「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに個人情報保護法関連の規制」 TNY Group Newsletter No.5
第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制 |
1.日本
(1) 入国規制
8月28日、日本において新たな水際対策措置が決定されました。本件措置の主な点は以下の通りです。
- 入国拒否対象地域に新たに13か国が追加(日本国籍者は対象外)
- 検疫強化措置の地域の追加(日本国籍者も対象)
- 査証制限等の措置の延長
外務省感染症危険情報レベル2が発出されている全ての国・地域及びレベル3が発出されている国・地域の一部が、査証制限等の対象となります。
※査証制限措置対象国 (https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page4_005130.html)
4外国との国際航空旅客便の減便等による到着旅客数の抑制要請の延長
5本邦入国の際の検疫の強化
過去14日以内に「出入国管理及び難民認定法に基づき上陸拒否を行う対象地域」に滞在歴のない方は、本邦入国の際、空港の検疫所において、質問票の記入や体温測定、症状の確認が求められ、自宅等への移動は公共交通機関を使用せずに移動できることが条件になっています。また、入国の翌日から14日間は、自宅待機が要請されます。上記対象地域の滞在歴のある方は、全員対象に抗原定量検査等が実施され、検査結果が陽性の場合は、医療機関への入院又は宿泊施設等での療養となります。当検査は、検疫法に基づき実施するものであり、検疫官の指示に従わない場合は、罰則の対象となる場合があります。
水際対策の抜本的強化に関するQ&A(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html
日本における新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(8月28日)
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C069.html
新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(第42回)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020828.pdf
新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組(8月28日・新型コロナウイルス感染症対策本部)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/houkoku_r020828.pdf
(2) COVID-19関連の規制状況
東京や大阪、愛知などの都市部を中心に一部飲食店の営業時間の短縮を要請するほか、イベント開催制限、県外への移動の自粛を要請するなど、各自治体で独自の対応がとられています。
2.タイ
タイのCOVID-19の累計感染者数は3,412名です。この内、3,252名が回復し、現在医療機関で治療中の者は102名となっています。帰国者を除いた、タイ国内での新規感染者は98日間連続で0人となっています。
- COVID-19関連の規制状況
8月25日、タイ政府は8月31日までとしていた非常事態宣言を、9月30日までさらに1か月延長することを承認しています。
2. 日本からタイへの特別航空便
現在、日本からタイ入国のための特別便が準備されています。在東京タイ王国大使館のHPにおいて、随時情報が発表されています。
http://site.thaiembassy.jp/jp/news/announcement/
9月17日の特別便については、9月1日午前10時より予約受付開始となっています。9月24日の特別便については、現時点、受付開始日時の発表はなされていません。
この特別便により渡航を希望する者は、入国許可書(COE)をタイ王国大使館に申請する必要があります。
全体の流れとしては、以下のとおりとなります。
3. 航空券予約・ビザ申請予約、2COE申請、3ビザ申請、4COE取得・PCR検査・入国
出入国の際には、以下の書類を提示しなければなりません。
・ビザもしくは再入国許可証印のあるパスポート
・入国許可証(COE)
・記入、署名済みの申告書(Declaration Form)(原本)
・英文の搭乗可能健康証明書(Fit to Fly or Fit to Travel Health Certificate)(原本)
・渡航前72時間以内に発行された英文のRT-PCR検査による新型コロナウイルス非感染証明書(原本)
・新型コロナウイルス感染症及び関連疾患の治療費を含む10万米ドル以上もしくは1,100万円以上の治療補償額の英文医療保険証
また、タイ入国時には、以下が求められます。
・T.8 formの記入(タイ空港公社(AOT)の携帯アプリにてオンライン登録可能)
・タイ当局に指定された医療従事者から医療検査を受け、隔離施設にて14日間以上の検疫隔離
3.マレーシア
(1) 回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)
2020年8月28日、回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)(以下「RMCO」)の有効期限を同年12月31日まで延長する旨が発表されました。執筆時点(同年8月28日)における禁止行為は以下のとおりですが、パブ及びナイトクラブでの活動を除く全ての経済セクターでの再開を許可する方針であるとの発表がされています。また、罰則の強化についても言及がされています。
- 観客が参加するスポーツイベント及び大会並びに海外からの参加者が関与するスポーツイベント及び大会
- マレーシア国民による観光目的での海外渡航及び外国人による観光目的でのマレーシアへの入国(大臣が指定した国からの外国人旅行者を除く)
- パブ及びナイトクラブでの活動(パブ及びナイトクラブ内のレストラン営業を除く)
- その他一か所に多くの人が集まりソーシャルディスタンスの実現及び公衆衛生局長の指示の遵守を困難にする活動
(2) マスクの着用義務について
8月1日から「混雑した公共の場所」及び「多くの人が入り混じった密閉空間」においてマスクの着用が義務化されており、マレーシア国家安全保障会議(NSC)によれば以下の場所が該当するものとされています。
- モスク及びスラウ
- 礼拝所
- 結婚式などの社交イベント
- 公共交通機関
- スクールバス及びバン
- 動物園
- スポーツやレクレーションスペース
- 診療所及び病院
- 公共市場及び農産物直営所
- 映画館やライブ・エンターテイメント会場
- レストランを含む全ての小売店
- 美容院
- スパ及びウェルネスセンター
- 家族向け娯楽施設
4.ミャンマー
ミャンマー国内においては、経済活動はCOVID-19以前にほとんど戻っていますが、一定の集会禁止措置などは8月15日まで延長されています。
海外からの入国については、9月30日まで国際旅客機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも9月末まで運休する旨発表済みです。
茂木外務大臣が8月24日にミャンマーを訪問し、日本ミャンマー間の往来を再開することで合意しhております。9月の救援便(特別便)は3日及び10日が確定しており17日並びに26日も調整中です。
入国方法は以下の2つの方法が存在します。
ノーマルトラック:渡航前1週間の自宅隔離証明書の提示、搭乗前72時間以内のPCR検査陰性証明書の提示、ミャンマー入国後1週間の施設隔離、その後のPCR検査,さらに1週間の自宅隔離
ファストトラック(ビジネス関係者は申請可能):渡航前36時間以内のPCR検査陰性証明書の提示、ミャンマー入国後1週間の施設隔離及び2回のPCR検査(自費)
なお、1週間の施設隔離については,ミャンマー政府が指定するホテルへの隔離になります。ファストトラック適用は限定的であり、希望してもミャンマー政府の承認が下りない可能性もありますので、ノーマルトラックの準備も進める必要があります。
5.メキシコ
メキシコ国内のCOVID-19感染者の増加は鈍化の傾向を見せ始め、メキシコ政府のCOVID-19感染リスクを示す信号システムは8月17日の週にカンペチェ州が初の黄色の州として示され、その後、8月31日の週には、黄色の州が10州、橙が21州、赤が1州となることが発表されました。連邦政府における新たな規制は見られませんが、必要不可欠な産業に教育関連の製造業等が追加されるなど、経済活動の幅を広げる傾向がみられます。
メキシコへの入国については、政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、8月14日にメキシコ政府合意のもと9月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされていますが、在メキシコ米国大使館の発表では、米墨間の航空便は数を減らして運行されていることから、渡航にあたっては十分な計画が必要とされています。なお、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。
6.バングラデシュ
バングラデシュ政府が、8月3日付で発表した新型コロナウイルス感染拡大予防の措置が継続されており、主な内容は以下のとおりです。
(1) 午後10時から翌日午前5時までの時間帯は、真に必要な場合(必要不可欠な売買、職場との往来等)を除き外出禁止。外出の際は、マスクの着用や人と人との距離を保つ等の感染防止措置を講じなければならない。違反した場合には法的措置を受けなければならない。
(2) 商店とショッピングモールは午後8時までに閉店しなければならない。
(3) いかなる教育機関も開校することができない。
(4) いかなる集会、大規模行事も実施できない。バーチャル環境での行事開催を優先的に考慮しなければいけない。ただし、宗教省の指導に従い、感染防止措置を講じた上であれば、モスクなどで集団礼拝を行うことはできる。
また、以下の対象国及び地域からの、バングラデシュへの定期国際便の乗入停止措置が継続されています。
(対象国及び地域)バーレーン,ブータン,香港,インド,クウェート,モルディブ,ネパール,オマーン,サウジアラビア,シンガポール,タイ
バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については,渡航前72時間以内に取得した新型コロナウイルス陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があります。
第2.各国の個人情報保護法関連規制 |
1.日本
日本で個人情報保護を規定する法律として、個人情報保護法があります。平成29年5月に施行された改正法により、それまで適用対象外となっていた中小企業・小規模事業者も含め、すべての事業者に個人情報保護法が適用されることとなりました。取り扱う個人情報の数に関わらず、例えば、紙やデータで名簿を管理されている事業者は全て「個人情報取扱事業者」となり、法の対象となりますので、注意が必要です。なお、個人情報保護法の下に、関連の政令や規則があり、個人情報の取り扱いについて詳細に規定されています。
(1) 個人情報の定義
個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、1氏名や生年月日等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなる者を含む。)、または、2個人識別符号が含まれるものをいいます(個人情報保護法第2条)。
(2) 民間事業者の個人情報の取り扱いについての基本ルール
1 個人情報の取得・利用
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うにあたって、利用目的をできる限り特定し(個人情報保護法第15条第1項)。その利用目的は、あらかじめ公表しておくか、個人情報を取得する際に本人に通知する必要があります(個人情報保護法第18条)。
2 個人データの安全管理措置
在宅勤務の増加に伴い、これまで以上に具体的な取り組みが求められる事項といえます。個人情報取扱事業者は、個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければなりません(個人情報保護法第20条)。個人データの取り扱いを委託する場合は、個人データの安全管理が図られるよう、委託先に対しても必要かつ適切な監督を行わなければなりません(個人情報保護法第22条)。「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(個人情報保護委員会)」に、個人データの適正な取り扱いの確保について組織として取り組むために、基本方針や個人データの取り扱いについての規定の策定、組織体制の整備、従業員の教育、不正アクセスや漏えいの防止等の技術的な安全管理措置を講ずることが挙げられています。なお、同ガイドラインでは、従業員の数が100人以下の中小規模事業者に対して、事業を円滑に行われることに配慮し、特例的な対応方法が示されています。
3 個人データの第三者提供
