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「不法行為法の概要」 TNY Group Newsletter No.37

1.日本

 日本の不法行為にかかる法規定は、民法(明治29年法律89号)第3編第5章に一般的に規定されるとともに、個別の不法行為の類型によって特別法での規定が設けられるという構造を有しています。以下では、民法の規定と、事業者に関連する主な特別法における規定について紹介します。

  1. 民法

(a) 一般規定

 民法第709条は、不法行為について、故意または過失により他人の権利または法律上保護さる利益を侵害することとし、それによって損害が生じた場合に、賠償責任を課すことを規定しています。

 損害の対象は、財産以外の身体、自由、名誉等にも及び(第710条)、生命の侵害については、被害者の父母、配偶者及び子に対しても損害賠償を負い(第711条)ます。また、胎児にも損害賠償の権利が認められています(第721条)。

 加害者は、事理弁識能力を有していることが要件とされます(第712条、第713条)。

 正当防衛及び緊急避難による物の損傷に関しては、損害賠償を免除されます(第720条)。

(b) 特別規定

 実際の加害者の他に、責任無能力者の監督義務者(第714条)、事業従事者の使用者及び監督者(第715条)、請負人への指図に過失のある注文者(第716条)、土地の工作物の占有者及び所有者(第717条)、動物の占有者(第718条)に対して、損害賠償義務が課されます。

 また、不法行為が共同で行われた場合には、加害者各自が連帯責任を負い、教唆者や幇助者も共同行為者とみなされます(第719条)。

(c) 消滅時効

 不法行為による損害賠償請求権は、損害および加害者を知ったときから3年間(ただし、生命または身体への侵害に関する損害については5年間)、不法行為時から20年間で時効により消滅します(第724条、第724条の2)。

(2) 特別法

(a) 自動車損賠賠償保障法(昭和30年法律第97号)

 加害者である自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)に対して、民法とは異なり、自ら及び運転者の注意義務違反の不存在やその他の免責事由の立証責任を転嫁しています(第3条)。

(b) 製造物責任法(平成6年法律第85号)

 民法とは異なり、故意や過失を要件とせずに、製造物の欠陥によって生命・身体・財産に損害が生じた場合に、製造業者・輸入業者・製造業者であるとの表示をした者等に賠償責任を課し(第3条)、開発危険の抗弁(第4条第1号)や欠陥が製造者の指示に従ったことにより生じ、その欠陥の発生に過失がない場合にのみ免責される規定となっています。ただし、製造物引渡から10年で消滅時効が成立する点については、民法よりも軽減されています。

(c) 鉱物法(昭和25年法律第289号)

 鉱物の採掘のための土地の掘削、坑水若しくは廃水の放流、捨石若しくは鉱滓の堆積または鉱煙の排出によって、人に損害を与えた場合に、損害発生時の鉱業権者に対して、無過失責任を課しています(第109条第1項)。ただし、被害の発生や拡大に関して、被害者に帰責性が認められる場合や天災その他の不可抗力が競合したときには、賠償責任の有無及びその範囲を定めるにつき斟酌することができるとされています(第113条)。また、鉱業に従事する者の業務上の負傷、疾病及び死亡には適用されません(第25条の5)。

(d) 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)

 工場または事業場における事業活動に伴う、ばい煙、特定物質または粉塵等の健康被害物質により、生命または身体に損害を生じた場合、事業者に対して無過失責任を課しています(第25条第1項)。ただし、不可抗力の斟酌(第25条の3)、事業従事者への不適用(第25条の5)の規定があります。

(e) 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138条)

 工場または事業所における事業活動に伴う有害物質の汚水または廃液に含まれた状態での排出または地下への浸透により、生命または身体に損害を生じた場合、事業者に対して無過失責任を課しています(第19条第1項)。不可抗力の斟酌(第20条の2)や事業従事者への不適用(第20条の5)の規定があります。

(f)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)

 独占禁止法に違反する私的独占、不当な取引制限または不公正な取引方法を行った事業者は、被害者に対し、損害賠償責任を負い、故意や過失の不存在の証明により免責されません(第25条)。ただし、被害者は、公正取引委員会による排除措置命令または納付命令の確定後にしか、裁判上の主張をすることができず、その確定日から3年で請求権は消滅時効にかかります(第26条)。

 

2.タイ

(1) 不法行為法の概要

 タイ民商法典(Civil and Commercial Code(以下、CCC))では、420条に不法行為の規定が存在します。

同条は、「故意又は過失により、他人の生命、身体、健康、自由、財産又は何らかの権利を違法に侵害した者は、不法行為を犯したものとみなし、不法行為によって生じた損害を賠償する義務を負う。」としており、日本の不法行為の規定とほぼ同じ内容となっています。また、その他の不法行為法の規定についても日本法と類似点が多く、比較的日本人に馴染みやすいものになっています。

 以下はタイ法と日本法の不法行為法の相違点に焦点を当て、紹介いたします。

(2) 賠償の方法と相殺の可否

 損害賠償の方法や範囲について、CCCでは、不法行為の状況や重大性に応じて、裁判所が合理的に決定し、不法行為により奪われた財産の返還又はその財産の価額賠償、不法行為によって生じた損害賠償を行うとしています(CCC438条)。

 また、CCC345条によると、不法行為によって債務が発生した場合、債務者は債権者に対して相殺を対抗することはできないとしています。日本法では、不法行為によって生じた債権について相殺が可能である場合がありますが、タイ法にこのような限定はなく、文言上は、不法行為に基づく債務であれば、損害の内容を問わず、債権者に対して相殺を対抗することができないと解されます。

(3) 不法行為の時効

 不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、被害者が不法行為及び賠償義務者を知った時から1年が経過した場合、又は、不法行為日から10年が経過した時と規定されています。ただし、刑罰で処罰される行為を原因とし、かつその行為の刑事手続き上の時効期間が10年よりも長期である場合、その長期の時効期間を適用することになります(CCC448条)。

(4) 使用者責任と委託者の責任について

 タイでは、使用者の責任について「使用者は、被用者が職務の過程で犯した不法行為について、被用者と共同して責任を負う」(CCC425条)としています。日本法では、使用者が被用者の選任や事業の監督について相当の注意を払ったとき、又は相当の注意をしても損害が生じたであろう場合には使用者の責任が免責されるとの規定がありますが、タイ法にはこのような規定が存在しません。そのため、文言上は、例えば被用者が交通事故を起こし、相手方にけが等を負わせた場合、使用者の監督責任の違反に関わらず、使用者は不法行為責任を負うと解されます。もっとも、被用者の不法行為に対して、使用者が第三者に損害を賠償した場合、その費用を被用者に求償することができるとされています(CCC426条)。

他方、委託者の責任については、請負人が委託された仕事の過程で第三者に与えた損害について、委託者による注文、指示、請負業者の選定に関して落ち度が無い限り、責任を負わないこととされています(CCC428条)。

 

3.マレーシア

マレーシアにおける不法行為の成立要件等については明文がなく、コモンローに基づいており、以下のとおり整理することができます。

(1)不法行為が成立するための要素

(a) 注意義務の存在

注意義務の存在を判断するために、neighborhood principleが適用されます。これは、加害者と同様の状況にある合理的な者が、加害者の行為が被害者に対して被害を与えることを予見することができたといえる場合には、注意義務を負うと判断されるというものです。

(b) 注意義務違反

加害者が、最低限必要な基準を下回る行為を行い、加害者と同様の状況にある合理的な者が加害者と同様の行動をするとはいえない場合には、注意義務に違反したと判断されます。

(c) 因果関係

裁判所は、注意義務違反と被害者が被った損害との間に因果関係があるかどうかを判断します。裁判所がこれを判断する際には、注意義務違反行為に関連する原因、及び被害者が注意義務違反に寄与したかどうかが問題となります。

(2) 立証責任

1950年マレーシア証拠法(Evidence Act 1950)101条に基づき、立証責任は請求者である原告(被害者)にあります。しかし、原告がすべてを詳細に証明することは困難な場合があります。そのような場合には、「Res Ipsa Loquitor(物事はそれ自体を語る)」に基づいて判断されることがあります。これは、被告(加害者)がどのように行動したかについて証拠が十分にない場合には、裁判所は、事故又は傷害の性質から被告の過失を推認することができるというものです。

(3) 救済方法

不法行為法の目的は、不法行為が発生する前と同じ状態に戻すために、証明された損害に対して完全な補償又は救済を被害者に対して提供することです。そこで、被害者には、救済方法として以下のものが認められています。

(a) 損害賠償

不法行為が発生する前の状態に戻すために被害者に支払われる金銭は、損害賠償として知られています。不法行為に対しては、通常、損害賠償が主な救済策とされています。

(b) 差止命令

裁判所は、不法行為に対する衡平法上の救済方法である差止命令を行うことができます。被害者に生じた損害を取り戻すために、裁判所は不法行為者に対して当該不法行為を止めるか、又は、他の適切な行動をとるよう命じることができます。

(c) 特定の財産の返還

被害者は、財産が不法に奪われた場合には、財産を回復する権利があります。

(4) 抗弁

加害者が主張することが考えられる抗弁は、注意義務の存在又は同義務の違反に関して異議を唱えること、又は因果関係の断絶を指摘することです。

また、加害者は、制限、同意、免責条項(1977年不公正契約条項法の原則(principles of the Unfair Contract terms Act 1977))、正当防衛、請求者(被害者)自身の不正行為(exturpi causa)及び寄与過失等に基づいて、請求された損害を軽減するための抗弁を主張することが考えられます。

 

4.ミャンマー

(1) 不法行為に関連する法令

ミャンマーではビルマ法典第 9 巻第 10 編は死亡事故法を所収しています。死亡事故法は 4 条からなる法律で、人を死亡させる不法行為があった場合に遺族に訴権を与える規定等が置かれています。

ビルマ法典及びそれ以外の明文の法令には、その他の不法行為一般に関して規定した特別の法典は確認できません。

(2) 実務上の取り扱い

不法行為に関し、当該事案・事実を裁判所に提示し、裁判所が損害賠償その他の必要な救済を命じることがあり得ると実務上されています。しかし、この点の法的根拠については必ずしも明確な確認をできません。一般的には、この分野においては裁判所によるコモンロー又はエクイティ的な救済が行われていると解されています。

 

5.メキシコ

(1) 関連する法令

メキシコでは、不法行為に関するルールは民法に規定されています。メキシコにおける民法には、連邦民法(Código Civil Federal)と、各州が独自に定める民法があります。本ニュースレターでは、連邦民法に基づいて不法行為の概要を説明しますが、実際の事案においては、連邦民法や各州の民法などの中から適用される民法を確定する必要があります。

(2) 不法行為

連邦民法1910条は不法行為に基づく請求の根拠となる条文であり、不法に又は公序良俗に反して行動し、他人に損害を与えた者は、その損害が被害者の重過失の結果として生じたことを証明しない限り、それを回復する義務がある、と規定しています。同条の損害には、財産的損害と精神的損害が含まれます。

以上が、不法行為の原則的な規定ですが、賠償責任の範囲を加害者本人から拡げる規定も設けられています。たとえば、法人は、法人代表者(representante legal)がその職務を行うことによって生じた損害を賠償する責任を負うものとされています。その他、連邦民法には、使用者責任、動物の占有者の責任や共同不法行為について規定が設けられています。

メキシコでは、日本の製造物責任法のような特則はなく、製造物から生じた損害賠償を請求するには、加害者の過失の立証が必要になります。

不法行為に基づく損害賠償の訴えは、損害が発生した日から2年をもって効力を失うとされています。日本の民法と比べ時効消滅の期間が短いため、よりタイトな債権回収が求められます。

(3) 懲罰的損害賠償

米国の一部の州などでは、いわゆる懲罰的損害賠償が認められています。メキシコにおいては、懲罰的損害賠償を直接定めた規定はありません。しかし、裁判所は、将来、同様の行為を防止するために、有害な行為の抑止効果を賠償に加えるものとして、懲罰的損害賠償の概念を認めています。ただし、不法行為責任が発生するすべての場合に懲罰的損害賠償が加味されるわけではなく、裁判所は、行為の重大性が懲罰的損害賠償の制裁を正当化するほどに高度の社会的非難に値する場合にのみ懲罰的損害賠償を含めることができるとしています。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュはコモンローに基づいており、不法行為を規定する特定の法令はありません。不法行為に関して、裁判所の考え方を示した例は多くありませんが、最高裁判所の判例では、「代位責任」と「過失」の2つの要素を示しています。

(1) 代位責任

 代位責任(使用者責任)とは、「主従関係」から生じるもので、使用者は、従業員の不法行為によって損害を受けた第三者の損失または損害に対して責任を負います。バス運転手の過失による交通事故の被害者に対して、バス会社の使用者責任を認めた判例があります(Catherine Masud v. Md. Kashed Miah and Others)。

(2) 過失

 過失は、注意を払う法的義務の違反であり、被告が、原告を保護する義務に違反したことが前提となります。原告が受けた被害は、被告によって直接的に引き起こされた実際の損害でなければなりません。

 判例では、Res Ipsa Loquitur(事実推定則)が適用されています。Res Ipsa Loquiturとは、「事実がすべてを物語っている」ことを意味し、ある種の事故が発生したという事実が、過失を示唆するのに十分であるという考え方です。 原告は、管理者が適切な注意義務を果たしていれば、通常起こるような事故ではないことを立証しなければなりません。Res Ipsa Loquiturに基づき、使用者の過失を認めた判例があります(CCB Foundation v. Government of Bangladesh)。

 

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける不法行為論

フィリピンにおいて、「不法行為」という概念は明確に定義されておらず、“quasi-delict”という概念が規定されています。以下“quasi-delict”を便宜上「不法行為」といいます。

フィリピンの法令において、「不法行為」は、請求主体が、被った損害について救済を受けることができるものとされています。

  1. 不法行為の構成要件

ある行為が不法行為を構成する要件として、民法第 20 条に基づき、以下の要素が挙げられています。

  1. 法的な権利および義務
  2. 主体の義務違反行為
  3. 損害行為
  4. 因果関係
  5. 損害の発生

義務違反行為については、作為的な行為のみならず、不作為による義務違反行為も含まれる場合があります。 また、不法行為に基づき損害賠償請求されるケースとしては、使用者による責任を追及される場合もあるため注意が必要です。

  1. 賠償の範囲

フィリピンにおいて、損害賠償の範囲は、民法典において以下の6種類の損害賠償が定義されています。

  1. Actual or Compensatory Damages

証明された金銭的損失の補償として与えられる損害賠償を指します。

  1. Moral Damages

肉体的苦痛、精神的苦痛、傷ついた感情、道徳的ショック等によって与えられる損害を指します。

  1. Nominal Damages

原告の権利の侵害または侵害を認識するために裁判所が認定する損害を指します。

  1. Temperate Damages

何らかの金銭的損失が生じたと認められるが、正確な損失額を証明できない場合に認められる損害を指します。

  1. Liquidated Damages

契約の当事者によって合意され、違反した場合に支払われる損害を指します。

  1. Exemplary or Corrective Damages

行動を是正するために課される損害賠償を指します。

 なお、弁護士費用と訴訟費用については、フィリピンにおいては一般的に、裁判費用を除き、特に懲罰的損害賠償が認められる場合、または、原告に対する法的根拠が明らかにない場合には、これらを回収することはできないとされています。もっとも、裁判所が正当かつ公平であると判断した場合には、弁護士費用や訴訟費用の支給を認めている場合もあります。

 

8.ベトナム

(1) ベトナム民法の不法行為規定の概要

 2015年に制定されたベトナム民法第20章(584条〜608条)には、「契約外の損害賠償責任」として、不法行為に関する規定を置いています。「他人の生命、健康、名誉、人格、威信、財産、権利、その他の合法的な利益を侵害して損害を加えた」場合に損害賠償責任が生じるとされています(民法584条1項本文)。

 また「いくつかの具体的な場合における損害賠償」に関する規定として、

  • 正当防衛の場合
  • 緊急事態の場合
  • 飲酒又はその他の刺激物を用いて行為認識制御能力を失った状態で不法行為を行なった場合の責任
  • 法人の従業員が加害者である場合の法人の責任
  • 公務執行者が加害者である場合の国家の責任
  • 15歳未満の者、民事行為能力喪失者が加害者である場合の管理者の責任
  • 個人、法人の被用者、実習生が加害者である場合の個人・法人の責任
  • 交通輸送手段、送電システム、製造工場、武器、爆発物、可燃物、毒物、放射物、猛獣等の高度危険源の所有者、占有者、使用者の責任
  • 環境汚染を発生させた者の責任
  • 動物の所有者、占有者、使用者の責任
  • 樹木の所有者、占有者、管理者の責任
  • 住居その他の建築物の所有者、占有者、管理者、使用者の責任
  • 死体を侵害した個人、法人の責任
  • 墓を侵害した個人、法人の責任
  • 消費者の権利を侵害した個人、法人の責任

といった規定をおいています(民法594条〜608条)。

(2) 無過失責任の原則

 日本民法における不法行為責任は過失責任の原則(故意過失がなければ不法行為責任を負わないという原則)が採用され、また、加害者に故意過失があることの立証責任は被害者側にあるとされています。しかし、ベトナム民法では、加害者に故意過失がない場合であっても損害賠償責任を負うとされ(584条1項本文)、生じた損害が不可抗力による場合又は完全に被害者の故意過失による場合には損害賠償責任は負わないとされています(民法584条2項本文)。すなわち、ベトナム民法の不法行為責任は無過失責任の原則が採用され、自己に故意過失がない場合であっても、損害が不可抗力によって生じたものであること、又は完全に被害者の故意過失によって生じたものであることを立証できなければ、損害賠償義務を負うことになります。

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Newsletterの記載内容は2023年4月26日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

1. 日本

 ドローンについては、航空法(昭和27年法律第231号)第11章(第132条以下)において、「無人航空機」に関する登録、飛行等が規定されていて、その概要は以下の通りです。

 ただし、実際に飛行させるにあたっては、重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(平成28年法律第9号)やその他の飛行制限を規定する道路交通法、自然公園法等の法令や条例での制限が課されていないかを確認する必要があります。また、無線設備の搭載に関しては総務省の免許等の取得が必要とされる場合がある他、映像撮影についての総務省ガイドラインが発表されています。2022年12月5日に「無人航空機総合窓口サイト」(https://www.mlit.go.jp/koku/info/index.html)が開設され、これらのドローンに関する情報が一元的に紹介されています。

  1. 飛行許可の必要な空域

航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれや、落下した場合に地上の人等に危害を及ぼすおそれが高い以下の空域においてドローンを飛行させるには、予め国土交通大臣の許可を受ける必要があります(法132条の85第1項)。

(A)空港等の周辺(進入表面等)の上空の空域

(B)緊急用無空域

(C)150m以上の高さの空域

(D)人口集中地区の空域

上記(A)および(D)については、国土地理院のホームページに地図が掲載されていて、(B)については、災害時等に国土交通大臣によって指定され、国土交通省のホームページで公示されます。

      2. 飛行の方法

ドローンの飛行にあたっては、以下①~④を遵守することが必要とされ、⑤~⑩に該当しない飛行(「特定飛行」)は技能証明を受けた者による機体認証を受けたドローンの操縦に限り認められます(法第132条の86第1項、第2項)。

①アルコールまたは薬物等の影響下で飛行させないこと

②飛行前確認を行うこと

③航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること

④他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと

⑤日中(日出から日没まで)に飛行させること

⑥目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること

⑦人(第三者)または物件(第三者の建物、自動車等)との間に30m以上の距離を保って飛行させること

⑧祭礼、縁日等多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと

⑨爆発物等危険物を輸送しないこと

⑩無人航空機から物を投下しないこと

     3. 国土交通大臣の承認等

     (a)機体の登録

ドローンを飛行させる前には、必ず機体の登録をして(法第132条の2)、登録記号を機体に表示して、リモートIDを機体に掲載することが求められます(法第132条の5)。

      (b)機体証明・技能証明

上記(2)⑤~⑩に該当しない特定飛行については、ドローンの第二種以上の機体認証と操縦者の二種以上の操縦技能証明の取得が必要とされます(法第132条の86第2項)。

      (c)飛行許可・承認

上記(1)で指定された空域でドローンを飛行させるには、ドローンの最大離陸重量が25㎏未満で一定の条件に該当し、飛行マニュアルの作成等無飛行の安全を確保するための必要な措置を講じる等により許可・承認を不要とすることができる場合を除き、予め申請して該当する飛行許可・承認を受ける必要があります(法第132条の85第2項)。

     (d)飛行計画の通報と飛行日誌の記録

上記(2)に該当する飛行を除き、特定飛行を実施する場合には、予め飛行計画を通報し(法第132条の88第1項)、飛行日誌を備置して、必要事項を記載しなければなりません(法第132条の89)。

 

2.タイ

(1) ドローン規制の概要

  タイでは、2015年に遠隔操縦航空機のカテゴリーにおける無人航空機操縦・発信の許可申請規則および条件に関する運輸省の通達(2015)が発表され、ドローンの規制が開始されました。

現在では、上記発表に加え、航空法改正第14号(2019)、放送委員会テレビ事業及び電気通信員会の一般用無人航空機の周波数免許の基準及び条件に関する発表(2020)にもドローン規制の規定があり、タイ民間航空局(The Civil Aviation Authority of Thailand (“CAAT”))とタイ国家放送電気通信委員会(The National Broadcasting and Telecommunications Commission (“NBTC”))が管轄しています。

(2) ドローン登録の規制

  タイでドローンを使用するためには、まずNBTCにて登録を行う必要があります。

また、以下の機体についてはCATTにて別途登録を行う必要があり、同登録にはドローン保険の加入が必須となっています。

  • 録画用カメラを搭載したドローン
  • 重量が2kgを超え25kg以下のドローン
  • 重量が25kgを超えるドローン(当該機体に関しては、飛行の都度、運輸大臣からの飛行許可も必要となります。)

 

(3) ドローン飛行の規制

  タイのドローン飛行の規制は、機体の重量(2kg以下/2kg超25kg以下/25kg超の3つに区分されています)や使用目的(娯楽・スポーツ目的/その他の目的)によって細かく分かれています。以下は、ビジネスやイベントでドローンを使用する際の主な規制です。

(a) 飛行前における規制

  • 土地所有者の許諾を得ること
  • 登録証またはその写しや消火器を携帯すること
  • 身体生命に関する損害のため、別途保険(最低1回100万バーツ以上)に加入していること
  • 事故時の対応、医療処置、ドローンが制御不能になった場合の解決策等、緊急時の対応策を備えること

 (b)飛行時の規制

  • 制限区域や限定区域、危険区域、官公庁の建物や病院の敷地内では、許可なく飛行してはならない
  • 空港または臨時飛行場から9km以内は許可なく飛行してはならない
  • 日の出から日没までの間で、機体を明確に視認できること
  • 雲の中や近くを飛行してはならない
  • 地上90メートルを超えて飛行してはならない
  • 有人飛行機の近くを飛行してはならない
  • 他人のプライバシーを侵害してはならない
  • 飛行業務に関係のない人、車両、建物に50メートル以上接近して水平飛行してはならない
  • 事故が発生した場合、操縦者または発射者は、ただちに所轄の官公庁に連絡しなければならない

  上記の他にも、細かな規制があり、ドローンの重量や使用目的によっては更なる規制がなされる場合があります。また、各イベントやビジネスの種類や規模によって使用可能な周波数帯が異なるため、ドローンを操縦する際にはこの点にも注意することが必要です。

(4) 罰則規定と今後の動向

上記のように、タイでドローンを使用する際には、機体の登録や様々な規制の遵守が必要です。

運輸大臣の許可を得ずにドローンを使用したり、許可条件に反した場合には、「1年以下の懲役若しくは4万バーツ以下の罰金又はその両方に科す」(航空法改正第14号第78条)との罰則もあります。

また、現在タイではドローン使用の許可申請にあたって、申請者に試験を課す等の改正が検討されているとの情報もあります。今後のドローン規制の動向も含めて逐次確認しておくことが推奨されます。

 

3.マレーシア

マレーシアにおけるドローンに関する法令として、1969年民間航空法(Civil Aviation Act 1969)、2016年民間航空施行細則(The Civil Aviation Regulations 2016)及び1998年通信マルチメディア法(Communications and Multimedia Act 1998)があります。

(1)1969年民間航空法

民間航空法はマレーシアにおける民間航空機の運航について規定している主要な法律です。本法に基づき、担当大臣には空港及び航空サービスを提供する目的のためのライセンスの発行権限が付与されています。ライセンス(省庁により付与された空港事業の運営のためのライセンス以外のライセンス)の申請手続きは民間航空局長官による承認を得た上で民間航空局(Department of Civil Aviation)により手続きが進められます。

(2) 2016年民間航空施行細則

民間航空施行細則は、民間航空法に基づき、下位法令として2016年3月31日に施行されました。航空機の登録、運行責任者、乗務員及びエンジニアのライセンス付与、航空機の販売、航空事故の調査、航空機の運航並びに航空機の担保について規定しています。

本施行細則Part XVIにおいて、無人航空機(ドローン)は、3種類規定されています。すなわち、①小型無人航空機(Small unmanned aircraft)、②小型無人偵察機(Small unmanned surveillance aircraft)、③無人航空機システム(Unmanned aircraft system)の3つです。

①小型無人航空機について、気球又は凧以外で、飛行するための設備を設置した、航空機を含む燃料を除いて重量が20Kg以下の無人航空システムを意味します。

小型無人航空機の責任者は飛行させるための許可は不要であるが、安全に飛行させなければならないとされています。また、衝突を回避する目的で、他の航空機、人、車両、船舶及び構造物との関係で飛行経路を監視するのに十分な小型無人機との直接的かつ肉眼的な接触を維持しなければならないとされています(施行細則142条)。

②小型無人偵察機は、いかなる形式の監視又はデータ取得を行うために装備された小型の無人航空機を意味します。

小型無人偵察機は、飛行前に民間航空局長官より許可を得ない限り、以下のいずれかの状況において、小規模な無人監視航空機を飛行してはならない旨規定されています(施行細則143条)。

  • 任意の指定区域上の場合
  • 指定区域から150メートル以内の場合
  • 1,000人を超える人が集まっている上空の場合
  • 1,000人を超える人が集まっている上空の150メートル以内の場合
  • 航空機の責任者の管理下にない任意の船舶、車両又は構造物から50メートル以内の場合
  • 人が50メートル以内にいる場合
  • 離陸又は着陸中に30メートル以内に人がいる場合

③無人航空機システムは、パイロットなしで運航されている航空機及びその関連要素を意味します。

以下の場合における人による航空機の飛行を禁止しています(施行細則140条)。

  • 航空交通サービス(ATS)ルート、ターミナルコントロールエリア(TMA)、コントロールゾーン(CTR)(通常は特定のエリア(空港など)の表面から上限まで)を含むクラスA、B、C又はGの空域)、航空管制措置が要求される場所、継続的な双方向無線通信が必要な場所
  • 飛行場交通ゾーン(飛行場(水上滑走路を含む)やヘリポートなどの飛行機の到着、出発又は移動に使用される地域の指定された寸法を意味する)
  • 地球表面から400フィート以上の高さ
  • 民間航空局長官の許可を得ない場合

いかなる者も民間航空局長官の許可を得ない限り、航空事業目的のための無人航空機システムの飛行は禁止されています(施行細則141条)。

航空機が燃料を含まずに20kgを超える場合、民間航空局長から航空機を飛行させる許可を事前に申請する必要があります(施行細則144条)。

(3) 1998年通信マルチメディア法

 通信マルチメディア法は、担当大臣がライセンスに関連する通達を発布できる旨規定しています。当該規定に基づき、マレーシアの通信マルチメディア委員会(Malaysian Communications and Multimedia Commission)は、無人航空機システムを使用する場合には、特定の技術パラメーターを遵守しなければならない旨の通達を発布しています。

 

 

4.ミャンマー

(1) ドローンの法規制

ミャンマーではドローンに関して規定した法令は現時点では存在しません。

(2) 事実上の規制

ドローンについて管轄する政府機関であるミャンマー民間航空局(Department of Civil Aviation)によれば、ドローンについては以下の制限が課されるとのことです。また、実際にドローンをミャンマーに持ち込む場合及び使用する場合には事前にミャンマー民間航空局に確認する必要があります。

  1. 空港から半径 8km(5 mile)以内でドローンを飛行させてはならない。
  2. ドローンは操縦者の視界の範囲内で飛行させなければならない。
  3. 高度 120m(400 feet)を超えてドローンを飛行させてはならない。
  4. 夜間にドローンを飛行させてはならない。
  5. 速度 160km/h(100 mph)以上でドローンを飛行させてはならない。
  6. 人の上空を飛行させてはならない。
  7. 人口が少ないエリアを除き、走行中の車両からドローンを飛行させてはならない。
 

5.メキシコ

(1) 関連する法令

ドローンの使用に関して、民間航空法(Ley de Aviacion Civil)、メキシコ航空登録規則(Reglamento del Registro Aeronáutico Mexicano)、メキシコ公式規格「メキシコの空域で遠隔操縦航空機システム(RPAS)を運用するための条件NOM-107-SCT3-2019(以下、「本NOM」といいます。)」などを遵守する必要があります。なお、メキシコ公式規格(Norma Oficial Mexicana)とは通称「NOM」と呼ばれ、法的強制力のある規格基準です。

ドローンは、本NOM上の遠隔操縦飛行システム(Remotely Piloted Aircraft System-Sistema de Aeronave Pilotada a Distancia、以下「RPAS」といいます。)に該当します。RPASは、固定翼機、ヘリコプター、マルチコプター又は飛行船などの遠隔操縦航空機とそれに付随する遠隔操縦ステーション、必要な制御装置その他の付属品と定義されています。ただし、建造物内で運用されるRPASについては、本NOMは適用されません。

(2) RPASの分類

本NOMにおいて、RPASは、その用途に従い次の3つに分けられ、下表のように分類されています。RPASの分類によって、守らなければならない基準が異なります。

  • レクリエーション用RPAS (RPAS de uso Recreativo):RPASオペレーターがレクリエーション用に使用する遠隔操縦飛行システム
  • 商用RPAS (RPAS de uso Comercial):RPASオペレーターが営利目的に使用する遠隔操縦飛行システム
  • 非営利かつ個人的使用RPAS (RPAS de uso Privado No comercial):RPASオペレーターが非営利目的に使用する遠隔操縦飛行システム

(3) 共通の規制

 RPASの分類に関わらず、主に以下のような事項については共通して遵守する必要があります。

  • パイロットは、飛行場から9.2km超かつ、ヘリポートから900m超離れた場所で飛行させなければなりません。なお、飛行場やヘリポートは運輸通信省(Secretaría de Comunicaciones y Transportes)の連邦民間航空局(Dirección General de Aeronáutica Civil)がウェブサイトで公表する「飛行場及びヘリポートデータベース(Base de Datos de Aeródromos y Helipuertos)」に掲載されているものを指します。
  • 連邦民間航空局から夜間飛行の許可を得ていない限り、日の出から日没の間に飛行しなければなりません。
  • 航空路誌(Publicación de Información Aeronáutica)で指定されている禁止区域、制限区域、危険区域で飛行してはいけません。
  • 科学研究用のRPASは、連邦民間航空局からの許可、国立地理統計情報院(Instituto Nacional de Información Estadística y Geográfica:INEGI)からの許可及び国防省(Secretaría de la Defensa Nacional)からの許可を得る必要があります。

(4) 分類に応じた規制

本NOMにおいては、上記(2)の分類に応じた規制が設けられています。その詳細を紹介することは紙幅の関係上できませんが、以下、主な規制について紹介いたします。

  • RPASの登録

レクリエーション用RPAS Microで最大離陸重量が0.250kgを超える場合、レクレーション用以外のRPAS Microの場合、RPAS Pequeñoの場合、その所有権、占有権、その他の権利を取得、譲渡、変更、担保、消滅させるための文書を連邦民間航空局のウェブサイトにおいて登録し、RPAS登録番号(Folio)を取得する必要があります。

PRAS Grandeの場合、航空機の国籍を特定するための書類である登録証明書(Certificado de Matrícula)を取得しなければなりません。登録証明書の取得は、RPASの所有権、占有権、その他の権利を取得、譲渡、変更、担保、消滅させるための文書の取得を通じて行われます。

