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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限」 TNY Group Newsletter No.28

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 7月28日、全国で114人の死亡、23万3094人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 日本入国時の検疫措置について

 厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。なお、出国前72時間以内の陰性証明書は、滞在していた国・地域にかかわらず全員が提出必要です。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(アルバニア、シエラレオネ)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は7日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

 タイのCOVID-19の累計感染者数は4,579,421名です。この内、4,524,592名が回復し、累計死亡者数は31,227名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は2,000人程度で推移しており、減少傾向にあります。

2.2 入国規制

 7月1日より以下のとおり入国規制が緩和されました。

・入国申請システム「Thailand Pass」廃止

・COVID-19の治療費等を含む医療保険への加入不要

ただし、入国時に、ワクチン接種証明書または渡航前72時間以内に受検した陰性証明書の提示は引き続き必要です。

2.3 日本入国規制

 5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

 タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

 ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 7月25日の新規感染者数は、3,300人でした。直近7日間(19日~25日)の平均は4,127人であり先月に比べ増加傾向にあります。もっとも、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。現在は、屋内や公共交通機関等でのマスクの着用義務や店舗入店時のMySejahteraアプリ(マレーシア政府開発の新型コロナウイルス対策アプリ)の提示、ソーシャルディスタンスの要請などに留まります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報やワクチン接種状況等の必要事項を入力しておくことが必要となります。ワクチン接種完了者には、同アプリ上でデジタルトラベラーズカード(青)が発行され、ワクチン接種未完了者には、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行されます。デジタルトラベラーズカード(青)が発行された場合(ワクチン接種完了者)は、渡航前の陰性証明の取得及び入国後の隔離が不要となりますが、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行された場合は、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要となります。なお、ワクチン接種完了者に加えて、17歳以下の者、COVID-19に感染し回復から6~60日以内の者は、渡航前の陰性証明書の取得及び渡航後の入国時検査が不要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

  COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。入国後の隔離措置について、6月17日より空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)が不要となり、指定の施設等での隔離は不要なりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

7月もCOVID-19新規感染者数は増加の傾向を見せ、7月13日には新規感染者数が37,346 人を記録しました。連邦政府による新たな規制はありませんが、施設内の収容人数制限などを再開した州も見られます。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が増加しておりましたが、現在は落ち着いており、7月28日、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は5名、陽性者は626名で、陽性率は6.83%となりました。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)が、5月17日から全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計376万488人で、死者数は累計60,694人です(2022年7月27日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約1500~3000人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

  ベトナムにおける2022年7月26日午前9時の時点での累計感染者数は1076万8844人で、1か月前の6月25日の時点より2万5953人増加しました。今年3月末から4月末の1か月間では100万人以上増加していたことに比べると、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しており、6月に入ってからは、多くの日で1000人を下回っていますが、7月下旬からはやや増加傾向にあります(7月26日の新規感染者数は1460人でした。)。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。日常生活におけるマスクの着用は一応推奨されており、多くの市民は、商業施設や商店などではマスクを着用していますが、着用していない者も少しずつですが増えているように思われます。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

8.3 ベトナムから日本への帰国者・入国者に対する規制

 日本では、7月26日現在、国籍を問わず外国からの入国者に対する水際対策措置が実施されており、ベトナムは「黄」区分に指定されています。したがって、ワクチン3回目接種者については、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機も不要となっています。ワクチン3回目接種者でない場合は、入国時検査を実施した上で、原則、7日間の自宅等待機を求めることとし、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めないこととされていいます。

第2.各国の監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限

1.日本

 監査役は、一般的には「取締役の職務の執行を監査する業務監査」の権限を有します(会社法381条1項(以下、「会社法」省略します))が、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。監査役の設置義務や、監査権限の範囲などは、会社の形態によって異なる定めがおかれています。

  1. 監査役の設置義務

 取締役会設置会社及び会計監査人設置会社(それぞれ監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)では、監査役を置かなければならないとされています(327条2項本文、同条3項)。ただし、取締役会設置会社であっても、公開会社でない会計参与設置会社では、監査役を置く必要はありません(同条2項ただし書)。なお、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役は置くことができません(同条4項)。

  1. 監査役の選任及び解任

 監査役は、株主総会の普通決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数)で選任されます(329条1項、309条1項、341条)。ただし、解任の場合には、特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数)によらなければなりません(339条1項、309条2項7号)。

  1. 監査役の資格等

 監査役の資格等については取締役の規定が準用されており(335条1項)、以下に該当する場合は、監査役となることができません。

  1. 法人(331条1項1号)
  2. 会社法若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法に規定されている罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者(同項3号)
  3. (b)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)(同項4号)
  4. 成年被後見人が取締役に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合は、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない(331条の2、1項)
  5. 被保佐人が取締役に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない(同条2項)

 監査役の任期は、基本的に、選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終の定時株主総会の終結の時までですが(336条1項)、公開会社でない株式会社において、定款によって、その任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時まで伸長することができます(同条2項)。 

  1. 監査役の権限

 監査役は、取締役の職務の執行を監査することにあります(381条1項)。ただし、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。また、監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができ(381条2項)、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条3項)。

 取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます(385条1項)。

 その他、会計監査人が、職務上の義務に違反し又は職務を怠ったときや会計監査人としてふさわしくない非行があったとき、心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないときは、当該会計監査人を解任することができます(340条1項)。

  1. 監査役の義務

 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社の場合は、取締役会)に報告しなければなりません(382条)。また、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません(383条1項)。さらに、監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならず、この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければなりません(384条)。

 

2.タイ

(1) 業務監査を行う機関

 タイでは、日本の監査役のように業務監査を行う機関はありません。取締役の任免は株主総会においてなされることとされており(民商法典1151条)、株主が業務監査の機能を果たしています。

 一方で、上場会社では、独立取締役3人以上から構成される監査委員会の設置が必要です(Notification of the Capital Market Supervisory Board No. Tor Jor. 39/2559 17条3号)。

(2) 会計監査を行う機関(監査人)の設置条件、資格および権限

 タイでは、全ての会社が監査人(Auditor)を設置しなければならず、創立総会において、最初の監査人の選任をすることが定められています(民商法典1108条6号、公開会社法35条7号)。監査人は、定時株主総会において選任され、再任することができます(同法1209条、公開会社法120条)。

 会社との間に利害関係を有する者、取締役、従業員などは、監査人になることができません(民商法典1208条、公開会社法121条)。また、監査人は、原則として、タイ国公認会計士でなければなりません(会計法11条)。

 監査人は、いつでも会社の帳簿を閲覧する権利を有します(民商法典1213条、公開会社法126条)。また、会社の帳簿などの閲覧について、監査人は、会社の取締役、従業員、代理人などに対して質問し、関連する証拠書類の提出を求める権利を有します(民商法典1213条、公開会社法122条)。

 非公開会社では、監査人により作成された財務諸表は、その基準日の4か月以内に株主総会において承認を受ける必要があります(民商法典1197条)。

公開会社では、監査人は、会計監査法に基づいて作成した報告書を定時株主総会に提出する必要があります(公開会社法123条)。また、監査人により作成された財務諸表は、年度末日後4か月以内に開催する定時株主総会において承認を受ける必要があります(同法112条1項)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおいては、日本の監査役のように業務監査を行う監査役は会社法上存在しません。マレーシア会社法(Companies Act 2016)では、会計面での監査を行う監査人を規定しています。

(1) 監査人の選任

 マレーシアでは、原則として全ての会社は最低1名の監査人を選任し、会社の会計を監査させなければなりません。

 会社は、各会計年度に監査人を選任しなければならず(会社法267条1項及び271条1項)、株主総会普通決議により選任されます(会社法267条4項及び271条4項)。新しく設立された会社の場合は、公開会社であれば年次株主総会の前に(会社法271条2項)、非公開会社であれば最初の財務諸表を会社登記官に提出する30日前に(会社法267条3項)、取締役が監査人を選任する必要があります。

(2) 監査人の権限・義務

 コモンロー上、監査人は、能力及び注意力のある監査人が用いると考えられる技量及び注意を用いなければならならないとされます。また、会社法上も監査人は会社に対して以下の義務を負っています。

 監査人は、決算報告書及び会社の会計及び決算報告書に関する記録について株主に報告しなければなりません(会社法266条1項)。公開会社の場合、監査済会計書類は、年次株主総会で審議される必要があり、非公開会社の場合は、会計済監査書類は株主に回付されるか、又は株主総会で審議される必要があります(同項)。

 なお、会社法266条7項により、監査人は自己が関係する議案について、株主総会に出席して発言する権利を有しています。

 また、会社法285条1項は、公開会社の監査人に対して年次総会に出席する義務を課しています。監査人は、総会において、会計書類について株主の質疑に応答する必要があります(同項)。非公開会社については、年次総会は開催されませんが、株主総会において会計書類の監査に関する審議がされる場合、監査人は出席する義務を負います(会社法285条2項)。

(3) 監査人事務所

 会社法264条4項に基づき、会社は事務所(firm)を監査人として選任することが認められています。事務所を監査人とする場合、選任時に当該事務所のパートナーだった者を監査人に選任したのと同等の効果を有します(会社法264条6項)。したがって、事務所のパートナー全員が監査人として承認され、かつ、欠格事由に該当しないことが必要となります。

 また、会社はLLP(Limited Liability Partnership)を監査人として選任することも可能です(同条7項)。

 

4.ミャンマー

(1) 監査役の有無

 ミャンマーにおいては日本の監査役のように業務監査を行う監査役は会社法上存在せず、会計面での監査を行う監査人(auditor)が規定されています。

(2) 監査人の設置条件、資格および権限

 会社は、株主総会において次年度の株主総会まで任期を務める監査人を選任しなければならず、監査人は必要的機関です。なお、監査人は、清算に関する会社法235条、236条及び237条の場合を除き、役員には含まれません。

公開会社(公開会社の子会社である非公開会社を含む)の場合は、大統領により会社の監査人として行為する証明書を交付された者でなければならないものの、非公開会社の場合にはかかる制限規定は存在しません。

 また、以下の者は監査人に就任できません。

【監査人非適格者】

1 当該会社の取締役又は役員
2 当該会社の取締役又は役員の配偶者
3 公開会社(公開会社の子会社を含む)の場合、上記取締役又は役員により雇用されている者
4 当該会社の債務者

(3) 監査人選任手続

定時株主総会において監査人を選任します。選任方法としては、株主は、会社に対し、定時株主総会開催日の14日前までに監査人の職に任命する候補者を通知します。会社は、退任する監査人に当該通知の写しを送付し、かつ、公告又は附属定款で規定するその他の方法により、定時株主総会の7日前までに株主に通知します。

会社設立後最初の株主総会までの期間を任期とする監査人は取締役が任命することができます。 また、監査人の補充の必要が生じた場合、取締役は監査人を補充できます。

 

5.メキシコ

本稿では、商事会社一般法(Ley General Sociedades Mercantiles)に定める監査機関を解説します。

(1) 監査を行う機関

メキシコには、日本の監査役に相当する取締役の職務執行の監査を担う機関として、監査役(Comisario)という機関が存在します。

一部、証券市場法(Ley de Mercado de Valores)などに従い、一定の条件を満たす機関設計を行った法人の場合、当該監査役とは異なる監査機関の設置が求められますが、本稿ではその詳細は割愛します。

(2) 監査役

① 設置が求められる会社形態

監査役は、株式会社(Sociedad Anónima)および株式合資会社(Sociedad en Comandita por Acciones)において設置が求められます。日本とは異なり、メキシコにおいては、取締役会が設置されなくても株式会社あるいは株式合資会社であれば監査役の設置が求められます。

② 監査役の資格

監査役には、公認会計士などの資格は要求されておらず、株主または第三者であってもよいとされています。ただし、次の者は監査役にはなれません。

  • 法律上、取引を行う資格がない者。

取引を行う資格がない者は、公的仲介人(Corredor Público:商取引において、鑑定人としての役割、法的助言を与える役割、紛争の仲介人としての役割および公証人としての役割を果たすメキシコ連邦政府から認可された法律の専門家)、更生していない破産者、偽造、横領、収賄、強要など財産に対する犯罪で有罪判決を受けた者と規定されています。

  • 当該会社の従業員、当該会社の株式の25%以上を保有する会社の従業員、または当該会社が50%以上の株式を保有する会社の従業員。
  • 取締役の直系血族、4親等以内の傍系血族と2親等以内の姻族。

③ 監査役の権限および義務

監査役は、取締役の職務執行および会計の監査を行うために、以下のような権限および義務を有します。

  • 会社の業務の管理・遂行・執行を監督すること。
  • 株主が、監査役に対し、経営に不正があると思われる事実を書面で告発した場合、監査役は、株主総会への報告書にその旨を記載し、必要と思われる事項および議案を定めること。
  • 取締役の職務執行への保証を確保・維持し、不正があった場合には遅滞なく株主総会に報告すること。
  • 招集される取締役会のすべての会議に、発言権をもって出席すること。ただし、議決権は有しません。
  • 株主総会には、発言権をもって出席すること。ただし、議決権は有しません。
  • 取締役会および株主総会の議題に、適当と考える事項を加えること。
  • 取締役が招集しない場合その他適当と判断した場合には、株主総会を招集すること。
  • 業務の監視を行うために必要な業務、文書、記録その他の証拠の調査を行い、監査役の報告を行うことができるようにすること。
  • 取締役に対し、少なくとも財務状況の報告書と決算書を含む月次情報を要求すること。
  • 定時株主総会前に、以下の内容を含む監査役の報告を行うこと。
    1. 会社の特定の状況を考慮して、会社の会計および報告の方針および基準が適切かつ十分であるかどうかについての監査役の意見。
    2. 取締役が提示した情報の中で、それらの方針や基準が一貫して適用されているかどうかについての監査役の意見。
    3. 上記の結果、取締役が提出した情報が、会社の財政状態および経営成績を如実かつ十分に反映しているかどうかについての監査役の意見。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュの会社法では、会計書類を調査する監査人(Auditor)の設置が義務づけられていますが、日本の会社法上の監査役のように、業務監査を行う機関は定められていません。会社法にて規定されている会社秘書役(Company Secretary)の主な役割や責任のひとつに「会社のコンプライアンスに関する対応」があり、Chartered Secretaries Act 2010に基づき設立されたInstitute of Chartered Secretaries of Bangladesh (ICSB)が発行している「BANGLADESH SECRETARIAL STANDARD(BSS)」にて、会社秘書役によって会社が遵守すべき事項が定められております。コンプライアンスという観点で、会社が任意に会社秘書役を選任することができます。なお、公開会社では、会社秘書役の選任が必要とされています。

  1. 監査人の適格要件

 監査人は、バングラデシュ公認会計士法(Bangladesh Chartered Accountants Order, 1973)における公認会計士またはパートナー全員が公認会計士である会計事務所のいずれかであることが要件となっています(会社法212条(1)(以下、本項において会社法については条文番号のみを記すものとします))。また、当該会社の役員又は従業員、当該会社の役員又は従業員のパートナーもしくは雇用関係にある者、当該会社に債務がある者若しくは当該会社に対する第三者の債務を保証している者、当該会社のマネージングエージェントである法人の取締役や株主である者等は、監査人に就任することができません(同条(2))。

     2. 監査人の選任と報酬

 会社は、株主総会にて、次の株主総会までが任期となる1人または複数の監査人を選任し、選任から7日以内に、選任した監査人にその旨を通知しなければなりません。なお、選任のためには、本人が事前に書面で同意する必要があります(210条(1))。選任された監査人は、選任の通知を受けた日から30日以内に、商業登記所に対して書面にて諾否について通知しなければなりません(同条(2))。なお、株主総会にて監査人が選任されない場合、政府が任命することができます(同条(4))。

会社の最初の監査人は会社の登記の日から1か月以内に取締役会により任命され、任命された監査人の任期は、最初の定時株主総会の終結時までとされています(同条(6))。取締役会は、監査人に欠員が生じた場合、当該欠員を補充することができますが、欠員が続く場合、残存する監査人が務めることができ(同条(7))、任期は次の定時株主総会までとなります(同条(8))。任期中の解任は、株主総会の特別決議によってのみ行うことができます(同条(9))。

株主総会にて任期が終了する監査人は、次に該当する場合を除き、再任されなければならないとされています。① 再任の不適格事由に該当することとなった場合、② 監査人本人による再任を受諾しない旨の書面による通知、③ 他の者を任命する決議又は現在の監査人を再任しない旨を明示的に示した決議がなされたこと。また、会社は、監査人の死亡、能力欠如、不正等を理由に再任しないことを決議することができます(同条(3))。

株主総会にて、現任の監査人以外の者を任命するまたは現任の監査人を再任しない決議のためには、特別な通知が必要で(211条(1))、当該通知を受けた監査人は、株主に対して意見を表明することを要求できます。会社は、当該要求を受けた場合は、期限を過ぎたものでない限り、株主総会の招集通知において、意見がなされた旨およびその内容を記載しなければなりません(同条(3))。

監査人の報酬は、原則として株主総会の決議又は株主総会で決定された方法により決定されますが、監査人が取締役会又は政府により任命された場合は、それぞれ取締役会又は政府により決定されます(210条(10))。

      3. 監査人の権限および責務

 会社の監査人は、会社の財務諸表、帳簿及び帳票をいつでも閲覧できる権利を有し、また、会社の役員に対して、監査人の職務遂行のために必要な情報及び説明を求める権利を有します(213条(1))。監査人は会社が作成する決算書や会計帳簿などの監査を行い、監査報告書を作成し、貸借対照表や損益計算書とともに、株主総会に提出し、決算書について監査人としての適正な意見を表明しなければなりません(同条(3))。 

 

7.フィリピン

  1. 財務役(Treasurer)制度

フィリピンでは、株式会社は、役員として、社長、財務役及び秘書役を選任する必要があります。社長は、財務役を兼任することはできませんが、財務役は、取締役である必要はありません。財務役は、国籍及びフィリピン国内居住の有無を問わず就任することができます。

財務役は、財務報告書類の正確性を確認し、署名・提出する義務や、会社預金の管理、会計帳簿の保管する職務を担いますが、それを監査をする権限及び義務を負いません。

      2. 財務諸表の監査制度

フィリピンでは、事業年度の終了日から120日以内に、監査済財務諸表をSECに提出する必要があります。かかる監査は、監査役等のような会社内部の役員によってなされるのではなく、原則独立した外部の資格のある公認会計士によってされる必要があり、株主総会による承認を得る必要があります。

 

8.ベトナム

(1) 有限責任会社の監査役

 日系企業がベトナム設立する現地法人の多くは1人社員有限責任会社又は2人以上社員有限責任会社ですが、いずれの形式であっても監査役を設置する義務はありません(2020年に企業法が改正される前は、社員が11名以上の有限責任会社については監査役・監査役会の設置が義務付けられていましたが、改正により撤廃されました。)。

 但し、国営企業が会社所有者である1名有限責任会社、国家が定款資本若しくは議決権の50%を超えて有する2名以上社員有限責任会社、又は国営企業の子会社である2名以上社員有限責任会社については、監査役・監査役会の設置が義務付けられています。

(2) 株式会社の監査役

 株式会社の場合、株主数が11名未満であり、かつ、各株主の保有株式数が会社の株式総数の50%未満である場合、監査役・監査役会の設置は任意とされています。その他の場合、監査役を選任して監査役会を設置するか、取締役の20%以上を独立取締役(会社と一定の関係を有しない取締役)とし、かつ、取締役会に直属する会計監査委員会を設置しなければならないとされています。

 監査役会を設置する場合、監査役の人数は3名から5名とし、任期は5年を超えない範囲とされています(再任は可能)。また、監査役会の過半数はベトナムに常駐している監査役でなければならず、監査役会の長は、経済、財政、会計、監査、法律、企業管理の専門又は企業の経営活動と関連する専門の中の1つに属する大学以上を卒業していなければならないとされています。

 一方、会計監査委員会を設置する場合、構成員は2名以上とし、会計監査委員会の会長は独立取締役(一定の要件を満たし、就任前に会社と密接な関係を有していない取締役)でなければならず、また、会長以外の構成員は、非常勤の取締役会の構成員でなければならないとされています。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年7月27日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合に限る)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 日本入国時の検疫措置について

 厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。なお、出国前72時間以内の陰性証明書は、滞在していた国・地域にかかわらず全員が提出必要です。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、
マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(パキスタンほか)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は7日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

 タイのCOVID-19の累計感染者数は4,515,890名です。この内、4,462,388名が回復し、累計死亡者数は30,610名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は2,000人程度で推移しており、減少傾向にあります。

2.2 入国規制

 6月1日より以下のとおり入国規制が緩和されました。

  1. ワクチン規定回数接種済の者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

  • 規定回数のワクチン接種を証明するワクチン接種証明書
  • COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ渡航前および入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

      2. ワクチン規定回数未了、ワクチン未接種者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

  • 渡航前72時間以内に実施したRT-PCR検査または専門機関による抗原検査 (Professional-ATK)による陰性証明書
  • COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

7月1日より、さらに入国規制が緩和されます。Thailand Passが撤廃され、COVID-19の治療費等を含む医療保険が不要となります。ただし、入国時に、ワクチン接種証明書または渡航前72時間以内に受検した陰性証明書の提示は引き続き必要です。

2.3 日本入国規制

 5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

 タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

 ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 6月26日の新規感染者数は、2,003人でした。直近7日間(20日~26日)の平均も2,293人であり先月に比べれば微増しており、保健省はさらなる増加に警戒を強めています。

 もっとも、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。現在は、屋内や公共交通機関等でのマスクの着用義務や店舗入店時のMySejahteraアプリ(マレーシア政府開発の新型コロナウイルス対策アプリ)の提示、ソーシャルディスタンスの要請などに留まります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報やワクチン接種状況等の必要事項を入力しておくことが必要となります。ワクチン接種完了者には、同アプリ上でデジタルトラベラーズカード(青)が発行され、ワクチン接種未完了者には、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行されます。デジタルトラベラーズカード(青)が発行された場合(ワクチン接種完了者)は、渡航前の陰性証明の取得及び入国後の隔離が不要となりますが、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行された場合は、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要となります。なお、ワクチン接種完了者に加えて、17歳以下の者、COVID-19に感染し回復から6~60日以内の者は、渡航前の陰性証明書の取得及び渡航後の入国時検査が不要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。入国後の隔離措置について、6月17日より空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)が不要となり、指定の施設等での隔離は不要なりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

6月に入りCOVID-19新規感染者数は増加の傾向を見せ、第5波の到来と注意が呼びかけられていますが、新たな規制はありません。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が増加しており、6月21日に20日ぶりにCOVID-19による死亡が報告されました。6月27日、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は2名、陽性者は2,101名で、陽性率は15.20%となりました。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)が、5月17日から全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計370万1743人で、死者数は累計60,518人です(2022年6月27日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約500~1000人程度の新規感染者が報告されています。

 また、5月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル1」とされています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

 日本においては、6月1日以降、以下のとおり新たな水際対策措置が実施されます。水際対策措置の見直しにより、「赤」・「黄」・「青」の区分が決定され、フィリピンは「青」に指定されることとなりました。したがいまして、フィリピン出国前72時間以内に受けた検査結果証明書を提出することにより、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機を求めないこととなります。ワクチン接種の有無は問いません。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年6月27日時点での累計感染者数は1074万3448人で、1か月前の5月27日の時点より2万8201人増加しました。3月末から4月末の1か月間では100万人以上増加していたことに比べると、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しており、6月に入ってからは、ほとんどの日で1000人を下回っています。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。日常生活におけるマスクの着用は一応推奨されており、多くの市民は、商業施設や商店などではマスクを着用していますが、着用していない者も少しずつですが増えているように思われます。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は2020年7月1日から撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

8.3 ベトナムから日本への帰国者・入国者に対する規制

 日本では、6月28日現在、国籍を問わず外国からの入国者に対する水際対策措置が実施されており、ベトナムは「黄」区分に指定されています。したがって、ワクチン3回目接種者については、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機も不要となっています。ワクチン3回目接種者でない場合は、入国時検査を実施した上で、原則、7日間の自宅等待機を求めることとし、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めないこととされていいます。

第2.各国のセクシュアル・ハラスメントに関する法規制の概要

1.日本

 「職場におけるセクシャルハラスメント」とは、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け(例:事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇すること)、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること(例:事務所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと)とされています(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針1条)。

(1) 事業主の講ずべき措置等(男女雇用機会均等法)

 男女雇用機会均等法11条では、職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等として、事業主は、i) 職場におけるセクシャルハラスメントに関し、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない(1項)、ii) 労働者がセクシャルハラスメントの相談を行ったこと等を理由として、当該労働者に対して不利益な取扱いをしてはならない(2項)、iii) 他の事業主から当該事業主の講ずる措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない(3項)と規定しています。また、男女雇用機会均等法第11条の2では、職場におけるセクシャルハラスメントに関する事業主の責務として、i) 性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる措置に協力するように努めなければならない(2項)、ii) 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、性的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない(3項)と規定しています。

