じて調査を行い、反競争的合意又は支配的地位の濫用を認める場合、それらをやめることを命令すること、及び/又は行政制裁金を課すことができます(第20条)。委員会の命令により不利益を受けた者は、不服申立てにより、再調査又は上訴を求めることができます(第29条)。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年4月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

首都圏1都3県を対象に延長されていた緊急事態宣言が、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価が行われた結果、3月21日に解除されました。解除後も、飲食店への営業時間短縮要請(営業時間、対象地域等は知事が判断)、当面7割削減を目標としたテレワークの取組、外出自粛要請、イベントの開催制限の取組は継続されています。

(2) 入国規制

1 検疫の強化

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫法に基づき、日本への上陸が認められないことになります。

また、検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない方は、入国前に、空港内でスマートフォンをご自身の負担でレンタルしていただくことになります。

更に、入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡先が確認されます(水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP))。

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は28,773名です。この内、27,313名が回復し、累計死亡者数は94名となっています。また、非常事態宣言は、5月31日まで延長されています。

3月1日、タイ民間航空局(CAAT)は、スワンナプーム国際空港でのみ国際線の乗り継ぎ/乗り換えを可能とするガイドラインを発表しました(3月1日より有効)。搭乗客は、Fit to Fly(搭乗可能健康証明書)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(陰性証明書)、10万米ドル以上を補償する医療保険への加入を証する書類を準備する必要があります。また、乗り継ぎ/乗り換えの各所要時間は、12時間を超えないことなどが発表されています。

3月23日、バンコク都は、ソンクラン期間(4月10日~15日)のCOVID-19感染拡大防止のための告示を発表しています。水のかけ合い、コンサート、粉の塗り合い、泡パーティーなど、混乱状態に陥る可能性のある公共の場での活動や密着型の活動は控えること、様々な地域の人が集まる宴会やパーティーは避け、長時間の食事や飲酒は控えることなどが求められています。これに違反した者については、2年以下の禁錮もしくは40,000THB以下の罰金またはその両方が科される場合があります。

(2) 4月以降のタイ入国後の隔離期間の短縮

3月26日、タイ保健省は、タイ入国後の隔離期間を14日間から10日間に短縮することを発表しました(COVID-19の変異株が確認されている国からの入国者については、隔離期間短縮の対象外)。4月1日以降、Fit to Flyは不要となり、渡航72時間以内発行のPCR検査結果(陰性証明書)のみが必要となります。隔離期間中は、引き続き2度のPCR検査が実施されます。

また、ワクチンパスポート所持者について、以下のとおり発表がなされています。

・タイ到着以前の期間(14日前~3カ月前)にワクチンパスポートを取得、かつ陰性証明書あり

隔離期間7日間、隔離期間中1度のPCR検査実施

・ワクチンパスポートのみ(陰性証明書なし)

隔離期間7日間、隔離期間中2度のPCR検査実施

3.マレーシア

(1) COVID-19関連規制

3月29日のCOVID-19の新規感染者数は、941人であり、今年に入って初めて1000人を下回りました。アクティブ感染者数は1万4,219人で、累計感染者数は34万2,885人となっています。

3月16日に、セランゴール州、ペナン州、ジョホール州、クランタン州、クアラルンプール市で3月19日から31日まで、条件付き移動制限令(Conditional Movement Control Order:CMCO)を延長することが発表されましたが、3月30日現在、4月1日以降に条件付き移動制限令が延長されるとの政府発表はまだありません。

サバ州Keningau地区における活動制限令(MCO)が4月4日まで延長されることが発表されています。これにより、死亡や自然災害などの緊急事態を除いて、同地区への移動は許可されていません。

(2) 入国規制

 2020年3月18日から、外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能。)。

例外として、以下の外国人の入国が認められます。

1MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者(再入国)

2主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人(いずれも現 地駐在者が対象。国籍は問わない。)

3留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者 

4長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族

5永住者

2020年9月7日から、上記1~5の例外にかかわらず、累積感染者数が15万人を超える国(※2020年9月7日時点で15万人以上の国を指し、米国、インド、ブラジル等23か国。なお、日本は含まれていません。)の国籍者、及び当該国に居住する非マレーシア国籍者等の入国を原則拒否しています。

2020年9月21日から、上記2に該当する者は、対象23か国の国籍者又は当該国に居住する非マレーシア国籍者であっても入国を許可しています。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。COVID-19関連の規制ではなく、クーデター関連の規制として、一部の地区へ戒厳令が出されたことに伴う19時~5時の外出禁止令、5名以上の集会禁止等が国軍から出されています。これに対してCRPHからも徴税の半年間停止、電気代支払停止等の法令が出されています。

(2) 入国規制

 3月に一便ANAの特別便が飛び、4月1日にも飛ぶ予定です。現在、CDMの関係で空港で燃料補給が出来ないことやインターネット遮断等の影響から飛行機の就航数が非常に減っています。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は今後の日本からの救援便に日本人搭乗枠が認められるか次第となります。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19新規感染確定者数は、2月以降、全国的に減少の傾向にあり、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週には、最も深刻な赤を示す州が0州になり、3月29日の週には緑の州が7州に増えるなど、状況は改善の傾向を見せています。ただ、緑から黄色、黄色から橙と後退する州があるのも事実です。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われており、一部の州においては、セマナサンタ(イースター)休暇中には、ビーチや博物館、美術館の閉鎖や利用規制など、対策の強化を図ることが発表されています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、4月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、政府は、グアテマラ、ベリーズとの国境においても、COVID-19の感染拡大を受け、3月19日から4月21日までの間、陸路での不要不急の移動を制限することを発表しました。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府の発表によると、3月29日に新型コロナウイルスの感染が新たに確認されたのは5,181人で、1日の新規感染者数としては過去最多でした。バングラデシュ政府は同日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、18項目の新たな行動規制を発表しました。なお、この行動規制はすでに全国で適用されています。今後、関係省庁が個別で更に追加の対策を講じる可能性があります。

今回発表された18項目は以下のとおりです。

  1. あらゆる種類の集会(社会的、政治的、宗教、その他)は制限される。感染率の高い地域における全ての集会は禁止される。結婚式、誕生日を含む社会的集まりは推奨されない。
  2. モスクを含む全ての宗教施設において、適切な衛生対策を行うこと。
  3. 観光、娯楽施設、映画館、劇場における集会は制限される。また、あらゆる類の催事は制限される。
  4. 公共交通機関は、定員の50%を超えた場合は運行することができず、衛生対策を実施しなくてはならない。
  5. 感染のリスクが高い地域において、県をまたぐ交通移動は制限され、必要があれば運行は停止される。
  6. 外国からの到着者は、14日間の制度的な隔離(自己負担によるホテル滞在)を行わなくてはならない。
  7. 日用品の販売は、衛生ガイドラインを守った開放的な場所で行わなければならない。薬局は衛生対策を確実に行うこと。
  8. 医療機関では、マスク着用を含む衛生対策を実行すること。
  9. ショッピングモールにおいては、売り手や買い手は適切な衛生対策を実施すること。
  10. すべての教育機関(就学前、初等、マドラサ、中等、高等、大学)やコーチングセンターは引き続き閉鎖する。
  11. 不要不急の外出や集会を禁止する。緊急の場合を除き、夜10時以降の外出は規制される。
  12. 外出の際は、マスク着用を含む衛生対策を守らなくてはならない。マスクを着用しない、もしくは衛生対策を守らない場合は法的措置がとられる。
  13. 新型コロナウイルス感染者や感染症状のある者は隔離されなくてはならない。濃厚接触者も必ず隔離されること。
  14. 緊急サービス以外のすべての政府や民間の事務所、組織、工場は、50%の人員で運営・操業しなくてはいけない。妊婦、病気の者、55歳以上の職員や従業員は自宅に留まりリモート勤務すること。
  15. 集会、セミナー、研修、ワークショップは可能な限りオンラインで実施すること。
  16. 対面式で行う公的な試験は、適切な衛生対策を実施すること。
  17. ホテルやレストランは、収容人数の50%を超えた場合、入場を制限しなくてはならない。
  18. 職場でのマスク着用を義務とする。また職場において衛生対策を必ず行うこと。

上記6については、3月30日に、新たに以下の内容の通知が出されました(3月31日から有効)。

ヨーロッパ及び英国からの旅行者は、バングラデシュ政府の施設又は指定したホテルにて、自己負担で14日間の制度的な隔離を行い、隔離期間後のPCR検査で陰性が確認された後、隔離から解放されます。それ以外の地域からの旅行者については、到着時にCOVID-19の症状がない場合は、住居での14日間の隔離が求められ、COVID-19の症状がみられた場合は、自己負担にて、政府の施設又は指定したホテルにて、14日間の制度的な隔離を行わなければなりません。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国、クウェート

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国の雇用契約及び就業規則の概要と法的留意点

1.日本

(1) 労働契約に関する主な法律

  1. 労働基準法: 労働関係を規律する最も基本的な法律です。罰則を設けて最低労働基準を定めることにより当事者に合理的な行動による労働条件の決定又は変更を促すことを目的としています。
  2. 民法: 「雇用契約」として、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約すること」と定義されています(民法第623条)。
  3. 労働契約法: 労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とし、平成20年に施行されました。「労働契約」は、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意すること」と規定されています(労働契約法第6条)。民法で規定されている「雇用契約」と違い、使用者の指揮命令のもとに行われる労務を前提としています。

一般的に、使用者と労働者が結ぶ契約については、多くの場合、「労働契約」を指すため、本項では、「労働契約」について述べます。

(2) 労働契約の基本原則

労働契約は、労働契約法に基づく使用者と労働者のルールで、以下の「労働契約5原則」がベースとなっています(労働契約法第3条)。

  1. 労働契約は、労使対等の立場における合意に基づいて締結・変更する(同条第1項)。
  2. 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態によって均衡を考慮しつつ締結し、又は変更する(同条第2項)。
  3. 労働契約は、労働者及び使用者が、仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更する(同条第3項)。
  4. 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない(同条第4項)。
  5. 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用してはならない(同条第5項)。

(3) 労働契約の締結

1 労働条件の明示

労働契約を結ぶときには、使用者が労働者に労働条件を明示することが必要です(労働基準法第15条第1項)。労働契約は、労使が合意すれば口約束でも成立しますが、特に重要な項目については、書面を交付するか電子メールの送信等の方法により明示する必要があると定められております(労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条、同条第4項)。労働契約法においても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると規定しています(労働契約法第4条第2項)。

なお、労働者と使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が、合理的な内容の就業規則を、労働者に周知させていた場合には、就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件となります(労働契約法第7条)。つまり、適法な就業規則を定めて労働者に書面の交付等により周知していた場合は、労働条件を、別途文書等で明示する必要はありません。

労働条件の絶対的記載事項(労働基準法施行規則第5条第1項)
(a) 契約期間 (同項第1号)(*1)
(b) 業務内容(場所、仕事の内容)(同項第1号の3)
(c) 勤務時間及び休日
(始業時間及び終業時間、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、勤務のシフト制等)(同項第2号)
(d) 賃金の支払い
(賃金の決定、計算と支払いの方法、締日と支払いの時期)(同項第3号)
(e) 退職(解雇の事由を含む)(*2)(同項第4号)

*1 契約期間
一般的に、正社員は長期雇用を前提として特に期間を定めず、アルバイトやパートタイムなどは
有期労働契約として期間の定めをもうけることが多いです。労働者に契約期間を明示せずに
雇用した場合は、「期間の定めなし」と解されるため、一定の期間が過ぎたあとに
「会社都合により契約終了」とはできないため注意が必要です。
契約期間に定めのある労働契約の期間は、原則として上限は3年です。なお、専門的な知識等を有する労働者、
満60歳以上の労働者との労働契約は、上限が5年とされています(労働基準法14条第1項)。
また、期間の定めがある契約の更新について、更新があるかどうか、更新する場合の基準等を明示する必要が
あります。更新の条件を満たしているにも関わらず契約更新しない場合は、トラブルになるケースも
ありますので、明確な基準を明示することが肝要です。

*2 退職(解雇の事由を含む)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利を濫用したものとして
無効となります(労働契約法第16条)。契約期間に定めのある労働者については、やむを得ない事由がある場合
でなければ、契約期間の満了前に労働者を解雇することができません(労働契約法17条第1項)。

上記(a)から(e)の項目に加え、以下に該当する場合は、関連する事項を定めなければなりません(労働基準法施行規則第5条)。

(a) 退職手当の定め(退職手当を除く)をする場合は、適用範囲、計算方法、支払方法や時期等(同項第4号の2)
(b) 臨時の賃金等及び最低賃金額を定める場合(同項第5号)
(c) 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合(同項第6号)
(d) 安全及び衛生に関する定めをする場合(同項第7号)
(e) 職業訓練に関する定めをする場合(同項第8号)
(f) 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する場合(同項第9号)
(g) 表彰及び制裁の定めをする場合(同項第10号)
(h) 休職に関する事項(同項第11号)