  • 民事賠償責任保険

レクレーション用以外のRPAS Microの場合、第三者への損害賠償を目的とした民事賠償責任保険に加入していることを要します。

レクレーション用以外のRPAS Pequeño及びRPAS Grandeの場合、有効な第三者賠償責任保険契約の承認文書(Oficio de Aprobación de la Póliza de Seguro de Responsabilidad Civil por daños a terceros)を得ていることを要します。

  • 運航許可

レクレーション用以外のRPAS Pequeño及びRPAS Grandeの場合、連邦民間航空局より運航許可を取得する必要があります。

  • パイロットの許可又は免許

レクレーション用以外のPRAS Pequeñoの場合はRPASを操作する者がRPASパイロット許可(Autorización de Piloto del RPAS Pequeño)を得ていること、レクレーション用以外のPRAS Grandeの場合はRPASを操作する者がRPASパイロット免許(Licencia de Piloto del RPAS Grande)を受けていることをそれぞれ要します。パイロットの許可及び免許は、18歳以上であること、生来のメキシコ人であること、講習を受けることなどの要件が定められています。

なお、レクレーション用以外のRPAS Microであって夜間飛行などの特別運行許可を受ける場合は、RPASパイロット許可を有する操作者が操作することが求められるなどの例外もあります。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュにおけるドローンの使用については、「ドローン登録及び飛行ポリシー2020年」に基づき、航空局が規制しています。同ポリシーでは、ドローン飛行が認められる条件、場所、許可が必要なドローンのタイプ等について定めています。

(1) ドローンの種類

 以下の種類に基づき、許可が発行されます。

カテゴリA: レクレーション目的の使用

カテゴリB: 教育や調査等の非商業目的のために、公的・民間の団体又は個人による使用

カテゴリC: 調査、映像、映画、運搬等、商業的及び専門的な目的による使用

カテゴリD: 政府又は軍隊による使用

(2) ドローンの使用地域

 バングラデシュ国内を重要性及び安全性の観点で3種類の地域に区分し、ドローンの飛行を認めています。

(a) グリーンゾーン

  • 空港又は制限区域から3~5キロ以内の地上50フィート(15.24m)まで
  • 空港又は制限区域から5キロ以上離れた場所で、地上100フィート(30.48m)まで

グリーンゾーンでのドローン飛行について許可は不要です。

(b) イエローゾーン

 制限地域、軍隊管轄区域、人口密度が高い地域、混雑地域はイエローゾーンとされ、管轄当局からの許可が必要です。

(c) レッドゾーン

 危険地域、禁止地域、空港はレッドゾーンに区分され、ドローン飛行について特別許可が必要です。

(3) ドローン登録

 以下の手続きにて、航空局よりドローン登録及び登録番号を取得することができます。

  1. カテゴリB及びCの場合、Air Navigation Orderに基づき、ドローン登録及び登録番号を申請します
  2. カテゴリAに該当し、ドローンが高度100フィート(30.48m)以上の飛行が可能又は重量5㎏以上(積載量含む)の場合は、登録が義務づけられています。
  3. 登録に必要な書類は以下の通り
  • ドローンの使用目的
  • 仕様の写し
  • ドローン領収書
  • BTRC(Bangladesh Telecommunication Regulatory Commission)の認証(通信システムに影響を与えないこと)
  • 申請者の写真及び身分証明書
  • 携帯電話番号
  • 飛行中に生じる緊急時対応計画(ドローンのバッテリー切れ、制御不能等の場合の対応)
  • 国防省からの異議なしレター
  • その他、航空局が求める書類や情報

 

7.フィリピン

  1. フィリピンにおけるドローン法規制概要

フィリピンでは、航空局の管轄において、ドローンの使用について監督及び規制がなされています。フィリピンにおいては、ドローンの使用を規制するため、「PCAR」と呼ばれる規則が定められており、ドローンは、遠隔操縦される無人航空機であるとの定義がなされています。また、航空交通安全を目的とした登録と運用に関するガイドラインが定められています。

     2. 一般的な規制

フィリピンにおけるドローン規制法令によると、ドローンの使用は非商業的な使用と商業的な使用のいずれの場合においても、以下の一般的な規制を受けるとされています。なお、以下の規制は一例となります。

  1. 人口密集地の上空においては、ドローンが故障した場合にその地域を回避することができない高さで飛行させてはならない。
  2. ドローンを操作する者は、ドローンが飛行中、着陸もしくは離陸中、ドローン操作に直接関係のない者から少なくとも30メートル離れていることを確認しなければならない。
  3. 航空局の事前承認がない限り、以下の範囲内でRPAを操作することはできない。

(a)地上高400フィート

(b)飛行場基準点から半径10キロメートル

     3. ドローンの商業的運用における規制

ドローンを商業的に運用する場合においては、業務運用については、「Operator Certificate」を取得する必要があり、以下の書類を提出が求められる場合があります。

  1. 製造元が発行する取扱説明書
  2. ドローン保険/第三者賠償責任保険に関する書類
  3. 耐空特別証明書(該当する場合に限る。)
  4. 航空局が発行するドローン登録証明書

また、「Operator Certificate」の保有者として認められるための要件が定められており、これらを満たす必要があります。

  1. ドローンを安全に運用するために適切な組織・体制を有していること
  2. 提案された業務を安全に実施するために、十分な資格と経験を有する人員を有していること
  3. 使用するタイプのドローンを使用して提案された業務を遂行するのに適切な施設・設備を有していること
  4. 操作を行うための適切な慣行と手順が確認されていること

さらに、操縦者としての証明書の取得も必要であるとされています。取得には、以下のような申請者の資格が必要とされています。

  1. ドローンメーカーが実施するトレーニングコースを、操縦しようとするタイプのドローンの操作について修了した者
  2. 管制空域外でドローンを操作した経験が5時間以上あること
  3. 指定された試験に合格していること
  4. 航空局の正規職員が実施するデモフライトに合格していること
  5. ドローンに関する違反行為についての罰則

フィリピンの航空局は、ドローンに関連する規則や規制に違反した場合、違反1件につき2万ペソから10万ペソの罰金で処罰すると定めています。 また、違反した場合は、操縦者としての資格停止又は抹消事由に該当する場合があります。

 

8.ベトナム

(1) ドローン飛行の許可制

 ベトナムでは、2008年に制定され2011年に改正された無人航空機及び超軽量航空機の管理に関する政令、2020年に制定された無人航空機と超軽量航空機の飛行禁止空域及び飛行制限区域の設定に関する首相決定などにより、ドローンに関する規制が行われています。

 ドローンを飛行させるためには、飛行予定日の7営業日前までに、国防省に対し、飛行許可証を申請しなければなりません。

(2) ドローン飛行禁止区域

 以下の区域では、ドローンの飛行が禁止されています。

  • 国防省が直接管理・管轄する特に重要な軍事区域及び国防建設区域

これらの区域から500m以内は飛行が禁止されます。

  • ベトナム共産党、ベトナム政府機関、地方機関、ベトナム国内にある外国の大使館、領事館などの区域

これらの区域から200m以内は飛行が禁止されます。

  • 国家防衛区域(軍事キャンプ、戦闘訓練区域、刑務所など)

これらの区域から500m以内は飛行が禁止されます。

  • 民間機及び軍用機が使用する空港内
  • ベトナムの空域に設定された航空路内
  • その他、国防、国家安全、社会秩序の維持のために当局の裁量で設定される区域

(3) ドローン飛行制限区域

 以下の区域では、飛行許可にあたって当局が指定する条件に従ってドローンを飛行させる必要があります。

  • 高度120m以上の空域
  • 混雑している場所の上空
  • ベトナムと中国の国境からベトナム側に25,000mの区域
  • ベトナムとラオス、ベトナムとカンボジアの国境からベトナム側に10,000mの区域
  • 空港の飛行禁止区域の隣接区域であり、無人航空機と超軽量航空機の飛行禁止空域及び飛行制限区域の設定に関する首相決定の附属図に記載されている区域
 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: https://tny-lawfirm.com/index.html

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

・イギリス(TNY CONSULTING (UK) Ltd.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/uk.html

Newsletterの記載内容は2023年3月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国のCOVID-19関連の入国規制

1.日本

(1) 外国人の入国制限について

2022年10月11日以降、全ての外国人の新規入国について、日本国内に所在する受入責任者による入国者健康確認システム(ERFS)における申請は求められなくなり、68の国・地域に対する査証免除措が再開されました。以下の国・地域に対するAPEC・ビジネス・トラベル・カード取り決めに基づく査証免除も再開されました。

地域 国・地域
アジア インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、台湾
大洋州 オーストラリア、パプアニューギニア、ニュージーランド
中南米 チリ、ペルー、メキシコ
欧州 ロシア

外務省HP新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について|外務省 (mofa.go.jp)

(2) 日本入国時の検疫措置について

 2022年10月11日から、日本入国時の検疫措置は原則として実施せず、入国後の待機等を求めないこととなりました。ただし、全ての帰国者・入国者について、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの接種証明書または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提出が必要とされています。

なお、2023 年 3月 1 日以降、中国(香港・マカオを除く)からの直行便での入国者については、ワク チン接種証明書の有無にかかわらず、出国前検査証明書が必要とされますが、入国時の検査はサンプル検査となり、空港では検体接種のみの実施に緩和されます。

有効なワクチン接種証明 陰性証明書
(出国前検査)
質問票 入国時検査 入国後の待機期間
あり 不要
必要
なし
なし
なし 必要

厚生労働省HP 水際対策

 

2.タイ

タイでは、2022年10月1日から入国規制等が以下のとおり緩和されています。

(1)タイ入国時の規制緩和

  • タイ入国時のワクチン接種証明書又は陰性証明書の提示は不要。
  • 日本を含むビザ免除国/地域からの渡航者の滞在可能期間を30日から45日に延長(2023年3月末までの措置)。

(2) タイ国内における感染対策緩和

  • マスク着用は混雑した場所や換気の悪い場所において推奨されるが、義務ではなくなる。
  • 新型コロナ感染者のうち、軽症又は無症状の人は自己隔離不要で外出可能。ただし、5日間はDMHT対策(Distancing:距離の確保、Mask Wearing:マスク着用、Hand Washing:手洗い、Testing:検査(症状が表れた場合))が推奨される。
  • 高齢者や特定の疾患を有する高リスクの感染者は、10日間、自身による健康観察(5日目と10日目にATKによる検査)が推奨される。
  • 企業・団体は、定期的に従業員を観察することが推奨される(感染者数が大きく増加する場合は、直ちに関係当局に報告)。
  • 引き続きワクチン接種は推奨される。
 

3.マレーシア

 2022年8月1日以降、ワクチン接種完了の有無に関係なく渡航前の陰性証明書の取得、入国後検査、及び隔離が不要となっています。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、マレーシア政府開発のMySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力しアクティベートさせておくことが要請されています。

 

4.ミャンマー

2022年12月1日より、ミャンマー入国の条件となっている「到着 14 日以上前に接種した承認済み ワクチンの(2 回)接種証明書」又は「到着前 48 時間以内に発行された RT-PCR 陰性証明書」を所持している方は、5 月 1 日より求められていた、 ミャンマー到着後の空港における RDT 検査の受検が不要となりました。(ただ し、入国時のスクリーニング(検温)で新型コロナウイルス感染症の症状 がある場合は、引き続き、RDT 検査が実施されます。)

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。2023年2月18日より、これまで加入が求められていた国営保険会社Myanma Insuranceの保険について、商用ビザで入国する場合は、Myanma Insuranceの保険に代えて、日本等の保険会社の保険(新型コロナウイルスを補償対象に含むもの)に加入した証明(英語又はミャンマー語)を提示することで差し支えないこととなりました。もっとも、在京ミャンマー大使館に直接申請する場合のみ当該条件が適用されますが、Eビザを申請する場合は引き続きMyanma Insuranceへの加入が必要とされています。

 

5.メキシコ

メキシコへの入国について、政府による入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 

7.フィリピン

フィリピン検疫局は、改定されたフィリピン入国ガイドラインを発表しました。

(1) 完全にワクチンを接種した者(Fully vaccinated)

以下の条件を両方満たす場合は、完全にワクチンを接種した者と見なされ、出発国出発前の検査を免除されます。

  1. 出発国からの出発日時から遡って14日以上前に、ファイザーなど2回接種する種類のワクチンを2回接種済み、またはヤンセンなど1回接種する種類のワクチンを接種済みのこと。
  2. 以下のいずれかで発行したワクチン接種の証明書を携帯/所持していること。

 ア 世界保健機関(WHO)が発行した国際ワクチン接種証明書(ICV)

 イ VaxCertPH

 ウ 外国政府の国または州の紙面/デジタルの接種証明書

 エ その他のワクチン接種証明書

(2) ワクチン未接種、一部ワクチン未接種、ワクチン接種状況を検証できない者

  1. 15歳以上の者および同伴者のいない15歳未満の未成年者

 ア フィリピン到着時に、出発国の出発日時から遡って24時間以内(経由便利用者は乗り継ぎ空港の敷地外ないし乗り継ぎ国に入域・入国していないことが条件)の陰性の抗原検査結果を提示することが必要です。

 イ 上記アの抗原検査で陰性の証明を提示できない者は、空港到着時に医療施設、研究所、診療所、薬局、又はその他の同様の施設で医療専門家によって実施および認定された検査室の抗原検査を受ける必要があります。

 ウ 上記イの抗原検査で陽性となった場合には、フィリピン保健省(DOH)の検疫、隔離規則に従うことになります。

      2. 同伴者のいる15歳未満の未成年者

同伴する成人又は保護者の検疫規則に従うとされています。

 

8.ベトナム

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(観光目的、ビジネス目的いずれであっても)、

  • ベトナム滞在期間が15日以内であること
  • ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること
  • ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の証券市場の構造と上場基準の概要

1. 日本

 日本の証券市場は、市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ(スタンダードとグロース)の各市場に分かれていましたが、2022年4月4日から、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つに再編されました。この再編は、各市場のコンセプトが曖昧で、投資家にとっての利便性が低く、上場廃止基準が緩く上場会社の企業価値向上が十分に図られていないことを理由としています。

  1. 各市場のコンセプト
  2. プライム市場:多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場。
  3. スタンダード市場:公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場。
  4. グロース市場:高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場。
  5. 新規上場基準

  上場審査にかかる主な形式的要件は、以下の通りです。

  プライム市場 スタンダード市場 グロース市場
株主数 800人以上 400人以上 150人以上
流通株式数 20,000単位以上 2,000単位以上 1,000単位以上
流通株式時価総額 100億円以上 10億円以上 5億円以上
流通株式比率 35%以上 25%以上 25%以上
株式売買代金等 時価総額250億円以上(※1) ×
(※2)
×
(※2)(※3)
純資産の額 連結純資産50億円以上(※4)
単体純資産が負でない
連結純資産額が正 ×
利益又は売上高 最近2年間の利益の総額が25億円以上
又は
最近1年間の売上高100億円以上かつ時価総額が1,000億円以上になるみこみ
最近1年間の利益が1億円以上 ×
事業継続年数 3か年以上前から取締役会設置して継続的に事業活動 1か年以上前から取締役会設置して継続的に事業活動
上場会社監査事務所による監査等 最近2年間の財務諸表等について
上場会社監査事務所の監査等を受けていること
新規上場申請のための有価証券報告書の財務諸表等について
単元株式数 100株となる見込み

(上場維持基準として、※1:平均売買代金2,000万円以上、※2:売買高月平均10単位以上、※3:上場10年後の時価総額40億円以上、※4:純資産額が正)

  グロース市場上場のためには、形式的要件に加えて、高い成長可能性を実現する事業計画が合理的に策定されていること、高い成長可能性を有しているとの判断根拠に関する主幹事証券会社の見解が提出されていること、 事業計画及び成長可能性に関する事項(ビジネスモデル、市場規模、競争力の源泉、事業上のリスク等)が適切に開示され、上場後も継続的に進捗状況が開示される見込みがあること、が要件とされています。

     6. 経過措置の終了

 市場再編にあたっての経過措置として、再編前の上場会社には緩和された基準による市場選択が認められていましたが、2023年1月に、経過措置が2025年3月1日以降に順次終了することが決定されました。

 これに伴い、経過措置の適用を受けている会社については、2025年3月1日以降に到来する上場維持基準の判定に関する基準日に本来の上場基準に適合していない場合には、原則として1年間(売買高基準は6か月間)の改善期間に入り、その間に上場基準に適合しないときは、改善期間終了後に監理銘柄に指定され、基準日の翌日から起算して6か月を経過した日(基準日から起算して1年6月後)に上場廃止となります(ただし、経過措置に関する適合計画の終了が2026年3月1日以降最初に到来する基準日以降とされている場合には、監理銘柄の指定期間は同計画終了まで継続し、指定期間中に上場基準に適合しないときは、指定期間終了後1か月の整理銘柄指定を経て、上場廃止となります)。

 なお、経過措置を用いたプライム市場上場会社については、2023年4月1日から9月29日までの間に限り、スタンダード市場への上場を選択でき、2023年10月20日にスタンダード市場に移行することが可能となっています。

 

2.タイ

(1) 上場市場の概要

  タイ証券取引所(The Stock Exchange of Thailand : SET)には、SET市場(メイン市場)、mai(Market for Alternative Investment)市場(代替投資市場)、LiVEx(LiVE Exchange)市場という3つの市場が存在しており、それぞれメインターゲットとしている企業が異なります。

  • SET市場は、大規模で安定した企業をメインターゲットにしています。
  • mai市場は、中小企業向けの市場で、成長性のある企業をメインターゲットにしています。
  • LiVEx市場は、2022年9月9日から取引が開始された市場であり、スタートアップ企業や成長を目指す中小企業をメインターゲットとしています。

(2) SET市場について

SET市場は大企業をメインターゲットとしており、払込資本金額が3億THB以上であることが条件として定められています。SET市場への上場には、安定した経営基盤を有していることを示す必要があり、主に以下の条件が定められています。

  1. 払込資本金額が3億THB以上で上場申請前の払込資本金額が0以上であること
  2. 過去3年間の営業純利益の合計が5000万THB以上であること
  3. 時価総額が75億THB以上であり、収益の多くが投資委員会の推進する産業に依ること
  4. 上場申請以前に3年以上の事業実績があること(少なくとも1年間同一経営陣下での事業活動実績があること)
  5. 公募後の株式について、1000名以上の少数株主がいること
  6. 浮動株比率が全株式数の25%以上(払込資本金が30億THB以上の場合は20%以上)であること
  7. 販売株式数が払込資本金の15%以上であること(払込資本金が5億バーツ以上、または普通株式の価値が7,500万THB以上の場合は払込資本金の10%以上)
  8. 取締役等が資本市場監督委員会やSET規則の禁止する特性を有していないこと
  9. 監査委員会がSETの定める基準を満たすこと
  10. 資本市場監督委員会の定義する利益相反関係がないこと
  11. 資本市場監督委員会の定めに従った財務諸表があること
  12. プロビデントファンドが登録済であること
  13. 上場後1年以内に、SETのガイドラインに従って事業および業績に関する情報を提示すること

(3) mai市場について

mai市場の上場条件はSET市場のものより緩和されており、払込資本金額は5000万THB以上であることが条件として定められています。mai市場では、主に以下の条件が定められています。

  1. 払込資本金額が5000万THB以上であること
  2. 直近1年間の営業純利益の合計が1000万THB以上であること
  3. 上場申請以前に2年以上の事業実績があること(少なくとも1年間同一経営陣下での事業活動実績があること)
  4. 公募後の株式について、300名以上の少数株主がいること
  5. 浮動株比率が全株式数の25%以上(払込資本金が30億THB以上の場合は20%以上)であること
  6. 販売株式数が払込資本金の15%以上であること

その他、SET市場と同様に上記⑧~⑬の条件等が必要となります。

(4) LiVEx市場について

LiVEx市場は、上記の2つの市場とは異なり、最低払込資本金額の制限や、直近年の事業実績基準は定められておりません。LiVEx市場では、主に以下の条件が定められています。

  1. 中小企業振興庁(the Office of Small and Medium Enterprises Promotion:OSMEP)の定義に基づく中規模企業以上であること
  2. スタートアップ企業の場合はVC(Venture Capital)またはPE(Private Equity)が共同出資をしていること
  3. 資金調達額は1~5億THBで、設定した資金調達額の80%以上でなければならないこと
  4. LiVExの戦略的株主は、全株式の55%分の株式の売却が3年間禁止され、その他の株式について、1年経過及びその後半年毎に20%ずつ売却が可能となる
 

3.マレーシア

(1) 証券市場の概要

マレーシア証券取引所(Bursa Malaysia)には、メインマーケット(Main Market)、ACEマーケット(ACE Market)、LEAPマーケット(LEAP Market)の3つの証券市場があります。3つの証券市場には、それぞれ異なる上場基準が定められています。

  • メインマーケットは、質、規模、及び運用の面で基準を満たしている主に大企業が対象となる市場です。対象となる会社は通常、長期にわたって優れた営業実績と収益性を示しています。メインマーケットにおいて上場するには、一定の利益実績又は規模に達していることを証明する必要があります。
  • ACEマーケットは、高い成長見通しを持つ主に中小企業を対象としたスポンサー主導の市場です。以前はMESDAQ市場として知られていた同市場では、スポンサーにより、事業の見通し、企業行動、内部統制の妥当性等の様々な側面を考慮して、上場における適合性を評価します。
  • LEAPマーケットは、主に新興企業を対象としたアドバイザー主導の市場です。同市場は、資本市場を通じて資金調達へのアクセスと可視性を高めることを目的としています。同市場に上場するために、営業実績又は財務実績を証明する必要はありません。

(2) メインマーケットの上場基準

証券市場によってそれぞれ上場基準が異なるため、以下では、主にメインマーケットの基本的な上場形態であるプライマリー上場の基準に絞って解説します。上場基準としては、定量的及び定性的基準の2種類の基準があります。また、外国企業及び鉱物石油ガス(MOG)会社は、追加の基準を満たす必要があります。

なお、セカンダリー上場を希望する外国企業は、特定の定性的基準を満たすだけでよく、定量的基準を満たす必要はありません。セカンダリー上場とは、マレーシア証券委員会によって指定された外国証券取引所の主要市場に既にプライマリー上場している外国企業に認められたプライマリー上場以外の方法により上場する形態をいいます。

(3) 定量的基準(Quantitative criteria)

コア事業がインフラ事業に関係しない会社は、利益又は時価総額基準のいずれかを満たす必要があります。インフラ事業を行う会社は、インフラ事業会社基準を満たさなければなりません。

プライマリー上場を希望する企業は、公開スプレッド要件を満たす必要があります。公開スプレッド要件は、流通株式数が当該会社の総株式数の25%以上及び100株以上を保有する1,000人以上の一般株主を要するとされています。

2021年3月1日以降、マレーシア証券取引所は、以下の定量的及び定性的基準を満たしている場合は、メインマーケットの公開スプレッド要件を緩和することを検討する場合があります。

定量的基準
時価総額 公開スプレッド要件
10億リンギット以上30億リンギット未満 20%
30億リンギット以上 15%
定性的基準 a. 十分に流動性のある市場
b. 秩序ある公正な取引
c. 十分なコーポレートガバナンスの実施とコンプライアンス
d. 公開スプレッド要件緩和に対する合理性

また、公開スプレッド要件の株式の50%は、ブミプトラの投資家へ割り当てられる必要があります。もっとも、MSCステータス、BioNexusステータスを持つ会社及び主に外国を拠点とする事業を行う会社は、この要件が免除されます。

(4) 定性的基準(Qualitative Criteria)

プライマリー上場を求める国内外の会社は、スポンサーシップ、コア事業、経営の継続性と能力、株式のモラトリアム、関連当事者との取引及び財務状況と流動性に関する定性的基準を遵守する必要があります。

(5) 外国企業のプライマリー上場の追加基準

上場を希望する外国企業は、特にコーポレートガバナンス、株主の保護、買収及び合併の規制に関して、会社法及びその他の法律がマレーシアの法律と同等の法域に設立されなければなりません。当該法域が同等の基準を有していない場合、会社の定款を変更することによって基準を満たすことは可能です。また、目論見書を発行する前に、必要に応じて、コア事業を行う法域のすべての関連規制当局の事前承認が必要です。その他にも、2016年会社法に基づいて外国企業として登録されている必要がある等の基準があります。

 

 

4.ミャンマー

(1) 証券取引所の概要

ミャンマーでは2013年7月31日に証券取引法が公布され、2015年7月27日に証券取引法施行細則が施行されました。

これに従い、日本取引所、大和総研及びミャンマー経済銀行が共に、ミャンマー初の証券取引所であるヤンゴン証券取引所を2016年12月に設立し、2016年3月に取引を開始しました。現時点(2023年2月27日時点)において、7社の株式が上場されています。現時点では市場は1つのみであり、上場準備市場の設立が承認されたものの、まだ運用はされていない状況です。

(2) 上場基準

ヤンゴン証券取引所は上場規則(Securities Listing Business Regulations)を設けており、上場基準は以下の通りです。

定量基準(Formal Criteria)

  1. 上場日時点において浮動株が5000株以上、または浮動株時価総額が5億チャット以上となることが見込まれること
  2. 上場日時点において株主数が100名以上となること
  3. 直近2期間の利益合計がプラスであること
  4. 上場申請時点における払込資本が5億チャット以上であること
  5. 事業開始から上場申請日までの期間が2年以上経過していること
  6. 公開会社(Public Company)であること
  7. ミャンマー会計基準(MFRS)に準拠した決算書を作成していること
  8. 上場申請時点において株式の譲渡制限が撤廃されていること
  9. ヤンゴン証券取引所に対して株主管理業務を委託することにつき同意すること
  10. ヤンゴン証券取引所が株式振替業務を行うことにつき同意すること
  11. 事業の継続性と収益性が保たれていること
  12. 企業経営の健全性・公平性が保たれていること
  13. コーポレートガバナンス及び内部統制が有効に機能していること
  14. 企業情報が適正に開示されていること
  15. その他ヤンゴン証券取引所が公益及び投資家保護の観点から必要と判断する事項
 

5.メキシコ

(1) 証券市場の構造

メキシコには、メキシコ証券取引所(Bolsa Mexicana de Valores)と、証券機関取引所(Bolsa Institucional de Valores)の2つの証券市場が存在します。

メキシコ証券取引所は、ラテンアメリカで2番目に大きな証券市場であり、時価総額は2021年末日時点で9407兆 ペソです。メキシコ証券取引所においては、ボルサ指数(メキシコ証券取引所に上場する代表的な35銘柄で構成される時価総額加重平均型の株価指数、Indice de Precios y Cotizaciones (IPC))という指標が用いられています。

証券機関取引所においては、FTSEという指標が用いられています。

(2) 上場基準

上場のためには、株式を国家証券登録所(Registro Nacional de Valores)へ登録する必要があります。この登録のための一定の基準が、有価証券の発行者及びその他の証券市場参加者に適用される一般規定(Disposiciones de Carácter General Aplicables a las Emisoras de Valores y a Otros Participantes del Mercado de Valores)において設けられています。

同規定は、以下のような基準を設けています。

・ 上場にあたっては、1,200万投資単位(2023年2月22日現在1投資単位当たり7.73092ペソ)以上の株式発行。

・ 一般投資家に提供される株式の割合が発行者の株式の15%以上であること、又は9億5000万投資単位以上であること。

・ 募集が行われた時点で、大口一般投資家とみなされる株主等の最低人数は、100人を下回ってはならないこと。

・ コーポレートガバナンス・コードへの準拠度合いについて報告すること。

また、上場する法人はその形態に合わせて、適用を受ける法の規準を満たさなければなりません。

例えば、証券市場法(Ley del Mercado de Valores)に規定される投資促進会社(Sociedades Anónimas Promotoras de Inversión)が上場する場合、次の規準を満たす必要があります。

・ 証券の登録に先立ち、以下について株主総会の承認決議を得ていること。

ⅰ) 既存の商号に 「Bursátil」という表現又はその略称「B」を加える商号の変更。

ⅱ) 国家証券登録所への登録が効力を生じた日から起算して10年を超えない範囲内で、事業年度の末日における当該投資促進公開会社の資本金が、各年、監査済み又は意見書付財務諸表に基づきの2億5,000万投資単位のペソ換算額を超える場合には、公開株式会社の形態を採用すること。

ⅲ) 前ⅱ)の期間内に公開株式会社に適用される制度を段階的に導入することを規定するプログラム。

ⅳ) 資本構成を公開株式会社に適用される制度に適合させるため、及び国家証券登録所への登録の取消の事由及び効果を規定するために必要な定款変更。

これらの事項に関する承認決議に加え、株主総会は、会社を支配している個人又はグループを特定し、その個人又はグループは株主総会議事録に署名して同意を表明すること。

・ 取締役会は、国家証券登録所への登録時に、独立取締役(Consejero Independiente)を1名以上置くこと。

・ 会社は、公開株式会社に設置されているものに準じて、企業実務に関し取締役会を補佐するための委員会を設置すること。当該委員会は、取締役のみで構成され、独立取締役が委員長を務めること。

・ 取締役会の秘書役は、各株主の保有株式数を認証すること。

その他、公開株式会社(Sociedad Anonima Bursátil:SAB)の場合は、経営を担うのは、取締役会(Consejo de Administración)及び社長(Director General)となり、取締役会は、21名以内の取締役で構成し、そのうち25%以上が独立取締役でなければならないと規定されています。

補助的信用機関の組織と活動に関する一般法(Ley General de Organizaciones y Actividades Auxiliares del Crédito)に定める金融機関等も国家証券登録所に株式を登録することにより上場が可能となりますが、証券市場法に基づく株式の登録のほか、国家銀行証券委員会(Comisión Nacional Bancaria y de Valores)の規定や同法の規定を遵守しなければなりません。

 

 

6.バングラデシュ

(1) 証券取引所の概要

 バングラデシュでは、ダッカとチッタゴンに証券取引所が存在します。バングラデシュ証券取引委員会法1993年(Bangladesh Securities and Exchange Commission Act, 1993)に基づき、同年6月に、バングラデシュ証券取引委員会が設立されました。同委員会の目的は、証券における投資家の利益の保護、証券市場の発展、それに関連する事項またはそれに付随する事項について規則を制定することです。委員会は、政府によって任命された常任委員長と4人の委員で構成されます。委員会は、財務省の付属機関です。

(2) 上場基準

(a) ダッカ証券取引所

 主な要件は以下の通りです。

  • 目論見書に含まれる監査済み財務諸表の日付以降、払込資本金の調達を含む重要な変更を行っていないこと
  • 証券取引規則1987年の要件、バングラデシュで採用されているIFRS/IASの規定に従って財務諸表を作成し、バングラデシュ監査基準(BSA)、会社法及びその他の法的要件に従って監査していること
  • 年次株主総会を定期的に開催していること
  • 委員会が随時発行するコーポレート ガバナンス ガイドラインの条項を遵守していること
  • 目論見書を作成する際に、規則のすべての要件を遵守していること
  • 申請時に累積留保損失がないこと
  • 委員会が随時公表する、資産の評価に関するガイドラインの規定に準拠していること
  • バングラデシュ銀行の最新のCIBレポートにより、発行者または10%以上の株式を保有するその取締役および株主が、融資の不履行者でないこと
  • これまで資本発行を通じて調達された資金の少なくとも80%が利用されていること
  • マネージングディレクターまたは最高経営責任者によって正式に証明された、払込資本に相当する金額の預金を示す銀行取引明細書とともに銀行証明書を提出しなければならない
  • 公募申込日から過去 2 年以内に、ボーナス株式の発行を除き、払込資本金を調達していないこと
  • 株式公開後の払込資本金が以下の通りに増加するように、公募を行わなければならない
    • IPO後の払込資本金が 7.5億タカ以下の場合、30%以上
    • IPO 後の払込資本金が 7.5億タカを超え、15億タカを超えない場合、20%以上
    • IPO 後の払込資本金が15億タカを超える場合は、10%以上

(b) チッタゴン証券取引所

 最低払込資本金が 1 億タカの公開有限会社は、以下の条件を満たせば上場することができます。

  • 累積損失がないこと
  • 年次株主総会を定期的に開催していること
  • 少なくとも過去 5 年間は操業していること
  • 直近5年間の会計年度のうち3年間は黒字であり、安定して成長していること

 

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける証券取引所の概要

フィリピンには、フィリピン証券取引所(The Philippine Stock Exchangeと呼ばれる証券取引所で、以下「PSE」といいます。)が存在します。PSEは、1927年に設立されたマニラ証券取引所と1963年に設立されたマカティ証券取引所が合併してできた証券市場であり、現時点でフィリピン唯一の証券取引所となります。