(2) 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)

 本指針では、男女雇用機会均等法11条に規定されている事業主が講ずべき措置について、具体的に示しています。

(a) 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発(同指針4条1項)

  1. 職場におけるセクシャルハラスメントの内容・セクシャルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
  2. セクシャルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

(b) 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(同指針4条2項)

  1. 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
  2. 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に、広く相談に対応すること

(c) 職場におけるセクシャルハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応(同指針4条3項)

  1. 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  2. 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと
  3. 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと
  4. 再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も同様)

(d) (a)から(c)までの措置を併せて講ずべき措置(同指針4条4項)

  1. 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること
  2. 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること 

(3) セクシャルハラスメント被害の相談を受けたときの対処法

 上記(2)(c)にある通り、まず、事実関係の確認が必要です。被害者からだけではなく、行為者(加害者)や職場の同僚などから話を聞き、事実関係を正確に把握することが重要です。その際に、被害者や行為者のプライバシーが守られるようにしなければなりません。また、被害者の精神的ダメージが大きい場合などは、本人の希望を踏まえて、専門医への相談も考えられます。また、被害者が、相談したことを理由として不利益な扱いをされないようフォローすることも必要です。行為者に対する措置については、事実確認の結果に基づき、席の移動などの対応から、配置転換、重大なケースの場合は懲戒処分も考えられます。更に、再発防止に向けた措置の見直しや強化が求められます。

 

2.タイ

(1) 労働保護法による罰則

 タイでは、会社に対してセクシュアル・ハラスメントへの対策を講じる義務を定めた法律やガイドラインなどはありません。ただし、労働保護法(The Labour Protection Act)において、職場におけるセクシュアル・ハラスメントに関する規定があります。

タイでは、一定の地位を有する者に罰則を科す形で、職場におけるセクシュアル・ハラスメントを規制しています。同法第16条は、「雇用主、上司、管理者、または監督者は、従業員に対して性的虐待、ハラスメント、または迷惑行為を行うことを禁じる。」と規定しています。また、同法 第147条は、「第16条に違反した者は、2万バーツ以下の罰金に処する。」と規定しています。

(2) 刑法による罰則

セクシュアル・ハラスメントは、刑法上の処罰の対象となる場合もあります。刑法第397条により、セクシュアル・ハラスメントの可能性を示す態様で、他人に迷惑をかけたり、いじめたり、脅迫したり、恥辱、トラブルおよび迷惑により苦しませたりする行為をした者は、1年以下の懲役もしくは1万バーツ以下の罰金、またはその両方が科されます。また、司令官、雇用主その他優位な権限を有する者が、その権限を利用して前記行為を行った場合には、1年以下の懲役および1万バーツ以下の罰金の両方が科されます。

さらに、より重い態様であるわいせつ行為については、同法第278から279条に規定されています。15歳以上の者に対して暴行、脅迫等の手段を用いてわいせつな行為をした者は、10年以下の懲役もしくは20万バーツ以下の罰金またはその両方が科されます。その上、被害者の年齢、行為態様によって刑罰が加重されます。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおけるセクシュアル・ハラスメントに関する法規制は、雇用法(Employment Act 1955)によって規律されます。

(1) 定義

 雇用法は、「セクシュアル・ハラスメント」(以下「セクハラ」という)を、「言葉的か否か、視覚的か否か、身振り又は物理的接触のいずれかを問わず、勤務の過程にある 人物に向けられた、攻撃的若しくは屈辱的若しくはその人物の幸福を脅かす、その人物の望まない性的なふるまいをいう。」と定義しています(雇用法2条)。そして、セクハラの申立てには、①労働者から他の労働者に対して、②労働者から使用者に対して、③使用者から労働者に対するものの3類型が含まれます(雇用法81A条)。

(2) 使用者の義務等

 セクハラの申立てがあった場合、使用者又はこれに準ずる者は、大臣が定める方法によって当該申立てについて調査しなければならない(雇用法81B条)。

 調査の結果、セクハラの存在が証明されたと考えるときは、使用者は①セクハラを行なった者が労働者であるときは、予告期間を設けない解雇、降格又は解雇・降格よりも軽い処分(無給の自宅待機処分の場合にはその期間は2週間を超えてはならない。)のいずれかの懲戒処分を、②セクハラを行なった者が労働者以外の者である場合にはその人物が所属する適切な懲戒主体に処分を委ねるものとされています(雇用法81C条)。

(3) 被害者への救済

 使用者が調査を拒否した場合、申立てを行なった者は労働局長に対して申立てをすることができ、労働局長に対して申立てがなされた場合、労働局長は使用者に対し調査を命じることができます(雇用法81D条)。また、セクハラを行なった者が個人事業主たる使用者であった場合、労働局長は人的資源大臣が定める方法により自ら調査を行います(同条)。

 また、連邦裁判所は2016年にセクハラを理由とする損害賠償請求を肯定しているため、被害を受けた労働者は加害者に対し直接損害賠償を求める訴訟を起こすことにより救済を受けられる可能性があります。

(4) セクハラに関する掲示

 2022年改正雇用法(Employment (Amendment)Act 2022)により、使用者は、常時、セクハラ防止に関する啓発のための掲示物を就業場所の見やすい場所に掲示しなければなりません。

 

4.ミャンマー

(1) 法規制の有無

 ミャンマーにおいてはセクシュアル・ハラスメントに関して法令は存在しません。

(2) 一般法との関係

 セクシュアル・ハラスメントに関する規定はないものの、当該行為が不法行為に該当する場合には、コモンローに基づく損害賠償請求の対象となり得ます。また、使用者は労働者に対して健康で安全な職場環境を維持する義務を負うため、セクシュアル・ハラスメントを予防する環境整備が求められます。

 

5.メキシコ

(1) セクシュアル・ハラスメントの概念

メキシコの法令において、いわゆるセクシュアル・ハラスメントと呼ばれるものについて、hostigamiento sexual とacoso sexual という2つの概念が使用されています。

暴力のない生活に対する女性の権利に関する基本法(Ley General de Acceso de las Mujeres a una Vida Libre de Violencia)においては、hostigamiento sexualとは、職場や学校において、被害者が加害者に実質的に従属する関係のもと、権力が行使されることであり、淫らな意味合いを持つ性的な行為に関連する口頭や身体的な行為、またはその両方で表現されるものを指すとされています。他方、acoso sexualとは、被害者と加害者の間に従属関係はないものの、行使の回数を問わず、被害者が無防備で危険な状態に陥るような乱暴な権力行使が行われる暴力の一形態であるとされています。

連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)では、hostigamiento sexualの定義はないものの、ハラスメント(hostigamiento)が、仕事上の従属関係下における権力の行使であって、口頭や身体的な行為、またはその両方で表現されると定義されていることから、上記暴力のない生活に対する女性の権利に関する基本法とほぼ同義で使用されていると考えられます。ただし、行為の場所は職場に限定されます。acoso sexualについては、上記暴力のない生活に対する女性の権利に関する基本法と同様の定義がなされています。

以上から、hostigamiento sexualは加害者と被害者の間に上司と部下などの従属関係が求められる一方、acoso sexualにはそのような従属関係が求められません。なお、本稿では、hostigamiento sexual、acoso sexual、あるいは、その両方を指して「セクシュアル・ハラスメント」と記します。

(2) セクシュアル・ハラスメントに関する労働法上の権利義務関係

連邦労働法は、使用者らが、職場において、セクシュアル・ハラスメントを行うこと、セクシュアル・ハラスメントを許容することを禁止しています。また、労働者も、職場において、セクシュアル・ハラスメントを行うことが禁止されています。

労働者が職場において、セクシュアル・ハラスメントを行った場合、使用者は、当該労働者を、責任を負わずに解雇することができます。また、使用者らが、労働者らに対してセクシュアル・ハラスメントを行った場合、当該労働者は責任を負うことなく雇用関係を終了させることができます。

さらに、使用者は、性別に基づく差別を防止し、暴力やセクシュアル・ハラスメントの事例に対処するためのプロトコルを労働者との合意のもと策定し、実施することが求められています。これに関連し、労働社会福祉省(Secretaría del Trabajo y Previsión Social)は、「職場での暴力を防止、対応、根絶するためのモデルプロトコル(Modelo de Protocolo para prevenir, attender y erradicar la violencia laboral en los centros de trabajo)」を発行*しており、この中には、ハラスメント事例の対応手順やハラスメント発見のためのモデル質問票なども用意されています。企業は、このモデルプロトコルを参考にプロトコルを作成することが推奨されます。

* https://www.gob.mx/stps/documentos/modelo-de-protocolo-para-prevenir-atender-y-erradicar-la-violencia-laboral-en-los-centros-de-trabajo

(3) セクシュアル・ハラスメントと刑法上の犯罪

連邦刑法(Código Penal Federal)は、仕事、教育、家庭、その他従属を示す上下関係に乗じて、性別を問わず人に対して、淫らな目的で嫌がらせを繰り返した者は、UMA日額(2022年度は96.22ペソ)の800倍以下の罰金に処すると規定するものの、セクシュアル・ハラスメント(hostigamiento sexual)については、損失や損害が生じた場合にのみ処罰の対象とすると限定されています。

また、メキシコ市刑法(Código Penal para el Distrito Federal)は、自己若しくは第三者のために性的な好意を要求し、または性的な性質を有する行為で、受ける者にとって望まない性的な行為を行い、その者の尊厳を傷つける精神的・感情的な苦痛を与えた者は、1年以上3年以下の懲役に処すると規定しています。加害者と被害者の間に、仕事、教育、家庭、その他の従属関係から生じる上下関係がある場合には、この刑の3分の1が加重されます。

 

 

6.バングラデシュ

(1) セクシャルハラスメントの関連法令

 バングラデシュでは、セクシャルハラスメントについて規定する法令はありませんが、関連するものとして、以下が挙げられます。

法 令 規 定
刑法1860年第509条 「女性の謙虚さを侵害する」ことを目的とした行為、
言葉、態度を犯罪とし、1年以下の懲役及び罰金が科せられます
Nari-O-Shishu Nirjatan Daman Ain 2000
(女性及び子供の抑圧防止法)第10条
「Jounopiron」(一般に「性的抑圧」と訳される)
と呼ばれる行為を犯罪とし、女性又は子供(身体の一部又は対象物)
に触れる行為又は性的欲求を不法に満たすために女性の謙虚さを
侵害する行為を犯罪としています
バングラデシュ労働法2006年第332条 いかなる事業場のいかなる者も、雇用されている女性に対して、
下品又は無礼に見える可能性のある行為、その女性の謙虚さ又
は名誉を害する行為をしてはならないと規定しています。
しかし、この規定は、女性が職場で直面する嫌がらせや暴力に
ついて具体的に言及しておらず、罰則も25,000タカの罰金と限定的です

 その他、2009年に、高等裁判所は、大学のキャンパスや職場において女性に対するセクシャルハラスメントが蔓延していることに異議を唱えるバングラデシュ全国女性弁護士協会(BNWLA)による請願書を受け、職場及び教育機関におけるセクシャルハラスメントの禁止、防止及び是正に関する11ポイントの指令(以下「ガイドライン」)を発行しました(29 BLD HCD 415)。

(2) ガイドラインの概要

 セクシャルハラスメントに関する啓発を目的とし、バングラデシュ国内の全ての職場及び教育機関を対象として発行されました。憲法は男女平等を保障しており、使用者の義務として、性的虐待及びハラスメントの犯罪を防止又は阻止するために有効なメカニズムを維持し、セクシャルハラスメントの犯罪の訴追のための効果的な措置を提供しなければならないとしています。

 セクシャルハラスメントの定義には、性的な理由に基づく身体的接触、性的な意味合いをもつ言葉などによる表現、権限の濫用により性的な性質を伴う身体的関係を持つことを試みること、ストーカー行為、愛のプロポーズの拒否を理由として脅迫すること、脅迫によって性的関係をもつこと等、幅広い行為が含まれています。

 全ての使用者、職場の責任者、教育機関は、セクシャルハラスメントを防止するための効果的な対策を講じなければならないとされ、i) セクシャルハラスメント禁止の効果的な周知、ii) ジェンダー差別及びセクシャルハラスメントに対する憲法の規定及び罰則規定についての周知、iii) 職場や教育機関が女性に対して敵対的な環境でないことを保証し、女性の労働者や学生が男性の同僚や学生と比較して不利な立場に置かれていないという自信と信頼を生み出すこと、が定められています。

 また、セクシャルハラスメントに関する調査及び提言を行う5名以上で構成される苦情処理委員会を設置することとされています。同委員会の委員の過半数は女性で、適任者がいれば女性を委員長とするとしています。セクシャルハラスメントの被害者は、その事実が生じた日から30日以内に同委員会に訴えることができ、委員会は、苦情を受けてから原則として30日以内に、各組織の担当部署に調査報告書を提出しなければなりません。 

 

7.フィリピン

 職場におけるセクシャルハラスメントは、主に1995年反セクシャルハラスメント法によって規制されます。

反セクシャルハラスメント法では、被害者の行為への同意は重要ではなく、重要なのは、その行為が上司等権限や影響力のある立場の者によって行われたことである点には注意が必要です。被害者の同意があったからといって直ちに免責されません。

同法においてセクシャルハラスメントとされる行為には、以下のようなものがあります。

    1. 雇用の条件、または利益や特権の付与の前提条件となり得る性的要求、あるいは要求を拒否することで従業員や学生に悪影響を及ぼすような性的要求をすること
    2. 従業員に対して不快感、敵意または脅迫を感じる職場環境を作り出すような性的な行為

 加害者を教唆、誘導、幇助した者は、その行為を行った者と同等の責任を負い、被害者からハラスメントについて知らされていたにもかかわらず、直ちに改善等の対応をしなかった場合、雇用主も責任を負う点には注意が必要です。

 同法に基づくすべての行為は、1ヶ月から6ヶ月の禁固刑、または1万ペソから2万ペソの罰金、もしくはその両方で処罰されます。また、被害者は独自に損害賠償請求訴訟を起こすことができます。

なお、2019年Safe Spaces法が、より広く公共の場での性別に基づくセクシャルハラスメントを、加害者の意図に関係なく、「いかなる人に対しても望まれない性的な行為や発言」と定義し規制しています。これらは、職場においてなされる場合を含みます。

 Safe Spaces法のよる罰則は反セクシャルハラスメント法に基づくものと比較して一般に軽いものとされていますが、Safe Spaces法に規定されるセクシャルハラスメントは、加害者が、権限や影響力がある者である必要がなく、より広範で一般的な定義となっていることには注意が必要です。Safe Spaces法ではオンラインでのセクシャルハラスメントも明記されています。

 Safe Spaces法においても、雇用主は、性別を理由とするセクシャルハラスメント行為を行った場合の責任に加え、報告されたセクシャルハラスメントに対処しないことによる責任を負う可能性があります。

 

8.ベトナム

(1) 職場におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等の措置

 使用者は、職場におけるセクシュアル・ハラスメントの予防策及び対応策を策定しなければならないとされています(労働法6条2.d)。また、10人以上の従業員を使用する場合、就業規則を書面で作成し、かつ、各地方の労働局に登録しなければならないとされていますが(労働法118条1.、119条1.)、その就業規則の中で、「職場におけるセクシュアル・ハラスメントの予防・対応、職場におけるセクシュアル・ハラスメント行為の処分の手順、手続」について定めなければならないとされています(労働法118条2.d)。そして、使用者は、就業規則に違反してセクシュアル・ハラスメントを行った従業員を解雇することができます(労働法125条2.)。

 一方、セクシュアル・ハラスメントの被害を受けた従業員は、事前に通知することなく雇用契約を一方的に解除することが可能です(労働法35条2.d)。

(2) 職場におけるセクシュアル・ハラスメント行為に対する制裁

 職場でセクシュアル・ハラスメントを行った者については、政府より1500万〜3000万ベトナムドンの罰金が科されます。一方、家事代行業者(メイドサービス)や、家事代行業者を通すことなく直接メイドと契約して家事代行を依託している者がメイドに対してセクシュアル・ハラスメントを行った場合の罰金額は、5000万〜7500万ベトナムドンとなっています。

 なお、これらの制裁が科されるのは、セクシュアル・ハラスメント行為が刑事訴追の対象とはならなかった場合です。刑事訴追の対象となった場合、最高で5年間の懲役刑が科される可能性があります。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年6月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の新規入国制限の見直しについて

外国人の新規入国について、これまで下記(a)又は(b)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めていましたが、5月26日付で(c)が追加され、6月10日より開始されます。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合に限る)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(a) 入国後の自宅等待機期間の変更

  1. 検疫所の宿泊施設での待機対象となっている国・地域(以下「指定国・地域」)から帰国・入国する方で、COVID-19のワクチンを3回接種していない方は、指定の宿泊施設での3日間待機が求められます。宿泊施設で受けた検査の結果が陰性であれば、退所後の自宅等待機は求められません。
  2. 指定国・地域から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  3. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していない方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  4. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、入国後の自宅等待機を求められません。

厚生労働省HP 検疫所が確保する宿泊施設で待機を求める指定国・地域

     (2)入国後の公共交通機関の使用について

 上記(a) ii)及びiii)に該当する方は、入国後の待機のため自宅等まで移動する際は、公共交通機関の使用が可能となります。

厚生労働省 HP 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,434,515名です。この内、4,358,396名が回復し、累計死亡者数は29,913名となっています。現在、1日の感染者数の平均は5,000人程度で推移しており、減少傾向にあります。

2.2 タイ入国規制

 5月1日より、タイ入国規制が緩和されております。ただ、Thailand Passによる事前申請は継続となっています。内容は以下のとおりです。

・ワクチン規定回数接種済の者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

規定回数のワクチン接種を証明するワクチン接種証明書

COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ渡航前および入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

・ワクチン規定回数未了、未接種者で、渡航前72時間以内のRT-PCR検査結果陰性の者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

渡航前72時間以内に実施したRT-PCR検査陰性証明書

COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

タイ入国後のPCR検査については免除。隔離措置も免除。

・ワクチン規定回数未了、未接種者

下記について準備した上で、Thailand Passにて事前申請が必要。

隔離施設予約書類(5日間以上)

タイ入国後のRT-PCR検査1回分の費用支払書類

COVID-19の治療費等を含む1万USドル以上を補償する医療保険

2.3 日本入国規制

5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 5月26日の新規感染者数は、1,845人でした。直近7日間(20日~26日)の平均も1,948人であり現在は落ち着いている印象です。新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限令であるNRP(National Recovery Plan(以前はFMCOと呼ばれていました))では、ケランタンとサラワクは第三段階の規制下にあり、この2つの州以外の全ての州は一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報等の必要事項を入力しておくことが必要となります。5月1日からは、18歳以上のワクチン接種完了者(2回以上)、17歳以下の者、COVID-19に感染し回復から6~60日以内の者は、渡航前の陰性証明書の取得及び渡航後の入国時検査が不要となりました。18歳以上のワクチン接種未完了者(健康上の理由で接種できない者を除く)は、陰性証明書の取得が必要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開される予定です。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。入国後の隔離措置について、5月1日より空港到着時に迅速抗原検査(RDT 検査)を行い、検査結果が出るまで 1 時間ほど空港内で待機し、陰性であれば即時入国が可能となり、指定の施設等での隔離は不要なりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

 4月26日にエンデミックが宣言され、多くの州でマスク着用などの要請が緩和されています。

5.2 入国規制

 メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が減少し、5月26日は、24時間以内の死者は0名で、陽性率は0.65%です。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)が、5月17日から全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計368万9865人で、死者数は累計60,455人です(2022年5月27日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約100~200人程度の新規感染者が報告されています。

 また、5月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル1」とされています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

 日本においては、6月1日以降、以下のとおり新たな水際対策措置が実施されます。水際対策措置の見直しにより、「赤」・「黄」・「青」の区分が決定され、フィリピンは「青」に指定されることとなりました。したがいまして、フィリピン出国前72時間以内に受けた検査結果証明書を提出することにより、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機を求めないこととなります。ワクチン接種の有無は問いません。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 ベトナムにおける2022年5月28日時点での累計感染者数は1071万6361人で、1か月前の時点(4月28日)より7万7729人増加しました。3月末から4月末の1か月間では100万人以上増加していたことに比べると、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しており、5月に入ってからは、多い日で3000人程度、少ない日では1000人程度となっています。

 以前より死者数や重傷者数の増加が抑えられていたことに加え、新規感染者数も大幅に減少したことから、社会・経済活動、市民生活において新型コロナに関連する規制の多くが撤廃されています。最大都市ホーチミン市でも、少し前までは大規模なビルや商業施設の入口で検温や健康申告アプリの確認、 QRコードのスキャン などが実施されていましたが、現在ではそのような光景はほとんど見られません。

8.2 入国規制

 ベトナム政府は、2022年3月15日より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限を撤廃し、コロナ前の入国手続に戻しました。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は2020年7月1日から撤廃されています。

第2.各国における取締役に関する法規制の概要

1.日本

(1) 取締役の要件

(a) 人数

 株式会社は、1名又は2名以上の取締役を置かなければならないと規定されていますが(会社法326条1項(以下、本項において会社法については条文番号のみを記すものとします))、取締役会設置会社において、取締役は3名以上とする必要があります(331条5項)。さらに、取締役会において特別取締役による決議の定めを設ける場合は、6名以上(うち1名以上が社外取締役であること)とする必要があります(373条1号2号)。株式譲渡制限会社である非公開会社は、取締役会設置の義務がなく、取締役会不設置の場合、取締役の人数は1名以上となります。

(b) 国籍

 取締役の国籍について特に規定はありませんので、外国籍の方も代表取締役を含む取締役になることは可能です。

(c) 常駐等の規制

 代表取締役のうち少なくとも1名は日本に住所を有していなければならないという取扱いは廃止され、代表取締役を含む取締役の常駐の規制はありません。

(d) 資格の規制

 取締役の欠格事由として、以下の者が定められています(331条1項)。

  1. 法人
  2. 会社法、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法に規定されている一定の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  3. 上記iii)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者は除かれます)

 その他、未成年であることは欠格事由とされていませんので、未成年者でも取締役になることができますが、会社との間で委任関係を結ぶことになりますので(330条)、法定代理人の同意が必要です(民法5条1項)。また、破産者も、取締役になることができますが、同じく、会社と取締役の関係は委任関係であるため(330条)、取締役が破産手続開始の決定を受けると当然に委任が終了し(民法653条2号)、すなわち取締役の地位にある者が破産手続開始の決定を受けると、取締役を自動的に退任することになります。破産した後も取締役に就くためには、再度、株主総会決議で選任されなければなりません。

 また、社外取締役については、平成26年の改正会社法において、より社外性が求められる要件が加わっておりますので、社外取締役の選任を検討される場合は、法令にて求められる要件の確認が必要です。

(2) 取締役の主な権限と義務

(a) 取締役の権限

 取締役は、取締役会を構成する一員としての役割を担います。取締役会は、取締役会設置会社の業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職に関する職務を行うと定められており(362条2項)、取締役会の構成員である取締役は、取締役会に出席し、議論に参加することによって、これらの職務を担う役割があると言えます。取締役会において意思決定しなければならない項目として、会社法は、i) 重要な財産の処分及び譲り受け、ii) 多額の借財、iii) 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任、iv) 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止等を定めています(362条4項)。

 取締役は単独で、取締役会を招集し(366条)、また、株主総会等の決議の取消しの訴え(831条)、会社の組織に関する行為の無効の訴え(828条1項)をする権限を有します。

(b) 会社との関係

 前述の通り、取締役は、株式会社とは委任の関係に立ち(330条)、会社に対し善良なる管理者の注意義務をもって委任事務を処理する義務を負い(民法644条)、法令及び定款並びに株式会社の決議を順守し、株式会社のために忠実に職務を遂行しなければなりません(355条)。

 また、取締役が自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとする場合(競業取引)や株式会社との間で取引をしようとする場合(利益相反直接取引)、株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において、株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとする場合(利益相反間接取引)には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(356条1項)。取締役会設置会社では、当該競業取引や利益相反取引についての承認は取締役会が行うことができます(365条1項)。

 取締役の責任は、従来、過失が無くても会社に損害を与えた場合には責任を問われる「無過失責任」でしたが、平成26年の改正会社法により、会社に損害を与えないように注意を尽くしたことが示されれば、賠償の義務を負わない「過失責任」に改められ、責任が緩和されました(120条4項、423条、462条2項、465条等)。

(3) 取締役の解任

 取締役は、いつでも、株主総会の決議による解任が可能です(339条1項)。株主総会での解任決議が否決された場合でも、一定の要件を満たす株主は、取締役の職務執行に不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実があるなどの解任理由がある場合、取締役の解任請求を提訴することが可能です(854条1項)。一方、株主総会にて、正しい手続きで解任した場合であっても、解任について正当な理由がない場合は、解任された取締役は会社に損害賠償を請求することができます(339条2項)。