個人情報取扱事業者は、個人データを第三者に提供する場合、原則としてあらかじめ本人の同意を得なければなりません(個人情報保護法第23条第1項)。
4 個人データの外国にいる第三者への提供
外国にいる第三者への提供は、次のいずれかに該当する必要があります(個人情報保護法第24条)。(a) 外国にある第三者へ提供することについて、本人の同意を得ること、(b) 外国にある第三者が個人情報保護委員会の規則で定める基準に適合する体制を整備していること、(c) 外国にある第三者が個人情報保護委員会が認めた国(本誌発行時点でEU加盟国および英国)に所在すること。(a)本人の同意について、上記第三者提供とは別に取得する必要があります。また、外国にいる第三者への提供の場合は、委託や共同利用等の場合も含まれます。そのため、委託の場合は契約内容に個人情報保護法の義務と同等の扱いを求める規定を置く、海外子会社・現地法人については、日本の本社と同等の扱いが担保することなどにより、個別の同意取得が難しい場合に(b)体制の整備を行う必要があります。なお、外国から日本へのデータの提供については、当該国の法令に従うことになりますが、二国間の協定等によって対応が異なることもありますので、ケースごとに確認が必要です。
5 保有個人データの開示請求
個人情報取扱事業者は、本人から保有個人データの開示請求を受けたときは、本人に対し、原則として当該保有個人データを開示しなければならないとされています(個人情報保護法第28条)。
(3) 個人データの漏えい等への対応
個人情報取扱事業者には「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」(平成29年委員会告示第1号)に基づく措置が求められています。個人データの漏えい等の事案が発覚した場合に講ずるべき措置としては、1事業者内部における報告及び被害の拡大防止、2事実関係の調査及び原因の究明、3影響範囲の特定、4再発防止策の検討及び実施、5影響を受ける可能性のある本人への連絡等、⑥事実関係及び再発防止策の公表があげられており、また、内容によって、個人情報保護員会等への報告が求められます。
2.タイ
タイでは、個人情報の保護を目的として、個人情報保護法(Personal Data Protection Act 以下、「PDPA」)が、2019年5月27日に官報で告示され、翌28日に施行されています。個人情報を取り扱う者の義務や、個人情報を提供した個人の権利などが定められています。
- PDPAの施行延期
PDPAの実質的な個人情報保護についての条項は、告示日から1年間の移行期間が設けられ、2020年5月27日から施行される予定でした。しかし、タイ政府は、2020年5月19日の閣議において、新型コロナウイルスの影響による準備不足などを理由に、PDPAの施行を1年間延期(2021年5月31日まで)する法案を承認しました。そのため、個人情報を取り扱う会社などは、来年の施行日までに準備を行えばよいことになりましたが、対応すべき事項が多岐にわたるため、準備を速やかに行うことが望ましいと思われます。
(2) 個人情報とは
PDPAによる保護の対象となる「個人情報」とは、直接的・間接的であるかを問わず、個人を識別することのできる情報をいい、故人に関する情報は含まれないと定義されています。したがって、直接的には個人を識別することができない情報であっても、そのような情報を複数収集することで個人を識別することができる情報であれば、「個人情報」に含まれることになります。
現時点、細則の制定などは行われておらず、どのような情報が、具体的に「個人情報」に該当するかは明確ではありませんが、従業員や顧客の氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、電子メールアドレスなどは、「個人情報」に該当すると考えられます。
(3) 個人情報管理者及び処理者
個人情報管理者(以下、「管理者」)とは、個人情報の収集・利用・開示に関して、決定権を有する個人又は法人と定義されています。従業員や顧客の個人情報の収集などを行う会社は、管理者に該当することになります。
また、管理者からの指示を受け、又は代理として個人情報の収集などを行う個人又は法人は、個人情報処理者(以下、「処理者」)と定義されています。
(4) 適用範囲
PDPAは、タイ国内に所在している管理者又は処理者が、個人情報の収集などをする場合に適用されます。この場合、個人情報の収集などがタイ国内で行われるか、タイ国外で行われるかを問わず、PDPAが適用されることになります。
さらに、管理者又は処理者がタイ国外に所在している場合でも、以下の場合に関して個人情報の収集などをする場合には、PDPAが適用されます。
(a)タイ国内に所在する個人情報保有者に対して、製品やサービスの提供をする場合
(b)タイ国内に所在する個人情報保有者の行動をモニタリングする場合
したがって、タイ国内に会社が所在していない場合でも、インターネット販売サイトなどでタイ国内向けに製品を販売し、個人情報を収集する場合などには、PDPAが適用されるため注意が必要です。
(5) 個人情報取扱時のルール
管理者による、個人情報の収集、利用、開示について、原則、個人情報保有者(以下、「本人」)の同意がない限り、行ってはならないとされています。そして、管理者は以下について対応する必要があります。
(a) プライバシー通知
個人情報の収集の際には、事前または収集時に、本人に以下の事項を通知しておく必要があります。
・個人情報を収集する目的
・法令または契約の遵守のために本人による個人情報の提供が必要な場合、その通知
・収集対象となる個人情報およびその個人情報が保管される期間
・収集された個人情報の開示先に関する情報
・管理者の連絡先
・本人が有する権利
(b) 個人情報の管理
収集した個人情報について取扱記録を作成し、更に以下の管理体制を構築する必要があります。
・個人情報の不正または違法な紛失、アクセス、利用、改ざん、訂正、開示を防止するための適切な安全対策の構築
・個人情報が管理者以外に提供される場合、個人情報の違法または無許可による利用、開示を防止する措置の実施
・保管期間が終了した場合、収集目的外の個人情報がある場合、本人からの請求や同意の撤回があった場合に、個人情報を消去・破棄するための管理体制の整備
(6) 具体的な対応
会社としてはまず、1自社で保有する個人情報、または今後取得する予定の個人情報の内容を把握する必要があります。従業員の情報、一般消費者・取引先企業等の情報、ウェブサイトから取得する情報等が考えられます。
次に、2当該個人情報についてのプライバシー通知の作成、個人情報管理体制の構築を行う必要があります。
さらに、3個人情報の取得・利用・開示について、当該個人情報がPDPAの適用除外項目に該当するかを確認します。該当しない場合には、4本人から同意を取得する必要があります(同意を取得せずに個人情報の利用等を行うと、罰則が科されます)。
(7) 同意の取得
本人に同意を求める際には、個人情報の収集、利用、開示の目的を本人に通知した上で、本人から明確な同意を取得する必要があります。
この場合、他のものと明確に区別できる方法で提示しなければならず、明瞭でわかりやすい言語を使用し、本人を欺いたり誤解させたりするような表現を用いてはならないとされています。この同意は、本人の自由な意思によるものであることが求められているため、細心の注意を払う必要があります。
会社が、従業員または一般消費者・取引先企業等から同意を取得する場合は、当該対象者に適したプライバシー通知を作成の上、そのプライバシー通知を含んだ同意書を作成し、当該対象者から明確な同意を得てサインを取得することが望ましいと思われます。
PDPAに関し、未だ細則の制定がなされておらず、細かな点は不明確な部分が多いですが、来年6月の施行に向け、会社として準備を進める必要があります。
3.マレーシア
(1)法規制
基礎となる法律として、Personal Data Protection Act 2010 (以下「PDPA」といいます。)が存在し、下位法令及びガイドラインとして以下の規制が存在します。
- Personal Data Protection (Class of Data Users) Order 2013
- Personal Data Protection Regulations 2013
- Personal Data Protection (Registration of Data User) Regulation 2013
- Pesonal Data Protection (Fees) Regulations 2013
- Personal Data Protection Standard 2015
- Personal Data Protection (Compounding Of Offences) Regulations 2016
- Personal Data Protection (Class of Data Users) (Amendment) Order 2016
また、現在、個人情報漏洩の報告義務等の導入が検討されています。
(2)規制内容
1 概要
個人情報の処理者は、以下の原則(7原則)を遵守する必要があります。
(a) 一般原則(General Principle)(PDPA6条)
(b) 通知及び選択原則(Notice and Choice Principle)(PDPA7条)
(c) アクセス原則(Access Principle)(PDPA12条)
(d) 開示原則(Disclosure Principle)(PDPA8条)
(e) 安全原則(Security Principle)(PDPA9条)
(f) 保持原則(Retention Principle)(PDPA10条)
(g) 情報完全性原則(Data Integrity Principle)(PDPA11条)
2 7原則の要旨
(ア) 一般原則
情報使用者は、個人情報を処理する場合、原則として情報主体から同意を得なければなりません。同意は、情報使用者によって適切に記録及び保持できる形式であれば、いかなる形式でも良いとされています。
ただし、身体的又は精神的な健康状態、政治的意見、宗教的信条、犯罪歴等を含む「センシティブな個人情報(sensitive personal data)」を取得する際には、情報主体から「明示的」な同意を取得することが必要とされています。
(イ) 通知及び選択原則
情報使用者は、情報主体に対し、個人情報の処理について書面による通知をする必要があります。通知内容は以下のとおりです。
- 個人情報が情報使用者により処理されていること
- 個人情報の内容
- 個人情報が収集され、処理されている目的、
- 情報主体の個人情報へのアクセス権、訂正要求権、
- 個人情報に関する質問及び苦情の提出方法、
- 個人情報の開示先である第三者の業種、
- 個人情報の提供が義務か任意か、等
(ウ) アクセス原則
情報主体は、情報使用者が保有する自らの個人情報にアクセスする権利を有し、当該個人情報が不正確、不完全、誤解を招くもの、又はアップデートを要するものである場合には、訂正することができます。
(エ) 開示原則
情報使用者は、個人情報収集時に開示した目的又はそれに直接的に関係する目的以外の目的のために個人情報を第三者に開示する場合には、原則として情報主体から同意を得る必要があります。
(オ) 安全原則
情報使用者は、個人情報の紛失や不正使用などを防止するため、具体的な措置をとる必要があります。
(カ) 保持原則
個人情報は、目的達成のために不要となった場合には、破棄されなければなりません。
(キ) 情報完全性原則
情報使用者は、個人情報が正確で、完全で、誤解を招かないものであり、且つ最新のものであり続けるように、合理的な措置をとる必要があります。
3 第三者への開示
個人情報の第三者への開示・提供は以下の限度で許されます。
(a) 情報主体が事前に同意を与えている場合
(b) 犯罪の防止・捜査を目的とする場合又は調査を目的とする場合
(c) 法令又は裁判所の命令に基づく場合
(d) 情報使用者が自己に開示を行う権限があるか又は情報主体が事前に同意をしているとの合理的な考えに基づく場合
(e) 所管大臣が決定した公共の利益を目的とする場合
(3) 越境移転
原則として、個人情報保護委員会の推薦に基づき所管大臣が特定した場所を除き、個人情報の越境移転は許されません。2020年8月現在、所管大臣が特定した場所は公表されていません。
但し、以下の場合は越境移転が可能です。
(a) 情報主体の同意がある場合(同意の要件は明確でない)
(b) 移転が情報主体と情報使用者との契約の履行に必要である場合
(c) 移転が、情報使用者と第三者の契約(但し特定状況下)の締結又は履行に必要な場合
(d) 情報使用者がPDPAに反した形での処理がなされないことを確保するために、必要な全ての合理的予防
策を取り、かつ調査を行った場合 等
(4) 罰則
各種の規制に対する違反に対する代表的な罰則として、以下のものがあります。
(a) 7原則に対する違反:
RM300,000以下の罰金又は2年以下の懲役又はそれらの併科
(b) Class of Date Userとしての登録義務に対する違反
RM500,000以下の罰金又は3年以下の懲役又はそれらの併科
(c) 個人情報の海外移転に関する規制に対する違反
RM300,000以下の罰金又は2年以下の懲役又はそれらの併科
4.ミャンマー
