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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに消費者保護に関する法規制の概要」 TNY Group Newsletter No.31

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 10月28日、全国で51人の死亡、3万9254人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、マスクの着用については、①屋内において他者と2メートル以上の身体的距離が取れない場合、②屋内で他者と会話を行う場合、③屋外で他者と身体的距離が取れず会話を行う場合にマスクの着用が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

2022年10月11日以降、全ての外国人の新規入国について、日本国内に所在する受入責任者による入国者健康確認システム(ERFS)における申請は求められなくなり、68の国・地域に対する査証免除措が再開されました。以下の国・地域に対するAPEC・ビジネス・トラベル・カード取り決めに基づく査証免除も再開されました。

地域 国・地域
アジア
インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、香港、マレーシア、台湾
大洋州 オーストラリア、パプアニューギニア、ニュージーランド
中南米 チリ、ペルー、メキシコ
欧州 ロシア

外務省HP新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について|外務省 (mofa.go.jp)

(2) 日本入国時の検疫措置について

 2022年10月11日から、日本入国時の検疫措置は原則として実施せず、入国後の待機等を求めないこととなりました。ただし、全ての帰国者・入国者について、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの接種証明書または出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかの提出が必要とされています。

有効なワクチン接種証明 陰性証明書
(出国前検査)
質問票 入国時検査
入国後の待機期間
あり 不要
必要
なし
なし
なし 必要

厚生労働省HP 水際対策

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,689,897名です。この内、4,649,509名が回復し、累計死亡者数は32,922名となっています。直近1週間の感染者数は2,616名、死亡者数は40名です。

2.2 入国規制

タイ政府は、10月1日からタイ入国規制等を以下のとおり緩和する旨発表しました。

(1)タイ入国時の規制緩和

  • タイ入国時のワクチン接種証明書又は陰性証明書の提示は不要。
  • 日本を含むビザ免除国/地域からの渡航者の滞在可能期間を30日から45日に延長(2023年3月末までの措置)。

(2)タイ国内における感染対策緩和

  • マスク着用は混雑した場所や換気の悪い場所において推奨されるが、義務ではなくなる。
  • 新型コロナ感染者のうち、軽症又は無症状の人は自己隔離不要で外出可能。ただし、5日間はDMHT対策(Distancing:距離の確保、Mask Wearing:マスク着用、Hand Washing:手洗い、Testing:検査(症状が表れた場合))が推奨される。
  • 高齢者や特定の疾患を有する高リスクの感染者は、10日間、自身による健康観察(5日目と10日目にATKによる検査)が推奨される。
  • 企業・団体は、定期的に従業員を観察することが推奨される(感染者数が大きく増加する場合は、直ちに関係当局に報告)。
  • 引き続きワクチン接種は推奨される。
 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

  10月26日の新規感染者数は、2,136人でした。直近7日間(19日~25日)の平均は2,158人であり先月よりは少し増えていますが、感染状況は落ち着いています。マレーシア政府は、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。また、これまでは屋内でのマスク着用義務がありましたが、9月7日より電車・バス・タクシー等の公共交通機関や医療機関等一部を除き撤廃されました。

3.2 入国規制

  3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 これまで、ワクチン接種未完了者には、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要とされていましたが、8月1日からはこれらの手続が不要となりました。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、MySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力が引き続き要請されています。また、ショッピングモール等施設によっては、ワクチン接種歴を確認されることがあるため、MySejahteraアプリへワクチン接種証明を反映させておくことが推奨されます。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

  COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。入国後の隔離措置について、10月8日より、到着14日以上前に接種した承認済みワクチンの(2回)接種証明書を所持している方は、8月1日から求められていたミャンマー到着前48時間以内に発行された新型コロナ RDT(迅速抗原検査)陰性証明書(又はRT-PCR陰性証明書)の提示が不要となりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

10月もCOVID-19新規感染者は増加をみせず、9月26日以降の4週間の間に報告された全国の新規感染者数は合計24,464人でした。10月7日、保健省(Secretaría de Salud)は、事業活動を安全に継続するため措置を定めるCovid-19下での経済活動の持続のためのガイドライン(LINEAMMIENTOS PARA LA CONTINUIDAD SALUDABLE DE LAS ACTIVIDADESECONÓMICAS ANTE COVID-19)を策定し、同省ウェブサイトで公表することを発表し、10日に当該ガイドラインが公表されました。

同ガイドラインには、主に次の事項が記されています。

  • 1.5mの距離の確保、60%以上のアルコールによる消毒、咳エチケットの実施、感染拡大防止のための教育
  • 職場で抗原検査やPCR検査を実施する場合は、労働者の事前の同意を要する
  • 感染者の職場復帰においては、抗原検査やPCR検査を義務付けてはならない
  • マスクの使用は義務付けられないが、ソーシャルディスタンスを保てない場所では、その使用が推奨される(換気ができない場所や、一つの部屋で複数の労働者が働く場合、ワクチンを接種していない場合などは、マスクの使用が推奨される)

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、10月27日午前8時の時点で、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は0名、陽性者は137名で、陽性率は3.62%です。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計399万6818人で、死者数は累計63,846人です(2022年10月26日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあるものの、最近はやや増加傾向にあります。現在は1日約1,500~2,200人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

 フィリピン検疫局は、改定されたフィリピン入国ガイドラインを発表しました。

 これまでワクチン未接種の外国人は、入国できませんでしたが、到着後隔離施設での隔離(5日目以降に陰性のRT-PCR検査結果がでるまで)をにより入国できることとなりました。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年10月27日午前9時の時点での累計感染者数は1149万8873人で、1か月前の9月27日の時点より2万5140人増加しました。先月の時点では、毎日の新規感染者数は2000〜3000人前後で推移していたのですが、ここ最近は1000人を下回る日が多くなりました。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。また、ベトナム保健省は、9月6日、マスク着用に関する規制を緩和するガイダンスを決定しました(2447/QD-BYT)。これによると、これまで公共の場ではマスク着用が必須とされていましたが、急性呼吸器感染症の症状がある者、新型コロナ感染者・感染の疑いのある者、飛行機、バス、タクシーなどの公共交通機関を利用する場合などを除き、公共の場でマスク着用は不要とされました。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(観光目的、ビジネス目的いずれであっても)、

  • ベトナム滞在期間が15日以内であること
  • ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること
  • ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の消費者保護に関する法規制の概要

1.   日本

 消費者保護関連法は多岐にわたり、消費生活に関する基本的な政策や環境づくりを行う消費者庁が所管する法律だけでも37に上ります。このうち代表的な法律の概要を以下に紹介します。

  1. 消費者の生命・身体の安全に関する法律

損害の発生の予防として、一般消費者の生活の用に用いられる製品の製造及び販売を規制する消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)、飲食による健康被害の発生を防止する食品衛生法(昭和22年法律第233号)等、対象品目に応じた法律が整備されています。

発生した損害について、製造物責任法(平成6年法律第85号)が、製造物の欠陥を原因とする生命・身体・財産への被害に対する製造業者等への損害賠償を規定しています。

  2. 消費者との取引に関する法律

 消費者契約法(平成12年法律第61号)は、消費者が事業者と契約をする際にある両者間の情報の質・量や交渉力の格差から消費者の利益を守ることを目的として、不当な勧誘のあった契約の取消し、不当な契約条項の無効等を規定しています。

消費者保護を目的とした業者に対する規制として、特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号「特定商取引法」)が、トラブルが生じやすい、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供勧誘販売取引、訪問購入、の7取引類型について、事業者が遵守すべき規定と、クーリングオフ等の消費者を保護する規定を定め、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号「景品表示法」)が、偽装表示や誇大広告等、商品やサービスについての不当な表示を規制し、過大な景品類の提供を防止する制限を設けています。

取引に伴い事業者に開示される消費者の個人情報については、個人情報保護法(平成15年法律第57号)(ただし、所管は2016年に消費者庁から総務省個人情報保護委員会に移管)が規制しています。

     3. 消費者団体訴訟制度

個々の消費者による個別救済の限界に対処するため、消費者の損害の発生や拡大の防止するための適格消費者団体による差止請求が、平成18年以降、法改正によって、消費者契約法、景品表示法、特定商取引法、食品表示法に順次導入され、消費者の財産的被害の集団的な回復のための裁判手続きの特例に関する法律(平成25年法律第96号)の制定によって、平成28年からは、適格消費者団体による集団的な損害回復の手続が設けられています。

 

2.タイ

タイ消費者保護法は、消費者・事業者間の商品・サービスの広告、安全性、表示(ラベル)及び契約に関する規定を設けています。

(1)消費者の基本的権利

 以下の消費者の基本的権利を規定しています(同法4 条)。

  • 商品またはサービスの品質に関する正確かつ適切な情報及び説明を受ける権利
  • 商品またはサービスの選択の自由を享受する権利
  • 商品の使用またはサービスを利用するにあたって安全性が与えられる権利
  • 公正に契約を締結する権利
  • 損害に対する補償を受ける権利

 ただし、特定の法律に特別の規定がある場合には、その事項に関する法律の規定に準拠するものとされます(同法21条)。例えば、食品医薬品法、保険法などが挙げられます。

(2)広告に関する規制

 広告には、①消費者にとって不公平な内容、または②社会全体に悪影響を与える可能性のある内容を含めてはならないことが規定されています(同法22条)。

 また、以下の表現については、①または②に該当する広告とみなされ禁止されます。

  • 虚偽又は誇張した表現
  • 商品またはサービスに関する重要な部分について誤解を生じさせる表現
  • 法律または道徳に反する行為を直接的または間接的に支持する、または国家の文化的価値の低下を助長する表現
  • 不和を生じさせたり、民衆の団結を阻害させたりする表現
  • その他省令に定める表現

(3)安全性に関する規制

事業者が販売、生産、輸入、宣伝する商品は、リスクを防止または排除する措置を講じた安全な商品でなければならないと規定されています(同法29条の2)。また、危険な商品(別に法律に定める場合を除き、生命、身体、健康、精神状態および財産に危害を与えるまたは与えるおそれのあるものをいう。)を販売するためにタイ国内において生産、注文、または輸入してはならず、そのような危険な商品を推奨または宣伝してはならないと規定されています(同法29条の3)。

(4)表示(ラベル)に関する規制

工場に関する法律に基づいて工場が製造した販売用の商品、および販売用にタイ国内において注文または輸入された商品、または表示委員会が官報において指定した商品は、表示(ラベル)が規制されます(同法30条)。表示(ラベル)が規制された商品は、表示委員会が定める規則等に基づき表示(ラベル)をしなければならないとされています(同法31条)。

(5)契約に関する規制

契約委員会は、法律により契約が書面で作成される必要がある場合、または慣習上、契約が書面で作成される必要がある場合には、契約管理業種として指定する権限を有します。

契約管理業種に指定された事業を営むにあたっては、必ず書面により契約を締結しなければなりません。契約には、消費者に不利益を生じさせることを避けるために必要な契約条件が規定されていなければならず、消費者にとって不公平な契約条件を規定してはならないとされています(同法35条の 2)。

(6)救済手続きに関する規定

消費者保護委員会は、消費者の権利を侵害する紛争を解決するために、訴訟を追行する権限があります。同委員会が適切と判断した場合、または同法39条に基づいて申立てがなされた場合には、消費者の権利の侵害に対して訴訟手続を行う権限が定められています(同法10条7号) 。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおいては、消費者保護を規定する法令として、消費者保護法(Consumer Protection Act 1999)が存在します。消費者保護法では、第2部で誤解を招く、不実・虚偽等の表示に関する規制、第3部で製品及びサービスの安全性に関する規制、第3a部で不当な契約条件に関する規制、第3b部でクレジットでの販売取引に関する規制、第4部でこれら規制の違反に対する罰則を定めています。以下では、消費者保護法の規定を一部紹介します。

(1) 表示規制

 消費者保護法9条は、商品に関して商品の性質、製造プロセス、特性、目的への適合性、有効性、又は数量に関して誤解を招く若しくは欺く、又は誤解を招く若しくは欺く可能性のある表示を行ってはならないと規定しています。

 そして、同法10条では、以下のような虚偽又は誤解を招く表示を行ってはならないと規定しています。

  1. 商品が特定の種類、基準、品質、等級、数量、構成、スタイル、又はモデルであること
  2. 商品に特定の履歴又は使用歴があったこと
  3. サービスが特定の種類、標準、品質、又は数量のものであること
  4. サービスが、特定の人物又は特定の職業、資格、又は技術スキルを持つ人物によって提供されること
  5. 特定の人物が商品又はサービスを取得することに同意したこと
  6. 商品が新品又は再生品であること
  7. 商品が特定の時期に製造、生産、処理、又は再調整されたこと
  8. 商品又はサービスに、スポンサーシップ、認証、推奨、性能特性、付属品、効用、又は利点があること
  9. その者がスポンサー、承認、支持、又は提携を持っていること
  10. 商品又はサービスの需要について
  11. 条件、保証、権利、又は救済の存在、免責、又は効果について
  12. 商品の原産地について

 また、同法8条では、虚偽、誤解を招く、又は欺瞞的な表現等には、消費者を誤解させる可能性のある表現等が含まれるものと定めています。

 上記に加えて、上記表示規制以外にも土地に関する虚偽表示(消費者保護法11条)、価格に関する誤解を招く表示(同12条)、ギフト・賞品・無料提供の表示に関する規制(同14条)等が設けられています。

(2) 安全性に関する規制

 消費者保護法19条では、大臣が商品やサービスに関しての安全基準を定めることができると規定しています。大臣が定めた安全基準が存在しない商品やサービスについては、当該商品やサービスの性質を考慮して、合理的な消費者が期待する合理的な安全基準を採用して遵守しなければならないと規定しています。

(3) 不当な契約条件に関する規制

 消費者保護法24a条では、全ての状況に照らして、契約に基づいて発生する当事者の権利と義務に重大な不均衡をもたらし、消費者に非利益をもたらす消費者契約を不当な条件と規定しています。

 そして、同法24c上では、供給者の行為や契約の条件により供給者に不当に利益又は消費者に不当に不利益をもたらす場合、契約の締結手続が不当であると規定しています。この手続上不当かどうかの判断には、消費者の知識、契約当事者の交渉力の比較等の様々な事情を基に判断します。また、同法24d条では、契約条件又は契約期間が厳しい、抑圧的である、良心的でない、過失責任を除外する等の事情がある場合は実質的に不公平な契約と規定しています。

 契約の手続が不当である場合や実質的に不公平である契約と判断された場合、裁判所は契約の条件を執行不能又は無効と宣言することができます。

 

4.ミャンマー

(1) 消費者保護法の概要

 消費者保護法は2014年3月14日に公布されました。この中で、「消費者」とは、取引目的でなく、商品やサービスを受け取る人を意味すると定義されています。本法のうち、特に企業の義務規定を紹介します。

(2) 企業家の責務

企業家の責務は以下のとおりです。

  1. ビジネス倫理に基づきビジネスを行うこと
  2. 商品やサービスに関し明確かつ適切な情報を提供すること
  3. 消費者に対し、差別なく忠実かつ適切に対応すること
  4. 規定された基準及び品質に基づき、商品、サービスが取引、生産されることを保証すること
  5. 購買前の品質検査を必要とする商品又はサービスに対し検査する機会を提供すること
  6. 保証期間中に商品の消費又はサービスの使用による損害に関して保証された責任を負うこと
  7. 消費者によって受け取られ使用された商品が合意と一致するものだった場合、合意されている内容及び条件に従って責任を負うこと
  8. 合意された合意又はサービス事業を行う上での合意の約束に正確に従うこと
  9. 関係者が消費者紛争を解決している間に、メディア又は他の手段によって関係する消費者に不利益な言動、執筆を控えること

(3)企業家に対する禁止事項

① 企業家は、以下の生産及び取引を行うことが禁止されています。

  1. ラベルに記載されている情報、条件、関連商品の保証、特長、効果、重量、総量、品質、グレード、位置、モード、スタイルに適合しない商品
  2. ラベル又は広告及び販売促進の成分に含まれる表記に適合しない商品
  3. 名称、サイズ、重量、総量、組成、指示、製造日及びバッチナンバー、有効期限、副作用、有毒な材料、製造会社の名前、住所、流通名、商標が記載されていない商品
  4. ミャンマー語で、又はミャンマーと他の言語で共同して記載されていない商品、又は、中央委員会によって決められた日付からの使用に際する、情報や取扱説明がない商品
  5. 産出場所、生産場所に関して不適切に言及された商品
  6. 内外の承認された部門又は組織の勧告又は、規定の基準に適合しない商品
  7. 権威ある組織の科学的研究結果を参照することなく、健康や栄養についての保証が記載されている商品
  8. 規定された基準及び規範に準拠していない商品
  9. 該当するサービスの記載された条件、保証、特長、期間、効果に適合しないサービス
  10. 広告及び販売プロ―モーションに含まれる内容に準拠していないサービス

② 企業家は、以下の条件にある購入者や使用者の誤解を意図的に招く販売、販売促進又は宣伝を行うことが禁止されています。

  1. 参照された品質基準、スタイル又はモード、明確な特性、用途に適合しない、割引された又は、固定特別価格の商品であること
  2. 新鮮、良好な状態ではない商品であること
  3. 他の企業の商品やサービスに対するスポンサー及び承認になること
  4. 有用でなく利用不可能な商品又はサービスであること
  5. 欠陥や必要性が隠されている商品やサービスであること
  6. 他の商品やサービスを直接的又は間接的に誹謗すること
  7. 完全な情報によって認められていない誇張を使用すること
  8. 不確実な約束によって売却又は提供された商品又はサービス

③ 企業家は、売買に際し、以下のいずれかの条件で消費者を欺いたり誤解させることを禁止されています。

  1. 商品又はサービスが所定の基準、品質を満たしていると誤って述べていること
  2. 商品やサービスの必要性を隠して述べていること
  3. 提案されている商品ではなく他の商品を代替して販売すること
  4. 商品、サービスの販売プロモーションの前に、商品、サービスの価格を引き上げること
  5. 期限切れの商品を改装、混合した上で販売すること
  6. 類似した、品質が低い商品、異なった消費するのが安全でない商品を混合して販売すること

④ その他の企業家の禁止事項

企業家は、指定期間内に、又は提供、販売促進、宣伝された金額に基づいて、商品又はサービスを販売するための手配なしに、一定期間内に特別価格で販売を販売し、宣伝することを禁止されています。

また、企業家は、以下の種類の広告を宣伝することは認められません。

  1. 商品の品質、数量、商品中の成分、商品への使用形態、価格、物品、サービスの速度、及びサービスが可能な時間に関し、消費者を欺いた広告
  2. 商品又はサービスの補償に関し欺かれた広告
  3. 商品又はサービスに関する虚偽の情報を含む広告
  4. 商品又はサービスを使用するリスクを知らせていない広告
  5. 許可なしに、人物又は出来事を使用した広告
  6. 法律又は倫理規定に違反する広告

5.メキシコ

連邦消費者保護法(Ley Federal de Protección al Consumidor)は、メキシコにおける消費者を保護するための規制を定めています。連邦消費者保護法上、保護の対象となる「消費者」は、個人に限らず法人を含む点に特徴があります。

連邦消費者保護法には、消費者とサプライヤー(習慣的または定期的に商品、製品、およびサービスの利用や享受を提供、配布、販売、リース等行う連邦民法(Código Civil Federal)上の自然人または法人と定義されており、日本の消費者契約法における事業者に相当する概念となります。)間の取引に関する通則的な規定のほか、情報・広告、プロモーション、訪問販売、サービス提供、信用業務、不動産取引、製品保証、約款など個別的な場面における規制が設けられています。広告・情報に関する規制については、2021年6月1日付の本ニュースレターにおいて紹介しています。そのため、今回は、広告・情報規制以外の消費者保護に関する規制のうち主要なものを紹介します。

(1) 通則的な規制

サプライヤーは以下の事項を遵守しなければなりません。

  • 商品、製品またはサービスの価格、料金、保証、数量、品質、寸法、利息、料金、条件、制限、期限、日付、形式、予約およびその他の条件を通知し、その情報を提供すること。
  • 消費者に提供される商品、製品またはサービスに対して支払われるべき合計金額を、見やすい方法で通知すること。合計金額には、税金、手数料、利息、保険料、その他、消費者が負担しなければならない費用等が含まれること。
  • 商品またはサービスの提供において、強制的で不公正な商取引方法や慣行、不当な条項や条件を適用しないこと。同様に、消費者が書面または電子的手段により明示的に要求または承諾をしていない追加サービスを当初の契約に基づいて提供したり、消費者の事前の承諾なしに、契約に基づかない料金を適用したりしないこと。
  • 自然現象、気象現象、衛生上の不測の事態を理由として、不当に価格を引き上げてはならない。
  • 販売、提供されたサービスまたは実施された業務の具体的な内容を記載した請求書、領収書または証票を消費者に提供すること。

(2) 訪問販売等に関する規制

サプライヤーの店舗または営業所以外で提案または実施されるものであり、動産の賃貸およびサービスの提供を含むものとして、訪問販売、販売仲介、間接的販売(いわゆる通信販売)(以下、まとめて「訪問販売等」といいます。)が規定されています。

訪問販売等にあたっては、サプライヤーの名前と住所、取引と対象となる商品・サービスの識別情報、および製品保証に関する事項が記された書面が作成され、消費者に写しが提供される必要があります。通信販売のように、消費者と接触することなく売買が成立したときに書面を提供できない場合は、サプライヤーは、消費者を確実に認識し、商品やサービスの提供が消費者の住所で行われたことを確認し、販売時と同様の手段で、クレームや返品を受け付けなければなりません。なお、この場合の返品や修理に要する商品の輸送費は、別段の合意がない限り、サプライヤーの負担となります。

訪問販売等による取引や消費者の記録は、サプライヤーによって保持され、また、消費者に通知されなければなりません。

また、訪問販売等における契約は、商品の引渡しまたは契約書の締結のいずれか遅い方から5営業日後に正式に成立することになります。この期間中、消費者はいかなる責任も負うことなく契約を取り消すことができます。

(3) サービス提供に関する規制

すべてのサービス提供施設では、提供される主なサービスの料金表を、見える場所に、はっきりと読みやすい文字で表示しなければなりません。

サプライヤーは、サービスを提供する前に、見積書を交付する義務があります。

(4) 製品保証に関する規制

製品保証書は、少なくとも保証の範囲、期間、条件、保証を受けるための仕組み、請求先、サービス拠点等を記載の上、明確かつ正確な方法で、サプライヤーから書面で発行されなければなりません。

(5) 約款に関する規制

定款とは、製品の取得またはサービスの提供に適用される条件を統一的な形式で定めるためにサプライヤーが一方的に作成する文書を指します。メキシコ国内で締結された定款が有効であるためには、スペイン語で書かれ、その文字は肉眼で読み取れるものでなければならず、大きさやフォントも統一されていなければなりません。また、消費者に不利益、不公平または不当な義務、ならびに連邦消費者保護法に違反する条項を含んではなりません。

(6) 通報・リコール等

何人も連邦消費者保護法等の規定違反について、PROFECO(Procuraduría Federal del Consumidor:連邦消費者保護局)に通報をすることができます。

また、PROFECOは、消費者の生命、健康、安全または経済に影響を与える製品、商品またはサービスに関して、消費者への周知ための警告を発し、または商品回収を命じ、サプライヤーからの届出に応じてリコールを命じることができます。

(7) 紛争解決

連邦消費者保護法が適用される取引等に関する紛争については、民事訴訟を提起するほか、連邦消費者保護法に規定される紛争解決手段を活用することができます。

消費者は、PROFECOに対し、申立てを行うことができます。申し立てられた紛争は、明らかに不適切であるとして却下されない限り、PROFECOによる調停手続きまたは仲裁手続きにおいて解決が図られることとなります。

また、消費者の集団の権利・利益を侵害があった場合には、PROFECOや30名以上の利益を代表する者は、集団訴訟を提起することもできます。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、消費者保護を規定する法令として、消費者権利保護法(Consumer Rights Protection Act, 2009)及び消費者権利保護規則(Consumer Rights Protection Rules, 2020)が存在します。消費者権利保護法は、消費者の権利の保護及び権利侵害の防止を目的としており、同法に基づき設置される管轄機関の体制及び機能、権利侵害に対する申し立て及び罰則を定めています。消費者権利保護規則では、消費者権利保護法の規定を行使するための手続きを規定しており、申し立てに関する各種様式、申し立てや調査等の手続きを定めています。以下では、消費者権利保護法の規定を一部紹介します。

  1. 消費者権利保護の管轄機関

 商務大臣を議長とする国家消費者権利保護委員会(以下「委員会」という)が設置され、その主な役割は、消費者保護に関する政策の策定、政策実施機関への指示とされています。委員会の上位機関として、国家消費者権利保護局の設置も規定されており、委員会の機能を支援し、委員会の決定の行使に対して責任を負います。消費者保護に対する違反行為が確認された場合、かかる店舗や商業施設の一時的な閉鎖命令を出すことができるほか、消費者の権利侵害があった場合、同局に申し立てをすることができ、違反行為に対して、聴聞、調査を通じて必要な決定を下します。

     2. 違反行為及び罰則 

 商品の容量、数量、原材料その他の項目の包装への記載について、法令により課された義務に違反した場合は、1年以下の禁固もしくは50,000タカ以下の罰金またはその両方が科せられます。サービスの価格表の保管や表示を怠った場合も、同様の罰則が科せられます。また、食品への禁止物質の混入、虚偽の申し立て又は訴権濫用その他の違反に対する罰則が定められています。

 消費者権利保護法に基づき、消費者は行政措置を要求することができます。一方、国家消費者権利保護局長の承認がなければ、裁判所が申し立てを受理することはできないとされており、消費者は、消費者権利保護法に基づいて、裁判所に直接申し立てる権利が認められていないため、管轄機関が裁判所に訴訟を提起することとなります。

 

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける消費者保護に関する法制概要

 フィリピンにおいて、消費者保護の分野は、非常に重要な分野だと位置づけられており、憲法においても、国家は取引上の不正行為および規格外または危険な製品から消費者を保護しなければならない旨が規定されています。これをうけ、フィリピン消費者法(the Consumer Act of the Philippines, approved on 13 Apr 1992)が制定されています。この法律は、基準や罰則を課すことにより、消費者を保護するための主要な法律として位置づけられています。

     2. フィリピン政府の政策勧告

 消費者保護について、フィリピン政府の消費者保護グループは、政策勧告第 22-01 号を発表し、以下の8つの権利を消費者基本権として列挙し、各権利の法根拠も併せて示しています。

  • 基本的ニーズを満たす権利
    1. 安全への権利
    2. 情報を得る権利
    3. 選択する権利
    4. 表示に関する権利
    5. 救済を受ける権利
    6. 消費者教育を受ける権利
    7. 健康状態を守る権利

 消費者の権利が侵害された場合、消費者は、その侵害について、管轄する司法機関に民事訴訟を起こすことができます。

     3. 行政措置

 フィリピン消費者保護法について、違反事由があると判断された場合、政府は、違反者に対して行政措置を開始することができるとされています。行政措置に関する調査に先立ち、消費者仲裁人が選定され、和解することを試みる場合もあります。当事者が、行政措置の決定を不服とする場合は、法令の手続を経たうえで、最終的には、裁判所へ訴えを提起する場合もあります。

 なお、苦情の申立て方法としては、ウェブサイト上で、苦情申立てフォームが開設されており、消費者がこれを利用することで、消費者保護法違反発見の端緒となる可能性があります。

 

8.ベトナム

消費者権利保護法の概要

 ベトナムでは、消費者の権利を保護する基本法として、2020年に消費者権利保護法(59/2010/QH12)が制定され、2021年7月から施行されています。この法律の特徴として、次のような条項が置かれていることが挙げられます。

  • 消費者とは、消費・生活目的で商品・サービスを購入・利用する「個人・家族・組織」であると定義され、保護の対象は個人に限定さない(3条1.)
  • 消費者の権利保護は政府及び社会全体の共同責任であるとされている(4条1.)
  • 消費者が取引、商品・サービスの購入・利用をする際の消費者の情報(消費者情報)が保護され、事業者は、消費者情報の収集・使用目的を事前に明確に通知しなければならず、目的外利用が禁止され、消費者情報保護の安全性や正確性の確保義務が課されているなどしている(6条)
  • 消費者と書面で契約をする場合、明確で分かりやすい契約書を作成しなければならない(14条2.)
  • 紛争が起こった場合において契約書の内容の解釈に争いがあるときは、消費者を優先して解釈される(15条)
  • 契約書の条項のうち、消費者側に不利となる一定の条項については無効となる(16条)
  • 欠陥商品を製造・輸入した業者は、欠陥商品の流通を停止させるためにあらゆる可能な限りの方法を即時に実施しなければならず、回収していることを、最低限、新聞において連続5回、ラジオ・放送局において5日連続で公告しなければならない(22条)
  • 消費者が原告、消費者へ商品・サービスを直接提供した事業者が被告となる民事訴訟で、事件の状況が単純明快で証拠が明確であり、取引価格が1億ドン以下のときは、簡易迅速な手続で処理される(41条)
  • 消費者は、民事訴訟において事業者側の過失を証明する義務がなく、事業者側は、自らが消費者に損害を与えていないことを証明する義務がある(42条)

 なお、消費者権利保護法が施行されて10年以上が経過し、その間、電子商取引の利用が拡大するなど消費者が当事者となる取引の環境は大きく変化しています。そこで、現在、消費者権利保護法の改正が検討されています。改正法の成立や施行時期は未定ですが、消費者保護に関する事業者の責任が厳格化されたり、事業者による禁止行為が拡大されるなどの改正が予定されており(日本でも規制が議論されているステマ(ステルスマーケティング)に関する規制も盛り込まれる予定です。)、今後の動向に注意する必要があります。

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: https://tny-lawfirm.com/index.html

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年10月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

9月27日、全国で105人の死亡、4万3594人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

ただし、この入国制限は、2022年10月11日に撤廃され、上記の新規入国申請をする外国人についてのERFS申請は不要となります(厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/content/000993077.pdf)。

(2) 日本入国時の検疫措置について

厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。ただし、2022年10月11日以降、有効なワクチン接種証明がある場合には、これらの区分に関係なく、出国前・入国時の検査及び待機は原則撤廃されます。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(なし)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は5日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,679,022名です。この内、4,639,886名が回復し、累計死亡者数は32,729名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は500人程度で推移しており、減少傾向にあります(9月28日現在)。

2.2 入国規制

10月1日より、入国時のワクチン接種証明書または陰性証明書の提示についても不要となり、外国からの入国制限はすべて撤廃されます。

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

9月26日の新規感染者数は、1,186人でした。直近7日間(19日~25日)の平均は1,830人であり先月よりも減少しています。マレーシア政府は、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。また、これまでは屋内でのマスク着用義務がありましたが、9月7日より電車・バス・タクシー等の公共交通機関や医療機関等一部を除き撤廃されました。

3.2 入国規制

3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

これまで、ワクチン接種未完了者には、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要とされていましたが、8月1日からはこれらの手続が不要となりました。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、MySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力が引き続き要請されています。また、ショッピングモール等施設によっては、ワクチン接種歴を確認されることがあるため、MySejahteraアプリへワクチン接種証明を反映させておくことが推奨されます。

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。入国後の隔離措置について、2回以上のワクチン接種を行っている場合には入国48時間前の陰性証明書が不要となっていましたが、8月1日より再度必要になりました。空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)も必要です。もっとも、指定の施設等での隔離は陽性にならない限りは不要となっています。

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

9月に入り一日当たりのCOVID-19新規感染者数は3,000人以下となる日がほとんどとなりました。連邦政府は9月20日、職場でマスク着用や手指の消毒などを行うことを定めるガイドラインを撤廃する方針であることを公表しました。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュでは、9月28日時点で、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は1名、陽性者は737名で、陽性率は15.42%です。

6.2 入国規制

WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

フィリピンの COVID-19 感染者は累計393万8203人で、死者数は累計62,790人です(2022年9月26日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあるものの、最近はやや増加傾向にあります。現在は1日約1,000~2,000人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

ベトナムにおける2022年9月27日午前9時の時点での累計感染者数は1147万3733人で、1か月前の8月26日の時点より8万0874人増加しました。毎日の新規感染者数は、概ね2000人前後〜3000人前後の間で推移しています。

ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。また、ベトナム保健省は、9月6日、マスク着用に関する規制を緩和するガイダンスを決定しました(2447/QD-BYT)。これによると、これまで公共の場ではマスク着用が必須とされていましたが、急性呼吸器感染症の症状がある者、新型コロナ感染者・感染の疑いのある者、飛行機、バス、タクシーなどの公共交通機関を利用する場合などを除き、公共の場でマスク着用は不要とされました。

8.2 入国規制

新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

第2.各国の外資奨励政策の概要

1. 日本

日本では、OECD加盟国と比較しても対内直接投資残高が低く(2021年末時点で、対GDP比が加盟国平均67%に対して、日本は8.0%)、少子高齢化の進展に伴う人口減少を克服する経済成長の実現のため、海外からの人材・技術・資金を呼び込むことで日本経済全体の成長力の強化や地域経済の活性化を図るべく、2021年6月に「対日直接投資促進戦略」を策定し、目標値を設定して、様々な施策を実施しています。

  1. 政策目標(Key Performance Indicator)・補助指標

対日直接投資残高を2030年に80兆円、対GDP比12%を達成することを政策目標としています。また、量的拡大以外の補助指標として、①外国企業・外資系企業の日本での事業活動の成果としての付加価値額を2030年度34兆円(2018年度17兆円)にすること、②東京集中の緩和として、東京以外の外資系企業数を2026年に10,000社(2016年4.262社42.9%)にすること、③海外からの経営・管理人材の入国者数を2030年に20万人(2019年95,248人)に増加させることを目安として掲げています。

2. 3つの柱

戦略では、以下の3点を基本的な柱として、国内の産業・教育体制の改革や地方自治体支援策等と組み合わせた形で、担当省庁の下で施策を実施しています。

(1)デジタル・グリーンの新市場の創造とイノベーション・エコシステムの構築

(2)グローバルな環境変化に対応したビジネス環境整備の加速

(3)地域の強みを生かした官民連携による投資環境の整備

4. 具体的な対応

日本への投資を検討している、または日本での事業拡大を検討している外国人・企業に対する具体的な対応のため、JETROの対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC: Invest Japan Business Support Center)(https://www.jetro.go.jp/invest/jetros_support/ibsc/)を外資系企業からの規制・制度に関する要望や各種相談等を受け付ける一元的窓口と位置づけて、各種の情報発信を行っています。

2.タイ

タイでは、投資奨励及び産業振興を目的として、1977年に投資奨励法が制定されています。また、産業振興法に基づき、首相府の下にタイ投資委員会(BOI)が設置されています。タイ投資委員会は、投資奨励法に基づき、奨励産業や恩典等の投資奨励政策を定めるとともに、投資に関する支援を行っています。タイ投資委員会には、日本(東京、大阪)を含む16か所の海外事務所があり、事務局のほか、ワンストップサービスセンター(ビザ・労働許可証)、ワンスタートワンストップ投資センター(OSOS)、7つの地方事務局があり、様々な投資に関する支援を受けることができます。

また、タイでは、投資奨励政策として、基礎的恩典、メリットによる追加恩典及びその他の政策、特別措置が設けられています。

  1. 基礎的恩典

基礎的恩典には、業種に基づく恩典と技術に基づく恩典があります。

① 業種に基づく恩典

農業・バイオ・医療産業、先進製造業、基礎・裾野産業および創造・デジタル産業・高付加価値サービスに関する事業に対して最長8年間法人税が免除されます。また、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典(外国人技術者・専門家の入国・就労許可、土地の所有権の許可、タイ国外への外貨送金の許可等)があります。

② 技術に基づく恩典

バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、先端材料技術およびデジタルテクノロジーに関する事業に対して最長10年間法人税が免除されます。また、同様に、機械の輸入関税の免除、原材料及び必要資材の輸入関税の1年間の免除等のインセンティブや税制以外の恩典があります。

2. メリットによる追加恩典

メリットによる追加恩典には、競争力向上のための追加恩典、地方分散のための追加恩典及び工業用地開発のための追加恩典があります。

(1)競争力向上のための追加恩典

以下のとおり法人税が免税されます(投資または支出に対する金額)。

  • 技術及びイノベーションの研究開発 300%
  • 技術・人材開発基金、教育機関、科学技術分野の専門訓練センターに対する支援 100%
  • 科学技術分野のインターンシップの学生に対する技術及びイノベーションのスキルを向上させるためのトレーニング又は職業訓練の実施 200%
  • タイ国内で開発された技術のライセンス料 200%
  • 高度技術訓練 200%
  • タイ国内の原材料及び部品メーカーの開発 200%
  • 製品及びパッケージデザイン 200%

(2)地方分散のための追加恩典

特定の業種につき、1人当たりの国民所得の低い20県に立地する場合に、5年間にわたり法人税を50%減税又は法人税免除期間が3年間追加されます。

(3)工業用地開発のための追加恩典

特定の業種につき、工業団地又は奨励される工業地区に立地する場合に、法人税免除期間が1年追加されます。

3. その他の政策および特別措置

(1)南部国境地域における投資奨励措置および南部国境地域におけるモデル都市企画に基づく投資奨励措置

南部国境県における投資の促進およびモデル都市計画の実現を行い、住民所得を創出することを目的とした制度です。対象業種は、ボディケア製品の製造、建築資材製造事業及び公共施設プロジェクトのための高圧コンクリート製品の製造、日用品用プラスティック製品の製造、パルプあるいは紙による製品の製造、工場・倉庫用建物の開発等です。条件として、最低投資金額(土地代及び運転資金を除く)が50万バーツ以上であること、タイ国内中古機械の使用は、その上限を1000万バーツとし、中古機械の金額の4分の1以上を新品の機械に投資することが必要です。

恩典としては、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代水道代の2倍までを15年又は20年間控除、インフラの設置費または建設費の25%控除等の措置を受けることができます。同措置の適用を受けるためには、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

(2)特別経済開発区(SEZ)における投資奨励措置

近隣国との経済的連携の構築とASEAN経済共同体の発足に備えて設けられた、特別経済開発区における投資措置です。

特定の業種につき、投資額に相当した金額を上限として8年間の法人税免除、追加の法人税の5年間50%減税、機械の輸入関税の免除、法人税の8年間の免除(上限なし)、輸送費、電気代及び水道代の2倍までを10年間控除、インフラの設置費又は建設費の25%控除等の措置を受けることができます。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

(3)効率向上措置

生産効率の向上を目的とした、省エネ、代替エネルギー使用、環境負荷軽減のための機械の入れ替えや、研究開発やエンジニアリングデザインへの支援及びデジタル技術の導入を促進することを目的とした制度です。本措置の対象となるのは、タイ投資委員会が発表した投資奨励対象業種に該当する事業であり、法人所得税の免除または減税期間が終了し、もしくは法人所得税免除の恩典が付与されていない事業です。

条件として、土地代及び運転資金を除く投資金額が100万バーツ以上であることが必要です。ただし、中小企業(タイ国籍自然人による株主比率は資本金の51%以上であること、奨励申請者の全部の被奨励事業と非奨励事業の収入を合算し、被奨励事業の運営により初めて収入が発生した日から最初の3年間の年間収入が合計5億バーツ未満であること)による事業は土地代及び運転資金を除く投資金額が50万バーツ以上であることが必要です。本措置についても、2022年の最終営業日までに申請が必要です。

3.マレーシア

(1) 優遇税制

マレーシアでは、投資促進法(Promotional of Investment Act 1986)、所得税法、関税法、物品税法など、様々な法令により税制上の優遇措置が認められます。

  1. パイオニアステータス

パイオニアステータスは、奨励事業または奨励製品にかかる事業(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)から得た所得の全部または一部について、生産開始日から5年間に限り、法定所得の70%が免税となる措置です。同政策の下では、国家的・戦略的に重要なプロジェクトについては、所得税の全額免除が10年間認められる場合があります。パイオニアステータス期間中の未処理損失および未処理控除は、パイオニアステータス期間の終了から7年間を上限に繰り越し可能であり、同一の奨励事業または奨励製品に関する事業の所得から控除することができます。

2. 投資控除(ITA)

投資控除は、奨励事業を営むまたは奨励製品を生産する会社(製造業、食品加工業、農業、ホテル業、研究開発、観光業など)につき、最初に適格資本的支出が発生した日から5年間に発生した適格資本的支出(工場、機械設備などに対する支出)の60%の投資控除が認められます。この控除額を用いて、各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができます。また、未利用の控除額は、翌年以降に繰越すことができます。ただし、この投資控除制度はパイオニアステータスと併用することはできません。

3. 再投資控除(RA)

再投資控除は、36カ月以上事業を営んでいる居住会社であることなどの一定の条件を満たす会社に対し、工場や機械設備などへの適格資本的支出の60%の投資控除を認めています。

この控除額を用いて各賦課年度の法定所得を最大70%まで控除することができ、未利用の控除額は翌年以降に繰り越すことができます。パイオニアステータスまたは投資税額控除を利用している会社は、その期間中再投資控除を併用することはできません。

(2) 自動化に関する優遇措置

労働集約型の製造業を対象として自動化を促すための優遇措置が設けられています。

ゴム、プラスティック、木材、家具、繊維の製造業(これらをカテゴリー1とする)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM400万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。また、カテゴリー1以外の製造業(カテゴリー2とされる)は、2023年までに自動化に伴って生ずる適格資本支出に対して最初のRM200万について、20%+80%の加速度償却および100%相当額の免税を受けることができます。

マレーシアで設立され、36カ月以上製造事業を行っている法人が対象となります。自動化の設備は直接製造に使用されるものでなければなりません。

(3) インダストリー4.0(Industry 4WRD)

インダストリー4.0は、マレーシアの中小企業の生産性向上およびスマートマニュファクチュアリング化を目指す方針です。

インダストリー4.0の導入を検討する企業は、生産現場の技術導入に対する準備状況を診断する実現可能性評価(RA:Readiness Assessment)を行います。RAを実施した企業のうちインダストリー4.0のための研究開発や教育訓練、設備の現代化や更新、新技術のライセンス取得や購入、国際標準/認証の取得に係る費用に対して、補助金を申請することができます。政府と企業が補助金を出し合うマッチング補助金となり、負担率は政府:企業=60:40となっています。

(4) 環境技術(グリーン・テクノロジー)に関する優遇措置

マレーシア環境技術公社(MyHIJAU)のリストにおいて承認された環境投資減税(GITA)対象資産を取得する場合に、申請により当該対象資産について100%の投資控除を受けることができます。環境投資減税対象資産は、エネルギー効率、再生可能エネルギー、ごみ処理、水処理、建物のいずれかの領域で環境に資する資産となります。環境技術プロジェクトを行う会社や環境技術関連のサービスを提供する会社は、申請によりサービスから得る所得の免税などを受けられる可能性があります。

4.ミャンマー

(1) 投資法

  1. 租税優遇措置

(a)所得税の免税対象業種

投資促進分野通達に規定された業種に該当する場合、所得税の免税措置の申請が可能となります(投資法75条(c))。

(b)関税およびその他の内国税の免税および減税

投資家からの申請によって、ミャンマー投資委員会は、関税その他の国内税の免税または減税を許可することができます(投資法77条)。

2. 土地の長期賃貸借

MIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可を得ることで、土地または建物を最大50年間賃借でき、さらに10年の延長を2回まで認められます(投資法50条)。

(2) 経済特区法

  1. 租税優遇措置

投資家および開発者に対する租税優遇措置は下表のとおりです(経済特区法32条、40条、44条、45条、48条、49条、50条、51条、52条)。

投資家および開発者に対する租税優遇措置
税の種類等 投資家(フリーゾーン) 投資家(プロモーションゾーン) 開発者
所得税 営業開始日から7年間の所得税が免税される。
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
事業の利益の再投資を1年以内に行ったことにより
得た利益については、
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
営業開始日から5年間の所得税が免税される。
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
事業の利益の再投資を1年以内に行ったことにより
得た利益については、
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
営業開始日から8年間の所得税が免税される。
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
事業の利益の再投資を1年以内に
行ったことにより得た利益については、
次の5年間の所得税が2分の1に減額される。
関税 生産用の原材料および機械、その代替部品、工場、
倉庫および事務所を建設するための資材、
事業用車両の輸入について関税等は免除される。輸入する卸売等
のための商品および委託商品、車両
販売目的でない機械器具、その代替部品、
工場、倉庫および事務所を建設するための資材、
車両および事業に実際に必要な物品については、
それらの輸入開始時点から5年間、関税等が免除される。
次の5年間は、50%関税等が軽減される。
プロモーションゾーン向けの原材料の免税制
建設資材、機械、重機、
事業用車両ならびにインフラストラクチヤー
および自らの事務所を建設するための
資材の輸入について関税等は免除される。
商業税 免税される。
国内市場またはプロモーションゾーンから輸入した物品についても
免税を申請できる。
製造した商品を海外に輸出する場合、免税される。
所定の期間内のみ免税される。
製造した商品を海外に輸出する場合、免税される。
なし。

2. 土地の長期賃貸借

経済特区法に基づく投資許可を取得した会社は、土地を最大50年間賃借でき、さらに25年間の延長が認められます(経済特区法79条)。

5.メキシコ

メキシコには、外資のみに適用される税制優遇策などの外資奨励策はありませんが、外資・内資を問わず適用される優遇策がいくつかありますので、主要な3つを簡単に紹介します。

(1) 産業分野別促進プログラム (PROSEC; Programas de Promoción Sectorial)

特定の製品を製造する法人を対象とした税優遇策であり、特定の製品の生産に使用される部品・原材料、設備機器などを優遇関税率で輸入することができます。対象となる産業分野は、自動車および自動車部品、化学、ゴムおよびプラスティック製造、電機、食品など24種が指定されており、所定の製品の製造のために輸入される指定品目について、0%や5%などの優遇税率が適用されます。

(2) IMMEX(Industria Manufacturera, Maquiladora y de Servicios de Exportación)プログラム

製造、加工などの目的で商品を一時輸入する製造事業者や輸出関連サービスを提供する事業者が関税(Impuesto General de Importación)や付加価値税(Impuesto al Valor Agregado: IVA)の支払いを、所定の期間、留保されるなどの輸出促進のための税優遇策です。適用を受ける場合、次の5つのカテゴリーのいずれかにおいて認可を取得する必要があります。

  • 統括企業(Controladora de empresas)プログラム: 認定事業者とその管理下の1つ以上の企業の製造業務が、1つのプログラムに統合される場合
  • 産業(Industrial)プログラム: 輸出向け製造・加工業務が実施される場合
  • サービス(Servicios)プログラム: 所定の条件を満たすサービスが輸出またはその関連サービスに対して提供される場合
  • シェルター(Albergue)プログラム: 1つ以上の外国企業が、製造等の過程を実施することなく、技術や生産資材を提供する場合
  • アウトソーシング(Terciarización)プログラム: 製造等を行うための設備を持たない認定企業が、そのプログラムに登録された第三者を通じて製造業務を行う場合

(3) 経済特区

北部国境地帯特区(Zonas Libre de Frontera Norte)では、所得税(Impuesto sobre la Renta: ISR)について、当該地域内に税務住所または支店や出張所、その他の施設を有する場合で、当該地域での収入が総収入の少なくとも90%を占める場合、当該地域での収入に対して税率30%が20%に、また、IVAについては、当該地域の事業所や施設において物品の譲渡、サービス提供、物品のリースに関する活動を行う法人もしくは個人事業者の場合、税率16%が8%に引き下げられます。なお、金融業、農業、畜産業、漁業、林業、専門サービス・士業、マキラドーラ・オペレーション(保税委託加工)などを行う事業者や、不動産譲渡、無形資産の一時的使用や享受、デジタルコンテンツの提供などには適用されない、物品の引渡しやサービスの提供が当該地域内で実行されなければならないなどの一定の条件があることに留意する必要があります。

対象地域は、バハ・カリフォルニア州、ソノラ州、チワワ州、コアウイラ州、ヌエボレオン州、タマウリパス州の43市町村です。

同様に、南部のキンタナロー州、チアパス州、カンペチェ州、タバスコ州の23市町村でも、同じ減税措置が適用されます。

6.バングラデシュ

バングラデシュ政府は、外資・内資問わず投資を奨励するために、法人税の免除又は減税、資本設備及び原材料に対する輸入関税の減税、VATの減税等、様々な優遇措置をもうけています。毎年制定される財政法(Finance Act)及び通達(Statutory Regulatory Orders)にて優遇措置が見直されるため、確認が必要です。本稿では、主要なものとして、所得税条例に基づく免税措置、輸出志向産業に対する優遇措置、経済特区及び輸出加工区への進出企業に対する優遇措置を紹介します。

  1. 所得税条例第46BBに基づく免税措置

所得税条例(1984)第46BBに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に新規に設立された企業は事業分野及び事業地域によって、5年間又は10年間、一定の割合で法人税の免税を受けることができます。事業分野は、農業機械、自動車及びその部品、電子機器の基本部品、玩具、家具、LEDテレビ、家電製品、コンピューターハードウェア、電気変圧器の製造を含む33の事業が対象となります。

2. 所得税条例第46CCに基づく免税措置

所得税条例(1984)第46CCに基づき、2019年7月1日から2024年6月30日の間に設立されたインフラ設備(輸出加工区、高架道路、ハイテクパーク、ITパーク、再生可能エネルギー地下鉄、廃棄物処理プラント等19分野)に従事した企業は操業開始日から10年間、法人税の減税を受けることができます。

3. 輸出志向産業に対する優遇措置

輸出志向産業(製品及びサービスの80%超の輸出)は、経済特区又は輸出加工区の内外問わず、以下の優遇措置を享受することができます(BIDAウェブサイト:https://bida.gov.bd/incentives)。

  • 輸出から生じた所得の50%にかかる法人税の免税(減税率を適用していない場合)
  • タバコ商品を除き輸出関税免除
  • 保税倉庫の設備
  • 税払い戻し制度
  • 特定の業界の輸出者は、一定の条件のもとで補助金又は金銭的インセンティブというかたちで、更なる優遇措置を追加で享受することができる。

4. 経済特区への進出企業に対する優遇措置

ディベロッパーに対するインセンティブが15項目、投資家(Unit Investors)に対するインセンティブが、以下の項目を含む39項目挙げられています(BEZAウェブサイト:https://www.beza.gov.bd/investing-in-zones/incentive-package/)。

  • 法人税の減税(10年間)
  • 外国人駐在員の所得税の50%免除(3年間)
  • 資本設備及び建築資材に対する輸入関税の免除
  • 国内関税一般地域での完成品の販売が可能(前年度の輸出量の20%)
  • 輸出にかかる関税の免除
  • 製造に関する光熱費に対するVATの免除

5. 輸出加工区への進出企業に対する優遇措置

投資家に対して、財政的インセンティブ、非財政的インセンティブ、優遇措置がもうけられています(BEPZAウェブサイト https://www.bepza.gov.bd/content/incentives-facilities)。

  • 法人税の免除(設立年及び地域により、5年間、7年間又は10年間)
  • 建設資材、機械、設備、部品等の輸入関税免除
  • 原材料の輸入関税および完成品の輸出関税免除
  • 国内一般関税地域からの輸入及び同地域への販売(10%)
  • 資本金及び配当の本国への送金許可
  • 委託加工形態による輸出入の許可

6. その他

ハイテクパークへの進出企業やIT企業に対する優遇措置や官民連携プロジェクト(PPP)に対するインセンティブなどが設けられています。

7.フィリピン

  1. フィリピンにおける外資奨励政策の概要

企業復興税制(CREATE)法において、投資委員会(BOI)とフィリピン経済区庁(PEZA)における優遇制度が統一されました。具体的には、税制上の優遇措置を提供する分野を定めた「戦略的投資優先計画(SIPP)」が承認されています。

2. 企業復興税制(CREATE)法に基づく投資優遇措置の概要

投資優遇措置の概要は以下のとおりです。

(A) インカム・タックス・ホリデー(ITH)により、所得税の支払いが100%免除される場合があります。

(B) 特別法人所得税(SCIT)率の適用により、国税及び地方税に代えて、総所得5%が課される場合があります。

※適用を受けるには、事業内容、生産量、最低投資額その他の条件を満たす必要があります。

(C) 課税標準から許容される控除額が設定される場合があります。

例:課税年度に発生した人件費について、50%の控除

※控除を受けるには、重要国内市場企業に指定されていること等の条件が必要となります。

(D) 資本設備、原材料、予備部品、付属品等を輸入する際に免税となる場合があります。

(E) 輸入時の付加価値税(VAT)が免除される場合や、現地での購入時のVATゼロレートの適用の可能性があります。

3. SIPPが定める投資優遇分野

SIPPは、投資優遇措置を受けられる優先活動のリストを提供しています。産業や活動は、Tier I、Tier II、Tier IIIに分類されます。

【Tier I】

2020年度投資優先計画にて投資優先分野と指定されている活動。ただし、通達第61号でTier II若しくはTier IIIに該当する場合を除く。

【Tier II】

フィリピン経済の強靭(きょうじん)性、競争性を高める活動。具体的には、グリーン・エコシステム、ヘルスケア、防衛関連、食料安全等の分野を含むものとされています。

【Tier III】

経済の変革を加速させる上で重要な活動。具体的には、研究開発、技術的に高度な製造業、イノベーション創出を促進する施設の設置等の分野を含むものとされています。

4. 投資優遇措置の適用期間

企業は以下の期間において、税制優遇措置を受けることができます。なお、優遇措置を受けようとする企業は、戦略的投資優先計画及びガイドラインに別段の定めがない限り、登録日から3年以内に優遇措置を利用する必要があります。

・ 輸出企業と国内市場企業が「重要」に分類される場合

所在地と産業政策に応じて、4~7年間所得税が免除され、その後10年間法人税の特別税率又は控除が強化される場合があります。

・ 国内市場企業で「重要」に分類されない場合

4~7年間所得税が免除され、その後5年間特別法人税または控除が強化される場合があります。ただし、投資資本が5億ペソ以上の国内市場企業に限り、法人所得税の特別税率を適用することができます。

8.ベトナム

(1) 投資優遇分野

ベトナムでは、2021年1月施行の投資法(61/2020/QH14)に基づき、内資・外資にかかわらず共通の投資優遇措置が実施されています。同法が定める投資優遇分野は、次のとおりです(同法16条1項)。

  • 科学技術に関する法令に従ったハイテク活動、ハイテク支援産業製品、科学技術の成果物の研究、製造、開発
  • 新素材、新エネルギー、クリーンエネルギー、再生可能エネルギーの製造、付加価値30%以上の製品の製造、省エネルギー製品の製造
  • 電子製品、機械製品、農業機械、自動車、自動車部品の生産、造船
  • 優先的発展対象となる裾野産業製品リスト(裾野産業の発展に関する政令111/2015/ND-CP)に掲載されている製品の生産
  • IT技術、ソフトウエア、デジタルコンテンツの生産
  • 農産物、林産物、水産物の養殖、加工、植林、森林保護、製塩、漁業、漁業物流サービス、植物品種、動物品種、バイオテクノロジー製品の生産
  • 廃棄物の収集、処理、リサイクルまたは再利用
  • インフラ整備、運営、管理への投資、都市部での公共交通機関の整備
  • 幼児教育、一般教育、職業教育、高等教育
  • 診察、治療、医薬品、医薬原料の生産、医薬品の保管、新薬生産のための製剤技術、バイオテクノロジーに関する科学研究、医療機器の製造
  • 障害者またはプロのスポーツ選手のためのスポーツ施設に対する投資、文化遺産の保護と振興
  • 老人ホーム、メンタルヘルスセンター、枯葉剤被害者の治療センター、高齢者、障害者、孤児、ストリートチルドレンのためのケアセンターへの投資
  • 人民信用基金、マイクロファイナンス機関
  • バリューチェーンや産業クラスターを創出し、またはこれらに参加するための商品の生産やサービスの提供

投資優遇分野に関する詳細については、投資法の整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。

(2) 投資優遇地域

投資法が定める投資優遇地域は、次のとおりです(同法16条2項)。

  • 経済・社会的条件が不利な地域及び極めて不利な地域
  • 工業団地、輸出加工区、ハイテクパーク、経済特区

投資優遇地域に関する詳細については、整備に関する政令(31/2021/ND-CP)で定められています。

(3) 投資優遇措置の内容

投資法が定める投資優遇措置の内容は、次のとおりです(同法15条1項)。

  • 法人所得税の優遇措置(一定期間または投資プロジェクト実行中の法人所得税の低率適用、免税・減税など、法人所得税法に規定される優遇措置)
  • 固定資産を形成するために輸入される物品、生産のための原材料、物資、部品に対する輸入税の免除
  • 土地使用税、土地使用料の減免
  • 課税所得の計算における、加速償却法の採用、損金算入できる費用の増加
発行 TNY Group
【TNYグループ及びTNYグループ各社】 ・TNY GroupURL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年9月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 8月25日、全国で296人の死亡、22万955人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 日本入国時の検疫措置について

 厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。なお、これまで滞在していた国・地域にかかわらず提出が必須とされていた出国前72時間以内の陰性証明書は、9月7日午前0時(日本時間)以降のオミクロン株が支配的となっている国・地域からの全ての入国者について、提出が求められなくなります。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(なし)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は5日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,641,263名です。この内、4,591,063名が回復し、累計死亡者数は32,141名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は1,800人程度で推移しています(8月25日現在)。

2.2 入国規制

7月1日以降は、入国時に、ワクチン接種証明書(規定回数接種済みの場合)または渡航前72時間以内に受検した陰性証明書(英文)の提示をすれば、隔離措置等もなく入国ができるようになっています。

ワクチン未接種・未完了および陰性証明書を保有していない場合であっても入国はできますが、入国後、担当官の指示に従う必要があり、検査を求められる場合があります。

2.3 日本入国規制

 5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

 タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

 ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 8月24日の新規感染者数は、2,636人でした。直近7日間(18日~24日)の平均は2,894人であり先月よりも減少しています。マレーシア政府は、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。現在は、屋内や公共交通機関等でのマスクの着用義務や店舗入店時のMySejahteraアプリ(マレーシア政府開発の新型コロナウイルス対策アプリ)の提示、ソーシャルディスタンスの要請などに留まります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 これまで、ワクチン接種未完了者には、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要とされていましたが、8月1日からはこれらの手続が不要となりました。もっとも、ワクチン接種の有無に関わらず、MySejahteraアプリをダウンロードの上、同アプリへの氏名・パスポート番号等の必要事項の入力が引き続き要請されています。また、ショッピングモール等施設によっては、ワクチン接種歴を確認されることがあるため、MySejahteraアプリへワクチン接種証明を反映させておくことが推奨されます。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

  COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。もっとも、申請から取得までに数週間を要する場合もあり、早めの申請が望ましいと解されます。入国後の隔離措置について、2回以上のワクチン接種を行っている場合には入国48時間前の陰性証明書が不要となっていましたが、8月1日より再度必要になりました。空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)も必要です。もっとも、指定の施設等での隔離は陽性にならない限りは不要となっています。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

7月後半よりCOVID-19新規感染者数は減少傾向に転じ、懸念された第5波は落ち着きを見せています。連邦政府による新たな規制はありません。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、8月26日時点で、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は1名、陽性者は196名で、陽性率は4.15%です。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)は、全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計386万7071人で、死者数は累計61,519人です(2022年8月25日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあるものの、最近はやや増加傾向にあります。現在は1日約3,000~4,000人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年8月26日午前9時の時点での累計感染者数は1139万2859人で、1か月前の7月26日の時点より62万4015人増加しました。6月25日から7月26日までの間の感染者数の増加は2万5953人だったことから、数字の上ではこの1か月で大幅に増加したことになりますが、これは、一部地域においてこれまで計上していなかった人数をまとめて計上したことが原因であると考えられます。このような要因を除けば、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しています。ただ、今年6月頃の時点では多くの日で1000人を下回っていましたが、7月下旬頃からはやや増加傾向にあり、8月に入ってからは、多い日で3000人を超えることもあります。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。日常生活におけるマスクの着用は一応推奨されていることから、多くの市民は外出時にマスクを着用していますが、着用していない者も少しずつ増えているように思われます。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

8.3 ベトナムから日本への帰国者・入国者に対する規制

 日本では、8月26日現在、国籍を問わず外国からの入国者に対する水際対策措置が実施されており、ベトナムは「黄」区分に指定されています。したがって、ワクチン3回目接種者については、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機も不要となっています。ワクチン3回目接種者でない場合は、入国時検査を実施した上で、原則、7日間の自宅等待機を求めることとし、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めないこととされていいます。

 なお、現在は、ベトナム出国前72時間以内の陰性証明書の取得、提示が必須ですが(陰性証明書がない場合、航空機への搭乗が認められません。)、9月7日午前0時(日本時間)より、ワクチン3回接種者については陰性証明書の取得、提示が不要となります。

第2.各国の電子署名制度と活用における課題

1.日本

  1. 法制度

      (a)電子署名を規律する法律

電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)(以下、「電子署名法」といいます。)が2001年4月に施行されました。

      (b)電子署名の定義

電子署名は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識できない方式で作られる記録であって、電子計算機による処理の用に供されるものをいう。)に記録することができる情報について行われる措置で、次の2つの要件を充たすものと定義しています(電子署名法2条1項)。

    1. 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること
    2. 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること

電子署名法では、電子署名を行う特定の方法を指定していないため、この要件に合致するものは全て電子署名となります。

     (c)電子署名が可能な文書

基本的に契約の方式は自由なので、法律に特別の規定がない限り(民法522条2項)、契約書を電子的に作成して、それに電子署名することができます。しかし、法律で「書面」による作成、交付、保存すること等が求められている場合には、「書面」に代えて「電磁的記録」によることが可能であるとの規定(例えば保証契約に関する民法446条3項)がない限り、物理的な書面が求められているため、電子署名もできません。 

      (d)文書の成立の真正の判断基準

文書に作成者の署名または押印があることでその文書が作成者の意思に基づき作成したことが推定されます(民事訴訟法228条1項)が、電子文書に関しては、上記の①②を充たす電子署名が以下の要件を充足した場合に、文書の成立の真正が推定されます(電子署名法3条)。

              a. 当該電磁記録に記録された情報について本人による電子署名が行われていること

              b. 電子署名を行うために必要な符号及び物件を管理することにより、本人だけが行うことができるもの

因みに、電子署名法2条3項の規定する「特定認証業務」による認証を受けた電子署名は、国の定める一定の技術水準を充たすものですが、③④の要件を充たすことを認証するものではいため、その電子署名が付された文書が真正に成立したものとの推定を直ちに受けるものではありません。

     (2)課題

     (a)推定の及ぶ電子署名

電子署名は、そのサービスを提供する業者(ベンダー)を通じて行うこととなり、主に「当事者署名型」と「事業者(立会人)署名型」と称されるサービスがあります。当事者署名型とは、公開鍵等からなる技術的な仕組みの下、第三者である電子認証局が本人確認を行った上で発行した電子証明書を用いて各利用者が電子署名を行うものです。これは、電子署名法制定当時に想定されていた方式で、上記①②の要件を備える電子署名に該当し、一般的に③④の要件も備えているものと考えられます。一方、事業者署名型は、利用者自身の電子署名を使用しない方法で、例えばベンダー自身の署名鍵を用いて、電子文書の暗号化等を行った上で、そのシステム上で契約を締結するものです。

電子署名は、物理的な契約書の印刷・送付・保管等の経費や押印手続等の事務作業にかかる人件費の削減に貢献しますが、当事者署名型の利用には、契約当事者双方が電子証明書を入手する必要性、本人確認の手間、電子証明書の有効期間の短さ等の負担があり、利用者に簡便な事業者署名型は、上記①の本人性が認められず、電子署名法3条の推定も受けないと解釈されてきたために普及が遅れていました。

しかし、2020年に発表された総務省、法務省、経済省連名による政府見解(「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵よりより暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」)により、ベンダーの意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合で、付随情報が確認できる等の電子文書に付された情報を含めた全体を一つの措置として利用者の意思に基づいていることが明らかな場合には、上記①の要件を充たす電子署名法2条1項の電子署名に該当すること(2020年7月17日付Q&A Q2)、更に、利用者とベンダー間で行われるプロセスで二要素認証等が行われ、かつ、利用者の行為を受けてベンダー内部で行われるプロセスで暗号の強度や利用者毎の個別性を担保する仕込みがとられる等によって、いずれのプロセスにおいても十分な水準の固有性が充たされる場合には電子署名法3条にも該当すること(2020年9月4日付Q&A問2)が明らかにされました。

この政府見解によって、事業者署名型への信頼が高まり、電子署名を用いる障壁は相当程度軽減されました。しかし、ベンダーの提供するサービスは様々で、成立の真正の推定を受けるかは個別的判断が必要で、利用者にその確認・証明することが求められるため、推定を受ける電子署名の技術的な基準やその認証についての法制化が望まれています。

      (b)その他の懸念

電子署名といえども、ハンコの冒用と同様になりすましや無権代理の危険はあり、秘密鍵やその利用のためのパスワード等の管理に留意する必要があります。

また、電磁的情報の利用に特有な、技術的な進展に応じた非改竄性を確保するための恒常的な改良、不正なアクセスによる情報漏洩や消滅等のリスクへの対応等の最新の情報セキュリティを確保していくことが課題とされています。

 

2.タイ

タイにおける電子署名を規律する法律としては、2001年電子取引法(Electronic Transactions Act, B.E. 2544(2001))があります。また、2019年電子取引法(Electronic Transactions Act (NO.3), B.E.2562(2019))によりその規定の一部が改正されています。タイでは、法律上の要件を満たせば電子署名は有効とされています。

(1) 電子署名の定義

電子署名は、「署名をした特定の人物がそのデータメッセージに含まれる情報を承認したことを示すことを目的とした、電子形式で作成された、文字、数字、音、またはその他の記号であり、署名者とデータメッセージの関連性を確立するものである」と定義されています(2001年電子取引法4条)。

(2) 電子署名の有効性

電子署名の有効性については、2001年電子取引法9条および26条に定められており、規定の要件を満たした場合に電子署名が有効であると解されます。

以下の場合に、電子署名がなされたとみなされます(同法9条(2019年電子取引法7条))。

i 署名者を識別し、データメッセージに含まれる情報に関する署名者の意図を示すことができる方法が使用されていること

ii 以下のいずれかの方法が使用されていること

(a)関連する合意を含む周辺状況を考慮して、データメッセージが生成または送信された目的のために適切であると信頼できる方法

(b)署名者を特定し、iに基づいて署名者の意図を示すことが、それ自体で、または追加の証拠とともにできるその他の方法

以下の要件を満たす電子署名は、信頼できる電子署名であるとみなされます(同法26条)。

ⅰ 作成された電子署名が、その使用された文脈において、他者に紐づけられることなく、署名者本人に紐づけられていること

ii 作成された電子署名が、電子署名の作成時において、他者の管理下になく、署名者本人の管理下に置かれていたこと

iii 電子署名の作成後に生じた変更を検出できること

iv 法律上の要件として、電子署名が情報の完全性を保証するものであることを定めている場合において、電子署名作成時以降の情報の変更が検証できること

    (3)電子署名が認められる文書の範囲

一般的には、電子署名は幅広い範囲で認められています。

2001年電子取引法では、法律上、書面が求められる場合であっても、情報が、その意味を変更することなく後で参照するためにアクセス可能で使用可能なデータメッセージの形式で生成された場合には、法律で要求される書面で作成されたとみなされる旨規定されています(同法8条(2019年電子取引法6条))。

もっとも、いくつか例外があり、法律上書面が要求される文書、たとえば、不動産売買契約、3年を超える賃貸期間の不動産賃貸借契約、抵当権設定契約等については、電子署名を使用することができません。

また、一部の大規模な民間企業や歳入庁などの政府機関は、サービスプロバイダー(2001年電子取引法28条)によって認証された電子署名のみ認められているため注意が必要です。

(4) その他の電子署名の使用の注意点

電子署名の署名者は、電子署名作成に使用したデータが許可なく使用されないよう合理的な注意を払うこと、電子署名作成に使用したデータが消失、損壊、変更、不正に公開された、または漏洩した場合には、電子署名によって何らかの行為を行う者に対して通知すること等の義務が課されるため注意が必要です(同法27条)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおいては、電子署名を規定する法令として、Electronic Commerce Act 2006(以下、「ECA」という)及びDigital Signatureは、Digital Signature Act1997が存在します。本稿では、より利用者が多いと考えられるECAに基づく電子署名について紹介します。

(1) 電子署名の定義

 ECAにおいては、electronic signature(以下「eSignature」という)は、人が署名として採用する電子的な形式で作成された文字、記号、数字、音、その他の符号、又はそれらの組み合わせと定義しています(ECA5条)。

(2) 電子署名の有効性

 ECA9条1項では、法的に文書に署名を要求する場合、当該文書が電子文書の形式であれば、以下の要件を満たす場合にeSignatureが有効となると規定しています。

  1. 電子文書に添付されるか、又は論理的に関連付けられている
  2. 署名者個人を適切に識別し、かつ、署名に関連する情報に対する署名者個人の承認を適切に示していること
  3. eSignatureが必要とされる目的及び状況を考慮して適切に信頼できるものであること

 また、ECA9条2項では、上記③のeSignatureが信頼性を有する場合の要件を以下の通り規定しています。

  1. eSignatureの作成手段が署名する人物にのみ関連付けられ、その者の管理下にあること
  2. 署名後に加えられた当該署名に対するいかなる修正も検知可能であること
  3. 署名後に加えられた文書に対するいかなる修正も検知可能であること

 9条2項②③の署名後の署名又は電子文書に対する修正(偽造)への検知可能性の要件については、どのような制度を設ければよいのか法令上明確ではありません。この点についての行政の正確な解釈を確認することは難しく、マレーシアローカルの法律事務所が執筆したECAに関する記事によると、署名後の偽造防止機能を有するソフトを導入している場合は、当該要件を満たすのではないかと記載するものがあります。また、同記事では、電子文書にPDFの署名を添付するだけでは不十分ではないかとも記載しています。ECAの要請に基づき署名の信頼性を担保するため、偽造防止又は署名後の修正を検知できる機能を有するソフトを導入することが望ましいといえます。

(3) eSignatureを使用できない文書

 ECA2条及びScheduleにて、委任状、遺言、信託、有価証券には適用されないと規定しています。

 

4.ミャンマー

(1) 電子署名に関する法律

ミャンマーにおける電子署名を規律する法律としては、電子取引法 (Electronic transaction law 2004/5)および改正証拠法(Amending Law on Evidence Act (73/2015))があります。ミャンマーでは、電子署名は法的に有効ですが、政府機関に対しては、特定の取引を除き、電子署名の使用が認められておらず、実質的に使用が制限されています。

(2) 電子署名の定義

電子署名とは、「電子記録の情報源の真実性および修正または差し替えがないことを確認するための、電子技術またはその他の類似の技術によって個人または代理人により作成された記号またはマーク」と定義されます(電子取引法2条(f)項)。

また、電子記録とは、「電子的、磁気的、光学的、その他の同様の技術によって、生成、送信、受信、または保存された情報システム内の記録」と定義されます(同法2条(c)項)。

(3) 電子署名の有効性等

電子署名は、法律上の要件を満たせば有効であるとされます(電子取引法19条(a)項および(b)項)。また、裁判所において法的に有効な証拠とされます(改正証拠法67A条)。

電子署名が有効とされるためには、発信者および受信者は、規定された手段または両者の間に別段の合意がある場合にはその合意の手段に従って、電子記録、電子データメッセージまたは電子署名を送信、受信または保存をしなければならないとされています(電子取引法20条)。

また、署名者は、電子署名と電子データメッセージの関係を識別する証明書を取得するために認証機関に申請する必要があります(同法16条)。

なお、署名者は、電子署名の復号化により有効な署名を用いる場合に、他人によって違法に使用されないように注意する、付与された期間中に電子署名のために発行された証明書を使用する際に、署名者に関連する事実または差し込まれた事実が完全に正確であるように注意する義務が課されています(同法17条(a)、(b)))。そして、署名者は、これらの義務に違反したことにより生じた損害および損害の結果について責任を負うとされています(同法18条)。

(4) 真実性の判断

電子署名の真実性の判断は、電子取引法により設置された電子取引管理委員会によって行われます。

 

5.メキシコ

(1) 電子署名の根拠法および定義

商法(Código de Comercio)によると、電子署名とは、電磁的記録に含まれ、添付され、または論理的に関連付けられた電子形式のデータで、電磁的記録に関連して署名者を特定し、署名者が電磁的記録に含まれる情報を承認することを示すために用いられ、手書きの署名と同じ法的効果を生じ、法廷での証拠としても認められるものと定義されています。

電子署名のうち、後述(3)記載の要件を満たす電子署名は「高度または信用性がある電子署名(Firma Electrónica Avanzada o Fiable)」として区別されています。

さらに、高度電子署名法(Ley de Firma Electrónica Avanzada)において、署名者を識別することができるデータと文字の組み合わせで、署名者の排他的な支配下で電子的手段により作成され、本人および参照するデータのみにリンクされ、その後のこれらの変更が検出可能で、自筆の署名と同様の法的効果をもたらす署名が「高度な電子署名(Firma Electrónica Avanzada)」として定義されています。メキシコ国税庁(Servicio de Administración Tributaria)が発行する電子署名e.firmaは、同法の適用を受ける高度な電子署名になります。

(2) 電子署名の有効性

電子署名の有効性に関しては、当該電子署名を含む電磁的記録が商法の規定等に準拠していることを条件に、その電磁的記録は、紙面上作成署名された文書と同じ法的効果を持つとされていることから、電子署名は自筆の署名と同等の効果を有すると考えられます。また、同様に、高度電子署名法においても、高度な電子署名が付された電子文書および電磁的記録は、自筆の署名が付されたものと同じ効果を有するとされています。

商法においては、電子署名による署名者の義務として、電子署名を作成するために使用する秘密鍵等データの不正利用を防止するために真摯に行動し、合理的な手段を確立することや、署名者と秘密鍵のつながりを確認する証明書の有効性や内容の正確性を確保するために、合理的な注意を払って行動することなどが求められています。

(3) 高度または信用性がある電子署名

次の要件を満たした電子署名は、上述の高度または信用性がある電子署名とみなされます。

    1. 会社の秘密鍵等のデータは、それが使用される文脈において、署名者にのみ対応すること。
    2. 秘密鍵等のデータは、署名の時点において、署名者の排他的な支配下にあること。
    3. 署名後に行われた電子署名の改ざんを検出することが可能であること。
    4. 署名後に行われた電磁的記録の情報の変更を検出することが可能であること。

ただし、当該電子署名の信用性が争われた場合、以上の要件にかかわらず、当該電子署名に信用性が認められる他の事情を明らかにすることによって、電子署名の信用性があることを証明することもできます。また、上記要件を満たす場合であっても、署名者の承諾の意思表示が表れていないとして、当該電子署名の信用性を争う証拠を提供することも可能とされています。

さらに、メキシコ以外の国で作成または使用された電子署名については、同等の信用性があれば、メキシコで作成または使用された電子署名と同様の法的効果をメキシコにおいても有するとされています。

(4) 活用における課題

メキシコでは、民間の商取引等において電子署名が用いられる例は、まだまだ少ないと感じています。メキシコ企業が電子署名の採用を見送る要因としては、従前紙面上で自筆により行われた署名からの変化に対する抵抗や電子署名の利点を認識できていないなどといった理由が多いと言われています。

しかし、COVID-19のパンデミック以降、電子署名を採用する企業も増えてきており、メキシコでの電子署名の活用の流れは進むものと思われます。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、電子署名について、情報通信技術法(Information & Communication Technology Act 2006 (以下「ICT法」という)、情報技術規則(認証機関)(Information Technology (Certifying Authority) Rules 2010)、国家情報通信技術政策(National Information and Communication Technology Policy 2018)、認証機関向けの電子署名ガイドライン(E-Sign Guidelines for the Certifying Authority 2020)等にて規定しています。

  1. 電子署名の定義

 ICT法の2条(1)では、電子署名は、署名者に独自性を加え、署名及びその後データに加えられた変更を識別することができる電子形式のデータであると定義しています。

      2. 電子署名の登録 

 バングラデシュで電子署名を使用するには、ICT法36条に従って、認証機関から電子署名証明書を取得する必要があります。電子署名サービスの利用を希望する者は、パスポート サイズのカラー写真2枚、IDカードまたはパスポートの認証済みの写し、および住所を証明する書類を認証機関に提出し、アカウントを開設しなければなりません。申請内容を確認した後、認証機関は5~7営業日以内にアカウントを開設し、署名者に暗号トークンとソフトウェアアクセスを提供します。アカウントを設定した後、署名者はソフトウェアをダウンロードして PIN を受け取ります。

      3. 手書き署名が求められる場合

 バングラデシュでは、法律により電子的に署名または締結できない文書や契約があり、署名する者が政府職員に対面することや、手書きの署名とともに拇印が求められる文書として、i) 遺書、ii) 委任状(Power of Attorney)、iii) 不動産に関連する売買契約、iv) 印紙税が支払われる契約、v) 公証人の前で署名および/または立会いが必要な書類、vi) 宣誓供述書コミッショナーの前で宣誓する必要がある法的手続きに関する文書が挙げられます。

     4. 実務における電子署名の利用状況

 バングラデシュでの会社設立や事業を管理する政府機関である商業登記所(RJSC)は、電子署名を受け入れており、ウェブサイトに情報が提供されています。しかしながら、実務において、電子署名の普及は限定的で、多くの場合、電子署名は「スキャンした署名」という意味で解釈されています。

 

7.フィリピン

  1. 電子署名制度の概要

フィリピンでは、電子商取引法(the E-Commerce ACT)に基づき、電子署名制度は、従来の手書きの署名制度と同等のものとして認識されています。

電子署名は、以下の要件を満たす場合、手書きの署名と同等の効力を有します。

(a)利害関係者が当該文書を改ざんできない所定の手続に基づくこと(電子商取引法第8条)。

(b)契約当事者を特定することができ、かつ、当該当事者が電子署名を通じてされる同意または承認についての電子文書にアクセスできることを示された方法に基づくこと(電子商取引法第8条[a])

(c)(b)に記載された方法が、関連する合意を含む全ての状況に照らして、電子文書の作成目的に応じた信頼性があり適切であること(電子商取引法第8条[b])

(d)契約当事者が、電子署名を実行すること(電子商取引法第8条[c])。

(e)相手方が、電子署名を検証し取引を進める決定をしたこと(電子商取引法第8条[a])

なお、電子署名とは「変換されていない最初の電子文書と署名者の公開鍵を持つ人が正確に判断できるような、非対称暗号システムまたは公開暗号システムを用いた電子文書または電子データメッセージの変換からなる電子署名」と定義されています。

    2. 電子署名による契約の有効性

電子署名による契約は、電子文書として、電子商取引法のもとで法的に有効とされています。また、電子文書は、書面により作成された文書と機能的に同等であるとされています(RCBC Bankard Services Corp. v. Oracion, Jr., G.R. No. 223274, 19 June 2019)。

電子署名による契約が有効であることを証明するためには、以下の手段が考えられます。また、電子証拠法に関する規則に基づき、陳述書を提出する必要があるとされています(電子証拠規則第9条1項)。

(a)当事者が使用し、検証した電子署名に関する証拠を提出すること(同規則第6条第2項)。

(b)その他法律で定められた証拠を提出すること(同規則第2条[b])

(c)電子署名の真正性を立証するその他の証拠を提出すること(第2条[c])

 

8.ベトナム

(1) 電子署名の法的位置付け

 紙媒体を使用しない電子的な取引について、ベトナム民法には、「電子取引に関する法令の規定に基づくデータ通信の形式による電子的手段を通じた民事取引は、文書による取引とみなされる」と規定されています。この規定を受けて、電子取引法や電子署名及び電子署名認証に関する政令が制定されており、その中で、電子署名に関する種々の要件(公開鍵方式を採用していること、当局からのライセンスを受けた認証局運営事業者が発行する電子署名についての電子証明書が発行されることなど)が定められています。

 したがって、例えば契約書を紙媒体を使用せずに電子的に作成した場合において、契約当事者双方が契約のデジタルデータに法令の要件を満たす電子署名を付したときは、有効な署名が付された契約書が作成されたものとみなされ、将来、仮にその契約に関する紛争が生じたとしても、裁判手続などにおいて契約の成立自体が否定されることはありませんし(もちろん、契約書の作成や署名の存否以外の要因により契約の効力が争われることはあり得ます。)、税務上も、有効な契約が存在することを前提として処理されます(したがって、その電子契約に基づいて法人の事業に関する支出がなされたのであれば、その支出は法人の損金として計上されることになります。)。

(2) 電子署名活用における課題

 このように、ベトナムにおいても、法令上は電子署名や電子取引に関する法制度が整備されていますが、有効な電子署名とされるためには、ライセンスを受けた認証局運営事業者との間で電子署名、電子証明書発行に関する契約を締結する必要があるため、電子署名は必ずしも広く普及しているとは言い難い状況です。また、法令の要件を満たす電子署名を付さずに作成された電子的な契約書(印刷した契約書に署名押印し、これをスキャナで読み取ってPDF化しただけのものや、契約書データの署名押印欄に画像化した署名押印を貼り付けただけのものなど)の法的な位置付けについては曖昧な状況であり、裁判手続などで契約書が存在しないものとして契約の成立自体が否定される可能性もないわけではなく、また、税務上も、上記のような法人の損金算入が認められるかどうかについても明確ではありません。

 したがって、ベトナムでは、多くの取引において、契約書に関してはまだまだ紙で作成される場合が圧倒的に多いという状況です。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年8月26日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 7月28日、全国で114人の死亡、23万3094人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 日本入国時の検疫措置について

 厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。なお、出国前72時間以内の陰性証明書は、滞在していた国・地域にかかわらず全員が提出必要です。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(アルバニア、シエラレオネ)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は7日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

 タイのCOVID-19の累計感染者数は4,579,421名です。この内、4,524,592名が回復し、累計死亡者数は31,227名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は2,000人程度で推移しており、減少傾向にあります。

2.2 入国規制

 7月1日より以下のとおり入国規制が緩和されました。

・入国申請システム「Thailand Pass」廃止

・COVID-19の治療費等を含む医療保険への加入不要

ただし、入国時に、ワクチン接種証明書または渡航前72時間以内に受検した陰性証明書の提示は引き続き必要です。

2.3 日本入国規制

 5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

 タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

 ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 7月25日の新規感染者数は、3,300人でした。直近7日間(19日~25日)の平均は4,127人であり先月に比べ増加傾向にあります。もっとも、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。現在は、屋内や公共交通機関等でのマスクの着用義務や店舗入店時のMySejahteraアプリ(マレーシア政府開発の新型コロナウイルス対策アプリ)の提示、ソーシャルディスタンスの要請などに留まります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報やワクチン接種状況等の必要事項を入力しておくことが必要となります。ワクチン接種完了者には、同アプリ上でデジタルトラベラーズカード(青)が発行され、ワクチン接種未完了者には、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行されます。デジタルトラベラーズカード(青)が発行された場合(ワクチン接種完了者)は、渡航前の陰性証明の取得及び入国後の隔離が不要となりますが、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行された場合は、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要となります。なお、ワクチン接種完了者に加えて、17歳以下の者、COVID-19に感染し回復から6~60日以内の者は、渡航前の陰性証明書の取得及び渡航後の入国時検査が不要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

  COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。入国後の隔離措置について、6月17日より空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)が不要となり、指定の施設等での隔離は不要なりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

7月もCOVID-19新規感染者数は増加の傾向を見せ、7月13日には新規感染者数が37,346 人を記録しました。連邦政府による新たな規制はありませんが、施設内の収容人数制限などを再開した州も見られます。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が増加しておりましたが、現在は落ち着いており、7月28日、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は5名、陽性者は626名で、陽性率は6.83%となりました。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)が、5月17日から全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計376万488人で、死者数は累計60,694人です(2022年7月27日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約1500~3000人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

  ベトナムにおける2022年7月26日午前9時の時点での累計感染者数は1076万8844人で、1か月前の6月25日の時点より2万5953人増加しました。今年3月末から4月末の1か月間では100万人以上増加していたことに比べると、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しており、6月に入ってからは、多くの日で1000人を下回っていますが、7月下旬からはやや増加傾向にあります(7月26日の新規感染者数は1460人でした。)。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。日常生活におけるマスクの着用は一応推奨されており、多くの市民は、商業施設や商店などではマスクを着用していますが、着用していない者も少しずつですが増えているように思われます。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

8.3 ベトナムから日本への帰国者・入国者に対する規制

 日本では、7月26日現在、国籍を問わず外国からの入国者に対する水際対策措置が実施されており、ベトナムは「黄」区分に指定されています。したがって、ワクチン3回目接種者については、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機も不要となっています。ワクチン3回目接種者でない場合は、入国時検査を実施した上で、原則、7日間の自宅等待機を求めることとし、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めないこととされていいます。

第2.各国の監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限

1.日本

 監査役は、一般的には「取締役の職務の執行を監査する業務監査」の権限を有します(会社法381条1項(以下、「会社法」省略します))が、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。監査役の設置義務や、監査権限の範囲などは、会社の形態によって異なる定めがおかれています。

  1. 監査役の設置義務

 取締役会設置会社及び会計監査人設置会社(それぞれ監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)では、監査役を置かなければならないとされています(327条2項本文、同条3項)。ただし、取締役会設置会社であっても、公開会社でない会計参与設置会社では、監査役を置く必要はありません(同条2項ただし書)。なお、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役は置くことができません(同条4項)。

  1. 監査役の選任及び解任

 監査役は、株主総会の普通決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数)で選任されます(329条1項、309条1項、341条)。ただし、解任の場合には、特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数)によらなければなりません(339条1項、309条2項7号)。

  1. 監査役の資格等

 監査役の資格等については取締役の規定が準用されており(335条1項)、以下に該当する場合は、監査役となることができません。

  1. 法人(331条1項1号)
  2. 会社法若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法に規定されている罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者(同項3号)
  3. (b)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)(同項4号)
  4. 成年被後見人が取締役に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合は、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない(331条の2、1項)
  5. 被保佐人が取締役に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない(同条2項)

 監査役の任期は、基本的に、選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終の定時株主総会の終結の時までですが(336条1項)、公開会社でない株式会社において、定款によって、その任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時まで伸長することができます(同条2項)。 

  1. 監査役の権限

 監査役は、取締役の職務の執行を監査することにあります(381条1項)。ただし、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。また、監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができ(381条2項)、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条3項)。

 取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます(385条1項)。

 その他、会計監査人が、職務上の義務に違反し又は職務を怠ったときや会計監査人としてふさわしくない非行があったとき、心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないときは、当該会計監査人を解任することができます(340条1項)。

  1. 監査役の義務

 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社の場合は、取締役会)に報告しなければなりません(382条)。また、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません(383条1項)。さらに、監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならず、この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければなりません(384条)。

 

2.タイ

(1) 業務監査を行う機関

 タイでは、日本の監査役のように業務監査を行う機関はありません。取締役の任免は株主総会においてなされることとされており(民商法典1151条)、株主が業務監査の機能を果たしています。

 一方で、上場会社では、独立取締役3人以上から構成される監査委員会の設置が必要です(Notification of the Capital Market Supervisory Board No. Tor Jor. 39/2559 17条3号)。

(2) 会計監査を行う機関(監査人)の設置条件、資格および権限

 タイでは、全ての会社が監査人(Auditor)を設置しなければならず、創立総会において、最初の監査人の選任をすることが定められています(民商法典1108条6号、公開会社法35条7号)。監査人は、定時株主総会において選任され、再任することができます(同法1209条、公開会社法120条)。

 会社との間に利害関係を有する者、取締役、従業員などは、監査人になることができません(民商法典1208条、公開会社法121条)。また、監査人は、原則として、タイ国公認会計士でなければなりません(会計法11条)。

 監査人は、いつでも会社の帳簿を閲覧する権利を有します(民商法典1213条、公開会社法126条)。また、会社の帳簿などの閲覧について、監査人は、会社の取締役、従業員、代理人などに対して質問し、関連する証拠書類の提出を求める権利を有します(民商法典1213条、公開会社法122条)。

 非公開会社では、監査人により作成された財務諸表は、その基準日の4か月以内に株主総会において承認を受ける必要があります(民商法典1197条)。

公開会社では、監査人は、会計監査法に基づいて作成した報告書を定時株主総会に提出する必要があります(公開会社法123条)。また、監査人により作成された財務諸表は、年度末日後4か月以内に開催する定時株主総会において承認を受ける必要があります(同法112条1項)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおいては、日本の監査役のように業務監査を行う監査役は会社法上存在しません。マレーシア会社法(Companies Act 2016)では、会計面での監査を行う監査人を規定しています。

(1) 監査人の選任

 マレーシアでは、原則として全ての会社は最低1名の監査人を選任し、会社の会計を監査させなければなりません。

 会社は、各会計年度に監査人を選任しなければならず(会社法267条1項及び271条1項)、株主総会普通決議により選任されます(会社法267条4項及び271条4項)。新しく設立された会社の場合は、公開会社であれば年次株主総会の前に(会社法271条2項)、非公開会社であれば最初の財務諸表を会社登記官に提出する30日前に(会社法267条3項)、取締役が監査人を選任する必要があります。

(2) 監査人の権限・義務

 コモンロー上、監査人は、能力及び注意力のある監査人が用いると考えられる技量及び注意を用いなければならならないとされます。また、会社法上も監査人は会社に対して以下の義務を負っています。

 監査人は、決算報告書及び会社の会計及び決算報告書に関する記録について株主に報告しなければなりません(会社法266条1項)。公開会社の場合、監査済会計書類は、年次株主総会で審議される必要があり、非公開会社の場合は、会計済監査書類は株主に回付されるか、又は株主総会で審議される必要があります(同項)。

 なお、会社法266条7項により、監査人は自己が関係する議案について、株主総会に出席して発言する権利を有しています。

 また、会社法285条1項は、公開会社の監査人に対して年次総会に出席する義務を課しています。監査人は、総会において、会計書類について株主の質疑に応答する必要があります(同項)。非公開会社については、年次総会は開催されませんが、株主総会において会計書類の監査に関する審議がされる場合、監査人は出席する義務を負います(会社法285条2項)。

(3) 監査人事務所

 会社法264条4項に基づき、会社は事務所(firm)を監査人として選任することが認められています。事務所を監査人とする場合、選任時に当該事務所のパートナーだった者を監査人に選任したのと同等の効果を有します(会社法264条6項)。したがって、事務所のパートナー全員が監査人として承認され、かつ、欠格事由に該当しないことが必要となります。

 また、会社はLLP(Limited Liability Partnership)を監査人として選任することも可能です(同条7項)。

 

4.ミャンマー

(1) 監査役の有無

 ミャンマーにおいては日本の監査役のように業務監査を行う監査役は会社法上存在せず、会計面での監査を行う監査人(auditor)が規定されています。

(2) 監査人の設置条件、資格および権限

 会社は、株主総会において次年度の株主総会まで任期を務める監査人を選任しなければならず、監査人は必要的機関です。なお、監査人は、清算に関する会社法235条、236条及び237条の場合を除き、役員には含まれません。

公開会社(公開会社の子会社である非公開会社を含む)の場合は、大統領により会社の監査人として行為する証明書を交付された者でなければならないものの、非公開会社の場合にはかかる制限規定は存在しません。

 また、以下の者は監査人に就任できません。

【監査人非適格者】

1 当該会社の取締役又は役員
2 当該会社の取締役又は役員の配偶者
3 公開会社(公開会社の子会社を含む)の場合、上記取締役又は役員により雇用されている者
4 当該会社の債務者

(3) 監査人選任手続

定時株主総会において監査人を選任します。選任方法としては、株主は、会社に対し、定時株主総会開催日の14日前までに監査人の職に任命する候補者を通知します。会社は、退任する監査人に当該通知の写しを送付し、かつ、公告又は附属定款で規定するその他の方法により、定時株主総会の7日前までに株主に通知します。

会社設立後最初の株主総会までの期間を任期とする監査人は取締役が任命することができます。 また、監査人の補充の必要が生じた場合、取締役は監査人を補充できます。

 

5.メキシコ

本稿では、商事会社一般法(Ley General Sociedades Mercantiles)に定める監査機関を解説します。

(1) 監査を行う機関

メキシコには、日本の監査役に相当する取締役の職務執行の監査を担う機関として、監査役(Comisario)という機関が存在します。

一部、証券市場法(Ley de Mercado de Valores)などに従い、一定の条件を満たす機関設計を行った法人の場合、当該監査役とは異なる監査機関の設置が求められますが、本稿ではその詳細は割愛します。

(2) 監査役

① 設置が求められる会社形態

監査役は、株式会社(Sociedad Anónima)および株式合資会社(Sociedad en Comandita por Acciones)において設置が求められます。日本とは異なり、メキシコにおいては、取締役会が設置されなくても株式会社あるいは株式合資会社であれば監査役の設置が求められます。

② 監査役の資格

監査役には、公認会計士などの資格は要求されておらず、株主または第三者であってもよいとされています。ただし、次の者は監査役にはなれません。

  • 法律上、取引を行う資格がない者。

取引を行う資格がない者は、公的仲介人(Corredor Público:商取引において、鑑定人としての役割、法的助言を与える役割、紛争の仲介人としての役割および公証人としての役割を果たすメキシコ連邦政府から認可された法律の専門家)、更生していない破産者、偽造、横領、収賄、強要など財産に対する犯罪で有罪判決を受けた者と規定されています。

  • 当該会社の従業員、当該会社の株式の25%以上を保有する会社の従業員、または当該会社が50%以上の株式を保有する会社の従業員。
  • 取締役の直系血族、4親等以内の傍系血族と2親等以内の姻族。

③ 監査役の権限および義務

監査役は、取締役の職務執行および会計の監査を行うために、以下のような権限および義務を有します。

  • 会社の業務の管理・遂行・執行を監督すること。
  • 株主が、監査役に対し、経営に不正があると思われる事実を書面で告発した場合、監査役は、株主総会への報告書にその旨を記載し、必要と思われる事項および議案を定めること。
  • 取締役の職務執行への保証を確保・維持し、不正があった場合には遅滞なく株主総会に報告すること。
  • 招集される取締役会のすべての会議に、発言権をもって出席すること。ただし、議決権は有しません。
  • 株主総会には、発言権をもって出席すること。ただし、議決権は有しません。
  • 取締役会および株主総会の議題に、適当と考える事項を加えること。
  • 取締役が招集しない場合その他適当と判断した場合には、株主総会を招集すること。
  • 業務の監視を行うために必要な業務、文書、記録その他の証拠の調査を行い、監査役の報告を行うことができるようにすること。
  • 取締役に対し、少なくとも財務状況の報告書と決算書を含む月次情報を要求すること。
  • 定時株主総会前に、以下の内容を含む監査役の報告を行うこと。
    1. 会社の特定の状況を考慮して、会社の会計および報告の方針および基準が適切かつ十分であるかどうかについての監査役の意見。
    2. 取締役が提示した情報の中で、それらの方針や基準が一貫して適用されているかどうかについての監査役の意見。
    3. 上記の結果、取締役が提出した情報が、会社の財政状態および経営成績を如実かつ十分に反映しているかどうかについての監査役の意見。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュの会社法では、会計書類を調査する監査人(Auditor)の設置が義務づけられていますが、日本の会社法上の監査役のように、業務監査を行う機関は定められていません。会社法にて規定されている会社秘書役(Company Secretary)の主な役割や責任のひとつに「会社のコンプライアンスに関する対応」があり、Chartered Secretaries Act 2010に基づき設立されたInstitute of Chartered Secretaries of Bangladesh (ICSB)が発行している「BANGLADESH SECRETARIAL STANDARD(BSS)」にて、会社秘書役によって会社が遵守すべき事項が定められております。コンプライアンスという観点で、会社が任意に会社秘書役を選任することができます。なお、公開会社では、会社秘書役の選任が必要とされています。

  1. 監査人の適格要件

 監査人は、バングラデシュ公認会計士法(Bangladesh Chartered Accountants Order, 1973)における公認会計士またはパートナー全員が公認会計士である会計事務所のいずれかであることが要件となっています(会社法212条(1)(以下、本項において会社法については条文番号のみを記すものとします))。また、当該会社の役員又は従業員、当該会社の役員又は従業員のパートナーもしくは雇用関係にある者、当該会社に債務がある者若しくは当該会社に対する第三者の債務を保証している者、当該会社のマネージングエージェントである法人の取締役や株主である者等は、監査人に就任することができません(同条(2))。

     2. 監査人の選任と報酬

 会社は、株主総会にて、次の株主総会までが任期となる1人または複数の監査人を選任し、選任から7日以内に、選任した監査人にその旨を通知しなければなりません。なお、選任のためには、本人が事前に書面で同意する必要があります(210条(1))。選任された監査人は、選任の通知を受けた日から30日以内に、商業登記所に対して書面にて諾否について通知しなければなりません(同条(2))。なお、株主総会にて監査人が選任されない場合、政府が任命することができます(同条(4))。

会社の最初の監査人は会社の登記の日から1か月以内に取締役会により任命され、任命された監査人の任期は、最初の定時株主総会の終結時までとされています(同条(6))。取締役会は、監査人に欠員が生じた場合、当該欠員を補充することができますが、欠員が続く場合、残存する監査人が務めることができ(同条(7))、任期は次の定時株主総会までとなります(同条(8))。任期中の解任は、株主総会の特別決議によってのみ行うことができます(同条(9))。

株主総会にて任期が終了する監査人は、次に該当する場合を除き、再任されなければならないとされています。① 再任の不適格事由に該当することとなった場合、② 監査人本人による再任を受諾しない旨の書面による通知、③ 他の者を任命する決議又は現在の監査人を再任しない旨を明示的に示した決議がなされたこと。また、会社は、監査人の死亡、能力欠如、不正等を理由に再任しないことを決議することができます(同条(3))。

株主総会にて、現任の監査人以外の者を任命するまたは現任の監査人を再任しない決議のためには、特別な通知が必要で(211条(1))、当該通知を受けた監査人は、株主に対して意見を表明することを要求できます。会社は、当該要求を受けた場合は、期限を過ぎたものでない限り、株主総会の招集通知において、意見がなされた旨およびその内容を記載しなければなりません(同条(3))。

監査人の報酬は、原則として株主総会の決議又は株主総会で決定された方法により決定されますが、監査人が取締役会又は政府により任命された場合は、それぞれ取締役会又は政府により決定されます(210条(10))。

      3. 監査人の権限および責務

 会社の監査人は、会社の財務諸表、帳簿及び帳票をいつでも閲覧できる権利を有し、また、会社の役員に対して、監査人の職務遂行のために必要な情報及び説明を求める権利を有します(213条(1))。監査人は会社が作成する決算書や会計帳簿などの監査を行い、監査報告書を作成し、貸借対照表や損益計算書とともに、株主総会に提出し、決算書について監査人としての適正な意見を表明しなければなりません(同条(3))。 

 

7.フィリピン

  1. 財務役(Treasurer)制度

フィリピンでは、株式会社は、役員として、社長、財務役及び秘書役を選任する必要があります。社長は、財務役を兼任することはできませんが、財務役は、取締役である必要はありません。財務役は、国籍及びフィリピン国内居住の有無を問わず就任することができます。

財務役は、財務報告書類の正確性を確認し、署名・提出する義務や、会社預金の管理、会計帳簿の保管する職務を担いますが、それを監査をする権限及び義務を負いません。

      2. 財務諸表の監査制度

フィリピンでは、事業年度の終了日から120日以内に、監査済財務諸表をSECに提出する必要があります。かかる監査は、監査役等のような会社内部の役員によってなされるのではなく、原則独立した外部の資格のある公認会計士によってされる必要があり、株主総会による承認を得る必要があります。

 

8.ベトナム

(1) 有限責任会社の監査役

 日系企業がベトナム設立する現地法人の多くは1人社員有限責任会社又は2人以上社員有限責任会社ですが、いずれの形式であっても監査役を設置する義務はありません(2020年に企業法が改正される前は、社員が11名以上の有限責任会社については監査役・監査役会の設置が義務付けられていましたが、改正により撤廃されました。)。

 但し、国営企業が会社所有者である1名有限責任会社、国家が定款資本若しくは議決権の50%を超えて有する2名以上社員有限責任会社、又は国営企業の子会社である2名以上社員有限責任会社については、監査役・監査役会の設置が義務付けられています。

(2) 株式会社の監査役

 株式会社の場合、株主数が11名未満であり、かつ、各株主の保有株式数が会社の株式総数の50%未満である場合、監査役・監査役会の設置は任意とされています。その他の場合、監査役を選任して監査役会を設置するか、取締役の20%以上を独立取締役(会社と一定の関係を有しない取締役)とし、かつ、取締役会に直属する会計監査委員会を設置しなければならないとされています。

 監査役会を設置する場合、監査役の人数は3名から5名とし、任期は5年を超えない範囲とされています(再任は可能)。また、監査役会の過半数はベトナムに常駐している監査役でなければならず、監査役会の長は、経済、財政、会計、監査、法律、企業管理の専門又は企業の経営活動と関連する専門の中の1つに属する大学以上を卒業していなければならないとされています。

 一方、会計監査委員会を設置する場合、構成員は2名以上とし、会計監査委員会の会長は独立取締役(一定の要件を満たし、就任前に会社と密接な関係を有していない取締役)でなければならず、また、会長以外の構成員は、非常勤の取締役会の構成員でなければならないとされています。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年7月27日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合に限る)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 日本入国時の検疫措置について

 厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。なお、出国前72時間以内の陰性証明書は、滞在していた国・地域にかかわらず全員が提出必要です。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、
マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(パキスタンほか)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は7日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

 タイのCOVID-19の累計感染者数は4,515,890名です。この内、4,462,388名が回復し、累計死亡者数は30,610名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は2,000人程度で推移しており、減少傾向にあります。

2.2 入国規制

 6月1日より以下のとおり入国規制が緩和されました。

  1. ワクチン規定回数接種済の者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

  • 規定回数のワクチン接種を証明するワクチン接種証明書
  • COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ渡航前および入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

      2. ワクチン規定回数未了、ワクチン未接種者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

  • 渡航前72時間以内に実施したRT-PCR検査または専門機関による抗原検査 (Professional-ATK)による陰性証明書
  • COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

7月1日より、さらに入国規制が緩和されます。Thailand Passが撤廃され、COVID-19の治療費等を含む医療保険が不要となります。ただし、入国時に、ワクチン接種証明書または渡航前72時間以内に受検した陰性証明書の提示は引き続き必要です。

2.3 日本入国規制

 5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

 タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

 ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 6月26日の新規感染者数は、2,003人でした。直近7日間(20日~26日)の平均も2,293人であり先月に比べれば微増しており、保健省はさらなる増加に警戒を強めています。