 

2.タイ

(1) 取締役の要件

取締役の人数は、非公開会社では、1名以上であれば良く(民商法典1144条)、国籍や居住要件は設けられておりません。一方で、公開会社では、5名以上の取締役が必要とされ、うち半数以上がタイ国内に居住地を有している者でなければなりません(公開株式会社法67条)。また、取締役は、自然人でかつ以下の資格要件を満たす必要があります(同法68条)。

(a)権利能力者である

(b)破産者、制限行為能力者ではない

(c)財産犯に対する確定判決により懲役刑に処せられていない

(d)公務における汚職行為を理由として官公庁、政府機関から罷免された、または解任されたことがない

(2) 権限及び義務

取締役の権限は、定款等によって設定することができます(民商法典1144条)。

取締役は、善管注意義務、株主に資本金の払い込みを遂行させる義務、法律で定められた会計帳簿及び文書を作成・管理する義務、法律で定められた配当・利子を適正に分配する義務、株主総会決議を適正に執行する義務、競業避止義務(該当する業務を行う場合には、株主総会の承認が必要)を負うことが定められています(民商法典1168条)。

(3) 解任

非公開会社では、株主総会の普通決議によって取締役を解任することができます(同法1151条)。公開会社では、株主総会の特別決議(総会に出席し、かつ、議決権を有する株主の四分の三以上及び総株式数の半数以上)によって取締役を解任することができます(公開株式会社法76条)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおける取締役に関する法規制は、会社法(Companies Act 2016)によって規律されます。

(1) 取締役の法定員数について

 非公開会社の取締役の法定人数は最低1名(196条1項(a))、公開会社の取締役の法定人数は最低2名(196条1項(b))と規定されています。また、非公開会社及び公開会社の双方とも、法定された数の取締役は、主たる居所をマレーシアに置く、通常マレーシアに居住する者である必要があります(196条4項(b))。

 ただし、定款で法定人数以上の人数を最低人数として定めた場合は、定款で規定した数の取締役を選任する必要があります。

(2) 取締役の資格について

 取締役は、18歳以上の個人である必要があり(196条2項)、かつ以下の欠格事由に該当する者は、原則取締役に就任することができません(198条1項)。

  1. 破産して免責を受けていない者(同条(a))
  2. 会社の設立、組織、運営に関する法令違反により有罪判決を受けた者(同条(b))
  3. 賄賂、詐欺により有罪判決を受けた者(同条(c))
  4. 213条等の違反により有罪判決を受けた者(同条(d))
  5. 199条に基づき裁判所から欠格の宣告を受けた者(同条(e))

(3) 取締役の選任及び解任について

 取締役は株主総会の普通決議により選任します(202条2項、291条)。ただし、定款で定めた場合には、取締役会決議により選任することが可能となります(202条3項)。 

 取締役の退任については、公開会社と非公開会社で異なります。公開会社の場合、選任時期が早いものから順番に定期総会ごとに3分の1の取締役が退任することとなります(205条3項(b))。退任する取締役は、欠格事由に該当しない限り原則再任が可能です(205条5項)。非公開会社の場合、定款又は選任の条件において取締役の任期が規定されない場合、取締役は、以下の事由が生じるまで取締役の地位にとどまることができます(205条2項)。

  1. 欠格事由に該当した
  2. 辞任した
  3. 解任された
  4. 退任の書面決議がなされた

(4) 取締役の権限及び義務について 

 211条が取締役の権限について規定しています。

  1. 会社の事業及び業務は取締役会により又は取締役会の指示のもと運営される(同条1項)
  2. 取締役会は、この法律又は会社の定款に含まれる変更、例外又は制限を条件として、会社の事業及び業務の運営並びに指揮監督に必要な全ての権限を有する(同条2項)

 主要な取締役の義務は、213条から228条に規定されています。213条1項は「会社の取締役は、常に、本法律に従い、適切な目的のために、かつ会社の最善の利益のために誠実に行動しなければならない」と定めており、取締役が会社に対して負う主要な義務の一つを規定しています。

 上記の義務は以下の4つの要素で構成されています。

  1. 取締役の権限は、同法に従って行使されなければならない
  2. 取締役の権限は、誠実に行使されなければならない
  3. 取締役の権限は、適切な目的のために行使されなければならない
  4. 取締役の権限は、会社の最善の利益のために行使されなければならない

 

4.ミャンマー

(1) 取締役の要件

 取締役は1名以上いれば足りるものの、そのうち少なくとも1名はミャンマーに常駐している必要があります。常駐の定義は1年間のうち183日以上ミャンマーに居住していることです。国籍要件は存在しないため、ミャンマー国籍である必要はありません。また、取締役については以下の資格要件を満たす必要があります(会社法175条)。

  1. 定款により取締役の株式保有要件を規定している場合、取締役に指名されてから2か月以内又は定款により規定された短い期間内に株式を保有していること
  2. 18歳以上の自然人であること
  3. 健全な精神状態であること
  4. 本法又はその他の法により取締役として行動する資格を剥奪された期間中でないこと
  5. 債務弁済未了の破産者でないこと

(2) 権限及び義務

 取締役は、本法又は定款により株主によって行使されることが要求されている権限以外の会社の権限の全てを行使することができます(同法160条)。また、帳簿閲覧権を有しています(同法161条)。

 取締役は、善管注意義務、会社の最善のために誠実に行動する義務、地位の利用に関する義務、情報の利用に関する義務、法及び定款を順守する義務、無謀な取引を避ける義務、会社の義務に関する義務、一定の利害関係を開示する義務が規定されています(同法166条~172条)。

(3) 解任

 株主総会の普通決議により取締役を解任することができます(同法174条)。

 

5.メキシコ

(1) 取締役の要件

 株式会社(Sociedad de Anónima)においては、取締役は1名以上選任される必要があります。

 国籍要件や駐在要件といった制限はなく、取締役はメキシコ国籍を有する必要もなく、またメキシコに常駐する必要もありません。唯一、取引の資格を失った者は取締役になることができないとされており、公的仲介人(Corredor Público:商取引において、鑑定人としての役割、法的助言を与える役割、紛争の仲介人としての役割および公証人としての役割を果たすメキシコ連邦政府から認可された法律の専門家)、更生していない破産者、偽造、横領、収賄、強要など財産に対する犯罪で有罪判決を受けた者がこれに該当します。

(2) 権限及び義務

 取締役は、業務執行の権限および権限の範囲内での委任、執行役(Gerente)の選解任の権限、株主総会の招集の権限を有します。

 また、取締役は、定時株主総会に先立つ事業報告や計算書類の提出義務、法令や定款への順守義務、利益相反時に取締役会の審議および決議を棄権しなければならない義務、守秘義務(在任期間及び退任後1年間)、不正に関する監査役への告発義務を負います。さらに、取締役は、株主による出資の真正、株主へ支払われる配当金に関する法的要件および定款の遵守、会計・管理・登録・記録文書または情報のシステムの存在と維持の確認、株主総会決議事項の遵守について、責任を負います。

(3) 解任

 取締役の解任は、通常株主総会で決議することによって行うことができます。

 

 

6.バングラデシュ

(1) 取締役の要件

 全ての非公開会社(公開会社の子会社を除く)は、2名以上の取締役が必要で(会社法90条(2))、公開会社及び公開会社の子会社である非公開会社は、3名以上の取締役が必要です(同条(1))。また、1人株主会社(One Person Company (OPC))は、当該1名の株主が取締役となります(会社法392E条(1))。

 取締役は自然人でなければなりませんが(同条(3))、国籍や常駐の要件はありませんので、バングラデシュ国外に居住する外国人も取締役になることができます。

取締役の欠格理由は、以下の通りです(会社法94条(1))。

(a) 管轄裁判所より精神に障害があると認められた場合

(b) 復権していない破産者であること

(c) 破産者であると申立て中であること

(d) 保有している株が未払いで、支払い期日を6か月以上経過していること

(e) 未成年であること

 その他、会社が、付属定款にて取締役の欠格理由を定めることができます(同条(2))。

(2) 取締役の主な権限と義務

 会社の事業や運営は、取締役によって行われ、会社法の規定に基づき、その権限を行使することができるとされています。取締役に対する制限として、i) 売買・商品供給契約等の締結に関し、取締役会の承認を得た場合を除き、取締役は自らまたは自らがパートナー、株主または取締役である他の法人との間で、売買、商品および原材料の購入または供給契約を締結することはできません(会社法105条)。また、ii) 利益相反取引に関する情報開示として、会社が締結する契約に直接的または間接的に利害関係がある取締役は、当該契約が承認される際に、取締役会にて、その利害について開示しなければなりません(会社法130条(1))。

(3) 取締役の解任

 会社は、特殊決議(extraordinary resolution)にて、株を保有している取締役を任期満了前に解任することができ、普通決議で後任を任命することができます(会社法106条(1))。 

 

7.フィリピン

(1) 人数・資格・欠格事項

 改正会社法第23条は、取締役会の取締役の人数を15名以内と定めています。旧法における最低人数の規定は削除されました。取締役は、当法人の株式を少なくとも1株所有している必要があります。旧会社法における居住地規定が改正会社法では削除されたため、取締役の過半数あるいは全員が非居住者であっても問題ありません。取締役の国籍に関する制限もありません。ただし、1987年憲法、アンチ・ダミー法や外国投資法などの特別法、業界ごとの規制当局が定めた規則など、その他の関連規則や法律に従う必要があります。

(2) 権限の範囲

 取締役会は、会社のすべての業務を遂行し、財産を管理・保有する権限を有しており、株主の承認を特に必要とする場合を除き、原則として会社の主要な意思決定機関として機能します。また取締役会は、経営判断の枠内で会社役員を雇用・解雇したり、会社の役員、委員会、代理人にその権限の一部を委任する権限があります。

(3) 義務および禁止事項

 取締役は、(1)服従義務、(2)勤勉・注意義務、(3)忠誠義務の3つの義務に従わなければなりません。服従義務とは、取締役会が、実務上可能な限り、法律で定められた方法、手続の範囲内で行動すべきことを意味します。従って、会社のいかなる行為も、会社法または定款が認めている権限の範囲内で行われなければなりません。勤勉義務とは、取締役会が明白な違法行為に関与、あるいはそれに同意したり、承認したりすることを禁ずるものです。また、会社の業務を管理する上で、不誠実な行為や重大な過失を犯すことも認められません。忠実義務とは、取締役会のメンバーが会社の「特別な受託者」であるという考えを補強するものです。各取締役は、取締役としての義務と相反する個人的または金銭的な利益を得てはならず、自己のために取引することを禁じている事柄に関して、会社に不利な利益を得ようと試みたり、また実際に得たりしてはならないことを意味しています。この義務はまた、第三者から手数料や賄賂を受け取ることや、内部情報を利用して会社に不利益を及ぼすことも禁じています。ただし、利益相反取引に関しては3分の2を有する株主らによる承認がある場合はこの限りではありません。

(4) 選任・解任

 取締役を選出・解任する権限は株主総会にあります。

 

8.ベトナム

(1) 外資が設立する現地法人と業務執行機関

 ベトナムでは、外国人投資家、外国企業が現地法人を設立する場合に選択し得る会社の形態としては、①1人有限責任会社、②2人以上有限責任会社、③株式会社、④合名会社、⑤私営企業の5種類がありますが、これらのうち、外国投資家、外国企業がベトナム進出のために会社を設立する場合、①1人有限責任会社か②2人以上有限責任会社が通常選択されます。有限責任会社の場合、株式会社における取締役は設置されませんが、日常の業務を執行する機関として、社長及び法定代表者が任命されます。

(2) 有限責任会社の社長

 有限責任会社の社長は、社員総会又は会社の所有者(出資者)より任命された会長により任命されます。人数は1名のみで、国籍要件はありません。

 社長は、会社の日常的な経営活動を運営する者として社員総会で決議された事項を実施するほか、日常業務の処理、会社名義での契約締結、労働者の雇用などの権限、義務を有します。

 なお、1人有限会社の場合、社長の任期は最長5年とされています。

(3) 有限責任会社の法定代表者

 法定代表者は1名以上の個人であり、人数に制限はなく、国籍要件もありません。しかし、1名は必ずベトナム居住者でなければなりません。この居住者の要件については、一般的に、個人所得税法に定められている居住者に該当する要件である、1年に183日以上ベトナム国内に居住する者とされています。また、法定代表者が1名しかいない場合においてその者がベトナムから出国するときには、法定代表者の権限の行使及び義務の履行を他の個人に書面により委任しなければならないとされています。

 法定代表者は、会社の取引から発生する各権利を行使し、義務を履行する際、また仲裁手続や裁判手続において会社を代表します。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年5月27日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

飲食店やイベントの開催について、マスク着用や大声の禁止等、基本的な感染拡大防止策がとられています。また、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の新規入国制限の見直しについて

 外国人の新規入国について、受入責任者の管理のもと、観光目的以外の新規入国が認められています。

 厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(a) 入国後の自宅等待機期間の変更

  1. 検疫所の宿泊施設での待機対象となっている国・地域(以下「指定国・地域」)から帰国・入国する方で、COVID-19のワクチンを3回接種していない方は、指定の宿泊施設での3日間待機が求められます。宿泊施設で受けた検査の結果が陰性であれば、退所後の自宅等待機は求められません。
  2. 指定国・地域から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  3. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していない方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  4. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、入国後の自宅等待機を求められません。

厚生労働省HP 検疫所が確保する宿泊施設で待機を求める指定国・地域(4月6日付)

    (b)入国後の公共交通機関の使用について

 入国後24時間以内に自宅等待機のために自宅等まで移動する場合に限り、自宅等待機期間中であっても公共交通機関の使用が可能となります。

厚生労働省 HP 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は4,194,684名です。この内、3,999,541名が回復し、累計死亡者数は28,022名となっています。

タイ政府は、4月22日、COVID-19対策を適切に実施している認定店について、5月1日から酒類の提供を午前0時まで許可することを決定しました。

2.2 タイ入国規制

 4月22日のタイ政府の会議により、タイへの入国規制に関して、以下の点について緩和する方針であることが報じられています(Thailand Passは継続の方向)。ただし、現時点(4月26日)で正式に政府から発表がなされたわけではないため、今後の発表に注意する必要があります。

  • ワクチン規定回数接種者のタイ入国後のPCR検査について廃止し、ATK検査に変更する。初日の検査結果待ちのための隔離ホテルの予約は不要。
  • ワクチン規定回数未了、未接種者のホテル隔離は継続。タイ入国後4日目または5日目に、PCR検査の実施。ただし、タイ渡航前72時間以内のPCR検査の陰性証明があれば隔離措置免除。
  • 医療保険の保障額については、最低2万USドルから、最低1万USドルへと減額。

2.3 日本入国規制

タイから日本への入国時に必要とされていた、3日間の宿泊施設待機期間が解除されています。

有効なワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している場合、入国後の自宅等待機は求められておりません。ワクチンを3回接種していない場合、原則7日間の自宅等待機が求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合、その後の自宅等待機は求められておりません。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 4月24日の新規感染者数は、4,006人でした。直近7日間(18日~24日)の平均も6,007人であり現在は落ち着いている印象です。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限令であるNRP(National Recovery Plan(以前はFMCOと呼ばれていました))では、全ての州が一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 7歳以上の渡航者は、引き続き出発前2日以内にPCR検査(スワブ検体)を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。隔離期間は、ブースター接種済みを含むワクチン接種完了者及び健康上の理由でワクチン接種ができない者は、入国時検査が陰性であれば隔離は不要となります。ワクチン接種未完了者は入国日を1日目として5日目まで自宅隔離となります。また、17歳以下の者は、ワクチン接種の有無に関わらず、隔離は不要となります。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報等の必要事項を入力しておくことが必要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、通常の商業便による入国が再開されました。また、e-visa申請が4月1日から再開されました。ビザの取得に当たり、国営のミャンマー保険公社の保険への加入が必須になっています。また、ANAの日本からの直行便はなくなり、タイ経由の便に変更されます。ミャンマー航空が日本との直行便を飛ばすと発表されておりますが、現時点では予約はできない状態です。入国後の隔離措置は現在も続いており、隔離期間は頻繁に変更があることから、直前に確認する必要があります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

4月以降もメキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、全32州が緑の状態が続いています。連邦政府による新たな規制は見られません。引き続き、手洗い等の予防措置の継続が呼びかけられておりますが、マスクの着用などの要請を緩和する動きも見られます。

なお、4月26日、メキシコ政府は、メキシコにおけるCOVID-19の蔓延状況は新規感染者数が減少していることからエンデミックへ移行すること、5月以降COVID-19感染リスクを示す信号は更新されないこと、間もなく新しい安全衛生ガイドラインが公表されることを公表しました。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が減少し、4月25日時点で24時間以内のCOVID-19による死者は0名、新規陽性者は24名で、陽性率は0.41%となっています。

6.2 入国規制

 バングラデシュでは、WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することで入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は不要となっています。なお、3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、バングラデシュ入国が認められます。

 更に、4月20日、民間航空局(CAAB)は、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置を発表し、4月25日以降にバングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(http://healthdeclaration.dghs.gov.bd)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ、または印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります(http://caab.gov.bd/circul/AT%20Circular-FSR-02-2022%20(25APR22UFN))。

 バングラデシュへの渡航の際は、各航空会社や経由先が定める措置についても確認が必要です。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計368万4835人で、死者数は累計60,195人です(2022年4月26日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後急激に減少し、現在は1日約200人程度の新規感染者が報告されています。

 4月30日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル1」とされています。

7.2 入国規制

ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

また、4 月1日以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することが可能となっています。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

日本においては、3月1日以降、以下のとおり新たな水際対策措置が実施されています。なお、フィリピンについては「水際対策上特に対応すべき変異株に対する指定国・地域」からの指定が解除されています。

  1. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加未接種者について、原則7日間の自宅等待機を求めることとした上で、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めない。
  2. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加接種者について、入国後の自宅等待機を求めない。
  3. 入国後24時間以内に自宅等待機のために自宅等まで移動する場合に限り、自宅等待機期間中であっても公共交通機関の使用を可能とする。
  4. オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域を別途指定する場合には、当該国・地域からの帰国者・入国者については、自宅等待機等の期間を14日間とする。(※なお、現時点で、フィリピンは「オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域」には指定されていません。)
  5. 外国人の新規入国について、受入責任者の管理の下、観光目的以外の新規入国を認める。

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 2022年4月26日午前9時の時点におけるベトナムでの累計感染者数は1057万1772人で、1か月前の時点(3月29日)より約147万人増加しました。今年に入って一時は1日の新規感染者数が20万人〜40万人にも上ることもありましたが、徐々に減少し、ここ1週間ほどでは1万人前後で推移しています。

 ベトナム国内におけるコロナ対策による社会・経済規制の緩和はかなり進み、ホーチミン市内では、基本的にあらゆる経済活動が自由となっています。また少し前までは、大規模商業施設やオフィスビルなどの入口で検温が実施されたりコロナ対策のための健康申告アプリ”PC-COVID”の提示などを求められることも少なくありませんでしたが、そのような施設もかなり少なくなっています。

8.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限

 ベトナム政府は、2022年3月15日より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国人の入国制限を大幅に緩和し、これまで必要とされていた入国承認や入国許可の手続を撤廃しました。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます(コロナ規制が実施される前と同様です。)。また、入国後の隔離もありません。

 なお、ベトナム入国にあたっては、次のいずれかの方法で実施した検査の陰性証明書(英語又はベトナム語で記載された紙の証明書に限ります。)を取得して持参する必要がありますが、4月25日より、ホーチミン市のタンソンニャット国際空港では、入国者の陰性証明書の確認がされなくなりました。これは、入国者についはベトナム行きのフライトに搭乗する際に航空会社において陰性証明書の確認を受けていることから、重複する作業を削減するためであると説明されています。

 ・ RT-PCR法/RT-LAMPを使用する場合:日本出国前72時間以内に検査を実施

 ・ 迅速抗原検査を使用する場合:日本出国前24時間以内に検査実施

 一方、ワクチン接種の有無や接種回数は入国の条件とはなっておらず、実際、日本出国時及びベトナム入国時の両方において、ワクチン接種証明書の提示は求められません。

 また、ベトナムへの入国前24時間以内にオンラインで医療申告を行うことが義務付けられています。スマートフォンなどで指定されたアドレスにアクセスしてオンラインで健康状態等を申告し、最後に表示されるQRコードのスクリーンショットを保存して、ベトナムの空港での検疫の際に提示する必要があります。

(2) 航空機の運航状況

 2022年2月15日から、ベトナム発着の全ての定期便の運航制限が解除されましたが、各航空会社は実際の需要をみながら発着する空港や本数を増やしていっている状況であり、まだコロナ前の水準には戻っていません。したがって、ベトナムへ渡航される際は、最新の運行状況に注意する必要があります。

第2.各国における相続制度の概要

1.日本

 「相続」とは、個人が死亡した場合に、その者の有していた財産上の権利義務をその者の配偶者や子など一定の身分関係にある者に承継させる制度のことをいい、この場合、財産上の権利義務を承継される者のことを「被相続人」、これを承継する者のことを「相続人」といいます。相続については、民法にて定められています。

(1) 相続人の種類と順位

 相続人となり得る者は、被相続人のi) 子(民法第887条第1項)、ii) 直系尊属(父母、祖父母など)(民法第889条第1項第1号)、iii) 兄弟姉妹(民法第889条第1項第2号)並びにiv) 配偶者(法律上婚姻関係にある者で、内縁関係を含まない)(民法第890条)です。これらの者のうち、配偶者は、常に相続人となることができ(民法第890条)、被相続人の死亡よりも前に被相続人の子が死亡している場合など被相続人の子が相続権を失った場合、その者の子(被相続人の孫)が相続人(代襲相続人といいます)となります(民法第887条第2項)。直系尊属及び兄弟姉妹は、被相続人の子又は代襲相続人がいない場合に相続人となることができます(民法第889条第1項)。相続人の順位は、第一順位が子と配偶者、第二順位が直系尊属と配偶者、第三順位が兄弟姉妹と配偶者となります(民法第887条、889条、890条)。

(2) 相続欠格

 以下の相続秩序を侵害する非行(相続欠格事由)をした相続人の相続権は何らの手続を経ずに法律上当然にはく奪されます(民法第891条)。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

(3) 推定相続人の廃除

 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます(民法第892条)。この廃除は、相続欠格事由ほど重大な非行ではないが、被相続人からみて自己の財産を相続させるのが妥当でないと思われる非行が存在する場合に、被相続人の意思に基づいて当該相続人の相続資格をはく奪する制度です。

 なお、遺留分とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。被相続人は、自身の財産の行方を遺言により自由に定めることができますが、被相続人の遺族の生活の保障のために一定の制約があります。これが遺留分の制度です。

(4) 相続分の種類

① 法定相続分

 「法定相続分」は、被相続人が遺言で相続分を指定していない場合に、遺産分配の基準となるものであり、同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の通りです(民法第900条)。

相続人 法定相続分 留意事項
子と 配偶者 子 2分の1
配偶者 2分の1
子が数人あるときは、子の法定相続分を均分する。
直系尊属と配偶者 直系尊属 3分の1
配偶者 3分の2
同じ親等の直系尊属が数人あるときは、
直系尊属の法定相続分を均分する。
兄弟姉妹と配偶者 兄弟姉妹 4分の1
配偶者 4分の3
兄弟姉妹が数人あるときは、兄弟姉妹の法定相続分を均分する。
ただし、父母の一方を同じくする兄弟姉妹の相続分は、
父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

 

② 指定相続分

 相続人が複数いる場合、被相続人は遺言で共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができます(民法第902条)。

(5) 相続の承認と放棄

 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければなりませんが、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができます(民法第915条)。

1. 相続の承認

(a) 単純承認

 単純承認とは、債務を含めた相続財産の全てを受け入れることで、相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継します(民法第920条)。また、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときや、規定の期間内に相続の放棄又は限定承認をしなかったときは、単純承認をしたとみなされます(民法第921条)。

(b) 限定承認

 限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して行う相続の承認です(民法第922条)。限定承認は、相続の開始を知った日から3か月以内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければなりません(民法第915条及び924条)。なお、相続人が数人あると きは、共同相続人の全員が共同してのみ行うことができます(民法第923条)。

2. 相続の放棄

 相続の放棄とは、債務を含めた相続財産の全ての承継を拒否することをいいます。相続の放棄は、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に相続を放棄する旨の申述をして行います(民法第915条及び第938条)。基本的に、相続の放棄は撤回することはできません(民法第919条第1項)。

 

2.タイ

(1) タイ相続法の概要

 日本でいう民法に該当する規定であるタイ民商法典(Civil and Commercial Code、以下「民商法典」)において、相続についての定めがなされています。相続に関する制度の大枠自体はタイも日本と同様となっています。ただ、法定相続人の定め方やその相続分、僧侶の相続に関する規定がある点などは日本と異なります。