ミャンマーにおいては個人情報保護を直接規定する法令は現時点では存在しません。一部関連する法令としては、2017年3月8日に成立した個人の自由安全保護法が、個人情報や家庭の事情に干渉し、個人の尊厳及び評判を中傷すること又は影響を与えること禁止する旨規定しています。
5.メキシコ
メキシコでは、個人情報保護に関連する法令はいくつかありますが、民間企業等に適用されうる根幹となる法令として、私的所有における個人情報の保護に関する連邦法(Ley Federal de Protección de Datos Personales en Posesión de los Particulares)が挙げられます。これらをもとに、メキシコにおける個人情報保護規定の概要を紹介します。
- 個人情報
本法では、個人情報は、「自然人を特定もしくは特定しうる情報」と定義され、そのうち、人種や民族、健康状態、遺伝情報、宗教的、哲学的もしくは道徳的信条、労働組合の所属、政治的見解、性的嗜好などが明らかになるような情報であって、本人の最も内密な領域に影響を与える情報、または不適切な使用によって、差別が生じ、もしくは深刻なリスクを伴う可能性がある情報は「要配慮個人情報」と定義されています。また、財産に関する情報もその性質から別の扱いとされています。
2. 個人情報の取扱
個人情報の取扱いについては、非常に広範な定義となっており、「あらゆる手段による個人情報の取得、使用、開示、保存。『使用』は個人情報へのアクセスや個人情報の管理、利用、伝達、処分といったあらゆる行動を含む」とされています。個人情報の取扱いをする者には、その保護の観点から、以下の8つの原則に従う必要があります。
-
- 合法性 個人情報の取扱いについては、適用される法令等に基づき厳重に行う必要があります。
- 同意 個人情報の取扱いについては、取得前に個人情報保有者に事前に同意を得る必要があります。 なお、同意は原則黙示的でたるとされています。つまり、個人情報保護方針を提示後、個人情報保有者が拒絶の意思を表示しなかった場合に、同意が得られたと解されます。ただし、要配慮個人情報や財産に関する情報は、その取得に際し明示的同意が必要とされています。
- 情報提供 個人情報取扱者は、個人情報保護方針を通じて、個人情報の取得や取扱いに関する基準を提示する必要があります。
- 品質 個人情報取得の目的に合致した適切で、正確な取り扱いが求められます。
- 目的 個人情報は個人情報保護方針に確立された目的にのみ取り扱うことが可能です。従って、個人情報の取扱者はその目的を個人情報保護方針において明確に規定し、把握しておかなければなりません。
- 忠誠 個人情報の取扱は個人情報保有者の利益の保護を優先し、詐称等の行為があってはなりません。
- 適量 個人情報の取扱は目的に合致した必要かつ関連性のある必要最低限の範囲にとどめなければなりません。
- 責任 個人情報取扱者は、法令等によって確立された個人情報保護の原則を順守し、必要な措置を講じ、その保護を保証しなければなりません。
個人情報の取扱者は、以上のような原則を踏まえて、個人情報保護方針を策定し、適切な取り扱いが為されうる体制を確立する必要があります。
3. 個人情報保護方針(Aviso de Privacidad)
個人情報保護方針は、少なくとも次の項目を含める必要があり、個人情報保有者が利用できるようにしておかなければなりません。
- 個人情報取扱者の名称及び住所
- 取扱の対象となる個人情報 (要配慮個人情報を取り扱う場合は、その明示を含む)
- 個人情報取扱の目的
- 個人情報保有者による個人情報取扱の拒否の意思表示方法
- 個人情報を第三者に開示する場合のその開示先や開示の目的
- 必要に応じて個人情報保有者による第三者開示の承諾に関する条項
- 個人情報保有者が有するアクセス、修正、キャンセルもしくは反対の権利を行使する手段
- 個人情報保有者が個人情報取扱への同意を取消す場合の、その方法
- 個人情報取扱者が個人情報保有者に対し使用や開示の制限を申出る方法
- 個人情報を自動的もしくは同時的に取得することを可能とする電子的、光学的もしくは他の通信技術の遠隔的もしくはローカルの手段に関する情報(該当する場合)
- 個人情報保護方針を変更する場合に、個人情報保有者に対してそれを通知する手順と手段
- 罰則等
次のような場合には、1~3の行政罰が用意されています。
- 警告
法に基づいた正当な理由なく、個人情報保有者のアクセス、修正、キャンセルもしくは反対の要請に従わなかった場合
2. UMA(2020年度の場合は、日額86.88ペソ、以下同じ)の100倍~160,000倍の罰金
-
- 個人情報の取扱やアクセス、修正、キャンセルもしくは反対の要請への対応において、過失や悪意がある場合
- 事実に反し、データベースに個人情報の不存在を故意に宣言すること
- 法に確立された個人情報取扱の原則に反して、個人情報を取り扱うこと
- 個人情報保護方針に規定すべき項目を定めていない場合
- 個人情報保有者によってなされた個人情報の修正や取消に従わず、不正確な個人情報を保持した場合
- 前1の警告に従わなかった場合
3. UMAの200倍~320,000倍の罰金
-
- 個人情報保有者の同意を得ずに、個人情報の取得や第三者提供を行った場合
- 当局による確認行為を妨害した場合
- 欺瞞的、詐欺的行為によって個人情報を取得した場合
- 個人情報の使用を個人情報保有者もしくは当局より要請を受けた場合に、これに従わず、使用を継続する場合
- 個人情報保有者が有するアクセス、修正、キャンセルもしくは反対の権利を妨害するような取り扱いを行った場合
- 要配慮個人情報のデータベースを正当かつ具体的目的なく、作成した場合
さらに、これらの違反が繰り返される場合は、UMAの100倍~320,000倍の罰金が追加で科される恐れがあり、また、要配慮個人情報の取得において違反がみられる場合は、最大で2倍の罰金が科される恐れがあります。なお、これらの行政罰が課された場合でも、民事的もしくは刑事的責任は免れるものではありません。
6.バングラデシュ
バングラデシュでは、個人情報保護を直接規定する法令は現時点では存在しません。一部関連する法令としては、2006年に成立した情報通信技術法の第63条で、機密事項及びプライバシー情報開示について、電子記録や電子文書の個人情報を、本人の同意なしに開示してはならない旨の規定と違反した場合の罰則が定められています。また、憲法の第43条で、文書や他の通信手段におけるプライバシーの保護が規定されています。
1.GDPR
(1)GDPRとは
EUでは、個人情報保護法分野において、「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)」が2018年5月25日に施行されました。違反があった場合、2000万ユーロ又は年間総売り上げの4%の高い金額が制裁金として課される可能性がある一方(GDPR83条5項)、EU圏内に拠点を置く法人以外にも適用される可能性があり注意が必要です。今回はその適用範囲と域外移転を中心に解説いたします。
(2)適用範囲
保護される個人データ(personal data)とは、「識別された自然人又は識別可能な自然人に関する情報を意味する。識別可能な自然人とは、特に、氏名、識別番号、位置データ、オンライン識別子のような識別子を参照することによって、または、当該自然人の身体的、生理的、遺伝的、精神的、経済的、文化的又は社会的な同一性を示す一つまたは複数の要素を参照することによって、直接的または間接的に、識別されうる者をいう。」(GDPR4条)とされています。クッキー(Cookie)やIPアドレスなども該当すると考えられていますが、対象は自然人のみであり、法人は含まれません。
GDPRでは、「管理者又は処理者」がEU域内に拠点を持っているかを地理的適用範囲とし、場合を分けて規定しています(GDPR3条)。
まずEU域内に管理者又は処理者の拠点がある場合にはGDPRが適用されます。拠点がない場合には、(1)データ主体(個人データを提供する者)に対する物品またはサービスの提供の場合、(2)データ主体の行動の監視の場合には、GDPRが適用されることになります。1物品またはサービスの提供については、EUの言語や通貨を使って注文ができる、あるいは、EUの消費者・ユーザー向けの説明がある場合などが該当するとされております。また、(2)行動の監視について、ターゲティング広告を行うなどしているなど、データ主体の個人的な嗜好、行動および傾向を分析又は予測している場合が該当するとされています。
(3)取り扱いが適法になる場合
上記のような個人データの取り扱いが適法となる場合は6通りありますが(GDPR6条1項)、原則として、データ主体が、同意を与えた場合に適法となります。GDPRにおける同意では、1 .自由に与えられた(任意性)、2.特定された(特定性)、3. 説明を受けた、4.不明瞭でない意思表示(明確性)という有効性の要件があり、手続的な追加的な条件も規定されており、個人情報保護法における「本人の同意」と比較すると厳格に要件が定められています。EU域外の事業者がEU域内のデータ主体から直接個人データを取得するにあたっても、このような同意等が必要となります。
(4)域外移転
ア データ主体から直接取得するのではなく、EU域内の事業者(管理者)からEU域内にいるデータ主体の個人データをEU域外に移転させることを域外移転といいます。域外移転にあたっては厳格な規制があり、日本を含むEU域外の事業者がEU域内の事業者からEUにあるデータ主体の情報を取得しようとする場合、GDPRで定められた要件を満たす必要があります。その要件とは、1.十分性認定に基づく移転(GDPR45条)、2.適切な保護措置に従った移転(GDPR45条)、3.特定の状況における例外(GDPR49条)のいずれかです。3.例外については、データ主体の同意等とされています。
イ 1十分性認定
欧州委員会が十分なデータ保護の水準を確保している国・地域であると決定した場合は、手続きや許可なく、域外移転を認めることができます。2019年1月23日、日本も十分性認定を受けております。本ニュースレター発行時点で十分性認定を受けているのは、アンドラ、アルゼンチン、カナダ、フェロー諸島、ガーンジー、イスラエル、マン島、日本、ジャージー、ニュージーランド、スイス、ウルグアイです。なお、米国については、十分性認定はされておらず、個別企業の登録ベースで十分な個人データ保護水準を担保する代替措置の「プライバシーシールド」を認める決定のもとに域外移転がなされてきましたが、2020年7月16日、EU司法裁判所はこの決定を無効とする判決が出されています。
ウ 適切な保護措置、SCC(SDPC)・BCR
上記の十分性認定を受けていない場合、域外移転にあたっては適切な保護措置の手続が必要となります。その際に使われるのが、SCC(Standard contractual clauses)やBCR(Binding corporate rules、拘束的企業準則)です。SCCは、EU圏内にある事業者と域外にある事業者との間で締結される域外移転の合意書のことであり、GDPR以前から規定されていた標準契約条項です。これについては欧州委員会からひな形が公表されています。現在ではSDPC(Standard data protection clauses)といいますが、ほぼ同じものとして用いられています。
(5)企業としての対応
GDPRの適用対象となる場合、必要な情報提供等のほか(GDPR13条)、データ保護オフィサーの設置、従業者の役割・責任の明確化、窓口の設置などの体制整備等が必要となります。日本の個人情報保護法では、個人情報の第三者提供に限り記録義務がありますが(個人情報保護法25条、26条)、GDPRでは取扱活動全般に記録義務がある(GDPR30条)などの違いもありますので、GDPRを意識した対応が必要となります。
また、域外移転を行う場合、日本国内の事業者へ行う場合には、日本は十分性認定を受けていますので、日本の個人情報保護委員会が公表している補完的ルールに従うことで足ります。他方、十分性認定を受けていない国へ域外移転を行う場合には、上記SCCなどの適切な保護措置を採る必要があります。
発行 TNY Group |
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【TNYグループおよびTNYグループ各社】 ・TNY Group ・日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所) ・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.) URL:https://www.tny-legal.com/ ・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.) URL:https://www.tny-malaysia.com/ ・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.) ・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.) ・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.) URL:http://www.tny-israel.com/ ・エストニア(TNY Legal Estonia OU) URL:https://estonia.tny-legal.com/ ・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.) https://www.tny-bangladesh.com/ Newsletterの記載内容は2020年8月31日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。 |