 もっとも、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。現在は、屋内や公共交通機関等でのマスクの着用義務や店舗入店時のMySejahteraアプリ(マレーシア政府開発の新型コロナウイルス対策アプリ)の提示、ソーシャルディスタンスの要請などに留まります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報やワクチン接種状況等の必要事項を入力しておくことが必要となります。ワクチン接種完了者には、同アプリ上でデジタルトラベラーズカード(青)が発行され、ワクチン接種未完了者には、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行されます。デジタルトラベラーズカード(青)が発行された場合(ワクチン接種完了者)は、渡航前の陰性証明の取得及び入国後の隔離が不要となりますが、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行された場合は、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要となります。なお、ワクチン接種完了者に加えて、17歳以下の者、COVID-19に感染し回復から6~60日以内の者は、渡航前の陰性証明書の取得及び渡航後の入国時検査が不要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。入国後の隔離措置について、6月17日より空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)が不要となり、指定の施設等での隔離は不要なりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

6月に入りCOVID-19新規感染者数は増加の傾向を見せ、第5波の到来と注意が呼びかけられていますが、新たな規制はありません。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が増加しており、6月21日に20日ぶりにCOVID-19による死亡が報告されました。6月27日、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は2名、陽性者は2,101名で、陽性率は15.20%となりました。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)が、5月17日から全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計370万1743人で、死者数は累計60,518人です(2022年6月27日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約500~1000人程度の新規感染者が報告されています。

 また、5月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル1」とされています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

 日本においては、6月1日以降、以下のとおり新たな水際対策措置が実施されます。水際対策措置の見直しにより、「赤」・「黄」・「青」の区分が決定され、フィリピンは「青」に指定されることとなりました。したがいまして、フィリピン出国前72時間以内に受けた検査結果証明書を提出することにより、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機を求めないこととなります。ワクチン接種の有無は問いません。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年6月27日時点での累計感染者数は1074万3448人で、1か月前の5月27日の時点より2万8201人増加しました。3月末から4月末の1か月間では100万人以上増加していたことに比べると、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しており、6月に入ってからは、ほとんどの日で1000人を下回っています。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。日常生活におけるマスクの着用は一応推奨されており、多くの市民は、商業施設や商店などではマスクを着用していますが、着用していない者も少しずつですが増えているように思われます。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は2020年7月1日から撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

8.3 ベトナムから日本への帰国者・入国者に対する規制

 日本では、6月28日現在、国籍を問わず外国からの入国者に対する水際対策措置が実施されており、ベトナムは「黄」区分に指定されています。したがって、ワクチン3回目接種者については、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機も不要となっています。ワクチン3回目接種者でない場合は、入国時検査を実施した上で、原則、7日間の自宅等待機を求めることとし、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めないこととされていいます。

第2.各国のセクシュアル・ハラスメントに関する法規制の概要

1.日本

 「職場におけるセクシャルハラスメント」とは、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け(例:事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇すること)、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること(例:事務所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと)とされています(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針1条)。

(1) 事業主の講ずべき措置等(男女雇用機会均等法)

 男女雇用機会均等法11条では、職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等として、事業主は、i) 職場におけるセクシャルハラスメントに関し、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない(1項)、ii) 労働者がセクシャルハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、当該労働者に対して不利益な取扱いをしてはならない(2項)、iii) 他の事業主から当該事業主の講ずる措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない(3項)と規定しています。また、男女雇用機会均等法第11条の2では、職場におけるセクシャルハラスメントに関する事業主の責務として、i) 性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる措置に協力するように努めなければならない(2項)、ii) 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、性的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない(3項)と規定しています。

(2) 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)

 本指針では、男女雇用機会均等法11条に規定されている事業主が講ずべき措置について、具体的に示しています。

(a) 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発(同指針4条1項)

  1. 職場におけるセクシャルハラスメントの内容・セクシャルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
  2. セクシャルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

(b) 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(同指針4条2項)

  1. 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
  2. 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に、広く相談に対応すること

(c) 職場におけるセクシャルハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応(同指針4条3項)

  1. 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  2. 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
  3. 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
  4. 再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も同様)

(d) (a)から(c)までの措置を併せて講ずべき措置(同指針4条4項)

  1. 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
  2. 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること 

(3) セクシャルハラスメント被害の相談を受けたときの対処法

 上記(2)(c)にある通り、まず、事実関係の確認が必要です。被害者からだけではなく、行為者(加害者)や職場の同僚などから話を聞き、事実関係を正確に把握することが重要です。その際に、被害者や行為者のプライバシーが守られるようにしなければなりません。また、被害者の精神的ダメージが大きい場合などは、本人の希望を踏まえて、専門医への相談も考えられます。また、被害者が、相談したことを理由として不利益な扱いをされないようフォローすることも必要です。行為者に対する措置については、事実確認の結果に基づき、席の移動などの対応から、配置転換、重大なケースの場合は懲戒処分も考えられます。更に、再発防止に向けた措置の見直しや強化が求められます。

 

2.タイ

(1) 労働保護法による罰則

 タイでは、会社に対してセクシュアル・ハラスメントへの対策を講じる義務を定めた法律やガイドラインなどはありません。ただし、労働保護法(The Labour Protection Act)において、職場におけるセクシュアル・ハラスメントに関する規定があります。

タイでは、一定の地位を有する者に罰則を科す形で、職場におけるセクシュアル・ハラスメントを規制しています。同法第16条は、「雇用主、上司、管理者、または監督者は、従業員に対して性的虐待、ハラスメント、または迷惑行為を行うことを禁じる。」と規定しています。また、同法 第147条は、「第16条に違反した者は、2万バーツ以下の罰金に処する。」と規定しています。

(2) 刑法による罰則

セクシュアル・ハラスメントは、刑法上の処罰の対象となる場合もあります。刑法第397条により、セクシュアル・ハラスメントの可能性を示す態様で、他人に迷惑をかけたり、いじめたり、脅迫したり、恥辱、トラブルおよび迷惑により苦しませたりする行為をした者は、1年以下の懲役もしくは1万バーツ以下の罰金、またはその両方が科されます。また、司令官、雇用主その他優位な権限を有する者が、その権限を利用して前記行為を行った場合には、1年以下の懲役および1万バーツ以下の罰金の両方が科されます。

さらに、より重い態様であるわいせつ行為については、同法第278から279条に規定されています。15歳以上の者に対して暴行、脅迫等の手段を用いてわいせつな行為をした者は、10年以下の懲役もしくは20万バーツ以下の罰金またはその両方が科されます。その上、被害者の年齢、行為態様によって刑罰が加重されます。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおけるセクシュアル・ハラスメントに関する法規制は、雇用法(Employment Act 1955)によって規律されます。

(1) 定義

 雇用法は、「セクシュアル・ハラスメント」(以下「セクハラ」という)を、「言葉的か否か、視覚的か否か、身振り又は物理的接触のいずれかを問わず、勤務の過程にある 人物に向けられた、攻撃的若しくは屈辱的若しくはその人物の幸福を脅かす、その人物の望まない性的なふるまいをいう。」と定義しています(雇用法2条)。そして、セクハラの申立てには、①労働者から他の労働者に対して、②労働者から使用者に対して、③使用者から労働者に対するものの3類型が含まれます(雇用法81A条)。

(2) 使用者の義務等

 セクハラの申立てがあった場合、使用者又はこれに準ずる者は、大臣が定める方法によって当該申立てについて調査しなければならない(雇用法81B条)。

 調査の結果、セクハラの存在が証明されたと考えるときは、使用者は①セクハラを行なった者が労働者であるときは、予告期間を設けない解雇、降格又は解雇・降格よりも軽い処分(無給の自宅待機処分の場合にはその期間は2週間を超えてはならない。)のいずれかの懲戒処分を、②セクハラを行なった者が労働者以外の者である場合にはその人物が所属する適切な懲戒主体に処分を委ねるものとされています(雇用法81C条)。

(3) 被害者への救済

 使用者が調査を拒否した場合、申立てを行なった者は労働局長に対して申立てをすることができ、労働局長に対して申立てがなされた場合、労働局長は使用者に対し調査を命じることができます(雇用法81D条)。また、セクハラを行なった者が個人事業主たる使用者であった場合、労働局長は人的資源大臣が定める方法により自ら調査を行います(同条)。

 また、連邦裁判所は2016年にセクハラを理由とする損害賠償請求を肯定しているため、被害を受けた労働者は加害者に対し直接損害賠償を求める訴訟を起こすことにより救済を受けられる可能性があります。

(4) セクハラに関する掲示

 2022年改正雇用法(Employment (Amendment)Act 2022)により、使用者は、常時、セクハラ防止に関する啓発のための掲示物を就業場所の見やすい場所に掲示しなければなりません。

 

4.ミャンマー

(1) 法規制の有無

 ミャンマーにおいてはセクシュアル・ハラスメントに関して法令は存在しません。

(2) 一般法との関係

 セクシュアル・ハラスメントに関する規定はないものの、当該行為が不法行為に該当する場合には、コモンローに基づく損害賠償請求の対象となり得ます。また、使用者は労働者に対して健康で安全な職場環境を維持する義務を負うため、セクシュアル・ハラスメントを予防する環境整備が求められます。

 

5.メキシコ

(1) セクシュアル・ハラスメントの概念

メキシコの法令において、いわゆるセクシュアル・ハラスメントと呼ばれるものについて、hostigamiento sexual とacoso sexual という2つの概念が使用されています。

暴力のない生活に対する女性の権利に関する基本法(Ley General de Acceso de las Mujeres a una Vida Libre de Violencia)においては、hostigamiento sexualとは、職場や学校において、被害者が加害者に実質的に従属する関係のもと、権力が行使されることであり、淫らな意味合いを持つ性的な行為に関連する口頭や身体的な行為、またはその両方で表現されるものを指すとされています。他方、acoso sexualとは、被害者と加害者の間に従属関係はないものの、行使の回数を問わず、被害者が無防備で危険な状態に陥るような乱暴な権力行使が行われる暴力の一形態であるとされています。

連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)では、hostigamiento sexualの定義はないものの、ハラスメント(hostigamiento)が、仕事上の従属関係下における権力の行使であって、口頭や身体的な行為、またはその両方で表現されると定義されていることから、上記暴力のない生活に対する女性の権利に関する基本法とほぼ同義で使用されていると考えられます。ただし、行為の場所は職場に限定されます。acoso sexualについては、上記暴力のない生活に対する女性の権利に関する基本法と同様の定義がなされています。

以上から、hostigamiento sexualは加害者と被害者の間に上司と部下などの従属関係が求められる一方、acoso sexualにはそのような従属関係が求められません。なお、本稿では、hostigamiento sexual、acoso sexual、あるいは、その両方を指して「セクシュアル・ハラスメント」と記します。

(2) セクシュアル・ハラスメントに関する労働法上の権利義務関係

連邦労働法は、使用者らが、職場において、セクシュアル・ハラスメントを行うこと、セクシュアル・ハラスメントを許容することを禁止しています。また、労働者も、職場において、セクシュアル・ハラスメントを行うことが禁止されています。

労働者が職場において、セクシュアル・ハラスメントを行った場合、使用者は、当該労働者を、責任を負わずに解雇することができます。また、使用者らが、労働者らに対してセクシュアル・ハラスメントを行った場合、当該労働者は責任を負うことなく雇用関係を終了させることができます。

さらに、使用者は、性別に基づく差別を防止し、暴力やセクシュアル・ハラスメントの事例に対処するためのプロトコルを労働者との合意のもと策定し、実施することが求められています。これに関連し、労働社会福祉省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)は、「職場での暴力を防止、対応、根絶するためのモデルプロトコル(Modelo de Protocolo para prevenir, attender y erradicar la violencia laboral en los centros de trabajo)」を発行*しており、この中には、ハラスメント事例の対応手順やハラスメント発見のためのモデル質問票なども用意されています。企業は、このモデルプロトコルを参考にプロトコルを作成することが推奨されます。

* https://www.gob.mx/stps/documentos/modelo-de-protocolo-para-prevenir-atender-y-erradicar-la-violencia-laboral-en-los-centros-de-trabajo

(3) セクシュアル・ハラスメントと刑法上の犯罪

連邦刑法(Código Penal Federal)は、仕事、教育、家庭、その他従属を示す上下関係に乗じて、性別を問わず人に対して、淫らな目的で嫌がらせを繰り返した者は、UMA日額(2022年度は96.22ペソ)の800倍以下の罰金に処すると規定するものの、セクシュアル・ハラスメント(hostigamiento sexual)については、損失や損害が生じた場合にのみ処罰の対象とすると限定されています。

また、メキシコ市刑法(Código Penal para el Distrito Federal)は、自己若しくは第三者のために性的な好意を要求し、または性的な性質を有する行為で、受ける者にとって望まない性的な行為を行い、その者の尊厳を傷つける精神的・感情的な苦痛を与えた者は、1年以上3年以下の懲役に処すると規定しています。加害者と被害者の間に、仕事、教育、家庭、その他の従属関係から生じる上下関係がある場合には、この刑の3分の1が加重されます。

 

 

6.バングラデシュ

(1) セクシャルハラスメントの関連法令

 バングラデシュでは、セクシャルハラスメントについて規定する法令はありませんが、関連するものとして、以下が挙げられます。

法 令 規 定
刑法1860年第509条 「女性の謙虚さを侵害する」ことを目的とした行為、
言葉、態度を犯罪とし、1年以下の懲役及び罰金が科せられます
Nari-O-Shishu Nirjatan Daman Ain 2000
(女性及び子供の抑圧防止法)第10条
「Jounopiron」(一般に「性的抑圧」と訳される)
と呼ばれる行為を犯罪とし、女性又は子供(身体の一部又は対象物)
に触れる行為又は性的欲求を不法に満たすために女性の謙虚さを
侵害する行為を犯罪としています
バングラデシュ労働法2006年第332条 いかなる事業場のいかなる者も、雇用されている女性に対して、
下品又は無礼に見える可能性のある行為、その女性の謙虚さ又
は名誉を害する行為をしてはならないと規定しています。
しかし、この規定は、女性が職場で直面する嫌がらせや暴力に
ついて具体的に言及しておらず、罰則も25,000タカの罰金と限定的です

 その他、2009年に、高等裁判所は、大学のキャンパスや職場において女性に対するセクシャルハラスメントが蔓延していることに異議を唱えるバングラデシュ全国女性弁護士協会(BNWLA)による請願書を受け、職場及び教育機関におけるセクシャルハラスメントの禁止、防止及び是正に関する11ポイントの指令(以下「ガイドライン」)を発行しました(29 BLD HCD 415)。

(2) ガイドラインの概要

 セクシャルハラスメントに関する啓発を目的とし、バングラデシュ国内の全ての職場及び教育機関を対象として発行されました。憲法は男女平等を保障しており、使用者の義務として、性的虐待及びハラスメントの犯罪を防止又は阻止するために有効なメカニズムを維持し、セクシャルハラスメントの犯罪の訴追のための効果的な措置を提供しなければならないとしています。

 セクシャルハラスメントの定義には、性的な理由に基づく身体的接触、性的な意味合いをもつ言葉などによる表現、権限の濫用により性的な性質を伴う身体的関係を持つことを試みること、ストーカー行為、愛のプロポーズの拒否を理由として脅迫すること、脅迫によって性的関係をもつこと等、幅広い行為が含まれています。

 全ての使用者、職場の責任者、教育機関は、セクシャルハラスメントを防止するための効果的な対策を講じなければならないとされ、i) セクシャルハラスメント禁止の効果的な周知、ii) ジェンダー差別及びセクシャルハラスメントに対する憲法の規定及び罰則規定についての周知、iii) 職場や教育機関が女性に対して敵対的な環境でないことを保証し、女性の労働者や学生が男性の同僚や学生と比較して不利な立場に置かれていないという自信と信頼を生み出すこと、が定められています。

 また、セクシャルハラスメントに関する調査及び提言を行う5名以上で構成される苦情処理委員会を設置することとされています。同委員会の委員の過半数は女性で、適任者がいれば女性を委員長とするとしています。セクシャルハラスメントの被害者は、その事実が生じた日から30日以内に同委員会に訴えることができ、委員会は、苦情を受けてから原則として30日以内に、各組織の担当部署に調査報告書を提出しなければなりません。 

 

7.フィリピン

 職場におけるセクシャルハラスメントは、主に1995年反セクシャルハラスメント法によって規制されます。

反セクシャルハラスメント法では、被害者の行為への同意は重要ではなく、重要なのは、その行為が上司等権限や影響力のある立場の者によって行われたことである点には注意が必要です。被害者の同意があったからといって直ちに免責されません。

同法においてセクシャルハラスメントとされる行為には、以下のようなものがあります。

    1. 雇用の条件、または利益や特権の付与の前提条件となり得る性的要求、あるいは要求を拒否することで従業員や学生に悪影響を及ぼすような性的要求をすること
    2. 従業員に対して不快感、敵意または脅迫を感じる職場環境を作り出すような性的な行為

 加害者を教唆、誘導、幇助した者は、その行為を行った者と同等の責任を負い、被害者からハラスメントについて知らされていたにもかかわらず、直ちに改善等の対応をしなかった場合、雇用主も責任を負う点には注意が必要です。

 同法に基づくすべての行為は、1ヶ月から6ヶ月の禁固刑、または1万ペソから2万ペソの罰金、もしくはその両方で処罰されます。また、被害者は独自に損害賠償請求訴訟を起こすことができます。

なお、2019年Safe Spaces法が、より広く公共の場での性別に基づくセクシャルハラスメントを、加害者の意図に関係なく、「いかなる人に対しても望まれない性的な行為や発言」と定義し規制しています。これらは、職場においてなされる場合を含みます。

 Safe Spaces法のよる罰則は反セクシャルハラスメント法に基づくものと比較して一般に軽いものとされていますが、Safe Spaces法に規定されるセクシャルハラスメントは、加害者が、権限や影響力がある者である必要がなく、より広範で一般的な定義となっていることには注意が必要です。Safe Spaces法ではオンラインでのセクシャルハラスメントも明記されています。

 Safe Spaces法においても、雇用主は、性別を理由とするセクシャルハラスメント行為を行った場合の責任に加え、報告されたセクシャルハラスメントに対処しないことによる責任を負う可能性があります。

 

8.ベトナム

(1) 職場におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等の措置

 使用者は、職場におけるセクシュアル・ハラスメントの予防策及び対応策を策定しなければならないとされています(労働法6条2.d)。また、10人以上の従業員を使用する場合、就業規則を書面で作成し、かつ、各地方の労働局に登録しなければならないとされていますが(労働法118条1.、119条1.)、その就業規則の中で、「職場におけるセクシュアル・ハラスメントの予防・対応、職場におけるセクシュアル・ハラスメント行為の処分の手順、手続」について定めなければならないとされています(労働法118条2.d)。そして、使用者は、就業規則に違反してセクシュアル・ハラスメントを行った従業員を解雇することができます(労働法125条2.)。

 一方、セクシュアル・ハラスメントの被害を受けた従業員は、事前に通知することなく雇用契約を一方的に解除することが可能です(労働法35条2.d)。

(2) 職場におけるセクシュアル・ハラスメント行為に対する制裁

 職場でセクシュアル・ハラスメントを行った者については、政府より1500万〜3000万ベトナムドンの罰金が科されます。一方、家事代行業者(メイドサービス)や、家事代行業者を通すことなく直接メイドと契約して家事代行を依託している者がメイドに対してセクシュアル・ハラスメントを行った場合の罰金額は、5000万〜7500万ベトナムドンとなっています。

 なお、これらの制裁が科されるのは、セクシュアル・ハラスメント行為が刑事訴追の対象とはならなかった場合です。刑事訴追の対象となった場合、最高で5年間の懲役刑が科される可能性があります。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年6月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の新規入国制限の見直しについて

外国人の新規入国について、これまで下記(a)又は(b)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めていましたが、5月26日付で(c)が追加され、6月10日より開始されます。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合に限る)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(a) 入国後の自宅等待機期間の変更

  1. 検疫所の宿泊施設での待機対象となっている国・地域(以下「指定国・地域」)から帰国・入国する方で、COVID-19のワクチンを3回接種していない方は、指定の宿泊施設での3日間待機が求められます。宿泊施設で受けた検査の結果が陰性であれば、退所後の自宅等待機は求められません。
  2. 指定国・地域から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  3. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していない方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  4. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、入国後の自宅等待機を求められません。

厚生労働省HP 検疫所が確保する宿泊施設で待機を求める指定国・地域

     (2)入国後の公共交通機関の使用について

 上記(a) ii)及びiii)に該当する方は、入国後の待機のため自宅等まで移動する際は、公共交通機関の使用が可能となります。

厚生労働省 HP 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,434,515名です。この内、4,358,396名が回復し、累計死亡者数は29,913名となっています。現在、1日の感染者数の平均は5,000人程度で推移しており、減少傾向にあります。

2.2 タイ入国規制

 5月1日より、タイ入国規制が緩和されております。ただ、Thailand Passによる事前申請は継続となっています。内容は以下のとおりです。

・ワクチン規定回数接種済の者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

規定回数のワクチン接種を証明するワクチン接種証明書

COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ渡航前および入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

・ワクチン規定回数未了、未接種者で、渡航前72時間以内のRT-PCR検査結果陰性の者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

渡航前72時間以内に実施したRT-PCR検査陰性証明書

COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

・ワクチン規定回数未了、未接種者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

隔離施設予約書類(5日間以上)

タイ入国後のRT-PCR検査1回分の費用支払書類

COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

2.3 日本入国規制

5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 5月26日の新規感染者数は、1,845人でした。直近7日間(20日~26日)の平均も1,948人であり現在は落ち着いている印象です。新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限令であるNRP(National Recovery Plan(以前はFMCOと呼ばれていました))では、ケランタンとサラワクは第三段階の規制下にあり、この2つの州以外の全ての州は一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報等の必要事項を入力しておくことが必要となります。5月1日からは、18歳以上のワクチン接種完了者(2回以上)、17歳以下の者、COVID-19に感染し回復から6~60日以内の者は、渡航前の陰性証明書の取得及び渡航後の入国時検査が不要となりました。18歳以上のワクチン接種未完了者(健康上の理由で接種できない者を除く)は、陰性証明書の取得が必要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開される予定です。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。入国後の隔離措置について、5月1日より空港到着時に迅速抗原検査(RDT 検査)を行い、検査結果が出るまで 1 時間ほど空港内で待機し、陰性であれば即時入国が可能となり、指定の施設等での隔離は不要なりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

 4月26日にエンデミックが宣言され、多くの州でマスク着用などの要請が緩和されています。

5.2 入国規制

 メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が減少し、5月26日は、24時間以内の死者は0名で、陽性率は0.65%です。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)が、5月17日から全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計368万9865人で、死者数は累計60,455人です(2022年5月27日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約100~200人程度の新規感染者が報告されています。

 また、5月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル1」とされています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

 日本においては、6月1日以降、以下のとおり新たな水際対策措置が実施されます。水際対策措置の見直しにより、「赤」・「黄」・「青」の区分が決定され、フィリピンは「青」に指定されることとなりました。したがいまして、フィリピン出国前72時間以内に受けた検査結果証明書を提出することにより、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機を求めないこととなります。ワクチン接種の有無は問いません。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年5月28日時点での累計感染者数は1071万6361人で、1か月前の時点(4月28日)より7万7729人増加しました。3月末から4月末の1か月間では100万人以上増加していたことに比べると、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しており、5月に入ってからは、多い日で3000人程度、少ない日では1000人程度となっています。

 以前より死者数や重傷者数の増加が抑えられていたことに加え、新規感染者数も大幅に減少したことから、社会・経済活動、市民生活において新型コロナに関連する規制の多くが撤廃されています。最大都市ホーチミン市でも、少し前までは大規模なビルや商業施設の入口で検温や健康申告アプリの確認、 QRコードのスキャン などが実施されていましたが、現在ではそのような光景はほとんど見られません。

8.2 入国規制

 ベトナム政府は、2022年3月15日より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限を撤廃し、コロナ前の入国手続に戻しました。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は2020年7月1日から撤廃されています。

第2.各国における取締役に関する法規制の概要

1.日本

(1) 取締役の要件

(a) 人数

 株式会社は、1名又は2名以上の取締役を置かなければならないと規定されていますが(会社法326条1項(以下、本項において会社法については条文番号のみを記すものとします))、取締役会設置会社において、取締役は3名以上とする必要があります(331条5項)。さらに、取締役会において特別取締役による決議の定めを設ける場合は、6名以上(うち1名以上が社外取締役であること)とする必要があります(373条1号2号)。株式譲渡制限会社である非公開会社は、取締役会設置の義務がなく、取締役会不設置の場合、取締役の人数は1名以上となります。

(b) 国籍

 取締役の国籍について特に規定はありませんので、外国籍の方も代表取締役を含む取締役になることは可能です。

(c) 常駐等の規制

 代表取締役のうち少なくとも1名は日本に住所を有していなければならないという取扱いは廃止され、代表取締役を含む取締役の常駐の規制はありません。

(d) 資格の規制

 取締役の欠格事由として、以下の者が定められています(331条1項)。

  1. 法人
  2. 会社法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法に規定されている一定の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  3. 上記iii)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者は除かれます)

 その他、未成年であることは欠格事由とされていませんので、未成年者でも取締役になることができますが、会社との間で委任関係を結ぶことになりますので(330条)、法定代理人の同意が必要です(民法5条1項)。また、破産者も、取締役になることができますが、同じく、会社と取締役の関係は委任関係であるため(330条)、取締役が破産手続開始の決定を受けると当然に委任が終了し(民法653条2号)、すなわち取締役の地位にある者が破産手続開始の決定を受けると、取締役を自動的に退任することになります。破産した後も取締役に就くためには、再度、株主総会決議で選任されなければなりません。

 また、社外取締役については、平成26年の改正会社法において、より社外性が求められる要件が加わっておりますので、社外取締役の選任を検討される場合は、法令にて求められる要件の確認が必要です。

(2) 取締役の主な権限と義務

(a) 取締役の権限

 取締役は、取締役会を構成する一員としての役割を担います。取締役会は、取締役会設置会社の業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職に関する職務を行うと定められており(362条2項)、取締役会の構成員である取締役は、取締役会に出席し、議論に参加することによって、これらの職務を担う役割があると言えます。取締役会において意思決定しなければならない項目として、会社法は、i) 重要な財産の処分及び譲り受け、ii) 多額の借財、iii) 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任、iv) 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止等を定めています(362条4項)。

 取締役は単独で、取締役会を招集し(366条)、また、株主総会等の決議の取消しの訴え(831条)、会社の組織に関する行為の無効の訴え(828条1項)をする権限を有します。

(b) 会社との関係

 前述の通り、取締役は、株式会社とは委任の関係に立ち(330条)、会社に対し善良なる管理者の注意義務をもって委任事務を処理する義務を負い(民法644条)、法令及び定款並びに株式会社の決議を順守し、株式会社のために忠実に職務を遂行しなければなりません(355条)。

 また、取締役が自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとする場合(競業取引)や株式会社との間で取引をしようとする場合(利益相反直接取引)、株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において、株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとする場合(利益相反間接取引)には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項)。取締役会設置会社では、当該競業取引や利益相反取引についての承認は取締役会が行うことができます(365条1項)。

 取締役の責任は、従来、過失が無くても会社に損害を与えた場合には責任を問われる「無過失責任」でしたが、平成26年の改正会社法により、会社に損害を与えないように注意を尽くしたことが示されれば、賠償の義務を負わない「過失責任」に改められ、責任が緩和されました(120条4項、423条、462条2項、465条等)。

(3) 取締役の解任

 取締役は、いつでも、株主総会の決議による解任が可能です(339条1項)。株主総会での解任決議が否決された場合でも、一定の要件を満たす株主は、取締役の職務執行に不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実があるなどの解任理由がある場合、取締役の解任請求を提訴することが可能です(854条1項)。一方、株主総会にて、正しい手続きで解任した場合であっても、解任について正当な理由がない場合は、解任された取締役は会社に損害賠償を請求することができます(339条2項)。

 

2.タイ

(1) 取締役の要件

取締役の人数は、非公開会社では、1名以上であれば良く(民商法典1144条)、国籍や居住要件は設けられておりません。一方で、公開会社では、5名以上の取締役が必要とされ、うち半数以上がタイ国内に居住地を有している者でなければなりません(公開株式会社法67条)。また、取締役は、自然人でかつ以下の資格要件を満たす必要があります(同法68条)。

(a)権利能力者である

(b)破産者、制限行為能力者ではない

(c)財産犯に対する確定判決により懲役刑に処せられていない

(d)公務における汚職行為を理由として官公庁、政府機関から罷免された、または解任されたことがない

(2) 権限及び義務

取締役の権限は、定款等によって設定することができます(民商法典1144条)。

取締役は、善管注意義務、株主に資本金の払い込みを遂行させる義務、法律で定められた会計帳簿及び文書を作成・管理する義務、法律で定められた配当・利子を適正に分配する義務、株主総会決議を適正に執行する義務、競業避止義務(該当する業務を行う場合には、株主総会の承認が必要)を負うことが定められています(民商法典1168条)。

(3) 解任

非公開会社では、株主総会の普通決議によって取締役を解任することができます(同法1151条)。公開会社では、株主総会の特別決議(総会に出席し、かつ、議決権を有する株主の四分の三以上及び総株式数の半数以上)によって取締役を解任することができます(公開株式会社法76条)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおける取締役に関する法規制は、会社法(Companies Act 2016)によって規律されます。

(1) 取締役の法定員数について

 非公開会社の取締役の法定人数は最低1名(196条1項(a))、公開会社の取締役の法定人数は最低2名(196条1項(b))と規定されています。また、非公開会社及び公開会社の双方とも、法定された数の取締役は、主たる居所をマレーシアに置く、通常マレーシアに居住する者である必要があります(196条4項(b))。

 ただし、定款で法定人数以上の人数を最低人数として定めた場合は、定款で規定した数の取締役を選任する必要があります。

(2) 取締役の資格について

 取締役は、18歳以上の個人である必要があり(196条2項)、かつ以下の欠格事由に該当する者は、原則取締役に就任することができません(198条1項)。

  1. 破産して免責を受けていない者(同条(a))
  2. 会社の設立、組織、運営に関する法令違反により有罪判決を受けた者(同条(b))
  3. 賄賂、詐欺により有罪判決を受けた者(同条(c))
  4. 213条等の違反により有罪判決を受けた者(同条(d))
  5. 199条に基づき裁判所から欠格の宣告を受けた者(同条(e))

(3) 取締役の選任及び解任について

 取締役は株主総会の普通決議により選任します(202条2項、291条)。ただし、定款で定めた場合には、取締役会決議により選任することが可能となります(202条3項)。 

 取締役の退任については、公開会社と非公開会社で異なります。公開会社の場合、選任時期が早いものから順番に定期総会ごとに3分の1の取締役が退任することとなります(205条3項(b))。退任する取締役は、欠格事由に該当しない限り原則再任が可能です(205条5項)。非公開会社の場合、定款又は選任の条件において取締役の任期が規定されない場合、取締役は、以下の事由が生じるまで取締役の地位にとどまることができます(205条2項)。

  1. 欠格事由に該当した
  2. 辞任した
  3. 解任された
  4. 退任の書面決議がなされた

(4) 取締役の権限及び義務について 

 211条が取締役の権限について規定しています。

  1. 会社の事業及び業務は取締役会により又は取締役会の指示のもと運営される(同条1項)
  2. 取締役会は、この法律又は会社の定款に含まれる変更、例外又は制限を条件として、会社の事業及び業務の運営並びに指揮監督に必要な全ての権限を有する(同条2項)

 主要な取締役の義務は、213条から228条に規定されています。213条1項は「会社の取締役は、常に、本法律に従い、適切な目的のために、かつ会社の最善の利益のために誠実に行動しなければならない」と定めており、取締役が会社に対して負う主要な義務の一つを規定しています。

 上記の義務は以下の4つの要素で構成されています。

  1. 取締役の権限は、同法に従って行使されなければならない
  2. 取締役の権限は、誠実に行使されなければならない
  3. 取締役の権限は、適切な目的のために行使されなければならない
  4. 取締役の権限は、会社の最善の利益のために行使されなければならない

 

4.ミャンマー

(1) 取締役の要件

 取締役は1名以上いれば足りるものの、そのうち少なくとも1名はミャンマーに常駐している必要があります。常駐の定義は1年間のうち183日以上ミャンマーに居住していることです。国籍要件は存在しないため、ミャンマー国籍である必要はありません。また、取締役については以下の資格要件を満たす必要があります(会社法175条)。

  1. 定款により取締役の株式保有要件を規定している場合、取締役に指名されてから2か月以内又は定款により規定された短い期間内に株式を保有していること
  2. 18歳以上の自然人であること
  3. 健全な精神状態であること
  4. 本法又はその他の法により取締役として行動する資格を剥奪された期間中でないこと
  5. 債務弁済未了の破産者でないこと

(2) 権限及び義務

 取締役は、本法又は定款により株主によって行使されることが要求されている権限以外の会社の権限の全てを行使することができます(同法160条)。また、帳簿閲覧権を有しています(同法161条)。

 取締役は、善管注意義務、会社の最善のために誠実に行動する義務、地位の利用に関する義務、情報の利用に関する義務、法及び定款を順守する義務、無謀な取引を避ける義務、会社の義務に関する義務、一定の利害関係を開示する義務が規定されています(同法166条~172条)。

(3) 解任

 株主総会の普通決議により取締役を解任することができます(同法174条)。

 

5.メキシコ

(1) 取締役の要件

 株式会社(Sociedad de Anónima)においては、取締役は1名以上選任される必要があります。

 国籍要件や駐在要件といった制限はなく、取締役はメキシコ国籍を有する必要もなく、またメキシコに常駐する必要もありません。唯一、取引の資格を失った者は取締役になることができないとされており、公的仲介人(Corredor Público:商取引において、鑑定人としての役割、法的助言を与える役割、紛争の仲介人としての役割および公証人としての役割を果たすメキシコ連邦政府から認可された法律の専門家)、更生していない破産者、偽造、横領、収賄、強要など財産に対する犯罪で有罪判決を受けた者がこれに該当します。

(2) 権限及び義務

 取締役は、業務執行の権限および権限の範囲内での委任、執行役(Gerente)の選解任の権限、株主総会の招集の権限を有します。

 また、取締役は、定時株主総会に先立つ事業報告や計算書類の提出義務、法令や定款への順守義務、利益相反時に取締役会の審議および決議を棄権しなければならない義務、守秘義務(在任期間及び退任後1年間)、不正に関する監査役への告発義務を負います。さらに、取締役は、株主による出資の真正、株主へ支払われる配当金に関する法的要件および定款の遵守、会計・管理・登録・記録文書または情報のシステムの存在と維持の確認、株主総会決議事項の遵守について、責任を負います。

(3) 解任

 取締役の解任は、通常株主総会で決議することによって行うことができます。

 

 

6.バングラデシュ

(1) 取締役の要件

 全ての非公開会社(公開会社の子会社を除く)は、2名以上の取締役が必要で(会社法90条(2))、公開会社及び公開会社の子会社である非公開会社は、3名以上の取締役が必要です(同条(1))。また、1人株主会社(One Person Company (OPC))は、当該1名の株主が取締役となります(会社法392E条(1))。

 取締役は自然人でなければなりませんが(同条(3))、国籍や常駐の要件はありませんので、バングラデシュ国外に居住する外国人も取締役になることができます。

取締役の欠格理由は、以下の通りです(会社法94条(1))。

(a) 管轄裁判所より精神に障害があると認められた場合

(b) 復権していない破産者であること

(c) 破産者であると申立て中であること

(d) 保有している株が未払いで、支払い期日を6か月以上経過していること

(e) 未成年であること

 その他、会社が、付属定款にて取締役の欠格理由を定めることができます(同条(2))。

(2) 取締役の主な権限と義務

 会社の事業や運営は、取締役によって行われ、会社法の規定に基づき、その権限を行使することができるとされています。取締役に対する制限として、i) 売買・商品供給契約等の締結に関し、取締役会の承認を得た場合を除き、取締役は自らまたは自らがパートナー、株主または取締役である他の法人との間で、売買、商品および原材料の購入または供給契約を締結することはできません(会社法105条)。また、ii) 利益相反取引に関する情報開示として、会社が締結する契約に直接的または間接的に利害関係がある取締役は、当該契約が承認される際に、取締役会にて、その利害について開示しなければなりません(会社法130条(1))。

(3) 取締役の解任

 会社は、特殊決議(extraordinary resolution)にて、株を保有している取締役を任期満了前に解任することができ、普通決議で後任を任命することができます(会社法106条(1))。 

 

7.フィリピン

(1) 人数・資格・欠格事項

 改正会社法第23条は、取締役会の取締役の人数を15名以内と定めています。旧法における最低人数の規定は削除されました。取締役は、当法人の株式を少なくとも1株所有している必要があります。旧会社法における居住地規定が改正会社法では削除されたため、取締役の過半数あるいは全員が非居住者であっても問題ありません。取締役の国籍に関する制限もありません。ただし、1987年憲法、アンチ・ダミー法や外国投資法などの特別法、業界ごとの規制当局が定めた規則など、その他の関連規則や法律に従う必要があります。

(2) 権限の範囲

 取締役会は、会社のすべての業務を遂行し、財産を管理・保有する権限を有しており、株主の承認を特に必要とする場合を除き、原則として会社の主要な意思決定機関として機能します。また取締役会は、経営判断の枠内で会社役員を雇用・解雇したり、会社の役員、委員会、代理人にその権限の一部を委任する権限があります。

(3) 義務および禁止事項

 取締役は、(1)服従義務、(2)勤勉・注意義務、(3)忠誠義務の3つの義務に従わなければなりません。服従義務とは、取締役会が、実務上可能な限り、法律で定められた方法、手続の範囲内で行動すべきことを意味します。従って、会社のいかなる行為も、会社法または定款が認めている権限の範囲内で行われなければなりません。勤勉義務とは、取締役会が明白な違法行為に関与、あるいはそれに同意したり、承認したりすることを禁ずるものです。また、会社の業務を管理する上で、不誠実な行為や重大な過失を犯すことも認められません。忠実義務とは、取締役会のメンバーが会社の「特別な受託者」であるという考えを補強するものです。各取締役は、取締役としての義務と相反する個人的または金銭的な利益を得てはならず、自己のために取引することを禁じている事柄に関して、会社に不利な利益を得ようと試みたり、また実際に得たりしてはならないことを意味しています。この義務はまた、第三者から手数料や賄賂を受け取ることや、内部情報を利用して会社に不利益を及ぼすことも禁じています。ただし、利益相反取引に関しては3分の2を有する株主らによる承認がある場合はこの限りではありません。

(4) 選任・解任

 取締役を選出・解任する権限は株主総会にあります。

 

8.ベトナム

(1) 外資が設立する現地法人と業務執行機関

 ベトナムでは、外国人投資家、外国企業が現地法人を設立する場合に選択し得る会社の形態としては、①1人有限責任会社、②2人以上有限責任会社、③株式会社、④合名会社、⑤私営企業の5種類がありますが、これらのうち、外国投資家、外国企業がベトナム進出のために会社を設立する場合、①1人有限責任会社か②2人以上有限責任会社が通常選択されます。有限責任会社の場合、株式会社における取締役は設置されませんが、日常の業務を執行する機関として、社長及び法定代表者が任命されます。

(2) 有限責任会社の社長

 有限責任会社の社長は、社員総会又は会社の所有者(出資者)より任命された会長により任命されます。人数は1名のみで、国籍要件はありません。

 社長は、会社の日常的な経営活動を運営する者として社員総会で決議された事項を実施するほか、日常業務の処理、会社名義での契約締結、労働者の雇用などの権限、義務を有します。

 なお、1人有限会社の場合、社長の任期は最長5年とされています。

(3) 有限責任会社の法定代表者

 法定代表者は1名以上の個人であり、人数に制限はなく、国籍要件もありません。しかし、1名は必ずベトナム居住者でなければなりません。この居住者の要件については、一般的に、個人所得税法に定められている居住者に該当する要件である、1年に183日以上ベトナム国内に居住する者とされています。また、法定代表者が1名しかいない場合においてその者がベトナムから出国するときには、法定代表者の権限の行使及び義務の履行を他の個人に書面により委任しなければならないとされています。

 法定代表者は、会社の取引から発生する各権利を行使し、義務を履行する際、また仲裁手続や裁判手続において会社を代表します。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年5月27日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

飲食店やイベントの開催について、マスク着用や大声の禁止等、基本的な感染拡大防止策がとられています。また、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の新規入国制限の見直しについて

 外国人の新規入国について、受入責任者の管理のもと、観光目的以外の新規入国が認められています。

 厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(a) 入国後の自宅等待機期間の変更

  1. 検疫所の宿泊施設での待機対象となっている国・地域(以下「指定国・地域」)から帰国・入国する方で、COVID-19のワクチンを3回接種していない方は、指定の宿泊施設での3日間待機が求められます。宿泊施設で受けた検査の結果が陰性であれば、退所後の自宅等待機は求められません。
  2. 指定国・地域から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  3. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していない方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  4. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、入国後の自宅等待機を求められません。

厚生労働省HP 検疫所が確保する宿泊施設で待機を求める指定国・地域(4月6日付)

    (b)入国後の公共交通機関の使用について

 入国後24時間以内に自宅等待機のために自宅等まで移動する場合に限り、自宅等待機期間中であっても公共交通機関の使用が可能となります。

厚生労働省 HP 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,194,684名です。この内、3,999,541名が回復し、累計死亡者数は28,022名となっています。

タイ政府は、4月22日、COVID-19対策を適切に実施している認定店について、5月1日から酒類の提供を午前0時まで許可することを決定しました。

2.2 タイ入国規制

 4月22日のタイ政府の会議により、タイへの入国規制に関して、以下の点について緩和する方針であることが報じられています(Thailand Passは継続の方向)。ただし、現時点(4月26日)で正式に政府から発表がなされたわけではないため、今後の発表に注意する必要があります。

  • ワクチン規定回数接種者のタイ入国後のPCR検査について廃止し、ATK検査に変更する。初日の検査結果待ちのための隔離ホテルの予約は不要。
  • ワクチン規定回数未了、未接種者のホテル隔離は継続。タイ入国後4日目または5日目に、PCR検査の実施。ただし、タイ渡航前72時間以内のPCR検査の陰性証明があれば隔離措置免除。
  • 医療保険の保障額については、最低2万USドルから、最低1万USドルへと減額。

2.3 日本入国規制

タイから日本への入国時に必要とされていた、3日間の宿泊施設待機期間が解除されています。

有効なワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している場合、入国後の自宅等待機は求められておりません。ワクチンを3回接種していない場合、原則7日間の自宅等待機が求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合、その後の自宅等待機は求められておりません。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 4月24日の新規感染者数は、4,006人でした。直近7日間(18日~24日)の平均も6,007人であり現在は落ち着いている印象です。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限令であるNRP(National Recovery Plan(以前はFMCOと呼ばれていました))では、全ての州が一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 7歳以上の渡航者は、引き続き出発前2日以内にPCR検査(スワブ検体)を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。隔離期間は、ブースター接種済みを含むワクチン接種完了者及び健康上の理由でワクチン接種ができない者は、入国時検査が陰性であれば隔離は不要となります。ワクチン接種未完了者は入国日を1日目として5日目まで自宅隔離となります。また、17歳以下の者は、ワクチン接種の有無に関わらず、隔離は不要となります。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報等の必要事項を入力しておくことが必要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、通常の商業便による入国が再開されました。また、e-visa申請が4月1日から再開されました。ビザの取得に当たり、国営のミャンマー保険公社の保険への加入が必須になっています。また、ANAの日本からの直行便はなくなり、タイ経由の便に変更されます。ミャンマー航空が日本との直行便を飛ばすと発表されておりますが、現時点では予約はできない状態です。入国後の隔離措置は現在も続いており、隔離期間は頻繁に変更があることから、直前に確認する必要があります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

4月以降もメキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、全32州が緑の状態が続いています。連邦政府による新たな規制は見られません。引き続き、手洗い等の予防措置の継続が呼びかけられておりますが、マスクの着用などの要請を緩和する動きも見られます。

なお、4月26日、メキシコ政府は、メキシコにおけるCOVID-19の蔓延状況は新規感染者数が減少していることからエンデミックへ移行すること、5月以降COVID-19感染リスクを示す信号は更新されないこと、間もなく新しい安全衛生ガイドラインが公表されることを公表しました。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が減少し、4月25日時点で24時間以内のCOVID-19による死者は0名、新規陽性者は24名で、陽性率は0.41%となっています。

6.2 入国規制

 バングラデシュでは、WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することで入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は不要となっています。なお、3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、バングラデシュ入国が認められます。

 更に、4月20日、民間航空局(CAAB)は、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置を発表し、4月25日以降にバングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(http://healthdeclaration.dghs.gov.bd)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ、または印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります(http://caab.gov.bd/circul/AT%20Circular-FSR-02-2022%20(25APR22UFN))。

 バングラデシュへの渡航の際は、各航空会社や経由先が定める措置についても確認が必要です。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計368万4835人で、死者数は累計60,195人です(2022年4月26日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後急激に減少し、現在は1日約200人程度の新規感染者が報告されています。

 4月30日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル1」とされています。

7.2 入国規制

ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

また、4 月1日以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することが可能となっています。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

日本においては、3月1日以降、以下のとおり新たな水際対策措置が実施されています。なお、フィリピンについては「水際対策上特に対応すべき変異株に対する指定国・地域」からの指定が解除されています。

  1. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加未接種者について、原則7日間の自宅等待機を求めることとした上で、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めない。
  2. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加接種者について、入国後の自宅等待機を求めない。
  3. 入国後24時間以内に自宅等待機のために自宅等まで移動する場合に限り、自宅等待機期間中であっても公共交通機関の使用を可能とする。
  4. オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域を別途指定する場合には、当該国・地域からの帰国者・入国者については、自宅等待機等の期間を14日間とする。(※なお、現時点で、フィリピンは「オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域」には指定されていません。)
  5. 外国人の新規入国について、受入責任者の管理の下、観光目的以外の新規入国を認める。

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 2022年4月26日午前9時の時点におけるベトナムでの累計感染者数は1057万1772人で、1か月前の時点(3月29日)より約147万人増加しました。今年に入って一時は1日の新規感染者数が20万人〜40万人にも上ることもありましたが、徐々に減少し、ここ1週間ほどでは1万人前後で推移しています。

 ベトナム国内におけるコロナ対策による社会・経済規制の緩和はかなり進み、ホーチミン市内では、基本的にあらゆる経済活動が自由となっています。また少し前までは、大規模商業施設やオフィスビルなどの入口で検温が実施されたりコロナ対策のための健康申告アプリ”PC-COVID”の提示などを求められることも少なくありませんでしたが、そのような施設もかなり少なくなっています。

8.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限

 ベトナム政府は、2022年3月15日より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国人の入国制限を大幅に緩和し、これまで必要とされていた入国承認や入国許可の手続を撤廃しました。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます(コロナ規制が実施される前と同様です。)。また、入国後の隔離もありません。

 なお、ベトナム入国にあたっては、次のいずれかの方法で実施した検査の陰性証明書(英語又はベトナム語で記載された紙の証明書に限ります。)を取得して持参する必要がありますが、4月25日より、ホーチミン市のタンソンニャット国際空港では、入国者の陰性証明書の確認がされなくなりました。これは、入国者についはベトナム行きのフライトに搭乗する際に航空会社において陰性証明書の確認を受けていることから、重複する作業を削減するためであると説明されています。

 ・ RT-PCR法/RT-LAMPを使用する場合:日本出国前72時間以内に検査を実施

 ・ 迅速抗原検査を使用する場合:日本出国前24時間以内に検査実施

 一方、ワクチン接種の有無や接種回数は入国の条件とはなっておらず、実際、日本出国時及びベトナム入国時の両方において、ワクチン接種証明書の提示は求められません。

 また、ベトナムへの入国前24時間以内にオンラインで医療申告を行うことが義務付けられています。スマートフォンなどで指定されたアドレスにアクセスしてオンラインで健康状態等を申告し、最後に表示されるQRコードのスクリーンショットを保存して、ベトナムの空港での検疫の際に提示する必要があります。

(2) 航空機の運航状況

 2022年2月15日から、ベトナム発着の全ての定期便の運航制限が解除されましたが、各航空会社は実際の需要をみながら発着する空港や本数を増やしていっている状況であり、まだコロナ前の水準には戻っていません。したがって、ベトナムへ渡航される際は、最新の運行状況に注意する必要があります。

第2.各国における相続制度の概要

1.日本

 「相続」とは、個人が死亡した場合に、その者の有していた財産上の権利義務をその者の配偶者や子など一定の身分関係にある者に承継させる制度のことをいい、この場合、財産上の権利義務を承継される者のことを「被相続人」、これを承継する者のことを「相続人」といいます。相続については、民法にて定められています。

(1) 相続人の種類と順位

 相続人となり得る者は、被相続人のi) 子(民法第887条第1項)、ii) 直系尊属(父母、祖父母など)(民法第889条第1項第1号)、iii) 兄弟姉妹(民法第889条第1項第2号)並びにiv) 配偶者(法律上婚姻関係にある者で、内縁関係を含まない)(民法第890条)です。これらの者のうち、配偶者は、常に相続人となることができ(民法第890条)、被相続人の死亡よりも前に被相続人の子が死亡している場合など被相続人の子が相続権を失った場合、その者の子(被相続人の孫)が相続人(代襲相続人といいます)となります(民法第887条第2項)。直系尊属及び兄弟姉妹は、被相続人の子又は代襲相続人がいない場合に相続人となることができます(民法第889条第1項)。相続人の順位は、第一順位が子と配偶者、第二順位が直系尊属と配偶者、第三順位が兄弟姉妹と配偶者となります(民法第887条、889条、890条)。

(2) 相続欠格

 以下の相続秩序を侵害する非行(相続欠格事由)をした相続人の相続権は何らの手続を経ずに法律上当然にはく奪されます(民法第891条)。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

(3) 推定相続人の廃除

 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます(民法第892条)。この廃除は、相続欠格事由ほど重大な非行ではないが、被相続人からみて自己の財産を相続させるのが妥当でないと思われる非行が存在する場合に、被相続人の意思に基づいて当該相続人の相続資格をはく奪する制度です。

 なお、遺留分とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。被相続人は、自身の財産の行方を遺言により自由に定めることができますが、被相続人の遺族の生活の保障のために一定の制約があります。これが遺留分の制度です。

(4) 相続分の種類

① 法定相続分

 「法定相続分」は、被相続人が遺言で相続分を指定していない場合に、遺産分配の基準となるものであり、同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の通りです(民法第900条)。

相続人 法定相続分 留意事項
子と 配偶者 子 2分の1
配偶者 2分の1
子が数人あるときは、子の法定相続分を均分する。
直系尊属と配偶者 直系尊属 3分の1
配偶者 3分の2
同じ親等の直系尊属が数人あるときは、
直系尊属の法定相続分を均分する。
兄弟姉妹と配偶者 兄弟姉妹 4分の1
配偶者 4分の3
兄弟姉妹が数人あるときは、兄弟姉妹の法定相続分を均分する。
ただし、父母の一方を同じくする兄弟姉妹の相続分は、
父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

 

② 指定相続分

 相続人が複数いる場合、被相続人は遺言で共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができます(民法第902条)。

(5) 相続の承認と放棄

 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければなりませんが、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができます(民法第915条)。

1. 相続の承認

(a) 単純承認

 単純承認とは、債務を含めた相続財産の全てを受け入れることで、相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継します(民法第920条)。また、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときや、規定の期間内に相続の放棄又は限定承認をしなかったときは、単純承認をしたとみなされます(民法第921条)。

(b) 限定承認

 限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して行う相続の承認です(民法第922条)。限定承認は、相続の開始を知った日から3か月以内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければなりません(民法第915条及び924条)。なお、相続人が数人あると きは、共同相続人の全員が共同してのみ行うことができます(民法第923条)。

2. 相続の放棄

 相続の放棄とは、債務を含めた相続財産の全ての承継を拒否することをいいます。相続の放棄は、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に相続を放棄する旨の申述をして行います(民法第915条及び第938条)。基本的に、相続の放棄は撤回することはできません(民法第919条第1項)。

 

2.タイ

(1) タイ相続法の概要

 日本でいう民法に該当する規定であるタイ民商法典(Civil and Commercial Code、以下「民商法典」)において、相続についての定めがなされています。相続に関する制度の大枠自体はタイも日本と同様となっています。ただ、法定相続人の定め方やその相続分、僧侶の相続に関する規定がある点などは日本と異なります。

相続財産は、遺言がある場合には遺言の定めに基づき相続が行われ、遺言がない場合には法律の定めに基づき相続が行われます(民商法典第1603条)。遺言があっても、その相続財産全部に対しての遺言がされていない場合や遺言が無効である場合には、遺言の及ばない部分については民商法典の定めに基づく相続が行われることになります(同法第1620条)。

(2) 法定相続順位について

 民商法典の定めに基づき相続が行われる場合、法定されている相続人となる者(法定相続人)及びその相続順位は、以下の通りとなります(同法第1629条、第1635条)。

第1順位 被相続人(死亡した本人)の直系卑属(子)

第2順位 被相続人の父母

第3順位 被相続人と父母を同じくする兄弟姉妹

第4順位 被相続人と父母の一方を同じくする兄弟姉妹

第5順位 被相続人の祖父母

第6順位 被相続人の叔父(伯父)、叔母(伯母)

この第1順位を優先し第6順位までの順番で、各法定相続人が相続する権利を有することとなります。基本的には、後順位の者は前順位の者が相続する場合には、相続できなくなります。もっとも、被相続人の父母に関してはこの例外として、他の法定相続人が相続する場合でも、常に子と同じ順位で相続するものとされています(同法第1630条)。

また配偶者がいる場合には、配偶者も相続人となります。配偶者の法定相続分は、同時に相続する他の法定相続人の種類により異なる相続分となっています(同法第1635条)。例えば、子が相続人となる場合には、子と同順位として同じ割合で相続し、他の相続人が第5順位の祖父母となる場合には、配偶者が3分の2の割合で相続することになります。

(3) 廃除及び相続放棄

  タイにおいても法定相続人について、被相続人となる者が生前に、法定相続人となる者を廃除することにより、相続させないとする制度が存在します(同法第1608条)。また、相続人による相続放棄の制度についても、タイにおいて規定されています(同法第1612条)。

(4) まとめ

 日本人がタイに居住し、タイに財産を有したまま遺言なく死亡した場合、この者の相続手続きをタイで進めるためには、上述の法定相続人の順位や分割の定めに従い、相続手続きを行うこととなります。

 また相続手続きを行うために、遺産管理人として相続財産の管理や具体的な分割手続きを行う者の選任を、裁判所にて行う必要があります。

 日本人のタイでの相続は、残された相続人がタイに居住していない場合、タイの国の慣習や言語に不慣れなことに加え、制度自体も把握できないことが想定されるため、あらかじめ遺言を作成しておくことや、必要な手続きについて親族間で確認しておくことが、将来の紛争や問題を生じさせないために有益であると思われます。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおける相続手続は、遺産分配法(Distribution Act 1958)によって規律されます。

(1) 相続に関する法の適用

 相続財産が動産の場合、被相続人が死亡時に居住していた国の法律により相続が行われ、相続財産が不動産の場合、被相続人が死亡した場所にかかわらず、遺産分配法の規定に従い相続が行われます(遺産分配法4条)。

 そして、遺産分配法6条では、ある者が遺言を残さずに死亡した場合、相続財産の管理費用等を支払った後は、この法律に従い相続財産が分配される旨規定しています。相続財産の一部について、遺言が残されている場合、遺言により遺贈されない相続財産については、遺産分配法が適用されます(遺産分配法8条)。

(2) 相続人の種類と法定相続分

 遺産分配法6条1項によれば、相続人の種類と法定相続分は以下の通りです。

相続人 親の相続分 配偶者の相続分 子の相続分
親のみ 財産全部
配偶者のみ 財産全部
子のみ 財産全部
親と配偶者 2分の1 2分の1
配偶者と子 3分の1 3分の2
親と子 3分の1 3分の2
親、配偶者及び子 4分の1 4分の1 2分の1

 被相続人が法に基づき複数の妻との婚姻が許可されていた場合、複数の妻は、一人の妻が得るべき持ち分を平等に分配することとなります(遺産分配法6条2項)。

 また、相続人の子が亡くなっている場合、その子孫が「子」に含まれます。「子」は嫡出子でなければならず、被相続人が法に基づき複数の妻との婚姻を許可されていた場合は、当該妻の子が含まれますが、養子縁組法(Adoption Act 1952)の規定に基づき養子縁組された子以外の子は含まれません(遺産分配法3条)。 

 

4.ミャンマー

ミャンマーの相続は、属する宗教によって異なる慣習法に従います。主に仏教徒、イスラム教徒、キリスト教徒で異なり、両方が同じ宗教か、それとも異なる宗教かでも異なります。また、いずれかの当事者が外国人の場合にはその場合にも取扱が変わることがあるため、実際のケースに即して専門家に相談される必要があります。特に、ミャンマーにおいては土地の所有が会社の名義ではなく個人の名義になっていることが多く、その場合には相続が生じた場合には誰が承継するのかを事前に確認することが望ましいです。

 

5.メキシコ

(1) 関連規定

メキシコの相続に関する規定は民法に定められています。連邦民法(Código Civil Federal)のほか、各州の民法にも相続の規定がありますが、ほぼ共通の内容と言われています。以下では、連邦民法の規定の内容をご紹介いたします。

(2) 法定相続

遺言がない場合、遺産分割協議により相続財産の分割を決定することができます。これがまとまらない場合には、法定相続分に応じて、遺産を相続することになります。

相続人となりうるのは、直系卑属(養子を含む。)、配偶者、直系尊属、4親等内の傍系血族および内縁の配偶者(ただし、被相続人死亡の前5年間同棲していたか、両者の間に子がいる場合に限ります。)です。

ただし、配偶者は、夫婦の財産全てについて財産分離制(separación de bienes)を採用していた場合には相続権はありません。メキシコにおける婚姻関係においては夫婦財産契約において、夫婦組合制(sociedad conyugal)または財産分離制(separación de bienes)を選択することとなります。全財産のうち一部のみを財産分離制とすることもでき、財産分離制を採らない財産は、夫婦がこれを共有することとなり、当該財産について配偶者に相続権が生じます。夫婦の財産全てについて財産分離制を採用しない場合には、全てが夫婦共有財産となり、配偶者に相続権が生じます。

また、上記相続人となりうる者のうち、世代により構成される順位の最も高い親族のみが相続人となるのが原則です。同順位の親族は、均等に相続をすることになります。順位については、第1順位が、子(養子を含む。)、配偶者、父母(養父母を含む)、第2順位が、祖父母、兄弟姉妹、孫、養子による兄弟姉妹、第3順位がおじ、おば、甥、姪、曾祖父母、ひ孫、第4順位は、いとこ、大おじ、大おばとなります。

たとえば、被相続人に配偶者(全ての財産について財産分離制を採用しなかった場合)と子2人がいる場合は、配偶者と子2人が相続人となり、法定相続分は3分の1ずつとなります。ただし、一部に財産分離制を採用している場合は、当該財産については子2人が相続し、当該財産以外の財産を配偶者と子2人で3分の1ずつ分割することとなります。また、第2順位となる被相続人の祖父が相続を受けるのは、第1順位にあたる子、配偶者、父母らがいない場合となります。

上記が法定相続に関する原則となりますが、いくつか例外が設けられています。

相続人となる者が配偶者(全ての財産について財産分離制を採用しなかった場合)と直系尊属の場合には、相続財産は2等分され、一方は配偶者に、他方は直系尊属に分割されます。たとえば、被相続人に、配偶者、父母がいた場合、法定相続分は配偶者が2分の1、父母が各4分の1となります。ただし、一部に財産分離制を採用している場合は、当該財産については父母が相続し、当該財産以外の財産を配偶者が2分の1、父母が4分の1ずつ取得することとなります。

また、相続人となる者が、配偶者(すべての財産について財産分離制を採用しなかった場合)と被相続人の兄弟姉妹の場合は、配偶者は相続財産の3分の2を、残りの3分の1は兄弟姉妹に割当てられ、兄弟姉妹間で均等に分割されることとなります。ただし、一部に財産分離制を採用している場合は、当該財産については兄弟姉妹が相続し、当該財産以外の財産を配偶者が3分の2、兄弟姉妹が3分の1を取得することとなります。

(3) 相続放棄・相続人の廃除

① 相続放棄

相続放棄は、明示的に、裁判官の面前で書面により、または、公証人の面前で公正証書により行われなければなりません。

相続人が相続を受け入れるか否かを表明することに利害関係を有する者は、相続の開始後9日以内に、裁判官に対し、相続人が相続を放棄するか表明するための1ヶ月を超えない期限を設けるよう請求することができ、この請求をしないときは、相続を受け入れたものとみなされます。日本と比べると熟慮期間は短く、相続放棄を検討する場合には早期に対応を行う必要があります。

また相続放棄は、いったん行われると取り消すことができず、詐欺または暴力によって行われた場合を除き、異議を申し立てることができません。

② 相続人の廃除等

相続人の廃除は、日本においては、被相続人の意思に基づいて推定相続人の相続権を失わせる制度ですが、メキシコにおいては、これに対応した制度はありません。ただし、相続の利害関係人からの請求により、次の事由に該当する者に対し、推定相続人の相続権を失わせることはできます。

  • 被相続人、その親、その子、その配偶者、その兄弟姉妹に死を与え、命じ、または与えようとした罪で有罪判決を受けた者。
  • 被相続人、その直系尊属、その直系卑属、その配偶者又はその兄弟姉妹に対して、死刑又は禁錮に当たる罪の告発をした者。ただし、告発者、その直系尊属、その直系卑属、その兄弟姉妹又はその配偶者の生命や名誉のために必要とした行為の場合は除く。
  • 裁判によって不貞相手とされた配偶者。
  • 不貞した配偶者の共犯者。
  • 被相続人、その子、その配偶者、その直系尊属またはその兄弟姉妹に対して行った禁錮刑に当たる罪を犯した者。
  • 子を遺棄する父親および母親。
  • 直系卑属を放棄し、売春させ、堕落させた直系尊属。
  • 親族で、扶養の義務を有するにもかかわらず、これを履行していない者。
  • 働くことができず、資力がない被相続人を迎えること、または福祉施設で保護させることに配慮しない親族。
  • 遺言を作成させ、作成させず、または撤回させるために、暴力や詐欺を行った者。
  • 刑法に基づき、幼児を隠蔽、取り換えまたは出産偽証する罪を犯した者。ただし、当該相続が幼児または当該行為によって損害を受けた者もしくは損害を受けようとした者に対応すべきものであった場合に限る。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュの相続は、属する宗教によって異なるルールや慣習に従います。1925年相続法(The Succession Act, 1925(以下、「相続法」という))にて遺言や相続の概要が規定されているものの、多くの規定はイスラム教徒には適用されず、当事者がイスラム教徒の場合、相続、結婚、持参金(ダウリー)、離婚、遺贈、後見人、寄進等については、イスラム法が適用されます。

(1) イスラム法による相続人

 イスラム教徒が死亡した場合、遺産からi) 埋葬および死亡費用、ii) 死亡の3か月前までのサービス、iii) 債務、iv) 遺言にかかる費用、v) 資産にかかる相続証明書の支払いの後に残ったものが、イスラム法の規定に従って相続人に分割されます。

 主たる相続人として、① Jabiul Furujと② Asbaganが挙げられます。① Jabiul Furujには、夫、父、祖父、義兄弟、妻、娘、息子の娘、母、父方の祖母、母方の祖母、姉妹、義姉妹(継母の娘)、義姉妹(継父の娘)が含まれ、このカテゴリのなかで、相続人の家族構成等の条件によって相続分の割合が決められています。② Asbaganには、i) 息子、娘、息子の息子、息子の娘、ii) 父、祖父、iii) 兄弟姉妹、義兄弟、甥、義兄弟(継母の息子)の息子、兄弟の息子、義兄弟(継母の息子)の息子の息子、iv) 叔父又は伯父、いとこ、いとこの息子などが含まれます。

(2) イスラム法における相続手続き

 Jabiul Furuj(上記)に含まれる相続人の間で、イスラム法に規定された割合で遺産を分割し、残りをAsbagan(上記)に含まれる相続人の間で、規定の割合で分割します。Asbaganに該当する相続人がいない場合は、夫及び妻を除くJabiul Furujの相続人の間で、再分割されます。

(3) 相続法

 無遺言相続及び遺言による相続について規定していますが、無遺言相続について、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、仏教徒、シーク教徒及びジャイナ教徒の財産には適用されません。更に、ゾロアスター教徒とゾロアスター教徒以外で異なる規定が定められています。遺言による相続は、ヒンドゥー教徒、仏教徒、シーク教徒及びジャイナ教徒による遺言、バングラデシュ国内の不動産資産に関してなされたバングラデシュ国外での遺言に対して適用されます。

 

 

7.フィリピン

(1) はじめに

 相続人は、遺言によって(遺言相続)、または法律によって(法定相続)、その範囲が確定します。遺言による相続人がいない場合、法律により、嫡出および非嫡出の区別を問わず故人の親族に相続権が生じます。法定相続については、民法第960条から第1014条が、法定相続人の扱いについて詳細に規定しています。

 相続では、被相続人に最も近い親族が、より遠い親族に優先されます。関係の近さを示す指標としては、日本と同じく「親等」の概念が採用されており、たとえば親等数が同じである親族は均等に相続できるとされます(一定の例外あり)。相続は、第一に直系卑属(子・孫など自分より後の世代で、直通する系統の親族)を対象とします。被相続人の子および子孫がいない場合、その父母およびその子孫が相続しますが、ここに傍系親族(兄弟、姉妹、叔父叔母、従兄弟、甥、姪など)は含まれません(985条)。直系の子孫、尊属、非嫡出子、生存配偶者がいない場合、傍系親族が相続します(1004条から1010条)。相続権を有する者がいない場合、裁判所規則の定めるところに従い、国が遺産の全部を相続します(1011条、1012条)。

(2) 相続の放棄

 相続人は、相続を放棄することができます。相続放棄は、公的文書で行うか、司法の承認を必要とする場合には、遺言・相続の手続きを管轄する裁判所に提出する請願書によって行わなければなりません(1051条、1057条)。進行中の遺言・相続に関する手続きにおいて相続を放棄するには、裁判所が遺産分割の命令を出してから30日以内に、相続人は裁判所に対して相続を承認するか放棄するかを意思表示しなければなりません。期間内に意思表示をしない場合、相続人は相続を承認したものとみなされます(1057条)。

 相続の放棄は、一旦成立すると取り消すことができません(1056条)。

 相続人が相続財産を放棄して債権者を害した場合、債権者は裁判所に対し、相続人の名で相続財産を承認することを許可するよう申し立てることができます。

 相続人が相続を承認または否認することなく死亡した場合、その権利は当該相続人の相続人に移転します(1053条)。

(3) 相続廃除について

 相続人の廃除(相続の資格が奪われること)は、法律上の廃除の原因を特定した上でなされる遺言によってのみ行うことができます。これらの原因の一部は次のとおりです。

  1. 相続人が遺言者、その配偶者、子孫、または尊属の生命を害する企てを行ったと認められたとき。
  2. 相続人が遺言者を6年以上の懲役が定められている罪で告発し、その告発に根拠がないことが判明したとき。
  3. 相続人が遺言者の配偶者と姦通または姦淫の罪を犯したとき。
  4. 詐欺、暴力、脅迫、不当な影響力によって相続人が遺言者に遺言を作成させたり、既に作成された遺言を変更させた場合。
  5. 遺言者の扶養を不当に拒否したとき。
  6. 相続人が遺言者への言動による虐待を行ったとき。
  7. 相続人が不名誉な生活を送っているとき。
  8. 相続人が民法上の権利剥奪を伴う罪を犯したとき。
  9. 相続人たる親が子を捨てたり、子に堕落した生活や不道徳な生活をさせたり、道徳に反することをしようとしたとき。
  10. 遺言者の親の一方が他方の親の生命に対して企てたとき。ただし、両者の間に和解が成立している場合はこの限りではない。
  11. 相続人たる配偶者が別離または親権喪失の原因を作ったとき。
 

8.ベトナム

(1) 被相続人が外国人である場合の準拠法

 ベトナム民法では、不動産に関する相続については当該不動産が所在する国の法律に従って処理され、その他の財産については、相続財産を残した者が死亡の直前に有していた国籍国の法律に従って処理されることになります。

(2) 法定相続

  1. 遺言書がない場合における法定相続人の順序は、次のとおりです。

 ・第1順位 被相続人の配偶者、実父母、養父母、実子、養子

 ・第2順位 被相続人の祖父母、兄弟姉妹、実孫

 ・第3順位 被相続人の曽祖父母、叔父叔母、実の甥姪、実の曾孫

 同じ順位内の相続人間の相続分は均等です。

  1. 被相続人の子が被相続人よりも先に死亡した場合又は同時に死亡した場合、被相続人の孫が相続人となります。被相続人の子及び孫が被相続人よりも先に死亡した場合又は同時に死亡した場合、曾孫が相続人となります。

(3) 債務の相続

 債務も相続の対象となりますが、相続人は、別段の合意がない限り、被相続人の遺産の範囲内で債務の履行義務を負うに過ぎません。遺産分割が実行された場合についても、各相続人は、別段の合意がない限り、分割により取得した遺産の範囲内で債務の相続義務を負うに過ぎません。したがって、別段の合意がない限り、遺産によって履行がなされない債務については消滅することになります。

(4) 相続放棄

 相続人は、自己の債務の履行を免れる目的である場合を除き、相続放棄をすることができます。日本法に基づく相続放棄は家庭裁判所に「相続放棄の申述」をしなければならず、また、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」という期間制限がありますが、ベトナム法の場合、自ら書面を作成すればよく、また、遺産分割が実行される前であればいつでも相続放棄をすることができます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: https://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年4月26日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

令和4年1月から実施されていたまん延防止等重点措置は、3月21日をもって全ての都道府県で終了しました。引き続き、基本的な感染拡大防止対策が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の新規入国制限の見直しについて

外国人の新規入国について、下記(a)又は(b)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(a) 入国後の自宅等待機期間の変更

  1. 検疫所の宿泊施設での待機対象となっている国・地域(以下「指定国・地域」)から帰国・入国する方で、COVID-19のワクチンを3回接種していない方は、指定の宿泊施設での3日間待機が求められます。宿泊施設で受けた検査の結果が陰性であれば、退所後の自宅等待機は求められません。
  2. 指定国・地域から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  3. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していない方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  4. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、入国後の自宅等待機を求められません。

厚生労働省HP 検疫所が確保する宿泊施設で待機を求める指定国・地域(3月30日付)

    (3)入国後の公共交通機関の使用について

 上記(a) ii)及びiii)に該当する方は、入国後の待機のため自宅等まで移動する際は、公共交通機関の使用が可能となります。

厚生労働省 HP 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は3,600,787名です。この内、3,331,370名が回復し、累計死亡者数は25,048名となっています。

2.2 タイ入国規制

 Test and Goのタイ入国後のPCR検査について、5日目の検査はATK検査を入国者自ら行うことが可能であり、5日目の隔離ホテル等の予約が不要となっています。

1日目:タイ到着後、政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。

     陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。

5日目:入国者自らATK検査。隔離ホテルの予約不要。

Thailand passの登録時に必要とされている医療保険の補償額については、最低2万USドルとなっています。

2.3 日本入国規制

現在、タイから日本への入国時に必要とされていた、3日間の宿泊施設待機期間が解除されています。

有効なワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している場合、入国後の自宅等待機は求められておりません。ワクチンを3回接種していない場合、原則7日間の自宅等待機が求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合、その後の自宅等待機は求められておりません。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 3月28日の新規感染者数は、14,467人でした。3月前半は感染者数が3万人を超えピークを迎えていましたが、現在は減少傾向にあります。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限令であるNRP(National Recovery Plan(以前はFMCOと呼ばれていました))では、全ての州が一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。

3.2 入国規制

 これまで、観光目的の入国はランカウイ等へのトラブルバブル制度を利用した入国に限られていましたが、4月1日以降は、観光目的も含めて入国が可能となる予定です。

 7歳以上の渡航者は、引き続き出発前2日以内にPCR検査(スワブ検体)を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。隔離期間については、ブースター接種済みを含むワクチン接種完了者及び健康上の理由でワクチン接種ができない者は、入国時検査が陰性であれば隔離不要となります。ワクチン接種未完了者は入国日を1日目として5日目まで自宅隔離となります。また、17歳以下の者は、ワクチン接種の有無に関わらず、隔離不要となります。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得(ワクチン接種完了者の場合)、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報等の必要事項を入力しておくことが必要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

3月は3日、31日にANA 便が飛びました。4月7日、4月21日、28日、5月12日に救援便が運航予定です。現状としてはミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。しかし、ついに国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除される旨が発表されました。また、e-visa申請が4月1日から再開される旨も発表されました。今後の運用がコロナ禍前に完全に戻るのかについて注目されます。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

3月以降もメキシコのCOVID-19新規感染者の増加は鈍化し、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月21日の週は、全32州が緑となりました。連邦政府による新たな規制は見られません。引き続き、手洗い等の予防措置の継続が呼びかけられておりますが、マスクの着用などの要請を緩和する動きも見られます。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が減少し、3月27日時点で3日連続COVID-19による死者が出ていません。COVID-19関連の規制は撤廃され、学校も再開されましたが、マスク着用は義務づけられています。

6.2 入国規制

 3月8日、民間航空局は、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置を発表し、WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされないこととなりました。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、バングラデシュ入国が認められます。なお、ワクチン接種の有無にかかわらず、バングラデシュ到着時に新型コロナの兆候が見られる渡航者については、政府指定病院/施設でPCR検査を受け、陽性の場合は、費用自己負担の上、政府指定施設又はホテルにおいて隔離されます。7日後に再度PCR検査を受け、陰性であった場合は、隔離を終えることができます。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計367万7616人で、死者数は累計59,038人です(2022年3月29日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約300~400人程度の新規感染者が報告されています。

 また、3月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル1」とされています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

 日本においては、3月1日以降、以下のとおり新たな水際対策措置が実施されています。なお、フィリピンについては「水際対策上特に対応すべき変異株に対する指定国・地域」からの指定が解除されています。

  1. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加未接種者について、原則7日間の自宅等待機を求めることとした上で、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めない。
  2. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加接種者について、入国後の自宅等待機を求めない。
  3. 入国後24時間以内に自宅等待機のために自宅等まで移動する場合に限り、自宅等待機期間中であっても公共交通機関の使用を可能とする。
  4. オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域を別途指定する場合には、当該国・地域からの帰国者・入国者については、自宅等待機等の期間を14日間とする。(※なお、現時点で、フィリピンは「オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域」には指定されていません。)
  5. 外国人の新規入国について、受入責任者の管理の下、観光目的以外の新規入国を認める。
 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 2022年3月29日午前9時の時点でにおけるベトナムでの累計感染者数は909万4849人で、1か月前の時点(2月28日)より約565万人増加しました。これは、旧正月(テト)休暇があけた2月上旬からオミクロン株の感染が急拡大したことが原因で、日によっては1日の新規感染者数が40万人を超えたこともありました。

 一方で、感染者数の増加に比べ重傷者数や死者数の増加が比較的抑えられていることから、昨年10月からの様々な分野における社会・経済規制の緩和は進められており、ホーチミン市では、3月22日の時点で、「レベル4」(超高リスク=レッドゾーン)及び「レベル3」(高リスク=オレンジゾーン)と評価される行政区がゼロとなり、市内では基本的にあらゆる経済活動が自由となっています。

8.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限

 ベトナム政府は、2022年3月15日より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国人の入国制限を大幅に緩和し、これまで必要とされていた入国承認や入国許可の手続を撤廃しました。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます(コロナ規制が実施される前と同様です。)。また、入国後の隔離もありません。

 但し、ベトナム入国にあたっては、次のいずれかの方法で実施した検査の陰性証明書(英語又はベトナム語で記載された紙の証明書に限ります。)を取得して持参する必要があります(ベトナムの空港での検疫だけでなく、日本の空港での搭乗手続の際にも確認がなされます。)。

 ・ RT-PCR法/RT-LAMPを使用する場合:日本出国前72時間以内に検査を実施

 ・ 迅速抗原検査を使用する場合:日本出国前24時間以内に検査実施

 一方、ワクチン接種の有無や接種回数は入国の条件とはなっていません。

 また、ベトナムへの入国前24時間以内にオンラインで医療申告を行うことが義務付けられています。スマートフォンなどで指定されたアドレスにアクセスしてオンラインで健康状態等を申告し、最後に表示されるQRコードのスクリーンショットを保存して、日本の空港での搭乗手続の際、及びベトナムの空港での検疫の際に提示する必要があります。

 なお、このオンライン医療申告とは別に、ベトナム国内では、滞在ホテルや訪問する施設などによっては、”PC-COVID”というオンライン医療申告アプリの提示やこのアプリによる施設掲示のQRコードの読み取りを求められることがあります。こちらもあらかじめアプリストアからダウンロードしてインストールし、初期設定を済ませておいてください。

(2) 航空機の運航状況

 2022年2月15日から、ベトナム発着の全ての定期便の運航制限が解除されています。しかし、3月29日時点において、各航空会社は、実際の需要をふまえて発着する空港や本数を限定しており、コロナ前の水準にはまだまだ届かない状況です。例えば、LLC(格安航空会社)のベトジェットエアーは、3月29日時点で、関空発着のホーチミン、ハノイ便は再開していません。また、ベトナム航空は、3月30日から毎週水曜日と土曜日に関空発着のホーチミン便を再開すると発表していますが、実際には、水曜日、土曜日であってもフライトがなかったり関空発しかなかったりするようです。

 したがって、入国制限は大幅に緩和されたものの、ベトナムへ渡航される際は、最新の運行状況に注意する必要があります。

第2.各国における仲裁制度の概要

1.日本

 仲裁とは、紛争解決方法のひとつで、裁判よりも柔軟な解決が可能です。特徴として、仲裁判断は裁判所の確定判決と同一の効力を有し、当事者は仲裁判断については、基本的に、不服申立てをすることができません。

(1) 国際仲裁

 国際仲裁は、国際商取引をめぐる紛争について、各国の国内裁判所による解決ではなく、当事者が第三者である仲裁人を選び、その判断により紛争解決を図る手続です。ニューヨーク条約(後述)等の諸条約により外国における執行が容易であること、原則として非公開であり企業秘密が守られること、専門的・中立的な仲裁人を当事者が選ぶことができること、司法の信頼性が低い国における裁判の利用を回避できること、一審限りで手続を終了するのが通常であり、審問の期日の設定も柔軟な対応が可能であるため、迅速な紛争の解決を実現することも可能であること、等のメリットがあります。

(2) 外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)

 ニューヨーク条約の締約国は、同条約が定める要件を充足する外国仲裁判断(その国以外の国を仲裁地とする仲裁判断)の承認・執行を、原則として拒否できません。ただし、ニューヨーク条約第5条2項は、「紛争の対象である事項がその国の法令により仲裁による解決が不可能なものであること」、または「判断の承認・執行が、その国の公の秩序に反すること」のいずれかに該当するときには、承認及び執行を求められた国の権限ある機関は職権によって、その仲裁判断の承認・執行を拒否することができるとされています。そのため、相手方の所在国がニューヨーク条約の加盟国であっても、現地専門家に相談のうえ、現地仲裁法や実務運用を確認しておくことが望ましいといえます。

 日本もニューヨーク条約に加盟しており、例えば、日本の商事仲裁協会(JCAA)において取得した仲裁判断に基づき、同条約加盟国に所属している外国企業の財産に対し、強制執行をすることができます。

(3) 仲裁法

日本は、国連のモデル法に準拠した仲裁法を定めています。

  1. 仲裁合意

 仲裁合意は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者が和解をすることができる民事上の紛争(離婚又は離縁の紛争を除く。)を対象とする場合に限り、その効力を有すると規定されています(仲裁法第13条第1項)。仲裁合意は、当事者の全部が署名した文書、当事者が交換した書簡又は電報その他の書面によってしなければなりません(仲裁法第13条第2項)。一般的には、「仲裁条項」として契約書に規定します。また、仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、基本的に、被告の申立てにより却下しなければならないと定められています(仲裁法第14条第1項)。

    2. 仲裁人

 仲裁人の数は、当事者が合意により定め(仲裁法第16条第1項)、仲裁人の選任手続きも、法律で定められた場合を除き、基本的に当事者が合意により定めるところによります(仲裁法第17条第1項)。

    3. 仲裁判断において準拠すべき法

 仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法は、当事者が合意により定めるところによると規定されています。この場合において、一の国の法令が定められたときは、反対の意思が明示された場合を除き、当該定めは、抵触する内外の法令の適用関係を定めるその国の法令ではなく、事案に直接適用されるその国の法令を定めたものとみなされます(仲裁法第36条第1項)。

 

2.タイ

(1) 仲裁機関

タイの主要な仲裁機関として、以下が挙げられます。以下の仲裁機関以外にも、知的財産等、専門分野を取り扱う仲裁機関も存在します。

  1. The Thai Arbitration Institute (TAI)

仲裁法および仲裁機関に関する司法府規則に基づく仲裁機関。1990年設立。

     2. Thailand Arbitration Centre (THAC)

仲裁機関法に基づいて2007年に設立された非政府組織。国際仲裁制度を支援、促進し、国際的な紛争解決基準を満たすことを目的としている。

(2) 仲裁合意

仲裁合意については、原則、書面にて当事者により署名がなされている必要があります。契約書等の別様式にて規定することが可能です。

(3) 仲裁手続きの主な流れ(TAI)

  1. 当事者は、仲裁合意を行う。
  2. 申立人は、申立書を仲裁機関に提出し、仲裁機関は申立書の写しを被申立人に送付する。
  3. 被申立人は、申立書の写しを受領した日から15日以内に、答弁書を提出する。
  4. 当事者は、仲裁廷を指名する。
  5. 仲裁廷及び当事者は、180 日を超えない範囲で、手続に関するタイムテーブルを設定する。
  6. 審理
  7. 仲裁廷が手続終了を宣言した日又は最終弁論書類の提出期限から 30 日以内に裁定が行われる。
  8. 仲裁機関は、裁定を当事者に送付する。
  9. 当事者が裁定を受領した時点で、裁定は確定する。

(4) 国際仲裁

 タイは1959年12月21日から、ニューヨーク条約の加盟国となっています。したがって、例えば、同条約加盟国での仲裁判断に基づき、タイにおいて強制執行をすることが可能です。

 

3.マレーシア

(1) 仲裁法について

 マレーシアにおける仲裁手続は仲裁法(Arbitration Act 2005)によって規律されます。同法は、国内仲裁と国際仲裁を分けて規定しています。

 国内仲裁については、当事者による別段の合意がない限りマレーシア法が準拠法となります。国際仲裁については、当事者による合意がない場合、仲裁廷が準拠法を決定します。仲裁手続を規律する準拠法についても、当事者が合意に至らない場合、仲裁廷が決定することができます。

 仲裁合意は、書面によってなされなければならず、国内の仲裁機関によって行われた仲裁判断についても、裁判所による承認を経なければ執行をすることはできません。また、マレーシアはニューヨーク条約の加盟国であるため、マレーシア国外の仲裁判断をマレーシアにおいて執行することができます。

 国際仲裁には、仲裁法(Arbitration Act 2005)のPartⅠ(定義規定等)、PartⅡ(仲裁手続や裁定等の仲裁に関する一般的な規定が含まれる)、及びPartⅣ(仲裁人の責任等のその他の規定)が適用されます(仲裁法第3条第3項)。PartⅢ(仲裁の過程で生じる法律問題の決定を裁判所に申請する規定等の仲裁に関連する追加条項)は、当事者が書面で別段の定めをしない限り適用されません。

(2) AIACについて

 マレーシアにおける中心的な仲裁機関として、アジア国際仲裁センター(AICA:Asian International Arbitration Centre)が設置されています。マレーシア政府はAIACに対して、施設の供与及び資金の援助を行っており、マレーシア政府の様々な改革や支援を受けて受理件数は着実に伸び、AIACは今やアジアにおける中心的な国際仲裁機関の一つとなっています。

  1. 2018年AIAC規則(AIAC Arbitration Rules 2018)

  当事者がAIAC規則(AIAC Arbitration Rules)に従って紛争を仲裁することに書面で合意した場合には、当該紛争はAIAC仲裁規則に従い、仲裁により解決されます(2018年AIAC規則第1条)。仲裁地がマレーシアの場合は、仲裁法(Arbitration Act 2005)第41条(仲裁の過程で生じる法律問題の決定を裁判所に申請する規定)、第42条(裁定により生じた法的問題を裁判所に付託する規定)、第43条(控訴)及び第46条(裁定期間の延長)は適用されません(同規則第1条)。

  また、当事者が特に仲裁機関を指定しなかった場合は、仲裁廷が他により適切な仲裁地があるとの判断をしない限り、マレーシアのクアラルンプールとなります(同規則第7条)。

  このほか、2018年AIAC規則では、公平・公正でない仲裁人に対する異議の申立(規則第5条)、差止等の暫定措置に関する規定(規則第8条)、裁定に関する規定(規則第12条)、費用に関する規定(規則第13条)等が定められています。

    2. 2018年AIACファスト・トラック規則(AIAC Fast Track Arbitration Rules 2018)

 AIACでは簡易仲裁制度があり、短期間での仲裁を規定するファスト・トラック・ルール(Fast Track Rules)が当事者の合意により適用されます。このファスト・トラック・ルールによると、180日以内で手続が終了します。同ルールの下では、仲裁開始から90日で口頭審理を終え、さらに90日で裁定書を作成することになります(2018年AIACファスト・トラック規則第21条)。

 

4.ミャンマー

(1) ニューヨーク条約の批准

 ミャンマーは、外国の仲裁判断を国内で承認し強制執行を可能とする要件を定めた『外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約』(以下、「ニューヨーク条約」という(上記1(2)参照))を2013年に批准しましたが、当時ミャンマーの仲裁法(1944年)は外国仲裁判断の執行について規定されておらず、大幅な法改正が必要とされていました。

(2) 仲裁法

 ニューヨーク条約の批准に対応するかたちで、2016年1月5日、仲裁手続きによる紛争解決の奨励、仲裁手続による公平な紛争解決の実現、外国仲裁判断の承認・執行を目的とし、新たな仲裁法(以下「本法」という)が成立しました。

 外国仲裁判断をミャンマー国内で執行するには、まず、裁判所に対し1) 仲裁判断書の原本又は仲裁判断を下した地域の法令に従って規定された手法で適切に認証及び署名された仲裁判断書の写し、2) 仲裁合意の原本又は写し、3) 仲裁判断が外国仲裁判断であることを証明する必要な証拠を提出し執行申し立てを行う必要があります(第45条(a))。なお、これらの書面が外国語で記されている場合、申立人は、認証を受けた英訳を提出するか、ミャンマーの現行法に従って必要な基準を満たした認証を受けた英訳を提出しなければなりません(同条(b))。仲裁合意の当事者が行為能力の制限がある場合や仲裁手続に不公平が見られる場合、仲裁判断が法令や公序良俗に反する場合など特定の理由がある場合(第46条(b)(c))、を除き、外国仲裁判決を裁判所の決定と同じように承認・執行しなければなりません(同条(a))。第46条(b)(c)に基づき外国仲裁判断の承認が認められなかった場合や同条項に基づく無効の申し立てが却下された場合は、上訴することも可能です(第47条(a)(iii))。

 このように、内容としては他国と同様の内容が規定されているものの、実際の運用面においては、ミャンマーでは仲裁という制度自体を理解していない裁判官も多く、他国の仲裁判断の執行が認められない事例もあります。また、ミャンマーでは常設の仲裁機関が設置されておらず、仲裁人リストも存在しないという問題も存在します。したがって、紛争解決条項を安易に仲裁とすることは避けるべきであり、自社側が請求する場面が生じる可能性の方が高い場合には、ミャンマーの裁判所を紛争解決条項で規定する方が良い場合もあります。

 

5.メキシコ

(1) 関連規定

メキシコでは、仲裁は、商法(Código de Comercio)に規定されており、その規定は国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)の国際商事仲裁モデル法に対応したものとなっています。

また、メキシコは仲裁判断の承認・執行を認めるニューヨーク条約及び中南米諸国が多く加盟するパナマ条約を批准しています。

(2) 仲裁手続き

1. メキシコの仲裁機関

メキシコに所在する主な仲裁機関として、国際商業会議所(International chamber of commerce)やメキシコ仲裁センター(Centro de Arbitraje de México)、メキシコシティ商工会議所(Cámara Nacional de Comercio de la Ciudad de México)などが挙げられます。

2 仲裁合意

仲裁手続きを行うには、当事者の書面による仲裁合意が必要となります。両当事者の署名を付した書面の他、電気通信技術等を用いてその合意や合意の存在を記録したものもこの合意を示す書面となります。

メキシコ仲裁センターは、メキシコ仲裁センターでの仲裁を希望する当事者は契約書に以下のモデル条項のような仲裁合意を設けることを推奨しています。

〈スペイン語の場合〉

“Todas las desavenencias que deriven de este contrato serán resueltas definitivamente de acuerdo con las Reglas de Arbitraje del Centro de Arbitraje de México (CAM), por uno o más árbitros nombrados conforme a dichas Reglas”

〈参考日本語訳〉

「本契約に起因するすべての紛争は、メキシコ仲裁センター(CAM)の仲裁規則に従い、同規則に従って任命された1人または複数の仲裁人によって最終的に解決されるものとする。」

仲裁を合意した契約に関する紛争については、訴訟による解決は制限されます。仲裁合意が無効となるなどの場合を除いて、仲裁合意の対象となる紛争について訴訟提起を受けた裁判官は、当事者の請求により、当該紛争を仲裁に付すとされています。そのため、両当事者が仲裁合意の存在を主張しない場合には、訴訟による解決も可能ですが、いずれかの当事者が仲裁合意の存在を主張した場合には訴訟による解決はできません。ただし、仲裁合意がある場合でも、裁判所に対し、保全措置を求めることはできます。

  1. 秘密性

仲裁手続きについては当事者に裁量が与えられており、当事者は、仲裁を秘密にするかどうかを決定することもできます。したがって、当事者が仲裁合意において秘密保持を合意した場合は、仲裁人を含め、全当事者がこれに拘束されます。

    2. 仲裁の費用

たとえば、メキシコ仲裁センターでの仲裁にかかる費用は、メキシコ仲裁センターのホームページで確認することができます。係争金額に応じて、管理費や仲裁人費用が定められており、2011年10月1日以降の仲裁合意に基づく仲裁であって、200万ペソの係争金額の場合、管理費として4万2000ペソ、仲裁人費用として8万2200ペソと算出されます。

(2) 外国仲裁判断の承認・執行

上述の通り、メキシコはニューヨーク条約及びパナマ条約を批准しており、同条約の加盟国の仲裁判断は国内の裁判の判決と同等の効力を持ちます。

そのため、メキシコの仲裁判断はニューヨーク条約に基づき加盟国において執行することができます。また、同様に日本やアメリカなどにおける仲裁判断についても、裁判所から執行の許可を取得して執行することができます。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、国際商事仲裁、国際仲裁判断及びその他の仲裁判断の承認及び執行に関する法律として、2001年仲裁法(Arbitration Act, 2001(以下、仲裁法))が制定されました。なお、バングラデシュは、ニューヨーク条約(上記1(2)参照)の加盟国です。仲裁機関として、Bangladesh International Arbitration Centre (BIAC)や、Bangladesh Institute of Arbitration(BIArb)があります。

(1) 仲裁合意

 仲裁合意は、契約書の仲裁条項という形式又は個別の合意書という形式で定めることができ(仲裁法第9条(1))、書面にて行われなければなりません(同条(2))。

(2) 仲裁人

 仲裁人の数及び仲裁人の選任手続きは、当事者の合意により定めることができます(仲裁法第11条(1)及び第12条(1))。

(3) 外国仲裁判断の承認及び執行

 外国仲裁判断は、いずれかの当事者によって行われた申し立てについて、裁判所の判決と同じ方法で、民事訴訟法に基づいて裁判所によって執行されます(仲裁法第45条(1)b))。ただし、「紛争の対象である事項がバングラデシュの現行法により仲裁による解決が不可能なものであること」、または「外国仲裁判断の承認・執行が、バングラデシュの公の秩序に反すること」のいずれかに該当するときには、裁判所は、その仲裁判断の承認・執行を拒否することができると規定されています(仲裁法第46条(1)(b))。

 

7.フィリピン

(1) はじめに

 フィリピンにおいて、「仲裁」とは、共和国法第876号(「仲裁法」)及び共和国法第9285号(「ADR法」)に基づく紛争解決手段の一つです。仲裁は、当事者の合意または適用される規則に従って選任された単独か複数の仲裁人によって紛争を解決する任意の紛争解決プロセスです。  

 仲裁をはじめとするADR(裁判外紛争解決手続)は、通常、解決までにはるかに長い時間を要する裁判よりも有利な方法とされています。裁判とは異なり、仲裁では、適用される実体法、紛争を裁定する仲裁機関や仲裁人、タイムテーブルを含む手続規則などを当事者が自由に決定することができます。また、原則公開手続である裁判とは異なり、仲裁手続は非公開の手続で進行します。さらに、当事者が別途合意しない限り、係争金額の最低額など仲裁を進めるための条件は存在しません。

 なお、ADRに属する他の手段として「調停」があり、こちらは紛争当事者間の交渉を促進し、自発的な合意に至るよう支援する紛争解決手段として位置づけられています。仲裁とは異なり、調停人は事件を判断することはなく、紛争が解決または和解に至らなくても調停手続は終了することがあります。

 仲裁には、国内仲裁と国際仲裁があります。国内仲裁には仲裁法が適用され、国際仲裁には、1985年UNCITRALモデル法(「モデル法」)を採択したADR法が適用されます。仲裁手続は、①当事者間の仲裁合意、または ②既存の紛争に対する当事者による仲裁への自発的な申立によって開始されます 。 

 以下の事項に関する論争は、仲裁の対象とはなりません。 

  1. 労働紛争
  2. 人の民事上の地位に関するもの
  3. 婚姻の有効性に関するもの
  4. 離婚
  5. 刑事責任
  6. 法律により解決できないもの

(2) 仲裁合意

 国内仲裁において、仲裁合意は書面として作成され署名が付されなければいけません。国際商事仲裁でも、仲裁合意は同様に書面であることが要求されています。ここでいう「書面」には、手紙、テレックス、電報、もしくは合意の記録を提供する他の電気通信手段も含まれています。契約書に仲裁条項として付されたり、別個の契約書として作成されたりしたとしても、正当な仲裁合意と認められます。  

仲裁合意があるにもかかわらず裁判が係属した場合、当事者は、裁判所に対し、仲裁による解決を促すことを要求することができます。この請求は、遅くとも準備手続(pre-trial)中に行わなければなりません。準備手続終了後に当該請求がされた場合、裁判所は、すべての当事者が同意した場合にのみ審査することができます。口頭弁論を行った後に、裁判所が仲裁合意の存在を認識し、かつ当該紛争の対象が仲裁による解決が可能であると認める場合、訴訟を停止し、当事者に対し仲裁での解決を促すことができます。

フィリピンでは、仲裁合意は主契約から独立していると考えられており、したがって、主契約が無効であっても、仲裁合意の有効性には影響しません。フィリピン法の学説上は、いかなる疑義も仲裁に有利に解決され、裁判所は、契約条項が許す限り、仲裁条項を有効にするよう義務付けられています。

(3) 仲裁機関

仲裁は、機関を通じて行われる場合と、アドホックに行われる場合があります。フィリピンの仲裁機関としては、以下が挙げられます。

    1. 建設業仲裁委員会(Construction Industry Arbitration Commission:CIAC)
    2. フィリピンにおける建設契約に起因する、または関連する紛争について、原始的かつ排他的な管轄権を有しています。 これらの紛争には政府契約や民間契約が含まれますが、雇用関係の紛争は含まれません。CIACが管轄権を取得するためには、紛争の当事者がこれを任意の仲裁に委ねることに同意しなければなりません。 
    3. フィリピン紛争解決センター(PDRCI)
    4. フィリピン商工会議所の仲裁委員会が1996年に設立した非営利団体です。海事、銀行、金融、保険、証券、知的財産などの専門分野における仲裁・調停を管轄しています。
    5. フィリピン国際紛争解決センター(PICCR)
    6. 2019年に設立された非営利機関で、紛争当事者には商事仲裁などのADRサービスや施設を提供し、弁護士や実務家には専門的なトレーニング、認定を提供しています。
    7. なお、仲裁費用は、仲裁機関によって異なります。手数料の額に影響を与える要因としては、係争額、ケースの複雑さ、仲裁人の数、提出された反訴の有無、および物流・管理費用の高低などが挙げられます。

(4) 強制執行とニューヨーク条約の適用性

フィリピンは、1967年7月6日にニューヨーク条約を批准し、締約国となりました。批准に際してフィリピンは、この条約は他の締約国内で行われた仲裁判断にのみ適用され、商業的とみなされる法的関係から生じる紛争にのみ適用されることを宣言しました。ニューヨーク条約に基づく仲裁判断の承認と執行は、特別ADR規則に従い、適切な裁判所において申立て、審理されなければなりません。

 

8.ベトナム

(1) ニューヨーク条約

 ベトナムは、外国仲裁判断の承認および執行に関する条約(ニューヨーク条約)に加盟していることから、ベトナム国内での仲裁手続に加え、ベトナム国外での仲裁手続を利用することも可能です。但し、後述するとおり、ベトナム国外の仲裁判断をベトナム国内で直接執行することはできず、ベトナムの裁判所で承認を得る必要があります。

 なお、ベトナム企業に対しベトナムの裁判所に訴えを提起することも可能ですが、一般的に、公正な判断が期待できない可能性があると指摘されています。また、ベトナム企業に対し日本の裁判所に訴えを提起することも不可能ではありませんが、仮に勝訴判決を得たとしても、日本の裁判所の判決をもって被告であるベトナム企業のベトナム国内の財産に対して執行することが、制度上、できません(日本とベトナムとの間で、裁判所の判決を相互に承認するような条約などが存在しないためです。)。したがって、ベトナム企業との間で契約を締結するにあたっては、紛争解決方法として、ベトナム国内か国外での仲裁手続によることを規定しておくべきであるといえます。

(2) ベトナム国内仲裁手続

 ベトナムの商事仲裁法では、機関仲裁(特定の仲裁機関の規則に従って手続が進められる仲裁)の他に、当事者が仲裁手続の内容を合意し、仲裁機関を利用せずにその合意に従って行う「アド・ホック仲裁」も認められています。しかし、「アド・ホック仲裁」を利用する場合、仲裁手続の具体的内容、仲裁人の人数、仲裁人の氏名や選任方法など仲裁を行う上で必要となる様々な事項をあらかじめ合意しなければならず、また、仲裁判断を執行する場合においても、機関仲裁に比べ必要な手続が増えることなどから、実務上では「アド・ホック仲裁」が利用されることはほとんどないとされています。

 ベトナム国内の常設仲裁機関としては、ホーチミン商事仲裁センター(TRACENT)、ハノイ商事仲裁センター(HCAC)、ベトナム弁護士商事仲裁センター(VLCAC)など多数の仲裁機関がありますが、最も取り扱い件数が多いのは、ベトナム国際仲裁センター(VIAC)です。

 機関仲裁を利用する場合、当事者間で書面により、紛争解決方法として仲裁手続を利用することを合意(仲裁合意)する必要があります。仲裁合意は、紛争が起こってからすることも可能ですが、現に紛争が起きている段階で仲裁合意をすることが難しいこともあることから、契約書を作成する時点であらかじめ仲裁合意条項を規定しておくことが望ましいでしょう。

 ベトナム国内の仲裁手続を利用するメリットとしては、外国仲裁に比べて費用が低廉になることが多いことと、外国仲裁の場合、後述するとおり、ベトナムの裁判所から執行承認を得る必要があるのに対し、ベトナム国内の仲裁の場合は、執行承認を得る必要はなく、直接、「民事判決執行機関」に執行を申し立てることができることが挙げられます。一方、デメリットとしては、国際的に利用件数が多い国外仲裁機関(例えば、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)など)に比べ、処理件数が少なく、経験不足などにより不合理な判断が為される可能性があることが指摘されています。

(3) ベトナム国外仲裁手続の執行

 ベトナム国外の仲裁機関を利用した場合、その仲裁判断をベトナム国内で執行するためには、ベトナムの裁判所で承認を受けなければなりません。承認を受けるためには、外国仲裁判断の効力が生じてから3年以内に承認の申請をする必要があります。申請を受けた裁判所は、ベトナム民事訴訟法が規定する不承認事由があるか否かを検討し、不承認事由の1つにでも該当すれば仲裁判断の不承認の決定を、全ての不承認事由に該当しなければ承認の決定を下します。裁判所により承認された外国仲裁判断は、「民事判決執行機関」に申し立てることにより、執行することができます。一方、不承認の決定がなされた場合、不服のある当事者は、15日以内に、高級人民裁判所に対して上訴することができるとされています。

 なお、過去には、ベトナムでは外国仲裁判断が承認される割合が低いこともありましたが、近年では、承認率は上がってきているとされています。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年3月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現在、31都道府県以下の期間・区域において、3月6日までを期限とし、まん延防止等重点措置が実施されています。感染拡大防止のための取り組みとして、各都道府県の知事の判断による、飲食店等に対する制限(時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の新規入国制限の見直しについて

外国人の新規入国については、原則として一時停止されていましたが、下記(a)又は(b)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めることとなります。

  1. 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国
  2. 長期間の滞在の新規入国

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(a) 入国後の自宅等待機期間の変更

  1. 検疫所の宿泊施設での待機対象となっている国・地域(以下「指定国・地域」)から帰国・入国する方で、COVID-19のワクチンを3回接種していない方は、指定の宿泊施設での3日間待機が求められます。宿泊施設で受けた検査の結果が陰性であれば、退所後の自宅等待機は求められません。
  2. 指定国・地域から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  3. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していない方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  4. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、入国後の自宅等待機を求められません。

厚生労働省HP 検疫の宿泊施設で待機対象となっている国・地域

  1. 入国後の公共交通機関の使用について

 上記(a) ii)及びiii)に該当する方は、入国後の待機のため自宅等まで移動する際は、公共交通機関の使用が可能となります。

厚生労働省 HP 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は2,819,282名です。この内、2,606,363名が回復し、累計死亡者数は22,812名となっています。現在、新規感染者が増加傾向であり、1日2万人程度で推移している状況です。