2 労働契約の変更

 労働者と使用者が合意すれば、労働契約を変更することができますが(労働契約法第8条)、合意であっても、就業規則に定める労働条件よりも下回ることはできません(労働契約法第12条)。

3 労働契約の禁止事項

労働契約を結ぶときに、会社が契約に含めてはならない事項も定められています。

  • 労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと(労働基準法第16条)。例えば、「1年未満で会社を退職した場合は罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などと決めてはなりません。これは事前に賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者の故意又は過失で、会社に損害を与えた場合の損害賠償請求を制限するものではありません。
  • 労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から天引きする形で返済させること(労働基準法第17条)。労働者が会社からの借金のために、労働を余儀なくされることを防止するためです。
  • 労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること(労働基準法第18条第1項)。ただし、労働組合又は労働組合がないときは労働者の過半数代表との書面による協定及び行政官庁への届け出のほか、一定の要件を満たした場合は、認められています(同条第2項)。

4 採用内定について

採用内定により解約留保権付の労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定取消したる解約権の行使についても解雇と同様に解雇権濫用法理(労働契約法第16条)が適用されています。

従って、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取消しは無効となります(労働契約法第16条)。内定取消しが認められる場合には、通常の解雇と同様、解雇の予告(労働基準法第20条)、退職時等の証明(労働基準法第22条)などの規定が適用されます。

(4) 就業規則

常時10人以上の労働者を雇用している会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければなりません(労働基準法第89条)。就業規則の内容は法令や労働協約に反してはなりません(労働基準法第92条)。また、就業規則の作成・変更をする際には必ず労働者側(労働組合、又は組合がなければ労働者の過半数代表)の意見を聴かなければならないと定められています(労働基準法第90条第1項)。

上記(a)~(c)に加え、以下に該当する場合は、関連事項を定めなければなりません(労働基準法第89条)。

2.タイ

(1) 雇用契約

  1. 雇用契約とは

雇用契約とは、書面によるか口頭によるかを問わず、労働者が使用者のために労働することに合意し、使用者が労働の期間に対して賃金を支払うことに合意する契約をいいます(タイ労働者保護法 (Labour Protection Act 以下、「法」といいます) 第5条)。雇用契約は必ずしも書面によりなされる必要はないため、使用者に雇用契約書の作成義務はありません。しかし、雇用契約の内容や条件を明確化し、後の労働紛争を未然に防止するためにも、雇用契約書を作成しておくべきであるといえます。

     2. 記載すべき事項

会社において既に就業規則が制定されている場合には、細かな規則や規律、罰則等の詳細内容を雇用契約書に記載しなくても、「記載のない部分については、就業規則による」とすることができます。しかし、就業規則がまだ制定されていない場合には、会社として明確にしておきたい事項については、全て詳細に記載しておくべきであるといえます。

 以下では、雇用契約書作成の際に、最低限記載しておくべきと考えられる事項について、説明します。

     3. 雇用期間

雇用期間の定めがある場合には、その始期、終期を記載する必要があります。また、雇用期間の定めがない場合でも、雇用期間の始期を明確に記載しておくべきでしょう。

試用期間を設ける場合には、試用期間の終期をいつまでとするのかについて、記載すべきでしょう。法上、120 日以上継続して勤務した従業員を解雇する場合、会社は当該従業員に対して解雇補償金を支払わなければならないとされています(法118 条)。そのため、解雇補償金の支払義務が発生する120日より前の日(試用開始から119日)を試用期間の終期として設定している会社が多いように思われます。もっとも、試用期間中の解雇の場合でも、一賃金支払期間前までに、書面による事前の解雇通知を行う必要がある点には注意が必要です(法17 条2項)。

     4. 賃金、就業日、労働時間、業務内容、労働場所

賃金や、就業日、労働時間(休憩時間の定めを含む)について記載する必要があります。業務内容については具体的に明記するとともに、将来的な業務の変更も考慮し、包括的な条項も入れておくべきです。

従業員が遅刻した場合の賃金の取扱いについて定めがある場合には、その旨も記載しておくべきでしょう。また、労働場所について2か所以上の場所での労働が予定されているような場合には、その旨も記載しておくべきでしょう。

     5. その他の事項

 会社として従業員に必ず守らせたい規律事項については、雇用契約書に記載し、雇用契約締結の際に説明することが望ましいでしょう。また、従業員を解雇する際の会社による事前通知の期間や、従業員が退職する際の会社への事前通知の期間、懲戒解雇となる条件等についても、従業員に理解してもらうために記載しておくべきでしょう。

     6. 作成言語

雇用契約書の作成言語は、当事者間で記載内容を理解できる言語であれば何語で作成しても問題ありません。会社内での共通言語として英語が指定され、当該従業員が英語を十分理解できる場合には、英語にて雇用契約書を作成しても問題ないでしょう。しかし、記載内容の解釈に齟齬が生じる場合もあるため、当該従業員の母国語にて作成するのがより望ましいでしょう。

雇用契約書を複数の言語で作成する場合には、どの言語が優先言語となるか、明記すべきでしょう。

(2) 就業規則

  1. 就業規則の作成

 タイにおいては、会社が10名以上の従業員を雇用している場合、会社はタイ語での就業規則を作成するよう義務付けられています。そして、会社は従業員の数が10名以上となった日から15日以内にその就業規則を掲示し、就業規則の写しを常時事業所に備え付ける必要があります。さらに、会社は従業員が容易に就業規則を閲覧・入手できるよう、就業規則を事業所に公開する等の対応をとる必要があります(法108条)。

 従業員数が10名未満の場合、法的には、会社に就業規則を作成する義務はありません。しかし、労使間での紛争を未然に防ぐためにも、就業規則を作成しておくことが望ましいでしょう。

      2. 就業規則の必要的記載事項

就業規則には、少なくとも以下の8つの事項について、その詳細が記載されなければならないと定められています(法108条1項)。

  1. 就業日、所定労働時間、休憩時間
  2. 休日、休日取得に関する規則
  3. 時間外労働、休日労働に関する規則
  4. 賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当の支払期日および支払場所
  5. 休暇日、休暇取得に関する規則
  6. 規律、罰則
  7. 苦情申立て
  8. 解雇、解雇補償金、特別解雇補償金
  9. 就業規則作成時の注意点

就業規則は、会社における従業員の行動規範となるものであるため、会社の事業運営に応じた就業規則を作成する必要があります。雛形の安易な流用は、後の紛争リスクを高めることにつながります。休日に関する定めや、休暇取得時のルール、時間外労働・休日労働手当の定め等、それぞれの会社に応じた内容で、明確に、従業員に理解し易い文章で作成することが重要です。

また、懲戒処分に関する事項については、就業規則に定めた規律違反行為をその処分の対象とするため、どのような行為が規律違反行為に該当し、懲戒処分の対象となるのか、詳細に定めておく必要があります。

さらに、就業規則については、従業員がその内容を正しく理解していることが前提となります。したがって、全ての従業員が就業規則の内容を正しく理解できる言語で作成すべきです。上述のとおり、従業員10名以上の会社ではタイ語での就業規則作成が義務付けられていますが、日系企業の場合には、日本人の従業員も理解できるよう、日本語訳又は英語訳を作成しておくことが望ましいでしょう(ただし、タイ語版のものが効力を有しますので注意が必要です)。

  1. 就業規則の改訂

就業規則の改訂に関して、会社が一方的に従業員にとって不利な変更をすることはできず、原則として従業員からの同意が必要となります。不利益変更について従業員から同意を得ることは難しいと考えられるため、就業規則作成時にはその点を踏まえ、会社の将来の事業展開等も考慮に入れたものを作成する必要があります。

3.マレーシア

(1) 労働契約

  1. 契約方式

雇用法は、1月を超える期間を特定した雇用契約及び特定の作業に従事する雇用契約で1月を超える(可能性のあるものも含む)ものについては、雇用契約書の作成を義務付けていますが、上記以外の雇用契約に関しては契約書の作成は義務ではありません。そのため、基本的には、日本と同様に口頭の合意で労働契約が成立します。もっとも、法律上雇用契約書の作成義務を負わない場合においても、後日の紛争を避けるために、実務上雇用契約書を作成しておくのが望ましいと考えられます。

      2. 通知事項

雇用規則(Employment Regulations 1957)により、使用者は労働者に対して、労働者の名前及び身分証明書番号、業務内容及び役職、賃金、手当の内容及び額等の一定の事項を通知した上で、情報を保管しなければならないとされています。

(2) 就業規則

 マレーシアでは、法律上の就業規則作成義務はなく、作成は任意となっています。もっとも、工場など多数の労働者を雇用する会社等、多くの会社において、労使関係の安定を目指すため就業規則が作成されているのが実情です。

 就業規則に法的な拘束力を持たせるためには、就業規則記載の労働条件につき労働者との間で合意が成立していると言えることが必要となるため、雇用契約書において就業規則記載の労働条件が適用される旨を記載すること、配布などの方法により就業規則の内容を認識させることが必要となります。

4.ミャンマー

(1) 雇用契約書

 雇用及び技術向上法上、会社は、政府における常勤労働者、研修者及び試用期間中の者を除き、労働者の雇用開始後30日以内に労働者と雇用契約を締結しなければなりません。また、雇用契約締結後、当該契約書の写しを管轄労働事務所に提出し、承認を得る必要があります。さらに、単に雇用契約を締結するのみならず、以下の表に記載している事項を雇用契約書に記載する必要があります。

1職種、2試用期間、3給与、4勤務地、5契約期間、⑥労働時間、⑦休暇及び休日、⑧時間外労働、
⑨勤務中の食事の手配、⑩住宅施設、⑪医療手当、⑫仕事及び出張における車の手配、⑬労働者が遵守すべき規則、
⑭研修参加後に継続して勤務しなければならない期間、⑮退職及び解雇、⑯期間満了時の対応、
⑰契約において規定されている遵守すべき義務、⑱合意退職、⑲その他、⑳契約書の規定の修正及び追記の方法、㉑雑則

もっとも、実務上、労働・入国管理・人口省が2018年8月28日に公表した雇用契約書の雛形を使用することが一般的であり、当該雛形を修正した場合、労働事務所の担当官によっては承認を得るのが難しい場合があります。なお、公表されている雛形はミャンマー語版のみであり、工場での労働者を想定している内容となっています。

また、雇用契約書の言語に関する法的規制は存在しません。勿論、当事者が理解できる言語を用いる必要があるため、ミャンマー語以外を理解しない労働者を雇用する場合には、ミャンマー語の雇用契約書を用いる必要がありますが、英語や日本語を理解する労働者の場合には当該言語を用いたとしても法律上は問題ありません。しかし、この点についても、労働事務所の職員がミャンマー語以外の言語を解さないことが多いため、事実上ミャンマー語版の提出も強制されることが多いといえます。

(2) 就業規則

 ミャンマーにおいては、一定人数以上を雇用したとしても就業規則の作成義務などは課せられておらず、法律上は就業規則について何ら規定されていません。

 しかし、上記のとおり、雇用契約書については雛形を大きく修正することが難しいため、会社独自の服務規律等を就業規則に含めることが一般的であり、一定人数以上を雇用する企業においては従業員の管理を容易にするために作成することが多いです。もっとも、法令上は就業規則について規定されていないため、作成すれば当然に全員に効力を生じるものではなく、作成した内容について従業員から同意を得る必要があります。

5.メキシコ

(1) 雇用契約

1 雇用契約の種類

無期雇用契約のほか、業務の性質のため、あるいは、一時的に他の労働者の代替のため(その原因に限定はありませんが、産休や休職に入った労働者の代わりに雇用する場合などにも用いることができます。)、有期雇用契約を締結することもできます。また、季節的な活動や、週、月、年の全期間にわたってサービスの提供を必要としない活動の場合には、労務提供期間を限定することも可能です。この条件下での労働者は無期雇用契約の下で雇用されている労働者と同じ権利を有することになります。有期雇用とする場合はいずれの場合でも、その旨を書面にて合意しなければならず、これがない場合は無期雇用契約とみなされます。

2 書面化の要否

労働条件は、適用される労働協約がない場合には、書面に記載することが義務付けられています。そのため、一般的には雇用契約書を作成することになります。雇用契約書は労働者用、使用者用の2部を作成する必要があります。

3 雇用条件記載書面(雇用契約書)の記載事項

連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)は、 (i)労働者及び使用者の氏名、国籍、性別、婚姻の有無、住民登録番号(CURP)、納税者登録番号(RFC)、及び住所、(ii)雇用形態(特定業務、季節的業務、有期又は無期等)や試用期間がある場合の期間、(iii)業務内容、(iv)業務実施場所、(v)1日の就業時間、(vi)給与額及び形態、(vii)給与支払日及び支払場所、(viii)労働者が受ける研修及び訓練等に関する内容、(ix)休業日、休暇など、労働者と雇用主との間で合意したその他の労働条件、(x)労働者の死亡等により当該労働者の給与および手当の支払いを受ける者の指定、を雇用契約などの雇用条件記載書面に記載しなければならないとしています。