第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制 |
1.日本
(1) 入国規制
7月22日、日本において「水際対策強化に係る新たな措置」が決定され、入国拒否対象地域に新たに17か国・地域が追加されました(日本国籍者は対象外)。また、検疫強化措置の地域が追加されました(日本国籍者も対象)。7月末日までの間実施することとしていた、これまで査証制限措置がとられていた国・地域に対する査証制限、外国との間の航空旅客便の減便等による到着旅客数の抑制要請の措置は、8月末日まで延長されています。
・日本における新型コロナウイルスに関する水際対策強化(新たな措置)(外務省海外安全ホームページ)
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C062.html
・第41回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020722.pdf
(2) 感染の拡大
日本のCOVID-19の感染者数は1242名です。これまで感染者が出ていなかった岩手でも初めて感染が確認され、首都圏だけでなく、感染は地方に広がっています。報道によると、東京都が新型コロナウイルスの感染防止策として都内全域の飲食店とカラオケ店に再び営業時間短縮を要請しました。
2.タイ
タイのCOVID-19の累計感染者数は3,304名です。この内、3,111名が回復し、現在医療機関で治療中の者は135名となっています。帰国者を除いた、タイ国内での新規感染者は66日間連続で0人となっています。
- COVID-19関連の規制状況
7月22日、タイ政府は7月31日までとしていた非常事態宣言を、8月31日までさらに1か月延長することを承認しています。
- 入国規制
タイ民間航空公社(CATT)は、7月1日より、航空機のタイ出入国に対して許可を与える際の条件を緩和しています。入国許可の対象となる外国人について、有効な労働許可を保持している本人だけでなく、その配偶者や子供についてもその対象が拡大されました。また新たに、以下の者についても対象として追加されています。
・タイ人の配偶者、親、子供を持つ外国人
・有効なタイでの居住証明書を持つ外国人、またはタイに居住する許可を得ている外国人
・タイ当局から認定されているタイ国内の教育機関に通学する、外国人の学生、その両親または保護者
- 日本からタイへの特別航空便
現在、不定期で日本からタイ入国のための特別便が準備されています。8月7日の特別便については既に満席となっていますが、次回の特別便については、在東京タイ王国大使館のHP等に案内が出される予定です。
この特別便により渡航を希望する者は、入国許可書(COE)をタイ王国大使館に申請する必要があります。また、出入国の際には、以下の書類を提示しなければなりません。
・入国許可証(COE)
・記入、署名済みの申告書(Declaration Form)
・英文の搭乗可能健康証明書(Fit to Fly or Fit to Travel Health Certificate)
・渡航前72時間以内に発行された英文のRT-PCR検査による新型コロナウイルス非感染証明書
・新型コロナウイルス感染症及び関連疾患の治療費を含む10.万米ドル以上もしくはそれに相当する治療補償額の英文医療保険証
これに加え、タイ入国時には、以下が求められます。
・T.8 formの記入(タイ空港公社(AOT)の携帯アプリにてオンライン登録可能)
・タイ当局に指定された医療従事者から医療検査を受け、隔離施設にて14日間以上の検疫隔離
3.マレーシア
(1) 禁止行為等
同年6月30日及び7月14日に回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)(以下「RMCO」)(同年8月31日まで有効)が改正され、禁止行為に該当する行為の範囲が大幅に縮小されました。現在の禁止行為は以下のとおりです。
- マレーシア国民による観光目的での海外渡航及び外国人による観光目的でのマレーシアへの入国(大臣が指定した国からの外国人旅行者を除く)
- パブ及びナイトクラブでの活動(パブ及びナイトクラブ内のレストラン営業を除く)
- その他一か所に多くの人が集まりソーシャルディスタンスの実現及び公衆衛生局長の指示の遵守を困難にする活動
(2) 入国前後の手続等
7月24日、マレーシア外務省より外国から到着し監視下に置かれる者の入国及び隔離手続についてのガイドライン(GUIDELINES ENTRY AND QUARANTINE PROCESS PERSON UNDER SURVEILLANCE (PUS)ARRIVING FROM ABROAD) が公布されました。
ア 出発前の手続
(ア) 到着後の強制隔離の宿泊費用の支払いに関する約定書(Letter of Undertaking and Indemnity)の提出
提出は出発日の3日前までに、マレーシア外務省のHP等から書式を入手のうえ 必要事項を記入し、旅券や航空便旅程表等の他の必要書類とともにPDF等の形式で電子メールにより提出します。日本から渡航する場合、提出先は駐日マレーシア大使館となります。
(イ) マレーシアへの(入国許可の)承認状(Letter of Approval)/渡航通知書(Travel Notice)の受領
マレーシアへの渡航が許可されると、提出先の大使館等から(入国許可の)承認状/渡航通知書が電子メールで送付されます。
(ウ) アプリ(MySejahtera)への登録
マレーシアへの入国前に、アプリ(MySejahtera)(https://mysejahtera.malaysia.gov.my )をダウンロードし、出発日の前日までに渡航情報(日時、フライト情報、入国地点)、健康状態等の登録を行います。
(エ) 出発前のCOVID-19検査
同ガイドラインは、マレーシア政府は入国者に対し出発のCOVID-19検査を求めないものとしています。もっとも、航空会社が搭乗条件として出発前の検査を要求していることがあるため、各航空会社に対して確認をする必要があります。
イ 到着時の手続
(ア) 到着時のCOVID-19検査等
マレーシアへの到着時に、COVID-19検査を受ける必要があります。検査費用は、自身で負担をすることとなります。検査の結果、COVID-19の症状がみられる場合は病院に搬送されます。
(イ) 入国審査等
検査の結果COVID-19の症状がみられなかった場合、強制隔離の宿泊費用の支払いに関する約定書を係員に提示した後、入国審査及び税関検査を受け入国します。
(ウ) 到着後の手続
到着後、14日間又はマレーシア保健省が別途定めた期間の強制隔離に付されます。
強制隔離先は、マレーシア政府が指定したホテル等の施設で、強制隔離の対象者が隔離先の施設を選ぶことはできません。原則として1人1部屋ですが、保険証の検疫官の許可があれば配偶者や家族等との同室が可能とされています。
隔離施設のチェックイン時に約定書の原本を提出し、隔離費用を支払います(クレジットカードの使用可)。外国人の場合、隔離費用の額は1日あたり最大RM150とされています。
部屋からの外出、喫煙、集会、フードデリバリーサービスの利用及び訪問者との面会は禁止されています。食事及び飲み物は1日3回(朝食、昼食、夕食)提供されます。有償でランドリーサービスを利用することもできます。
(エ) パス区分ごとの手続
なお、本ガイドラインに定められた上記手続とは別に、パスの区分や出国時期に応じて必用となる手続があります。以下、EP及びPVPについて抜粋しますが、詳細及びパス区分についてはマレーシア入国管理局等をご確認ください。
新規入国 | 7月11日よりも前に出国し、 有効な在留資格を保有している者 の再入国 |
在留資格が失効しているが、 駐在員委員会の承認残余期間 がある者の再入国 |
再入国を前提とする出国 (7月18日以降) |
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EP1 | 入国許可は不要。 但し、雇用主から、承認機関を 通じて駐在員委員会に役職申請 をして承認状を取得することが 必要。 |
入国許可は不要。 | 入国許可が必要。 入国管理局長に対して入国 承認状の申請をする。 |
出国・再入国許可状の取得
が必要。 入国管理局長に対して申請 する。 |
EP2 |
入国許可が必要。駐在員会からの承認状、承認機関又は規制機関
からのサポートレターを添付して、雇用主から入国管理局長に 対して入国承認状の申請をする。 |
入国許可が必要。
手続は、新規入国の場合に 準じる。 |
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EP3 | ||||
PVP |
*EP2、EP3、PVPについては承認機関又は規制機関から重要な役職(key posts)又は技術職(technical posts)と評価されなければ入国許可を受けることができません。
4.ミャンマー
ミャンマーのCOVID-19の感染者数は353名です。新規の市中感染者はほとんど存在せず、海外から戻ってきた人の感染がほとんどです。ミャンマー国内においては、経済活動はCOVID-19以前に戻りつつあり、自宅待機措置についても全てのエリアで終了しました。もっとも、一定の集会禁止措置などは8月15日まで延長されています。
海外からの入国については、8月31日まで国際旅客機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも8月末まで運休する旨発表済みです。
もっとも、6月26日に臨時の救援便が飛ばされ、ODA関連の20名の日本人(他はミャンマー人)がミャンマーへ入国しました。次期救援便の調整も進められており、在京ミャンマー大使館とANAが調整した結果、8月1日、6日、27日の三便を飛ばす方向です。8月1日及び8月6日のフライトは緊急性の高いODA関係者を中心に搭乗予定です。8月27日のフライトにはJCCM会員企業も搭乗予定です。
ファーストトラック入国については中国が先行していますが、これを各国に適用するべく検討が進められています。対象は「緊急性を伴うビジネスマン」に限定され、現在の外国人入国要件と異なり、プロセスは以下の通りになる予定です。
1.出国前36時間以内のPCR陰性証明書(一週間の自宅待機なし)
2.到着後、政府施設隔離となり、翌日、PCR検査実施・陰性確認
3.隔離5日目にPCR検査を実施し、陰性であれば7日目に施設隔離終了。(自宅待機なし)
以上より、現時点では海外からミャンマーへ入国する手段としては臨時便のみとなり、かつ、希望すれば必ず臨時便に乗れるわけではない状況です。
5.メキシコ
2020年6月30日以降、連邦政府によるCOVID-19 に関しての規制等は新たに発表されていません。連邦政府が定める社会活動再開の信号は、7月27日の週は赤が18州、橙が14州と赤の割合が多くなっています。一方、各州(メキシコシティを含む)政府が定める規制等もあり、適宜、導入、更新されている状態です。例えば、メキシコシティでは、7月14日より、高感染リスクの地区を特定し、少なくとも15日間は公道での露店等小売業の制限などを行う赤信号地区プログラムの実施や,同じ住居で生活する人の中に感染者が1名以上確定した場合は、その住居に居住する全員の15日間自宅待機を要請することなどの措置が追加されました。
また、メキシコ政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、7月16日にメキシコ政府合意のもと8月20日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされていますが、在メキシコ米国大使館の発表では、米墨間の航空便の運航状況は、今年1月と比較し66%減少していることから、渡航にあたっては十分な計画が必要とされています。なお、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。
グアテマラ、ベリーズ国境においては、各政府による国境閉鎖が継続されていますが、ベリーズ政府は8月15日に国際空港の運営を再開することを発表しています。
6.バングラデシュ
バングラデシュのCOVID-19の感染者数は23万2194名です。新規の感染者はやや減少傾向にあるものの、依然として1日2,500~3,000人の感染者が報告されています。バングラデシュ政府は、7月1日から8月3日の期間における新型コロナウイルス感染拡大予防措置について以下の通り、発表しました。
- 午後10.時から翌日午前5時までの時間帯は、真に必要な場合(必要不可欠な売買,職場との往来等)を除き外出禁止。外出の際は,マスクの着用等感染防止措置を講じなければならない。違反した場合には法的措置を受けなければならない。
- 商店とショッピングモールは午後7時までに閉店しなければならない。
- いかなる教育機関も開校することができない。ただし,オンライン講座等は実施できる。
- いかなる集会,大規模行事も実施できない。ただし,宗教省の指導に従い,感染防止措置を講じた上であれば,モスクなどで集団礼拝を行うことはできる。