2.2 タイ入国規制

 COVID-19状況管理センターは、2月23日、隔離免除でのタイ入国(Test and Go)のタイ入国後の条件を変更することを発表しました。

 タイ入国後のPCR検査について、以前はタイ到着日の検査および、タイ入国後5日目の検査を行う必要がありましたが、5日目の検査はATK検査を入国者自ら行うことが可能となり、隔離ホテル等の予約が不要となります。

1日目:タイ到着後、政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。

     陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。

5日目:入国者自らATK検査。隔離ホテルの予約不要。

加えて、Thailand passの登録時に必要とされていた医療保険の補償額については、従前の最低5万USドルから、最低2万USドルへと変更となります。

上記の変更は、3月1日以降のThailand Passの申請分より適用されるとのことです。

2.3 日本入国規制

厚生労働省は、2月24日、日本入国後の宿泊施設での待機等の変更について発表し、タイから日本への入国時に必要とされていた3日間の宿泊施設待機期間が、解除されることになりました(日本時間3月1日午前0時から)。詳細については、上記1.2に記載の厚生労働省HPの情報をご確認下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 2月23日の新規感染者数は、31,199人でした。感染者数は1月末の約6倍に急増し、現在ピークに達していると考えられます。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限令であるNRP(National Recovery Plan(これまではFMCOと呼ばれていました))では、全ての州が一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。

3.2 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下①~⑤に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国
  6. ランカウイ島へのトラベルバブル制度を利用した入国
  7. 目的を限定とした14日以内の短期商用(潜在的な投資家・既存の投資家・ビジネス顧客・技術者)での入国

 すべての渡航者は、出発前2日以内にPCR検査(スワブ検体)を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。隔離期間は、ブースター接種済みの成人又は単独で渡航する若年者(12歳から17歳)は5日間、ブースター未接種のワクチン接種完了者は7日間、ワクチン接種未完了者は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率が再び上昇傾向にあります。ヤンゴン市内は車・人の往来は普段と大きくは変わりません。

4.2 入国規制

2月は3日、17日にANA 便が飛びました。3月17日、31日、4月7日、28日に救援便が運航予定です。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。ミャンマー入国後のホテル隔離は、10日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

2月に入りメキシコのCOVID-19新規感染者の増加は鈍化し、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、2月21日の週は、メキシコシティやケレタロ州を含む16州が黄色、グアナファト州やサンルイスポトシ州を含む16州が緑となりました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられており、マスクの着用などの要請は継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、2月24日に発表された1日の新規感染者が1,516名で陽性率は5.53%でした。2月21日にCOVID-19関連の規制は撤廃され、学校も再開されましたが、マスク着用は義務づけられています。

6.2 入国規制

 現在、日本からの渡航者については、隔離が免除されていますが、入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗前48時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明の提示が求められます。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計365万8892人で、死者数は累計56,224人です(2022年2月25日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約1000~2000人程度の新規感染者が報告されています。

 2月28日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル2」とされています。フェイス・シールド使用に関する規則によると、現時点で警戒レベル3以下の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。

 また、フィリピンでは、5~11歳に対するファイザー製の新型コロナ・ワクチン接種が開始されました。2月7日からマニラ首都圏で始まり、徐々に対象地域が拡大していく予定です。

7.2 入国規制

 2月10日から、ワクチン接種等した外国人(商用・観光目的の査証免除対象者、及び、既存の有効な査証を有する外国人)の入国が許可されています。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

2月24日、日本において3月以降の新たな水際対策措置が決定されました。また、フィリピンについて「水際対策上特に対応すべき変異株に対する指定国・地域」からの指定が解除されました。詳細は以下のとおりです。

    1. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加未接種者について、原則7日間の自宅等待機を求めることとした上で、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めない。
    2. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加接種者について、入国後の自宅等待機を求めない。
    3. 入国後24時間以内に自宅等待機のために自宅等まで移動する場合に限り、自宅等待機期間中であっても公共交通機関の使用を可能とする。
    4. オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域を別途指定する場合には、当該国・地域からの帰国者・入国者については、自宅等待機等の期間を14日間とする。(※なお、現時点で、フィリピンは「オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域」には指定されていません。)
    5. 外国人の新規入国について、受入責任者の管理の下、観光目的以外の新規入国を認める。
 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 2022年2月23日午前9時の時点でにおけるベトナムでの累計感染者数は297万2378人で、日本のおよそ3分の2となっています。昨年12月頃から毎日の新規感染者数は1万6000人前後で推移していましたが、旧正月(テト)休暇があけた2月上旬から入って急激に増加し始め、2月23日の新規感染者数はベトナムとしては初めて6万人を超え6万0338人となりました。

 一方で、昨年10月から隔離措置等の様々な社会・経済規制は徐々に緩和されており、ワクチン接種や人数制限などの一定の条件はあるものの、多くの分野において事業活動の再開が認められています。

8.2 入国規制

(1) 航空機

 日本からベトナムへの直行便はこれまで特別便しか運行していませんでしたが、2022年1月から定期便が一部再開し、2月15日からはベトナム発着の全ての定期便の運航制限が解除されました。但し、各航空会社は、入国規制が実施されている現状をふまえ定期便の本数を限定しているのが現状です(例えば、2月24日現在、関西空港発のホーチミン行きの便は全て運休しています)。

(2) 入国制限〜ビジネス目的

 2022年2月24日現在、ビジネス目的でのベトナム入国が認められる外国人は、ベトナムにある機関、組織、個人によって招へいされる者に限られています。入国を希望する外国人が、滞在許可証、一時滞在許可書(Temporary Residence Card)、ビザ、ビザ免除証を有しない場合、各地方の人民委員会による入国承認を得た上で、公安省入国管理局による入国許可を得る必要があります。これまで、滞在許可証、一時滞在許可書(Temporary Residence Card)、ビザ、ビザ免除証を有していたとしても入国承認・入国許可を得る必要がありましたが、1月18日よりこれらを有していれば入国承認・入国許可は不要となりました(なお、APECビジネストラベルカードは、ビザ等には含まれないことから、原則どおり入国承認・入国許可を得る必要があります)。

 入国後の隔離期間は、2回以上ワクチンを接種した方、又はコロナウイルスに感染しその後治癒した方については3日間、それ以外の方は7日間です。

(3) 入国制限〜観光目的

 2021年11月中旬から非常に限られた地域、人数、日数での観光客受入れが試行されてきましたが、ベトナム政府は、2022年3月15日から本格的に観光客の受入れを再開する計画を発表しました。現時点で検討されている受入れのための条件は次のとおりです。

  1. 12歳以上であること
  2. パスポートの有効期限の残りが6か月以上であること
  3. 入国72時間前のRT-PCRテスト又は入国25時間前の迅速検査での陰性結果の証明書を提出すること
  4. 有効なビザ、一時滞在許可書(Temporary Residence Card)などを有すること(15日以内の滞在であればビザなどは不要)
  5. コロナ治療に対応した1万米ドル以上の医療保険に加入していること
  6. “PC-Covid”などのコロナ対応の健康管理アプリを自身のスマートフォンにインストールして利用すること
  7. この他、滞在可能ホテルが限定される見込みです。

 なお、2月24日時点において上記はまだ正式に決定されたものではありません。「8.1 COVID-19関連の規制状況」でご説明したとおり、最近は急激に新規感染者数が増加していることから、観光客受入れ再開の計画も変更される可能性があります。

第2.各国におけるE-コマース関連規制の概要

1.日本

 E-コマースに関連する法律は多く、以下が挙げられます(経済産業省:電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和2年8月))。紙面の都合上、特定商取引法におけるE-コマースの関連規定をご説明します。

  1. 関連法
法 律 目 的
特定商取引法
(特定商取引に関する法律)
特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、
連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引
販売取引並びに訪問購入に係る取引)を公正にし、及び購入者等が
受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、
あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて
国民経済の健全な発展に寄与すること
景品表示法
(不当景品類及び不当表示防止法)
商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止
するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある
行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること
個人情報保護法
(個人情報の保護に関する法律)
高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、
個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の
個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務
等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定める
ことにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある
経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の
有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること
資金決済法
(資金決済に関する法律)
資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護するとともに、
当該サービスの提供の促進を図るため、前払式支払手段の発行、銀行等以外の者が行う
為替取引、暗号資産の交換等及び銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算
について、登録その他の必要な措置を講じ、もって資金決済システムの安全性、
効率性及び利便性の向上に資すること
通則法
(法の適用に関する通則法)
法の適用に関する通則について定めるもの
(越境ECの準拠法に関する規定)
電子契約法
(電子消費者契約及び電子承諾通知に
関する民法の特例に関する法律)
消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について特定の錯誤
があった場合に関し、民法の特例を定めるもの
特定電子メール法
(特定電子メールの送信の適正化等に
関する法律)
一時に多数の者に対してされる特定電子メールの送信等による電子メールの送受信上の
支障を防止する必要性が生じていることにかんがみ、特定電子メールの送信の適正化
のための措置等を定めることにより、電子メールの利用についての良好な環境の整備
を図り、もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与すること

   2. 特定商取引に関する法律(特定商取引法)

 特定商取引法は、上表にある通り、7種類の取引を対象としています。特定商取引法第2条2項では、「通信販売」とは、販売業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下、「郵便等」)により売買契約の申込みを受けて行う商品若の販売であって電話勧誘販売に該当しないものをいうと規定しており、E-コマースは、通信販売に該当します。今回は、商品の販売業者がE-コマースにて商品を販売するケースを想定してご説明しますが、特定権利の販売及び役務の提供の場合にも同様の規定が適用されます。

   3. 広告規制

 販売業者が、商品の販売条件について広告をする際には、重要事項(商品の販売価格、支払いの時期及び方法、契約の解除に関する事項等)を表示することを義務付けています。ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、これらの事項の一部を表示しないことができます(第11条)。また、広告をするときは、当該商品の性能、売買契約の申込みの撤回又は解除(以下「申込みの撤回等」)に関する事項その他省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならないと規定されており、誇大広告等は禁止されています(第12条)。

   4. 承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供の禁止等

 商品の販売条件について、その相手方の承諾を得ないで電子メール広告をしてはならないと規定されています。ただし、相手方の請求があるときや、省令で定める方法により当該申込み若しくは当該契約の内容又は当該契約の履行に関する事項を通知する場合において、省令で定めるところにより通信販売電子メール広告をするときや、通常メール広告の提供を受ける者の利益を損なうおそれがないと認められる場合として省令で定める場合において、通信販売電子メール広告をするときなどは除かれます(第12条の3第1項)。

   5. 通信販売における承諾等の通知

 販売業者は、売買契約の申込みをした者から当該商品の引渡しに先立って当該商品の代金の全部又は一部を受領する通信販売をする場合において、郵便等により当該商品につき売買契約の申込みを受け、かつ、当該商品の代金の全部又は一部を受領したときは、遅滞なく、省令で定めるところにより、その申込みを承諾する旨又は承諾しない旨、その他の省令で定める事項をその者に書面により、又は、申込者の承諾を得た場合は、電磁的方法その他の法令で定める方法により、通知しなければなりません。ただし、当該商品の代金の全部又は一部を受領した後遅滞なく当該商品を送付したときは、この限りではありません(第13条1項及び2項)。

  6. 通信販売における契約の解除等

 購入者は、その売買契約に係る商品の引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回等を行うことができますが、販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合には、この限りでないと規定されています(第15条の3第1項)。販売業者は、関連法令に定められた方法で、申し込みの撤回等に関する特約(返品の可否、返品の条件等)を表示していない場合は、同法により、8日以内であれば購入者による返品が認められることになりますので注意が必要です。また、申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡しが既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担となると規定されています(第15条の3第2項)。

 

2.タイ

(1) E-コマース関連法

 E-コマースに関連する主要な法律として、以下の法律が定められています。

  1. 電子取引法(Electronic Transactions Act B.E. 2544 (2001))
    1. 国際法をベースに、タイの情勢に合うように修正されたものとなります。この法律は、電子署名や電子取引に関するサービス事業、デジタル本人認証システム、公共分野の電子取引等、様々な分野の電子取引に関して定めています。
  2. コンピュータ犯罪法(Computer Crime Act B.E. 2550 (2007))

 コンピュータ関連犯罪について定めています。

(2) E-コマースビジネス

 タイでE-コマースビジネスを始めようとする場合、まず商業登記が必要となります。

商業登記要件については、商業登記法(Business Registration Act B.E. 2499 (1956))および商業登記義務を負う者に関する商務省規則(No.11)(Regulation of Ministry of Commerce on Persons who Have the Duties for Commercial Registration (No. 11), B.E. 2553 (2010))によって規定されています。

以下の事業を行う者は,E-コマース商業登記を行わなければなりません。

    1. インターネットシステムを介した電子メディアによる商品またはサービスの売買を行うWebサイト事業
    2. インターネットサービスプロバイダ事業
    3. Webホスティング事業
    4. E-マーケットプレイス(インターネットシステムを介した電子メディアによる製品、商品、サービスの売買のための中央マーケット)上の事業

* 商業登記をせずにE-コマース事業を行う個人および法人は、商業登記法に違反したものとみなされ、その違反が是正されるまで日割りで罰金が科されるため注意が必要です。

(3) E-コマース登録手続き

1. Webサイトを完成させ、オンラインサービスを提供できる状態にする必要があります。E-コマース登録は、事業を開始した日から30日以内に完了する必要があります。

2. E-コマース登録の申請先

バンコク内:事業所の所在地に応じた50の区役所(District Office)の行政課、またはバンコク都庁の財政政策室(50区全てをカバー)

バンコク以外:事業所の所在地に応じた市町村や県内の行政機関

3. E-コマース登録の必要書類

(a) E-コマース事業者のタイ国民IDカード及びHouse registrationのコピー

(b) E-コマース登録申請書

(c) Webサイトの詳細

(d) Webサイトの最初のページをプリントアウトしたもの

(e) 事業所在地の地図

(f) 会社の登記証明書(法人の場合)

(g) 委任状(代理人による申請の場合)

* 事業者が外国法人の場合は、労働許可証や外国人事業許可(ある場合)等の提出が必要となります。

* 申請先により、必要書類等が異なる場合があります。

4. 費用

(a) 新規E-コマース登録: 50バーツ

(b) 変更登録: 20バーツ

(c) 事業解消登記: 20バーツ

E-コマース登録が完了すると、オンラインプラットフォームを介してビジネスを行うことができます。

また、この他にE-コマース事業を営んでいることを証明するE-コマース事業者証明書や、E-コマースの信頼性を証明するためのDBD Verified ロゴ等の申請も可能です。このロゴは、その信頼性の度合い等により、シルバー、ゴールド、プラチナの三種類のクラス分けがなされています。

 

3.マレーシア

(1) 外資規制

 E-コマース事業に関して外国資本を規制する法律・規則等は確認できず、100%外資の会社E-コマース事業を行うことが可能であると考えられます。

(2) WRTライセンス

 流通・サービス業を行う事業体に対しては、国内取引消費者省(MDTCC:Ministry of Domestic Trade, Co-operatives & Consumerism)よりWRT ライセンス(Wholesale Retail Distributive Tradeライセンス)の取得が義務付けられています。E-コマース事業は、サービス業に該当し、WRTライセンスの取得は必要となるものと考えられます。WRTライセンスは、実務上は外資が51%以上となる場合にのみ要求されています。

(3) 消費者保護法(Consumer Protection Act 1999)・消費者保護(電子商取引)規則(Consumer Protection (Electronic Trade Transactions) Regulations 2012)

 消費者保護法は、消費者の保護、国家消費者諮問評議会及び消費者苦情審判所の設立、及びそれに関連する事項について規定する法律です。消費者保護(電子商取引)規則は、オンラインマーケットプレイスに従事する事業者に対し消費者の利益を保護するための一定の措置を講じることを義務付けています。

 具体的には、オンラインマーケットプレイスにおいて商品又はサービスの供給を目的とする事業者(以下「オンライン事業者」という。)は、以下の情報をウェブサイト上に開示する必要があります(同規則3条)。

  1. 事業及び事業者の名前
  2. 会社の登録番号
  3. 事業者の電子メールアドレス及び電話番号、又は住所
  4. 商品又はサービスの主な特徴
  5. 輸送費、税金、その他の費用を含む商品又はサービスの総額
  6. 支払方法取引条件
  7. 購入者への商品又はサービスの配達予定時間

また、オンライン事業者は、以下の措置を取らなければならなりません(同規則4条)。

  1. 注文の確定前にバイヤーが申込を修正できるようにする措置
  2. 注文を受領したことを遅滞なくバイヤーに通知する措置

 さらに、オンラインマーケットプレイスの運営者は、商品又はサービスの供給者の名前、電話番号及び住所に関する記録を2年間にわたり保存するための合理的な措置を講じる必要があります(同規則5条)。

(4) 個人情報保護法(Personal Data Protection Act 2010)に基づく登録

 E-コマース事業ついて、個人情報保護法上の「個人情報の処理を行う者」に該当すると考えられることから、個人情報保護法に基づく対応も必要となります。

(5) 取引表示法(Trade Description Act 2011)

 取引表示法は、商品やサービスの供給に関連する誤った表示、虚偽又は誤解を招くような説明、行為及び慣行を禁止することで良好な取引慣行を促進するとともに、関連又は付随する事項の提供を目的とする法律です。取引表示法は電子取引にも適用され、商品及びサービスに関して虚偽の説明又は広告をすることは禁止しているため、同法に基づく対応も必要となります。

 

4.ミャンマー

 小売業については、外資がライセンスを取得するのはハードルが非常に高いです。しかし、E-コマースについては小売業の規制が適用されないと解されており、事実上、小売業の規制の適用を受けることなく行うことができます。E-コマース業者の登録を必要とする法案が存在するものの、現状としては公布されていません。

 

5.メキシコ

(1) 関連する法規定

メキシコにおいて、E-コマースを体系的に規制する法令はなく、商法(Código de Comercio)に規定される電子的手法による契約に関する規定や連邦消費者保護法(Ley Federal de Protección al Consumidor)に規定される電子商取引における消費者保護規定などを遵守する必要があります。取扱品についても、商品ごとに適用される法令や輸出入規制などを遵守する必要があります。

その他、メキシコ国内に拠点を持たない海外居住者がデジタル・サービスを提供する場合について、付加価値税法(Ley del Impuesto al Valor Agregado)及び税務細則(Resolución Miscelánea Fiscal)に付加価値税の負担や領収書発行に関する規定が設けられています。

(2) 商法上の電子情報の受信に関する規定

E-コマースにおいては、契約の申込みや承諾、取消しなどの意思表示も電磁的な手段を用いて行われ、どの時点で意思表示が到達したか問題となった場合にはその到達時期を確定する必要があります。電子情報は、送信者と受信者の間で別段の合意がない限り、受信時刻は次の時刻として決定されます。

    1. 受信者が電子情報の受信のためにウェブサイトなど電子情報の生成、送信、受信、保存、その他の処理を行うために使用される機構(以下「ウェブサイト等」)を指定している場合、その受信は、当該ウェブサイト等に入った時点
    2. 電子情報が指定されたウェブサイト等以外のアドレスのウェブサイト等に送信された場合、または指定されたウェブサイト等が存在しない場合、アドレスが電子情報を取得した時点
    3. 受信者がウェブサイト等を指定していない場合、電子情報が受信者のウェブサイト等に入った時点

(3) 連邦消費者保護法上の義務

電子的、光学的又はその他の技術を用いて行われる取引における事業者と消費者間の取引に際し、事業者は次の事項を遵守するものとされています。

    1. 事業者は、消費者自身が明示的に許可した場合、又は管轄当局の要求がある場合を除き、取引外の他の供給事業者に情報を広めたり送信したりしてはならず、消費者から提供された情報を秘匿しなければなりません。
    2. 事業者は、利用可能な技術的要素を使用し、消費者から提供された情報の保護と機密の維持を図り、当該要素の一般的な特徴を予め消費者に通知しなければなりません。
    3. 事業者は、契約締結前に、自身の住所、電話番号、その他消費者が苦情を申し出たり説明を求めたりできる手段を提供しなければなりません。
    4. 事業者は、製品の特性に関して誤解を招くような行為を避け、商品やサービスに関する情報又は広告において、真実性、検証可能性、明確性を備え、誤解を招く文字、ダイアログ、音、画像、ブランド、原産地表示を用いてはなりません。
    5. 事業者は、利用規約、提供する商品やサービスの価格や料金、追加料金(ある場合)、支払い方法について、消費者がすべての情報を知る権利を行使できるようにしなければなりません。
    6. 事業者は、購入を希望する商品の量及び質に関する消費者の決定、並びに商業広告を受け取らないという決定を尊重しなければなりません。
    7. 事業者は、提供されるサービスに関する明確かつ十分な情報を消費者に提供しない販売又は広告戦略を使用してはなりません。特に、子供、高齢者、病人などの弱者を対象としたマーケティングの場合は、情報がこれらの人々に適していない場合に警告する仕組みを組み込むものとします。

そのほか、E-コマースに限りませんが、「バーゲン(oferta)」、「格安(barata)」、「ディスカウント(descuento)」、「大安売り(remate)」などの表現を行う場合は、通常価格を下回る価格で販売されると理解され、広告には販売の条件や期間、提供される商品やサービスの量を示す義務があります。E-コマースにおいても、このようなプロモーションを行う場合、消費者は、事前に決められた販売期間中、または、入手可能性がある限り、当該商品やサービスを購入する権利を有するとされており、当該商品の購入やサービスの利用ができない場合には、消費者は、契約の履行、別の同等商品やサービスの受領、契約解除のほか、通常価格との差額の支払いを受ける権利を有するとされている点にも留意する必要があります。

(4) メキシコ規格の規定内容

連邦消費者保護法第76 BIS 1条では、提供する商品やサービスに適用される条件等、商品の購入やサービスの利用について、その意思や条件を消費者が確認できるメカニズム、消費者の個人情報や取引に関する情報を機密に保持するためのメカニズム、苦情受付方法や支払い方法などについて、メキシコ規格を制定することと規定されており、NMX-COE-001-SCFI-2018が施行されました。メキシコ規格は順守義務を課す規格基準ではなく、この規定に反した場合の制裁もありませんが、消費者とのトラブルを回避するためにも従うことが推奨されます。

    1. 情報提供や広告
    2. ウェブサイト等で提供される情報及び広告は、真実性、検証可能性、明確性を有するものであり、誤解を招くような、又は乱暴な表現によりユーザー及び消費者を混乱させる可能性のある文字、ダイアログ、音、イメージ、その他の概念を含んでいてはなりません。
    3. 商品やサービスに関する情報及び広告は、スペイン語で明瞭かつ読みやすい文字で書かれていなければならず、価格や料金は、メキシコペソで記載されていなければなりません。ただし、補足的に他の言語や通貨で表示しても構いません。疑義が生じた場合は、スペイン語やメキシコペソの表示が優先されます。
    4. ウェブサイト等で公開すべき商取引の条件
    5. ウェブサイト等では、少なくとも次の情報を含む取引の条件を公開しなければなりません。

(a) サプライヤーを特定するための情報

i)屋号、ii)ブランド(該当する場合)、iii)商号(該当する場合)、iv)メキシコ国内の住所、v)納税者番号(Registro Federal de Contribuyentes、通称RFC)、vi)電話番号、又はその他の連絡手段(ソーシャルメディア)、及びvii)電子メールアドレス、ウェブサイトURL、運営している外部ポータルサイトURL

(b) ウェブサイト等の機能における利用不能、アクセス不能、又は中断から生じる責任に関する情報

(c) 商品やサービスの取得手続きに関する情報

これには、商品やサービスの特性や制限事項を知ることができる箇所を示す必要があります。

(d) 法に定める消費者の権利に関する情報

これには、消費者が責任又は正当な理由なく同意を取り消すことができるようにするための手続きを含める必要があります。なお、この取消の条件は次の通りです。

・ 商品の引渡又はサービスの受領の時期から5営業日以内であること

・ 商品又はサービスが使用又は消費されていないこと

・ 商品又は製品が引き渡された当初の状態(付属品、包装、マニュアルなどを含む)で保管されていること

・商品又はサービスの購入及び支払いが証明できること

(e) 通知方法又は消費者との連絡手段に関する情報

(f) 商品やサービスの返品又は交換、あるいは該当する場合には払い戻しの仕組みに関する情報

これには、必要な場合は、税務証憑の取得及び税務証憑の修正の仕組みに関する情報を含みます。保証は法律に定める期間を下回ってはならず、これを提供する場合には、保証期間を通知しなければなりません。

(g) 対応する曜日や時間帯、解決までの所要時間を含む、苦情や問い合わせへの対応に関する情報

(h) 紛争が発生した場合に適用される規則及び方針、並びに法的解釈や、適用されうる法律やメキシコ連邦消費者保護局の権限

(i) 該当する場合には、ウェブサイト等へのアクセスに関する年齢制限。

これは、ウェブサイト等の内容及び事業の性質によって決定されます。成人専用のサイトでは、未成年者のアクセスをブロック又は防止する仕組み、又はユーザーや消費者が連邦民法で定められた法定年齢に達していることを表明する通知を表示する仕組みを設ける必要があります。

(j) ユーザー又は消費者の登録及びアクセスに関する要件、並びにウェブサイト等の使用に関する規定

(k) 情報セキュリティを危険にさらす可能性のある情報を除く、ウェブサイト等のセキュリティメカニズムに関する情報

(l) 請求と支払の条件、税務証憑や商取引の証憑の入手方法、それらの訂正を求める方法

(m) 輸入された商品の場合、商品の原産地

商品には、修理可能な場所や使用方法の通知、及び法律で定められた最低限度の保証が含まれていなければなりません。

(n) 必要な場合は、商品の返送と商品の交換又は支払金額の返金や割戻を求める権利、あるいは補償を受ける権利の通知

交換や返金は次の場合に可能となります。

・商品が返送される場合

・品質、ブランド、仕様等が提供された情報と異なる場合

・ラベル、容器、包装に関する規定などメキシコの公式規格に準拠していない場合

事業者の責に帰すべき事由により、サービスの提供に不備がある、又は提供されない場合、又はメキシコの公式規格に準拠していない場合には、割戻し又は補償を受ける権利を通知しなければなりません。

3 商品、製品やサービスに関する情報

提供される商品、製品又はサービスの内容は広告で提示されたものと一致しなければなりません。したがって、ウェブサイト等は、提供される商品、製品又はサービスに関する情報を表示し、常に最新の状態に保たなければならず、少なくとも次の内容を含んでいなければなりません。

(a) 商品の場合

i) 仕様(寸法、機能、色、品質、製造に使用された材料、新品か中古であるか、中古の場合、修理済み、使用済みといった情報)を含む商品の説明、ii) GTIN(Global Trade Item Number、商品識別コード)(任意)、iii) 商品や製品の入手可能性や在庫状況、iv) メキシコペソでの支払い総額、その他税金や追加料金、該当する場合は、キャッシュボーナス、景品、割引など、v) 保証を提供する場合は、保証期間、vi)配送形態(費用、時間、配送オプションを含む)、並びに配送事業者を利用する場合の配送事業者の責任、及びvii) 該当する場合は、視聴覚的識別手段及び操作方法(写真、ビデオ、説明書、品質証明書、マニュアルなど)

(b) サービスの場合

i) サービスの説明(サービス提供の日時、場所、サービス提供者など)。また、サービス提供のために下請事業者を利用する場合は、その旨と下請事業者に関する情報、ii) 保証を提供する場合の保証期間、iii) 適用されうるサービスの制限、iv) サービスの期間、v) メキシコペソでの支払い総額、その他税金や追加料金、該当する場合は、キャッシュボーナス、景品、割引など、定期的な料金の支払いの有無とその変更方法、vi) サービスの更新、変更、解除や解約の手順、vii) 当初の契約内容に変更が生じる場合の通知と同意の方法

ウェブサイト等は、消費者が商品・製品・サービスを評価し、商取引の経験をフィードバックするとともに、他の消費者の評価や意見を知ることができる仕組みを有していなければなりません。

4 個人情報の取扱

プロファイリング、オンライン行動分析、マーケティング、広告又は商業的調査を目的としたユーザー及び消費者の個人情報の取扱については、以下の対応が必要となります。

(a) 個人情報の取扱について、プライバシーポリシーで通知すること

(b) 事前にユーザー又は消費者本人の同意を得ること

プライバシーポリシーとは別に、事前にユーザー又は消費者に対して、かかる目的で個人情報を利用することについて同意を求めることができる仕組みを用意しなければなりません。

(c) 同意を撤回するために利用できる手段と手続の提供

また、事業者は、個人情報保護法などに定める個人情報保護に関する義務を考慮して、ウェブサイト等を設計または選択するなど個人情報の取扱に適切な措置を講じなければなりません。

5 取引の取消等

ウェブサイト等は、消費者が取引の確認、承諾、修正又は取消を行うことができる仕組みを有していなければなりません。

(4) 付加価値税法及び税務細則上の規定内容

デジタル・サービスの提供については、メキシコ国内に拠点を持たない海外居住者であっても、当該サービスの提供にかかる付加価値税を負担することになります。

  1. また、サービスの受領者から要求があった場合は、居住する地域で適用される規則に従って、領収書(PDFファイル形式)を電子的に発行し、送付しなければなりません。この領収書には、①発行者の氏名又は法人名、②発行された国と都市、③発行者の納税者番号、④サービスの対価としての価格(付加価値税を除く)、⑤サービスにかかる付加価値税、⑥サービスのコンセプトや説明、⑦発行日と対価の対象となる期間、⑧受取人のRFCが記載されている必要があります。

対象となる「デジタル・サービス」は、画像、映画、文章、情報、動画、オーディオ、音楽、ゲーム、その他のマルチメディアコンテンツ等へのアクセスやダウンロード(電子書籍、新聞、雑誌へのアクセスやダウンロードは除く)、商品・サービスの提供者と利用者を仲介するサービス、オンラインクラブやデートサイト、オンラインでの通信教育やテスト、演習が該当します。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、Eコマースの急成長に伴い、これまでNational Digital Commerce Policy, 2018(2020年に改正)、Digital Commerce Operation Guidelines, 2021(以下「ガイドライン」)が商務省により施行されています。実務で必要な事項を定めているガイドラインの概要をご紹介します。

  1. 目的及び適用範囲

 デジタルコマース事業における透明性、説明責任を促進し、雇用機会と消費者保護を創出し、デジタルコマース事業に規律をもたらし、起業家に機会を提供する競争市場を創出することにより、消費者の信頼と権利を高め、確保するための措置を講じることを目的としています。バングラデシュ国内の事業及びデジタルコマース管理にその関連法が適用される事業を行う全てのデジタルコマース事業者に適用されます。

     2. 事業者の要件

 ガイドラインでは、すべてのデジタルコマースオペレーターが営業許可、VAT登録、納税者識別番号、少なくとも1つの独自のビジネスID番号(UBID)又は個人の小売アカウント(PRA)番号を取得し、それらをマーケット又はソーシャルメディアページに表示する必要があると明記しています。UBID又はDBIDの登録は、2022年2月に立ち上げられたポータルmygov.bdにて可能です。すべての外国のデジタルコマース事業者は、バングラデシュで登録し、事業実施のために当局から許可を得る必要があります。

マーケットは、第三者によって提供される商品又はサービスに関する情報が提供され、取引プロセスが完結するデジタルコマースサイト又はポータルとして定義されます。マーケットは、第三者の売り手との間で別段の合意がない限り、必要な手数料と配送料を差し引いた金額を10日以内に第三者の売り手に支払う必要があります。

        3. 必須記載事項

 購入と返品の詳細な条件、商品の数量、材料、価格、配送料、その他の料金などを表示し、さらに、購入者が情報に基づいて決定できるように、販売する商品の画像や動画などを提示する必要があります。デジタルコマース市場又はFacebookページは、ベンガル語およびその他の言語(必要な場合)で記載し、購入と販売、払い戻し、返品又は商品の変更、配送方法、配送時期その他の条件のポリシーを明確に表示する必要があります。

        4. 制限事項

 爆発物など禁止されている商品やサービスをデジタルコマースプラットフォームで購入又は販売することは禁止されています。オンライン競売又はオンライン賭博、政府の承認なしの宝くじや抽選はできません。また、医薬品管理局からのライセンスのない、デジタルコマースプラットフォームでの医薬品の販売、バングラデシュ銀行の許可なく、デジタルメディアを介した金銭に関連するビジネスを行うことはできません。

       5. その他の要件

 デジタルコマースプラットフォームは、個人データを取得する場合、どのような情報を取得するのか、どこに保存されるのか、使用目的、処理プロセスについて知らせ、購入者の事前の承認を得る必要があります。バングラデシュ銀行の許可なしに、又はバングラデシュ銀行の指示に違反して、デジタルウォレット、ギフトカード、現金バウチャー又はその他の支払い方法を実施することはできません。事業に関連するすべての情報は、少なくとも6年間保存され、要求に応じて政府機関に提供されるものとします。配送のタイムラインも明確化されており、ガイドラインに従い、同じ都市内で配送される製品は、支払いが行われる場合は5日以内、別の都市に配送される場合は10日以内に配送されるものとします。日用品又は生鮮品の場合、配達はより早く行われ、購入者に同様に知らされなければなりません。

     6. 苦情と救済措置のメカニズム

 マーケットには、消費者が苦情を申し立てることができる必要な電話番号、電子メール、その他の通信手段を含める必要があります。かかる苦情は記録されなければならず、解決策は72時間以内に消費者に提供されなければなりません。デジタルコマースプラットフォームは、適切な評価及びレビューシステムを確保することになっており、購入者はそれらを表示して情報に基づいた選択を行うことができ、レビューはプラットフォームによって消去されません。

 当局は、ガイドラインに準拠していないプラットフォームに対して必要な措置を講じることができ、その措置には、マーケットの禁止、営業許可、会社登記、VAT登録の取り消しなどが含まれます。ガイドラインを遵守しないこと生じた損失に対する救済措置として、影響を受ける者又は購入者は、消費者権利保護局を含む関係裁判所に苦情を申し立てることができます。

 

7.フィリピン

 現在の電子商取引法は、「国内及び国際間での商取引、取り決め、合意、契約及び情報の交換・保存を、電子的、光学的、その他の媒体、様式、手段、技術の活用を通じて円滑化することで、上記諸活動に関連する電子文書が真正で信頼に足るものであることを保証し、行政および一般公衆における電子的取引の普遍的な活用を促進する」ことを趣旨とし、2000年に制定されました。

 同法の下では、電子的文書はその他の媒体で書かれた文書と同様の法的効力、妥当性、執行力を有しており、現行法において、紙媒体の文書と証拠としての機能として等価であるとされています。電子署名もまた、紙媒体における署名と等価であるとみなされます。

 電子的文書、電子署名、および電子的メッセージが司法手続において証拠として採用されるためには、紙の文書と同様、それらを真正ものとして証明しなければならず、司法手続においてこれらを立証しようとしている者にその証明義務が発生します。証明の方法は貿易産業省によって公布された施行規則(IRR)が定めるところに従わなければなりません。

 また、電子情報へのアクセス権を持つ者は、その情報の秘匿性を守り、他者に共有してはならず、ハッキングや違法コピー、さらには消費者法やその他関連法に違反した者を処罰の対象とすることも定められています。

 E-コマースを行う場合、事業の性質上小売事業としての性質を伴う場合があります。小売事業をフィリピンにおいて営む場合には外資規制に則った資本要件を満たす必要があるため注意が必要です。

 

8.ベトナム

 ベトナムにおけるE-コマースは、主に政令52号及び政令85号によって規定されています。政令85号は、政令52号を改正する法律であり、2022年1月1日から施行されています。

(1) 外資規制

 ベトナムでE-コマース事業を行うためには、会社を設立するか、既存会社の株式購入又は出資のどちらかの投資形態によります。出店者/販売者数、取引量、金額等をもとにベトナムでのE-コマース事業者として上位5社にリストされた企業を支配するためには、公安省による国家安全保障に関する評価を受ける必要があります(政令85号67c条)。

(2) ECサイト開設に関する規制

 ベトナムにおいてECサイトを開設する場合、商工省(MOIT:Ministry of Industry and Trade)に届け出なければなりません。組織の場合は、ECサイトを開設・運営に関連する機能を有していること、個人の場合は税務コードが必要となります。また、有効なドメイン名を持つウェブサイトがあり、情報管理に関する規則を遵守していることも必要となります(政令52号52条)。

(3) ベトナムにてECサイトを開設する外国法人/外国人投資家に対する規制

 ベトナム国内において会社を設立しなくても、ベトナムのドメイン名で開設されたECサイト、ベトナム語で表示されたECサイト又は1年以内にベトナムでの取引が10万件以上あるECサイトを有しサービスを提供する者は、政令85号の規制の適用対象となります。この場合、政令に基づきE-コマース事業の登録を行うこと、及び駐在員事務所の設立又はベトナムにおける代理人の任命等の手続を行わなければなりません(政令85号67a条)。

(4) ベトナムのECサイトで商品を販売する外国法人/外国人投資家に対する規制

 ベトナムでECサイトを開設し運営する者は、当該ECサイトにて商品を販売する外国法人/外国人投資家に対して身元を確認する義務を負います。また、当該外国法人/外国人投資家に対する輸出入権の登録の要請、ベトナムにおける代理店の選定を要請、買主から委託された輸入手続の実施等の責任を負います(政令85号67b条)。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年2月25日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現在、以下の期間・区域において、まん延防止等重点措置が実施されています。

1月9日から2月20日まで: 広島県、山口県、沖縄県

1月21日から2月13日まで: 群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、岐阜県、愛知県、三重県、香川県、長崎県、熊本県、宮崎県

1月27日から2月20日まで: 北海道、青森県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、石川県、長野県、静岡県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、岡山県、福岡県、佐賀県、大分県、鹿児島県

 感染拡大防止のための取り組みとして、各都道府県の知事の判断による、飲食店等に対する制限(時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

オミクロン株対応の水際対策措置として、「特段の事情」がある場合を除く、全ての国・地域からの外国人の新規入国の停止が、2月末までの間、継続されています。

(1) 検疫の強化

「オミクロン株(B.1.1.529系統の変異株)に対する指定国・地域」、「水際対策上特に対応すべき変異株等に対する指定国・地域」、「水際対策上特に対応すべき変異株以外の新型コロナウイルスに対する指定国・地域」として、それぞれ措置を講じていますので、日本入国に当たっては、出発する国がどの指定国・地域に該当するか確認したうえで対応する必要があります。

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は2,415,472名です。この内、2,309,648名が回復し、累計死亡者数は22,129名となっています。1月に入ってからオミクロン株の感染が拡大しておりますが、新規感染者は1日7千人程度で推移している状況です。

タイ政府は、1月21日、管理区域の再指定を行っています。バンコク都を含む26都県は、引き続き「ブルーゾーン」に指定されています。バーや娯楽施設については営業が認められておりません。イエローゾーン、ブルーゾーンは、飲食店でのアルコールの提供について、認証を受けた施設は午後11時までの提供が認められています。

2.2 入国規制

タイ政府は、2月1日(火)午前9時より、隔離免除でのタイ入国(Test and Go)を再開することを発表しています。従前の手続きと同様、Thailand Passにより登録を行う必要があります。

タイ入国後のPCR検査について、以前はタイ到着日の1回の検査のみでしたが、今後は、タイ入国後5日目にも、指定場所にてPCR検査を行う必要があります。

1日目:タイ到着後、政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。

     陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。

5日目:政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。

     陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。

(参考サイト)

在タイ日本国大使館HP:Test and Goによるタイ入国手続き登録再開のお知らせ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 1月27日の新規感染者数は、5,439人であり、ピーク時の4分の1程度となっています。現在は、オミクロン株の感染者数を他の東南アジア諸国に比べ抑えられていますが、これから流行していくとみられています。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限であるNRP(National Recovery Plan(これまではFMCOと呼ばれていました))では、全ての州が一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。

3.2 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下①~⑤に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国
  6. ランカウイ島へのトラベルバブル制度を利用した入国
  7. 目的を限定とした14日以内の短期商用(潜在的な投資家・既存の投資家・ビジネス顧客・技術者)での入国

すべての渡航者は、出発前2日以内にPCR検査(スワブ検体)を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。隔離期間は、ブースター接種済みの成人又は単独で渡航する若年者(12歳から17歳)は5日間、ブースター未接種のワクチン接種完了者は7日間、ワクチン接種未完了者は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は落ち着いてきています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらず、日常化している印象を受けます。

4.2 入国規制

1月は 6日、20日にANA 便が飛びました。2月は 3 日、17 日に救援便が運航予定です。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

1月に入りメキシコのCOVID-19感染者は急増し、1月19日には一日の新規感染者数が60,552人を記録しました。リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)も後退を見せ、1月24日の週は、赤が1州、橙が9週、黄色が10州、緑が12州となり、日系企業も多いアグアスカリエンテス州はこれまでの黄色から赤に変更されました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられており、マスクの着用などの要請は継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは新規感染者数が急増しており、1月26日の政府発表によると、新たに確認された感染者数は15,517人で、検査陽性率も31.64%と相当に高く、一部の病院ではCOVID-19用の病床稼働率が高い水準になっている模様です。

 2022年1月13日付で、住居の外でのマスク着用、レストランでの飲食やホテル滞在及び教育機関への入構にあたってワクチン接種証明書を提示すること、鉄道、バス、船舶は定員の半分で運行すること、社会的、政治的、宗教的行事又は集会の停止、などの行動規制が発表されました。

 1月21日付の行動規制では、2月6日までの教育機関の閉鎖、100名以上の集会の禁止かつ参加者は必ず新型コロナウイルスワクチン接種証明書と24時間以内のPCR陰性証明書を持参しなければならないこと、政府や民間オフィス、工場において、従業員は新型コロナウイルスワクチン接種証明書を取得しなければならないこと、などが定められています。

 さらに、1月23日、以下を含む新たな行動規制が発表されました。

全ての政府系機関及び民間事務所は、感染予防規則を遵守し、半数の従業員により営業しなければならない。その他の従業員は自らの居所に留まり、オンラインで、業務を遂行する。

6.2 入国規制

 現在、日本からの渡航者については、隔離が免除されていますが、入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗前48時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明の提示が求められます。また、政府より、1月13日から有効となる行動規制に「外国からの旅行者を含め全ての者は新型コロナウィルスワクチン接種証明書を必ず提示しなければならず、迅速抗原検査を受検しなければならない」が含まれますが、13日以降に入国した日本人渡航者によりますと、実際には、ワクチン接種証明書の提示も抗原検査の受検も求められていないようです。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計349万3447人で、死者数は累計53,736人です(2022年1月27日現在)。新規感染者は2021年9月初旬をピークとして減少傾向にありましたが、同年の年末以降急激に増加し、2022年1月18日をピークとして、現在は1日約2万人前後の新規感染者が報告されています。

 1月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル3」とされています。フェイス・シールド使用に関する規則によると、現時点で警戒レベル3以下の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。

7.2 入国規制

  1. フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「グリーン」国(管轄区域・地域)に該当します。2022年1月16日以降、グリーン国から入国する場合は出国前48時間以内に受検したPCR検査の陰性結果が必要です。詳細は以下のとおりです。
  2. 完全にワクチン接種した、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果を提示する渡航者は、到着後、検疫所指定の施設における強制的検疫隔離の対象とはならない。ただし、到着日を初日として、7日目までセルフ・モニタリングを行う必要がある。
  3. ワクチン接種を受けていない、部分的にワクチン接種を受けた、またはワクチン接種状況の有効性、信憑性が検証・確認できないが、出発国出発前48時間以内の陰性のRT-PCR検査結果を提示する渡航者は、到着日を初日として、5日目に行われるRT-PCR検査の陰性結果を受けるまで検疫所指定の施設における検疫隔離を受ける必要がある。その後、到着日を初日として、14日目までセルフ・モニタリングを行う必要がある。
  4. 出発国出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果は2022年1月19日午前0時1分まで有効とみなされる(グリーン国・イエロー国・レッド国共通)。
  5. 上記の影響を受けないIATF決議第154-C号のすべての規定は、引き続き有効である(グリーン国・イエロー国・レッド国共通)。
  6. また、フィリピン政府は、フィリピンに入国する渡航者の検査・検疫規則の変更を決定し、2022年2月16日以降、フィリピンに入国するすべての外国人については、完全なワクチン接種の証明を入国の要件とすることとしました。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

 2022年1月7日、日本において新たな水際対策措置が決定され、フィリピンからのすべての入国者及び帰国者は、1月10日午前0時(日本時間)から、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で3日間待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになっています。

第2.各国の株式譲渡手続の概要

1.日本

 株式譲渡について、主に会社法にて定められています。

(1) 株式譲渡にあたって確認すべき事項

  1. 株券発行会社であるか

株券発行会社であるか株券不発行会社であるかによって、株式譲渡の方法および対抗要件が異なるため、事前に確認する必要があります。株券発行会社で、実際に株券を発行していない会社もありますので、注意が必要です。株券発行会社か否かについては、登記簿謄本で確認することができます。

    2. 株式に譲渡制限があるか

株主は株式を譲渡することができますが(会社法第127条)、譲渡制限がある場合、会社の承認が必要です。

(2) 株式譲渡の手続き

  1. 株式譲渡承認の請求

前述の通り、譲渡制限株式の譲渡については、会社から承認を得なければなりません。譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法第136条)。また、譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法第137条1項)。

     2. 株式譲渡の承認にかかわる決議

譲渡制限株式の譲渡を承認するか否かの決定をするには、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会(取締役会設置会社の場合は、取締役会)の決議によらなければなりません(会社法第139条1項)。また、株式会社は、譲渡等承認請求をした者に決定の内容を通知しなければなりません(会社法第139条2項)。

株式会社が、譲渡制限株式の譲渡を承認しない旨の決定をした場合で、承認請求者から「不承認時に会社または指定買取人が買い取る請求」を受けた会社は、次のいずれかで、当該譲渡制限株式を買い取らなければなりません。(i) 会社が買い取る(会社法第140条1項)、(ii) 指定買取人が買い取る(対象株式の全部又は一部を買い取る者)(会社法第140条4項)、(iii) 指定買取人が一部を買い取り、残りを会社が買い取る(同項)。

      3. 株式譲渡契約の締結

譲渡の当事者間で譲渡契約を締結します。譲渡契約は法律にて義務づけられていませんが、特に株券が発行されない場合は、株式の売買を確実なものにするために、株式譲渡契約を締結するのが一般的です。

      4. 代金決済

譲渡契約に基づき、譲渡対価の支払いをします。株券発行会社の株式の譲渡の場合は、譲渡人から譲受人に株券を交付します。当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じません(会社法第128条1項)。

     5. 株式名義書換請求

原則として、譲受人と譲渡人が共同で(株券発行会社の場合は、株券を提示すれば譲受人単独でも可能です(会社法施行規則第22条2項1号))、会社に対して株主名簿を書き換えるように請求し(会社法第133条1項2項)、会社は請求に基づき、株主名簿を書き換えます。

株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができませんので(会社法第130条1項)、株主名簿の書換えの手続きを行う必要があります。株券発行会社の場合、株券の交付が会社以外の第三者に対する対抗要件となり、名簿の書換えが会社に対する対抗要件となります(会社法第130条2項)。

     6. 株主名簿記載事項証明書の交付請求

譲受人は会社に対して、株主名簿記載事項証明書を交付するよう請求することができ、会社は請求に基づき、譲受人に株主名簿記載事項証明書を交付します(会社法第122条1項)。

(3) その他の留意点

 株式の売却時について、譲渡所得が出た場合には、譲渡所得税がかかります。株式を取得した側については、原則として税金は発生しませんが、相続税に該当するとみなされる場合や、「時価」と乖離した価格で譲渡された場合等は、税務上の対応が必要となります。

 

2.タイ

 タイにおける株式譲渡手続等については、民商法典(Civil and Commercial Code, CCC)にて定められています。

  1. 株券の発行

タイにおいては、会社は株主に株券を交付しなければならないとされており、全ての株券には少なくとも取締役の1名が署名し、会社印が押印されている必要があります。また、会社名称、株式番号、1株当たりの価格、株主名等が記載されている必要があります(CCC第1127条、1128条)。

      2. 株主名簿

株主名簿は、会社登記日以降、会社の登記住所にて備え付けておく必要があります(CCC第1139条)。この株主名簿には、株主の氏名、住所、株券番号、払込額、株主登録年月日、株主が抹消された場合にはその抹消年月日等を記載する必要があります(CCC第1138条)。

     3. 株式譲渡手続き

タイにおいては、定款にて株式譲渡制限を定めている場合等を除き、原則自由に株式を譲渡することができます。しかし株式譲渡については書面で行われる必要があり、当該書面には譲渡人及び譲受人それぞれが署名し、1人以上の証人による署名が必要となります。また、当該株式譲渡は、譲渡の事実、譲受人の氏名及び住所が、会社備付の株主名簿に記載されるまで、会社及び第三者に対して対抗することができません(CCC第1129条)。

     4. 株主リストの登録

少なくとも毎年1回、定時株主総会後14日以内に、当該総会時の株主名簿のリストをDBD(商務省)に登録する必要があります(CCC第1139条)。このDBDに登録されている株主リストが、BOJ5(Bor Or Jor 5)と呼ばれるものです。ただ、このBOJ5は最新の株主を証明するものではなく、あくまでも会社備付の株主名簿に記載されている株主が、最新の株主を証明するものとなります。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおける株式譲渡は、会社法(Companies Act 2016)によって規定されています。

(1) 譲渡制限

 非公開会社においては、株式の譲渡は制限されています(42条(3))。しかし、同項は、非公開会社は株式の譲渡を制限しなければならないとの規定を置くのみであり、制限の内容(譲渡の承認を行う機関)について具体的な規定を置いていません。

 そのため、株式譲渡の条件・手続については、定款で規定する必要があることになます。

 マレーシアの非公開会社においては、定款が株式譲渡の要件・手続について具体的な規定を置いていないことがあり、このような場合には株式を取得する際に必要な手続や満たすべき要件が不明確となり後の紛争の要因になることもあります。小規模な会社で、大多数の株主(このような場合、株主が取締役も兼ねていると思われます)の同意が取得できる場合には、株主総会決議や取締役会決議を得ることでリスクを回避できる場合が多くあります。決議が取得できないような事情が存在する場合には、後日発生しうるリスクについて慎重に検討する必要があります。

 マレーシアの研究者や弁護士が執筆した文献においては、譲渡制限の例として、以下のものが挙げられています。

  1. 株主が株式の譲渡を希望する場合、最初に既存の株主に申込をしなければならない。
  2. 株式譲渡については、取締役(又は株主)の決定に従う。
  3. 株式の譲渡は、特定の者(創業者等)にのみ行うことができる。
  4. 株式譲渡の方式
  5. 株式を譲渡する場合、譲渡証書を作成し、法令に従った印紙税を納めた上で会社に提出する必要があります(105条(1))。また、株券が発行されている場合は、株券も一緒に提出しなければなりません(98条(2))。

 

4.ミャンマー

株式譲渡手続きについては、買い手との間で株式譲渡の条件について合意すれば、法的手続きとしては非公開会社の場合には対象会社の取締役会による承認を行った上でMyCO (Myanmar Companies Online) で株主変更を行うことで可能です。申請から承認までの期間は通常は数日であり、オンラインでの申請となります。株式譲渡契約書はMyCOとの関係では不要ですが、株式譲渡後の対象会社の権利義務関係や株式譲渡の対価などで紛争が生じるのを避けるため、実務上は株式譲渡契約書を作成の上締結することが一般的です。

 

5.メキシコ

(1) 株式譲渡の流れ

メキシコにおける株式会社であるSociedad Anónimaにおける株式譲渡手続をご紹介します。

株式譲渡にあたっては、株式譲渡契約書の締結、株主総会決議(必要な場合)、取締役会決議(必要な場合)、株主間の株券引渡し、株主名簿の書換え、その他関係省庁への届出などの手続を行う必要があります。

(2) 株式譲渡契約書の締結

メキシコの法律上、株式譲渡にあたって、株式譲渡契約書の作成は義務付けられていません。しかし、権利義務を明確にするためにも、対象株式、譲渡金額、支払期日、譲受人の届出等の諸手続の義務などを定めた株式譲渡契約書を作成することが一般的です。

(3) 株式譲渡の自由とその制限

メキシコにおいても、株式会社の株主は、原則としてその有する株式について自由に他人に譲渡することができ、株式譲渡の自由が認められています。

ただし、株式の譲渡制限を行うこともでき、株式の譲渡が取締役会の承認を得てのみ行われる旨を定款に定めることもできます。譲渡承認請求を受けた取締役会は、現在の市場価格で株式を買い受ける者を指定することにより、承認を拒否することができます。

また、会社によっては、株主の情報が定款に記載されていることから、株式譲渡に伴い定款変更が必要となる場合もあります。この場合は、株主総会を開催する必要が生じます。

(4) 株券引渡し

株式譲渡が行われる際、譲渡人から譲受人に対し、株券の引渡しが行われることになります。ただし、株券が表象する株式数と譲渡株式数とが一致しない場合には、譲渡人は株券を株式会社に返却し、株式会社は新たな株券を発行することになります。

(5) 株主名簿の書換え

株式会社は、株主名簿に株主として記載されている者をその会社の株主として取り扱います 。そのため、株式の譲受人は株式会社に対し、自らが株主名簿に記載されるよう株主名簿の書換えを請求します。

(6) その他の届出

    1. 国税庁(Servicio de Administración Tributaria、通称SATに対する手続
    2. 株主の情報が変更された日から30日以内に、株主情報の更新通知(Aviso de modificación o incorporación de socios, accionistas, asociados y demás personas que forman parte de la estructura orgánica de una persona moral, así como de aquéllas que tengan control, influencia significativa o poder de mando)が必要となります。
    3. また、関連取引の情報提供のための申告書(Declaración Informativa de Operaciones Relevantes)の提出が必要となる場合もあります。
    4. その他、譲受人が、RFC(納税者番号)を持たない場合には、メキシコ所在法人のRFC登録をしないことを選択した海外に所在する株主等の申告(Declaración de relación de los socios, accionistas o asociados residentes en el extranjero de personas morales residentes en México que optan por no inscribirse en el RFC)が必要となります。
    5. 経済省(Secretaría de Economía)に対する手続
    6. 株主に関する情報は経済省のシステムに掲載しなければなりません。そのため、上記(5)株主名簿の書換えのほか、最新の株主情報を当該経済省システムにおいて公開しなければなりません(Aviso de inscripción en el libro especial de los socios o en el registro de acciones con la estructura accionaria vigente)。
    7. 経済省外資局(Registro Nacional de Inversiones Extranjeras、通称 RNIE)に対する手続
    8. 外国の個人又は法人の資本への参加に関する変更が2000万ペソを超える場合、経済省外資局に対する四半期更新通知(Aviso de Actualización Trimestral presentado al Registro Nacional de Inversiones Extranjeras Sociedades Mexicanas)を行わなければなりません。これは、譲渡実施日が属する四半期の最終日の翌日から起算し10営業日以内に報告書を提出することにより行います。なお、各四半期は1-3月、4-6月、7-9月、10-12月とされています。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、株式は動産とみなされ、会社の定款に従い、譲渡することができます(会社法第30条(1))。非公開会社の株式譲渡の場合は、対象会社の取締役会決議による譲渡の承認決議を得たうえで、取締役会議事録や株式譲渡証書等の必要書類を商業登記所に提出し、承認を得る必要があります。株式譲渡の登録は、譲渡人又は譲受人のいずれかが、双方が署名し締結された譲渡証書その他必要書類を会社に提出して、申請します。会社が株式譲渡の登録を拒絶する場合は、譲渡証書が会社に提出された日から1か月以内に、拒絶通知を譲渡人及び譲受人に送付しなければなりません(会社法第38条(1)から(4))。

 譲渡人又は譲受人がバングラデシュ在住でない場合は、代理人が手続きを行うことは可能ですが、提出書類について、当事者の居住国のバングラデシュ大使館による認証が必要です。また、譲渡先が海外の株主の場合は、株式譲渡の支払いについて着金証明を商業登記所へ提示する必要がありますが、譲渡先がバングラデシュ国内の株主の場合、提出は求められません。

 

7.フィリピン

 フィリピンにおいて、株式は、個人財産として、売却、贈与、相続を原因として譲渡することが可能であり、担保権の対象とすることもできます。

 フィリピン改正会社法第62条は、株式譲渡に関する要件を規定しています。

(1) 株券の交付

(2) 株券上の裏書

(3) 株式名簿上の名義書換

の三つの要件です。

 株券の交付及び裏書によって譲渡は有効といえますが、会社及び第三者との間でもこれを有効とするためには、株主名簿上の名義が書換えられる必要があります。SEC(証券取引委員会)の見解によると、株主としての権利は、会社の株主名簿に名義が記載されて初めて発生します。

 また、SECは、株券の交付及び裏書による方法によるほか、定款で特定の譲渡方法が指定されている場合を除き、証書(Deed)による譲渡も可能と指摘しています。 ただし、証書による譲渡は、株券が発行されておらず、それを株主が保有していない場合にのみ認められています。

 さらに、 譲受人は、当該株式譲渡取引にかかる税金を支払い、その後、BIRから登録許可証(CAR)を取得する必要があります。

 これらのBIR(内国歳入庁)に関する手続は必ず履践する必要があり、懈怠した場合、秘書役が税法の規定に基づいて責任を問われることになることに留意する必要があります。Revenue Memorandum Order No.15-03では、株主名簿の書換の前提としてCARを発行することが求められています。また、Revenue Regulations No.06-08の第11節では、納税したことを示す領収書が秘書役に提出されない限り、その株式移転を禁止しています。

 BIRは対しキャピタルゲイン税と印紙税の支払いが完了した後、必要書類とともにCAR取得の申請を行います。未上場株式の譲渡の場合、これらの手続に関する必要書類は以下となります。

(1) TINナンバー、

(2) ノータライズ済の譲渡証書の原本及び写し、

(3) 株券の原本及び写し、

(4) 株式取得費用の証明、

(5) 支払証明としての領収書又は預金通帳、

(6) 取引日に最も近い発行会社の監査済財務諸表(AFS)

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

Newsletterの記載内容は2022年1月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現在、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は出されていませんが、政府からは、感染再拡大防止のための取り組みとして、引き続き、飲食店等に対する制限(感染拡大が見られる場合の時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

オミクロン株に対する水際措置の強化として、これまでの緩和措置が停止され、外国人の新規入国停止など、新たな措置が取れられています。

(1) オミクロン株に対する指定国・地域

オミクロン株に対する指定国・地域ついて、別途指定されています。

(2) 外国人の新規入国停止

11月30日午前0時(日本時間)以降、外国人の新規入国が停止されています。

(3) モニタリングの強化等

オミクロン株に係る指定国・地域からの帰国者・入国者について、入国者健康確認センターの健康フォローアップを強化するとともに、変異株サーベイランス体制が強化されます。

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は2,204,672名です。この内、2,144,952名が回復し、累計死亡者数は21,528名となっています。規制緩和の流れがありましたが、オミクロン株のタイ国内感染者が報告されたこと等を受け、今後規制が強化される可能性があります。

2.2 入国規制

タイ政府は、12月21日、タイ入国システムであるThailand Passのシステムの運用方針の変更について発表しました。隔離免除での入国(Test and Go)及び、サンドボックス・プログラム(プーケットを除く)の新規受付を、一時的に停止することを決定しました。

強制隔離による入国及びプーケット・サンドボックス制度での入国については引き続き継続されています。

(参考サイト)

在タイ日本国大使館HP:タイ入国のための「Thailand Pass」の運用方針の変更等について

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連の規制状況

 12月23日の新規感染者数は、3,510人であり、ピーク時の5分の1以下に落ち着いています。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限であるFMCO(完全ロックダウン)は、クランタン州とサラワク州が第3段階の規制、残りの州が第4段階の規制下にあります。

 ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。

3.2 入国規制

外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。ワクチン接種完了者の隔離期間は7日間ですが、ワクチン接種未完了者の隔離期間は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は落ち着いてきています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらず、日常化している印象を受けます。

4.2 入国規制

12月は 3日、17日、24日にANA 便が飛びました。1月は 6 日、20 日に救援便が運航予定です。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、12月13日の週は、前回と変わらず黄色が5州、緑が27州となりましたが、アグアスカリエンテス州が前回の緑から黄色に変更されるなど、感染リスクが高くなる州も見られます。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、商業施設等に対する収容人数の制限などの規制を緩和する傾向がみられますが、マスクの着用などの要請は引き続き継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。12月11日に、ジンバブエから帰国したクリケット選手2名のオミクロン株の感染が確認され、隔離されていましたが、検査結果も陰性となり、20日に隔離を終えました。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置が、12月4日から有効となっています。日本からの渡航者については、隔離が免除されていますが、PCR検査が出発前72時間から48時間前と変更となっていますので注意が必要です。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. オミクロン株の発生に伴い、過去14日以内にボツワナ、エスワティニ、ガーナ、レソト、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエを出発・経由・訪問した全てのバングラデシュへの入国者は、費用自己負担にて、政府指定のホテルにて14日間の隔離を行わなければならない。また、隔離7日目と14日目に、費用自己負担で、PCR検査を受けなければならない。7日目の検査で陽性反応が出た場合は、更に厳格な隔離とされる。
  2. 更に、上記7か国からの入国者は、搭乗手続きの際に、ホテル予約証明書を提示しなければならない。また、航空会社はバングラデシュの保健当局に対し、搭乗者の旅券情報、バングラデシュの住所(滞在先)及び連絡先を知らせなければならない。
  3. 入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗48時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明を携帯すること。
 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計283万7784人で、死者数は累計50,916人です(2021年12月22日現在)。新規感染者は2021年9月初旬をピークとして減少傾向にあり、現在は1日約100~300人前後の新規感染者が報告されています。これは、9月初旬のピーク時の約1~2%にあたります。

 マニラについては、「NCR における COVID-19 対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。

 12月14日、フィリピン政府は、12月16日から12月31日まで、フィリピン全ての地域の警戒レベルについて、「レベル2」の継続を発表しました。フェイス・シールド使用に関する規則によると、現時点で警戒レベル2の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。

7.2 入国規制

フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「グリーン」国(管轄区域・地域)に該当します。

「グリーン」(管轄区域・地域)からフィリピンに入国する渡航者の検査・検疫規則は、以下のとおりです。

  1. 完全にワクチン接種した、出発国出発前72時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果を提示する渡航者は、到着日を含めて3日目に行われるRT-PCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要がある。その後、到着日を初日として、10日目まで自宅検疫を行う必要がある。
  2. ワクチン接種を受けていない、部分的にワクチン接種を受けた、またはワクチン接種状況の有効性、信憑性が検証・確認できないが、出発国出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果を提示する渡航者は、到着日を初日として、7日目に行われるRT-PCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要がある。その後、到着日を初日として、14日目まで自宅検疫を行う必要がある。
  3. 「グリーン」国(管轄区域・地域)を通過するだけの全ての渡航者(フィリピン人、外国人を問わない)は、空港内のみに滞在していた場合、また、入国管理局によってそのような国(管轄区域・地域)への入国を許可されていない場合、その国(管轄区域・地域)から来た、または行ったことがあるとは見なされない。
  4. 施設における検疫期間中は、フィリピン検疫局(BOQ)によって厳密な症状の監視が行われる。陽性であることが判明した場合、規定された隔離規則に従う必要がある。検疫完了後、BOQ渡航者個人の予防接種状況を示す検疫証明書が発行される。
  5. フィリピン運輸省は、航空会社に対し、出発国出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果の要件に準拠する渡航者(乗客)のみに搭乗することを保証させる。ただし、症状がない3歳以下の子供は、出発国に関係なく、出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果の提示要件が免除される。
  6. 未成年者に対する検査・検疫規則は、未成年者のワクチン接種状況及び出発国に関係なく、同行する親/保護者の検査・検疫規則に従う。

第2.各国の特許法の概要

1.日本

特許に関する事項は、特許法にて定められており、その目的は、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」と定義されています(特許法第1条)。特許を受ける権利は発明者にあり(特許法第29条第1項柱書)、その権利は、移転することができます(特許法第33条第1項)。特許権の効力として、特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有しますが、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りではありません(特許法第68条)。特許権の存続期間は、出願の日から20年ですが(特許法第67条第1項)、特許権の設定の登録が特許出願の日から5年を経過した日又は出願審査の請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後にされたときは、延長登録の出願により延長することができます(同条第2項)。

(1) 特許法上の発明

 特許法で保護対象となりうる発明について「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています(特許法第2条第1項)。

(2) 特許を受けることができる発明とは

特許を受けることができる発明の要件は以下の通りです。

1 産業上利用することができるかどうか(特許法第29条第1項柱書)

2 新規性(特許法第29条第1項)

 新しいものであるかどうかで新規性が判断されます。以下の場合は、特許を受けることはできません。

  • 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(特許法第29条第1項第1号)
  • 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(同項第2号)
  • 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(同項第3号)

3 進歩性(特許法第29条第2項)

 「容易に発明をすることができた」かどうかで進歩性が判断されます。特許出願前に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、上記の発明(特許法第29条第1項第1号~第3号)に基づいて容易に発明をすることができたときは、特許を受けることはできません。

その他、公序良俗に反する発明は特許を受けることはできません(特許法第32条)。また、先願主義が採用されており、先に出願されていた場合も、特許を受けることはできません(特許法第39条及び特許法第29条の2)。

(3) 職務発明

使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有すると定められています(特許法第35条第1項)。これに対して、従業者等は「相当の利益」を受ける権利を有し(同条第4項)、「相当の利益」の決定は、原則として使用者等と従業者等との間の自主的な取決めに委ねられていますが、自主的な取決めに従って利益を付与することが不合理である場合や、自主的な取決めが存在しなかった場合は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が負う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して決定されます(同条第7項)。

(4) 出願から特許権取得までの流れ

 特許権を出願(特許法第36条)すると、方式審査が行われ、出願書類が審査されます。さらに審査請求(特許法第48条の3第1項)をすると審査官による実体審査が行われ、特許を受けることができる発明の要件を満たしているか、拒絶理由がないかどうか調べられます。特許の要件を満たしている場合又は拒絶の理由が解消された場合は特許査定がなされ(特許法第51条)、特許料の納付により特許原簿に登録されると特許権が発生します(特許法第66条)。特許の要件を満たしていないものは、拒絶査定が出されます(特許法第49条)。拒絶査定を受けた者で、その査定に不服がある場合は、その査定の謄本の送達があった日から3ヶ月以内に拒絶査定不服審判を請求することができます(特許法第121条)。

 

2.タイ

タイにおける発明を保護する法律として、特許法(Patent Act B.E.2522)が制定されています。

(1) 登録要件

特許権は、創作の時点で発生する著作権とは異なり、商標権等と同様に、登録によって権利が発生します。発明が特許として登録を受けるためには、以下の登録要件を満たす必要があります(特許法第5条)。

発明に1新規性、2進歩性が認められ、3産業上利用可能であること

(2) 特許と認められない発明

以下の発明は、特許の対象外とされています(同法第9条)。

  1. 天然の微生物および微生物、植物、動物や植物からの抽出物を構成するもの
  2. 科学的、数学的な法則や理論
  3. コンピュータプログラム
  4. 人の疾病または動物の疾病の診断、治療または治癒の方法
  5. 公序良俗に反する発明、健康や福祉に反する発明

(3) 発明者の権利

発明者は、特許を受ける権利を有し、当該権利は、譲渡または承継可能とされています。ただし、当該権利を譲渡する場合には、書面にて行われる必要があり、譲渡人と譲受人が当該書類に署名する必要があります(同法第10条)。

(4) 職務発明

 職務発明とは、会社の従業者等が職務上行った発明をいいます。

  1. 特許を受ける権利

雇用契約または業務委託契約の履行においてなされた発明について特許を受ける権利は、契約に別段の定めがない限り、使用者または業務委託者に帰属します。この点について、日本とタイでは特許を受ける権利の帰属者の定めが逆となっているため、注意が必要です。

      2. 報酬請求権

 タイの特許法においては特許を受ける権利が原則、使用者等に帰属しますが、発明活動を促進し、従業者等に公正な分配を与えるために、発明者である従業者等は、使用者等が当該発明から利益を得る場合には、通常の給与以外の報酬を請求する権利を有します(同法第12条1項、2項)。この報酬請求権は、契約上の規定によっても妨げることはできないとされています(同条3項)。

(5) 特許出願手続き

特許出願書類には、次の事項が含まれている必要があります(同法第17条)。

  1. 発明の名称
  2. 発明の性質と目的
  3. 当該技術分野またはその他の関連技術の通常の知識を有する者が、本発明を作成し実施することができるような、完全かつ簡潔で明確な記述を含む本発明の詳細な説明であって、本発明を実施するために発明者が知っている最良の態様を示すもの
  4. 1つ又は複数の明確かつ簡潔な請求項
  5. その他省令で定める事項

(6) 方式審査

出願がされた特許については、DIP(知的財産局:Department of Intellectual Property)の担当官により、出願書類が同法第17条の規定を満たしているか、また同法第9条の、特許と認められない発明の事由(不特許事由)に該当しないどうかについて審査がなされます。

(7) 拒絶通知

同法第17条の規定が遵守されていないと思われる場合、または本発明が同法第9条に基づく不特許事由に該当すると思われる場合、事務局長は当該出願を拒絶し、担当官は事務局長による拒絶の日から15日以内に、書留郵便または事務局長が定めるその他の方法により、拒絶があった旨を出願人に通知することとされています(同法第28条第1項第1号)。

(8) 出願公告

同法第17条の規定が遵守されており、本発明が同法第9条に基づく不特許事由に該当しないと認められる場合、事務局長は省令で定める規則および手続きに従って、出願公告するように命じることとされています。当該公告が行われる前に、担当官は、事務局長が定める方法または書留郵便により、出願人に対して公告手数料を支払うよう通知をします。出願人が通知を受領した日から60日以内に公告手数料を支払わない場合、担当官により出願人に対して、再度、書留郵便で通知がなされます。出願人がその通知を受領した日から60日以内に公告手数料を支払わない場合は、当該出願を放棄したものとみなされます(同法第28条第1項第2号)。

(9) 出願公告後の手続き

出願人は、当該出願の公告後5年以内、または異議申立があり審判請求が行われた場合にはその最終決定後1年以内のいずれか遅くに満了する期間内に、本発明が同法第5条の登録要件(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)に適合するか否かの審査を進めるよう担当官に請求することができます。出願人がこの期間内に当該要求をしなかった場合には、当該出願を放棄したものとみなされます(第29条第1項)。

(10) 存続期間

特許件の存続期間は、特許出願日から20年間とされています(法第35条)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおける特許制度は、特許法(Patents Act 1983)によって規律されています。

(1) 概要

 特許法は、発明が新規性、進歩性及び産業上の利用可能性を有している場合は、その発明は特許を受けることができるとしています(特許法11条)。

  1. 発明及び発明の単一性

特許法により保護する発明とは、発明者の思想であって、当該技術の分野における一定の課題についての解決を実際に可能にするものをいうと定義されます(特許法12条(1))。そして、特許の出願は、1の発明又は単一の一般的発明概念を形成するように関連している一群の発明について認められます(特許法26条)。

      2. 新規性

発明が先行技術により予測されないものであるときはその発明は新規性を有するものと認められます(特許法14条(1))。

     3. 進歩性

先行技術を構成するすべての事項を考慮した場合に、その進歩性がそれにかかる技術において通常の技量を有する者にとって自明でないときは、その発明は進歩性を有するものとみなされます(特許法15条)。先行技術とは、その発明をクレームする特許出願の優先日前に、世界の何れかの場所において、書面による発表、口頭の開示、使用その他の方法で公衆に開示されたすべてのものをいいます(特許法14条(2)(a))。

     4. 産業上の利用

発明が、いかなる種類の産業においてでも、製造又は使用することができる場合には、産業上の利用可能性があるものとみなされます(特許法16条)。

(2) 登録

1 基本的な審査手続

特許の登録手続は1出願要件審査、2方式審査、3出願公開、4実体審査という手順で進められます。方式審査が終了後、改めて実体審査の請求をする必要がある点に注意が必要となります。実体審査においては、新規性、進歩性、産業上の利用可能性等が審査されます。また、実体審査の請求には、工業所有権所轄当局(日本で登録されている特許であれば日本国特許庁)における特許の出願番号及び出願日に関する情報等を添付しなければなりません(特許規則27条(3))。 

2 修正実体審査

日本において当該発明について特許を受けている場合、実体審査に代えて修正実体審査を請求することもできます。修正実体審査の場合は、特許を受けることができない発明か否か(特許法13条)及び新規性(特許法14条)については審査しますが、進歩性、産業上の利用可能性及び発明の単一性等の審査がないため(特許規則27D条(1))迅速に特許権を獲得することができます。

3 早期審査制度

以下のいずれかの場合には、早期審査を申し立てることができます(特許規則27E条(3))。

  1. 国家又は公衆の利益となる場合(同項(a))
  2. 登録出願する特許について、侵害行為が発生しているか、侵害行為が発生する可能性を示す証拠のある場合(同項(b))
  3. 出願人が当該発明を既に商品化しているか、早期審査請求日から2年以内に商品化する予定である場合(同項(c))
  4. 特許登録出願が政府又は登録局の認める機関から金銭的利益を得るための条件となっている場合(同項(d))
  5. 当該発明が環境保護又はエネルギー資源保全に資するグリーン技術に関連するものである場合(同項(e))
  6. その他早期審査を裏付ける合理的な理由のある場合(同項(f))
  7. 特許審査ハイウェイ

日本の特許庁はマレーシア知的財産公社との間で、2020年10月1日より特許審査ハイウェイは本格実施されています。同制度では、以下の要件を満たす特許出願の審査を大幅に短縮させ迅速な権利実現を図ることができます。

  1. 申請する日本出願及び対応するマレーシア出願において、優先日又は出願日のうち、最先の日付が同一であること
  2. 対応するマレーシア出願が存在し、既に特許可能と判断された一つ又は複数の請求項を有すること
  3. 審査を申請する当該出願のすべての請求項が、対応するマレーシア出願の特許可能と判断された一つ又は複数の請求項と十分に対応しているか、十分に対応するように補正されている
  4. 申請時において、当該出願に関し日本の特許庁における審査が着手されていないこと
  5. 申請時又はその前に、日本の特許庁において、審査請求が行われていること

(3) 特許権者の権利

特許権者は、以下の事項について排他的権利を有しています(特許法36条)。

1 特許発明を実施すること(同条(1)(a))

  1. 製品に関して付与する場合(同条(3)(a))
  • その製品を製造、輸入、販売の申出、販売又は使用すること
  • その製品を、販売の申出、販売又は使用のために保管すること
  1. 方法に関して付与する場合(同条(3)(b))
  • その方法を使用すること
  • その方法によって直接に取得された製品に関し、(a)にいう行為のいずれかを行うこと

2 特許を譲渡又は移転すること(同条(1)(b))

3 ライセンス契約を締結すること(同条(1)(c))

 

4.ミャンマー

特許法は2019年3月11日に公布されました。しかし、施行時期は未定です。

出願に当たり、必要書類は以下のとおりです。

  1. 登録出願申請書(英語またはミャンマー語)
  2. 出願人による署名の付された翻訳文(登録官から要求された場合)
  3. 法人の登記番号、種類、設立国(法人が出願する場合)
  4. 優先権証明書、優先権の存在を示す確たる証拠(優先権を主張する場合)
  5. 博覧会出品を示す確たる証拠(博覧会出品の仮保護を主張する場合)
  6. 共同出願人の同意書(共同出願人の1人が他の共同出願人を代表して願書に署名した場合)
  7. 宣言書(伝統的知識の合法的使用、または当該資産の直接的/間接的な使用である場合)
  8. 公開請求(早期公開を求める場合)
  9. 明細書
  10. 発明の図面(任意)

特許と実用新案(petty patents)が存在し、特許の保護期間は出願日から20年、実用新案の保護期間は出願日から10年間です。

1つの出願で1つの特許発明あるいは1つの実用新案をカバーでき、同じ発明を特許と実用新案の両方で登録することはできません。

手続き言語は英語またはミャンマー語です。

出願日/優先日から18か月経過後に出願公開され、出願日から36か月以内に出願人が審査請求を行うことにより、実体審査が行われます。

出願に対して拒絶理由通知(Office Action)が発行された場合、60日以内に応答が必要です。

 

5.メキシコ

(1) 関連する法令

メキシコにおいて、特許は、連邦産業財産保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial)及び産業財産法規則(Reglamento a la Ley de Propiedad Industrial)に規定されています。職務発明に関しては、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)に関連する条文が設けられています。

(2) メキシコで保護される特許 

 特許によって保護される発明とは、「自然界に存在する材料若しくはエネルギーを人の特定の需要を満たすよう使用することができる形に変える人の創造」であると定義されています。すべての技術分野における発明のうち、新規性があり、発明的活動の結果であり、かつ産業上の利用が可能なものは、特許を受けることができます。

 ただし、次のものは発明とはみなされません。

    1. 科学理論や原則の発見
    2. 数学的方法
    3. 文学、芸術作品、又はその他の美的創造物
    4. ゲームや経済的商業活動のための知的活動を実施するスキーム、計画、規則、方法
    5. コンピュータプログラム
    6. 情報を提示する方法
    7. 自然界に見られる生物学的及び遺伝的物質
    8. 既知の発明の並置又は既知の製品の組み合わせ。ただし、個別に機能できない組み合わせの場合、それらの特徴的な性質又は機能が、当該分野の技術に熟知する者にとっても自明でない産業上の成果や利用法を生み出すように変更されている場合を除く

また、次の場合は特許性を有するとはみなされません。

    1. 商業的利用が公序良俗に反し、又は法律の規定に反する発明(人、動物、植物の健康若しくは生命を保護するため、又は環境への深刻な損害を回避するために利用を阻止しなければならないものを含む)であって、特に、ヒト及びその製品のクローン作成手順、ヒト及びその製品の生殖上の遺伝的同一性を修正する手順で、これらがヒトを開発する可能性を示唆する場合、工業的又は商業的目的のためのヒト胚の使用、動物の遺伝的同一性を修正する手順で、ヒト又は動物にとって実質的な医学的又は獣医学的有用性がなく苦痛を伴うもの、及び当該手順の結果として生じる動物
    2. 植物の品種及び動物の品種(微生物の場合を除く)
    3. 植物又は動物を得るための本質的に生物学的な手順、及びこれらの手順から得られる生成物。ただし、微生物学的手順、その他の技術的手順、又はこれらの手順によって得られた生成物を目的とする発明は除く
    4. 人又は動物の身体の外科的又は治療的処置の方法、及びそれらに適用される診断方法
    5. 構成や発展の異なる段階における人体、ゲノムの全体又は部分的つながりを含む人体の構成の単純な発見(ただし、自然環境から分離され、技術的な手順を経て得られた生物材料は、それが自然界に既に存在している場合でも、特許可能な発明の対象となりえる)。なお、核酸又はタンパク質の全配列又は部分配列の産業上の利用は、特許出願において明示的に開示されなければならない

(3) 特許を受けることができる者

 発明を行った自然人又はその承継人は、自己又は他者の利益のために、特許を得ることによって、その発明を利用する独占的な権利を有することになります。二人以上のものが共同して発明を行った場合は、特許を受ける権利は、これらのものが共有することになります。

 労働者が職務において行った発明の名称、権利、使用については、次のように連邦労働法に規定されています。

1 発明者は、発明者として自らの名前を表示する権利を有する

2 労働者が研究業務又は企業で使用されるプロセスの改良に従事する場合、発明の権利及び特許を利用する権利は使用者に帰属する。発明者は、発明の重要性及びそれが使用者にもたらす利益が発明者の受領する給与とつり合いがとれていない場合には、当事者間の合意又は裁判所によって定められる補完的な報酬を受ける権利を有する。

3 2以外の場合において、発明の所有権はその発明をした者に帰属するが、使用者は、その発明及び対応する特許の独占的な使用又は取得について優先的な権利を有する

(4) 特許出願から登録までの手続

 メキシコでの出願から登録までの手続きは、主管官庁であるメキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial、以下「IMPI」)に対して行わなければなりません。特許出願の手続の流れは次のとおりです。

1 願書の提出

2 方式審査

3 特許公報への出願公開

4 異議申立(出願公開から2か月間、当該出願に対する異議の受付)

5 実体審査

要件を満たしていない場合、拒絶理由通知が出され2か月間の回答期間が与えられる

要件を満たしている場合、特許査定となる

6 特許年金の納付

特許権の維持には、特許査定の通知を受領後2か月以内に1回目の特許年金を支払わなければならない

年金の支払いは5年ごと

7 特許証発行と特許公報掲載

特許出願は、方式審査を通過し、出願日又は優先権を主張する日から18ヶ月が経過すると公開されます。また、申請により早期公開も可能です。なお、すべての出願が実体審査の対象であり、審査請求は要しません。

 また、メキシコ又は外国において特許出願をした発明と同一の発明に関し、最初の出願をした出願人又はその承継人は、当該同一の発明のメキシコにおける出願について、最初の出願の出願日から起算して12ヶ月の期間内に出願することを条件に、優先権(先の出願と後の出願との間の期間に行われた行為によって不利な取り扱いを受けないとする権利)を有します。

特許権の存続期間は、特許出願日から 20 年間であり、この期間を延長することはできません。ただし、特許から取得までの手続きにおいて、IMPIに直接起因する理由によって、5年以上の遅延がある場合には、出願人は補完証明書(certificado complementario)の発行を申請することができ、この付与が決定された場合は、特許出願日から20年経過後、5年を超えない範囲(補完証明書において定められた期間)、その発明を利用する独占的な権利を有することができます。

 

 

6.バングラデシュ

(1) 概要

特許に関する事項は、特許意匠法((The Patents and Designs Act, 1911)及び特許意匠規則(The Patent and Designs Rules, 1933)が適用されます。特許及び意匠の政府担当機関は、特許意匠商標局です。なお、2021年2月に特許法案及び工業意匠法案が提出され、内閣に承認されました。法案では、特許の登録期間が、20年認められています(現在は16年間)。

特許は、バングラデシュ国民であるか否か、個人又は共同での申請かにかかわらず、所定の方法で特許意匠商標局に特許を出願することができます(特許意匠法3条(1)(2))。出願書には、出願人が発明を所有し、真正かつ最初の発明者であることの宣言を含み、仮又は完全明細書によって出願されなければなりません(同条(3))。真正かつ最初の発明者でない者も出願の当事者となることができますが、譲渡契約など、真正かつ最初の発明者からの同意を提示しなければなりません(同条(4))(特許意匠規則10条(2))。特許の登録が認められる場合、基本的に出願日から24ヶ月以内に登録されなければならないと定められており(特許意匠法10条(2))、前述の通り、登録期間は16年間です(特許意匠法14条(1))。また、特許の効果として、特許意匠商標局の公印が捺印された特許は、バングラデシュ全土で発明を生産、販売、使用すること及びそれらを他の者に許可する排他的特権を特許権者に与えます(特許意匠法12条(1))。

(2) 出願から登録までの手続き

 出願人は必要書類を提出し、要件を満たしていない場合は、拒絶又は補正が求められます。出願日から18ヶ月以内に出願人が要件を満たし、受理されない限り、(出願人が決定に対して申し立てを提起した場合を除き)拒絶されたものとみなされますが、期間満了前又は満了後3ヶ月以内に請求した場合は、3ヶ月以下の延長が認められます(特許意匠法第5条(4))。

 出願が受理されると、公告され、当該出願に異議のある者は、4ヶ月以内に異議申し立てを行うことができます(特許意匠法9条(1))。異議申立てがなされた場合、登録官は、出願人に異議申立てを通知し、出願人及び異議申立人が聴聞を希望する場合は、聴聞を行った後、当該事案について決定が下されます(同条(2))。

異議がない場合、又は異議が申し立てられた場合で特許の付与に有利な決定がなされた場合、規定の登録料の支払いをもって、政府が適切と考える条件(もしあれば)に従い特許権が付与されるものとし、登録官は特許を特許意匠商標局の公印で捺印します(特許意匠法10条(1))。

特許の登録は、基本的に出願日から24ヶ月以内でなければならないとされていますが、登録官が認めた場合など、法律に規定された要件を満たした場合は延長されます(特許意匠法10条(2))。

また、法律に別段の規定がない限り、特許は、出願日をもって登録されますが、出願受理の公告の前に行われた侵害については、法的措置をとることができないことに注意が必要です(特許意匠法11条)。

(3) 特許侵害訴訟

特許権者は、管轄権を有する地方裁判所において、発明に関して特許意匠法に基づいて取得した特許期間の継続中に、特許権者の利用許諾なく、発明を製造、販売、若しくは使用、又は偽造、模倣した者に対して訴訟を起こすことができます(特許意匠法29条(1))。ただし、特許権者は、被告人からのいかなる侵害についても、侵害の日に特許の存在を認識していない、又は侵害を認識する合理的な手段を持っていなかったことを被告人が証明した場合は、損害賠償を請求する権利を有しないとされています(特許意匠法第30条)。

特許侵害訴訟において、裁判所は、いずれかの当事者による請求があれば、裁判所が適切とみなす差し止め、検査、算定を求める命令を下し、適切とみなす条件を課すことができ、当該差止・検査・算定及びその手続きについて適切とみなす指示を与えることができます(特許意匠法31条)。

 

7.フィリピン

 特許権は知的財産権の一種で、共和国法第8293号(通称「知的財産法」)において規定されています。人間のあらゆる活動分野における問題の技術的解決であって、1) 新規性があり、2) 進歩性があり、3) 産業上適用可能であるものが特許性のある発明と認められ、同法によって保護されます。知的財産法22条には特許性を認められない発明が列挙されています。

 特許権は発明者本人、承継人、あるいは譲受人に属します。二人以上が同様の発明を独立して行った場合、その権利は出願日の最も早い者、あるいは優先日の最も早い者に与えられます。依頼にもとづく制作物については依頼主に、被雇用者が雇用期間中に制作した物については雇用者に、それぞれ特許権が属することになります。

 特許権の保護を受けるためには、知的財産庁(IPOPHL)の支局である特許局に対して特許出願する必要があります。またフィリピンは1970年に作成された特許協力条約(PCT)の加盟国でもあり、国際特許出願および登録を行うことで他の加盟国内においても同時に保護を受けることができるようになります。

 特許を取得するためには、1) 特許を求める申請書(申請者の氏名その他の情報、発明者、代理人申請の場合は代理人の名称及び発明の名称を含む。)、2)発明品の説明、3)発明品を説明するために必要な図面、4) クレーム、5)特許の要旨を知的財産庁に対し申請しなければなりません。申請においては、必要十分な方法をもって、当該技術に熟練した者が実施できるように、発明内容が開示される必要があります。

 特許の要旨は、可能な限り150語を越えない範囲で、発明品の説明、クレーム及び図面に記載の発明の内容に関する簡潔なまとめを含んでいることが要求され、また、技術的な課題、発明が提示する問題解決の要旨及び発明の主たる用途を明確に説明する必要があります。

 必要書類の提出日を出願日として、当該出願日から18ヶ月後、知的財産庁の公報に申請内容及び先行技術に関する調査結果が公表されます。当該公報の発行後、申請者は、クレームの範囲内において、当該発明の特許権を、権限のない第三者に対して行使できるようになります。ただし、当該第三者が、その使用する発明が広報において公開された申請内容であることを実際に知っていた場合又はその旨の通知を書面で受け取っていた場合に限られます。利害関係を有する第三者は、申請書類を確認し、発明の特許性について見解を述べることができます。

 申請が認められると、知的財産庁の公報にて公開され、公開日をもって当該特許は有効となります。仮に申請が拒絶された場合、申請者は知的財産庁長官に異議申し立てすることができます。

 特許はフィリピン共和国の名で付与され、知的財産庁長官の署名及び知的財産庁によって押印されます。そして、発明の説明、クレーム及び図面と共に登録され、出願日から20年、特許協力条約にもとづく申請は当該出願をした日から20年間有効です。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

Newsletterの記載内容は2021年12月24日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現在、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は出されていませんが、政府からは、感染再拡大防止のための取り組みとして、引き続き、飲食店等に対する制限(感染拡大が見られる場合の時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

オミクロン株に対する水際措置の強化として、これまでの緩和措置が停止され、外国人の新規入国停止など、新たな措置が取れられています。

(1) オミクロン株に対する指定国・地域

オミクロン株に対する指定国・地域ついて、別途指定されています(水際強化措置に係る指定国・地域一覧)。

(2) 外国人の新規入国停止

11月30日午前0時(日本時間)以降、外国人の新規入国が停止されています。

(3) 有効なワクチン接種証明保持者に対する行動制限緩和措置の見直し

11月30日午前0時(日本時間)以降、有効なワクチン接種証明保持者に対する行動制限緩和措置に係る新規申請受付及び審査済証の交付が停止されます。また、12月1日午前0時(日本時間)以降の帰国者・再入国者等について、有効なワクチン接種証明保持者に対する3日間停留措置の免除及び待機期間短縮措置(14日→10日)が停止されます。

(4) モニタリングの強化等

オミクロン株に係る指定国・地域からの帰国者・入国者について、入国者健康確認センターの健康フォローアップを強化するとともに、変異株サーベイランス体制が強化されます。

(5) 入国者総数の引下げ

12月1日午前0時(日本時間)以降、日本に到着する航空便について、既存の予約について配慮しつつ、新規予約が抑制されます。

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(オミクロン株に対する水際措置の強化)

厚生労働省HP 水際対策強化に係る新たな措置(19)について

出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は2,111,566名です。この内、2,013,021名が回復し、累計死亡者数は20,732名となっています。

タイ政府は、11月12日、新たな規制緩和措置を発表し、ダークレッドゾーン6県、レッドゾーン39県等を再指定するなどしています。

2.2 入国規制

タイ政府は、11月1日より、新たな入国システムであるThailand Passのシステムを開始しています。日本からの入国者は、ワクチン接種完了している場合、隔離1泊及びPCR検査により陰性となればその後の隔離はなしとなります。

Thailand Pass案内(在東京タイ王国大使館HP)

タイ入国の隔離免除について(在タイ日本国大使館HP)

2.3必要書類

Thailand Pass申請ページにて、以下書類をアップロードする必要があります。

  • パスポート
  • ビザ(必要な場合)
  • ワクチン接種証明(出国前14日以上前に必要回数接種を終えていること)
  • ホテル予約確認書(AQまたはSHA+、支払い済み(Paid)の記載があるもの、内容は1泊およびRT-PCR検査が含まれるもの)
  • 50,000 USD以上の医療保険

医療保険については以下の取り扱いとなっています。

    • 年齢にかかわらず加入必要(12歳未満も)
    • タイ在住外国人で社会保険加入者はSSOカードの提示で可(カードない場合は雇用主が発行した保険加入証明書)
    • 同伴家族はSSO加入でないため、その場合は通常通り保険加入が必要

タイ入国時のThailand Pass登録時に必要な医療保険に関する追加情報(在タイ日本国大使館HP)

  • 出国前72時間以内のPCR検査証明

PCR検査証明について、要件がRT-PCR方式であることとなっています。

  • ビザ

通常の就労のためのビザのほか、出張者の方については商談ビザが引き続き利用可能となっています。

この入国規制の変更については、随時最新の情報を確認する必要がありますので、在東京タイ王国大使館または、在タイ日本大使館のHPをご参照下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連の規制状況

 11月27日の新規感染者数は、5,097人であり、ピーク時の4分の1程度に落ち着いています。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限であるFMCO(完全ロックダウン)は、クランタン州とサラワク州が第3段階の規制、残りの州が第4段階の規制に移行しています。

 ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、Covid-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。

3.2 入国規制

外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。ワクチン接種完了者の隔離期間は7日間ですが、ワクチン接種未完了者の隔離期間は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

11月29日より、ワクチン接種者を対象としたマレーシア・シンガポール間の渡航における入国後の隔離が不要となるワクチン・トラベル・レーンが開始されると発表されています。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は落ち着いてきています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらず、日常化している印象を受けます。また、ミャンマー保健省は、新型コロナウイルス対策としての自宅待機措置を一部地区で解除する旨を発表しました。

4.2 入国規制

11月は 11日、25日にANA 便が飛びました。12 月は 3 日、17日、24 日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっていますが、シンガポール経由による帰国便が10月29日(金)から解禁され、その後水・金の週二便が運航される予定です。搭乗にあたっては48時間以内のPCR検査陰性証明書が必要となりますのでご留意ください。

ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続して

います。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、11月15日の週には31州が緑になり、人の移動も活発化しているように見受けられます。しかし、新規感染者数が増加傾向にある州もあり、11月29日の週には黄色が5州、緑が27州となりました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、リスクレベルの引き下げに伴い、商業施設等に対する収容人数の制限などの規制を緩和する傾向がみられますが、マスクの着用などの要請は引き続き継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

また、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われていましたが、米国政府は、11月8日よりワクチン接種を完了していることを条件に、観光などの必要不可欠でない陸路・フェリーでの越境を認めています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。また、日本政府は「有効と認められる新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種証明書発行国・地域」に、新たにバングラデシュを含む計13か国・地域を追加することを決定し、バングラデシュ政府が発行するワクチン接種証明書も、11月22日から有効となっています。ただし、有効と認められるワクチンの種類や、日本入国・帰国時点で2回目の接種日から14日以上経過していること等の条件がありますので、詳細は、外務省のサイトをご確認ください。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置が、10月23日付で発表されました。規制が緩和されています。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループBに属する国(日本はグループBに該当)からの渡航者で、出発の14日前までにWHO認可COVID-19ワクチンの接種が完了している者は、バングラデシュ入国後の隔離が免除される。ワクチン接種証明を携帯すること。ワクチン接種が完了していない者は、14日間の自宅隔離が必要である。
  2. 入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗72時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明を携帯すること。なお、トランジット先によっては「出発48時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明」の提示を求めている国もありますので、確認が必要です。
 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計約283万人で、死者数は累計48,361人です(2021年11月28日現在)。新規感染者は9月初旬をピークとして減少傾向にあり、平均で1日771人の新規感染者が報告されています。これは、9月初旬のピーク時の約4%にあたります。

 マニラについては、「NCR における COVID-19 対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。11月30日まで、マニラ首都圏(NCR)における警戒レベルはレベル2であると発表されています。

 フィリピン政府は、フェイス・シールド使用に関する規則を発表し、現時点でNCRに適用される警戒レベル2の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。

7.2 入国規制

 フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「グリーン」国(管轄区域・地域)に該当します。

 11月25日、フィリピン政府は、12月1日から12月15日までの間、完全にワクチン接種し、グリーン国に直前の14日間以上滞在した渡航者に対し、特定の条件を満たす場合にビザなしでの入国を許可することを発表しましたが、一転、11月28日、新しいCOVID-19変異体(オミクロン株)が検出されたことにより、12月15日まで、直ちに国境管理措置を実施することを発表し、11月25日発表のビザなし渡航の許可は一時停止となりました。

第2.各国の労働組合及びストライキに関する法制度の概要

1.日本

 労働組合は「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」と定義されています(労働組合法第2条)。日本国憲法第28条では、労働者の団結する権利(団結権)、労働者が使用者と団体交渉する権利(団体交渉権)、労働者が要求実現のため団体行動をする権利(団体行動権(争議権))の労働三権を保障しています。ただし、公務員などの労働三権に関しては特別法が設けられており、一部の権利が制限されている場合があります。この労働三権を具体的に保障するため、一般法として「労働組合法」などが定められており、労働組合法は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的としています(労働組合法第1条)。労働組合やストライキについて規制する主な法律は、労働組合法及び労働関係調整法です。

(1) 労働組合の条件

 上記の通り、憲法第28条では、労働者が労働組合を結成する権利(団結権)を保障していますが、一方、労働組合法では、労働組合として認められない条件を以下の通り規定しています。

  1. 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接に抵触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すこと(労働組合法第2条第1号)
  2. 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けること(第2号)
  3. 共済事業その他福利事業のみを目的とすること(第3号)
  4. 主として政治活動や社会運動を目的とすること(第4号)

(2) 労働組合の争議権

 労働組合の争議行為は、ストライキ、サボタージュ(怠業)、ロックアウト(作業所閉鎖)その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいいます(労働関係調整法第7条)。憲法第28条(勤労者の団結権)、労働組合法第1条第2項及び第8条(損害賠償)は、争議行為が正当なものであれば、労働組合又はその組合員は民事上・刑事上の責任を免責されると定めています。また、使用者は、正当な争議行為を理由に、組合員に不利益な扱いをしてはいけません(労働組合法第7条)。

逆に、争議行為が正当性を欠く場合は、不法行為に基づく損害賠償が可能となります。争議行為は団体交渉による労働条件の対等決定を実現するために使用者に圧力をかける行為であり、その正当性は、「団交のための圧力行為」といえるか否かにあります。具体的には、ⅰ)主体、ⅱ)目的、ⅲ)手続、ⅳ)態様の4点から判断されます。ⅰ)主体については、団体交渉の当事者となり得る者でなければならず、ⅱ)目的は、団体交渉の対象となるべき事項(労働者の労働条件その他の経済的地位に関する事項及び労使関係に関する事項)に限定されます。ⅲ)手続としては、争議行為は団体交渉を経て行われるものでなければならず、ⅳ)態様は、暴力を伴うもの等不当なものは認められません。ストライキをはじめとした争議行為の正当性は、上記4つの観点から、個々の事案ごとに判断されます。いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為とは解釈されません(労働組合法第1条第2項)。

(3) 不当労働行為

労働組合法では、使用者が以下の行為を行うことは禁止されています。

  1. 労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことにより、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取り扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること(労働組合法第7条第1号)
  2. 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉を正当な理由なく拒否すること(第2号)
  3. 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること(第3号)
  4. 労働者が労働委員会に対し使用者が労働組合法第7条に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること(第4号)
 

2.タイ

(1) 関連する法令

タイにおける労働組合やストライキ等に関する法律として、労働関係法(Labor Relations Act B.E.2518 (1975))が定められています。

(2) 労働組合

 労働組合は、雇用条件に関する利益を求め、これを保護し、使用者と被用者との間および被用者間の良好な関係を促進することを目的として設立することができます(同法第86条)。労働組合は同一使用者の被雇用者による結成、及び、同一業種において労働する被雇用者による結成が定められており、労働組合の発起人は、成人かつタイ国籍者である必要があります(同法第88条)。

 労働組合を設立する場合、当該労働組合の規約を作成し、登録をする必要があります(同法第87条)。登録申請にあたり、少なくとも10名以上が発起人となり、申請書には発起人全ての氏名、年齢、職業、住所を記載する必要があります(同法第89条)。

 労働組合の組合員は、労働組合の登録申請者と同一使用者の被雇用者、または同一業種において労働する被雇用者で、かつ15歳以上の者でなければならないとされています(同法第95条)。労働組合の組合員資格は、死亡、辞任、総会による除名、または労働組合の規則に基づいて終了します(同法第97条)。

  • ストライキ

 ストライキについては、以下の所定の手続きを経て行う必要があります。

    1. 労働協約(雇用条件に関する使用者と被雇用者との間の合意事項)の規程に関する要求や修正を要望する場合、使用者又は被雇用者は書面にて相手方に当該要望を提出します(同法第13条)。
    2. 被雇用者側が要望書を提出する場合、全被雇用者数の15%以上の被雇用者の氏名と署名が必要となります。労働組合が被雇用者を代表して要望書を提出する場合、当該組合の組合員数は、全被雇用者数の20%以上である必要があります。この場合、要望書には被雇用者の氏名及び署名を記載する必要はありません(同法第15条)。
    3. 要望書を受け取った当事者は、要望書を提出した当事者に対し、遅滞なく受領者の氏名または代表者の氏名を書面で通知し、両当事者は要望書を受領した日から3日以内に協議を開始します(同法第16条)。
    4. 3の期間内に協議がなされなかった場合、または協議がなされたが合意に至らなかった場合、労働争議が発生したものとみなされ、要望を行った当事者は、3の期間が経過した時点、または合意に至らなかった時点から24時間以内に、労働争議調停官に書面で通知する必要があります(同法第21条)。
    5. 4の通知を受けた労働争議調停官は、通知を受け取った日から5日以内に、調停を行います。この期間内に両当事者が合意できない場合は、被雇用者は、ストライキを行うことができます(同法第22条)。
    6. ストライキをする場合、被雇用者側は、ストライキ開始の24時間以上前までに、労働争議調停官及び使用者へ、文書により通知をする必要があります(同法第34条)。また、ストライキを行う場合には、労働組合の総会にて労働組合員総数の2分の1以上の承認を得なければならず、投票は無記名投票で行われるとされています(同法第103条8号)。
 

3.マレーシア

マレーシアにおいて、労働組合は労働組合法(Trade Unions Act 1959)及び労使関係法(The Industrial Relations Act 1967)によって規律されています。

(1) 労働組合

1 概要

労働組合法上の労働組合とは、以下のうちいずれか又は複数の目的を有していなければならないと規定しています(労働組合法2条)。

  1. 労働者と使用者間の良好で調和のとれた労使関係の促進、労働者の労働条件の改善、経済的社会的地位の向上又は生産性の向上を目的とした労働者と使用者の関係の規律
  2. 労働者と労働者の間、又は使用者と使用者の間の関係の規制
  3. 労働紛争における労働者又は使用者の代理
  4. 労働紛争及びそれに関連する事項の実施又は処理
  5. 特定の職業又は業界におけるストライキ又はロックアウトの促進、組織化又は資金調達、あるいはストライキ又はロックアウト中の組合員に対する給与その他の手当の提供

2 労働組合の登録

労働組合は、一時的か恒久的かを問わず、労働者や使用者が特定の産業、職業又は組織の中に組合を設立することを合意することにより設立されます(労働組合法9条1項)。全ての労働組合は設立日から1カ月以内に、同法に基づき労使関係局長に対し登録の申請をしなければなりません(労働組合法8条1項)。申請には最低でも構成員7名の署名、労働組合規則の添付及び手数料の支払いが必要となります(労働組合法10条1項)。

登録を受けた労働組合は自身の名で訴え又は訴えられることができます(労働組合法25条1項)。

3 使用者の禁止行為

使用者は、労働組合の活動に対して以下の行為を行うことができません(労使関係法5条1項)。

  1. 雇用契約において労働組合への加入を禁止すること
  2. 労働組合の組合員であることを理由に採用を断ること
  3. 労働組合の組合員であることを理由に労働条件を差別すること
  4. 以下の理由により労働者を解雇すること
  • 組合員である、組合員になろうとすること、他の労働者に対し労働組合に加入するよう説得したこと
  • 労働組合の活動に参加したこと