相続財産は、遺言がある場合には遺言の定めに基づき相続が行われ、遺言がない場合には法律の定めに基づき相続が行われます(民商法典第1603条)。遺言があっても、その相続財産全部に対しての遺言がされていない場合や遺言が無効である場合には、遺言の及ばない部分については民商法典の定めに基づく相続が行われることになります(同法第1620条)。

(2) 法定相続順位について

 民商法典の定めに基づき相続が行われる場合、法定されている相続人となる者(法定相続人)及びその相続順位は、以下の通りとなります(同法第1629条、第1635条)。

第1順位 被相続人(死亡した本人)の直系卑属(子)

第2順位 被相続人の父母

第3順位 被相続人と父母を同じくする兄弟姉妹

第4順位 被相続人と父母の一方を同じくする兄弟姉妹

第5順位 被相続人の祖父母

第6順位 被相続人の叔父(伯父)、叔母(伯母)

この第1順位を優先し第6順位までの順番で、各法定相続人が相続する権利を有することとなります。基本的には、後順位の者は前順位の者が相続する場合には、相続できなくなります。もっとも、被相続人の父母に関してはこの例外として、他の法定相続人が相続する場合でも、常に子と同じ順位で相続するものとされています(同法第1630条)。

また配偶者がいる場合には、配偶者も相続人となります。配偶者の法定相続分は、同時に相続する他の法定相続人の種類により異なる相続分となっています(同法第1635条)。例えば、子が相続人となる場合には、子と同順位として同じ割合で相続し、他の相続人が第5順位の祖父母となる場合には、配偶者が3分の2の割合で相続することになります。

(3) 廃除及び相続放棄

  タイにおいても法定相続人について、被相続人となる者が生前に、法定相続人となる者を廃除することにより、相続させないとする制度が存在します(同法第1608条)。また、相続人による相続放棄の制度についても、タイにおいて規定されています(同法第1612条)。

(4) まとめ

 日本人がタイに居住し、タイに財産を有したまま遺言なく死亡した場合、この者の相続手続きをタイで進めるためには、上述の法定相続人の順位や分割の定めに従い、相続手続きを行うこととなります。

 また相続手続きを行うために、遺産管理人として相続財産の管理や具体的な分割手続きを行う者の選任を、裁判所にて行う必要があります。

 日本人のタイでの相続は、残された相続人がタイに居住していない場合、タイの国の慣習や言語に不慣れなことに加え、制度自体も把握できないことが想定されるため、あらかじめ遺言を作成しておくことや、必要な手続きについて親族間で確認しておくことが、将来の紛争や問題を生じさせないために有益であると思われます。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおける相続手続は、遺産分配法(Distribution Act 1958)によって規律されます。

(1) 相続に関する法の適用

 相続財産が動産の場合、被相続人が死亡時に居住していた国の法律により相続が行われ、相続財産が不動産の場合、被相続人が死亡した場所にかかわらず、遺産分配法の規定に従い相続が行われます(遺産分配法4条)。

 そして、遺産分配法6条では、ある者が遺言を残さずに死亡した場合、相続財産の管理費用等を支払った後は、この法律に従い相続財産が分配される旨規定しています。相続財産の一部について、遺言が残されている場合、遺言により遺贈されない相続財産については、遺産分配法が適用されます(遺産分配法8条)。

(2) 相続人の種類と法定相続分

 遺産分配法6条1項によれば、相続人の種類と法定相続分は以下の通りです。

相続人 親の相続分 配偶者の相続分 子の相続分
親のみ 財産全部
配偶者のみ 財産全部
子のみ 財産全部
親と配偶者 2分の1 2分の1
配偶者と子 3分の1 3分の2
親と子 3分の1 3分の2
親、配偶者及び子 4分の1 4分の1 2分の1

 被相続人が法に基づき複数の妻との婚姻が許可されていた場合、複数の妻は、一人の妻が得るべき持ち分を平等に分配することとなります(遺産分配法6条2項)。

 また、相続人の子が亡くなっている場合、その子孫が「子」に含まれます。「子」は嫡出子でなければならず、被相続人が法に基づき複数の妻との婚姻を許可されていた場合は、当該妻の子が含まれますが、養子縁組法(Adoption Act 1952)の規定に基づき養子縁組された子以外の子は含まれません(遺産分配法3条)。 

 

4.ミャンマー

ミャンマーの相続は、属する宗教によって異なる慣習法に従います。主に仏教徒、イスラム教徒、キリスト教徒で異なり、両方が同じ宗教か、それとも異なる宗教かでも異なります。また、いずれかの当事者が外国人の場合にはその場合にも取扱が変わることがあるため、実際のケースに即して専門家に相談される必要があります。特に、ミャンマーにおいては土地の所有が会社の名義ではなく個人の名義になっていることが多く、その場合には相続が生じた場合には誰が承継するのかを事前に確認することが望ましいです。

 

5.メキシコ

(1) 関連規定

メキシコの相続に関する規定は民法に定められています。連邦民法(Código Civil Federal)のほか、各州の民法にも相続の規定がありますが、ほぼ共通の内容と言われています。以下では、連邦民法の規定の内容をご紹介いたします。

(2) 法定相続

遺言がない場合、遺産分割協議により相続財産の分割を決定することができます。これがまとまらない場合には、法定相続分に応じて、遺産を相続することになります。

相続人となりうるのは、直系卑属(養子を含む。)、配偶者、直系尊属、4親等内の傍系血族および内縁の配偶者(ただし、被相続人死亡の前5年間同棲していたか、両者の間に子がいる場合に限ります。)です。

ただし、配偶者は、夫婦の財産全てについて財産分離制(separación de bienes)を採用していた場合には相続権はありません。メキシコにおける婚姻関係においては夫婦財産契約において、夫婦組合制(sociedad conyugal)または財産分離制(separación de bienes)を選択することとなります。全財産のうち一部のみを財産分離制とすることもでき、財産分離制を採らない財産は、夫婦がこれを共有することとなり、当該財産について配偶者に相続権が生じます。夫婦の財産全てについて財産分離制を採用しない場合には、全てが夫婦共有財産となり、配偶者に相続権が生じます。

また、上記相続人となりうる者のうち、世代により構成される順位の最も高い親族のみが相続人となるのが原則です。同順位の親族は、均等に相続をすることになります。順位については、第1順位が、子(養子を含む。)、配偶者、父母(養父母を含む)、第2順位が、祖父母、兄弟姉妹、孫、養子による兄弟姉妹、第3順位がおじ、おば、甥、姪、曾祖父母、ひ孫、第4順位は、いとこ、大おじ、大おばとなります。

たとえば、被相続人に配偶者(全ての財産について財産分離制を採用しなかった場合)と子2人がいる場合は、配偶者と子2人が相続人となり、法定相続分は3分の1ずつとなります。ただし、一部に財産分離制を採用している場合は、当該財産については子2人が相続し、当該財産以外の財産を配偶者と子2人で3分の1ずつ分割することとなります。また、第2順位となる被相続人の祖父が相続を受けるのは、第1順位にあたる子、配偶者、父母らがいない場合となります。

上記が法定相続に関する原則となりますが、いくつか例外が設けられています。

相続人となる者が配偶者(全ての財産について財産分離制を採用しなかった場合)と直系尊属の場合には、相続財産は2等分され、一方は配偶者に、他方は直系尊属に分割されます。たとえば、被相続人に、配偶者、父母がいた場合、法定相続分は配偶者が2分の1、父母が各4分の1となります。ただし、一部に財産分離制を採用している場合は、当該財産については父母が相続し、当該財産以外の財産を配偶者が2分の1、父母が4分の1ずつ取得することとなります。

また、相続人となる者が、配偶者(すべての財産について財産分離制を採用しなかった場合)と被相続人の兄弟姉妹の場合は、配偶者は相続財産の3分の2を、残りの3分の1は兄弟姉妹に割当てられ、兄弟姉妹間で均等に分割されることとなります。ただし、一部に財産分離制を採用している場合は、当該財産については兄弟姉妹が相続し、当該財産以外の財産を配偶者が3分の2、兄弟姉妹が3分の1を取得することとなります。

(3) 相続放棄・相続人の廃除

① 相続放棄

相続放棄は、明示的に、裁判官の面前で書面により、または、公証人の面前で公正証書により行われなければなりません。

相続人が相続を受け入れるか否かを表明することに利害関係を有する者は、相続の開始後9日以内に、裁判官に対し、相続人が相続を放棄するか表明するための1ヶ月を超えない期限を設けるよう請求することができ、この請求をしないときは、相続を受け入れたものとみなされます。日本と比べると熟慮期間は短く、相続放棄を検討する場合には早期に対応を行う必要があります。

また相続放棄は、いったん行われると取り消すことができず、詐欺または暴力によって行われた場合を除き、異議を申し立てることができません。

② 相続人の廃除等

相続人の廃除は、日本においては、被相続人の意思に基づいて推定相続人の相続権を失わせる制度ですが、メキシコにおいては、これに対応した制度はありません。ただし、相続の利害関係人からの請求により、次の事由に該当する者に対し、推定相続人の相続権を失わせることはできます。

  • 被相続人、その親、その子、その配偶者、その兄弟姉妹に死を与え、命じ、または与えようとした罪で有罪判決を受けた者。
  • 被相続人、その直系尊属、その直系卑属、その配偶者又はその兄弟姉妹に対して、死刑又は禁錮に当たる罪の告発をした者。ただし、告発者、その直系尊属、その直系卑属、その兄弟姉妹又はその配偶者の生命や名誉のために必要とした行為の場合は除く。
  • 裁判によって不貞相手とされた配偶者。
  • 不貞した配偶者の共犯者。
  • 被相続人、その子、その配偶者、その直系尊属またはその兄弟姉妹に対して行った禁錮刑に当たる罪を犯した者。
  • 子を遺棄する父親および母親。
  • 直系卑属を放棄し、売春させ、堕落させた直系尊属。
  • 親族で、扶養の義務を有するにもかかわらず、これを履行していない者。
  • 働くことができず、資力がない被相続人を迎えること、または福祉施設で保護させることに配慮しない親族。
  • 遺言を作成させ、作成させず、または撤回させるために、暴力や詐欺を行った者。
  • 刑法に基づき、幼児を隠蔽、取り換えまたは出産偽証する罪を犯した者。ただし、当該相続が幼児または当該行為によって損害を受けた者もしくは損害を受けようとした者に対応すべきものであった場合に限る。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュの相続は、属する宗教によって異なるルールや慣習に従います。1925年相続法(The Succession Act, 1925(以下、「相続法」という))にて遺言や相続の概要が規定されているものの、多くの規定はイスラム教徒には適用されず、当事者がイスラム教徒の場合、相続、結婚、持参金(ダウリー)、離婚、遺贈、後見人、寄進等については、イスラム法が適用されます。

(1) イスラム法による相続人

 イスラム教徒が死亡した場合、遺産からi) 埋葬および死亡費用、ii) 死亡の3か月前までのサービス、iii) 債務、iv) 遺言にかかる費用、v) 資産にかかる相続証明書の支払いの後に残ったものが、イスラム法の規定に従って相続人に分割されます。

 主たる相続人として、① Jabiul Furujと② Asbaganが挙げられます。① Jabiul Furujには、夫、父、祖父、義兄弟、妻、娘、息子の娘、母、父方の祖母、母方の祖母、姉妹、義姉妹(継母の娘)、義姉妹(継父の娘)が含まれ、このカテゴリのなかで、相続人の家族構成等の条件によって相続分の割合が決められています。② Asbaganには、i) 息子、娘、息子の息子、息子の娘、ii) 父、祖父、iii) 兄弟姉妹、義兄弟、甥、義兄弟(継母の息子)の息子、兄弟の息子、義兄弟(継母の息子)の息子の息子、iv) 叔父又は伯父、いとこ、いとこの息子などが含まれます。

(2) イスラム法における相続手続き

 Jabiul Furuj(上記)に含まれる相続人の間で、イスラム法に規定された割合で遺産を分割し、残りをAsbagan(上記)に含まれる相続人の間で、規定の割合で分割します。Asbaganに該当する相続人がいない場合は、夫及び妻を除くJabiul Furujの相続人の間で、再分割されます。

(3) 相続法

 無遺言相続及び遺言による相続について規定していますが、無遺言相続について、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、仏教徒、シーク教徒及びジャイナ教徒の財産には適用されません。更に、ゾロアスター教徒とゾロアスター教徒以外で異なる規定が定められています。遺言による相続は、ヒンドゥー教徒、仏教徒、シーク教徒及びジャイナ教徒による遺言、バングラデシュ国内の不動産資産に関してなされたバングラデシュ国外での遺言に対して適用されます。

 

 

7.フィリピン

(1) はじめに

 相続人は、遺言によって(遺言相続)、または法律によって(法定相続)、その範囲が確定します。遺言による相続人がいない場合、法律により、嫡出および非嫡出の区別を問わず故人の親族に相続権が生じます。法定相続については、民法第960条から第1014条が、法定相続人の扱いについて詳細に規定しています。

 相続では、被相続人に最も近い親族が、より遠い親族に優先されます。関係の近さを示す指標としては、日本と同じく「親等」の概念が採用されており、たとえば親等数が同じである親族は均等に相続できるとされます(一定の例外あり)。相続は、第一に直系卑属(子・孫など自分より後の世代で、直通する系統の親族)を対象とします。被相続人の子および子孫がいない場合、その父母およびその子孫が相続しますが、ここに傍系親族(兄弟、姉妹、叔父叔母、従兄弟、甥、姪など)は含まれません(985条)。直系の子孫、尊属、非嫡出子、生存配偶者がいない場合、傍系親族が相続します(1004条から1010条)。相続権を有する者がいない場合、裁判所規則の定めるところに従い、国が遺産の全部を相続します(1011条、1012条)。

(2) 相続の放棄

 相続人は、相続を放棄することができます。相続放棄は、公的文書で行うか、司法の承認を必要とする場合には、遺言・相続の手続きを管轄する裁判所に提出する請願書によって行わなければなりません(1051条、1057条)。進行中の遺言・相続に関する手続きにおいて相続を放棄するには、裁判所が遺産分割の命令を出してから30日以内に、相続人は裁判所に対して相続を承認するか放棄するかを意思表示しなければなりません。期間内に意思表示をしない場合、相続人は相続を承認したものとみなされます(1057条)。

 相続の放棄は、一旦成立すると取り消すことができません(1056条)。

 相続人が相続財産を放棄して債権者を害した場合、債権者は裁判所に対し、相続人の名で相続財産を承認することを許可するよう申し立てることができます。

 相続人が相続を承認または否認することなく死亡した場合、その権利は当該相続人の相続人に移転します(1053条)。

(3) 相続廃除について

 相続人の廃除(相続の資格が奪われること)は、法律上の廃除の原因を特定した上でなされる遺言によってのみ行うことができます。これらの原因の一部は次のとおりです。

  1. 相続人が遺言者、その配偶者、子孫、または尊属の生命を害する企てを行ったと認められたとき。
  2. 相続人が遺言者を6年以上の懲役が定められている罪で告発し、その告発に根拠がないことが判明したとき。
  3. 相続人が遺言者の配偶者と姦通または姦淫の罪を犯したとき。
  4. 詐欺、暴力、脅迫、不当な影響力によって相続人が遺言者に遺言を作成させたり、既に作成された遺言を変更させた場合。
  5. 遺言者の扶養を不当に拒否したとき。
  6. 相続人が遺言者への言動による虐待を行ったとき。
  7. 相続人が不名誉な生活を送っているとき。
  8. 相続人が民法上の権利剥奪を伴う罪を犯したとき。
  9. 相続人たる親が子を捨てたり、子に堕落した生活や不道徳な生活をさせたり、道徳に反することをしようとしたとき。
  10. 遺言者の親の一方が他方の親の生命に対して企てたとき。ただし、両者の間に和解が成立している場合はこの限りではない。
  11. 相続人たる配偶者が別離または親権喪失の原因を作ったとき。
 

8.ベトナム

(1) 被相続人が外国人である場合の準拠法

 ベトナム民法では、不動産に関する相続については当該不動産が所在する国の法律に従って処理され、その他の財産については、相続財産を残した者が死亡の直前に有していた国籍国の法律に従って処理されることになります。

(2) 法定相続

  1. 遺言書がない場合における法定相続人の順序は、次のとおりです。

 ・第1順位 被相続人の配偶者、実父母、養父母、実子、養子

 ・第2順位 被相続人の祖父母、兄弟姉妹、実孫

 ・第3順位 被相続人の曽祖父母、叔父叔母、実の甥姪、実の曾孫

 同じ順位内の相続人間の相続分は均等です。

  1. 被相続人の子が被相続人よりも先に死亡した場合又は同時に死亡した場合、被相続人の孫が相続人となります。被相続人の子及び孫が被相続人よりも先に死亡した場合又は同時に死亡した場合、曾孫が相続人となります。

(3) 債務の相続

 債務も相続の対象となりますが、相続人は、別段の合意がない限り、被相続人の遺産の範囲内で債務の履行義務を負うに過ぎません。遺産分割が実行された場合についても、各相続人は、別段の合意がない限り、分割により取得した遺産の範囲内で債務の相続義務を負うに過ぎません。したがって、別段の合意がない限り、遺産によって履行がなされない債務については消滅することになります。

(4) 相続放棄

 相続人は、自己の債務の履行を免れる目的である場合を除き、相続放棄をすることができます。日本法に基づく相続放棄は家庭裁判所に「相続放棄の申述」をしなければならず、また、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」という期間制限がありますが、ベトナム法の場合、自ら書面を作成すればよく、また、遺産分割が実行される前であればいつでも相続放棄をすることができます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: https://www.tnygroup.biz/

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

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・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年4月26日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

令和4年1月から実施されていたまん延防止等重点措置は、3月21日をもって全ての都道府県で終了しました。引き続き、基本的な感染拡大防止対策が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の新規入国制限の見直しについて

外国人の新規入国について、下記(a)又は(b)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(a) 入国後の自宅等待機期間の変更

  1. 検疫所の宿泊施設での待機対象となっている国・地域(以下「指定国・地域」)から帰国・入国する方で、COVID-19のワクチンを3回接種していない方は、指定の宿泊施設での3日間待機が求められます。宿泊施設で受けた検査の結果が陰性であれば、退所後の自宅等待機は求められません。
  2. 指定国・地域から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  3. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していない方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  4. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、入国後の自宅等待機を求められません。

厚生労働省HP 検疫所が確保する宿泊施設で待機を求める指定国・地域(3月30日付)

    (3)入国後の公共交通機関の使用について

 上記(a) ii)及びiii)に該当する方は、入国後の待機のため自宅等まで移動する際は、公共交通機関の使用が可能となります。

厚生労働省 HP 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は3,600,787名です。この内、3,331,370名が回復し、累計死亡者数は25,048名となっています。

2.2 タイ入国規制

 Test and Goのタイ入国後のPCR検査について、5日目の検査はATK検査を入国者自ら行うことが可能であり、5日目の隔離ホテル等の予約が不要となっています。

1日目:タイ到着後、政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。

     陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。

5日目:入国者自らATK検査。隔離ホテルの予約不要。

Thailand passの登録時に必要とされている医療保険の補償額については、最低2万USドルとなっています。

2.3 日本入国規制

現在、タイから日本への入国時に必要とされていた、3日間の宿泊施設待機期間が解除されています。

有効なワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している場合、入国後の自宅等待機は求められておりません。ワクチンを3回接種していない場合、原則7日間の自宅等待機が求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合、その後の自宅等待機は求められておりません。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 3月28日の新規感染者数は、14,467人でした。3月前半は感染者数が3万人を超えピークを迎えていましたが、現在は減少傾向にあります。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限令であるNRP(National Recovery Plan(以前はFMCOと呼ばれていました))では、全ての州が一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。

3.2 入国規制

 これまで、観光目的の入国はランカウイ等へのトラブルバブル制度を利用した入国に限られていましたが、4月1日以降は、観光目的も含めて入国が可能となる予定です。

 7歳以上の渡航者は、引き続き出発前2日以内にPCR検査(スワブ検体)を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。隔離期間については、ブースター接種済みを含むワクチン接種完了者及び健康上の理由でワクチン接種ができない者は、入国時検査が陰性であれば隔離不要となります。ワクチン接種未完了者は入国日を1日目として5日目まで自宅隔離となります。また、17歳以下の者は、ワクチン接種の有無に関わらず、隔離不要となります。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得(ワクチン接種完了者の場合)、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報等の必要事項を入力しておくことが必要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

3月は3日、31日にANA 便が飛びました。4月7日、4月21日、28日、5月12日に救援便が運航予定です。現状としてはミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。しかし、ついに国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除される旨が発表されました。また、e-visa申請が4月1日から再開される旨も発表されました。今後の運用がコロナ禍前に完全に戻るのかについて注目されます。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

3月以降もメキシコのCOVID-19新規感染者の増加は鈍化し、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、3月21日の週は、全32州が緑となりました。連邦政府による新たな規制は見られません。引き続き、手洗い等の予防措置の継続が呼びかけられておりますが、マスクの着用などの要請を緩和する動きも見られます。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が減少し、3月27日時点で3日連続COVID-19による死者が出ていません。COVID-19関連の規制は撤廃され、学校も再開されましたが、マスク着用は義務づけられています。

6.2 入国規制

 3月8日、民間航空局は、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置を発表し、WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされないこととなりました。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、バングラデシュ入国が認められます。なお、ワクチン接種の有無にかかわらず、バングラデシュ到着時に新型コロナの兆候が見られる渡航者については、政府指定病院/施設でPCR検査を受け、陽性の場合は、費用自己負担の上、政府指定施設又はホテルにおいて隔離されます。7日後に再度PCR検査を受け、陰性であった場合は、隔離を終えることができます。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計367万7616人で、死者数は累計59,038人です(2022年3月29日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約300~400人程度の新規感染者が報告されています。

 また、3月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル1」とされています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

 日本においては、3月1日以降、以下のとおり新たな水際対策措置が実施されています。なお、フィリピンについては「水際対策上特に対応すべき変異株に対する指定国・地域」からの指定が解除されています。

  1. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加未接種者について、原則7日間の自宅等待機を求めることとした上で、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めない。
  2. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加接種者について、入国後の自宅等待機を求めない。
  3. 入国後24時間以内に自宅等待機のために自宅等まで移動する場合に限り、自宅等待機期間中であっても公共交通機関の使用を可能とする。
  4. オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域を別途指定する場合には、当該国・地域からの帰国者・入国者については、自宅等待機等の期間を14日間とする。(※なお、現時点で、フィリピンは「オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域」には指定されていません。)
  5. 外国人の新規入国について、受入責任者の管理の下、観光目的以外の新規入国を認める。
 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 2022年3月29日午前9時の時点でにおけるベトナムでの累計感染者数は909万4849人で、1か月前の時点(2月28日)より約565万人増加しました。これは、旧正月(テト)休暇があけた2月上旬からオミクロン株の感染が急拡大したことが原因で、日によっては1日の新規感染者数が40万人を超えたこともありました。

 一方で、感染者数の増加に比べ重傷者数や死者数の増加が比較的抑えられていることから、昨年10月からの様々な分野における社会・経済規制の緩和は進められており、ホーチミン市では、3月22日の時点で、「レベル4」(超高リスク=レッドゾーン)及び「レベル3」(高リスク=オレンジゾーン)と評価される行政区がゼロとなり、市内では基本的にあらゆる経済活動が自由となっています。

8.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限

 ベトナム政府は、2022年3月15日より、新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国人の入国制限を大幅に緩和し、これまで必要とされていた入国承認や入国許可の手続を撤廃しました。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます(コロナ規制が実施される前と同様です。)。また、入国後の隔離もありません。

 但し、ベトナム入国にあたっては、次のいずれかの方法で実施した検査の陰性証明書(英語又はベトナム語で記載された紙の証明書に限ります。)を取得して持参する必要があります(ベトナムの空港での検疫だけでなく、日本の空港での搭乗手続の際にも確認がなされます。)。

 ・ RT-PCR法/RT-LAMPを使用する場合:日本出国前72時間以内に検査を実施

 ・ 迅速抗原検査を使用する場合:日本出国前24時間以内に検査実施

 一方、ワクチン接種の有無や接種回数は入国の条件とはなっていません。

 また、ベトナムへの入国前24時間以内にオンラインで医療申告を行うことが義務付けられています。スマートフォンなどで指定されたアドレスにアクセスしてオンラインで健康状態等を申告し、最後に表示されるQRコードのスクリーンショットを保存して、日本の空港での搭乗手続の際、及びベトナムの空港での検疫の際に提示する必要があります。