また、テレワーク(連絡及び指揮のために主として情報通信の技術を用いて、使用者の事業所以外の場所で労務の提供を行う労働形態)を行う労働者で、労働時間全体の40%超をテレワークの形態で実施する場合、上記の他、労働者に提供される機器等(安全衛生義務に関する物を含む)、テレワークに関連し労働者が負担した費用の支払いについて、使用者がテレワーク下の労働者に支払う内容と金額、当事者間の連絡及び監督の仕組みスケジュール等、その他テレワークに関し当事者が合意する事項も記載が必要となります。

4 最低給付

使用者は次の最低給付を遵守し、労働者に提供しなければなりません。(i)最低賃金額以上の給与、(ii)法定有給休暇、(iii)少なくとも給与額25%の有給休暇手当、(iv)少なくとも15日分の給与額のボーナス(Aguinaldo)(支給対象年の勤務期間が年の全日とならない場合は、勤務日数に応じた額)(v)利益分配金(PTU)、(vi)社会保障

(2) 就業規則

1 作成義務と効果

連邦労働法では、就業規則の制定は義務付けられてはいません。しかし、就業規則を定めた場合には、使用者と労働者の義務を定めるものとして位置づけられており、就業規則の内容や、使用者が就業規則に違反した場合の罰則などが規定されています。

2 記載しなければならない事項

就業規則を制定する場合、次の事項を含める必要があります。(i)出退勤時間と食事時間を含む休憩時間、(ii)就業開始および終了の時刻と場所、(iii)就業場所や業務に使用する機械、工具などを清掃する日時、(iv)給与日および給与の支払場所、(v)労働者のために設けられた席等の使用規則、(vi)労災予防のための規則や応急措置の手順、(vii)未成年が就業してはならない危険かつ有害な業務および妊娠中の労働者が受けるべき保護、(viii)労働者が受けるべき健康診断の方法と時期、(ix)労働者が受けるべき許可等(x)懲戒とその適用手順、(xi)その他企業活動に鑑みて、安全で秩序ある職場の実現のために必要かつ適切な規則

また、テレワークを採用する場合であって、労働協約を締結していない使用者は、就業規則において、テレワーク労働者と連絡を確保する仕組みなどを規定しなければならないとされています。

3 届出義務

就業規則の制定においては、労働者と使用者の代表者によって構成される委員会によって策定し、両当事者が合意した場合は、署名後8日以内に連邦労働調停登録センター(Centro Federal de Conciliación y Registro Laboral)に届け出なければなりません。就業規則は連邦労働調停登録センターへの届出の日より有効となり、使用者は労働者に写しを配布し、また事業所内の誰もが閲覧できる場所に掲示する必要があります。

なお、届出先となる連邦労働調停登録センターは2019年5月の改正労働法によって新設された機関であり、同センターによる運用が開始されるまではこれまでの調停仲裁委員会(Junta de Conciliación y Arbitraje)や労働福祉省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)が担うこととなります。同センターは同改正法の施行から2年以内に登録業務を開始することとされており、2020年11月より、カンペチェ州、チアパス州、ドゥランゴ州、メキシコ州、サンルイスポトシ州、タバスコ州、サカテカス州、イダルゴ州(連邦レベルのみ)の8州において開始しています。今後、アグアスカリエンテス、グアナファト、ケレタロを含む13州が第2期として2021年10月に、メキシコシティなど残る11州が第3期として2022年5月に開始される予定です。

6.バングラデシュ

(1) 労働契約

労働者の雇用にあたり、使用者は、採用通知書、写真つき身分証明書、サービスブック、雇用登録、チケット・カードを作成しなければなりません。このうち、採用通知書が労働契約書に類似しており、採用通知書の必要記載事項は以下の通りです(労働規則第19条(4))。

採用通知書に記載しなければならない事項
1) 労働者の氏名、2) 両親および配偶者の氏名、3) 住所、4) 所属、5) 職種、6) 入社日、7) 労働者区分、
8) 賃金または給与体系(昇給率などがあれば)、9) 手当(住居手当、医療手当、教育手当など)、
10) 採用条件・就業規則・労働法を遵守する旨

(2) 就業規則(Service Rule)

就業規則の作成は義務ではありません。使用者が、就業規則を作成する場合は、労働者に対し、労働法の規定より厳しい規定は認められません。使用者は就業規則を作成し、労働規則で定められている手続きに従い、労働者または労働組合から意見聴取をしたうえで必要に応じて変更し、検査官より承認を得る必要があります(労働規則第4条)。就業規則に記載すべき事項は以下の通りです(別紙7(Form1))。

就業規則(Service Rule)に記載しなければならない事項
1) 労働者区分、2) 労働時間および休暇、3) 休暇の申請手続きおよび条件、
4) 職場の閉鎖および再開の時期、業務の一時停止に関する使用者および労働者の権利と責務、
5) 一時解雇の手続きおよび補償、6) 人員整理の手続きおよび補償、
7) 労働者の心身障害の就労不能による退職の手続きおよび補償、8) 雇用終了の通知・条件・手続き・補償、
9) 不正行為・停職の条件および補償、10) 定年退職の手続きと退職金、11)不測の事態による工場閉鎖が生じた場合の責任、
12) 死亡給付金と手続き、13) 積立基金設立の手続き、14) 労働者の企業利益参加および福祉基金の設立、15) 医療給付、
16) グループ保険の手続き、17) 昇進規程、18) 年収および昇給、19) 苦情処理手順、20) 罰金の手続き、
21) 請負業者による業務(あれば)、22) 見習い労働者の採用手続き、23) その他関連事項
 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

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・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

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・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

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・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

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・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

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Newsletterの記載内容は2021年3月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

2月7日までを対象期間とし、11都府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県、栃木県)を対象に出されていた緊急事態宣言が、栃木県を除き、3月7日まで延長されました。今回の緊急事態宣言は、社会経済活動を幅広く止めるものではなく、具体的には、飲食を伴うものを中心として対策が講じられています。飲食店に対する営業時間短縮要請を行うと共に、外出自粛の要請、テレワークの推進などが行われています。(新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。加えて、検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。(水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は25,692名です。この内、24,542名が回復し、現在医療機関で治療中の者は1,067名となっています。また、非常事態宣言は、2021年3月31日まで延長されています。

 2月22日、タイ政府は、COVID-19の感染拡大を防ぐために、感染状況に応じたゾーニングに関する措置を発表しています。規制の強い順に以下のようなゾーニングとなります。

管理区域:バンコク、ノンタブリ、パトゥムタニ、サムットプラカーン等を含む、合計8都県

高監視区域:カンチャナブリ、チョンブリ、アユタヤ、ラヨーン等を含む、合計14県

監視区域:その他の合計54県

 2月23日、バンコク都は、規制緩和措置を発表しています。この規制緩和措置により、飲食店、フードコート等、午前6時から午後11まで店内での飲食が可能となっています。また、店内でのアルコールの提供も可能となりました。パブやバーなども午後11まで営業可能となっています。

(2) 入国許可証(COE)の新登録システム

 2021年1月以降のタイ入国に関するCOEの申請について、新しいCOE申請システムが運用されています。手続きの流れは以下のとおりとなります。

  1. ビザ申請(再入国許可をすでに所持している場合は不要)
  2. COE新システムよりCOE申請
  3. COE登録の承認後、医療保険、航空券及びASQホテル予約確認書をオンラインシステムにて登録
  4. COE発行後、オンラインシステムよりCOEをダウンロード
  5. Fit to Fly(英文)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(英文)を用意

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

1 移動制限

2月19日から同年3月4日の間、State of Johore、State of Penang、State of Selangor、Federal Territory of Kuala Lumpurを対象に規則に基づき移動制限が定められています。

2 条件付き移動制限

2月19日から3月4日の間、State of Kedah、State of Kelantan、State of Malacca、State of Negeri Sembilan、State of Pahang、State of Perak、State of Sabah、State of Terengganu、Federal Territory of Putrajaya、Federal Territory of Labuanを対象に条件付き移動制限が定められています。

3 移動条件

前記1及び2の規則の対象となる地域は、移動が制限されるため、感染地域内のある場所から別の場所への又はある感染地域から別の感染地域への移動は禁止されます。ただし、以下の場合に定められた条件を遵守して移動をすることは認められています。

  1. 食品、医薬品、栄養補助食品、又は日用品を供給又は配達する場合

権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

       2. ヘルスケア又は医療サービスを受ける場合

住んでいる州内に利用可能なヘルスケア又は医療サービスがなければ一番近い州へ移動することは       認められる

       3. 働く場合

権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

      4. 公務又は司法上の業務を遂行する場合

権限を与えられた公務員からの要求を受けた場合、雇用主からの承認書(authorization letter)を提出すること

      5. 自然災害により影響を受けた人に人道援助を提供する場合

ⅰ.権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

ⅱ.関係当局の指示に従い、他の者を同行させることができる。

      6. 学習機関での学習に参加する、又は学習機関における義務を遂行するため

権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

なお、関係当局の指示に従い居住州内での移動が許可されます。

(2) 入国手続

1 出国前

  • アプリMySejahteraをダウンロードし、健康宣言を記入する
  • PCR検査(スワブ検査)を出国3日以内に受検する(任意)

2 到着時

  • アプリMySejahteraで「旅行者」用のQRコードを読み取る
  • 体温測定、健康状態の確認の実施

3 到着後

体温測定、健康状態の結果及び出国前のPCR検査(スワブ検査)結果の有無により、扱いが異なります。

(a) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がある場合

  • 7日間の隔離施設入所
  • 5日目のPCR検査(スワブ検査)の受検
  • 14日目までのセルフモニタリング

(b) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がない場合

  • PCR検査(スワブ検査)の受検
  • 10日間の隔離施設入所
  • 8日目のPCR検査(スワブ検査)の受検
  • 14日目までのセルフモニタリング

(c) 症状があった場合

  • 症状のある旅行者への措置

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。COVID-19関連の規制ではなく、クーデター関連の規制として、20時から4時の外出禁止令、5名以上の集会禁止、さらには刑法等の複数の法改正がデモや不服従運動の取り締まりのために行われています。

(2) 入国規制

 1月までは救援便に日本人の搭乗枠があったものの、2月に入ってからは19日の便までANA便は欠航となりました。19日及び26日の便は飛ぶことになったものの、18日の成田→ヤンゴン便への日本人の搭乗枠はありませんでした。現在もマレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は今後の日本からの救援便に日本人搭乗枠が認められるか次第となります。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19新規感染確定者数は、2月に入り全国的に減少の傾向に転じ、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、2月15日の週には、赤が前回の13州から2州になるなど、状況は改善の傾向を見せています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、各州において、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、2月19日に3月21日までの延長が発表されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、メキシコにおいては、空路による出入国に際し、体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ内務省が発表した2020年9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国のテレワーク導入に関する法的留意点

1.日本

 厚生労働省では、テレワークの形態として、1在宅勤務(労働者の自宅で業務を行う)、2サテライトオフィス勤務(労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用する)、3モバイル勤務(ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行う)、と分類し、労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働基準関係法令が適用されます。

また、厚生労働省は、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を策定しており、同ガイドラインがテレワーク導入における労働基準関係法令を適用する際の法的留意点を説明しています。

(1) 労働条件の明示

使用者は、労働契約を締結する際、労働者に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければなりません(労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条第1項第1の3号)。労働者に対し、就労の開始時にテレワークを行わせることとする場合には、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示しなければなりません。また、労働契約締結後にテレワークを導入する場合には、労働条件の変更となります。労働条件を変更する場合は、テレワークを導入する際の労働条件を明示し、使用者と労働者の間での個別の合意が必要です(労働契約法第8条)。

なお、使用者は、個別の合意によらなくとも、就業規則に就業の場所を定めており、かつテレワーク導入に関して労働条件である就業の場所が変更される場合には、就業規則の変更により労働条件を変更することが可能です。就業規則を変更する場合、使用者は変更した就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出て(労働基準法第89条第1号)、かつ書面の交付やパソコン等の電子機器の設置による公開などの方法(労働基準法施行規則第52条の2)により就業規則を周知させなければならなりません(労働基準法第106条第1項)。

もっとも、就業規則に就業の場所として「会社、その他会社が指定する場所」というように柔軟に定めていた場合は、テレワークの導入により労働条件が変更されたとはいえないので、就業の場所については個別の合意及び就業規則の変更は不要となります(テレワーク導入に伴い就業の場所以外にも労働条件に変更点がある場合は、個別合意や就業規則の変更が必要となります)。

(2) 労働時間制度

使用者は、適切な労務管理のために、労働時間の管理を行う責任があります。テレワークの導入に伴い始業や終業の時刻の変更が行われることがある場合、労働条件の変更となるため使用者は労働者に変更後の始終業時刻を明示し、両者の間で合意することが必要です。始終業時刻について、就業規則で定めている使用者は、当該変更について就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長へ届出て、労働者に変更後の就業規則を周知させなければなりません。