(2) ストライキ及びロックアウト

以下の状況下においては、労働者の労働組合はストライキを召集することができず、労働組合の構成員はストライキに参加することができず、使用者の労働組合はロックアウトを宣言することができません(労働組合法25A条1項)。

  1. 労働者の労働組合においては、ストライキへの参加資格を有する組合員の2/3以上の同意を秘密投票において得ていない場合
  2. 使用者の労働組合においては投票権を有する組合員の2/3以上の同意を秘密投票において得ていない場合
  3. 労使関係局長に秘密投票の結果を提出してから7日間が経過していない場合
  4. 秘密投票の要件を満たしていなかったことによりストライキ又はロックアウトについての秘密投票が無効になった場合
  5. 労働組合規則に違反している場合
  6. 人的資源省大臣によってなされた指示又は決定に含まれる事項に関するものである場合
  7. 同法その他の法律に違反するものである場合

4.ミャンマー

(1) 関連する法令

労働組合に関する法律として、労働組合法が存在する。現在の労働組合法は、労働組合法(The Trade Union Act, 1926年)を改正する形で、2011年10月11日に成立しました。同法は、1962年以降結成が禁止されていた労働組合の結成について、一定の条件を満たした場合には認めています。

(2) 労働組合の結成及び権利

労働組合に関して、複数の階層の労働組合が予定されており、単位労働組合、タウンシップの労働組合、地域または州の労働組合、労働連盟、ミャンマー労働連合が存在する。基本となる単位労働組合の組成については、30人以上の労働者によって結成する必要があり、かつ、関連する事業または活動の単位の10%以上の労働者からの推挙が必要となります。労働者が30人未満の事業または活動の場合、同じ性質の他の事業または活動の単位と共に結成することができます。単位は、工場、事業場、製造業等の職業である。結成した労働組合は、訴訟を起こし、訴えられる権利を有しています。また、労働組合は登録を強制されており、登録官または主任登録官に登録を申請しなければなりません。

労働組合は、労働者が解雇された場合、解雇理由が労働組合員であること等を理由とすると信ずるに足る理由がある場合、使用者に再雇用を求めることができます。また、労使間の紛争や政府に対する不服申し立ての場合等に代表者を参加させる権利および団体交渉権を有します。

(3) ストライキ

ストライキとは、紛争事項に関係する生産やサービスを低下させる意図を持って、一部または全員の労働者の決定による労務提供の拒否、または仕事の能率低下、その他の集団的行為と定義されています。但し、労務提供拒否によって生命や健康に突然申告な危険をもたらす恐れがあると信じる正当な理由がある場合の労務提供拒否は含まれません。

ストライキ権を行使するためには、所定の手続を経て行わなければなりません。この手続は公益事業か否かで異なります。公益事業とは、運輸業、港湾業および港での荷物運搬業、郵便、テレックス、ファックス業、情報・通信技術に関する事業、石油採掘・石油配送業、糞尿処理業・清掃業、電気または燃料の生産、配送、分配に関わる事業、金融業および政府によって公益事業と指定される事業をいいます。

公益事業以外の事業においては、労働組合は、過半数以上の組合員の賛成によって、少なくとも3日前に関連する使用者および管轄調停機関に対して予告することによってストライキを実行することができる。予告内容として、日、場所、参加者数、方法および時間が要求されます。

公益事業の場合、過半数以上の組合員の賛成に基づきストライキを行うときは、関連する労働連盟の指令に従い、少なくともストライキの14日前までに関連する使用者および管轄調停機関に通知を行う必要があります。

 

5.メキシコ

(1) 関連する法令

メキシコでは、労働組合を結成する権利やストライキの権利はメキシコ合衆国憲法(Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)第123条により保障されています。また、労働組合やストライキに関しては、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)に規定されていますので、その内容を紹介します。

(2) 労働組合の結成及び権利

労働組合は、15歳以上の労働者20人以上で構成することができます。連邦労働法には、労働組合の種類として、職業別労働組合(同一の職種・職業に従事する労働者により組織されるもの)、企業別労働組合(同じ企業に勤める労働者により組織されるもの)、産業別労働組合(同一の産業に従事する労働者により組織されるもの)、全国的産業別労働組合(全国的な大規模産業に従事する労働者により組織されるもの)、小規模職業別労働組合(同一地区内の同一職業に従事する労働者により組織されるもの)が例示されていますが、これら以外の労働組合も組織されうると規定されています。

一般に指揮、管理、監査、監督や、会社や事業所内での使用者の業務に関連する職務を行う信任労働者(trabajador de confianza)は労働組合の組合員にはなれません。また、外国人労働者は、労働組合の役員となることはできません。

労働組合は、労働組合結成議事録の認証済み謄本、組合員リスト、組合規約の認証済み謄本、組合役員を選出した際の会議議事録の認証済み謄本を提出し、連邦労働調停登録センター(Centro Federal de Conciliación y Registro Laboral、以下「CFCRL」といいます。) に登録しなければなりません。

労働組合は、労働協約の締結主体であり、使用者との間で団体交渉を行うことができます。労働組合の組合員たる労働者を雇用する使用者は、労働者の要請に応じて労働組合と労働協約を締結する義務を負うとされており、使用者がこれを拒んだ場合、労働者はストライキを実施することができます。したがって、使用者は、労働協約の締結の申し出があった場合には真摯な対応が求められます。

(3) ストライキ

 ストライキとは、労働組合を含む、2名以上の労働者の同盟によって行われる一時的な業務の停止と定義され、単なる業務停止行為に限定されなければならないと規定されています。すなわち、暴力行為は行いえず、大多数のストライキ参加者が人や財産に対して暴力的な行為を行った場合は、当該ストライキは違法となります。

 ストライキの手続は、請願書の提出によって開始され、1請願書は使用者に宛てた書面であり、ストライキを行う意思の表明、ストライキの目的、仕事を中断する日と時間あるいはストライキが行われるまでの期間を示すこと、2請願書の写しが管轄裁判所へ提出されること、3業務停止の通知が、請願書に明示された業務停止日の6日前までに、公務にあっては10日前までになされること、4ストライキの目的に応じた必要書類を添付する、といった要件を満たす必要があります。

 そして、裁判所は、上記2の請願書の受領から48時間以内に、その写しを使用者に交付します。これを受領した使用者は、その後48時間以内に、裁判所に回答書を提出しなければなりません。また、CFCRLあるいは調停センターは、ストライキ開始までの期間に、当事者を召喚し、交渉や調停協議を行う権限を有しており、裁判所は、請願書の受領から24時間以内に、当事者が和解を行う機会を設けることができるよう、管轄のCFCRLや調停センターにこれを通知します。なお、CFCRLや調停センターは2019年5月の連邦労働法改正により新設された機関であり、これまではその機能を労働調停仲裁委員会が担っていました。当該改正労働法にもとづく運用の開始は、3段階に分け進められており、2020年11月に第1フェーズ、2021年11月に第2フェーズが開始され、21州(ゲレロ州とバハカリフォルニアスル州においては、連邦管轄の業務のみ)において新体制での運用が始まっています。残る、チワワ州、メキシコシティ、コアウイラ州、ハリスコ州、ミチョアカン州、ナヤリット州、ヌエボレオン州、ソノラ州、シナロア州、タマウリパス州、ユカタン州においては、2022年5月に予定される第3フェーズの開始までは、依然、労働調停仲裁委員会がこれを担うこととなります。

その後、調停において和解に達すれば、ストライキは行われませんが、和解に達せず、設定されたストライキ実施予定日を迎えると、ストライキが開始されます。

 

6.バングラデシュ

バングラデシュの労働組合や労働争議については、2006年労働法(以下「労働法」)に定められています。

(1) 労働組合の設立要件

労働法にて、全ての労働者は労働組合を設立し、加入する権利を有すると規定されています(労働法第176条)。労働組合は、役員の情報、加入者の誓約書や規約等を提出の上登録しなければなりません(労働法第177条、第178条)。労働組合の登録には、事業場で雇用されている労働者の20%以上が加入していることが要件のひとつですが、同一の使用者のもと、事業場に複数の労働組合が存在し、同一業界で連携して活動している場合は、1つの労働組合とみなされます(労働法第179条(2))。1事業場又は複数の事業場につき、労働組合を3組織まで登録できます(同条(5))。

(2) ストライキ

1 事前通知の義務

当事者は、事前の話し合いや調停を経ずに、ストライキを行うことはできません。労働法の規定に基づく調停により合意に至らなかった場合、相手方にストライキについて通知することができ、通知には開始日を記載する必要があります。なお、ストライキの開始日は当該通知の後7日~14日の間でなければなりません。また、ストライキの通知には、規定された方法で実施された秘密投票にて組合員の3分の2の同意が必要です。当事者は、労働裁判所に裁定を申し立てることもできます(労働法第211条(1))。仲裁の継続中、労働裁判所又は労働上訴審判所で係争中に、ストライキの通知を出すことは認められていません(労働法第225条)。

2 政府による禁止

ストライキが30日を超えて実施された場合は、政府は書面にて禁止することが認められていますが、ストライキの継続が公共の生活に深刻な問題又は国益の損害を引き起こすと認めた場合は、30日以内であってもいつでも書面にて禁止することができます(労働法第211条(3))。公共サービスの場合は、政府は書面により、いつでもストライキを禁止することができます(同条(4))。

3 一定期間の禁止

事業所が新しいものであるか、外国人に所有されている、または外国人と共同で設立されている場合、ストライキは、生産を開始して3年間は禁止されますが、他の労働争議解決に関する規定は適用されます(労働法第211条(8))。

4 違法なストライキ

労働法第227条に、違法なストライキについて規定されています。

  • 規定された方法に基づく通知なしに又は通知に記載したストライキの日付の前後に又は労働法第225条(上記1事前通知の義務)に違反して、労働争議の宣言、開始または継続した場合
  • 労働法第209条(規定に従い使用者又は団体交渉代理人により提起された労働争議でなければ、労働争議とみなされない)に規定された方法以外で提起された労働争議の結果として宣言、開始又は継続した場合
  • 労働法第211条(労働争議の解決)又は第226条(ストライキ又はロックアウトを禁止する労働裁判所及び労働上訴裁判所の権限)に基づき発出された命令に違反して継続した場合
  • 当該労働争議について調停又は裁定が実施されている期間中に宣言、開始又は継続した場合

なお、違法なストライキの結果として宣言されたロックアウト、違法なロックアウトの結果として宣言されたストライキは違法とはみなされません。

違法なストライキを開始、継続、推進した労働者は、6ヶ月以下の懲役もしくは5,000タカ以下の罰金またはその両方が科されます(労働法第294条(1))。

 

 

7.フィリピン

(1) 団結権

フィリピンでは1987年憲法により、すべての労働者について、団結権、団体交渉権及び平和的な団体活動を行う権利、例えば合法的ストライキを行う権利など、労働者の権利利益に影響を与えうる使用者の意思決定プロセスに関与する権利を認めています。とりわけ労働法においては、団体交渉を行う自由、団結する自由、労働者の啓発といったものが国家の重要政策として位置づけられています。また、国際労働機関(ILO)の加盟国として、フィリピン法は、労働者が自ら団体を設立し、それに加入することのできる自由及び団体の規約を作り、活動内容を決定する自由を保護しています。

 労働組合は、組合員の賃金、労働時間その他の雇用状況について好ましい条件を勝ち取ることを第一目的とし、組合費を納める労働者自身によって組織され、投票で選ばれた役員を中心に運営されます。労働組合は、労働雇用省(DOLE)の労使関係局(BLR)に登録されて初めて「合法的な労働組合」(”LLO”と呼ばれます)として認められ、労働法下における代表権や団体交渉権を行使するための法的資格を与えられます。

 組合を自発的に解散するためには、解散を目的として招集された大会において、一般組合員の3分の2以上の賛成を得る必要があります。また組合の強制的解散事由としては、組合員リストや組合役員選挙に関する不実記載、偽りの記述、欺罔行為などが挙げられます(労働法第239条)。

(2) 団体交渉権

団体交渉は、労使関係の安定化などをその目的として認められている権利です。団体交渉を通じて合意に至った内容は労働協約(CBA)としてまとめられ、使用者と組合の双方に対する権利及び義務として拘束力を持ちます。団体交渉そのものの拒否、交渉における強制的議題の忌避、交渉時の不実な行為、及び労働協約の違反といったものはすべて団体交渉義務違反とされ、労働法における不当労働行為とみなされます。労使間での交渉が行き詰まった場合には、第三者たる仲裁者が介入することで交渉継続が図られます。

(3) ストライキとロックアウト

 労働法は、団体交渉などの目的で労働者が団結権を行使し活動することを認めています。ここでいう行動とは例えばストライキのことで、労使紛争の結果として従業員が労働を一時的に停止することを指します。他方、使用者に認められた権利としてロックアウトがあり、これは、労働者による労働力の供給を一時的に拒否することを指します。

 ストライキ及びロックアウトは、団体交渉が行き詰まった場合や、不当労働行為が行われた場合にその実施が認められています。労働協約の内容に違反しただけでは直ちにストライキやロックアウトの正当な事由とはなりませんが、労働協約で定められた経済条項に関する悪意ある違反、重大な違反が見られた場合は正当な事由として認められることになります。また、組合内部及び組合間における紛争は正当な事由とは認められません。ストライキ及びロックアウトの実施にあたっては事前に労働雇用省への通知が必要で、通知には使用者の名前と住所、組合の名称と住所、使用者の属する産業の性質、組合員の数及び組合内の交渉部門にいる従業員数、その他紛争解決に関わる諸情報が含まれなければいけません。

 ストライキ及びロックアウトを実施する場合、交渉行き詰まりを原因とする場合は30日以上前、不当労働行為を原因とする場合は15日以上前に中央斡旋調停委員会(NCMB)へ事前通知をする必要があります。通知から実施までの期間は「クーリングオフ期間」と呼ばれており、この期間、中央斡旋調停委員会は両者の斡旋・調停に努めるものとされています。なお非合法なストライキ活動や、ストライキ中の非合法な行為は、ストライキを強制的に解散させる事由となります。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

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・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

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・佐賀(TNY国際法律事務所)
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・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

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・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

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・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

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・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

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・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

Newsletterの記載内容は2021年11月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

これまでに発出された緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置は、9月30日にすべて解除されました。マスクの着用やこまめな換気、密を避けるなど、引き続き感染拡大防止対策が取られていますが、コロナ禍の前の生活や消費が戻りつつあります(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 検疫の強化

1 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。要件を満たしている場合でも、検疫所が指定する様式でないと航空会社が搭乗を受け付けない又は日本到着後に拒否された等のトラブルが発生していますので、医療機関に対して、検疫所指定の様式での記載を依頼したほうがスムーズです。

2 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

3 スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

4 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

5 ワクチン接種証明書の「写し」の提出

 入国時・帰国時の検疫で、有効なワクチン接種証明書の「写し」を提出する場合、検疫所が確保する宿泊施設での3日間の待機の免除や、入国後14日間の待機期間の一部が短縮されます(ワクチン接種証明書の「写し」の提出について(厚生労働省))

6 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

検疫措置として、「水際対策上特に対応すべき変異株等に対する指定国・地域」及び「水際対策上特に対応すべき変異株以外の新型コロナウイルスに対する指定国・地域」からの入国者は、検疫所長の指定する場所での3日間又は6日間の待機が求められます。本Newsletterでご紹介する国のうち対象国は、フィリピン(6日間待機)、マレーシア及びバングラデシュ(ともに3日間待機)です(対象の国又は地域については、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

(2) 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は1,893,941名です。この内、1,775,570名が回復し、累計死亡者数は19,070名となっています。また、非常事態宣言は、11月30日まで延長されています。

タイ政府は、10月21日、バンコク都と16県の観光地エリアについて夜間外出禁止令を撤廃することを発表しました。バンコク都の他、クラビ、チョンブリ、チェンマイ、プーケットなどの観光地が対象となります。この撤廃は、10月31日23:00より適用されます。

2.2 入国規制

タイ政府は、10月21日、タイへの入国者の隔離措置に関して、11月1日より、日本を含む46の国・地域からの飛行機での入国者について、隔離免除にて入国可能とすることを発表しました。主な条件は以下の通りです。

  • タイ政府もしくはWHO承認のCOVID-19ワクチンを、渡航の14日前までに接種完了し、英文のワクチン接種証明を所持
  • 46の国・地域に連続して21日以上滞在
  • タイ滞在期間を対象とするCOVID-19関連の治療費を含む最低5万米ドルの医療保険に加入
  • 渡航前72時間以内のPCR検査陰性証明を所持
  • タイ到着時にPCR検査を行い、検査結果が出るまで指定ホテルで一晩待機

ワクチンの接種が完了していない者等については、10日間の隔離措置が適用されます。

この入国規制の変更については、随時最新の情報を確認する必要がありますので、在東京タイ王国大使館または、在タイ日本大使館のHPをご参照下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連の規制状況

 10月28日の新規感染者数は、6,377人であり、ピーク時の3分の1以下に落ち着いています。

 マレーシアでは、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的(第一段階から第四段階まである)に規制を緩和するFMCO(完全ロックダウン)が施行されていますが、感染状況の改善により、第一段階、第二段階の規制が適用される州はなくなりました。現在は、ペルリス州、サラワク州、クランタン州、ペラ州、ペナン州、サバ州、ケダ州が第三段階、その他の州が第四段階にあります。規制緩和により、州内での地区間移動などが可能となっています。またワクチン接種完了者には、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められるようになってきています。

3.2 入国規制

外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。ワクチン接種完了者の隔離期間は7日間ですが、ワクチン接種未完了者の隔離期間は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

COVID-19 の陽性率は落ち着いており、7%前後で推移しています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変

わららず、日常化している印象を受けます。

またミャンマー保健省は、新型コロナウイルス対策としての自宅待機措置を、10月28日午前4時から一部地区で解除する旨を発表しました。

4.2 入国規制

10月は 8日、15日、22日、29日にANA 便が飛びました。11 月は 11 日、25 日に救援便が運航予定で

す。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっていますが、シンガポール経由による帰国便が10月29日(金)から解禁され、その後水・金の週二便が運航される予定です。搭乗にあたっては48時間以内のPCR検査陰性証明書が必要となりますのでご留意ください。

ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続して

います。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

COVID-19感染者数の増加は落ち着きを見せ始め、メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、10月4日の更新で橙の州が1州になり、10月29日には、11月1日から2週間適用される信号色が、29の州で緑となることが発表されました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、リスクレベルの引き下げに伴い、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制を緩和する傾向がみられますが、マスクの着用などの要請は引き続き継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

また、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われておりましたが、米国政府は11月よりワクチン接種を完了していることを条件に、不要不急ではない陸路・フェリーでの移動を段階的に認めていく方針を発表しました。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置が、10月23日付で発表されました。規制が緩和されています。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループBに属する国(日本はグループBに該当)からの渡航者で、出発の14日前までにWHO認可COVID-19ワクチンの接種が完了している者は、バングラデシュ入国後の隔離が免除される。ワクチン接種証明を携帯すること。ワクチン接種が完了していない者は、14日間の自宅隔離が必要である。
  2. 入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗72時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明を携帯すること。なお、トランジット先によっては「出発48時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明」の提示を求めている国もありますので、確認が必要です。
 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計2,772,067人で、死者数は累計42,348人です(2021年10月27日現在)。新規感染者は9月初旬をピークとして減少傾向にあり、平均で1日4,625人の新規感染者が報告されています。これは、9月初旬のピーク時の約20%にあたります。

 マニラについては、「NCR における COVID-19 対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。11月14日まで、マニラ首都圏(NCR)における警戒レベルはレベル3であると発表されています。

また、コミュニティ隔離措置として、引き続き、地域ごとに、移動の制限や飲食店の営業制限等が課されています。

7.2 入国規制

 フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「イエロー」国(管轄区域・地域)に該当します。

 「イエロー」国(管轄区域・地域)から入国する渡航者のプロトコルは以下のとおりです。

 1 「イエロー」国(管轄区域・地域)から入国する完全にワクチン接種をした渡航者は、到着日から5日目に行われるPCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要があります。その後、到着日を初日として、10日目まで自宅での検疫を行う必要があります。施設の検疫中の症状の監視はフィリピン検疫局(BOQ)により厳密に行われます。

  なお、外国人は少なくとも6日間、宿泊施設を事前に予約する必要があります。

 2 ワクチン接種を受けていない、または部分的にワクチン接種を受けた、または「イエロー」国(管轄区域・地域)から入国するフィリピン当局が独自にワクチン接種状況についてその有効性、信憑性が検証・確認できない渡航者は、到着日から7日目に行われるPCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要があります。その後、到着日を初日として、14日目まで自宅において検疫を行う必要があります。

  なお、外国人は少なくとも8日間、宿泊施設を事前に予約する必要があります。

第2.各国の遺言に関する法制度の概要

1.日本

遺言制度は、遺言者の生前の最終意思を尊重してその効力を認めるもので、生前にいつでも遺言を撤回し(民法第1022条)変更することができ、遺言者の死亡によって効力が生じます(民法第985条第1項)。

遺言の法的効力が認められる事項は、1 相続に関する事項(相続分の指定又は指定の委託(民法第902条)、遺産分割方法の指定又は委託(民法第908条前段)、推定相続人の廃除(民法第893条)とその取り消し(民法第894条))、2 財産処分に関する事項(包括遺贈及び特定遺贈(民法第964条)等)、3 身分に関する事項(認知(民法第781条1項2項)、未成年後見人(民法第839条)・未成年後見監督人の指定(民法第848条))、4 遺言執行に関する事項(遺言執行者の指定又はその委託(民法第1006条第1項)、特定財産の遺言執行に関する特別の定め(民法第1014条))などが挙げられ、主に民法によって定められています。

(1) 遺言書の種類及び作成要件

1 普通方式

(a) 自筆証書遺言

 遺言者が相続財産について、作成日付及び氏名を自書し押印する、簡単な方式の遺言です。一方で、方式の不備により無効となるおそれや紛失の可能性などがあります。作成要件は以下の通りです。

  • 遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法第968条第1項)。ただし、自筆証書に一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合、遺言者は、その目録の毎葉に署名し、印を押さなければならない(同条第2項)。
  • 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない(同条第3項)。

(b) 公正証書遺言

 公証人が内容を含めて作成に携わり、公証人役場で遺言を保管しますので、安全な作成方法と言えます。作成要件は以下の通りです。

  • 証人2人以上の立会いがあること(民法第969条第1号)
  • 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること(第2号)
  • 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させること(第3号)
  • 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる(第4号)
  • 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと(第5号)

(c) 秘密証書遺言

公証人や証人の前に封印した遺言書を提出し、その内容を秘密にして遺言書を保管することができる方式の遺言です。作成要件は以下の通りです。

  • 遺言者がその証書に署名し押印すること(民法第970条第1項第1号)
  • 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印象をもってこれに封印すること(同項第2号)
  • 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること(同項第3号)
  • 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、押印すること(同項第4号)

2 特別方式

遺言の特別方式として、死亡の危急に迫った者の遺言(民法第976条)、伝染病隔離者の遺言(民法第977条)、在船者の遺言(民法978条)、船舶遭難者の遺言(民法第979条)が定められており、証人の立会いをもって遺言書を作成することができます。

(2) 遺言の執行

1 遺言の検認手続き

遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません、遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様です(民法第1004条第1項)。ただし、公正証書による遺言については、適用しません(同条第2項)。

2 遺言執行者

 遺言者は、遺言で、1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に寄託することができます(民法第1006条第1項)。遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、選任することができます(民法第1010条)。遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有すると定められています(民法第1012条第1項)。

 

2.タイ

(1) 遺言の種類

タイの法律によると、遺言書には5つのタイプがあります。主に使用されているのは「普通遺言」です(タイ民商法典1656条)。その他の種類の遺言は、以下のとおりです。

  1. 「自筆証書遺言」(1657条):遺言者が自筆で遺言書を作成しなければなりません
  2. 「公正証書遺言」(1658条):遺言者が公証人の面前で遺言内容を口述し、公証人が作成します
  3. 「秘密証書遺言」(1660条):遺言者が遺言を封印し、遺言の内容を秘密にして保管することができます
  4. 「特別な方式の遺言」(1663条):伝染病や戦争など特別な状況下にある場合に行うことができます
  5. 自筆証書遺言は、遺言書について証言する証人がいない可能性が高く、遺言書に記載されている署名や筆跡が裁判所の専門家によって100%真正で正確であることが確認できないため、遺言書の真正性・正確性を理由に他の当事者から異議を申し立てられることがあるため注意が必要となります。

(2) 普通遺言の作成方法

普通遺言は、次のような内容で作成しなければなりません(1656条)。

  1. 遺言書の作成された年月日
  2. 遺言者が死亡した場合の財産の分配方法等についての意思表示
  3. 二人以上の証人による遺言書への署名
  4. 遺言者のために遺言書を書く/タイプする者は、遺言書に署名することが必要(1671条)

これらに従わない場合、遺言書は無効となります(1705条)。

タイの裁判所は、判例上、この要件を非常に重視していると思われます。遺言者が1人の証人の立会いのもとで遺言書に署名し、もう1人の証人はその5分程度後に立会った事案があります。この事案では、2人目の証人は遺言者が署名した瞬間には立ち会っていなかったため、当該遺言書は無効であると判断された判例があります。

(3) 注意点

  1. 遺言書を書いたり、タイプしたり、証人として遺言書に署名した者は、遺言書に記載された財産を受け取ることができません(1653条)。
  2. 遺言者が複数の遺言書を作成した場合で、両方の遺言書の記載内容が異なる場合には、古い方の遺言書は、最新の遺言書によって撤回されたものとみなされます(1697条)。

受遺者が遺言者より先に死亡した場合(1698条)、遺言書に記載された財産が遺言者の死亡前に他人に譲渡された場合(1696条)など、何らかの理由で遺言書のいずれかの条項が無効となった場合、当該財産は、遺言書が存在しなかったかものとして、相続人に相続されます(その割合は法律に記載されている通りとなります。1699条)。

 

 

3.マレーシア

(1) 概要

 マレーシアの遺言は、イスラム教徒の遺言と非イスラム教徒の遺言があります。イスラム教徒の遺言については州ごとの異なる法令により規定されています。一方、非イスラム教徒の遺言は、遺言法(Wills Act 1959)により定められています。

 そして、遺言とは、遺言者の財産その他の事項について、遺言者がその死後に効力を生じさせることを望む意図をもった宣言をいいます(遺言法2条)。被相続人の遺言が存在すれば、原則、遺言の内容に従い被相続人の財産が分配されます。

(2) 遺言の作成

 有効な遺言を作成するためには、遺言者は以下の要件・能力が必要となります。

  1. 遺言を書いた時点で18歳以上であること(遺言法4条)。
  2. 判断能力を有する健全な精神の持ち主であること(遺言法3条)。
  3. 遺言書を書面で残し、署名することができること(遺言法5条)。

 このほか、有効な遺言書を作成するためには、2人の証人(遺言者及び受益者を除く)が署名する必要があります。そして、署名中は、全ての当事者が立ち会う必要があり、個別に署名することはできません(遺言法5条)。

(3) 遺言の執行

 全ての遺言は、遺言によって反対の意思が示されない限り、遺言者の死亡直前に執行され効力が生じると解釈されます(遺言法18条)。遺言は、故意に撤回したり、結婚したり、イスラム教に改宗したりしない限り有効となります。

遺言者が死亡した場合、遺言執行者に指名された者は、遺言者が遺言書で述べた通りに遺産分配の手続を開始するため、裁判所に検認(Grant of Probate)を申請します。

なお、遺言執行者については、証人の要件とは異なり、受益者を指名することができます。

 

4.ミャンマー

ミャンマーにおいて遺言は、1925年相続法(The Succession Act(以下、「相続法」という))にて定められています。

遺言には、非特権遺言と特権遺言の2種類があり、非特権遺言とは、遠征に従事した又は実際の戦争に従事した兵士、又はそのように雇用された又は従事した空軍兵、又は海上での船員を除く遺言者が、以下の規則に従い遺言を実行することを意味します。

  1. 遺言者は、遺言に自身の署名又は押印を行う又は、遺言者の立会いの下、他の者が署名する。
  2. 遺言者の署名又は押印、遺言者の代わりに署名した者の署名は、遺言として書かれていることに影響を与えることを意図して見えるように配置する。
  3. 遺言は、2人又はそれ以上の証人により証明され、それぞれが、遺言者が遺言に署名又は押印すること、または遺言者の立会いの下他の者が遺言に署名することを見届ける、または遺言者の署名又は押印、または当該他の者の署名の個人的な承認を遺言者が受け取ったことを証明する。また各証人は、遺言者の面前で遺言に署名しなければならないが、同時に複数の証人が立ち会う必要はなく、特定の形式の証明は必要ない。(相続法第61条)

特権遺言とは、遠征に従事した又は実際の戦争に従事した兵士、又はそのように雇用された又は従事した空軍兵、又は海上での船員が未成年(18歳未満)ではない場合、第66条による規定に従い、遺言によって財産の処分をすることができると定められています。(相続法第65条)

しかし、相続法第4条にて、ヒンズー教徒、ムハンマダン教徒、仏教徒、シーク教徒、またはジャイナ教徒に関して遺言による継承は認められていません。また、ミャンマーの人口の半数以上を占める仏教徒を含む上記教徒は、法的に遺言を行うことは認められていないとの判例があります。したがって、ミャンマーにおいては遺言を活用することは実務上難しく、相続制度を理解した上で、事前に株式や不動産について契約書上適切な対応を行う必要があります。

 

5.メキシコ

メキシコの遺言に関する規定は民法に定められています。連邦民法(Código Civil Federal)のほか、各州の民法にも遺言の規定があり、原則、遺言者の所在するメキシコの各州の民法に従います。本ニュースレターにおいては紙幅の関係から、連邦民法に基づいた遺言書の形式のみをご紹介させていただきます。

メキシコでは遺言は、通常の状況下で作成される普通方式と特定の状況においてのみ作成を認められる特別方式の2種類に分類されます。 普通方式には、被封緘遺言、封緘遺言、簡易遺言、自筆証書遺言があり、特別方式の遺言には、私的遺言、軍人の遺言、海上遺言、外国で作成された遺言があります。以下では、軍人の遺言、海上遺言以外の各遺言の形式について解説いたします。

(1)非封緘遺言(Testamento Público Abierto)

非封緘遺言は、法律の規定に従い、公証人の面前で行う遺言です。遺言者は、公証人に明確かつ確実に遺言を述べなければなりません。公証人は、遺言書の条項を遺言者の意思に厳密に沿って書面に作成し、遺言者が同意しているかどうかを述べるために読み上げを行います。遺言書には、遺言者及び公証人のほか、必要に応じて証人及び通訳が署名し、場所、年月日、時間を記録しなければならないとされています。

遺言者がスペイン語を知らない場合には、遺言者は遺言書を書き、その遺言書は遺言作成のために読み上げに立ち会う通訳者によってスペイン語に翻訳されます。翻訳はそれぞれの公証原簿と原本に遺言として転記され、遺言者、通訳者、公証人によって署名され、行為に関与する公証人の対応する付録に保管されます。

この手続きは、遺言書の朗読から始まる単一の行為で行われ、公証人はそれらが完了したことを証明しなければならないとされています。

この厳格な形式に従わなかった場合、遺言書は無効となり、公証人は損害賠償責任を負うとともに、公証人の職を失うとされています。

(2)封緘遺言(Testamento Público Cerrado)

 封緘遺言は、遺言者又は遺言者の依頼を受けた他の人が書面に書く遺言で、遺言書は封緘され、証人3人の立会いの下に公証人に提示します。遺言者は、提示をするときは、その用紙に遺言書が記載されていることを宣言します。

この宣言の証明は、押印された遺言書の表紙に行われ、遺言者、証人及び公証人が署名し、公証人も押印をしなければなりません。形式を欠いた封緘遺言は効力を有さず、そのような遺言の宣言に携わった公証人は損害賠償責任を負うとともに、公証人の職を失うとされています。

遺言書が封緘され、承認されると、遺言者に交付され、公証人は遺言書が承認され交付された場所、時間、年月日を公証原簿に記録します。

遺言者は、遺言書を自分の手元に保管するか、自分が信頼する者に保管させるか、または司法記録保管所(archivo judical)に預けることができます。遺言者が自分の遺言書を司法記録保管所に預けるときは、遺言書を持って司法記録保管所の担当者の面前に出頭しなければいけません。担当者は、預かり又は引渡しをファイルに記録し、その記録には担当者と遺言者が署名し、遺言者には謄本が渡されます。

この封緘遺言は、公証人及び証人が裁判官の前で、遺言者又は遺言者のために署名した者の署名を確認し、自分の意思に基づき、引渡時と同様に封緘され、封印されているかどうかを宣言した後でなければ、開封することができません。

封緘遺言は、内容に不備がなくても、中紙が破られたり、表紙が開かれたり、それを承認する署名が消されたり、傷がついたり、修正されたりすると、無効になります。

(3)簡易遺言(Testamento público simplificado)

簡易遺言は住宅を目的とし、または目的としようとする不動産の取得の際に、同じ証書で相続人を確定するもので、公証人の面前で作成されます。不動産価格またはその評価額が、取得時に年額UMA(Unidad de Medida y Actualizaciónの略。2021年の年額は32,693.40ペソ)の25倍相当額を超えていないことなどの要件を満たす必要があります。

(4)自筆証書遺言(Testamento Ológrafo)

自筆証書遺言は、遺言者の自筆で書かれた遺言書であり、公証記録保管所(Archivo General de Notarías)に預けなければ、その効力を生じません。

他の形式の遺言は16歳以上であれば遺言を行いえますが、自筆証書遺言は、18歳に達している者のみが行うことができ、有効であるためには、遺言者が全文を書き、署名し、その年月日が記載されなければなりません。外国人の場合は、自国語での自筆遺言を作成することができます。

遺言者は、自筆証書遺言を2部作成し、それぞれに自分の指紋を捺印しなければなりません。原本については、遺言者は、遺言書の原本を入れた封筒に、「この封筒の中身は私の遺言書です。」と自筆し、預ける場所と日付を記入します。付記は、遺言者と公証記録保管所所の担当者によって署名され、身分証明の証人がいる場合は、その人も署名しなければなりません。そのうえで、封緘された封筒に入った原本は公証記録保管所に預けます。

封緘された封筒に入った副本は、公証事務所の担当者による「私は、….(遺言者)….. 氏が自筆証書遺言の原本が入っていると宣言した封緘された封筒を受け取った。また、同氏によれば、この封筒の中には複製が存在する。」 との表紙の注記とともに遺言者に返却されます。遺言者は、遺言書の入った封筒に、違反を防止するために必要と思われる署名などを付けることができます。

相続発生時、遺言書の複製を所持している者、または自筆証書遺言を預けていることを知っている者は、管轄の裁判官に通知しなければならず、裁判官は遺言書がある公証記録保管所の担当者に遺言書を送るよう要請しなければなりません。

遺言書が受理されると裁判官は遺言書が入っている表紙を調べて要件を満たしていることを確認し、その場所に居住する身元確認証人にその署名と遺言者の署名を認識させ、検察官、利害関係者として出頭した者及び前述の証人の立会いのもと、遺言書が入っている封筒を開封します。要件を満たし、遺言者が預けたものと同一であることが確認された場合には、遺言者の遺言は正式なものであると宣言されます。

(5)私的遺言(Testamento Privado)

私的遺言は、遺言者が非常に深刻な病気にかかり、公証人の面前で遺言書を作成する時間がない場合など、遺言者が自筆証書遺言を作成することができない限定的な場合にのみ認められます。

私的遺言をする場合になった遺言者は、原則5人の適当な証人の立会いのもとに、自分の遺言を宣言し、遺言者が文字を書くことができない場合には、そのうちの1人が書面を作成しなければなりません。

私的遺言を作成する場合には、非封緘遺言の手続を準用することとされていますので、遺言者は、証人に明確かつ確実に遺言を述べることを要求されます。証人は、遺言書の条項を遺言者の意思に厳密に沿って書面に作成し、遺言者が同意しているかどうかを述べるために読み上げを行います。遺言者及び証人のほか、必要に応じて通訳が署名し、場所、年月日、時間を記録しなければなりません。

私的遺言は、遺言者があった病気や危険な状態により死亡した場合、または私的遺言を認める原因が消滅した後1ヶ月以内に死亡した場合にのみ有効となります。

遺言者の死亡後に私的遺言が有効であるためには、申請を行うことが必要です。 この申請は、遺言者の死亡およびその処分の方法を知ったときに、利害関係者が直ちに請求するものとされています。私的遺言に立ち会った証人は、1遺言書が交付された場所・時間・年月日、2遺言者をはっきりと認識し、見て、聞いたかどうか、3処分の内容、4遺言者が健全な精神状態にあり、強制されていなかったかどうか、5私的遺言がなされた理由、⑥遺言者が病気で亡くなったことを知っているかどうか、危険な状態にあったことを知っているかどうかなどの事項を届申請なければなりません。

 これらの申請事項が確認された場合、裁判官は、正式な遺言であると宣言します。

(6)外国で作られた遺言

外国で作成された遺言書は、その遺言書が作成された国の法律に基づいて作成された場合、メキシコシティで効力を有します。公使の書記官、メキシコ領事および副領事は、遺言書がメキシコシティで執行されなければならない場合に、在外国民の遺言書の公証人または受取人を務めることができます。

なお、メキシコは、ハーグ条約のうち、「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」を批准していません。

 

6.バングラデシュ

バングラデシュにおいて、遺言は、1925年相続法(The Succession Act, 1925(以下、「相続法」という))にて定められていますが、イスラム法の影響を大きく受けます。

相続法第2条(h)にて、「遺言」は、遺言者が死後に効力をもつことを望む、財産に関する遺言者の意思の法的宣言を意味する、と定義されています。また、同法第59条にて、未成年(18歳未満)ではない健全な精神をもつ全ての者は、遺言によって財産の処分をすることができると定められています。

遺言には、特権遺言(遺言者が遠征に従事した又は実際の戦争に従事した兵士、又はそのように雇用された又は従事した空軍兵、又は海上での船員である場合)と非特権遺言(特権遺言以外)が規定されています。相続法第63条では非特権遺言について規定しており、遺言者が署名又は押印又は遺言者の立会いのもと他の者が署名するものとしています(相続法第63条(a))。また、少なくとも2人の証人が署名又は押印しなければならないと規定しています(同条(c))。特権遺言は相続法第66条にて、死亡の危急に迫った場合などを想定して定められています。遺言は、遺言者が任命する「遺言執行者」によって執行され(相続法第2条(c))、遺言執行者が任命されていない場合は、管轄機関が、遺言を執行する者を任命します(相続法第2条8(a))。遺言者の死後、検認によって遺言執行者の行為が有効となります(相続法第227条)。

 

7.フィリピン

(1) 遺言の形式

フィリピンでは遺言は例外なく文書でなければならず、厳格なフォーマットを要件とすることでその有効性を担保しています。動画や音声の形式をとった遺言は認められません。遺言には公証遺言と自筆遺言の二種類があります。

1 公証遺言

公証遺言には以下のとおり厳格な定めがあります。

  1. 文書の最末尾に遺言者本人が署名を行うか、遺言者同席のもと、遺言者の指示によって、かつ遺言者の名において、別の人物が署名すること。
  2. 最低3名の信頼できる証人が、遺言者および他の証人同席のもと、文書末尾で署名および宣誓を行うこと。
  3. 遺言者、または遺言者からの依頼により遺言者の名で署名を行う者、および証人が、最後のページを除く全てのページの左側余白に署名をすること。
  4. すべてのページの上部にアルファベット表記でページ番号を振ること(例: “Page ONE”)。
  5. 宣誓部分には、(i)遺言の全ページ数、(ii)証人同席のもと、遺言者が末尾および全ページに署名を行ったか、明確な指示のもとで他の者に署名を行わせた旨、および(c)遺言者と他の証人同席のもと、証人が末尾および全ページに署名を行った旨を含めること。宣誓部分が証人の理解できる言語で書かれていない場合は、これを翻訳すること。
  6. 公証人の前で、遺言者および証人によって承認されること。

2 自筆遺言

他方、自筆遺言には以下の要件があります。

  1. すべて手書きであること。
  2. 遺言者によって日付と署名が付されること。

自筆遺言はフィリピン国内で行われる必要はなく、証人も必要ありません。しかし、その有効性を証明するにあたっては、遺言者の筆跡および署名を知る者が最低1名、遺言とその署名が遺言者本人の手で書かれたものであることを明示的に宣言する必要があります。また、遺言の有効性が争われる場合には、上記の宣言は最低3名によってなされなければなりません。

自筆遺言の場合、署名より下の部分に書かれた遺産の譲渡については、あらためて日付および署名が伴われなければ有効な譲渡として扱われません。なお、すべての編集、追加、削除箇所には遺言者の署名と日付が付されなければなりません。

どちらの遺言形式をとる場合であっても、遺留分及び相続人廃除に関するフィリピン国内法の規定の適用を受けます。

(2) 海外で行われた遺言および外国人による遺言

海外で行われた遺言もフィリピン国内で法的効力を持つことがあります。原則として、遺言の方式は遺言がなされる国の法律の定めに従うことになります。なお、フィリピン共和国の外交官または領事官員同席のもとで、海外で遺言が行われる場合には、フィリピン法が定める方式が採用されます。

これと同様、外国人がフィリピン国内で実施した遺言についても、それが本国法に則った方式で行われ、かつ同国の法律によって認められうるものであるならば、フィリピン法に則って行われたのと同様の効力を持つことになります。

ただし、相続順位、相続分、遺言内容に関する実質的有効性については、遺産の性質や遺産が存在する国にかかわらず、遺産相続者となりうる者の本国法が適用されます。

(3) 遺言の検認

遺言内容の実行にあたってはまず、裁判所による検認手続が必要となります。この手続により、遺言が然るべき形式および要件を満たしており、したがって有効なものであるという事実が確認されます。裁判所による承認なしには、遺言に沿った動産および不動産の承継を行うことはできません。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

Newsletterの記載内容は2021年10月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

27の都道府県に実施されていた緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置は、9月30日にすべて解除されることが発表されました。解除後も1カ月をめどに飲食店の営業時間短縮要請やイベントなど一定の制限を設け、対策の緩和は段階的に行うとされています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 検疫の強化

1 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

2 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

3 スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

4 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

5 ワクチン接種証明書の「写し」の提出

 入国時・帰国時の検疫で、有効なワクチン接種証明書の「写し」を提出する場合、検疫所が確保する宿泊施設での3日間の待機の免除や、入国後14日間の待機期間の一部が短縮されます(ワクチン接種証明書の「写し」の提出について(厚生労働省))

6 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

検疫措置として、「水際対策上特に対応すべき変異株等に対する指定国・地域」及び「水際対策上特に対応すべき変異株以外の新型コロナウイルスに対する指定国・地域」からの入国者は、検疫所長の指定する場所での3日間又は6日間の待機が求められます。本Newsletterでご紹介する国のうち対象国は、フィリピン(6日間待機)、マレーシア及びバングラデシュ(ともに3日間待機)です(対象の国又は地域については、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

(2) 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は1,591,829名です。この内、1,459,786名が回復し、累計死亡者数は16,620名となっています。また、非常事態宣言は、11月30日まで延長されています。

タイ政府は、9月27日、規制を緩和する措置を発表しており、ダークレッド・ゾーンについて、10月1日より、外出禁止措置の開始時間を、午後9時から午後10時へ変更し、午後10時から翌朝午前4時まで外出禁止とするとしています。そして、スーパーやデパート、ショッピングモール、コンビニエンスストアなど、午後9時まで営業可能としています。

また、以下の各施設について、緩和措置が発表されています。

  • 公共図書館、私立図書館、美術館、博物館、教育科学センター、科学文化センター

常にマスクを着用し、4平方メートルあたり1人、定員の75%以下など、限られた人数での利用可。食事禁止。

  • ネイルサロン

事前予約で利用可能。

  • タトゥーショップ

事前予約で利用可能。ワクチン接種証明か、72時間以内のPCR検査結果が必要。

  • マッサージ、スパ

事前予約にて2時間以内の利用に限る。ワクチン接種証明か、72時間以内のPCR検査結果が必要。

  • 映画館

常にマスクを着用し、少なくとも1メートルの距離を置くか、定員の50%以下など、限られた人数での利用可。食事禁止。21時までの営業可。

  • レストランでの音楽の演奏

演奏者は3人以下。演奏家は常にマスクを着用。歌手は歌う時のみ、マスクを外すことが可能。

2.2 入国規制

 タイ政府は、9月27日、タイへの入国者の隔離措置について、10月1日から、ワクチン接種証明書を条件として14日間から7日間に短縮する方針を決定しました。また、ワクチン未接種者で空路での入国者については、10日間に短縮するとされています。陸路での入国の場合は、14日間の隔離措置とされています。また、隔離期間中に2回のPCR検査が義務付けられます。

この入国規制の変更については、随時最新の情報を確認する必要がありますので、在東京タイ王国大使館又は、在タイ日本大使館のHPをご参照下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連の規制状況

 9月27日の新規感染者数は、10,959人であり、ピーク時の6割ほどに落ち着いています。現在マレーシア国内で施行されているFMCO(完全ロックダウン)は、第一段階から第四段階まで設定され、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。現在、第一段階はケダ州のみであり、ペラ州、クランタン州、ペナン州、サバ州(南部エリアを除く)、マラッカ州、スランゴール州、クアラルンプール州、プトラジャヤ州、ジョホール州が第二段階、ペルリス州、サラワク州、トレガンヌ州、パハン州が第三段階、ラブアン、ヌグリ・スンビラン州が第四段階となっております。

 この段階的な規制は、第二段階において出勤率最大80%を上限に経済活動を段階的に許可し、第三段階において出勤率最大80%を上限に全ての産業の稼働、議会開会、教育・社会・スポーツ活動を段階的に許可し、第四段階において全ての産業の稼働、州間移動が許可するとしています。

 第二段階の規制では、生活必需品のための外出は、一世帯から2名までと制限がありますが、ワクチン接種完了者については、地区間移動も許可されています。また、ワクチン接種完了者は、店内飲食も許可されています。

3.2 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。もっとも、ワクチン接種完了等の一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19 の陽性者数は1日あたり2,000人以下、陽性率は約8%と落ち着きを見せています。感染予防のための祝日も9月10日で終了したことから、政府機関も動き出しており、ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらない状況に戻ってきています。

4.2 入国規制

9月は 10日及び 24 日の ANA便が飛びました。10月は 8日、15日、22日、29日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっています。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。またミャンマー入国後のホテル隔離について、これまで隔離日数は 10 日でしたが、今後 11 日に変更になりました。(ヤンゴン保健当局から各ホテルに、到着日の翌日を1日目とカウントし、隔離先ホテルのチェックアウト日は 11 日目であるとの通知が出されたためです)

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

COVID-19感染者数の増加は落ち着きを見せ始め、メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、9月6日の更新で、赤の州が0州になりました。9月20日の更新では黄色の州が24州となるなど、改善を見せています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、10月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路(ただし、フェリーでの移動を除く)での移動については適用しないとされています。また、3月19日から実施されているメキシコ政府によるグアテマラ及びベリーズ国境における陸路での不要不急の移動制限についてついては、6月21日以降その延長は発表されていないものの、在メキシコ日本大使館によると、解除の通知が為されていないことからこれまでと同様の制限が継続されると考えられるとのことです。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置としての渡航や入国規制(8月16日付)が、継続されています。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループAに属する国(モンゴルやマレーシアなどの計11か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了していない者の入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(英国やタイなどの計16か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了している者は、自宅での14日間の隔離、ワクチン接種が完了していない者は、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。なお、トランジット先によっては「出発48時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明」の提示を求めている国もありますので、注意が必要です。

その他、バングラデシュ‐インド間のエアバブル(二国間の商用旅客便の再開を目的とした取り決め)フライトが9月5日に再開しました。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

フィリピンのCOVID-19感染者は累計2,552,965人で、死者数は累計37,686人です。新規感染者は9月初旬をピークにやや減少傾向がみられるものの、依然として高い数値です。フィリピン政府はコミュニティ隔離措置として、地域ごとに、移動の制限や飲食店の営業制限等を課しています。マニラについては、「NCRにおけるCOVID-19対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。

7.2 入国規制

(1) 入国が認められる区分及び条件

1 外交官と外国政府職員、その家族

  • 有効な9(e)ビザを保有すること
  • 有効な47(a)(2)ビザを保有すること(外交ならびにそれに準じる業務を行う者に発給される)

2 フィリピン国籍を有する重国籍者

  • 次のいずれかを保有すること

(a) 有効なフィリピン政府発行のパスポート

(b) フィリピン国籍者であることの身分証明書(IC)

(c) フィリピン国籍者認定証明書(RC)、もしくは、2003年(共和国法9225)による国籍維持・再取得証明書(CRPC)

3 入国時に有効かつ現存するビザを保有する外国籍者(9aビザを除く。5、6を参照すること)

  • 有効な9(c)ビザを保有すること
  • 有効な長期滞在ビザを保有すること (永住権(移民)ビザ、特別非移民ビザ、SRRV,9g、47a2ビザ含む)

4 バリクバヤンプログラムによる入国が認められた外国籍者(行政令408号の査証免除国の国籍者であること)(元フィリピン国籍者と渡航する元フィリピン国籍者の配偶者とその子供(年齢不問)、フィリピン国籍者と渡航するフィリピン国籍者の配偶者とその子供(年齢不問))

  • 無査証
  • フィリピン国籍者との家族関係を証明できる書類の提示が必要

5 フィリピン国籍者と渡航しないが、フィリピン入国後にフィリピン国籍者と一緒に滞在する予定の外国籍者(フィリピン国籍者の外国人配偶者、フィリピン国籍者の外国籍の子供(未成年)、フィリピン国籍者の介助等が必要な外国籍の子供(年齢問わず)、介助等を必要とするフィリピン国籍者(年齢問わず)の外国籍の親)

  • 有効な9(a)ビザまたはSRRVビザを保有すること
  • フィリピン国籍者との家族関係を証明できる書類の提示が必要

6 有効かつ現存する9(A)ビザ保有者(上記5番に記載の者を除く)

※ 到着時にフィリピン入国管理局に入国免除文書を提示することが条件。

注意:入国免除文書は、関連するフィリピン官庁(NGA)や機関より推薦を受けた上で、フィリピン外務省(DFA)より発行されます。

  • 有効な9(a)ビザを保有すること
  • フィリピン外務省(DFA)発行の入国免除の文書が必要

(2) 入国が許可されない場合

新型コロナウィルス感染症に関する省庁間タスクフォース(IATF-EID)第136号に従い、ワクチンの接種状況に関わらず、レッドリストに分類された国(現時点で日本は含まれていません)から出発した全ての外国籍のフィリピン入国を禁止されています。入国禁止が免除されるのは、ビザ発給国政府が実施する送還、民間による送還、バヤニハンフライトで帰国するフィリピン国籍者です。

ワクチン接種の状況に関わらず、日本からフィリピンへの渡航者は、14日間の強制隔離が求められ、検査結果が陰性であれば、11日目から14日目まで自宅または宿泊施設にて隔離措置を継続することができます。

第2.各国の労務における休日・休暇の法制度

1.日本

(1) 休日

1 休日とは

休日とは、労働義務のない日として、使用者が労働者全体に付与するものです。労働基準法(以下「労基法」)では、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日か、4週間を通じて4日以上の休日(変形週休制)を与えなければならないと定めており(労基法第35条)、それを法定休日と呼びます。変形週休制を採用する場合は、就業規則その他において、4日以上の休日を与えることとする4週間の起算日を明らかにする必要があります(労基法施行規則第12条の2第2項)。休日の曜日は定められていません。また、法定休日以外に、会社が任意で与えている休日を所定休日と呼びます。週休2日制の会社の場合いずれか1日、(法定休日と重複する日を除く)会社の創立記念日やお盆や年末年始の休業日は、所定休日です。

2 法定休日に労働させること(休日労働)の要件

労働者を法定休日に労働させることができる要件として、以下が定められています。

(a) 労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ること(労基法第36条第1項))

「使用者」と「事業場の労働者の過半数を組織する労働組合」又は「労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」との間で書面による協定をし、労働基準監督署に届け出ること。

(b) 割増賃金を支払うこと

法定休日に勤務した場合は、通常の賃金の1.35倍以上の割増賃金を支払う必要があります(労基法第37条第1項、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。なお、法定休日に深夜労働となる午後10時から午前5時までの間において労働させた場合は、割増賃金が加算されます。

3 所定休日に労働させる場合

所定休日の労働は「休日労働」に該当しないため、割増賃金を支払う必要はありませんが、法定労働時間(1日8時間又は週40時間)を超えた分について、通常の賃金の1.25倍以上の割増賃金を支払う必要があります(労基法第37条第1項、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。所定休日を含む法定時間外労働が月60時間を超えた場合は、割増率は1.5倍以上です(ただし、一定の要件を満たした中小企業は、2023年3月末までは最低の割増率は1.25倍です(労働基準法附則第138条))。所定休日に深夜労働となる午後10時から午前5時までの間において労働させた場合も、割増賃金は加算されます。

4 振替休日・代休

 法定休日に出勤する代わりに、別の出勤日をあらかじめ振替休日に設定する場合、休日労働の割増賃金は発生しません。一方、あらかじめ振替休日を設定せずに、法定休日に出勤した場合は、休日労働として割増賃金が発生します。休日労働の前に振替休日を設定するか、後に代休を設定するかで、割増賃金の扱いが異なりますので、注意が必要です。

(2) 休暇

1 休暇とは

 使用者が労働者に対して、労働義務を免除する期間をいい、法定休暇(法律上定めがある)と特別休暇に分類されます。法定休暇として、年次有給休暇(労基法第39条)、産前産後の休業(労基法第65条)、生理日の休暇(労基法第68条)、育児・介護休業(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育児・介護休業法」)、子の看護休暇(育児・介護休業法)、介護休暇(育児・介護休業法)が定められています。特別休暇としては、夏季休暇や慶弔休暇、年末年始休暇等が挙げられます。なお、産休・育休の詳細につきましては、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

2 年次有給休暇

使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません(労基法第39条第1項)。さらに勤続年数が増えていくと、8割以上の出勤の条件を満たしている限り、20日を上限とし、1年ごとに取れる休暇日数は増えていきます(労基法第39条第2項)。また、本Newsletterの冒頭に記載の通り、2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました(労基法第39条第7項)。

 有給休暇は、原則として、利用目的を問わず、取得することができますが、会社の正常な運営を妨げるときに限っては、別の時期に休暇日を変更させることができます(労基法第39条第5項)。また、使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはなりません(労働基準法附則第136条)。

 なお、年次有給休暇は、発生の日から2年間で時効により消滅します(労働基準法第115条)。有給休暇は労働者を休ませることを目的としているため、会社が有給休暇の買い取りをすることは原則として認められませんが、転職等を理由に退職する労働者が退職時点で消化していない有給休暇や、2年が経過して時効消滅した有給休暇の買い取りなど、労働者の不利益にならない場合は、例外的に認められることがあります。なお、会社には有給休暇の買い取り義務はありません。

 パートタイム労働者(短時間労働者)でも、(a) 6か月間の継続勤務、(b) 全労働日の8割以上の出勤、という要件を満たせば、週の所定労働時間や所定労働日数に応じた日数の有給休暇が付与されることになります。

3 産前産後の休業

 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者を就業させることはできず(労基法第65条第1項)、また、産後8週間を経過しない女性を就業させることはできないと定められています(ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合で、その者について、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは可能)(労基法第65条第2項)。

4 生理日の休暇

使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならないと規定されています(労基法第68条)。

5 育児・介護休業

労働者は、その養育する1歳に満たない子について、事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができます。有期契約労働者については、雇用期間など一定の要件が定められています(育児・介護休業法第5条第1項)。育児休業の期間は、子が1歳に達するまでの間で本人が申し出た期間ですが、期間の延長や特例(パパ・ママ育休プラス)が定められています。育児休業期間中の賃金の支払い義務はありません。

また、労働者は、事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができます。有期契約労働者については、雇用期間など一定の要件が定められています(育児・介護休業法第11条第1項)。利用期間は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業することができます。介護休業期間中の賃金の支払い義務はありません。

なお、令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日から段階的に施行されます。主な改正点は以下の通りですが、適宜、省令を確認し、必要に応じて法律事務所へ相談するなどして、就業規則等の見直しや、必要に応じて改正が必要です。

  1. 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
  2. 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
  3. 育児休業の分割取得
  4. 育児休業の取得の状況の公表の義務付け
  5. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

6 子の看護休暇

 小学校就学前の子を養育する労働者が、病気やケガをした子の世話のほか、予防接種や健康診断の受診のために取得できる休暇で、1年度につき5日(小学校就学前の子供が2人以上の場合は10日)の休暇取得が認められており(育児・介護休業法第16条の2第1項)、使用者は、労働者から子の看護休暇の申し出があったときは、その申し出を拒むことはできません(育児・介護休業法第16条の3第1項)。

7 介護休暇

 要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者が、通院の付き添いや介護保険に関する手続き等のために取得することができる休暇で、1年度につき5日(対象家族が2人以上の場合は10日)の休暇取得が認められています(育児・介護休業法第16条の5)。なお、「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態を意味します(育児・介護休業法第2条第3号)。使用者は、労働者から介護休暇の申し出があったときは、その申し出を拒むことはできません(育児・介護休業法第16条の6第1項)。

 

2.タイ

 タイにおいては、労働者保護法(Labour Protection Act B.E.2541 以下、「法」といいます)にて、休日・休暇に関する定めがなされています。

(1) 休日

法上、週休日、祝日及び年次休暇日が、休日と定められています。

  1. 週休日

週休日は、原則として1週間に1日以上付与する必要があります。また、週休日と次の週休日との間隔は、6日以内である必要があります。

     2. 祝日

祝日は、国民労働者の日(5月1日)を含め、年間13日以上を定め、事前に従業員に対して周知する必要があります。祝日と週休日が重複した場合、その翌労働日に、祝日の振替休日を付与する必要があります。

     3. 年次休暇日

年次休暇は、満1年以上継続して勤務した労働者に対して、年間6労働日以上を付与する必要があります。法上、会社と従業員は、その年に使用しなかった年次休暇を翌年に繰越すことについて事前に合意することができると定められていますが、未使用の年次休暇の繰越し、買取りについては会社の義務とはなっていません。

     4. 休日労働

会社は、業務の内容又は性質上、継続して作業を行う必要があり、作業を中断すると損害が生じる可能性がある場合、又は緊急の作業である場合を除き、従業員に休日労働をさせてはならないとされています(ホテル業、運送業、飲食業、医療機関、その他省令で定められた事業においては休日に労働させることは可能とされています)。ただし、 時間外・休日労働の合計時間は、週 36時間を超えてはならないとされています。

    5. 休日労働手当

休日に賃金を受領する権利を有する従業員に、休日労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の1倍以上の休日労働手当を支払う必要があります。

休日に賃金を受領する権利を有しない従業員に、休日労働をさせた場合には、労働日の時間当たりの賃金の2倍以上の休日労働手当を支払う必要があります。

    6. 休日時間外労働手当

休日の労働時間外に、従業員に休日時間外労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の3倍以上の休日時間外労働手当を支払う必要があります。

(2) 休暇

 法上、従業員は以下の各休暇を取得することができると定められています。法に定めのない休暇日を会社が独自に設定することもでき、出家休暇等を定める会社もみられます。

  1. 病気休暇

従業員は、病気である場合には、病気休暇を取得することができます。しかし、3労働日以上連続で病気休暇を取得する場合には、会社は従業員に対して、第1級医師免許を有する医師又は公立病院による診断書の提出を求めることができます。会社は、年間30日までは、病気休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。

    2. 不妊手術休暇

従業員は、第1級医師免許を有する医師が定める期間について、不妊手術のための休暇を取得することができます。会社は、当該期間に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。

    3. 用事休暇

従業員は、就業規則に基づき、年間3日以上、必要な用事のための用事休暇を取得することができます。会社は、年間3日までは、用事休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。従前は、用事休暇の日数について、法上定められていませんでしたが、2019年の法改正により、年間3日以上の取得が認められました。

    4. 兵役休暇

従業員は、兵役に関する法律に基づく、検査、軍事訓練又は招集のために、兵役休暇を取得することができます。会社は、年間60日までは、兵役休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。

    5. 研修休暇

従業員は、労働省令で定める規則、手続きに基づき、研修又は技能開発のための、研修休暇を取得することができます。この休暇に対して、会社は労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う義務はありません。

    6. 出産休暇

従業員は、1回の出産につき、98日まで(休暇期間中の休日も含む)出産休暇を取得することができます(同法改正により、従前の90日から98日まで延長されました)。この出産休暇には、出産前の検査のための休暇も含まれます。会社は、年間45日までは、出産休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

 

3.マレーシア

(1) 休日

マレーシアの雇用法(Employment Act 1955)は、使用者は労働者に週に1日の休日を与えなければならないと規定しています(雇用法59条1項)。そして、使用者は、原則として休日における勤務を労働者に強いることはできませんが、一定の場合(時間外労働を認める場合と同様の場合等)には例外が認められます(雇用法60条1項)。

 使用者が労働者を休日に労働させた場合には、休日割増手当を支払わなければなりません。具体的には、月給制により雇用されている労働者の場合、休日における労働時間が「所定労働時間」の半分以下であれば賃金の半日分、労働時間が「所定労働時間」の半分を超えて1日以下の場合は通常の賃金の1日分、労働時間が「所定労働時間」を上回る場合には通常の時間給の2倍以上の時給額で計算された金額を支払う必要があります(雇用法60条3項)。

(2) 祝日

労働者は、雇用法に基づき、1 公示された祝日のうち11日、及び2 祝日法(Holidays Act 1951)に基づいて指定される祝日について、有給休暇を取得する権利を有します(雇用法60D条1項)。1については、国家記念日・国王誕生日・州首長の誕生日(又は連邦直轄市デー)・メーデー・マレーシアデーの5日間が必ず含まれます(同項)。残りの6日については一次的には雇用者が指定しますが、雇用者と労働者の合意により他の日に置き換えることができます(同条1A項)。また、2についても、使用者は指定された祝日に代えて、別の日を休みとすることができます(同項)。

 使用者は労働者に対して祝日における勤務を求めることができますが、その場合には、有給休暇としての1日分の賃金の支払いに加え(実際の就業時間が「所定労働時間」下回る場合も含む)通常の賃金額の2日分を支払わなければならなりません(60D条3項)。また、その日の勤務時間が「所定労働時間」を超える場合、使用者は通常の時給額の3倍以上の時給額で計算した金額を支払わなければならなりません(同項)。

(3) 年次有給休暇

 労働者には、勤続年数が2年未満の場合は年8日、2年以上5年未満の場合は年12日、5年以上は年16日の年次有給休暇が与えられます(雇用法60E条1項)。また、労働者は、有給取得権を与えられた年又はそれに続く1年の間に有給休暇を取得しなければならず、当該期間内に有給休暇を取得しなかったときはその権利を喪失することとなります(雇用法60E条2項)。もっとも、労働者が会社の要請により有給休暇の取得権の全部又は一部を行使しない旨を書面により同意した場合は、労働者は会社から有給休暇に代わる手当の支払いを受けることができます(同項)。

 不正行為を理由とする解雇による場合を除き、雇用契約がいずれかの当事者からの申入れによって終了されたときは、使用者には労働者に対し未取得の有給休暇の日数に対応する賃金相当額を支払う義務が生じます(雇用法60E条3A項)。

(4) 病気休暇

 病気休暇は医師による診断を条件に付与される(雇用法60F条1項)もので、その日数は勤続年数が2年未満の場合には年14日、2年以上5年未満の場合は年18日、5年以上の場合は年22日まで取得が認められます(同項(b))。また、入院が必要な場合には、年60日まで取得が認められます(同項)。

 病気休暇は医師による診断を受けていることを条件とするものであるため、そもそも医師による診断を受けていない場合には無断欠勤とみなされます(雇用法60F条2項)。また、診断を受けていたとしても休暇の開始から48時間以内に使用者に連絡をせず、かつ、連絡をしようとしなかった場合も同様に扱われます(同項)。

(5) 出産休暇

雇用法は、前記の休日・休暇のほかに、女性労働者に対して60日間の出産休暇を取得する権利を付与しています(雇用法37条1項)。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

 

4.ミャンマー

ミャンマーでは、休暇及び休日法(Leave and Holidays Act)において休日・休暇について規定されています。

(1) 週休

使用者は、労働者に1週間に1日以上有給休暇を与えなければなりません(休暇及び休日法第3条(4))。

労働者が週休に労働した場合、当該労働者は祝日でない週休前後3日のうち1日を代休として付与されます。当該代休に関し、残業代は支払われません。また、労働者が連続して10日間を超えて労働することになる代替を行ってはいけません。

(2) 休暇

 休暇及び休日法では、法定休暇として、有給休暇、臨時休暇、医療休暇、出産休暇が定められています。

1 有給休暇

年間10日の有給休暇が認められており、有給休暇は、12カ月連続の業務期間を完了し、かつ各月20日以上働いた場合に付与されます。20日間働いていない月においては、月ごとに1日の有給休暇を失います(休暇及び休日法第4条(2))。

労働者が有給休暇を全て取得する前に、退職、解雇、死亡した場合、残存有給休暇日数に対して当該事由発生日直前の30日間の平均日給により計算した額を使用者は労働者に対して支払わなければなりません。当該支払いは、退職又は解雇の場合は2日以内に、死亡の場合には請求受領後できる限り早く支払わなければなりません(同法第4条(5)及び休暇及び休日規則第40条)。

2 臨時休暇

1年で合計6日間の有給の臨時休暇が認められていますが、臨時休暇1回あたりの取得期間は最大3日間となっています。臨時休暇は他の種類の休暇と合わせて取得することは認められておらず、また翌年に繰り越すことはできません(休暇及び休日法第5条)。

3 医療休暇

全ての労働者は、1年間に30日を超えない範囲で有給の医療休暇が認められています。社会保障の対象でなく、かつ、6か月の勤務を完了していない労働者は、無給の医療休暇を要求することができます(休暇及び休日法第6条(1))。医療休暇は翌年に繰り越すことはできません(同法第6条(4))。

4 産休

休暇及び休日法にて、産前6週間、産後8週間の有給での産休が認められており、産休は、医療休暇と合わせて取得することができます(休暇及び休日法第7 条(A))。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

 

5.メキシコ

メキシコでは、休日及び休暇は、連邦労働法上に規定されるため、以下、その内容を紹介します。なお妊娠した女性が取得できる産前産後各6週間の休暇については、TNY Group Newsletter No.10において解説していますので、そちらをご参照ください。

(1) 休日

労働者は、6日の勤務毎に、少なくとも1日の休日を享受できます。労働者と使用者は、合意により、週休日を定めなければならず、また、労働者は、この週休日に労務を提供する義務を負いません。この規定に違反した場合、使用者は労働者に対し、通常の賃金のほか、賃金の2倍の額の手当を支払わなければなりません。

なお、法定の週休日は日曜日と定められています。日曜日に勤務する労働者は、通常の労働日の給与に加え、少なくとも25%の追加割増賃金を受ける権利を有します。

 義務的な休日(いわゆる祝日)は、1月1日(新年)、2月の第1月曜日(憲法記念日)、3月の第3月曜日(ベニートフアレス生誕日)、5月1日(メーデー)、9月16日(独立記念日)、11月の第3月曜日(革命記念日)、大統領の任期の6年ごとの12月1日、12月25日(クリスマス)、連邦及び地方選挙の選挙投票日と定められています。義務的な休日には労働の義務がありません。しかし、労働者を働かせる必要がある場合には、労働者及び使用者は、その役務を提供する労働者の数を定めなければならないとされています。また、この日に働く労働者は、労務を提供する義務があり、通常の賃金のほか、賃金の2倍の額の手当を支払われる権利を有します。

(2) 有給休暇

勤続年数が1年以上の労働者は、有給休暇取得の権利を得ます。この有給休暇は6労働日未満であってはならず、その後の勤続年数ごとに2日ずつ増加し、勤続5年以降は5年ごとに2日が追加されます。なお、季節的な労働者は、年間の労働日数に比例して、有給休暇を得る権利を有します。労働者は、有給休暇を取得すると、有給休暇手当として賃金の25%以上の額の手当を受け取る権利を有します。

有給休暇は、労働者の1年間の勤務が経過した日から、6ヶ月以内に行使する機会を与えなければなりません。使用者は毎年、労働者の勤続年数とそれに基づく休暇日数、その取得(推奨)日を記載した証明書を労働者に交付するものとされています。

(3) 癌と診断された子どものための休暇

癌と診断された16歳までの子の父親又は母親は、その子が療養や入院を必要とする場合には、治療を担当する医師の指示に従って、治療に付き添うことを目的として、休暇を受ける権利を有します。これに該当する場合は、社会保障法(Ley del Seguro Social)の定めるところにより、社会保険庁が発行する証書を以て、休暇を取得することができます。証書の有効期間は最大28日間であり、合計364日を超えない範囲で最大3年間申請することができます。なお、使用者は、この休暇取得中の労働者に対して給与を支払う義務はなく、労働者にとっては無給の休暇となりますが、一定の条件を満たす労働者は社会保険の受給が可能です。

(4) 制裁

6日の勤務毎の1日の休日、勤続1年以上の労働者が有する有給休暇取得の権利及び季節労働者の有給休暇取得の権利に関する規定の違反の場合には、UMA(罰金や制裁金、社会保障費の支払い額など様々に使用される単位)の50から250倍の過料が定められています。

 

6.バングラデシュ

バングラデシュでは、労働法にて、休日・休暇について規定されていますが、同法で保護の対象とされている「労働者」に、管理職レベルの従業員は含まれないとされています。

(1) 週休

店舗や商業施設、工業施設の労働者は週に1.5日、工場の労働者は週に1日、週休を取得する権利が与えられています。いずれも、週休に対して賃金から控除することはできません(労働法第103条)。事情により週休が取得できない場合は、3日以内に他の日に代替して取得させなければならず(労働法第104条、労働規則第101条)、週休をとらずに連続して10日以上の労働をさせることはできません(労働規則第101条)。なお、バングラデシュでは、政府機関や銀行を含め、一般的な週休は金曜日及び土曜日です。

(2) 休暇

 労働法では、法定休暇として、年次有給休暇、臨時休暇、病気休暇、祝祭休暇のほか産前産後休業が定められています。

1 年次有給休暇

1年間継続勤務した労働者に対し、翌年から、直近12か月の勤務日数を基本に、店舗、商業施設、工業施設、工場、道路交通施設の労働者は、18日の勤務日数ごとに1日有給休暇が与えられます(労働法第117条(1))。年次有給休暇の間に週休や祝祭日があたる場合は、これらの休日も年次有給休暇に含まれます(同条(3))。労働者が12か月以内に有給休暇を消化しなかった場合は、翌年に繰り越すことができますが(同条(4))、有給休暇が一定の日数に達した場合は、それ以上取得することはできません。年次有給休暇取得の条件である勤務期間について、次の理由で勤務が中断された場合も、継続勤務期間とみなされます。

a) 週休や祝日、b) 有給休暇、c) 病気又は事故による有給又は無給の休暇、d) 16週を超えない産休、e) 一時解雇期間、f) 合法ストライキ又は違法なロックアウト(同条(8))。

労働者が未消化の年次有給休暇の換金を希望した場合、年に1回まで、全年次有給休暇の半分まで換金ができます(労働規則第107条(2))。労働者が死亡した場合、未消化の休暇分の賃金は、指定又は法定の受取人に支払われます(同条(3))。

2 臨時休暇

年間10日の有給の臨時休暇が認められており、翌年に繰り越すことはできません(労働法第115条)。年の途中で採用された労働者は、勤務期間の割合に応じた日数を臨時休暇として取得することができます(労働規則第106条)。

3 病気休暇

新聞労働者を除き、全ての労働者は年間14日の有給の病気休暇が認められています。病気休暇の取得にあたり、使用者が指定した医師による診断が必要で、診断書に記載されている療養に必要な期間の休暇を取得することができます。病気休暇は翌年に繰り越すことはできません(労働法第116条)。また、臨時休暇と同様に、年の途中で採用された労働者は、割合に応じた日数を病気休暇として取得することができます(労働規則第106条)。

4 祝祭休暇

年間11日の有給の祝祭休暇が認められており、祝祭休暇に勤務する場合は、2日の補償休暇及び代休が与えられなければならないとされています(労働法第118条)。使用者は、団体交渉代理人と協議のうえ、毎年12月31日までに翌年の祝祭休暇(11日以上)を決定しなければなりません。団体交渉代理人が存在しない場合は参加委員会と協議し、同委員会が存在しない場合は、労働者と可能な限り協議し、使用者が祝祭休暇を決定しなければなりません(労働規則第110条)。

5 産休

労働法にて、産前産後8 週間ずつの産休が定められています(労働法第47 条(3))。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

⑥ 未消化の年次有給休暇の扱い

 退職又は解雇で雇用が終了した労働者で、利用していない年次有給休暇がある場合は、相当する賃金が支払われます(労働法第11条)。

 

7.フィリピン

(1) 週休に関するルール

フィリピンでは、使用者は従業員に6日の労働日ごとに24時間以上の休日を与えることとされています(労働法91条(a))。予定された休日に労働者が働く場合には30%の休日手当を支払う必要があります。

(2) 祝日に関するルール

フィリピンでは労働法の規定によって、原則あらゆる職種の従業員が、有給休暇及び祝日労働における給与支払ルールの対象となります。また、ボーナスやインセンティブのように使用者が自由に定められるものとは異なり、有給休暇は労働者に認められた当然の権利とされています(労働法94条)。ただし、政府職員、マネジメント層の従業員、事業所外従業員、使用者の家族である従業員、家事使用人、他人に対して個人的なサービスを提供する者、及び、出来高払いを受けるものとして労働雇用長官が決定した者についてはこの適用を受けないとされています(労働法82条)。

1 通常祝日

従業員が通常祝日に労働した場合、通常の日給の200%相当額が支給されなければならず、労働しなかった場合でも有給(通常の日給の100%)扱いとなります(労働法94条)。ただし、小売又はサービス業で、常時雇用する従業員が10人未満の事業を除きます。通常祝日は以下のとおりです(共和国法第9492号及び9849号)。

 

(1) 正月(New Years Day) – 1月1日

(2) 聖木曜日(Maundy Thursday) – 年ごとに異なる

(3) 聖金曜日(Good Friday) – 年ごとに異なる

(4) 勇者の日(Araw ng Kagitingan) – 4月9日に一番近い月曜日

(5)メーデー(Labor Day) – 5月1日に一番近い月曜日

(6) 独立記念日(Independence Day) – 6月12日に一番近い月曜日

(7) イスラム教断食明け大祭(Eidul Fitr) – 年ごとに異なる

(8) イスラム教犠牲祭(Eidul Adha) – 年ごとに異なる

(9) 英雄の日(National Heroes Day) – 8月の最後の月曜日

(10) ボニファシオ記念日(Bonifacio Day) – 11月30日に一番近い月曜日

(11) クリスマス(Christmas Day) – 12月25日

(12) リサール記念日(Rizal Day) – 12月30日に一番近い月曜日

2 特別祝日

特別祝日に労務を提供した場合には、通常の日給の130%相当額が支給されなければなりません。通常祝日とは異なり、既存の会社慣行又は労働協約(CBA)がない限り、ノーワーク・ノーペイ原則が適用されますが、実際には通常祝日と同様、労務の提供をしなくても有給としている企業が多くみられます。フィリピンにおける特別祝日は以下のとおりです(共和国法第9492号及び10966号)。

(1) ニノイ・アキノの日(Ninoy Aquino Day) – 8月21日に一番近い月曜日

(2) 諸聖人の日(All Saints Day) – 11月1日

(3) 無原罪の聖マリアの日(Feast of the Immaculate Conception of Mary) – 12月8日

(4) 大晦日(Last Day of the Year) – 12月31日

(3) 休暇に関するルール

以下、フィリピン労働法によって労働者に付与される休暇とその取扱いについて説明します。

1 サービスインセンティブ休暇

勤続1年以上の労働者はサービスインセンティブ休暇(通称SIL)を取得できます(労働法第95条(a))。これはいわゆる年次有給休暇にあたるものです。「勤続1年以上」とは勤務開始日から起算して12ヶ月以上の勤続(承認された欠勤、休日、有給の通常祝日を含む)を意味し、勤務は連続的に行われなくてもかまいません。年末時点で消化されなかった分については使用者に買取を要求することができます。

2 一人親休暇

父親であるか母親であるかを問わず、一人親は1年あたり7日の育児休暇を有給で取得することができます(共和国法第8972号)。当該休暇の取得には、勤続1年以上であること、十分な余裕をもって雇用者に通知をしていること、さらに一人親証明書(居住地の社会福祉・開発省のオフィスで取得可能)を雇用者に提示していることが必要となります。当該権利を現金に代えることはできません。

3 出産休暇

出産休暇は105日分が有給で付与され、労働者の意思で無給分をさらに30日分取得することができます(共和国法第11210号)。当該権利は非公式な労働(課税されず、国民総生産にも現れない種類の労働)を含むあらゆる女性労働者について、さらに民法上の身分、嫡出子であるかどうかなどに関わらず認められており、流産や緊急妊娠中絶に至った場合も対象となります。また一人親の出産である場合にはさらに15日分が追加されます。なお、婚姻関係にない男性パートナーに対して7日分までの有給を分け与えることもできます。

4 婦人疾患に関わる休暇

婦人疾患に関する手術を受けた女性労働者は、2ヶ月間の有給休暇を取得する権利を有します(共和国法第9710号)。労働雇用省(DOLE)のガイドラインによれば、婦人疾患には、子宮内容除去術、子宮摘出、卵巣摘出又は乳房切除その他の外科的処置を要するものを含みます。この休暇を取得するためには、手術直前の12ヶ月間で少なくとも6ヶ月間の継続勤務を行ったこと、婦人疾患に関する休暇の申請を行っていること、及び資格を有する医師による婦人疾患の手術を受けたことが必要となります。

5 父親休暇

法律上婚姻している男性の労働者は、7日間の父親休暇を有給で取得する権利があります(共和国法第8187号)。この休暇を取得するためには、当該労働者が出産時に雇用状態にあること、妻の妊娠及び出産予定日について使用者に通知すること、妻が出産、流産又は中絶に至ったことが必要となります。当該権利を現金に代えることはできません。

⑥ 家庭内暴力の被害女性のための休暇

家庭内暴力の被害を受けた女性は、通常の有給休暇に加えて10日間まで有給休暇を取得することができ、保護命令の内容によってはさらに延長が可能です(共和国法9262号)。当該休暇の取得には、バランガイ議長若しくは議員、検察官、裁判所事務官から、被害者の使用者に対して証明書が提示される必要があります。当該権利を現金に代えることはできません。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

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・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

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・佐賀(TNY国際法律事務所)
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・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

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・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

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・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

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・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

Newsletterの記載内容は2021年9月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現時点で沖縄県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、茨城県、栃木県、群馬県、静岡県、京都府、兵庫県、福岡県、北海道、宮城県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、岡山県、広島県に緊急事態宣言が実施されており、まん延防止等重点措置は、石川県、徳島県、熊本県、富山県、山梨県、香川県、愛媛県、鹿児島県、高知県、佐賀県、長崎県、宮崎県を対象に実施されています。ともに、9月12日までが実施期間となっています。また、外出・移動の自粛、テレワークの促進、飲食店への休業又は時短要請、酒類提供の制限、イベントの収容率及び人数制限など、各都道府県の自治体が措置を講じるほか、ワクチン接種の円滑化・加速化の取り組みが進められています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

1.2 入国規制

(1) 検疫の強化

1 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

2 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

3 スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

4 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

5 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

インドネシア、キルギス2か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。

バングラデシュ、アラブ首長国連邦、ミャンマー、アフガニスタン、インド、ザンビア、スリランカ、ネパール、モルディブの9か国・地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で6日間待機し、入国後3日目及び6日目に改めて検査を受けることになります。

その他、別途指定される国又は地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)当面待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。

(対象の国又は地域については、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

(2) 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は1,190,063名です。この内、1,002,527名が回復し、累計死亡者数は11,399名となっています。また、非常事態宣言は、9月30日まで延長されています。

タイ政府は、8月28日、規制措置を緩和する措置を公表しており、この緩和措置は9月1日から適用されます。バンコク等の29都県をダークレッド・ゾーン、37県をレッド・ゾーン、11県をオレンジ・ゾーンとして引き続き指定しています。

ダークレッド・ゾーンについては、午後9時から翌朝午前4時までの外出禁止措置が9月14日まで延長されています。ただ、COVID感染防止措置等の条件を満たした場合、飲食店は午後8時まで店内飲食が可、ショッピングモールも午後8時まで営業可、理髪店、マッサージ店も一部営業可、公園・運動場・プール・屋内外運動施設についても午後8時まで営業可とされています。詳細情報については、在タイ日本大使館のHPを参照下さい。

2.2 入国規制

タイへの入国については、引き続き、オンラインでの入国許可証(COE)申請システムを用いて手続きを進める必要があります。渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、及びCOVID-19の関連疾患を含む医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等が必要です。タイ入国後は、隔離(ASQ)ホテルにて14日間の隔離となります。

 7月1日よりプーケットサンドボックス制度が、7月17日よりサムイ・プラス制度が開始されています。これは、渡航日の14日前までに、COVID-19ワクチン接種を規定回数終えている者を、検疫隔離なしでプーケット又はサムイ島・パンガン島・タオ島に受け入れる、検疫隔離免除の制度となります。ワクチン接種証明書の提示が必要となります。また、通常の入国時と同様、COEの申請、渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等の提示も必要となります。詳細情報については、在京タイ王国大使館のHPを参照下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 8月29日の新規感染者数は、20,579人でした。現在マレーシア国内で施行されているFMCO(完全ロックダウン)は、第一段階から第四段階まで設定され、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。

7月中に、ペラ州、クランタン州、トレガンヌ州、パハン州、ペナン州、サバ州、8月中にヌグリ・スンビラン州が第二段階に移行しました。また、8月中に、ペルリス州、サラワク州が第三段階へ、ラブアンが第4段階へ移行しました。これら以外の地域は、現在も第一段階の規制が施行されます。第一段階の規制では、必要不可欠なサービスとして指定されたものを除き全ての社会・経済活動は許可されません。また、州・地区間の移動は原則禁止されています。

また、これまで必要不可欠な経済活動に分類されていなかった製造業にも、従業員のワクチン接種率を基準に以下の稼働率の限度での操業が許容されました。

・全従業員のうちワクチン接種率40%~59%で60%の稼働率

・全従業員のうちワクチン接種率60%~79%で80%の稼働率

・全従業員のうちワクチン接種率80%~100%で100%の稼働率 

 さらに、ワクチン接種完了者には、デジタルワクチン接種証明書の提示、人数や時間の制限があるものの、レストラン内での食事や、スポーツ・レクリエーション活動等様々な社会活動に対する規制が緩和されてきています。

3.2 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19の陽性者数は、7月のピーク時と比較すると減少傾向にあります。しかし未だ陽性率は25%前後と低くない水準が継続しており、病院の稼働状況もCDMの関係でまだ完全に元通りにはなっていないことから感染しても入院できず、感染予防のため、7月19日からの祝日が8月31日まで延長されました。

4.2 入国規制

 8月は6日、13日及び20日のANA便が飛びました。9月は10日、24日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっています。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

8月以降もCOVID-19感染者数は増加傾向にあり、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いの実施など、予防策の徹底が呼びかけられています。

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、8月9日の更新で、赤の州が7州と前回の1州から大幅に増加しました。8月23日から2週間適用される信号色は、赤7州、橙17州、黄7州、緑1州となりました。メキシコシティやメキシコ州は赤から橙に、シナロア州は赤から黄へと改善を見せる一方、タバスコ州は黄から赤へ、タマウリパス州やプエブラ州は橙から赤へ後退を見せるなど、一進一退の状況が続いています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、9月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路(ただし、フェリーでの移動を除く)での移動については適用しないとされています。また、3月19日から実施されているメキシコ政府によるグアテマラ及びベリーズ国境における陸路での不要不急の移動制限についてついては、6月21日以降その延長は発表されていないものの、在メキシコ日本大使館によると、解除の通知が為されていないことからこれまでと同様の制限が継続されると考えられるとのことです。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府による行動規制は緩和され、ショッピングモール等の商業施設の時短営業(午前10時から午後8時まで)、飲食店の時短営業(座席数を半数にしたうえで午前8時から午後10時まで)、観光施設、リゾート、集会所及び娯楽施設の収容定員の制限(半数)等、一定の制限があるものの、営業が認められています。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置としての渡航や入国規制(8月16日付)は、下記の通りです。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループAに属する国(モンゴルやマレーシアなどの計11か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了していない者の入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(英国やタイなどの計16か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了している者は、自宅での14日間の隔離、ワクチン接種が完了していない者は、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。

第2.各国の著作権法の概要

1.日本

著作権法は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とし(著作権法第1条)、昭和45年に制定されました。その後、インターネットの普及やデジタル化等の社会の変化や、関連法令の改正に応じて、改正されています。

(1) 著作物について

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいうと定義されています(著作権法第2条1項1号)。

(2) 著作者について

 著作物を創作する者をいうと定義されています(著作権法第2条1項2号)。

(3) 著作者の権利の発生及び保護期間について

 著作権の存続期間は、著作物を創作した時点で始まり(著作権法第51条第1項)、原則として著作者の死後70年を経過するまで存続します(著作権法第51条第2項)。例外として、無名・変名(周知の変名等、一定の場合を除く)の著作物は、公表後70年を経過するまで存続するほか(その前に死後70年経過が認められれば、その時点まで)(著作権法第52条第1項、第2項)、団体名義の著作物及び映画の著作物は、原則として公表後70年(創作後70年以内に公表されなかったときは、創作後70年)を経過するまで存続します(著作権法第53条及び第54条)。このほか、国際条約等の規定が適用される場合の保護期間については、特例が設けられています(著作権法第58条)。

(4) 著作者の権利の内容について

1 著作者人格権(著作者の人格的利益を保護する権利)

著作者は、公表権(著作権法第18条第1項)、氏名表示権(著作権法第19条第1項)、同一性保持権(その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないこと)(著作権法第20条)を有します。

2 著作権(財産権)(著作物の利用を許諾したり禁止する権利)

著作者は、その著作物について、複製権(第21条)、上演権及び演奏権(第22条)、上映権(第22条の2)、公衆送信権等(第23条第1項、第2項)、口述権(第24条)、展示権(第25条)、頒布権(第26条第1項、第2項)、譲渡権(第26条の2第1項)、貸与権(第26条の3)、翻訳権、翻案権等(第27条)、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、これら著作権に含まれる権利について当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有すること)(第28条)を専有します。

(5) 著作隣接権

著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている者(実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者)に与えられる権利です(著作権法第89条)。その保護期間は、実演、レコードの固定、放送又は有線放送を行った時点で発生し、実演、レコード発行が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過したとき、放送又は有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過したときに満了します(著作権法第101条第1項、第2項)。

(6) 著作物が自由に使える場合

 著作権法は、一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して、著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条〜第47条の8)。しかし、著作権が制限される場合でも、著作者人格権は制限されません(著作権法第50条)。また、上記著作権法が許容する例外規定に基づき複製されたものを同例外規定の目的外に使うことは禁止されており(著作権法第49条第1項、第2項)、利用にあたっては、原則として出所の明示をする必要があると定められているなど(著作権法第48条)、著作権者等の利益を不当に害さないように、また、著作物等の通常の利用が妨げられることのないよう、その条件が定められています。

 著作物が自由に使える場合の例として、私的使用のための複製(著作権法第30条)、図書館等における複製(著作権法第31条)、教科用図書等への掲載(著作権法第33条)、視覚障害者等のための複製等(著作権法第37条)、営利を目的としない上演等(著作権法第38条)、時事の事件の報道のための利用(著作権法第41条)、裁判手続き等における複製(著作権法第42条)、情報公開法等における開示のための利用(著作権法第42条の2)等が挙げられ、該当する場合は、利用が認められる条件について規定を確認する必要があります。

(7) 著作物の利用方法

他人の著作物は、上述(6)の通り、著作権が制限を受けている場合を例外として、原則として、著作権者に無断で利用することはできません。他人の著作物を利用する方法としては、以下の方法があります。

1 著作者からの利用の許諾(著作権法第63条)

2 出版権の設定(著作権法第79条~第88条)

3 著作権の譲渡(著作権法第61条)

4 文化庁長官の裁定(著作権法第67条~第69条)

(8) 著作権の侵害、罰則規定、紛争処理

著作権法に定められている権利を侵害された者は、差し止め請求、損害賠償請求、名誉回復の措置の請求等の権利侵害に対する救済を請求することができます(著作権法第112条~第118条)。また、著作権法の規定に違反した者は、罰則規定として、最大10年以下の懲役、又は1,000万円以下の罰金が科せられます(著作権法第119条~第124条)。

そのほか、著作権に関する紛争につきあっせんによりその解決を図るため、文化庁に著作権紛争解決あっせん委員が置かれており(著作権法第105条第1項)、当事者は文化庁長官に対し、あっせんの申請をすることができます(著作権法第106条)。

(9) 日本が加盟している国際条約

1 著作権条約

  • ベルヌ条約(文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約)
  • 万国著作権条約

2 著作隣接権条約

  • 実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約
  • 許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約

3 マラケシュ条約

  • 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約

4 著作権・著作隣接権関係条約

  • TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)
  • WIPO著作権条約(著作権に関する世界知的所有権機関条約)
  • WIPO実演・レコード条約(実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)
 

2.タイ

 タイにおける著作物を保護する法律として、著作権法(Copyright Act B.E.2537)が制定されています。著作権法は、2015年と、2018年に改正がなされています。

(1) 著作物

 本法律における著作物とは、その表現の方法又は形式を問わず、文学、演劇、美術、音楽、視聴覚、映画、録音、放送その他の文学的、科学的又は芸術的分野の著作物をいうとされ、著作権の保護は、アイデア、手順、プロセス、システム、使用方法、操作方法、概念、原則、発見、科学的・数学的理論には及ばないとされています(第6条)。

(2) 著作権の発生

 著作権は、登録によって権利が発生する特許権や商標権と異なり、登録がなくとも著作物の創作の時点から発生します。

(3) 著作権者

 著作権者は、本法律により著作権の対象となる作品を創作した者をいいます(第4条)。

使用者に雇用されている従業員が雇用の過程で創作した著作物(職務著作)については、著作権が使用者に帰属するとの書面による合意がない限り、著作物を創作した従業員に著作権が帰属します。ただ、その場合でも使用者は雇用の目的に従い、当該著作物を公衆に伝達する権利を有します(第9条)。

 委託契約に基づき創作された著作物については、創作した者と委託者との間で別段の合意がない限り、著作権は委託者に帰属します(第10条)。

(4) 著作権者の権利

 著作権者は、以下の排他的権利を有します(第15条)。

  1. 複製又は翻案
  2. 公衆への伝達
  3. コンピュータプログラム、視聴覚著作物、映画著作物、録音物の原作品又は複製物の貸与
  4. 著作権から生じる利益の他者への供与
  5. 上記1、2、3の排他的権利を条件付き又は条件なしで他者に使用許諾すること

(5) 著作権の譲渡

 著作権者は、自己の著作権の全部又は一部を他人に譲渡することができます。著作権の譲渡が相続によるものではない場合、譲渡人及び譲受人が署名した書面により行われなければなりません。譲渡期間が明記されていない場合は、譲渡は10年間となります(第17条)。

(6) 著作権の保護期間

 著作権は、原則、著作者の生存中及びその死後50年間存続します(第19条)。

 ただ、著作物毎に、保護期間が制定されています(第19条~26条、第49条、50条)。

(7) 著作権の侵害行為

 著作権者の許諾を得ずに行われた以下の行為は、著作権の侵害とみなされます(第27条)。

  1. 複製又は翻案
  2. 公衆への伝達

ただ、著作物毎に、侵害行為が規定されています(第28条~31条)。

(8) 侵害行為への対応

  1. 損害賠償請求(第64条)
  2. 差止請求(第65条)
  3. 刑事罰(第69条~77条)

(9) ベルヌ条約

ベルヌ条約は、いわば世界著作権を認めるものであり、ベルヌ条約の加盟国は互いの国の著作物を保護し合うという点を取り決めている条約となります。日本もタイも、このベルヌ条約に加盟しているため、互いの国の著作物は互いの国の著作権法で保護を受けられることになります。

したがって、日本の著作物もタイ国内においてタイ著作権法による保護を受けることが可能となります。しかし、あくまでもタイ著作権法による保護であるため、保護期間や権利の内容などはタイ著作権法の規定によることになります。

 

3.マレーシア

(1) 概要及び目的

 著作権制度は、著作権者に著作権の独占的な使用権を与えることで著作者の保護ひいては著作物の創作活動の誘因を保護するとともに、権利侵害となる利用行為類型や権利の存続期間を制限することで著作物の自由な利用を一定の範囲で保護しています。マレーシアにおける著作権制度は著作権法(Copyright Act 1987)によって規律されています。

(2) 要件

 マレーシアにおいて著作権が保護を受けるために登録を受ける必要はありません。但し、以下の要件を満たす必要があります。

1 独創性

 独創性とは、作品が著作者の一部ともいえる労働、技術、判断等から成り立っていることを意味し、同要件が認められるためには、作品が著作者に由来し、かつ、十分な努力が費やされていなければなりません。

2 録音又は記録

著作物は、有形の物であるか、記録・録音されてなければなりません(著作権法7条(3)(b))。

3 カテゴリー該当性

以下のカテゴリーに該当する著作物が、著作権による保護の対象となります(著作権法7条(1))。

  • 言語作品(同項(a))
  • 音楽作品(同項(b))
  • 美術作品(映像、写真、長億、コラージュ、建築物等)(同項(c))
  • 映画(同項(d))
  • 録音物(同項(e))
  • 放送(同項(f))

4 適格性

著作権法は、次の3つの場合に同法に基づく保護が与えられます。

(a) 著作者がマレーシア人等の場合

著作者は適格者でなければなりません。適格者とは、自然人の場合にはマレーシア国民又はマレーシアの永住者を意味し、法人の場合にはマレーシアにおいて設立されマレーシアの法律に基づき法人格を与えられた団体であることを意味します(著作権法3条)。

(b) 最初に発行された場所がマレーシアの場合等

言語作品、音楽作品、美術作品、映画、録音物については最初にマレーシアで発行された場合に、放送の場合にはマレーシアから放送をしている場合に適格性が認められます(著作権法10条(2)(a)、同項(c))。建築物については、マレーシアにおいて建築される場合、その他の美術作品についてはマレーシア国内の建物に組み込まれた場合にも適格性が認められます(同項(b))。作品が他の場所で発行された後、その日から30日以内にマレーシアで発行された場合は、最初にマレーシアで発行されたものとみなされます(著作権法4条(3)(b))。

(c) 作品がマレーシアにおいて製作された場合

国籍、居住又は発行地とは関係なく、当該作品がマレーシアで制作された場合には、著作権による保護が与えられます(著作権法10条(3))。

5 他国への拡張

 著作権(他の諸国への適用)規則(COPYRIGHT (APPLICATION TO OTHER COUNTRIES) REGULATIONS 1990)により、ベルヌ条約加盟国において最初に公開された言語作品、音楽作品、芸術作品、映画等についても著作権法の保護が及びます(著作権法59A条(1)(a))。

(3) 著作権に対する保護

 言語作品、音楽作品、芸術作品、映画、録音及びその派生作品に対する著作権は、以下の事項に関する排他的支配権をその内容とします(著作権法13条(1))。

  • 何らかの有形的形式による複製(同項(a))
  • 公衆への発信(同項(aa))
  • 実演、公衆への展示又は上演(同項(b))
  • 販売その他所有権の移転による公衆への複製物の頒布(同項(e))
  • 公衆への商業的貸与(同項(f))

(4) 著作権侵害に対する救済手続

 著作権者は、著作権に対する侵害行為又は著作権法36条A及び同条Bに反する行為があれば訴訟を提起することができます。著作権法は、以下の種類の救済手段を規定しています(著作権法37条(1))。

  • 差止命令(同項(a))
  • 損害賠償(同項(b))
  • 利益の計算(同項(c))
  • 作品ごとにRM25,000を超えない損害賠償(但し、総額でRM500,000を超えてはならない)(同項(d))
  • その他裁判所が適当と考える命令(同項(e))
 

4.ミャンマー

ミャンマーでは、著作権法(Copyright Law)が2019年5月24日に制定されていますが、現時点でまだ施行されておりません。そのため以下にて著作権法の概要を説明致しますが、まだこれら保護はミャンマーにて受けられないことにご留意ください。

(1) 権利保護の対象

著作権法において「著作権」とは、文学又は芸術作品の著作者が、本法に含まれる規定に則って得た、文学及び芸術に係る個別の権利をいうと規定されております。

著作権の保護を受ける文学又は芸術作品には、(a) 書籍、配布資料、詩、小説、記事、コンピュータープログラム及びその他書かれたもの (b) 告示、訓示、演説、説法及びその他の発話 (c) 劇、舞台音楽作品、独自の挙動による演技、振り付け作品、舞台上で上演するその他の文学又は芸術作品 (d) 書面を含むか否か問わず、演奏及び演奏作品 (e) 映画作品を含む映像音声作品 (f) 建築作品 (g) 書くこと、書き刻むこと、装飾、木彫、石細工彫刻、彫刻、多彩なグラス、宝石等で装飾した作品、木製作品、陶器技術で作った作品、金属品、土器、宝石の装飾品、工芸品、古代の衣装、民族衣装及び服飾全般 (h) 石板印字、コンピュータープログラムその他の芸術作品 (i) 劇作品 (j) 実用的芸術作品 (k)反物の柄 (l)地理的状態、図面における表現、建築作品又は科学技術により、該当する模型、地図、計画、素描及び立体的作品が含まれます。

また、文学又は芸術作品の著作権を損なわせることのない二次的著作物には、(a) 文学又は芸術作品の翻訳、引用、整理及びその他の方法で変更すること又は修正すること (b) 伝統遺産の表現の収集を含む文学又は芸術作品を収集すること (c) 選択又は整理により事実を読み取る機械又はその他の方法で収集し、当該対象を収集する際に創作を含むことが含まれます。ただし、収集する際に含まれる情報を保護することとは関係がありません。

一方、著作権の保護を受けない文学又は芸術作品若しくは著作隣接権に関する作品には、(a) 考え、工程、行為手段、数式、基本原則、発見又は事実 (b) 関連する日付のニュース又は印刷された新聞の事実と定義できる特徴をもつ様々な情報 (c) 憲法及び法律 (d) 政府当局、政府団体及び局から発表する規則、施行細則、通達、命令、指令、及び法的手続き (e) 判決及び裁判所の命令 (f) 前(c)から(e)項までに含まれる情報を政府から正式に翻訳すること及び収集することが該当します。

(2) 著作権の存続期間

経済的権利を保護する期間について、著作者の生存期間及び死亡年から50年と規定されており、著作者人格権の保護期間は著作者の生存期間及び死亡した日付から起算して無期限であると規定されております。

(3) 罰則

権利者の許可なく営利目的で、著作権又は著作隣接権の保護を受ける作品を直接又は間接的に複製し、公衆と接続すること及び公衆へ頒布する行為、著作権又は著作隣接権を侵害した対象物を所有すること又は販売する行為、著作権又は著作隣接権を侵害した対象物を国内に向けて輸入する行為、著作権又は著作隣接権管理情報及び技術的保護措置に関する禁止行為を行う行為、著作権又は著作隣接権を侵害した対象物を製作する際、主に使用した物又は道具を所有する行為により有罪判決を受けた者には、3年以下の懲役若しくは100万チャット以下の罰金、又はその両方が科せされます。

また、上記を含む行為のいずれかに違反すること、有罪判決を受けて当該罪状において再犯を行うこと、有罪判決を受けた場合に、当該人物は3年以上10年以下の懲役かつ1000万チャット以下の罰金に処されると規定されております。

さらに、著作権又は著作隣接権の登録証の偽造すること又は偽造させること、著作権又は著作隣接権の登録簿に不誠実に不実を記載すること又はさせる行為により有罪判決を受けた者には、2年以下の懲役若しくは200万チャット以下の罰金、又はその両方が科せられます。

 

5.メキシコ

メキシコにおける著作権は、主に連邦著作権法(Ley Federal del Derecho de Autor)とその規則(Reglamento de la Ley Federal del Derecho de Autor)によって保護されます。

(1) 権利保護の対象

著作権とは、いかなる文書や登録も要せず、形式に準拠する必要もなく認められるものであり、作家や芸術家、演出家、演者に、それらの文芸作品や芸術作品といった著作物に対する保護を付与するものです。独創的に創作された著作物であって、いずれかの形式又は媒体によって知覚され、伝達され、又は複製することができる著作物が保護の対象とされており、1文学、2音楽作品(歌詞の有無は問わない)、3劇、4ダンス、5絵画・デッサン、⑥彫刻及び立体芸術、⑦風刺画・漫画、⑧建築、⑨映画などの映像作品、⑩ラジオ・テレビ番組、⑪コンピュータプログラム、⑫写真、⑬グラフィック又はテキスタイルデザインを含む応用美術作品、⑭百科事典・アンソロジー・データベースなどの編集物に区分されます。

一方、1アイデア、公式、解決策、概念など一般的発明、2著作物に具現化されたアイデアの産業的又は商業的利用、3精神的行為、競技、事業を行うための枠組み、計画、規則、4(独創的なデザインとならない)文字、数字、色彩、5名称及びタイトル又はフレーズ、⑥情報の種類を問わず、それを記入するためのフォーマット及びその指示、⑦国、州、市町村あるいは同等の政治区分の紋章、旗、又は記章の無許諾の複製品あるいは模造品、又は政府間組織や国際非政府組織その他いずれかの公認機関の名称、略称、シンボルあるいは記章及びそれらの呼称、⑧立法上、規制上、行政上、司法上等の原文及びそれらの公的翻訳。これらの原文及び公的翻訳が出版される場合には、それらは、公的原文に合致していなければならず、かつ、それらは、排他的出版権を与えません。(ただし、対応する原文、解釈、比較研究、注釈、解説その他著作者側による原著作物の創作を伴う類似の著作物は保護の対象となり得えます)、⑨ニュースの情報内容(ただし、その表現形式は保護されます)。⑩格言、ことわざ、伝説、事実、カレンダー及び計量表などの日常使用される情報などは、著作権保護の対象とはなりません。