- レッドゾーンに指定された地域のうち,感染拡大が深刻な地域でのみロックダウンが実施される。ロックダウンが実施された地域では,保健サービス総局の許可と命令の下,自治体の調整によって日用品等の供給が確保されなければならない。
また、以下の対象国及び地域からの、バングラデシュへの定期国際便の乗入停止措置が継続されています。
(対象国及び地域)バーレーン,ブータン,香港,インド,クウェート,モルディブ,ネパール,オマーン,サウジアラビア,シンガポール,タイ
バングラデシュ入国の際,有効な査証を持つ外国人については,渡航前72時間以内に取得した新型コロナウイルス陰性であることが記載された英訳付きの診断書を提出する必要があります。
第2.各国の進出方法 |
1.日本
2.タイ
(1) 進出形態
企業がタイに進出する場合、大きく分けて、1.タイ国内法人を設立する方法と、2.外国法人のまま駐在員事務所・支店等を設立する方法、3.既存企業への資本参加の3通りの進出形態が考えられます。
- タイ国内法人の設立
タイにおいて新規に法人を設立する進出形態です。法人の種類については以下のような分類となります。
・株式会社(公開会社・非公開会社)
公開会社、非公開会社ともに、間接有限責任を伴う株主のみから構成される会社となります。公開会社は、公開会社法に基づき設立される会社で、株式の公募を目的とし、原則として株式に譲渡制限は付すことができず、株主数は15 人以上必要である点などが特徴として挙げられます。一方、非公開会社は、民商法典に基づき設立される会社であり、株式に譲渡制限を付すことが可能な点、株式の第三者割当が認められない点、株主数が3人以上必要である点などが公開会社と異なります。
一般的に、タイに進出する日系企業は、非公開会社を選択しているケースが多数です。
・パートナーシップ
パートナーシップは、民商法典に規定されている形態で、3種類の形態が存在し、パートナーの責任および登記の有無に違いがあります。タイにおいては比較的多く見られる形態ですが、一部のパートナーが無限責任社員になる必要があるため、タイに進出する日系企業がパートナーシップを選択することは少ないです。
2. 駐在員事務所・支店等の設置
・駐在員事務所(Representative Office)
本社への情報提供等を行うために設置する形態で、活動範囲が一定の調査・品質管理・宣伝等に限定されています。また、原則として収益事業を行うことはできません。
・支店(Branch Office)
外国法人(本社)のタイ国内の支店として設置する形態です。外国人事業法の規制を受けることから、事業活動は、当該事業に関連するライセンス等を取得した範囲に制限されます。
3. 既存企業への資本参加
外国人または外国法人が資本の50%以上を保有する場合、外国人事業法上の「外国人」に該当し、同法の規制対象となります。その場合、一定の規制事業について行うことが原則的に禁止されるため注意が必要です。規制事業の一部については、外国人事業ライセンス(Foreign Business License :FBL)を取得することで行うことが可能となります。
3.マレーシア
(1)進出形態
マレーシアに進出するための形態としては、直接的な進出形態である1.現地法人の設立、2.M&Aによる現地法人の買収、3.外国法人の支店の設立、4.駐在員事務所・地域事務所の設立及び間接的な進出形態である5.契約による進出(販売代理店契約、フランチャイズ契約等)が考えられます。
(2)現地法人の設立
マレーシア会社法(Companies Act 2016)に基づき会社を設立する方法です。流通取引業等の支店形態ではライセンスの取得が困難な業種については、現地法人の形態をとる必要があります。
マレーシア新会社法に従って設立される会社には、大きく分けて、
- 有限責任株式会社(公開会社、非公開会社)
- 有限責任保証会社(公開会社)
- 無限責任会社(公開会社、非公開会社)
の三つの形態があります。有限責任株式会社は、社員の責任が出資した株式の金額に限定される会社で、日本における「株式会社」に相当します。現行の会社法において外国人又は外国企業が設立できる会社の形態についての制限は設けられていませんが、設立や運用が容易であることから、外国人又は外国企業が会社を設立する場合そのほとんどが非公開の有限責任株式会社となっています。
現行の会社法の下では、非公開の有限責任株式会社の場合、株主の最低人数は1名とされ、取締役の最低人数も1名とされていますが、マレーシアに基本住居を置く取締役が1名以上必要となります。
会社の設立はネームサーチ(希望する会社名の使用の可否の調査)を経たうえで、マレーシア会社委員会(CCM)に設立申請をする形で行います。
(3)M&Aによる進出
現地法人の形態で進出する方法としては、現地法人を自ら設立するほかに、既存の現地法人の株式を取得し支配権を得る方法があります。この方法には、その現地法人が積み上げてきた事業価値を引き継ぐことができる等のメリットもある一方で、(潜在的な)負の財産を承継してしまう等のデメリットがあります。
また、外資規制との関係で株主の変更がライセンスに与える影響の有無や居住取締役の確保についても考える必要があります。
(4)支店(外国企業登録)
支店を設置することにより、支店を通じて現地での営業活動を含めた活動が可能になります。もっとも、流通取引業等の支店形態ではライセンスの取得ができない業種については、この形態により活動をすることは困難です。
支店の設立はネームサーチ(希望する支店名の使用の可否の調査)を経たうえで、マレーシア会社委員会(CCM)登録申請をする形で行います。登録申請に際しては国内居住者を代理人として選任する必要があり、この代理人は会社法の下で外国企業に義務付けられている行為について責任を負うこととなります。
(5)駐在員事務所(Representative Office)・地域事務所(Regional Office)
駐在員事務所は、特に製造業とサービス業について、マレーシア国内への投資・事業機会の可能性に関する情報の収集、二国間貿易関係の強化、マレーシアの商品とサービスの輸出促進及び研究開発の実施を承認された外国法人・組織の事務所をいうものとされています。また、駐在員事務所に隣接する制度として、地域事務所(東南アジア及びアジア太平洋地域内の関連会社や子会社、代理店との調整センターとして機能する事務所)制度が存在します。
駐在員事務所・地域事務所については、営業活動を行うことができない、駐在員事務所・地域事務所の運営資金が海外の資金源によって賄われていなければならず支出予定額は年間RM300,000以上でなければならない等の制約があります。
駐在員事務所・地域事務所は会社法に基づく設立手続は必要ありませんが、マレーシア政府の承認が必要となります。
(6)フランチャイズ契約
現地に法人や支店等の拠点を設けず、現地のフランチャイジーを介して間接的に商品やサービスを提供することも可能です。
外国企業がマレーシア国内で又はマレーシア国民に対してフランチャイズの販売を行う場合には、フランチャイズ登録局から承認を受け、また、同局への登録をしなければなりません。また、フランチャイズ契約の内容は、フランチャイズ法(Franchise Act 1998)に沿ったものとする必要があります。
4.ミャンマー
(1) 外資規制
ミャンマーに進出するに当たり、まずは外資規制を確認する必要があります。ミャンマーで実施予定の事業を外資10.0%で行うことができるか、合弁が必要か、ミャンマー内資会社のみが実施できるかにより進出スキームの選択肢が大きく異なります。
外資規制については、投資法に基づき発布された2017年4月10.日 投資規制業種通知(MIC Notification No.15/2017, List of Restricted Investment Activities)において、1.「連邦政府のみが実施するものとされている投資活動」9業種、2.「外国投資家による実施が許されない投資活動」12業種、3.「ミャンマー国民又はミャンマー国民が有する事業体との間の合弁投資の形でのみ外国投資が認められる投資活動」22業種、4.「関連省庁からの承認を受けることにより許される投資活動」126業種の合計169業種が規定されており、当該規定に基づく制限を受けます。
したがって、事前に上記のいずれかの業種に該当するか否かの確認が必要となります。記載が曖昧な業種もありますが、その場合にはミャンマー投資委員会(MIC)に対して事前確認申請を行うことにより、いずれの業種に該当するかの回答を得ることができます。もっとも、当該回答はMICが法的な保証を付与するものではないため、その後にMICの対応が変更される可能性があることに留意が必要です。
(2)法人設立の選択肢
上記の外資規制をクリアした上で、ミャンマーに法人を設立する方法は主に以下の4つの方法が挙げられます。
(a)会社法に基づく現地法人又は海外法人
(b) (a)+投資法に基づくエンドースメントの取得
(c) (a)+投資法に基づくMIC許可の取得
(d) (a)+経済特区法に基づく投資許可の取得
多くの日系企業は、(a)の方法に基づき進出しています。(b)乃至(d)の方法は、製造業や不動産開発業など、土地を長期で使用する必要性の高い業種が主です。
上記の(a)又は(b)のいずれを選択するかを検討する際の考慮要素としては、主に1. 投資法の恩恵を受ける必要性、2. 手続きに要する時間及び手続的負担、3. 初期投資額を挙げることができます。
1. 投資法の恩恵を受ける必要性に関して、投資法では、優遇措置として、法人税の一定期間の免税などの租税減免措置の恩典や土地の長期の賃借権(最大50年、さらに、10.年の延長を2回行うことができる。)等が存在します。そのため、製造業等においては長期の土地賃借が必要であるため、投資法の恩恵を受ける必要性が高いと言えます。ただし、租税減免措置については、所得税の免税は、2017年4月1日に発布された投資促進分野通知(MIC Notification No.13/2017, Classification of Promoted Sector)で定める投資促進分野に該当する投資に対してのみ付与され、複数の基準がありますが、そのうちの1つの基準として300,000ドルを超える額の追加資金の支出が必要となります。
2. 手続きに要する時間に関して、(b)の場合には、(a)の場合と異なり、会社法に基づく営業許可に加え、投資法に基づくエンドースメントを取得する必要がある。そのため、(b)の場合には、必要書類が増加し、かつ、一般に投資法に基づくエンドースメントは会社法に基づく営業許可以上に取得までに時間を要します。
3. 初期投資額に関して、投資法上は、最低資本金が規定されていません。しかし、租税優遇措置を享受するためには、300,000ドルを超える額が必要となります。他方、会社法に基づく会社の最低資本金額は存在せず、1チャットの資本金でも設立可能です。そのため、(b)の場合には、(a)の場合よりも多額の初期投資が必要となります。
(c)については、以下のいずれかの場合のみMIC許可を取得する必要があります。
(i)国家の戦略上重要な事業 (a)通信、技術、運輸インフラ、エネルギーインフラ、都市開発インフラ、採掘又は天然資源、農業、市街地、メディアの各セクターかつUSD2,000万以上の投資 (b)当局からのコンセッション等による案件かつUSD2,000万以上の投資 (c)国境紛争・紛争影響地帯かつUSD100万以上の投資 (d)国境をまたぐ投資かつUSD100万以上の投資 (e)1,000エーカー超の土地を占有又は利用する農業関連投資 (f)100エーカー超の土地を占有又は利用する非農業関連投資 (ii)一定の資本金額を超える事業 (a)予想される投資額がUSD1億を超える投資 (iii)環境及び地域社会に深刻な影響を与える可能性のある事業 (a)環境影響評価が必要となる事業 (b)環境保護法により保護地域又は生態系保全地域に指定されている地域への投資 (iv)国有地又は建物を利用する事業 (v)別途政府により投資許可が必要とされる事業 |
(d)の場合、手厚い租税減免措置や土地の長期の賃借権(最大50年、さらに25年の延長を行うことができる。)が認められます。しかし、経済特区法は経済特区に指定されたエリアでの会社設立のみに適用され、現時点においては、ティラワ、ダウェイ、チャオピューの3つのエリアが経済特区として指定されているものの、ティラワのみが整備済みの現実的な進出候補地であり、ダウェイ及びチャオピューはいずれも整備は完了しておらず、実際に選択肢となり得るには時間を要します。ティラワには約50社の日系企業が進出しています。
5.メキシコ
(1)外資規制
外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)による規制が存在するものの、ほとんどすべての業種において外資に開放されています。たとえば、石油および炭化水素の探索と採掘等は国家のみが行うことができる業種、旅客・観光・貨物国内陸上輸送(宅配便サービスを除く)等のメキシコ人または会社定款に外国人排除条項を定めるメキシコ企業のみが行うことができる規制業種、国内航空輸送等については25%までと外資参加率に上限が定められている業種などといった具合に限定されていますが、それ以外は規制なく外資参入が可能です。ただし、規制業種に限らず、既存企業の資本に外資が49%を超えて参加し、かつ、その会社の資産総額が201億8467万1346.26メキシコペソを上回る場合は外資委員会の承認が必要とされます。