1 中抜け時間

一定程度労働者が業務から離れる中抜け時間について、使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、当該時間を自由に利用することが保障されている場合、(i) 休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じ、始業時間を繰り上げる又は終業時間を繰り下げる、(ii) 時間単位の年次有給休暇(5日以内に限る)として扱うこと、が可能です。時間単位の年次有給休暇(5日以内に限る)を与える場合には、労使協定の締結が必要です(労働基準法第39条第4項)。

2 通勤時間や出張旅行中の移動時間中のテレワーク

使用者の明示又は黙示の指揮命令下で行われるものについては労働時間に該当します。

3 勤務時間の一部でテレワークを行う際の移動時間

使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じており、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、労働時間に該当します。

4 みなし労働時間制

労働時間の把握ができない場合、みなし労働時間制(労働基準法第38条の2)も利用できますが、以下の要件を満たす必要があります。

  • テレワークが自宅等会社以外の場所において行われること
  • パソコンが使用者の指示で常時通信可能な状態となっていないこと
  • 作業が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

 その他、テレワークにおけるフレックスタイム制の活用や、裁量労働制の対象となる労働者のテレワークも可能ですが、使用者は各労働者の労働時間や勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う責務を有します。

5 休憩時間の取り扱い

労働基準法第34条第2項では、原則として休憩時間を労働者に一斉に付与することを規定していますが、テレワークを行う労働者について、労使協定により、一斉付与の原則を適用除外とすることが可能です(労働基準法第34条第2項但書)。また、労使の合意により、これ以外の休憩時間を任意に設定することも可能です(労働契約法第8条)。

6 時間外・休日労働の労働時間管理について

テレワークにおける時間外労働又は休日出勤は、会社における勤務と同様、時間外労働・休日出勤に関する協定(36協定)の締結、届出(労働基準法第36条第1項)及び割増賃金の支払いが必要です(労働基準法第37条第1項)。また、深夜に労働した場合は、深夜労働にかかる割増賃金の支払いが必要です(労働基準法第37条第4項)。

(3) 賃金制度、社内教育の取扱い

 賃金制度について、会社で勤務する労働者と異なる制度を用いるのであれば、その取扱い内容について就業規則を作成又は変更し、届け出なければなりません(労働基準法第89条第2号)。また、テレワークを行う労働者に社内教育や研修制度に関する定めをする場合は、就業規則に規定しなければなりません(労働基準法第89条第7号)。

(4) テレワークで要する通信費・水道光熱費などの費用負担

労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、その事項を就業規則に定めなければなりません(労働基準法第89条第5号)。情報通信機器の費用、通信回線費用、文具や部品等の費用、水道光熱費が考えられます。

(5) 交通費・手当の扱い

交通費や手当について、支給要件が不明確である場合は、テレワークの対象者についても、会社で勤務する労働者と同様に扱う義務(交通費の支給等)を負う可能性があるため、就業規則等で支給要件を明確にする必要があります(労働基準法第89条10号)。

(6) 安全衛生関係法令の適用

労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を講じる必要があります。具体的には、以下のような措置をとり、労働者の健康確保を図ることが重要です。

  • 必要な健康診断とその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条から第66条の7まで)
  • 長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果等を受けた措置(同法第66条の8及び第66条の9)及び面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供(労働安全衛生規則第52条の2)
  • ストレスチェックとその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条の10)

(7) 自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備

自宅等、テレワークを行う作業場について、部屋の明るさや温度や湿度等、適切な作業環境の確保を図る必要があります。「事務所衛生基準規則」、「労働安全衛生規則」及び「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」等に衛生基準が規定されています。

(8) 労働災害の補償に関する留意点

テレワークを行う労働者については、会社における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負う(労働基準法第75条)ことから、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります(労働者災害補償保険法第3条)。ただし、私的行為等業務以外が原因であるものについては、業務上の災害とは認められません(労働者災害補償保険法第7条参照)。また、通勤災害とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所の往復等を合理的な経路及び方法で行うこと等によって被った負傷等をいい(労働者災害補償保険法第7条第2項)、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務では、通勤災害が認められる場合も考えられます。

(9) 情報セキュリティに関する留意点

会社の外で仕事を行う際には、端末の紛失・盗難、重要情報の盗聴、不正アクセス、外部サービスの利用等、その形態に応じて様々なリスクがあるため、それらリスクについての対策を講じる必要があります。

(10) 参考資料

テレワークモデル就業規則(厚生労働省)

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)

テレワークセキュリティガイドライン第4版(総務省)

作業環境整備のイメージ図(厚生労働省)

2.タイ

 2021年1月、タイ国内のCOVID-19の感染拡大を受け、タイ政府より、民間企業へテレワークを検討するよう要請が発せられています。しかし、具体的にテレワークに関する法令やガイドライン等は発せられておりません。

 従業員との間で締結している雇用契約書において、就業場所を定めている場合には、テレワークを行うことについて従業員から同意を得ておく必要があると解されます。また、タイ労働者保護法(Labor Protection Act)上、雇用契約書で定められた勤務時間を超過した場合には、超過時間分について割増賃金を支払う必要がありますので、テレワーク期間中においても、従業員の勤務時間を適切に管理・把握することが重要です。PC操作ログの確認、勤務開始時、終了時のWeb会議ツールによるミーティングの開催などの方法が考えられます。

 また、テレワーク時のセキュリティ対策についても注意する必要があります。ウィルス対策ソフトが確実に導入・機能しているかについての確認、USBなどの持ち運び可能な記憶媒体の紛失対策の制定、社外からの会社クラウドへのアクセス時の認証設定などの対策をすることが考えられます。

3.マレーシア

マレーシアでは、テレワークの導入に際して労働関係法令の改正はなく、新たなガイドラインも発行されていません。そして、テレワークについてもオフィスで働く場合と同様に労働関係法令は適用されます。

もっとも、MITI(国際貿易産業省)により発表されたプレスリリースとともに出されたFAQによると、テレワークは、それぞれの企業のニーズに沿ったWFH(Work From Home、在宅勤務)のガイドラインに従って実施されると規定されています。このプレスリリース及びFAQは、MITIが管轄する企業・事業所に適用されます。

 マレーシアでは日本のように就業規則を作成・届け出る法令上の義務はありませんが、未然に紛争を防止するため、多くの会社で社内規則をはじめとする就業規則が定められています。テレワークの導入についても、未然に紛争を防止するために必要がある項目は、社内(就業)規則に定めて法的拘束力を生じさせることが望ましいといえます。社内(就業)規則に法的な拘束力を持たせるためには、社内(就業)規則記載の労働条件につき労働者との間で合意が成立していると言えることが必要となるため、雇用契約書において社内(就業)規則記載の労働条件が適用される旨を記載すること、配布などの方法により社内(就業)規則の内容を認識させることが必要となります。具体的に記載する項目として、通信費や光熱費の負担、変更がある場合の始終業時刻、情報通信機器の貸与、情報セキュリティ対策等の事項について明確にしておくことが望ましいと考えられます。

4.ミャンマー

COVID-19に対応した職場環境の整備についてのガイドライン等は発行されていますが、特にテレワークについての法令やガイドライン等は公布されていません。雇用契約書において勤務場所を記載する必要があり、今後は勤務場所について自宅と規定したり使用者が指定できるような記載を行う必要があると解されます。また、ミャンマーでは停電が頻繁に起こり、かつ、自宅にインターネット回線を引いておらず携帯電話のテザリングでインターネットを利用するケースも多いことから、テレワークに適した環境とは言えない状況です。しかし、クーデターに伴うデモの発生により安全の観点等から出勤させないようにしている企業も多く存在します。その場合、在宅勤務を行わせると通常と同じ給与を支給する必要があります。他方、職種によっては自宅では何もさせることがないこともあります。しかし、会社が在宅を命じた場合には原則として全額の給与の支給が必要となります。従業員の同意を得ることにより給与の減額も可能であり、現状が長引く可能性もあることから、長引いても問題ないような措置を検討して行う必要があります。減額の同意については必ず書面で取得するようにして下さい。

5.メキシコ

(1) 立法動向

メキシコにおいては、1月11日にテレワークに関する連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)の改正を内容とする法令が公布され、翌日施行されました。その概要は以下のとおりです。なお、テレワークに関する労働安全衛生の細目を定める規格NOM(Norma Oficial Mexicana、法的拘束力を持つ規格基準)は未制定であり、当該法改正の施行から18か月以内に公布される予定です。

(2) 定義

改正法におけるテレワークの定義は、テレワーク労働者と使用者との間の連絡及び指揮のために主として情報通信の技術を用いて、職場におけるテレワーク労働者の物理的な存在を必要としないように、使用者の事業所以外の場所で有給活動を行うことからなる二次的な業務組織の形態をいうとされています。

テレワークに関する規定は、テレワーク形態の下で労働者の自宅又は労働者が選択した所在地において、時間の四十パーセントを超えて行われる労使関係に適用されるとしています。ただし、時折、または散発的に行われる労働は、テレワークとはみなされません。

(3) 労働条件の書面交付等

労働条件は、契約書面に記載し、各当事者はその写しを保管しなければなりません。その記載事項としては、1当事者の氏名、国籍、年齢、性別、住所、2業務との性質と特徴、3給与の額、支給日、支給場所又は支給形態、4労働者に提供される機器等(安全衛生義務に関する物を含む)、5テレワークに関連し労働者が負担した費用の支払いについて、使用者がテレワーク下の労働者に支払う内容と金額、7当事者間の連絡及び監督の仕組みスケジュール等、7その他当事者が合意する事項になります。

また、テレワークが労働条件の内容となった労働協約について労働者にその写しの交付が求められるほか、労働者に団体交渉等の知識に関する情報共有などが求められます。

(4) 使用者の義務

テレワークにおいては、使用者は次の特別な義務を負います。1コンピュータ機器、人間工学に基づいた椅子、プリンター等のテレワークに必要な機器の提供、設置、メンテナンスの計らい、2適時に仕事を受領し、定められた方法で、定められた期日に賃金を支払うこと、3テレワークを通じた仕事から得られる費用を想定すること、4労働安全衛生に関する規定を遵守して、テレワークで労働者に提供された物品の記録を保管すること、5テレワークで労働者が使用する情報やデータのセキュリティを維持するための仕組みを実施すること、⑥テレワーク労働者の労働終了時のつながらない権を尊重すること、7社会保障制度にテレワーク労働者を登録すること、及び8テレワークにおける労働者の情報技術の適応、学習及び適切な利用を保証するために必要な訓練及び助言の仕組みを確立することなどとされています。

(5) 労働者の義務

 他方、労働者についても、使用者から支給された備品等の管理、テレワークに起因する電力消費量・費用等の報告、職場の安全衛生に関する規定の順守、監督を受ける仕組みや運用体制への留意、データ保護方針等への注意等について義務が定められています。

(6) 労務管理

テレワークを監督するために使用される情報通信技術は、その目的に比例したものでなければならず、テレワークの下で労働者のプライバシーの権利を保証しなければならず、ビデオカメラ及びマイクは、特別な理由で、またはテレワークの様式の下で労働者が行う機能の性質が必要とする場合にのみ、テレワークを監視するために使用することができると限定されています。

6.バングラデシュ

バングラデシュは、縫製業などテレワークが難しい製造業が多く、COVID-19に対応した職場環境の整備についてのガイドライン等は発行されていますが、特にテレワークについての法令は公布されていません。バングラデシュ労働法で定められている就業規則の項目に「労働時間および休暇」が含まれており、テレワークにより労働時間や休暇が変更となる場合は、労働者と合意のうえ、検査官の承認を得て、就業規則を変更する必要があります。テレワークを導入する際の留意点としては、交通費等の手当の支給、光熱費や通信費の負担、情報通信機器の貸与、業務報告等コミュニケーションの方法、情報セキュリティ対策の徹底等について、労働者と協議のうえ、手当や経費について疑義が生じないよう明確化し、適切に労務管理する必要があります。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年2月25日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

2月7日までを対象期間とし、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県を対象に、緊急事態宣言が行われました(首都圏の一都三県は1月8日から、その他の府県は1月14日から)。対象都府県では、新規感染報告が過去最多を記録し続け、医療体制がひっ迫しており、緊急事態宣言の期間延長の可能性が議論されています。

今回の緊急事態宣言は、社会経済活動を幅広く止めるものではなく、具体的には、飲食を伴うものを中心として対策が講じられています。飲食店に対する営業時間短縮要請を行うと共に、外出自粛の要請、テレワークの推進などが行われています。(新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。加えて、検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。(水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は16,221名です。この内、11,287名が回復し、現在医療機関で治療中の者は4,858名となっています。また、非常事態宣言は、2月28日まで延長されています。