(2) 著作権の種類

著作権は大きく、著作者人格権と経済的権利に分けられます。

著作者人格権は、著作者に帰属し、不可侵で不滅の、放棄も押収もされない権利であり、1著作物をどのような形で公表するか、あるいは著作物を非公開にするかの決定、2著作物に著作者を表示することの要請、もしくは著作物を匿名又は仮名で公表することの決定、3著作物の変形や削除、その他の変更、及び著作物や著作者の評判を下げる行為に対して異議を唱え、著作物の尊重を要求すること、4著作物を変更すること、5著作物を市場から回収すること、⑥自身が創作していない著作物の著作者とされることに異議を唱える、といった行為を認めるものです。この権利は著作者本人のほか、その相続人も行使できますが、後者の場合、1~4に限定されます。

一方、経済的権利は、法が定める範囲内で、著作者人格権を損なうことなく、自身の著作物を独占的に利用し、又は他者にそれを利用することを許可する権利であり、1あらゆる手段によって実施される著作物の複製、出版、編集又はその他の表現、2文学的及び美術的著作物における表現、朗読又は講演、一般公開の展示、インターネット等の電気通信によるパブリック・アクセス、利用者の選択した場所、時間に当該著作物にアクセスできるようにした一般公開による著作物の公開、3ケーブル、光ファイバー、マイクロ波、衛星、その他の既知の手段による送信又は再送信を含む、あらゆる形式の著作物の公開送信又は放送、4販売など著作物を含む物理的物質の移転や使用、利用の移転を含む著作物の配布、5著作者の許可を得ずに制作された著作物の模造品のメキシコ国内への輸入、⑥翻訳、改作、言い換え、編曲、変換など、あらゆる形式の二次的著作物の普及、⑦法に規定された場合を除く、著作物の公的利用、を実施又は禁止すること、を認めます。これらは、著作者自身、その相続人や権利取得者が行使でき、著作者の生存中及び死後100年間(共同著作物の場合は最も長く生きた共同著作者の死後100年間)有効となります。

(3) 著作権の登録

著作権は、前述の通り、いかなる文書や登録も要せず、形式に準拠する必要もなく認められるものですが、著作者、関連する権利の所有者、及びそれぞれの経済的権利の所有者とその後継者の法的安全を保証するために、文化省(Secretaría de Cultura)の下部組織となる国家著作権庁(Instituto Nacional del Derecho de Autor、以下「INDAUTOR」という)に登録することもできます。なお、前述の経済的権利を譲渡する場合には、これを登録しなければ第三者に対抗することができません。

(4) 著作権の効果

著作権の侵害があった場合、著作者や著作権保有者は民事的、行政的、刑事的措置をとることができます。

例えば、経済的権利の侵害があった場合、民事的措置として、損害賠償や、講演、公開の中止、権利を侵害して得られた収入等の差し押さえなどの承認と実施を裁判所に対し要求することができます。

行政的措置については、事案に応じてINDAUTORもしくはメキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial)が管轄します。出版社、起業家、プロデューサー、雇用主、放送機関、又は実施権者が、法の規定に違反して著作権を譲渡することを目的とした契約を締結すること、放送機関が有する強制実施権の条件を侵害すること、文学的著作物の編集や印刷において、出版社の情報や出版年等の情報を省略し、もしくは誤って記載すること、著作者、翻訳者、編集者等の名前を記載せずに、著作物を公開すること、著作者や翻訳者、編集者等の評判を損なうように、著作物を公開すること、以前に公開された別の作品との混乱につながる作品のタイトルを不正に使用することなどが行政制裁の対象となっており、制裁金は、事案に応じてUMA 日額(Unidad de Medida y Actualización、2021年の日額は89.62ペソ)の1,500倍から22,000倍の額となります。また、著作者や著作権所有者の事前の明示的な許可なしに、著作物を利用可能にし又は公に使用すること、本人やその相続人の許可なしに肖像を使用すること、書籍、映画、レコード、ビデオグラム、その他の視聴覚作品といった著作物の複製物を、著作権者もしくは著作権保有者の許可を得ずに、製作し、製造し、仕入れ、頒布し、輸送し、又は販売すること、著作権保有者の許可を得ずに改変、変更、又は削除されている著作物を、販売、仕入れ、輸送又は頒布のために提供すること、コンピュータプログラムの電子保護装置を機能させないことを目的とする装置又はシステムの輸入、販売、貸与又はそれを占有させること、放送機関の放送を、許可を得ずに、再送信し、複製し、及び公衆に配信することなどが、直接的又は間接的な利益のために実行された場合、著作権保護のために施された効果的な技術的保護手段を回避し、侵害行為等を行った場合などは、商業的侵害に該当し、事案に応じてUMA日額の500倍から40,000倍の制裁金が課されます。

連邦著作権法の他、連邦刑法(Código Penal Federal)にも著作権侵害に対する刑罰が規定されており、事案に応じて、6か月以上10年以下の懲役やUMA日額の300倍以上30,000倍以下の罰金が科されます。

(5) 国際条約

 メキシコが加盟する著作権に係る主な国際条約は次の通りです。

・文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約ブリュッセル改正条約

・文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約

・万国著作権条約(パリ改正条約への批准を含む)

・実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約

・許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約

・視聴覚著作物の国際登録に関する条約

・著作権に関する世界知的所有権機関条約

・実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約

 

6.バングラデシュ

著作権法(Copy Right Act, 2000)は2000年に制定され(2005年に一部改正)、同法により、執行機関として「著作権局」が設置されました。2006年に著作権法規則が制定され、著作権の登録、利用許諾や各種申請に関する手数料及び様式が規定されるほか、著作権委員会の任期、著作権団体の登録や監査について定めています。

著作権の管轄機関としては、著作権法を執行する著作権局のほか、手続き等を規定する著作権委員会が設置されています(著作権法9条、11条、12条)。

(1) 著作権の範囲

著作権は、以下の種類の著作物に対してバングラデシュ全域に及ぶものとすると規定されていますが(著作権法15条(1))、著作物の発行日又は作成期間に、著作者がバングラデシュに居住していたか、バングラデシュ国民であるか等の一定の要件が定められています(同条(2)(3))。

1 創作的な文学、演劇、音楽及び美術著作物

2 映画フィルム、ならびに

3 録音物

(2) 著作権の登録

著作物の著作者が最初の著作権者になると規定されていますが(著作権法17条)、当事者の同意に従います。合意がない場合、新聞等の定期刊行物については、業務又は徒弟契約に基づく著作者の雇用の過程において作成された著作物の場合は、定められた目的の範囲内に限り、経営者が最初の著作権者となりますが、その他全てに関しては著作者が最初の著作権者となります(著作権法17条(a))。また、依頼により有償の対価をもって撮影された写真、描かれた絵画もしくは肖像画、又は作成された版画もしくは映画フィルムの場合には、当該依頼者がその最初の著作権者となります(同条(b))。政府著作物の場合や、公共事業体により又はその指示や管理の下に作成、発行された著作物の場合には、政府又は公共事業体がその最初の著作権者となります(同条(e)(f))。また、コンピュータプログラムの場合は、プログラムを作成することを任命された者又は機関がその最初の著作権者となります(同条(h))。その他、国際著作権の規定が適用される著作物の場合には、これに関連する国際機関がその最初の著作権者となります(同条(g))。

著作権は、登録官に登録を申請することができ、著作権者は、その権利を譲渡(著作権法18条(1))又は利用許諾(著作権法48条)をすることができます。著作権は発行年又は著作者の死亡年の翌年から60年間有効です(著作権法24条、26条~32条)。

(3) 著作権の侵害に対する救済措置

 著作権侵害に対して、差し止め命令、損害賠償、利益分配その他法が認める救済を受けることができます(著作権法76条(1))。また、著作権法に罰則規定が定められており、4年以下の拘禁及若しくは50万タカ以下の罰金、又はその両方が科せられます(著作権法82条~88条)。

(4) 国際条約

 バングラデシュが加盟している主な知的財産権関連の条約として、(1) 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約、(2) 工業所有権の保護に関するパリ条約、(3) WIPO設立条約、(4) 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)が挙げられます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年8月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点で沖縄県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府に緊急事態宣言が実施されており、8月31日までが実施期間となっています。また、まん延防止等重点措置は、北海道、石川県、京都府、兵庫県、福岡県で8月31日までを対象に実施されています。飲食店への休業又は時短要請、酒類提供の制限、イベントの収容率及び人数制限など、各都道府県の自治体が措置を講じるほか、ワクチン接種の円滑化・加速化の取り組みが進められています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

(e) 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

インド、ネパール、モルディブ、スリランカ、アフガニスタン、インドネシア、キルギス、ザンビアの8か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。

マレーシア、英国、バングラデシュ、アラブ首長国連邦、ロシア(モスクワ市)、パキスタン、ミャンマーの7か国・地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で6日間待機し、入国後3日目及び6日目に改めて検査を受けることになります。

その他、別途指定される国又は地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)当面待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります(新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は578,375名です。この内、381,170名が回復し、累計死亡者数は4,679名となっています。また、非常事態宣言は、9月30日まで延長されています。

タイ政府は、7月17日、新たな措置を公表し、13都県(バンコク、チョンブリ、アユタヤ、サムットプラカーン、ノンタブリー、パトゥムタニー等)をダークレッドゾーンに再指定しました。ダークレッドゾーンでは、レストラン等での店内飲食が禁止で、持ち帰りのみの営業が可能となっています。ショッピングモール等はドラッグストアやスーパーマーケット等を除き閉鎖、コンビニ等を含む全ての店舗が20時から翌4時まで閉店とされています。また、21時から翌4時までの夜間外出禁止措置も発表されています。

バンコク都は、7月21日に新たな規制として施設の閉鎖措置を発表しています。屋内外の競技施設、運動場、公園、展示場、美術館、図書館、博物館、託児所、理髪店、美容院、ネイルサロン、プール等が閉鎖対象となっています。

(2) 入国規制

 タイへの入国については、引き続き、オンラインでの入国許可証(COE)申請システムを用いて手続きを進める必要があります。渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、及びCOVID-19の関連疾患を含む医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等が必要です。タイ入国後は、隔離(ASQ)ホテルにて14日間の隔離となります。

 7月1日よりプーケットサンドボックス制度が、7月17日よりサムイ・プラス制度が開始されています。これは、渡航日の14日前までに、COVID-19ワクチン接種を規定回数終えている者を、検疫隔離なしでプーケットまたはサムイ島・パンガン島・タオ島に受け入れる、検疫隔離免除の制度となります。ワクチン接種証明書の提示が必要となります。また、通常の入国時と同様、COEの申請、渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等の提示も必要となります。詳細情報については、在京タイ王国大使館のHPを参照下さい。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

 7月29日の新規感染者数は、17,170人でした。現在マレーシア国内で施行されているFMCO(完全ロックダウン)は、第一段階から第四段階まで設定され、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。7月中に、ペルリス州、ペラ州、クランタン州、トレガンヌ州、パハン州、ペナン州、サバ州、サラワク州が第二段階に移行しました。これら以外の地域は、現在も第一段階の規制が施行されます。

 第一段階の規制では、必要不可欠なサービスとして指定されたものを除き全ての社会・経済活動は許可されません。また、州・地区間の移動は原則禁止されています。

(2) 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19の陽性者数が急増しており、死者も増加しています。病院の稼働状況もCDMの関係でまだ完全に元通りにはなっていないことから感染しても入院できず、感染予防のため、7月19日~8月1日までの2週間が祝日となりました。

(2) 入国規制

 7月は3日のANA便が飛び、24日は見送りとなりました。8月は6日、13日及び20日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっています。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

6月以降、増加傾向を見せていたメキシコ国内のCOVID-19新規感染者数は、7月に入り急増し、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いの実施など、予防策の徹底が呼びかけられています。

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、7月19日の更新が見送られ、7月23日付で 「COVID-19感染リスクを示す地域別信号の決定指針」を更新し、その評価基準が見直されました。新たな基準のもと発表された7月26日から2週間適用される信号は、赤1州、橙13州、黄15州、緑3州と多くの州で警戒色が引き上げられました。また、7月27日には保健省令が公布され、感染リスクの高い人(60歳以の人、妊娠中、授乳中の女性、5歳未満の子供、障がいのある人、肥満の人、高血圧、腎不全、癌、糖尿病、肝臓または代謝不全、心臓病などを患う人)とされる人のうち、ワクチンの接種を完了し2週間が経過した人は、この感染リスクの高い人とみなす必要がないとし、更に、2020年5月14日付保健省令に付属されていた地域別信号色及び認められる経済活動の表が廃止されました。なお、当該指針(7月27日付Ver.6.1が最新)に示される社会経済活動の推奨事項において、これまで赤信号下では認められていなかった必要不可欠でない経済活動について、「当局の指示に基づく操業」と赤信号下での操業の可能性が示されています。しかしながら、最終的には州が定める規制に従うことになりますので、事業活動を行う州の決定に注視する必要があります。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、8月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、3月19日から実施されているメキシコ政府によるグアテマラ及びベリーズ国境における陸路での不要不急の移動制限についてついては、6月21日以降その延長は発表されていないものの、在メキシコ日本大使館によると、解除の通知が為されていないことから、これまでと同様の制限が継続されると考えられるとのことです。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染状況を受け、7月23日以降、全ての政府系機関、民間の事務所の閉鎖、全ての産業活動および工場の稼働の停止など、厳格な行動規制が発表されましたが、8月1日から、輸出向け縫製工場は再開が認められました。

(2) 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置としての渡航や入国規制は、下記の通りです。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループAに属する国(インドやマレーシアなどの計11か国)へのバングラデシュからの出国、グループAの国からのバングラデシュ入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(ベルギーやデンマークなどの計8か国)へのバングラデシュからの出国、グループBの国からのダッカへの渡航は認められる。ただし、入国後、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。

第2.各国のフランチャイズによってビジネス展開を試みる場合の注意すべき規制

1.日本

フランチャイズとは、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によると、「事業者(「フランチャイザー」)が他の事業者(「フランチャイジー」)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう」と定義されています。

フランチャイズに関する主な法律として、中小小売商業振興法及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」)が挙げられます。

(1) 中小小売商業振興法

 商店街の整備、店舗の集団化、共同店舗等の整備等の事業の実施を円滑にし、中小小売商業者の経営の近代化を促進すること等により、中小小売商業の振興を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(中小小売商業振興法1条)。中小小売商業振興法4条5項に「連鎖化事業(主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に、商品を販売し、又は販売をあっせんし、かつ、経営に関する指導を行う事業をいう。以下同じ。)を行う者は、当該連鎖化事業の用に供する倉庫その他の施設又は設備を設置する事業について、連鎖化事業計画を作成し、これを主務大臣に提出して、当該連鎖化事業計画が政令で定める基準に適合するものである旨の認定を受けることができる」とあり、「連鎖化事業」にフランチャイズ・システムが含まれます。

1 特定連鎖化事業の運営の適正化(中小小売商業振興法11条、12条)

連鎖化事業のなかで、フランチャイズ・システムは「特定連鎖化事業」にあたり、中小小売商業振興法で、運営の適正化について定められています(中小小売商業振興法11条1項)。本部が加盟者と契約を締結する際に含めなければならない事項が定められ、従わない場合は、勧告を受け、勧告に従わない場合は、その旨を公表されることがあります(中小小売商業振興法12条1項、2項)。以下の通り、規定されています。

(a) 中小小売商業振興法11条1項

1 連鎖化事業であって、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの(以下「特定連鎖化事業」という。)を行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。

一 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項

二 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項

三 経営の指導に関する事項

四 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項

五 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項

六 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項

(b) 中小小売商業振興法12条1項2項)

1 主務大臣は、特定連鎖化事業を行なう者が11条1項の規定に従っていないと認めるときは、その者に対し、同項の規定に従うべきことを勧告することができる(中小小売商業振興法12条1項)。

2 主務大臣は、前項の規定による勧告をした場合において、特定連鎖化事業を行なう者がその勧告に従っていないと認めるときは、その旨を公表することができる(中小小売商業振興法12条2項)。

(2) 独禁法

 フランチャイズ・システムでは、本部と加盟者は、あたかも通常の企業における本店と支店のような外観を呈していますが、両者は法律的には独立した事業者であり、本部と加盟者間の取引関係については独占禁止法が適用されます。独禁法に規定されている不正な取引方法を行った場合は、課徴金の対象となるほか、被害者に対する損害賠償の責任を負います。

1 優越的地位の濫用

  1. 独禁法2条9項5号

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

  1. 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
  2. 継続して取引する相手方に対して自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
  3. 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
  4. 該当する又は該当しうる行為の例

本部による加盟者に対する取引先の制限、仕入れ数量の強制、見切り販売の制限、営業時間の短縮にかかる協議拒絶、フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更などが該当します。

2 拘束条件付取引

  1. 独禁法2条9項6号

独禁法2条9項1号から5号において「不公正な取引方法」と定めているもののほか、次のいずれかに該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

  1. 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
  2. 不当な対価をもつて取引すること。
  3. 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
  4. 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
  5. 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
  6. 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。
  7. 不公平な取引方法12項

(拘束条件付取引)

独禁法2条9項4号(再販価格の拘束・次項参照)又は不公平な取引方法11項(排他条件付取引)に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。

※ 11項 (排他条件付取引) 不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。

(c) 該当する又は該当しうる行為の例

フランチャイズ契約に基づく営業のノウハウの供与に併せて、本部が、加盟者に対し、自己や自己の指定する事業者から商品、原材料等の供給を受けさせるようにすることが該当する場合があります。

3 再販価格の拘束

  1. 独禁法2条9項4号

自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。

  1. 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
  2. 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
  3. 該当する又は該当しうる行為の例

本部が加盟者に商品を供給している場合、加盟者の販売価格(再販売価格)を拘束すること等が該当します。

4 不当な取引拒絶

  1. 独禁法2条9項1号

正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。

  1. ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
  2. 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
  3. 不公平な取引方法1項・2項

(共同の取引拒絶)

正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。

一 ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

二 他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。

(その他の取引拒絶)

不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。

5 ぎまん的顧客誘引

  1. 不公正な取引方法8項

(ぎまん的顧客誘引)

自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。

  1. 該当する又は該当しうる行為の例

加盟者に対する事業活動上の指導や費用負担に関する事項、加盟後のロイヤルティに関する事項、契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項、その他重要な事項について、十分な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行い、これらにより、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、ぎまん的顧客誘引に該当します。

2.タイ

(1) フランチャイズガイドライン

タイでは、フランチャイズ事業における不公正な取引方法の検討に関するガイドライン(The Trade Competition Commission Notice on Guidelines for the Assessment of Unfair Trade Practices in Franchising B.E. 2562 (2019))が2020年2月4日に発効されています。本ガイドラインは、フランチャイズを許諾するフランチャイザーが、フランチャイズ加盟者(フランチャイジー)に損害を与える可能性のある、過度に制限的で不公正な契約条件が採用されることを防ぐことを目的としています。本ガイドラインは、取引競争法(Trade Competition Act B.E. 2560)に基づき設置されている取引競争委員会により発効されています。

(2) フランチャイザーの義務

 本ガイドラインは、フランチャイザーに以下の2つの主な義務を課しています。

  1. フランチャイズに関する重要情報の開示義務(本ガイドライン第3条)

フランチャイズ契約を締結する前に、フランチャイザーはフランチャイジーに対して、フランチャイズ・システムの性質及び運営に関する重要な関連情報を開示しなければなりません。

例えば、(a)フランチャイズ事業の運営に関連するロイヤリティおよびその他の費用、(b)フランチャイズの事業計画、(c)関連する知的財産権、(d)フランチャイズ契約の更新および終了に関する事項などです。

    2. 近隣のフランチャイジーへの通知および優先権の提供義務(同第4条)

フランチャイザーが、フランチャイジーの営業地域の近隣に新たな店舗を開設しようとする場合、フランチャイザーはまず、その近隣地域のフランチャイジーに新店舗開設に関して通知を行い、当該店舗の経営権を優先的に提案することが求められます。

(3) 不公正取引に関するガイドライン(同第5条)

また、本ガイドラインでは、取引競争法第57条の不公正取引に該当するかどうかの評価に関するガイドラインとして、フランチャイザーがフランチャイジーに損害を与える可能性のある以下の行為を挙げています。

  1. フランチャイジーに対して、正当な理由なく、以下のような制限的な条件を設定すること。
  2. フランチャイズ契約で指定された製品/サービスとは無関係の製品/サービスを、フランチャイザーまたはフランチャイザーが指定した者からのみ購入することをフランチャイジーに要求すること。
  3. フランチャイジーに対して、実際のフランチャイジーの事業に必要な量を超える製品または原材料を購入することを要求し、それら過剰な量の製品または原材料の返品を禁止すること。
  4. フランチャイズ契約が締結された後に、フランチャイジーに他の製品やサービスの購入、フランチャイズ契約に明記されている以上の行為を行うことを要求するなど、フランチャイジーが遵守すべき追加条件を課すこと。ただし、合理的なビジネス上の理由がある場合、またはフランチャイズの評判、品質、水準を維持する目的がある場合はこの限りではなく、これらの追加条件は書面で作成されるものとする。
  5. フランチャイジーが、正当な理由なく、同等の品質でより低価格の商品を提供する他の事業者から商品を購入することを制限すること。
  6. 正当な理由なく、フランチャイジーが生鮮品や賞味期限切れ間近の商品を値引きすることを制限すること。
  7. 正当な理由なく、フランチャイジー間で差別的な条件を課し、取引上の不当な差別を引き起こすこと。
  8. フランチャイザーの評判、品質、水準を維持する以外の目的で、不当な条件を課すこと。

3.マレーシア

(1) フランチャイズ法

フランチャイズ契約とは、対価の支払いを条件として、フランチャイザーが確立したフランチャイズシステム及びフランチャイザーの商標、知見、知的財産権等を利用して事業を運営する権利(以下「フランチャイズ」といいます)をフランチャイジーに与える契約をいいます。フランチャイズの形態による進出については、フランチャイズ法(Franchise Act 1998)による規制があります。以下、フランチャイズ法の規制を紹介いたします。

(2) 登録

外国企業がマレーシア国内で又はマレーシア国民に対してフランチャイズの販売を行う場合、フランチャイズ登録局に対し登録申請を行い、承認を得なければなりません。

この登録の申請には、以下の書面を添付する必要があります。

  1. レター・オブ・インテント(Letter of Intent)
  2. 会社の設立証明書(認証付き写し)
  3. 商標の登録証明書(認証付き写し)
  4. 会社のパンフレット
  5. 事業所の写真

同申請に対し、フランチャイズ登録官は理由を示すことなく登録を承認又は拒否することができます。また、外国企業のフランチャイジーも、そのフランチャイズ事業の登録申請をし、承認を得なければなりません。

(3) 契約内容の規制

フランチャイズ法は、フランチャイズ契約書の記載事項について詳細な規定を置いています(対象商品・事業、地域、ロイヤリティその他の報酬、契約期間及び更新等)。

フランチャイズ契約の契約期間は5年以上とされており、正当な理由がある場合を除き解約はできません。また、同法はフランチャイジーの更新請求権やフランチャイザーが更新を拒絶する場合の補償についても定めています。

(4) 年次報告書の提出

フランチャイザーは、フランチャイズ事業の各会計年度の年度末から6カ月以内に、所定の形式でフランチャイズ登録官に報告書を提出する必要があります。

(5) 2020年フランチャイズ改正法

 2020年3月6日に2020年フランチャイズ改正法(Franchise (Amendment) Act 2020)が公布されました。以下で、改正法の中でも重要な規制を紹介いたします。

1 外国人フランチャイザーの登録

 現行法6条は、フランチャイザーは、そのフランチャイズ事業の運営・販売申出に先立ち、フランチャイズの登録を行わなければならないものとしており、同現行法54条は、マレーシア国内で又はマレーシア国民にフランチャイズを販売しようとする外国籍の者(以下「外国人フランチャイザー」という。)は、あらかじめフランチャイズ登録局に申請をし、承認を得なければならない旨を定めています。

 外国人フランチャイザーが同法54条に基づく承認の取得のほかに同法6条に基づく登録をする必要があるか否かについては現行法上不明確であり、運用上登録は不要とされてきましたが、改正法は6条を改め外国人フランチャイザーについても6条に基づく登録が必要である旨を明示しました。そのため、改正法施行後は、外国人フランチャイザーは同法54条に基づく承認の取得のほか、同法6条に基づく登録を行う必要があります。

2 登録期間及び更新

 現行法は、フランチャイズ登録局による取消等が行われない限り、フランチャイズの登録は存続するものと定めています。これに対して、改正法は、登録は規則で定められた期間のみ有効とし、登録の継続を希望する者は有効期間の満了日から30日以内に更新の申請をしなければならない旨を定めています。

3 登録証の掲示

また、改正法は、フランチャイザー、フランチャイジー、フランチャイズブローカー、フランチャイズコンサルタントは、事業所の見えやすい場所に登録証を掲示しなければならない旨を定めています。

4.ミャンマー

ミャンマーでは、フランチャイズに対する外資規制はなく、通常の会社設立手続きで事業が可能です。但し、小売業については外資規制があるため、内国資本の会社との間でフランチャイズ契約を締結してミャンマー国内で展開する外国会社が存在します。

5.メキシコ

(1) フランチャイズに対する法的規制

メキシコにはフランチャイズビジネスに対する外資規制は存在しません。そのため、メキシコ人またはメキシコ法人とフランチャイズ契約を締結する、メキシコに現地子会社を設立のうえフランチャイズ契約を締結するといったいずれの方法も採りえます。ただし、後者の場合において、事業自体が外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)上規制を受ける場合には、当該子会社は外国投資法上の許可を要します。

 フランチャイズの内容は、連邦産業財産保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial、以下「法」といいます。)やその規則において規制をうけますので、以下でその内容を説明します。

(2) 情報開示

フランチャイザーは、契約締結の少なくとも30日前に、フランチャイジーに対し、自らの会社の状況に関する情報を提供しなければならないとされています。

提供しなければならない情報とは、(i)フランチャイザーの氏名、名称、会社名、住所、国籍、(ii)フランチャイズの説明、(iii)フランチャイザーおよび該当する場合にはマスターフランチャイザーの企業年齢、(iv)フランチャイズに関わる知的財産権、(v)フランチャイジーがフランチャイザーに支払わなければならない金額とその費目、(vi)フランチャイザーがフランチャイジーに提供しなければならない技術援助およびサービスの種類、(vii)フランチャイズを展開する営業地域の定義、(viii)フランチャイジーが第三者にサブフランチャイズを付与する権利、または付与しない権利、および該当する場合には、付与するために満たすべき要件、(ix)フランチャイザーから提供された機密情報に関するフランチャイジーの義務、(x)フランチャイズ契約の締結から派生するフランチャイジーの義務と権利全般です。

これらの情報に真実性がない場合、フランチャイジーは、(i)契約の無効を要求するほか、(ii)適切な情報開示を怠ったことによって生じた損害の支払いを要求することができます。フランチャージ―は、(ii)の損害賠償請求の権利を、契約締結から1年間行使することができます。この期間が経過した後は、フランチャイジーは(i)契約の無効を要求する権利しかありません。

(3) フランチャイズ契約に記載が要求される事項

フランチャイズ契約は書面で行われることが要求されます。法に規定される最低限の記載事項は、以下の通りです。

(i)フランチャイジーが活動を行う地域、(ii)フランチャイジーが契約の目的から派生した活動を行う施設に関する最小規模および特性、ならびにその場所、(iii)在庫管理、マーケティングおよび広告に関する方針、ならびに該当する場合には商品の供給およびサプライヤーとの契約に関する規定、(iv)返済、融資、その他の考慮事項に関する方針、手続、条件、(v)フランチャイジーの利益率または手数料の決定に適用される基準および方法、(vi)フランチャイジーの従業員に対する技術および業務上の研修の特徴、ならびにフランチャイザーが技術支援を行う方法または形態、(vii)フランチャイザーおよびフランチャイジーが担当するサービスの品質、パフォーマンスの監督、報告、評価に関する基準、方法および手順、(viii)当事者が合意した場合のサブフランチャイズに関する条件、(ix)フランチャイズ契約の解除となる事由、(x)フランチャイズ契約に関連する条件を修正し、該当する場合には相互の合意により修正することができる旨。

(4) フランチャイジーの義務

フランチャイジーの義務は、個々のフランチャイズ契約で設定することができます。ただし、法は、契約期間中及び契約期間後も、フランチャイジーに当該フランチャイズ事業に関連し知り得た情報や業務内容などについて秘密保持義務を課しています。

(5) フランチャイザーの権利

フランチャイザーは、契約で定められた内容に従って、管理基準およびフランチャイズイメージを守ることを保証する目的を以てのみ、フランチャイジーの組織および運営に干渉することができます。

フランチャイジーの合併、会社分割、組織変更、定款の変更、会社の持分または株式の譲渡、または担保の設定については、フランチャイズ契約を決定づける要因としてフランチャイジーの特性を変更する場合でも、契約で規定されていない限り、フランチャイザーはいかなる干渉もしないものとされています。

(6) 解約

フランチャイザーとフランチャイジーは、契約が無期限で合意されている場合や、正当な理由がある場合を除き、一方的に契約を解除または取り消すことはできません。フランチャイジーまたはフランチャイザーが契約期間満了前に契約を解除するためには、契約で合意された事由と手続きによる必要があります。

これに違反するフランチャイザーまたはフランチャイジーによる中途解約は、契約で合意された従来の違約金を支払うか、またはそれに代えて、生じた損害および不利益に対する補償を行うものとされています。

(7) 商標権

フランチャイズビジネスを展開するにあたっては、商標登録が重要です。フランチャイザーは、フランチャイジーに対し独自の経営ノウハウや商品を提供しビジネスを許諾することにより対価を得ますので、ブランド力の向上や独占的販売の効果を生むためには、関連する商標をメキシコ国内で登録することが必要となってきます(商標出願については、TNY Group Newsletter No.6を参照)。更に、フランチャイジーが当該商標を用いるにあたっては、メキシコ産業財産庁(IMPI)に対しその使用許諾を登録する必要があります。フランチャイズの商標使用許諾の登録申請書には、フランチャイズに係る契約書の原本または公証人により公証された写しを添付しなければなりません。なお、フランチャイジーが支払うロイヤルティ、秘密情報や商品やサービス、技術情報を含む部分は省略することができます。この登録申請は、フランチャイズに関わるいずれの当事者も提出することができます。

6.バングラデシュ

バングラデシュでは、フランチャイズに対する外資規制はなく、通常の会社設立手続きで事業が可能です。外資系の飲食店は、ケンタッキー・フライド・チキンやバーガーキングなど、小売店では、フットウェアのBATAや雑貨販売のMINISO(中国)などが進出しています。バングラデシュの2018-2019年度のGDP成長率は8.19%で他の南アジア諸国と比較しても高く、COVID-19感染拡大の影響により、2020年はGDPが減少したものの、2020-2021年度の一人当たりの収入は2,227ドルで、成長率は9%であり、回復傾向がみられます。バングラデシュの人口は1億6,500万人を超え、そのうち富裕層および中間層の数は平均で年10.5%増加しており、消費市場としての拡大も期待できます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年7月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点で沖縄県に緊急事態宣言が実施されており、7月11日までが実施期間となっています。また、まん延防止等重点措置は、埼玉県、千葉県、神奈川県、北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県で7月11日までを対象に実施されています。飲食店への休業又は時短要請、酒類提供の制限、イベントの収容率及び人数制限、テレワークの推進など、各都道府県の自治体が措置を講じるほか、ワクチン接種の円滑化・加速化の取り組みが進められています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

(e) 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

インド、ネパール、パキスタン、モルディブ、スリランカ及びアフガニスタン(6月1日に追加)の6か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。また、これらの国からの在留資格保持者の再入国は原則拒否されます。

インドネシア、ウガンダ、マレーシア、英国、エジプト、バングラデシュの5か国からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で6日間待機し、入国後3日目及び6日目に改めて検査を受けることになります。

以下の国又は地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)当面待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。

アイルランド、オランダ、ギリシャ、フランス、ヨルダン、カザフスタン、チュニジア、デンマーク、タイ、ベルギー、ラトビア、アラブ首長国連邦、エストニア、キルギス、スウェーデン、ブラジル、ペルー、ポルトガル、南アフリカ共和国、スペイン、ナイジェリア、フィリピン、ベトナム、アメリカ合衆国(16州)、ロシア(モスクワ市、モスクワ州、サンクトペテルブルク市)、カナダ(オンタリオ州)、スイス、ルクセンブルク

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連規制

6月中旬以降、1日あたりの新たな感染者数は、連日3000人を超えています。このような状況をうけて、タイ政府は、6月27日、バンコク都とバンコク近郊県において、規制を最強化することを決定し、この規制の再強化は28日より実施されています。

 再強化された規制の概要は、下記ととおりです。

  • レストラン、百貨店等の建物の内部の飲食店、路上の飲食店、移動販売、歩き売り、市場、定期市、水上市場、これらの類似施設を含め、持ち帰り用の飲食物の販売のみ認める。
  • デパート等の営業は午後9時までとするが、その内部の劇場、映画館、ウォーターパークの営業を禁じ、休憩場所における物理的距離を拡大させる。
  • ホテル、展示会場、会議センター等の営業は認めるが、会議、セミナー、宴会の実施は禁ずる。
  • 当局が許可した、ないしは当局が主催する行事や活動を除き、20人以上の活動を禁ずる。

(2) 入国規制

 5月1日以降の運用に特段変更はなく、タイ入国後の隔離期間については、入国許可証(COE)を取得した者は、14日間以上の隔離期間が義務付けられています。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連規制

 6月28日の新規感染者数は、5,218 人でした。ムヒディン首相は、6月27日、翌28日に期限を迎える予定だったFMCO(完全ロックダウン)を解除せず延長すると発表しました。このFMCOは、新規感染者数及びワクチン接種率を基準に、段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。政府の発表では、新規感染者数が4000人以下となり、ICUの治療人数が減り、ワクチン接種率が国民の10%を超えた場合において、一段階規制を緩和するとしていました。

 なお、FMCOが施行された6月1日から、必要不可欠なサービスとして指定されたものを除き全ての社会・経済活動は許可されません。また、州・地区間の移動は原則禁止されています。

(2) 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発3日前にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19の陽性者数が増加傾向にあり、病院の稼働状況もCDMの関係でまだ完全に元通りにはなっていないことから感染予防対策が重要です。

クーデターと関連して、政府関連施設での爆発事件が増加しており、外出時には注意する必要があります。

(2) 入国規制

 6月は3日及び24日のANA便が飛びました。7月は8日及び22日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週以降、最も深刻な赤を示す州が0州の状態が続いていますが、信号色が緑から黄色、黄色から橙へと後退する州もいくつか見られます。ワクチン接種は、6月27日時点で43,912,990回の接種が行われ、30,078,813人の人が少なくとも1回の接種を終えたとされています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、7月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染が再拡大していることを受け、6月27日に新たな行動規制を発表しました。今回内閣府が発表した行動規制は、7月1日午前6時までの期間が対象で、報道によると、それ以降は更に厳しい行動規制が実施される予定です。今回発表された7月1日までの行動規制の主な内容は以下の通りです。

  1. リキシャや物資を輸送する車両を除く、すべての公共交通機関を全国で停止する。法執行機関は、定期的なパトロールを通じてこれを徹底する。
  2. すべてのショッピングモール、マーケット、観光地、リゾート、コミュニティセンター、娯楽施設等の営業は停止される。
  3. レストランは、デリバリーやテイクアウトのみの営業とし、営業時間は午前8時から午後8時までとする。
  4. 政府や非政府機関は、必要な数の職員が出勤できるよう交通手段を提供すること。
  5. マスク着用の啓発活動を徹底させ、必要であれば法的措置を取ることもできる。

(2) 入国規制

 6月1日、バングラデシュ民間航空局(CAAB)は、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置として、渡航や入国規制について発表しました。主要な発表内容は、下記の通りです。なお、グループAやBに属する具体的な国名など、詳細については( https://www.immi.gov.bd/docs/caab_circular_4June21.pdf )をご参照ください。

  1. グループAに属する国(インドやマレーシアなどの計11か国)へのバングラデシュからの出国、グループAの国からのバングラデシュ入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(ベルギーやデンマークなどの計8か国)へのバングラデシュからの出国、グループBの国からのダッカへの渡航は認められる。ただし、入国後、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。

第2.各国の不動産法制度の概要

1.日本

日本では、土地・建物共に外国人の不動産所有が認められており、所有権の期限は無く、自由に売買することができ、贈与、相続させることも可能です。今国会で土地利用を規制する法案が可決成立しましたが、安全保障関連施設周辺の土地を対象としており、一般的な不動産に関する外資規制としては、1925年に定められた外国人土地法が外資の土地取得を政令で制限できると規定しているものの、現在、政令による指定はなく、同法以外に一般的な不動産に関する外資の土地取得規制はありません。

不動産取引に関する法律は、土地の利用、建物の建築、不動産会社に対する規制、土地や建物に対する権利、売買や賃貸借の契約、不動産登記等の目的によって複数の異なる法律が運用されており、日本の法人や個人と同様に外国法人や個人にも適用されます。今回は、ビジネス及び生活においても関わる機会のある不動産の売買や賃貸借の契約に関する法律についてご紹介します。

(1) 民法

民法では、契約の成立要件や手付け、瑕疵担保責任など、契約の基本的な考え方が規定されており、契約内容について、当事者間で争いがあった場合や事前の取り決めがない場合には、原則として民法に基づき解決することになります。日本では、民法176条より、所有権の移転は、当事者の意思表示のみにより効力を生じます。したがって、当事者間での売買契約等の意思表示の合致のみで所有権は売主から買主へ移転します。もっとも、民法177条より、所有者が所有権を第三者に対抗するためには、不動産登記法等に基づき登記をすることが必要です。

(2) 借地借家法

民法では、契約関係にある当事者同士が対等・公平であることが原則とされていますが、賃借人保護等の観点から、土地(建物の所有を目的とするもの)及び建物の賃貸借契約に関して、民法の規定に優先して適用される法律です。借地借家法には、法の規定と異なる当事者間の合意で賃借人に不利なものは無効になり、借地借家法の規定が適用される条項(強行規定)も含まれています。

1 借地権[1]の存続期間及び更新

 借地権の存続期間は30年で、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間となります(借地借家法3条)。当事者が借地契約を更新する場合において、その期間は更新の日から10年で(借地権の設定後の最初の更新の場合は20年)、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間となります(借地借家法4条)。(a) 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者[2]が契約の更新を請求したとき、及び、(b) 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するとき、(a)(b)ともに建物がある場合に限り、4条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法5条1項2項)。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りではありません(同条1項但書)。これに対し、借地権設定者は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当な事由があると認められる場合でなければ、異議を述べることができません(借地借家法6条)。

2 借地権の対抗力

 借地権は、その登記がなくても、借地権者が、土地の上に登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができると規定されており(借地借家法10条1項)、仮に土地の所有権が第三者に移転した場合でも、借地権者が、その土地上に、登記されている建物を所有している場合は、借地権について対抗することができます。

3 建物の賃貸借契約の期間や更新・終了

 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、更新を希望しない当事者は、期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨を通知しなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。また、建物の賃貸人が賃貸借の解約の申し入れをした場合、建物の賃貸借は、当該申し入れの日から6か月を経過することによって終了します(借地借家法27条1項)。建物の賃貸人による更新をしない旨の通知又は解約の申し入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができません(借地借家法28条)。

4 建物賃貸借の対抗力

建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力が生じます(借地借家法31条)。例えば、建物の所有権が第三者に移転する前に、当該建物に居住している者は、当該第三者に対して、賃貸借について登記がなくても、その賃借権について対抗することができます。

(3) 宅地建物取引業法

宅地建物取引業法は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的としています(宅地建物取引業法1条)。

宅地建物取引業者が自ら売り主となる売買契約について、消費者保護の観点から、民法の規定にかかわらず、契約内容の一部に制限を加えるなどの規制があります。具体的には、手付金や違約金等の金額の制限、瑕疵担保責任に関する制限が設けられており、これらの制限に違反する契約条項は無効となります。一方、賃貸借契約の内容に関しては、宅地建物取引業法に特別な規制はありません。

1 違約金の制限等

宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2をこえることとなる定めをすることはできません(宅地建物取引業法38条1項)。

2 手付の額の制限等

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができません(宅地建物取引業法39条1項)。

3 担保責任についての特約の制限

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法566条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をすることはできません(宅地建物取引業法40条)。

(4) 消費者契約法

消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(消費者契約法1条)。

事業者の不適切な行為の結果、消費者が誤認、困惑したまま契約を締結した場合は、その契約を取り消すことができる、など、不動産の売買や賃貸借の契約を含む一般的な消費者契約について定めており、契約内容に消費者の権利を不当に害する条項がある場合には、その契約条項を無効とすることなどが規定されています。

2.タイ

(1)主な関連法

 不動産に関する法律としては、主なものとして土地法(Land Code B.E.2497)、投資奨励法(Investment Promotion Act B.E.2520)、タイ工業団地法(Industrial Estate Authority of Thailand Act B.E. 2522)、民商法典(Commercial and Civil Code B.E.2535)及びコンドミニアム法(Condominium Act B.E.2522) などが存在します。

(2)不動産の所有権に関する登記制度など

私人も土地及び建物を所有することができます。民商法典上、「不動産」とは、土地及び建物の定着物または土地と一体のもの、とされています(民商法典100条)。土地と建物は、別々の不動産として、取引することが可能です。しかしながら、登記制度自体は、土地についてのみ存在し、建物についての登記制度は存在しません。つまり、土地については土地局で登記を行い、土地の完全な所有権を証する証書として、権原証書(Title Deed)を発行してもらうことが可能であるものの、建物については登記制度がなく、土地の権原証書のように、所有権を証する証書などの書類は存在しません。もっとも、建物の譲渡は、売買契約を土地局に登記することにより行います。このため、対象となる建物について、過去に登記された売買契約書を土地局で確認することにより、その所有者の確認を行うことが一般的です。また、建物が過去に譲渡されていない場合には、当該建物を建築した際の「建築許可証」が、所有権を証する書類として用いられています。

(3) 外資規制

 外国人(タイ国外における法人と、登録資本金のうち外国資本49%を超えるタイで登記された法人を含む)は、原則として土地を所有することができません(土地法第86条)。もっとも、投資奨励法やタイ工業団地法などで、一定の要件を満たす場合には、外国人であっても土地を所有することが認められています。

 建物については、外国人も特に制限なく所有することが認められています。しかし、コンドミニアムについては、各ユニットの区分所有権を取得することになり、コンドミニアムの各ユニットについての所有権のみでなく、その建物の敷地を含めた共用部分についても所有権を取得することになるため、外国人が所有できるコンドミニアムの区分所有の割合は、全ての区分の49%まで、と定められています(コンドミニアム法19条Bis)。

(4) 不動産の賃貸借

 民商法典上、土地や建物の賃貸借期間は、原則として最長30年とされており、さらに30年の更新を定めることは可能です(民商法典540条)。商業または工業用の不動産については、商工業用不動産賃貸法(Act on Lease Immovable Property for Commercial and Industrial Purposes, B.E.2542)に基づき、一定の条件を充足した場合に、最長50年の賃貸借が可能となりますが、同制度は手続きが煩雑となるためか、実務上はあまり利用されていません。

3.マレーシア

(1) 適用法令

 憲法(Malaysian Federal Constitution)上、不動産に関する事項については州政府の管轄下に置かれ、不動産法制の統一性を確保するため、連邦法が定められています。具体的には、国家土地法(National Land Code 1965)、区分所有権法(Strata Titles Act 1985)、土地取得法(Land Acquisition Act 1960)等があります。ただし、東マレーシアを構成するサバ州とサラワク州については連邦法である国家土地法等は適用されず、独自の州法が適用されます。

(2) 外資規制

国家土地法及び首相府傘下の経済企画庁(Economic Planning Unit:EPU)発行によるガイドラインにより規制されています。国家土地法により、全ての外国会社及び非マレーシア市民は、不動産取得に際して、事前に州当局への承認を取得しなければなりません。またEPUのガイドラインにより規定された類型に該当する場合にはEPUの承認も必要となります。

(3) 所有権

 土地の所有権は州政府に帰属し、私人の土地に関する権利は州政府から譲渡を受けることにより生じ、取引の対象となります。譲渡の形態としては、99年を超えない期間に限り譲渡を行なうリースホールド(Leasehold)及び永久的に譲渡を行なうフリーホールド(Freehold)とがあります。いずれの場合も土地に対する排他的支配権を取得することとなります。

土地の譲渡に際しては、通常、地代(土地の固定資産税に相当)の支払、利用形態の制限といった条件や制限が課されます。リースホールドの形態により譲渡された土地は、期間の延長がされない限り、期間満了時に州政府に復帰することとなります。

土地には、一般に、農業用地、工業用地、商業用地、住宅用地と使用目的が設定され、権利簿に記載されており、一定の場合に使用目的を変更することは可能です。

 また、建物は土地の一部を構成すると考えられていることから、原則として独立した売買取引・登記の対象とはなりません。

(4) 区分所有制度

区分所有権法による区分所有(Strata Title)制度が存在します。同法により、1つの土地上の2階以上の建物は複数の区分に分譲することが可能となります。この区分所有制度により、個々のユニット(コンドミニアムの各部屋)に区分所有権が認められます。

区分所有権法によれば、コンドミニアムの個々のユニットは購入者に所有権が認められ、このユニットの所有権をStrata Titleといいます。そして、ユニット所有者は、Strata Titleにより自身の所有権を証明することができます。Strata Titleは土地所有者/開発者が土地事務所に対して、分譲(Subdivision)の申請を行い、承認されれば発行されます。

もっとも、マレーシアでは実務上、土地所有者/開発者の分譲申請手続の遅れ、又は土地事務所の発行手続の遅れを理由にユニット購入者へのStrata Titleが未発行であることは少なくありません。Strata Titleが発行されていない場合、登記簿上では開発者又は土地所有者がコンドミニアム全体について所有権を有しており、ユニット所有者には登記簿上の所有権は認められません。改正区分所有権法では、このようなユニット所有者の権利が不安定な状況を改善するため分譲申請手続の期間を短縮する等の改正が行われました。

4.ミャンマー

(1) 主な関連法

不動産法制における主要な法律としては、不動産譲渡制限法(The Transfer of Immoveable Property Restriction Act、1987)、登記法(The Registration Act, 1908)、投資法(The Myanmar Investment Law, 2016)、コンドミニアム法(The Condominium Law, 2016)等が存在します。

(2) 不動産の所有権に関する規制

 憲法上、国家は、国内のすべての土地の所有者である旨規定されています(憲法37条1項)。したがって、個人または会社に土地の所有権は認められていません。

 しかし、国は自由土地保有地(freehold land)、許可地(permit land)、宗教許可地(religious grant land)等の使用を認めています。土地の種類に応じて、期限の定めなく使用が認められていたり、90年、60年等の形で使用権の期限が規定されている土地も存在します。この場合、原則として使用権の期間は更新されることとなっています。かかる土地の使用権は、所有権とは異なるものの、賃借権とも異なるため、実務上かかる権利を所有権と称して取引がなされています。

不動産には、土地、建物、その他土地または土地に付着した物から生じる利益が含まれると定義されています(登記法2条6項)。ミャンマーでは、日本と異なり、原則として建物は独立した不動産所有権が認められるものではなく、土地の付着物として扱われ、原則として土地の所有者と建物の所有者は同一に帰します。例外として、コンドミニアム法上のコンドミニアムについては区分所有権の登記が認められ、かつ、外国人であっても40%を超えない範囲で取得することが認められます。もっとも、コンドミニアム法の適用を受ける物件は現時点ではごくわずかです。

その上で、外国会社または外国人は売買、贈与、質、交換または譲渡のいずれの方法によっても不動産を取得することはできないと規定されています。

なお、不動産譲渡制限法においては、外国会社はミャンマー国民によって管理もしくは支配されていない会社もしくはパートナーシップ、または過半数の株式もしくは持分がミャンマー国民に保有されていない会社もしくはパートナーシップと定義されています。しかし、実務上は、会社法上のミャンマー会社の定義を満たす必要があります。

なお、ミャンマーにおいても日本と同様に土地の種類が規定されており、農地、森林地、空地・休閑地・未開墾地、それら以外の土地が存在し、それら以外の土地上においてのみ商業ビルの建設が認められます。

(3) 不動産の賃貸借に関する規制

不動産の賃貸借に関し、外国人または外国会社に対して1年を超える賃借権は認められない旨規定されています。

例外として、投資法に基づく投資許可またはエンドースメントを取得した場合、外国会社であっても、最大50年の土地賃借が認められ、10年の延長が2回まで認められます。

また、経済特区において事業を行う場合には、経済特区法に基づき、最大50年の賃借が認められ、更に25年の延長が認められます。なお、土地の転貸借、譲渡担保権設定、交換又は譲渡を行う場合、管理委員会の許可を得る必要があります。

上記規制の関係上、長期の賃借が必要となる製造業、ホテル業などの事業においては投資法または経済特区法の活用を検討することとなります。

5.メキシコ

(1) 不動産法制度

メキシコにおける不動産の概念や売買、登記などの原則は連邦民法(Código Civil Federal)に規定されており、本稿ではその概略をご紹介します。なお、細目については州によって異なる場合もありえますので、ご留意ください。

1 不動産の考え方

日本においては建物と土地は別の不動産とされていますが、メキシコにおいては、建物は土地の一部とされています。そのため、基本的には、土地の所有者が、土地上の建物の所有者になります。

ただし、建物の一部を住戸ごとに購入することも可能です。つまり、登記(Registro Público de la Propiedad: RPP)された土地上の建物を区分ごとに分割することができ、このような分割も登記が可能となります。この建物の一区分の所有者は、他の区分の所有者の同意を要せずに、所有する区分を譲渡や担保に供することができます。

2 不動産取得手続の概要

不動産取得に際し売買契約を締結する際には、公証人に売買契約公正証書の作成を依頼し、その公正証書に署名後、その謄本をもって登記を行うこととなります。なお、取得金額がUMA日額(Unidad de Medida y Actualización、2021年度の日額は89.62ペソ)の365倍の額より小さい場合は、登記を省略することも可能です。なお、不動産登記簿はその不動産の所在地を管轄する登記所において第三者も閲覧可能です。閲覧の際は、その不動産の住所もしくは区画や街区、地籍コードもしくは以前の登録証(謄本または原本)などが必要となります。

また、後述のとおり、外国人がメキシコの土地を取得しようとする場合は、事前に外務省から許可を受ける必要があります。

(2) 不動産取得にあたっての外資規制

憲法(Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)および外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)によって、外国人や外国資本の企業による不動産取得に制限が設けられています。

1 所有権取得

メキシコにおいては、外国人は、(a)その財産に関してメキシコ国民と同等の扱いを受けること、(b)(a)に関して自国政府の保護を求めないこと、(c)これに違反した場合には当該権利等をメキシコ国に没収されることに同意することや、(d)外務省の許可を得ることを条件に、土地の所有権を取得することができます。また、法人の場合には、(a)乃至(c)を定款に含めることが求められます。

ただし、国境から100キロメートル、海岸から50キロメートルの範囲の制限区域内においては、外国人は土地を直接所有することができません。

なお、メキシコで設立されたメキシコ法人であっても、外国人排除条項(直接もしくは間接的にパートナーもしくは株主として外国人もしくは外国資本が参入する法人を受け入れないとする条項)を有せず、上記(a)乃至(c)の条項のみを有する法人の場合は、制限区域外の土地のほか、制限区域内の土地については居住以外の目的でのみ取得は可能となりますが、購入後60営業日以内に外務省に届出を行わなければなりません。

2 信託(Fideicomiso)

前述の通り、制限区域内の土地の所有については制限があるものの、所有以外の方法で使用・収益する権利を取得することは可能です。具体的には、Fideicomisoという信託形式によって、制限区域内の土地の使用収益権を取得する方法であり、外国人排除条項のないメキシコ法人あるいは外国人または外国法人が受益者、銀行が受託者となり、銀行が制限区域内に所在する不動産の管理を受託することになります。

この信託により、使用、賃貸などの収益、抵当に充てるなどの処分、相続や贈与も可能となります。信託期間は最大50年とされていますが、更新をすることも可能です。

6.バングラデシュ

(1) 不動産の所有

バングラデシュでは、個人の土地・不動産の所有権が認められています。外国人の不動産取得については、憲法や関連する法令で特に規制されていませんが、実務において、政府からの許可等を求められることも多く、法令上、明示的に認められていないことから、外国人による不動産の取得は困難といえます。例えば、バングラデシュ首都整備庁(RAJUK)は、その所有する不動産賃借権を外国人に売却することを禁止しているため、外国人は、RAJUKが所有する土地区画に係る賃借権を取得することはできません。RAJUKは、ダッカ大都市圏の計画と開発管理について責任を負う組織で、中央政府によって指名された委員長及び5人の委員による委員会によって管理されています。

一方、外資企業による不動産の購入は制限されていません。輸出加工区(EPZ)の場合は購入できませんが、長期(30年間)使用権を獲得することができます。

(2) 不動産業への外資規制

不動産業への外資参入について、特別な許認可制度はありませんが、土地登記簿の信用性が低いことなどから、権利関係を明らかにするために時間を要するなど事業を実施するうえでの課題はあります。

(3) 不動産関連の法令

1 1882年財産移転法

不動産又は動産の移転、不動産の売却、不動産の抵当及び税金、不動産の賃貸、交換、贈与等について規定しています。

2 1950 年国家収用及び賃借法

バングラデシュの土地における賃借者の利益及びその他の特定の利益の国家による収用について定め、かかる収用後に国家の下で保持される賃借及びその他の関連事項について規定しています。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年6月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

  1. 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう(借地借家法2条1号)。「地上権」とは、他人の所有している土地を、工作物等を所有するため使用する権利(民法265条)。土地の所有者の許諾がなくても、原則的に、貸与、建物の売却や担保の設定が可能。

  2. 借地権を有する者をいう(借地借家法2条2号)。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点で緊急事態宣言が実施されている都道府県は、東京都、京都府、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡県、北海道、岡山県、広島県、沖縄県で、6月20日までが実施期間となっています。また、まん延防止等重点措置は、埼玉県、千葉県、神奈川県、岐阜県、三重県(それぞれ6月20日まで)、群馬県、石川県、熊本県(それぞれ6月13日まで)を対象に実施されています。飲食店への休業又は時短要請、商業施設の休業要請、イベントの無観客での実施、在宅勤務の奨励など、各都道府県の自治体が措置を講じています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

(e) インド変異株指定国・地域についての水際対策

インド、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、モルディブ及びスリランカの6か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。

英国、デンマーク、カザフスタン、チュニジア、アイルランド、オランダ、ギリシャ、フィンランド、フランス、ポーランド、ヨルダンの11か国からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で3日間待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は147,039名です。この内、95,809名が回復し、累計死亡者数は954名となっています。また、非常事態宣言は、7月31日まで延長されています。

 ダークレッドゾーンであるバンコク、ノンタブリー、パトゥムターニー、サムットプラーカーンの4都県については、学校等の教育施設の閉鎖期間を、6月14日まで延長しています。

タイ政府は、5月15日、新たな措置を公表し、ダークレッドゾーンである4都県については、レストラン等での店内飲食が午後9時まで可能となりました。ただし、引き続き店内でのアルコール飲料の提供は不可であり、店内飲食者数は、通常営業時の25%以下とすることとされています。持ち帰りについては、午後11時まで可能です。

レッドゾーンに指定されたアユタヤ、チョンブリ等の17県については、レストラン等での店内飲食は午後11時まで可能です。ただし、店内でのアルコール飲料の提供は不可となっています。

また、原則として、公共の場ではマスクを着用することとされています。

(2) タイ入国後の隔離期間の変更

 タイ保健省は、タイ入国後の隔離期間を14日間から10日間に短縮することを発表していましたが、5月1日以降に入国許可証(COE)を取得した者のタイ入国後の隔離期間を、原則14日間に戻すことが発表されています。COVID-19の感染拡大防止が理由とされています。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連規制

 5月27日の新規感染者数は、7,857人でした。同日時点の累計感染者数は54万人を超え、アクティブ陽性者数は7万人に迫っています。3日連続で新規感染者数が過去最多を更新し、人口100万人当たりの感染者数がインドを超え、感染が急拡大しているといえます。

 現在、マレーシア全域で期間を6月7日までとして活動制限令(MCO)が施行されています(サラワク州については6月11日までの延長が発表されています)。MCO期間中は、警察に許可を得た場合の緊急の移動等を除き、州・地区間の移動が禁止されます。また、関係省庁によって承認されたすべての経済及びビジネスセクターは営業可能ですが、従業員の移動には、登録/営業承認書、従業員パス/雇用主による確認書の携行が必要となります。民間部門の出勤上限は、操業・管理を含め60パーセントとなっています。また、レストラン(店内飲食不可)、食料品店、コンビニエンスストア、日用品店、薬局等の商業施設の多くは午後8時までの営業となっています。

(2) 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発3日前にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。外出禁止令は22時~4時に緩和されました。デモは少なくなってきたものの、爆発事件が増加しています。

(2) 入国規制

 5月は13日にANA便が飛びました。6月は3日及び24日の救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1)COVID-19関連の規制状況

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週以降、最も深刻な赤を示す州が0州となり、5月24日の週には半数の州が緑となりました。また、医療従事者や60代以上の方へのワクチン接種に続き、50代の方や教育従事者や妊婦へのワクチン接種が始まっています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、6月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、メキシコ政府は、グアテマラ、ベリーズとの国境において3月19日から実施されている陸路での不要不急の移動制限について、5月21日までとしていた期限を6月21日まで延長することを発表しました。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染再拡大の予防措置として、4月からロックダウンを含む行動規制の措置を講じています。現在、県境を越えるものを含むすべての公共交通機関は、座席数の50%を上限として、乗客等のマスクの着用を条件に運行が可能になり、レストランの営業も、席数を半分にすることを条件に営業が再開できることになるなど、一部規制が緩和されていますが、マスク着用の徹底や緊急時以外の外出禁止等は継続されています。

(2) 入国規制

 バングラデシュ保健サービス局は、新型コロナウイルスの更なる感染蔓延を防ぐため、「すべてのバングラデシュ入国者(外国人含む)は、政府指定の施設(ホテル含む)にて、費用自己負担で14日間の施設隔離をしなければならない」としています。

第2.各国の広告規制の概要

1.日本

広告規制について、代表的な不当景品類及び不当表示防止法のほか、医薬品、食品、酒類、電気用品、たばこ等、商品によって異なる法令が適用されますが、そのなかでも特に重要と考えられる以下の法律の目的及び広告規制についてご紹介します。広告規制は複数の法令が適用されうることに加え、悪意のある不当な広告表示や相手に損害を与えた場合などは、刑法・軽犯罪法や民法が適用されることもあります。法律以外にも、規則やガイドライン等で表示の規制や要件が詳細に定められていますので、実際に広告表示を行う際には、これらの規制や要件を確認することが必要です。また、ここでは、主に広告に関する「禁止事項」を紹介していますが、商品や役務の種類ごとに「表示しなければならない事項」も定められていますので、注意が必要です。

  法律名
1 不当景品類及び不当表示防止法(景表法)
2
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法(旧:薬事法))
3 健康増進法
4 食品衛生法
5 不正競争防止法
6 特定商取引に関する法律(特定商取引法)

(1) 不当景品類及び不当表示防止法(景表法)

1 目的

 商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とするとされています(景表法1条)。

2 広告規制

不当な表示の禁止として、事業者を対象とし、供給する商品又は役務の取引について、以下のいずれかに該当する表示をしてはならないと規定されています(景表法5条)。

(a) 優良誤認表示(同条1号)

商品・サービスの品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示し、又は事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると示すもので、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる不当表示

例) 「カシミヤ100%」→実際は70%だった

(b) 有利誤認表示(同条2号)

商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示や競争業者に係るものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる不当表示

例) 「この機能は当社製品だけ」→実際は他社でも同様の機能を有する製品を販売していた

(2) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法(旧:薬事法))

1 目的

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下、「医薬品等」という)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とすると規定されています(薬機法1条)。

いわゆる「健康食品」「サプリメント」と呼ばれるものは、直接薬機法の規制対象とはなっていませんが、景表法や健康増進法などが適用されます。

2 広告規制

(1)の景表法が事業者を対象とした広告規制を定めているのに対し、薬機法では、「何人も」誇大広告や承認前の医薬品や医療機器等を広告することが禁止されています。

(a) 誇大広告等の禁止

何人も、医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならないと定められており(薬機法66条1項)、医薬品等の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することも含まれます(同条2項)。また、医薬品等に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはなりません(同条3項)。

(b) 特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限

特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品で、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、指定された医薬品又は再生医療等製品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する当該医薬品等の適正な使用確保のために必要な措置が取られることがありますので(薬機法67条1項)、確認が必要です。

(c) 承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止

何人も、薬機法に規定する医薬品等で、認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をすることはできません(薬機法68条1項)。

(3) 健康増進法

1 目的

 急速な高齢化の進展及び疾病構造の変化に伴い、国民の健康の増進の重要性が著しく増大していることにかんがみ、国民の健康の増進の総合的な推進に関し基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民保健の向上を図ることを目的としています(健康増進法1条)。

2 広告規制

何人も、食品として販売に供する物に関して広告等するときは、その健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をすることは禁止されています(健康増進法65条1項)。

(4) 食品衛生法

1 目的

 食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、国民の健康の保護を図ることを目的としています(食品衛生法1条)。

2 広告規制

食品、添加物、器具又は容器包装に関して、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしてはならない(食品衛生法20条)として、禁止されています。

(5) 不正競争防止法

1 目的

 事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(不正競争防止法1条)。

2 広告規制

不正競争防止法2条にて、差し止めや損害賠償請求の措置等の対象となる不正競争を掲げています。

  1. 他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸出入等して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不正競争防止法2条1項1号)
  2. 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸出入等する行為(不正競争防止法2条1項2号)
  3. 商品・役務若しくはその広告等にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量等、若しくは役務の質、内容、用途、数量等について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸出入等して、若しくはその表示をして役務を提供する行為(不正競争防止法2条1項20号)

例) 外国から輸入したいちごを、栃木県の地形と、とちおとめの写真を印刷した包装箱に入れ、原産地を表示しないまま、とちおとめをイメージさせるような形態で販売した。

(6) 特定商取引に関する法律(特定商取引法)

1 目的

 特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、連鎖販売取引(*1)、特定継続的役務提供に係る取引(*2)、業務提供誘引販売取引(*3)並びに訪問購入に係る取引をいう)を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(特定商取引法1条)。

*1 個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるかたちで、販売組織を連鎖的に    

拡大して行う商品・役務の取引のこと

*2 長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと。 一定の金額及び期間を超えるエステティックサロン、語学教室などが対象とされています。

*3 「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと。

2 広告規制

(a) 通信販売についての広告

販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、その広告に、商品若しくは権利又は役務の価格やその支払い時期及び方法、提供時期等の事項を表示しなければなりません(特定商取引法11条)。

(b) 誇大広告等の禁止

販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、その商品の性能又は権利若しくは役務の内容、当該商品若しくは当該権利の売買契約の申込みの撤回又は解除に関する事項等について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると誤認させるような表示をすることは禁止されています(特定商取引法12条)。

2.タイ

 タイにおける広告に関する基本的な規制として、消費者保護法(Consumer Protection Act B.E.2522)があります。概要は以下のとおりです。

  1. 広告規制

広告には、消費者や社会全体に悪影響を及ぼす可能性のある文言が含まれてはならないと定められています。そして、以下の様な記述は、消費者や社会全体に悪影響を及ぼす文言とみなされます(第22条)。

  1. 虚偽または誇張された記述
  2. 商品またはサービスに関して根本的な誤解を招くような記述(虚偽または誇張されたものであるか否か を問わない)
  3. 法や道徳に反することを直接的または間接的に支持したり、国の文化的衰退を助長する記述
  4. 国民の不和を引き起こし、または国民の団結を害する記述
  5. その他、省令で定められた記述

広告委員会が特定の商品が消費者にとって有害である可能性があると考え、当該商品を広告規制商品として規定した場合には、広告委員会は以下のような命令を出す権限を有します(第24条)。

    1. 広告委員会が定める条件に従い、使用方法や有害性に関する助言や警告を行った上で、当該広告を行うこと
    2. 当該商品の広告媒体の使用を制限すること
    3. 当該商品の広告を禁止すること

     2. ラベル規制

工場法に基づいて工場が販売のために生産した商品、および販売のために注文またはタイに輸入した商品は、ラベル規制商品とされます。また、その用途や性質から健康を害したり、身体的・精神的な被害をもたらすおそれのある商品等について、ラベル規制委員会が、そのような商品をラベル規制品として規定する場合があります(第30条)。

ラベル規制商品のラベルは、以下の記述がなされる必要があります(第31条)。

    1. 真実を表す記述であり、商品について根本的な誤解を生じさせる記述がないこと
    2. 以下の内容を示すこと
      1. 生産者または販売のための輸入者の名前または商標
      2. 生産地または輸入事業者の所在地
      3. 商品が何であるかについての認識を可能にする記述、および輸入品の場合には、生産国
    3. 消費者の権利を保護するための必要な記述、すなわち、価格、数量、使用方法、説明、注意、有効期限など

ラベル委員会は、ラベルが第31条に適合していないと判断した場合、事業者に対して、当該ラベルの使用を中止し、または当該ラベルに対して是正措置を講じることを命じることができます(第33条)。

    3.  その他の規制

 その他、食品、医薬品、化粧品、アルコール飲料等については、個別の法令によって規制がなされているため、それら法令に従って、広告やラベルを表示する必要があります。

3.マレーシア

マレーシアには、広告に関する規制の代表的なものとして消費者保護法(Consumer Protection Act 1999)、取引表示法(Trade Description Act 2011)、及び薬事(広告及び販売)法(Medicines (Advertisement and Sale) Act 1956)があります。

(1) 消費者保護法(Consumer Protection Act 1999)

1 概要

消費者保護法は、その名の通り消費者の権利利益を保護することを目的とする法律であり、法第2条(2)に掲げる取引(有価証券や先物取引等)以外の取引において一人以上の消費者に提供または供給されるすべての商品及びサービスに関して適用されます(消費者保護法第2条(1))。同法は、第2部で「誤解しやすい、または、詐欺的な行為、不実の表示、及び不公正な手段」の表示を規制しています。

2 規制の内容

消費者保護法10条は、以下のような虚偽(false)又は誤解を招く(misleading)表示をしてはならないものとしています。

  1. 商品が特定の種類、基準、品質、等級、数量、構成、スタイル、又はモデルであること
  2. 商品に特定の履歴又は使用歴があったこと
  3. サービスが特定の種類、標準、品質、又は数量のものであること
  4. サービスが、特定の人物又は特定の職業、資格、又は技術スキルを持つ人物によって提供されること
  5. 特定の人物が商品又はサービスを取得することに同意したこと
  6. 商品が新品又は再生品であること
  7. 商品が特定の時期に製造、生産、処理、又は再調整されたこと
  8. 商品又はサービスに、スポンサーシップ、認証、推奨、性能特性、付属品、効用、又は利点があること
  9. その人がスポンサー、承認、支持、又は提携を持っていること
  10. 商品又はサービスの需要について
  11. 条件、保証、権利、又は救済の存在、免責、又は効果について
  12. 商品の原産地について

同法8条は、偽り(false)、誤解を招く(misleading)、又は欺瞞的(deceptive)な表現等には、消費者を誤解(error)させる可能性のある表現等が含まれるものと定めています。

3 罰則

 法人が消費者保護法10条に違反した場合、同法25条に基づき、初犯につきRM250,000を超えない罰金が、2回目以降の違反につきRM500,000を超えない罰金が科されます。また、判決後も違反を継続する場合、1日あたりRM1000を超えない罰金が追加的に科されます。

(2) 取引表示法(Trade Description Act 2011)

1 概要

取引表示法は、取引表示法は、商品およびサービスの供給に関連する虚偽の説明および虚偽または誤解を招く記載、行為、および慣行を禁止することによって良好な取引慣行を促進することを目的として、禁止の対象となる虚偽表示ないし不実表示の態様を定めるほか、2011年取引表示法の違反への処罰について規定しています。

2 規制の内容

 同法6条(1)は取引表示を、表示方法を問わず、物品に関する以下の表示と定義しています。

  1. 性質又は目的
  2. 数量、長さ、幅、高さ、面積、容積、容量、重量、寸法、規格
  3. 製造、生産、加工又は修理の方法
  4. 組成
  5. 目的適合性、強度、性能、動作、精度
  6. 貴金属製品の品質基準
  7. 上記の項目に含まれていない物理的又は技術的特性
  8. 物品の有効期限
  9. いずれかの者による試験及びその結果
  10. 上記各項に記載された以外の品質
  11. いずれかの者による承認又はいずれかの者が承認した種類への適合
  12. 製造、生産、加工又は修理の場所
  13. 物品の製造、生産、加工又は修理を行った者
  14. 過去の所有者又は使用を含めた他の履歴

また、同法7条(1)は、虚偽取引表示(false trade description)を、重大な虚偽を含む取引表示を意味するものと定義しています。

3 罰則

 取引表示法5条は、法人が以下の行為を行った場合、初犯につきRM250,000を超えない罰金を、2回目以降につきRM500,000を超えない罰金を科す旨規定しています。

  1. 物品に虚偽取引表示を行った場合
  2. 虚偽取引表示がなされた物品を提供し又は提供を申し出た場合
  3. 虚偽取引表示がなされた物品を供給し、あるいは供給の目的で所持、保管又は管理した場合

(3) 薬事(広告及び販売)法(Medicines (Advertisement and Sale) Act 1956)

1 概要

薬事(広告及び販売)法は、3条(1)及び4B条(1)において、商品を疾患及び健康状態についての処置及び予防のための薬剤、器具、治療法とすることを意図した表現を用いた広告を規制しています。

医薬品広告委員会(Medicine Advertisements Board: MAB )が発行する一般公衆に対する薬剤及び医薬品の広告に関するガイドライン(GUIDELINE ON ADVERTISING OF MEDICINES AND MEDICINAL PRODUCTS TO GENERAL PUBLIC)によれば、この広告には、ラベルや包装紙も含まれるものとされています。

2 規制の内容

同法3条(1)は、以下の事項については、公的機関又は大臣の許可を得た者以外による上記広告を禁止しています。

  1. 別紙記載の疾病及び健康状態についての処置及び予防
  2. 避妊
  3. 腎臓又は心臓の健康状態又は機能の改善、若しくは性機能又は性的能力の改善
  4. 別紙記載の疾患の診断

 また、同法4B条(1)は、MABの承認がない限り、何人も商品を疾患及び健康状態(3条(1)で指定されたものを除く)についての処置及び予防のための薬剤、器具、治療法とすることを意図した表現を用いた広告をすることはできない旨を定めています。

3 罰則

同法3条又は4B条に違反した場合、同法5条に基づき、初犯につきRM3,000を超えない罰金又は1年を超えない期間の懲役若しくはその両方が、2回目以降の違反につきRM5,000を超えない罰金又は2年を超えない期間の懲役若しくはその両方が科される旨規定されています。

4.ミャンマー

ミャンマーには広告を規制する法律として主に競争法と消費者保護法があります。概要は以下のとおりです。

(1) 競争法(Competition Law)

競争法は2015年2月に公布され、2017年7月より施行されています。同法第23条において、事業者は不公平な競争を目的として、以下の広告活動を実施してはならないと規定されております。

  1. 他のビジネスと同様の種類の商品またはサービスを直接比較すること
  2. 他の商品の広告を模倣することにより顧客の誤解を招くこと
  3. 以下の事項のいずれかについて顧客に嘘または誤解を招く情報を放送すること
  4. 価格、数量、品質、実用性、デザイン、品種、パッケージ、製造日、耐久性、原産国、製造業者、製造場所、加工業者または加工場所
  5. 使用方法、サービス、保証期間
  6. 他の嘘または誤解を招く情報
  7. 既存の法律により禁止されている他の広告活動

上記に違反した場合、3年以下の懲役または1,500万チャットの罰金またはその双方が科せられる可能性があります。

(2) 消費者保護法(Consumer Protection Law)

消費者保護法は2019年3月に公布、施行されました。同法第63条において、事業者は以下の種類の広告を行ってはならないと規定されております。

  1. 商品の品質、数量、成分、使用方法、価格、サービス価格、商品またはサービスの配送時間に関連する詐欺的広告。
  2. 商品またはサービスの保証に関する詐欺的な広告
  3. 商品またはサービスに関する不正確な情報を含む広告
  4. 商品またはサービスを使用することによる危険性を通知しない広告
  5. 関係する人物の許可なく当該人物または出来事を使用した広告
  6. 既存の法律及び社会的倫理に遵守していない広告

上記に違反した場合、6カ月以下の懲役または200万チャット以下の罰金に科せられる可能性があります。

(3) 明文にない規制

情報省管轄のPress Scrutiny and Registration Division (PSRD)が、人々の健康及び道徳を乱すとして酒類及びタバコに関する広告を禁止していますが、公に発表する形での通知は出されておらず、あくまでも国営紙に向けて内部通達として出している形です。

5.メキシコ

(1)広告規制の法律および管轄機関

メキシコにおける広告規制は、単一の法律により規制されているのではなく、様々な観点から複数の法律により規制されています。連邦レベルでの主な法令としては、連邦消費者保護法(Ley Federal de Protección al Consumidor)、連邦経済競争法(Ley Federal de Competencia Económica)、品質基盤法(Ley de Infraestructura de la Calidad)、広告に関する保健一般法規則(Reglamento de la Ley General de Salud en Materia de Publicidad)、プロモーション及びオファーに関する規則(Reglamento sobre Promociones y Ofertas)、連邦産業財産保護法(Ley Federal de la Protección a la Propiedad Industrial)、関連するメキシコ公式規格(NOM)などが挙げられます。なお、メキシコにおける広告情報の監視と分析を管轄する主な機関は、規制する法律により管轄機関が異なり、主なものを挙げると、経済省や保健省、消費者保護検察局(PROFECO)、連邦保険リスク保護委員会(COFEPRIS)などとなります。

以上のように広告規制は様々な観点で行われていますが、ここでは、消費者保護の観点から連邦消費者保護法上の主な規制をご紹介します。

(2)連邦消費者保護法の規制

連邦消費者保護法における主な広告の規制は以下のとおりです。

・ 消費者に送付する広告には、サプライヤー(場合によっては、代理人やPROFECO)の氏名、住所、電話番号またはメールアドレスを表示しなければならない

・ マーケティングまたは広告以外の目的で消費者情報を使用すること、および広告を受け取らない意思を明示的に表明した消費者等に広告を送付してはならない

・ 商品、製品またはサービスに関する情報または広告は、真実であり、検証可能であり、誤解を招くような、または誤解を招く恐れのある文章、会話、音声、画像、標章、原産地呼称およびその他の記述を含んではならない※

・ 輸入された製品の情報は、その原産地及び必要に応じて修理可能な場所、使用方法及び保証について表示しなければならない

・ 製品またはそのラベル、包装、パッケージや広告の情報は、国内製、海外製を問わず、メキシコ国内の基準に基づき、スペイン語及びメキシコペソで表示しなければならない(ただし、他の言語や他国の基準に基づく情報の併記があっても良い)

・ 消費者にとって潜在的に危険であるか、環境に有害であるか、またはその危険性が予見できると考えられる製品またはサービスの場合、サプライヤーは、その有害な特性を警告する説明書を添付し、推奨される用途や使用方法及び推奨される方法以外での用途がもたらす可能性のある影響を明確に説明しなければならない

また、PROFECOは、1連邦消費者保護法の規定に違反する情報または広告の提供者、および必要に応じてそれを流布する媒体に対しそのような広告の一時停止を命令することができ、2連邦消費者保護法の規定に違反する情報または広告を修正するよう命じることができるとともに、3制裁を課すことができるとされています。制裁に関しては、違反した条項によりその重さが異なりますが、重大な違反と判断された場合は90日以内の全面的または部分的な事業所の閉鎖、および174,205.27ペソ から4,877,747.21ペソの罰金の制裁を科すことができるとされています。また、上述※の違反で特に重大な事案であるとみなされた場合は、前述の額、または、違反が行われた最終会計年度の、広告に含まれる商品、製品またはサービスの販売から得られる違反者の年間総収入の10%までの額の罰金が科されるとされています。

たとえば、2013年、PROFECOは、マクドナルドに対し、“Cajita Feliz”という商品で誤解を招くような広告を行ったとして、684,000ペソの罰金を科し、当該広告の停止を命じました。広告にデザートとしてフルーツが含まれていると誤認しうる不正確な画像と説明が使用されていた点を不適切と判断しています。

6.バングラデシュ

 バングラデシュの広告規制に関する法律として、以下が挙げられますが、特に(1)(2)については、バングラデシュ独立前の60年近く前の法律であり、現在の状況に応じた法令整備が期待されます。

  法律名
1 望ましくない広告規制法(1952年)
2 わいせつな広告禁止法(1963年)
3 喫煙及びたばこ製品使用管理法(2005年)
4 消費者権利保護法(2009年)

(1) 望ましくない広告規制法

 特定の疾病及び障害の治療に関する広告の発行を規制することを目的としています。

1 広告規制

 いかなる者も、広告という手段によって、性病、性的障害、月経不順またはその他の規定された病気、虚弱性または異常性を治療する又は治療を申し出ること、治療法を広告すること、治療法を処方することを申し出ること、またはその治療に関連してアドバイスを与えるまたは与えることを申し出ることは禁止されています(望ましくない広告規制法3条1項)。

また、あらゆる性病、性的障害、月経不順、その他の規定された病気、虚弱性又は異常性に対し、予防、治療または緩和する、それらに有用である、または使用される可能性がある、何らかの治療法、薬、薬用またはハーブ製剤、器具又はまじないを、推奨、主張、または暗示する、広告又は包装や容器等へのラベル又は一連の説明表示の配布又は印刷は禁止されています(同条2項)。

これらの規定に違反した場合は、当該広告を掲載した新聞やパンフレット等の没収や差し押さえに加え(望ましくない広告規制法4条(1))、1年以下の拘禁若しくは1,000タカ以下の罰金又はその両方に科せられます(望ましくない広告規制法5条)。

(2) わいせつな広告禁止法

 わいせつな広告を禁止する法律で、「わいせつ」とは、普通の気質の普通の人の心の不純な考えの官能性と興奮を動機づけ、そのような不道徳な影響に無防備な者を堕落、腐敗させる傾向があり、公の道徳に有害であるとみなされ、人の心の堕落において悪影響を生み出すと判断されるものを含むと定義されています(わいせつな広告禁止法2条(b))。

1 広告規制

いかなる者も、わいせつな広告の発行に関わってはならず、建物又は公共の場所の所有者、占有者又は管理者は、わいせつな広告であると知りながらその掲載を認めてはならないと規定されています(わいせつな広告禁止法3条(i)(ii))。違反した者は、当該広告を掲載した文書その他の物の没収や差し押さえに加え(わいせつな広告禁止法5条)、6か月以下の拘禁(再犯の場合は1年以下))若しくは罰金又はその両方が科せられます(わいせつな広告禁止法4条(a)(b))。

(3) 喫煙及びたばこ製品使用管理法

 喫煙及びたばこ製品の生産、使用、販売及び購入、広告を管理することを規定した法律です。バングラデシュは、WHOの「たばこの規制に関する枠組条約(FCTC)」に署名しており、同条約の規定を施行するために、喫煙、たばこ製品の生産、使用、販売、購入及び広告を規制する必要があると前文に記載されています。

1 広告規制

 広告に関して、以下の行為が禁止されています。

  1. 映画館、政府及び非政府のラジオやテレビチャンネルでたばこ製品を広告したり、写真を展示したりすること(喫煙及びたばこ製品使用管理法5条1項(a))
  2. たばこ製品の広告を含むフィルム、ビデオテープ、その他のものを販売または販売させること(同項(b))
  3. バングラデシュで発行された本、雑誌、チラシ、看板、新聞、または印刷物に広告を印刷、発行、または発行させること(同項(c))。
  4. たばこ製品のブランド名、色、ロゴ、商標、記号、シンボル、または広告を含む小冊子、チラシ、または文書を配布または一般に提供すること(同項(d)。なお、たばこ製品を販売する小売店又は業者は対象に含まれません。

これらの規定に違反したものは、3か月以下の交換若しくは1,000タカの罰金又はその両方を科せられる(同条5項)。

(4) 消費者権利保護法

 消費者の権利の保護、消費者の権利行使に反する行為の防止、およびそれに関連する事項について規定しています。消費者の権利行使に反する行為のひとつに「商品又は役務を販売する目的で不実又は不正な広告によって消費者を欺くこと」が含まれており(消費者権利保護法2条(20)(d))、その行為をした者は、1年以下の拘禁若しくは20万タカ以下の罰金又はその両方が科せられます(消費者権利保護法44条)。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年5月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

4月23日に、東京都、京都府、大阪府、兵庫県を対象として、緊急事態宣言が発出されました。また、まん延防止等重点措置の区域の追加及び期間の変更が決定され、現在、宮城県、沖縄県、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、愛媛県が実施区域に指定されています。緊急事態宣言、まん延防止等重点措置ともに実施期間は5月11日までとなっています。飲食店への休業又は時短要請、商業施設の休業要請、イベントの無観客での実施、在宅勤務の奨励、学校の部活動などの制限・自粛要請など、各都道府県の自治体が措置を講じています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 新たな水際対策(4月28日)

「新型コロナウイルス変異株流行国・地域」に、新たに以下の3か国・地域を指定されました。

(1) 米国(テネシー州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州)

(2) インド

(3) ペルー

上記3か国・地域からのすべての入国者及び帰国者については、これまでは自宅等で入国後14日間の待機としてきたところですが、今後は、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります。その上で、陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の残りの期間を、自宅等で待機することになりました。

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は63,570名です。この内、35,394名が回復し、累計死亡者数は188名となっています。また、非常事態宣言は、5月31日まで延長されています。

 4月25日、バンコク都は、5月9日までのバンコク都内の施設の一時的閉鎖に関する告示及び、外出時の常時マスク着用を義務付ける告示を発表しています。

1 施設の閉鎖

学校等の教育施設、バーやカラオケ等の娯楽施設、入浴施設、映画館、遊技場、フィットネス場、博物館、美術館、図書館、託児所、介護施設、ムエタイ場、ネイル店、ダンス場、スパ、マッサージ店、貸会議室、公園、スポーツ施設、ゴルフ場、美容室(洗髪、カット、セットのみ可能)等が閉鎖となっています。

2 飲食店、屋台、フードコート等は午後9時まで店内飲食可能、午後11時まで持ち帰り形式での販売可能。

酒類の店内消費は禁止。

ショッピングセンター等は午後9時まで営業可能。

コンビニエンスストア、スーパー等は午後10時まで営業可能。営業開始時間は午前5時以降。

3 外出時は、マスクを着用すること。違反者には、2万バーツ以下の罰金が科されます。

(2) 4月以降のタイ入国後の隔離期間の短縮

3月26日、タイ保健省は、タイ入国後の隔離期間を14日間から10日間に短縮することを発表しています(COVID-19の変異株が確認されている国からの入国者については、隔離期間短縮の対象外)。4月1日以降、Fit to Flyは不要となり、渡航72時間以内発行のPCR検査結果(陰性証明書)のみが必要となります。隔離期間中は、引き続き2度のPCR検査が実施されます。

 また、ワクチンパスポート所持者について、以下のとおり発表がなされています。

・タイ到着以前の期間(14日前~3カ月前)にワクチンパスポートを取得、かつ陰性証明書あり

隔離期間7日間、隔離期間中1度のPCR検査実施

・ワクチンパスポートのみ(陰性証明書なし)

隔離期間7日間、隔離期間中2度のPCR検査実施

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

 4月28日のCOVID-19の新規感染者数は、3,142人であり、2か月ぶりに3,000人を上回りました。アクティブ感染者数は2万6,719人で、類型感染者数は40万1,539人となっています。

 また、以下の地域の別にMCO(活動制限令)、CMCO(条件付き活動制限令)、RMCO(回復のための活動制限令)が5月17日まで延長される旨の公表がありました。

1 MCO(活動制限令)

クランタン州全域、サバ州のLahad Datu地区(5月8日まで)、ジョホール州のMukim Endau 及び Mukim Triangのみ(5月3日まで)

2 CMCO(条件付き活動制限令)

スランゴール州、ジョホール州(Mukim Endau 及び Mukim Triangを除く)、ペナン州、クアラルンプール、ヌグリ・スンビラン州(スレンバン地区のみ)、ケダ州(クアラ・ムダ地区のみ)、サラワク州、サバ州(一部地域を除く)

3 RMCO(回復のための活動制限令)

 ペルリス州、パハン州、トレガンヌ州、マラッカ州、ペラ州、ケダ州(クアラ・ムダ地区を除く)、ヌグリ・スンビラン州(スレンバン地区を除く)プトラジャヤ、ラブアン

4 CMCO及びRMCO対象地域での規制(SOP)

(a) CMCO対象地域

同一のCMCO対象地域内での移動は許可され、異なるCMCO対象地域、MCO及びEMCO対象地域への移動は警察の許可を得れば認められます。また、スランゴール州、クアラルンプール及びプトラジャヤは一つの地域とみなされるため、これらの地区間の移動は認められます。

スーパーマーケット、ショッピングセンター、レストラン、屋台、市場、ガソリンスタンド、ドラッグストアなど深夜12時までの営業が許可されます。ただし、ラマダン期間中は全ての飲食店は午前6時まで営業が許可されます。

(b) RMCO対象地域

州をまたがない同対象地域内の移動は認められ、MCO、CMCO及びEMCO対象地域への移動は警察の許可を得れば認められます。

レストラン等の飲食店、市場、ガソリンスタンド、ドラッグストア等の施設は関係当局の営業許可の範囲内で営業が許可されます。ただし、ラマダン期間中は全ての飲食店は午前6時まで営業が許可されます。

(2) 入国規制

2020年3月18日から、外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能。)。

例外的に入国が許可される外国人のマレーシア入国に際しては、政府指定の隔離センターでの10日間の隔離等、回復のための活動制限令(RMCO)の全ての規定を遵守する必要があるほか、類型毎に以下の条件を満たす必要があります。

1 MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国に際しては、以下の措置をとることが条件となる。

  1. 出発前の所定のオンラインフォームの提出及びマレーシア入国管理局からの許可受領
  2. マレーシア到着時のPCR検査結果が陰性であること
  3. 隔離
  4. 接触者追跡アプリのダウンロード

※隔離については、マレーシアへの出発前にPCR検査(スワブ検査)を受検し陰性証明を取得した者は7日間、取得していない者は10日間の強制隔離となっています。

2 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者。)に当たっては、マレーシア到着前到着時のPCR検査結果が陰性であること、入国後の隔離等が条件となる。

3 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国に際しては、マレーシア到着時のPCR検査結果が陰性であること、接触者追跡アプリのダウンロード、当局への事前登録等が条件となる。

4 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族(累積感染者数が15万人を超える国(※2020年9月7日時点で15万人以上の国を指し、米国、インド、ブラジル等23か国。なお、日本は含まれていない。)からの渡航者を除く。)は、入管通過直後に必要なビザ申請等を行うことで入国を許可する。

5 永住者は、事前登録申請なしでの入国を許可する。

(3) 変異株の影響による入国規制

この他、4月24日、イスマイル・サブリ上級大臣兼国防大臣は、国防省のツイッター上で、変異株(Variant of Concern、VOC)の流行が確認されている国からの渡航者に対する規制(SOP)を発表しました。

これによると、変異株ウィルスの流行が確認されている国からの入国時の隔離期間は10日から14日になるとのことです。そして、大臣は、世界保健機関(WHO)は、現在、変異株について最初に1南アフリカで報告されたもの、2最初にイギリスで報告されたもの、3最初にブラジル・日本で報告されたものの3種類があると述べています。この規制に関する詳細な情報はまだ発表されていませんが、日本もこの規制対象国に含まれる可能性があります。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。COVID-19関連の規制ではなく、クーデター関連の規制として、一部の地区へ戒厳令が出されたことに伴う19時~5時の外出禁止令、5名以上の集会禁止等が国軍から出されています。これに対してCRPHからも徴税の半年間停止、電気代支払停止等の法令が出されています。

(2) 入国規制

 4月は1日及び22日にANA便が飛びました。5月は13日に救援便が運航予定ですが、現在、CDMの関係で空港で燃料補給が出来ないことやインターネット遮断等の影響から飛行機の就航数が非常に減っています。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は今後の日本からの救援便に日本人搭乗枠が認められるか次第となります。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19新規感染確定者数は、全国的に減少の傾向にあり、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週以降、最も深刻な赤を示す州が0州の状態が続いています。また、医療従事者や60代以上の方へのワクチン接種に続き、50代の方へのワクチン接種の事前登録が始まりました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、5月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、グアテマラ、ベリーズとの国境において3月19日から4月21日の間実施するとしていた陸路での不要不急の移動制限について、政府は、5月21日まで延長することを発表しました。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染再拡大の予防措置として、4月5日からロックダウンの措置を講じており、14日からは更に強い下記の措置が講じられています。5月5日までの措置とされていますが、これまで1週間のロックダウンが、繰り返し延長されており、5日以降も延長の可能性があります。

  1. すべての政府系機関および政府系機関に準ずるもの、民間の事務所・金融機関は閉鎖される。すべての職員は自らの居所に留まらねばならない。ただし、空港、港。陸の通関施設とその関係の事務所は措置の対象外。
  2. 最高裁判所は、裁判所についての命令を発出する。
  3. すべての公共交通機関(道路・水路・鉄道と国内および国際航空便)は停止される。ただし、商品の輸送、生産活動、緊急のサービスのための交通は措置の対象外。
  4. 工場及び製造業は感染対策を講じた上で営業することができる。ただし、従業員の通勤にあたっては職場が手配した交通手段を用いなければならない。
  5. 治安、緊急のサービス、例えば肥料・種苗・農薬・農業機器などの農業製品、穀物及び食料品、救援活動、保健サービス、新型コロナウイルスのワクチン接種、電気、水道、ガス、燃料、消防、港湾サービス(陸上、河川、海上)、電話、インターネット(公営・民営を含む)、マスメディア(紙媒体・オンラインを含む)、民間警備、郵便、及びその他の緊急のサービス・物資の供給について、そのための職員と交通は措置の対象外とされる。
  6. 薬や日用品の購入、医療サービス、遺体の埋葬等の緊急の場合を除き、いかなる場合にも屋外に出てはならない。ただし、ワクチンカードを提示すればワクチン接種のために外出することができる。
  7. ホテル・レストランその他の飲食店は正午から午後7時まで及び午前0時から午前6時まで、持ち帰りまたはオンラインでのみ営業できる。ショッピングモールなどの商店は閉鎖される。
  8. 生鮮食料品・生活必需品を扱う店は午前9時から午後3時まで感染対策を講じた上で営業できる。
  9. ボロ米の収穫のための労働者の交通手段について、関係の県が協力を行う。
  10. すべての県及び地域の行政機関は本件措置の適切な実施のための対応を行う。治安維持部隊は通常のパトロールを強化する。
  11. 保健サービス総局の長は県の行政機関及び警察に法的措置を講じるための権利を付与する。
  12. 感染対策を講じた上でのジュンマとタラビのお祈りのための集会については宗教省が命令を発出する。
  13. 本件措置の適切な運用のため、各省・局は必要に応じ補完的な措置を講じることができる。

(2) 入国規制

バングラデシュ民間航空局(CAAB)は、4月14日からの1週間、バングラデシュ発着のすべての国際線フライトを運航停止すると発表し、その措置は5月5日まで延長されています。

  1. バングラデシュ発着の全ての国際旅客便を停止する。
  2. 措置の対象は、一部の特別許可便を除く商用旅客便で、医療目的や人道支援目的のフライト、貨物便などは今回の規制の対象外。

 また、バングラデシュ保健サービス局は、新型コロナウイルスの更なる感染蔓延を防ぐため、「すべてのバングラデシュ入国者(外国人含む)は、政府指定の施設(ホテル含む)にて、費用自己負担で14日間の施設隔離をしなければならない」と発表しました。4月20日時点で政府が指定している施設一覧は、こちらをご確認ください。

 

第2.各国の独占禁止法(競争法)の概要

1.日本

(1) 概要

「独占禁止法(正式名称:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、以下「独禁法」」は、昭和22年7月に施行され、これまで経済や産業構造などの変化に伴って強化・改正されてきました。同法は、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業活動を盛んにし、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としています(独禁法第1条)。独占禁止法を運用するための行政機関として、公正取引委員会が設置されました(独禁法第27条)。

(2) 独占・寡占

1 私的独占の禁止(独禁法第3条、第2条第5項)

事業者が単独又は他の事業者と手を組み、不当な低価格販売、差別価格による販売などの手段を用いて、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為は「排除型私的独占」として禁止されています。また、有力な事業者が、株式の取得、役員の派遣などにより、他の事業者の事業活動に制約を与えて、市場を支配しようとすることも「支配型私的独占」として禁じられています。

また、寡占状態にある産業において、一部の事業者が特に大規模であるなどの理由で、競争が有効に機能していない場合、独占的な状態にあるとして、競争を回復するための措置が命じられることがあります。

(3) カルテル・入札談合

1 不当な取引制限の禁止(独禁法第3条、第2条第6項)

 事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決め、競争を制限する行為は「カルテル」として禁止されています。公共工事や物品の公共調達に関する入札の際、入札に参加する事業者たちが事前に相談して、受注事業者や受注金額などを決めてしまう「入札談合」も不当な取引制限のひとつとして禁止されています。

2 国際カルテルへの参加禁止(独禁法第6条)

国内の事業者がカルテルなどを内容として、海外の事業者と国際的協定を結ぶことは禁止されていま す。例えば、国内の事業者と海外の事業者の間でそれぞれの商品をお互いの国に輸出しないという市場 分割カルテルが行われた場合、競争を実質的に制限することになるため、違反行為となります。

3 事業者団体の活動規制(独禁法第8条、第2条第2項)

カルテルは、事業者団体の活動として行われる場合が少なくありません。例えば、事業者団体がその分野における事業者の数を制限して新規参入を認めなかったり、価格の引上げ・数量の制限、取引相手・販売地域の割当てを指示するなど、事業者の自主的な事業活動を不当に制限する行為は禁じられています。

(4) 不公正な取引方法(独禁法第19条、第2条第9項)

   「不公正な取引方法」とは、独禁法第2条第9項で定められる行為、及び同項第6号に基づく公正取引委員会の告示により指定される行為(以下、「一般指定」)をいいます。

1 取引拒絶(独禁法第2条第9項第1号、一般指定第1項、第2項)

 新規事業者の開業を妨害する目的などで、複数の事業者が共同で特定の事業者との取引を拒絶したり、第三者に特定の事業者との取引を拒絶させたりする行為は禁止されています。また、小売店に販売価格を指示して守らせるなど、事業者が単独で取引拒絶を行うような場合も違法となります。

2 差別対価・差別取扱い(独禁法第2条第9項第2号、同項第6号イ、一般指定第3項、第4項、第5項)

 取引先や販売地域によって、商品やサービスの対価に不当に著しい差をつけたり、その他の取引条件で差別することは禁じられています。例えば、有力な事業者が競争相手を排除する目的で、競争相手の取引先に対してのみ廉売をして顧客を奪ったり、競争相手と競合する地域でのみ過剰なダンピングを行ったりするような行為がこれに該当します。

3 不当廉売(独禁法第2条第9項第3号、同項第6号ロ、一般指定第6項)

 商品を不当に低い価格で、継続して販売し、他の事業者の事業活動を困難にさせることは禁じられています。ただし、公正な競争手段としての安売り、キズ物・季節商品等の処分等正当な理由がある場合は、違法とはなりません。

4 再販売価格の拘束(独禁法第2条第9項第4号)

 指定した価格で販売しない小売業者等に経済上の不利益を課したり、出荷を停止したりするなどして小売業者等に自社の商品を指定した価格で販売させることは、原則として禁止されています。また、指定した価格で販売することを小売業者等と合意して、自社の商品を指定した価格で販売させることも禁じられています。ただし、書籍、雑誌、新聞、音楽用CDなどの著作物については、例外となっています。

5 優越的地位の濫用(独禁法第2条第9項第5号、同項第6号ホ、一般指定第13項)

 取引上優越的地位にある事業者が、取引先に対して不当に不利益を与える行為は禁じられています。下請取引で問題が起きる場合が多く、独占禁止法の補完法の「下請法」(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)で規制されています。下請法は、下請代金の支払遅延や減額など、下請事業者に対する親事業者の不当な行為を規制しています。幅広い事業分野における親事業者の禁止行為を明確に定め、下請事業者を守る法律となっています。

6 抱き合わせ販売(一般指定第10項)

 商品やサービスを販売する際に、不当に他の商品やサービスを一緒に購入させる行為は、取引の強制に当たりますので禁止されています。

7 排他条件付取引(一般指定第11項)

 自社が供給する商品のみを取り扱うことを条件として取引を行うなどにより、不当に競争相手の取引の機会や流通経路を奪ったり、新規参入を妨げるおそれがある場合は、違法となります。

8 拘束条件付取引(独禁法第2条第9項第4号、同項第6号二、一般指定第12項)

 取引相手の事業活動を不当に拘束するような条件を付けての取引は禁止されています。販売地域や販売方法などを不当に拘束するような場合がこれに該当します。

9 競争者に対する取引妨害(独禁法第2条第9項第6号ヘ、一般指定第14項)

 事業活動に必要な契約の成立を阻止したり、契約不履行へと誘引する行為を行ったりするなどして、競争者の事業活動を不当に妨害することは禁じられています。

10 不当顧客誘引(独禁法第2条第9項第6号ハ、一般指定第8項、第9項)

 自社の商品・サービスを虚偽・誇大な表示や広告で不当に顧客を誘引したり、過大な景品を付けて商品を販売したりするようなことは、買い手の適切な商品選択を妨げるため禁止されています。

11 不当高価購入(一般指定第7項)

 競争相手を妨害することを目的に、競争相手が必要としている物品(原材料など)を市場価格を著しく上回る価格で購入し、入手困難にさせるような行為は禁じられています。

12 競争会社に対する内部干渉(一般指定第15項)

 ある事業者が、競合関係にある会社の株主や役員にその会社の不利益になる行為を行うよう不当に誘引したり、そそのかしたりするようなことは禁じられています。

(5) 届出・報告の義務

会社の株式取得、合併、分割、共同株式移転、事業の譲受けなどによって、競争が実質的に制限されることとなる場合、こうした企業結合は禁止されています(独禁法第9条第1項、第10条第1項、第15条第1項、第15条の2第1項、第15条の3第1項、第16条第1項)。この他、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立、銀行及び保険会社による議決権保有の制限も規制されています(独禁法第11条第1項)。

 一定規模以上の会社が株式取得などにより企業結合を行う際、公正取引委員会に届出・報告をする必要があります(外国会社についても同様です。)株式取得・合併・分割・共同株式移転・事業等の譲受けの届出、一定の会社(一定の総資産を超える会社及びその子会社等)の事業報告・設立の届出が該当します(独禁法第10条第2項、第15条第2項、第15条の2第2項、第15条の3第2項、第16条第2項)。

(6) 公正取引委員会による措置

 独占禁止法に違反する行為が行われている疑いがある場合、公正取引委員会は、事業者への立入検査、事 情聴取などを行い、調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められると、違反を行っていた事業者に対して排除措置を採るよう命じています(独禁法第7条第1項、同条第2項、第8条の2第1項ないし第3項、第17条の2第1項、同条第2項、第20条1項、同条第2項)。また、カルテルなどの悪質な行為については、課徴金や刑事罰などの厳しい措置が採られます(独禁法第7条の2、第20条の2ないし第20条の6)。

(7) その他ガイドライン

 公正取引委員会では、市場の規模や環境の変化に合わせ、各種ガイドライン等を取りまとめて公表しています。

フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン

独占禁止法では、取引の発注者が事業者である場合、下請法では、取引の発注者が資本金 1,000 万円超の法人の事業者である場合、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引には独占禁止法や下請法を広く適用することが可能です。 他方、これらの法律の適用に加えて(又は代わって)、フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上 「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用されます。同ガイドラインでは、フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項(報酬、発注、成果物の取扱い、取引条件等)、仲介事業者が遵守すべき事項、「雇用」に該当する場合の判断基準等について定められています。

スタートアップとの事業連携に関する指針

事業連携によるイノベーションを成功させるため、スタートアップと連携事業者との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを目的としており、特にNDA(秘密保持契約)、PoC契約(技術検証)、共同研究契約及びライセンス契約の4つの契約において生じる問題事例とその事例に対する独占禁止法上の考え方を整理するとともに、それらの具体的改善の方向として、 問題の背景及び解決の方向性を示したものです。

2.タイ

 タイでは、1999年に取引競争法(Trade Competition Act B.E. 2542)が施行され、その後、2017年に改正がなされています(Trade Competition Act B.E. 2560)。取引競争法は、(1)支配的地位の濫用、(2)企業結合、(3)競争制限的行為、(4)不公正な取引方法を規制しています。概要は以下のとおりです。

  1. 支配的地位の濫用

「支配的地位を有する事業者」とは、以下のいずれかの条件に当てはまる事業者をいいます。

    1. 市場における50%以上のシェア率を有し、前事業年度の売上額が10億バーツ以上の事業者
    2. 市場シェア上位3社の内の1社であり、上位3社の前事業年度の市場シェア率合計が75%以上であり、当該各事業者の前事業年度の売上額が10億バーツ以上であること

上記条件に当てはまる事業者は、市場における支配的地位を以下の方法で行使することはできません。

  1. 商品やサービスの仕入れ価格や販売価格を不当に固定または維持すること
  2. 取引先である他の事業者に対して不当な条件を課すことにより、サービス、生産、物品の購入・販売を制限したり、物品の購入・販売、サービスの受領・提供、他の事業者に債権を求める機会を制限したりすること
  3. 正当な理由なく、サービスの提供、生産、販売、配送、輸入を停止、削減、制限したり、市場の需要よりも数量を減らす目的で商品を破壊したり、毀損させたりすること
  4. 正当な理由なく、他人の事業活動に介入すること
  5. 企業結合
    1. 取引競争委員会の通知に定められた基準に基づき、市場における競争を実質的に減少させる可能性のある企業結合を行う事業者は、当該企業結合の日から7日以内に、その結果を取引競争委員会に通知しなければなりません(事後届出)。
    2. 市場において独占を引き起こし、又は結果として支配的な地位を得る可能性のある企業結合を行おうとする事業者は、取引競争委員会の許可を得なければなりません(事前届出)。