 なお、2023年2月時点では、PSEに288の上場企業が存在するとされています。

     2. PSEにおける2つの分類市場

PSEには、2種類の市場が存在します。1つ目は、Main Boardと呼ばれる市場で、2つ目は、SME Boardと呼ばれる市場です。後者のSME Boardは、「Small, Medium, Emerging」の略であり、Main Boardの方がSME Boardよりも上場のための基準が高く設定されています。

     3. PSEにおける上場基準

PSEにおいては、Main Boardに上場するための条件が定められています。主な基準は、以下のとおりです。

    1. 同一の事業を3年間継続していること
    2. 取締役の人数要件を満たし、各取締役が少なくとも1株を自分の名義で所有していること
    3. 株主資本として、直近の会計年度において少なくとも5億フィリピンペソの価値があること

一方、SME Boardへ上場するためには、同一の事業を2年間継続していることや2,500万フィリピンペソの資本が必要であること等、Main Boardにおいて要求される基準よりも、緩やかな基準が設定されている場合があります。

また、上場のためには開示手続が必要となり、開示に関する基準はPSEが定める「CONSOLIDATED LISTING AND DISCLOSURE RULES」に記載されています。

      4. 審査機関について

 上場審査については、フィリピンにおける証券取引委員会の監督下にあるPSEが行います。

 

8.ベトナム

(1) ベトナムの証券市場

 ベトナムには、ホーチミン証券取引所(HOSE)とハノイ証券取引所(HNX)の2つの証券取引所があり、異なる上場基準(ホーチミン証券取引所の方が上場基準が厳しく、大企業中心)で運営されてきましたが、現在、2つの証券取引所の統合が進められており、ハノイ証券取引所は2023年7月1日から新規上場の受付けを停止し、2025年6月30日に両者が統合される予定となっています。

 また、これらの上場基準を満たさない、または公開会社であるものの上場していない会社を対象とする未上場公開株取引市場(UPCoM)もあります。

(2) ホーチミン証券取引所(HOSE)の上場基準

  • 上場申請時点での払込済資本金1200億VND以上
  • 上場申請時点で株式会社として設立されてから2年以上経過していること
  • 直近2年連続で黒字を計上していること
  • 直近年度の株主資本利益率(ROE)が5.0%以上であること
  • 返済期限を1年以上超過した債務がないこと
  • 上場申請時点で累積赤字を計上していないこと
  • 議決権付き株式の20%以上を大口株主ではない株主300人以上が保有していること

(3) ハノイ証券取引所(HNX)の上場基準

  • 上場申請時点での払込済資本金300億VND以上
  • 上場申請時点で株式会社として設立されてから1年以上経過していること
  • 直近1年で黒字を計上していること
  • 直近年度の株主資本利益率(ROE)が5.0%以上であること
  • 返済期限を1年以上超過した債務がないこと
  • 上場申請時点で累積赤字を計上していないこと
  • 議決権付き株式の15%以上を大口株主ではない株主100人以上が保有していること

(4) 未上場公開株取引市場(UPCoM)の上場基準

  • 上場申請時点での払込済資本金100億VND以上
  • 証券保管センター(VSD)に株券を登録していること

発行 TNY Group

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: https://tny-lawfirm.com/index.html

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

・イギリス(TNY CONSULTING (UK) Ltd.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/uk.html

Newsletterの記載内容は2023年2月27日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国のCOVID-19関連の入国規制

1.日本

(1) 外国人の入国制限について

2022年10月11日以降、全ての外国人の新規入国について、日本国内に所在する受入責任者による入国者健康確認システム(ERFS)における申請は求められなくなり、68の国・地域に対する査証免除措が再開されました。以下の国・地域に対するAPEC・ビジネス・トラベル・カード取り決めに基づく査証免除も再開されました。

地域 国・地域
アジア インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、台湾
大洋州 オーストラリア、パプアニューギニア、ニュージーランド
中南米 チリ、ペルー、メキシコ
欧州 ロシア

外務省HP新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について|外務省 (mofa.go.jp)

(2) 日本入国時の検疫措置について

 2022年10月11日から、日本入国時の検疫措置は原則として実施せず、入国後の待機等を求めないこととなりました。ただし、全ての帰国者・入国者について、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの接種証明書または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提出が必要とされています。

 また、2023年1月12日以降、中国(マカオを含む、香港を除く)からの直行便での入国者については、ワクチン接種証明書の有無にかかわらず、出国前検査証明書が必要とされ、入国時の検査も行われる臨時的な水際措置が講じられています。

有効なワクチン接種証明 陰性証明書
(出国前検査)
質問票 入国時検査 入国後の待機期間
あり 不要
必要
なし
なし
なし 必要

厚生労働省HP 水際対策

 

2.タイ

タイでは、2022年10月1日から入国規制等が以下のとおり緩和されています。

(1) タイ入国時の規制緩和

  • タイ入国時のワクチン接種証明書又は陰性証明書の提示は不要。
  • 日本を含むビザ免除国/地域からの渡航者の滞在可能期間を30日から45日に延長(2023年3月末までの措置)。

(2) タイ国内における感染対策緩和

  • マスク着用は混雑した場所や換気の悪い場所において推奨されるが、義務ではなくなる。
  • 新型コロナ感染者のうち、軽症又は無症状の人は自己隔離不要で外出可能。ただし、5日間はDMHT対策(Distancing:距離の確保、Mask Wearing:マスク着用、Hand Washing:手洗い、Testing:検査(症状が表れた場合))が推奨される。
  • 高齢者や特定の疾患を有する高リスクの感染者は、10日間、自身による健康観察(5日目と10日目にATKによる検査)が推奨される。
  • 企業・団体は、定期的に従業員を観察することが推奨される(感染者数が大きく増加する場合は、直ちに関係当局に報告)。
  • 引き続きワクチン接種は推奨される。
 

3.マレーシア

 2022年8月1日以降、ワクチン接種完了の有無に関係なく渡航前の陰性証明書の取得、入国後検査、及び隔離が不要となっています。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、マレーシア政府開発のMySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力しアクティベートさせておくことが要請されています。

 

4.ミャンマー

2022年12月1日より、ミャンマー入国の条件となっている「到着 14 日以上前に接種した承認済み ワクチンの(2 回)接種証明書」又は「到着前 48 時間以内に発行された RT-PCR 陰性証明書」を所持している方は、5 月 1 日より求められていた、 ミャンマー到着後の空港における RDT 検査の受検が不要となりました。(ただ し、入国時のスクリーニング(検温)で新型コロナウイルス感染症の症状 がある場合は、引き続き、RDT 検査が実施されます。)

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。

 

5.メキシコ

メキシコへの入国について、政府による入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。なお、1月にVOA(アライバルビザ)による入国者全員を対象に空港で抗原検査が実施されました。抗原検査の対象者や対象期間について政府による通知は出されていませんが、アライバルビザで入国する出張者などは注意が必要です。

 

7.フィリピン

 フィリピン検疫局は、改定されたフィリピン入国ガイドラインを発表しました。

(1) 完全にワクチンを接種した者(Fully vaccinated)

以下の条件を両方満たす場合は、完全にワクチンを接種した者と見なされ、出発国出発前の検査を免除されます。

  1. 出発国からの出発日時から遡って14日以上前に、ファイザーなど2回接種する種類のワクチンを2回接種済み、またはヤンセンなど1回接種する種類のワクチンを接種済みのこと。
  2. 以下のいずれかで発行したワクチン接種の証明書を携帯/所持していること。

 ア 世界保健機関(WHO)が発行した国際ワクチン接種証明書(ICV)

 イ VaxCertPH

 ウ 外国政府の国または州の紙面/デジタルの接種証明書

 エ その他のワクチン接種証明書

(2) ワクチン未接種、一部ワクチン未接種、ワクチン接種状況を検証できない者

  1. 15歳以上の者および同伴者のいない15歳未満の未成年者

 ア フィリピン到着時に、出発国の出発日時から遡って24時間以内(経由便利用者は乗り継ぎ空港の敷地外ないし乗り継ぎ国に入域・入国していないことが条件)の陰性の抗原検査結果を提示することが必要です。

 イ 上記アの抗原検査で陰性の証明を提示できない者は、空港到着時に医療施設、研究所、診療所、薬局、又はその他の同様の施設で医療専門家によって実施および認定された検査室の抗原検査を受ける必要があります。

 ウ 上記イの抗原検査で陽性となった場合には、フィリピン保健省(DOH)の検疫、隔離規則に従うことになります。

      2. 同伴者のいる15歳未満の未成年者

同伴する成人又は保護者の検疫規則に従うとされています。

 

8.ベトナム

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(観光目的、ビジネス目的いずれであっても)、

  • ベトナム滞在期間が15日以内であること
  • ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること
  • ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の労働災害に関する法制度の概要

1. 日本

 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)は、業務上または通勤による労働者の負傷、疾病、傷害、死亡等に対して保険給付を行うことを目的としています(第1条)。

  1. 労災事故

労災保険給付の対象となる事故は、事業の遂行においての事故や事業に起因する疾病です。そのため、身体的な傷害だけではなく、心理的な要因による精神障害やいわゆる「過労死」等も労働災害と判断される場合があります。

労働災害は、その傷害、疾病、傷害、死亡が生じた場面に応じて業務災害と通勤災害に分けられます。

業務災害は、事業所内での作業に起因するものにとどまらず、出張や社外業務中に遭遇した事故も含み、一般的に、労働者に発症した疾病で、①労働の場に有害因子が存在し、②健康障害を起こしうるほどの有害因子にさらされ、③発症の経過及び医学的にみて妥当である場合には、業務上疾病と認められます。

通勤災害は、就業に関し、㋐住居と就業場所の往復、㋑就業場所から他の就業場所への移動、または㋒単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動時に生じた事故を指し、合理的な経路及び方法で行った通勤であることが要件とされます(ただし、業務の性質を有する移動は、業務災害となります)。そのため、通常と異なる通勤路を使用したり、立ち寄りをしていた場合には、個別具体的な事情を考慮して、通勤災害と認められるかが判断されます。

 2. 事業者の義務

 労災事故が発生した場合、事業者は、労働基準法により賠償責任を負いますが、労災保険に加入している場合、労災保険による補償がなされます。ただし、休業1~3日目については、休業補償の対象外となるため、事業者が平均賃金の60%を直接被災労働者に支払う必要があります。

労災保険は強制加入であり、業種や規模にかかわらず、常時1人でも従業員(パートを含む)を雇用している事業者すべてに適用されます。事業者は、事業の種類により定められた割合の保険料を全額負担しなければなりません。故意または重大な過失によって労災保険の加入を懈怠していた場合には、発生した労災事故について支給された保険給付の全額または40%を徴収されることがあります。

 事業者には、労災事故が発生した際に労働基準監督署に労働者死傷病報告をする義務もあります。

      3. 労災給付

 労災事故により、負傷・疾病があったときの給付は大きく分けて、療養に関する給付と休業に関する給付があります。

 療養(補償)給付は、治療に関する費用の補償で、労災保険指定医療機関以外で療養を受けるときは被災労働者が支払った医療費が支払われます。労災指定医療機関で受診するときには療養費を支払う必要はなく、直接医療機関に給付請求書を提出することで足ります。療養の結果、後遺障害が残る場合には、その等級によって一時金または年金の形で障害(補償)等給付がされます。

 傷病の療養のために労働できず、賃金を受けていない期間について、休業4日目以降は、それに先立つ3月間の平均賃金(日額)の80%(60%が休業補償、20%が休業特別支給金)に休業した日数を乗じて給付が保証されます。療養開始後1年6月を超えても治癒せず、傷害の程度が傷病等級に該当する場合には傷病(補償)等年金が給付され、障害(補償)等年金または傷病(補償)等年金の受給者で介護を要する場合には介護(補償)等給付もされます。

 被災労働者が死亡した場合には、葬祭料の他、遺族に対して遺族補償給付として年金と一時金が給付されます。年金の額は遺族の人数に応じて変動しますが、遺族補償給付は最も優先順位の高い人に対して支給されます。

 労災保険の給付には、指定の請求書に事業者及び医療機関から証明を受けて、労働基準監督署に提出する必要があります。事業者が証明を拒否した場合でも、被災労働者がその旨を告げて請求書を提出すれば、労働基準監督署が事業者に対して事実調査を行い、その結果、労災認定が下りれば、給付を受けることができます。労災認定に不服がある場合には、行政手続である審査請求をすることができます。

 

2.タイ

(1) 労働災害に関する法制度について

労働災害が発生した際の法律として、労働安全衛生環境法(Occupational Health and Safety and Environment Act, B.E2554(A.D.2011))および労働者災害補償法 (Workmen’s Compensation Act, B.E. 2537 (A.D.1994))があります。労働安全衛生環境法では、労災事故後の使用者の義務を定め、労働者災害補償法では、労災基金や労災補償金の支給について定めており、業務に起因した死亡事故や傷害が発生した場合または病気に罹患した場合に、従業員が受け取ることのできる補償金等について規定されています。

(2) 労働災害として対応が必要となる場合

使用者は、業務に起因した従業員の死亡事故や傷害が発生した場合または病気に罹患した場合の他、火災等により事業所が危険な状態に陥った場合や、それにより負傷者等が発生した場合に、以下の責任を負うこととされています。

(3) 労災事故が発生した場合の使用者の義務

使用者は、労働災害により従業員が死亡した場合、直ちに安全検査官に電話、FAX、またはその他の手段で通知をし、従業員が死亡した日から7日以内に労働災害の内容及び原因を書面で報告しなければなりません(労働安全衛生環境法34条1項)。

火災や爆発、流出物の発生やその他の重大な事故の発生の結果、事業所が損害を受けたり、生産を停止しなければならない場合、または人がいる事業所内が危険な状態に陥った場合や、負傷者等が発生した場合、使用者は直ちに安全検査官に電話、FAX、またはその他の手段で当該事実を通知しなければなりません。また、事故発生から7日以内に、当該事故等の原因及び再発防止措置を書面で報告しなければなりません(同条2項)。

従業員が労働災害補償法所定の危機に直面し、または病気に罹患した場合、使用者は7日以内に社会保険事務所に通知し、その写しを安全検査官に送付しなければなりません(同条3項)。

(4) 労働災害が発生した場合の給付

従業員が生命の危険または疾病に罹患した場合、使用者は直ちに従業員の治療を手配する必要があります。また、省令規定の範囲内で医療費やリハビリ代、葬祭費を使用者が負担することとなり(労働者災害補償法13条、15条、16条、17条)、労働災害に遭った従業員または当該従業員の親族に対して、毎月補償金を支払わなければならないとされています(同法18条)。

一般的に、使用者は補償基金の規定に従って従業員に補償金を支払う必要がありますが、従業員が酩酊物質やその他の中毒性物質(アルコールや大麻等)を摂取したため意識をコントロールできない場合、または従業員が自ら労働災害を招いた場合や第三者に発生させるよう仕向けた場合には、使用者は補償金を支払う必要はありません。

 

3.マレーシア

 マレーシアでは、労働災害に関する法令として労災給付制度を定めた労働者社会保障法(The Employees’ Social Security Act 1969)があります。

(1) 概要

労働者社会保障法は、怪我等の理由で就労ができなくなった場合の収入の填補について規定しています。同法に基づく労働者社会保障制度はSOCSO(Social Security Organization)によって運用されています(同法58条)。

同法は、以下の2つの制度を提供しています。

    1. 雇用傷害(Employment Injury)保険制度:業務上の負傷及び疾病に対する給付
    2. 障害年金(Invalidity Pension)制度:業務と関係のない負傷及び疾病に対する給付

(2) 加入義務者

使用者は同法に基づき自身とその労働者(雇用契約又は見習契約に基づき就労する全ての者)の登録を行わなければなりません(同法4条、5条)。家事労働者を除く外国人労働者も加入義務の対象です。

本制度の対象者は2つのカテゴリーに分けられます(同法6条2項)。

  1. 第一カテゴリー:雇用傷害保険制度及び障害年金の被保険者たる労働者
  2. 第二カテゴリー:雇用傷害保険制度の被保険者たる労働者

(3) 給付内容

同法では以下のとおり給付内容が定められています(同法15条)。

 ア 障害年金(Invalidity Pension)

医療委員会から(永続的な)就労不能との認定を受けた被保険者に対する定期給付です。

 イ 障害手当(Disablement Benefit)

業務上の負傷に起因する障害(Disable)を受けた被保険者に対する定期給付です。

この手当には、以下の種類があります。

  1. 一時障害手当
  2. 永続的部分障害手当
  3. 永続的全部障害手当

使用者は、労働者が一時障害手当を受給している期間中は、労働者を解雇又は罰することができず、同期間中になされた解雇、減給に関する通知は無効であり効力を有しないとされています(同法53条)。

 ウ 遺族手当(Dependants’ Benefit)

業務上の負傷の結果死亡した被保険者の遺族に対する定期給付です。

    エ 葬儀手当(Funeral Benefit)

業務上の負傷により被保険者が死亡した場合、受給権を有する近親者に支払われます。

 オ 継続看護手当(Constant-Attendance Allowance)

障害年金又は永続的全部障害手当の受給権を有する労働者は、その不能の程度が著しく他の人間の継続的な看護を必要とする場合、それぞれの給付の40%に相当する継続看護手当を受給することができます。

 カ 医療手当(Medical Benefit)

業務上負傷した労働者の治療費等の給付です。

 キ 遺族年金(Survivors’ Pension))

障害年金の受給中に亡くなった労働者等の遺族に対して支払われる定期給付です。

(4) 使用者の責任

一般的に、使用者が職場における安全性の確保に関する義務を怠り、その結果労働者が負傷し損害を負った場合、労働者は使用者に対して損害の賠償を求めることができますが、同法31条本文は、労働者は同法に基づき補償される雇用契約上の受傷については使用者から損害の賠償を受ける権利を有しない旨を定めています。したがって、職場における事故を理由に労働者が使用者に対して損害の賠償を求める事例は多くはないと考えられます。

ただし、同条ただし書は、同条本文の例外として、道路輸送法(Road Transport Act 1987)により使用者に第三者賠償保険加入が義務付けられている自動車の事故に起因する請求については同条本文を適用しない旨を定めているため、この場合には、労働者は使用者に対して損害の賠償を求めることができるとされています。

 

 

4.ミャンマー

(1) 社会保障法及び労働者災害補償法

労働災害に関して、社会保障法(The Social Security Law, 2012)及び労働者災害補償法が規定しています。社会保障に加入している労働者は社会保障法のみ適用され、労働者災害補償法は適用されません(社会保障法49条)。

(2) 社会保障法における労災の内容

社会保障に加入している労働者は、労災時の治療(社会保障法52条(a))、一時的に就労不能となった場合の無料の治療及び労災前4ヶ月の平均賃金の70%の一時就労不能給付(社会保障法55条)を最長12か月間受給できます(社会保障法施行細則180条、181条)。また、永久的に一部障害が生じた場合、障害により失った能力の程度に応じて平均賃金の70%を一定期間受給できます(社会保障法57条、58条)。

労災により死亡した場合、負担金を支払った期間に応じて、指定された遺族に対して給付が支払われます(社会保障法62条)。

(3) 労働者災害補償法の内容

本法は、労働者が就業中に負傷した場合は、使用者が補償しなければならない旨規定しています。具体的には、①死亡した場合、②全面的身体障害になった場合、③永久的部分的身体障害になった場合、④一時的身体障害になった場合、⑤他者の介助が常時必要になった場合、の各補償について規定しています。但し、例外として、負傷の原因が次のような事由に起因する場合には補償義務を負いません。すなわち、(a)負傷時に飲酒、薬物使用により精神喪失状態にあった場合、(b)安全管理の観点から明示的に与えられた業務命令や規則に対し負傷者が故意に従わなかった場合、(c)安全管理のために設けられたことが明らかな予防手段を負傷者が故意に取り除いたり、無視した場合です。なお、労働者が特定の業種において、少なくとも6か月以上継続的に雇用され、その職業に固有の職業病に罹患した場合は、雇用者がその反証を提示できない限り、当該疾患も就業上の負傷の場合と同様の取扱いとなります。

 (1)で述べた通り、社会保障法に加入していない労働者の労災についてのみ本法が適用されるため、現在では本法が適用される場面は極めて限られた場面となります。

 

5.メキシコ

(1) 関連する法令等

 労働災害については、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)および社会保険法(Ley Seguro Social)に規定されています。基本的には、連邦労働法で規定されている内容について社会保険法にも規定され、社会保険で補償されることになります。

 なお、使用者は、労働者を雇用した場合、当該労働者を社会保障に加入させなければなりません。

(2) どのような場合に労働災害としての対応が必要となるか

 労働災害(Riesgos de trabajos)とは、業務の過程でまたは業務に関連して発生する事故および疾病をいい、業務上の事故と業務上の疾病に分けらます。

業務上の事故(Accidente de trabajo)とは、業務の過程または業務に関連して突然発生した、即時又は事後の器質的損傷又は機能障害、死亡又は誘拐など第三者の法に反する行為に起因する失踪をいい、事故の発生場所及び時間帯は問われません。労働者が自宅・職場間、職場から他の職場へ直接移動する際に発生した事故は、この業務上の事故に含まれます。

業務上の疾病(Enfermedad de trabajo)とは、労働者がその労務を提供する義務を負う業務または環境において、業務に由来しまたは関連する要因の継続的作用により生じる病的状態をいいます。

 以上のような、業務上の事故や業務上の疾病が生じた場合には、労働災害として対応が必要となります。

(3) 労災事故が発生した場合の使用者の義務

使用者は、応急処置を施し、労働者の自宅または病院への移送の手配をする義務を負います。

使用者は、労働災害が発生した場合は、その発生から72時間以内に労働社会保障省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)に書面もしくは電子的方法により届出なければならず、労働災害によって労働者が死亡した場合には、直ちに通知しなければなりません。ただし、当該労働者が社会保障機関に自ら提出した場合はその必要はありません。

また、労働者の死亡や後遺障害に至る労働災害が発生した場合は、各事業所に設置された労働安全衛生委員会はその発生から30日以内に原因の調査を行わなければなりません。

(4) 労働災害が発生した場合の給付

① 労働災害によって生じうる結果

労働災害により生じた結果は以下のように分類され、これに応じた社会保障給付等がなされます。

  • 一時的な障害(Incapacidad temporal):能力または適性の喪失により、部分的または全面的に一定期間、仕事をすることができなくなること
  • 部分的な後遺障害(Incapacidad permanente parcial):その人の労働能力または適性が低下すること
  • 全面的な後遺障害(Incapacidad permanente total):能力または適性を喪失し、終身にわたり一切の業務に従事することができない状態
  • 死亡(Muerte)
  • 第三者の法に反する行為に起因する失踪(Desaparición derivada de un acto delincuencial)

② 給付の種類

  • 療養補償給付:医療・手術の補助、リハビリテーション、入院等のサービス
  • 休業補償給付:労働者が一時的な障害を負った場合、補償は、労働不能となってから、当該労働者が就労可能と診断されるか、部分的な後遺障害や全面的な後遺障害と認定されるまでの間、労働者の基準給与(給与額に福利厚生費等を加算し求められる社会保障費等の計算基準給与)の全額分の給付がなされます。
  • 障害補償給付:全面的な後遺障害の場合、労働者は、災害発生時の基準給与の70%に相当する額の確定月例年金を受け取ることができます。

部分的な後遺障害の場合も、障害年金を得ることができます。

  • 葬儀費用 
  • 遺族補償年金:死亡又は第三者の法に反する行為に起因する失踪の場合には、寡婦又は寡夫、孤児、尊属等は遺族補償年金を受ける権利を有します。

③ 使用者による補償

 使用者は、労働災害により生じた労働者の障害等に対し社会保障による補償を受けさせることができない場合、当該労働者に対し、次の補償を行わなければなりません。

  • 一時的な障害:就労不能期間中の賃金相当額の金員
  • 部分的な後遺障害:障害が全面的な障害であった場合に支払われるべき金額に基づき、障害評価表で定められた割合の金員
  • 全面的な後遺障害:1,095日分の賃金に相当する金員
  • 死亡又は失踪:葬式費用(2か月分の給与額)と5000日分の賃金に相当する金員。寡婦又は寡夫、孤児、尊属等がこれを受ける権利を有します。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、労働法および労働規則にて、労働災害補償について規定しています。輸出加工区(EPZ)および経済特区(EZ)については、EPZ労働法およびEPZ労働規則が適用されます。

(1) 労災の対象範囲

全ての一般労働者が対象となる日本の労災補償制度と異なり、バングラデシュでは、労災の対象となる労働者が限定されており、鉄道法3条に定義されている鉄道員又は労働法/EPZ労働法別表4に列挙されている業務に従事する者で、一般的なサービス業の労働者や事務員は含まれていません。労災補償の対象となる31項目(EPZ労働法では11項目)の職種は、a) 5人以上が雇用されている職場で、蒸気、水または他の機械的動力または電力が使用される製造工程、付随する業務、製造工程に関する業務に従事する者(製造工程が行われていない場所で事務作業のみに従事しているものは除く)、b) 5人以上が雇用されている職場で、建物または敷地内で、物品の使用、輸送または販売のために、製造、改造、修理、装飾、仕上げ、改良する業務に従事する者、c) 10人以上が雇用されている職場で、爆発物の製造または取扱いに従事している者、d) 建物等の建設、保守、修理または取り壊しに従事する者、e) 運転手、f) 倉庫で雇用されている又は10人以上雇用されている倉庫もしくはその他の場所で勤務している者、又は、100人以上が雇用されている市場もしくは場所で物品の取り扱いもしくは輸送に従事している者、g) 警備員、などが挙げられています(労働法150条(8)、EPZ労働法73条(8))。

労災補償の対象となる職種の労働者が、勤務中に生じた事故により、身体を負傷した場合、以下の場合を除き、使用者は補償金を支払う義務があります(労働法第150条(1)(2))(EPZ労働法第73条(1)(2))。

  1. 負傷による全体または部分的な労働能力の損失が3日を超えない場合
  2. 労働者の飲酒または薬物使用に起因する事故、労働者が安全確保を目的とした明確な指示または規則に故意に従わなかった場合、労働者の安全確保を目的として支給されていることを知りながら、労働者が故意に安全装備を外したり、無視した場合に直接起因する事故による負傷の場合

労働法/EPZ労働法により特定された業務により指定の職業病に罹患、特定された業務に6か月以上継続的に勤務し、指定の職業病に罹患した労働者は、労災とみなされ、使用者が反証しない限り、勤務中に生じたとみなされます(労働法第150条(3))(EPZ労働法第73条(3))。

(2) 補償金額

労働不能の程度に応じた補償金額が定められています。永久一部労働不能について、労働法/EPZ労働法別表1にて、負傷の程度に対する労働不能の割合が記載されています。一時労働不能の場合、労働不能となった日から4日の待機期間後の支払い月の初日に1か月の補償金が支払われ、労働不能の期間または別表5に指定される期間(1年、長期に亘る疾病の場合は2年)の短い方の期間支給されます(労働法151条(1)、EPZ労働法74条(1))。同一の事故により複数の負傷があった場合は、永久全労働不能による補償金額を超えない範囲で増額されます(同条(2))。

 

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける労働災害に関する法制度の概要

労働安全衛生法に位置づけられる、共和国法第11058号the Occupational Health and Safety Law(以下「OSH法」といいます。)は、「安全で健康な労働力」に対する国の方針を表した法律になります。2018年8月17日に成立したこの法律は、フィリピン経済特区庁(Philippine Economic Zone Authority)圏内の企業も含むすべての民間企業を対象とした法律です。また、フィリピンにおける労働法は、その規定がOSH法と矛盾しない限り、労働安全衛生が問題となる場面で適用されることがあります。

  1. OSH法の概要

OSH法においては、労働安全を確保するため、使用者と労働者間の義務及び責任が定められています。OSH法において、一般的に、使用者は、従業員に安全な労働環境を提供する義務があり、労働者は、使用者が課す安全衛生に関する規則等を遵守する義務があります。

     2. フィリピンにおける労働災害に関する使用者の義務等

労働者は、使用者の過失、重過失又は悪意の有無に関わらず、業務上生じた障害や死亡に対する補償請求を行うことができるとされています。最高裁判所も、職場で負傷した労働者は、労働法に基づく損害賠償請求ができる旨を判示しています。なお、使用者の過失に起因する労働災害が生じた場合には、民法に基づく訴えを申し立てることができるとされています。労働災害が生じる前に、労働者に安全な労働環境を提供し、万が一事故が発生した場合は、必要に応じて応急処置を行うなどの体制を整えておく必要があります。

      3. フィリピンにおける労働災害に関するその他の制度

フィリピンにおいては、労働法に基づき、国家保険基金の制度が存在します。 この国家保険基金は、労働者が、業務に関連した障害の発生や死亡の場面において請求できる補償基金として創設されたものです。民間企業従業員(SSS)及び公共企業体従業員(GSIS)は加入が必須とされており、補償金の請求があった場合は、使用者の労働者に対する賠償金の支払義務が免除される可能性があります 。

 

8.ベトナム

 ベトナムでは、2016年7月から労働安全衛生法が施行され、その中で労働災害についても規定されています。

(1) 適用対象

 労働安全衛生法45条には、次の要件を満たす場合を労働災害と規定しています。

 ① 以下のいずれかに該当する事故に遭うこと

  ・ 職場において勤務時間内に発生した事故

  ・ 雇用主の指示に従い、職場以外の場所又は勤務時間以外において発生した事故

  ・ 適切な時間に適切なルートで通勤している途中で発生した事故

 ② 事故により、5%以上、労働能力を喪失したこと

 ③ 事故が次のいずれかの原因により発生したものではないこと

  ・ 労働者と事故の原因となった者との間で、業務に関係なく紛争が発生した場合

  ・ 労働者が故意に健康を害した場合

  ・ 労働者が法律で禁止されている薬物などを使用した場合

(2) 労働災害が発生した場合における使用者の責任

 労働災害が起こった場合における使用者の責任については、次のとおり規定されています。

 ・ 被災者の応急処置や救急搬送を速やかに行うこと

 ・ 労働災害を所轄官庁に届け出ること

 ・ 死亡労働災害や重大な労働災害の現場をそのまま保全すること

 ・ 応急処置を含む以下の治療費を負担すること

・ 健康保険加入者の場合

   自己負担分の医療費及び健康保険適用外の医療費

   医学鑑定評議会において労働能力喪失率が5%未満とされた場合における労働能力喪失率検査の費用

・健康保険未加入者の場合

   医療費全額

 ・ 治療やリハビリのために欠勤した被災者に対し、欠勤期間の給与を全額支払うこと

 ・ 労働者本人の過失によらない労働災害の場合、次のとおり補償金を支払うこと

・ 労働能力喪失率が5%〜10%の場合 月給の1.5倍以上の金額

・ 労働能力喪失率が11%〜80%の場合 月給の1.5倍以上の金額+喪失率1%あたり月給の0.4倍の金額

・ 労働能力喪失率が81%以上の場合 月給の30倍以上の金額

・ 労働者が死亡した場合 遺族に対し月給の30倍以上の金額

 ・ 労働者本人に過失がある場合、上記過失がない場合の40%以上の金額の補償金を支払うこと

 ・ その他、労働災害調査チームの設置や調査に対する情報提供、労働災害記録の作成、保管、従業員への労働災害に関する情報の提供など

発行 TNY Group

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: https://tny-lawfirm.com/index.html

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

・イギリス(TNY CONSULTING (UK) Ltd.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/uk.html

Newsletterの記載内容は2023年1月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国のCOVID-19関連の入国規制

1.日本

(1) 外国人の入国制限について

2022年10月11日以降、全ての外国人の新規入国について、日本国内に所在する受入責任者による入国者健康確認システム(ERFS)における申請は求められなくなり、68の国・地域に対する査証免除措が再開されました。以下の国・地域に対するAPEC・ビジネス・トラベル・カード取り決めに基づく査証免除も再開されました。

地域 国・地域
アジア インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、台湾
大洋州 オーストラリア、パプアニューギニア、ニュージーランド
中南米 チリ、ペルー、メキシコ
欧州 ロシア

外務省HP新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について|外務省 (mofa.go.jp)

(2) 日本入国時の検疫措置について

 2022年10月11日から、日本入国時の検疫措置は原則として実施せず、入国後の待機等を求めないこととなりました。ただし、全ての帰国者・入国者について、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの接種証明書または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提出が必要とされています。