1月4日、バンコク都は、午後9時以降のレストランなどでの店内飲食を規制し、テイクアウトのみの提供を可能とする措置を発表しています。

1月6日、タイ政府は、サムットサコーン県、チョンブリ県、ラヨーン県、チャンタブリ県、トラット県の5県を対象として、往来許可証の提示や、検温等をチェックポイントで実施する、移動の制限等の規制を発表しています。

1月21日、バンコク都は、一時閉鎖されていた以下の施設の使用再開を発表しています。

ボードゲーム場、ゲームセンター、インターネットカフェ、高齢者介護施設、競技場(ボクシング場、競馬場等は含まない)、宴会場及び類似の施設、美容施設、フィットネス・ジム、スパ、マッサージ施設、ボウリング場、スケート・ローラーブレード場、類似の遊戯場、ダンス場

(2) 入国許可証(COE)の新登録システム

1月以降のタイ入国に関するCOEの申請について、新しいCOE申請システムが運用されています。手続きの流れは以下のとおりとなります。

  1. ビザ申請(再入国許可をすでに所持している場合は不要)
  2. COE新システムよりCOE申請
  3. COE登録の承認後、医療保険、航空券及びASQホテル予約確認書をオンラインシステムにて登録
  4. COE発行後、オンラインシステムよりCOEをダウンロード
  5. Fit to Fly(英文)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(英文)を用意

3.マレーシア

(1) 入国手続

1 出国前

  • アプリMySejahteraをダウンロードし、健康宣言を記入する
  • PCR検査(スワブ検査)を出国3日以内に受検査する(任意)

2 到着時

  • アプリMySejahteraで「旅行者」用のQRコードを読み取る
  • 体温測定、健康状態の確認の実施

3 到着後

体温測定、健康状態の結果及び出国前のPCR検査(スワブ検査)結果の有無により、扱いが異なります。

(a) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がある場合

  • 7日間の隔離施設入所
  • 5日目のPCR検査(スワブ検査)の受検
  • 14日目までのセルフモニタリング

(b) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がない場合

  • PCR検査(スワブ検査)の受検
  • 10日間の隔離施設入所
  • 8日目のPCR検査(スワブ検査)の受検
  • 14日目までのセルフモニタリング

(c) 症状があった場合

  • 症状のある旅行者への措置

(2) 移動制限令

1 はじめに

2021年感染症の予防と管理規則(感染地域内での措置)(移動制限)(No. 2)(PREVENTION AND CONTROL OF INFECTIOUS DISEASES (MEASURES WITHIN INFECTED LOCAL AREAS)(MOVEMENT CONTROL)(NO. 2) REGULATIONS 2021)が1月21日に公布され、同月22日から施行されています。

2 適用対象地域

  本規則は、1月22日から同年2月4日の間、以下の地域を対象に適用されます。

  • State of Johore
  • State of Kedah
  • State of Kelantan
  • State of Malacca
  • State of Negeri Sembilan
  • State of Pahang
  • State of Penang
  • State of Perak
  • State of Perlis
  • State of Sabah
  • State of Selangor
  • State of Terengganu
  • Federal Territory of Kuala Lumpur
  • Federal Territory of Putrajaya
  • Federal Territory of Labuan
  • Division of Sibu, State of Sarawak(*他の地区については、2021年感染症の予防と管理規則(感染地域内での措置)(条件付移動制限)(No. 2)(PREVENTION AND CONTROL OF INFECTIOUS DISEASES (MEASURES WITHIN INFECTED LOCAL AREAS)(CONDITIONAL MOVEMENT CONTROL)(NO. 2) REGULATIONS 2021)が適用されます。)

3 移動制限

感染地域内のある場所から別の場所への又はある感染地域から別の感染地域への移動は禁止されています。ただし、(a)の目的のために、(b)の条件を遵守して移動をすることは認められています。

(a) 移動目的

  1. 食品、医薬品、栄養補助食品、又は日用品を購入するため
  2. 食品、医薬品、栄養補助食品、又は日用品を供給又は配達するため
  3. ヘルスケア又は医療サービスを受けるため
  4. (a)及び(c)以外のエッセンシャルサービス提供者から商品を購入する又はサービスを受けるため
  5. 公務、司法上の義務又は権限を与えられた公務員により承認されたその他の義務を遂行するため
  6. エッセンシャルサービスを提供する、又はエッセンシャルサービスに関連する義務を履行するため
  7. 自然災害により影響を受けた人に人道援助を提供するため 又は
  8. 学習機関での学習に参加する、又は学習機関における義務を遂行するため

(b)移動の条件

  1. エッセンシャルサービスの提供者から食品、医薬品、栄養補助食品、日用品、又はその他の商品を購入する場合
  2. 住居から半径10 km以内(半径10km以内に購入できる場所がない場合、最寄りの場所)
  3. 同行者は1名のみ(同居者に限る)
  4. ヘルスケア又は医療サービスを受ける場合
  5. 住居から半径10 km以内(半径10km以内にサービスを受けられる場所がない場合、最寄りの場所)
  6. 同行者は2名まで
  7. 公務又は司法上の義務を遂行する場合

    権限を与えられた公務員からの要求を受けた場合、承認書の作成を受ける

       1 エッセンシャルサービスを提供するため、又はエッセンシャルサービスに関連する義務を遂行する場合

権限を与えられた公務員の要求に応じて、必要な証拠を提供する

  1. ヘルスケア又は医療サービス以外のエッセンシャルサービスを受ける場合

 権限を与えられた公務員の要求に応じて、必要な証拠を提供する

  1. 自然災害により影響を受けた者に人道援助を提供する場合
  2. 権限を与えられた公務員の要求に応じて、必要な証拠を提出する
  3. 関係当局の指示に従い、他の者を同伴することができる
  4. 学習機関での学習に参加するため、又は学習機関での義務を遂行する場合 

   権限のある役員の要求に応じて必要な証拠を提出する

(c) その他

その他に、試験を受けるための移動や特別な理由での移動に対する個別の許可についての定めが置かれています。

4 行列の禁止

行列への参加・関与は禁止されています。

5 集会の禁止

目的を問わず、感染地域内の施設での集会は禁止されています。ただし、関係当局の指示に従うことを条件に、モスク等での宗教活動及び葬儀のための集会は認められています。

6  エッセンシャルサービス

本規則におけるエッセンシャルサービスとは、以下の事業をいうものとされています。

(a) 製造業

  • 航空宇宙(部品、メンテナンス、修理及びオーバーホール)
  • 自動車(車両及び部品)
  • 飲食物
  • 梱包及び印刷
  • 家事用品、パーソナルケア用品、及び洗浄剤
  • ヘルスケア製品及び栄養補助食品を含む医薬品
  • 個人用保護具及び防火設備
  • 医療機器の部品
  • 電気・電子製品
  • 石油及びガス
  • 石油化学製品
  • 化学製品
  • 機械及び装置
  • ハンドグローブ製造用セラミックモールド
  • 鉄鋼
  • 個人用保護具製造用の繊維
  • 家具
  • 燃料及び潤滑油

(b) サービス業

  • 自動車(メンテナンスと修理)
  • 国防・警備
  • 金融
  • 銀行、保険、タカフル、ブルサなどの金融機関
  • 中央銀行によって認可、承認、または登録された機関
  • マレーシア証券委員会によって認可、登録、又は規制されている資本市場機関
  • 市議会及び地方自治体
  • 固形廃棄物の管理及び下水道
  • 公共の清掃
  • 施設の清掃及び衛生
  • 電気通信、インターネット、郵便、宅配便、及び放送を含む通信
  • グローバルビジネスサービスを含む情報技術、コールセンター
  • eマーケットプレイス、デジタル決済、ローカルeコマースサービスセンターを含むeコマース
  • 映画編集を含むスタジオでのデジタルクリエイティブコンテンツ開発
  • 質屋及び認可された貸金業者
  • ホテル及び宿泊施設
  • 獣医サービスを含む農業、漁業及び畜産
  • 農場、アナツバメの巣、馬の農場、動物加工工場、食肉処理場、家畜、畜産食品工場、ペットショップの管理
  • 疫病及び家畜生産の調整、家畜投入の調整、及び輸出入を含む家畜産業関連製品の管理
  • 動物の健康管理
  • 水及びエネルギーの供給の安全性、改善、保守、検針を含むユーティリティ
  • 会計士、弁護士、監査人、エンジニア、建築家を含む科学、研究開発、技術及びメンテナンスの分野における専門サービス
  • セキュリティ管理
  • 陸路、水路、又は空路による輸送
  • 港湾、埠頭、空港のサービス、及び貨物の荷役、輸送、水先案内、商品の保管又は集約
  • 司法及び法律サービス

(c) 建設

  • 重要なメンテナンスと修理作業
  • 主要な公共インフラ建設工事
  • 建設現場又は集約化された労働地区に労働者の宿泊施設を提供する建築工事

(d) 流通取引

  • 倉庫保管及びロジスティクス
  • 食品及び飲料の販売・配送
  • 小売、流通、卸売

(e) 農業生産物

  • 農業、漁業、畜産
  • 農業生産物

(f) その他

その他保健大臣によって決定された事業

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点のCOVID-19関連の規制としては、30名以上の集会禁止措置(通勤等は除外されます)及びヤンゴン地域における深夜0時から午前4時までの夜間外出禁止措置が維持されています。法令上、工場、店舗、飲食店等においてはガイドラインを順守し、グレードAを取得した場合にのみ操業を再開できるとされているものの、事実上多くの店舗がグレードAを取得しないまま操業を再開するなど、規制の一部は有名無実化しています。徐々に感染者数が減少しており、一時期は公園も封鎖されましたが、1月下旬より一定の時間帯は公園の封鎖が解除されるようになりました。

(2) 入国規制

国際旅客機の着陸禁止措置が続いております。12月下旬より、入国時のホテル隔離期間が15日間に延長されました。2月の日本からの救援便は4日・11日・18日・25日の4便が運航予定です。

(3) クーデター

 2月1日未明に与党NLDの幹部が拘束されました。正午(日本時間)時点において、1年間の非常事態宣言が発令され、国軍出身のミン・スエ副大統領が大統領代理として就任しました。立法・行政・司法の全権がミン・アウン・フライン国軍総司令官に移るとみられます。また、電話回線が遮断されており、空港等も一時的に閉鎖されており、今後の動向を注視する必要があります。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19感染者は、引き続き増加傾向にあり、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)では、1月18日の週には、赤が10州、橙19州、黄2州、緑1州となり、後退する州が多く出ています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、感染が拡大傾向にある州では、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、1月12日にメキシコ政府合意のもと2月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。なお、米国疾病予防センター(CDC)は、1月26日より米国への空路での入国に際し、2歳以上のすべての人に対して、出発前3日以内に実施したウイルス検査の陰性証明を提示することを義務付けています。メキシコへの出入国に際し米国を経由する場合にも適用されます。また、メキシコにおいては、空路による出入国に際し、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ内務省が発表した2020年9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国の産休・育休に関する法制度の概要

1.日本

(1) 産休(産前産後休業)

1 産休期間

労働基準法では、母体の保護の観点から必要な産休を定めています。使用者は、6週間(双子以上の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者を就業させることはできません(第65条(1))。また、使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させることができません(第65条(2))。産後休業は、本人が就業を希望しても与えられなければならない強制休業ですが、産後6週間を経過した女性が請求した場合、医師が支障がないと認めた業務に就かせても差し支えありません(第65条(2但書))。また、産前産後休業期間中及びその後30日間は懲戒理由であっても解雇することはできません(第19条)。

2 労働時間

妊産婦(妊娠中の女性および産後一年を経過しない女性)については、就業時間の制限に関する規定があります。妊産婦から請求があった場合は変形労働時間制であっても週40時間、1日8時間以上の労働をさせてはなりません(第66条(1))。また、36協定を締結していても、時間外労働、休日労働、深夜労働が禁止されています(第66条(2)(3))。使用者は、妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければなりません(第65条(3))。

3 賃金の支払い

産休中の賃金の支払いについては労働基準法の規定はありませんが、産休中の給与が支払われない又は給与の満額が支払われない場合は、健康保険から賃金の3分の2相当額の出産手当金が支給されます(健康保険法第102条)。また、産休中は、事業主の年金事務所への申出により、厚生年金・健康保険料が本人負担分及び事業者負担分がともに免除されます。

(2) 育休(育児休業)

1 育休期間

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育介法」といいます)」により、1歳に満たない子供を養育する男女労働者は、会社に申し出ることにより、子供が1歳になるまでの間で希望する期間、育児のために休業できる旨が定められています(育介法第5条(1))(一定の場合は2年まで延長が可能。後述)。家族などで、事実上、子供の世話が可能な者がいても、関係なく取得することができます。有期契約労働者が育児休業を取得できる要件(育介法第5条(1但書))は以下の通りです。

(a) 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されること

(b) 子供が1歳6か月(2歳までの休業の場合は2歳)に達するまでに労働契約の期間が満了することが明らかでないこと

使用者は、取得の要件を満たす労働者から請求があった場合、育児休業を拒むことはできません(育介法第6条)。また、使用者は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(育介法第10条)。