ここでの「企業結合」には、以下のものが含まれます。

  1. 合併
  2. 他の事業者の方針、事業運営、方向性、経営を支配するために、他の事業者の資産の全部または一部を取得すること
  3. 他の事業者の政策、経営管理、指揮、管理を統制するために、直接的または間接的に、他の事業者の株式の全部または一部を取得すること
  4. 競争制限的行為
    1. 同一市場で競合する事業者は、以下の方法で市場の競争を独占、縮小、制限する行為を共同で行ってはなりません。
      1. 商品やサービスの価格に影響を与える仕入れ価格や販売価格、取引条件を、直接的にも間接的にも固定すること
      2. 各事業者が生産、購入、販売、提供する商品やサービスの量を制限すること
      3. 競売や入札で一方が勝つために、故意に合意や条件を設定すること
      4. 各事業者が商品やサービスを販売したり、購入したりする地域を割り当てたり、購入者や販売者を割り当てたりすること
    2. 事業者は、以下の方法で市場の競争を独占、縮小、制限する行為を共同で行ってはなりません。
      1. 同一市場の競争相手ではない事業者間で、(3)1(a), (b), (d) に規定する条件を設定すること
      2. 商品またはサービスの品質を、以前に生産、販売、または提供されたものよりも低い状態にすること
      3. 同一の商品を独占的に販売したり、同一サービスを提供したり、同一種類の商品を独占的に販売する者を指名したり、委託したりすること
      4. 合意された内容に従うように、商品やサービスの購入や生産に関する条件や行為を設定すること
      5. 取引委員会の通知に定められたその他の方法で共同契約を結ぶこと
  5. 不公正な取引方法

事業者は、次のいずれかの方法により、他の事業者に損害を与える行為をしてはなりません。

    1. 他の事業者の事業活動を不当に阻害すること
    2. 優良な市場原理や交渉力を不当に利用すること。
    3. 不当に取引条件を設定し、他者の事業活動を制限または阻止すること
    4. その他、取引委員会の通知に定める行為を行うこと
  1. 罰則

  取引委員会は、当該行為が違反行為であると信じるに足る証拠を有する場合、当該事業者に対し、当該行為の停止、中止、または修正もしくは変更を命令する権限を有します。また、違反類型毎に、刑事罰、行政罰が規定されています。

3.マレーシア

マレーシアでは、競争法(Competition Act 2010)が2012年1月に施行され、また同法の施行機関である競争委員会について規定した競争委員会法(Competition Commission Act 2010)が2011年1月に施行されています。同委員会は、競争法の考え方を明らかにするためにガイドラインを制定しています。

(1) 反競争的合意

競争法4条は、市場での競争を著しく妨げ、制限し又は歪曲する目的若しくは効果がある限り、企業間の水平的又は垂直的合意は禁止されると定めています。

1 水平的合意

 競争法は、以下の目的を有する水平的合意は、市場での競争を著しく妨げ、制限し又は歪曲する目的若しくは効果があるものとみなしています。

  1. 間接又は直接に売買価格その他取引条件を拘束すること
  2. 市場又は供給元を分け合うこと
  3. 生産、市場への販売経路、市場へのアクセス、技術、技術的発展、投資への制限又は支配
  4. 入札談合行為を行うこと

2 垂直的合意

垂直的な合意については、水平的合意と異なり、みなし規定は置かれていません。

 もっとも、競争委員会作成のガイドラインは、反競争的効果が問題となり得る行為として以下の行為を挙げています。

  1. 再販価格の維持
  2. 供給品の全て又はほとんどを特定の供給者から購入しなければならない旨を定める合意
  3. 地理的範囲における独占販売を定める合意
  4. 顧客の独占的割当を定める合意
  5. 小売販売網の利用にかかる費用の前払い

3 免責

ある合意が反競争的な合意にあたるとしても、当該合意が以下の要件を充足する場合には、合意の当事者は免責を受けることができます。

  1. 当該合意が重大かつ確認可能な技術上、効率上又は社会的な便益を直接的に引き起こすこと
  2. 当該合意が競争を妨げ制限し又は歪曲する効果を有しない限り当該合意の当事者は当該便益を合理的に提供することができないこと
  3. 競争への有害な影響が便益と均衡していること
  4. 当該合意商品及びサービスに関する重要な部分についての競争を完全には排除するものではないこと

(2) 支配的地位の濫用

競争法10条は、企業が単独又は共同で支配的地位を濫用することを禁止しており、支配的地位の濫用にあたる行為の例として以下の行為を挙げています。

  1. 直接又は間接に不公正な購入・販売価格その他の不公正な取引条件を取引相手に課すこと
  2. 製品、販売経路又は市場へのアクセス、技術開発、投資を制限・支配することにより消費者を害すること
  3. 特定の企業、グループ、企業部門に対して供給を拒絶すること
  4. 以下の場合に、他の取引相手との間の取引と同等の取引について異なる条件を適用すること
  • 新規参入又は既存の競争相手による拡大若しくは投資を阻害する
  • 支配的地位を有する企業よりも効率性の低い既存の競争相手を市場から排除する又は深刻な損害を与える
  • 支配的地位を有する企業が参加している市場又はその上流若しくは下流の市場において競争相手を害する
  1. 契約の主題とは関係のない慣習に基づく又はその性質に基づく付随的な条件についての他方当事者の同意を契約締結の条件とすること
  2. 競合他社に対する略奪行為
  3. 合理的な商業的理由を有しないにも拘わらず支配的地位にある企業が、競争相手が必要とする供給が十分ではない中間財又は資源を買い占めること

もっとも、支配的な地位にある企業が、合理的な商業的理由をもって行動することや、競合相手の市場参入又は市場行動に対して合理的な商業的対応措置を講じることは禁止されていません。

また、一般的には、マレーシアにおける関連市場のシェアが60%を超える事業者は、支配的地位を有するとされていますが(支配的地位の濫用に関するガイドライン第2条第2項)、支配的地位の判断にあたっては、市場の参入の容易性等の他の要素も考慮されます(同ガイドライン第2第14項)。

4.ミャンマー

ミャンマーの競争法は、2015年2月に公布され、2017年2月より施行されました。その後、2017年10月に商業省より競争法施行規則が施行されています。2018年10月31日に2018年106号通知で競争委員会が設置されています。競争法は、1競争を制限する行為、2独占、3不公正な競争、4一定の事業間の共同行為を規制しており、概要は以下のとおりです。

(1) 目的及び定義

本法は、公平な競争を排除することを目的とした経済活動組織による独占又は価格操作によって生じる不公平を防ぎ消費者を保護すること、国内外の取引及び経済発展における不公平な競争を規制すること、市場での支配的な立場を利用した独占の防止等を目的としています。本法における「競争」とは、商品及びサービスについて、より多くの顧客、シェア及び市場での影響力を獲得するための経済活動における競争であると定義されています。また、「経済活動」とは、製造、分配、購入、販売、輸入、輸出及び交換等の事業又はサービスと定義されており、事業全般が対象に含まれることとなります。

(2) 競争を制限する行為

「競争を制限する行為」は、市場における経済活動組織の競争を減少又は阻害することを目的とした行為であり、競争を制限する合意、市場での支配的立場の濫用及び独占が含まれると定義されています。具体的には競争を制限する合意、支配的立場の利用等が禁止されています。但し、消費者の利益を意図したと認められる一定の場合には、期限を特定した上で例外として認められることがあります。

(3) 独占

市場を独占するとして、以下の行為等が禁止されています。

  1. 商品の購入価格、販売価格又はサービス料を規制すること
  2. 価格統制を目的とした製造またはサービスの制限、購入又は販売過程における機会の制限、事業者が強制的に遵守しなければならない規制を直接的又は間接的に定めること

(4) 不公正な競争

「不公正な競争」とは、国家又は経済活動組織の利益、消費者の利益及び法的に付与されている権利を侵害又は侵害しうる競争を意味すると定義されています。具体的には消費者の混乱を生じさせる行為及び企業秘密の漏洩行為等が禁止されています。

(5) 事業間の共同行為

事業間の共同行為として、事業間の合併、買収、合弁等が規定されています。当該共同行為自体は禁止されないものの、「一定期間、市場での影響力を高める共同行為」及び「独占的又は寡占的な市場を得るために競争を低下させる共同行為」は原則として禁止されています。また、共同行為の市場シェアが競争委員会によって制限されている市場シェアを超えた場合にも、共同行為は認められません。

5.メキシコ

メキシコの独占禁止法(競争法)は、2014年に施行された経済競争に関する連邦法(Ley Federal de Competencia Económica:以下、競争法)となります。競争法の概要は次の通りです。

(1) 目的及び定義

競争法の目的は、自由な市場へのアクセスと経済競争を促進、保護、保証すること、ならびに独占や独占的慣行、競争や市場の効率的な運営の制限を厳しく罰し、排除することにあります。

(2) 管轄機関

管轄機関は、連邦競争委員会(COFECE: Comisión Federal de Competencia Económica)と連邦電気通信機関(IFETEL: Instituto Federal de Telecomunicaciones)の2つが存在します。

連邦電気通信機関が電気通信及び放送分野を担い、連邦競争委員会がそれ以外の分野を担当しています。

(3) 制限される行為

競争法において、特に重要となる制限される行為は、絶対的独占行為、相対的独占行為や企業結合が挙げられます。

1 絶対的独占行為

絶対的独占行為は、競争事業者間で、提供する商品やサービスの供給や価格を共同で取り決め、それを操作することや、政府が行う調達において事前にそれらを取り決める行為(入札談合)や、これらの行為に関する情報交換を行う行為を指します。絶対的独占行為に該当する行為は違法であり、無効となります。絶対的独占的行為を行った場合、事業者の収入の10%に相当する額の罰金が命じられる可能性があります。

2 相対的独占行為

相対的独占行為は、市場を支配する企業がその力を使用して、他者が参入するのを不適切に防止したり、競合する人を排除したりして、価格の上昇や商品やサービスの供給の減少を招く行為を指します。具体的には、競合していない主体間での流通の制限や、抱合せ販売などの条件を課すこと、特定の他者に対する取引の拒絶、特定の事業者からの商品やサービスの取得を拒否するよう勧誘すること、同等の条件にある異なる買い手や売り手に対して、異なる価格や売買条件を設定すること、不可欠な施設や材料の取引拒否又は制限、マージンスクイーズ(川上における利鞘の縮小のことを指し、一つまたは複数の事業者が提供する必要不可欠な供給物の入手価格と、同事業者が同じ供給物を使って生産し、最終消費者に提供する商品またはサービスの価格との間の、既存のマージンを削減すること)などがあります。相対的独占行為に該当する行為は違法ではありますが、無効とはなりません。ただし、相対的独占行為を行った場合、事業者の収入の8%に相当する額の罰金が科される可能性があります。

3 企業結合

企業結合とは、合併、支配権の取得その他の企業等が競争事業者等と合体する一切の行為と広く定義されており、企業結合が企業再編などグループ企業間で行われる場合といった一部の例外を除き、次の基準を満たす場合に届出を行い事前に承認を得ることとされています。

(a) 対象となる取引の価値がUMA日額の1800万倍超

(b) UMA日額の1800万倍超の資産又は売上を有する当事会社の資産又は株式の35%以上の取得

(c) UMA日額の840万倍超の資産又は資本金を取得する場合であって、2つ以上の当事会社が単独又は合算でUMA日額4800万倍超の資産又は売上を有すること。

なお、これらの基準に該当しない場合であっても、自主的な通知を行うことが求められています。

管轄機関は、市場環境への影響を評価し、競争や自由な参入を害さないことを確認し、当該企業結合を認可、条件付、または不認可にする権限が与えられています。

※UMAとは、Unidad de Medida y Actualizaciónという、メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が全国消費者物価指数の結果をもとに毎年発表する経済的基準単位であり、2021年の日額は89.62ペソです。

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、バングラデシュ競争委員会(Bangladesh Competition Commission (BCC))が設立された後、競争法(Competition Act)が2012年に施行されました。

(1) 競争法の規制の概要

1 反競争的合意の禁止

直接的又は間接的に、市場における競争に悪影響を及ぼす、もしくは及ぼすおそれがある、又は、市場において独占若しくは寡占を引き起こす商品・役務の生産、供給、流通、保管又は取得に関する合意又は共謀をしてはならないと規定されています(第15条第1項)。ただし、以下を制限しません(同条第4項)。

  1. 知的財産法に基づいて付与された知的財産権の侵害を制限する又は保護するために、合理的な条件を課すための権利、及び
  2. 契約がもっぱら商品の生産、供給、流通若しくは管理、又は、輸出のためのサービスの提供に関連する範囲で、バングラデシュから商品を輸出するための権利

合意や,同一の若しくは類似した商品の取引又は役務の提供に従事する者又は団体の商慣行又は決定が以下に該当する場合には、市場における競争に悪影響を及ぼすとみなされます(同条第2項)。

  1. 直接的又は間接的に、正常ではない購入価格又は販売価格の決定をする場合、又は、入札談合を含む不正な価格を決定する場合
  2. 生産、供給、市場、技術開発、投資又は役務の提供を制限又は操作する場合
  3. 商品・役務の種類、原産地又は役務の提供元、市場の地理的領域,市場の顧客数又はその他類似の基準に基づいて市場を分割する場合

以下の取決め及び合意が競争に悪影響を及ぼす場合には,反競争的合意とみなされます(同条第3項)。

  1. 抱き合わせ販売 (同項(a))

商品の購入者に、購入の条件として、他の商品を購入すること、又は、販売者、他者若しくは関係する事業者から利益を得ることを要求する契約又は約束すること

      2. 排他的供給契約 (同項(b))

取引の過程で購入者が販売者の商品以外の商品を取得すること又はその他の方法で取引することを何らかの方法で制限する契約

      3. 排他的販売契約 (同項(c))

商品の産出若しくは供給を制限、制約若しくは保留すること、又は、商品の処分若しくは販売のために地域若しくは市場を割り当てる契約

      4. 取引拒絶 (同項(d))

商品の販売者、購入者又はそれらの集団を何らかの方法で制約する契約

      5. 再販売価格維持 (同項(e))

販売者が規定する価格よりも低い価格が設定される場合があることが明確に述べられていない限り、購入者が再販売時に設定する価格を販売者が規定する価格とする条件で商品を販売する契約

2 支配的地位の濫用の禁止 

事業者はその支配的地位を濫用してはならないと規定されています(第16条第1項)。「支配的地位」とは,関連市場で事業者が有する強固な立場を意味し、(a) 関連市場において有力な競争圧力から独立して事業を展開すること、(b) 競争事業者、消費者又は関連市場に対し、自社に有利な影響を及ぼすことと定義されています。

以下に該当する場合は、支配的地位の濫用とみなされます(第16条第2項)。

  1. 商品・役務の購入・販売において、直接的又は間接的に、不公正若しくは差別的な条件を課す場合又は差別的な価格若しくは略奪的な価格を課す場合 (同項(a))。なお、「略奪的な価格」は、競争を排除することを目的として、商品の販売又は役務の提供を原価より安価で提供することと定義されています。
  2. 商品の生産、役務の提供、関連市場、又は、商品・役務に関連する技術的・科学的な開発を制限又は制約し、消費者の利益を損なう場合 (同項(b))
  3. 他者が市場にアクセスできないようにする又はし続ける場合 (同項(c))
  4. 本来的又は商業的利用により契約の主題とは関係のない追加的義務を他の当事者が受け入れることを条件として、契約を締結する場合 (同項(d))、又は
  5. ある関連市場での支配的な地位を利用して、他の関連市場に参入又は他の関連市場を保護する場合 (同項(e))

3 企業結合規制

 商品又は役務市場における競争に悪影響を及ぼす又は及ぼすおそれのある企業結合は禁止されています。ただし、委員会は、審査実施後の申請に基づき,競争に悪影響を及ぼさない又は及ぼすおそれがない企業結合を承認することができ、企業結合審査規則にて、委員会の承認が必要とされる企業結合の要因が規定されます(第21条第1項)。他方で,委員会がいかなる企業結合も競争に悪影響を及ぼす又は及ぼすおそれがあると認めれば,委員会は当該企業結合を承認してはならないと定められています(同条第2項)。

(2) 罰則

 委員会は、必要に応じて調査を行い、反競争的合意又は支配的地位の濫用を認める場合、それらをやめることを命令すること、及び/又は行政制裁金を課すことができます(第20条)。委員会の命令により不利益を受けた者は、不服申立てにより、再調査又は上訴を求めることができます(第29条)。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年4月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

首都圏1都3県を対象に延長されていた緊急事態宣言が、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価が行われた結果、3月21日に解除されました。解除後も、飲食店への営業時間短縮要請(営業時間、対象地域等は知事が判断)、当面7割削減を目標としたテレワークの取組、外出自粛要請、イベントの開催制限の取組は継続されています。

(2) 入国規制

1 検疫の強化

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫法に基づき、日本への上陸が認められないことになります。

また、検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない方は、入国前に、空港内でスマートフォンをご自身の負担でレンタルしていただくことになります。

更に、入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡先が確認されます(水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP))。

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は28,773名です。この内、27,313名が回復し、累計死亡者数は94名となっています。また、非常事態宣言は、5月31日まで延長されています。

3月1日、タイ民間航空局(CAAT)は、スワンナプーム国際空港でのみ国際線の乗り継ぎ/乗り換えを可能とするガイドラインを発表しました(3月1日より有効)。搭乗客は、Fit to Fly(搭乗可能健康証明書)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(陰性証明書)、10万米ドル以上を補償する医療保険への加入を証する書類を準備する必要があります。また、乗り継ぎ/乗り換えの各所要時間は、12時間を超えないことなどが発表されています。

3月23日、バンコク都は、ソンクラン期間(4月10日~15日)のCOVID-19感染拡大防止のための告示を発表しています。水のかけ合い、コンサート、粉の塗り合い、泡パーティーなど、混乱状態に陥る可能性のある公共の場での活動や密着型の活動は控えること、様々な地域の人が集まる宴会やパーティーは避け、長時間の食事や飲酒は控えることなどが求められています。これに違反した者については、2年以下の禁錮もしくは40,000THB以下の罰金またはその両方が科される場合があります。

(2) 4月以降のタイ入国後の隔離期間の短縮

3月26日、タイ保健省は、タイ入国後の隔離期間を14日間から10日間に短縮することを発表しました(COVID-19の変異株が確認されている国からの入国者については、隔離期間短縮の対象外)。4月1日以降、Fit to Flyは不要となり、渡航72時間以内発行のPCR検査結果(陰性証明書)のみが必要となります。隔離期間中は、引き続き2度のPCR検査が実施されます。

また、ワクチンパスポート所持者について、以下のとおり発表がなされています。

・タイ到着以前の期間(14日前~3カ月前)にワクチンパスポートを取得、かつ陰性証明書あり

隔離期間7日間、隔離期間中1度のPCR検査実施

・ワクチンパスポートのみ(陰性証明書なし)

隔離期間7日間、隔離期間中2度のPCR検査実施

3.マレーシア

(1) COVID-19関連規制

3月29日のCOVID-19の新規感染者数は、941人であり、今年に入って初めて1000人を下回りました。アクティブ感染者数は1万4,219人で、累計感染者数は34万2,885人となっています。

3月16日に、セランゴール州、ペナン州、ジョホール州、クランタン州、クアラルンプール市で3月19日から31日まで、条件付き移動制限令(Conditional Movement Control Order:CMCO)を延長することが発表されましたが、3月30日現在、4月1日以降に条件付き移動制限令が延長されるとの政府発表はまだありません。

サバ州Keningau地区における活動制限令(MCO)が4月4日まで延長されることが発表されています。これにより、死亡や自然災害などの緊急事態を除いて、同地区への移動は許可されていません。

(2) 入国規制

 2020年3月18日から、外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能。)。

例外として、以下の外国人の入国が認められます。

1MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者(再入国)

2主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人(いずれも現 地駐在者が対象。国籍は問わない。)

3留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者 

4長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族

5永住者

2020年9月7日から、上記1~5の例外にかかわらず、累積感染者数が15万人を超える国(※2020年9月7日時点で15万人以上の国を指し、米国、インド、ブラジル等23か国。なお、日本は含まれていません。)の国籍者、及び当該国に居住する非マレーシア国籍者等の入国を原則拒否しています。

2020年9月21日から、上記2に該当する者は、対象23か国の国籍者又は当該国に居住する非マレーシア国籍者であっても入国を許可しています。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。COVID-19関連の規制ではなく、クーデター関連の規制として、一部の地区へ戒厳令が出されたことに伴う19時~5時の外出禁止令、5名以上の集会禁止等が国軍から出されています。これに対してCRPHからも徴税の半年間停止、電気代支払停止等の法令が出されています。

(2) 入国規制

 3月に一便ANAの特別便が飛び、4月1日にも飛ぶ予定です。現在、CDMの関係で空港で燃料補給が出来ないことやインターネット遮断等の影響から飛行機の就航数が非常に減っています。マレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は今後の日本からの救援便に日本人搭乗枠が認められるか次第となります。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19新規感染確定者数は、2月以降、全国的に減少の傾向にあり、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月1日の週には、最も深刻な赤を示す州が0州になり、3月29日の週には緑の州が7州に増えるなど、状況は改善の傾向を見せています。ただ、緑から黄色、黄色から橙と後退する州があるのも事実です。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われており、一部の州においては、セマナサンタ(イースター)休暇中には、ビーチや博物館、美術館の閉鎖や利用規制など、対策の強化を図ることが発表されています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、4月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、政府は、グアテマラ、ベリーズとの国境においても、COVID-19の感染拡大を受け、3月19日から4月21日までの間、陸路での不要不急の移動を制限することを発表しました。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府の発表によると、3月29日に新型コロナウイルスの感染が新たに確認されたのは5,181人で、1日の新規感染者数としては過去最多でした。バングラデシュ政府は同日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、18項目の新たな行動規制を発表しました。なお、この行動規制はすでに全国で適用されています。今後、関係省庁が個別で更に追加の対策を講じる可能性があります。

今回発表された18項目は以下のとおりです。

  1. あらゆる種類の集会(社会的、政治的、宗教、その他)は制限される。感染率の高い地域における全ての集会は禁止される。結婚式、誕生日を含む社会的集まりは推奨されない。
  2. モスクを含む全ての宗教施設において、適切な衛生対策を行うこと。
  3. 観光、娯楽施設、映画館、劇場における集会は制限される。また、あらゆる類の催事は制限される。
  4. 公共交通機関は、定員の50%を超えた場合は運行することができず、衛生対策を実施しなくてはならない。
  5. 感染のリスクが高い地域において、県をまたぐ交通移動は制限され、必要があれば運行は停止される。
  6. 外国からの到着者は、14日間の制度的な隔離(自己負担によるホテル滞在)を行わなくてはならない。
  7. 日用品の販売は、衛生ガイドラインを守った開放的な場所で行わなければならない。薬局は衛生対策を確実に行うこと。
  8. 医療機関では、マスク着用を含む衛生対策を実行すること。
  9. ショッピングモールにおいては、売り手や買い手は適切な衛生対策を実施すること。
  10. すべての教育機関(就学前、初等、マドラサ、中等、高等、大学)やコーチングセンターは引き続き閉鎖する。
  11. 不要不急の外出や集会を禁止する。緊急の場合を除き、夜10時以降の外出は規制される。
  12. 外出の際は、マスク着用を含む衛生対策を守らなくてはならない。マスクを着用しない、もしくは衛生対策を守らない場合は法的措置がとられる。
  13. 新型コロナウイルス感染者や感染症状のある者は隔離されなくてはならない。濃厚接触者も必ず隔離されること。
  14. 緊急サービス以外のすべての政府や民間の事務所、組織、工場は、50%の人員で運営・操業しなくてはいけない。妊婦、病気の者、55歳以上の職員や従業員は自宅に留まりリモート勤務すること。
  15. 集会、セミナー、研修、ワークショップは可能な限りオンラインで実施すること。
  16. 対面式で行う公的な試験は、適切な衛生対策を実施すること。
  17. ホテルやレストランは、収容人数の50%を超えた場合、入場を制限しなくてはならない。
  18. 職場でのマスク着用を義務とする。また職場において衛生対策を必ず行うこと。

上記6については、3月30日に、新たに以下の内容の通知が出されました(3月31日から有効)。

ヨーロッパ及び英国からの旅行者は、バングラデシュ政府の施設又は指定したホテルにて、自己負担で14日間の制度的な隔離を行い、隔離期間後のPCR検査で陰性が確認された後、隔離から解放されます。それ以外の地域からの旅行者については、到着時にCOVID-19の症状がない場合は、住居での14日間の隔離が求められ、COVID-19の症状がみられた場合は、自己負担にて、政府の施設又は指定したホテルにて、14日間の制度的な隔離を行わなければなりません。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国、クウェート

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国の雇用契約及び就業規則の概要と法的留意点

1.日本

(1) 労働契約に関する主な法律

  1. 労働基準法: 労働関係を規律する最も基本的な法律です。罰則を設けて最低労働基準を定めることにより当事者に合理的な行動による労働条件の決定又は変更を促すことを目的としています。
  2. 民法: 「雇用契約」として、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約すること」と定義されています(民法第623条)。
  3. 労働契約法: 労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とし、平成20年に施行されました。「労働契約」は、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意すること」と規定されています(労働契約法第6条)。民法で規定されている「雇用契約」と違い、使用者の指揮命令のもとに行われる労務を前提としています。

一般的に、使用者と労働者が結ぶ契約については、多くの場合、「労働契約」を指すため、本項では、「労働契約」について述べます。

(2) 労働契約の基本原則

労働契約は、労働契約法に基づく使用者と労働者のルールで、以下の「労働契約5原則」がベースとなっています(労働契約法第3条)。

  1. 労働契約は、労使対等の立場における合意に基づいて締結・変更する(同条第1項)。
  2. 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態によって均衡を考慮しつつ締結し、又は変更する(同条第2項)。
  3. 労働契約は、労働者及び使用者が、仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更する(同条第3項)。
  4. 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない(同条第4項)。
  5. 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用してはならない(同条第5項)。

(3) 労働契約の締結

1 労働条件の明示

労働契約を結ぶときには、使用者が労働者に労働条件を明示することが必要です(労働基準法第15条第1項)。労働契約は、労使が合意すれば口約束でも成立しますが、特に重要な項目については、書面を交付するか電子メールの送信等の方法により明示する必要があると定められております(労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条、同条第4項)。労働契約法においても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると規定しています(労働契約法第4条第2項)。

なお、労働者と使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が、合理的な内容の就業規則を、労働者に周知させていた場合には、就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件となります(労働契約法第7条)。つまり、適法な就業規則を定めて労働者に書面の交付等により周知していた場合は、労働条件を、別途文書等で明示する必要はありません。

労働条件の絶対的記載事項(労働基準法施行規則第5条第1項)
(a) 契約期間 (同項第1号)(*1)
(b) 業務内容(場所、仕事の内容)(同項第1号の3)
(c) 勤務時間及び休日
(始業時間及び終業時間、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、勤務のシフト制等)(同項第2号)
(d) 賃金の支払い
(賃金の決定、計算と支払いの方法、締日と支払いの時期)(同項第3号)
(e) 退職(解雇の事由を含む)(*2)(同項第4号)

*1 契約期間
一般的に、正社員は長期雇用を前提として特に期間を定めず、アルバイトやパートタイムなどは
有期労働契約として期間の定めをもうけることが多いです。労働者に契約期間を明示せずに
雇用した場合は、「期間の定めなし」と解されるため、一定の期間が過ぎたあとに
「会社都合により契約終了」とはできないため注意が必要です。
契約期間に定めのある労働契約の期間は、原則として上限は3年です。なお、専門的な知識等を有する労働者、
満60歳以上の労働者との労働契約は、上限が5年とされています(労働基準法14条第1項)。
また、期間の定めがある契約の更新について、更新があるかどうか、更新する場合の基準等を明示する必要が
あります。更新の条件を満たしているにも関わらず契約更新しない場合は、トラブルになるケースも
ありますので、明確な基準を明示することが肝要です。

*2 退職(解雇の事由を含む)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利を濫用したものとして
無効となります(労働契約法第16条)。契約期間に定めのある労働者については、やむを得ない事由がある場合
でなければ、契約期間の満了前に労働者を解雇することができません(労働契約法17条第1項)。

上記(a)から(e)の項目に加え、以下に該当する場合は、関連する事項を定めなければなりません(労働基準法施行規則第5条)。

(a) 退職手当の定め(退職手当を除く)をする場合は、適用範囲、計算方法、支払方法や時期等(同項第4号の2)
(b) 臨時の賃金等及び最低賃金額を定める場合(同項第5号)
(c) 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合(同項第6号)
(d) 安全及び衛生に関する定めをする場合(同項第7号)
(e) 職業訓練に関する定めをする場合(同項第8号)
(f) 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する場合(同項第9号)
(g) 表彰及び制裁の定めをする場合(同項第10号)
(h) 休職に関する事項(同項第11号)

2 労働契約の変更

 労働者と使用者が合意すれば、労働契約を変更することができますが(労働契約法第8条)、合意であっても、就業規則に定める労働条件よりも下回ることはできません(労働契約法第12条)。

3 労働契約の禁止事項

労働契約を結ぶときに、会社が契約に含めてはならない事項も定められています。

  • 労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと(労働基準法第16条)。例えば、「1年未満で会社を退職した場合は罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などと決めてはなりません。これは事前に賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者の故意又は過失で、会社に損害を与えた場合の損害賠償請求を制限するものではありません。
  • 労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から天引きする形で返済させること(労働基準法第17条)。労働者が会社からの借金のために、労働を余儀なくされることを防止するためです。
  • 労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること(労働基準法第18条第1項)。ただし、労働組合又は労働組合がないときは労働者の過半数代表との書面による協定及び行政官庁への届け出のほか、一定の要件を満たした場合は、認められています(同条第2項)。

4 採用内定について

採用内定により解約留保権付の労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定取消したる解約権の行使についても解雇と同様に解雇権濫用法理(労働契約法第16条)が適用されています。

従って、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取消しは無効となります(労働契約法第16条)。内定取消しが認められる場合には、通常の解雇と同様、解雇の予告(労働基準法第20条)、退職時等の証明(労働基準法第22条)などの規定が適用されます。

(4) 就業規則

常時10人以上の労働者を雇用している会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければなりません(労働基準法第89条)。就業規則の内容は法令や労働協約に反してはなりません(労働基準法第92条)。また、就業規則の作成・変更をする際には必ず労働者側(労働組合、又は組合がなければ労働者の過半数代表)の意見を聴かなければならないと定められています(労働基準法第90条第1項)。

上記(a)~(c)に加え、以下に該当する場合は、関連事項を定めなければなりません(労働基準法第89条)。

2.タイ

(1) 雇用契約

  1. 雇用契約とは

雇用契約とは、書面によるか口頭によるかを問わず、労働者が使用者のために労働することに合意し、使用者が労働の期間に対して賃金を支払うことに合意する契約をいいます(タイ労働者保護法 (Labour Protection Act 以下、「法」といいます) 第5条)。雇用契約は必ずしも書面によりなされる必要はないため、使用者に雇用契約書の作成義務はありません。しかし、雇用契約の内容や条件を明確化し、後の労働紛争を未然に防止するためにも、雇用契約書を作成しておくべきであるといえます。

     2. 記載すべき事項

会社において既に就業規則が制定されている場合には、細かな規則や規律、罰則等の詳細内容を雇用契約書に記載しなくても、「記載のない部分については、就業規則による」とすることができます。しかし、就業規則がまだ制定されていない場合には、会社として明確にしておきたい事項については、全て詳細に記載しておくべきであるといえます。

 以下では、雇用契約書作成の際に、最低限記載しておくべきと考えられる事項について、説明します。

     3. 雇用期間

雇用期間の定めがある場合には、その始期、終期を記載する必要があります。また、雇用期間の定めがない場合でも、雇用期間の始期を明確に記載しておくべきでしょう。

試用期間を設ける場合には、試用期間の終期をいつまでとするのかについて、記載すべきでしょう。法上、120 日以上継続して勤務した従業員を解雇する場合、会社は当該従業員に対して解雇補償金を支払わなければならないとされています(法118 条)。そのため、解雇補償金の支払義務が発生する120日より前の日(試用開始から119日)を試用期間の終期として設定している会社が多いように思われます。もっとも、試用期間中の解雇の場合でも、一賃金支払期間前までに、書面による事前の解雇通知を行う必要がある点には注意が必要です(法17 条2項)。

     4. 賃金、就業日、労働時間、業務内容、労働場所

賃金や、就業日、労働時間(休憩時間の定めを含む)について記載する必要があります。業務内容については具体的に明記するとともに、将来的な業務の変更も考慮し、包括的な条項も入れておくべきです。

従業員が遅刻した場合の賃金の取扱いについて定めがある場合には、その旨も記載しておくべきでしょう。また、労働場所について2か所以上の場所での労働が予定されているような場合には、その旨も記載しておくべきでしょう。

     5. その他の事項

 会社として従業員に必ず守らせたい規律事項については、雇用契約書に記載し、雇用契約締結の際に説明することが望ましいでしょう。また、従業員を解雇する際の会社による事前通知の期間や、従業員が退職する際の会社への事前通知の期間、懲戒解雇となる条件等についても、従業員に理解してもらうために記載しておくべきでしょう。

     6. 作成言語

雇用契約書の作成言語は、当事者間で記載内容を理解できる言語であれば何語で作成しても問題ありません。会社内での共通言語として英語が指定され、当該従業員が英語を十分理解できる場合には、英語にて雇用契約書を作成しても問題ないでしょう。しかし、記載内容の解釈に齟齬が生じる場合もあるため、当該従業員の母国語にて作成するのがより望ましいでしょう。

雇用契約書を複数の言語で作成する場合には、どの言語が優先言語となるか、明記すべきでしょう。

(2) 就業規則

  1. 就業規則の作成

 タイにおいては、会社が10名以上の従業員を雇用している場合、会社はタイ語での就業規則を作成するよう義務付けられています。そして、会社は従業員の数が10名以上となった日から15日以内にその就業規則を掲示し、就業規則の写しを常時事業所に備え付ける必要があります。さらに、会社は従業員が容易に就業規則を閲覧・入手できるよう、就業規則を事業所に公開する等の対応をとる必要があります(法108条)。

 従業員数が10名未満の場合、法的には、会社に就業規則を作成する義務はありません。しかし、労使間での紛争を未然に防ぐためにも、就業規則を作成しておくことが望ましいでしょう。

      2. 就業規則の必要的記載事項

就業規則には、少なくとも以下の8つの事項について、その詳細が記載されなければならないと定められています(法108条1項)。

  1. 就業日、所定労働時間、休憩時間
  2. 休日、休日取得に関する規則
  3. 時間外労働、休日労働に関する規則
  4. 賃金、時間外労働手当、休日労働手当、休日時間外労働手当の支払期日および支払場所
  5. 休暇日、休暇取得に関する規則
  6. 規律、罰則
  7. 苦情申立て
  8. 解雇、解雇補償金、特別解雇補償金
  9. 就業規則作成時の注意点

就業規則は、会社における従業員の行動規範となるものであるため、会社の事業運営に応じた就業規則を作成する必要があります。雛形の安易な流用は、後の紛争リスクを高めることにつながります。休日に関する定めや、休暇取得時のルール、時間外労働・休日労働手当の定め等、それぞれの会社に応じた内容で、明確に、従業員に理解し易い文章で作成することが重要です。

また、懲戒処分に関する事項については、就業規則に定めた規律違反行為をその処分の対象とするため、どのような行為が規律違反行為に該当し、懲戒処分の対象となるのか、詳細に定めておく必要があります。

さらに、就業規則については、従業員がその内容を正しく理解していることが前提となります。したがって、全ての従業員が就業規則の内容を正しく理解できる言語で作成すべきです。上述のとおり、従業員10名以上の会社ではタイ語での就業規則作成が義務付けられていますが、日系企業の場合には、日本人の従業員も理解できるよう、日本語訳又は英語訳を作成しておくことが望ましいでしょう(ただし、タイ語版のものが効力を有しますので注意が必要です)。

  1. 就業規則の改訂

就業規則の改訂に関して、会社が一方的に従業員にとって不利な変更をすることはできず、原則として従業員からの同意が必要となります。不利益変更について従業員から同意を得ることは難しいと考えられるため、就業規則作成時にはその点を踏まえ、会社の将来の事業展開等も考慮に入れたものを作成する必要があります。

3.マレーシア

(1) 労働契約

  1. 契約方式

雇用法は、1月を超える期間を特定した雇用契約及び特定の作業に従事する雇用契約で1月を超える(可能性のあるものも含む)ものについては、雇用契約書の作成を義務付けていますが、上記以外の雇用契約に関しては契約書の作成は義務ではありません。そのため、基本的には、日本と同様に口頭の合意で労働契約が成立します。もっとも、法律上雇用契約書の作成義務を負わない場合においても、後日の紛争を避けるために、実務上雇用契約書を作成しておくのが望ましいと考えられます。

      2. 通知事項

雇用規則(Employment Regulations 1957)により、使用者は労働者に対して、労働者の名前及び身分証明書番号、業務内容及び役職、賃金、手当の内容及び額等の一定の事項を通知した上で、情報を保管しなければならないとされています。

(2) 就業規則

 マレーシアでは、法律上の就業規則作成義務はなく、作成は任意となっています。もっとも、工場など多数の労働者を雇用する会社等、多くの会社において、労使関係の安定を目指すため就業規則が作成されているのが実情です。

 就業規則に法的な拘束力を持たせるためには、就業規則記載の労働条件につき労働者との間で合意が成立していると言えることが必要となるため、雇用契約書において就業規則記載の労働条件が適用される旨を記載すること、配布などの方法により就業規則の内容を認識させることが必要となります。

4.ミャンマー

(1) 雇用契約書

 雇用及び技術向上法上、会社は、政府における常勤労働者、研修者及び試用期間中の者を除き、労働者の雇用開始後30日以内に労働者と雇用契約を締結しなければなりません。また、雇用契約締結後、当該契約書の写しを管轄労働事務所に提出し、承認を得る必要があります。さらに、単に雇用契約を締結するのみならず、以下の表に記載している事項を雇用契約書に記載する必要があります。

1職種、2試用期間、3給与、4勤務地、5契約期間、⑥労働時間、⑦休暇及び休日、⑧時間外労働、
⑨勤務中の食事の手配、⑩住宅施設、⑪医療手当、⑫仕事及び出張における車の手配、⑬労働者が遵守すべき規則、
⑭研修参加後に継続して勤務しなければならない期間、⑮退職及び解雇、⑯期間満了時の対応、
⑰契約において規定されている遵守すべき義務、⑱合意退職、⑲その他、⑳契約書の規定の修正及び追記の方法、㉑雑則

もっとも、実務上、労働・入国管理・人口省が2018年8月28日に公表した雇用契約書の雛形を使用することが一般的であり、当該雛形を修正した場合、労働事務所の担当官によっては承認を得るのが難しい場合があります。なお、公表されている雛形はミャンマー語版のみであり、工場での労働者を想定している内容となっています。

また、雇用契約書の言語に関する法的規制は存在しません。勿論、当事者が理解できる言語を用いる必要があるため、ミャンマー語以外を理解しない労働者を雇用する場合には、ミャンマー語の雇用契約書を用いる必要がありますが、英語や日本語を理解する労働者の場合には当該言語を用いたとしても法律上は問題ありません。しかし、この点についても、労働事務所の職員がミャンマー語以外の言語を解さないことが多いため、事実上ミャンマー語版の提出も強制されることが多いといえます。

(2) 就業規則

 ミャンマーにおいては、一定人数以上を雇用したとしても就業規則の作成義務などは課せられておらず、法律上は就業規則について何ら規定されていません。

 しかし、上記のとおり、雇用契約書については雛形を大きく修正することが難しいため、会社独自の服務規律等を就業規則に含めることが一般的であり、一定人数以上を雇用する企業においては従業員の管理を容易にするために作成することが多いです。もっとも、法令上は就業規則について規定されていないため、作成すれば当然に全員に効力を生じるものではなく、作成した内容について従業員から同意を得る必要があります。

5.メキシコ

(1) 雇用契約

1 雇用契約の種類

無期雇用契約のほか、業務の性質のため、あるいは、一時的に他の労働者の代替のため(その原因に限定はありませんが、産休や休職に入った労働者の代わりに雇用する場合などにも用いることができます。)、有期雇用契約を締結することもできます。また、季節的な活動や、週、月、年の全期間にわたってサービスの提供を必要としない活動の場合には、労務提供期間を限定することも可能です。この条件下での労働者は無期雇用契約の下で雇用されている労働者と同じ権利を有することになります。有期雇用とする場合はいずれの場合でも、その旨を書面にて合意しなければならず、これがない場合は無期雇用契約とみなされます。

2 書面化の要否

労働条件は、適用される労働協約がない場合には、書面に記載することが義務付けられています。そのため、一般的には雇用契約書を作成することになります。雇用契約書は労働者用、使用者用の2部を作成する必要があります。

3 雇用条件記載書面(雇用契約書)の記載事項

連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)は、 (i)労働者及び使用者の氏名、国籍、性別、婚姻の有無、住民登録番号(CURP)、納税者登録番号(RFC)、及び住所、(ii)雇用形態(特定業務、季節的業務、有期又は無期等)や試用期間がある場合の期間、(iii)業務内容、(iv)業務実施場所、(v)1日の就業時間、(vi)給与額及び形態、(vii)給与支払日及び支払場所、(viii)労働者が受ける研修及び訓練等に関する内容、(ix)休業日、休暇など、労働者と雇用主との間で合意したその他の労働条件、(x)労働者の死亡等により当該労働者の給与および手当の支払いを受ける者の指定、を雇用契約などの雇用条件記載書面に記載しなければならないとしています。

また、テレワーク(連絡及び指揮のために主として情報通信の技術を用いて、使用者の事業所以外の場所で労務の提供を行う労働形態)を行う労働者で、労働時間全体の40%超をテレワークの形態で実施する場合、上記の他、労働者に提供される機器等(安全衛生義務に関する物を含む)、テレワークに関連し労働者が負担した費用の支払いについて、使用者がテレワーク下の労働者に支払う内容と金額、当事者間の連絡及び監督の仕組みスケジュール等、その他テレワークに関し当事者が合意する事項も記載が必要となります。

4 最低給付

使用者は次の最低給付を遵守し、労働者に提供しなければなりません。(i)最低賃金額以上の給与、(ii)法定有給休暇、(iii)少なくとも給与額25%の有給休暇手当、(iv)少なくとも15日分の給与額のボーナス(Aguinaldo)(支給対象年の勤務期間が年の全日とならない場合は、勤務日数に応じた額)(v)利益分配金(PTU)、(vi)社会保障

(2) 就業規則

1 作成義務と効果

連邦労働法では、就業規則の制定は義務付けられてはいません。しかし、就業規則を定めた場合には、使用者と労働者の義務を定めるものとして位置づけられており、就業規則の内容や、使用者が就業規則に違反した場合の罰則などが規定されています。

2 記載しなければならない事項

就業規則を制定する場合、次の事項を含める必要があります。(i)出退勤時間と食事時間を含む休憩時間、(ii)就業開始および終了の時刻と場所、(iii)就業場所や業務に使用する機械、工具などを清掃する日時、(iv)給与日および給与の支払場所、(v)労働者のために設けられた席等の使用規則、(vi)労災予防のための規則や応急措置の手順、(vii)未成年が就業してはならない危険かつ有害な業務および妊娠中の労働者が受けるべき保護、(viii)労働者が受けるべき健康診断の方法と時期、(ix)労働者が受けるべき許可等(x)懲戒とその適用手順、(xi)その他企業活動に鑑みて、安全で秩序ある職場の実現のために必要かつ適切な規則

また、テレワークを採用する場合であって、労働協約を締結していない使用者は、就業規則において、テレワーク労働者と連絡を確保する仕組みなどを規定しなければならないとされています。

3 届出義務

就業規則の制定においては、労働者と使用者の代表者によって構成される委員会によって策定し、両当事者が合意した場合は、署名後8日以内に連邦労働調停登録センター(Centro Federal de Conciliación y Registro Laboral)に届け出なければなりません。就業規則は連邦労働調停登録センターへの届出の日より有効となり、使用者は労働者に写しを配布し、また事業所内の誰もが閲覧できる場所に掲示する必要があります。

なお、届出先となる連邦労働調停登録センターは2019年5月の改正労働法によって新設された機関であり、同センターによる運用が開始されるまではこれまでの調停仲裁委員会(Junta de Conciliación y Arbitraje)や労働福祉省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)が担うこととなります。同センターは同改正法の施行から2年以内に登録業務を開始することとされており、2020年11月より、カンペチェ州、チアパス州、ドゥランゴ州、メキシコ州、サンルイスポトシ州、タバスコ州、サカテカス州、イダルゴ州(連邦レベルのみ)の8州において開始しています。今後、アグアスカリエンテス、グアナファト、ケレタロを含む13州が第2期として2021年10月に、メキシコシティなど残る11州が第3期として2022年5月に開始される予定です。

6.バングラデシュ

(1) 労働契約

労働者の雇用にあたり、使用者は、採用通知書、写真つき身分証明書、サービスブック、雇用登録、チケット・カードを作成しなければなりません。このうち、採用通知書が労働契約書に類似しており、採用通知書の必要記載事項は以下の通りです(労働規則第19条(4))。

採用通知書に記載しなければならない事項
1) 労働者の氏名、2) 両親および配偶者の氏名、3) 住所、4) 所属、5) 職種、6) 入社日、7) 労働者区分、
8) 賃金または給与体系(昇給率などがあれば)、9) 手当(住居手当、医療手当、教育手当など)、
10) 採用条件・就業規則・労働法を遵守する旨

(2) 就業規則(Service Rule)

就業規則の作成は義務ではありません。使用者が、就業規則を作成する場合は、労働者に対し、労働法の規定より厳しい規定は認められません。使用者は就業規則を作成し、労働規則で定められている手続きに従い、労働者または労働組合から意見聴取をしたうえで必要に応じて変更し、検査官より承認を得る必要があります(労働規則第4条)。就業規則に記載すべき事項は以下の通りです(別紙7(Form1))。

就業規則(Service Rule)に記載しなければならない事項
1) 労働者区分、2) 労働時間および休暇、3) 休暇の申請手続きおよび条件、
4) 職場の閉鎖および再開の時期、業務の一時停止に関する使用者および労働者の権利と責務、
5) 一時解雇の手続きおよび補償、6) 人員整理の手続きおよび補償、
7) 労働者の心身障害の就労不能による退職の手続きおよび補償、8) 雇用終了の通知・条件・手続き・補償、
9) 不正行為・停職の条件および補償、10) 定年退職の手続きと退職金、11)不測の事態による工場閉鎖が生じた場合の責任、
12) 死亡給付金と手続き、13) 積立基金設立の手続き、14) 労働者の企業利益参加および福祉基金の設立、15) 医療給付、
16) グループ保険の手続き、17) 昇進規程、18) 年収および昇給、19) 苦情処理手順、20) 罰金の手続き、
21) 請負業者による業務(あれば)、22) 見習い労働者の採用手続き、23) その他関連事項
 

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Newsletterの記載内容は2021年3月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

2月7日までを対象期間とし、11都府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県、栃木県)を対象に出されていた緊急事態宣言が、栃木県を除き、3月7日まで延長されました。今回の緊急事態宣言は、社会経済活動を幅広く止めるものではなく、具体的には、飲食を伴うものを中心として対策が講じられています。飲食店に対する営業時間短縮要請を行うと共に、外出自粛の要請、テレワークの推進などが行われています。(新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。加えて、検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。(水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は25,692名です。この内、24,542名が回復し、現在医療機関で治療中の者は1,067名となっています。また、非常事態宣言は、2021年3月31日まで延長されています。

 2月22日、タイ政府は、COVID-19の感染拡大を防ぐために、感染状況に応じたゾーニングに関する措置を発表しています。規制の強い順に以下のようなゾーニングとなります。

管理区域:バンコク、ノンタブリ、パトゥムタニ、サムットプラカーン等を含む、合計8都県

高監視区域:カンチャナブリ、チョンブリ、アユタヤ、ラヨーン等を含む、合計14県

監視区域:その他の合計54県

 2月23日、バンコク都は、規制緩和措置を発表しています。この規制緩和措置により、飲食店、フードコート等、午前6時から午後11まで店内での飲食が可能となっています。また、店内でのアルコールの提供も可能となりました。パブやバーなども午後11まで営業可能となっています。

(2) 入国許可証(COE)の新登録システム

 2021年1月以降のタイ入国に関するCOEの申請について、新しいCOE申請システムが運用されています。手続きの流れは以下のとおりとなります。

  1. ビザ申請(再入国許可をすでに所持している場合は不要)
  2. COE新システムよりCOE申請
  3. COE登録の承認後、医療保険、航空券及びASQホテル予約確認書をオンラインシステムにて登録
  4. COE発行後、オンラインシステムよりCOEをダウンロード
  5. Fit to Fly(英文)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(英文)を用意

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

1 移動制限

2月19日から同年3月4日の間、State of Johore、State of Penang、State of Selangor、Federal Territory of Kuala Lumpurを対象に規則に基づき移動制限が定められています。

2 条件付き移動制限

2月19日から3月4日の間、State of Kedah、State of Kelantan、State of Malacca、State of Negeri Sembilan、State of Pahang、State of Perak、State of Sabah、State of Terengganu、Federal Territory of Putrajaya、Federal Territory of Labuanを対象に条件付き移動制限が定められています。

3 移動条件

前記1及び2の規則の対象となる地域は、移動が制限されるため、感染地域内のある場所から別の場所への又はある感染地域から別の感染地域への移動は禁止されます。ただし、以下の場合に定められた条件を遵守して移動をすることは認められています。

  1. 食品、医薬品、栄養補助食品、又は日用品を供給又は配達する場合

権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

       2. ヘルスケア又は医療サービスを受ける場合

住んでいる州内に利用可能なヘルスケア又は医療サービスがなければ一番近い州へ移動することは       認められる

       3. 働く場合

権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

      4. 公務又は司法上の業務を遂行する場合

権限を与えられた公務員からの要求を受けた場合、雇用主からの承認書(authorization letter)を提出すること

      5. 自然災害により影響を受けた人に人道援助を提供する場合

ⅰ.権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

ⅱ.関係当局の指示に従い、他の者を同行させることができる。

      6. 学習機関での学習に参加する、又は学習機関における義務を遂行するため

権限を与えられた公務員の要求に応じて必要な証拠を提供すること

なお、関係当局の指示に従い居住州内での移動が許可されます。

(2) 入国手続

1 出国前

  • アプリMySejahteraをダウンロードし、健康宣言を記入する
  • PCR検査(スワブ検査)を出国3日以内に受検する(任意)

2 到着時

  • アプリMySejahteraで「旅行者」用のQRコードを読み取る
  • 体温測定、健康状態の確認の実施

3 到着後

体温測定、健康状態の結果及び出国前のPCR検査(スワブ検査)結果の有無により、扱いが異なります。

(a) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がある場合

  • 7日間の隔離施設入所
  • 5日目のPCR検査(スワブ検査)の受検
  • 14日目までのセルフモニタリング

(b) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がない場合

  • PCR検査(スワブ検査)の受検
  • 10日間の隔離施設入所
  • 8日目のPCR検査(スワブ検査)の受検
  • 14日目までのセルフモニタリング

(c) 症状があった場合

  • 症状のある旅行者への措置

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

2月1日に発生したクーデターの影響でCOVID-19感染の有無を確認する検査が滞っています。COVID-19関連の規制ではなく、クーデター関連の規制として、20時から4時の外出禁止令、5名以上の集会禁止、さらには刑法等の複数の法改正がデモや不服従運動の取り締まりのために行われています。

(2) 入国規制

 1月までは救援便に日本人の搭乗枠があったものの、2月に入ってからは19日の便までANA便は欠航となりました。19日及び26日の便は飛ぶことになったものの、18日の成田→ヤンゴン便への日本人の搭乗枠はありませんでした。現在もマレーシアやシンガポール等を経由する形で直行便以外にも帰国する方法はあるものの、ミャンマーへの入国は今後の日本からの救援便に日本人搭乗枠が認められるか次第となります。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19新規感染確定者数は、2月に入り全国的に減少の傾向に転じ、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、2月15日の週には、赤が前回の13州から2州になるなど、状況は改善の傾向を見せています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、各州において、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、2月19日に3月21日までの延長が発表されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、メキシコにおいては、空路による出入国に際し、体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ内務省が発表した2020年9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国のテレワーク導入に関する法的留意点

1.日本

 厚生労働省では、テレワークの形態として、1在宅勤務(労働者の自宅で業務を行う)、2サテライトオフィス勤務(労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用する)、3モバイル勤務(ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行う)、と分類し、労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働基準関係法令が適用されます。

また、厚生労働省は、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を策定しており、同ガイドラインがテレワーク導入における労働基準関係法令を適用する際の法的留意点を説明しています。

(1) 労働条件の明示

使用者は、労働契約を締結する際、労働者に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければなりません(労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条第1項第1の3号)。労働者に対し、就労の開始時にテレワークを行わせることとする場合には、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示しなければなりません。また、労働契約締結後にテレワークを導入する場合には、労働条件の変更となります。労働条件を変更する場合は、テレワークを導入する際の労働条件を明示し、使用者と労働者の間での個別の合意が必要です(労働契約法第8条)。

なお、使用者は、個別の合意によらなくとも、就業規則に就業の場所を定めており、かつテレワーク導入に関して労働条件である就業の場所が変更される場合には、就業規則の変更により労働条件を変更することが可能です。就業規則を変更する場合、使用者は変更した就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出て(労働基準法第89条第1号)、かつ書面の交付やパソコン等の電子機器の設置による公開などの方法(労働基準法施行規則第52条の2)により就業規則を周知させなければならなりません(労働基準法第106条第1項)。

もっとも、就業規則に就業の場所として「会社、その他会社が指定する場所」というように柔軟に定めていた場合は、テレワークの導入により労働条件が変更されたとはいえないので、就業の場所については個別の合意及び就業規則の変更は不要となります(テレワーク導入に伴い就業の場所以外にも労働条件に変更点がある場合は、個別合意や就業規則の変更が必要となります)。

(2) 労働時間制度

使用者は、適切な労務管理のために、労働時間の管理を行う責任があります。テレワークの導入に伴い始業や終業の時刻の変更が行われることがある場合、労働条件の変更となるため使用者は労働者に変更後の始終業時刻を明示し、両者の間で合意することが必要です。始終業時刻について、就業規則で定めている使用者は、当該変更について就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長へ届出て、労働者に変更後の就業規則を周知させなければなりません。

1 中抜け時間

一定程度労働者が業務から離れる中抜け時間について、使用者が業務の指示をしないこととし、労働者が労働から離れ、当該時間を自由に利用することが保障されている場合、(i) 休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じ、始業時間を繰り上げる又は終業時間を繰り下げる、(ii) 時間単位の年次有給休暇(5日以内に限る)として扱うこと、が可能です。時間単位の年次有給休暇(5日以内に限る)を与える場合には、労使協定の締結が必要です(労働基準法第39条第4項)。

2 通勤時間や出張旅行中の移動時間中のテレワーク

使用者の明示又は黙示の指揮命令下で行われるものについては労働時間に該当します。

3 勤務時間の一部でテレワークを行う際の移動時間

使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じており、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、労働時間に該当します。

4 みなし労働時間制

労働時間の把握ができない場合、みなし労働時間制(労働基準法第38条の2)も利用できますが、以下の要件を満たす必要があります。

  • テレワークが自宅等会社以外の場所において行われること
  • パソコンが使用者の指示で常時通信可能な状態となっていないこと
  • 作業が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

 その他、テレワークにおけるフレックスタイム制の活用や、裁量労働制の対象となる労働者のテレワークも可能ですが、使用者は各労働者の労働時間や勤務状況を把握し、適正な労働時間管理を行う責務を有します。

5 休憩時間の取り扱い

労働基準法第34条第2項では、原則として休憩時間を労働者に一斉に付与することを規定していますが、テレワークを行う労働者について、労使協定により、一斉付与の原則を適用除外とすることが可能です(労働基準法第34条第2項但書)。また、労使の合意により、これ以外の休憩時間を任意に設定することも可能です(労働契約法第8条)。

6 時間外・休日労働の労働時間管理について

テレワークにおける時間外労働又は休日出勤は、会社における勤務と同様、時間外労働・休日出勤に関する協定(36協定)の締結、届出(労働基準法第36条第1項)及び割増賃金の支払いが必要です(労働基準法第37条第1項)。また、深夜に労働した場合は、深夜労働にかかる割増賃金の支払いが必要です(労働基準法第37条第4項)。

(3) 賃金制度、社内教育の取扱い

 賃金制度について、会社で勤務する労働者と異なる制度を用いるのであれば、その取扱い内容について就業規則を作成又は変更し、届け出なければなりません(労働基準法第89条第2号)。また、テレワークを行う労働者に社内教育や研修制度に関する定めをする場合は、就業規則に規定しなければなりません(労働基準法第89条第7号)。

(4) テレワークで要する通信費・水道光熱費などの費用負担

労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、その事項を就業規則に定めなければなりません(労働基準法第89条第5号)。情報通信機器の費用、通信回線費用、文具や部品等の費用、水道光熱費が考えられます。

(5) 交通費・手当の扱い

交通費や手当について、支給要件が不明確である場合は、テレワークの対象者についても、会社で勤務する労働者と同様に扱う義務(交通費の支給等)を負う可能性があるため、就業規則等で支給要件を明確にする必要があります(労働基準法第89条10号)。

(6) 安全衛生関係法令の適用

労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保のための措置を講じる必要があります。具体的には、以下のような措置をとり、労働者の健康確保を図ることが重要です。

  • 必要な健康診断とその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条から第66条の7まで)
  • 長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果等を受けた措置(同法第66条の8及び第66条の9)及び面接指導の適切な実施のための時間外・休日労働時間の算定と産業医への情報提供(労働安全衛生規則第52条の2)
  • ストレスチェックとその結果等を受けた措置(労働安全衛生法第66条の10)

(7) 自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備

自宅等、テレワークを行う作業場について、部屋の明るさや温度や湿度等、適切な作業環境の確保を図る必要があります。「事務所衛生基準規則」、「労働安全衛生規則」及び「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」等に衛生基準が規定されています。

(8) 労働災害の補償に関する留意点

テレワークを行う労働者については、会社における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負う(労働基準法第75条)ことから、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります(労働者災害補償保険法第3条)。ただし、私的行為等業務以外が原因であるものについては、業務上の災害とは認められません(労働者災害補償保険法第7条参照)。また、通勤災害とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所の往復等を合理的な経路及び方法で行うこと等によって被った負傷等をいい(労働者災害補償保険法第7条第2項)、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務では、通勤災害が認められる場合も考えられます。

(9) 情報セキュリティに関する留意点

会社の外で仕事を行う際には、端末の紛失・盗難、重要情報の盗聴、不正アクセス、外部サービスの利用等、その形態に応じて様々なリスクがあるため、それらリスクについての対策を講じる必要があります。

(10) 参考資料

テレワークモデル就業規則(厚生労働省)

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)

テレワークセキュリティガイドライン第4版(総務省)

作業環境整備のイメージ図(厚生労働省)

2.タイ

 2021年1月、タイ国内のCOVID-19の感染拡大を受け、タイ政府より、民間企業へテレワークを検討するよう要請が発せられています。しかし、具体的にテレワークに関する法令やガイドライン等は発せられておりません。

 従業員との間で締結している雇用契約書において、就業場所を定めている場合には、テレワークを行うことについて従業員から同意を得ておく必要があると解されます。また、タイ労働者保護法(Labor Protection Act)上、雇用契約書で定められた勤務時間を超過した場合には、超過時間分について割増賃金を支払う必要がありますので、テレワーク期間中においても、従業員の勤務時間を適切に管理・把握することが重要です。PC操作ログの確認、勤務開始時、終了時のWeb会議ツールによるミーティングの開催などの方法が考えられます。

 また、テレワーク時のセキュリティ対策についても注意する必要があります。ウィルス対策ソフトが確実に導入・機能しているかについての確認、USBなどの持ち運び可能な記憶媒体の紛失対策の制定、社外からの会社クラウドへのアクセス時の認証設定などの対策をすることが考えられます。

3.マレーシア

マレーシアでは、テレワークの導入に際して労働関係法令の改正はなく、新たなガイドラインも発行されていません。そして、テレワークについてもオフィスで働く場合と同様に労働関係法令は適用されます。

もっとも、MITI(国際貿易産業省)により発表されたプレスリリースとともに出されたFAQによると、テレワークは、それぞれの企業のニーズに沿ったWFH(Work From Home、在宅勤務)のガイドラインに従って実施されると規定されています。このプレスリリース及びFAQは、MITIが管轄する企業・事業所に適用されます。

 マレーシアでは日本のように就業規則を作成・届け出る法令上の義務はありませんが、未然に紛争を防止するため、多くの会社で社内規則をはじめとする就業規則が定められています。テレワークの導入についても、未然に紛争を防止するために必要がある項目は、社内(就業)規則に定めて法的拘束力を生じさせることが望ましいといえます。社内(就業)規則に法的な拘束力を持たせるためには、社内(就業)規則記載の労働条件につき労働者との間で合意が成立していると言えることが必要となるため、雇用契約書において社内(就業)規則記載の労働条件が適用される旨を記載すること、配布などの方法により社内(就業)規則の内容を認識させることが必要となります。具体的に記載する項目として、通信費や光熱費の負担、変更がある場合の始終業時刻、情報通信機器の貸与、情報セキュリティ対策等の事項について明確にしておくことが望ましいと考えられます。

4.ミャンマー

COVID-19に対応した職場環境の整備についてのガイドライン等は発行されていますが、特にテレワークについての法令やガイドライン等は公布されていません。雇用契約書において勤務場所を記載する必要があり、今後は勤務場所について自宅と規定したり使用者が指定できるような記載を行う必要があると解されます。また、ミャンマーでは停電が頻繁に起こり、かつ、自宅にインターネット回線を引いておらず携帯電話のテザリングでインターネットを利用するケースも多いことから、テレワークに適した環境とは言えない状況です。しかし、クーデターに伴うデモの発生により安全の観点等から出勤させないようにしている企業も多く存在します。その場合、在宅勤務を行わせると通常と同じ給与を支給する必要があります。他方、職種によっては自宅では何もさせることがないこともあります。しかし、会社が在宅を命じた場合には原則として全額の給与の支給が必要となります。従業員の同意を得ることにより給与の減額も可能であり、現状が長引く可能性もあることから、長引いても問題ないような措置を検討して行う必要があります。減額の同意については必ず書面で取得するようにして下さい。

5.メキシコ

(1) 立法動向

メキシコにおいては、1月11日にテレワークに関する連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)の改正を内容とする法令が公布され、翌日施行されました。その概要は以下のとおりです。なお、テレワークに関する労働安全衛生の細目を定める規格NOM(Norma Oficial Mexicana、法的拘束力を持つ規格基準)は未制定であり、当該法改正の施行から18か月以内に公布される予定です。

(2) 定義

改正法におけるテレワークの定義は、テレワーク労働者と使用者との間の連絡及び指揮のために主として情報通信の技術を用いて、職場におけるテレワーク労働者の物理的な存在を必要としないように、使用者の事業所以外の場所で有給活動を行うことからなる二次的な業務組織の形態をいうとされています。

テレワークに関する規定は、テレワーク形態の下で労働者の自宅又は労働者が選択した所在地において、時間の四十パーセントを超えて行われる労使関係に適用されるとしています。ただし、時折、または散発的に行われる労働は、テレワークとはみなされません。

(3) 労働条件の書面交付等

労働条件は、契約書面に記載し、各当事者はその写しを保管しなければなりません。その記載事項としては、1当事者の氏名、国籍、年齢、性別、住所、2業務との性質と特徴、3給与の額、支給日、支給場所又は支給形態、4労働者に提供される機器等(安全衛生義務に関する物を含む)、5テレワークに関連し労働者が負担した費用の支払いについて、使用者がテレワーク下の労働者に支払う内容と金額、7当事者間の連絡及び監督の仕組みスケジュール等、7その他当事者が合意する事項になります。

また、テレワークが労働条件の内容となった労働協約について労働者にその写しの交付が求められるほか、労働者に団体交渉等の知識に関する情報共有などが求められます。

(4) 使用者の義務

テレワークにおいては、使用者は次の特別な義務を負います。1コンピュータ機器、人間工学に基づいた椅子、プリンター等のテレワークに必要な機器の提供、設置、メンテナンスの計らい、2適時に仕事を受領し、定められた方法で、定められた期日に賃金を支払うこと、3テレワークを通じた仕事から得られる費用を想定すること、4労働安全衛生に関する規定を遵守して、テレワークで労働者に提供された物品の記録を保管すること、5テレワークで労働者が使用する情報やデータのセキュリティを維持するための仕組みを実施すること、⑥テレワーク労働者の労働終了時のつながらない権を尊重すること、7社会保障制度にテレワーク労働者を登録すること、及び8テレワークにおける労働者の情報技術の適応、学習及び適切な利用を保証するために必要な訓練及び助言の仕組みを確立することなどとされています。

(5) 労働者の義務

 他方、労働者についても、使用者から支給された備品等の管理、テレワークに起因する電力消費量・費用等の報告、職場の安全衛生に関する規定の順守、監督を受ける仕組みや運用体制への留意、データ保護方針等への注意等について義務が定められています。

(6) 労務管理

テレワークを監督するために使用される情報通信技術は、その目的に比例したものでなければならず、テレワークの下で労働者のプライバシーの権利を保証しなければならず、ビデオカメラ及びマイクは、特別な理由で、またはテレワークの様式の下で労働者が行う機能の性質が必要とする場合にのみ、テレワークを監視するために使用することができると限定されています。

6.バングラデシュ

バングラデシュは、縫製業などテレワークが難しい製造業が多く、COVID-19に対応した職場環境の整備についてのガイドライン等は発行されていますが、特にテレワークについての法令は公布されていません。バングラデシュ労働法で定められている就業規則の項目に「労働時間および休暇」が含まれており、テレワークにより労働時間や休暇が変更となる場合は、労働者と合意のうえ、検査官の承認を得て、就業規則を変更する必要があります。テレワークを導入する際の留意点としては、交通費等の手当の支給、光熱費や通信費の負担、情報通信機器の貸与、業務報告等コミュニケーションの方法、情報セキュリティ対策の徹底等について、労働者と協議のうえ、手当や経費について疑義が生じないよう明確化し、適切に労務管理する必要があります。

 

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第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

2月7日までを対象期間とし、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県を対象に、緊急事態宣言が行われました(首都圏の一都三県は1月8日から、その他の府県は1月14日から)。対象都府県では、新規感染報告が過去最多を記録し続け、医療体制がひっ迫しており、緊急事態宣言の期間延長の可能性が議論されています。

今回の緊急事態宣言は、社会経済活動を幅広く止めるものではなく、具体的には、飲食を伴うものを中心として対策が講じられています。飲食店に対する営業時間短縮要請を行うと共に、外出自粛の要請、テレワークの推進などが行われています。(新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。「出国前72時間以内の検査証明書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することとなり、検疫官の指示に従わない場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となる場合があります。加えて、検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになりますが、「誓約書」が提出できない場合、検疫所が確保する宿泊施設等で待機することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。(水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

(3) 国際的な人の往来の再開 

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用を開始していましたが、これらのスキームは一時停止されています。

国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について(外務省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は16,221名です。この内、11,287名が回復し、現在医療機関で治療中の者は4,858名となっています。また、非常事態宣言は、2月28日まで延長されています。

1月4日、バンコク都は、午後9時以降のレストランなどでの店内飲食を規制し、テイクアウトのみの提供を可能とする措置を発表しています。

1月6日、タイ政府は、サムットサコーン県、チョンブリ県、ラヨーン県、チャンタブリ県、トラット県の5県を対象として、往来許可証の提示や、検温等をチェックポイントで実施する、移動の制限等の規制を発表しています。

1月21日、バンコク都は、一時閉鎖されていた以下の施設の使用再開を発表しています。

ボードゲーム場、ゲームセンター、インターネットカフェ、高齢者介護施設、競技場(ボクシング場、競馬場等は含まない)、宴会場及び類似の施設、美容施設、フィットネス・ジム、スパ、マッサージ施設、ボウリング場、スケート・ローラーブレード場、類似の遊戯場、ダンス場

(2) 入国許可証(COE)の新登録システム

1月以降のタイ入国に関するCOEの申請について、新しいCOE申請システムが運用されています。手続きの流れは以下のとおりとなります。

  1. ビザ申請(再入国許可をすでに所持している場合は不要)
  2. COE新システムよりCOE申請
  3. COE登録の承認後、医療保険、航空券及びASQホテル予約確認書をオンラインシステムにて登録
  4. COE発行後、オンラインシステムよりCOEをダウンロード
  5. Fit to Fly(英文)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(英文)を用意

3.マレーシア

(1) 入国手続

1 出国前

  • アプリMySejahteraをダウンロードし、健康宣言を記入する
  • PCR検査(スワブ検査)を出国3日以内に受検査する(任意)

2 到着時

  • アプリMySejahteraで「旅行者」用のQRコードを読み取る
  • 体温測定、健康状態の確認の実施

3 到着後

体温測定、健康状態の結果及び出国前のPCR検査(スワブ検査)結果の有無により、扱いが異なります。

(a) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がある場合

  • 7日間の隔離施設入所
  • 5日目のPCR検査(スワブ検査)の受検
  • 14日目までのセルフモニタリング

(b) 症状がなく、PCR検査(スワブ検査)結果がない場合

  • PCR検査(スワブ検査)の受検
  • 10日間の隔離施設入所
  • 8日目のPCR検査(スワブ検査)の受検
  • 14日目までのセルフモニタリング

(c) 症状があった場合

  • 症状のある旅行者への措置

(2) 移動制限令

1 はじめに

2021年感染症の予防と管理規則(感染地域内での措置)(移動制限)(No. 2)(PREVENTION AND CONTROL OF INFECTIOUS DISEASES (MEASURES WITHIN INFECTED LOCAL AREAS)(MOVEMENT CONTROL)(NO. 2) REGULATIONS 2021)が1月21日に公布され、同月22日から施行されています。

2 適用対象地域

  本規則は、1月22日から同年2月4日の間、以下の地域を対象に適用されます。

  • State of Johore
  • State of Kedah
  • State of Kelantan
  • State of Malacca
  • State of Negeri Sembilan
  • State of Pahang
  • State of Penang
  • State of Perak
  • State of Perlis
  • State of Sabah
  • State of Selangor
  • State of Terengganu
  • Federal Territory of Kuala Lumpur
  • Federal Territory of Putrajaya
  • Federal Territory of Labuan
  • Division of Sibu, State of Sarawak(*他の地区については、2021年感染症の予防と管理規則(感染地域内での措置)(条件付移動制限)(No. 2)(PREVENTION AND CONTROL OF INFECTIOUS DISEASES (MEASURES WITHIN INFECTED LOCAL AREAS)(CONDITIONAL MOVEMENT CONTROL)(NO. 2) REGULATIONS 2021)が適用されます。)

3 移動制限

感染地域内のある場所から別の場所への又はある感染地域から別の感染地域への移動は禁止されています。ただし、(a)の目的のために、(b)の条件を遵守して移動をすることは認められています。

(a) 移動目的

  1. 食品、医薬品、栄養補助食品、又は日用品を購入するため
  2. 食品、医薬品、栄養補助食品、又は日用品を供給又は配達するため
  3. ヘルスケア又は医療サービスを受けるため
  4. (a)及び(c)以外のエッセンシャルサービス提供者から商品を購入する又はサービスを受けるため
  5. 公務、司法上の義務又は権限を与えられた公務員により承認されたその他の義務を遂行するため
  6. エッセンシャルサービスを提供する、又はエッセンシャルサービスに関連する義務を履行するため
  7. 自然災害により影響を受けた人に人道援助を提供するため 又は
  8. 学習機関での学習に参加する、又は学習機関における義務を遂行するため

(b)移動の条件

  1. エッセンシャルサービスの提供者から食品、医薬品、栄養補助食品、日用品、又はその他の商品を購入する場合
  2. 住居から半径10 km以内(半径10km以内に購入できる場所がない場合、最寄りの場所)
  3. 同行者は1名のみ(同居者に限る)
  4. ヘルスケア又は医療サービスを受ける場合
  5. 住居から半径10 km以内(半径10km以内にサービスを受けられる場所がない場合、最寄りの場所)
  6. 同行者は2名まで
  7. 公務又は司法上の義務を遂行する場合

    権限を与えられた公務員からの要求を受けた場合、承認書の作成を受ける

       1 エッセンシャルサービスを提供するため、又はエッセンシャルサービスに関連する義務を遂行する場合

権限を与えられた公務員の要求に応じて、必要な証拠を提供する

  1. ヘルスケア又は医療サービス以外のエッセンシャルサービスを受ける場合

 権限を与えられた公務員の要求に応じて、必要な証拠を提供する

  1. 自然災害により影響を受けた者に人道援助を提供する場合
  2. 権限を与えられた公務員の要求に応じて、必要な証拠を提出する
  3. 関係当局の指示に従い、他の者を同伴することができる
  4. 学習機関での学習に参加するため、又は学習機関での義務を遂行する場合 

   権限のある役員の要求に応じて必要な証拠を提出する

(c) その他

その他に、試験を受けるための移動や特別な理由での移動に対する個別の許可についての定めが置かれています。

4 行列の禁止

行列への参加・関与は禁止されています。

5 集会の禁止

目的を問わず、感染地域内の施設での集会は禁止されています。ただし、関係当局の指示に従うことを条件に、モスク等での宗教活動及び葬儀のための集会は認められています。

6  エッセンシャルサービス

本規則におけるエッセンシャルサービスとは、以下の事業をいうものとされています。

(a) 製造業

  • 航空宇宙(部品、メンテナンス、修理及びオーバーホール)
  • 自動車(車両及び部品)
  • 飲食物
  • 梱包及び印刷
  • 家事用品、パーソナルケア用品、及び洗浄剤
  • ヘルスケア製品及び栄養補助食品を含む医薬品
  • 個人用保護具及び防火設備
  • 医療機器の部品
  • 電気・電子製品
  • 石油及びガス
  • 石油化学製品
  • 化学製品
  • 機械及び装置
  • ハンドグローブ製造用セラミックモールド
  • 鉄鋼
  • 個人用保護具製造用の繊維
  • 家具
  • 燃料及び潤滑油

(b) サービス業

  • 自動車(メンテナンスと修理)
  • 国防・警備
  • 金融
  • 銀行、保険、タカフル、ブルサなどの金融機関
  • 中央銀行によって認可、承認、または登録された機関
  • マレーシア証券委員会によって認可、登録、又は規制されている資本市場機関
  • 市議会及び地方自治体
  • 固形廃棄物の管理及び下水道
  • 公共の清掃
  • 施設の清掃及び衛生
  • 電気通信、インターネット、郵便、宅配便、及び放送を含む通信
  • グローバルビジネスサービスを含む情報技術、コールセンター
  • eマーケットプレイス、デジタル決済、ローカルeコマースサービスセンターを含むeコマース
  • 映画編集を含むスタジオでのデジタルクリエイティブコンテンツ開発
  • 質屋及び認可された貸金業者
  • ホテル及び宿泊施設
  • 獣医サービスを含む農業、漁業及び畜産
  • 農場、アナツバメの巣、馬の農場、動物加工工場、食肉処理場、家畜、畜産食品工場、ペットショップの管理
  • 疫病及び家畜生産の調整、家畜投入の調整、及び輸出入を含む家畜産業関連製品の管理
  • 動物の健康管理
  • 水及びエネルギーの供給の安全性、改善、保守、検針を含むユーティリティ
  • 会計士、弁護士、監査人、エンジニア、建築家を含む科学、研究開発、技術及びメンテナンスの分野における専門サービス
  • セキュリティ管理
  • 陸路、水路、又は空路による輸送
  • 港湾、埠頭、空港のサービス、及び貨物の荷役、輸送、水先案内、商品の保管又は集約
  • 司法及び法律サービス

(c) 建設

  • 重要なメンテナンスと修理作業
  • 主要な公共インフラ建設工事
  • 建設現場又は集約化された労働地区に労働者の宿泊施設を提供する建築工事

(d) 流通取引

  • 倉庫保管及びロジスティクス
  • 食品及び飲料の販売・配送
  • 小売、流通、卸売

(e) 農業生産物

  • 農業、漁業、畜産
  • 農業生産物

(f) その他

その他保健大臣によって決定された事業

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点のCOVID-19関連の規制としては、30名以上の集会禁止措置(通勤等は除外されます)及びヤンゴン地域における深夜0時から午前4時までの夜間外出禁止措置が維持されています。法令上、工場、店舗、飲食店等においてはガイドラインを順守し、グレードAを取得した場合にのみ操業を再開できるとされているものの、事実上多くの店舗がグレードAを取得しないまま操業を再開するなど、規制の一部は有名無実化しています。徐々に感染者数が減少しており、一時期は公園も封鎖されましたが、1月下旬より一定の時間帯は公園の封鎖が解除されるようになりました。

(2) 入国規制

国際旅客機の着陸禁止措置が続いております。12月下旬より、入国時のホテル隔離期間が15日間に延長されました。2月の日本からの救援便は4日・11日・18日・25日の4便が運航予定です。

(3) クーデター

 2月1日未明に与党NLDの幹部が拘束されました。正午(日本時間)時点において、1年間の非常事態宣言が発令され、国軍出身のミン・スエ副大統領が大統領代理として就任しました。立法・行政・司法の全権がミン・アウン・フライン国軍総司令官に移るとみられます。また、電話回線が遮断されており、空港等も一時的に閉鎖されており、今後の動向を注視する必要があります。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19感染者は、引き続き増加傾向にあり、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)では、1月18日の週には、赤が10州、橙19州、黄2州、緑1州となり、後退する州が多く出ています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、感染が拡大傾向にある州では、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、1月12日にメキシコ政府合意のもと2月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。なお、米国疾病予防センター(CDC)は、1月26日より米国への空路での入国に際し、2歳以上のすべての人に対して、出発前3日以内に実施したウイルス検査の陰性証明を提示することを義務付けています。メキシコへの出入国に際し米国を経由する場合にも適用されます。また、メキシコにおいては、空路による出入国に際し、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ内務省が発表した2020年9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国の産休・育休に関する法制度の概要

1.日本

(1) 産休(産前産後休業)

1 産休期間

労働基準法では、母体の保護の観点から必要な産休を定めています。使用者は、6週間(双子以上の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者を就業させることはできません(第65条(1))。また、使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させることができません(第65条(2))。産後休業は、本人が就業を希望しても与えられなければならない強制休業ですが、産後6週間を経過した女性が請求した場合、医師が支障がないと認めた業務に就かせても差し支えありません(第65条(2但書))。また、産前産後休業期間中及びその後30日間は懲戒理由であっても解雇することはできません(第19条)。

2 労働時間

妊産婦(妊娠中の女性および産後一年を経過しない女性)については、就業時間の制限に関する規定があります。妊産婦から請求があった場合は変形労働時間制であっても週40時間、1日8時間以上の労働をさせてはなりません(第66条(1))。また、36協定を締結していても、時間外労働、休日労働、深夜労働が禁止されています(第66条(2)(3))。使用者は、妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければなりません(第65条(3))。

3 賃金の支払い

産休中の賃金の支払いについては労働基準法の規定はありませんが、産休中の給与が支払われない又は給与の満額が支払われない場合は、健康保険から賃金の3分の2相当額の出産手当金が支給されます(健康保険法第102条)。また、産休中は、事業主の年金事務所への申出により、厚生年金・健康保険料が本人負担分及び事業者負担分がともに免除されます。

(2) 育休(育児休業)

1 育休期間

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育介法」といいます)」により、1歳に満たない子供を養育する男女労働者は、会社に申し出ることにより、子供が1歳になるまでの間で希望する期間、育児のために休業できる旨が定められています(育介法第5条(1))(一定の場合は2年まで延長が可能。後述)。家族などで、事実上、子供の世話が可能な者がいても、関係なく取得することができます。有期契約労働者が育児休業を取得できる要件(育介法第5条(1但書))は以下の通りです。

(a) 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されること

(b) 子供が1歳6か月(2歳までの休業の場合は2歳)に達するまでに労働契約の期間が満了することが明らかでないこと

使用者は、取得の要件を満たす労働者から請求があった場合、育児休業を拒むことはできません(育介法第6条)。また、使用者は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(育介法第10条)。

 子供が1歳に到達した日において当該労働者又は配偶者が育児休業をしている場合で、以下のいずれかに該当する場合は、1歳6か月に達する日まで育児休業をすることができます(育介法第5条(3)、施行規則第6条)(有期契約労働者でその配偶者で子供の1歳到達日において育児休業をしている場合は、上記(a)、(b)のいずれにも該当し、かつ下記(a)、(b)のいずれにも該当していることが必要となります。)。さらに、1歳6か月到達時点において当該労働者又は配偶者が育児休業をしている場合で、これらの事情がある場合は、再度申請することにより2歳到達日まで育児休業を延長することができます(育介法第5条(4)、施行規則第6条の2)。

(a) 保育所に入所を希望し、申込みをしているが、子供が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合

(b) 子の養育を行っている子の親である配偶者で、子供が1歳に達する日後の期間について、常態として当該子供の養育を行う予定であった者が、死亡や健康上の理由により子供の養育が困難になった場合等、一定の事情に該当する場合

育児休業は原則として同一の子について労働者一人につき1回限り取得することができますが(育介法第5条(2))、産後8週間以内の期間内に父親が育児休業を取得した場合は、再度父親が育児休業を取得することができるようになりました(育介法第5条(2括弧書))。

2 賃金の支払い

 雇用保険から「育児休業給付」が支給されます(雇用保険法第61条の7(1))。

3 その他の関連制度

3歳までの子供を養育している労働者が利用できる制度として、短時間勤務制度の義務化(育介法第23条)、所定外労働の免除の義務化(育介法第16条の8)、子供の看護休暇(育介法第16条の2)の拡充などの制度があります。

働き方改革、少子化対策、男性の育児参加の推進などの政府による取り組みや社会の変化に応じて、関連法令の改正が進んでおり、改正に応じた、就業規則の見直しや労働環境の改善が求められます。法令の規定を上回る制度や独自の子育て支援制度を設けている企業も増えており、優秀な人材の確保のために、重要な取り組みのひとつと言えます。

2.タイ

(1) 産休

 労働者保護法(Labor Protection Act)第41条第1項により、1回の出産につき、98日まで産休を取得することができます。出産前の検査のための休暇も、当該産休に含まれます。この産休期間中について、最大45日分まで、労働日と同額の賃金を受け取ることができます(同59条)。

(2) 育休

 タイにおいては、育休についての法制度は存在していません。両親や祖父母に子供を預け、産休後すぐに職場に復帰することも多いようです。会社によっては、育休制度を用意している場合もあるようです。

(3) 社会保険による給付金

 上記法制度とは別に、社会保険による給付金制度が存在しています。

  1. 出産手当

出産前の15か月間に、少なくとも5か月間の社会保険料を支払っている必要があります。

・ 出産一時金:一回の出産につき15,000バーツ(回数制限なし)

・ 産休補償給付金:平均賃金の50%を90日分(2回まで)

・ 妊婦検診費用:以下の通り、5回、合計1,500バーツまで

  妊娠12週目まで  実際に支払った額(上限500バーツ)

  妊娠12週目を超え20周目まで  実際に支払った額(上限300バーツ)

  妊娠20週目を超え28周目まで  実際に支払った額(上限300バーツ)

  妊娠28週目を超え30周目まで  実際に支払った額(上限200バーツ)

  妊娠32週目を超え40周目まで  実際に支払った額(上限200バーツ)

       2. 育児手当

手当の対象となる月の前36か月間に、少なくとも12か月間の社会保険料を支払っている必要があります。

・ 子供1人につき毎月800バーツ(子供の出生から6歳になるまで。同時に3人まで。養子を除く。)

3.マレーシア

(1)出産休暇

 マレーシアの雇用法(Employment Act 1955)は、女性労働者に対して60日間の出産休暇を取得する権利を認めています。

 産休・育休という区分はなく、この60日間の出産休暇を産前・産後にどのように振り分けるかは各労働者に委ねられていますが、原則として、出産の30日よりも前から取り始めることはできず出産後から取り始めることもできないものとされています。

(2) 出産手当

 また雇用法は、

  1 出産の直前9カ月の間に合計90日以上その雇用主に雇用されており、

  2 出産の直前4カ月のいずれかの時点でその雇用主に雇用されていたこと

を条件として、出産休暇の間、女性労働者は雇用主から出産手当を受け取ることができる旨を定めています。出産手当の額は、1日の通常の賃金額又は人的資源大臣が定める計算方法で計算した額のうち有利な方の金額とされています。ただし、その出産の時点で既に5人以上の生存する子どもを有する女性労働者は、出産手当を受給する権利を有しません。

 また、女性労働者は出産予定日の直前60日の間にその雇用主に出産予定日及び出産休暇を開始しようとする日を通知しなければならず、通知を行わないままそのような休暇を開始したときは、雇用主は通知がなされるまで女性労働者に対する出産手当の支払いを留保することができます。

 なお、退職を控えた女性労働者であってその退職の日から4カ月以内に出産することを知っているかそう信じる理由がある者は退職の前にその雇用主に対して妊娠を通知しなければならず、これを行なわなかった場合には女性労働者はその雇用主から出産手当を受給する権利を与えられないものとされています。もっとも、通知を行わなかったことに合理的な理由がある場合等にはこの限りではありません。

(3) 解雇規制

 雇用主は、女性労働者が出産休暇を取得する権利を有する期間中にその女性労働者の雇用契約を終了することはできません(廃業を理由とする終了の場合を除く)。また、女性労働者が妊娠・出産に起因する疾病により業務に適さない旨の登録医療従事者の診断を得て期間満了後も引き続き欠勤をするときは、期間満了後の欠勤が90日間を超えるまでは、その雇用主は当該女性労働者を解雇し、又は解雇の予告を行なうことができないとされています。

(4)適用範囲

 マレーシアの雇用法は本来賃金が一定額(月額RM2,000)以下の労働者等に対してのみ適用されるものとされていますが、上記(1)から(3)で述べた規制は所得に関係なく雇用契約に基づいて勤務する全ての女性労働者に適用されます。

4.ミャンマー

(1) 産休・育休に関する法規制

産休・育休に関しては、社会保障法(Social Security Law)及び休暇及び休日法(Leave and Holidays Act)により規定されています。

(2) 社会保障法(Social Security Law)

社会保障基金(Social Security Board)に加入している被保険者の労働者には、同法が適用されます。

1 産休・育休の期間

拠出期間が12か月間のうち6か月以上の場合、妊娠中の女性は合計14週間(産前6週間、産後8週間)の産休を取得することができます。双子の場合は追加で4週間取得することができ、流産の場合は最大6週間の産休を取得することができます。

一歳未満の子どもを養子に迎えた場合、最大8週間の育休を取得することができます。父親の育休は15日間取得することができます。

拠出期間が12カ月間のうち6か月に満たない場合、妊娠中の女性は合計12週間(産前6週間、産後6週間)の産休を取得することができます。流産の場合は最大6週間の産休を取得することができます。育休は認められません。

2 給付金

拠出期間が12か月間のうち6か月以上の被保険者の労働者の場合、以下の現金給付を社会保障基金から受けることができます。

出産給付金…年間平均賃金の70%

出産費用手当…1人の場合1カ月の平均賃金の50%、双子の場合1カ月の平均賃金の75%、三つ子の場合1カ月の平均賃金の100%

流産の場合…産休の期間の平均賃金の70%

父親の育休給付金…年間平均賃金の70%

父親の育休の出産費用手当…1人の場合1カ月の平均賃金の25%、双子の場合1カ月の平均賃金の37.5%、三つ子の場合1カ月の平均賃金の50%。母親も被保険者である場合、同手当は受け取ることはできません。

医療保障…母親に対する認可を受けた病院又はクリニックでの無償治療。1歳までの子どもの治療

(3) 休暇及び休日法(Leave and Holidays Act)

社会保障基金に加入していない労働者には、同法が適用されます。

 3  産休・育休の期間

休暇及び休日法に基づき、妊娠中の女性は合計14週間(産前6週間、産後8週間)の産休を取得することができます。流産の場合は最大6週間の産休を取得することができます。

父親の育休は認められません。

5.メキシコ

メキシコでは、妊娠した女性は、産前産後各6週間の休暇を取得することができます。また、社会保険庁(Instituto Mexicano del Seguro Social: IMSS)の病院または産業医など使用者が労働者に対して提供する医療サービスの主治医の許可がある場合、当該労働者は、使用者の意向や当該労働者の仕事の性質を考慮し、産前休暇のうち最大4週間を産後休暇に変更することができます。さらに、子どもが何らかの障がいをもって生まれた場合や、入院が必要な場合は、それを証明する診断書を以て産後休暇を最大8週間まで延長することも可能です。この場合の休暇は給与100%が支給される有給休暇となります。

なお、社会保険の被保険者が妊娠した場合、1給付金の支給開始日(出産予定日の42日前)以前12か月の間に30週以上の社会保険料の納付があること、2IMSSの病院が発行する妊娠していること及び出産予定日が記された診断書があること、3給付金対象期間に報酬を伴う仕事を行わないことを条件として、出産予定日の前後42日間、基準給与額(給与額に福利厚生を含めた額/Salario Base de Cotización: SBC)の100%の額の給付金を受け取ることができます。出産日が予定日と異なった場合は、産後42日間については実際の出産日より起算され、これにより出産前の未就業期間が42日間を超える場合は、その超えた期間について、SBCの60%額が支給されます。この給付金を被保険者が受け取ることにより、使用者は、この休暇中の給与を、社会保障法で定められた限度額まで支払う義務を免除されます。

その他、妊娠や出産によって就業が困難な場合には、必要な期間この休暇を延長することが可能です。当該延長期間については、労働者は60日間を超えない期間において給与の50%の額を受け取る権利があります。

また、乳児を養子とした場合、親となる女性労働者は、迎え入れた日の翌日から6週間の有給休暇を取得できます。一方、男性の労働者に対しては、子どもが誕生した場合や養子を迎え入れた場合に5労働日の有給休暇を与えることが使用者の義務として定められています。

なお、 上記のほか、日本のように1歳未満の子を持つ労働者が子の養育のために取得する育児休業を認める法制度はありません。

6.バングラデシュ

(1) 産休期間

労働法にて、産前産後8週間ずつの産休が定められています(労働法第47条(3))。使用者は、産前10週間産後10週間以内の女性の労働者に、重労働や長時間の立ち仕事、健康を害する可能性のある仕事をさせることはできません(労働法第45条(3))。

(2) 出産給付金

出産前に6か月以上勤務している労働者は、産前8週間産後8週間について出産給付金を受ける権利があります(労働法第46条(1))。ただし、既に2人以上の子供がいる場合は、出産給付金支給の対象外です(同条(2))。年次有給休暇および医療休暇は与えられ、更に休暇が必要な場合は、使用者は無給休暇を与えることができます(労働規則第38条)。出産給付金支給の対象となっている労働者は、出産8週間前または産後7日以内に口頭もしくは書面にて使用者に申請しなければならず(同条(1)(2))、出産給付金の申請は、労働規則に様式(Form17、18、19)が提供されています(労働規則第39条)。出産給付金の支給時期について、対象となる労働者の希望に応じて、産前8週間以内である旨の医師による証明書の発行日から3日以内に産前8週間の出産給付金の支給、出産証明書の発行日から3日以内の産後8週間の出産給付金の支給等が可能です(労働法第47条(4))。出産給付金額は、申請があった日の直近3か月の実働賃金をもとに算出され、現金で支給されます(労働法第48条(1)(2))。産前6か月産後8週間以内に、十分な理由なく解雇が通知された場合でも、出産給付金を受ける権利は失われません(労働法第50条)。出産給付金に関する規定に違反した場合は、25,000タカ以下の罰金が科せられます(労働法第286条)。

(3) 育休

バングラデシュでは、育児休業・育児休暇についての規定はありませんが、独自に休暇制度をもうける民間企業もあり、使用者の裁量に任されています。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2021年1月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

11月からの感染者数の増加傾向が続いており、感染が拡大しています。政府によるGo Toトラベルの運用が全国で停止され、東京、北海道、大阪、愛知で飲食店やカラオケ店の時短営業が要請されるなど、経済活動に対する規制が厳しくなりつつあります。また、英国で感染力が高い新型コロナウイルスの変異種が流行していることを受けて、12月23日に、英国からの新規入国の一時停止(日本国籍者は対象外)、英国への短期出張からの帰国・再入国時における特例措置の一時停止(日本国籍者も対象)等、同国に対する新たな水際対策措置が決定されました。

新型コロナウイルス感染症に関する英国に対する新たな水際対策措置(外務省)

(2) 入国規制

1 上陸拒否措置等

(a) 上陸申請日前14日以内に上陸拒否の対象である152の国・地域に滞在歴のある外国人については、「特段の事情」がない限り、上陸が拒否されます。

(b) 上陸拒否の非対象地域からの入国は、在外公館において査証の発給を受ける際、防疫措置に関し、受け入れ企業・団体による誓約書を提出する必要があります(日本人・永住者の配偶者又は子等、人道上の配慮の必要性がある場合は誓約書不要)。また、「短期滞在」は商用に限られます。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(法務省)

2 検疫の強化(日本国籍者も対象)

14日以内に、上記①の上陸拒否対象国に滞在歴のある入国者は、PCR検査の実施対象となります。また、全ての地域からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で14日待機し、国内において公共交通機関を使用しないよう要請されます。

水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)(厚生労働省)

3 査証に関する制限(既に発給された査証の効力停止、査証免除措置の停止)

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省)

4 航空機の到着空港の限定等

(3) 国際的な人の往来の再開 (外務省の関連サイト

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域(タイ、ベトナム、豪州、ニュージーランド、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、ブルネイ、韓国、中国、香港、マカオ、モンゴル)との協議を開始し、以下の国・地域で、① ビジネストラック、② レジデンストラックのスキームの利用が開始されています。これらのスキームの利用対象者は以下の通りです。

(a) 短期滞在以外の全ての在留資格又は短期商用査証により本邦に入国する者を対象とし、詳細につい

ては対象国・地域ごとに調整。

(b) 日本又は当該対象国・地域に居住する者(当該対象国・地域の国籍保有者だけではなく、第三国国籍 

の方を含む)であって、日本と当該対象国・地域の間の航空便(直行便の他、経由する国・地域に入国・

入域許可を受けて入国・入域しないことを条件に経由便も可。)を利用する者。

1 ビジネストラック: シンガポール、韓国、ベトナム、中国

2 レジデンストラック: タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、      

ブルネイ、韓国、中国

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は5,829名です。この内、4,116名が回復し、現在医療機関で治療中の者は1,653名となっています。また、非常事態宣言は、2021年1月15日まで延長されています。

12月19日、タイ保健省は、バンコクに隣接するサムットサコーン県の水産市場にて大規模なCOVID-19のクラスターが発生し、548名の新規感染者が確認されたと発表しました。これにより、サムットサコーン県では12月19日から1月3日まで、以下の制限措置がとられています。

・中央エビ市場、娯楽施設、教育機関、運動場、ムエタイ場、その他の多くの人が集まる施設の閉鎖

・食堂について、テイクアウトのみ営業を許可

・午後10時から翌朝5時までの外出制限への協力要請

・外国人のサムットサコーン県への出入りを禁止

また、12月20日には、バンコク都感染症対策委員会による緊急会見がなされ、以下の対策が実施されています。

・参加者が密となるイベントや娯楽施設、ムエタイジム、各種市場等の当面の自粛要請

・公園での密となる活動や、寺院での宗教行事の自粛要請

・年末年始の各種イベントの自粛要請(都主催の行事は全て中止が発表されています)

・都内の官庁、民間企業に対する、14日間のWork From Homeの要請

・都営の教育機関で、サムットサコーン県に近い区内の学校については、14日間の休校措置

(2) 入国許可証(COE)の新登録システム

2021年1月以降のタイ入国に関するCOEの申請について、新しいCOE申請システムが運用されています。手続きの流れは以下のとおりとなります。

  1. ビザ申請(再入国許可をすでに所持している場合は不要)
  2. COE新システムよりCOE申請
  3. COE登録の承認後、医療保険、航空券及びASQホテル予約確認書をオンラインシステムにて登録
  4. COE発行後、オンラインシステムよりCOEをダウンロード
  5. Fit to Fly(英文)及び渡航72時間以内発行のPCR検査結果(英文)を用意

(3) 日本からの観光目的でのタイ入国

タイへの入国が観光目的の場合に限り、一回の入国につき30日以内の滞在であればビザが不要となる、観光ビザ免除の制度が開始されています(2021年9月30日までの間は、45日間滞在が許可されます)。この場合でも、タイ入国後の14日間隔離及び、入国前のCOEの取得が必須となっております。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

執筆時点(2020年12月24日時点)で、マレーシアは回復のための活動制限令(RMCO)の対象地域、条件付活動制限令(CMCO)の対象地域、強化された活動制限令(EMCO)の対象地域が混在した状態にあります。同日時点で、クアラルンプールは全域がCMCOの対象とされています(その他の対象地域については大使館のウェブサイト等でご確認ください)。現在のCMCOは2020年12月31日までの施行が予定されていますが、更に延長される可能性があります。

 (マレー半島における)CMCOの適用対象地域における現在の規制は以下のとおりです(抜粋)。

1 移動への制限

地区(district)間の移動制限が解除され、CMCO地域内及びRMCO地域への移動は可能です。

2 店舗等の営業時間への制限

引続き店の種類ごとに、営業時間の制限が定められています。

3 経済活動への制限

経済産業部門は、活動基準(SOP)に準拠して活動を継続することが可能とされています。

4 その他活動への制限

・非接触スポーツは可能とされています。ただし、散歩・ジョギング・サイクリング・エアロビクス・ハイキン   

グ・釣り等のスポーツ活動は身体的距離を確保して10人以内に制限されています。

・スポーツ施設の運営及び利用は、身体的接触を伴わないトレーニング目的で、収容能力の50%以内の 

範囲であれば、SOPの遵守を条件に可能とされています。

・CMCO地域における観光・文化活動についても、SOPの遵守を条件に、2020年12月19日から活動可

能とされています。

(2) 入国規制

マレーシア入国時の隔離期間を従前の14日間から10日ないし7日に短縮する旨が発表されています。具体的には、マレーシアへの出発3日前にスワブ検査を受けた場合にはマレーシア入国後に7日間の隔離に、出発前にスワブ検査を受けられない者はマレーシア入国時にスワブ検査を受けその結果が陰性であれば10日間の隔離に服するものとされています(7日間への短縮を希望する場合には「唾液検体による検査」ではなく「スワブ検査」が必要となることに注意が必要です)。もっとも、執筆時点(2020年12月24日時点)では、短縮された隔離期間がいつから適用されるかについては明らかにされていません。

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点のCOVID-19関連の規制としては、30名以上の集会禁止措置(通勤等は除外されます)及びヤンゴン地域における深夜0時から午前4時までの夜間外出禁止措置が維持されています。法令上、工場、店舗、飲食店等においてはガイドラインを順守し、グレードAを取得した場合にのみ操業を再開できるとされているものの、事実上多くの店舗がグレードAを取得しないまま操業を再開するなど、規制の一部は有名無実化しています。国内線については12月16日より禁止措置が解除され、徐々に便が復活しています。

(2) 入国規制

国際旅客機の着陸禁止措置がついに解除され、1月1日から再開する旨の文章が公開されました。しかし、具体的にどのような形になるか不明であり、陰性証明書の持参や隔離措置の要求はすぐには解除されないと思われ、具体的にどのような運用になるのか留意が必要です。1月の救援便は7日・14日・21日・28日の4便が運航予定となっています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19感染者は、引き続き増加傾向にあり、12月7日の週は感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)では、橙の州が14州から24州と増加し、12月21日の週には、メキシコシティ、メキシコ州の首都圏を含む3州が赤、橙24州、黄3州、緑2州となり、橙のうち、ソノラ州、サカテカス州、グアナファト州、ケレタロ州、イダルゴ州、アグアスカリエンテス州は赤に転じうると発表されました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、感染が拡大傾向にある州では、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等の営業時間の短縮などの要請、規制が行われています。また、赤に転じたメキシコシティでは、12月19日より1月10日まで必要不可欠な活動以外の経済活動は認めず、飲食店もデリバリーもしくは持ち帰りサービスのみと制限されています。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、12月11日にメキシコ政府合意のもと2021年1月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。なお、米国疾病予防センター(CDC)は12月2日、メキシコのCOVID-19リスクレベルをこれまでのレベル3からレベル4に引き上げ、メキシコから米国への入国に際し、入国の1~3日前にウイルス検査を受けること、目的地や航空会社の要請や推奨事項に従うことを呼び掛けています。空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ内務省が発表した9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国の食品輸入手続きに関する法規制の概要

1.日本

(1) 食品の輸入に関する法律

 食品の輸入に関する主な法律として、① 食品衛生法、② 植物検疫法、③ 家畜伝染予防法、④ 酒税法、⑤ 食糧法、塩事業法等、が挙げられます。

1 食品衛生法

販売等の目的で食品を日本に輸入する場合、食品衛生法により、輸入者は検疫所に輸入届出を行わなければなりません。輸入届出が行われていない食品を販売したり、飲食店で調理に使用するなど、営業上で使用することはできません。輸入食品の安全性については、輸入者が製造者と同等の責任を負うため、法令を確認し、違反食品を輸入しないための事前調査が重要です。食品の欠陥により消費者に健康被害が出た場合、債務不履行責任や不法行為責任のほか、製造物責任法に基づく無過失責任まで負う可能性があります。確認すべき主なポイントとして、(a) 食品の成分規格、製造基準等、(b) 添加物、(c) 医薬品成分の含有の有無、が挙げられます。

2 植物検疫法

有用な植物に損害を与えるおそれがある病害虫が日本に侵入することを防止するため、輸入される植物に対し、植物防疫法に基づく検疫が義務づけられています。輸送形態や、量の多少、商用・個人消費用等の用途に関係なく全て検疫の対象となりますので、注意が必要です。植物防疫法では、植物を、(a) 輸入禁止品、(b) 検査不用品、(c) 輸入検査品の区分に分けており、輸入する植物の区分を確認のうえ、定められた検査の申請、手続きを行う必要があります。

3 家畜伝染予防法

牛肉、豚肉などの食肉や、ハム、ソーセージなどの食肉製品を介して、家畜の伝染病が国内に侵入するのを防止しています。乳製品も検疫の対象です。貨物や携帯品などの輸送形態を問わず、また輸入する量の多少や商用・個人消費用等の用途に関わらず、動物検疫の対象となります。(a) 輸入検査必要、(b) 輸入検査不要、(c) 輸入禁止、(d) 輸入停止、の区分があり、輸入品の種類や生産国によって区分が異なりますので、事前の確認が必要です。