 なお、このオンライン医療申告とは別に、ベトナム国内では、滞在ホテルや訪問する施設などによっては、”PC-COVID”というオンライン医療申告アプリの提示やこのアプリによる施設掲示のQRコードの読み取りを求められることがあります。こちらもあらかじめアプリストアからダウンロードしてインストールし、初期設定を済ませておいてください。

(2) 航空機の運航状況

 2022年2月15日から、ベトナム発着の全ての定期便の運航制限が解除されています。しかし、3月29日時点において、各航空会社は、実際の需要をふまえて発着する空港や本数を限定しており、コロナ前の水準にはまだまだ届かない状況です。例えば、LLC(格安航空会社)のベトジェットエアーは、3月29日時点で、関空発着のホーチミン、ハノイ便は再開していません。また、ベトナム航空は、3月30日から毎週水曜日と土曜日に関空発着のホーチミン便を再開すると発表していますが、実際には、水曜日、土曜日であってもフライトがなかったり関空発しかなかったりするようです。

 したがって、入国制限は大幅に緩和されたものの、ベトナムへ渡航される際は、最新の運行状況に注意する必要があります。

第2.各国における仲裁制度の概要

1.日本

 仲裁とは、紛争解決方法のひとつで、裁判よりも柔軟な解決が可能です。特徴として、仲裁判断は裁判所の確定判決と同一の効力を有し、当事者は仲裁判断については、基本的に、不服申立てをすることができません。

(1) 国際仲裁

 国際仲裁は、国際商取引をめぐる紛争について、各国の国内裁判所による解決ではなく、当事者が第三者である仲裁人を選び、その判断により紛争解決を図る手続です。ニューヨーク条約(後述)等の諸条約により外国における執行が容易であること、原則として非公開であり企業秘密が守られること、専門的・中立的な仲裁人を当事者が選ぶことができること、司法の信頼性が低い国における裁判の利用を回避できること、一審限りで手続を終了するのが通常であり、審問の期日の設定も柔軟な対応が可能であるため、迅速な紛争の解決を実現することも可能であること、等のメリットがあります。

(2) 外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)

 ニューヨーク条約の締約国は、同条約が定める要件を充足する外国仲裁判断(その国以外の国を仲裁地とする仲裁判断)の承認・執行を、原則として拒否できません。ただし、ニューヨーク条約第5条2項は、「紛争の対象である事項がその国の法令により仲裁による解決が不可能なものであること」、または「判断の承認・執行が、その国の公の秩序に反すること」のいずれかに該当するときには、承認及び執行を求められた国の権限ある機関は職権によって、その仲裁判断の承認・執行を拒否することができるとされています。そのため、相手方の所在国がニューヨーク条約の加盟国であっても、現地専門家に相談のうえ、現地仲裁法や実務運用を確認しておくことが望ましいといえます。

 日本もニューヨーク条約に加盟しており、例えば、日本の商事仲裁協会(JCAA)において取得した仲裁判断に基づき、同条約加盟国に所属している外国企業の財産に対し、強制執行をすることができます。

(3) 仲裁法

日本は、国連のモデル法に準拠した仲裁法を定めています。

  1. 仲裁合意

 仲裁合意は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者が和解をすることができる民事上の紛争(離婚又は離縁の紛争を除く。)を対象とする場合に限り、その効力を有すると規定されています(仲裁法第13条第1項)。仲裁合意は、当事者の全部が署名した文書、当事者が交換した書簡又は電報その他の書面によってしなければなりません(仲裁法第13条第2項)。一般的には、「仲裁条項」として契約書に規定します。また、仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、基本的に、被告の申立てにより却下しなければならないと定められています(仲裁法第14条第1項)。

    2. 仲裁人

 仲裁人の数は、当事者が合意により定め(仲裁法第16条第1項)、仲裁人の選任手続きも、法律で定められた場合を除き、基本的に当事者が合意により定めるところによります(仲裁法第17条第1項)。

    3. 仲裁判断において準拠すべき法

 仲裁廷が仲裁判断において準拠すべき法は、当事者が合意により定めるところによると規定されています。この場合において、一の国の法令が定められたときは、反対の意思が明示された場合を除き、当該定めは、抵触する内外の法令の適用関係を定めるその国の法令ではなく、事案に直接適用されるその国の法令を定めたものとみなされます(仲裁法第36条第1項)。

 

2.タイ

(1) 仲裁機関

タイの主要な仲裁機関として、以下が挙げられます。以下の仲裁機関以外にも、知的財産等、専門分野を取り扱う仲裁機関も存在します。

  1. The Thai Arbitration Institute (TAI)

仲裁法および仲裁機関に関する司法府規則に基づく仲裁機関。1990年設立。

     2. Thailand Arbitration Centre (THAC)

仲裁機関法に基づいて2007年に設立された非政府組織。国際仲裁制度を支援、促進し、国際的な紛争解決基準を満たすことを目的としている。

(2) 仲裁合意

仲裁合意については、原則、書面にて当事者により署名がなされている必要があります。契約書等の別様式にて規定することが可能です。

(3) 仲裁手続きの主な流れ(TAI)

  1. 当事者は、仲裁合意を行う。
  2. 申立人は、申立書を仲裁機関に提出し、仲裁機関は申立書の写しを被申立人に送付する。
  3. 被申立人は、申立書の写しを受領した日から15日以内に、答弁書を提出する。
  4. 当事者は、仲裁廷を指名する。
  5. 仲裁廷及び当事者は、180 日を超えない範囲で、手続に関するタイムテーブルを設定する。
  6. 審理
  7. 仲裁廷が手続終了を宣言した日又は最終弁論書類の提出期限から 30 日以内に裁定が行われる。
  8. 仲裁機関は、裁定を当事者に送付する。
  9. 当事者が裁定を受領した時点で、裁定は確定する。

(4) 国際仲裁

 タイは1959年12月21日から、ニューヨーク条約の加盟国となっています。したがって、例えば、同条約加盟国での仲裁判断に基づき、タイにおいて強制執行をすることが可能です。

 

3.マレーシア

(1) 仲裁法について

 マレーシアにおける仲裁手続は仲裁法(Arbitration Act 2005)によって規律されます。同法は、国内仲裁と国際仲裁を分けて規定しています。

 国内仲裁については、当事者による別段の合意がない限りマレーシア法が準拠法となります。国際仲裁については、当事者による合意がない場合、仲裁廷が準拠法を決定します。仲裁手続を規律する準拠法についても、当事者が合意に至らない場合、仲裁廷が決定することができます。

 仲裁合意は、書面によってなされなければならず、国内の仲裁機関によって行われた仲裁判断についても、裁判所による承認を経なければ執行をすることはできません。また、マレーシアはニューヨーク条約の加盟国であるため、マレーシア国外の仲裁判断をマレーシアにおいて執行することができます。

 国際仲裁には、仲裁法(Arbitration Act 2005)のPartⅠ(定義規定等)、PartⅡ(仲裁手続や裁定等の仲裁に関する一般的な規定が含まれる)、及びPartⅣ(仲裁人の責任等のその他の規定)が適用されます(仲裁法第3条第3項)。PartⅢ(仲裁の過程で生じる法律問題の決定を裁判所に申請する規定等の仲裁に関連する追加条項)は、当事者が書面で別段の定めをしない限り適用されません。

(2) AIACについて

 マレーシアにおける中心的な仲裁機関として、アジア国際仲裁センター(AICA:Asian International Arbitration Centre)が設置されています。マレーシア政府はAIACに対して、施設の供与及び資金の援助を行っており、マレーシア政府の様々な改革や支援を受けて受理件数は着実に伸び、AIACは今やアジアにおける中心的な国際仲裁機関の一つとなっています。

  1. 2018年AIAC規則(AIAC Arbitration Rules 2018)

  当事者がAIAC規則(AIAC Arbitration Rules)に従って紛争を仲裁することに書面で合意した場合には、当該紛争はAIAC仲裁規則に従い、仲裁により解決されます(2018年AIAC規則第1条)。仲裁地がマレーシアの場合は、仲裁法(Arbitration Act 2005)第41条(仲裁の過程で生じる法律問題の決定を裁判所に申請する規定)、第42条(裁定により生じた法的問題を裁判所に付託する規定)、第43条(控訴)及び第46条(裁定期間の延長)は適用されません(同規則第1条)。

  また、当事者が特に仲裁機関を指定しなかった場合は、仲裁廷が他により適切な仲裁地があるとの判断をしない限り、マレーシアのクアラルンプールとなります(同規則第7条)。

  このほか、2018年AIAC規則では、公平・公正でない仲裁人に対する異議の申立(規則第5条)、差止等の暫定措置に関する規定(規則第8条)、裁定に関する規定(規則第12条)、費用に関する規定(規則第13条)等が定められています。

    2. 2018年AIACファスト・トラック規則(AIAC Fast Track Arbitration Rules 2018)

 AIACでは簡易仲裁制度があり、短期間での仲裁を規定するファスト・トラック・ルール(Fast Track Rules)が当事者の合意により適用されます。このファスト・トラック・ルールによると、180日以内で手続が終了します。同ルールの下では、仲裁開始から90日で口頭審理を終え、さらに90日で裁定書を作成することになります(2018年AIACファスト・トラック規則第21条)。

 

4.ミャンマー

(1) ニューヨーク条約の批准

 ミャンマーは、外国の仲裁判断を国内で承認し強制執行を可能とする要件を定めた『外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約』(以下、「ニューヨーク条約」という(上記1(2)参照))を2013年に批准しましたが、当時ミャンマーの仲裁法(1944年)は外国仲裁判断の執行について規定されておらず、大幅な法改正が必要とされていました。

(2) 仲裁法

 ニューヨーク条約の批准に対応するかたちで、2016年1月5日、仲裁手続きによる紛争解決の奨励、仲裁手続による公平な紛争解決の実現、外国仲裁判断の承認・執行を目的とし、新たな仲裁法(以下「本法」という)が成立しました。

 外国仲裁判断をミャンマー国内で執行するには、まず、裁判所に対し1) 仲裁判断書の原本又は仲裁判断を下した地域の法令に従って規定された手法で適切に認証及び署名された仲裁判断書の写し、2) 仲裁合意の原本又は写し、3) 仲裁判断が外国仲裁判断であることを証明する必要な証拠を提出し執行申し立てを行う必要があります(第45条(a))。なお、これらの書面が外国語で記されている場合、申立人は、認証を受けた英訳を提出するか、ミャンマーの現行法に従って必要な基準を満たした認証を受けた英訳を提出しなければなりません(同条(b))。仲裁合意の当事者が行為能力の制限がある場合や仲裁手続に不公平が見られる場合、仲裁判断が法令や公序良俗に反する場合など特定の理由がある場合(第46条(b)(c))、を除き、外国仲裁判決を裁判所の決定と同じように承認・執行しなければなりません(同条(a))。第46条(b)(c)に基づき外国仲裁判断の承認が認められなかった場合や同条項に基づく無効の申し立てが却下された場合は、上訴することも可能です(第47条(a)(iii))。

 このように、内容としては他国と同様の内容が規定されているものの、実際の運用面においては、ミャンマーでは仲裁という制度自体を理解していない裁判官も多く、他国の仲裁判断の執行が認められない事例もあります。また、ミャンマーでは常設の仲裁機関が設置されておらず、仲裁人リストも存在しないという問題も存在します。したがって、紛争解決条項を安易に仲裁とすることは避けるべきであり、自社側が請求する場面が生じる可能性の方が高い場合には、ミャンマーの裁判所を紛争解決条項で規定する方が良い場合もあります。

 

5.メキシコ

(1) 関連規定

メキシコでは、仲裁は、商法(Código de Comercio)に規定されており、その規定は国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)の国際商事仲裁モデル法に対応したものとなっています。

また、メキシコは仲裁判断の承認・執行を認めるニューヨーク条約及び中南米諸国が多く加盟するパナマ条約を批准しています。

(2) 仲裁手続き

1. メキシコの仲裁機関

メキシコに所在する主な仲裁機関として、国際商業会議所(International chamber of commerce)やメキシコ仲裁センター(Centro de Arbitraje de México)、メキシコシティ商工会議所(Cámara Nacional de Comercio de la Ciudad de México)などが挙げられます。

2 仲裁合意

仲裁手続きを行うには、当事者の書面による仲裁合意が必要となります。両当事者の署名を付した書面の他、電気通信技術等を用いてその合意や合意の存在を記録したものもこの合意を示す書面となります。

メキシコ仲裁センターは、メキシコ仲裁センターでの仲裁を希望する当事者は契約書に以下のモデル条項のような仲裁合意を設けることを推奨しています。

〈スペイン語の場合〉

“Todas las desavenencias que deriven de este contrato serán resueltas definitivamente de acuerdo con las Reglas de Arbitraje del Centro de Arbitraje de México (CAM), por uno o más árbitros nombrados conforme a dichas Reglas”

〈参考日本語訳〉

「本契約に起因するすべての紛争は、メキシコ仲裁センター(CAM)の仲裁規則に従い、同規則に従って任命された1人または複数の仲裁人によって最終的に解決されるものとする。」

仲裁を合意した契約に関する紛争については、訴訟による解決は制限されます。仲裁合意が無効となるなどの場合を除いて、仲裁合意の対象となる紛争について訴訟提起を受けた裁判官は、当事者の請求により、当該紛争を仲裁に付すとされています。そのため、両当事者が仲裁合意の存在を主張しない場合には、訴訟による解決も可能ですが、いずれかの当事者が仲裁合意の存在を主張した場合には訴訟による解決はできません。ただし、仲裁合意がある場合でも、裁判所に対し、保全措置を求めることはできます。

  1. 秘密性

仲裁手続きについては当事者に裁量が与えられており、当事者は、仲裁を秘密にするかどうかを決定することもできます。したがって、当事者が仲裁合意において秘密保持を合意した場合は、仲裁人を含め、全当事者がこれに拘束されます。

    2. 仲裁の費用

たとえば、メキシコ仲裁センターでの仲裁にかかる費用は、メキシコ仲裁センターのホームページで確認することができます。係争金額に応じて、管理費や仲裁人費用が定められており、2011年10月1日以降の仲裁合意に基づく仲裁であって、200万ペソの係争金額の場合、管理費として4万2000ペソ、仲裁人費用として8万2200ペソと算出されます。

(2) 外国仲裁判断の承認・執行

上述の通り、メキシコはニューヨーク条約及びパナマ条約を批准しており、同条約の加盟国の仲裁判断は国内の裁判の判決と同等の効力を持ちます。

そのため、メキシコの仲裁判断はニューヨーク条約に基づき加盟国において執行することができます。また、同様に日本やアメリカなどにおける仲裁判断についても、裁判所から執行の許可を取得して執行することができます。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、国際商事仲裁、国際仲裁判断及びその他の仲裁判断の承認及び執行に関する法律として、2001年仲裁法(Arbitration Act, 2001(以下、仲裁法))が制定されました。なお、バングラデシュは、ニューヨーク条約(上記1(2)参照)の加盟国です。仲裁機関として、Bangladesh International Arbitration Centre (BIAC)や、Bangladesh Institute of Arbitration(BIArb)があります。

(1) 仲裁合意

 仲裁合意は、契約書の仲裁条項という形式又は個別の合意書という形式で定めることができ(仲裁法第9条(1))、書面にて行われなければなりません(同条(2))。

(2) 仲裁人

 仲裁人の数及び仲裁人の選任手続きは、当事者の合意により定めることができます(仲裁法第11条(1)及び第12条(1))。

(3) 外国仲裁判断の承認及び執行

 外国仲裁判断は、いずれかの当事者によって行われた申し立てについて、裁判所の判決と同じ方法で、民事訴訟法に基づいて裁判所によって執行されます(仲裁法第45条(1)b))。ただし、「紛争の対象である事項がバングラデシュの現行法により仲裁による解決が不可能なものであること」、または「外国仲裁判断の承認・執行が、バングラデシュの公の秩序に反すること」のいずれかに該当するときには、裁判所は、その仲裁判断の承認・執行を拒否することができると規定されています(仲裁法第46条(1)(b))。

 

7.フィリピン

(1) はじめに

 フィリピンにおいて、「仲裁」とは、共和国法第876号(「仲裁法」)及び共和国法第9285号(「ADR法」)に基づく紛争解決手段の一つです。仲裁は、当事者の合意または適用される規則に従って選任された単独か複数の仲裁人によって紛争を解決する任意の紛争解決プロセスです。  

 仲裁をはじめとするADR(裁判外紛争解決手続)は、通常、解決までにはるかに長い時間を要する裁判よりも有利な方法とされています。裁判とは異なり、仲裁では、適用される実体法、紛争を裁定する仲裁機関や仲裁人、タイムテーブルを含む手続規則などを当事者が自由に決定することができます。また、原則公開手続である裁判とは異なり、仲裁手続は非公開の手続で進行します。さらに、当事者が別途合意しない限り、係争金額の最低額など仲裁を進めるための条件は存在しません。

 なお、ADRに属する他の手段として「調停」があり、こちらは紛争当事者間の交渉を促進し、自発的な合意に至るよう支援する紛争解決手段として位置づけられています。仲裁とは異なり、調停人は事件を判断することはなく、紛争が解決または和解に至らなくても調停手続は終了することがあります。

 仲裁には、国内仲裁と国際仲裁があります。国内仲裁には仲裁法が適用され、国際仲裁には、1985年UNCITRALモデル法(「モデル法」)を採択したADR法が適用されます。仲裁手続は、①当事者間の仲裁合意、または ②既存の紛争に対する当事者による仲裁への自発的な申立によって開始されます 。 

 以下の事項に関する論争は、仲裁の対象とはなりません。 

  1. 労働紛争
  2. 人の民事上の地位に関するもの
  3. 婚姻の有効性に関するもの
  4. 離婚
  5. 刑事責任
  6. 法律により解決できないもの

(2) 仲裁合意

 国内仲裁において、仲裁合意は書面として作成され署名が付されなければいけません。国際商事仲裁でも、仲裁合意は同様に書面であることが要求されています。ここでいう「書面」には、手紙、テレックス、電報、もしくは合意の記録を提供する他の電気通信手段も含まれています。契約書に仲裁条項として付されたり、別個の契約書として作成されたりしたとしても、正当な仲裁合意と認められます。  

仲裁合意があるにもかかわらず裁判が係属した場合、当事者は、裁判所に対し、仲裁による解決を促すことを要求することができます。この請求は、遅くとも準備手続(pre-trial)中に行わなければなりません。準備手続終了後に当該請求がされた場合、裁判所は、すべての当事者が同意した場合にのみ審査することができます。口頭弁論を行った後に、裁判所が仲裁合意の存在を認識し、かつ当該紛争の対象が仲裁による解決が可能であると認める場合、訴訟を停止し、当事者に対し仲裁での解決を促すことができます。

フィリピンでは、仲裁合意は主契約から独立していると考えられており、したがって、主契約が無効であっても、仲裁合意の有効性には影響しません。フィリピン法の学説上は、いかなる疑義も仲裁に有利に解決され、裁判所は、契約条項が許す限り、仲裁条項を有効にするよう義務付けられています。

(3) 仲裁機関

仲裁は、機関を通じて行われる場合と、アドホックに行われる場合があります。フィリピンの仲裁機関としては、以下が挙げられます。

    1. 建設業仲裁委員会(Construction Industry Arbitration Commission:CIAC)
    2. フィリピンにおける建設契約に起因する、または関連する紛争について、原始的かつ排他的な管轄権を有しています。 これらの紛争には政府契約や民間契約が含まれますが、雇用関係の紛争は含まれません。CIACが管轄権を取得するためには、紛争の当事者がこれを任意の仲裁に委ねることに同意しなければなりません。 
    3. フィリピン紛争解決センター(PDRCI)
    4. フィリピン商工会議所の仲裁委員会が1996年に設立した非営利団体です。海事、銀行、金融、保険、証券、知的財産などの専門分野における仲裁・調停を管轄しています。
    5. フィリピン国際紛争解決センター(PICCR)
    6. 2019年に設立された非営利機関で、紛争当事者には商事仲裁などのADRサービスや施設を提供し、弁護士や実務家には専門的なトレーニング、認定を提供しています。
    7. なお、仲裁費用は、仲裁機関によって異なります。手数料の額に影響を与える要因としては、係争額、ケースの複雑さ、仲裁人の数、提出された反訴の有無、および物流・管理費用の高低などが挙げられます。

(4) 強制執行とニューヨーク条約の適用性

フィリピンは、1967年7月6日にニューヨーク条約を批准し、締約国となりました。批准に際してフィリピンは、この条約は他の締約国内で行われた仲裁判断にのみ適用され、商業的とみなされる法的関係から生じる紛争にのみ適用されることを宣言しました。ニューヨーク条約に基づく仲裁判断の承認と執行は、特別ADR規則に従い、適切な裁判所において申立て、審理されなければなりません。

 

8.ベトナム

(1) ニューヨーク条約

 ベトナムは、外国仲裁判断の承認および執行に関する条約(ニューヨーク条約)に加盟していることから、ベトナム国内での仲裁手続に加え、ベトナム国外での仲裁手続を利用することも可能です。但し、後述するとおり、ベトナム国外の仲裁判断をベトナム国内で直接執行することはできず、ベトナムの裁判所で承認を得る必要があります。

 なお、ベトナム企業に対しベトナムの裁判所に訴えを提起することも可能ですが、一般的に、公正な判断が期待できない可能性があると指摘されています。また、ベトナム企業に対し日本の裁判所に訴えを提起することも不可能ではありませんが、仮に勝訴判決を得たとしても、日本の裁判所の判決をもって被告であるベトナム企業のベトナム国内の財産に対して執行することが、制度上、できません(日本とベトナムとの間で、裁判所の判決を相互に承認するような条約などが存在しないためです。)。したがって、ベトナム企業との間で契約を締結するにあたっては、紛争解決方法として、ベトナム国内か国外での仲裁手続によることを規定しておくべきであるといえます。

(2) ベトナム国内仲裁手続

 ベトナムの商事仲裁法では、機関仲裁(特定の仲裁機関の規則に従って手続が進められる仲裁)の他に、当事者が仲裁手続の内容を合意し、仲裁機関を利用せずにその合意に従って行う「アド・ホック仲裁」も認められています。しかし、「アド・ホック仲裁」を利用する場合、仲裁手続の具体的内容、仲裁人の人数、仲裁人の氏名や選任方法など仲裁を行う上で必要となる様々な事項をあらかじめ合意しなければならず、また、仲裁判断を執行する場合においても、機関仲裁に比べ必要な手続が増えることなどから、実務上では「アド・ホック仲裁」が利用されることはほとんどないとされています。

 ベトナム国内の常設仲裁機関としては、ホーチミン商事仲裁センター(TRACENT)、ハノイ商事仲裁センター(HCAC)、ベトナム弁護士商事仲裁センター(VLCAC)など多数の仲裁機関がありますが、最も取り扱い件数が多いのは、ベトナム国際仲裁センター(VIAC)です。

 機関仲裁を利用する場合、当事者間で書面により、紛争解決方法として仲裁手続を利用することを合意(仲裁合意)する必要があります。仲裁合意は、紛争が起こってからすることも可能ですが、現に紛争が起きている段階で仲裁合意をすることが難しいこともあることから、契約書を作成する時点であらかじめ仲裁合意条項を規定しておくことが望ましいでしょう。

 ベトナム国内の仲裁手続を利用するメリットとしては、外国仲裁に比べて費用が低廉になることが多いことと、外国仲裁の場合、後述するとおり、ベトナムの裁判所から執行承認を得る必要があるのに対し、ベトナム国内の仲裁の場合は、執行承認を得る必要はなく、直接、「民事判決執行機関」に執行を申し立てることができることが挙げられます。一方、デメリットとしては、国際的に利用件数が多い国外仲裁機関(例えば、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)など)に比べ、処理件数が少なく、経験不足などにより不合理な判断が為される可能性があることが指摘されています。

(3) ベトナム国外仲裁手続の執行

 ベトナム国外の仲裁機関を利用した場合、その仲裁判断をベトナム国内で執行するためには、ベトナムの裁判所で承認を受けなければなりません。承認を受けるためには、外国仲裁判断の効力が生じてから3年以内に承認の申請をする必要があります。申請を受けた裁判所は、ベトナム民事訴訟法が規定する不承認事由があるか否かを検討し、不承認事由の1つにでも該当すれば仲裁判断の不承認の決定を、全ての不承認事由に該当しなければ承認の決定を下します。裁判所により承認された外国仲裁判断は、「民事判決執行機関」に申し立てることにより、執行することができます。一方、不承認の決定がなされた場合、不服のある当事者は、15日以内に、高級人民裁判所に対して上訴することができるとされています。

 なお、過去には、ベトナムでは外国仲裁判断が承認される割合が低いこともありましたが、近年では、承認率は上がってきているとされています。

 

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・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年3月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現在、31都道府県以下の期間・区域において、3月6日までを期限とし、まん延防止等重点措置が実施されています。感染拡大防止のための取り組みとして、各都道府県の知事の判断による、飲食店等に対する制限(時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の新規入国制限の見直しについて