 子供が1歳に到達した日において当該労働者又は配偶者が育児休業をしている場合で、以下のいずれかに該当する場合は、1歳6か月に達する日まで育児休業をすることができます(育介法第5条(3)、施行規則第6条)(有期契約労働者でその配偶者で子供の1歳到達日において育児休業をしている場合は、上記(a)、(b)のいずれにも該当し、かつ下記(a)、(b)のいずれにも該当していることが必要となります。)。さらに、1歳6か月到達時点において当該労働者又は配偶者が育児休業をしている場合で、これらの事情がある場合は、再度申請することにより2歳到達日まで育児休業を延長することができます(育介法第5条(4)、施行規則第6条の2)。

(a) 保育所に入所を希望し、申込みをしているが、子供が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合

(b) 子の養育を行っている子の親である配偶者で、子供が1歳に達する日後の期間について、常態として当該子供の養育を行う予定であった者が、死亡や健康上の理由により子供の養育が困難になった場合等、一定の事情に該当する場合

育児休業は原則として同一の子について労働者一人につき1回限り取得することができますが(育介法第5条(2))、産後8週間以内の期間内に父親が育児休業を取得した場合は、再度父親が育児休業を取得することができるようになりました(育介法第5条(2括弧書))。

2 賃金の支払い

 雇用保険から「育児休業給付」が支給されます(雇用保険法第61条の7(1))。

3 その他の関連制度

3歳までの子供を養育している労働者が利用できる制度として、短時間勤務制度の義務化(育介法第23条)、所定外労働の免除の義務化(育介法第16条の8)、子供の看護休暇(育介法第16条の2)の拡充などの制度があります。

働き方改革、少子化対策、男性の育児参加の推進などの政府による取り組みや社会の変化に応じて、関連法令の改正が進んでおり、改正に応じた、就業規則の見直しや労働環境の改善が求められます。法令の規定を上回る制度や独自の子育て支援制度を設けている企業も増えており、優秀な人材の確保のために、重要な取り組みのひとつと言えます。

2.タイ

(1) 産休

 労働者保護法(Labor Protection Act)第41条第1項により、1回の出産につき、98日まで産休を取得することができます。出産前の検査のための休暇も、当該産休に含まれます。この産休期間中について、最大45日分まで、労働日と同額の賃金を受け取ることができます(同59条)。

(2) 育休

 タイにおいては、育休についての法制度は存在していません。両親や祖父母に子供を預け、産休後すぐに職場に復帰することも多いようです。会社によっては、育休制度を用意している場合もあるようです。

(3) 社会保険による給付金

 上記法制度とは別に、社会保険による給付金制度が存在しています。

  1. 出産手当

出産前の15か月間に、少なくとも5か月間の社会保険料を支払っている必要があります。

・ 出産一時金:一回の出産につき15,000バーツ(回数制限なし)

・ 産休補償給付金:平均賃金の50%を90日分(2回まで)

・ 妊婦検診費用:以下の通り、5回、合計1,500バーツまで

  妊娠12週目まで  実際に支払った額(上限500バーツ)

  妊娠12週目を超え20周目まで  実際に支払った額(上限300バーツ)

  妊娠20週目を超え28周目まで  実際に支払った額(上限300バーツ)

  妊娠28週目を超え30周目まで  実際に支払った額(上限200バーツ)

  妊娠32週目を超え40周目まで  実際に支払った額(上限200バーツ)

       2. 育児手当

手当の対象となる月の前36か月間に、少なくとも12か月間の社会保険料を支払っている必要があります。

・ 子供1人につき毎月800バーツ(子供の出生から6歳になるまで。同時に3人まで。養子を除く。)

3.マレーシア

(1)出産休暇

 マレーシアの雇用法(Employment Act 1955)は、女性労働者に対して60日間の出産休暇を取得する権利を認めています。

 産休・育休という区分はなく、この60日間の出産休暇を産前・産後にどのように振り分けるかは各労働者に委ねられていますが、原則として、出産の30日よりも前から取り始めることはできず出産後から取り始めることもできないものとされています。

(2) 出産手当

 また雇用法は、

  1 出産の直前9カ月の間に合計90日以上その雇用主に雇用されており、

  2 出産の直前4カ月のいずれかの時点でその雇用主に雇用されていたこと

を条件として、出産休暇の間、女性労働者は雇用主から出産手当を受け取ることができる旨を定めています。出産手当の額は、1日の通常の賃金額又は人的資源大臣が定める計算方法で計算した額のうち有利な方の金額とされています。ただし、その出産の時点で既に5人以上の生存する子どもを有する女性労働者は、出産手当を受給する権利を有しません。

 また、女性労働者は出産予定日の直前60日の間にその雇用主に出産予定日及び出産休暇を開始しようとする日を通知しなければならず、通知を行わないままそのような休暇を開始したときは、雇用主は通知がなされるまで女性労働者に対する出産手当の支払いを留保することができます。

 なお、退職を控えた女性労働者であってその退職の日から4カ月以内に出産することを知っているかそう信じる理由がある者は退職の前にその雇用主に対して妊娠を通知しなければならず、これを行なわなかった場合には女性労働者はその雇用主から出産手当を受給する権利を与えられないものとされています。もっとも、通知を行わなかったことに合理的な理由がある場合等にはこの限りではありません。

(3) 解雇規制

 雇用主は、女性労働者が出産休暇を取得する権利を有する期間中にその女性労働者の雇用契約を終了することはできません(廃業を理由とする終了の場合を除く)。また、女性労働者が妊娠・出産に起因する疾病により業務に適さない旨の登録医療従事者の診断を得て期間満了後も引き続き欠勤をするときは、期間満了後の欠勤が90日間を超えるまでは、その雇用主は当該女性労働者を解雇し、又は解雇の予告を行なうことができないとされています。

(4)適用範囲

 マレーシアの雇用法は本来賃金が一定額(月額RM2,000)以下の労働者等に対してのみ適用されるものとされていますが、上記(1)から(3)で述べた規制は所得に関係なく雇用契約に基づいて勤務する全ての女性労働者に適用されます。

4.ミャンマー

(1) 産休・育休に関する法規制

産休・育休に関しては、社会保障法(Social Security Law)及び休暇及び休日法(Leave and Holidays Act)により規定されています。

(2) 社会保障法(Social Security Law)

社会保障基金(Social Security Board)に加入している被保険者の労働者には、同法が適用されます。

1 産休・育休の期間

拠出期間が12か月間のうち6か月以上の場合、妊娠中の女性は合計14週間(産前6週間、産後8週間)の産休を取得することができます。双子の場合は追加で4週間取得することができ、流産の場合は最大6週間の産休を取得することができます。

一歳未満の子どもを養子に迎えた場合、最大8週間の育休を取得することができます。父親の育休は15日間取得することができます。

拠出期間が12カ月間のうち6か月に満たない場合、妊娠中の女性は合計12週間(産前6週間、産後6週間)の産休を取得することができます。流産の場合は最大6週間の産休を取得することができます。育休は認められません。

2 給付金

拠出期間が12か月間のうち6か月以上の被保険者の労働者の場合、以下の現金給付を社会保障基金から受けることができます。

出産給付金…年間平均賃金の70%

出産費用手当…1人の場合1カ月の平均賃金の50%、双子の場合1カ月の平均賃金の75%、三つ子の場合1カ月の平均賃金の100%

流産の場合…産休の期間の平均賃金の70%

父親の育休給付金…年間平均賃金の70%

父親の育休の出産費用手当…1人の場合1カ月の平均賃金の25%、双子の場合1カ月の平均賃金の37.5%、三つ子の場合1カ月の平均賃金の50%。母親も被保険者である場合、同手当は受け取ることはできません。

医療保障…母親に対する認可を受けた病院又はクリニックでの無償治療。1歳までの子どもの治療

(3) 休暇及び休日法(Leave and Holidays Act)

社会保障基金に加入していない労働者には、同法が適用されます。

 3  産休・育休の期間

休暇及び休日法に基づき、妊娠中の女性は合計14週間(産前6週間、産後8週間)の産休を取得することができます。流産の場合は最大6週間の産休を取得することができます。

父親の育休は認められません。

5.メキシコ

メキシコでは、妊娠した女性は、産前産後各6週間の休暇を取得することができます。また、社会保険庁(Instituto Mexicano del Seguro Social: IMSS)の病院または産業医など使用者が労働者に対して提供する医療サービスの主治医の許可がある場合、当該労働者は、使用者の意向や当該労働者の仕事の性質を考慮し、産前休暇のうち最大4週間を産後休暇に変更することができます。さらに、子どもが何らかの障がいをもって生まれた場合や、入院が必要な場合は、それを証明する診断書を以て産後休暇を最大8週間まで延長することも可能です。この場合の休暇は給与100%が支給される有給休暇となります。

なお、社会保険の被保険者が妊娠した場合、1給付金の支給開始日(出産予定日の42日前)以前12か月の間に30週以上の社会保険料の納付があること、2IMSSの病院が発行する妊娠していること及び出産予定日が記された診断書があること、3給付金対象期間に報酬を伴う仕事を行わないことを条件として、出産予定日の前後42日間、基準給与額(給与額に福利厚生を含めた額/Salario Base de Cotización: SBC)の100%の額の給付金を受け取ることができます。出産日が予定日と異なった場合は、産後42日間については実際の出産日より起算され、これにより出産前の未就業期間が42日間を超える場合は、その超えた期間について、SBCの60%額が支給されます。この給付金を被保険者が受け取ることにより、使用者は、この休暇中の給与を、社会保障法で定められた限度額まで支払う義務を免除されます。

その他、妊娠や出産によって就業が困難な場合には、必要な期間この休暇を延長することが可能です。当該延長期間については、労働者は60日間を超えない期間において給与の50%の額を受け取る権利があります。

また、乳児を養子とした場合、親となる女性労働者は、迎え入れた日の翌日から6週間の有給休暇を取得できます。一方、男性の労働者に対しては、子どもが誕生した場合や養子を迎え入れた場合に5労働日の有給休暇を与えることが使用者の義務として定められています。

なお、 上記のほか、日本のように1歳未満の子を持つ労働者が子の養育のために取得する育児休業を認める法制度はありません。

6.バングラデシュ

(1) 産休期間

労働法にて、産前産後8週間ずつの産休が定められています(労働法第47条(3))。使用者は、産前10週間産後10週間以内の女性の労働者に、重労働や長時間の立ち仕事、健康を害する可能性のある仕事をさせることはできません(労働法第45条(3))。

(2) 出産給付金

出産前に6か月以上勤務している労働者は、産前8週間産後8週間について出産給付金を受ける権利があります(労働法第46条(1))。ただし、既に2人以上の子供がいる場合は、出産給付金支給の対象外です(同条(2))。年次有給休暇および医療休暇は与えられ、更に休暇が必要な場合は、使用者は無給休暇を与えることができます(労働規則第38条)。出産給付金支給の対象となっている労働者は、出産8週間前または産後7日以内に口頭もしくは書面にて使用者に申請しなければならず(同条(1)(2))、出産給付金の申請は、労働規則に様式(Form17、18、19)が提供されています(労働規則第39条)。出産給付金の支給時期について、対象となる労働者の希望に応じて、産前8週間以内である旨の医師による証明書の発行日から3日以内に産前8週間の出産給付金の支給、出産証明書の発行日から3日以内の産後8週間の出産給付金の支給等が可能です(労働法第47条(4))。出産給付金額は、申請があった日の直近3か月の実働賃金をもとに算出され、現金で支給されます(労働法第48条(1)(2))。産前6か月産後8週間以内に、十分な理由なく解雇が通知された場合でも、出産給付金を受ける権利は失われません(労働法第50条)。出産給付金に関する規定に違反した場合は、25,000タカ以下の罰金が科せられます(労働法第286条)。

(3) 育休

バングラデシュでは、育児休業・育児休暇についての規定はありませんが、独自に休暇制度をもうける民間企業もあり、使用者の裁量に任されています。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年1月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

11月からの感染者数の増加傾向が続いており、感染が拡大しています。政府によるGo Toトラベルの運用が全国で停止され、東京、北海道、大阪、愛知で飲食店やカラオケ店の時短営業が要請されるなど、経済活動に対する規制が厳しくなりつつあります。また、英国で感染力が高い新型コロナウイルスの変異種が流行していることを受けて、12月23日に、英国からの新規入国の一時停止(日本国籍者は対象外)、英国への短期出張からの帰国・再入国時における特例措置の一時停止(日本国籍者も対象)等、同国に対する新たな水際対策措置が決定されました。

新型コロナウイルス感染症に関する英国に対する新たな水際対策措置(外務省)

(2) 入国規制

1 上陸拒否措置等

(a) 上陸申請日前14日以内に上陸拒否の対象である152の国・地域に滞在歴のある外国人については、「特段の事情」がない限り、上陸が拒否されます。

(b) 上陸拒否の非対象地域からの入国は、在外公館において査証の発給を受ける際、防疫措置に関し、受け入れ企業・団体による誓約書を提出する必要があります(日本人・永住者の配偶者又は子等、人道上の配慮の必要性がある場合は誓約書不要)。また、「短期滞在」は商用に限られます。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(法務省)