(2)事業形態・現地法人設立
1. 事業形態
メキシコに進出して事業を行う場合、個人事業として行う場合、会社を設立する場合、支店や駐在員事務所を設立する場合、合弁事業として行う場合が考えられます。
2. 会社形態
この中で、会社設立については、主に商事会社一般法(Ley General de Sociedades Mercantiles)が規定しています。同法1条においては、合名会社(Sociedad en Nombre Colectivo)、合資会社(Sociedad en Comandita Simple)、合同会社(S. de R.L.: Sociedad de Responsabilidad Limitada)、株式会社(S.A.: Sociedad Anónima)、株式合資会社(Sociedad en Comandita por Acciones)、協同組合(Sociedad Cooperativa)など、多くの法人形態が規定されていますが、社員の無限責任を避けるため、メキシコ進出にあたっては、株式会社(Sociedad Anónima)や合同会社(Sociedad de Respossabilidad Limitada)の形態が採られることが一般的です。
また、定款変更せずに資本金を増減できる可変資本(Capital Variable)制度も多く利用されています。法人の形態や可変資本制度を採用しているかについては、会社名に反映させなければならず、社名の後に 「S.A. DE C.V.」などと付け加えられます。
3. 会社の設立手続
会社設立については、概ね、(a)経済省社名使用許可、(b)委任状の作成、(c)定款・創立総会決議事項の準備、(d)会社設立公正証書の作成、(e)会社設立登記、(f)連邦納税者登録、(g)外資登録、(h)各種帳簿類や社屋関係、労務・業務上の手続きその他の手続を行う必要があります。
(a)社名使用許可については、社名候補を3つ以上、優先順位を付して提出する必要があります。
(b)委任状について、(d)会社設立公正証書の作成をメキシコ居住者に委任する必要があるため作成します。
(c)商号や会社の目的、資本金額等の記載事項を含めた定款を準備します。
(d)メキシコにおいては、会社設立行為は契約行為と解されており、会社設立公正証書への署名によって法的には会社が設立されることになります。
(e)会社設立の商業登記(RPC:Registro Público de Comercio)が、商業登記所で行われることにより、会社の設立を第三者に対抗できるようになります。ただし、手続地によるがこの手続きには2,3か月を要することもあります。
(f)連邦納税者登録は行政手続きや銀行口座の開設、正規インボイスの発行等に必要となります。
(g)外資登録は、会社設立の日から40日以内に登録が必要となり、当該報告年について、総資産額、負債総額、国内外の合計収益、国内外の合計支出のいずれかが1億10.00万ペソを超過した企業は、年次更新手続きが必要となります。
6.バングラデシュ
(1) 外資規制・外資奨励
バングラデシュに進出するに当たり、禁止・規制業種や出資比率などの外資規制を確認する必要があります。
工業省「国家産業政策令2016」において、1.禁止業種(4業種)、2.規制業種(22業種)が規定されており、金融業などの規制業種については主に政府の認可等が必要です。また、業種によっては、外資出資比率の制限があります。具体的には、保険業の外資出資比率は60%まで(2013年4月9日付 SRO No.53.005.022.05.00.076.2011-96)、運搬・運送(C&F)エージェントの外資出資比率は49%まで(2017年7月26日付 SRO No.247/AIN/2017/62/Customs)、海外への労働者派遣業の外資出資比率は40%まで認められています(2013年海外就労・移民法)。
一方、バングラデシュでは、外資奨励の取組みとして、1.外資奨励産業に対する優遇措置、2.特区の整備、が進められています。1.外資奨励産業として、輸出志向産業、ハイテク産業、国産天然資源を活用する産業、国産原料に依存する産業が挙げられており、法人税減免措置等優遇措置を受けることができます。2.特区の整備として、輸出加工区(EPZ)や経済特区(BEZA)、ハイテクパークの整備が進められており、進出企業への優遇措置が設定されています。このうち、特に輸出加工区(EPZ)の整備が進んでおり、法人税の免除、建設資材、機械、設備、部品等の輸入関税免除、原材料の輸入関税および完成品の輸出関税免除等の優遇措置を享受することができます。バングラデシュ国内に8のEPZがあり、日本企業が約20社進出しています。EPZへの投資が可能な業種は以下の通りです。
1.電子機器、電気部品、電子製品、ソフトウェア光学製品、2.編み物、ニット、繊維、3.エンジニアリング製品、4.皮革製品、5.靴、⑥玩具、7.医療器具、
8.医薬品、9.プラスチック金型製品、10.ジュートの新利用法を採用している産業、11.貴石、反貴石の裁断、研磨家庭用備品、装置、12.特別仕様の衣類、 13.ヘッドウェア宝石、14.時計、15.科学測定装置、16.航空機部品、17.実験装置、18.印刷、出版、19.印刷、複写装置、周辺機器、 20.日曜大工道具、装置、21.楽器、22.レーザー技術製品 |
(2) 法人設立の形態
外国人投資家がバングラデシュに事業拠点を設立する場合、以下の5種類の形態のいずれかとなります。
1.現地法人は、バングラデシュ会社法に基づき設立され、バングラデシュ投資開発庁(Bangladesh Investment Development Authority, BIDA)への登録が必要です。2.支店、3.駐在員事務所、4.連絡事務所は、BIDAの承認を得て設立されます。5.公共部門との合弁会社は、民間部門の出資額が50%を超える場合は、BIDAへの登録が必要です。2.支店、3.駐在員事務所、4.連絡事務所は、海外送金が制限又は認められておりません。また、外国会社とみなされますので、外国投資家の出資割合が一定の比率に制限されている事業活動は認められないなど、外資規制を受けます。
発行 TNY Group |
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【TNYグループおよびTNYグループ各社】 ・TNY Group URL:http://www.tnygroup.biz ・日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所) URL:http://progress.tny-legal.com/ ・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.) URL:http://www.tny-legal.com/ ・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.) URL:http://www.tny-malaysia.com/ ・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.) URL:http://tny-myanmar.com ・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.) URL:http://tny-mexico.com ・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.) URL:http://www.tny-israel.com/ ・エストニア(TNY Legal Estonia OU) URL:https://estonia.tny-legal.com/ ・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh Ltd.) https://www.tny-bangladesh.com/ Newsletterの記載内容は2020年7月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。 |
第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制 |
1.日本
(1) 入国規制
6月29日、日本において「水際対策強化に係る新たな措置」が決定され、入国拒否対象地域に新たに18か国が追加されました。入国拒否措置の期間は当面の間とされています。検疫の強化、査証の制限、航空機の到着空港の限定等及び到着旅客数の抑制の措置については、7月末日まで延長されました。
今後は一般の国際的往来とは別に、ビジネス上の出入国について例外的な枠を設置することを予定しています。感染状況が落ち着いている入国拒否対象地域を対象国として、追加的な防疫措置を条件とし、ビジネス上の往来を可能にするような仕組みを協議・調整中です。
・日本における新型コロナウイルスに関する水際対策強化(新たな措置)(外務省海外安全ホームページ)
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C057.html
・第38回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020618.pdf
・第39回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020629.pdf
(2) 外出自粛の緩和
6月19日に全国を対象に県をまたぐ移動の自粛が解除されました。外出自粛の段階的緩和は、7月31日までを移行期間としており、これが終了した8月1日を目途に、通常に戻ることを予定しています。
・第36回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020525.pdf
2.タイ
(1) COVID-19関連の規制
6月15日より、タイ政府は非常事態令を緩和し、以下の事項を適用しています。
- 夜間外出禁止令の撤廃
6月14日23時以降より、タイ全土における夜間外出禁止令を解除しました。
- 学校及び教育機関の施設使用の緩和
インターナショナルスクール、外国の教育課程の大学等や、生徒数が120名以下の学校について、学習や授業のための施設使用を認めました。
- 施設の営業及び活動の実施
以下の活動等について、その実施を認めました。
・会議、研修、セミナー、コンサート、ホテル、劇場、映画館等の施設での活動
・食堂、フードコート、ホテル、レストラン、アルコールの提供が認められた場所における、営業時間内でのアルコール飲料の消費(パブ、バー、カラオケ等の活動は認められていません)
・託児所、保育所、幼稚園、高齢者施設、介護施設等の福祉施設での、デイケア活動
・健康増進施設内での、サウナ、スパ、タイ古式マッサージ施設等の営業
・公園、公共の活動場所、屋外のスポーツ競技場等における集団での運動
・ウォーターパーク、児童公園、遊技場の営業
・スポーツ指導のための競技場、運動用の施設での活動
- 県境をまたぐ移動に関する基準の制定
車両、鉄道、航空機等の移動制限の緩和に伴い、待合場所、座席および乗客数の制限等が緩和されています。
(2) 入国規制
タイ民間航空公社(CATT)は、タイに到着する全ての国際旅客便の飛行を禁止する措置を取っており、その期限は6月30日までとなっています。7月1日以降の詳細については、まだ発表されておりませんが、外国人渡航者の入国制限を一部緩和する方向で検討に入ったとの報道がなされています。
3.マレーシア
(1) 回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)
2020年6月10日、回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)(以下「RMCO」)が施行されました。このRMCOは、同年8月31日まで効力を有するものとされています。
RMCOの施行により、州間の移動や理髪店の営業等多くの活動を再開することが可能となります。他方、強化された移動制限令(enhanced movement control order)の対象となる場所への出入りや行列・行進への参加のほか、以下の行為はなお禁止されています。
- スポーツイベント・大会への参加及びそれらの開催
- 接触型スポーツ
- ウォーターテーマパークやウォーターパークでの活動
- スイミングプールでの活動(個人の住宅及び宿泊施設での活動、東京オリンピックに参加する代表選手の練習を除く)
- マレーシア国民による観光目的での海外渡航及び外国人による観光目的でのマレーシアへの入国
- カラオケ、ショッピングモールでの子供向け運動場、家族向けエンターテイメント施設での活動
- パブ及びナイトクラブでの活動(パブ及びナイトクラブ内のレストラン営業を除く)
- 服のフィッティング、服飾店内での試着室の利用、店内でのアクセサリーの試着、店内での化粧品テスターの提供
- 美容健康施設内でのリフレクソロジー及びマッサージ
- クルーズ船での活動
- その他一か所に多くの人が集まりソーシャルディスタンスの実現及び公衆衛生局長の指示の遵守を困難にする活動
もっとも、マッサージ店の営業再開を許可する見通しであるとの発表が6月15日になされていること等から、8月31日を待たずに禁止行為に該当する行為が再開できるようになる可能性もあります。