外国人の新規入国については、原則として一時停止されていましたが、下記(a)又は(b)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めることとなります。

  1. 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国
  2. 長期間の滞在の新規入国

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(a) 入国後の自宅等待機期間の変更

  1. 検疫所の宿泊施設での待機対象となっている国・地域(以下「指定国・地域」)から帰国・入国する方で、COVID-19のワクチンを3回接種していない方は、指定の宿泊施設での3日間待機が求められます。宿泊施設で受けた検査の結果が陰性であれば、退所後の自宅等待機は求められません。
  2. 指定国・地域から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  3. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していない方は、原則7日間の自宅等待機を求められますが、入国後3日目以降に自主検査を受け、陰性の結果を厚生労働省に届け出て確認が完了した場合は、その後の自宅等待機の継続は求められません。
  4. 指定国・地域以外から帰国・入国する方で、ワクチンを3回接種していることが確認できる証明書を保持している方は、入国後の自宅等待機を求められません。

厚生労働省HP 検疫の宿泊施設で待機対象となっている国・地域

  1. 入国後の公共交通機関の使用について

 上記(a) ii)及びiii)に該当する方は、入国後の待機のため自宅等まで移動する際は、公共交通機関の使用が可能となります。

厚生労働省 HP 入国後の自宅等待機期間の変更等について

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は2,819,282名です。この内、2,606,363名が回復し、累計死亡者数は22,812名となっています。現在、新規感染者が増加傾向であり、1日2万人程度で推移している状況です。

2.2 タイ入国規制

 COVID-19状況管理センターは、2月23日、隔離免除でのタイ入国(Test and Go)のタイ入国後の条件を変更することを発表しました。

 タイ入国後のPCR検査について、以前はタイ到着日の検査および、タイ入国後5日目の検査を行う必要がありましたが、5日目の検査はATK検査を入国者自ら行うことが可能となり、隔離ホテル等の予約が不要となります。

1日目:タイ到着後、政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。

     陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。

5日目:入国者自らATK検査。隔離ホテルの予約不要。

加えて、Thailand passの登録時に必要とされていた医療保険の補償額については、従前の最低5万USドルから、最低2万USドルへと変更となります。

上記の変更は、3月1日以降のThailand Passの申請分より適用されるとのことです。

2.3 日本入国規制

厚生労働省は、2月24日、日本入国後の宿泊施設での待機等の変更について発表し、タイから日本への入国時に必要とされていた3日間の宿泊施設待機期間が、解除されることになりました(日本時間3月1日午前0時から)。詳細については、上記1.2に記載の厚生労働省HPの情報をご確認下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 2月23日の新規感染者数は、31,199人でした。感染者数は1月末の約6倍に急増し、現在ピークに達していると考えられます。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限令であるNRP(National Recovery Plan(これまではFMCOと呼ばれていました))では、全ての州が一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。

3.2 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下①~⑤に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国
  6. ランカウイ島へのトラベルバブル制度を利用した入国
  7. 目的を限定とした14日以内の短期商用(潜在的な投資家・既存の投資家・ビジネス顧客・技術者)での入国

 すべての渡航者は、出発前2日以内にPCR検査(スワブ検体)を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。隔離期間は、ブースター接種済みの成人又は単独で渡航する若年者(12歳から17歳)は5日間、ブースター未接種のワクチン接種完了者は7日間、ワクチン接種未完了者は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率が再び上昇傾向にあります。ヤンゴン市内は車・人の往来は普段と大きくは変わりません。

4.2 入国規制

2月は3日、17日にANA 便が飛びました。3月17日、31日、4月7日、28日に救援便が運航予定です。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。ミャンマー入国後のホテル隔離は、10日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

2月に入りメキシコのCOVID-19新規感染者の増加は鈍化し、感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、2月21日の週は、メキシコシティやケレタロ州を含む16州が黄色、グアナファト州やサンルイスポトシ州を含む16州が緑となりました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられており、マスクの着用などの要請は継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、2月24日に発表された1日の新規感染者が1,516名で陽性率は5.53%でした。2月21日にCOVID-19関連の規制は撤廃され、学校も再開されましたが、マスク着用は義務づけられています。

6.2 入国規制

 現在、日本からの渡航者については、隔離が免除されていますが、入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗前48時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明の提示が求められます。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計365万8892人で、死者数は累計56,224人です(2022年2月25日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約1000~2000人程度の新規感染者が報告されています。

 2月28日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル2」とされています。フェイス・シールド使用に関する規則によると、現時点で警戒レベル3以下の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。

 また、フィリピンでは、5~11歳に対するファイザー製の新型コロナ・ワクチン接種が開始されました。2月7日からマニラ首都圏で始まり、徐々に対象地域が拡大していく予定です。

7.2 入国規制

 2月10日から、ワクチン接種等した外国人(商用・観光目的の査証免除対象者、及び、既存の有効な査証を有する外国人)の入国が許可されています。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

2月24日、日本において3月以降の新たな水際対策措置が決定されました。また、フィリピンについて「水際対策上特に対応すべき変異株に対する指定国・地域」からの指定が解除されました。詳細は以下のとおりです。

    1. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加未接種者について、原則7日間の自宅等待機を求めることとした上で、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めない。
    2. フィリピン(指定国・地域以外)からの帰国者・入国者であってワクチン3回目追加接種者について、入国後の自宅等待機を求めない。
    3. 入国後24時間以内に自宅等待機のために自宅等まで移動する場合に限り、自宅等待機期間中であっても公共交通機関の使用を可能とする。
    4. オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域を別途指定する場合には、当該国・地域からの帰国者・入国者については、自宅等待機等の期間を14日間とする。(※なお、現時点で、フィリピンは「オミクロン株以外の変異株が支配的となっていることが確認されている国・地域」には指定されていません。)
    5. 外国人の新規入国について、受入責任者の管理の下、観光目的以外の新規入国を認める。
 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

 2022年2月23日午前9時の時点でにおけるベトナムでの累計感染者数は297万2378人で、日本のおよそ3分の2となっています。昨年12月頃から毎日の新規感染者数は1万6000人前後で推移していましたが、旧正月(テト)休暇があけた2月上旬から入って急激に増加し始め、2月23日の新規感染者数はベトナムとしては初めて6万人を超え6万0338人となりました。

 一方で、昨年10月から隔離措置等の様々な社会・経済規制は徐々に緩和されており、ワクチン接種や人数制限などの一定の条件はあるものの、多くの分野において事業活動の再開が認められています。

8.2 入国規制

(1) 航空機

 日本からベトナムへの直行便はこれまで特別便しか運行していませんでしたが、2022年1月から定期便が一部再開し、2月15日からはベトナム発着の全ての定期便の運航制限が解除されました。但し、各航空会社は、入国規制が実施されている現状をふまえ定期便の本数を限定しているのが現状です(例えば、2月24日現在、関西空港発のホーチミン行きの便は全て運休しています)。

(2) 入国制限〜ビジネス目的

 2022年2月24日現在、ビジネス目的でのベトナム入国が認められる外国人は、ベトナムにある機関、組織、個人によって招へいされる者に限られています。入国を希望する外国人が、滞在許可証、一時滞在許可書(Temporary Residence Card)、ビザ、ビザ免除証を有しない場合、各地方の人民委員会による入国承認を得た上で、公安省入国管理局による入国許可を得る必要があります。これまで、滞在許可証、一時滞在許可書(Temporary Residence Card)、ビザ、ビザ免除証を有していたとしても入国承認・入国許可を得る必要がありましたが、1月18日よりこれらを有していれば入国承認・入国許可は不要となりました(なお、APECビジネストラベルカードは、ビザ等には含まれないことから、原則どおり入国承認・入国許可を得る必要があります)。

 入国後の隔離期間は、2回以上ワクチンを接種した方、又はコロナウイルスに感染しその後治癒した方については3日間、それ以外の方は7日間です。

(3) 入国制限〜観光目的

 2021年11月中旬から非常に限られた地域、人数、日数での観光客受入れが試行されてきましたが、ベトナム政府は、2022年3月15日から本格的に観光客の受入れを再開する計画を発表しました。現時点で検討されている受入れのための条件は次のとおりです。

  1. 12歳以上であること
  2. パスポートの有効期限の残りが6か月以上であること
  3. 入国72時間前のRT-PCRテスト又は入国25時間前の迅速検査での陰性結果の証明書を提出すること
  4. 有効なビザ、一時滞在許可書(Temporary Residence Card)などを有すること(15日以内の滞在であればビザなどは不要)
  5. コロナ治療に対応した1万米ドル以上の医療保険に加入していること
  6. “PC-Covid”などのコロナ対応の健康管理アプリを自身のスマートフォンにインストールして利用すること
  7. この他、滞在可能ホテルが限定される見込みです。

 なお、2月24日時点において上記はまだ正式に決定されたものではありません。「8.1 COVID-19関連の規制状況」でご説明したとおり、最近は急激に新規感染者数が増加していることから、観光客受入れ再開の計画も変更される可能性があります。

第2.各国におけるE-コマース関連規制の概要

1.日本

 E-コマースに関連する法律は多く、以下が挙げられます(経済産業省:電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和2年8月))。紙面の都合上、特定商取引法におけるE-コマースの関連規定をご説明します。

  1. 関連法
法 律 目 的
特定商取引法
(特定商取引に関する法律)
特定商取引(訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売に係る取引、
連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引、業務提供誘引
販売取引並びに訪問購入に係る取引)を公正にし、及び購入者等が
受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、
あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて
国民経済の健全な発展に寄与すること
景品表示法
(不当景品類及び不当表示防止法)
商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止
するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある
行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること
個人情報保護法
(個人情報の保護に関する法律)
高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、
個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の
個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務
等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定める
ことにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある
経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の
有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること
資金決済法
(資金決済に関する法律)
資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護するとともに、
当該サービスの提供の促進を図るため、前払式支払手段の発行、銀行等以外の者が行う
為替取引、暗号資産の交換等及び銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算
について、登録その他の必要な措置を講じ、もって資金決済システムの安全性、
効率性及び利便性の向上に資すること
通則法
(法の適用に関する通則法)
法の適用に関する通則について定めるもの
(越境ECの準拠法に関する規定)
電子契約法
(電子消費者契約及び電子承諾通知に
関する民法の特例に関する法律)
消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について特定の錯誤
があった場合に関し、民法の特例を定めるもの
特定電子メール法
(特定電子メールの送信の適正化等に
関する法律)
一時に多数の者に対してされる特定電子メールの送信等による電子メールの送受信上の
支障を防止する必要性が生じていることにかんがみ、特定電子メールの送信の適正化
のための措置等を定めることにより、電子メールの利用についての良好な環境の整備
を図り、もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与すること

   2. 特定商取引に関する法律(特定商取引法)

 特定商取引法は、上表にある通り、7種類の取引を対象としています。特定商取引法第2条2項では、「通信販売」とは、販売業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下、「郵便等」)により売買契約の申込みを受けて行う商品若の販売であって電話勧誘販売に該当しないものをいうと規定しており、E-コマースは、通信販売に該当します。今回は、商品の販売業者がE-コマースにて商品を販売するケースを想定してご説明しますが、特定権利の販売及び役務の提供の場合にも同様の規定が適用されます。

   3. 広告規制

 販売業者が、商品の販売条件について広告をする際には、重要事項(商品の販売価格、支払いの時期及び方法、契約の解除に関する事項等)を表示することを義務付けています。ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、これらの事項の一部を表示しないことができます(第11条)。また、広告をするときは、当該商品の性能、売買契約の申込みの撤回又は解除(以下「申込みの撤回等」)に関する事項その他省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならないと規定されており、誇大広告等は禁止されています(第12条)。

   4. 承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供の禁止等

 商品の販売条件について、その相手方の承諾を得ないで電子メール広告をしてはならないと規定されています。ただし、相手方の請求があるときや、省令で定める方法により当該申込み若しくは当該契約の内容又は当該契約の履行に関する事項を通知する場合において、省令で定めるところにより通信販売電子メール広告をするときや、通常メール広告の提供を受ける者の利益を損なうおそれがないと認められる場合として省令で定める場合において、通信販売電子メール広告をするときなどは除かれます(第12条の3第1項)。

   5. 通信販売における承諾等の通知

 販売業者は、売買契約の申込みをした者から当該商品の引渡しに先立って当該商品の代金の全部又は一部を受領する通信販売をする場合において、郵便等により当該商品につき売買契約の申込みを受け、かつ、当該商品の代金の全部又は一部を受領したときは、遅滞なく、省令で定めるところにより、その申込みを承諾する旨又は承諾しない旨、その他の省令で定める事項をその者に書面により、又は、申込者の承諾を得た場合は、電磁的方法その他の法令で定める方法により、通知しなければなりません。ただし、当該商品の代金の全部又は一部を受領した後遅滞なく当該商品を送付したときは、この限りではありません(第13条1項及び2項)。

  6. 通信販売における契約の解除等

 購入者は、その売買契約に係る商品の引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回等を行うことができますが、販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合には、この限りでないと規定されています(第15条の3第1項)。販売業者は、関連法令に定められた方法で、申し込みの撤回等に関する特約(返品の可否、返品の条件等)を表示していない場合は、同法により、8日以内であれば購入者による返品が認められることになりますので注意が必要です。また、申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡しが既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担となると規定されています(第15条の3第2項)。

 

2.タイ

(1) E-コマース関連法

 E-コマースに関連する主要な法律として、以下の法律が定められています。

  1. 電子取引法(Electronic Transactions Act B.E. 2544 (2001))
    1. 国際法をベースに、タイの情勢に合うように修正されたものとなります。この法律は、電子署名や電子取引に関するサービス事業、デジタル本人認証システム、公共分野の電子取引等、様々な分野の電子取引に関して定めています。
  2. コンピュータ犯罪法(Computer Crime Act B.E. 2550 (2007))

 コンピュータ関連犯罪について定めています。

(2) E-コマースビジネス

 タイでE-コマースビジネスを始めようとする場合、まず商業登記が必要となります。

商業登記要件については、商業登記法(Business Registration Act B.E. 2499 (1956))および商業登記義務を負う者に関する商務省規則(No.11)(Regulation of Ministry of Commerce on Persons who Have the Duties for Commercial Registration (No. 11), B.E. 2553 (2010))によって規定されています。

以下の事業を行う者は,E-コマース商業登記を行わなければなりません。

    1. インターネットシステムを介した電子メディアによる商品またはサービスの売買を行うWebサイト事業
    2. インターネットサービスプロバイダ事業
    3. Webホスティング事業
    4. E-マーケットプレイス(インターネットシステムを介した電子メディアによる製品、商品、サービスの売買のための中央マーケット)上の事業

* 商業登記をせずにE-コマース事業を行う個人および法人は、商業登記法に違反したものとみなされ、その違反が是正されるまで日割りで罰金が科されるため注意が必要です。

(3) E-コマース登録手続き

1. Webサイトを完成させ、オンラインサービスを提供できる状態にする必要があります。E-コマース登録は、事業を開始した日から30日以内に完了する必要があります。

2. E-コマース登録の申請先

バンコク内:事業所の所在地に応じた50の区役所(District Office)の行政課、またはバンコク都庁の財政政策室(50区全てをカバー)

バンコク以外:事業所の所在地に応じた市町村や県内の行政機関

3. E-コマース登録の必要書類

(a) E-コマース事業者のタイ国民IDカード及びHouse registrationのコピー

(b) E-コマース登録申請書

(c) Webサイトの詳細

(d) Webサイトの最初のページをプリントアウトしたもの

(e) 事業所在地の地図

(f) 会社の登記証明書(法人の場合)

(g) 委任状(代理人による申請の場合)

* 事業者が外国法人の場合は、労働許可証や外国人事業許可(ある場合)等の提出が必要となります。

* 申請先により、必要書類等が異なる場合があります。

4. 費用

(a) 新規E-コマース登録: 50バーツ

(b) 変更登録: 20バーツ

(c) 事業解消登記: 20バーツ

E-コマース登録が完了すると、オンラインプラットフォームを介してビジネスを行うことができます。

また、この他にE-コマース事業を営んでいることを証明するE-コマース事業者証明書や、E-コマースの信頼性を証明するためのDBD Verified ロゴ等の申請も可能です。このロゴは、その信頼性の度合い等により、シルバー、ゴールド、プラチナの三種類のクラス分けがなされています。

 

3.マレーシア

(1) 外資規制

 E-コマース事業に関して外国資本を規制する法律・規則等は確認できず、100%外資の会社E-コマース事業を行うことが可能であると考えられます。

(2) WRTライセンス

 流通・サービス業を行う事業体に対しては、国内取引消費者省(MDTCC:Ministry of Domestic Trade, Co-operatives & Consumerism)よりWRT ライセンス(Wholesale Retail Distributive Tradeライセンス)の取得が義務付けられています。E-コマース事業は、サービス業に該当し、WRTライセンスの取得は必要となるものと考えられます。WRTライセンスは、実務上は外資が51%以上となる場合にのみ要求されています。

(3) 消費者保護法(Consumer Protection Act 1999)・消費者保護(電子商取引)規則(Consumer Protection (Electronic Trade Transactions) Regulations 2012)

 消費者保護法は、消費者の保護、国家消費者諮問評議会及び消費者苦情審判所の設立、及びそれに関連する事項について規定する法律です。消費者保護(電子商取引)規則は、オンラインマーケットプレイスに従事する事業者に対し消費者の利益を保護するための一定の措置を講じることを義務付けています。

 具体的には、オンラインマーケットプレイスにおいて商品又はサービスの供給を目的とする事業者(以下「オンライン事業者」という。)は、以下の情報をウェブサイト上に開示する必要があります(同規則3条)。

  1. 事業及び事業者の名前
  2. 会社の登録番号
  3. 事業者の電子メールアドレス及び電話番号、又は住所
  4. 商品又はサービスの主な特徴
  5. 輸送費、税金、その他の費用を含む商品又はサービスの総額
  6. 支払方法取引条件
  7. 購入者への商品又はサービスの配達予定時間

また、オンライン事業者は、以下の措置を取らなければならなりません(同規則4条)。

  1. 注文の確定前にバイヤーが申込を修正できるようにする措置
  2. 注文を受領したことを遅滞なくバイヤーに通知する措置

 さらに、オンラインマーケットプレイスの運営者は、商品又はサービスの供給者の名前、電話番号及び住所に関する記録を2年間にわたり保存するための合理的な措置を講じる必要があります(同規則5条)。

(4) 個人情報保護法(Personal Data Protection Act 2010)に基づく登録

 E-コマース事業ついて、個人情報保護法上の「個人情報の処理を行う者」に該当すると考えられることから、個人情報保護法に基づく対応も必要となります。

(5) 取引表示法(Trade Description Act 2011)

 取引表示法は、商品やサービスの供給に関連する誤った表示、虚偽又は誤解を招くような説明、行為及び慣行を禁止することで良好な取引慣行を促進するとともに、関連又は付随する事項の提供を目的とする法律です。取引表示法は電子取引にも適用され、商品及びサービスに関して虚偽の説明又は広告をすることは禁止しているため、同法に基づく対応も必要となります。

 

4.ミャンマー

 小売業については、外資がライセンスを取得するのはハードルが非常に高いです。しかし、E-コマースについては小売業の規制が適用されないと解されており、事実上、小売業の規制の適用を受けることなく行うことができます。E-コマース業者の登録を必要とする法案が存在するものの、現状としては公布されていません。

 

5.メキシコ

(1) 関連する法規定

メキシコにおいて、E-コマースを体系的に規制する法令はなく、商法(Código de Comercio)に規定される電子的手法による契約に関する規定や連邦消費者保護法(Ley Federal de Protección al Consumidor)に規定される電子商取引における消費者保護規定などを遵守する必要があります。取扱品についても、商品ごとに適用される法令や輸出入規制などを遵守する必要があります。

その他、メキシコ国内に拠点を持たない海外居住者がデジタル・サービスを提供する場合について、付加価値税法(Ley del Impuesto al Valor Agregado)及び税務細則(Resolución Miscelánea Fiscal)に付加価値税の負担や領収書発行に関する規定が設けられています。

(2) 商法上の電子情報の受信に関する規定

E-コマースにおいては、契約の申込みや承諾、取消しなどの意思表示も電磁的な手段を用いて行われ、どの時点で意思表示が到達したか問題となった場合にはその到達時期を確定する必要があります。電子情報は、送信者と受信者の間で別段の合意がない限り、受信時刻は次の時刻として決定されます。

    1. 受信者が電子情報の受信のためにウェブサイトなど電子情報の生成、送信、受信、保存、その他の処理を行うために使用される機構(以下「ウェブサイト等」)を指定している場合、その受信は、当該ウェブサイト等に入った時点
    2. 電子情報が指定されたウェブサイト等以外のアドレスのウェブサイト等に送信された場合、または指定されたウェブサイト等が存在しない場合、アドレスが電子情報を取得した時点
    3. 受信者がウェブサイト等を指定していない場合、電子情報が受信者のウェブサイト等に入った時点

(3) 連邦消費者保護法上の義務

電子的、光学的又はその他の技術を用いて行われる取引における事業者と消費者間の取引に際し、事業者は次の事項を遵守するものとされています。

    1. 事業者は、消費者自身が明示的に許可した場合、又は管轄当局の要求がある場合を除き、取引外の他の供給事業者に情報を広めたり送信したりしてはならず、消費者から提供された情報を秘匿しなければなりません。
    2. 事業者は、利用可能な技術的要素を使用し、消費者から提供された情報の保護と機密の維持を図り、当該要素の一般的な特徴を予め消費者に通知しなければなりません。
    3. 事業者は、契約締結前に、自身の住所、電話番号、その他消費者が苦情を申し出たり説明を求めたりできる手段を提供しなければなりません。
    4. 事業者は、製品の特性に関して誤解を招くような行為を避け、商品やサービスに関する情報又は広告において、真実性、検証可能性、明確性を備え、誤解を招く文字、ダイアログ、音、画像、ブランド、原産地表示を用いてはなりません。
    5. 事業者は、利用規約、提供する商品やサービスの価格や料金、追加料金(ある場合)、支払い方法について、消費者がすべての情報を知る権利を行使できるようにしなければなりません。
    6. 事業者は、購入を希望する商品の量及び質に関する消費者の決定、並びに商業広告を受け取らないという決定を尊重しなければなりません。
    7. 事業者は、提供されるサービスに関する明確かつ十分な情報を消費者に提供しない販売又は広告戦略を使用してはなりません。特に、子供、高齢者、病人などの弱者を対象としたマーケティングの場合は、情報がこれらの人々に適していない場合に警告する仕組みを組み込むものとします。

そのほか、E-コマースに限りませんが、「バーゲン(oferta)」、「格安(barata)」、「ディスカウント(descuento)」、「大安売り(remate)」などの表現を行う場合は、通常価格を下回る価格で販売されると理解され、広告には販売の条件や期間、提供される商品やサービスの量を示す義務があります。E-コマースにおいても、このようなプロモーションを行う場合、消費者は、事前に決められた販売期間中、または、入手可能性がある限り、当該商品やサービスを購入する権利を有するとされており、当該商品の購入やサービスの利用ができない場合には、消費者は、契約の履行、別の同等商品やサービスの受領、契約解除のほか、通常価格との差額の支払いを受ける権利を有するとされている点にも留意する必要があります。

(4) メキシコ規格の規定内容

連邦消費者保護法第76 BIS 1条では、提供する商品やサービスに適用される条件等、商品の購入やサービスの利用について、その意思や条件を消費者が確認できるメカニズム、消費者の個人情報や取引に関する情報を機密に保持するためのメカニズム、苦情受付方法や支払い方法などについて、メキシコ規格を制定することと規定されており、NMX-COE-001-SCFI-2018が施行されました。メキシコ規格は順守義務を課す規格基準ではなく、この規定に反した場合の制裁もありませんが、消費者とのトラブルを回避するためにも従うことが推奨されます。

    1. 情報提供や広告
    2. ウェブサイト等で提供される情報及び広告は、真実性、検証可能性、明確性を有するものであり、誤解を招くような、又は乱暴な表現によりユーザー及び消費者を混乱させる可能性のある文字、ダイアログ、音、イメージ、その他の概念を含んでいてはなりません。
    3. 商品やサービスに関する情報及び広告は、スペイン語で明瞭かつ読みやすい文字で書かれていなければならず、価格や料金は、メキシコペソで記載されていなければなりません。ただし、補足的に他の言語や通貨で表示しても構いません。疑義が生じた場合は、スペイン語やメキシコペソの表示が優先されます。
    4. ウェブサイト等で公開すべき商取引の条件
    5. ウェブサイト等では、少なくとも次の情報を含む取引の条件を公開しなければなりません。