2 検疫の強化(日本国籍者も対象)

14日以内に、上記①の上陸拒否対象国に滞在歴のある入国者は、PCR検査の実施対象となります。また、全ての地域からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で14日待機し、国内において公共交通機関を使用しないよう要請されます。

水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)(厚生労働省)

3 査証に関する制限(既に発給された査証の効力停止、査証免除措置の停止)

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省)

4 航空機の到着空港の限定等

(3) 国際的な人の往来の再開 (外務省の関連サイト

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域(タイ、ベトナム、豪州、ニュージーランド、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、ブルネイ、韓国、中国、香港、マカオ、モンゴル)との協議を開始し、以下の国・地域で、① ビジネストラック、② レジデンストラックのスキームの利用が開始されています。これらのスキームの利用対象者は以下の通りです。

(a) 短期滞在以外の全ての在留資格又は短期商用査証により本邦に入国する者を対象とし、詳細につい

ては対象国・地域ごとに調整。

(b) 日本又は当該対象国・地域に居住する者(当該対象国・地域の国籍保有者だけではなく、第三国国籍 

の方を含む)であって、日本と当該対象国・地域の間の航空便(直行便の他、経由する国・地域に入国・

入域許可を受けて入国・入域しないことを条件に経由便も可。)を利用する者。

1 ビジネストラック: シンガポール、韓国、ベトナム、中国

2 レジデンストラック: タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、      

ブルネイ、韓国、中国

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は5,829名です。この内、4,116名が回復し、現在医療機関で治療中の者は1,653名となっています。また、非常事態宣言は、2021年1月15日まで延長されています。

12月19日、タイ保健省は、バンコクに隣接するサムットサコーン県の水産市場にて大規模なCOVID-19のクラスターが発生し、548名の新規感染者が確認されたと発表しました。これにより、サムットサコーン県では12月19日から1月3日まで、以下の制限措置がとられています。

・中央エビ市場、娯楽施設、教育機関、運動場、ムエタイ場、その他の多くの人が集まる施設の閉鎖

・食堂について、テイクアウトのみ営業を許可

・午後10時から翌朝5時までの外出制限への協力要請

・外国人のサムットサコーン県への出入りを禁止

また、12月20日には、バンコク都感染症対策委員会による緊急会見がなされ、以下の対策が実施されています。

・参加者が密となるイベントや娯楽施設、ムエタイジム、各種市場等の当面の自粛要請

・公園での密となる活動や、寺院での宗教行事の自粛要請

・年末年始の各種イベントの自粛要請(都主催の行事は全て中止が発表されています)

・都内の官庁、民間企業に対する、14日間のWork From Homeの要請

・都営の教育機関で、サムットサコーン県に近い区内の学校については、14日間の休校措置

(2) 入国許可証(COE)の新登録システム

2021年1月以降のタイ入国に関するCOEの申請について、新しいCOE申請システムが運用されています。手続きの流れは以下のとおりとなります。

  1. ビザ申請(再入国許可をすでに所持している場合は不要)
  2. COE新システムよりCOE申請
  3. COE登録の承認後、医療保険、航空券及びASQホテル予約確認書をオンラインシステムにて登録
  4. COE発行後、オンラインシステムよりCOEをダウンロード
  5. Fit to Fly(英文)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(英文)を用意

(3) 日本からの観光目的でのタイ入国

タイへの入国が観光目的の場合に限り、一回の入国につき30日以内の滞在であればビザが不要となる、観光ビザ免除の制度が開始されています(2021年9月30日までの間は、45日間滞在が許可されます)。この場合でも、タイ入国後の14日間隔離及び、入国前のCOEの取得が必須となっております。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

執筆時点(2020年12月24日時点)で、マレーシアは回復のための活動制限令(RMCO)の対象地域、条件付活動制限令(CMCO)の対象地域、強化された活動制限令(EMCO)の対象地域が混在した状態にあります。同日時点で、クアラルンプールは全域がCMCOの対象とされています(その他の対象地域については大使館のウェブサイト等でご確認ください)。現在のCMCOは2020年12月31日までの施行が予定されていますが、更に延長される可能性があります。

 (マレー半島における)CMCOの適用対象地域における現在の規制は以下のとおりです(抜粋)。

1 移動への制限

地区(district)間の移動制限が解除され、CMCO地域内及びRMCO地域への移動は可能です。

2 店舗等の営業時間への制限

引続き店の種類ごとに、営業時間の制限が定められています。

3 経済活動への制限

経済産業部門は、活動基準(SOP)に準拠して活動を継続することが可能とされています。

4 その他活動への制限

・非接触スポーツは可能とされています。ただし、散歩・ジョギング・サイクリング・エアロビクス・ハイキン   

グ・釣り等のスポーツ活動は身体的距離を確保して10人以内に制限されています。

・スポーツ施設の運営及び利用は、身体的接触を伴わないトレーニング目的で、収容能力の50%以内の 

範囲であれば、SOPの遵守を条件に可能とされています。

・CMCO地域における観光・文化活動についても、SOPの遵守を条件に、2020年12月19日から活動可

能とされています。

(2) 入国規制

マレーシア入国時の隔離期間を従前の14日間から10日ないし7日に短縮する旨が発表されています。具体的には、マレーシアへの出発3日前にスワブ検査を受けた場合にはマレーシア入国後に7日間の隔離に、出発前にスワブ検査を受けられない者はマレーシア入国時にスワブ検査を受けその結果が陰性であれば10日間の隔離に服するものとされています(7日間への短縮を希望する場合には「唾液検体による検査」ではなく「スワブ検査」が必要となることに注意が必要です)。もっとも、執筆時点(2020年12月24日時点)では、短縮された隔離期間がいつから適用されるかについては明らかにされていません。

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点のCOVID-19関連の規制としては、30名以上の集会禁止措置(通勤等は除外されます)及びヤンゴン地域における深夜0時から午前4時までの夜間外出禁止措置が維持されています。法令上、工場、店舗、飲食店等においてはガイドラインを順守し、グレードAを取得した場合にのみ操業を再開できるとされているものの、事実上多くの店舗がグレードAを取得しないまま操業を再開するなど、規制の一部は有名無実化しています。国内線については12月16日より禁止措置が解除され、徐々に便が復活しています。

(2) 入国規制

国際旅客機の着陸禁止措置がついに解除され、1月1日から再開する旨の文章が公開されました。しかし、具体的にどのような形になるか不明であり、陰性証明書の持参や隔離措置の要求はすぐには解除されないと思われ、具体的にどのような運用になるのか留意が必要です。1月の救援便は7日・14日・21日・28日の4便が運航予定となっています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19感染者は、引き続き増加傾向にあり、12月7日の週は感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)では、橙の州が14州から24州と増加し、12月21日の週には、メキシコシティ、メキシコ州の首都圏を含む3州が赤、橙24州、黄3州、緑2州となり、橙のうち、ソノラ州、サカテカス州、グアナファト州、ケレタロ州、イダルゴ州、アグアスカリエンテス州は赤に転じうると発表されました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、感染が拡大傾向にある州では、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等の営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。また、赤に転じたメキシコシティでは、12月19日より1月10日まで必要不可欠な活動以外の経済活動は認めず、飲食店もデリバリーもしくは持ち帰りサービスのみと制限されています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、12月11日にメキシコ政府合意のもと2021年1月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。なお、米国疾病予防センター(CDC)は12月2日、メキシコのCOVID-19リスクレベルをこれまでのレベル3からレベル4に引き上げ、メキシコから米国への入国に際し、入国の1~3日前にウイルス検査を受けること、目的地や航空会社の要請や推奨事項に従うことを呼び掛けています。空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ内務省が発表した9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国の食品輸入手続きに関する法規制の概要

1.日本

(1) 食品の輸入に関する法律

 食品の輸入に関する主な法律として、① 食品衛生法、② 植物検疫法、③ 家畜伝染予防法、④ 酒税法、⑤ 食糧法、塩事業法等、が挙げられます。

1 食品衛生法

販売等の目的で食品を日本に輸入する場合、食品衛生法により、輸入者は検疫所に輸入届出を行わなければなりません。輸入届出が行われていない食品を販売したり、飲食店で調理に使用するなど、営業上で使用することはできません。輸入食品の安全性については、輸入者が製造者と同等の責任を負うため、法令を確認し、違反食品を輸入しないための事前調査が重要です。食品の欠陥により消費者に健康被害が出た場合、債務不履行責任や不法行為責任のほか、製造物責任法に基づく無過失責任まで負う可能性があります。確認すべき主なポイントとして、(a) 食品の成分規格、製造基準等、(b) 添加物、(c) 医薬品成分の含有の有無、が挙げられます。

2 植物検疫法

有用な植物に損害を与えるおそれがある病害虫が日本に侵入することを防止するため、輸入される植物に対し、植物防疫法に基づく検疫が義務づけられています。輸送形態や、量の多少、商用・個人消費用等の用途に関係なく全て検疫の対象となりますので、注意が必要です。植物防疫法では、植物を、(a) 輸入禁止品、(b) 検査不用品、(c) 輸入検査品の区分に分けており、輸入する植物の区分を確認のうえ、定められた検査の申請、手続きを行う必要があります。

3 家畜伝染予防法

牛肉、豚肉などの食肉や、ハム、ソーセージなどの食肉製品を介して、家畜の伝染病が国内に侵入するのを防止しています。乳製品も検疫の対象です。貨物や携帯品などの輸送形態を問わず、また輸入する量の多少や商用・個人消費用等の用途に関わらず、動物検疫の対象となります。(a) 輸入検査必要、(b) 輸入検査不要、(c) 輸入禁止、(d) 輸入停止、の区分があり、輸入品の種類や生産国によって区分が異なりますので、事前の確認が必要です。

4 酒税法

酒類(アルコール分1度以上の飲料)を販売目的で輸入する場合、輸入前に酒類販売業免許を取得しておく必要があります。輸入通関時には食品衛生法に基づく輸入届出が必要です。飲食店営業者が、自己の営業場で顧客に飲用させるために酒類を輸入し、他店や顧客に未開封の種類を販売しない場合、酒類販売業免許は不要ですが、営業上使用目的の輸入に該当するため、食品衛生法に基づく輸入届出は必要です。

5 その他(食糧法、塩事業法等)

 国民への安定的な供給の確保、価格の安定、国内生産者の経営の安定等を目的とし、規制の対象となる品目が個別の法令に定められています。主な法律と品目は以下の通りです。

食糧法

塩事業法

砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律

畜産経営の安定に関する法律

:米穀、麦、メスリン、ライ小麦

:塩

:砂糖、でんぷん

:乳製品

 その他、外国為替及び外国貿易法は、外国貿易などの対外取引の正常な発展、日本や国際社会の平和・安全の維持などを目的に、必要最小限の管理又は調整を行うための法律で、特定の貨物の輸入、特定の国・地域を原産地・船籍地とする貨物の輸入などを行う場合には、経済産業大臣の許可や承認が必要です。

食品の輸入から販売までの流れにおける関連法令

(出典:一般財団法人対日貿易投資交流促進協会「食品輸入の手引き」をもとに筆者が作成)

2.タイ

(1) 食品輸入に関する一般規制

食品の輸入に関しては、Food Act B.E.2522(以下、「法」)により規制されています。保健省から許可を得ていない限り、販売のための食品輸入をすることはできません(法第15条第1項)。省令により、許可申請の詳細、手続及び条件が定められています(同条第2項)。

食品輸入許可、食品登録許可、また食品によっては表示許可の取得が、食品輸入の際、輸入者が行うべき基本的な手続きとなります。

(2) 食品輸入許可申請

以下のとおりの分類が行われています。

グループ1:特定管理食品  (例)牛乳、アイスクリーム、乳製品等

グループ2:品質規格管理食品  (例)ミネラルウォーター、チョコレート、油脂、茶、コーヒー、バター等

グループ3:表示管理食品  (例)パン、ガム、あめ、調理済み食品等

グループ4:一般食品  グループ1から3以外の全ての食品

上記分類により、食品輸入申請の際の必要書類や、食品登録の有無や表示許可の有無などが異なります。この分類の定義は、あいまいな点もあるため、どの分類に該当するかは、申請前にFood and Drug Administration:FDA(食品医薬品局)に確認すべきでしょう。食品を保管する場所を確認するため、食品保管施設の設置場所を示す地図、食品保管施設内部図面、食品の品質を維持するための設備を示す書類、半径100 メートル以内の食品保管施設近隣建物の地図などが必要となります。

 必要書類をFDAに提出し、審査を経て問題がなければ許可証が発行されます。その後、手数料を支払い、食品輸入許可証を受領する流れとなります。

(3) 食品登録許可申請

 上記分類のうち、グループ1から3については輸入に際しFDAのワンストップサービスにおいて食品の登録を行う必要があります。申請後、審査を経て食品登録番号が発行されます。