また、RMCOの施行により、集会を開くこと及び集会に参加することも可能となりましたが、公衆衛生局長の指示に従うことが必要とされています。
(2) 外国人の入国について
ア 入国許可の要否
(ア) 入国許可が不要なパス
以下の区分に該当する場合、マレーシア入国管理局からの入国許可は不要とされています。
- 雇用パス(カテゴリー1)(Employment Pass Category I (EP I))、その扶養家族(Dependants)及び外国人メイド(Foreign Maids)
- 居住者パス(技能)(Residence Pass-Talent (RP-T))、その扶養家族及び外国人メイド
(イ) 入国許可が必要なパス
以下の区分に該当する場合、マレーシア入国管理局からの入国許可が必要となります。
- 専門職訪問パス(Professional Visit Pass (PVP))
- 雇用パス(カテゴリー2)(Employment Pass Category II (EP II))及び扶養家族
- 雇用パス(カテゴリー3)(Employment Pass Category III (EP III))
- 長期ソーシャルビジットパス(Long Term Social Visit Pass (LTSVP))を有する18歳以上の子供、両親及び義理の両親
(ウ) マレーシアマイセカンドホーム(MM2H)パスについて
現在公表されている情報によれば、MM2Hパスの保有者は、入国管理局からの入国許可によってではなく、観光・芸術・文化省からの入国許可に基づき入国が可能とされています。
イ 入国許可のための手続
- 事業に関係する省庁の駐在者委員会(EC)から承認状(Approval Letter)を受領する(新規でない駐在者については不要)。
- 事業に関係する省庁からサポートレター(Support Letter)を受領する。
- 電子メールで入国許可申請を行い、入国承認状(Entry Approval Letter)を受領する。
- 入国前3日以内にPCR検査を受け,陰性証明書を受領する(※日本国籍者については6月24日から適用除外。もっとも、入国後に「PCR検査陰性結果」が無い者として抗原検査を受ける必要がある。)。
- マレーシア到着時に入国承認状を提示する。
ウ 入国後の手続
- 14日間の自宅隔離を行う。
- 自宅隔離に際しては、給付されたリストバンドを着用する。
- 自宅隔離13日目に抗体検査を行う。
4.ミャンマー
ミャンマーのCOVID-19の感染者数は299名です。新規の市中感染者は1週間以上存在せず、海外から戻ってきた者のみです。ミャンマー国内においては、職場やレストランにおけるCOVID-19予防のためのガイドラインが出されており、それを順守すれば事業を行うことができます。そのため、5月下旬よりレストランは徐々に再開しており、6月からは多くの日系企業も徐々に在宅から事務所勤務に戻りつつあります。もっとも、未だに1地区における自宅待機措置及び夜間外出禁止要請は残っており、7月15日まで延長されています。
他方、海外からの入国については、7月31日まで国際商業航空機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも7月末まで運休する旨発表済みです。そのため、現実的にミャンマーに行くための飛行機がない状況ですが、飛行機の運航が再開された際の入国に関する規制が6月9日に在日本ミャンマー大使館より以下のとおり発表されております。
1.出国前に準備すべき書類
a. 新型コロナウイルス陰性証明書(Laboratory Evidence of Absence of COVID-19)
この医療機関の証明書(Laboratory Certificate)は、国立国際医療研究センター病院やトラベルクリニック等で発行が可能です。証明書は搭乗前72時間以内に発行される必要があります。以下の国立国際医療研究センター病院のホームページを確認の上参考としてください。
http://travelclinic.ncgm.go.jp/009/index.html
b. 1週間の自宅隔離を行ったことについての所属機関による推薦書(Office Recommendation Letter on One Week Home Quarantine)
今次渡航前1週間の間に他国へ渡航していないこと及び自宅に滞在していたことを証明する書類。
2.ヤンゴン国際空港到着後の隔離措置
a. 指定された施設での1週間の隔離措置を実施していただきます。隔離中に、PCR検査のための検体を採取します。
b. 施設隔離中に行われたPCR検査の結果が陰性だった場合、職務復帰前に1週間の自宅隔離を行うことが義務づけられます。
5.メキシコ
(1) Nueva normalidad始動
3月24日から続いた「Jornada Nacioanl de Sana Distacia」の期間が終わり、6月1日より、5月14日、15日、29日に官報公示された保健省令に基づく、社会活動再開に向けた「Nueva normalidad」の期間が始まりました。
社会活動再開に向けたレベルを赤・橙・黄・緑と4つの色で示し、連邦政府が発表する色に基づき、段階的に活動の範囲を広げていく計画で、経済活動においては、以下の範囲で活動が許されうるとしています。
Máximo 赤 | Alto 橙 | Intermedio 黄 | Cotidiano 緑 |
必要不可欠な事業のみ
◆1.5mの間隔の維持もしくは保護具の提供 |
必要不可欠な事業、その他の事業については出勤率30%での活動可◆1.5mの間隔の維持もしくは保護具の提供 |
全事業活動可 (在宅勤務の推奨) ◆1.5mの間隔の維持 |
全事業活動可 (全従業員の出勤可) ◆感染防止策の徹底 |
ただ、依然としてメキシコ国内の感染者数は増加傾向を見せており、特に、これまで比較的感染者が少なかった地域でも感染者の増加が目立ち国土全体への感染拡大が懸念されています。6月15日の週はメキシコ全32州(メキシコシティ含む)の内、半数の16州が橙とされ、翌週には赤15州、橙17州、6月29日の週は赤14州、橙18州となりましたが、それぞれ、これまで赤だったコリマ州とイダルゴ州が橙になった一方、前週に橙だったタバスコ州が赤に、これまで赤だったメキシコ市やケレタロ州など4州が橙に,前週に橙だったヌエボレオン州、イダルゴ州、コリマ州が橙から赤になり、一進一退の状況です。
また企業活動の再開にあたっては、連邦政府が発表したガイドラインに従い、経済活動の種類、事業所の規模、事業所の特徴を鑑みた対策が必要となりますが、具体的な方針は州政府が決めることとなり、また連邦政府の発表する色とは異なる対応をとる州政府もあることから、事業所所在地における州政府の指針も踏まえた内容の対策をとることが必要です。
例えば、メキシコシティの場合、連邦政府が定める産業に加え、ビール製造業と自転車販売業を「必要不可欠な活動」として6月1日から赤色下での操業を認めています。また、メキシコシティ独自に社会活動再開に向けた赤・橙・黄・緑のレベルを設定し社会活動再開を進めていくこととしていますが、特設プラットフォームでの事業者登録や市が定める産業別衛生対策の実施、経済活動再開後の事業者に対しては、新型コロナウイルス感染が疑われる労働者を発見した場合の報告や従業員が30人以上の事業所の場合の感染の有無を確認する検査の実施(毎週もしくは隔週1回)を義務付けています。メキシコシティは6月26日の定例首長会見で6月29日より再開レベルを橙とし、商業施設や飲食店、ホテルなどの部分的営業再開を発表し、同日付の同市官報にて公示されました。例えば、7月1日よりホテルは宿泊客30%まで、レストランは収容人数30~40%まで、7月6日よりショッピングセンターや百貨店が収容人数30%までで事業を再開することができますが、前述の通り市が定める衛生対策の実施等のルールに従った対応が必要です。
(2) 入国規制
メキシコ政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、6月16日にメキシコ政府合意のもと7月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされていますが、在メキシコ米国大使館の発表では、米墨間の航空便の運航状況は、今年1月と比較し80%減少していることから、渡航にあたっては十分な計画が必要とされています。なお、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。
グアテマラ、ベリーズ国境においては、各政府によるその閉鎖が継続されています。
6.バングラデシュ
バングラデシュのCOVID-19の感染者は13万7787名です。依然として感染は拡大しており、6月10日からは連日1日あたり3,000~4,000名の新規感染者が報告されております。
新型コロナウイルスの蔓延を防ぐための措置として、バングラデシュ全土で、6月30日まで、午後8時から翌日午前6時までは、真に必要な場合を除き外出禁止です。外出の際はマスク着用等の衛生措置を講じることが必要で、違反者に対しては法的措置(罰金、懲役刑)が取られます。同期間、教育機関は開校できません。また、6月15日、バングラデシュ政府はゾーン分け規制を含む感染拡大予防措置を講じると発表しました。赤、黄、緑ゾーンに分けて、赤ゾーンに指定された地域では、政府機関や民間企業などは政府指定休日となり、人々の移動や生活も厳格に制限されます、黄・緑ゾーンでは政府機関や民間企業は限定的に業務を行うことができますが、人々の移動や生活も一部制限されます。
バングラデシュへの入国については、一部の国・地域(中国、英国、カタール、アラブ首長国連邦)を除いて、無期限での国際フライトの乗り入れ停止措置をとっております。海外投資家およびビジネス関係者はオンアライバルビザの発給が再開されていますが、ビザの申請時には、これまでの必要申請書類に加え、渡航前72時間以内に取得したPCR検査で新型コロナウイルス陰性であることが記載された英訳付きの診断書、投資・ビジネス目的を立証する書類が必要です。また、コロナ感染国からの入国者に対しては、入国後2週間の自主的な隔離措置が要請されます。
第2.各国の解雇手続き |
1.日本
(1) 解雇の通則
「使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了」を解雇といい、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)と規定されています。
日本において解雇は、使用者が自由に行えるものではなく、「社会通念上相当」と認められる客観的で合理的な理由が必要です。
(2) 解雇の種類
解雇には下記の3種類があります。
1.普通解雇
能力不足、勤務成績不良、業務命令・指示違反、傷病、私生活上の非行を理由とする解雇
2.懲戒解雇
使用者の懲戒権発動による解雇
3.整理解雇
経営上の必要性から行われる解雇
(3) 整理解雇
上記(2)の3種類の解雇のうち、COVID-19による経営難による人員整理等を理由とする解雇は、「整理解雇」となります。整理解雇を行う為には下記の4要件を満たすことが必要です。
1.人員削減(解雇)の必要性
2.解雇回避の努力
3.人選の基準及び人選の合理性
4.手続の合理性
この4要件に照らして、上記(1)解雇の通則(労働契約法第16条)の「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない」かどうかにより、整理解雇が有効であるか否かが判断されます。
(4) 解雇予告手当
通常、使用者が従業員を解雇しようとする場合、30日前までには、解雇の予告をしなければなりません。この予告を行わずに解雇する場合、使用者には最低30日分の平均賃金を従業員に支払う義務が生じます。
(5) 有期契約における解雇
「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむをえない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」(労働契約法第17条)と規定されています。
有期契約の契約期間途中に従業員を解雇しようとする場合、労働契約法第16条で定められた解雇の通則の規定に加え、「やむをえない事由」が必要となってくることから、解雇の有効性はより厳しく判断されることとなります。
2.タイ
タイ労働者保護法上、解雇とは、「雇用契約の終了、またはその他理由を問わず、使用者が労働者を以後働かせず、賃金を支払わない行為のことをいい、使用者が事業を継続することができないために労働者が労働せず、かつ賃金を受け取らない場合を含む」とされており、解雇する場合には、通常、以下の手続を取る必要があります。
- 事前通告
雇用契約に期間の定めがない場合、使用者は、労働者に対して、一賃金支払期間前の書面による解雇通告をする必要があります。
例外的に、事前通告から雇用契約終了の日までに得られるはずの賃金と同額の金銭を支払う場合には、即時の解雇が可能です。また、後述する、119条に定める違反行為がある場合についても、事前通告が不要となります。
- 有給休暇の買取り
119条に定める場合によらず使用者が労働者を解雇する場合、使用者は労働者が有する年次有給休暇に応じた賃金を支払う必要があります。
繰越年次休暇がある場合は、それに応じた賃金を支払う必要があります。
2. 解雇補償金