有効なワクチン接種証明 陰性証明書
(出国前検査)
質問票 入国時検査 入国後の待機期間
あり 不要
必要
なし
なし
なし 必要

厚生労働省HP 水際対策

 

2.タイ

タイでは、2022年10月1日から入国規制等が以下のとおり緩和されています。

(1)タイ入国時の規制緩和

  • タイ入国時のワクチン接種証明書又は陰性証明書の提示は不要。
  • 日本を含むビザ免除国/地域からの渡航者の滞在可能期間を30日から45日に延長(2023年3月末までの措置)。

(2)タイ国内における感染対策緩和

  • マスク着用は混雑した場所や換気の悪い場所において推奨されるが、義務ではなくなる。
  • 新型コロナ感染者のうち、軽症又は無症状の人は自己隔離不要で外出可能。ただし、5日間はDMHT対策(Distancing:距離の確保、Mask Wearing:マスク着用、Hand Washing:手洗い、Testing:検査(症状が表れた場合))が推奨される。
  • 高齢者や特定の疾患を有する高リスクの感染者は、10日間、自身による健康観察(5日目と10日目にATKによる検査)が推奨される。
  • 企業・団体は、定期的に従業員を観察することが推奨される(感染者数が大きく増加する場合は、直ちに関係当局に報告)。
  • 引き続きワクチン接種は推奨される。
 

3.マレーシア

 2022年8月1日以降、ワクチン接種完了の有無に関係なく渡航前の陰性証明書の取得、入国後検査、及び隔離が不要となっています。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、マレーシア政府開発のMySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力しアクティベートさせておくことが要請されています。

 

4.ミャンマー

2022年12月1日より、ミャンマー入国の条件となっている「到着 14 日以上前に接種した承認済み ワクチンの(2 回)接種証明書」又は「到着前 48 時間以内に発行された RT-PCR 陰性証明書」を所持している方は、5 月 1 日より求められていた、 ミャンマー到着後の空港における RDT 検査の受検が不要となりました。(ただ し、入国時のスクリーニング(検温)で新型コロナウイルス感染症の症状 がある場合は、引き続き、RDT 検査が実施されます。)

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。

 

5.メキシコ

メキシコへの入国について、政府による入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 

7.フィリピン

フィリピン検疫局は、改定されたフィリピン入国ガイドラインを発表しました。

(1)完全にワクチンを接種した者(Fully vaccinated)

以下の条件を両方満たす場合は、完全にワクチンを接種した者と見なされ、出発国出発前の検査を免除されます。

(a) 出発国からの出発日時から遡って14日以上前に、ファイザーなど2回接種する種類のワクチンを2回接種済み、またはヤンセンなど1回接種する種類のワクチンを接種済みのこと。

(b) 以下のいずれかで発行したワクチン接種の証明書を携帯/所持していること。

 ア 世界保健機関(WHO)が発行した国際ワクチン接種証明書(ICV)

 イ VaxCertPH

 ウ 外国政府の国または州の紙面/デジタルの接種証明書

 エ その他のワクチン接種証明書

(2) ワクチン未接種、一部ワクチン未接種、ワクチン接種状況を検証できない者

(a) 15歳以上の者および同伴者のいない15歳未満の未成年者

 ア フィリピン到着時に、出発国の出発日時から遡って24時間以内(経由便利用者は乗り継ぎ空港の敷地外ないし乗り継ぎ国に入域・入国していないことが条件)の陰性の抗原検査結果を提示することが必要です。

 イ 上記アの抗原検査で陰性の証明を提示できない者は、空港到着時に医療施設、研究所、診療所、薬局、又はその他の同様の施設で医療専門家によって実施および認定された検査室の抗原検査を受ける必要があります。

 ウ 上記イの抗原検査で陽性となった場合には、フィリピン保健省(DOH)の検疫、隔離規則に従うことになります。

(b) 同伴者のいる15歳未満の未成年者

同伴する成人又は保護者の検疫規則に従うとされています。

 

8.ベトナム

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(観光目的、ビジネス目的いずれであっても)、

  • ベトナム滞在期間が15日以内であること
  • ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること
  • ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の職場の労働安全衛生に関する法制度の概要

1.日本

 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)は、労働基準法(第22年法律第49号)と相まって、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています(第1条)。この目的を達成するための施策として、事業者対して労働災害防止計画の立案と安全衛生管理体制の確立を義務付けるとともに、労働者の健康保持推進のための措置の実施を求め、労働者への危険や健康被害を最小化するために特定の機械等・危険物・有害物を規制し、免許取得者のみが取り扱うこととし、違反事業者への罰則が規定されています。以下では、これらのうち、事業者の義務として規定されている主な項目を紹介します。

  1. 安全衛生管理体制

 作業内容や現場の規模によって、総括安全衛生管理者、産業医、安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者、衛生推進者、作業主任者等の人員と安全委員会・衛生委員会の設置が義務付けられています。

労働者に対する安全衛生教育として、労働災害防止業務従事者能力向上教育(第19条の2第1項)、雇入時及び作業内容変更時の安全衛生教育(第59条第1、2項)、新任職長等に対する安全衛生教育(第60条)、危険有害業務に対する特別教育及び安全衛生教育(第59条第3項、第60条の2第1項)を事業者は実施する義務があります。

 また、仕事の一部を請負に出している場合、業種にかかわりなく、最初に注文者から仕事を引き受けた元方事業者には、関係する請負人や請負人の労働者が関係法令に違反しないように指導し、違反する場合には是正のため必要な指示を行うことが義務付けられ(第29条)、更に、建設業及び造船業の元方事業者には、協議組織の設置・運営、作業間の連絡・調整、作業場の巡視、請負人への労働者の安全・衛生のための教育に対する指導・援助等、労働災害を防止するために必要な措置をとること(第30条第1項)、下請に対する注文者として、請負人に使用させる設備等の災害防止のための措置をとること(第31条第1項)等、が義務付けられています。

 2.労働者の健康保持推進

 作業環境測定を実施し(第65条第1項)、その結果の評価に基づいて必要な場合には設備の整備等の適切な措置を講じて記録化(第65条の2)することが事業者には義務付けられています。

 また、潜水業務等の健康障害のおそれがある業務に従事する労働者については法定の作業時間を超えて稼働させることは禁じられています(第65条の4)。

 常用雇用者の雇入時と年1回の健康診断、特定業務従事者や海外派遣労働者に対する定期的な健康診断の実施(第66条第1~3項)、心理的な負担に関するストレスチェックの実施(第66条の10第1項)、健康診断やストレスチェックの結果を受けて従業員の健康保持に必要な措置の実施(第66条の5、第66条の10第6項)、等が事業者に義務付けられています。また、省令で指定される伝染病等に罹患した労働者の就業を禁止しなければならず(第68条)、受動禁煙の防止のための必要な措置については努力義務が課されています(第68条の2)。

   3.危険防止・健康障害防止

 事業者には、機械、爆発性・引火性のある物、電気・熱等による危険の防止(第20条)、採掘・砕石等の作業方法から生じる危険や墜落・土砂等の崩壊のおそれがある場所等に関連する危険の防止(第21条)、原材料、ガス、放射線、騒音、計器監視等の作業、廃棄・残滓物等による健康障害の防止(第22条)ための必要な措置を講じる義務があります。例えば、ボイラーやクレーン等の特定の機械については、使用に際しての検査が義務付けられる他、検査証のない機械の譲渡・貸与が禁止されています。黄燐マッチ等政令で定められる重度の健康障害のおそれがある有害物の製造・輸入・使用等が禁じられる(第55条)他、爆発性・発火性のある危険有害物質については内容の表示等が義務付けられています。更に、労働災害防止のため、特定の機械の設置や大規模な建設作業等の一定の業務や工事等は監督官庁への届出が義務付けられています(第88条第1~3項)。

 また、労働者の就業場所の保全・清潔等の健康保持のための措置(第23条)等を講じることが事業者に義務付けられています。

   4.罰則

 労働安全衛生法違反の罰則としては、懲役(最高7年)、罰金(最高300万円)、過料(最高50万円)が定められており、その一部については事業者である法人への両罰規定も設けられています(第122条)。

 具体的には、労働災害の発生等を端緒として、労働基準監督機関の調査が行われ、労働安全衛生法違反の疑いがある場合には、被疑事件として捜査が開始され、両罰規定が適用されるときは法人代表等の事情聴取も行われて、検察庁へ事件が送致され、捜査結果を踏まえて公訴提起に進み、裁判所で判断されます。

 

2.タイ

(1) 労働安全衛生環境法

タイでは、職場における労働安全衛生に関する法律として、労働安全衛生環境法(Occupational Safety, Health and Environment ACT, B.E. 2554 (A.D. 2011))があります。同法では、使用者の労働安全衛生環境に関する管理・運営等の義務、職場における安全衛生基準、安全管理者の任命等について規定されています。

(2) 使用者の義務

使用者は、被雇用者の生命、身体、精神及び健康に危害が及ばないように、被雇用者の業務を支援し、促進することを含め、会社及び被雇用者を安全で衛生的な労働条件及び環境を提供し、維持する義務があります(同法6条1項)。具体的には下記のほか、使用者は、被雇用者に対する業務の危険を知らせる通知、マニュアルの配付(同法14条)労働安全衛生環境に関する研修の実施(同法16条)、危険を警告する表示の掲示(同法17条)等を行う必要があります。

(3) 安全衛生基準に関する省令

使用者は、省令で定める基準に従って、労働安全、健康及び環境を管理及び運営しなければならないとされています(同法8条1項)。同項に基づく省令は、職種によって安全衛生基準を定めており、安全装置の設置、従業員の安全服の着用、作業機器の基準等が定められています。同条に基づく省令の例として、機械、クレーン及びボイラーに関連する省令、電離放射線に関連する省令、建設作業に関連する省令、潜水作業に関連する省令、熱、光及び騒音に関連する省令、有害な化学物質に関連する省令等があります。

(4) 安全管理者の任命

使用者は、省令で定める基準、方法及び条件に従って、事業所内の安全を運用するために、被雇用者から任命した安全管理者、人員・作業ユニット又は人員のグループを定めなければならないとされています(同法13条1項)。

 

3.マレーシア

 マレーシアでは、労働安全衛生に関する法令として労働安全健康法(Occupational Safety and Health Act 1994)があります。

(1) 概要

 労働安全健康法は、職場における人の安全、健康、福祉の確保を目的とする法律です。同法は、Schedule1が定める以下の事業に対して適用されます(労働安全健康法1条2項)。

  1. 製造業
  2. 採掘・採石業
  3. 建設業
  4. 農業、林業、漁業
  5. 公益事業(電気、ガス、水、衛生サービス)
  6. 運送業、倉庫業、通信事業
  7. 卸売・小売
  8. ホテル・レストラン
  9. 金融、保険、不動産、事業サービス
  10. 公的サービス・法定機関

(2) 適用対象

 使用者が直接雇用している労働者のほか、その使用者が監督する職場で働く下請業者の労働者等も労働者に含まれます(労働安全健康法3条)。 

(3) 使用者の義務

 労働安全衛生法15条は、全ての使用者は雇用する全ての労働者に対し、職場の安全、健康及び福祉を確実なものとしなければならないと規定しています。この使用者の義務には、以下のような内容が含まれます(労働安全健康法15条2項)。

  1. 安全であるように職場における設備又はシステムを提供・維持する
  2. 設備及び物資の使用、運用、取扱い、貯蔵及び輸送の安全性を確保する
  3. 安全性を確保するために必要な情報、指示、訓練及び監督を提供する
  4. 職場及び職場への出退勤の方法を安全なものとする
  5. 労働者の福祉のために適切な設備を確保する

 5名以上の労働者を有する使用者は、労働者の職場における安全及び健康に関する一般指針を作成し、労働者に対し周知しなければなりません(労働安全健康法16条)。

 また、いかなる使用者も、以下の理由によってその労働者に対する解雇や役職の不利益変更等の行為をとることはできません(労働安全健康法27条1項)。

  1. 安全性を欠く又は健康を害すると考える問題について苦情を申し立てた
  2. 安全・健康委員会の構成員である
  3. 安全・健康委員会としての役割を果たした

 同条に違反した使用者は、RM1万を超えない若しくは1年を超えない禁固又はその両方が科される可能性があります(同条3項)。

 使用者は、職場で発生した又は発生する可能性のある事故、危険な出来事、職務上の中毒又は職務上の疾病を最寄りの労働安全健康局に通知しなければなりません(労働安全健康法32条1項)。

 

4.ミャンマー

(1) 労働安全衛生法

2019年3月に労働安全衛生法が公布されました。本法は全ての職場に労働安全衛生に関する事柄を効果的に推進すること等を目的としています。

(2) 労働安全衛生法上の使用者の義務

労働安全衛生法上、使用者は以下の義務を負います(労働安全衛生法26条)。

  1. 職場、作業過程、使用されている機械及び物質の危険性を評価しなければならない。
  2. 職場で起こりうる危険の状況を必要に応じて評価しなければならない。
  3. 規定により労働者が職業病であるか否かを認定医に調べさせなければならない。
  4. (a)(b)(c)項による調査を元に、健康で安全な状況に達するまで職場を管理しなければならない。
  5. 労働省から指定され許可された適当な個人用の防護服、物及び信頼性のある設備を支給し、着用及び使用を確認しなければならない。
  6. 危険のある場合、防止する対策を立てなければならない。
  7. 省が決めた労働者人数より労働者数が多い職場では診療所を置き、登録医及び看護師を雇い、必要な薬及び信頼性のある設備を設置しなければならない。
  8. 使用者を含め、各部局の経営者及び労働者は省が決めた労働安全衛生の講座に出席しなければならない。
  9. 労働者が労働災害又は生命と健康に被害を及ぼしうる状況に遭遇した場合、労働安全衛生の担当者又は管理者に通知する計画を立てなければならない。
  10. 労働者が職場の機器、機械、廃棄物または作業過程により健康を害さないよう、職場の安全を管理しなければならない。
  11. 労働災害が起こった場合、即座に作業を終了し、労働者を安全な所に移動させ、救助する計画を立てなければならない。可能ならば使用者は労働者を安全な所で働かせなければならない。
  12. 労働安全衛生による教育啓発活動のため、掲示、ポスター、案内看板などを条項の通り置かなければならない。
  13. 危険が起こりうる禁止区域に出入りする場合、注意に従うよう管理しなければならない。
  14. 教育、知識、技術を満たすよう、関連省から出版された、労働安全衛生に関する指令を関連する労働者に伝え、啓発して管理しなければならない。
  15. 火事安全の計画を立て、実際に消火器使用の訓練を行わなければならない。
  16. 監査役の観察、書類依頼、証拠の収集を許可しなければならない。
  17. 労働者は危険な労働及び職場で働く場合、指定時間内で働かせなければならない。
  18. 労働安全衛生の費用を払わなければならない。

使用者は次に述べた条件で労働者を解雇する又は役職を下げることはできません(労働安全衛生法27条)。

    1. 職場上の被害による登録医による医療登録又は職業病で認定医による医療登録が受理されていない場合。
    2. 危険又は健康上の問題について苦情を言う場合。
    3. 労働安全衛生委員会の義務を果たす場合。
    4. 職場での災害又は職業病が起こりうる際に継続して作業していない場合。

使用者は、以下の義務も負います(労働安全衛生法29条)。

  1. 登録医の健康診断のもと、企業が必要とする健康レベルを満たしていない労働者を制限し禁止しなければならない。
  2. (a)項により、禁止された労働者が健康である証拠を申告してきた場合、遅延なく元の職場又は適当な職場で再び働くことを許可しなければならない。
  3. 妊婦又は育児中の女性の健康を害さないよう作業及び管理しなければならない。
 

5.メキシコ

(1) 労働安全衛生に関する法規制

労働安全衛生に関して、憲法( Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)は、使用者は、その事業の性質に応じて、その事業所における安全衛生に関する法令上の規定を遵守し、機械、器具および用具の使用における事故を防止するための適切な措置を採用するとともに、労働者の健康および生命を最大限に保障することと規定しています。また、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)においても、業務上の事故や疾病を防ぐために、安全、健康、労働環境に関する規則や公式メキシコ規格に従って、工場、作業場、事務所、敷地、その他業務を行う場所を設置、運営し、労働当局が定める予防・是正措置を採用することと、使用者の義務が規定されています。

詳細な労働安全衛生規制に関しては、労働安全衛生に関する規則(Reglamento Federal de Seguridad, Higiene y Medio Ambiente de Trabajo、以下、「規則」といいます。)および公式メキシコ規格(Norma Oficial Mexicana、以下、「NOM」といいます。)において定められています。紙幅の関係上、各規制の詳細については割愛しますので、個別の事業所に適用される労働安全衛生の法規制に関しては、弊事務所にご相談ください。

(2) 労働安全衛生に関する規則の概要

労働安全衛生に関する規則において、使用者は、以下の義務を負うとされています。

  • 労働安全衛生診断、ならびに規則およびNOMで要求されるリスクの調査・分析を行うこと。
  • 労働安全衛生診断に基づく労働安全衛生プログラムを作成すること。
  • 平常時および緊急時の活動や作業工程の実施のための特有のプログラム、マニュアル、手順を作成すること。
  • 安全衛生委員会(Comisión de Seguridad e Higiene)を設置し、その運営を円滑にすること。
  • 予防的労働安全衛生サービスを提供し、また法律に従い産業医サービスを提供すること。
  • 職場の見やすい場所に通知や標識を設置し、労働災害リスクを知らせ、警告し、防止すること。
  • 事業所の設置に際しては、規則およびNOMに示された労働安全衛生対策を、作業内容や作業工程の性質に応じて適用すること。
  • 職場の環境条件を暴露限界値以内に維持するために、職場環境における汚染物質に対する認識、評価、制御を行うこと。
  • 規則およびNOMにより必要とされる業務上の被曝者に対する健康診断の実施を命じること。
  • 作業者がさらされる労働災害リスクに応じて、個人用保護具を提供すること。
  • 業務に関連する労働災害リスクについて、労働者に知らせること。
  • 労働者が行う活動に応じて、危険防止や緊急時の対応について教育・指導を行うこと。
  • 安全衛生委員会のメンバーおよび予防的労働安全衛生サービスを提供する労働者を訓練し、必要に応じて社内の産業医学予防サービスの責任者の交代を支援すること。
  • 規則およびNOMの定めに従い、危険が伴う活動または作業に対してその実施を許可すること。
  • 規則およびNOMで定められた管理記録を、紙または電子媒体で保管すること。
  • 発生した労働災害について、労働福祉省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)または社会保障機関に通知すること。
  • 業務上の事故および疾病による死亡を労働福祉省に通知すること。
  • 圧力容器、超低温容器、蒸気発生器またはボイラーの取扱いに関する届出を行うこと。
  • 労働安全衛生に関する規則およびNOMの遵守に関する意見、結果報告、適合証明書を取得すること。
  • 請負業者がその施設内で作業を行う際に、規則およびNOMに定められた労働安全衛生対策を遵守するよう監督すること。
  • 労働安全衛生に関する規則の遵守を徹底するため、労働当局による監査を許可し、協力すること。
  • その他、法律の規定に従うこと。

また、規則は、次の個別的な場合における使用者の義務も定めています。

  • 職場の建物等
  • 火災の予防
  • 機械や設備等の使用
  • 材料の取り扱い・輸送・保管
  • 危険な化学物質の取扱い・輸送・保管
  • 自動車の運転
  • 高所作業
  • 閉鎖的空間における就業
  • ボイラー等の取扱い
  • 静電気の管理および大気放電の影響の防止
  • 溶接および切断の作業
  • 電気設備の保守
  • 職場での騒音
  • 職場での振動
  • 職場の照明
  • 電離放射線源の使用・取扱い・保管・輸送
  • 非電離性電磁波を発生させる職場
  • 極端な高温または低温の熱条件にさらされる場合
  • 異常な気圧・水圧にさらされる場合
  • 健康に影響を及ぼす可能性のある化学物質にさらされる場合
  • 健康に影響を及ぼす可能性のある生物学的物質にさらされる場合
  • 職場の人間工学的危険因子
  • 職場における心理社会的リスク要因、など

(3) NOMによる規制

NOM-001-STPS-2008 職場の建物、構内、施設、敷地における安全基準
NOM-002-STPS-2010 職場の火災予防に関する安全基準
NOM-003-STPS-1999 農作業における農薬や肥料の使用に関する労働安全衛生基準
NOM-004-STPS-1999 職場で使用される機器の安全装置及び保護システム
NOM-005-STPS-1998 職場における危険な化学物質の取り扱い、輸送、および保管における安全および衛生基準
NOM-006-STPS-2014 職場における危険な化学物質の取り扱い、輸送、および保管における安全および衛生基準
NOM-007-STPS-2000 農業における施設、機械、設備、工具に関する安全基準
NOM-008-STPS-2013 木材の保管や加工を含む木材の取扱いに関する安全衛生基準
NOM-009-STPS-2011 高所作業における安全基準
NOM-010-STPS-2014 作業環境を汚染する化学物質の特定、評価、および管理に関する基準
NOM-011-STPS-2001 騒音が伴う職場の安全衛生基準
NOM-012-STPS-2012 電離放射線源を扱う職場の安全衛生基準
NOM-013-STPS-1993 非電離放射線が発生する職場の安全衛生基準
NOM-014-STPS-2000 異常な環境圧力下での労働安全衛生基準
NOM-015-STPS-2001 高温もしくは低温下の労働安全衛生基準
NOM-016-STPS-2001 鉄道の運営管理における安全衛生基準
NOM-017-STPS-2008 職場における個人用保護具の選択、使用、および取り扱い基準
NOM-018-STPS-2015 職場の危険な化学物質によるリスクの識別と伝達のための統一システム
NOM-019-STPS-2011 安全衛生委員会の組成、構成、運営に関する基準
NOM-020-STPS-2011 圧力容器、低温容器、蒸気発生器またはボイラーの取扱いに関する安全基準
NOM-022-STPS-2015 職場における静電気に関する安全基準
NOM-023-STPS-2012 地下鉱山及び露天掘鉱山における労働安全衛生基準
NOM-024-STPS-2001 振動に関する労働安全衛生基準
NOM-025-STPS-2008 職場の照明に関する基準
NOM-026-STPS-2008 安全衛生における色及び標識、並びに導管内流動体に関するリスクの特定
NOM-027-STPS-2008 溶接及び切断作業における労働安全衛生基準

NOMとは人々の安全や健康、動植物、環境の保護、安全な作業環境の確保などを目的とする法的強制力のある規格基準です。現在、労働安全衛生に関して有効なNOMは以下の通りです。

また、2021年1月12日、テレワークに関する規制の追加等、労働法の改正が施行されました。これに基づき、2022年7月15日にテレワークにおける安全衛生に関する基準を定めるNOMの草案であるPROY-NOM-037-STPS-2022が公表され、これに対するパブリックコメントの募集が行われました。今後、寄せられたパブリックコメントの内容を踏まえ、最終的なNOMが発行される予定です。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、労働法および労働規則にて、職場の労働安全衛生について規定されています。輸出加工区(EPZ)および経済特区(EZ)については、EPZ労働法およびEPZ労働規則が適用されます。

(1) 職場の健康、衛生、安全

(a) 労働法および労働規則

 労働者の健康と衛生を保つため、使用者は職場環境を適切に整えなければならないと規定されています。労働法51条から60条に亘り、清掃、換気、温度調整、粉塵、煙、廃棄物処理、排水処理、清潔な水での加湿、過密の解消、照明、水の供給、トイレと洗面所、ゴミ箱の設置について、使用者がとるべき措置が定められており、労働規則40条から52条にて、具体的な数値などが補足されています。

 また、職場での安全確保のために、労働法61条から78A条に亘り、建物と機械の安全性、火災への対策(避難経路の確保、50人以上労働者を雇用している事業所は6か月に1回以上火災避難訓練を実施しなければならない等)、機械の囲い、動力機械の取り扱い、電力を切るための装置、自動機械、クレーンなどリフト機、巻き上げ機、加圧器、フロアや階段、ピットや汚水槽、目の保護、有害ガスに対する予防措置、爆発または可燃性ガスや粉塵の適切な取り扱いや対応について定められています。労働規則53条から67条にて、具体的な措置が補足されています。事故や特定の疾病が発生した場合は、速やかに検査官へ報告しなければならないと規定されており、労働規則にて、報告書の様式が提供されています。

(b) EPZ労働法およびEPZ労働規則

 EPZ労働法35条では、安全管理のための措置(危険物の取扱、労働者への教育、安全委員会の設置、安全管理簿の保管等)及び健康管理(産業廃棄物の処理、換気や温度管理、危険作業に対する措置等)について定めています。また、2022年9月に制定されたEPZ労働規則では、第4章(39条から105条)に「保健、衛生、安全な職場環境、福祉」について規定しています。45条では、消防機器の管理、48条では男女別のトイレの設置、49条では、飲料水の提供を義務づけています。50条では、全ての事業場において、危険性のある化学物質および機材のリスト、消防機材等を含む安全記録簿を管理し、51条にて、安全委員会の設立が義務づけられています。58条から63条では、事業場の食堂および食料の管理、67条は職場の衛生、91条には、職場で発生した事故について、発生から2日以内に使用者への報告を義務づけています。101条では、女性従業員に従事させてはならない危険性のある業務が特定されています。

(2) 医療サービス

(a) 労働法および労働規則

 事業所は救急箱を備え付け、300人以上の労働者を雇用している場合は医師および看護師を配置した医務室を設置しなければなりません(労働法84条)。また、5,000人以上の労働者を雇用している事業所は、ヘルスセンターを設置しなければならず(労働法89条(6))、労働者の人数ごとに、配置すべき医療従事者の人数やベッド数等の設備について定められています(労働規則78条(1))。労働規則にて、労働者の人数ごとに、事業所が備え付けるべき救急箱の内容を定めており(労働規則76条(1)(2)(3)(4))、医務室に備え付けるべき備品が挙げられています(労働規則77条)。

(b) EPZ労働法およびEPZ労働規則

 EPZ労働法では、各輸出加工区では、医療センターを設置し、入居企業は医療センターの会費を支払わなければならないと定められています(EPZ労働法第37条)。また、EPZ労働規則43条では、事業場の全てのフロアまたは部署に、または150人の労働者に対し、1個の救急箱を設置しなければならないと規定しており、救急箱に備えるべき医療器材が挙げられています。なお、労働者が300人以上の工場では「医療室」をもうけ、医師および1人以上の看護師の配置が義務づけられています。

 

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける労働安全衛生に関する法令概要

フィリピンの労働安全衛生に関連する主要な法律は、「労働安全衛生基準法」に位置づけられる共和国法第11058号において規定されています。この法律は、フィリピンの職場での怪我や病気の症例数を減らし、国内労働法の規定と労働安全衛生に関する国際的に認められた基準を遵守するために、2018年8月に可決されました。また、労働雇用省は、省令第198.18号を通じて法律の実施規則および規則を公布しています。

   2. フィリピンにおける労働安全衛生基準法の概要

フィリピンにおいて「労働安全衛生基準法」に位置づけられる法令においては、主に以下の義務や基準を定めています。

①雇用主、労働者、およびその他の人の義務

②対象職場が遵守すべき基準

③労働者の権利

④雇用主の責任の性質

⑤労働安全衛生基準の実施方法

⑥禁止行為及び罰則

   3.フィリピンにおける労働安全衛生に関する雇用主の義務等

労働安全衛生に関する法令において、雇用者は、労働者に対し、死亡、病気又は身体的被害を引き起こす危険性がない雇用場所を提供する義務があるとされています。

また、同法令において、補償請求に対する労働者の権利が規定され、雇用主は、従業員から適法な申請があった場合には、必要な支援を提供することを義務づけられています。雇用主の義務違反に対しては、罰則が規定されています。

さらに、フィリピン最高裁判所における近時の判決では、負傷または死亡した労働者の相続人は、労働法に基づく補償請求又は民法に基づく損害賠償訴訟で雇用主に対する提訴を選択できると判示しました。

 

8.ベトナム

 ベトナムでは、2016年7月から労働安全衛生法が施行されています。以下、同法の概要についてご説明します。

(1) 適用対象

 労働安全衛生法は、広く、労働者及び雇用者に適用され、雇用者については業種を問いませんし、労働者については、正規雇用されているものだけでなく、試用期間中や研修期間中であっても、労働者である限り適用対象となります(2条)。

(2) 雇用者の義務(一般的義務)

 労働安全衛生法では、一般的な雇用者の義務として、次のとおり規定しています(7条2項)。

  • 労働安全衛生確保体制の構築、運用、労災保険の加入
  • 労働安全衛生確保に関する訓練、研修会の実施、労働安全衛生確保のための用具整備、健康管理及び職業病検査の実施
  • 労働災害発生の恐れがある場合における業務継続や職場復帰の指示の禁止
  • 労働安全衛生確保状況をモニタリングする担当者の配置
  • 労働安全衛生の事務担当者又は担当部署の設置
  • 労災事故の深刻、調査、統計、報告義務
  • 労働安全衛生確保の計画、規則、手順、対応策を立案する際の労働組合への意見照会

(3) 雇用者の義務(職場における義務)

 職場における労働安全衛生確保に関する雇用者の義務として、次のとおり規定しています(16条)。

  • 通気性、微粒子、蒸気、有毒ガス、放射性物質、電磁波、高温、湿度、振動、その他の関連技術基準に定める危険要素、有害要素に関する要件を満たし、かつそれらの項目の定期的な検査・測定
  • 機械、設備、材料、物質が労働安全衛生に関する技術基準や標準規格等に則って使用、運転、保持、保管されていること
  • 労働者を危険要素、有害要素を持つ業務に従事させる場合、保護具を十分に用意する
  • 毎年又は必要に応じて職場における危険要素、有害要素を検査、評価する
  • 機械、設備、材料、物質、施設、倉庫を定期的に検査、メンテナンスする
  • 職場、保管管理場所、使用場所において、労働安全衛生の要件を満たすための機械、設備、材料、物質について、分かりやすく読みやすい場所にベトナム語による警告、案内表示を掲げる
  • 労働者に対し、その業務、職務に関する労働安全衛生の規則、規定等について、周知又は訓練を実施する
  • 職場の異常対応、緊急対応計画を作成、制定する

(4) 健康診断実施義務

 雇用者は、毎年少なくとも1回、労働者の健康診断を実施しなければならないとされています。重労働、有害、危険な業務を担当する労働者や障害を持つ労働者、未成年労働者、高齢労働者については、半年に1回、健康診断を実施しなければなりません。

(5) 労働安全衛生の事務担当者又は担当部署の主な事務

 上記(2)の雇用者の一般的義務として、労働安全衛生の事務担当者又は担当部署の設置が義務付けられていますが、この事務担当者・担当部署の主な事務は次のとおりです。

 ① 労働安全衛生確保の規定等の構築、年次労働安全衛生計画の作成、労働安全衛生の点検の実施、事  故の調査、その他の労働安全衛生確保に関する事務を実施する

 ② 労働災害の危険がある場合、緊急時の作業中止や一時的な作業停止を指示し、労働安全衛生の確保に努めるよう製造部門の責任者に要請し、使用者に報告する

 ③ 安全が確保されていない機械設備、使用期限が経過した機械設備の稼働を停止させる

 ④ 労働安全衛生業務向上のための訓練、養成研修へ参加する

発行 TNY Group

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

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・佐賀(TNY国際法律事務所)
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・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

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・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

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・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

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・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

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Newsletterの記載内容は2022年12月26日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 11月29日、全国で153人の死亡、12万7422人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、マスクの着用については、①屋内において他者と2メートル以上の身体的距離が取れない場合、②屋内で他者と会話を行う場合、③屋外で他者と身体的距離が取れず会話を行う場合にマスクの着用が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

2022年10月11日以降、全ての外国人の新規入国について、日本国内に所在する受入責任者による入国者健康確認システム(ERFS)における申請は求められなくなり、68の国・地域に対する査証免除措が再開されました。以下の国・地域に対するAPEC・ビジネス・トラベル・カード取り決めに基づく査証免除も再開されました。

地域 国・地域
アジア インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、台湾
大洋州 オーストラリア、パプアニューギニア、ニュージーランド
中南米 チリ、ペルー、メキシコ
欧州 ロシア

外務省HP新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について|外務省 (mofa.go.jp)

(2) 日本入国時の検疫措置について

 2022年10月11日から、日本入国時の検疫措置は原則として実施せず、入国後の待機等を求めないこととなりました。ただし、全ての帰国者・入国者について、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの接種証明書または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提出が必要とされています。