(4) 表示許可申請

法第31 条において、上記分類グループ1の特定管理食品については、事前に食品の成分表を登録しなければならない旨、規定されています。特定管理食品以外でも、グループ2および3、サプリメントや食品に含まれる成分によっては、この成分表の登録が必要となる場合があります。

 申告に際しては、(1)食品の名称(2)食品を構成する材料の名称、分量(3)容器の容量(4)表示(5)製造者の名称及び場所(6)政府機関または委員会が認める機関の分析結果(7)商品の成分表登録に関するその他事項を通知する必要があります(法第35 条)。

3.マレーシア

(1) はじめに

食品の輸入を一般的に規制する法律としては、関税法(Customs ACT 1967)及び1983年食品法(Food Act 1983)があります。

(2) 1967年関税法(Customs ACT 1967)

1 輸入品目規制

1967年関税法の下位規則である2017年関税(輸入禁止)令(Custom (Prohibition of Imports) Order 2017)は一定の品目について規制を課しており、規制対象となる品目は、(a) 輸入が完全に禁止される品目(第一表)、(b) 輸入ライセンスを要する品目(第二表)、(c) 一定の手続を要する品目(第三表)、(d) 一定の規格及び手続を要する品目(第四表)という4分野に分かれます。

2 (a) 輸入が完全に禁止される品目(第一表)

輸入が完全に禁止される品目のうち、食品と関係しうるものとして蜂の巣(蜂蜜が含まれているか否かを問わない)があります。

3 (b) 輸入ライセンスを要する品目(第二表)

輸入ライセンスを要する品目に含まれる食品の例として、米や砂糖があります。

4 (c) 一定の手続を要する品目(第三表)

このカテゴリに含まれる食品の例として、肉類、魚介類があります。これらの食品の輸入については、品目に応じて、マレーシア検疫検査サービス局(MAQIS)による輸入許可の取得等の手続が要求されます。

5 (d) 一定の規格への適合及び手続を要する品目(第四表)

このカテゴリに含まれる食品の例として、小麦粉、一部の野菜(じゃがいも、トマト、玉ねぎ、キャベツ、にんじん等)(5kgを超過する場合)、ココナッツ(3kgを超過する場合)、一部の果物(バナナ、アボカド、ガバ、マンゴー、オレンジ等)(3kgを超過する場合)があります。

(3) 1993年食品法(Food Act 1993)

輸入される食品は、1983年食品法及びその下位規則である1985年食品規則(Food Regulation 1985)が定める安全性や表示に関する要件を満たすものでなければなりません。同法及び同規則によって規制されている食品の輸入に際しては、事前に輸出局の所管官庁により発行された衛生証明書(Health Certificate)、獣医局衛生証明書(Veterinary Health Certificate)、分析証明(Certificate of Analysis)等を取得する必要があります。

(4) 輸入時の手続 

食品の輸入手続の基本的な流れは以下のとおりです。これらの手続に加えて、品目に応じて上記規制に基づく手続が要求されることとなります。

1 食品の輸入者等はFood Safety Information System of Malaysia(FoSIM)に登録をします。

2 食品の輸入者等は個々の輸入に際しCustoms Information System(CIS)輸入の申告をし、FoSIMを通じて輸入の詳細(目的、食品の詳細等)に関する情報を提出します。

3 到着した食品に対し保健省(Ministry of Health)の職員による検査が実施されます。この検査の内容はFoSIMを通じて提供された情報に基づくリスク評価によって決められます。

4 課税対象となる場合、輸入者等は関税を支払います。

5 関税の支払及びその他の要件が満たされていると判断した場合、税関は輸入を承認します。

4.ミャンマー

(1) 食品輸入手続きに関する法規制

ミャンマーには食品を含めた物品の輸出入について広範に規制する輸出入法が存在し、同法及び関連通知に従い食品輸入を行う必要があります。

(2) 手続きの流れ

まず企業は、2020年10月22日に発布された通知第68号で規定されているH.S Codeに基づき、輸入ライセンスを申請する必要があるか否かを確認する必要があります。ライセンスが必要である場合、申請のためにまずは①輸出入業者登録証明書及び②保健スポーツ省下の食品医薬品局(FDA)から輸入推薦状及び衛生証明書を取得する必要があります。その後輸入ライセンスの取得となります。

(3) 輸出入業者登録証明書

①の輸出入業者登録証明書の取得にあたり、まず企業はTrade Netのメンバーになる必要があります。その後、以下の必要書類を揃えることでウェブサイト(http://myanmartradenet.com/)を通して申請することができます。Trade Netのメンバー登録も同ウェブサイトより申請可能です。証明書の有効期限は5年間で、料金は200,000チャットになります。

  1. カバーレター
  2. 会社登記簿及びCompany Extract(双方ともにMyanmar Companies Online (MyCO)より取得)
  3. 取締役リスト(氏名、役職、住所、顔写真及び各取締役の署名の情報を含めること)
  4. 取締役のパスポート又はNRCの写し
  5. もしあれば、各許可証(MIC許可証、SEZ許可証、卸売又は小売事業ライセンス)

(4) 輸入推薦状及び衛生証明書

2の輸入推薦状及び衛生証明書について、双方とも食品医薬品管理局(FDA)に以下の必要書類を揃え申請する必要があります。

-輸入推薦状-

(a) 輸入推薦状の申請書(Form No.1)

(b) 誓約書(Form-D)

(c) 輸入食品の仕様書

(d) 食品の成分リスト

(e) 輸入国の組織からの証明書(GMP認証証明書/製品登録書/自由販売証明書等)

(f) 食品のサンプル

(g) パッキングの種類及びサイズのリスト

(h) 料金(商品ごとに50,000チャット)

-衛生証明書-

(a) 衛生証明書の申請書(Form B)

(b) パッキングリスト

(c) 輸入推薦状

(d) 船荷証券(Bill of Landing)

(e) 請求書

(f) ミャンマーで流通する食品サンプル

(g) 輸入申告/荷渡し指図書

(h) 研究室からの分析証明書

(i) 輸入国からの衛生証明書(もしあれば)

FDAが審査を行い、審査に合格した食品は輸入ライセンスを取得することでミャンマーへの輸入が可能となります。

(5) 輸入ライセンス

輸入ライセンスは商業省の貿易局(Department of Trade)に以下の必要書類を添えて申請する必要があります。

  1. 申請書(会社のレターヘッド付きのもの)
  2. 輸入オンライン申請書(600チャットの収入印紙のあるもの)
  3. プロフォーマ・インボイス(仕様の詳細、包装の形態、引き渡し期日などが記載されたもの)または売買契約書
  4. 輸入推薦状及び衛生証明書
  5. 輸出入者登録証

ライセンスの有効期限は3か月で、請求書の価格に応じて最低50,000チャットから最高70,000チャットとなります。

5.メキシコ

メキシコへの食品の輸入に関して参照すべき法令等は、関税法(Ley Aduanera)、関税法規則(Reglamento de la Ley Aduanera)、貿易法(Ley de Comercio Exterior)、貿易法規則(Reglas Generales de Comercio Exterior)、保健一般法(Ley General de Salud)、輸出入一般税法(Ley de los Impuestos Generales de Importación y de Exportación)、その他各種税法、食品の安全衛生基準や包装、表示に係る基準等を定めるNOM(Norma Oficial Mexicana/公式メキシコ規格)などが挙げられます。また、関連する行政機関も、国税庁(Sservicio de Administración Tributaria: SAT)、経済省(Secretaría de Economía)、農業・農村開発省(Secretaría de Agricultura y Desarrollo Rural)、環境資源省(Secretaría de Medio Ambiente y Recursos Naturales)、保健省(Secretaría de Salud)などがあります。通関手続きについては、貿易デジタル窓口(Ventanilla Única de Comercio Exterior Mexicano/VUCEM)が設けられ、ペーパーレス化が図られており、当該窓口を通じて行わなければなりません。一口に食品と言っても、多岐にわたることから、本稿では清酒(最終消費者向けにパッケージングされた商品でアルコール度数20%未満)を輸入する場合を例に紹介します。なお、アルコール飲料の名称、理化学的特性、商業情報及び試験方法を定める基準(NOM-199-SCFI-2017)によると、清酒(SAKE)は、米の発酵によって得られるアルコール飲料でアルコール度数2%~20%のもととされており、また、製品・サービスの衛生管理規則によると、その多くがアルコール含有量中度(6.1%~20%)のアルコール飲料(contenido alcohólico medio)に分類されると考えられます。

  まず、メキシコ国内で流通する食品等はメキシコが定める衛生、包装、表示等の基準を満たす必要があり、表示にはスペイン語を使用しなければなりません。例えば、表示については、アルコール飲料の衛生基準及び衛生的・商業的表示基準(NOM-142-SSA1/SCFI-2014)に従い、商品に、商品の名称、輸入事業者名とその住所、内容量、原産国(“Producto de ____”, “Hecho en ______”, “Manufacturado en _____”, “Fabricado en _____”など)、ロット番号(”LOTE”, “Lot”, “L”, “Lote”, “lote”, “lot”, “l”, “lt”, “LT”, “LOT”などを付す)、消費期限及び保存に必要な条件(例:「開封したら冷蔵してください」)、アルコール度数(20℃での含有量、”% Alc. Vol.”, “% Alc Vol”,”% alc. vol.”, “% alc vol.”のいずれかを用いる)、成分(アレルゲンを含み、定量順に記す)、警告文(”EL ABUSO EN EL CONSUMO DE ESTE PRODUCTO ES NOCIVO PARA LA SALUD”(本商品の飲み過ぎは健康に害を及ぼす)の表示、容器の大きさに応じた文字の大きさの指定あり)、低カロリーである旨の表示(オリジナルのカロリーと比較して24%以上カロリーが低い場合に可)、エネルギー含有量、18歳未満の飲酒の禁止、妊娠中の飲酒の禁止、飲酒後の運転の禁止を示す規定のマークを必ず表示しなければなりません。その他、消費者に誤解、誤認を与えない範囲において、商品の歴史や商品を用いたレシピ、キャッチコピーなどを表示でき、そのような情報はスペイン語である必要はありません。表示等については、指定認証機関にあらかじめそのサンプルを送付して適合証明書を発行してもらい、その証明書を輸入申告書に添付する方法や指定認証機関として認定されている保税倉庫との契約によって、当該倉庫業者が貼付する方法などにより基準に準拠することを示さなければなりません。

輸入にあたっては、輸入者は、商品の発送に先立ち輸入事業者として国税庁への登録を行わなければなりません。この登録には、輸入事業者の納税者番号(RFC)や電子署名(e.firma)、税務住所が必要となり、税の滞納がないことが条件となります。また、アルコール飲料の輸入には、特別税(Impuesto Especial sobre Producción y Servicios:IEPS)も課されますので、同時に酒類納税者登録も必要となります。この登録を行うことにより、IEPS法により求められるアルコール飲料の容器に貼付しなければならないシールの発行を申請することが可能となります。なお、このシールは、商品がメキシコ国内に入る前、つまり保税倉庫等において、貼付しなければなりません。また、VUCEMへの利用者登録も必要となります。

輸入に際しては、通関時に提示が必要となる輸入商品の価格を証明する書類(インボイス等)、船荷証券(B/L)や航空貨物運送状(AWB)、非関税輸入規制を遵守していることを証明する書類(製造者から提供される衛生登録や分析に関する証明書、前述の適合証明書など)、原産地証明書(必要な場合)といった書類を事前にVUCEMを通じて送信しなければなりません。商品到着後、通関手続き、関税の支払いを経て商品はメキシコ国内に搬入されることとなります。

6.バングラデシュ

(1) 輸入政策令による輸入禁止・規制品目

輸入禁止品目に含まれる食品として「生きている豚、及び豚から作られたもの全て」、輸入規制品目に、「エビ、けしの種およびポスタダナ香辛料」が含まれています。

(2) 輸入通関時に検査の対象となる検疫、食品、安全などに関連する規制

1 放射能レベル検査

他国で生産された食品を輸入する場合は、品目の放射能レベルの検査が義務付けられており、当該食品が人間の摂取に適していることを示す証明書の提出が求められます。

2 消費期限

食品及び飲料を輸入する場合は、製造年月日及び消費期限を各包装又は容器に直接印刷しなければなりません。

3 法定検査

バングラデシュに輸入する食品は全て、バングラデシュ基準検査機関及びバングラデシュ科学工業研究評議会による法定検査を受けなければなりません。

(3) 輸入業者の登録制度

輸入業者は営業許可証を取得し、さらにバングラデシュの認可された商工会議所又は貿易強化に会員登録の上、両機関のいずれかが発行する「輸入登録証明書」を取得しなければなりません。

バングラデシュに登録された外国企業は、商業省の事前許可なしに商業輸入登録証明書が交付され、商業品目の輸入が認められます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

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