使用者は、解雇する労働者に対して、以下の解雇補償金を支払う必要があります。有期雇用契約が満了により終了する場合についても支払義務があることに注意が必要です(特定の条件に該当する有期の雇用契約を除く)。しかし、労働者側からの辞職の場合は、解雇補償金の支払義務は生じません。
また、使用者に対して故意に損害を与えた場合や、過失により重大な損害を与えた場合等、119条に定められている事項により労働者を解雇する場合については、解雇補償金の支払義務は生じません。
勤続期間120日以上1年未満: 最終賃金の30日分以上
勤続期間1年以上3年未満: 最終賃金の90日分以上
勤続期間3年以上6年未満: 最終賃金の180日分以上
勤続期間6年以上10年未満: 最終賃金の240日分以上
勤続期間10年以上20年未満: 最終賃金の300日分以上
勤続期間20年以上: 最終賃金の400日分以上
3. 事業移転に伴う解雇
使用者が事業所を移転する場合で、労働者が新たな事業所での就労を望まない場合、労働者は書面により雇用契約の終了を通知することができます。その場合、使用者は当該労働者に対して、(3)の解雇補償金の額と同額以上の特別解雇補償金を支払う必要があります。
4. 機械導入、技術更新に伴う解雇
機械導入、技術更新等により、使用者が組織、製造工程等を改変し、使用者が労働者を減少させる必要があることを理由として、労働者を解雇する場合、使用者は、解雇の日の60日以上前に、労働監督官及び当該労働者に対して、解雇日、解雇理由、当該労働者名を通知する必要があります。
上記の事前通知をしない場合、使用者は当該労働者に対して、(3)の解雇補償金に加えて、最終賃金の60日分と同額の特別解雇補償金を支払う必要があります。
当該労働者が6年以上勤続している場合には、勤続満1年あたり最終賃金の15日分以上の特別解雇補償金を支払う必要があります(最大360日分)。
3.マレーシア
マレーシアにおける解雇も、日本と同様に、概ね1.普通解雇、2.懲戒解雇、3.整理解雇の3つの類型に分けることができます。いずれの類型においても、解雇が有効となるためには解雇を正当化できるだけの事由が必要となります。
(1) 普通解雇
労働者が雇用契約に基づく労務の提供をしない(又は、できない)場合に雇用契約を解消するものです。懲戒解雇・整理解雇以外の解雇と表現されることもあります。
雇用契約で定める予告期間に従って、事前通知の形で解雇を通知します。雇用法が適用される労働者(月額賃金RM2,000以下の労働者や肉体労働者等)の場合で、契約において予告期間の定めがない場合等には、雇用法が定める予告期間を下回ることができません(勤続2年未満の場合4週間、勤続2年以上5年未満の場合6週間、勤続5年以上の場合8週間)。ただし、対応する期間の賃金の支払いをすることで、予告期間を短縮することはできます。
また、雇用法が適用される労働者については、法定の解雇手当を支払う必要があります(勤続1年以上2年未満の場合1年につき10日分、勤続2年以上5年未満の場合1年につき15日分、勤続5年以上の場合1年につき20日分)。
(2) 懲戒解雇
懲戒解雇は、懲戒処分の1つとして行われる解雇です。
雇用法14条は、不正行為があった場合には適正な調査を行ったうえで労働者を予告なく解雇することができるとしています(この場合には、解雇予告手当の支払いも不要とされています)。実務上は、雇用法の適用の有無に拘らず、不正行為があったと使用者が考える場合には、不正行為の有無を調査のうえ、当該労働者に問題となっている不正行為について理由呈示書(Show Cause Letter)の発行を通じて弁明の機会を付与し、社内審問手続(Domestic Inquiry)を経た上で解雇をするという流れが一般的です。
雇用法は、懲戒処分の決定まで2週間を限度として停職処分を行うことも可能であるとしていますが、当該期間について賃金の半額以上を支払わなければならないとしています。雇用法の適用がない労働者については、雇用契約において特段の定めを置いていない限り、停職期間中も賃金の全額につき支払義務が存続するものと考えらます。
(3) 整理解雇
人員が余剰であることを理由として行われる解雇です。
整理解雇については、労使協調のための行為規範(The Code of Conduct for Industrial Harmony 1975)及び整理解雇管理ガイドライン(Guidelines on Restrnchment Management)といった規定が用意されており、整理解雇に臨む際にはこれらの規定に沿って手続を進める必要があります。
これらの規定は、労働者の余剰が生じた場合、まずは解雇を回避するための措置(新規雇用の停止、残業・休日出勤の制限等)をとる必要があるとしています。またこれらの規定は、そのような解雇回避措置をとったにもかかわらず一部の従業員の解雇が必要になった場合には解雇の30日以上前に労働局に届出をしなければならないものと定めるほか、解雇の対象となる従業員の選定に関するルール(直近に雇用された者から順に解雇の対象とすべきという「Last In, First Out」等)についても定めています。
整理解雇における解雇予告期間・解雇手当については、普通解雇に準じます。
4.ミャンマー
日本と異なり、解雇理由及び手続きに関する法令上の明確な規制は存在しません。また、COVID-19を理由とする特別な対応や整理解雇も存在しません。したがって、一般的な解雇規制について、解雇手当を支払う場合と不要な場合に分けてご説明します。
1.解雇手当を支払う場合
実務上、合理的理由が必要とされていますが、その理由について明確な規定や裁判例も特に存在しません。手続きとしては、1か月前の通知が必要であり、かつ、労働者の勤続期間に応じて以下の解雇手当を支払う必要があります。
(a)勤続期間が6か月以上1年未満の場合、0.5か月分の給与の支払い
(b)勤続期間が1年以上2年未満の場合、1か月分の給与の支払い
(c)勤続期間が2年以上3年未満の場合、1.5か月分の給与の支払い
(d)勤続期間が3年以上4年未満の場合、3か月分の給与の支払い
(e)勤続期間が4年以上6年未満の場合、4か月分の給与の支払い
(f)勤続期間が6年以上8年未満の場合、5か月分の給与の支払い
(g)勤続期間が8年以上10年未満の場合、6か月分の給与の支払い
(h)勤続期間が10年以上20年未満の場合、8か月分の給与の支払い
(i)勤続期間が20年以上25年未満の場合、10か月分の給与の支払い
(j)勤続期間が25年以上の場合、13か月分の給与の支払い
2.解雇手当が不要な場合
解雇手当が不要な場合について、刑事罰に該当する行為を行うような非常に悪質な場合には直ちに懲戒解雇が可能です。
他方、懲戒解雇に該当する程悪質でない場合には、通常解雇となります。
通常解雇の手続きについて、法令上の規定はないものの、労働・入国管理・人口省が出しているモデル雇用契約書第15条(b)(ii)において、「雇用契約の規則に違反した従業員に対して、1 度目は口頭での警告、2 度目は書面による警告がなされる。3 度目は、通常の規定違反に関する誓約書に署名を命じられることとなる。3 度目の警告から、12 か月以内に、労働者が通常の違反を再度犯した場合、使用者は、当該労働者との契約を、解雇手当を与えることなく解除できる。」と規定されています。したがって、4回目の違反で漸く解雇できることから、非常に時間がかかる手続きとなっております。
5.メキシコ
(1) 使用者の都合による雇用契約の終了
労働法では、使用者の破産や財務状況の悪化を理由とした雇用契約の終了や、機械の導入や業務改善による雇用契約の終了が認められています。この場合、労働調停仲裁委員会の許可もしくは承認を得たうえで解雇(雇用契約の終了)を実施することが可能です。
解雇時には、未払分の給与や解雇する年の勤務日数に応じた割合の有給休暇手当の額とアギナルド(年次法定賞与)額、その他、会社独自に定めた手当などがある場合はそれらの受け取り分等の精算を行い、加えて、3か月分(機械の導入や業務改善が理由の場合は、4か月分)の給与額や勤続年数に応じた勤続手当額(給与額が最低賃金の2倍を超える場合は、勤続年数に応じて12日分の最低賃金額の2倍の額、給与額が最低賃金の2倍以下の場合は、勤続年数に応じて12日分の賃金額)を解雇手当として支払う必要があります。
(2) 労働者の責めに帰すべき事由による解雇
労働者が就労の際に虚偽を用いた場合や、不正行為または脅迫、侮辱などを含む暴力的行為を行った場合、企業秘密や守秘義務を負う情報について漏洩した場合、30日間のうち4日以上の正当な理由のない欠勤があった場合など、労働法第47条に定める事由による場合は、使用者はその責めを負うことなく解雇することが可能です。すなわち、使用者は、解雇時に未払い給与や手当の精算のみ行うこととなります。
この場合、使用者は当該労働者に対して、当該事由及びその事由が発生した日付や期間を記した書面によって解雇を即日かつ直接通知するか、解雇日から5営業日以内に労働紛争調停員会に当該労働者の住所と併せて届出なければなりません。この場合は、使用者に代わって当該労働紛争調停員会が労働者に当該解雇通知を送達することとなり、労働者が通知を受け取った時にこの解雇の効果が生じることとなります。
ただし、解雇通知を受け取った労働者は、解雇の日から2か月間、労働紛争調停員会を通じ、復職か3か月分の給与相当額の補償金の支払を請求する権利を有します。解雇事由の立証責任は使用者にあり、使用者がこれを証明することができず、不当解雇と認定された場合は、当該請求に加えて、復職するか否かにかかわらず、上限を12か月分として解雇日から調停が終了するまでに得られたであろう賃金額を支払わなければなりません。その調停が12か月以上に及んだ場合は、12か月分の賃金額の支払いに併せて、15か月分の賃金額の2%を超過月数分支払うこととなります。
また、一定の条件を満たす労働者の場合や労働裁判によって雇用関係の継続が困難と判断された場合には、使用者は、例えば無期雇用の場合は、20日分の給与額に勤続年数を乗じた額の補償金を支払うことによって、労働者の復職の希望を拒否することも可能です。
(3) 使用者の都合による解雇
以上のほか、使用者の都合によって労働者を解雇する場合は、労働者が享受できるすべての権利を害することなく解雇することになります。つまり、前述したような労働者が得られる補償金等のすべてを支払い解雇する方法です。なお、補償金の額は、雇用契約の形態や労働者の給与額、勤続年数、職種によって異なってきますので、個別具体的な確認、検討が必要になります。なお、メキシコの労働法では、雇用契約終了の事由として「使用者と労働者の合意による場合」を規定していますが、本規定は、一般に労働者が退職の意思を示し、これに使用者が同意した場合と考えられており、使用者の都合による退職要請への労働者の同意がある場合を含んでいないと解されています。
6.バングラデシュ
バングラデシュ労働法で規定されている解雇として、(1)使用者による雇用契約の終了、(2)一時解雇、(3)人員整理、(4)労働者の精神的または身体的な障害により就労が不能な場合、(5)労働者の不正行為や違法行為による解雇、が挙げられます。新型コロナウイルス感染拡大の影響による解雇の場合は、(1)使用者による雇用契約の終了、(2)一時解雇、(3)人員整理が該当すると考えられます。
(1) 使用者による雇用の終了
解雇の理由についての規制は定められておらず、使用者は、以下の措置をとることで、解雇が可能です。
- 無期雇用労働者の雇用を終了する場合
月給労働者の場合は、120日前までの書面による通知、その他の労働者は、60日前までの書面による通知が必要です。労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金または一時給付金の高額な方を補償金として支払わなければなりません。補償金は労働法にて定められている他の給付に加えて支払われます。
2. 非正規雇用労働者の雇用を終了する場合
月給労働者の場合は、30日前までの書面による通知、その他の労働者は、14日前までの書面による通知が必要です。
無期雇用および非正規雇用ともに、通知せずに労働者の雇用を終了したい場合は、上記の通知期間日数の賃金を支払うことで、可能です。
(2)一時解雇
感染症の拡大は、労働法で規定されている一時解雇の理由に該当しませんが、使用者の力が及ばない不測の事態による事業の停止が認められています。業務停止が3日を超える場合は、一時解雇の扱いとなり、更に一時解雇が45日を超える場合は、人員整理により解雇することができます。
勤務期間が1年以上の労働者を一時解雇する場合は、以下の補償金を支払わなければなりません。
1. 一時解雇の期間が1日から45日の場合
週休を除く一時解雇の期間、基本給および手当の半額と住宅手当全額
2. 一時解雇の期間が45日を超えた場合
別段の合意がない限り、46日目以降は、基本給および手当の4分の1と住宅手当の全額
(3)人員整理による解雇
勤務期間が1年以上の労働者に対しては、1か月前に文書による通知または1か月の賃金を支給し、検査官および労働組合(あれば)に通知を提出し、労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金にあたる補償金または一時給付金の高い方を支給しなければなりません。人員整理が一時解雇の代わりになされるときは、通知は不要ですが、さらに15日分の賃金にあたる補償金を上乗せして支払う必要があります。
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