有効なワクチン接種証明 陰性証明書
(出国前検査)
質問票 入国時検査 入国後の待機期間
あり 不要
必要
なし
なし
なし 必要

厚生労働省HP 水際対策

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,707,244名です。この内、4,649,509名が回復し、累計死亡者数は33,180名となっています。直近1週間の感染者数は4,914名、死亡者数は74名です。

2.2 入国規制

タイ政府は、10月1日からタイ入国規制等を以下のとおり緩和する旨発表しました。

(1)タイ入国時の規制緩和

  • タイ入国時のワクチン接種証明書又は陰性証明書の提示は不要。
  • 日本を含むビザ免除国/地域からの渡航者の滞在可能期間を30日から45日に延長(2023年3月末までの措置)。

(2)タイ国内における感染対策緩和

  • マスク着用は混雑した場所や換気の悪い場所において推奨されるが、義務ではなくなる。
  • 新型コロナ感染者のうち、軽症又は無症状の人は自己隔離不要で外出可能。ただし、5日間はDMHT対策(Distancing:距離の確保、Mask Wearing:マスク着用、Hand Washing:手洗い、Testing:検査(症状が表れた場合))が推奨される。
  • 高齢者や特定の疾患を有する高リスクの感染者は、10日間、自身による健康観察(5日目と10日目にATKによる検査)が推奨される。
  • 企業・団体は、定期的に従業員を観察することが推奨される(感染者数が大きく増加する場合は、直ちに関係当局に報告)。
  • 引き続きワクチン接種は推奨される。
 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 11月27日の新規感染者数は、2,022人でした。直近7日間(20日~26日)の平均は2,714人であり先月よりは少し増えていますが、感染状況は落ち着いています。マレーシア政府は、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。また、これまでは屋内でのマスク着用義務がありましたが、9月7日より電車・バス・タクシー等の公共交通機関や医療機関等一部を除き撤廃されました。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 これまで、ワクチン接種未完了者には、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要とされていましたが、8月1日からはこれらの手続が不要となりました。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、MySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力が引き続き要請されています。また、ショッピングモール等施設によっては、ワクチン接種歴を確認されることがあるため、MySejahteraアプリへワクチン接種証明を反映させておくことが推奨されます。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 爆発的な感染拡大状況にはありませんが、感染者数は 9 月上旬から 3 桁で継続推移し、新型コロナ による死者も断続的に確認されています。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。入国後の隔離措置について、10月8日より、到着14日以上前に接種した承認済みワクチンの(2回)接種証明書を所持している方は、8月1日から求められていたミャンマー到着前48時間以内に発行された新型コロナ RDT(迅速抗原検査)陰性証明書(又はRT-PCR陰性証明書)の提示が不要となりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

連邦政府による新たな規制は見られません。COVID-19の感染状況については、新規感染者数やアクティブ患者数が増加傾向を見せる州もありますが、目立った拡大傾向はありません。メキシコシティの市中では、マスクを着用していない人も多くみられるようになりました。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、11月27日の時点で、24時間以内に報告されたCOVID-19の陽性者は16名で、陽性率は0.67%です。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。これまで求められていた健康申告書の提出は不要となりました。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計402万9201人で、死者数は累計64,524人です(2022年11月25日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあるものの、最近はやや増加傾向にあります。現在は1日約700~1,500人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

  フィリピン検疫局は、改定されたフィリピン入国ガイドラインを発表しました。

 これまでワクチン未接種の外国人は、入国できませんでしたが、到着後隔離施設での隔離(5日目以降に陰性のRT-PCR検査結果がでるまで)により入国できることとなりました。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年11月28日午前9時の時点での累計感染者数は1151万4532人で、約1か月前の10月27日の時点より1万5659人増加しました。11月に入ってからは、毎日の新規感染者数は400人前後に落ち着いています。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。また、ベトナム保健省は、9月6日、マスク着用に関する規制を緩和するガイダンスを決定しました(2447/QD-BYT)。これによると、これまで公共の場ではマスク着用が必須とされていましたが、急性呼吸器感染症の症状がある者、新型コロナ感染者・感染の疑いのある者、飛行機、バス、タクシーなどの公共交通機関を利用する場合などを除き、公共の場でマスク着用は不要とされました。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(観光目的、ビジネス目的いずれであっても)、

  • ベトナム滞在期間が15日以内であること
  • ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること
  • ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の社会保障に関する法制度の概要

1.日本

 社会保障制度は、(1)医療保険、年金、介護保険、雇用保険及び労災保険からなる社会保険、(2)社会的弱者に対する公的支援である児童福祉を含む社会福祉、(3)生活困窮者に対する生活保護制度を軸とする公的扶助、(4)予防衛生に主眼を置いた保健医療・公衆衛生からなります。1958年の国民健康保険法(昭和33年法律第192号)改正と1959年の国民年金法(昭和34年法律第141号)制定により、国民皆保険・皆年金が導入されていること、社会保険方式をとるものの、その財源の約3割を公費で賄っていること、被用者と自営業者等で別個の健康保険と年金の制度が用意されていること等に特徴があります。以下では、介護保険を除く社会保険について、概観します。

(1)医療保険制度

医療保険は、その職種によって、①公務員が加入する共済組合保険、②大企業の被用者が加入する健康保険組合、③中小企業の被用者の加入する協会けんぽ、④その他の自営業者や非正規雇用者が加入する国民健康保険の4つのグループに分かれます。保険料は、①~③の被用者保険では、毎月の給与と賞与に保険料率を掛けて計算され、事業主と被保険者とが半分ずつ負担しますが、④の国民健康保険では、世帯毎に賦課される平等割、世帯の被保険者数に応じた均等割り、被保険者の所得に応じる所得割と固定資産税額に応じる資産割から計算して世帯単位で定められます。少子高齢化に対応すべく、75歳以上の高齢者を対象とする後期高齢者医療制度が2008年に制定され、高齢者からも保険料が徴収されています。

被用者保険は、常時1名以上使用される者がいる法人事業所及び常時5名以上使用される者がいる法定16業種に該当する個人の事業所について強制適用され、これら以外については労使合意により任意に適用事業所となることができます。

2020年に被用者保険の適用を拡大する各法律改正がなされました。具体的には、2022年10月以降は、弁護士・税理士等の法律・会計事務を取り扱う士業が被用者保険の強制適用対象となりました。また、保険対象は所定労働時間週30時間以上ですが、2016年10月に従業員500人超の企業に義務化された、①週20時間以上で、②月額賃金8.8万円以上、③1年以上の勤務の見込みがある短時間労働者に対する被用者保険の適用の義務化が、2022年10月からは100人超、2024年10月からは50人超の企業まで段階的に拡大されることとなり、同時に、被用者の勤務期間の要件③が撤廃されました。 

(2)年金制度

 全員が国民年金の被保険者となり、20歳から60歳まで保険料を納付する義務があります。一定の被用者と公務員については、保険料を雇用者とで折半する厚生年金保険にも加入することとなり、年金受給時には、報酬比例年金が基礎年金に上乗せされます。また、公的年金の他に、国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)等に任意で加入することで上乗せした年金を受給することも可能です。

 年金の受給は、60歳から75歳の間で自由に選択することができ、65歳よりも早く繰上げ受給するときは年金額が1月当たり0.4%減額(最大30%減)され、65歳以降に繰下げ受給するときには1月当たり0.7%増額(最大84%増)となります。

(3)雇用保険制度

 雇用保険制度では、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づき、労働者が失業したときに生活を支える基本手当や就業に資する教育訓練を受けた際の就業促進手当を含む失業等給付及び子の養育のために休業した場合の育児休業給付がなされます。

1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込がある場合、雇用形態や労使の希望の有無にかかわらず、雇用者に加入が義務付けられます。雇用保険料は、原則として、労働者に支払う賃金総額に保険料率を乗じて計算され、被保険者負担額が控除される形で、雇用者と労働者で負担します。

 失業した場合の雇用保険(基本手当)の受給には要件があり、就業を希望しているにもかかわらず失業状況にある場合で、離職時の年齢、雇用期間の加入期間(原則、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上)、離職の理由等により、給付期間が90日~360日と異なる他、給付開始が自己都合退職の時には届出から数か月後になる等、失業者の状況に応じて差異があります。給付される基本手当は給与の総支給額に基づき定められます。

(4)労災保険制度

労災保険制度は、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に基づき、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の疾病等に対して必要な保険給付を行い、被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度です。原則として、雇用形態に関係なく賃金を支給される労働者を一人でも使用する事業は、その規模を問わずすべてに適用され、雇用者が事業の種類により定められた保険率によって算出される労働保険料を全額負担します。被災労働者に対しての給付は、療養(補償)給付、介護(補償)給付、休業(補償)給付、傷害(補償)給付、遺族(補償)給付があり、それぞれの給付金額が定められています。

 

2.タイ

(1) 社会保障法に基づく被保険者

タイでは、社会保障を規定する法令として、社会保障法(Social Security Act B.E. 2533 (1990))があります。

同法に基づき、15歳以上60歳未満の被雇用者は被保険者として、社会保障制度の強制加入の対象となります。また、60歳に達した後も引き続き被雇用者である場合は被保険者となります(社会保障法33条)。なお、この被保険者は外国人も対象となります。また、同法33条に基づく被保険者が被雇用者ではなくなり被保険者の資格を喪失した場合でも、12か月以上保険料を納付している者は、被保険者の資格喪失日(退職日)から6か月以内に社会保障事務所において手続きを行うことにより引き続き被保険者となることができます(同法39条)。

さらに、同法33条に基づく被雇用者でない者であっても、社会保障事務所において手続きを行うことにより被保険者となることができます(同法40条)。

(2) 社会保障料

社会保障料は、毎月の給与を基準として算出され、以下のとおり被保険者本人、使用者および政府がそれぞれ負担します。基準となる給与額は最低1,650バーツから最高15,000バーツで、現在は被保険者本人及び使用者の保険料負担率が5%となっています。

 なお、新型コロナの影響による生活費の上昇に対応するため、2022年10月から同年12月までの期間について、本人および使用者の負担率がそれぞれ3%(保険料は450バーツ未満)となっています。

(3) 使用者の義務

15歳以上60歳未満の被雇用者が1人以上いる会社は、被雇用者が被保険者となった日から30日以内に、定められた様式による申請書を社会保障事務所に提出しなければなりません(同法34条)。

また、提出した内容に関する事実に変更があった場合には、使用者は変更があった月の翌月の15日までに書面により申請しなければなりません(同法44条)。

使用者は、賃金の支払いごとに被保険者の負担分の保険料を控除し、被保険者および使用者の負担分を翌月の15日までに社会保障事務所に支払わなければなりません(同法47条)。

(4) 社会保障の内容

社会保障制度の内容としては、①傷病手当(injury or sickness benefits)、②出産手当(maternity benefits)、③障害給付(invalidity benefits)、④死亡給付(death benefits)、⑤児童手当(child benefits)、⑥老齢給付(old-age benefits)、⑦失業手当(unemployment benefits)があります(同法54条)。

給付内容 保険料負担率
  本人 使用者 政府
傷病、障害、出産、死亡に関する給付 1.5 1.5 1.5
児童手当、老齢給付に関する給付 3 3 1
失業に関する給付 0.5 0.5 0.25
(合計) 5 5 2.75
 

3.マレーシア

 マレーシアでは、労働者に対する社会保障制度として、以下の制度が設けられています。

  • 従業員積立基金(EPF:Employees Provident Fund)
  • 従業員社会保障制度(SOCSO:Social Security Organization)
  • 雇用保険制度(EIS:Employment Insurance System)

(1) 従業員積立基金(EPF:Employees Provident Fund)

 EPFは労働者の老後の生活資金の確保等を目的とした強制貯蓄制度であり、同制度は、従業員積立基金法(Employees Provident Fund Act 1991)に基づき運用されます。

 ① 加入対象者

 全ての使用者及び労働者は労働者の月々の給与額に応じた年金保険料を納付しなければなりません(従業員積立基金法45条)。「労働者」とは、使用者のために就労するため雇用契約又は見習契約に基づき雇用された者をいいます(同条)。期間の定めの有無や勤務時間は問われませんが、家事労働者や外国人労働者等は除外されています。もっとも、家事労働者や外国人労働者も加入を選択することはできます。

 ② 年金保険料

 年金保険料の額は、労働者の賃金額に基づいて決定されます。ここにいう賃金には、基本給だけでなく、賞与、報酬又は手当等も含まれます(従業員積立基金法2条)。60歳未満のマレーシア人、永住者、又は1998年8月1日より前から任意加入を選択している者には、従業員積立基金法Third ScheduleのPart Aの表が適用され、使用者の負担分は賃金の12%(賃金がRM5,000以下の場合13%)、労働者の負担分は11%となります。前記以外の者の負担率についてもScheduleで細かく定められています。

(2) 従業員社会保障制度(SOCSO:Social Security Organization)

 従業員社会保障法は、怪我等の理由で就労ができなくなった場合の収入の填補について規定しています。同法に基づく従業員社会保障制度は、SOCSO(Social Security Organisation)によって運用されています。

 同法は、以下の2つの制度を提供しています。

  • 雇用傷害(Employment Injury)保険制度:業務上の負傷及び疾病に対する給付
  • 障害年金(Invalidity Pension)制度:業務と関係のない負傷及び疾病に対する給付

 ① 加入対象者

 使用者は同法に基づき自身とその労働者(雇用契約又は見習契約に基づき就労する全ての者)の登録を行わなければなりません(従業員社会保障法11条)。外国人労働者も加入義務の対象となります。

 ② 社会保険料

 社会保険料は従業員社会保障法Third Scheduleが定めるところに従い、労働者の賃金に応じて定められます(従業員社会保障法6条3項)。賃金には、基本給のほか、時間外手当、報酬、食事手当、住宅手当、シフト手当、妊娠手当、病気休暇中の賃金、年次有給休暇中の賃金及び休日手当を含みます(従業員社会保障法2条24項)。

 使用者は、EPFの場合同様、労働者の負担分を賃金から徴収し(第一カテゴリーの場合)、自身の負担分と併せて毎月15日までにSOCSOに納付しなければなりません(従業員社会保障法7条、8条、9条、10条)。

(3) 雇用保険制度(EIS:Employment Insurance System)

 2017年に雇用保険法(Employment Insurance System Act 2017)が制定され、雇用保険制度が導入されています。雇用保険法は、求職手当、早期再雇用手当、賃金減少手当、及び訓練手当の労働者への給付を定めています。

 ① 加入義務者

 この法律は1名以上の労働者を雇用している全ての事業について適用されます(雇用保険法2条1項)。雇用保険法が適用される全ての労働者は、使用者によって登録され、保険に加入するものとされます(雇用保険法16条1項)。日雇労働者、家事労働者、外国人労働者(永住権を保有しない者)等は除外されています。

 ② 雇用保険料

 使用者及び労働者の双方が、労働者の月給額に応じて雇用保険法のSchedule2で定められた保険料率に従い拠出することになります(雇用保険法18条2項)。使用者は、労働者の負担分を賃金から徴収し、自身の負担分と併せて毎月15日までにSOCSOに納付しなければなりません。 

 

4.ミャンマー

(1) 社会保障法の加入対象

2012年に新たな社会保障法(The Social Security Law, 2012)が制定されました。同法は2014年4月1日に施行され、同月2日に施行細則が制定されました。施設において5名以上の労働者を雇用している会社は社会保障制度に加入しなければなりません。強制加入の対象外の業種は非営利組織等に限定されており、使用者の家族以外の労働者は原則として社会保障制度の強制加入の対象となります。日本と同様に、強制加入義務のない業種の使用者及び労働者であっても、任意に社会保保障制度に加入することは可能です。

(2) 社会保障料

社会保障に関する使用者及び労働者の社会保障料は以下のとおりであり、いずれの負担率も対象労働者の月給に基づきます。但し、現在は月給の上限を30万チャットとして運用されており、30万チャット以上の月給労働者は一律30万チャットを基準として社会保障料の計算がなされることとなります。

  基金の種類 負担率
健康及び社会医療基金 加入時に労働者の年齢が60歳以内の場合:使用者:2%、労働者:2%
加入時に労働者の年齢が60歳を超えている場合:使用者:2.5%、労働者:2.5%
障害給付、老齢年金、遺族給付基金 使用者:3%、労働者:3%
失業給付金基金 使用者:1%、労働者:1%
社会保障住宅基金 労働者:25%以上
労災保険基金 使用者:1%
     
     
     
     
     
     

使用者は、労働者が負担する社会保障料を労働者の給与から控除し、使用者が負担する社会保障料とともに、社会保障事務所に対して支払わなければなりません。上記のうち、②乃至④については、現時点においては運用されていません。

支払期限について、使用者は、当該月の終了後15日以内に負担を支払わなければなりません。支払を遅延した場合、使用者は、保障料の10%(継続して保障料を支払わなかった場合には、未払い保障料総額の10%)を制裁金として支払わなければなりません。

(3) 使用者の義務

使用者は、社会保障料や給付金の支払記録を、規定に従って保管しなければなりません。また、使用者は、規定に従い、①労働者の出勤記録、②新規雇用者、労働者の労務の変更、雇用の停止・退職・解雇、③報酬の増額及び支払、④労働者、支配人、代表者及びそれらの変更についての記録を正確に保管し、所定のタウンシップ社会保障事務所に提出しなければなりません。当該届出は、いずれも各事由が生じた日から10日以内に行う必要があります。

(4) 社会保障の内容

社会保障制度の内容としては、主に①健康社会医療制度、②障害給付、老齢退職年金、遺族年金保険制度、③失業保険制度、④労災保険が存在します。なお、労災保険に加入している労働者は社会保障法のみ適用され、労働者災害補償法は適用されません。

 

5.メキシコ

(1) 社会保障に関する法律

メキシコにおける社会保障を規律する法律としては、社会保障法(Ley del Seguro Social)、国立労働者住宅基金機構に関する法律(Ley del Instituto del Fondo Nacional de La Vivienda para Los Trabajadores)、退職積立金制度に関する法律(Ley de Los Sistemas de Ahorro para el Retiro)が挙げられます。

(2) 管轄機関

社会保険については社会保険庁(IMSS、Instituto Mexicano del Seguro Social)が、労働者住宅基金については労働者住宅基金機構(INFONAVIT、Instituto del Fondo Nacional de La Vivienda para Los Trabajadores)が、年金については全国退職積立金制度委員会(Comisión Nacional del Sistema de Ahorro para el Retiro)が管理を行っています。

ただし、運用においてはIMSSが一括管理を行っているため、社会保障費の支払先はIMSSのみとなります。

(3) 社会保険の加入義務

労働者を雇用した場合、使用者は労働者をこれらの社会保障に加入させる義務を負い、その雇用から5営業日以内に使用者は当該労働者をIMSSに登録しなければならず、その労働者の給与額やその他登録情報の変更等も5営業日以内に行わなければならないとされています。

なお、労働者はIMSSに登録されると、INFONAVITおよび年金にも登録されることとなります。

(4) 社会保障の種類および負担率

以下の表は、社会保障ごとに本ニュースレター発行時点の使用者および労働者の負担の割合をまとめた表となります。SBCとは、Salario Base de Cotizaciónの略称であり、給与、賞与、休暇手当、食事手当、住居手当等の諸手当、現物給付、およびその他労働者に対して支払われるその他の金額を含めた額から算出される日額の算定基準給与額を指します。UMAとはUnidad de Medida y Actualizaciónの略称であり、罰金や制裁金、社会保障費の支払い額算出など様々に使用される単位であり、2022年度の日額は96.22ペソです。

区分
給付
負担率
算出基準
使用者 労働者
労働災害保険 現物および現金 0.50%から15%
(労災事故発生率などに応じ)
0.00% SBC
医療保険および出産手当
現物
固定負担 20. 40% 0.00% UMA
追加負担
(SBCがUMAの3倍超の場合)
1.10% 0.40% SBCからUMAの3倍を引いた差額
医療費 1.05% 0.38% SBC
現金 0.70% 0.25% SBC
障害および死亡保険 現物および現金 1.75% 0.63% SBC
退職積立金
退職年金 2.00% 0.00% SBC
老齢失業保険 3.15% 1.13% SBC
公的扶助 現物 1.00% 0.00% SBC
労働者住宅基金 住宅のための債権や優遇利率で借入できる権利 5.00% 0.00% SBC

なお、上記老齢失業保険の使用者負担率は、2020年の社会保障法改正に基づき、2023年より労働者の給与額に応じた負担に変更されます。使用者負担率は、2023年から2030年にかけて段階的に引き上げられることとなり、最終的には、労働者の給与額に応じ3.15%~11.875%の負担となります。

 

6.バングラデシュ

バングラデシュでは、労働法および労働規則にて、社会保障について規定されています。

  1. 民間企業の労働者のための積立基金(Provident Fund)

 労働法264条に積立基金について定められています。民間セクターの企業は、労働者の利益のために、積立基金を設立することができます。積立基金の設立は、使用者の義務でないものの、全労働者の4分の3以上の書面による要望を受けた場合は、設立しなければなりません。また、要望を受けた日から6か月以内に同基金の規約を定め、開始しなければならないと規定されており、会社独自の規約を定めることが出来ますが、法律より労働者に不利な規定は定めることができません。

 積立基金が設立されている場合、別段の合意がない限り、勤務期間が1年以上の無期雇用労働者は加入しなければならず、同基金への積立金は、労働者の基本給月額の7~8%相当額と規定されており、使用者は、労働者と同額を積み立てるほか、同基金の維持管理費を負担しなければなりません(同条(13))。積立基金に加入している労働者は、退職の理由に関わらず、使用者の負担分を含む給付金を受け取る権利があり(労働法第29条)、使用者の義務である同基金の積立金の支払いや手数料のために、労働者の賃金や手当を減額することはできません(労働法第272条)。

  1. 労働者企業利益参加基金(Workers Participation Fund)および労働者福祉基金(Workers Welfare Fund)
  2. 概要 

 労働法234条に労働者企業利益参加基金および労働者福祉基金(以下、両基金をあわせて「基金」という)について定められています。同基金は、会社の利益を労働者に還元するために設置されるもので、労働法にて定められる要件を満たした会社は、基金の設置義務が生じます(労働法234 条(1)(a))。基金の設置義務がある会社は、前年度の純利益(net profit)の5%を、基金に支払わなければなりません。

  1. 適用範囲(労働法232 条)

 a) 会計年度最終日に払込資本額が1,000 万タカ以上、または、b) 会計年度最終日に固定資産価値が2,000 万タカ以上のいずれかを満たす会社または事業場に適用されます。

 なお、政府は規則にて、100%輸出志向産業及び100%外資企業について、基金の規約、基金管理委員会の規約、助成金額の決定、集金の方法、基金の利用及び関連するその他の付随事項に必要な規定を定めなければならないとされています。

  1. 経済特区

 経済特区では、バングラデシュ経済特区(労働者福祉基金)政策((Bangladesh Economic (Workers Welfare Fund)Policies, 2017)にて、経済特区庁は、同区の労働者の福祉のために福祉基金を設立しなければならない旨が規定されています。掛金は、雇用人数によって異なり、企業が支払います。

  1. 特別社会保障基金(Special Security Fund)の設置

 2022年の労働規則の改正で、請負業者(派遣会社)に「特別社会保障基金」の設置が義務付けられました(17条)。すべての請負業者は、ライセンスを取得してから 6 か月以内に、会社名で銀行口座を開設し「労働者社会保障基金」の名称で、全労働者の基本給 1 か月分に相当する額を当該銀行に預金しなければなりません。翌年からは、毎年、2年目以降の労働者は基本給の15%、新規採用の労働者は基本給1か月分を預金します。

  1. 団体保険

 現行の保険法に従い、100人以上の無期雇用労働者を雇用している事業所は、団体保険に加入しなければなりません。団体保険は永久労働不能および死亡の場合に給付金が支払われます(労働規則98条(1))。保険料は使用者が支払う必要があり、労働者の賃金から控除することはできません(同条(4))。労働者が死亡した場合は、会社が保険金受給の手続きを行い、受取人に直接支払われるよう手配しなければならないと規定されています(労働法99条(2))。なお、中央基金が設立されている場合は、団体保険の設置義務はない。

 

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける社会保障制度の概要

フィリピンにおいては、通称「Philhealth (フィルヘルス)」と呼ばれる政府機関において提供される国民皆保険制度が存在します。また、民間企業の全従業員と自営業者を対象とした保険制度として社会保障制度(SSS)が整えられており、公務員にあたるフィリピン政府職員のための社会保険制度として政府職員保険制度(GSIS)が存在します。

  1. 国民健康保険制度

フィリピンの国民健康保険制度は、Philhealtによって運営されています。共和国法第11223号に基づいて、フィリピンのすべての国民がこの制度を利用することができる仕組みとなっています。

フィリピンにおける国民健康保険制度は、制度を利用するすべての国民に、医療サービスを経済的に利用できる仕組みを提供することを目的としています。また、この制度は、原則として強制加入の制度になっています。

国民健康保険制度の具体的な内容としては、入院医療(部屋代、食事代、医療専門家のサービス、処方薬、生物学的製剤など)に関するサービス、外来医療(診断、検査、診察など)に関するサービス、救急搬送のサービスなどが盛り込まれています。

国民健康保険制度の利用には、登録を行ったうえで保険料を支払う必要があります。保険料を支払う能力のある者、有給で雇用関係にある者、自営業者、専門職、移住労働者などに分類される加入者は、法令において規定された料率に従って保険料を支払うことになります。保険料を支払うことが困難な者については、政府からの援助制度が適用される場合があります。

  1. 国民年金保険制度

国民年金制度は、民間従業員を対象とする制度(以下「SSS」といいます。)と、公務員を対象とする制度(以下「GSIS」といいます。)の2種類が存在します。

SSSへの加入は、60歳を超えないすべての被雇用者とその雇用者に義務付けられています。また、共同経営者や個人事業主、俳優、監督、脚本家、報道関係者、プロのスポーツ選手、個人農家や漁師などの自営業者にも加入が義務付けられています。一方、家事や育児に専念している労働者の配偶者や別居しているSSS加入者は任意加入とされています。雇用主は、従業員のために、雇用期間中は毎月SSSの制度利用のために拠出金を支払う必要があります。また、一般的に、従業員の月給から保険料を差し引く運用がなされています。SSSが提供する給付は、病気給付、出産給付、障害給付、退職給付、死亡給付、葬儀給付、失業給付の7種類です。

一部の例外を除き、政府から報酬を受けるすべての職員には、GSISへの加入が義務付けられています。

GSISの給付には、生命保険、退職金、その他すべての社会保障給付(障害給付、遺族給付、離職給付、失業給付など)が含まれます。加入者は、政府職員の月給から保険料を差し引かれる運用がなされています。

 

8.ベトナム

(1) 社会保障制度の概要

 ベトナムでは、強制加入の社会保障制度として、①疾病手当、産休手当、労災・職業病手当、退職年金、遺族給付などを保障する社会保険、②医療費を保障する健康保険、③失業時の生活保障、職業訓練を保障する失業保険という3つの制度があります。これらに加え、退職・遺族保険を別途追加する任意加入の社会保険もあります。

 対象となる労働者は、ベトナム人については、無期雇用又は1か月以上の有期雇用の労働者は全て強制加入保険の対象となります。一方、外国人労働者については、ベトナムにおいて発行された労働許可証、実務証明書又は実務許可書に基づき、ベトナムでの就労期間が1年以上の労働契約を締結している外国人が強制加入の対象となります。但し、外国人労働者については、失業保険は対象外です。

(2) 各保険の料率

 各保険の料率は、次のとおりです。

 ① ベトナム人労働者の場合

  社会保険 健康保険 失業保険 合計
労働者負担分 8% 1.50% 1% 10.50%
雇用主負担分 17.50% 3% 1% 21.50%
合計 25.50% 4.50% 2% 32%

 ② 外国人労働者の場合

  社会保険 健康保険 失業保険 合計
労働者負担分 8% 1.50% 9.50%
雇用主負担分 17.50% 3% 20.50%
合計 25.50% 4.50% 30%

(3) 強制加入の例外となる外国人労働者

 企業内異動者(日本の親会社からベトナムの子会社へ出向している日本人駐在員の多くはこの企業内異動者に該当するかと思います。)と、ベトナムの法令に規定する定年退職年齢に達した外国人労働者は、強制加入の対象外となります。ベトナムの定年退職年齢は、男性は60歳、女性は55歳でしたが、2019年に改正された労働法により、男性については2021年から2028年まで毎年3か月ずつ、女性については2021年から2035年まで毎年4か月ずつ延長されます。2022年時点での定年退職年齢は、男性60歳6か月、女性55歳8か月です。

発行 TNY Group

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: https://tny-lawfirm.com/index.html

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

・イギリス(TNY CONSULTING (UK) Ltd.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/uk.html

Newsletterの記載内容は2022年11月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 10月28日、全国で51人の死亡、3万9254人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、マスクの着用については、①屋内において他者と2メートル以上の身体的距離が取れない場合、②屋内で他者と会話を行う場合、③屋外で他者と身体的距離が取れず会話を行う場合にマスクの着用が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

2022年10月11日以降、全ての外国人の新規入国について、日本国内に所在する受入責任者による入国者健康確認システム(ERFS)における申請は求められなくなり、68の国・地域に対する査証免除措が再開されました。以下の国・地域に対するAPEC・ビジネス・トラベル・カード取り決めに基づく査証免除も再開されました。

地域 国・地域
アジア
インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、台湾
大洋州 オーストラリア、パプアニューギニア、ニュージーランド
中南米 チリ、ペルー、メキシコ
欧州 ロシア

外務省HP新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について|外務省 (mofa.go.jp)

(2) 日本入国時の検疫措置について

 2022年10月11日から、日本入国時の検疫措置は原則として実施せず、入国後の待機等を求めないこととなりました。ただし、全ての帰国者・入国者について、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの接種証明書または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提出が必要とされています。

有効なワクチン接種証明 陰性証明書
(出国前検査)
質問票 入国時検査
入国後の待機期間
あり 不要
必要
なし
なし
なし 必要

厚生労働省HP 水際対策

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,689,897名です。この内、4,649,509名が回復し、累計死亡者数は32,922名となっています。直近1週間の感染者数は2,616名、死亡者数は40名です。

2.2 入国規制

タイ政府は、10月1日からタイ入国規制等を以下のとおり緩和する旨発表しました。

(1)タイ入国時の規制緩和

  • タイ入国時のワクチン接種証明書又は陰性証明書の提示は不要。
  • 日本を含むビザ免除国/地域からの渡航者の滞在可能期間を30日から45日に延長(2023年3月末までの措置)。

(2)タイ国内における感染対策緩和

  • マスク着用は混雑した場所や換気の悪い場所において推奨されるが、義務ではなくなる。
  • 新型コロナ感染者のうち、軽症又は無症状の人は自己隔離不要で外出可能。ただし、5日間はDMHT対策(Distancing:距離の確保、Mask Wearing:マスク着用、Hand Washing:手洗い、Testing:検査(症状が表れた場合))が推奨される。
  • 高齢者や特定の疾患を有する高リスクの感染者は、10日間、自身による健康観察(5日目と10日目にATKによる検査)が推奨される。
  • 企業・団体は、定期的に従業員を観察することが推奨される(感染者数が大きく増加する場合は、直ちに関係当局に報告)。
  • 引き続きワクチン接種は推奨される。
 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

  10月26日の新規感染者数は、2,136人でした。直近7日間(19日~25日)の平均は2,158人であり先月よりは少し増えていますが、感染状況は落ち着いています。マレーシア政府は、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。また、これまでは屋内でのマスク着用義務がありましたが、9月7日より電車・バス・タクシー等の公共交通機関や医療機関等一部を除き撤廃されました。

3.2 入国規制

  3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 これまで、ワクチン接種未完了者には、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要とされていましたが、8月1日からはこれらの手続が不要となりました。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、MySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力が引き続き要請されています。また、ショッピングモール等施設によっては、ワクチン接種歴を確認されることがあるため、MySejahteraアプリへワクチン接種証明を反映させておくことが推奨されます。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

  COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。入国後の隔離措置について、10月8日より、到着14日以上前に接種した承認済みワクチンの(2回)接種証明書を所持している方は、8月1日から求められていたミャンマー到着前48時間以内に発行された新型コロナ RDT(迅速抗原検査)陰性証明書(又はRT-PCR陰性証明書)の提示が不要となりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