4 酒税法

酒類(アルコール分1度以上の飲料)を販売目的で輸入する場合、輸入前に酒類販売業免許を取得しておく必要があります。輸入通関時には食品衛生法に基づく輸入届出が必要です。飲食店営業者が、自己の営業場で顧客に飲用させるために酒類を輸入し、他店や顧客に未開封の種類を販売しない場合、酒類販売業免許は不要ですが、営業上使用目的の輸入に該当するため、食品衛生法に基づく輸入届出は必要です。

5 その他(食糧法、塩事業法等)

 国民への安定的な供給の確保、価格の安定、国内生産者の経営の安定等を目的とし、規制の対象となる品目が個別の法令に定められています。主な法律と品目は以下の通りです。

食糧法

塩事業法

砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律

畜産経営の安定に関する法律

:米穀、麦、メスリン、ライ小麦

:塩

:砂糖、でんぷん

:乳製品

 その他、外国為替及び外国貿易法は、外国貿易などの対外取引の正常な発展、日本や国際社会の平和・安全の維持などを目的に、必要最小限の管理又は調整を行うための法律で、特定の貨物の輸入、特定の国・地域を原産地・船籍地とする貨物の輸入などを行う場合には、経済産業大臣の許可や承認が必要です。

食品の輸入から販売までの流れにおける関連法令

(出典:一般財団法人対日貿易投資交流促進協会「食品輸入の手引き」をもとに筆者が作成)

2.タイ

(1) 食品輸入に関する一般規制

食品の輸入に関しては、Food Act B.E.2522(以下、「法」)により規制されています。保健省から許可を得ていない限り、販売のための食品輸入をすることはできません(法第15条第1項)。省令により、許可申請の詳細、手続及び条件が定められています(同条第2項)。

食品輸入許可、食品登録許可、また食品によっては表示許可の取得が、食品輸入の際、輸入者が行うべき基本的な手続きとなります。

(2) 食品輸入許可申請

以下のとおりの分類が行われています。

グループ1:特定管理食品  (例)牛乳、アイスクリーム、乳製品等

グループ2:品質規格管理食品  (例)ミネラルウォーター、チョコレート、油脂、茶、コーヒー、バター等

グループ3:表示管理食品  (例)パン、ガム、あめ、調理済み食品等

グループ4:一般食品  グループ1から3以外の全ての食品

上記分類により、食品輸入申請の際の必要書類や、食品登録の有無や表示許可の有無などが異なります。この分類の定義は、あいまいな点もあるため、どの分類に該当するかは、申請前にFood and Drug Administration:FDA(食品医薬品局)に確認すべきでしょう。食品を保管する場所を確認するため、食品保管施設の設置場所を示す地図、食品保管施設内部図面、食品の品質を維持するための設備を示す書類、半径100 メートル以内の食品保管施設近隣建物の地図などが必要となります。

 必要書類をFDAに提出し、審査を経て問題がなければ許可証が発行されます。その後、手数料を支払い、食品輸入許可証を受領する流れとなります。

(3) 食品登録許可申請

 上記分類のうち、グループ1から3については輸入に際しFDAのワンストップサービスにおいて食品の登録を行う必要があります。申請後、審査を経て食品登録番号が発行されます。

(4) 表示許可申請

法第31 条において、上記分類グループ1の特定管理食品については、事前に食品の成分表を登録しなければならない旨、規定されています。特定管理食品以外でも、グループ2および3、サプリメントや食品に含まれる成分によっては、この成分表の登録が必要となる場合があります。

 申告に際しては、(1)食品の名称(2)食品を構成する材料の名称、分量(3)容器の容量(4)表示(5)製造者の名称及び場所(6)政府機関または委員会が認める機関の分析結果(7)商品の成分表登録に関するその他事項を通知する必要があります(法第35 条)。

3.マレーシア

(1) はじめに

食品の輸入を一般的に規制する法律としては、関税法(Customs ACT 1967)及び1983年食品法(Food Act 1983)があります。

(2) 1967年関税法(Customs ACT 1967)

1 輸入品目規制

1967年関税法の下位規則である2017年関税(輸入禁止)令(Custom (Prohibition of Imports) Order 2017)は一定の品目について規制を課しており、規制対象となる品目は、(a) 輸入が完全に禁止される品目(第一表)、(b) 輸入ライセンスを要する品目(第二表)、(c) 一定の手続を要する品目(第三表)、(d) 一定の規格及び手続を要する品目(第四表)という4分野に分かれます。

2 (a) 輸入が完全に禁止される品目(第一表)

輸入が完全に禁止される品目のうち、食品と関係しうるものとして蜂の巣(蜂蜜が含まれているか否かを問わない)があります。

3 (b) 輸入ライセンスを要する品目(第二表)

輸入ライセンスを要する品目に含まれる食品の例として、米や砂糖があります。

4 (c) 一定の手続を要する品目(第三表)

このカテゴリに含まれる食品の例として、肉類、魚介類があります。これらの食品の輸入については、品目に応じて、マレーシア検疫検査サービス局(MAQIS)による輸入許可の取得等の手続が要求されます。

5 (d) 一定の規格への適合及び手続を要する品目(第四表)

このカテゴリに含まれる食品の例として、小麦粉、一部の野菜(じゃがいも、トマト、玉ねぎ、キャベツ、にんじん等)(5kgを超過する場合)、ココナッツ(3kgを超過する場合)、一部の果物(バナナ、アボカド、ガバ、マンゴー、オレンジ等)(3kgを超過する場合)があります。

(3) 1993年食品法(Food Act 1993)

輸入される食品は、1983年食品法及びその下位規則である1985年食品規則(Food Regulation 1985)が定める安全性や表示に関する要件を満たすものでなければなりません。同法及び同規則によって規制されている食品の輸入に際しては、事前に輸出局の所管官庁により発行された衛生証明書(Health Certificate)、獣医局衛生証明書(Veterinary Health Certificate)、分析証明(Certificate of Analysis)等を取得する必要があります。

(4) 輸入時の手続 

食品の輸入手続の基本的な流れは以下のとおりです。これらの手続に加えて、品目に応じて上記規制に基づく手続が要求されることとなります。

1 食品の輸入者等はFood Safety Information System of Malaysia(FoSIM)に登録をします。

2 食品の輸入者等は個々の輸入に際しCustoms Information System(CIS)輸入の申告をし、FoSIMを通じて輸入の詳細(目的、食品の詳細等)に関する情報を提出します。

3 到着した食品に対し保健省(Ministry of Health)の職員による検査が実施されます。この検査の内容はFoSIMを通じて提供された情報に基づくリスク評価によって決められます。

4 課税対象となる場合、輸入者等は関税を支払います。

5 関税の支払及びその他の要件が満たされていると判断した場合、税関は輸入を承認します。

4.ミャンマー

(1) 食品輸入手続きに関する法規制

ミャンマーには食品を含めた物品の輸出入について広範に規制する輸出入法が存在し、同法及び関連通知に従い食品輸入を行う必要があります。

(2) 手続きの流れ

まず企業は、2020年10月22日に発布された通知第68号で規定されているH.S Codeに基づき、輸入ライセンスを申請する必要があるか否かを確認する必要があります。ライセンスが必要である場合、申請のためにまずは①輸出入業者登録証明書及び②保健スポーツ省下の食品医薬品局(FDA)から輸入推薦状及び衛生証明書を取得する必要があります。その後輸入ライセンスの取得となります。

(3) 輸出入業者登録証明書

①の輸出入業者登録証明書の取得にあたり、まず企業はTrade Netのメンバーになる必要があります。その後、以下の必要書類を揃えることでウェブサイト(http://myanmartradenet.com/)を通して申請することができます。Trade Netのメンバー登録も同ウェブサイトより申請可能です。証明書の有効期限は5年間で、料金は200,000チャットになります。

  1. カバーレター
  2. 会社登記簿及びCompany Extract(双方ともにMyanmar Companies Online (MyCO)より取得)
  3. 取締役リスト(氏名、役職、住所、顔写真及び各取締役の署名の情報を含めること)
  4. 取締役のパスポート又はNRCの写し
  5. もしあれば、各許可証(MIC許可証、SEZ許可証、卸売又は小売事業ライセンス)

(4) 輸入推薦状及び衛生証明書

2の輸入推薦状及び衛生証明書について、双方とも食品医薬品管理局(FDA)に以下の必要書類を揃え申請する必要があります。

-輸入推薦状-

(a) 輸入推薦状の申請書(Form No.1)

(b) 誓約書(Form-D)

(c) 輸入食品の仕様書

(d) 食品の成分リスト

(e) 輸入国の組織からの証明書(GMP認証証明書/製品登録書/自由販売証明書等)

(f) 食品のサンプル

(g) パッキングの種類及びサイズのリスト

(h) 料金(商品ごとに50,000チャット)

-衛生証明書-

(a) 衛生証明書の申請書(Form B)

(b) パッキングリスト

(c) 輸入推薦状

(d) 船荷証券(Bill of Landing)

(e) 請求書

(f) ミャンマーで流通する食品サンプル

(g) 輸入申告/荷渡し指図書

(h) 研究室からの分析証明書

(i) 輸入国からの衛生証明書(もしあれば)

FDAが審査を行い、審査に合格した食品は輸入ライセンスを取得することでミャンマーへの輸入が可能となります。

(5) 輸入ライセンス

輸入ライセンスは商業省の貿易局(Department of Trade)に以下の必要書類を添えて申請する必要があります。

  1. 申請書(会社のレターヘッド付きのもの)
  2. 輸入オンライン申請書(600チャットの収入印紙のあるもの)
  3. プロフォーマ・インボイス(仕様の詳細、包装の形態、引き渡し期日などが記載されたもの)または売買契約書
  4. 輸入推薦状及び衛生証明書
  5. 輸出入者登録証

ライセンスの有効期限は3か月で、請求書の価格に応じて最低50,000チャットから最高70,000チャットとなります。

5.メキシコ

メキシコへの食品の輸入に関して参照すべき法令等は、関税法(Ley Aduanera)、関税法規則(Reglamento de la Ley Aduanera)、貿易法(Ley de Comercio Exterior)、貿易法規則(Reglas Generales de Comercio Exterior)、保健一般法(Ley General de Salud)、輸出入一般税法(Ley de los Impuestos Generales de Importación y de Exportación)、その他各種税法、食品の安全衛生基準や包装、表示に係る基準等を定めるNOM(Norma Oficial Mexicana/公式メキシコ規格)などが挙げられます。また、関連する行政機関も、国税庁(Sservicio de Administración Tributaria: SAT)、経済省(Secretaría de Economía)、農業・農村開発省(Secretaría de Agricultura y Desarrollo Rural)、環境資源省(Secretaría de Medio Ambiente y Recursos Naturales)、保健省(Secretaría de Salud)などがあります。通関手続きについては、貿易デジタル窓口(Ventanilla Única de Comercio Exterior Mexicano/VUCEM)が設けられ、ペーパーレス化が図られており、当該窓口を通じて行わなければなりません。一口に食品と言っても、多岐にわたることから、本稿では清酒(最終消費者向けにパッケージングされた商品でアルコール度数20%未満)を輸入する場合を例に紹介します。なお、アルコール飲料の名称、理化学的特性、商業情報及び試験方法を定める基準(NOM-199-SCFI-2017)によると、清酒(SAKE)は、米の発酵によって得られるアルコール飲料でアルコール度数2%~20%のもととされており、また、製品・サービスの衛生管理規則によると、その多くがアルコール含有量中度(6.1%~20%)のアルコール飲料(contenido alcohólico medio)に分類されると考えられます。

  まず、メキシコ国内で流通する食品等はメキシコが定める衛生、包装、表示等の基準を満たす必要があり、表示にはスペイン語を使用しなければなりません。例えば、表示については、アルコール飲料の衛生基準及び衛生的・商業的表示基準(NOM-142-SSA1/SCFI-2014)に従い、商品に、商品の名称、輸入事業者名とその住所、内容量、原産国(“Producto de ____”, “Hecho en ______”, “Manufacturado en _____”, “Fabricado en _____”など)、ロット番号(”LOTE”, “Lot”, “L”, “Lote”, “lote”, “lot”, “l”, “lt”, “LT”, “LOT”などを付す)、消費期限及び保存に必要な条件(例:「開封したら冷蔵してください」)、アルコール度数(20℃での含有量、”% Alc. Vol.”, “% Alc Vol”,”% alc. vol.”, “% alc vol.”のいずれかを用いる)、成分(アレルゲンを含み、定量順に記す)、警告文(”EL ABUSO EN EL CONSUMO DE ESTE PRODUCTO ES NOCIVO PARA LA SALUD”(本商品の飲み過ぎは健康に害を及ぼす)の表示、容器の大きさに応じた文字の大きさの指定あり)、低カロリーである旨の表示(オリジナルのカロリーと比較して24%以上カロリーが低い場合に可)、エネルギー含有量、18歳未満の飲酒の禁止、妊娠中の飲酒の禁止、飲酒後の運転の禁止を示す規定のマークを必ず表示しなければなりません。その他、消費者に誤解、誤認を与えない範囲において、商品の歴史や商品を用いたレシピ、キャッチコピーなどを表示でき、そのような情報はスペイン語である必要はありません。表示等については、指定認証機関にあらかじめそのサンプルを送付して適合証明書を発行してもらい、その証明書を輸入申告書に添付する方法や指定認証機関として認定されている保税倉庫との契約によって、当該倉庫業者が貼付する方法などにより基準に準拠することを示さなければなりません。

輸入にあたっては、輸入者は、商品の発送に先立ち輸入事業者として国税庁への登録を行わなければなりません。この登録には、輸入事業者の納税者番号(RFC)や電子署名(e.firma)、税務住所が必要となり、税の滞納がないことが条件となります。また、アルコール飲料の輸入には、特別税(Impuesto Especial sobre Producción y Servicios:IEPS)も課されますので、同時に酒類納税者登録も必要となります。この登録を行うことにより、IEPS法により求められるアルコール飲料の容器に貼付しなければならないシールの発行を申請することが可能となります。なお、このシールは、商品がメキシコ国内に入る前、つまり保税倉庫等において、貼付しなければなりません。また、VUCEMへの利用者登録も必要となります。

輸入に際しては、通関時に提示が必要となる輸入商品の価格を証明する書類(インボイス等)、船荷証券(B/L)や航空貨物運送状(AWB)、非関税輸入規制を遵守していることを証明する書類(製造者から提供される衛生登録や分析に関する証明書、前述の適合証明書など)、原産地証明書(必要な場合)といった書類を事前にVUCEMを通じて送信しなければなりません。商品到着後、通関手続き、関税の支払いを経て商品はメキシコ国内に搬入されることとなります。

6.バングラデシュ

(1) 輸入政策令による輸入禁止・規制品目

輸入禁止品目に含まれる食品として「生きている豚、及び豚から作られたもの全て」、輸入規制品目に、「エビ、けしの種およびポスタダナ香辛料」が含まれています。

(2) 輸入通関時に検査の対象となる検疫、食品、安全などに関連する規制

1 放射能レベル検査

他国で生産された食品を輸入する場合は、品目の放射能レベルの検査が義務付けられており、当該食品が人間の摂取に適していることを示す証明書の提出が求められます。

2 消費期限

食品及び飲料を輸入する場合は、製造年月日及び消費期限を各包装又は容器に直接印刷しなければなりません。

3 法定検査

バングラデシュに輸入する食品は全て、バングラデシュ基準検査機関及びバングラデシュ科学工業研究評議会による法定検査を受けなければなりません。

(3) 輸入業者の登録制度

輸入業者は営業許可証を取得し、さらにバングラデシュの認可された商工会議所又は貿易強化に会員登録の上、両機関のいずれかが発行する「輸入登録証明書」を取得しなければなりません。

バングラデシュに登録された外国企業は、商業省の事前許可なしに商業輸入登録証明書が交付され、商業品目の輸入が認められます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2020年12月24日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

11月から感染者数が増加しており、1日あたりの新規感染者数が過去最多を更新するなど、感染が拡大しています。政府によるGo Toトラベルは一部地域での一時停止など運用が見直され、東京、北海道、大阪、愛知で飲食店やカラオケ店の時短営業が要請されるなど、規制が厳しくなりつつあります。

(2) 入国規制

1 上陸拒否措置等

(a) 上陸申請日前14日以内に上陸拒否の対象である国・地域に滞在歴のある外国人については、「特段の事情」がない限り、上陸が拒否されます。なお、10月30日に、以下の国・地域について、上陸拒否対象指定の解除及び追加指定が決定されました。

上陸拒否対象指定の解除:

オーストラリア、シンガポール、タイ、韓国、中国(香港及びマカオを含む)、ニュージーランド、ブルネイ、ベトナム、台湾

上陸拒否対象への追加指定:

ミャンマー、ヨルダン

(b) 上陸拒否の非対象地域からの入国は、在外公館において査証の発給を受ける際、防疫措置に関し、受け入れ企業・団体による誓約書を提出する必要があります(日本人・永住者の配偶者又は子等、人道上の配慮の必要性がある場合は誓約書不要)。また、「短期滞在」は商用に限られます。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(法務省)

2 検疫の強化(日本国籍者も対象)

14日以内に、上記1の上陸拒否対象国に滞在歴のある入国者は、PCR検査の実施対象となります。また、全ての地域からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で14日待機し、国内において公共交通機関を使用しないよう要請されます。

水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)(厚生労働省)

3 査証に関する制限(既に発給された査証の効力停止、査証免除措置の停止)

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省)

4 航空機の到着空港の限定等

(3) 国際的な人の往来の再開 (外務省の関連サイト

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域(タイ、ベトナム、豪州、ニュージーランド、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、ブルネイ、韓国、中国、香港、マカオ、モンゴル)との協議を開始し、以下の国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用が開始されています。これらのスキームの利用対象者は以下の通りです。

(a) 短期滞在以外の全ての在留資格又は短期商用査証により本邦に入国する者を対象とし、詳細につい  

ては対象国・地域ごとに調整。

(b) 日本又は当該対象国・地域に居住する者(当該対象国・地域の国籍保有者だけではなく、第三国国籍 

の方を含む)であって、日本と当該対象国・地域の間の航空便(直行便の他、経由する国・地域に入国・

入域許可を受けて入国・入域しないことを条件に経由便も可。)を利用する者。

1 ビジネストラック: シンガポール、韓国、ベトナム

2 レジデンストラック: タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、      

ブルネイ、韓国

2.タイ

タイのCOVID-19の累計感染者数は3,998名です。この内、3,803名が回復し、現在医療機関で治療中の者は108名となっています。

(1) COVID-19関連の規制状況

11月23日、タイ政府は11月30日までとしていた非常事態宣言を、2021年1月15日まで延長することを閣議決定しました。

(2) 日本からタイへの特別航空便

現在、日本からタイ入国のための特別便が準備されています。在東京タイ王国大使館のHPにおいて、随時情報が発表されています。12月の特別便(羽田、成田発)については、12便が運航を予定しています。

また、関西国際空港発特別便として、12月は4便が運航を予定しています。こちらについては、タイ王国大阪総領事館のHPにおいて情報が発表されています。

これら特別便により渡航を希望する者は、入国許可書(COE)をタイ王国大使館に申請する必要があります。

(3) 特別観光ビザ(STV)によるタイ入国

特別観光ビザ(STV)は、タイ保健省が定めるCOVID-19感染拡大国リストの「低度感染危険国」から入国する者のみ申請可能です。11月1日現在、日本は、「中度感染危険国」に指定されており、当該ビザ所持者によるタイ入国はできません。感染リスクレベルが変更された場合には、在東京タイ王国大使館のHPにおいて発表される予定です。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

11月9日に期限を迎える予定であったサバ州及びスランゴール州、クアラルンプール及びプトラジャヤの全域を対象とする条件付き活動制限令(CMCO)が12月6日まで延長され、さらに7つの州が同CMCOの適用対象に加えられました(本稿執筆時点においていくつかの州においては適用が解除され、回復のための活動制限令(RMCO)へと移行しています。)。

(マレー半島における)CMCOの適用対象地域における現在の活動基準(SOP)は以下のとおりとされています。

1 移動への制限

(a) CMCO対象地域の地区(district)又は州をまたぐ移動は禁止されます。

*1 通勤又は業務のために地区又は州をまたぐことは、被用者が雇用者からのワークパス又は許可書を所持していれば許容されるものとされています。また、警察の許可を取得している場合も例外とされています。

*2 クアラルンプール及プトラジャヤは、それぞれ1つの地区として扱われています。

(b) レストランでの飲食及び生活必需品の購入のための外出は、1世帯につき3名までとされます。

2 店舗等の営業時間への制限

店の種類ごとに、営業時間の制限が定められています。

3 経済活動への制限

経済産業部門は、活動基準(SOP)に準拠して活動を継続することが可能とされています。ただし、業務継続計画(Business Continuity Plan)で示されたカテゴリーを除き、従業員を在宅勤務させる必要があります。

4 その他活動への制限

(a) 全ての観光、レジャー、レクリエーション、文化活動は原則として禁止されます。

  • 連邦直轄区(クアラルンプール、プトラジャヤ)内の公園の使用は可
  • CMCO対象地域内でもグリーンゾーン間での観光は可

なお、スランゴール州においては、活動への参加は5名までとされています。

(b) 水泳、身体的接触、格闘技、スポーツ/トーナメント(観客の前でのスポーツイベントや競技会、海外

からの参加者が参加するスポーツイベントや競技会)は原則として禁止されます。ただし、以下の活動は可能とされています。

  • 個人のスポーツ活動、eスポーツ、非接触スポーツ、10人以下のアウトドアスポーツ
  • トレーニング目的での、10人以内での商用スポーツ施設、サッカー場・フットサル場の使用

なお、スランゴール州においては、スポーツ活動への参加は5名までとされています。

(c) 学校、幼稚園・保育園、私営・公営の高等教育機関は原則として閉鎖されます。

(d) 塾、音楽教室、ダンス教室、語学教室等は許可されません。ただし、1対1の個人レッスンは可能とされています。

(e) 展示会等に関連するセミナー、ワークショップ等や式典、誕生会、同窓会、懇親会は禁止されます。

(f) 政府及び民間組織による、部外者が参加する対面式の会議は原則として禁止されます。

(2) 入国規制

2020年11月10日付で公表された、国際入国地点における「要観察者(PUS;Person Under Surveillance)」の取り扱いは以下の通りです。 

  • マレーシア入国時、入国者はPUSのステータスとなり、COVID-19検査の受検が必須となります。
  • 受検費用は、PCR検査がRM250、迅速抗原検査キットがRM120となります(外国人の場合)。
  • 検査結果陽性の場合は、速やかに病院へ搬送されることとなります。
  • 検査結果陰性の場合、外国人PUSは、2020年11月15日より、最初の検査、13日目の検査及び隔離に係る費用を、「MySafeTravel」又は「MyQRアプリ」を通して支払う必要があります。
  • 各費用は以下のとおりで、各人はRM4,880又はRM5,010を支払うこととなります(この金額については、変動がありえます。)。
  • 上記支払いを怠った者は入国管理局に引き渡され、国外退去の対象となります。
  • 全てのPUSは、入国管理局のLOU審査プロセスを経る必要があります。
  • 追加的な費用負担のもと、強制隔離をホテルにて行うことも可能とされています。

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

11月8日に5年ぶりの総選挙が実施され、与党のNLDが過半数を維持しました。そのため、大きな政策の変更はないと思われ、COVID-19関連の規制も含め、多くの規制は維持される見通しです。現時点のCOVID-19関連の規制としては、30名以上の集会禁止措置(通勤等は除外されます)及びヤンゴン地域における深夜0時から午前4時までの夜間外出禁止措置が維持されています。法令上、工場、店舗、飲食店等においてはガイドラインを順守し、グレードAを取得した場合にのみ操業を再開できるとされているものの、事実上多くの店舗がグレードAを取得しないまま操業を再開するなど、規制の一部は有名無実化しています。

(2) 入国規制

海外からの入国については、12月31日まで国際旅客機の着陸禁止が延長されており、ビザ発給停止については12月15日まで延長されています。また、唯一の直行便のANAが12月から年末年始を除き水曜日、金曜日、土曜日に運航されます。しかし、ほとんどは貨物便であり、救援便は3便であり、日本人枠は3便合計60が見込まれています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19感染者は増加傾向に転じており、保健省は、アグアスカリエンテス州、コアウイラ州、メキシコシティ、ヌエボレオン州、ケレタロ州、サカテカス州の6州は赤に限りなく近い状況と注意喚起を促しています。11月23日の週には、チワワ州に加え、ドゥランゴ州が感染リスクを示す連邦政府の信号システムにおいて最大の警戒対象となる赤となりました。一方、チアパス州はこれまでの黄色から緑に転じるなど、メキシコ南東部では落ち着きを見せています。

連邦政府による新たな規制は見られませんが、アグアスカリエンテス州では、11月17~30日の期間、医療や治安関連業、生活必需品を扱う商店などを除き、原則、同時に5人を超える顧客に対しサービスを提供する商業、サービス業の操業が禁止されました。また、ケレタロ州においては、11月26日以降、これまでの信号システムとは異なる新たな基準を設け、活動ステージをA,B,C(Aが最も活動できるステージ)の3つに分け、経済活動の範囲を規制しています。11月30日現在のステージはBとなり、飲食店や商業施設の収容人数の縮小や営業時間の短縮、アルコール飲料の販売規制などが実施されています。メキシコシティでも必要不可欠でない商業施設等の営業時間が短縮、アルコール飲料の販売規制がなされるなど、州レベルにおいて新たな事業活動の制限などがみられます。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、11月19日にメキシコ政府合意のもと12月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

新規感染者・死亡者ともに、前月と比較すると増加傾向にあり、新規感染者数が1日あたり2000人を超える日が続いています。バングラデシュ内務省が発表した9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があり、入国後の14日間の自主隔離も引き続き要請されています。

第2.各国の株主総会に関する法規制の概要

1.日本

(1) 株主総会の権限

1 取締役会を置いていない場合

株主総会は、「株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」と定められています(会社法295条)。

2 取締役会を置いている場合

株主総会は、法定事項(取締役や監査役の選任や解任など重要な人事、定款の変更や会社合併など組織の形態、剰余金の配当や役員報酬など株主の利益等)及び定款で定めた事項について決議をすることができます(会社法295条2項)。

(2) 株主総会の種類

1 定時株主総会

毎事業年度の終了後一定の時期に招集することが定められています(会社法296条)。定款に定めがあれば原則その時期内に開催することになりますが、法務省が公表した2020年2月28日付「定時株主総会の開催について」によれば、新型コロナウイルス感染症に関連し、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるとされています。

2 臨時株主総会

会社の合併や分割、株式交換など株主総会で決議されるべき重大なことが発生した際に臨時に行われるもので、時期や回数などに制限はありません。

(3) 株主総会の招集

1 招集の決定及び招集権者

株主総会を招集するためには、日時・場所や目的、欠席株主の議決権の行使等について決定し(会社法298条)、取締役が招集します(会社法296条3項)。なお、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヶ月以上前から保有している株主(公開会社でない株式会社の場合は、議決権保有期間の要件なし)は、株主総会の目的と招集の理由を示した上で、株主総会の招集を請求することができます。また、請求したにも関わらず招集手続きが取られない場合には、裁判所の許可を得たうえで株主総会を招集することができます(会社法297条)。

2 招集の通知

株主総会の招集は、書面又は(株主の承諾がある場合)電磁的方法により、株主総会の日の2週間前まで(公開会社でない場合は1週間前まで)に、通知しなければなりません。公開会社でない株式会社で、取締役会設置会社でない場合は、定款で1週間以下の期間を定めることもできます(会社法299条)。なお、経済産業省及び法務省による令和2年4月2日付「株主総会運営に係るQ&A」において、新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一環として、出席を控えるよう呼びかけることは、株主の健康に配慮した措置であるとされ、その際には、併せて書面や電磁的方法による事前の議決権行使の方法を案内することが望ましいとされています。

(4) 株主総会の決議

1 普通決議

役員の報酬や取締役・監査役の選任など、法律や定款に特別な定めがない事項について決議します。議決を行うためには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数が出席することが必要で、出席者の議決権の過半数により決議されます(会社法309条)。

2 特別決議

会社法で定められた、より重要とみなされる事項を決議するためのものです。定款の変更、事業の譲渡、解散、組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転、資本金の減少などが挙げられます。特別決議を議決するためには、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数が出席することが必要で、出席者の議決権の賛成が3分の2以上で決議されます(会社法309条2項)。

3 特殊決議

(a) 会社法309条3項による特殊決議

全株式を「譲渡制限株式」とする定款の変更、吸収合併契約の承認、新設合併契約の承認については特殊決議が行われ、議決を行うためには、議決権を行使することができる株主のうち過半数の出席が必要で、議決権の3分の2以上の賛成をもって決議されます。

(b) 会社法309条4項による特殊決議

「配当、分配、議決権につき株主ごとに異なる取り扱い」を定款で定める場合で、議決を行うためには総株主の半数以上の出席が必要で、議決権の4分の3以上の賛成をもって決議されます。

(5) 議事録の作成と保存

株主総会の議事録の作成が義務付けられています(会社法318条1項、会社法施行規則72条)。

2.タイ

(1) 株主総会の種類

株主総会には、1定時株主総会(会社登記日から6か月以内に開催し、その後は少なくとも12か月以内に1回開催するもの)と、それ以外の2臨時株主総会が存在します。

(2) 決議事項

株主総会においては、会社に関する様々な事項について決議を行うことができます。タイ民商法典においては、法定の決議事項として、普通決議事項と、特別決議事項が定められています。

普通決議事項としては、財務諸表の承認、取締役の選任・解任・報酬決定、会計監査人の選任・報酬決定、配当決定等が定められています。

特別決議事項としては、基本定款・付属定款の変更、新株発行による増資、減資、解散、合併等が定められています。

(3) 招集の方法

議題が普通決議事項のみの株主総会の場合、株主総会招集通知を、総会開催日の7日前までに、地元新聞へ公告を1回掲載し、株主名簿に記載されている株主全員へ配達記録付郵便で送付する必要があります。

議題が特別決議事項を含む株主総会の場合、株主総会招集通知を、総会開催日の14日前までに、地元新聞へ公告を1回掲載し、株主名簿に記載されている株主全員へ配達記録付郵便で送付する必要があります。

招集通知には、株主総会の開催場所、日時、議題の内容を記載する必要があります。

(4) 定足数

会社の資本の4分の1以上の株式を有する株主の出席が必要となります。

(5) 議決権行使の方法

付属定款に別段の定めがない限り、原則として、1株主1議決権の挙手による議決権行使となります。しかし、別途付属定款において、議決権について秘密投票によるとの定めをしている場合、1株1議決権の投票による議決権行使とすることが可能です。また、2人以上の株主が秘密投票を要求した場合も、秘密投票による議決権行使とすることが可能です。

また、代理人による議決権行使も認められおり、その場合は、当該委任について書面により代理権の授与を行う必要があります。そして、当該書面は株主総会の開始時までに、議長に提出する必要があります。

なお、株式についての払込みが完了していない株主は、株主総会における議決権を有しません。また、議題について利害関係を有する株主については、当該議題について議決権を有しません。

(6) 決議

普通決議事項については、出席株主の過半数の賛成により可決されます。賛否が同数の場合は、株主総会の議長が決定票を投じることになります。

特別決議事項については、出席株主の4分の3以上の賛成により可決されます。

(7) 議事録の作成と保管

取締役は、株主総会の議事録を作成し、その議事録を会社事務所に保管しなければなりません。

3.マレーシア

マレーシアにおける会社の運用は2016年会社法(Companies Act 2016)によって規律されています。同法は、株主総会の運用について、以下のような規定を置いています。

(1) 株主総会の招集

株主総会の招集権者は、取締役会又は株主とされています。株主については、発行済み株式の10%以上を有する株主が招集権を有しますが、定款で10%未満の株主に招集権を付与することも可能です。また、10%以上の議決権を保有する株主は、取締役に対し株主総会の招集を請求することができます。

(2) 招集通知

招集通知は、ハードコピー又は電子的方式若しくはそれらを併用する形で文書により行う旨が規定されています。 

(3) 議長

定款に議長に関する規定を置いていない場合、取締役会長(the chairman of the Board)が株主総会の議長を務めることとされています。

取締役会長が存在しない場合、株主総会開催のために指定された日時から15分以内に議長となるべき人物が現れない場合又は当該人物が議長を務める意思を有さない場合、株主総会の出席者が出席者の中から議長を選任することができます。

(4) 定足数

株主総会を進めるために必要な定足数は、以下のとおりです。

 1 株主が1名のみの場合、当該株主の出席により定足数を充足する

 2 1以外の場合、2名の株主又はその代理人の出席により定足数を充足するが、定款でより多い人数を定めた場合はその人数

出席者が、総会開始の時点で定足数に満たない場合、株主総会を進めることはできません。また、定款で別途規定する場合を除き、指定された開始時刻から30分以内に定足数が充足されない場合、翌週の同一曜日の、同一の時刻、場所(又は取締役が別途決定した場合は当該決定された日時、場所)に延期されるのが原則ですが、株主の請求により開催された株主総会については取消しとなります。

(5) 普通決議と特別決議 

1 普通決議(Ordinary resolution)

普通決議は、議決権を有する株主の過半数の賛成により可決されます。決議が挙手により行われる場合、株主総会に出席した議決権を有する株主(株主の代理人も含む)の単純過半数の賛成により、決議が投票により行われる場合、投票された議決権総数(委任状による投票を含みます)の半数を超える票の賛成により、普通決議は可決されます。

 2 特別決議(Special resolution)

特別決議は、議決権を有する株主の75%が賛成することにより可決されます。決議が挙手により行われる場合、株主総会に出席した議決権を有する株主(株主の代理人も含む)の75%以上の賛成により、決議が投票により行われる場合、投票された議決権総数(委任状による投票を含みます)の75%を超える票の賛成により、特別決議は可決されます。定款の変更や減資等については、特別決議により決議されることが要求されます。

3 定款による規定

決議の種類が条文上定められていない場合、当該事項についての決議は普通決議で足ります。もっとも、定款に定めを置くことにより一定の事項を特別決議事項とすることができるため、自身が少数株主の場合には一定の重要な事項について特別決議を要求する旨の定款の定めを置くよう要求することが考えられます。

(6) 採決

採決が挙手により行われる場合には、1人が1票を有するものとして扱われ、採決が投票により行われる場合には、保有株式1株につき1票を有するものとして扱われます。

2016年会社法上、採決は原則として挙手による旨規定しています。但し、以下の者が採決の結果を宣言する前に、投票による採決を請求した場合は投票による採決を行う必要があります。

1 議長

2 出席した株主又は代理人のうち3名以上の者

3 出席した株主又は代理人のうち議決権割合が総議決権の10%以上となる者

4 総議決権数の10%以上を有する株主

また、BMLR(Bursa Malaysia Listing Requirements)は、上場会社は全ての採決を投票により行わなければならないとしています。

(7) 定期総会

1 非公開会社の場合

2016年会社法の下では、非公開会社は定期総会を開催する義務を負わないとされています。

2 公開会社の場合

公開会社は、定期的に株主総会を開催する必要があります。新しく設立された公開会社については、設立後18か月以内に株主総会を開催する必要があります。その後は、1年に1回、定期総会を開催しなければなりません。開催時期は、会計年度終了時から6ヶ月以内であり、かつ2最後に開催された定期総会から15カ月以内である必要があります。但し、会社はSSM(会社委員会)に開催時期の延期を申請することができます。

(8) 書面による決議

同法は、株主の決議を書面で行うことを認めていますが、書面による決議は非公開会社(private company)のみが利用することができ、また、取締役の解任及び監査役の解任に用いることはできないものとされています。

書面による決議は、株主への回付の開始後28日以内に議決される必要があり、同期限を経過してなされた署名は効力を有しません。但し、上記期限は定款で変更することができます。

(9) 決議の記録

1 議事録等の保管

会社は、株主総会に関して以下の記録を保管する必要があります。

(a) 株主総会以外で行われた、株主による全ての決議(書面による決議を含む)

(b) 株主総会の議事録

(c) 同法344条に従い会社に提供された事項

上記の記録は、決議がなされた日又は株主総会の開催日から起算して7年間保管されなければなりません。マレーシアでは、株主総会に関する記録は会社秘書役が保管することが実務上通常となっています。

2 記録の閲覧

株主は、保管されている議事録等について、会社のRegistered Office又は会社から通知された特定の場所において、無償で閲覧する権限を有します。また、株主は、会社に請求したときから14日以内に、議事録等の写しを取得することができます。

4.ミャンマー

(1) 株主総会の種類

株主総会には 1年次株主総会 2法定株主総会(公開会社及び株式資本を持つ有限責任保証会社の場合)3特別株主総会(12以外に定められたその他の総会)の3種類が存在します。しかし、日系企業はほぼ全て非公開有限責任株式会社であり、かつ、特別総会の開催は少ないことから、以下では1年次株主総会についてのみ解説します。

(2) 開催時期

設立から18カ月以内、その後の後少なくとも毎暦年1回、前回の開催から15ヶ月以内に総会開催する必要があります。ただし、同条は小規模会社(公開会社及びその子会社以外の会社であって、その会社及びその子会社の従業員数が30名以下であり、かつその会社及びその子会社の、前会計年度の年間売上が総額50,000,000チャット未満である会社)には同規定は適用されません。

(3) 招集方法

1 通知

株主総会は、書面による21日以上前の通知(又は会社の定款により長い期間が定められている場合はそれ以上前の通知)もしくは公開会社の場合は書面による28日前以上前の通知によって招集することができます。ただし、特定の総会につき通知の受領権限がある株主全員の同意を得れば、株主が適切と考えるより短い期間で、株主が適切と考える方法によって総会を開催することもできます。書面による通知は、議決権を有する全ての株主、取締役及び監査人に宛ててなされる必要があります。

2 招集権者

(a) 取締役による招集

随時、取締役会の議長が召集することができます。または、定款の規定に従い、定款に規定されているその他の取締役又はその他の人(一名又は複数)が招集することができます。

(b) 株主による招集

定款の規定にかかわらず、株式資本を有する会社の取締役は、株主総会で議決可能な総議決権の1/10以上を保有する株主の請求又は少なくとも100名の総会において議決権を有する株主の請求があった場合は、実施を提案された議事が、総会で適切に検討することができる種類のものであれば、直ちに株主総会の招集手続きを進める必要があります。なお、裁判所命令による招集も存在します。

3 通知の記載事項

(a) 総会の場所、日時

(b) 総会の議事の一般的性質(the general nature of the meeting’s business)

(c) 総会が年次総会、法定総会又は特別総会のいずれであるか

(d) 総会で提案される決議案(株主が提案した特別の決議又は普通決議を含む)。必要な説明資料を添付した上で記載する必要があります。

(e) 代理人又は企業代表者の任命に関する情報及び指示(そのような任命の通知を受け取ることができる期間及びその通知の送付方法を含む)

(f) 定款又は本法規定その他の必要情報

4 通知方法

総会の書面による通知は、総会で議決することができるすべての株主、すべての取締役及び監査人に行う必要があります。通知は以下の方法で行うことも可能です。

(a) 手交

(b) 株主登録簿に記録された株主の住所又はこの目的のために株主から通知されたその他の住所への郵便その他の直接送付

(c) この目的のために株主から通知されたファックス番号又は電子アドレスに電子的に連絡

(d) 定款に明記された方法

(4) 決議

各株主は一名につき1つの議決権を持つ挙手決議と、一株につき株式に1つの議決権を持つ投票決議の二種類の議決が存在します。株主総会で票決に付された決議は、投票決議が要求されない限り、挙手決議によって決定されます。

株主総会決議には、普通決議(Ordinary Resolution)と特別決議(Special Resolution)の2つが存在します。普通決議は、総会出席者の単純過半数を決議要件としています。特別決議は、出席株主の4分の3以上の賛成です。いずれも委任状による議決権行使を含みます。特別決議については日本よりもハードルが高いことに留意が必要です。

(5) 書面決議

決議に投票することができるすべての株主が、その文書に記載された決議を支持する旨の陳述を含む文書に署名する場合、非公開会社は総会を開催することなく総会決議を成立させることができます。同じ形式の書類の別個の写しに署名することができ、その場合最後の株主が署名するときに決議が成立します。

(6) 議長

会社の定款に従い、取締役らによって選出された者が議長を務めます。但し、その者が会議に出席しない場合は、出席株主が議長を選任します。

(7) 議事録

会社法上、株主総会及び書面決議の全ての手続きについての議事録を準備する必要があります。当該議事録又は書面決議は株主総会の開催又は書面決議による決議から21日以内に記録する必要があり、議長又はその他の権限のある取締役により署名する必要があります。

株主総会及び書面決議の手続きについて、議事録を含む記録は、会社の登記事務所又は会社法に基づき会社の登記簿が保管されているその他の場所において保管する必要があり、営業時間中株主に対して無償で閲覧に供する必要があります。

 また、株主は株主総会から7日経過後はいつでも会社に対し、議事録又は決議の写しを要求してから7日以内に取締役会で定めた合理的な金額でこれらを提供するよう求めることができます。

5.メキシコ

(1) 株主総会の種類

メキシコの株式会社における株主総会には、1通常総会と2特別総会が存在します。決議事項によって、必要な株主総会が振り分けられます。

1 通常総会(La Asamblea Ordinaria)

決議事項: 特別総会決議事項を除き、広く通常総会の決議事項とされています。そのほか、取締役の事業報告、取締役・取締役会及び監査役の選任、取締役および監査役の報酬なども決議事項に含まれます。

開催時期: 通常総会は、会計年度終了後4ヶ月以内に1年に1回以上開催されます。メキシコの事業年度は暦年のため、毎年4月末日までに開催が必要となります。

定足数・多数決要件: 資本金の2分の1以上の株式が定足数とされ、多数決要件は出席した議決権の過半数になります。

2 特別総会(La Asamblea Extraordinaria)

決議事項: 会社の存続期間の延長、期限前の解散、資本金の増減、会社の事業目的の変更、会社の国籍変更、会社の組織変更、合併、優先株式の発行、自己株式の償還と享受株式の発行、社債発行、会社設立契約の修正、法律または会社契約で特別定足数を必要とするすべての事項

開催時期: 時期の限定はありません。

定足数・多数決要件: 会社契約で別の定めがない限り、資本金の4分の3以上の株式が定足数とされ、多数決要件は資本金の2分の1以上の株式となります。

(2) 開催場所

 株式会社の所在地で開催しなければなりません。

(3) 招集

1 招集権者 

原則として、取締役もしくは取締役会、または監査役が招集することになります。

2 株主による招集請求権

(a) 少数株主権

資本金の33%以上を有する株主は、書面により、株主総会の招集を取締役、取締役会または監査役に請求することができます。

取締役、取締役会または監査役が招集を拒んだ場合、あるいは、請求を受けた日から15日以内に召集しない場合、資本金の33%を有する株主が請求することにより、招集は会社の所在地を管轄する裁判所により行われます。

(b) 単独株主権

2年連続で総会が開催されていない場合等は、1株の株主でも招集を請求できます。

取締役、取締役会または監査役が招集を拒み、または請求を受けてから15日以内に招集しないときは、取締役、取締役会および監査役に請求書を送付した後、裁判官が招集の手続きをとることとなります。

(4) 招集の方法

総会は、定款に定められた事前通知とともに、経済省の定める電子システムに公告することによって招集されます。定款に記載がない場合には総会の15日前までに通知することにより招集されます。この間、事業報告書は、会社の事務所において株主に閲覧させなければならないとされています。

総会の招集状には、議題及び作成者の署名がなければなりません。

上述の招集方法に違反して採決された総会の決議は、決議時に全員出席でなければ無効とされています。

(5) 審議および決議

1 議事運営

株主総会の議長は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役または取締役会がこれを行い、これに欠けるときは出席した株主が指名した者がこれを行うこととされています。

2 議事録

株主総会の議事録は、記録され、議長、秘書役および出席した監査役が署名しなければなりません。適法な招集が行われたことを証する文書が議事録に追加されます。

(6) 議決権の代理行使

 株主は、代理人(株主であるかを問わない。)をもって議決権を行使することができます。代理権は、定款に定められた方法で、また、定めがない場合には書面で与えられなければなりません。

会社の取締役および監査役は、いずれも代理人になることはできません。

6.バングラデシュ

会社法(1994)にて、株主総会について定められています。

(1) 株主総会の種類

1 定時株主総会

全ての会社は暦年に一度、かつ前回の定時株主総会から15か月以内に定時株主総会を開催することが義務付けられています。なお、最初の株主総会の開催は会社の設立日から18か月以内まで猶予されます(会社法81条1項)。取締役の任命(91条)、決算報告(183条)や事業報告(184条)、監査人の選任の決議(210条)などが行われます。

2 臨時株主総会

必要に応じて不定期に開催されます。株式資本を有する会社は、発行済株式総数の10分の1以上の株式を有する株主の請求があった場合、株式資本を有しない会社は、議決権の10分の1以上を有する株主の請求があった場合に、取締役は臨時株主総会を招集しなければなりません(84条1項)。取締役が請求日から21日以内に臨時株主総会を開催しない場合、請求日から45日以内に、株主は会議を召集することができますが、請求日から3か月以内に開催しなければなりません(84条3項)。

(2) 株主総会の招集

定時株主総会は、株主総会の日の14日前までに書面にて招集され、定時株主総会以外の株主総会又は特殊決議のための株主総会は、書面にて21日前までに招集されます(85条)。

(3) 株主総会の決議内容と要件

1 普通決議

決議内容:取締役の選任、取締役の報酬、配当、会計監査人の選任、決算書の承認等

決議要件:出席した株主の過半数

2 特別決議

決議内容:株主である取締役の解任、会社清算に伴う債権者と会社間の合意事項の決定等

決議要件:出席した株主の4分の3以上

3 特殊決議

決議内容:定款変更、商号の変更、減資、検査役の選任、監査役の解任、会社の解散等

決議要件:21日以上前に通知して開催した株主総会にて、出席した株主の4分の3以上

特別決議および特殊決議事項を決議した場合には、決議の日から15日以内に、登記局に対して通知義務があり、通知を怠った場合には、会社および役員に罰金が科されます(88条)。

会社は、株主総会および取締役会の議事録を作成し、登記上の事務所に備え付け、株主が無償で閲覧できるようにしておかなければなりません(89条(1)(4))。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2020年11月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

 

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

10月に入ってから、首都圏を中心に1日あたり300~700人程度の新規感染者が報告されています。政府によるGo Toキャンペーンとして、Go Toトラベル(旅行代金の補助)、Go Toイート(飲食店でのポイント付与や食事券)、Go To商店街(商店街のイベント等の支援)、Go Toイベント(イベントのチケットの割引・クーポンの付与)が実施され、経済の活性化への取組みが進められています。

(2) 入国規制

8月28日に決定された日本における水際対策措置が現在も有効で、主な措置は以下の通りです。

1 上陸拒否(日本上陸前14日以内に、指定する国・地域に滞在歴のある者等。日本国籍者は対象外)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(法務省)

2 検疫の強化(日本国籍者も対象)

14日以内に、上記1の上陸拒否対象国に滞在歴のある入国者は、PCR検査の実施対象となります。また、全ての地域からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で14日待機し、国内において公共交通機関を使用しないよう要請されます。

水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)(厚生労働省)

3 査証に関する制限(既に発給された査証の効力停止、査証免除措置の停止)

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省)

4 航空機の到着空港の限定等

(3) 国際的な人の往来の再開 (外務省の関連サイト

政府は、ビジネス上必要な人材等の出入国について、対象国・地域(タイ、ベトナム、豪州、ニュージーランド、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、ブルネイ、韓国、中国、香港、マカオ、モンゴル)との協議を開始し、以下の国・地域で、1 ビジネストラック、2 レジデンストラックのスキームの利用が開始されています。

1 ビジネストラック

入国後14日間の自宅等待機期間中も行動範囲を限定した形でのビジネス活動を可能とするスキーム

シンガポール、韓国

2 レジデンストラック

入国後14日間の自宅等待機は維持しつつ、双方向の往来を再開するスキーム

タイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、シンガポール、ブルネイ、韓国

また、10月1日から、全ての国・地域のビジネス上必要な人材、留学、家族滞在等の在留資格の者について、防疫措置を確約できる受入企業・団体がいることを条件に入国を認めています。

2.タイ

タイのCOVID-19の累計感染者数は3,763名です。この内、3,570名が回復し、現在医療機関で治療中の者は134名となっています。

(1) COVID-19関連の規制状況

10月28日、タイ政府は10月31日までとしていた非常事態宣言を、11月30日までさらに1か月延長することを閣議決定しました。

(2) 日本からタイへの特別航空便

現在、日本からタイ入国のための特別便が準備されています。在東京タイ王国大使館のHPにおいて、随時情報が発表されています。11月の特別便については、13便が特別便として運航を予定しています。

また、11月より新たに、関西国際空港発特別便が4便追加となっています。こちらについては、タイ王国大阪総領事館のHPにおいて情報が発表されています。

この特別便により渡航を希望する者は、入国許可書(COE)をタイ王国大使館に申請する必要があります。

(3) 特別観光ビザ(STV)・観光ビザ(TR)によるタイ入国

特別観光ビザ(STV)と観光ビザ(TR)は、タイ保健省が定めるCOVID-19感染拡大国リストの「低度感染危険国」から入国する者のみ申請可能です。10月22日現在、日本は、「低度感染危険国」に指定されており、当該ビザ所持者によるタイ入国が可能です。こちらについても、在東京タイ王国大使館のHPにおいて、随時情報が発表されています。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

2020年12月31日まで2020年感染予防管規則(感染地域における措置)(第8版)(Prevention and Control of Infectious Diseases (Measures within Infected Local Areas) (No.8) Regulations 2020)が引き続き適用され、以下の行為及び行列が禁止されています。

  • 観客が参加するスポーツイベント及び大会並びに海外からの参加者が関与するスポーツイベント及び大会
  • マレーシア国民による観光目的での海外渡航及び外国人による観光目的でのマレーシアへの入国(大臣が指定した国からの外国人旅行者を除く)
  • パブ及びナイトクラブでの活動(パブ及びナイトクラブ内のレストラン営業を除く)
  • その他一か所に多くの人が集まりソーシャルディスタンスの実現及び公衆衛生局長の指示の遵守を困難にする活動

上記に加えて、 現在、サバ州及びスランゴール州、クアラルンプール及びプトラジャヤの全域において条件付き活動制限令(CMCO)が施行されています。

対象地域内においても事業活動を継続することは可能とされていますが、業種によっては営業時間に制限が課せられています。

移動については、同CMCOの施行を受けて2020年感染予防管規則(感染地域における措置)(第8版)が改正されCMCOの対象地域への出入りが原則として禁止されています。また、対象地域内における地区間の移動も禁止される旨が発表されていますが、被用者は雇用主からの許可証等を提示することで出退勤や業務のために地区間を移動することができるものとされています。

10月30日時点では同CMCOは11月9日まで有効とされていますが、再度の延長の可能性を考慮しておく必要があります。

(2) 入国規制

10月8日より、駐在者の出入国申請等の手続がWebサイト(My Travel Pass)上で行えるようになりました。

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

9月の下旬から一部の業種を除き、原則として事業運営が禁止されていましたが、10月12日より一定の基準を満たすことで事業の再開が認められました。もっとも、基準の詳細が不明確であり、多くのサービス業が現時点においても在宅勤務を行っています。11月8日には5年ぶりの総選挙が予定されており、それまでは厳格な規制が継続され、予定通り投票を実施することを最優先すると思われます。

(2) 入国規制

海外からの入国については、11月30日まで国際旅客機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAが12月から毎週木曜日に日本から貨物便、翌日その折り返し便を商業便として飛ばす予定です。この貨物便が救援機になるか否かについては今後の政府間の協議次第ですが、3便の救援便が見込まれています。

11月の救援便は12日・19日・25日の3便の予定ですが、日本人枠は少ない状況です。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19感染者の増加は鈍化の傾向を見せ始めていますが、10月半ばより新規感染者が増加傾向を見せており、10月26日の週には、チワワ州が、感染リスクを示す連邦政府の信号システムにおいて最大の警戒対象となる赤となりました。ほか、橙19州、黄11州、緑1州となり、橙の州も増えています。なお、連邦政府における新たな規制は見られません。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、10月19日にメキシコ政府合意のもと11月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。なお、10月21日に保健省は、海外旅行をする際の注意事項を通知するとともに、不要不急の海外旅行の自粛を呼びかけました。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

10月に入ってから、1日あたり1000人~1700人程度の新規感染者が報告されております。新規感染者・死亡者ともに、前月と比較するとやや減少傾向にあります。バングラデシュ内務省が発表した9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、外出時のマスク着用や、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じることが求められており、違反した場合は法的措置を受けることがあります。

(2) 入国規制

バングラデシュへの乗り入れが許可されている国際便は以下の通りです。

(対象国及び地域)バーレーン、中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については、渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があります。

第2.各国の汚職に関する法規制の概要

1.日本

(1) 国内の賄賂罪

1 定義

日本では、賄賂の罪について、刑法で収賄罪(刑法第197条~第197条の4)と贈賄罪(刑法第198条)が規定されています。収賄罪は、賄賂を受け取る罪で、主体は公務員(公務員になろうとする者や公務員とみなされる者を含む)です。贈賄罪は、賄賂を贈る罪で、賄賂を贈って便宜を図ってもらう人であれば、民間人でも主体になり得ます。

2 賄賂罪が成立する要件

刑法第197条1項前段に「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」と規定されており、賄賂を受け取らなくても、要求や約束をしただけでも収賄罪が成立します。また、賄賂は金品に限られず、入学のあっせんや飲食の提供など一切の利益が含まれます。賄賂と社交儀礼としての贈与の区別について、私生活において、子供の面倒をみてもらったお礼に、公務員の友人にコーヒーをごちそうするといった行為は、通常「賄賂」にあたりません。

3 罰則規定

賄賂罪が成立した場合、単純な収賄罪の刑罰は「5年以下の懲役」ですが、不正行為をした場合には、加重収賄罪として「1年以上20年以下の懲役」が法定刑になります。賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者について、刑法198条(贈賄罪)は3年以下の懲役又は250万円以下の罰金が法定刑として定められています。

4 その他の規制

会社法第967条では取締役等の贈収賄罪について規定しています。同条1項は取締役等の収賄罪で、「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」が定められ、同条2項では、取締役等に利益を供与し、又はその申込みもしくは約束をした者について、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」を定めています。

さらに、取締役等が、自己若しくは第三者の利益を図り、又は会社に損害を与える目的で、任務に背く行為をし、会社に財産上の損害を与えたときは、取締役等の特別背任罪にあたり、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科」の刑が定められています(同法960条)。役員等の身分がない一般の社員であっても、会社に対して損害を発生させたことを理由に、刑法247条が定める背任罪が成立することがありますので注意が必要です。

(2) 外国公務員贈賄罪

汚職・腐敗は、持続可能な開発にとって大きな障害となり、貧困地域に悪影響を及ぼし、社会の構造を腐食するということから、汚職・腐敗防止は、国際社会にとって重要な課題となっており、国際的な法規制の枠組みのなかで取り組みが進められています。日本は、OECDの国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約を国内で実施するため、不正競争防止法に外国公務員贈賄罪を規定しています。

1 定義

不正競争防止法第18条は「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない」と規定しています。「外国公務員等」とは、国や地方自治体の公務員のみならず、公的な企業の事務に従事する者や、公的国際機関の公務に従事する者なども含まれます。また、現地のエージェントを介して贈賄することも禁止されています。

2 罰則規定

罰則は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、又はこれの併科、法人両罰は3憶円以下の罰金と規定されています。外国公務員等への贈賄は、日本の不正競争防止法違反として罰せられるだけでなく、日本以外の国の法律で処罰される可能性もあります。

(3) 海外の法令の域外適用

米国は、米国の企業等が、米国以外の公務員等に対して賄賂を行うことを禁止する「海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practice Act (FCPA)」を贈賄行為の一部が米国内で行われた場合にも適用しており、日本企業も適用対象となります。

2011年に制定された英国の「贈収賄禁止法(Bribery Act)」は、公務員等に限られず民間企業同士の取引も規制対象になるなど適用範囲が広く、日本企業にも域外適用される可能性がありますので、留意すべき法令です。

2.タイ

(1) 汚職に関する法規制

タイにおける主な法規制として、以下が挙げられます。

1 刑法

公務員に対して、義務に反して職務を行わせ、行わせず、または遅延させるよう仕向けるために、財産またはその他の利益を与え、申込み、もしくは約束した者は、5年以下の懲役、もしくは10万バーツ以下の罰金またはその両方が科されます(144条)

2 汚職防止法

2018年に改正法“Act Supplementing the Constitution Relating to the Prevention and Suppression of Corruption B.E. 2561 (2018)”が施行されています。

(2) 汚職防止法による規制

同法によると、贈賄を行う者の定義が以前の汚職防止法から拡大され、タイ国内で事業を営む外国法人も含まれることになりました。したがって、同法の対象としては、個人、タイ法人、タイで事業を営む外国法人となります。

法人の従業員だけでなく、その代理人、子会社従業員、及び法人のために行動する他の者により、当該法人の利益のために贈賄行為がなされ、後述する内部統制に関するガイドラインについて当該法人が充たしていない場合には、罰則の対象となります。

(3) 内部統制に関するガイドライン

タイの主要な汚職防止執行機関である、国家汚職防止委員会(NACC)が、以下の内部統制に関するガイドラインを制定しています。法人は、以下のガイドラインに従い、適切な内部統制システムを構築、実施していることを証明することで、贈賄の責任を軽減することができます。

  • トップ経営陣からの、贈賄防止についての、強力で周知された政策と支援
  • 贈賄のリスクレベルを効果的に特定し、評価するためのリスクアセスメント
  • リスクが高く脆弱な領域に対する強化された詳細な対策
  • ビジネスパートナーへの贈賄防止対策の適用
  • 正確な帳簿と会計記録
  • 贈賄対策を補完する人事管理方針
  • 贈賄の疑いを報告することを促すコミュニケーションメカニズム(内部告発制度など)
  • 贈賄防止対策とその有効性の定期的な見直しと評価

(4) 罰則

汚職防止法においても、贈賄を行った個人については、5年以下の懲役、もしくは10万バーツ以下の罰金またはその両方が科されます。法人の場合、発生した損害額または当該法人が得た利益の1倍以上、2倍以下の罰金が科されます。

3.マレーシア

マレーシアにおける汚職に関する法規制の概要

(1) 概要

マレーシアにおいては刑法(Penal Code)が公務員等の収賄罪について定めているほか、2009年マレーシア汚職防止委員会法(Malaysia Anti-Corruption Commission Act 2009)が民間人・民間企業への贈賄を含めた贈収賄全体について広く規制しています。

(2) 2009年マレーシア汚職防止委員会法における贈収賄罪

同法は、A)ある者が何らかの事項について何らかの行為を行い又は行わないこと、若しくはB)公務員がその所属する公的機関にかかわりのある業務について何らかの行為を行い又は行わないことの誘因又は見返りとして、汚職の意図をもって(corruptly)、a)自分自身又は他の人のために、利益(gratification)を要求した、受領した又は受領の同意をした、若しくはb)自分自身又は他の人のために、何人かに利益(gratification)を与えた、与える約束又は申出をした場合には、罰則の適用がある旨を規定しています。

また、同法は、このような一般的・包括的な規定の他に、公務員(officer of a public body)に対する贈賄罪について個別的な禁止規定が置かれています。

(3) 2009年マレーシア汚職防止委員会法における企業の責任

2020年6月1日から、2018年の改正により追加された17a条が施行されています。この17a条は、会社を含む商業団体の関係者が汚職行為を行った場合における当該商業団体及びその取締役等の刑事責任について定めるものであり、今まで曖昧であった法人の責任を明確に定めるものです。

1 同条の適用対象となる商業団体

17a条の対象となる商業団体は、以下のとおりとされています。

  • 2016年会社法(Companies Act 2016)に基づき設立されマレーシア又は他国で事業を行う会社
  • 他国で設立されマレーシアで事業又はその一部を行う会社
  • マレーシア又は他国で事業を行う1961年パートナーシップ法(Partnership Act 1961)に基づくパートナーシップ(組合)
  • マレーシア又は他国で事業を行う2012年有限責任パートナーシップ法(Limited Liability Partnerships Act 2012)に基づく有限責任パートナーシップ(有限責任組合)
  • 他国で結成されマレーシアで事業又はその一部を行うパートナーシップ(組合)

2 適用要件

(a) 商業団体の関係者

商業団体の関係者とは、商業団体の取締役、共同経営者又は従業員、若しくは商業団体の委託を受けた者又は商業団体を代理する者を意味するものとされています。ある者が商業団体の委託を受けた者又は商業団体を代理する者に該当するか否かは、その者と商業団体との関係性だけではなく、関連する全ての状況を考慮して決せられます。

(b) 汚職行為

商業団体の関係者が以下の意図をもって賄賂の提供の合意、約束、申出をした場合、その商業団体も違反をしたものとして扱われます。

  • 商業団体のために事業を獲得する又は維持すること
  • 商業団体のために事業を遂行する上での便益を獲得する又は維持すること

もっとも、商業団体は、商業団体の関係者のそのような行為を防ぐための適切な手続を備えていたことを証明することで、処罰を免れうるものとされています。この適切な手続の詳細については、マレーシア汚職防止委員会がガイドラインを発行しています。

3 罰則

違反の対象となった賄賂の額又は価値の10倍以上の罰金(違反の対象となった賄賂が金銭的な性質を有するか金銭的に評価できるものの場合)又は100万リンギの罰金のいずれか高い方、又は20年を超えない懲役、若しくはその両方が科されるものとされています。

4.ミャンマー

(1) 定義

ミャンマーにおいても贈収賄を禁止する法令が存在し、その中心となる法律が、2013年から施行された汚職禁止法(以下「本法」という。)です。

本法において、「贈収賄」とは、職務の不正利用、適法行為の不作為、利益供与、または法律に基づく権利の不法な禁止等を目的として、権限を有する者が、自己、第三者、もしくは組織のため、利害関係者から、直接もしくは間接に、賄賂の提供、受領、取得、要求、申込、約束、もしくはその他の手段により賄賂を入手するための協議を意味します。次に、「賄賂」とは、贈収賄を目的として、金銭、財物、贈物、サービス、もしくは娯楽その他の違法な利益を正当な対価を得ることなく受領又は提供することと規定されています。

刑罰は主体によって異なる重さが規定されており、政治家が贈収賄の主体の場合には最も重く15年以下の懲役又は罰金の併科、次いで権限者の場合には10年以下の懲役又は罰金の併科、政治家及び権限者以外の者の場合には7年以下の懲役又は罰金の併科が規定されています。

(2) 汚職禁止法の適用範囲

ミャンマー国内の行為又はミャンマー国民およびミャンマーの永住者が国内若しくは海外において行う行為が適用対象となる旨規定されています。したがって、ミャンマー国内の行為については、行為主体がミャンマー国民であるか外国人であるかにかかわらず処罰対象となる。他方、ミャンマー国外の行為については、ミャンマー国民およびミャンマーの永住者のみが処罰対象となり、外国人の行為については処罰対象外とされます。

(3)その他の法令

汚職禁止法以外の汚職に関する一般的として刑法が存在します。しかし、刑法は収賄に関する処罰のみ規定しており、贈賄に関する処罰規定を有していません。それ以外の特別法としては、商業税法などが特定の場面や特定の者との間における贈収賄行為を処罰する旨規定しています。また、汚職禁止に関する条約の加盟状況について、ミャンマーは、国際連合腐敗防止条約に2005年に署名し、2012年に批准しています。

なお、汚職禁止法上は贈収賄に関する例外は規定されていないものの、2016年4月に大統領府より各省庁に出された指令においては、以下の場合は例外として認められる旨規定されています。

(a) 25,000チャットを超えない贈物(1年間に団体又は個人が100,000チャットを超えて贈物を受領してはならない)

(b) 贈物が公的な役職によるものではなく、家族又は個人的関係に基づく場合(当該贈物は5条の禁止規定に影響を与えない)

(c) ティンジャンやクリスマスなどの特別な日における1年に1回の表敬としての贈物は100,000チャットを超えてはならない

(4) おわりに

以上のとおり、汚職禁止法は贈収賄に関する処罰対象行為を広範に規定しており、ミャンマーにおいても、他の先進国と同様に政府の職員等と接触する際には細心の注意が必要であり、社交的儀礼行為についていかなる範囲の行為が除外されるか等を慎重に見極める必要があります。

5.メキシコ

メキシコにおいて、汚職は連邦刑法(Código Penal Federal)や各州の刑法に規定されており、各州知事や地方議員、地方裁判所の行政官等であっても、連邦レベルの問題に関しては連邦刑法が適用されることとなります。本稿では、連邦刑法(以下、「刑法」という。)について取り上げます。

刑法において、汚職は、無権限行為や不誠実な職務遂行といった「公務における不法行為」、「権限濫用」、公務員等が連帯して、法規制に反する措置を講じて、職務を放棄し(正当な手続きを経たストライキを除く)、あるいは職務執行を妨害するといった「公務員連合」、「職権の違法使用」、自らの利益のために行う恣意的な賦課金(法で定める額よりも高い税や罰金等を要求する行為)である「コンクシオン」、「不正な給与等の支払い」、「脅迫」、「不当な優遇措置」、「贈収賄」、「外国公務員に対する贈収賄」、「公金費消」、「不法な資産形成」が規定されており、公職に就く者、すなわち、連邦行政機関及びメキシコ市行政機関、それらの出先機関、国営企業等の組織や公的信託、メキシコ憲法が独立性を付与した機関、連邦議会、連邦司法機関、経済資源を管理する連邦機関等において、地位を与えられた者もしくは職務や任務を遂行する者の行為を規定しています。

一方、民間における汚職に関する規定は、現在のところありません。しかしながら、民間人であっても、公務員等に対して贈賄を行えば、刑法によって罰せられます。刑法上、賄賂の具体的な定義は規定されておらず、関連条文中に「金銭や利益、贈物」とあることから、行為が該当すれば、どのようなものでも「賄賂」に該当すると考えらます。更に、刑法はメキシコ国内で発生した行為に適用されることから、外国人であっても適用されます。贈賄の場合、賄賂の価値がUMA(Unidad de Medida y Actualización:メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が全国消費者物価指数の結果をもとに毎年発表する、罰金等の単位。2020年の日額は86.88ペソ)日額の500倍以下に相当する場合、3か月以上2年以下の懲役及びUMA日額の30倍以上100倍以下の罰金が、賄賂の価値がUMA日額の500倍超に相当する場合は、2年以上14年以下の懲役及びUMA日額の100倍以上150倍以下の罰金が科されます。

汚職の撲滅はメキシコが長年抱えてきた課題であり、米州腐敗防止条約(1997年5月27日批准)、OECD国際商取引における外国公務員に対する賄賂の防止に関する条約(1999年5月27日批准)、腐敗の防止に関する国際連合条約(2004年7月20日批准)に加盟し、国内法整備が図られています。現政権も汚職対策を大きく掲げており、2019年9月6日に汚職に対する内部・外部通報システムの運用と推奨に関するガイドラインを制定し、贈収賄、公金費消、公的資源の流用についての通報を受け付けるプラットフォームの運営を確立しています。また、2020年10月19日には汚職通報者保護に関するプロトコルを制定し、通報者を保護する体制づくりも始まりました。このように、メキシコでは汚職を防止し、摘発する体制づくりも進められています。

6.バングラデシュ

バングラデシュの汚職は、トランスペアレンシー・インターナショナル(腐敗・汚職に対して取り組むNGO)が公表している腐敗認識数によると180か国中146位と低く、深刻な問題となっています。汚職撲滅を担当する中立的な独立機関として、汚職防止委員会(Anti-Corruption Committee: ACC)が2004年に設立されましたが、政治的な介入を受けて、その機能を十分に果たせていないのが実情です。

(1) 国際的な法的及び制度的な枠組み

バングラデシュは、2007年に「腐敗の防止に関する国連条約」に加盟したほか、2011年には「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」に署名しています。

(2) 国内の法的枠組み

汚職を規制する主要な法律として、刑法、汚職防止法(Prevention of Corruption Act 1947)及びマネーロンダリング防止法(Prevention of Money Laundering Act, 2012)が挙げられ、汚職未遂、恐喝、能動的及び受動的賄賂、外国公務員等の贈収賄等を犯罪と規定しています。

刑法第161条に「公務員である又は公務員であるとみられる者で、公務の実施又は実施を控えること、公務を執行するうえで、特定の者に有利又は不利に見せる又は見せることを控えること、役務又は危害を与える又は与えようとすることに対する報酬として、自身又は他の者に対する、適法な報酬以外の便益を受領、取得、受領に合意、取得に合意した者は、3年以下の懲役もしくは罰金又はその両方に処せられる」と規定されています。

汚職防止法では、「公務員」について刑法の定義に加え、政府により設立された企業や団体、地方自治体、法律に基づいて設立された企業や組織の長、職員、その他関係者も対象に含めています(汚職防止法第2条)。収賄に加えて犯罪的違反行為をした場合は、7年以下の懲役若しくは罰金又はその併科と規定されています(汚職防止法第5条2項)。

公務員規則(Government Servants (Conduct) Rules)の第5条4項には「政府の秘書官又は同等の職員は、

外国政府の機関又は高官若しくはより高位の者から、バングラデシュ国内外で500タカ(現在のレートで620円程度)以下の価値の贈り物を受け取ることができる」と規定されていますが、同法が施行されたのは1979年であり、その後、具体的な金額は示されていません。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2020年10月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

都市部を中心に飲食店の営業時間の短縮を要請するほか、イベント開催制限など、各自治体で独自の対応がとられていますが、9月に入り、規制が解除される傾向にあります。政府によるGo Toキャンペーンの実施が本格化され、Go Toトラベル(旅行代金の補助)で除外されていた東京が10月1日から対象になり、Go Toイート(飲食店でのポイント付与や食事券)は9月中旬から開始予定です。

(2) 入国規制

8月28日に決定された日本における水際対策措置が現在も有効で、主な措置は以下の通りです。

1 上陸拒否(日本上陸前14日以内に、指定する国・地域に滞在歴のある者等。日本国籍者は対象外)

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(法務省)http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00099.html

2 検疫の強化(日本国籍者も対象)

14日以内に、上記1の上陸拒否対象国に滞在歴のある入国者は、PCR検査の実施対象となります。また、全ての地域からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で14日待機し、国内において公共交通機関を使用しないよう要請されます。

水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00098.html

3 査証に関する制限(既に発給された査証の効力停止、査証免除措置の停止)

新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html

5 航空機の到着空港の限定等

報道によると、政府はCOVID-19の影響を受けた海外への渡航中止勧告を10月以降、段階的に解除します。オーストラリア、ニュージーランド、ベトナムなど新規感染者数が少ない10以上の国・地域が候補に挙げられています。渡航の可否は受け入れ国が決めます。また、10月1日からは、3か月以上にわたり日本に滞在できる在留資格をもつ外国人の新規入国を認めていくと報道されています。日本からの出国を緩めることで相手国の入国制限の撤廃につながることが期待されます。

日本における新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(8月28日)

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C069.html

新型コロナウイルス感染症対策本部資料(第43回・9月25日)

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020925.pdf

2.タイ

 タイのCOVID-19の累計感染者数は3,564名です。この内、3,374名が回復し、現在医療機関で治療中の者は131名となっています。帰国者を除いた、タイ国内での新規感染者は100日間連続で0人となっていましたが、9月3日に新規感染者が確認されています。

  1. COVID-19関連の規制状況

 9月28日、タイ政府は9月30日までとしていた非常事態宣言を、10月31日までさらに1か月延長することを承認しました。また、同日、商用および観光目的での訪タイを希望する外国人の入国制限をさらに緩和する方向で大筋合意したと伝えられています。

 9月29日、タイ政府は、COVID-19の感染拡大の影響で帰国できない外国人の滞在猶予期間を、9月26日から10月31日まで延長する旨の閣議決定をしました。

       2. 入国規制 (日本からタイへの特別航空便)

 現在、日本からタイ入国のための特別便が準備されています。在東京タイ王国大使館のHPにおいて、随時情報が発表されています。

http://site.thaiembassy.jp/jp/news/announcement/

10月の特別便については、14便が特別便として運航を予定しています。10月22日の特別便については、10月5日午前10時より予約受付開始となっています。10月25日、29日の特別便については、現時点、受付開始日時の発表はなされていません。それ以外の便については、すでに予約受付が開始されています。

この特別便により渡航を希望する者は、入国許可書(COE)をタイ王国大使館に申請する必要があります。

 全体の流れとしては、以下のとおりとなります。

      3. ホテル予約・航空券予約・ビザ申請予約、2 COE申請、3 ビザ申請、4 COE取得・PCR検査・入国

出入国の際には、以下の書類を提示しなければなりません。

  • ビザもしくは再入国許可証印のあるパスポート
  • 入国許可証(COE)
  • 記入、署名済みの申告書(Declaration Form)(原本)
  • 英文の搭乗可能健康証明書(Fit to Fly or Fit to Travel Health Certificate)(原本)
  • 渡航前72時間以内に発行された英文のRT-PCR検査によるCOVID-19非感染証明書(原本)
  • COVID-19及び関連疾患の治療費を含む10万米ドル以上もしくは1,100万円以上の治療補償額の英文医療保険証
  • ASQホテル予約確認書

 また、タイ入国時には、以下が求められます。

  • T.8 formの記入(タイ空港公社(AOT)の携帯アプリにてオンライン登録可能)
  • タイ当局に指定された医療従事者から医療検査を受け、隔離施設にて14日間以上の検疫隔離

3.マレーシア

(1) 入国前後の手続等

 外国から到着し監視下に置かれる者の入国及び隔離手続についてのガイドライン(GUIDELINES ENTRY AND QUARANTINE PROCESS PERSON UNDER SURVEILLANCE (PUS)ARRIVING FROM ABROAD)(7月24日公布)及びその後の発表によれば、入国前後の手続は以下のとおりとなります。

1 出発前の手続

(ア) 到着後の強制隔離の宿泊費用の支払いに関する約定書(Letter of Undertaking and Indemnity)の提出

 提出は出発日の3日前までに、マレーシア外務省のHP等から書式を入手のうえ 必要事項を記入し、旅券や航空便旅程表等の他の必要書類とともにPDF等の形式で電子メールにより提出します。日本から渡航する場合、提出先は駐日マレーシア大使館となります。

(イ) マレーシアへの入国承認状(Letter of Approval)/渡航通知書(Travel Notice)の受領

 マレーシアへの渡航が許可されると、提出先の大使館等から入国承認状/渡航通知書が電子メールで送付されます。

(ウ) アプリ(MySejahtera)への登録

 マレーシアへの入国前に、アプリ(MySejahtera)(https://mysejahtera.malaysia.gov.my )をダウンロードし、出発日の前日までに渡航情報(日時、フライト情報、入国地点)、健康状態等の登録を行います。

(エ) 出発前のCOVID-19検査

 同ガイドラインは、マレーシア政府は入国者に対し出発のCOVID-19検査を求めないものとしています。もっとも、航空会社が搭乗条件として出発前の検査を要求していることがあるため、各航空会社に対して確認をする必要があります。

2 到着時の手続

 (ア) 到着時のCOVID-19検査等

 マレーシアへの到着時に、COVID-19検査を受ける必要があります。検査費用は、自身で負担をすることとなります。検査の結果、COVID-19の症状がみられる場合は病院に搬送されます。

     (イ) 入国審査等

 検査の結果COVID-19の症状がみられなかった場合、強制隔離の宿泊費用の支払いに関する約定書を係員に提示した後、入国審査及び税関検査を受け入国します。

3 到着後の手続

 到着後、14日間又はマレーシア保健省が別途定めた期間の強制隔離に付されます。

強制隔離先は、マレーシア政府が指定したホテル等の施設で、強制隔離の対象者が隔離先の施設を選ぶことはできません。原則として1人1部屋ですが、保険省の検疫官が認めた場合には配偶者や家族等との同室が可能となります。

 空港等の入国地点から強制隔離先までの交通手段は、原則としてマレーシア政府が手配します。自家用車両による移動も可能ではあるものの、当局の監督下で移動する必要があり単独での移動は認められず、また、隔離施設でのチェックイン時に車両のキーを預ける必要があります。

 隔離施設のチェックイン時に約定書の原本を提出し、隔離費用を支払います(クレジットカードの使用可)。9月24日から非マレーシア国籍者の隔離費用が値上げされ、合計4,700リンギット(固定費(隔離施設運営費)2,600リンギット+ 宿泊費(隔離1日あたり150リンギット×14日))の支払が必要とされています。

 部屋からの外出、喫煙、集会及び訪問者との面会は禁止されています。

 食事及び飲料は1日3回(朝食、昼食、夕食)提供されます。フードデリバリーサービスの利用はガイドラインでは禁止されていますが、同意書への署名及び食中毒等になった場合は自己責任とすることを条件に利用を認める旨が発表されています。

4 パス区分ごとの手続

 上記手続とは別に、パスの区分や出国時期に応じて必要となる手続があります。以下、EP及びPVPについて抜粋しますが、詳細及びパス区分についてはマレーシア入国管理局等をご確認ください。従来EP1については、新規入国及び7月11日よりも前に出国済みの場合における再入国については入国承認状の取得が不要とされていましたが、9月18日付の発表により9月21日以降はEP1についても入国承認状の取得が必要となったことに注意が必要です。

  新規入国 7月11日よりも前に出国し、
有効な在留資格を保有している
者の再入国
在留資格が失効しているが、
駐在員委員会の承認残余
期間がある者の再入国
再入国を前提とする出国
EP1 (9月21日以降)入国
承認状の取得が必要。
(9月21日以降)入国
承認状の取得が必要。
入国承認状の取得が必要。
出国・再入国許可状の
取得が必要。
EP2
入国承認状の取得が必要。
入国承認状の取得が必要。
EP3
PVP

*入国が認められるためには、承認機関又は規制機関から重要な役職(key posts)又は技術職(technical posts)と評価される必要があります。

(2) 感染者数15万人超の国の国籍者・居住者等の入国拒否

 9月7日以降、以下の国の国籍者又は以下の国の長期滞在パスを保有する者で、これらの国に居住又は滞在している者の入国を拒否する旨が発表されています。

米国、ブラジル、インド、ロシア、ペルー、コロンビア、南アフリカ、メキシコ、スペイン、アルゼンチン、チリ、イラン、英国、バングラデシュ、サウジアラビア、パキスタン、フランス、トルコ、イタリア、ドイツ、イラク、フィリピン、インドネシア

 この規制は、以下のマレーシアの長期滞在パスを保有する者を対象にするものとされています。

  1. 永住者(Permanent Resident)
  2. マレーシア・マイ・セカンドホーム(Malaysia My Second Home)
  3. 駐在者(Expatriates)(9月7日より前に得られた入国・一時出国・再入国許可は引続き有効):
  • 就労パス(カテゴリー1、2及び3)(Employment Pass (I, II and III))
  • 居住者パス―技能(Resident Pass – Talent)
  • 専門職訪問パス(専門家カテゴリー)(Professional Visit Pass (Specialist Category))
  • 扶養家族パス(Dependent Pass)
  1. 居住者パス(Resident Pass)
  2. マレーシア国籍者の配偶者又は子供
  3. 学生パス(Student Pass)
  4. 一時就労訪問パス(Temporary Employment Visitor’s Pass)

4.ミャンマー

(1) COVID-19関連の規制状況

これまで抑え込みに成功していましたが、9月初めから市中感染が増加し、9月8日よりヤンゴン内のレストランは店内飲食が禁止されました。その後、9月21日からはヤンゴン管区内ほぼ全域で自宅待機措置が命じられ、27日からはタウンシップ間の移動も原則として禁止されるなど、非常に厳格な規制がとられております。

(2) 入国規制

海外からの入国については、10月31日まで国際旅客機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも11月末まで運休する旨発表済みです。

10月の救援便(特別便)は1日・7日・22日・29日の4便の予定ですが、今後の状況によっては変更の可能性があり、かつ、日本人枠は少ない予定です。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

メキシコ国内のCOVID-19感染者の増加は鈍化の傾向を見せ始め、メキシコ政府のCOVID-19感染リスクを示す信号システムは、9月14日の週に、このシステムを導入後初めて赤の州がなくなり、橙24州、黄8州となりました。また、9月28日の週には、システム導入後初めて、カンペチェ州が緑に指定され、橙15州、黄16州となっています。ただ、キンタナロー州は前回が黄に対して、今週橙に指定されるなど、まだまだ予断を許さない状況です。なお、連邦政府における新たな規制は見られません。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、9月18日にメキシコ政府合意のもと10月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ内務省が発表した9月1日以降の人々の移動及び活動に関してのCOVID-19拡大予防措置が継続されており、主なものは以下のとおりです。

1 これまでにバングラデシュ政府機関が発表したCOVID-19拡大予防措置については、新たな期間延長はされない。また、今後の感染拡大予防措置については、バングラデシュ政府の各省庁の判断に委ねられる。※ 現時点では、内務省以外の各省庁からは、感染拡大予防措置等について発出されておりません。

2 どのような状況においても外出の際にはマスクを着用し、人と人との距離を保つ等の感染予防措置を講じなければならない。違反した場合には法的措置を受けなければならない。

(2) 入国規制

9月27日に、サウジアラビア及びシンガポールからの国際便の乗入停止措置が解除され、以下の国からの、バングラデシュへの国際便の乗入が許可されています。

(対象国及び地域)バーレーン,中国、サウジアラビア、マレーシア、モルディブ、オマーン、カタール、スリランカ、シンガポール、トルコ、アラブ首長国連邦、英国

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については,渡航前72時間以内に取得したCOVID-19陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があります。

第2.各国の商標出願の概要

1.日本

 日本の現行の商標法は1959年(昭和34年)に制定され、その後数年ごとに改正されています。商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。商標とは、(1) 事業者が使用するマーク、(2) 自己の商品・サービスと他人の商品・サービスを区別するために使用するマークを満たすものを指し、「マーク」+「使用する商品・サービス」のセットで登録されます。商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体的形状や音等も含まれます。権利の存続期間は10年ですが、存続期間は申請により更新することができます。

 商標登録は特許庁に出願します。書類による出願及びインターネットでの出願が可能です。商標審査の流れは右図の通りです。出願人は、1商標登録出願、⑥意見書・補正書の提出、⑨登録料納付(図の黄色枠の手続き)が必要です。

1 商標登録出願前には先行商標調査を行うことが大切です。他人が既に同一・類似の商標を登録している場合には、登録を受けることができないだけでなく、無断で使うと商標権の侵害となる可能性があります。独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供しているJ-PlatPat等で、商標に関する出願・登録情報や商品・役務名等を検索することができます。また、次の(1)~(3)に該当する商標は、登録を受けることができませんので、出願前に確認が必要です。

(1) 自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの

(2) 公共の機関の標章と紛らわしい等公益性に反するもの

(3) 他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの

審査後に5拒絶理由通知を受けた場合は、拒絶理由を理解し、記載された応答期限内に⑥意見書を提出するか、指定商品や役務等を修正して⑥手続補正書を提出します(両方を提出することもできます)。対応しない場合は、登録査定を受けることができませんので、応答期間経過後に、⑧拒絶査定が送付されます。

2.タイ

(1) 出願人

商標登録の出願人は、自然人、法人いずれでもなることができます。ただし、出願人または代理人のいずれかは、DIP(Department of Intellectual Property)の登録官が連絡を取ることのできる事務所または住所をタイにおいて有していなければなりません(商標法10 条)。したがって、出願人が会社の場合は、会社がタイ国内にあるか、タイ国内で代理人を選任することが必要となります。

(2) 商標要件

商標登録を受けるためには、以下の登録要件を満たす必要があります(6条)。

  1. 識別力のある商標であること(7条)
  2. 商標法に基づき、禁止されていない商標であること(8条)
  3. 他人が登録した商標と同一、または類似する商標でないこと(13条)

 1の「識別力」のある商標とは、その商標が使用されている商品が、他の商品とは異なることを識別することを可能にする商標とされています。他人の商品と自分の商品を区別する機能(自他商品識別機能)を発揮し得ない商標は、識別力のある商標とは認められません。装飾化された文字または数字、特別な様式で表示されている色彩の組み合わせなどを用いることで識別力のある商標と認められやすくなります。しかし、タイにおいては日本以上に識別力がないと判断される傾向があるため、留意が必要となります。

 2については、国の紋章や王室の印章、官公庁印、王や王妃の肖像、公序良俗に反する商標などが規定されています。

3については、最初に出願した者に権利を与える先願主義を明らかにしたものです。

(3) 審査

商標出願を行うと、方式審査および登録要件についての審査が行われます。商標が登録要件を満たしていると判断された場合、登記官は当該出願の公告を命じ(29 条)、出願が商標公報に公告されます。利害関係を有する者は、商標公報に公開された日から60 日以内に異議申し立てをすることができます(35 条)。出願公告において異議申し立てがなかった場合、登録が可能となり、登記官は出願人に商標の登録について書面で通知し、出願人は通知を受領した日から60 日以内に、登録手数料を支払わなければなりません。支払われない場合には、当該出願は放棄されたものとみなされます(40 条)。補正命令や異議申し立てがない場合、約10ヶ月から1年程度で登録となります。

(4) 商標権者の権利

商標権者として登録される者は、当該商標を使用する排他的権利を有することになります(44 条)。

また商標が登録される場合、当該商標は登録出願を行った日に登録されたものとみなされます(42条)。登録された商標は登録出願の日から10 年間有効であり、また更新が可能です(53 条)。

(5) 出願費用

1区分(区分=商品役務を区切る大きなグループのこと)の出願の場合、日本円で約13万~20万円程度が必要となります。これは代理人費用・公的費用含みます。費用は指定する指定商品・役務の数、拒絶理由通知・補正指令の有無等によっても変動します。

 1区分の出願を前提として、具体的な費用の内訳としてはまず、出願時に1指定商品あたり千バーツ(6指定商品以上を記載する場合は一律9千バーツ)、登録時に1指定商品あたり6百バーツ(6指定商品以上を記載する場合は一律5千4百バーツ)の公的費用がかかります。

 公的費用に加えて、代理人に依頼した場合は代理人費用が必要となります。この点、日本の特許事務所に依頼すると、一般的には日本国内の代理人費用(弁理士費用)とタイの代理人費用が二重に発生し、費用が高額になることが多いです。

(6) その他

 2016年7月の法改正により、1出願で多区分を指定した出願が可能となっています。ただし、分割出願ができないため、一部の区分に拒絶理由がある場合に、その区分の削除か、出願全体について拒絶理由を争うことしかできず、現在でも区分ごとの出願を行うことが多いです。

 また、タイはマドリッド協定に加盟しているため、国際出願が可能となっています。

3.マレーシア

 マレーシアの商標登録手続は、2019年商標法(Trade Marks Act 2019)及びその下位規範によって規律されています。

(1) 申請権者

 商標の真正な所有者であると主張する者は、以下の場合に商標の登録を出願することができます。

  1. 取引の過程で商標を使用している又は使用するつもりである場合
  2. 取引の過程で他の者に商標を使用することを許可する又は許可するつもりである場合

(2) 予備備的助言制度

 商標登録の出願を希望する者は、登録官に対して当該商標が登録可能な商標であるかどうかについて予備的な助言及び調査結果を求めることができます。出願希望者が登録官から肯定的な助言を得たうえで一定期間内に当該商標の登録出願をしたものの、更なる調査又は審査の結果、登録可能な商標ではないという趣旨の拒絶の通知を受けた場合、一定期間内に出願を取り下げることにより納付済みの出願手数料の返還を受けることができるものとされています。

(3) 申請

1 申請の単位

 1つの申請で複数の分類に属する商品又はサービスを対象とすることができます。

 2 連続商標

 商標登録の出願に際しては、本質的に同一である複数の商標を「連続商標」として単一の願書で出願することができるものとされています。

 3 早期審査

 商標の登録申請者は、所定の期間内に所定の料金の支払いとともに登録官に対し申請書を提出することにより、早期審査を請求することができます。旧商標法(1976年商標法)は同制度についての規定を置かず、商標規則(Trade Marks Regulations 1997)によってのみ定められていましたが、現行商標法は同制度について明文の規定を置いています。

(4)登録審査

 1 形式審査

 商標登録の申請に際しては申請書の提出や手数料の支払が必要となるほか、ローマ字以外で構成される商標については補足資料(音訳、翻訳、その他所定の資料)の提出が必要となります。形式審査においては、これらの資料に不備がないかが審査されます。申請後所定の期間内に手数料の支払いや補足資料の提出がされない場合、申請は取り下げられたものとみなされます。

 2 実体審査

 形式審査が終了すると、実体審査が開始されます。実体審査においては、絶対的登録拒絶事由及び相対的登録拒絶事由の有無が審査されます。

(5)審査後の手続

 審査が終了した後、登録官は出願を受理するか否かを決定します。

登録官が出願を受理する場合にはそのまま公告がなされ、異議申立がなければそのまま登録へと進むこととなります。当該商標が商標登録の要件を満たしていないと登録官が判断した場合には、出願者に対し暫定拒絶の通知がされ、聴聞等を通じて更なる検討がなされることとなります。

(6)異議の申立手続

 商標登録の出願の受理が公告された場合、当該商標の登録に異議がある者は異議申立をすることができます。異議申立は当該公告から2か月以内になされなければならないとされています。

(7)登録

 出願が受理され、異議申立がなされないまま所定の期間が満了した場合又は異議申立に対して出願者に有利な決定がされた場合、登録官は商標の登録を行います。登録は出願の日付でなされ、同日が登録日とみなされます。

(8)登録の更新

 商標登録の存続期間は登録日から10 年間であり、更新によりさらに10年間延長されます。

 商標登録の存続期間満了後であっても、満了日から6か月以内であれば 更新の申請をすることが認められています。商標登録の存続期間満了から6か月以内に更新が行われない場合には商標は削除されたものとみなされますが、削除から6か月以内であれば復元の申請を行うことができるものとされています。

4.ミャンマー

 これまで、ミャンマーには商標法が存在せず、登記法に基づく登記を行う以外に会社が積極的に自社の商標を保護する手段がありませんでした。しかし、2019年1月30日、ミャンマー商標法(以下、「商標法」という。)が成立しました。施行時期は未定であったものの、2020年8月28日に政府より2020年10月1日から商標法に基づく優先出願が開始される旨発表されました。優先出願期間中に申請可能な商標は1登記法に基づき登記済みの商標、又は2ミャンマー市場内で既に使用されている商標のみです。それ以外の商標は、商標法の施行後に出願可能となります。施行時期は未発表であるものの、関係者の情報によれば、優先出願期間は6ヶ月が予定されているため、2021年4月1日が施行日として予定されております。なお、ミャンマーの商標法に基づく出願はオンラインのみで可能であり、かつ、当該オンライン制度を利用するパスワードは現地で活動している法律事務所のみに付与される予定です。そのため、ミャンマーに拠点を有する数少ない日系法律事務所である当事務所に是非ご依頼下さい。上記のとおり、これまで商標法が存在しないという状態であったため、商標法の運用開始直後は出願が殺到することが予想されており、他社に貴社の大事な商標を取られないようご留意下さい。なお、ミャンマーはマドリッド協定に未加盟です。また、先願主義が取られております。

5.メキシコ

メキシコにおける現在の商標制度は、産業財産法(1991年制定、最終改正2018年5月18日)およびその施行規則に準拠していますが、2020年7月1日に連邦産業財産保護法が公示され2020年11月5日に施行されることから、同日、産業財産法は廃止されることとなり、以後は産業財産保護法に準拠することとなります。

メキシコでは、文字や図形といった伝統的な商標のほか、ホログラムや音、匂いなどの新しいタイプの商標登録も認められています。一出願一区分制をとっていることから、複数区分にまたがる商標を登録する場合は、区分の数だけ出願が必要となります。また、国籍に関係なく誰であっても商標を出願することができますが、メキシコ非居住者が出願する場合は、メキシコ居住者の代理人を置くことが必要となります。なお、出願の際に使用できる言語はスペイン語です。

出願に際し、必要な情報は、1出願人の名前、国籍および住所、電子メールアドレス、2登録対象となる標章、3指定商品または役務(ニース国際分類に準拠)、4メキシコにおける商標の使用開始日(該当する場合)となり、これらを含む願書や付属書面、申請料納付書などを併せて申請することとなります。なお、出願商標が出願日以前にメキシコ国内で使用されていた場合は、その使用開始日を願書に記載することで先使用を主張できます。商標を申請料は、2,457.79ペソ(付加価値税別)です。産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial)窓口での出願のほか、オンラインによる出願もできます。

商標出願が受付けられると、その受付から10営業日以内(2020年11月5日以降においては10日後以内)に商標公報に公示され、その公開の日から1か月の異議申立期間が設けられます。異議の申立がなく、異議申立期間が満了した場合、実体審査が開始され、拒絶の理由がない場合は登録となります。なお、異議申し立てが為された場合は、実体審査の過程において検討されることとなり、審査が保留されることはありません。また、実体審査において見つかった拒絶理由や異議申し立ては、出願人に送達され、出願人には応答書を提出するために2か月間の期間が与えられます。

登録となった場合は、商標公報にて公示されます。その権利の存続期間は、出願日から 10 年(2020年11月5日以降の出願、登録の場合は、登録日から10年)となり、10 年ごとに更新することができます。更新は期間満了日の前後6か月の間に申請することができ、申請時にはその登録商標の使用宣誓書を併せて提出しなければなりません。また、2018年8月10日以降に登録された商標はその登録から3年目となる日から3か月以内に使用宣誓書を提出しなければならず、この使用宣誓書の提出がない場合は、その登録商標は取消されることとなります。

メキシコはパリ条約やマドリッド協定議定書の締約国でもあります。したがって、パリ条約に基づく優先権を主張した出願や、マドリッド協定議定書に基づく国際商標出願も可能です。

6.バングラデシュ

バングラデシュでの商標に関する事項は、商標法2009年に規定されています。同法の規定に基づき、商標の所有者として登録簿へ有効に登録されることにより、商品又はサービスに関する商標を使用し、当該商標の侵害に関し救済を受ける排他的権利が与えられます。一方で、バングラデシュの特許意匠商標庁は、審査官の人員不足や、審査の電子化の遅れから審査に時間を要し、商標の登録まで2年から3年かかるというのが現状です。商標の出願は、「出願→審査→公告→登録」という流れになっており、商標登録に際して、登録官は出願人に対し商標登録局の印を押した登録証明書を発行します(商標法第20条)。商標登録の期間は7年間ですが、原登録または場合に応じて最新の更新の期間満了日から10年間更新することができます(商標法第22条)。一方、登録商標がバングラデシュにおいて5年間使用されない場合は、不使用を理由とする登録簿からの削除の対象となります(商標法第42条)。なお、バングラデシュはマドリッド協定に未加盟で、マドリッド協定議定書を締結していませんので、マドプロ制度を利用することはできません。また、現在、当局は一時的に、世界中で知られているような商標を除き、外国投資による会社又は個人の商標登録手続きを受け付けていません。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL:https://tnygroup.biz/

・日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL:https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL:https://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL:https://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL:https://tny-myanmar.com/

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL:https://tny-mexico.com/

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL:http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL:https://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2020年9月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) 入国規制

8月28日、日本において新たな水際対策措置が決定されました。本件措置の主な点は以下の通りです。

  1. 入国拒否対象地域に新たに13か国が追加(日本国籍者は対象外)
  2. 検疫強化措置の地域の追加(日本国籍者も対象)
  3. 査証制限等の措置の延長

外務省感染症危険情報レベル2が発出されている全ての国・地域及びレベル3が発出されている国・地域の一部が、査証制限等の対象となります。

※査証制限措置対象国 (https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html

4外国との国際航空旅客便の減便等による到着旅客数の抑制要請の延長

5本邦入国の際の検疫の強化

過去14日以内に「出入国管理及び難民認定法に基づき上陸拒否を行う対象地域」に滞在歴のない方は、本邦入国の際、空港の検疫所において、質問票の記入や体温測定、症状の確認が求められ、自宅等への移動は公共交通機関を使用せずに移動できることが条件になっています。また、入国の翌日から14日間は、自宅待機が要請されます。上記対象地域の滞在歴のある方は、全員対象に抗原定量検査等が実施され、検査結果が陽性の場合は、医療機関への入院又は宿泊施設等での療養となります。当検査は、検疫法に基づき実施するものであり、検疫官の指示に従わない場合は、罰則の対象となる場合があります。

水際対策の抜本的強化に関するQ&A(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html

日本における新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(8月28日)

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C069.html

新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(第42回)

https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020828.pdf

新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組(8月28日・新型コロナウイルス感染症対策本部)

https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/houkoku_r020828.pdf

(2) COVID-19関連の規制状況

東京や大阪、愛知などの都市部を中心に一部飲食店の営業時間の短縮を要請するほか、イベント開催制限、県外への移動の自粛を要請するなど、各自治体で独自の対応がとられています。

2.タイ

 タイのCOVID-19の累計感染者数は3,412名です。この内、3,252名が回復し、現在医療機関で治療中の者は102名となっています。帰国者を除いた、タイ国内での新規感染者は98日間連続で0人となっています。

  1. COVID-19関連の規制状況

 8月25日、タイ政府は8月31日までとしていた非常事態宣言を、9月30日までさらに1か月延長することを承認しています。

      2. 日本からタイへの特別航空便

 現在、日本からタイ入国のための特別便が準備されています。在東京タイ王国大使館のHPにおいて、随時情報が発表されています。

http://site.thaiembassy.jp/jp/news/announcement/

9月17日の特別便については、9月1日午前10時より予約受付開始となっています。9月24日の特別便については、現時点、受付開始日時の発表はなされていません。

この特別便により渡航を希望する者は、入国許可書(COE)をタイ王国大使館に申請する必要があります。

 全体の流れとしては、以下のとおりとなります。

      3. 航空券予約・ビザ申請予約、2COE申請、3ビザ申請、4COE取得・PCR検査・入国

出入国の際には、以下の書類を提示しなければなりません。

・ビザもしくは再入国許可証印のあるパスポート

・入国許可証(COE)

・記入、署名済みの申告書(Declaration Form)(原本)

・英文の搭乗可能健康証明書(Fit to Fly or Fit to Travel Health Certificate)(原本)

・渡航前72時間以内に発行された英文のRT-PCR検査による新型コロナウイルス非感染証明書(原本)

・新型コロナウイルス感染症及び関連疾患の治療費を含む10万米ドル以上もしくは1,100万円以上の治療補償額の英文医療保険証

 また、タイ入国時には、以下が求められます。

・T.8 formの記入(タイ空港公社(AOT)の携帯アプリにてオンライン登録可能)

・タイ当局に指定された医療従事者から医療検査を受け、隔離施設にて14日間以上の検疫隔離

3.マレーシア

(1) 回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)

2020年8月28日、回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)(以下「RMCO」)の有効期限を同年12月31日まで延長する旨が発表されました。執筆時点(同年8月28日)における禁止行為は以下のとおりですが、パブ及びナイトクラブでの活動を除く全ての経済セクターでの再開を許可する方針であるとの発表がされています。また、罰則の強化についても言及がされています。

  • 観客が参加するスポーツイベント及び大会並びに海外からの参加者が関与するスポーツイベント及び大会
  • マレーシア国民による観光目的での海外渡航及び外国人による観光目的でのマレーシアへの入国(大臣が指定した国からの外国人旅行者を除く)
  • パブ及びナイトクラブでの活動(パブ及びナイトクラブ内のレストラン営業を除く)
  • その他一か所に多くの人が集まりソーシャルディスタンスの実現及び公衆衛生局長の指示の遵守を困難にする活動

(2) マスクの着用義務について

 8月1日から「混雑した公共の場所」及び「多くの人が入り混じった密閉空間」においてマスクの着用が義務化されており、マレーシア国家安全保障会議(NSC)によれば以下の場所が該当するものとされています。

  • モスク及びスラウ
  • 礼拝所
  • 結婚式などの社交イベント
  • 公共交通機関
  • スクールバス及びバン
  • 動物園
  • スポーツやレクレーションスペース
  • 診療所及び病院
  • 公共市場及び農産物直営所
  • 映画館やライブ・エンターテイメント会場
  • レストランを含む全ての小売店
  • 美容院
  • スパ及びウェルネスセンター
  • 家族向け娯楽施設

4.ミャンマー

ミャンマー国内においては、経済活動はCOVID-19以前にほとんど戻っていますが、一定の集会禁止措置などは8月15日まで延長されています。

海外からの入国については、9月30日まで国際旅客機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも9月末まで運休する旨発表済みです。

茂木外務大臣が8月24日にミャンマーを訪問し、日本ミャンマー間の往来を再開することで合意しhております。9月の救援便(特別便)は3日及び10日が確定しており17日並びに26日も調整中です。

入国方法は以下の2つの方法が存在します。

ノーマルトラック:渡航前1週間の自宅隔離証明書の提示、搭乗前72時間以内のPCR検査陰性証明書の提示、ミャンマー入国後1週間の施設隔離、その後のPCR検査,さらに1週間の自宅隔離

ファストトラック(ビジネス関係者は申請可能):渡航前36時間以内のPCR検査陰性証明書の提示、ミャンマー入国後1週間の施設隔離及び2回のPCR検査(自費)

なお、1週間の施設隔離については,ミャンマー政府が指定するホテルへの隔離になります。ファストトラック適用は限定的であり、希望してもミャンマー政府の承認が下りない可能性もありますので、ノーマルトラックの準備も進める必要があります。

5.メキシコ

メキシコ国内のCOVID-19感染者の増加は鈍化の傾向を見せ始め、メキシコ政府のCOVID-19感染リスクを示す信号システムは8月17日の週にカンペチェ州が初の黄色の州として示され、その後、8月31日の週には、黄色の州が10州、橙が21州、赤が1州となることが発表されました。連邦政府における新たな規制は見られませんが、必要不可欠な産業に教育関連の製造業等が追加されるなど、経済活動の幅を広げる傾向がみられます。

メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、8月14日にメキシコ政府合意のもと9月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされていますが、在メキシコ米国大使館の発表では、米墨間の航空便は数を減らして運行されていることから、渡航にあたっては十分な計画が必要とされています。なお、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

 バングラデシュ政府が、8月3日付で発表した新型コロナウイルス感染拡大予防の措置が継続されており、主な内容は以下のとおりです。

(1) 午後10時から翌日午前5時までの時間帯は、真に必要な場合(必要不可欠な売買、職場との往来等)を除き外出禁止。外出の際は、マスクの着用や人と人との距離を保つ等の感染防止措置を講じなければならない。違反した場合には法的措置を受けなければならない。