(a) サプライヤーを特定するための情報

i)屋号、ii)ブランド(該当する場合)、iii)商号(該当する場合)、iv)メキシコ国内の住所、v)納税者番号(Registro Federal de Contribuyentes、通称RFC)、vi)電話番号、又はその他の連絡手段(ソーシャルメディア)、及びvii)電子メールアドレス、ウェブサイトURL、運営している外部ポータルサイトURL

(b) ウェブサイト等の機能における利用不能、アクセス不能、又は中断から生じる責任に関する情報

(c) 商品やサービスの取得手続きに関する情報

これには、商品やサービスの特性や制限事項を知ることができる箇所を示す必要があります。

(d) 法に定める消費者の権利に関する情報

これには、消費者が責任又は正当な理由なく同意を取り消すことができるようにするための手続きを含める必要があります。なお、この取消の条件は次の通りです。

・ 商品の引渡又はサービスの受領の時期から5営業日以内であること

・ 商品又はサービスが使用又は消費されていないこと

・ 商品又は製品が引き渡された当初の状態(付属品、包装、マニュアルなどを含む)で保管されていること

・商品又はサービスの購入及び支払いが証明できること

(e) 通知方法又は消費者との連絡手段に関する情報

(f) 商品やサービスの返品又は交換、あるいは該当する場合には払い戻しの仕組みに関する情報

これには、必要な場合は、税務証憑の取得及び税務証憑の修正の仕組みに関する情報を含みます。保証は法律に定める期間を下回ってはならず、これを提供する場合には、保証期間を通知しなければなりません。

(g) 対応する曜日や時間帯、解決までの所要時間を含む、苦情や問い合わせへの対応に関する情報

(h) 紛争が発生した場合に適用される規則及び方針、並びに法的解釈や、適用されうる法律やメキシコ連邦消費者保護局の権限

(i) 該当する場合には、ウェブサイト等へのアクセスに関する年齢制限。

これは、ウェブサイト等の内容及び事業の性質によって決定されます。成人専用のサイトでは、未成年者のアクセスをブロック又は防止する仕組み、又はユーザーや消費者が連邦民法で定められた法定年齢に達していることを表明する通知を表示する仕組みを設ける必要があります。

(j) ユーザー又は消費者の登録及びアクセスに関する要件、並びにウェブサイト等の使用に関する規定

(k) 情報セキュリティを危険にさらす可能性のある情報を除く、ウェブサイト等のセキュリティメカニズムに関する情報

(l) 請求と支払の条件、税務証憑や商取引の証憑の入手方法、それらの訂正を求める方法

(m) 輸入された商品の場合、商品の原産地

商品には、修理可能な場所や使用方法の通知、及び法律で定められた最低限度の保証が含まれていなければなりません。

(n) 必要な場合は、商品の返送と商品の交換又は支払金額の返金や割戻を求める権利、あるいは補償を受ける権利の通知

交換や返金は次の場合に可能となります。

・商品が返送される場合

・品質、ブランド、仕様等が提供された情報と異なる場合

・ラベル、容器、包装に関する規定などメキシコの公式規格に準拠していない場合

事業者の責に帰すべき事由により、サービスの提供に不備がある、又は提供されない場合、又はメキシコの公式規格に準拠していない場合には、割戻し又は補償を受ける権利を通知しなければなりません。

3 商品、製品やサービスに関する情報

提供される商品、製品又はサービスの内容は広告で提示されたものと一致しなければなりません。したがって、ウェブサイト等は、提供される商品、製品又はサービスに関する情報を表示し、常に最新の状態に保たなければならず、少なくとも次の内容を含んでいなければなりません。

(a) 商品の場合

i) 仕様(寸法、機能、色、品質、製造に使用された材料、新品か中古であるか、中古の場合、修理済み、使用済みといった情報)を含む商品の説明、ii) GTIN(Global Trade Item Number、商品識別コード)(任意)、iii) 商品や製品の入手可能性や在庫状況、iv) メキシコペソでの支払い総額、その他税金や追加料金、該当する場合は、キャッシュボーナス、景品、割引など、v) 保証を提供する場合は、保証期間、vi)配送形態(費用、時間、配送オプションを含む)、並びに配送事業者を利用する場合の配送事業者の責任、及びvii) 該当する場合は、視聴覚的識別手段及び操作方法(写真、ビデオ、説明書、品質証明書、マニュアルなど)

(b) サービスの場合

i) サービスの説明(サービス提供の日時、場所、サービス提供者など)。また、サービス提供のために下請事業者を利用する場合は、その旨と下請事業者に関する情報、ii) 保証を提供する場合の保証期間、iii) 適用されうるサービスの制限、iv) サービスの期間、v) メキシコペソでの支払い総額、その他税金や追加料金、該当する場合は、キャッシュボーナス、景品、割引など、定期的な料金の支払いの有無とその変更方法、vi) サービスの更新、変更、解除や解約の手順、vii) 当初の契約内容に変更が生じる場合の通知と同意の方法

ウェブサイト等は、消費者が商品・製品・サービスを評価し、商取引の経験をフィードバックするとともに、他の消費者の評価や意見を知ることができる仕組みを有していなければなりません。

4 個人情報の取扱

プロファイリング、オンライン行動分析、マーケティング、広告又は商業的調査を目的としたユーザー及び消費者の個人情報の取扱については、以下の対応が必要となります。

(a) 個人情報の取扱について、プライバシーポリシーで通知すること

(b) 事前にユーザー又は消費者本人の同意を得ること

プライバシーポリシーとは別に、事前にユーザー又は消費者に対して、かかる目的で個人情報を利用することについて同意を求めることができる仕組みを用意しなければなりません。

(c) 同意を撤回するために利用できる手段と手続の提供

また、事業者は、個人情報保護法などに定める個人情報保護に関する義務を考慮して、ウェブサイト等を設計または選択するなど個人情報の取扱に適切な措置を講じなければなりません。

5 取引の取消等

ウェブサイト等は、消費者が取引の確認、承諾、修正又は取消を行うことができる仕組みを有していなければなりません。

(4) 付加価値税法及び税務細則上の規定内容

デジタル・サービスの提供については、メキシコ国内に拠点を持たない海外居住者であっても、当該サービスの提供にかかる付加価値税を負担することになります。

  1. また、サービスの受領者から要求があった場合は、居住する地域で適用される規則に従って、領収書(PDFファイル形式)を電子的に発行し、送付しなければなりません。この領収書には、①発行者の氏名又は法人名、②発行された国と都市、③発行者の納税者番号、④サービスの対価としての価格(付加価値税を除く)、⑤サービスにかかる付加価値税、⑥サービスのコンセプトや説明、⑦発行日と対価の対象となる期間、⑧受取人のRFCが記載されている必要があります。

対象となる「デジタル・サービス」は、画像、映画、文章、情報、動画、オーディオ、音楽、ゲーム、その他のマルチメディアコンテンツ等へのアクセスやダウンロード(電子書籍、新聞、雑誌へのアクセスやダウンロードは除く)、商品・サービスの提供者と利用者を仲介するサービス、オンラインクラブやデートサイト、オンラインでの通信教育やテスト、演習が該当します。

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、Eコマースの急成長に伴い、これまでNational Digital Commerce Policy, 2018(2020年に改正)、Digital Commerce Operation Guidelines, 2021(以下「ガイドライン」)が商務省により施行されています。実務で必要な事項を定めているガイドラインの概要をご紹介します。

  1. 目的及び適用範囲

 デジタルコマース事業における透明性、説明責任を促進し、雇用機会と消費者保護を創出し、デジタルコマース事業に規律をもたらし、起業家に機会を提供する競争市場を創出することにより、消費者の信頼と権利を高め、確保するための措置を講じることを目的としています。バングラデシュ国内の事業及びデジタルコマース管理にその関連法が適用される事業を行う全てのデジタルコマース事業者に適用されます。

     2. 事業者の要件

 ガイドラインでは、すべてのデジタルコマースオペレーターが営業許可、VAT登録、納税者識別番号、少なくとも1つの独自のビジネスID番号(UBID)又は個人の小売アカウント(PRA)番号を取得し、それらをマーケット又はソーシャルメディアページに表示する必要があると明記しています。UBID又はDBIDの登録は、2022年2月に立ち上げられたポータルmygov.bdにて可能です。すべての外国のデジタルコマース事業者は、バングラデシュで登録し、事業実施のために当局から許可を得る必要があります。

マーケットは、第三者によって提供される商品又はサービスに関する情報が提供され、取引プロセスが完結するデジタルコマースサイト又はポータルとして定義されます。マーケットは、第三者の売り手との間で別段の合意がない限り、必要な手数料と配送料を差し引いた金額を10日以内に第三者の売り手に支払う必要があります。

        3. 必須記載事項

 購入と返品の詳細な条件、商品の数量、材料、価格、配送料、その他の料金などを表示し、さらに、購入者が情報に基づいて決定できるように、販売する商品の画像や動画などを提示する必要があります。デジタルコマース市場又はFacebookページは、ベンガル語およびその他の言語(必要な場合)で記載し、購入と販売、払い戻し、返品又は商品の変更、配送方法、配送時期その他の条件のポリシーを明確に表示する必要があります。

        4. 制限事項

 爆発物など禁止されている商品やサービスをデジタルコマースプラットフォームで購入又は販売することは禁止されています。オンライン競売又はオンライン賭博、政府の承認なしの宝くじや抽選はできません。また、医薬品管理局からのライセンスのない、デジタルコマースプラットフォームでの医薬品の販売、バングラデシュ銀行の許可なく、デジタルメディアを介した金銭に関連するビジネスを行うことはできません。

       5. その他の要件

 デジタルコマースプラットフォームは、個人データを取得する場合、どのような情報を取得するのか、どこに保存されるのか、使用目的、処理プロセスについて知らせ、購入者の事前の承認を得る必要があります。バングラデシュ銀行の許可なしに、又はバングラデシュ銀行の指示に違反して、デジタルウォレット、ギフトカード、現金バウチャー又はその他の支払い方法を実施することはできません。事業に関連するすべての情報は、少なくとも6年間保存され、要求に応じて政府機関に提供されるものとします。配送のタイムラインも明確化されており、ガイドラインに従い、同じ都市内で配送される製品は、支払いが行われる場合は5日以内、別の都市に配送される場合は10日以内に配送されるものとします。日用品又は生鮮品の場合、配達はより早く行われ、購入者に同様に知らされなければなりません。

     6. 苦情と救済措置のメカニズム

 マーケットには、消費者が苦情を申し立てることができる必要な電話番号、電子メール、その他の通信手段を含める必要があります。かかる苦情は記録されなければならず、解決策は72時間以内に消費者に提供されなければなりません。デジタルコマースプラットフォームは、適切な評価及びレビューシステムを確保することになっており、購入者はそれらを表示して情報に基づいた選択を行うことができ、レビューはプラットフォームによって消去されません。

 当局は、ガイドラインに準拠していないプラットフォームに対して必要な措置を講じることができ、その措置には、マーケットの禁止、営業許可、会社登記、VAT登録の取り消しなどが含まれます。ガイドラインを遵守しないこと生じた損失に対する救済措置として、影響を受ける者又は購入者は、消費者権利保護局を含む関係裁判所に苦情を申し立てることができます。

 

7.フィリピン

 現在の電子商取引法は、「国内及び国際間での商取引、取り決め、合意、契約及び情報の交換・保存を、電子的、光学的、その他の媒体、様式、手段、技術の活用を通じて円滑化することで、上記諸活動に関連する電子文書が真正で信頼に足るものであることを保証し、行政および一般公衆における電子的取引の普遍的な活用を促進する」ことを趣旨とし、2000年に制定されました。

 同法の下では、電子的文書はその他の媒体で書かれた文書と同様の法的効力、妥当性、執行力を有しており、現行法において、紙媒体の文書と証拠としての機能として等価であるとされています。電子署名もまた、紙媒体における署名と等価であるとみなされます。

 電子的文書、電子署名、および電子的メッセージが司法手続において証拠として採用されるためには、紙の文書と同様、それらを真正ものとして証明しなければならず、司法手続においてこれらを立証しようとしている者にその証明義務が発生します。証明の方法は貿易産業省によって公布された施行規則(IRR)が定めるところに従わなければなりません。

 また、電子情報へのアクセス権を持つ者は、その情報の秘匿性を守り、他者に共有してはならず、ハッキングや違法コピー、さらには消費者法やその他関連法に違反した者を処罰の対象とすることも定められています。

 E-コマースを行う場合、事業の性質上小売事業としての性質を伴う場合があります。小売事業をフィリピンにおいて営む場合には外資規制に則った資本要件を満たす必要があるため注意が必要です。

 

8.ベトナム

 ベトナムにおけるE-コマースは、主に政令52号及び政令85号によって規定されています。政令85号は、政令52号を改正する法律であり、2022年1月1日から施行されています。

(1) 外資規制

 ベトナムでE-コマース事業を行うためには、会社を設立するか、既存会社の株式購入又は出資のどちらかの投資形態によります。出店者/販売者数、取引量、金額等をもとにベトナムでのE-コマース事業者として上位5社にリストされた企業を支配するためには、公安省による国家安全保障に関する評価を受ける必要があります(政令85号67c条)。

(2) ECサイト開設に関する規制

 ベトナムにおいてECサイトを開設する場合、商工省(MOIT:Ministry of Industry and Trade)に届け出なければなりません。組織の場合は、ECサイトを開設・運営に関連する機能を有していること、個人の場合は税務コードが必要となります。また、有効なドメイン名を持つウェブサイトがあり、情報管理に関する規則を遵守していることも必要となります(政令52号52条)。

(3) ベトナムにてECサイトを開設する外国法人/外国人投資家に対する規制

 ベトナム国内において会社を設立しなくても、ベトナムのドメイン名で開設されたECサイト、ベトナム語で表示されたECサイト又は1年以内にベトナムでの取引が10万件以上あるECサイトを有しサービスを提供する者は、政令85号の規制の適用対象となります。この場合、政令に基づきE-コマース事業の登録を行うこと、及び駐在員事務所の設立又はベトナムにおける代理人の任命等の手続を行わなければなりません(政令85号67a条)。

(4) ベトナムのECサイトで商品を販売する外国法人/外国人投資家に対する規制

 ベトナムでECサイトを開設し運営する者は、当該ECサイトにて商品を販売する外国法人/外国人投資家に対して身元を確認する義務を負います。また、当該外国法人/外国人投資家に対する輸出入権の登録の要請、ベトナムにおける代理店の選定を要請、買主から委託された輸入手続の実施等の責任を負います(政令85号67b条)。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

 URL: https://www.kt-vietnam.com/

Newsletterの記載内容は2022年2月25日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現在、以下の期間・区域において、まん延防止等重点措置が実施されています。

1月9日から2月20日まで: 広島県、山口県、沖縄県

1月21日から2月13日まで: 群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、岐阜県、愛知県、三重県、香川県、長崎県、熊本県、宮崎県

1月27日から2月20日まで: 北海道、青森県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、石川県、長野県、静岡県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、岡山県、福岡県、佐賀県、大分県、鹿児島県

 感染拡大防止のための取り組みとして、各都道府県の知事の判断による、飲食店等に対する制限(時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

オミクロン株対応の水際対策措置として、「特段の事情」がある場合を除く、全ての国・地域からの外国人の新規入国の停止が、2月末までの間、継続されています。

(1) 検疫の強化

「オミクロン株(B.1.1.529系統の変異株)に対する指定国・地域」、「水際対策上特に対応すべき変異株等に対する指定国・地域」、「水際対策上特に対応すべき変異株以外の新型コロナウイルスに対する指定国・地域」として、それぞれ措置を講じていますので、日本入国に当たっては、出発する国がどの指定国・地域に該当するか確認したうえで対応する必要があります。

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は2,415,472名です。この内、2,309,648名が回復し、累計死亡者数は22,129名となっています。1月に入ってからオミクロン株の感染が拡大しておりますが、新規感染者は1日7千人程度で推移している状況です。

タイ政府は、1月21日、管理区域の再指定を行っています。バンコク都を含む26都県は、引き続き「ブルーゾーン」に指定されています。バーや娯楽施設については営業が認められておりません。イエローゾーン、ブルーゾーンは、飲食店でのアルコールの提供について、認証を受けた施設は午後11時までの提供が認められています。

2.2 入国規制

タイ政府は、2月1日(火)午前9時より、隔離免除でのタイ入国(Test and Go)を再開することを発表しています。従前の手続きと同様、Thailand Passにより登録を行う必要があります。

タイ入国後のPCR検査について、以前はタイ到着日の1回の検査のみでしたが、今後は、タイ入国後5日目にも、指定場所にてPCR検査を行う必要があります。

1日目:タイ到着後、政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。

     陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。

5日目:政府指定隔離ホテルにてPCR検査。ホテルにて検査結果が出るまで待機。

     陰性の場合、タイ国内を自由に移動が可能。

(参考サイト)

在タイ日本国大使館HP:Test and Goによるタイ入国手続き登録再開のお知らせ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 1月27日の新規感染者数は、5,439人であり、ピーク時の4分の1程度となっています。現在は、オミクロン株の感染者数を他の東南アジア諸国に比べ抑えられていますが、これから流行していくとみられています。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限であるNRP(National Recovery Plan(これまではFMCOと呼ばれていました))では、全ての州が一番規制の緩和された第4段階の規制下にあります。ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。

3.2 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下①~⑤に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国
  6. ランカウイ島へのトラベルバブル制度を利用した入国
  7. 目的を限定とした14日以内の短期商用(潜在的な投資家・既存の投資家・ビジネス顧客・技術者)での入国

すべての渡航者は、出発前2日以内にPCR検査(スワブ検体)を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。隔離期間は、ブースター接種済みの成人又は単独で渡航する若年者(12歳から17歳)は5日間、ブースター未接種のワクチン接種完了者は7日間、ワクチン接種未完了者は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は落ち着いてきています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらず、日常化している印象を受けます。

4.2 入国規制

1月は 6日、20日にANA 便が飛びました。2月は 3 日、17 日に救援便が運航予定です。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

1月に入りメキシコのCOVID-19感染者は急増し、1月19日には一日の新規感染者数が60,552人を記録しました。リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)も後退を見せ、1月24日の週は、赤が1州、橙が9週、黄色が10州、緑が12州となり、日系企業も多いアグアスカリエンテス州はこれまでの黄色から赤に変更されました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられており、マスクの着用などの要請は継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは新規感染者数が急増しており、1月26日の政府発表によると、新たに確認された感染者数は15,517人で、検査陽性率も31.64%と相当に高く、一部の病院ではCOVID-19用の病床稼働率が高い水準になっている模様です。

 2022年1月13日付で、住居の外でのマスク着用、レストランでの飲食やホテル滞在及び教育機関への入構にあたってワクチン接種証明書を提示すること、鉄道、バス、船舶は定員の半分で運行すること、社会的、政治的、宗教的行事又は集会の停止、などの行動規制が発表されました。

 1月21日付の行動規制では、2月6日までの教育機関の閉鎖、100名以上の集会の禁止かつ参加者は必ず新型コロナウイルスワクチン接種証明書と24時間以内のPCR陰性証明書を持参しなければならないこと、政府や民間オフィス、工場において、従業員は新型コロナウイルスワクチン接種証明書を取得しなければならないこと、などが定められています。

 さらに、1月23日、以下を含む新たな行動規制が発表されました。

全ての政府系機関及び民間事務所は、感染予防規則を遵守し、半数の従業員により営業しなければならない。その他の従業員は自らの居所に留まり、オンラインで、業務を遂行する。

6.2 入国規制

 現在、日本からの渡航者については、隔離が免除されていますが、入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗前48時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明の提示が求められます。また、政府より、1月13日から有効となる行動規制に「外国からの旅行者を含め全ての者は新型コロナウィルスワクチン接種証明書を必ず提示しなければならず、迅速抗原検査を受検しなければならない」が含まれますが、13日以降に入国した日本人渡航者によりますと、実際には、ワクチン接種証明書の提示も抗原検査の受検も求められていないようです。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計349万3447人で、死者数は累計53,736人です(2022年1月27日現在)。新規感染者は2021年9月初旬をピークとして減少傾向にありましたが、同年の年末以降急激に増加し、2022年1月18日をピークとして、現在は1日約2万人前後の新規感染者が報告されています。

 1月31日まで、マニラ首都圏は、警戒レベル「レベル3」とされています。フェイス・シールド使用に関する規則によると、現時点で警戒レベル3以下の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。

7.2 入国規制

  1. フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「グリーン」国(管轄区域・地域)に該当します。2022年1月16日以降、グリーン国から入国する場合は出国前48時間以内に受検したPCR検査の陰性結果が必要です。詳細は以下のとおりです。
  2. 完全にワクチン接種した、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果を提示する渡航者は、到着後、検疫所指定の施設における強制的検疫隔離の対象とはならない。ただし、到着日を初日として、7日目までセルフ・モニタリングを行う必要がある。
  3. ワクチン接種を受けていない、部分的にワクチン接種を受けた、またはワクチン接種状況の有効性、信憑性が検証・確認できないが、出発国出発前48時間以内の陰性のRT-PCR検査結果を提示する渡航者は、到着日を初日として、5日目に行われるRT-PCR検査の陰性結果を受けるまで検疫所指定の施設における検疫隔離を受ける必要がある。その後、到着日を初日として、14日目までセルフ・モニタリングを行う必要がある。
  4. 出発国出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果は2022年1月19日午前0時1分まで有効とみなされる(グリーン国・イエロー国・レッド国共通)。
  5. 上記の影響を受けないIATF決議第154-C号のすべての規定は、引き続き有効である(グリーン国・イエロー国・レッド国共通)。
  6. また、フィリピン政府は、フィリピンに入国する渡航者の検査・検疫規則の変更を決定し、2022年2月16日以降、フィリピンに入国するすべての外国人については、完全なワクチン接種の証明を入国の要件とすることとしました。

7.3 フィリピンから日本への入国者及び帰国者に対する規制

 2022年1月7日、日本において新たな水際対策措置が決定され、フィリピンからのすべての入国者及び帰国者は、1月10日午前0時(日本時間)から、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で3日間待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになっています。

第2.各国の株式譲渡手続の概要

1.日本

 株式譲渡について、主に会社法にて定められています。

(1) 株式譲渡にあたって確認すべき事項

  1. 株券発行会社であるか

株券発行会社であるか株券不発行会社であるかによって、株式譲渡の方法および対抗要件が異なるため、事前に確認する必要があります。株券発行会社で、実際に株券を発行していない会社もありますので、注意が必要です。株券発行会社か否かについては、登記簿謄本で確認することができます。

    2. 株式に譲渡制限があるか

株主は株式を譲渡することができますが(会社法第127条)、譲渡制限がある場合、会社の承認が必要です。

(2) 株式譲渡の手続き

  1. 株式譲渡承認の請求

前述の通り、譲渡制限株式の譲渡については、会社から承認を得なければなりません。譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法第136条)。また、譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができます(会社法第137条1項)。

     2. 株式譲渡の承認にかかわる決議

譲渡制限株式の譲渡を承認するか否かの決定をするには、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会(取締役会設置会社の場合は、取締役会)の決議によらなければなりません(会社法第139条1項)。また、株式会社は、譲渡等承認請求をした者に決定の内容を通知しなければなりません(会社法第139条2項)。

株式会社が、譲渡制限株式の譲渡を承認しない旨の決定をした場合で、承認請求者から「不承認時に会社または指定買取人が買い取る請求」を受けた会社は、次のいずれかで、当該譲渡制限株式を買い取らなければなりません。(i) 会社が買い取る(会社法第140条1項)、(ii) 指定買取人が買い取る(対象株式の全部又は一部を買い取る者)(会社法第140条4項)、(iii) 指定買取人が一部を買い取り、残りを会社が買い取る(同項)。

      3. 株式譲渡契約の締結

譲渡の当事者間で譲渡契約を締結します。譲渡契約は法律にて義務づけられていませんが、特に株券が発行されない場合は、株式の売買を確実なものにするために、株式譲渡契約を締結するのが一般的です。

      4. 代金決済

譲渡契約に基づき、譲渡対価の支払いをします。株券発行会社の株式の譲渡の場合は、譲渡人から譲受人に株券を交付します。当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じません(会社法第128条1項)。

     5. 株式名義書換請求

原則として、譲受人と譲渡人が共同で(株券発行会社の場合は、株券を提示すれば譲受人単独でも可能です(会社法施行規則第22条2項1号))、会社に対して株主名簿を書き換えるように請求し(会社法第133条1項2項)、会社は請求に基づき、株主名簿を書き換えます。

株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができませんので(会社法第130条1項)、株主名簿の書換えの手続きを行う必要があります。株券発行会社の場合、株券の交付が会社以外の第三者に対する対抗要件となり、名簿の書換えが会社に対する対抗要件となります(会社法第130条2項)。

     6. 株主名簿記載事項証明書の交付請求

譲受人は会社に対して、株主名簿記載事項証明書を交付するよう請求することができ、会社は請求に基づき、譲受人に株主名簿記載事項証明書を交付します(会社法第122条1項)。