10月もCOVID-19新規感染者は増加をみせず、9月26日以降の4週間の間に報告された全国の新規感染者数は合計24,464人でした。10月7日、保健省(Secretaría de Salud)は、事業活動を安全に継続するため措置を定めるCovid-19下での経済活動の持続のためのガイドライン(LINEAMMIENTOS PARA LA CONTINUIDAD SALUDABLE DE LAS ACTIVIDADESECONÓMICAS ANTE COVID-19)を策定し、同省ウェブサイトで公表することを発表し、10日に当該ガイドラインが公表されました。

同ガイドラインには、主に次の事項が記されています。

  • 1.5mの距離の確保、60%以上のアルコールによる消毒、咳エチケットの実施、感染拡大防止のための教育
  • 職場で抗原検査やPCR検査を実施する場合は、労働者の事前の同意を要する
  • 感染者の職場復帰においては、抗原検査やPCR検査を義務付けてはならない
  • マスクの使用は義務付けられないが、ソーシャルディスタンスを保てない場所では、その使用が推奨される(換気ができない場所や、一つの部屋で複数の労働者が働く場合、ワクチンを接種していない場合などは、マスクの使用が推奨される)

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、10月27日午前8時の時点で、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は0名、陽性者は137名で、陽性率は3.62%です。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計399万6818人で、死者数は累計63,846人です(2022年10月26日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあるものの、最近はやや増加傾向にあります。現在は1日約1,500~2,200人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

 フィリピン検疫局は、改定されたフィリピン入国ガイドラインを発表しました。

 これまでワクチン未接種の外国人は、入国できませんでしたが、到着後隔離施設での隔離(5日目以降に陰性のRT-PCR検査結果がでるまで)をにより入国できることとなりました。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年10月27日午前9時の時点での累計感染者数は1149万8873人で、1か月前の9月27日の時点より2万5140人増加しました。先月の時点では、毎日の新規感染者数は2000〜3000人前後で推移していたのですが、ここ最近は1000人を下回る日が多くなりました。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。また、ベトナム保健省は、9月6日、マスク着用に関する規制を緩和するガイダンスを決定しました(2447/QD-BYT)。これによると、これまで公共の場ではマスク着用が必須とされていましたが、急性呼吸器感染症の症状がある者、新型コロナ感染者・感染の疑いのある者、飛行機、バス、タクシーなどの公共交通機関を利用する場合などを除き、公共の場でマスク着用は不要とされました。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(観光目的、ビジネス目的いずれであっても)、

  • ベトナム滞在期間が15日以内であること
  • ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること
  • ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の消費者保護に関する法規制の概要

1.   日本

 消費者保護関連法は多岐にわたり、消費生活に関する基本的な政策や環境づくりを行う消費者庁が所管する法律だけでも37に上ります。このうち代表的な法律の概要を以下に紹介します。

  1. 消費者の生命・身体の安全に関する法律

損害の発生の予防として、一般消費者の生活の用に用いられる製品の製造及び販売を規制する消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)、飲食による健康被害の発生を防止する食品衛生法(昭和22年法律第233号)等、対象品目に応じた法律が整備されています。

発生した損害について、製造物責任法(平成6年法律第85号)が、製造物の欠陥を原因とする生命・身体・財産への被害に対する製造業者等への損害賠償を規定しています。

  2. 消費者との取引に関する法律

 消費者契約法(平成12年法律第61号)は、消費者が事業者と契約をする際にある両者間の情報の質・量や交渉力の格差から消費者の利益を守ることを目的として、不当な勧誘のあった契約の取消し、不当な契約条項の無効等を規定しています。

消費者保護を目的とした業者に対する規制として、特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号「特定商取引法」)が、トラブルが生じやすい、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供勧誘販売取引、訪問購入、の7取引類型について、事業者が遵守すべき規定と、クーリングオフ等の消費者を保護する規定を定め、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号「景品表示法」)が、偽装表示や誇大広告等、商品やサービスについての不当な表示を規制し、過大な景品類の提供を防止する制限を設けています。

取引に伴い事業者に開示される消費者の個人情報については、個人情報保護法(平成15年法律第57号)(ただし、所管は2016年に消費者庁から総務省個人情報保護委員会に移管)が規制しています。

     3. 消費者団体訴訟制度

個々の消費者による個別救済の限界に対処するため、消費者の損害の発生や拡大の防止するための適格消費者団体による差止請求が、平成18年以降、法改正によって、消費者契約法、景品表示法、特定商取引法、食品表示法に順次導入され、消費者の財産的被害の集団的な回復のための裁判手続きの特例に関する法律(平成25年法律第96号)の制定によって、平成28年からは、適格消費者団体による集団的な損害回復の手続が設けられています。

 

2.タイ

タイ消費者保護法は、消費者・事業者間の商品・サービスの広告、安全性、表示(ラベル)及び契約に関する規定を設けています。

(1)消費者の基本的権利

 以下の消費者の基本的権利を規定しています(同法4 条)。

  • 商品またはサービスの品質に関する正確かつ適切な情報及び説明を受ける権利
  • 商品またはサービスの選択の自由を享受する権利
  • 商品の使用またはサービスを利用するにあたって安全性が与えられる権利
  • 公正に契約を締結する権利
  • 損害に対する補償を受ける権利

 ただし、特定の法律に特別の規定がある場合には、その事項に関する法律の規定に準拠するものとされます(同法21条)。例えば、食品医薬品法、保険法などが挙げられます。

(2)広告に関する規制

 広告には、①消費者にとって不公平な内容、または②社会全体に悪影響を与える可能性のある内容を含めてはならないことが規定されています(同法22条)。

 また、以下の表現については、①または②に該当する広告とみなされ禁止されます。

  • 虚偽又は誇張した表現
  • 商品またはサービスに関する重要な部分について誤解を生じさせる表現
  • 法律または道徳に反する行為を直接的または間接的に支持する、または国家の文化的価値の低下を助長する表現
  • 不和を生じさせたり、民衆の団結を阻害させたりする表現
  • その他省令に定める表現

(3)安全性に関する規制

事業者が販売、生産、輸入、宣伝する商品は、リスクを防止または排除する措置を講じた安全な商品でなければならないと規定されています(同法29条の2)。また、危険な商品(別に法律に定める場合を除き、生命、身体、健康、精神状態および財産に危害を与えるまたは与えるおそれのあるものをいう。)を販売するためにタイ国内において生産、注文、または輸入してはならず、そのような危険な商品を推奨または宣伝してはならないと規定されています(同法29条の3)。

(4)表示(ラベル)に関する規制

工場に関する法律に基づいて工場が製造した販売用の商品、および販売用にタイ国内において注文または輸入された商品、または表示委員会が官報において指定した商品は、表示(ラベル)が規制されます(同法30条)。表示(ラベル)が規制された商品は、表示委員会が定める規則等に基づき表示(ラベル)をしなければならないとされています(同法31条)。

(5)契約に関する規制

契約委員会は、法律により契約が書面で作成される必要がある場合、または慣習上、契約が書面で作成される必要がある場合には、契約管理業種として指定する権限を有します。

契約管理業種に指定された事業を営むにあたっては、必ず書面により契約を締結しなければなりません。契約には、消費者に不利益を生じさせることを避けるために必要な契約条件が規定されていなければならず、消費者にとって不公平な契約条件を規定してはならないとされています(同法35条の 2)。

(6)救済手続きに関する規定

消費者保護委員会は、消費者の権利を侵害する紛争を解決するために、訴訟を追行する権限があります。同委員会が適切と判断した場合、または同法39条に基づいて申立てがなされた場合には、消費者の権利の侵害に対して訴訟手続を行う権限が定められています(同法10条7号) 。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおいては、消費者保護を規定する法令として、消費者保護法(Consumer Protection Act 1999)が存在します。消費者保護法では、第2部で誤解を招く、不実・虚偽等の表示に関する規制、第3部で製品及びサービスの安全性に関する規制、第3a部で不当な契約条件に関する規制、第3b部でクレジットでの販売取引に関する規制、第4部でこれら規制の違反に対する罰則を定めています。以下では、消費者保護法の規定を一部紹介します。

(1) 表示規制

 消費者保護法9条は、商品に関して商品の性質、製造プロセス、特性、目的への適合性、有効性、又は数量に関して誤解を招く若しくは欺く、又は誤解を招く若しくは欺く可能性のある表示を行ってはならないと規定しています。

 そして、同法10条では、以下のような虚偽又は誤解を招く表示を行ってはならないと規定しています。

  1. 商品が特定の種類、基準、品質、等級、数量、構成、スタイル、又はモデルであること
  2. 商品に特定の履歴又は使用歴があったこと
  3. サービスが特定の種類、標準、品質、又は数量のものであること
  4. サービスが、特定の人物又は特定の職業、資格、又は技術スキルを持つ人物によって提供されること
  5. 特定の人物が商品又はサービスを取得することに同意したこと
  6. 商品が新品又は再生品であること
  7. 商品が特定の時期に製造、生産、処理、又は再調整されたこと
  8. 商品又はサービスに、スポンサーシップ、認証、推奨、性能特性、付属品、効用、又は利点があること
  9. その者がスポンサー、承認、支持、又は提携を持っていること
  10. 商品又はサービスの需要について
  11. 条件、保証、権利、又は救済の存在、免責、又は効果について
  12. 商品の原産地について

 また、同法8条では、虚偽、誤解を招く、又は欺瞞的な表現等には、消費者を誤解させる可能性のある表現等が含まれるものと定めています。

 上記に加えて、上記表示規制以外にも土地に関する虚偽表示(消費者保護法11条)、価格に関する誤解を招く表示(同12条)、ギフト・賞品・無料提供の表示に関する規制(同14条)等が設けられています。

(2) 安全性に関する規制

 消費者保護法19条では、大臣が商品やサービスに関しての安全基準を定めることができると規定しています。大臣が定めた安全基準が存在しない商品やサービスについては、当該商品やサービスの性質を考慮して、合理的な消費者が期待する合理的な安全基準を採用して遵守しなければならないと規定しています。

(3) 不当な契約条件に関する規制

 消費者保護法24a条では、全ての状況に照らして、契約に基づいて発生する当事者の権利と義務に重大な不均衡をもたらし、消費者に非利益をもたらす消費者契約を不当な条件と規定しています。

 そして、同法24c上では、供給者の行為や契約の条件により供給者に不当に利益又は消費者に不当に不利益をもたらす場合、契約の締結手続が不当であると規定しています。この手続上不当かどうかの判断には、消費者の知識、契約当事者の交渉力の比較等の様々な事情を基に判断します。また、同法24d条では、契約条件又は契約期間が厳しい、抑圧的である、良心的でない、過失責任を除外する等の事情がある場合は実質的に不公平な契約と規定しています。

 契約の手続が不当である場合や実質的に不公平である契約と判断された場合、裁判所は契約の条件を執行不能又は無効と宣言することができます。

 

4.ミャンマー

(1) 消費者保護法の概要

 消費者保護法は2014年3月14日に公布されました。この中で、「消費者」とは、取引目的でなく、商品やサービスを受け取る人を意味すると定義されています。本法のうち、特に企業の義務規定を紹介します。

(2) 企業家の責務

企業家の責務は以下のとおりです。

  1. ビジネス倫理に基づきビジネスを行うこと
  2. 商品やサービスに関し明確かつ適切な情報を提供すること
  3. 消費者に対し、差別なく忠実かつ適切に対応すること
  4. 規定された基準及び品質に基づき、商品、サービスが取引、生産されることを保証すること
  5. 購買前の品質検査を必要とする商品又はサービスに対し検査する機会を提供すること
  6. 保証期間中に商品の消費又はサービスの使用による損害に関して保証された責任を負うこと
  7. 消費者によって受け取られ使用された商品が合意と一致するものだった場合、合意されている内容及び条件に従って責任を負うこと
  8. 合意された合意又はサービス事業を行う上での合意の約束に正確に従うこと
  9. 関係者が消費者紛争を解決している間に、メディア又は他の手段によって関係する消費者に不利益な言動、執筆を控えること

(3)企業家に対する禁止事項

① 企業家は、以下の生産及び取引を行うことが禁止されています。

  1. ラベルに記載されている情報、条件、関連商品の保証、特長、効果、重量、総量、品質、グレード、位置、モード、スタイルに適合しない商品
  2. ラベル又は広告及び販売促進の成分に含まれる表記に適合しない商品
  3. 名称、サイズ、重量、総量、組成、指示、製造日及びバッチナンバー、有効期限、副作用、有毒な材料、製造会社の名前、住所、流通名、商標が記載されていない商品
  4. ミャンマー語で、又はミャンマーと他の言語で共同して記載されていない商品、又は、中央委員会によって決められた日付からの使用に際する、情報や取扱説明がない商品
  5. 産出場所、生産場所に関して不適切に言及された商品
  6. 内外の承認された部門又は組織の勧告又は、規定の基準に適合しない商品
  7. 権威ある組織の科学的研究結果を参照することなく、健康や栄養についての保証が記載されている商品
  8. 規定された基準及び規範に準拠していない商品
  9. 該当するサービスの記載された条件、保証、特長、期間、効果に適合しないサービス
  10. 広告及び販売プロ―モーションに含まれる内容に準拠していないサービス

② 企業家は、以下の条件にある購入者や使用者の誤解を意図的に招く販売、販売促進又は宣伝を行うことが禁止されています。

  1. 参照された品質基準、スタイル又はモード、明確な特性、用途に適合しない、割引された又は、固定特別価格の商品であること
  2. 新鮮、良好な状態ではない商品であること
  3. 他の企業の商品やサービスに対するスポンサー及び承認になること
  4. 有用でなく利用不可能な商品又はサービスであること
  5. 欠陥や必要性が隠されている商品やサービスであること
  6. 他の商品やサービスを直接的又は間接的に誹謗すること
  7. 完全な情報によって認められていない誇張を使用すること
  8. 不確実な約束によって売却又は提供された商品又はサービス

③ 企業家は、売買に際し、以下のいずれかの条件で消費者を欺いたり誤解させることを禁止されています。

  1. 商品又はサービスが所定の基準、品質を満たしていると誤って述べていること
  2. 商品やサービスの必要性を隠して述べていること
  3. 提案されている商品ではなく他の商品を代替して販売すること
  4. 商品、サービスの販売プロモーションの前に、商品、サービスの価格を引き上げること
  5. 期限切れの商品を改装、混合した上で販売すること
  6. 類似した、品質が低い商品、異なった消費するのが安全でない商品を混合して販売すること

④ その他の企業家の禁止事項

企業家は、指定期間内に、又は提供、販売促進、宣伝された金額に基づいて、商品又はサービスを販売するための手配なしに、一定期間内に特別価格で販売を販売し、宣伝することを禁止されています。

また、企業家は、以下の種類の広告を宣伝することは認められません。

  1. 商品の品質、数量、商品中の成分、商品への使用形態、価格、物品、サービスの速度、及びサービスが可能な時間に関し、消費者を欺いた広告
  2. 商品又はサービスの補償に関し欺かれた広告
  3. 商品又はサービスに関する虚偽の情報を含む広告
  4. 商品又はサービスを使用するリスクを知らせていない広告
  5. 許可なしに、人物又は出来事を使用した広告
  6. 法律又は倫理規定に違反する広告

5.メキシコ

連邦消費者保護法(Ley Federal de Protección al Consumidor)は、メキシコにおける消費者を保護するための規制を定めています。連邦消費者保護法上、保護の対象となる「消費者」は、個人に限らず法人を含む点に特徴があります。

連邦消費者保護法には、消費者とサプライヤー(習慣的または定期的に商品、製品、およびサービスの利用や享受を提供、配布、販売、リース等行う連邦民法(Código Civil Federal)上の自然人または法人と定義されており、日本の消費者契約法における事業者に相当する概念となります。)間の取引に関する通則的な規定のほか、情報・広告、プロモーション、訪問販売、サービス提供、信用業務、不動産取引、製品保証、約款など個別的な場面における規制が設けられています。広告・情報に関する規制については、2021年6月1日付の本ニュースレターにおいて紹介しています。そのため、今回は、広告・情報規制以外の消費者保護に関する規制のうち主要なものを紹介します。

(1) 通則的な規制

サプライヤーは以下の事項を遵守しなければなりません。

  • 商品、製品またはサービスの価格、料金、保証、数量、品質、寸法、利息、料金、条件、制限、期限、日付、形式、予約およびその他の条件を通知し、その情報を提供すること。
  • 消費者に提供される商品、製品またはサービスに対して支払われるべき合計金額を、見やすい方法で通知すること。合計金額には、税金、手数料、利息、保険料、その他、消費者が負担しなければならない費用等が含まれること。
  • 商品またはサービスの提供において、強制的で不公正な商取引方法や慣行、不当な条項や条件を適用しないこと。同様に、消費者が書面または電子的手段により明示的に要求または承諾をしていない追加サービスを当初の契約に基づいて提供したり、消費者の事前の承諾なしに、契約に基づかない料金を適用したりしないこと。
  • 自然現象、気象現象、衛生上の不測の事態を理由として、不当に価格を引き上げてはならない。
  • 販売、提供されたサービスまたは実施された業務の具体的な内容を記載した請求書、領収書または証票を消費者に提供すること。

(2) 訪問販売等に関する規制

サプライヤーの店舗または営業所以外で提案または実施されるものであり、動産の賃貸およびサービスの提供を含むものとして、訪問販売、販売仲介、間接的販売(いわゆる通信販売)(以下、まとめて「訪問販売等」といいます。)が規定されています。

訪問販売等にあたっては、サプライヤーの名前と住所、取引と対象となる商品・サービスの識別情報、および製品保証に関する事項が記された書面が作成され、消費者に写しが提供される必要があります。通信販売のように、消費者と接触することなく売買が成立したときに書面を提供できない場合は、サプライヤーは、消費者を確実に認識し、商品やサービスの提供が消費者の住所で行われたことを確認し、販売時と同様の手段で、クレームや返品を受け付けなければなりません。なお、この場合の返品や修理に要する商品の輸送費は、別段の合意がない限り、サプライヤーの負担となります。

訪問販売等による取引や消費者の記録は、サプライヤーによって保持され、また、消費者に通知されなければなりません。

また、訪問販売等における契約は、商品の引渡しまたは契約書の締結のいずれか遅い方から5営業日後に正式に成立することになります。この期間中、消費者はいかなる責任も負うことなく契約を取り消すことができます。

(3) サービス提供に関する規制

すべてのサービス提供施設では、提供される主なサービスの料金表を、見える場所に、はっきりと読みやすい文字で表示しなければなりません。

サプライヤーは、サービスを提供する前に、見積書を交付する義務があります。

(4) 製品保証に関する規制

製品保証書は、少なくとも保証の範囲、期間、条件、保証を受けるための仕組み、請求先、サービス拠点等を記載の上、明確かつ正確な方法で、サプライヤーから書面で発行されなければなりません。

(5) 約款に関する規制

定款とは、製品の取得またはサービスの提供に適用される条件を統一的な形式で定めるためにサプライヤーが一方的に作成する文書を指します。メキシコ国内で締結された定款が有効であるためには、スペイン語で書かれ、その文字は肉眼で読み取れるものでなければならず、大きさやフォントも統一されていなければなりません。また、消費者に不利益、不公平または不当な義務、ならびに連邦消費者保護法に違反する条項を含んではなりません。

(6) 通報・リコール等

何人も連邦消費者保護法等の規定違反について、PROFECO(Procuraduría Federal del Consumidor:連邦消費者保護局)に通報をすることができます。

また、PROFECOは、消費者の生命、健康、安全または経済に影響を与える製品、商品またはサービスに関して、消費者への周知ための警告を発し、または商品回収を命じ、サプライヤーからの届出に応じてリコールを命じることができます。

(7) 紛争解決

連邦消費者保護法が適用される取引等に関する紛争については、民事訴訟を提起するほか、連邦消費者保護法に規定される紛争解決手段を活用することができます。

消費者は、PROFECOに対し、申立てを行うことができます。申し立てられた紛争は、明らかに不適切であるとして却下されない限り、PROFECOによる調停手続きまたは仲裁手続きにおいて解決が図られることとなります。

また、消費者の集団の権利・利益を侵害があった場合には、PROFECOや30名以上の利益を代表する者は、集団訴訟を提起することもできます。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、消費者保護を規定する法令として、消費者権利保護法(Consumer Rights Protection Act, 2009)及び消費者権利保護規則(Consumer Rights Protection Rules, 2020)が存在します。消費者権利保護法は、消費者の権利の保護及び権利侵害の防止を目的としており、同法に基づき設置される管轄機関の体制及び機能、権利侵害に対する申し立て及び罰則を定めています。消費者権利保護規則では、消費者権利保護法の規定を行使するための手続きを規定しており、申し立てに関する各種様式、申し立てや調査等の手続きを定めています。以下では、消費者権利保護法の規定を一部紹介します。

  1. 消費者権利保護の管轄機関

 商務大臣を議長とする国家消費者権利保護委員会(以下「委員会」という)が設置され、その主な役割は、消費者保護に関する政策の策定、政策実施機関への指示とされています。委員会の上位機関として、国家消費者権利保護局の設置も規定されており、委員会の機能を支援し、委員会の決定の行使に対して責任を負います。消費者保護に対する違反行為が確認された場合、かかる店舗や商業施設の一時的な閉鎖命令を出すことができるほか、消費者の権利侵害があった場合、同局に申し立てをすることができ、違反行為に対して、聴聞、調査を通じて必要な決定を下します。

     2. 違反行為及び罰則 

 商品の容量、数量、原材料その他の項目の包装への記載について、法令により課された義務に違反した場合は、1年以下の禁固もしくは50,000タカ以下の罰金またはその両方が科せられます。サービスの価格表の保管や表示を怠った場合も、同様の罰則が科せられます。また、食品への禁止物質の混入、虚偽の申し立て又は訴権濫用その他の違反に対する罰則が定められています。

 消費者権利保護法に基づき、消費者は行政措置を要求することができます。一方、国家消費者権利保護局長の承認がなければ、裁判所が申し立てを受理することはできないとされており、消費者は、消費者権利保護法に基づいて、裁判所に直接申し立てる権利が認められていないため、管轄機関が裁判所に訴訟を提起することとなります。

 

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける消費者保護に関する法制概要

 フィリピンにおいて、消費者保護の分野は、非常に重要な分野だと位置づけられており、憲法においても、国家は取引上の不正行為および規格外または危険な製品から消費者を保護しなければならない旨が規定されています。これをうけ、フィリピン消費者法(the Consumer Act of the Philippines, approved on 13 Apr 1992)が制定されています。この法律は、基準や罰則を課すことにより、消費者を保護するための主要な法律として位置づけられています。

     2. フィリピン政府の政策勧告

 消費者保護について、フィリピン政府の消費者保護グループは、政策勧告第 22-01 号を発表し、以下の8つの権利を消費者基本権として列挙し、各権利の法根拠も併せて示しています。

  • 基本的ニーズを満たす権利
    1. 安全への権利
    2. 情報を得る権利
    3. 選択する権利
    4. 表示に関する権利
    5. 救済を受ける権利
    6. 消費者教育を受ける権利
    7. 健康状態を守る権利

 消費者の権利が侵害された場合、消費者は、その侵害について、管轄する司法機関に民事訴訟を起こすことができます。

     3. 行政措置

 フィリピン消費者保護法について、違反事由があると判断された場合、政府は、違反者に対して行政措置を開始することができるとされています。行政措置に関する調査に先立ち、消費者仲裁人が選定され、和解することを試みる場合もあります。当事者が、行政措置の決定を不服とする場合は、法令の手続を経たうえで、最終的には、裁判所へ訴えを提起する場合もあります。

 なお、苦情の申立て方法としては、ウェブサイト上で、苦情申立てフォームが開設されており、消費者がこれを利用することで、消費者保護法違反発見の端緒となる可能性があります。

 

8.ベトナム

消費者権利保護法の概要

 ベトナムでは、消費者の権利を保護する基本法として、2020年に消費者権利保護法(59/2010/QH12)が制定され、2021年7月から施行されています。この法律の特徴として、次のような条項が置かれていることが挙げられます。

  • 消費者とは、消費・生活目的で商品・サービスを購入・利用する「個人・家族・組織」であると定義され、保護の対象は個人に限定さない(3条1.)
  • 消費者の権利保護は政府及び社会全体の共同責任であるとされている(4条1.)
  • 消費者が取引、商品・サービスの購入・利用をする際の消費者の情報(消費者情報)が保護され、事業者は、消費者情報の収集・使用目的を事前に明確に通知しなければならず、目的外利用が禁止され、消費者情報保護の安全性や正確性の確保義務が課されているなどしている(6条)
  • 消費者と書面で契約をする場合、明確で分かりやすい契約書を作成しなければならない(14条2.)
  • 紛争が起こった場合において契約書の内容の解釈に争いがあるときは、消費者を優先して解釈される(15条)
  • 契約書の条項のうち、消費者側に不利となる一定の条項については無効となる(16条)
  • 欠陥商品を製造・輸入した業者は、欠陥商品の流通を停止させるためにあらゆる可能な限りの方法を即時に実施しなければならず、回収していることを、最低限、新聞において連続5回、ラジオ・放送局において5日連続で公告しなければならない(22条)
  • 消費者が原告、消費者へ商品・サービスを直接提供した事業者が被告となる民事訴訟で、事件の状況が単純明快で証拠が明確であり、取引価格が1億ドン以下のときは、簡易迅速な手続で処理される(41条)
  • 消費者は、民事訴訟において事業者側の過失を証明する義務がなく、事業者側は、自らが消費者に損害を与えていないことを証明する義務がある(42条)

 なお、消費者権利保護法が施行されて10年以上が経過し、その間、電子商取引の利用が拡大するなど消費者が当事者となる取引の環境は大きく変化しています。そこで、現在、消費者権利保護法の改正が検討されています。改正法の成立や施行時期は未定ですが、消費者保護に関する事業者の責任が厳格化されたり、事業者による禁止行為が拡大されるなどの改正が予定されており(日本でも規制が議論されているステマ(ステルスマーケティング)に関する規制も盛り込まれる予定です。)、今後の動向に注意する必要があります。

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: https://tny-lawfirm.com/index.html

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年10月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

9月27日、全国で105人の死亡、4万3594人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

ただし、この入国制限は、2022年10月11日に撤廃され、上記の新規入国申請をする外国人についてのERFS申請は不要となります(厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/content/000993077.pdf)。

(2) 日本入国時の検疫措置について

厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。ただし、2022年10月11日以降、有効なワクチン接種証明がある場合には、これらの区分に関係なく、出国前・入国時の検査及び待機は原則撤廃されます。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(なし)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は5日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,679,022名です。この内、4,639,886名が回復し、累計死亡者数は32,729名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は500人程度で推移しており、減少傾向にあります(9月28日現在)。

2.2 入国規制

10月1日より、入国時のワクチン接種証明書または陰性証明書の提示についても不要となり、外国からの入国制限はすべて撤廃されます。

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

9月26日の新規感染者数は、1,186人でした。直近7日間(19日~25日)の平均は1,830人であり先月よりも減少しています。マレーシア政府は、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。また、これまでは屋内でのマスク着用義務がありましたが、9月7日より電車・バス・タクシー等の公共交通機関や医療機関等一部を除き撤廃されました。

3.2 入国規制

3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

これまで、ワクチン接種未完了者には、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要とされていましたが、8月1日からはこれらの手続が不要となりました。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、MySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力が引き続き要請されています。また、ショッピングモール等施設によっては、ワクチン接種歴を確認されることがあるため、MySejahteraアプリへワクチン接種証明を反映させておくことが推奨されます。

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。入国後の隔離措置について、2回以上のワクチン接種を行っている場合には入国48時間前の陰性証明書が不要となっていましたが、8月1日より再度必要になりました。空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)も必要です。もっとも、指定の施設等での隔離は陽性にならない限りは不要となっています。

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

9月に入り一日当たりのCOVID-19新規感染者数は3,000人以下となる日がほとんどとなりました。連邦政府は9月20日、職場でマスク着用や手指の消毒などを行うことを定めるガイドラインを撤廃する方針であることを公表しました。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュでは、9月28日時点で、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は1名、陽性者は737名で、陽性率は15.42%です。

6.2 入国規制

WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

フィリピンの COVID-19 感染者は累計393万8203人で、死者数は累計62,790人です(2022年9月26日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあるものの、最近はやや増加傾向にあります。現在は1日約1,000~2,000人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

ベトナムにおける2022年9月27日午前9時の時点での累計感染者数は1147万3733人で、1か月前の8月26日の時点より8万0874人増加しました。毎日の新規感染者数は、概ね2000人前後〜3000人前後の間で推移しています。

ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。また、ベトナム保健省は、9月6日、マスク着用に関する規制を緩和するガイダンスを決定しました(2447/QD-BYT)。これによると、これまで公共の場ではマスク着用が必須とされていましたが、急性呼吸器感染症の症状がある者、新型コロナ感染者・感染の疑いのある者、飛行機、バス、タクシーなどの公共交通機関を利用する場合などを除き、公共の場でマスク着用は不要とされました。

8.2 入国規制

新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の外資奨励政策の概要

1. 日本

日本では、OECD加盟国と比較しても対内直接投資残高が低く(2021年末時点で、対GDP比が加盟国平均67%に対して、日本は8.0%)、少子高齢化の進展に伴う人口減少を克服する経済成長の実現のため、海外からの人材・技術・資金を呼び込むことで日本経済全体の成長力の強化や地域経済の活性化を図るべく、2021年6月に「対日直接投資促進戦略」を策定し、目標値を設定して、様々な施策を実施しています。

  1. 政策目標(Key Performance Indicator)・補助指標

対日直接投資残高を2030年に80兆円、対GDP比12%を達成することを政策目標としています。また、量的拡大以外の補助指標として、①外国企業・外資系企業の日本での事業活動の成果としての付加価値額を2030年度34兆円(2018年度17兆円)にすること、②東京集中の緩和として、東京以外の外資系企業数を2026年に10,000社(2016年4.262社42.9%)にすること、③海外からの経営・管理人材の入国者数を2030年に20万人(2019年95,248人)に増加させることを目安として掲げています。

2. 3つの柱

戦略では、以下の3点を基本的な柱として、国内の産業・教育体制の改革や地方自治体支援策等と組み合わせた形で、担当省庁の下で施策を実施しています。

(1)デジタル・グリーンの新市場の創造とイノベーション・エコシステムの構築

(2)グローバルな環境変化に対応したビジネス環境整備の加速

(3)地域の強みを生かした官民連携による投資環境の整備

4. 具体的な対応

日本への投資を検討している、または日本での事業拡大を検討している外国人・企業に対する具体的な対応のため、JETROの対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC: Invest Japan Business Support Center)(https://www.jetro.go.jp/invest/jetros_support/ibsc/)を外資系企業からの規制・制度に関する要望や各種相談等を受け付ける一元的窓口と位置づけて、各種の情報発信を行っています。

2.タイ

タイでは、投資奨励及び産業振興を目的として、1977年に投資奨励法が制定されています。また、産業振興法に基づき、首相府の下にタイ投資委員会(BOI)が設置されています。タイ投資委員会は、投資奨励法に基づき、奨励産業や恩典等の投資奨励政策を定めるとともに、投資に関する支援を行っています。タイ投資委員会には、日本(東京、大阪)を含む16か所の海外事務所があり、事務局のほか、ワンストップサービスセンター(ビザ・労働許可証)、ワンスタートワンストップ投資センター(OSOS)、7つの地方事務局があり、様々な投資に関する支援を受けることができます。

また、タイでは、投資奨励政策として、基礎的恩典、メリットによる追加恩典及びその他の政策、特別措置が設けられています。

  1. 基礎的恩典

基礎的恩典には、業種に基づく恩典と技術に基づく恩典があります。

① 業種に基づく恩典

農業・バイオ・医療産業、先進製造業、基礎・裾野産業および創造・デジタル産業・高付加価値サービスに関する事業に対して最長8年間法人税が免除されます。また、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典(外国人技術者・専門家の入国・就労許可、土地の所有権の許可、タイ国外への外貨送金の許可等)があります。

② 技術に基づく恩典

バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、先端材料技術およびデジタルテクノロジーに関する事業に対して最長10年間法人税が免除されます。また、同様に、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典があります。