(2) 商店とショッピングモールは午後8時までに閉店しなければならない。

(3) いかなる教育機関も開校することができない。

(4) いかなる集会、大規模行事も実施できない。バーチャル環境での行事開催を優先的に考慮しなければいけない。ただし、宗教省の指導に従い、感染防止措置を講じた上であれば、モスクなどで集団礼拝を行うことはできる。

 また、以下の対象国及び地域からの、バングラデシュへの定期国際便の乗入停止措置が継続されています。

(対象国及び地域)バーレーン,ブータン,香港,インド,クウェート,モルディブ,ネパール,オマーン,サウジアラビア,シンガポール,タイ

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については,渡航前72時間以内に取得した新型コロナウイルス陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があります。

第2.各国の個人情報保護法関連規制

1.日本

日本で個人情報保護を規定する法律として、個人情報保護法があります。平成29年5月に施行された改正法により、それまで適用対象外となっていた中小企業・小規模事業者も含め、すべての事業者に個人情報保護法が適用されることとなりました。取り扱う個人情報の数に関わらず、例えば、紙やデータで名簿を管理されている事業者は全て「個人情報取扱事業者」となり、法の対象となりますので、注意が必要です。なお、個人情報保護法の下に、関連の政令や規則があり、個人情報の取り扱いについて詳細に規定されています。

(1) 個人情報の定義

個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、1氏名や生年月日等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなる者を含む。)、または、2個人識別符号が含まれるものをいいます(個人情報保護法第2条)。

(2) 民間事業者の個人情報の取り扱いについての基本ルール

1 個人情報の取得・利用

個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うにあたって、利用目的をできる限り特定し(個人情報保護法第15条第1項)。その利用目的は、あらかじめ公表しておくか、個人情報を取得する際に本人に通知する必要があります(個人情報保護法第18条)。

2 個人データの安全管理措置

在宅勤務の増加に伴い、これまで以上に具体的な取り組みが求められる事項といえます。個人情報取扱事業者は、個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければなりません(個人情報保護法第20条)。個人データの取り扱いを委託する場合は、個人データの安全管理が図られるよう、委託先に対しても必要かつ適切な監督を行わなければなりません(個人情報保護法第22条)。「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(個人情報保護委員会)」に、個人データの適正な取り扱いの確保について組織として取り組むために、基本方針や個人データの取り扱いについての規定の策定、組織体制の整備、従業員の教育、不正アクセスや漏えいの防止等の技術的な安全管理措置を講ずることが挙げられています。なお、同ガイドラインでは、従業員の数が100人以下の中小規模事業者に対して、事業を円滑に行われることに配慮し、特例的な対応方法が示されています。

3 個人データの第三者提供

 個人情報取扱事業者は、個人データを第三者に提供する場合、原則としてあらかじめ本人の同意を得なければなりません(個人情報保護法第23条第1項)。

4 個人データの外国にいる第三者への提供

外国にいる第三者への提供は、次のいずれかに該当する必要があります(個人情報保護法第24条)。(a) 外国にある第三者へ提供することについて、本人の同意を得ること、(b) 外国にある第三者が個人情報保護委員会の規則で定める基準に適合する体制を整備していること、(c) 外国にある第三者が個人情報保護委員会が認めた国(本誌発行時点でEU加盟国および英国)に所在すること。(a)本人の同意について、上記第三者提供とは別に取得する必要があります。また、外国にいる第三者への提供の場合は、委託や共同利用等の場合も含まれます。そのため、委託の場合は契約内容に個人情報保護法の義務と同等の扱いを求める規定を置く、海外子会社・現地法人については、日本の本社と同等の扱いが担保することなどにより、個別の同意取得が難しい場合に(b)体制の整備を行う必要があります。なお、外国から日本へのデータの提供については、当該国の法令に従うことになりますが、二国間の協定等によって対応が異なることもありますので、ケースごとに確認が必要です。

5 保有個人データの開示請求

 個人情報取扱事業者は、本人から保有個人データの開示請求を受けたときは、本人に対し、原則として当該保有個人データを開示しなければならないとされています(個人情報保護法第28条)。

(3) 個人データの漏えい等への対応

 個人情報取扱事業者には「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」(平成29年委員会告示第1号)に基づく措置が求められています。個人データの漏えい等の事案が発覚した場合に講ずるべき措置としては、1事業者内部における報告及び被害の拡大防止、2事実関係の調査及び原因の究明、3影響範囲の特定、4再発防止策の検討及び実施、5影響を受ける可能性のある本人への連絡等、⑥事実関係及び再発防止策の公表があげられており、また、内容によって、個人情報保護員会等への報告が求められます。

2.タイ

 タイでは、個人情報の保護を目的として、個人情報保護法(Personal Data Protection Act 以下、「PDPA」)が、2019年5月27日に官報で告示され、翌28日に施行されています。個人情報を取り扱う者の義務や、個人情報を提供した個人の権利などが定められています。

  1. PDPAの施行延期

 PDPAの実質的な個人情報保護についての条項は、告示日から1年間の移行期間が設けられ、2020年5月27日から施行される予定でした。しかし、タイ政府は、2020年5月19日の閣議において、新型コロナウイルスの影響による準備不足などを理由に、PDPAの施行を1年間延期(2021年5月31日まで)する法案を承認しました。そのため、個人情報を取り扱う会社などは、来年の施行日までに準備を行えばよいことになりましたが、対応すべき事項が多岐にわたるため、準備を速やかに行うことが望ましいと思われます。

(2) 個人情報とは

 PDPAによる保護の対象となる「個人情報」とは、直接的・間接的であるかを問わず、個人を識別することのできる情報をいい、故人に関する情報は含まれないと定義されています。したがって、直接的には個人を識別することができない情報であっても、そのような情報を複数収集することで個人を識別することができる情報であれば、「個人情報」に含まれることになります。

 現時点、細則の制定などは行われておらず、どのような情報が、具体的に「個人情報」に該当するかは明確ではありませんが、従業員や顧客の氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、電子メールアドレスなどは、「個人情報」に該当すると考えられます。

(3) 個人情報管理者及び処理者

 個人情報管理者(以下、「管理者」)とは、個人情報の収集・利用・開示に関して、決定権を有する個人又は法人と定義されています。従業員や顧客の個人情報の収集などを行う会社は、管理者に該当することになります。

 また、管理者からの指示を受け、又は代理として個人情報の収集などを行う個人又は法人は、個人情報処理者(以下、「処理者」)と定義されています。

(4) 適用範囲

 PDPAは、タイ国内に所在している管理者又は処理者が、個人情報の収集などをする場合に適用されます。この場合、個人情報の収集などがタイ国内で行われるか、タイ国外で行われるかを問わず、PDPAが適用されることになります。

 さらに、管理者又は処理者がタイ国外に所在している場合でも、以下の場合に関して個人情報の収集などをする場合には、PDPAが適用されます。

 (a)タイ国内に所在する個人情報保有者に対して、製品やサービスの提供をする場合

 (b)タイ国内に所在する個人情報保有者の行動をモニタリングする場合

 したがって、タイ国内に会社が所在していない場合でも、インターネット販売サイトなどでタイ国内向けに製品を販売し、個人情報を収集する場合などには、PDPAが適用されるため注意が必要です。

(5) 個人情報取扱時のルール

 管理者による、個人情報の収集、利用、開示について、原則、個人情報保有者(以下、「本人」)の同意がない限り、行ってはならないとされています。そして、管理者は以下について対応する必要があります。

(a) プライバシー通知

 個人情報の収集の際には、事前または収集時に、本人に以下の事項を通知しておく必要があります。

 ・個人情報を収集する目的

 ・法令または契約の遵守のために本人による個人情報の提供が必要な場合、その通知

 ・収集対象となる個人情報およびその個人情報が保管される期間

 ・収集された個人情報の開示先に関する情報

 ・管理者の連絡先

 ・本人が有する権利

(b) 個人情報の管理

 収集した個人情報について取扱記録を作成し、更に以下の管理体制を構築する必要があります。

 ・個人情報の不正または違法な紛失、アクセス、利用、改ざん、訂正、開示を防止するための適切な安全対策の構築

 ・個人情報が管理者以外に提供される場合、個人情報の違法または無許可による利用、開示を防止する措置の実施

 ・保管期間が終了した場合、収集目的外の個人情報がある場合、本人からの請求や同意の撤回があった場合に、個人情報を消去・破棄するための管理体制の整備

(6) 具体的な対応

 会社としてはまず、1自社で保有する個人情報、または今後取得する予定の個人情報の内容を把握する必要があります。従業員の情報、一般消費者・取引先企業等の情報、ウェブサイトから取得する情報等が考えられます。

次に、2当該個人情報についてのプライバシー通知の作成、個人情報管理体制の構築を行う必要があります。

さらに、3個人情報の取得・利用・開示について、当該個人情報がPDPAの適用除外項目に該当するかを確認します。該当しない場合には、4本人から同意を取得する必要があります(同意を取得せずに個人情報の利用等を行うと、罰則が科されます)。

(7) 同意の取得

 本人に同意を求める際には、個人情報の収集、利用、開示の目的を本人に通知した上で、本人から明確な同意を取得する必要があります。

この場合、他のものと明確に区別できる方法で提示しなければならず、明瞭でわかりやすい言語を使用し、本人を欺いたり誤解させたりするような表現を用いてはならないとされています。この同意は、本人の自由な意思によるものであることが求められているため、細心の注意を払う必要があります。

会社が、従業員または一般消費者・取引先企業等から同意を取得する場合は、当該対象者に適したプライバシー通知を作成の上、そのプライバシー通知を含んだ同意書を作成し、当該対象者から明確な同意を得てサインを取得することが望ましいと思われます。

PDPAに関し、未だ細則の制定がなされておらず、細かな点は不明確な部分が多いですが、来年6月の施行に向け、会社として準備を進める必要があります。

3.マレーシア

(1)法規制

 基礎となる法律として、Personal Data Protection Act 2010 (以下「PDPA」といいます。)が存在し、下位法令及びガイドラインとして以下の規制が存在します。

  • Personal Data Protection (Class of Data Users) Order 2013
  • Personal Data Protection Regulations 2013
  • Personal Data Protection (Registration of Data User) Regulation 2013
  • Pesonal Data Protection (Fees) Regulations 2013
  • Personal Data Protection Standard 2015
  • Personal Data Protection (Compounding Of Offences) Regulations 2016
  • Personal Data Protection (Class of Data Users) (Amendment) Order 2016

 また、現在、個人情報漏洩の報告義務等の導入が検討されています。

(2)規制内容

1 概要

個人情報の処理者は、以下の原則(7原則)を遵守する必要があります。

(a) 一般原則(General Principle)(PDPA6条)

(b) 通知及び選択原則(Notice and Choice Principle)(PDPA7条)

(c) アクセス原則(Access Principle)(PDPA12条)

(d) 開示原則(Disclosure Principle)(PDPA8条)

(e) 安全原則(Security Principle)(PDPA9条)

(f) 保持原則(Retention Principle)(PDPA10条)

(g) 情報完全性原則(Data Integrity Principle)(PDPA11条)

2 7原則の要旨

(ア) 一般原則

情報使用者は、個人情報を処理する場合、原則として情報主体から同意を得なければなりません。同意は、情報使用者によって適切に記録及び保持できる形式であれば、いかなる形式でも良いとされています。

ただし、身体的又は精神的な健康状態、政治的意見、宗教的信条、犯罪歴等を含む「センシティブな個人情報(sensitive personal data)」を取得する際には、情報主体から「明示的」な同意を取得することが必要とされています。

(イ) 通知及び選択原則

情報使用者は、情報主体に対し、個人情報の処理について書面による通知をする必要があります。通知内容は以下のとおりです。

  • 個人情報が情報使用者により処理されていること
  • 個人情報の内容
  • 個人情報が収集され、処理されている目的、
  • 情報主体の個人情報へのアクセス権、訂正要求権、
  • 個人情報に関する質問及び苦情の提出方法、
  • 個人情報の開示先である第三者の業種、
  • 個人情報の提供が義務か任意か、等

(ウ) アクセス原則

情報主体は、情報使用者が保有する自らの個人情報にアクセスする権利を有し、当該個人情報が不正確、不完全、誤解を招くもの、又はアップデートを要するものである場合には、訂正することができます。

(エ) 開示原則

情報使用者は、個人情報収集時に開示した目的又はそれに直接的に関係する目的以外の目的のために個人情報を第三者に開示する場合には、原則として情報主体から同意を得る必要があります。

(オ) 安全原則

情報使用者は、個人情報の紛失や不正使用などを防止するため、具体的な措置をとる必要があります。

(カ) 保持原則

個人情報は、目的達成のために不要となった場合には、破棄されなければなりません。

(キ) 情報完全性原則

情報使用者は、個人情報が正確で、完全で、誤解を招かないものであり、且つ最新のものであり続けるように、合理的な措置をとる必要があります。

3 第三者への開示

個人情報の第三者への開示・提供は以下の限度で許されます。

(a) 情報主体が事前に同意を与えている場合

(b) 犯罪の防止・捜査を目的とする場合又は調査を目的とする場合

(c) 法令又は裁判所の命令に基づく場合

(d) 情報使用者が自己に開示を行う権限があるか又は情報主体が事前に同意をしているとの合理的な考えに基づく場合

(e) 所管大臣が決定した公共の利益を目的とする場合

(3) 越境移転

原則として、個人情報保護委員会の推薦に基づき所管大臣が特定した場所を除き、個人情報の越境移転は許されません。2020年8月現在、所管大臣が特定した場所は公表されていません。

 但し、以下の場合は越境移転が可能です。

(a) 情報主体の同意がある場合(同意の要件は明確でない)

(b) 移転が情報主体と情報使用者との契約の履行に必要である場合

(c) 移転が、情報使用者と第三者の契約(但し特定状況下)の締結又は履行に必要な場合

(d) 情報使用者がPDPAに反した形での処理がなされないことを確保するために、必要な全ての合理的予防  

策を取り、かつ調査を行った場合 等

(4) 罰則

 各種の規制に対する違反に対する代表的な罰則として、以下のものがあります。

(a) 7原則に対する違反:

RM300,000以下の罰金又は2年以下の懲役又はそれらの併科

(b) Class of Date Userとしての登録義務に対する違反

RM500,000以下の罰金又は3年以下の懲役又はそれらの併科

(c) 個人情報の海外移転に関する規制に対する違反

RM300,000以下の罰金又は2年以下の懲役又はそれらの併科

4.ミャンマー

 ミャンマーにおいては個人情報保護を直接規定する法令は現時点では存在しません。一部関連する法令としては、2017年3月8日に成立した個人の自由安全保護法が、個人情報や家庭の事情に干渉し、個人の尊厳及び評判を中傷すること又は影響を与えること禁止する旨規定しています。

5.メキシコ

メキシコでは、個人情報保護に関連する法令はいくつかありますが、民間企業等に適用されうる根幹となる法令として、私的所有における個人情報の保護に関する連邦法(Ley Federal de Protección de Datos Personales en Posesión de los Particulares)が挙げられます。これらをもとに、メキシコにおける個人情報保護規定の概要を紹介します。

  1. 個人情報

本法では、個人情報は、「自然人を特定もしくは特定しうる情報」と定義され、そのうち、人種や民族、健康状態、遺伝情報、宗教的、哲学的もしくは道徳的信条、労働組合の所属、政治的見解、性的嗜好などが明らかになるような情報であって、本人の最も内密な領域に影響を与える情報、または不適切な使用によって、差別が生じ、もしくは深刻なリスクを伴う可能性がある情報は「要配慮個人情報」と定義されています。また、財産に関する情報もその性質から別の扱いとされています。

      2. 個人情報の取扱

個人情報の取扱いについては、非常に広範な定義となっており、「あらゆる手段による個人情報の取得、使用、開示、保存。『使用』は個人情報へのアクセスや個人情報の管理、利用、伝達、処分といったあらゆる行動を含む」とされています。個人情報の取扱いをする者には、その保護の観点から、以下の8つの原則に従う必要があります。

    1. 合法性 個人情報の取扱いについては、適用される法令等に基づき厳重に行う必要があります。
    2. 同意 個人情報の取扱いについては、取得前に個人情報保有者に事前に同意を得る必要があります。 なお、同意は原則黙示的でたるとされています。つまり、個人情報保護方針を提示後、個人情報保有者が拒絶の意思を表示しなかった場合に、同意が得られたと解されます。ただし、要配慮個人情報や財産に関する情報は、その取得に際し明示的同意が必要とされています。
    3. 情報提供 個人情報取扱者は、個人情報保護方針を通じて、個人情報の取得や取扱いに関する基準を提示する必要があります。
    4. 品質 個人情報取得の目的に合致した適切で、正確な取り扱いが求められます。
    5. 目的 個人情報は個人情報保護方針に確立された目的にのみ取り扱うことが可能です。従って、個人情報の取扱者はその目的を個人情報保護方針において明確に規定し、把握しておかなければなりません。
    6. 忠誠 個人情報の取扱は個人情報保有者の利益の保護を優先し、詐称等の行為があってはなりません。
    7. 適量 個人情報の取扱は目的に合致した必要かつ関連性のある必要最低限の範囲にとどめなければなりません。
    8. 責任 個人情報取扱者は、法令等によって確立された個人情報保護の原則を順守し、必要な措置を講じ、その保護を保証しなければなりません。

個人情報の取扱者は、以上のような原則を踏まえて、個人情報保護方針を策定し、適切な取り扱いが為されうる体制を確立する必要があります。

     3. 個人情報保護方針(Aviso de Privacidad)

個人情報保護方針は、少なくとも次の項目を含める必要があり、個人情報保有者が利用できるようにしておかなければなりません。

  1. 個人情報取扱者の名称及び住所
  2. 取扱の対象となる個人情報 (要配慮個人情報を取り扱う場合は、その明示を含む)
  3. 個人情報取扱の目的
  4. 個人情報保有者による個人情報取扱の拒否の意思表示方法
  5. 個人情報を第三者に開示する場合のその開示先や開示の目的
  6. 必要に応じて個人情報保有者による第三者開示の承諾に関する条項
  7. 個人情報保有者が有するアクセス、修正、キャンセルもしくは反対の権利を行使する手段
  8. 個人情報保有者が個人情報取扱への同意を取消す場合の、その方法
  9. 個人情報取扱者が個人情報保有者に対し使用や開示の制限を申出る方法
  10. 個人情報を自動的もしくは同時的に取得することを可能とする電子的、光学的もしくは他の通信技術の遠隔的もしくはローカルの手段に関する情報(該当する場合)
  11. 個人情報保護方針を変更する場合に、個人情報保有者に対してそれを通知する手順と手段
  12. 罰則等

次のような場合には、1~3の行政罰が用意されています。

  1. 警告

法に基づいた正当な理由なく、個人情報保有者のアクセス、修正、キャンセルもしくは反対の要請に従わなかった場合

       2.  UMA(2020年度の場合は、日額86.88ペソ、以下同じ)の100倍~160,000倍の罰金

    • 個人情報の取扱やアクセス、修正、キャンセルもしくは反対の要請への対応において、過失や悪意がある場合
    • 事実に反し、データベースに個人情報の不存在を故意に宣言すること
    • 法に確立された個人情報取扱の原則に反して、個人情報を取り扱うこと
    • 個人情報保護方針に規定すべき項目を定めていない場合
    • 個人情報保有者によってなされた個人情報の修正や取消に従わず、不正確な個人情報を保持した場合
    • 前1の警告に従わなかった場合

       3. UMAの200倍~320,000倍の罰金

    • 個人情報保有者の同意を得ずに、個人情報の取得や第三者提供を行った場合
    • 当局による確認行為を妨害した場合
    • 欺瞞的、詐欺的行為によって個人情報を取得した場合
    • 個人情報の使用を個人情報保有者もしくは当局より要請を受けた場合に、これに従わず、使用を継続する場合
    • 個人情報保有者が有するアクセス、修正、キャンセルもしくは反対の権利を妨害するような取り扱いを行った場合
    • 要配慮個人情報のデータベースを正当かつ具体的目的なく、作成した場合

さらに、これらの違反が繰り返される場合は、UMAの100倍~320,000倍の罰金が追加で科される恐れがあり、また、要配慮個人情報の取得において違反がみられる場合は、最大で2倍の罰金が科される恐れがあります。なお、これらの行政罰が課された場合でも、民事的もしくは刑事的責任は免れるものではありません。

6.バングラデシュ

バングラデシュでは、個人情報保護を直接規定する法令は現時点では存在しません。一部関連する法令としては、2006年に成立した情報通信技術法の第63条で、機密事項及びプライバシー情報開示について、電子記録や電子文書の個人情報を、本人の同意なしに開示してはならない旨の規定と違反した場合の罰則が定められています。また、憲法の第43条で、文書や他の通信手段におけるプライバシーの保護が規定されています。

1.GDPR

(1)GDPRとは

EUでは、個人情報保護法分野において、「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」が2018年5月25日に施行されました。違反があった場合、2000万ユーロ又は年間総売り上げの4%の高い金額が制裁金として課される可能性がある一方(GDPR83条5項)、EU圏内に拠点を置く法人以外にも適用される可能性があり注意が必要です。今回はその適用範囲と域外移転を中心に解説いたします。

(2)適用範囲

 保護される個人データ(personal data)とは、「識別された自然人又は識別可能な自然人に関する情報を意味する。識別可能な自然人とは、特に、氏名、識別番号、位置データ、オンライン識別子のような識別子を参照することによって、または、当該自然人の身体的、生理的、遺伝的、精神的、経済的、文化的又は社会的な同一性を示す一つまたは複数の要素を参照することによって、直接的または間接的に、識別されうる者をいう。」(GDPR4条)とされています。クッキー(Cookie)やIPアドレスなども該当すると考えられていますが、対象は自然人のみであり、法人は含まれません。

 GDPRでは、「管理者又は処理者」がEU域内に拠点を持っているかを地理的適用範囲とし、場合を分けて規定しています(GDPR3条)。

 まずEU域内に管理者又は処理者の拠点がある場合にはGDPRが適用されます。拠点がない場合には、(1)データ主体(個人データを提供する者)に対する物品またはサービスの提供の場合、(2)データ主体の行動の監視の場合には、GDPRが適用されることになります。1物品またはサービスの提供については、EUの言語や通貨を使って注文ができる、あるいは、EUの消費者・ユーザー向けの説明がある場合などが該当するとされております。また、(2)行動の監視について、ターゲティング広告を行うなどしているなど、データ主体の個人的な嗜好、行動および傾向を分析又は予測している場合が該当するとされています。

(3)取り扱いが適法になる場合

 上記のような個人データの取り扱いが適法となる場合は6通りありますが(GDPR6条1項)、原則として、データ主体が、同意を与えた場合に適法となります。GDPRにおける同意では、1 .自由に与えられた(任意性)、2.特定された(特定性)、3. 説明を受けた、4.不明瞭でない意思表示(明確性)という有効性の要件があり、手続的な追加的な条件も規定されており、個人情報保護法における「本人の同意」と比較すると厳格に要件が定められています。EU域外の事業者がEU域内のデータ主体から直接個人データを取得するにあたっても、このような同意等が必要となります。

(4)域外移転

 ア データ主体から直接取得するのではなく、EU域内の事業者(管理者)からEU域内にいるデータ主体の個人データをEU域外に移転させることを域外移転といいます。域外移転にあたっては厳格な規制があり、日本を含むEU域外の事業者がEU域内の事業者からEUにあるデータ主体の情報を取得しようとする場合、GDPRで定められた要件を満たす必要があります。その要件とは、1.十分性認定に基づく移転(GDPR45条)、2.適切な保護措置に従った移転(GDPR45条)、3.特定の状況における例外(GDPR49条)のいずれかです。3.例外については、データ主体の同意等とされています。

 イ 1十分性認定

   欧州委員会が十分なデータ保護の水準を確保している国・地域であると決定した場合は、手続きや許可なく、域外移転を認めることができます。2019年1月23日、日本も十分性認定を受けております。本ニュースレター発行時点で十分性認定を受けているのは、アンドラ、アルゼンチン、カナダ、フェロー諸島、ガーンジー、イスラエル、マン島、日本、ジャージー、ニュージーランド、スイス、ウルグアイです。なお、米国については、十分性認定はされておらず、個別企業の登録ベースで十分な個人データ保護水準を担保する代替措置の「プライバシーシールド」を認める決定のもとに域外移転がなされてきましたが、2020年7月16日、EU司法裁判所はこの決定を無効とする判決が出されています。

 ウ 適切な保護措置、SCC(SDPC)・BCR

   上記の十分性認定を受けていない場合、域外移転にあたっては適切な保護措置の手続が必要となります。その際に使われるのが、SCC(Standard contractual clauses)やBCR(Binding corporate rules、拘束的企業準則)です。SCCは、EU圏内にある事業者と域外にある事業者との間で締結される域外移転の合意書のことであり、GDPR以前から規定されていた標準契約条項です。これについては欧州委員会からひな形が公表されています。現在ではSDPC(Standard data protection clauses)といいますが、ほぼ同じものとして用いられています。

 (5)企業としての対応

   GDPRの適用対象となる場合、必要な情報提供等のほか(GDPR13条)、データ保護オフィサーの設置、従業者の役割・責任の明確化、窓口の設置などの体制整備等が必要となります。日本の個人情報保護法では、個人情報の第三者提供に限り記録義務がありますが(個人情報保護法25条、26条)、GDPRでは取扱活動全般に記録義務がある(GDPR30条)などの違いもありますので、GDPRを意識した対応が必要となります。

また、域外移転を行う場合、日本国内の事業者へ行う場合には、日本は十分性認定を受けていますので、日本の個人情報保護委員会が公表している補完的ルールに従うことで足ります。他方、十分性認定を受けていない国へ域外移転を行う場合には、上記SCCなどの適切な保護措置を採る必要があります。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL:https://tnygroup.biz/

・日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL:https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL:https://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL:https://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL:https://tny-myanmar.com/

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL:https://tny-mexico.com/

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL:http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL:https://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2020年8月31日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) 入国規制

7月22日、日本において「水際対策強化に係る新たな措置」が決定され、入国拒否対象地域に新たに17か国・地域が追加されました(日本国籍者は対象外)。また、検疫強化措置の地域が追加されました(日本国籍者も対象)。7月末日までの間実施することとしていた、これまで査証制限措置がとられていた国・地域に対する査証制限、外国との間の航空旅客便の減便等による到着旅客数の抑制要請の措置は、8月末日まで延長されています。

・日本における新型コロナウイルスに関する水際対策強化(新たな措置)(外務省海外安全ホームページ)

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C062.html

・第41回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020722.pdf

(2) 感染の拡大

日本のCOVID-19の感染者数は1242名です。これまで感染者が出ていなかった岩手でも初めて感染が確認され、首都圏だけでなく、感染は地方に広がっています。報道によると、東京都が新型コロナウイルスの感染防止策として都内全域の飲食店とカラオケ店に再び営業時間短縮を要請しました。

2.タイ

 タイのCOVID-19の累計感染者数は3,304名です。この内、3,111名が回復し、現在医療機関で治療中の者は135名となっています。帰国者を除いた、タイ国内での新規感染者は66日間連続で0人となっています。

  1. COVID-19関連の規制状況

 7月22日、タイ政府は7月31日までとしていた非常事態宣言を、8月31日までさらに1か月延長することを承認しています。

  1. 入国規制

 タイ民間航空公社(CATT)は、7月1日より、航空機のタイ出入国に対して許可を与える際の条件を緩和しています。入国許可の対象となる外国人について、有効な労働許可を保持している本人だけでなく、その配偶者や子供についてもその対象が拡大されました。また新たに、以下の者についても対象として追加されています。

・タイ人の配偶者、親、子供を持つ外国人

・有効なタイでの居住証明書を持つ外国人、またはタイに居住する許可を得ている外国人

・タイ当局から認定されているタイ国内の教育機関に通学する、外国人の学生、その両親または保護者

  1. 日本からタイへの特別航空便

 現在、不定期で日本からタイ入国のための特別便が準備されています。8月7日の特別便については既に満席となっていますが、次回の特別便については、在東京タイ王国大使館のHP等に案内が出される予定です。

この特別便により渡航を希望する者は、入国許可書(COE)をタイ王国大使館に申請する必要があります。また、出入国の際には、以下の書類を提示しなければなりません。

・入国許可証(COE)

・記入、署名済みの申告書(Declaration Form)

・英文の搭乗可能健康証明書(Fit to Fly or Fit to Travel Health Certificate)

・渡航前72時間以内に発行された英文のRT-PCR検査による新型コロナウイルス非感染証明書

・新型コロナウイルス感染症及び関連疾患の治療費を含む10.万米ドル以上もしくはそれに相当する治療補償額の英文医療保険証

 これに加え、タイ入国時には、以下が求められます。

・T.8 formの記入(タイ空港公社(AOT)の携帯アプリにてオンライン登録可能)

・タイ当局に指定された医療従事者から医療検査を受け、隔離施設にて14日間以上の検疫隔離

3.マレーシア

(1) 禁止行為等

同年6月30日及び7月14日に回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)(以下「RMCO」)(同年8月31日まで有効)が改正され、禁止行為に該当する行為の範囲が大幅に縮小されました。現在の禁止行為は以下のとおりです。

  • マレーシア国民による観光目的での海外渡航及び外国人による観光目的でのマレーシアへの入国(大臣が指定した国からの外国人旅行者を除く)
  • パブ及びナイトクラブでの活動(パブ及びナイトクラブ内のレストラン営業を除く)
  • その他一か所に多くの人が集まりソーシャルディスタンスの実現及び公衆衛生局長の指示の遵守を困難にする活動

(2) 入国前後の手続等

7月24日、マレーシア外務省より外国から到着し監視下に置かれる者の入国及び隔離手続についてのガイドライン(GUIDELINES ENTRY AND QUARANTINE PROCESS PERSON UNDER SURVEILLANCE (PUS)ARRIVING FROM ABROAD) が公布されました。

ア 出発前の手続

(ア) 到着後の強制隔離の宿泊費用の支払いに関する約定書(Letter of Undertaking and Indemnity)の提出

提出は出発日の3日前までに、マレーシア外務省のHP等から書式を入手のうえ 必要事項を記入し、旅券や航空便旅程表等の他の必要書類とともにPDF等の形式で電子メールにより提出します。日本から渡航する場合、提出先は駐日マレーシア大使館となります。

(イ) マレーシアへの(入国許可の)承認状(Letter of Approval)/渡航通知書(Travel Notice)の受領

マレーシアへの渡航が許可されると、提出先の大使館等から(入国許可の)承認状/渡航通知書が電子メールで送付されます。

(ウ) アプリ(MySejahtera)への登録

マレーシアへの入国前に、アプリ(MySejahtera)(https://mysejahtera.malaysia.gov.my )をダウンロードし、出発日の前日までに渡航情報(日時、フライト情報、入国地点)、健康状態等の登録を行います。

(エ) 出発前のCOVID-19検査

同ガイドラインは、マレーシア政府は入国者に対し出発のCOVID-19検査を求めないものとしています。もっとも、航空会社が搭乗条件として出発前の検査を要求していることがあるため、各航空会社に対して確認をする必要があります。

イ 到着時の手続

(ア) 到着時のCOVID-19検査等

マレーシアへの到着時に、COVID-19検査を受ける必要があります。検査費用は、自身で負担をすることとなります。検査の結果、COVID-19の症状がみられる場合は病院に搬送されます。

(イ) 入国審査等

検査の結果COVID-19の症状がみられなかった場合、強制隔離の宿泊費用の支払いに関する約定書を係員に提示した後、入国審査及び税関検査を受け入国します。

(ウ) 到着後の手続

到着後、14日間又はマレーシア保健省が別途定めた期間の強制隔離に付されます。

強制隔離先は、マレーシア政府が指定したホテル等の施設で、強制隔離の対象者が隔離先の施設を選ぶことはできません。原則として1人1部屋ですが、保険証の検疫官の許可があれば配偶者や家族等との同室が可能とされています。

隔離施設のチェックイン時に約定書の原本を提出し、隔離費用を支払います(クレジットカードの使用可)。外国人の場合、隔離費用の額は1日あたり最大RM150とされています。

 部屋からの外出、喫煙、集会、フードデリバリーサービスの利用及び訪問者との面会は禁止されています。食事及び飲み物は1日3回(朝食、昼食、夕食)提供されます。有償でランドリーサービスを利用することもできます。

(エ) パス区分ごとの手続

なお、本ガイドラインに定められた上記手続とは別に、パスの区分や出国時期に応じて必用となる手続があります。以下、EP及びPVPについて抜粋しますが、詳細及びパス区分についてはマレーシア入国管理局等をご確認ください。

  新規入国 7月11日よりも前に出国し、
有効な在留資格を保有している者
の再入国
在留資格が失効しているが、
駐在員委員会の承認残余期間
がある者の再入国
再入国を前提とする出国
(7月18日以降)
EP1 入国許可は不要。
但し、雇用主から、承認機関を
通じて駐在員委員会に役職申請
をして承認状を取得することが
必要。
入国許可は不要。 入国許可が必要。
入国管理局長に対して入国
承認状の申請をする。
出国・再入国許可状の取得
が必要。
入国管理局長に対して申請
する。
EP2
入国許可が必要。駐在員会からの承認状、承認機関又は規制機関
からのサポートレターを添付して、雇用主から入国管理局長に
対して入国承認状の申請をする。
入国許可が必要。
手続は、新規入国の場合に
準じる。
EP3
PVP

*EP2、EP3、PVPについては承認機関又は規制機関から重要な役職(key posts)又は技術職(technical posts)と評価されなければ入国許可を受けることができません。

4.ミャンマー

ミャンマーのCOVID-19の感染者数は353名です。新規の市中感染者はほとんど存在せず、海外から戻ってきた人の感染がほとんどです。ミャンマー国内においては、経済活動はCOVID-19以前に戻りつつあり、自宅待機措置についても全てのエリアで終了しました。もっとも、一定の集会禁止措置などは8月15日まで延長されています。

海外からの入国については、8月31日まで国際旅客機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも8月末まで運休する旨発表済みです。

もっとも、6月26日に臨時の救援便が飛ばされ、ODA関連の20名の日本人(他はミャンマー人)がミャンマーへ入国しました。次期救援便の調整も進められており、在京ミャンマー大使館とANAが調整した結果、8月1日、6日、27日の三便を飛ばす方向です。8月1日及び8月6日のフライトは緊急性の高いODA関係者を中心に搭乗予定です。8月27日のフライトにはJCCM会員企業も搭乗予定です。

ファーストトラック入国については中国が先行していますが、これを各国に適用するべく検討が進められています。対象は「緊急性を伴うビジネスマン」に限定され、現在の外国人入国要件と異なり、プロセスは以下の通りになる予定です。

1.出国前36時間以内のPCR陰性証明書(一週間の自宅待機なし)

2.到着後、政府施設隔離となり、翌日、PCR検査実施・陰性確認

3.隔離5日目にPCR検査を実施し、陰性であれば7日目に施設隔離終了。(自宅待機なし)

 以上より、現時点では海外からミャンマーへ入国する手段としては臨時便のみとなり、かつ、希望すれば必ず臨時便に乗れるわけではない状況です。

5.メキシコ

2020年6月30日以降、連邦政府によるCOVID-19 に関しての規制等は新たに発表されていません。連邦政府が定める社会活動再開の信号は、7月27日の週は赤が18州、橙が14州と赤の割合が多くなっています。一方、各州(メキシコシティを含む)政府が定める規制等もあり、適宜、導入、更新されている状態です。例えば、メキシコシティでは、7月14日より、高感染リスクの地区を特定し、少なくとも15日間は公道での露店等小売業の制限などを行う赤信号地区プログラムの実施や,同じ住居で生活する人の中に感染者が1名以上確定した場合は、その住居に居住する全員の15日間自宅待機を要請することなどの措置が追加されました。

また、メキシコ政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、7月16日にメキシコ政府合意のもと8月20日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされていますが、在メキシコ米国大使館の発表では、米墨間の航空便の運航状況は、今年1月と比較し66%減少していることから、渡航にあたっては十分な計画が必要とされています。なお、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

グアテマラ、ベリーズ国境においては、各政府による国境閉鎖が継続されていますが、ベリーズ政府は8月15日に国際空港の運営を再開することを発表しています。

6.バングラデシュ

 バングラデシュのCOVID-19の感染者数は23万2194名です。新規の感染者はやや減少傾向にあるものの、依然として1日2,500~3,000人の感染者が報告されています。バングラデシュ政府は、7月1日から8月3日の期間における新型コロナウイルス感染拡大予防措置について以下の通り、発表しました。

  1. 午後10.時から翌日午前5時までの時間帯は、真に必要な場合(必要不可欠な売買,職場との往来等)を除き外出禁止。外出の際は,マスクの着用等感染防止措置を講じなければならない。違反した場合には法的措置を受けなければならない。
  2. 商店とショッピングモールは午後7時までに閉店しなければならない。
  3. いかなる教育機関も開校することができない。ただし,オンライン講座等は実施できる。
  4. いかなる集会,大規模行事も実施できない。ただし,宗教省の指導に従い,感染防止措置を講じた上であれば,モスクなどで集団礼拝を行うことはできる。
  5. レッドゾーンに指定された地域のうち,感染拡大が深刻な地域でのみロックダウンが実施される。ロックダウンが実施された地域では,保健サービス総局の許可と命令の下,自治体の調整によって日用品等の供給が確保されなければならない。

 また、以下の対象国及び地域からの、バングラデシュへの定期国際便の乗入停止措置が継続されています。

(対象国及び地域)バーレーン,ブータン,香港,インド,クウェート,モルディブ,ネパール,オマーン,サウジアラビア,シンガポール,タイ

バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については,渡航前72時間以内に取得した新型コロナウイルス陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があります。

第2.各国の進出方法

1.日本

2.タイ

(1) 進出形態

 企業がタイに進出する場合、大きく分けて、1.タイ国内法人を設立する方法と、2.外国法人のまま駐在員事務所・支店等を設立する方法、3.既存企業への資本参加の3通りの進出形態が考えられます。

  1. タイ国内法人の設立

 タイにおいて新規に法人を設立する進出形態です。法人の種類については以下のような分類となります。

・株式会社(公開会社・非公開会社)

公開会社、非公開会社ともに、間接有限責任を伴う株主のみから構成される会社となります。公開会社は、公開会社法に基づき設立される会社で、株式の公募を目的とし、原則として株式に譲渡制限は付すことができず、株主数は15 人以上必要である点などが特徴として挙げられます。一方、非公開会社は、民商法典に基づき設立される会社であり、株式に譲渡制限を付すことが可能な点、株式の第三者割当が認められない点、株主数が3人以上必要である点などが公開会社と異なります。

 一般的に、タイに進出する日系企業は、非公開会社を選択しているケースが多数です。

・パートナーシップ

 パートナーシップは、民商法典に規定されている形態で、3種類の形態が存在し、パートナーの責任および登記の有無に違いがあります。タイにおいては比較的多く見られる形態ですが、一部のパートナーが無限責任社員になる必要があるため、タイに進出する日系企業がパートナーシップを選択することは少ないです。

     2. 駐在員事務所・支店等の設置

・駐在員事務所(Representative Office)

 本社への情報提供等を行うために設置する形態で、活動範囲が一定の調査・品質管理・宣伝等に限定されています。また、原則として収益事業を行うことはできません。

・支店(Branch Office)

 外国法人(本社)のタイ国内の支店として設置する形態です。外国人事業法の規制を受けることから、事業活動は、当該事業に関連するライセンス等を取得した範囲に制限されます。

    3. 既存企業への資本参加

外国人または外国法人が資本の50%以上を保有する場合、外国人事業法上の「外国人」に該当し、同法の規制対象となります。その場合、一定の規制事業について行うことが原則的に禁止されるため注意が必要です。規制事業の一部については、外国人事業ライセンス(Foreign Business License :FBL)を取得することで行うことが可能となります。

3.マレーシア

(1)進出形態

 マレーシアに進出するための形態としては、直接的な進出形態である1.現地法人の設立、2.M&Aによる現地法人の買収、3.外国法人の支店の設立、4.駐在員事務所・地域事務所の設立及び間接的な進出形態である5.契約による進出(販売代理店契約、フランチャイズ契約等)が考えられます。

(2)現地法人の設立

 マレーシア会社法(Companies Act 2016)に基づき会社を設立する方法です。流通取引業等の支店形態ではライセンスの取得が困難な業種については、現地法人の形態をとる必要があります。

 マレーシア新会社法に従って設立される会社には、大きく分けて、

  1. 有限責任株式会社(公開会社、非公開会社)
  2. 有限責任保証会社(公開会社)
  3. 無限責任会社(公開会社、非公開会社)

の三つの形態があります。有限責任株式会社は、社員の責任が出資した株式の金額に限定される会社で、日本における「株式会社」に相当します。現行の会社法において外国人又は外国企業が設立できる会社の形態についての制限は設けられていませんが、設立や運用が容易であることから、外国人又は外国企業が会社を設立する場合そのほとんどが非公開の有限責任株式会社となっています。

 現行の会社法の下では、非公開の有限責任株式会社の場合、株主の最低人数は1名とされ、取締役の最低人数も1名とされていますが、マレーシアに基本住居を置く取締役が1名以上必要となります。

会社の設立はネームサーチ(希望する会社名の使用の可否の調査)を経たうえで、マレーシア会社委員会(CCM)に設立申請をする形で行います。

(3)M&Aによる進出

 現地法人の形態で進出する方法としては、現地法人を自ら設立するほかに、既存の現地法人の株式を取得し支配権を得る方法があります。この方法には、その現地法人が積み上げてきた事業価値を引き継ぐことができる等のメリットもある一方で、(潜在的な)負の財産を承継してしまう等のデメリットがあります。

 また、外資規制との関係で株主の変更がライセンスに与える影響の有無や居住取締役の確保についても考える必要があります。

(4)支店(外国企業登録)

 支店を設置することにより、支店を通じて現地での営業活動を含めた活動が可能になります。もっとも、流通取引業等の支店形態ではライセンスの取得ができない業種については、この形態により活動をすることは困難です。

 支店の設立はネームサーチ(希望する支店名の使用の可否の調査)を経たうえで、マレーシア会社委員会(CCM)登録申請をする形で行います。登録申請に際しては国内居住者を代理人として選任する必要があり、この代理人は会社法の下で外国企業に義務付けられている行為について責任を負うこととなります。

(5)駐在員事務所(Representative Office)・地域事務所(Regional Office)

 駐在員事務所は、特に製造業とサービス業について、マレーシア国内への投資・事業機会の可能性に関する情報の収集、二国間貿易関係の強化、マレーシアの商品とサービスの輸出促進及び研究開発の実施を承認された外国法人・組織の事務所をいうものとされています。また、駐在員事務所に隣接する制度として、地域事務所(東南アジア及びアジア太平洋地域内の関連会社や子会社、代理店との調整センターとして機能する事務所)制度が存在します。

 駐在員事務所・地域事務所については、営業活動を行うことができない、駐在員事務所・地域事務所の運営資金が海外の資金源によって賄われていなければならず支出予定額は年間RM300,000以上でなければならない等の制約があります。

 駐在員事務所・地域事務所は会社法に基づく設立手続は必要ありませんが、マレーシア政府の承認が必要となります。

(6)フランチャイズ契約

 現地に法人や支店等の拠点を設けず、現地のフランチャイジーを介して間接的に商品やサービスを提供することも可能です。

外国企業がマレーシア国内で又はマレーシア国民に対してフランチャイズの販売を行う場合には、フランチャイズ登録局から承認を受け、また、同局への登録をしなければなりません。また、フランチャイズ契約の内容は、フランチャイズ法(Franchise Act 1998)に沿ったものとする必要があります。

4.ミャンマー

(1) 外資規制

 ミャンマーに進出するに当たり、まずは外資規制を確認する必要があります。ミャンマーで実施予定の事業を外資10.0%で行うことができるか、合弁が必要か、ミャンマー内資会社のみが実施できるかにより進出スキームの選択肢が大きく異なります。

 外資規制については、投資法に基づき発布された2017年4月10.日 投資規制業種通知(MIC Notification No.15/2017, List of Restricted Investment Activities)において、1.「連邦政府のみが実施するものとされている投資活動」9業種、2.「外国投資家による実施が許されない投資活動」12業種、3.「ミャンマー国民又はミャンマー国民が有する事業体との間の合弁投資の形でのみ外国投資が認められる投資活動」22業種、4.「関連省庁からの承認を受けることにより許される投資活動」126業種の合計169業種が規定されており、当該規定に基づく制限を受けます。

 したがって、事前に上記のいずれかの業種に該当するか否かの確認が必要となります。記載が曖昧な業種もありますが、その場合にはミャンマー投資委員会(MIC)に対して事前確認申請を行うことにより、いずれの業種に該当するかの回答を得ることができます。もっとも、当該回答はMICが法的な保証を付与するものではないため、その後にMICの対応が変更される可能性があることに留意が必要です。

(2)法人設立の選択肢

上記の外資規制をクリアした上で、ミャンマーに法人を設立する方法は主に以下の4つの方法が挙げられます。

(a)会社法に基づく現地法人又は海外法人

(b) (a)+投資法に基づくエンドースメントの取得

(c) (a)+投資法に基づくMIC許可の取得

(d) (a)+経済特区法に基づく投資許可の取得

多くの日系企業は、(a)の方法に基づき進出しています。(b)乃至(d)の方法は、製造業や不動産開発業など、土地を長期で使用する必要性の高い業種が主です。

上記の(a)又は(b)のいずれを選択するかを検討する際の考慮要素としては、主に1. 投資法の恩恵を受ける必要性、2. 手続きに要する時間及び手続的負担、3. 初期投資額を挙げることができます。

1. 投資法の恩恵を受ける必要性に関して、投資法では、優遇措置として、法人税の一定期間の免税などの租税減免措置の恩典や土地の長期の賃借権(最大50年、さらに、10.年の延長を2回行うことができる。)等が存在します。そのため、製造業等においては長期の土地賃借が必要であるため、投資法の恩恵を受ける必要性が高いと言えます。ただし、租税減免措置については、所得税の免税は、2017年4月1日に発布された投資促進分野通知(MIC Notification No.13/2017, Classification of Promoted Sector)で定める投資促進分野に該当する投資に対してのみ付与され、複数の基準がありますが、そのうちの1つの基準として300,000ドルを超える額の追加資金の支出が必要となります。

2. 手続きに要する時間に関して、(b)の場合には、(a)の場合と異なり、会社法に基づく営業許可に加え、投資法に基づくエンドースメントを取得する必要がある。そのため、(b)の場合には、必要書類が増加し、かつ、一般に投資法に基づくエンドースメントは会社法に基づく営業許可以上に取得までに時間を要します。

3. 初期投資額に関して、投資法上は、最低資本金が規定されていません。しかし、租税優遇措置を享受するためには、300,000ドルを超える額が必要となります。他方、会社法に基づく会社の最低資本金額は存在せず、1チャットの資本金でも設立可能です。そのため、(b)の場合には、(a)の場合よりも多額の初期投資が必要となります。

(c)については、以下のいずれかの場合のみMIC許可を取得する必要があります。

(i)国家の戦略上重要な事業
(a)通信、技術、運輸インフラ、エネルギーインフラ、都市開発インフラ、採掘又は天然資源、農業、市街地、メディアの各セクターかつUSD2,000万以上の投資
(b)当局からのコンセッション等による案件かつUSD2,000万以上の投資
(c)国境紛争・紛争影響地帯かつUSD100万以上の投資
(d)国境をまたぐ投資かつUSD100万以上の投資
(e)1,000エーカー超の土地を占有又は利用する農業関連投資
(f)100エーカー超の土地を占有又は利用する非農業関連投資
(ii)一定の資本金額を超える事業
(a)予想される投資額がUSD1億を超える投資
(iii)環境及び地域社会に深刻な影響を与える可能性のある事業
(a)環境影響評価が必要となる事業
(b)環境保護法により保護地域又は生態系保全地域に指定されている地域への投資
(iv)国有地又は建物を利用する事業
(v)別途政府により投資許可が必要とされる事業

(d)の場合、手厚い租税減免措置や土地の長期の賃借権(最大50年、さらに25年の延長を行うことができる。)が認められます。しかし、経済特区法は経済特区に指定されたエリアでの会社設立のみに適用され、現時点においては、ティラワ、ダウェイ、チャオピューの3つのエリアが経済特区として指定されているものの、ティラワのみが整備済みの現実的な進出候補地であり、ダウェイ及びチャオピューはいずれも整備は完了しておらず、実際に選択肢となり得るには時間を要します。ティラワには約50社の日系企業が進出しています。

5.メキシコ

(1)外資規制

 外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)による規制が存在するものの、ほとんどすべての業種において外資に開放されています。たとえば、石油および炭化水素の探索と採掘等は国家のみが行うことができる業種、旅客・観光・貨物国内陸上輸送(宅配便サービスを除く)等のメキシコ人または会社定款に外国人排除条項を定めるメキシコ企業のみが行うことができる規制業種、国内航空輸送等については25%までと外資参加率に上限が定められている業種などといった具合に限定されていますが、それ以外は規制なく外資参入が可能です。ただし、規制業種に限らず、既存企業の資本に外資が49%を超えて参加し、かつ、その会社の資産総額が201億8467万1346.26メキシコペソを上回る場合は外資委員会の承認が必要とされます。

(2)事業形態・現地法人設立

1. 事業形態

 メキシコに進出して事業を行う場合、個人事業として行う場合、会社を設立する場合、支店や駐在員事務所を設立する場合、合弁事業として行う場合が考えられます。

2. 会社形態

 この中で、会社設立については、主に商事会社一般法(Ley General de Sociedades Mercantiles)が規定しています。同法1条においては、合名会社(Sociedad en Nombre Colectivo)、合資会社(Sociedad en Comandita Simple)、合同会社(S. de R.L.: Sociedad de Responsabilidad Limitada)、株式会社(S.A.: Sociedad Anónima)、株式合資会社(Sociedad en Comandita por Acciones)、協同組合(Sociedad Cooperativa)など、多くの法人形態が規定されていますが、社員の無限責任を避けるため、メキシコ進出にあたっては、株式会社(Sociedad Anónima)や合同会社(Sociedad de Respossabilidad Limitada)の形態が採られることが一般的です。

また、定款変更せずに資本金を増減できる可変資本(Capital Variable)制度も多く利用されています。法人の形態や可変資本制度を採用しているかについては、会社名に反映させなければならず、社名の後に 「S.A. DE C.V.」などと付け加えられます。

3. 会社の設立手続

 会社設立については、概ね、(a)経済省社名使用許可、(b)委任状の作成、(c)定款・創立総会決議事項の準備、(d)会社設立公正証書の作成、(e)会社設立登記、(f)連邦納税者登録、(g)外資登録、(h)各種帳簿類や社屋関係、労務・業務上の手続きその他の手続を行う必要があります。

(a)社名使用許可については、社名候補を3つ以上、優先順位を付して提出する必要があります。

(b)委任状について、(d)会社設立公正証書の作成をメキシコ居住者に委任する必要があるため作成します。

(c)商号や会社の目的、資本金額等の記載事項を含めた定款を準備します。 

(d)メキシコにおいては、会社設立行為は契約行為と解されており、会社設立公正証書への署名によって法的には会社が設立されることになります。

(e)会社設立の商業登記(RPC:Registro Público de Comercio)が、商業登記所で行われることにより、会社の設立を第三者に対抗できるようになります。ただし、手続地によるがこの手続きには2,3か月を要することもあります。

(f)連邦納税者登録は行政手続きや銀行口座の開設、正規インボイスの発行等に必要となります。

(g)外資登録は、会社設立の日から40日以内に登録が必要となり、当該報告年について、総資産額、負債総額、国内外の合計収益、国内外の合計支出のいずれかが1億10.00万ペソを超過した企業は、年次更新手続きが必要となります。

6.バングラデシュ

(1) 外資規制・外資奨励

バングラデシュに進出するに当たり、禁止・規制業種や出資比率などの外資規制を確認する必要があります。

工業省「国家産業政策令2016」において、1.禁止業種(4業種)、2.規制業種(22業種)が規定されており、金融業などの規制業種については主に政府の認可等が必要です。また、業種によっては、外資出資比率の制限があります。具体的には、保険業の外資出資比率は60%まで(2013年4月9日付 SRO No.53.005.022.05.00.076.2011-96)、運搬・運送(C&F)エージェントの外資出資比率は49%まで(2017年7月26日付 SRO No.247/AIN/2017/62/Customs)、海外への労働者派遣業の外資出資比率は40%まで認められています(2013年海外就労・移民法)。

一方、バングラデシュでは、外資奨励の取組みとして、1.外資奨励産業に対する優遇措置、2.特区の整備、が進められています。1.外資奨励産業として、輸出志向産業、ハイテク産業、国産天然資源を活用する産業、国産原料に依存する産業が挙げられており、法人税減免措置等優遇措置を受けることができます。2.特区の整備として、輸出加工区(EPZ)や経済特区(BEZA)、ハイテクパークの整備が進められており、進出企業への優遇措置が設定されています。このうち、特に輸出加工区(EPZ)の整備が進んでおり、法人税の免除、建設資材、機械、設備、部品等の輸入関税免除、原材料の輸入関税および完成品の輸出関税免除等の優遇措置を享受することができます。バングラデシュ国内に8のEPZがあり、日本企業が約20社進出しています。EPZへの投資が可能な業種は以下の通りです。

1.電子機器、電気部品、電子製品、ソフトウェア光学製品、2.編み物、ニット、繊維、3.エンジニアリング製品、4.皮革製品、5.靴、⑥玩具、7.医療器具、
8.医薬品、9.プラスチック金型製品、10.ジュートの新利用法を採用している産業、11.貴石、反貴石の裁断、研磨家庭用備品、装置、12.特別仕様の衣類、
13.ヘッドウェア宝石、14.時計、15.科学測定装置、16.航空機部品、17.実験装置、18.印刷、出版、19.印刷、複写装置、周辺機器、
20.日曜大工道具、装置、21.楽器、22.レーザー技術製品

(2) 法人設立の形態

外国人投資家がバングラデシュに事業拠点を設立する場合、以下の5種類の形態のいずれかとなります。

  1. 現地法人
  2. 支店
  3. 駐在員事務所
  4. 連絡事務所
  5. 公共部門との合弁会社

1.現地法人は、バングラデシュ会社法に基づき設立され、バングラデシュ投資開発庁(Bangladesh Investment Development Authority, BIDA)への登録が必要です。2.支店、3.駐在員事務所、4.連絡事務所は、BIDAの承認を得て設立されます。5.公共部門との合弁会社は、民間部門の出資額が50%を超える場合は、BIDAへの登録が必要です。2.支店、3.駐在員事務所、4.連絡事務所は、海外送金が制限又は認められておりません。また、外国会社とみなされますので、外国投資家の出資割合が一定の比率に制限されている事業活動は認められないなど、外資規制を受けます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL:http://www.tnygroup.biz

・日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL:http://progress.tny-legal.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL:http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL:http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL:http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL:http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL:http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL:https://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2020年7月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) 入国規制

6月29日、日本において「水際対策強化に係る新たな措置」が決定され、入国拒否対象地域に新たに18か国が追加されました。入国拒否措置の期間は当面の間とされています。検疫の強化、査証の制限、航空機の到着空港の限定等及び到着旅客数の抑制の措置については、7月末日まで延長されました。

今後は一般の国際的往来とは別に、ビジネス上の出入国について例外的な枠を設置することを予定しています。感染状況が落ち着いている入国拒否対象地域を対象国として、追加的な防疫措置を条件とし、ビジネス上の往来を可能にするような仕組みを協議・調整中です。

・日本における新型コロナウイルスに関する水際対策強化(新たな措置)(外務省海外安全ホームページ)

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C057.html

・第38回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)

https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020618.pdf

・第39回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)

https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020629.pdf

(2) 外出自粛の緩和

6月19日に全国を対象に県をまたぐ移動の自粛が解除されました。外出自粛の段階的緩和は、7月31日までを移行期間としており、これが終了した8月1日を目途に、通常に戻ることを予定しています。

・第36回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020525.pdf

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制

 6月15日より、タイ政府は非常事態令を緩和し、以下の事項を適用しています。

  1. 夜間外出禁止令の撤廃

6月14日23時以降より、タイ全土における夜間外出禁止令を解除しました。

  1. 学校及び教育機関の施設使用の緩和

インターナショナルスクール、外国の教育課程の大学等や、生徒数が120名以下の学校について、学習や授業のための施設使用を認めました。

  1. 施設の営業及び活動の実施

以下の活動等について、その実施を認めました。

・会議、研修、セミナー、コンサート、ホテル、劇場、映画館等の施設での活動

・食堂、フードコート、ホテル、レストラン、アルコールの提供が認められた場所における、営業時間内でのアルコール飲料の消費(パブ、バー、カラオケ等の活動は認められていません)

・託児所、保育所、幼稚園、高齢者施設、介護施設等の福祉施設での、デイケア活動

・健康増進施設内での、サウナ、スパ、タイ古式マッサージ施設等の営業

・公園、公共の活動場所、屋外のスポーツ競技場等における集団での運動

・ウォーターパーク、児童公園、遊技場の営業

・スポーツ指導のための競技場、運動用の施設での活動

  1. 県境をまたぐ移動に関する基準の制定

車両、鉄道、航空機等の移動制限の緩和に伴い、待合場所、座席および乗客数の制限等が緩和されています。

(2) 入国規制

タイ民間航空公社(CATT)は、タイに到着する全ての国際旅客便の飛行を禁止する措置を取っており、その期限は6月30日までとなっています。7月1日以降の詳細については、まだ発表されておりませんが、外国人渡航者の入国制限を一部緩和する方向で検討に入ったとの報道がなされています。

3.マレーシア

(1) 回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)

 2020年6月10日、回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)(以下「RMCO」)が施行されました。このRMCOは、同年8月31日まで効力を有するものとされています。

 RMCOの施行により、州間の移動や理髪店の営業等多くの活動を再開することが可能となります。他方、強化された移動制限令(enhanced movement control order)の対象となる場所への出入りや行列・行進への参加のほか、以下の行為はなお禁止されています。

  • スポーツイベント・大会への参加及びそれらの開催
  • 接触型スポーツ
  • ウォーターテーマパークやウォーターパークでの活動
  • スイミングプールでの活動(個人の住宅及び宿泊施設での活動、東京オリンピックに参加する代表選手の練習を除く)
  • マレーシア国民による観光目的での海外渡航及び外国人による観光目的でのマレーシアへの入国
  • カラオケ、ショッピングモールでの子供向け運動場、家族向けエンターテイメント施設での活動
  • パブ及びナイトクラブでの活動(パブ及びナイトクラブ内のレストラン営業を除く)
  • 服のフィッティング、服飾店内での試着室の利用、店内でのアクセサリーの試着、店内での化粧品テスターの提供
  • 美容健康施設内でのリフレクソロジー及びマッサージ
  • クルーズ船での活動
  • その他一か所に多くの人が集まりソーシャルディスタンスの実現及び公衆衛生局長の指示の遵守を困難にする活動

 もっとも、マッサージ店の営業再開を許可する見通しであるとの発表が6月15日になされていること等から、8月31日を待たずに禁止行為に該当する行為が再開できるようになる可能性もあります。

 また、RMCOの施行により、集会を開くこと及び集会に参加することも可能となりましたが、公衆衛生局長の指示に従うことが必要とされています。

(2) 外国人の入国について

 ア 入国許可の要否

 (ア) 入国許可が不要なパス

  以下の区分に該当する場合、マレーシア入国管理局からの入国許可は不要とされています。

  • 雇用パス(カテゴリー1)(Employment Pass Category I (EP I))、その扶養家族(Dependants)及び外国人メイド(Foreign Maids)
  • 居住者パス(技能)(Residence Pass-Talent (RP-T))、その扶養家族及び外国人メイド

 (イ) 入国許可が必要なパス

  以下の区分に該当する場合、マレーシア入国管理局からの入国許可が必要となります。

  • 専門職訪問パス(Professional Visit Pass (PVP))
  • 雇用パス(カテゴリー2)(Employment Pass Category II (EP II))及び扶養家族
  • 雇用パス(カテゴリー3)(Employment Pass Category III (EP III))
  • 長期ソーシャルビジットパス(Long Term Social Visit Pass (LTSVP))を有する18歳以上の子供、両親及び義理の両親

 (ウ) マレーシアマイセカンドホーム(MM2H)パスについて

 現在公表されている情報によれば、MM2Hパスの保有者は、入国管理局からの入国許可によってではなく、観光・芸術・文化省からの入国許可に基づき入国が可能とされています。

 イ 入国許可のための手続

  • 事業に関係する省庁の駐在者委員会(EC)から承認状(Approval Letter)を受領する(新規でない駐在者については不要)。
  • 事業に関係する省庁からサポートレター(Support Letter)を受領する。
  • 電子メールで入国許可申請を行い、入国承認状(Entry Approval Letter)を受領する。
  • 入国前3日以内にPCR検査を受け,陰性証明書を受領する(※日本国籍者については6月24日から適用除外。もっとも、入国後に「PCR検査陰性結果」が無い者として抗原検査を受ける必要がある。)。
  • マレーシア到着時に入国承認状を提示する。

 ウ 入国後の手続

  • 14日間の自宅隔離を行う。
  • 自宅隔離に際しては、給付されたリストバンドを着用する。
  • 自宅隔離13日目に抗体検査を行う。

4.ミャンマー

ミャンマーのCOVID-19の感染者数は299名です。新規の市中感染者は1週間以上存在せず、海外から戻ってきた者のみです。ミャンマー国内においては、職場やレストランにおけるCOVID-19予防のためのガイドラインが出されており、それを順守すれば事業を行うことができます。そのため、5月下旬よりレストランは徐々に再開しており、6月からは多くの日系企業も徐々に在宅から事務所勤務に戻りつつあります。もっとも、未だに1地区における自宅待機措置及び夜間外出禁止要請は残っており、7月15日まで延長されています。

他方、海外からの入国については、7月31日まで国際商業航空機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも7月末まで運休する旨発表済みです。そのため、現実的にミャンマーに行くための飛行機がない状況ですが、飛行機の運航が再開された際の入国に関する規制が6月9日に在日本ミャンマー大使館より以下のとおり発表されております。

1.出国前に準備すべき書類

a. 新型コロナウイルス陰性証明書(Laboratory Evidence of Absence of COVID-19)

 この医療機関の証明書(Laboratory Certificate)は、国立国際医療研究センター病院やトラベルクリニック等で発行が可能です。証明書は搭乗前72時間以内に発行される必要があります。以下の国立国際医療研究センター病院のホームページを確認の上参考としてください。

http://travelclinic.ncgm.go.jp/009/index.html

b. 1週間の自宅隔離を行ったことについての所属機関による推薦書(Office Recommendation Letter on One Week Home Quarantine)

 今次渡航前1週間の間に他国へ渡航していないこと及び自宅に滞在していたことを証明する書類。

2.ヤンゴン国際空港到着後の隔離措置

a. 指定された施設での1週間の隔離措置を実施していただきます。隔離中に、PCR検査のための検体を採取します。

b. 施設隔離中に行われたPCR検査の結果が陰性だった場合、職務復帰前に1週間の自宅隔離を行うことが義務づけられます。

5.メキシコ

(1) Nueva normalidad始動

3月24日から続いた「Jornada Nacioanl de Sana Distacia」の期間が終わり、6月1日より、5月14日、15日、29日に官報公示された保健省令に基づく、社会活動再開に向けた「Nueva normalidad」の期間が始まりました。

社会活動再開に向けたレベルを赤・橙・黄・緑と4つの色で示し、連邦政府が発表する色に基づき、段階的に活動の範囲を広げていく計画で、経済活動においては、以下の範囲で活動が許されうるとしています。

Máximo  赤 Alto  橙 Intermedio  黄 Cotidiano  緑
必要不可欠な事業のみ

◆1.5mの間隔の維持もしくは保護具の提供
◆感染リスクの高い人は在宅勤務
◆入退管理
◆時差を設けたシフトやワークスケジュールの確立etc.

必要不可欠な事業、その他の事業については出勤率30%での活動可◆1.5mの間隔の維持もしくは保護具の提供
◆入退管理
◆時差を設けたシフトやワークスケジュールの確立
◆感染リスクの高い人
には最大の注意を払うetc.

全事業活動可
(在宅勤務の推奨)

◆1.5mの間隔の維持
もしくは保護具の提供
◆入退管理
◆時差を設けたシフトやワークスケジュールの確立
◆感染リスクの高い人には最大の注意を払うetc.

全事業活動可
(全従業員の出勤可)

◆感染防止策の徹底
◆感染リスクの高い人には最大の注意を払う

ただ、依然としてメキシコ国内の感染者数は増加傾向を見せており、特に、これまで比較的感染者が少なかった地域でも感染者の増加が目立ち国土全体への感染拡大が懸念されています。6月15日の週はメキシコ全32州(メキシコシティ含む)の内、半数の16州が橙とされ、翌週には赤15州、橙17州、6月29日の週は赤14州、橙18州となりましたが、それぞれ、これまで赤だったコリマ州とイダルゴ州が橙になった一方、前週に橙だったタバスコ州が赤に、これまで赤だったメキシコ市やケレタロ州など4州が橙に,前週に橙だったヌエボレオン州、イダルゴ州、コリマ州が橙から赤になり、一進一退の状況です。

また企業活動の再開にあたっては、連邦政府が発表したガイドラインに従い、経済活動の種類、事業所の規模、事業所の特徴を鑑みた対策が必要となりますが、具体的な方針は州政府が決めることとなり、また連邦政府の発表する色とは異なる対応をとる州政府もあることから、事業所所在地における州政府の指針も踏まえた内容の対策をとることが必要です。

例えば、メキシコシティの場合、連邦政府が定める産業に加え、ビール製造業と自転車販売業を「必要不可欠な活動」として6月1日から赤色下での操業を認めています。また、メキシコシティ独自に社会活動再開に向けた赤・橙・黄・緑のレベルを設定し社会活動再開を進めていくこととしていますが、特設プラットフォームでの事業者登録や市が定める産業別衛生対策の実施、経済活動再開後の事業者に対しては、新型コロナウイルス感染が疑われる労働者を発見した場合の報告や従業員が30人以上の事業所の場合の感染の有無を確認する検査の実施(毎週もしくは隔週1回)を義務付けています。メキシコシティは6月26日の定例首長会見で6月29日より再開レベルを橙とし、商業施設や飲食店、ホテルなどの部分的営業再開を発表し、同日付の同市官報にて公示されました。例えば、7月1日よりホテルは宿泊客30%まで、レストランは収容人数30~40%まで、7月6日よりショッピングセンターや百貨店が収容人数30%までで事業を再開することができますが、前述の通り市が定める衛生対策の実施等のルールに従った対応が必要です。

(2) 入国規制

 メキシコ政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、6月16日にメキシコ政府合意のもと7月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされていますが、在メキシコ米国大使館の発表では、米墨間の航空便の運航状況は、今年1月と比較し80%減少していることから、渡航にあたっては十分な計画が必要とされています。なお、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

グアテマラ、ベリーズ国境においては、各政府によるその閉鎖が継続されています。

6.バングラデシュ

バングラデシュのCOVID-19の感染者は13万7787名です。依然として感染は拡大しており、6月10日からは連日1日あたり3,000~4,000名の新規感染者が報告されております。

 新型コロナウイルスの蔓延を防ぐための措置として、バングラデシュ全土で、6月30日まで、午後8時から翌日午前6時までは、真に必要な場合を除き外出禁止です。外出の際はマスク着用等の衛生措置を講じることが必要で、違反者に対しては法的措置(罰金、懲役刑)が取られます。同期間、教育機関は開校できません。また、6月15日、バングラデシュ政府はゾーン分け規制を含む感染拡大予防措置を講じると発表しました。赤、黄、緑ゾーンに分けて、赤ゾーンに指定された地域では、政府機関や民間企業などは政府指定休日となり、人々の移動や生活も厳格に制限されます、黄・緑ゾーンでは政府機関や民間企業は限定的に業務を行うことができますが、人々の移動や生活も一部制限されます。

バングラデシュへの入国については、一部の国・地域(中国、英国、カタール、アラブ首長国連邦)を除いて、無期限での国際フライトの乗り入れ停止措置をとっております。海外投資家およびビジネス関係者はオンアライバルビザの発給が再開されていますが、ビザの申請時には、これまでの必要申請書類に加え、渡航前72時間以内に取得したPCR検査で新型コロナウイルス陰性であることが記載された英訳付きの診断書、投資・ビジネス目的を立証する書類が必要です。また、コロナ感染国からの入国者に対しては、入国後2週間の自主的な隔離措置が要請されます。

第2.各国の解雇手続き

1.日本

(1) 解雇の通則

「使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了」を解雇といい、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)と規定されています。

日本において解雇は、使用者が自由に行えるものではなく、「社会通念上相当」と認められる客観的で合理的な理由が必要です。

(2) 解雇の種類

解雇には下記の3種類があります。

1.普通解雇

 能力不足、勤務成績不良、業務命令・指示違反、傷病、私生活上の非行を理由とする解雇

2.懲戒解雇

 使用者の懲戒権発動による解雇

3.整理解雇

 経営上の必要性から行われる解雇

(3) 整理解雇

上記(2)の3種類の解雇のうち、COVID-19による経営難による人員整理等を理由とする解雇は、「整理解雇」となります。整理解雇を行う為には下記の4要件を満たすことが必要です。

1.人員削減(解雇)の必要性

2.解雇回避の努力

3.人選の基準及び人選の合理性

4.手続の合理性

この4要件に照らして、上記(1)解雇の通則(労働契約法第16条)の「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない」かどうかにより、整理解雇が有効であるか否かが判断されます。

(4) 解雇予告手当

通常、使用者が従業員を解雇しようとする場合、30日前までには、解雇の予告をしなければなりません。この予告を行わずに解雇する場合、使用者には最低30日分の平均賃金を従業員に支払う義務が生じます。

(5) 有期契約における解雇

「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむをえない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」(労働契約法第17条)と規定されています。

有期契約の契約期間途中に従業員を解雇しようとする場合、労働契約法第16条で定められた解雇の通則の規定に加え、「やむをえない事由」が必要となってくることから、解雇の有効性はより厳しく判断されることとなります。

2.タイ

 タイ労働者保護法上、解雇とは、「雇用契約の終了、またはその他理由を問わず、使用者が労働者を以後働かせず、賃金を支払わない行為のことをいい、使用者が事業を継続することができないために労働者が労働せず、かつ賃金を受け取らない場合を含む」とされており、解雇する場合には、通常、以下の手続を取る必要があります。

  1. 事前通告

雇用契約に期間の定めがない場合、使用者は、労働者に対して、一賃金支払期間前の書面による解雇通告をする必要があります。

例外的に、事前通告から雇用契約終了の日までに得られるはずの賃金と同額の金銭を支払う場合には、即時の解雇が可能です。また、後述する、119条に定める違反行為がある場合についても、事前通告が不要となります。

  1. 有給休暇の買取り

119条に定める場合によらず使用者が労働者を解雇する場合、使用者は労働者が有する年次有給休暇に応じた賃金を支払う必要があります。

繰越年次休暇がある場合は、それに応じた賃金を支払う必要があります。

       2. 解雇補償金

 使用者は、解雇する労働者に対して、以下の解雇補償金を支払う必要があります。有期雇用契約が満了により終了する場合についても支払義務があることに注意が必要です(特定の条件に該当する有期の雇用契約を除く)。しかし、労働者側からの辞職の場合は、解雇補償金の支払義務は生じません。

 また、使用者に対して故意に損害を与えた場合や、過失により重大な損害を与えた場合等、119条に定められている事項により労働者を解雇する場合については、解雇補償金の支払義務は生じません。

勤続期間120日以上1年未満:  最終賃金の30日分以上

勤続期間1年以上3年未満: 最終賃金の90日分以上

勤続期間3年以上6年未満:  最終賃金の180日分以上

勤続期間6年以上10年未満:  最終賃金の240日分以上

勤続期間10年以上20年未満:  最終賃金の300日分以上

勤続期間20年以上:  最終賃金の400日分以上

     3. 事業移転に伴う解雇

 使用者が事業所を移転する場合で、労働者が新たな事業所での就労を望まない場合、労働者は書面により雇用契約の終了を通知することができます。その場合、使用者は当該労働者に対して、(3)の解雇補償金の額と同額以上の特別解雇補償金を支払う必要があります。

     4. 機械導入、技術更新に伴う解雇

機械導入、技術更新等により、使用者が組織、製造工程等を改変し、使用者が労働者を減少させる必要があることを理由として、労働者を解雇する場合、使用者は、解雇の日の60日以上前に、労働監督官及び当該労働者に対して、解雇日、解雇理由、当該労働者名を通知する必要があります。

上記の事前通知をしない場合、使用者は当該労働者に対して、(3)の解雇補償金に加えて、最終賃金の60日分と同額の特別解雇補償金を支払う必要があります。

当該労働者が6年以上勤続している場合には、勤続満1年あたり最終賃金の15日分以上の特別解雇補償金を支払う必要があります(最大360日分)。

3.マレーシア

マレーシアにおける解雇も、日本と同様に、概ね1.普通解雇、2.懲戒解雇、3.整理解雇の3つの類型に分けることができます。いずれの類型においても、解雇が有効となるためには解雇を正当化できるだけの事由が必要となります。

(1) 普通解雇

 労働者が雇用契約に基づく労務の提供をしない(又は、できない)場合に雇用契約を解消するものです。懲戒解雇・整理解雇以外の解雇と表現されることもあります。

 雇用契約で定める予告期間に従って、事前通知の形で解雇を通知します。雇用法が適用される労働者(月額賃金RM2,000以下の労働者や肉体労働者等)の場合で、契約において予告期間の定めがない場合等には、雇用法が定める予告期間を下回ることができません(勤続2年未満の場合4週間、勤続2年以上5年未満の場合6週間、勤続5年以上の場合8週間)。ただし、対応する期間の賃金の支払いをすることで、予告期間を短縮することはできます。

 また、雇用法が適用される労働者については、法定の解雇手当を支払う必要があります(勤続1年以上2年未満の場合1年につき10日分、勤続2年以上5年未満の場合1年につき15日分、勤続5年以上の場合1年につき20日分)。

(2) 懲戒解雇

 懲戒解雇は、懲戒処分の1つとして行われる解雇です。

 雇用法14条は、不正行為があった場合には適正な調査を行ったうえで労働者を予告なく解雇することができるとしています(この場合には、解雇予告手当の支払いも不要とされています)。実務上は、雇用法の適用の有無に拘らず、不正行為があったと使用者が考える場合には、不正行為の有無を調査のうえ、当該労働者に問題となっている不正行為について理由呈示書(Show Cause Letter)の発行を通じて弁明の機会を付与し、社内審問手続(Domestic Inquiry)を経た上で解雇をするという流れが一般的です。

 雇用法は、懲戒処分の決定まで2週間を限度として停職処分を行うことも可能であるとしていますが、当該期間について賃金の半額以上を支払わなければならないとしています。雇用法の適用がない労働者については、雇用契約において特段の定めを置いていない限り、停職期間中も賃金の全額につき支払義務が存続するものと考えらます。

(3) 整理解雇

 人員が余剰であることを理由として行われる解雇です。

 整理解雇については、労使協調のための行為規範(The Code of Conduct for Industrial Harmony 1975)及び整理解雇管理ガイドライン(Guidelines on Restrnchment Management)といった規定が用意されており、整理解雇に臨む際にはこれらの規定に沿って手続を進める必要があります。

 これらの規定は、労働者の余剰が生じた場合、まずは解雇を回避するための措置(新規雇用の停止、残業・休日出勤の制限等)をとる必要があるとしています。またこれらの規定は、そのような解雇回避措置をとったにもかかわらず一部の従業員の解雇が必要になった場合には解雇の30日以上前に労働局に届出をしなければならないものと定めるほか、解雇の対象となる従業員の選定に関するルール(直近に雇用された者から順に解雇の対象とすべきという「Last In, First Out」等)についても定めています。

整理解雇における解雇予告期間・解雇手当については、普通解雇に準じます。

4.ミャンマー

日本と異なり、解雇理由及び手続きに関する法令上の明確な規制は存在しません。また、COVID-19を理由とする特別な対応や整理解雇も存在しません。したがって、一般的な解雇規制について、解雇手当を支払う場合と不要な場合に分けてご説明します。

1.解雇手当を支払う場合

実務上、合理的理由が必要とされていますが、その理由について明確な規定や裁判例も特に存在しません。手続きとしては、1か月前の通知が必要であり、かつ、労働者の勤続期間に応じて以下の解雇手当を支払う必要があります。

(a)勤続期間が6か月以上1年未満の場合、0.5か月分の給与の支払い

(b)勤続期間が1年以上2年未満の場合、1か月分の給与の支払い

(c)勤続期間が2年以上3年未満の場合、1.5か月分の給与の支払い

(d)勤続期間が3年以上4年未満の場合、3か月分の給与の支払い

(e)勤続期間が4年以上6年未満の場合、4か月分の給与の支払い

(f)勤続期間が6年以上8年未満の場合、5か月分の給与の支払い

(g)勤続期間が8年以上10年未満の場合、6か月分の給与の支払い

(h)勤続期間が10年以上20年未満の場合、8か月分の給与の支払い

(i)勤続期間が20年以上25年未満の場合、10か月分の給与の支払い

(j)勤続期間が25年以上の場合、13か月分の給与の支払い

2.解雇手当が不要な場合

解雇手当が不要な場合について、刑事罰に該当する行為を行うような非常に悪質な場合には直ちに懲戒解雇が可能です。

他方、懲戒解雇に該当する程悪質でない場合には、通常解雇となります。

通常解雇の手続きについて、法令上の規定はないものの、労働・入国管理・人口省が出しているモデル雇用契約書第15条(b)(ii)において、「雇用契約の規則に違反した従業員に対して、1 度目は口頭での警告、2 度目は書面による警告がなされる。3 度目は、通常の規定違反に関する誓約書に署名を命じられることとなる。3 度目の警告から、12 か月以内に、労働者が通常の違反を再度犯した場合、使用者は、当該労働者との契約を、解雇手当を与えることなく解除できる。」と規定されています。したがって、4回目の違反で漸く解雇できることから、非常に時間がかかる手続きとなっております。

5.メキシコ

(1) 使用者の都合による雇用契約の終了

労働法では、使用者の破産や財務状況の悪化を理由とした雇用契約の終了や、機械の導入や業務改善による雇用契約の終了が認められています。この場合、労働調停仲裁委員会の許可もしくは承認を得たうえで解雇(雇用契約の終了)を実施することが可能です。

解雇時には、未払分の給与や解雇する年の勤務日数に応じた割合の有給休暇手当の額とアギナルド(年次法定賞与)額、その他、会社独自に定めた手当などがある場合はそれらの受け取り分等の精算を行い、加えて、3か月分(機械の導入や業務改善が理由の場合は、4か月分)の給与額や勤続年数に応じた勤続手当額(給与額が最低賃金の2倍を超える場合は、勤続年数に応じて12日分の最低賃金額の2倍の額、給与額が最低賃金の2倍以下の場合は、勤続年数に応じて12日分の賃金額)を解雇手当として支払う必要があります。

(2) 労働者の責めに帰すべき事由による解雇

労働者が就労の際に虚偽を用いた場合や、不正行為または脅迫、侮辱などを含む暴力的行為を行った場合、企業秘密や守秘義務を負う情報について漏洩した場合、30日間のうち4日以上の正当な理由のない欠勤があった場合など、労働法第47条に定める事由による場合は、使用者はその責めを負うことなく解雇することが可能です。すなわち、使用者は、解雇時に未払い給与や手当の精算のみ行うこととなります。

この場合、使用者は当該労働者に対して、当該事由及びその事由が発生した日付や期間を記した書面によって解雇を即日かつ直接通知するか、解雇日から5営業日以内に労働紛争調停員会に当該労働者の住所と併せて届出なければなりません。この場合は、使用者に代わって当該労働紛争調停員会が労働者に当該解雇通知を送達することとなり、労働者が通知を受け取った時にこの解雇の効果が生じることとなります。

ただし、解雇通知を受け取った労働者は、解雇の日から2か月間、労働紛争調停員会を通じ、復職か3か月分の給与相当額の補償金の支払を請求する権利を有します。解雇事由の立証責任は使用者にあり、使用者がこれを証明することができず、不当解雇と認定された場合は、当該請求に加えて、復職するか否かにかかわらず、上限を12か月分として解雇日から調停が終了するまでに得られたであろう賃金額を支払わなければなりません。その調停が12か月以上に及んだ場合は、12か月分の賃金額の支払いに併せて、15か月分の賃金額の2%を超過月数分支払うこととなります。

また、一定の条件を満たす労働者の場合や労働裁判によって雇用関係の継続が困難と判断された場合には、使用者は、例えば無期雇用の場合は、20日分の給与額に勤続年数を乗じた額の補償金を支払うことによって、労働者の復職の希望を拒否することも可能です。

(3) 使用者の都合による解雇

以上のほか、使用者の都合によって労働者を解雇する場合は、労働者が享受できるすべての権利を害することなく解雇することになります。つまり、前述したような労働者が得られる補償金等のすべてを支払い解雇する方法です。なお、補償金の額は、雇用契約の形態や労働者の給与額、勤続年数、職種によって異なってきますので、個別具体的な確認、検討が必要になります。なお、メキシコの労働法では、雇用契約終了の事由として「使用者と労働者の合意による場合」を規定していますが、本規定は、一般に労働者が退職の意思を示し、これに使用者が同意した場合と考えられており、使用者の都合による退職要請への労働者の同意がある場合を含んでいないと解されています。

6.バングラデシュ

バングラデシュ労働法で規定されている解雇として、(1)使用者による雇用契約の終了、(2)一時解雇、(3)人員整理、(4)労働者の精神的または身体的な障害により就労が不能な場合、(5)労働者の不正行為や違法行為による解雇、が挙げられます。新型コロナウイルス感染拡大の影響による解雇の場合は、(1)使用者による雇用契約の終了、(2)一時解雇、(3)人員整理が該当すると考えられます。

(1) 使用者による雇用の終了

解雇の理由についての規制は定められておらず、使用者は、以下の措置をとることで、解雇が可能です。

  1. 無期雇用労働者の雇用を終了する場合

月給労働者の場合は、120日前までの書面による通知、その他の労働者は、60日前までの書面による通知が必要です。労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金または一時給付金の高額な方を補償金として支払わなければなりません。補償金は労働法にて定められている他の給付に加えて支払われます。

       2. 非正規雇用労働者の雇用を終了する場合

月給労働者の場合は、30日前までの書面による通知、その他の労働者は、14日前までの書面による通知が必要です。

無期雇用および非正規雇用ともに、通知せずに労働者の雇用を終了したい場合は、上記の通知期間日数の賃金を支払うことで、可能です。

(2)一時解雇

感染症の拡大は、労働法で規定されている一時解雇の理由に該当しませんが、使用者の力が及ばない不測の事態による事業の停止が認められています。業務停止が3日を超える場合は、一時解雇の扱いとなり、更に一時解雇が45日を超える場合は、人員整理により解雇することができます。

勤務期間が1年以上の労働者を一時解雇する場合は、以下の補償金を支払わなければなりません。

      1. 一時解雇の期間が1日から45日の場合

週休を除く一時解雇の期間、基本給および手当の半額と住宅手当全額

       2. 一時解雇の期間が45日を超えた場合

別段の合意がない限り、46日目以降は、基本給および手当の4分の1と住宅手当の全額

(3)人員整理による解雇

勤務期間が1年以上の労働者に対しては、1か月前に文書による通知または1か月の賃金を支給し、検査官および労働組合(あれば)に通知を提出し、労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金にあたる補償金または一時給付金の高い方を支給しなければなりません。人員整理が一時解雇の代わりになされるときは、通知は不要ですが、さらに15日分の賃金にあたる補償金を上乗せして支払う必要があります。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL:https://tnygroup.biz/

・日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL:https://progress.tny-legal.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

 URL:https://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL:https://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL:https://tny-myanmar.com/

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL:https://tny-mexico.com/

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL:http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL:https://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.)

 https://www.tny-bangladesh.com/

Newsletterの記載内容は2020年6月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

 第1. 各国の2020年5月に発布されたCOVID-19関連の法令

1.日本

(1) 水際対策強化に係る新たな措置

 5月14日、及び5月25日、「水際対策強化に係る新たな措置」が決定されました。

これらの措置により、入国拒否対象地域に14日時点で13か国、25日時点で11か国が新たに追加されました。また、5月末日までの間実施することとしていた、ビザの効力やビザ免除を停止する措置が6月末日までに延長されました。

日本国籍者を含む全ての入国者に対する検疫の強化に関しては、引き続き、健康状態に異常のない者も含め、検疫所長の指定する場所(自宅など)での14 日間待機、及び空港等からの移動も含め公共交通機関を使用しないことが求められます。また、入国した日の過去14日以内に入管法に基づく「入国制限対象地域」に滞在歴のある者については、全員にPCR検査が実施され、検査結果が出るまで、自宅、空港内のスペース、検疫所が指定した施設等での待機が求められます。

・日本における新型コロナウイルスに関する水際対策強化(新たな措置)(外務省海外安全ホームページ)

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C051.html

・水際対策の抜本的強化に関するQ&A-令和2年5月15日時点版(厚生労働省ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html

(2) 緊急事態宣言解除

4月7日に発令された緊急事態宣言が5月25日に解除されました。5月25日から7月31日までの約2か月間を移行期間とし、外出の自粛や施設の使用制限の要請等を段階的に緩和していく方針です。

・新型コロナウイルス感染症緊急事態解除宣言(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)

https://corona.go.jp/

・移行期間における都道府県の対応について

https://corona.go.jp/news/pdf/ikoukikan_taiou_0525.pdf

(3) 補助金

2020年1月から12月までの間で、月間事業収入が、前年同月比50%以下となる月があった事業者に対し、中小法人等は最大200万円、個人事業主は最大100万円の持続化給付金が給付されることとなりました。

 個人に対しては、一律一人当たり10万円の特別定額給付金、子育て世代を対象とした子供一人当たり1万円の臨時特別給付金等の制度が新たに追加されました。

・新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)

https://corona.go.jp/action/

2.タイ

5月15日、タイ政府は、非常事態宣言の制限措置の緩和を定めた決定を発表し、17日から以下の緩和措置が適用されています(第2フェーズ)。また、第2フェーズ移行に伴い、事業者向けアプリ「タイ・チャナ」の導入も発表されました。消費者が店舗の入店・出店の際にQRコードを読み取り、その情報を登録することで、政府がCOVID-19の感染疑いのある者の行動把握をすることができるアプリとなっています。

・夜間外出禁止: 外出制限を1時間短縮(午後11時から翌日午前4時までの外出禁止)

・経済活動:   レストラン、フードコート等の飲食店(酒類の販売は禁止)の営業再開

         ショッピングモールの営業再開(営業時間は午後8時まで)

         小売店・卸売店・卸売市場、ホテル内の会議室・会議場の営業再開

・運動、健康増進:美容医療クリニック、美容増進施設、ネイルショップ等の営業再開

         フィットネス場(ヨガとフリーウエイトに限る)の営業再開

         屋内運動場(選手同士の接触を伴わない競技、1チーム3人までに限る)の営業再開

         屋外及び屋内の公共プールの営業再開

         植物園、博物館、図書館などの営業再開

16日、タイ民間航空公社(CATT)は、タイに到着する全ての国際旅客便の飛行を禁止する措置を、6月30日まで延長する通達を発付しました。

26日、タイ政府の閣議決定において、3月26日に発令した非常事態宣言を6月30日まで延長する決定をしました。

3.マレーシア

5月4日、条件付活動制限令(Conditional Movement Control Order:CMCO)が施行され、禁止行為として指定された行為を含まない事業については、標準営業手順(Standard Operating Procedure; SOP)の遵守を条件に営業が可能となりました。また、強化された移動制限令(enhanced movement control order)の対象となる場所への出入りや集会・禁止行為を目的とする移動を除き、同一の伝染病流行地内での移動が可能となりました。

5月13日、条件付活動制限令が改定され、セランゴール州,クアラルンプール及びプトラジャヤが1つの感染地域と見なされるようになり、同地域内での移動が可能となりました。

5月14日より、セランゴール州及びクアラルンプールにおいて操業している建設及び警備産業企業における外国人労働者を対象として、社会保障機構(SOCSO)による COVID-19 スクリーニングプログラムが優先的・集中的に実施されています。

5月16日、マレーシア観光・芸術・文化省は、マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)パス保有者のマレーシアへの再入国を5月17日から許可すると発表しました。もっとも、入国は許可制とされており、許可が下りるまでの日数は明らかにされていません。

5月22日、条件付活動制限令が改定され、観光サービスが禁止行為の指定対象から除外されました。

5月25日、6月1日以降にマレーシアへの入国を希望する者に対し出発前に最寄りの在外マレーシア大使館等においてマレーシア到着後の隔離に係る宿泊費用の支払いに関する約定書に署名することが義務づけられ、また、マレーシア大使館等から発行される入国の承認状を得たうえで渡航の際に携行することが航空機に搭乗するための条件となる旨が発表されました。

現在の条件付活動制限令は6月9日まで有効とされていますが、その後も延長される可能性があります。

4.ミャンマー

5月3日、労働・入国管理・人口省より、検査待機期間中も事業を継続できる必要不可欠な業務、多くの国民に関係するサービス及び多くの国民にとって必要な業務の指定がなされました。

5日、同省より、社会保障基金から支援を得ることに関して使用者が遵守すべき事項を規定した通知が出されました。

7日、計画財務省より保険事業者及びマイクロファイナンス事業者がCOVID-19に関連して遵守すべき事項に関して通知が出されました。

11日、ヤンゴン管区において13日以降外出時のマスク着用を義務付け通知が出され、違反した場合には罰金が科されることとなりました。

14日、各種制限措置の期間を5月31日まで延長する旨が発表されました。ビザ停止や商用の国際旅客航空便の到着禁止も含まれます。

他方、同日、15日以降、これまで夜10時から朝4時までであった外出制限を、深夜0時から朝4時までに変更する旨の通知が出されました。さらに、これまでヤンゴン管区の10群区及びザガイン管区の1群区において自宅待機措置を課していましたが、過去21日間に新規の要請のケースや集団感染がなかった等の一定の基準を満たしたとして、5つの地区を自宅待機措置の対象から除外する旨の通知が出されました。

5月1日時点での感染者数は151名でしたが、5月26日時点では206名となっております。感染者数は増加しているものの、その多くは海外から戻ってきたミャンマー人であり、感染経路も確認されています。15日に外出制限が緩和されており、街中の交通量も増加し、飲食店も徐々に営業を再開していることから、徐々に経済活動が再開されると思われます。

5.メキシコ

(1) 連邦政府による社会活動再開に向けた指針

5月13日、大統領定例早朝会見にて、5月18日以降に次の3つの段階に分け社会活動の再開を目指す指針が発表され、翌14日保健省令として官報公示されました。

ステージ1 5月18日 COVID-19の症例報告がなく、
かつCOVID-19の症例報告のある
自治体に隣接しない自治体での活動の再開
(下表、緑の状態)
ステージ2 5月18日~5月31日 活動再開に向けた準備期間
(企業等における感染拡大
防止施策の構築)
ステージ3 6月1日~ 各地域での活動再開に向けた
信号システムの運用開始
当システムの示す色に基づく
活動の再開

なお、信号システムでは活動再開に向けたレベルを赤・橙・黄・緑と4つに分けており、以下の範囲で活動が許されうるとしています。

 
経済活動 必要不可欠な事業のみ 必要不可欠な事業、その他の事業については制限あり 全事業活動可 全事業活動可
教育機関 閉鎖 閉鎖 閉鎖 再開
公共施設 利用不可 制限付きで屋外の利用可、
屋内の利用は不可
屋外の利用可、制限付
きで屋内の利用可
利用可

また、本保健省令では必要不可欠な事業とみなされるものとして、建設業、鉱業、運輸機器の製造に関連する産業が追加され、翌15日付保健省令にて、保健省が中心となり策定した「職場の安全衛生のための技術的ガイドライン」に沿った感染防止対策を策定し、原則、6月1日以降に活動を再開できることが示されました。

この方針を受け、各州政府においても、独自の信号システムを設けたり、活動できる業種を追加もしくは制限したり、独自の承認プロセスを設けたりと、各々の社会活動再開計画が立てられており、企業活動の再開においては州政府の指針に従う必要があります。

5月20日には、保健省と観光省の連名で、観光産業における再開のためのガイドラインが発表されました。本ガイドラインは、航空輸送、空港、クルーズ船、遊覧船や港の運営、ホテル、レストランやバー、ゴルフクラブ、ディスコやナイトクラブ、イベント会場、コンベンションセンター、ビジネスセンター、陸上輸送、観光ガイド、デジタルプラットフォーム、テーマパーク、ウォーターパーク、ビーチ、スパ、定期市、競技場、コンサートや大規模なスポーツイベントや博物館といったすべての観光産業を対象とし、6月1日より適用されるとされています。

(2) 入国規制

 メキシコ政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限(3月21日より30日間、4月20日付で30日間延長)は、メキシコ政府合意のもと6月22日までの延長が決定されました。

第2.各国の撤退手続き

1.日本

 外国企業が日本での事業から撤退する場合,いくつかのパターンが考えられます。日本の事業の全部から撤退する場合の主なものとしては,日本支店の閉鎖,日本法人の解散,株式譲渡があります。
 日本支店を閉鎖する場合,日本における全ての代表者の退任の登記のみをする方法で行うことも可能です。 日本法人の解散をする場合,資産が負債を超過していれば通常清算,負債が資産を超過していれば特別清算か破産を選択することになります。
 通常清算は,残余財産を株主に分配する手続であり,裁判所の関与なく進めることができますが,2か月以上の期間を設けた債権者保護手続が必要です。
 特別清算は,裁判所の関与を受けながら,債権者との和解または協定を経て清算を結了させる手続きです。そのため,債権者の同意を得ているか,同意を得られる可能性が高い場合に選択し,債権者の同意を得られる見込みが低ければ破産申立を選択すべきです。また,特別清算は,公租公課,社会保険料,従業員の給料等の優先権のある債権を弁済するだけの残存資産がある場合にのみ選択可能です。
 破産は,裁判所への申立により始まり,裁判所より選ばれた破産管財人が会社の財産の処分・換価をし,配当できる原資が確保できた場合には配当をしたのち,法人を消滅させる手続です。破産により会社の債務はすべて消滅し,滞納税金等の租税債務も消滅します。
 会社に買い手がつくのであれば,株式譲渡により撤退することが可能です。
 日本での一部の事業から撤退する場合には,事業の買い手をみつけ,事業譲渡を選択することがありえます。事業のうち,資産や契約上の地位など何を譲渡するのかは,専ら譲受人との契約によって定まります。ただし,譲受人に契約上の地位や債務を移転するためには,個別に契約の相手方からの同意を得る必要があります。

2.タイ

撤退手続きについて、1.株主総会特別決議による解散・清算手続、2.破産法による破産手続、3.破産法による事業更生手続などの方法が存在します。

 これらのうち、1.株主総会特別決議による解散・清算手続が、一般的に行われる手続きとなります。手続きの主な流れは以下のとおりです。

(1) 株主総会招集通知送付、新聞での公告:(2)の株主総会開催日の14日前まで

(2) 株主総会の開催:会社の解散についての株主総会特別決議が必要

(3) 解散および清算人の登記:(2)の解散決議日から14日以内

(4) 解散について新聞での公告:(2)の解散決議日から14日以内

(5) 解散について債権者への通知:(2)の解散決議日から14日以内

(6) 歳入局においてVAT登録の抹消申請手続:(3)の解散の登記日から15日以内

(7) 歳入局において納税者IDを返還:(3)の解散の登記日から60日以内

(8) 歳入局に法人税確定申告書、決算報告書を提出:(3)の解散の登記日から150日以内

清算人は、(3)の解散の登記日から3か月毎に、商務省(DBD)に清算の進捗状況を報告

(9) 歳入局よりVAT登録抹消完了の通知を受領

(10) 株主総会招集通知送付、新聞での公告:(11)の株主総会開催日の7日前まで

(11) 株主総会の開催:清算完了の承認を受ける

(12) 清算完了の登記:(11)の株主総会開催日から14日以内

 なお、これらの清算手続きに入る前には、従業員の解雇に伴う解雇補償金の支払い、BOI奨励取得会社であればBOIキャンセル申請手続き、また債務整理等が必要となります。

3.マレーシア

 撤退手続は、会社法に規定されており、それぞれ1.株主による任意清算、2.債権者による任意清算、3.裁判所命令による清算(強制清算)、4.ストライク・オフに分かれます。また、5.会社は存続させた上で、株式譲渡により会社の運営から離脱する方法も存在します。

 上記の手続きのうち、一般的に取られる手続きは、1.株主による任意清算又です。

 株主による任意清算は以下の流れで進められます。

(1) 支払能力表明・臨時総会株主開催のための取締役会開催

(2) 支払能力表明書を作成し、会社登記所(CCM)へ提出する

(3) 臨時株主総会を開催し、清算の特別決議(議決権総数の75%)及び清算人の選任、清算人の報酬の決定を行う

(4) 株主総会決議書を会社登記所へ提出する

(5) 株主総会決議の新聞(マレー語及び英語)への公告

(6) 清算人選任の社登記所へ通知

(7) 清算人が21日以内の債権証明提出を依頼する通知を債権者に対して行い、当該通知を新聞に掲載する

(8) 清算人は、以下の優先順位に従い弁済を行う。

‧ 担保債権者

‧ 優先債権者

‧ 一般債権者

‧ 株主

(9) 内国歳入庁、EPF、SOCSO、税関等の関係官庁から、全ての債務を支払っている旨のクリアランスを取得する。

(10) 清算人は、会社に関する事項が全て清算された場合、速やかに最終株主総会を開催し、開催後7日以内に最終株主総会の報告書並びに清算過程及び資産処分方法に関する報告書を会社登記所及び公定管財人に提出する

(11) 最終株主総会の報告書並びに清算過程及び資産処分方法に関する報告書の提出から3か月経過後、会社は解散消滅する

 2.債権者による任意清算は、会社が債務全額を弁済することが困難である場合に取る手続であり、支払能力表明書が作成されない、清算人が債権者集会により選任される等の違いがあります。

 3.裁判所による強制清算は、労力と期間を要するため、実務上使用されることはまれですが、株主間で対立が存在する場合には選択肢の一つとなりえます。

 4.ストライク・オフは、債権債務及び資産のない休眠状態の会社のみが、登記を抹消により会社を消滅させることができる簡易な手続です。

 5.株式譲渡は、買受人と株式譲渡契約及び譲渡証書を締結し、会社登記所に変更の申請をすることにより完了します。

4.ミャンマー

撤退続きとして、大きく分けると1.会社法に基づく株主または債権者による任意清算、2.会社法に基づく裁判所が関与する強制清算、3.倒産法に基づく倒産、4.株式譲渡の4つの方法が存在します。

これらのうち、実務上は多くの外国会社が1.会社法に基づく任意清算によって撤退します。任意清算の際の前提として、清算が開始された場合、会社は、清算開始時点から、清算にとって有益となる場合を除き、事業を中止する必要があります。会社法上の株主による任意清算の主な流れは以下のとおりです。

(1) 清算のための取締役会を開催する。

(2) 取締役による弁済能力宣誓書の作成。

(3) Myanmar Companies Online(以下「MyCO」という)を通じて任意清算を支持する弁済能力宣誓書(J-4 Form)及び監査報告書の写しなどを提出する。

(4) 株主総会を開催し、清算のための特別決議を行い、清算人を任命する。弁護士が清算人となることが実務上一般的。

(5) MyCOで清算人の任命通知書(J-7 Form)を提出する。

(6) 日刊新聞または官報に、清算のための特別決議を公告する。

(7) 最終の株主総会の招集通知を、官報または日刊新聞に公告し、最終の株主総会を開催する。

(8) MyCOで、最終の株主総会の開催通知(J-5A Form)を提出する。その際に、清算人の当該清算の実施方法及び会社財産の処分方法について示す清算手続の記録の写し、会社の税務処理書類の写しを添付する。

2.会社法に基づく裁判所が関与する強制清算は実務上あまり使用されない手段です。3.倒産法に基づく倒産について、倒産法は2020年3月25日に施行されたばかりであり、現時点においては実例が存在せず、運用が不明確です。4.株式譲渡の方法については、株式を買い取る譲受人を見つける必要がありますが、見つかった場合には株式譲渡契約を締結した上でMyCOを通じて株主変更手続きを行うことで株式譲渡が可能です。

5.メキシコ

撤退手続として、一般に1.株式会社(S.A.)等の現地法人については解散・清算の手続を、2.外国会社の支店・駐在員事務所については閉鎖の手続をとることになります。

1.商事会社一般法に基づいて、株式会社を主体的に解散・清算手続きを行う場合の流れは以下の通りです。

(1) 特別株主総会を開催し、解散決議を行い、清算人を指名し、その商業登記を行う。

(2) 解散決議の商業登記が完了した場合、直ちに財務省(Secretaría de Hacienda y Crédito Público)に清算手続き開始の通知を行う。

(3) 清算人が指名された場合、取締役は会社のすべての資産、負債の目録、帳簿及び文書を清算人に引き渡さなければならず、これらの書類を受け取った清算人は、定款の定め、これがない場合は会社法の定めに従って清算事務を進める。具体的には、清算各種取引の停止、債権者への債務の支払い、債務者からの債権の回収、会社の資産の売却、清算貸借対照表の作成など。

(4) 最終の清算貸借対照表は経済省(Secretaría de Economía)の電子システムで公表する。

(5) 清算特別株主総会を招集し、清算貸借対照表や会社消滅の承認を決議する。

(6) この決議を公証し、商業登記所に届出て会社が消滅する。あわせて、財務省にも清算結了の通知を行いRFC(納税者登録番号)の抹消を行う。

(7) 清算株主総会で決定された内容に基づき、株主への残余財産への分配を行う。

(8) 清算人は、清算結了後も10年間、帳簿等の資料を保管しなければならない。

 他方、2.外国会社の支店・駐在員事務所の閉鎖の手続の流れは、明確なルールはないものの、概ね以下のとおりとなります。

(1) 本国での支店・駐在員事務所の閉鎖に関する取締役会等を行い、同議事録の公証人及び外務省による認証を行う。

(2) メキシコ国内で上記議事録の公証手続を行う。

(3) 各種機関での登録や登記の抹消手続きを行う。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

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