2. メリットによる追加恩典

メリットによる追加恩典には、競争力向上のための追加恩典、地方分散のための追加恩典及び工業用地開発のための追加恩典があります。

(1)競争力向上のための追加恩典

以下のとおり法人税が免税されます(投資または支出に対する金額)。

  • 技術及びイノベーションの研究開発 300%
  • 技術・人材開発基金、教育機関、科学技術分野の専門訓練センターに対する支援 100%
  • 科学技術分野のインターンシップの学生に対する技術及びイノベーションのスキルを向上させるためのトレーニング又は職業訓練の実施 200%
  • タイ国内で開発された技術のライセンス料 200%
  • 高度技術訓練 200%
  • タイ国内の原材料及び部品メーカーの開発 200%
  • 製品及びパッケージデザイン 200%

(2)地方分散のための追加恩典

特定の業種につき、1人当たりの国民所得の低い20県に立地する場合に、5年間にわたり法人税を50%減税又は法人税免除期間が3年間追加されます。

(3)工業用地開発のための追加恩典

特定の業種につき、工業団地又は奨励される工業地区に立地する場合に、法人税免除期間が1年追加されます。

3. その他の政策および特別措置

(1)南部国境地域における投資奨励措置および南部国境地域におけるモデル都市企画に基づく投資奨励措置

南部国境県における投資の促進およびモデル都市計画の実現を行い、住民所得を創出することを目的とした制度です。対象業種は、ボディケア製品の製造、建築資材製造事業及び公共施設プロジェクトのための高圧コンクリート製品の製造、日用品用プラスティック製品の製造、パルプあるいは紙による製品の製造、工場・倉庫用建物の開発等です。条件として、最低投資金額(土地代及び運転資金を除く)が50万バーツ以上であること、タイ国内中古機械の使用は、その上限を1000万バーツとし、中古機械の金額の4分の1以上を新品の機械に投資することが必要です。

恩典としては、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代水道代の2倍までを15年又は20年間控除、インフラの設置費または建設費の25%控除等の措置を受けることができます。同措置の適用を受けるためには、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

(2)特別経済開発区(SEZ)における投資奨励措置

近隣国との経済的連携の構築とASEAN経済共同体の発足に備えて設けられた、特別経済開発区における投資措置です。

特定の業種につき、投資額に相当した金額を上限として8年間の法人税免除、追加の法人税の5年間50%減税、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代及び水道代の2倍までを10年間控除、インフラの設置費又は建設費の25%控除等の措置を受けることができます。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

(3)効率向上措置

生産効率の向上を目的とした、省エネ、代替エネルギー使用、環境負荷軽減のための機械の入れ替えや、研究開発やエンジニアリングデザインへの支援及びデジタル技術の導入を促進することを目的とした制度です。本措置の対象となるのは、タイ投資委員会が発表した投資奨励対象業種に該当する事業であり、法人所得税の免除または減税期間が終了し、もしくは法人所得税免除の恩典が付与されていない事業です。

条件として、土地代及び運転資金を除く投資金額が100万バーツ以上であることが必要です。ただし、中小企業(タイ国籍自然人による株主比率は資本金の51%以上であること、奨励申請者の全部の被奨励事業と非奨励事業の収入を合算し、被奨励事業の運営により初めて収入が発生した日から最初の3年間の年間収入が合計5億バーツ未満であること)による事業は土地代及び運転資金を除く投資金額が50万バーツ以上であることが必要です。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

3.マレーシア

(1) 優遇税制

マレーシアでは、投資促進法(Promotional of Investment Act 1986)、所得税法、関税法、物品税法など、様々な法令により税制上の優遇措置が認められます。

  1. パイオニアステータス

パイオニアステータスは、奨励事業または奨励製品にかかる事業(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)から得た所得の全部または一部について、生産開始日から5年間に限り、法定所得の70%が免税となる措置です。同政策の下では、国家的・戦略的に重要なプロジェクトについては、所得税の全額免除が10年間認められる場合があります。パイオニアステータス期間中の未処理損失および未処理控除は、パイオニアステータス期間の終了から7年間を上限に繰り越し可能であり、同一の奨励事業または奨励製品に関する事業の所得から控除することができます。

2. 投資控除(ITA)

投資控除は、奨励事業を営むまたは奨励製品を生産する会社(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)につき、最初に適格資本的支出が発生した日から5年間に発生した適格資本的支出(工場、機械設備などに対する支出)の60%の投資控除が認められます。この控除額を用いて、各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができます。また、未利用の控除額は、翌年以降に繰越すことができます。ただし、この投資控除制度はパイオニアステータスと併用することはできません。

3. 再投資控除(RA)

再投資控除は、36カ月以上事業を営んでいる居住会社であることなどの一定の条件を満たす会社に対し、工場や機械設備などへの適格資本的支出の60%の投資控除を認めています。

この控除額を用いて各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができ、未利用の控除額は翌年以降に繰り越すことができます。パイオニアステータスまたは投資税額控除を利用している会社は、その期間中再投資控除を併用することはできません。

(2) 自動化に関する優遇措置

労働集約型の製造業を対象として自動化を促すための優遇措置が設けられています。

ゴム、プラスティック、木材、家具、繊維の製造業(これらをカテゴリー1とする)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM400万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。また、カテゴリー1以外の製造業(カテゴリー2とされる)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM200万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。

マレーシアで設立され、36カ月以上製造事業を行っている法人が対象となります。自動化の設備は直接製造に使用されるものでなければなりません。

(3) インダストリー4.0(Industry 4WRD)

インダストリー4.0は、マレーシアの中小企業の生産性向上およびスマートマニュファクチュアリング化を目指す方針です。

インダストリー4.0の導入を検討する企業は、生産現場の技術導入に対する準備状況を診断する実現可能性評価(RA:Readiness Assessment)を行います。RAを実施した企業のうちインダストリー4.0のための研究開発や教育訓練、設備の現代化や更新、新技術のライセンス取得や購入、国際標準/認証の取得に係る費用に対して、補助金を申請することができます。政府と企業が補助金を出し合うマッチング補助金となり、負担率は政府:企業=60:40となっています。

(4) 環境技術(グリーン・テクノロジー)に関する優遇措置

マレーシア環境技術公社(MyHIJAU)のリストにおいて承認された環境投資減税(GITA)対象資産を取得する場合に、申請により当該対象資産について100%の投資控除を受けることができます。環境投資減税対象資産は、エネルギー効率、再生可能エネルギー、ごみ処理、水処理、建物のいずれかの領域で環境に資する資産となります。環境技術プロジェクトを行う会社や環境技術関連のサービスを提供する会社は、申請によりサービスから得る所得の免税などを受けられる可能性があります。

4.ミャンマー

(1) 投資法

  1. 租税優遇措置

(a)所得税の免税対象業種

投資促進分野通達に規定された業種に該当する場合、所得税の免税措置の申請が可能となります(投資法75条(c))。

(b)関税およびその他の内国税の免税および減税

投資家からの申請によって、ミャンマー投資委員会は、関税その他の国内税の免税または減税を許可することができます(投資法77条)。

2. 土地の長期賃貸借

MIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可を得ることで、土地または建物を最大50年間賃借でき、さらに10年の延長を2回まで認められます(投資法50条)。

(2) 経済特区法

  1. 租税優遇措置

投資家および開発者に対する租税優遇措置は下表のとおりです(経済特区法32条、40条、44条、45条、48条、49条、50条、51条、52条)。

投資家および開発者に対する租税優遇措置
税の種類等 投資家(フリーゾーン) 投資家(プロモーションゾーン) 開発者
所得税 営業開始日から7年間の所得税が免税される。
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
事業の利益の再投資を1年以内に行ったことにより
得た利益については、
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
営業開始日から5年間の所得税が免税される。
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
事業の利益の再投資を1年以内に行ったことにより
得た利益については、
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
営業開始日から8年間の所得税が免税される。
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
事業の利益の再投資を1年以内に
行ったことにより得た利益については、
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
関税 生産用の原材料および機械、その代替部品、工場、
倉庫および事務所を建設するための資材、
事業用車両の輸入について関税等は免除される。輸入する卸売等
のための商品および委託商品、車両
販売目的でない機械器具、その代替部品、
工場、倉庫および事務所を建設するための資材、
車両および事業に実際に必要な物品については、
それらの輸入開始時点から5年間、関税等が免除される。
次の5年間は、50%関税等が軽減される。
プロモーションゾーン向けの原材料の免税制
建設資材、機械、重機、
事業用車両ならびにインフラストラクチヤー
および自らの事務所を建設するための
資材の輸入について関税等は免除される。
商業税 免税される。
国内市場またはプロモーションゾーンから輸入した物品についても
免税を申請できる。
製造した商品を海外に輸出する場合、免税される。
所定の期間内のみ免税される。
製造した商品を海外に輸出する場合、免税される。
なし。

2. 土地の長期賃貸借

経済特区法に基づく投資許可を取得した会社は、土地を最大50年間賃借でき、さらに25年間の延長が認められます(経済特区法79条)。

5.メキシコ

メキシコには、外資のみに適用される税制優遇策などの外資奨励策はありませんが、外資・内資を問わず適用される優遇策がいくつかありますので、主要な3つを簡単に紹介します。

(1) 産業分野別促進プログラム (PROSEC; Programas de Promoción Sectorial)

特定の製品を製造する法人を対象とした税優遇策であり、特定の製品の生産に使用される部品・原材料、設備機器などを優遇関税率で輸入することができます。対象となる産業分野は、自動車および自動車部品、化学、ゴムおよびプラスティック製造、電機、食品など24種が指定されており、所定の製品の製造のために輸入される指定品目について、0%や5%などの優遇税率が適用されます。

(2) IMMEX(Industria Manufacturera, Maquiladora y de Servicios de Exportación)プログラム

製造、加工などの目的で商品を一時輸入する製造事業者や輸出関連サービスを提供する事業者が関税(Impuesto General de Importación)や付加価値税(Impuesto al Valor Agregado: IVA)の支払いを、所定の期間、留保されるなどの輸出促進のための税優遇策です。適用を受ける場合、次の5つのカテゴリーのいずれかにおいて認可を取得する必要があります。

  • 統括企業(Controladora de empresas)プログラム: 認定事業者とその管理下の1つ以上の企業の製造業務が、1つのプログラムに統合される場合
  • 産業(Industrial)プログラム: 輸出向け製造・加工業務が実施される場合
  • サービス(Servicios)プログラム: 所定の条件を満たすサービスが輸出またはその関連サービスに対して提供される場合
  • シェルター(Albergue)プログラム: 1つ以上の外国企業が、製造等の過程を実施することなく、技術や生産資材を提供する場合
  • アウトソーシング(Terciarización)プログラム: 製造等を行うための設備を持たない認定企業が、そのプログラムに登録された第三者を通じて製造業務を行う場合

(3) 経済特区

北部国境地帯特区(Zonas Libre de Frontera Norte)では、所得税(Impuesto sobre la Renta: ISR)について、当該地域内に税務住所または支店や出張所、その他の施設を有する場合で、当該地域での収入が総収入の少なくとも90%を占める場合、当該地域での収入に対して税率30%が20%に、また、IVAについては、当該地域の事業所や施設において物品の譲渡、サービス提供、物品のリースに関する活動を行う法人もしくは個人事業者の場合、税率16%が8%に引き下げられます。なお、金融業、農業、畜産業、漁業、林業、専門サービス・士業、マキラドーラ・オペレーション(保税委託加工)などを行う事業者や、不動産譲渡、無形資産の一時的使用や享受、デジタルコンテンツの提供などには適用されない、物品の引渡しやサービスの提供が当該地域内で実行されなければならないなどの一定の条件があることに留意する必要があります。

対象地域は、バハ・カリフォルニア州、ソノラ州、チワワ州、コアウイラ州、ヌエボレオン州、タマウリパス州の43市町村です。

同様に、南部のキンタナロー州、チアパス州、カンペチェ州、タバスコ州の23市町村でも、同じ減税措置が適用されます。

6.バングラデシュ

バングラデシュ政府は、外資・内資問わず投資を奨励するために、法人税の免除又は減税、資本設備及び原材料に対する輸入関税の減税、VATの減税等、様々な優遇措置をもうけています。毎年制定される財政法(Finance Act)及び通達(Statutory Regulatory Orders)にて優遇措置が見直されるため、確認が必要です。本稿では、主要なものとして、所得税条例に基づく免税措置、輸出志向産業に対する優遇措置、経済特区及び輸出加工区への進出企業に対する優遇措置を紹介します。

  1. 所得税条例第46BBに基づく免税措置

所得税条例(1984)第46BBに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に新規に設立された企業は事業分野及び事業地域によって、5年間又は10年間、一定の割合で法人税の免税を受けることができます。事業分野は、農業機械、自動車及びその部品、電子機器の基本部品、玩具、家具、LEDテレビ、家電製品、コンピューターハードウェア、電気変圧器の製造を含む33の事業が対象となります。

2. 所得税条例第46CCに基づく免税措置

所得税条例(1984)第46CCに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に設立されたインフラ設備(輸出加工区、高架道路、ハイテクパーク、ITパーク、再生可能エネルギー地下鉄、廃棄物処理プラント等19分野)に従事した企業は操業開始日から10年間、法人税の減税を受けることができます。

3. 輸出志向産業に対する優遇措置

輸出志向産業(製品及びサービスの80%超の輸出)は、経済特区又は輸出加工区の内外問わず、以下の優遇措置を享受することができます(BIDAウェブサイト:https://bida.gov.bd/incentives)。

  • 輸出から生じた所得の50%にかかる法人税の免税(減税率を適用していない場合)
  • タバコ商品を除き輸出関税免除
  • 保税倉庫の設備
  • 税払い戻し制度
  • 特定の業界の輸出者は、一定の条件のもとで補助金又は金銭的インセンティブというかたちで、更なる優遇措置を追加で享受することができる。

4. 経済特区への進出企業に対する優遇措置

ディベロッパーに対するインセンティブが15項目、投資家(Unit Investors)に対するインセンティブが、以下の項目を含む39項目挙げられています(BEZAウェブサイト:https://www.beza.gov.bd/investing-in-zones/incentive-package/)。

  • 法人税の減税(10年間)
  • 外国人駐在員の所得税の50%免除(3年間)
  • 資本設備及び建築資材に対する輸入関税の免除
  • 国内関税一般地域での完成品の販売が可能(前年度の輸出量の20%)
  • 輸出にかかる関税の免除
  • 製造に関する光熱費に対するVATの免除

5. 輸出加工区への進出企業に対する優遇措置

投資家に対して、財政的インセンティブ、非財政的インセンティブ、優遇措置がもうけられています(BEPZAウェブサイト https://www.bepza.gov.bd/content/incentives-facilities)。

  • 法人税の免除(設立年及び地域により、5年間、7年間又は10年間)
  • 建設資材、機械、設備、部品等の輸入関税免除
  • 原材料の輸入関税および完成品の輸出関税免除
  • 国内一般関税地域からの輸入及び同地域への販売(10%)
  • 資本金及び配当の本国への送金許可
  • 委託加工形態による輸出入の許可

6. その他

ハイテクパークへの進出企業やIT企業に対する優遇措置や官民連携プロジェクト(PPP)に対するインセンティブなどが設けられています。

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける外資奨励政策の概要

企業復興税制(CREATE)法において、投資委員会(BOI)とフィリピン経済区庁(PEZA)における優遇制度が統一されました。具体的には、税制上の優遇措置を提供する分野を定めた「戦略的投資優先計画(SIPP)」が承認されています。

2. 企業復興税制(CREATE)法に基づく投資優遇措置の概要

投資優遇措置の概要は以下のとおりです。

(A) インカム・タックス・ホリデー(ITH)により、所得税の支払いが100%免除される場合があります。

(B) 特別法人所得税(SCIT)率の適用により、国税及び地方税に代えて、総所得5%が課される場合があります。

※適用を受けるには、事業内容、生産量、最低投資額その他の条件を満たす必要があります。

(C) 課税標準から許容される控除額が設定される場合があります。

例:課税年度に発生した人件費について、50%の控除

※控除を受けるには、重要国内市場企業に指定されていること等の条件が必要となります。

(D) 資本設備、原材料、予備部品、付属品等を輸入する際に免税となる場合があります。

(E) 輸入時の付加価値税(VAT)が免除される場合や、現地での購入時のVATゼロレートの適用の可能性があります。

3. SIPPが定める投資優遇分野

SIPPは、投資優遇措置を受けられる優先活動のリストを提供しています。産業や活動は、Tier I、Tier II、Tier IIIに分類されます。

【Tier I】

2020年度投資優先計画にて投資優先分野と指定されている活動。ただし、通達第61号でTier II若しくはTier IIIに該当する場合を除く。

【Tier II】

フィリピン経済の強靭(きょうじん)性、競争性を高める活動。具体的には、グリーン・エコシステム、ヘルスケア、防衛関連、食料安全等の分野を含むものとされています。

【Tier III】

経済の変革を加速させる上で重要な活動。具体的には、研究開発、技術的に高度な製造業、イノベーション創出を促進する施設の設置等の分野を含むものとされています。

4. 投資優遇措置の適用期間

企業は以下の期間において、税制優遇措置を受けることができます。なお、優遇措置を受けようとする企業は、戦略的投資優先計画及びガイドラインに別段の定めがない限り、登録日から3年以内に優遇措置を利用する必要があります。

・ 輸出企業と国内市場企業が「重要」に分類される場合

所在地と産業政策に応じて、4~7年間所得税が免除され、その後10年間法人税の特別税率又は控除が強化される場合があります。

・ 国内市場企業で「重要」に分類されない場合

4~7年間所得税が免除され、その後5年間特別法人税または控除が強化される場合があります。ただし、投資資本が5億ペソ以上の国内市場企業に限り、法人所得税の特別税率を適用することができます。

8.ベトナム

(1) 投資優遇分野

ベトナムでは、2021年1月施行の投資法(61/2020/QH14)に基づき、内資・外資にかかわらず共通の投資優遇措置が実施されています。同法が定める投資優遇分野は、次のとおりです(同法16条1項)。

  • 科学技術に関する法令に従ったハイテク活動、ハイテク支援産業製品、科学技術の成果物の研究、製造、開発
  • 新素材、新エネルギー、クリーンエネルギー、再生可能エネルギーの製造、付加価値30%以上の製品の製造、省エネルギー製品の製造
  • 電子製品、機械製品、農業機械、自動車、自動車部品の生産、造船
  • 優先的発展対象となる裾野産業製品リスト(裾野産業の発展に関する政令111/2015/ND-CP)に掲載されている製品の生産
  • IT技術、ソフトウエア、デジタルコンテンツの生産
  • 農産物、林産物、水産物の養殖、加工、植林、森林保護、製塩、漁業、漁業物流サービス、植物品種、動物品種、バイオテクノロジー製品の生産
  • 廃棄物の収集、処理、リサイクルまたは再利用
  • インフラ整備、運営、管理への投資、都市部での公共交通機関の整備
  • 幼児教育、一般教育、職業教育、高等教育
  • 診察、治療、医薬品、医薬原料の生産、医薬品の保管、新薬生産のための製剤技術、バイオテクノロジーに関する科学研究、医療機器の製造
  • 障害者またはプロのスポーツ選手のためのスポーツ施設に対する投資、文化遺産の保護と振興
  • 老人ホーム、メンタルヘルスセンター、枯葉剤被害者の治療センター、高齢者、障害者、孤児、ストリートチルドレンのためのケアセンターへの投資
  • 人民信用基金、マイクロファイナンス機関
  • バリューチェーンや産業クラスターを創出し、またはこれらに参加するための商品の生産やサービスの提供

投資優遇分野に関する詳細については、投資法の整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。

(2) 投資優遇地域

投資法が定める投資優遇地域は、次のとおりです(同法16条2項)。

  • 経済・社会的条件が不利な地域及び極めて不利な地域
  • 工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、経済特区

投資優遇地域に関する詳細については、整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。

(3) 投資優遇措置の内容

投資法が定める投資優遇措置の内容は、次のとおりです(同法15条1項)。

  • 法人所得税の優遇措置(一定期間または投資プロジェクト実行中の法人所得税の低率適用、免税・減税など、法人所得税法に規定される優遇措置)
  • 固定資産を形成するために輸入される物品、生産のための原材料、物資、部品に対する輸入税の免除
  • 土地使用税、土地使用料の減免
  • 課税所得の計算における、加速償却法の採用、損金算入できる費用の増加
発行 TNY Group
【TNYグループ及びTNYグループ各社】 ・TNY GroupURL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年9月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 8月25日、全国で296人の死亡、22万955人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 日本入国時の検疫措置について

 厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。なお、これまで滞在していた国・地域にかかわらず提出が必須とされていた出国前72時間以内の陰性証明書は、9月7日午前0時(日本時間)以降のオミクロン株が支配的となっている国・地域からの全ての入国者について、提出が求められなくなります。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(なし)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は5日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,641,263名です。この内、4,591,063名が回復し、累計死亡者数は32,141名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は1,800人程度で推移しています(8月25日現在)。

2.2 入国規制

7月1日以降は、入国時に、ワクチン接種証明書(規定回数接種済みの場合)または渡航前72時間以内に受検した陰性証明書(英文)の提示をすれば、隔離措置等もなく入国ができるようになっています。

ワクチン未接種・未完了および陰性証明書を保有していない場合であっても入国はできますが、入国後、担当官の指示に従う必要があり、検査を求められる場合があります。

2.3 日本入国規制

 5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

 タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

 ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 8月24日の新規感染者数は、2,636人でした。直近7日間(18日~24日)の平均は2,894人であり先月よりも減少しています。マレーシア政府は、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。現在は、屋内や公共交通機関等でのマスクの着用義務や店舗入店時のMySejahteraアプリ(マレーシア政府開発の新型コロナウイルス対策アプリ)の提示、ソーシャルディスタンスの要請などに留まります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 これまで、ワクチン接種未完了者には、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要とされていましたが、8月1日からはこれらの手続が不要となりました。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、MySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力が引き続き要請されています。また、ショッピングモール等施設によっては、ワクチン接種歴を確認されることがあるため、MySejahteraアプリへワクチン接種証明を反映させておくことが推奨されます。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

  COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。入国後の隔離措置について、2回以上のワクチン接種を行っている場合には入国48時間前の陰性証明書が不要となっていましたが、8月1日より再度必要になりました。空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)も必要です。もっとも、指定の施設等での隔離は陽性にならない限りは不要となっています。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

7月後半よりCOVID-19新規感染者数は減少傾向に転じ、懸念された第5波は落ち着きを見せています。連邦政府による新たな規制はありません。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、8月26日時点で、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は1名、陽性者は196名で、陽性率は4.15%です。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)は、全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計386万7071人で、死者数は累計61,519人です(2022年8月25日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあるものの、最近はやや増加傾向にあります。現在は1日約3,000~4,000人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年8月26日午前9時の時点での累計感染者数は1139万2859人で、1か月前の7月26日の時点より62万4015人増加しました。6月25日から7月26日までの間の感染者数の増加は2万5953人だったことから、数字の上ではこの1か月で大幅に増加したことになりますが、これは、一部地域においてこれまで計上していなかった人数をまとめて計上したことが原因であると考えられます。このような要因を除けば、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しています。ただ、今年6月頃の時点では多くの日で1000人を下回っていましたが、7月下旬頃からはやや増加傾向にあり、8月に入ってからは、多い日で3000人を超えることもあります。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。日常生活におけるマスクの着用は一応推奨されていることから、多くの市民は外出時にマスクを着用していますが、着用していない者も少しずつ増えているように思われます。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

8.3 ベトナムから日本への帰国者・入国者に対する規制

 日本では、8月26日現在、国籍を問わず外国からの入国者に対する水際対策措置が実施されており、ベトナムは「黄」区分に指定されています。したがって、ワクチン3回目接種者については、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機も不要となっています。ワクチン3回目接種者でない場合は、入国時検査を実施した上で、原則、7日間の自宅等待機を求めることとし、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めないこととされていいます。

 なお、現在は、ベトナム出国前72時間以内の陰性証明書の取得、提示が必須ですが(陰性証明書がない場合、航空機への搭乗が認められません。)、9月7日午前0時(日本時間)より、ワクチン3回接種者については陰性証明書の取得、提示が不要となります。

第2.各国の電子署名制度と活用における課題

1.日本

  1. 法制度

      (a)電子署名を規律する法律

電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)(以下、「電子署名法」といいます。)が2001年4月に施行されました。

      (b)電子署名の定義

電子署名は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識できない方式で作られる記録であって、電子計算機による処理の用に供されるものをいう。)に記録することができる情報について行われる措置で、次の2つの要件を充たすものと定義しています(電子署名法2条1項)。

    1. 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること
    2. 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること

電子署名法では、電子署名を行う特定の方法を指定していないため、この要件に合致するものは全て電子署名となります。

     (c)電子署名が可能な文書

基本的に契約の方式は自由なので、法律に特別の規定がない限り(民法522条2項)、契約書を電子的に作成して、それに電子署名することができます。しかし、法律で「書面」による作成、交付、保存すること等が求められている場合には、「書面」に代えて「電磁的記録」によることが可能であるとの規定(例えば保証契約に関する民法446条3項)がない限り、物理的な書面が求められているため、電子署名もできません。 

      (d)文書の成立の真正の判断基準

文書に作成者の署名または押印があることでその文書が作成者の意思に基づき作成したことが推定されます(民事訴訟法228条1項)が、電子文書に関しては、上記の①②を充たす電子署名が以下の要件を充足した場合に、文書の成立の真正が推定されます(電子署名法3条)。

              a. 当該電磁記録に記録された情報について本人による電子署名が行われていること

              b. 電子署名を行うために必要な符号及び物件を管理することにより、本人だけが行うことができるもの

因みに、電子署名法2条3項の規定する「特定認証業務」による認証を受けた電子署名は、国の定める一定の技術水準を充たすものですが、③④の要件を充たすことを認証するものではいため、その電子署名が付された文書が真正に成立したものとの推定を直ちに受けるものではありません。

     (2)課題

     (a)推定の及ぶ電子署名

電子署名は、そのサービスを提供する業者(ベンダー)を通じて行うこととなり、主に「当事者署名型」と「事業者(立会人)署名型」と称されるサービスがあります。当事者署名型とは、公開鍵等からなる技術的な仕組みの下、第三者である電子認証局が本人確認を行った上で発行した電子証明書を用いて各利用者が電子署名を行うものです。これは、電子署名法制定当時に想定されていた方式で、上記①②の要件を備える電子署名に該当し、一般的に③④の要件も備えているものと考えられます。一方、事業者署名型は、利用者自身の電子署名を使用しない方法で、例えばベンダー自身の署名鍵を用いて、電子文書の暗号化等を行った上で、そのシステム上で契約を締結するものです。

電子署名は、物理的な契約書の印刷・送付・保管等の経費や押印手続等の事務作業にかかる人件費の削減に貢献しますが、当事者署名型の利用には、契約当事者双方が電子証明書を入手する必要性、本人確認の手間、電子証明書の有効期間の短さ等の負担があり、利用者に簡便な事業者署名型は、上記①の本人性が認められず、電子署名法3条の推定も受けないと解釈されてきたために普及が遅れていました。

しかし、2020年に発表された総務省、法務省、経済省連名による政府見解(「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵よりより暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」)により、ベンダーの意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合で、付随情報が確認できる等の電子文書に付された情報を含めた全体を一つの措置として利用者の意思に基づいていることが明らかな場合には、上記①の要件を充たす電子署名法2条1項の電子署名に該当すること(2020年7月17日付Q&A Q2)、更に、利用者とベンダー間で行われるプロセスで二要素認証等が行われ、かつ、利用者の行為を受けてベンダー内部で行われるプロセスで暗号の強度や利用者毎の個別性を担保する仕込みがとられる等によって、いずれのプロセスにおいても十分な水準の固有性が充たされる場合には電子署名法3条にも該当すること(2020年9月4日付Q&A問2)が明らかにされました。

この政府見解によって、事業者署名型への信頼が高まり、電子署名を用いる障壁は相当程度軽減されました。しかし、ベンダーの提供するサービスは様々で、成立の真正の推定を受けるかは個別的判断が必要で、利用者にその確認・証明することが求められるため、推定を受ける電子署名の技術的な基準やその認証についての法制化が望まれています。

      (b)その他の懸念

電子署名といえども、ハンコの冒用と同様になりすましや無権代理の危険はあり、秘密鍵やその利用のためのパスワード等の管理に留意する必要があります。

また、電磁的情報の利用に特有な、技術的な進展に応じた非改竄性を確保するための恒常的な改良、不正なアクセスによる情報漏洩や消滅等のリスクへの対応等の最新の情報セキュリティを確保していくことが課題とされています。

 

2.タイ

タイにおける電子署名を規律する法律としては、2001年電子取引法(Electronic Transactions Act, B.E. 2544(2001))があります。また、2019年電子取引法(Electronic Transactions Act (NO.3), B.E.2562(2019))によりその規定の一部が改正されています。タイでは、法律上の要件を満たせば電子署名は有効とされています。

(1) 電子署名の定義

電子署名は、「署名をした特定の人物がそのデータメッセージに含まれる情報を承認したことを示すことを目的とした、電子形式で作成された、文字、数字、音、またはその他の記号であり、署名者とデータメッセージの関連性を確立するものである」と定義されています(2001年電子取引法4条)。

(2) 電子署名の有効性

電子署名の有効性については、2001年電子取引法9条および26条に定められており、規定の要件を満たした場合に電子署名が有効であると解されます。

以下の場合に、電子署名がなされたとみなされます(同法9条(2019年電子取引法7条))。

i 署名者を識別し、データメッセージに含まれる情報に関する署名者の意図を示すことができる方法が使用されていること

ii 以下のいずれかの方法が使用されていること

(a)関連する合意を含む周辺状況を考慮して、データメッセージが生成または送信された目的のために適切であると信頼できる方法

(b)署名者を特定し、iに基づいて署名者の意図を示すことが、それ自体で、または追加の証拠とともにできるその他の方法

以下の要件を満たす電子署名は、信頼できる電子署名であるとみなされます(同法26条)。

ⅰ 作成された電子署名が、その使用された文脈において、他者に紐づけられることなく、署名者本人に紐づけられていること

ii 作成された電子署名が、電子署名の作成時において、他者の管理下になく、署名者本人の管理下に置かれていたこと

iii 電子署名の作成後に生じた変更を検出できること

iv 法律上の要件として、電子署名が情報の完全性を保証するものであることを定めている場合において、電子署名作成時以降の情報の変更が検証できること

    (3)電子署名が認められる文書の範囲

一般的には、電子署名は幅広い範囲で認められています。

2001年電子取引法では、法律上、書面が求められる場合であっても、情報が、その意味を変更することなく後で参照するためにアクセス可能で使用可能なデータメッセージの形式で生成された場合には、法律で要求される書面で作成されたとみなされる旨規定されています(同法8条(2019年電子取引法6条))。

もっとも、いくつか例外があり、法律上書面が要求される文書、たとえば、不動産売買契約、3年を超える賃貸期間の不動産賃貸借契約、抵当権設定契約等については、電子署名を使用することができません。

また、一部の大規模な民間企業や歳入庁などの政府機関は、サービスプロバイダー(2001年電子取引法28条)によって認証された電子署名のみ認められているため注意が必要です。

(4) その他の電子署名の使用の注意点

電子署名の署名者は、電子署名作成に使用したデータが許可なく使用されないよう合理的な注意を払うこと、電子署名作成に使用したデータが消失、損壊、変更、不正に公開された、または漏洩した場合には、電子署名によって何らかの行為を行う者に対して通知すること等の義務が課されるため注意が必要です(同法27条)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおいては、電子署名を規定する法令として、Electronic Commerce Act 2006(以下、「ECA」という)及びDigital Signatureは、Digital Signature Act1997が存在します。本稿では、より利用者が多いと考えられるECAに基づく電子署名について紹介します。

(1) 電子署名の定義

 ECAにおいては、electronic signature(以下「eSignature」という)は、人が署名として採用する電子的な形式で作成された文字、記号、数字、音、その他の符号、又はそれらの組み合わせと定義しています(ECA5条)。

(2) 電子署名の有効性

 ECA9条1項では、法的に文書に署名を要求する場合、当該文書が電子文書の形式であれば、以下の要件を満たす場合にeSignatureが有効となると規定しています。

  1. 電子文書に添付されるか、又は論理的に関連付けられている
  2. 署名者個人を適切に識別し、かつ、署名に関連する情報に対する署名者個人の承認を適切に示していること
  3. eSignatureが必要とされる目的及び状況を考慮して適切に信頼できるものであること

 また、ECA9条2項では、上記③のeSignatureが信頼性を有する場合の要件を以下の通り規定しています。

  1. eSignatureの作成手段が署名する人物にのみ関連付けられ、その者の管理下にあること
  2. 署名後に加えられた当該署名に対するいかなる修正も検知可能であること
  3. 署名後に加えられた文書に対するいかなる修正も検知可能であること

 9条2項②③の署名後の署名又は電子文書に対する修正(偽造)への検知可能性の要件については、どのような制度を設ければよいのか法令上明確ではありません。この点についての行政の正確な解釈を確認することは難しく、マレーシアローカルの法律事務所が執筆したECAに関する記事によると、署名後の偽造防止機能を有するソフトを導入している場合は、当該要件を満たすのではないかと記載するものがあります。また、同記事では、電子文書にPDFの署名を添付するだけでは不十分ではないかとも記載しています。ECAの要請に基づき署名の信頼性を担保するため、偽造防止又は署名後の修正を検知できる機能を有するソフトを導入することが望ましいといえます。

(3) eSignatureを使用できない文書

 ECA2条及びScheduleにて、委任状、遺言、信託、有価証券には適用されないと規定しています。

 

4.ミャンマー

(1) 電子署名に関する法律

ミャンマーにおける電子署名を規律する法律としては、電子取引法 (Electronic transaction law 2004/5)および改正証拠法(Amending Law on Evidence Act (73/2015))があります。ミャンマーでは、電子署名は法的に有効ですが、政府機関に対しては、特定の取引を除き、電子署名の使用が認められておらず、実質的に使用が制限されています。

(2) 電子署名の定義

電子署名とは、「電子記録の情報源の真実性および修正または差し替えがないことを確認するための、電子技術またはその他の類似の技術によって個人または代理人により作成された記号またはマーク」と定義されます(電子取引法2条(f)項)。

また、電子記録とは、「電子的、磁気的、光学的、その他の同様の技術によって、生成、送信、受信、または保存された情報システム内の記録」と定義されます(同法2条(c)項)。

(3) 電子署名の有効性等

電子署名は、法律上の要件を満たせば有効であるとされます(電子取引法19条(a)項および(b)項)。また、裁判所において法的に有効な証拠とされます(改正証拠法67A条)。

電子署名が有効とされるためには、発信者および受信者は、規定された手段または両者の間に別段の合意がある場合にはその合意の手段に従って、電子記録、電子データメッセージまたは電子署名を送信、受信または保存をしなければならないとされています(電子取引法20条)。

また、署名者は、電子署名と電子データメッセージの関係を識別する証明書を取得するために認証機関に申請する必要があります(同法16条)。

なお、署名者は、電子署名の復号化により有効な署名を用いる場合に、他人によって違法に使用されないように注意する、付与された期間中に電子署名のために発行された証明書を使用する際に、署名者に関連する事実または差し込まれた事実が完全に正確であるように注意する義務が課されています(同法17条(a)、(b)))。そして、署名者は、これらの義務に違反したことにより生じた損害および損害の結果について責任を負うとされています(同法18条)。

(4) 真実性の判断

電子署名の真実性の判断は、電子取引法により設置された電子取引管理委員会によって行われます。

 

5.メキシコ

(1) 電子署名の根拠法および定義

商法(Código de Comercio)によると、電子署名とは、電磁的記録に含まれ、添付され、または論理的に関連付けられた電子形式のデータで、電磁的記録に関連して署名者を特定し、署名者が電磁的記録に含まれる情報を承認することを示すために用いられ、手書きの署名と同じ法的効果を生じ、法廷での証拠としても認められるものと定義されています。

電子署名のうち、後述(3)記載の要件を満たす電子署名は「高度または信用性がある電子署名(Firma Electrónica Avanzada o Fiable)」として区別されています。

さらに、高度電子署名法(Ley de Firma Electrónica Avanzada)において、署名者を識別することができるデータと文字の組み合わせで、署名者の排他的な支配下で電子的手段により作成され、本人および参照するデータのみにリンクされ、その後のこれらの変更が検出可能で、自筆の署名と同様の法的効果をもたらす署名が「高度な電子署名(Firma Electrónica Avanzada)」として定義されています。メキシコ国税庁(Servicio de Administración Tributaria)が発行する電子署名e.firmaは、同法の適用を受ける高度な電子署名になります。

(2) 電子署名の有効性

電子署名の有効性に関しては、当該電子署名を含む電磁的記録が商法の規定等に準拠していることを条件に、その電磁的記録は、紙面上作成署名された文書と同じ法的効果を持つとされていることから、電子署名は自筆の署名と同等の効果を有すると考えられます。また、同様に、高度電子署名法においても、高度な電子署名が付された電子文書および電磁的記録は、自筆の署名が付されたものと同じ効果を有するとされています。

商法においては、電子署名による署名者の義務として、電子署名を作成するために使用する秘密鍵等データの不正利用を防止するために真摯に行動し、合理的な手段を確立することや、署名者と秘密鍵のつながりを確認する証明書の有効性や内容の正確性を確保するために、合理的な注意を払って行動することなどが求められています。

(3) 高度または信用性がある電子署名

次の要件を満たした電子署名は、上述の高度または信用性がある電子署名とみなされます。

    1. 会社の秘密鍵等のデータは、それが使用される文脈において、署名者にのみ対応すること。
    2. 秘密鍵等のデータは、署名の時点において、署名者の排他的な支配下にあること。
    3. 署名後に行われた電子署名の改ざんを検出することが可能であること。
    4. 署名後に行われた電磁的記録の情報の変更を検出することが可能であること。

ただし、当該電子署名の信用性が争われた場合、以上の要件にかかわらず、当該電子署名に信用性が認められる他の事情を明らかにすることによって、電子署名の信用性があることを証明することもできます。また、上記要件を満たす場合であっても、署名者の承諾の意思表示が表れていないとして、当該電子署名の信用性を争う証拠を提供することも可能とされています。

さらに、メキシコ以外の国で作成または使用された電子署名については、同等の信用性があれば、メキシコで作成または使用された電子署名と同様の法的効果をメキシコにおいても有するとされています。

(4) 活用における課題

メキシコでは、民間の商取引等において電子署名が用いられる例は、まだまだ少ないと感じています。メキシコ企業が電子署名の採用を見送る要因としては、従前紙面上で自筆により行われた署名からの変化に対する抵抗や電子署名の利点を認識できていないなどといった理由が多いと言われています。

しかし、COVID-19のパンデミック以降、電子署名を採用する企業も増えてきており、メキシコでの電子署名の活用の流れは進むものと思われます。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、電子署名について、情報通信技術法(Information & Communication Technology Act 2006 (以下「ICT法」という)、情報技術規則(認証機関)(Information Technology (Certifying Authority) Rules 2010)、国家情報通信技術政策(National Information and Communication Technology Policy 2018)、認証機関向けの電子署名ガイドライン(E-Sign Guidelines for the Certifying Authority 2020)等にて規定しています。

  1. 電子署名の定義

 ICT法の2条(1)では、電子署名は、署名者に独自性を加え、署名及びその後データに加えられた変更を識別することができる電子形式のデータであると定義しています。

      2. 電子署名の登録 

 バングラデシュで電子署名を使用するには、ICT法36条に従って、認証機関から電子署名証明書を取得する必要があります。電子署名サービスの利用を希望する者は、パスポート サイズのカラー写真2枚、IDカードまたはパスポートの認証済みの写し、および住所を証明する書類を認証機関に提出し、アカウントを開設しなければなりません。申請内容を確認した後、認証機関は5~7営業日以内にアカウントを開設し、署名者に暗号トークンとソフトウェアアクセスを提供します。アカウントを設定した後、署名者はソフトウェアをダウンロードして PIN を受け取ります。

      3. 手書き署名が求められる場合

 バングラデシュでは、法律により電子的に署名または締結できない文書や契約があり、署名する者が政府職員に対面することや、手書きの署名とともに拇印が求められる文書として、i) 遺書、ii) 委任状(Power of Attorney)、iii) 不動産に関連する売買契約、iv) 印紙税が支払われる契約、v) 公証人の前で署名および/または立会いが必要な書類、vi) 宣誓供述書コミッショナーの前で宣誓する必要がある法的手続きに関する文書が挙げられます。

     4. 実務における電子署名の利用状況

 バングラデシュでの会社設立や事業を管理する政府機関である商業登記所(RJSC)は、電子署名を受け入れており、ウェブサイトに情報が提供されています。しかしながら、実務において、電子署名の普及は限定的で、多くの場合、電子署名は「スキャンした署名」という意味で解釈されています。

 

7.フィリピン

  1. 電子署名制度の概要

フィリピンでは、電子商取引法(the E-Commerce ACT)に基づき、電子署名制度は、従来の手書きの署名制度と同等のものとして認識されています。

電子署名は、以下の要件を満たす場合、手書きの署名と同等の効力を有します。

(a)利害関係者が当該文書を改ざんできない所定の手続に基づくこと(電子商取引法第8条)。

(b)契約当事者を特定することができ、かつ、当該当事者が電子署名を通じてされる同意または承認についての電子文書にアクセスできることを示された方法に基づくこと(電子商取引法第8条[a])

(c)(b)に記載された方法が、関連する合意を含む全ての状況に照らして、電子文書の作成目的に応じた信頼性があり適切であること(電子商取引法第8条[b])

(d)契約当事者が、電子署名を実行すること(電子商取引法第8条[c])。

(e)相手方が、電子署名を検証し取引を進める決定をしたこと(電子商取引法第8条[a])

なお、電子署名とは「変換されていない最初の電子文書と署名者の公開鍵を持つ人が正確に判断できるような、非対称暗号システムまたは公開暗号システムを用いた電子文書または電子データメッセージの変換からなる電子署名」と定義されています。

    2. 電子署名による契約の有効性

電子署名による契約は、電子文書として、電子商取引法のもとで法的に有効とされています。また、電子文書は、書面により作成された文書と機能的に同等であるとされています(RCBC Bankard Services Corp. v. Oracion, Jr., G.R. No. 223274, 19 June 2019)。

電子署名による契約が有効であることを証明するためには、以下の手段が考えられます。また、電子証拠法に関する規則に基づき、陳述書を提出する必要があるとされています(電子証拠規則第9条1項)。

(a)当事者が使用し、検証した電子署名に関する証拠を提出すること(同規則第6条第2項)。

(b)その他法律で定められた証拠を提出すること(同規則第2条[b])

(c)電子署名の真正性を立証するその他の証拠を提出すること(第2条[c])

 

8.ベトナム

(1) 電子署名の法的位置付け

 紙媒体を使用しない電子的な取引について、ベトナム民法には、「電子取引に関する法令の規定に基づくデータ通信の形式による電子的手段を通じた民事取引は、文書による取引とみなされる」と規定されています。この規定を受けて、電子取引法や電子署名及び電子署名認証に関する政令が制定されており、その中で、電子署名に関する種々の要件(公開鍵方式を採用していること、当局からのライセンスを受けた認証局運営事業者が発行する電子署名についての電子証明書が発行されることなど)が定められています。

 したがって、例えば契約書を紙媒体を使用せずに電子的に作成した場合において、契約当事者双方が契約のデジタルデータに法令の要件を満たす電子署名を付したときは、有効な署名が付された契約書が作成されたものとみなされ、将来、仮にその契約に関する紛争が生じたとしても、裁判手続などにおいて契約の成立自体が否定されることはありませんし(もちろん、契約書の作成や署名の存否以外の要因により契約の効力が争われることはあり得ます。)、税務上も、有効な契約が存在することを前提として処理されます(したがって、その電子契約に基づいて法人の事業に関する支出がなされたのであれば、その支出は法人の損金として計上されることになります。)。

(2) 電子署名活用における課題

 このように、ベトナムにおいても、法令上は電子署名や電子取引に関する法制度が整備されていますが、有効な電子署名とされるためには、ライセンスを受けた認証局運営事業者との間で電子署名、電子証明書発行に関する契約を締結する必要があるため、電子署名は必ずしも広く普及しているとは言い難い状況です。また、法令の要件を満たす電子署名を付さずに作成された電子的な契約書(印刷した契約書に署名押印し、これをスキャナで読み取ってPDF化しただけのものや、契約書データの署名押印欄に画像化した署名押印を貼り付けただけのものなど)の法的な位置付けについては曖昧な状況であり、裁判手続などで契約書が存在しないものとして契約の成立自体が否定される可能性もないわけではなく、また、税務上も、上記のような法人の損金算入が認められるかどうかについても明確ではありません。

 したがって、ベトナムでは、多くの取引において、契約書に関してはまだまだ紙で作成される場合が圧倒的に多いという状況です。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

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・佐賀(TNY国際法律事務所)
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・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

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・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年8月26日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 7月28日、全国で114人の死亡、23万3094人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 日本入国時の検疫措置について

 厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。なお、出国前72時間以内の陰性証明書は、滞在していた国・地域にかかわらず全員が提出必要です。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(アルバニア、シエラレオネ)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は7日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

 タイのCOVID-19の累計感染者数は4,579,421名です。この内、4,524,592名が回復し、累計死亡者数は31,227名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は2,000人程度で推移しており、減少傾向にあります。

2.2 入国規制

 7月1日より以下のとおり入国規制が緩和されました。

・入国申請システム「Thailand Pass」廃止

・COVID-19の治療費等を含む医療保険への加入不要

ただし、入国時に、ワクチン接種証明書または渡航前72時間以内に受検した陰性証明書の提示は引き続き必要です。

2.3 日本入国規制

 5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

 タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

 ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 7月25日の新規感染者数は、3,300人でした。直近7日間(19日~25日)の平均は4,127人であり先月に比べ増加傾向にあります。もっとも、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。現在は、屋内や公共交通機関等でのマスクの着用義務や店舗入店時のMySejahteraアプリ(マレーシア政府開発の新型コロナウイルス対策アプリ)の提示、ソーシャルディスタンスの要請などに留まります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報やワクチン接種状況等の必要事項を入力しておくことが必要となります。ワクチン接種完了者には、同アプリ上でデジタルトラベラーズカード(青)が発行され、ワクチン接種未完了者には、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行されます。デジタルトラベラーズカード(青)が発行された場合(ワクチン接種完了者)は、渡航前の陰性証明の取得及び入国後の隔離が不要となりますが、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行された場合は、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要となります。なお、ワクチン接種完了者に加えて、17歳以下の者、COVID-19に感染し回復から6~60日以内の者は、渡航前の陰性証明書の取得及び渡航後の入国時検査が不要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

  COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。入国後の隔離措置について、6月17日より空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)が不要となり、指定の施設等での隔離は不要なりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

7月もCOVID-19新規感染者数は増加の傾向を見せ、7月13日には新規感染者数が37,346 人を記録しました。連邦政府による新たな規制はありませんが、施設内の収容人数制限などを再開した州も見られます。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が増加しておりましたが、現在は落ち着いており、7月28日、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は5名、陽性者は626名で、陽性率は6.83%となりました。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)が、5月17日から全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計376万488人で、死者数は累計60,694人です(2022年7月27日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約1500~3000人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

  ベトナムにおける2022年7月26日午前9時の時点での累計感染者数は1076万8844人で、1か月前の6月25日の時点より2万5953人増加しました。今年3月末から4月末の1か月間では100万人以上増加していたことに比べると、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しており、6月に入ってからは、多くの日で1000人を下回っていますが、7月下旬からはやや増加傾向にあります(7月26日の新規感染者数は1460人でした。)。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。日常生活におけるマスクの着用は一応推奨されており、多くの市民は、商業施設や商店などではマスクを着用していますが、着用していない者も少しずつですが増えているように思われます。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

8.3 ベトナムから日本への帰国者・入国者に対する規制

 日本では、7月26日現在、国籍を問わず外国からの入国者に対する水際対策措置が実施されており、ベトナムは「黄」区分に指定されています。したがって、ワクチン3回目接種者については、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機も不要となっています。ワクチン3回目接種者でない場合は、入国時検査を実施した上で、原則、7日間の自宅等待機を求めることとし、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めないこととされていいます。

第2.各国の監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限

1.日本

 監査役は、一般的には「取締役の職務の執行を監査する業務監査」の権限を有します(会社法381条1項(以下、「会社法」省略します))が、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。監査役の設置義務や、監査権限の範囲などは、会社の形態によって異なる定めがおかれています。

  1. 監査役の設置義務

 取締役会設置会社及び会計監査人設置会社(それぞれ監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)では、監査役を置かなければならないとされています(327条2項本文、同条3項)。ただし、取締役会設置会社であっても、公開会社でない会計参与設置会社では、監査役を置く必要はありません(同条2項ただし書)。なお、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役は置くことができません(同条4項)。

  1. 監査役の選任及び解任

 監査役は、株主総会の普通決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数)で選任されます(329条1項、309条1項、341条)。ただし、解任の場合には、特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数)によらなければなりません(339条1項、309条2項7号)。

  1. 監査役の資格等

 監査役の資格等については取締役の規定が準用されており(335条1項)、以下に該当する場合は、監査役となることができません。

  1. 法人(331条1項1号)
  2. 会社法若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法に規定されている罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者(同項3号)
  3. (b)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)(同項4号)
  4. 成年被後見人が取締役に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合は、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない(331条の2、1項)
  5. 被保佐人が取締役に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない(同条2項)

 監査役の任期は、基本的に、選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終の定時株主総会の終結の時までですが(336条1項)、公開会社でない株式会社において、定款によって、その任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時まで伸長することができます(同条2項)。 

  1. 監査役の権限

 監査役は、取締役の職務の執行を監査することにあります(381条1項)。ただし、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。また、監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができ(381条2項)、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条3項)。

 取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます(385条1項)。

 その他、会計監査人が、職務上の義務に違反し又は職務を怠ったときや会計監査人としてふさわしくない非行があったとき、心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないときは、当該会計監査人を解任することができます(340条1項)。

  1. 監査役の義務

 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社の場合は、取締役会)に報告しなければなりません(382条)。また、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません(383条1項)。さらに、監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならず、この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければなりません(384条)。

 

2.タイ

(1) 業務監査を行う機関

 タイでは、日本の監査役のように業務監査を行う機関はありません。取締役の任免は株主総会においてなされることとされており(民商法典1151条)、株主が業務監査の機能を果たしています。

 一方で、上場会社では、独立取締役3人以上から構成される監査委員会の設置が必要です(Notification of the Capital Market Supervisory Board No. Tor Jor. 39/2559 17条3号)。

(2) 会計監査を行う機関(監査人)の設置条件、資格および権限

 タイでは、全ての会社が監査人(Auditor)を設置しなければならず、創立総会において、最初の監査人の選任をすることが定められています(民商法典1108条6号、公開会社法35条7号)。監査人は、定時株主総会において選任され、再任することができます(同法1209条、公開会社法120条)。

 会社との間に利害関係を有する者、取締役、従業員などは、監査人になることができません(民商法典1208条、公開会社法121条)。また、監査人は、原則として、タイ国公認会計士でなければなりません(会計法11条)。

 監査人は、いつでも会社の帳簿を閲覧する権利を有します(民商法典1213条、公開会社法126条)。また、会社の帳簿などの閲覧について、監査人は、会社の取締役、従業員、代理人などに対して質問し、関連する証拠書類の提出を求める権利を有します(民商法典1213条、公開会社法122条)。

 非公開会社では、監査人により作成された財務諸表は、その基準日の4か月以内に株主総会において承認を受ける必要があります(民商法典1197条)。

公開会社では、監査人は、会計監査法に基づいて作成した報告書を定時株主総会に提出する必要があります(公開会社法123条)。また、監査人により作成された財務諸表は、年度末日後4か月以内に開催する定時株主総会において承認を受ける必要があります(同法112条1項)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおいては、日本の監査役のように業務監査を行う監査役は会社法上存在しません。マレーシア会社法(Companies Act 2016)では、会計面での監査を行う監査人を規定しています。

(1) 監査人の選任

 マレーシアでは、原則として全ての会社は最低1名の監査人を選任し、会社の会計を監査させなければなりません。

 会社は、各会計年度に監査人を選任しなければならず(会社法267条1項及び271条1項)、株主総会普通決議により選任されます(会社法267条4項及び271条4項)。新しく設立された会社の場合は、公開会社であれば年次株主総会の前に(会社法271条2項)、非公開会社であれば最初の財務諸表を会社登記官に提出する30日前に(会社法267条3項)、取締役が監査人を選任する必要があります。

(2) 監査人の権限・義務

 コモンロー上、監査人は、能力及び注意力のある監査人が用いると考えられる技量及び注意を用いなければならならないとされます。また、会社法上も監査人は会社に対して以下の義務を負っています。

 監査人は、決算報告書及び会社の会計及び決算報告書に関する記録について株主に報告しなければなりません(会社法266条1項)。公開会社の場合、監査済会計書類は、年次株主総会で審議される必要があり、非公開会社の場合は、会計済監査書類は株主に回付されるか、又は株主総会で審議される必要があります(同項)。

 なお、会社法266条7項により、監査人は自己が関係する議案について、株主総会に出席して発言する権利を有しています。

 また、会社法285条1項は、公開会社の監査人に対して年次総会に出席する義務を課しています。監査人は、総会において、会計書類について株主の質疑に応答する必要があります(同項)。非公開会社については、年次総会は開催されませんが、株主総会において会計書類の監査に関する審議がされる場合、監査人は出席する義務を負います(会社法285条2項)。

(3) 監査人事務所

 会社法264条4項に基づき、会社は事務所(firm)を監査人として選任することが認められています。事務所を監査人とする場合、選任時に当該事務所のパートナーだった者を監査人に選任したのと同等の効果を有します(会社法264条6項)。したがって、事務所のパートナー全員が監査人として承認され、かつ、欠格事由に該当しないことが必要となります。

 また、会社はLLP(Limited Liability Partnership)を監査人として選任することも可能です(同条7項)。

 

4.ミャンマー

(1) 監査役の有無

 ミャンマーにおいては日本の監査役のように業務監査を行う監査役は会社法上存在せず、会計面での監査を行う監査人(auditor)が規定されています。

(2) 監査人の設置条件、資格および権限

 会社は、株主総会において次年度の株主総会まで任期を務める監査人を選任しなければならず、監査人は必要的機関です。なお、監査人は、清算に関する会社法235条、236条及び237条の場合を除き、役員には含まれません。

公開会社(公開会社の子会社である非公開会社を含む)の場合は、大統領により会社の監査人として行為する証明書を交付された者でなければならないものの、非公開会社の場合にはかかる制限規定は存在しません。

 また、以下の者は監査人に就任できません。

【監査人非適格者】

1 当該会社の取締役又は役員
2 当該会社の取締役又は役員の配偶者
3 公開会社(公開会社の子会社を含む)の場合、上記取締役又は役員により雇用されている者
4 当該会社の債務者

(3) 監査人選任手続

定時株主総会において監査人を選任します。選任方法としては、株主は、会社に対し、定時株主総会開催日の14日前までに監査人の職に任命する候補者を通知します。会社は、退任する監査人に当該通知の写しを送付し、かつ、公告又は附属定款で規定するその他の方法により、定時株主総会の7日前までに株主に通知します。

会社設立後最初の株主総会までの期間を任期とする監査人は取締役が任命することができます。 また、監査人の補充の必要が生じた場合、取締役は監査人を補充できます。

 

5.メキシコ

本稿では、商事会社一般法(Ley General Sociedades Mercantiles)に定める監査機関を解説します。

(1) 監査を行う機関

メキシコには、日本の監査役に相当する取締役の職務執行の監査を担う機関として、監査役(Comisario)という機関が存在します。

一部、証券市場法(Ley de Mercado de Valores)などに従い、一定の条件を満たす機関設計を行った法人の場合、当該監査役とは異なる監査機関の設置が求められますが、本稿ではその詳細は割愛します。

(2) 監査役

① 設置が求められる会社形態

監査役は、株式会社(Sociedad Anónima)および株式合資会社(Sociedad en Comandita por Acciones)において設置が求められます。日本とは異なり、メキシコにおいては、取締役会が設置されなくても株式会社あるいは株式合資会社であれば監査役の設置が求められます。

② 監査役の資格

監査役には、公認会計士などの資格は要求されておらず、株主または第三者であってもよいとされています。ただし、次の者は監査役にはなれません。

  • 法律上、取引を行う資格がない者。

取引を行う資格がない者は、公的仲介人(Corredor Público:商取引において、鑑定人としての役割、法的助言を与える役割、紛争の仲介人としての役割および公証人としての役割を果たすメキシコ連邦政府から認可された法律の専門家)、更生していない破産者、偽造、横領、収賄、強要など財産に対する犯罪で有罪判決を受けた者と規定されています。

  • 当該会社の従業員、当該会社の株式の25%以上を保有する会社の従業員、または当該会社が50%以上の株式を保有する会社の従業員。
  • 取締役の直系血族、4親等以内の傍系血族と2親等以内の姻族。

③ 監査役の権限および義務

監査役は、取締役の職務執行および会計の監査を行うために、以下のような権限および義務を有します。

  • 会社の業務の管理・遂行・執行を監督すること。
  • 株主が、監査役に対し、経営に不正があると思われる事実を書面で告発した場合、監査役は、株主総会への報告書にその旨を記載し、必要と思われる事項および議案を定めること。
  • 取締役の職務執行への保証を確保・維持し、不正があった場合には遅滞なく株主総会に報告すること。
  • 招集される取締役会のすべての会議に、発言権をもって出席すること。ただし、議決権は有しません。
  • 株主総会には、発言権をもって出席すること。ただし、議決権は有しません。
  • 取締役会および株主総会の議題に、適当と考える事項を加えること。
  • 取締役が招集しない場合その他適当と判断した場合には、株主総会を招集すること。
  • 業務の監視を行うために必要な業務、文書、記録その他の証拠の調査を行い、監査役の報告を行うことができるようにすること。
  • 取締役に対し、少なくとも財務状況の報告書と決算書を含む月次情報を要求すること。
  • 定時株主総会前に、以下の内容を含む監査役の報告を行うこと。
    1. 会社の特定の状況を考慮して、会社の会計および報告の方針および基準が適切かつ十分であるかどうかについての監査役の意見。
    2. 取締役が提示した情報の中で、それらの方針や基準が一貫して適用されているかどうかについての監査役の意見。
    3. 上記の結果、取締役が提出した情報が、会社の財政状態および経営成績を如実かつ十分に反映しているかどうかについての監査役の意見。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュの会社法では、会計書類を調査する監査人(Auditor)の設置が義務づけられていますが、日本の会社法上の監査役のように、業務監査を行う機関は定められていません。会社法にて規定されている会社秘書役(Company Secretary)の主な役割や責任のひとつに「会社のコンプライアンスに関する対応」があり、Chartered Secretaries Act 2010に基づき設立されたInstitute of Chartered Secretaries of Bangladesh (ICSB)が発行している「BANGLADESH SECRETARIAL STANDARD(BSS)」にて、会社秘書役によって会社が遵守すべき事項が定められております。コンプライアンスという観点で、会社が任意に会社秘書役を選任することができます。なお、公開会社では、会社秘書役の選任が必要とされています。

  1. 監査人の適格要件

 監査人は、バングラデシュ公認会計士法(Bangladesh Chartered Accountants Order, 1973)における公認会計士またはパートナー全員が公認会計士である会計事務所のいずれかであることが要件となっています(会社法212条(1)(以下、本項において会社法については条文番号のみを記すものとします))。また、当該会社の役員又は従業員、当該会社の役員又は従業員のパートナーもしくは雇用関係にある者、当該会社に債務がある者若しくは当該会社に対する第三者の債務を保証している者、当該会社のマネージングエージェントである法人の取締役や株主である者等は、監査人に就任することができません(同条(2))。

     2. 監査人の選任と報酬

 会社は、株主総会にて、次の株主総会までが任期となる1人または複数の監査人を選任し、選任から7日以内に、選任した監査人にその旨を通知しなければなりません。なお、選任のためには、本人が事前に書面で同意する必要があります(210条(1))。選任された監査人は、選任の通知を受けた日から30日以内に、商業登記所に対して書面にて諾否について通知しなければなりません(同条(2))。なお、株主総会にて監査人が選任されない場合、政府が任命することができます(同条(4))。

会社の最初の監査人は会社の登記の日から1か月以内に取締役会により任命され、任命された監査人の任期は、最初の定時株主総会の終結時までとされています(同条(6))。取締役会は、監査人に欠員が生じた場合、当該欠員を補充することができますが、欠員が続く場合、残存する監査人が務めることができ(同条(7))、任期は次の定時株主総会までとなります(同条(8))。任期中の解任は、株主総会の特別決議によってのみ行うことができます(同条(9))。

株主総会にて任期が終了する監査人は、次に該当する場合を除き、再任されなければならないとされています。① 再任の不適格事由に該当することとなった場合、② 監査人本人による再任を受諾しない旨の書面による通知、③ 他の者を任命する決議又は現在の監査人を再任しない旨を明示的に示した決議がなされたこと。また、会社は、監査人の死亡、能力欠如、不正等を理由に再任しないことを決議することができます(同条(3))。

株主総会にて、現任の監査人以外の者を任命するまたは現任の監査人を再任しない決議のためには、特別な通知が必要で(211条(1))、当該通知を受けた監査人は、株主に対して意見を表明することを要求できます。会社は、当該要求を受けた場合は、期限を過ぎたものでない限り、株主総会の招集通知において、意見がなされた旨およびその内容を記載しなければなりません(同条(3))。

監査人の報酬は、原則として株主総会の決議又は株主総会で決定された方法により決定されますが、監査人が取締役会又は政府により任命された場合は、それぞれ取締役会又は政府により決定されます(210条(10))。

      3. 監査人の権限および責務

 会社の監査人は、会社の財務諸表、帳簿及び帳票をいつでも閲覧できる権利を有し、また、会社の役員に対して、監査人の職務遂行のために必要な情報及び説明を求める権利を有します(213条(1))。監査人は会社が作成する決算書や会計帳簿などの監査を行い、監査報告書を作成し、貸借対照表や損益計算書とともに、株主総会に提出し、決算書について監査人としての適正な意見を表明しなければなりません(同条(3))。 

 

7.フィリピン

  1. 財務役(Treasurer)制度

フィリピンでは、株式会社は、役員として、社長、財務役及び秘書役を選任する必要があります。社長は、財務役を兼任することはできませんが、財務役は、取締役である必要はありません。財務役は、国籍及びフィリピン国内居住の有無を問わず就任することができます。

財務役は、財務報告書類の正確性を確認し、署名・提出する義務や、会社預金の管理、会計帳簿の保管する職務を担いますが、それを監査をする権限及び義務を負いません。

      2. 財務諸表の監査制度

フィリピンでは、事業年度の終了日から120日以内に、監査済財務諸表をSECに提出する必要があります。かかる監査は、監査役等のような会社内部の役員によってなされるのではなく、原則独立した外部の資格のある公認会計士によってされる必要があり、株主総会による承認を得る必要があります。

 

8.ベトナム

(1) 有限責任会社の監査役

 日系企業がベトナム設立する現地法人の多くは1人社員有限責任会社又は2人以上社員有限責任会社ですが、いずれの形式であっても監査役を設置する義務はありません(2020年に企業法が改正される前は、社員が11名以上の有限責任会社については監査役・監査役会の設置が義務付けられていましたが、改正により撤廃されました。)。

 但し、国営企業が会社所有者である1名有限責任会社、国家が定款資本若しくは議決権の50%を超えて有する2名以上社員有限責任会社、又は国営企業の子会社である2名以上社員有限責任会社については、監査役・監査役会の設置が義務付けられています。

(2) 株式会社の監査役

 株式会社の場合、株主数が11名未満であり、かつ、各株主の保有株式数が会社の株式総数の50%未満である場合、監査役・監査役会の設置は任意とされています。その他の場合、監査役を選任して監査役会を設置するか、取締役の20%以上を独立取締役(会社と一定の関係を有しない取締役)とし、かつ、取締役会に直属する会計監査委員会を設置しなければならないとされています。

 監査役会を設置する場合、監査役の人数は3名から5名とし、任期は5年を超えない範囲とされています(再任は可能)。また、監査役会の過半数はベトナムに常駐している監査役でなければならず、監査役会の長は、経済、財政、会計、監査、法律、企業管理の専門又は企業の経営活動と関連する専門の中の1つに属する大学以上を卒業していなければならないとされています。

 一方、会計監査委員会を設置する場合、構成員は2名以上とし、会計監査委員会の会長は独立取締役(一定の要件を満たし、就任前に会社と密接な関係を有していない取締役)でなければならず、また、会長以外の構成員は、非常勤の取締役会の構成員でなければならないとされています。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

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