(3) その他の留意点

 株式の売却時について、譲渡所得が出た場合には、譲渡所得税がかかります。株式を取得した側については、原則として税金は発生しませんが、相続税に該当するとみなされる場合や、「時価」と乖離した価格で譲渡された場合等は、税務上の対応が必要となります。

 

2.タイ

 タイにおける株式譲渡手続等については、民商法典(Civil and Commercial Code, CCC)にて定められています。

  1. 株券の発行

タイにおいては、会社は株主に株券を交付しなければならないとされており、全ての株券には少なくとも取締役の1名が署名し、会社印が押印されている必要があります。また、会社名称、株式番号、1株当たりの価格、株主名等が記載されている必要があります(CCC第1127条、1128条)。

      2. 株主名簿

株主名簿は、会社登記日以降、会社の登記住所にて備え付けておく必要があります(CCC第1139条)。この株主名簿には、株主の氏名、住所、株券番号、払込額、株主登録年月日、株主が抹消された場合にはその抹消年月日等を記載する必要があります(CCC第1138条)。

     3. 株式譲渡手続き

タイにおいては、定款にて株式譲渡制限を定めている場合等を除き、原則自由に株式を譲渡することができます。しかし株式譲渡については書面で行われる必要があり、当該書面には譲渡人及び譲受人それぞれが署名し、1人以上の証人による署名が必要となります。また、当該株式譲渡は、譲渡の事実、譲受人の氏名及び住所が、会社備付の株主名簿に記載されるまで、会社及び第三者に対して対抗することができません(CCC第1129条)。

     4. 株主リストの登録

少なくとも毎年1回、定時株主総会後14日以内に、当該総会時の株主名簿のリストをDBD(商務省)に登録する必要があります(CCC第1139条)。このDBDに登録されている株主リストが、BOJ5(Bor Or Jor 5)と呼ばれるものです。ただ、このBOJ5は最新の株主を証明するものではなく、あくまでも会社備付の株主名簿に記載されている株主が、最新の株主を証明するものとなります。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおける株式譲渡は、会社法(Companies Act 2016)によって規定されています。

(1) 譲渡制限

 非公開会社においては、株式の譲渡は制限されています(42条(3))。しかし、同項は、非公開会社は株式の譲渡を制限しなければならないとの規定を置くのみであり、制限の内容(譲渡の承認を行う機関)について具体的な規定を置いていません。

 そのため、株式譲渡の条件・手続については、定款で規定する必要があることになます。

 マレーシアの非公開会社においては、定款が株式譲渡の要件・手続について具体的な規定を置いていないことがあり、このような場合には株式を取得する際に必要な手続や満たすべき要件が不明確となり後の紛争の要因になることもあります。小規模な会社で、大多数の株主(このような場合、株主が取締役も兼ねていると思われます)の同意が取得できる場合には、株主総会決議や取締役会決議を得ることでリスクを回避できる場合が多くあります。決議が取得できないような事情が存在する場合には、後日発生しうるリスクについて慎重に検討する必要があります。

 マレーシアの研究者や弁護士が執筆した文献においては、譲渡制限の例として、以下のものが挙げられています。

  1. 株主が株式の譲渡を希望する場合、最初に既存の株主に申込をしなければならない。
  2. 株式譲渡については、取締役(又は株主)の決定に従う。
  3. 株式の譲渡は、特定の者(創業者等)にのみ行うことができる。
  4. 株式譲渡の方式
  5. 株式を譲渡する場合、譲渡証書を作成し、法令に従った印紙税を納めた上で会社に提出する必要があります(105条(1))。また、株券が発行されている場合は、株券も一緒に提出しなければなりません(98条(2))。

 

4.ミャンマー

株式譲渡手続きについては、買い手との間で株式譲渡の条件について合意すれば、法的手続きとしては非公開会社の場合には対象会社の取締役会による承認を行った上でMyCO (Myanmar Companies Online) で株主変更を行うことで可能です。申請から承認までの期間は通常は数日であり、オンラインでの申請となります。株式譲渡契約書はMyCOとの関係では不要ですが、株式譲渡後の対象会社の権利義務関係や株式譲渡の対価などで紛争が生じるのを避けるため、実務上は株式譲渡契約書を作成の上締結することが一般的です。

 

5.メキシコ

(1) 株式譲渡の流れ

メキシコにおける株式会社であるSociedad Anónimaにおける株式譲渡手続をご紹介します。

株式譲渡にあたっては、株式譲渡契約書の締結、株主総会決議(必要な場合)、取締役会決議(必要な場合)、株主間の株券引渡し、株主名簿の書換え、その他関係省庁への届出などの手続を行う必要があります。

(2) 株式譲渡契約書の締結

メキシコの法律上、株式譲渡にあたって、株式譲渡契約書の作成は義務付けられていません。しかし、権利義務を明確にするためにも、対象株式、譲渡金額、支払期日、譲受人の届出等の諸手続の義務などを定めた株式譲渡契約書を作成することが一般的です。

(3) 株式譲渡の自由とその制限

メキシコにおいても、株式会社の株主は、原則としてその有する株式について自由に他人に譲渡することができ、株式譲渡の自由が認められています。

ただし、株式の譲渡制限を行うこともでき、株式の譲渡が取締役会の承認を得てのみ行われる旨を定款に定めることもできます。譲渡承認請求を受けた取締役会は、現在の市場価格で株式を買い受ける者を指定することにより、承認を拒否することができます。

また、会社によっては、株主の情報が定款に記載されていることから、株式譲渡に伴い定款変更が必要となる場合もあります。この場合は、株主総会を開催する必要が生じます。

(4) 株券引渡し

株式譲渡が行われる際、譲渡人から譲受人に対し、株券の引渡しが行われることになります。ただし、株券が表象する株式数と譲渡株式数とが一致しない場合には、譲渡人は株券を株式会社に返却し、株式会社は新たな株券を発行することになります。

(5) 株主名簿の書換え

株式会社は、株主名簿に株主として記載されている者をその会社の株主として取り扱います 。そのため、株式の譲受人は株式会社に対し、自らが株主名簿に記載されるよう株主名簿の書換えを請求します。

(6) その他の届出

    1. 国税庁(Servicio de Administración Tributaria、通称SATに対する手続
    2. 株主の情報が変更された日から30日以内に、株主情報の更新通知(Aviso de modificación o incorporación de socios, accionistas, asociados y demás personas que forman parte de la estructura orgánica de una persona moral, así como de aquéllas que tengan control, influencia significativa o poder de mando)が必要となります。
    3. また、関連取引の情報提供のための申告書(Declaración Informativa de Operaciones Relevantes)の提出が必要となる場合もあります。
    4. その他、譲受人が、RFC(納税者番号)を持たない場合には、メキシコ所在法人のRFC登録をしないことを選択した海外に所在する株主等の申告(Declaración de relación de los socios, accionistas o asociados residentes en el extranjero de personas morales residentes en México que optan por no inscribirse en el RFC)が必要となります。
    5. 経済省(Secretaría de Economía)に対する手続
    6. 株主に関する情報は経済省のシステムに掲載しなければなりません。そのため、上記(5)株主名簿の書換えのほか、最新の株主情報を当該経済省システムにおいて公開しなければなりません(Aviso de inscripción en el libro especial de los socios o en el registro de acciones con la estructura accionaria vigente)。
    7. 経済省外資局(Registro Nacional de Inversiones Extranjeras、通称 RNIE)に対する手続
    8. 外国の個人又は法人の資本への参加に関する変更が2000万ペソを超える場合、経済省外資局に対する四半期更新通知(Aviso de Actualización Trimestral presentado al Registro Nacional de Inversiones Extranjeras Sociedades Mexicanas)を行わなければなりません。これは、譲渡実施日が属する四半期の最終日の翌日から起算し10営業日以内に報告書を提出することにより行います。なお、各四半期は1-3月、4-6月、7-9月、10-12月とされています。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュでは、株式は動産とみなされ、会社の定款に従い、譲渡することができます(会社法第30条(1))。非公開会社の株式譲渡の場合は、対象会社の取締役会決議による譲渡の承認決議を得たうえで、取締役会議事録や株式譲渡証書等の必要書類を商業登記所に提出し、承認を得る必要があります。株式譲渡の登録は、譲渡人又は譲受人のいずれかが、双方が署名し締結された譲渡証書その他必要書類を会社に提出して、申請します。会社が株式譲渡の登録を拒絶する場合は、譲渡証書が会社に提出された日から1か月以内に、拒絶通知を譲渡人及び譲受人に送付しなければなりません(会社法第38条(1)から(4))。

 譲渡人又は譲受人がバングラデシュ在住でない場合は、代理人が手続きを行うことは可能ですが、提出書類について、当事者の居住国のバングラデシュ大使館による認証が必要です。また、譲渡先が海外の株主の場合は、株式譲渡の支払いについて着金証明を商業登記所へ提示する必要がありますが、譲渡先がバングラデシュ国内の株主の場合、提出は求められません。

 

7.フィリピン

 フィリピンにおいて、株式は、個人財産として、売却、贈与、相続を原因として譲渡することが可能であり、担保権の対象とすることもできます。

 フィリピン改正会社法第62条は、株式譲渡に関する要件を規定しています。

(1) 株券の交付

(2) 株券上の裏書

(3) 株式名簿上の名義書換

の三つの要件です。

 株券の交付及び裏書によって譲渡は有効といえますが、会社及び第三者との間でもこれを有効とするためには、株主名簿上の名義が書換えられる必要があります。SEC(証券取引委員会)の見解によると、株主としての権利は、会社の株主名簿に名義が記載されて初めて発生します。

 また、SECは、株券の交付及び裏書による方法によるほか、定款で特定の譲渡方法が指定されている場合を除き、証書(Deed)による譲渡も可能と指摘しています。 ただし、証書による譲渡は、株券が発行されておらず、それを株主が保有していない場合にのみ認められています。

 さらに、 譲受人は、当該株式譲渡取引にかかる税金を支払い、その後、BIRから登録許可証(CAR)を取得する必要があります。

 これらのBIR(内国歳入庁)に関する手続は必ず履践する必要があり、懈怠した場合、秘書役が税法の規定に基づいて責任を問われることになることに留意する必要があります。Revenue Memorandum Order No.15-03では、株主名簿の書換の前提としてCARを発行することが求められています。また、Revenue Regulations No.06-08の第11節では、納税したことを示す領収書が秘書役に提出されない限り、その株式移転を禁止しています。

 BIRは対しキャピタルゲイン税と印紙税の支払いが完了した後、必要書類とともにCAR取得の申請を行います。未上場株式の譲渡の場合、これらの手続に関する必要書類は以下となります。

(1) TINナンバー、

(2) ノータライズ済の譲渡証書の原本及び写し、

(3) 株券の原本及び写し、

(4) 株式取得費用の証明、

(5) 支払証明としての領収書又は預金通帳、

(6) 取引日に最も近い発行会社の監査済財務諸表(AFS)

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

Newsletterの記載内容は2022年1月28日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現在、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は出されていませんが、政府からは、感染再拡大防止のための取り組みとして、引き続き、飲食店等に対する制限(感染拡大が見られる場合の時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

オミクロン株に対する水際措置の強化として、これまでの緩和措置が停止され、外国人の新規入国停止など、新たな措置が取れられています。

(1) オミクロン株に対する指定国・地域

オミクロン株に対する指定国・地域ついて、別途指定されています。

(2) 外国人の新規入国停止

11月30日午前0時(日本時間)以降、外国人の新規入国が停止されています。

(3) モニタリングの強化等

オミクロン株に係る指定国・地域からの帰国者・入国者について、入国者健康確認センターの健康フォローアップを強化するとともに、変異株サーベイランス体制が強化されます。

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について

厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について

出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は2,204,672名です。この内、2,144,952名が回復し、累計死亡者数は21,528名となっています。規制緩和の流れがありましたが、オミクロン株のタイ国内感染者が報告されたこと等を受け、今後規制が強化される可能性があります。

2.2 入国規制

タイ政府は、12月21日、タイ入国システムであるThailand Passのシステムの運用方針の変更について発表しました。隔離免除での入国(Test and Go)及び、サンドボックス・プログラム(プーケットを除く)の新規受付を、一時的に停止することを決定しました。

強制隔離による入国及びプーケット・サンドボックス制度での入国については引き続き継続されています。

(参考サイト)

在タイ日本国大使館HP:タイ入国のための「Thailand Pass」の運用方針の変更等について

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連の規制状況

 12月23日の新規感染者数は、3,510人であり、ピーク時の5分の1以下に落ち着いています。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限であるFMCO(完全ロックダウン)は、クランタン州とサラワク州が第3段階の規制、残りの州が第4段階の規制下にあります。

 ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。

3.2 入国規制

外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。ワクチン接種完了者の隔離期間は7日間ですが、ワクチン接種未完了者の隔離期間は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は落ち着いてきています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらず、日常化している印象を受けます。

4.2 入国規制

12月は 3日、17日、24日にANA 便が飛びました。1月は 6 日、20 日に救援便が運航予定です。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、12月13日の週は、前回と変わらず黄色が5州、緑が27州となりましたが、アグアスカリエンテス州が前回の緑から黄色に変更されるなど、感染リスクが高くなる州も見られます。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、商業施設等に対する収容人数の制限などの規制を緩和する傾向がみられますが、マスクの着用などの要請は引き続き継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。12月11日に、ジンバブエから帰国したクリケット選手2名のオミクロン株の感染が確認され、隔離されていましたが、検査結果も陰性となり、20日に隔離を終えました。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置が、12月4日から有効となっています。日本からの渡航者については、隔離が免除されていますが、PCR検査が出発前72時間から48時間前と変更となっていますので注意が必要です。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. オミクロン株の発生に伴い、過去14日以内にボツワナ、エスワティニ、ガーナ、レソト、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエを出発・経由・訪問した全てのバングラデシュへの入国者は、費用自己負担にて、政府指定のホテルにて14日間の隔離を行わなければならない。また、隔離7日目と14日目に、費用自己負担で、PCR検査を受けなければならない。7日目の検査で陽性反応が出た場合は、更に厳格な隔離とされる。
  2. 更に、上記7か国からの入国者は、搭乗手続きの際に、ホテル予約証明書を提示しなければならない。また、航空会社はバングラデシュの保健当局に対し、搭乗者の旅券情報、バングラデシュの住所(滞在先)及び連絡先を知らせなければならない。
  3. 入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗48時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明を携帯すること。
 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計283万7784人で、死者数は累計50,916人です(2021年12月22日現在)。新規感染者は2021年9月初旬をピークとして減少傾向にあり、現在は1日約100~300人前後の新規感染者が報告されています。これは、9月初旬のピーク時の約1~2%にあたります。

 マニラについては、「NCR における COVID-19 対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。

 12月14日、フィリピン政府は、12月16日から12月31日まで、フィリピン全ての地域の警戒レベルについて、「レベル2」の継続を発表しました。フェイス・シールド使用に関する規則によると、現時点で警戒レベル2の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。

7.2 入国規制

フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「グリーン」国(管轄区域・地域)に該当します。

「グリーン」(管轄区域・地域)からフィリピンに入国する渡航者の検査・検疫規則は、以下のとおりです。

  1. 完全にワクチン接種した、出発国出発前72時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果を提示する渡航者は、到着日を含めて3日目に行われるRT-PCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要がある。その後、到着日を初日として、10日目まで自宅検疫を行う必要がある。
  2. ワクチン接種を受けていない、部分的にワクチン接種を受けた、またはワクチン接種状況の有効性、信憑性が検証・確認できないが、出発国出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果を提示する渡航者は、到着日を初日として、7日目に行われるRT-PCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要がある。その後、到着日を初日として、14日目まで自宅検疫を行う必要がある。
  3. 「グリーン」国(管轄区域・地域)を通過するだけの全ての渡航者(フィリピン人、外国人を問わない)は、空港内のみに滞在していた場合、また、入国管理局によってそのような国(管轄区域・地域)への入国を許可されていない場合、その国(管轄区域・地域)から来た、または行ったことがあるとは見なされない。
  4. 施設における検疫期間中は、フィリピン検疫局(BOQ)によって厳密な症状の監視が行われる。陽性であることが判明した場合、規定された隔離規則に従う必要がある。検疫完了後、BOQ渡航者個人の予防接種状況を示す検疫証明書が発行される。
  5. フィリピン運輸省は、航空会社に対し、出発国出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果の要件に準拠する渡航者(乗客)のみに搭乗することを保証させる。ただし、症状がない3歳以下の子供は、出発国に関係なく、出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果の提示要件が免除される。
  6. 未成年者に対する検査・検疫規則は、未成年者のワクチン接種状況及び出発国に関係なく、同行する親/保護者の検査・検疫規則に従う。

第2.各国の特許法の概要

1.日本

特許に関する事項は、特許法にて定められており、その目的は、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」と定義されています(特許法第1条)。特許を受ける権利は発明者にあり(特許法第29条第1項柱書)、その権利は、移転することができます(特許法第33条第1項)。特許権の効力として、特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有しますが、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りではありません(特許法第68条)。特許権の存続期間は、出願の日から20年ですが(特許法第67条第1項)、特許権の設定の登録が特許出願の日から5年を経過した日又は出願審査の請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後にされたときは、延長登録の出願により延長することができます(同条第2項)。

(1) 特許法上の発明

 特許法で保護対象となりうる発明について「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています(特許法第2条第1項)。

(2) 特許を受けることができる発明とは

特許を受けることができる発明の要件は以下の通りです。

1 産業上利用することができるかどうか(特許法第29条第1項柱書)

2 新規性(特許法第29条第1項)

 新しいものであるかどうかで新規性が判断されます。以下の場合は、特許を受けることはできません。

  • 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(特許法第29条第1項第1号)
  • 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(同項第2号)
  • 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(同項第3号)

3 進歩性(特許法第29条第2項)

 「容易に発明をすることができた」かどうかで進歩性が判断されます。特許出願前に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、上記の発明(特許法第29条第1項第1号~第3号)に基づいて容易に発明をすることができたときは、特許を受けることはできません。

その他、公序良俗に反する発明は特許を受けることはできません(特許法第32条)。また、先願主義が採用されており、先に出願されていた場合も、特許を受けることはできません(特許法第39条及び特許法第29条の2)。

(3) 職務発明

使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有すると定められています(特許法第35条第1項)。これに対して、従業者等は「相当の利益」を受ける権利を有し(同条第4項)、「相当の利益」の決定は、原則として使用者等と従業者等との間の自主的な取決めに委ねられていますが、自主的な取決めに従って利益を付与することが不合理である場合や、自主的な取決めが存在しなかった場合は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が負う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して決定されます(同条第7項)。

(4) 出願から特許権取得までの流れ

 特許権を出願(特許法第36条)すると、方式審査が行われ、出願書類が審査されます。さらに審査請求(特許法第48条の3第1項)をすると審査官による実体審査が行われ、特許を受けることができる発明の要件を満たしているか、拒絶理由がないかどうか調べられます。特許の要件を満たしている場合又は拒絶の理由が解消された場合は特許査定がなされ(特許法第51条)、特許料の納付により特許原簿に登録されると特許権が発生します(特許法第66条)。特許の要件を満たしていないものは、拒絶査定が出されます(特許法第49条)。拒絶査定を受けた者で、その査定に不服がある場合は、その査定の謄本の送達があった日から3ヶ月以内に拒絶査定不服審判を請求することができます(特許法第121条)。

 

2.タイ

タイにおける発明を保護する法律として、特許法(Patent Act B.E.2522)が制定されています。

(1) 登録要件

特許権は、創作の時点で発生する著作権とは異なり、商標権等と同様に、登録によって権利が発生します。発明が特許として登録を受けるためには、以下の登録要件を満たす必要があります(特許法第5条)。

発明に1新規性、2進歩性が認められ、3産業上利用可能であること

(2) 特許と認められない発明

以下の発明は、特許の対象外とされています(同法第9条)。

  1. 天然の微生物および微生物、植物、動物や植物からの抽出物を構成するもの
  2. 科学的、数学的な法則や理論
  3. コンピュータプログラム
  4. 人の疾病または動物の疾病の診断、治療または治癒の方法
  5. 公序良俗に反する発明、健康や福祉に反する発明

(3) 発明者の権利

発明者は、特許を受ける権利を有し、当該権利は、譲渡または承継可能とされています。ただし、当該権利を譲渡する場合には、書面にて行われる必要があり、譲渡人と譲受人が当該書類に署名する必要があります(同法第10条)。

(4) 職務発明

 職務発明とは、会社の従業者等が職務上行った発明をいいます。

  1. 特許を受ける権利

雇用契約または業務委託契約の履行においてなされた発明について特許を受ける権利は、契約に別段の定めがない限り、使用者または業務委託者に帰属します。この点について、日本とタイでは特許を受ける権利の帰属者の定めが逆となっているため、注意が必要です。

      2. 報酬請求権

 タイの特許法においては特許を受ける権利が原則、使用者等に帰属しますが、発明活動を促進し、従業者等に公正な分配を与えるために、発明者である従業者等は、使用者等が当該発明から利益を得る場合には、通常の給与以外の報酬を請求する権利を有します(同法第12条1項、2項)。この報酬請求権は、契約上の規定によっても妨げることはできないとされています(同条3項)。

(5) 特許出願手続き

特許出願書類には、次の事項が含まれている必要があります(同法第17条)。

  1. 発明の名称
  2. 発明の性質と目的
  3. 当該技術分野またはその他の関連技術の通常の知識を有する者が、本発明を作成し実施することができるような、完全かつ簡潔で明確な記述を含む本発明の詳細な説明であって、本発明を実施するために発明者が知っている最良の態様を示すもの
  4. 1つ又は複数の明確かつ簡潔な請求項
  5. その他省令で定める事項

(6) 方式審査

出願がされた特許については、DIP(知的財産局:Department of Intellectual Property)の担当官により、出願書類が同法第17条の規定を満たしているか、また同法第9条の、特許と認められない発明の事由(不特許事由)に該当しないどうかについて審査がなされます。

(7) 拒絶通知

同法第17条の規定が遵守されていないと思われる場合、または本発明が同法第9条に基づく不特許事由に該当すると思われる場合、事務局長は当該出願を拒絶し、担当官は事務局長による拒絶の日から15日以内に、書留郵便または事務局長が定めるその他の方法により、拒絶があった旨を出願人に通知することとされています(同法第28条第1項第1号)。

(8) 出願公告

同法第17条の規定が遵守されており、本発明が同法第9条に基づく不特許事由に該当しないと認められる場合、事務局長は省令で定める規則および手続きに従って、出願公告するように命じることとされています。当該公告が行われる前に、担当官は、事務局長が定める方法または書留郵便により、出願人に対して公告手数料を支払うよう通知をします。出願人が通知を受領した日から60日以内に公告手数料を支払わない場合、担当官により出願人に対して、再度、書留郵便で通知がなされます。出願人がその通知を受領した日から60日以内に公告手数料を支払わない場合は、当該出願を放棄したものとみなされます(同法第28条第1項第2号)。

(9) 出願公告後の手続き

出願人は、当該出願の公告後5年以内、または異議申立があり審判請求が行われた場合にはその最終決定後1年以内のいずれか遅くに満了する期間内に、本発明が同法第5条の登録要件(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)に適合するか否かの審査を進めるよう担当官に請求することができます。出願人がこの期間内に当該要求をしなかった場合には、当該出願を放棄したものとみなされます(第29条第1項)。

(10) 存続期間

特許件の存続期間は、特許出願日から20年間とされています(法第35条)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおける特許制度は、特許法(Patents Act 1983)によって規律されています。

(1) 概要

 特許法は、発明が新規性、進歩性及び産業上の利用可能性を有している場合は、その発明は特許を受けることができるとしています(特許法11条)。

  1. 発明及び発明の単一性

特許法により保護する発明とは、発明者の思想であって、当該技術の分野における一定の課題についての解決を実際に可能にするものをいうと定義されます(特許法12条(1))。そして、特許の出願は、1の発明又は単一の一般的発明概念を形成するように関連している一群の発明について認められます(特許法26条)。

      2. 新規性

発明が先行技術により予測されないものであるときはその発明は新規性を有するものと認められます(特許法14条(1))。

     3. 進歩性

先行技術を構成するすべての事項を考慮した場合に、その進歩性がそれにかかる技術において通常の技量を有する者にとって自明でないときは、その発明は進歩性を有するものとみなされます(特許法15条)。先行技術とは、その発明をクレームする特許出願の優先日前に、世界の何れかの場所において、書面による発表、口頭の開示、使用その他の方法で公衆に開示されたすべてのものをいいます(特許法14条(2)(a))。

     4. 産業上の利用

発明が、いかなる種類の産業においてでも、製造又は使用することができる場合には、産業上の利用可能性があるものとみなされます(特許法16条)。

(2) 登録

1 基本的な審査手続

特許の登録手続は1出願要件審査、2方式審査、3出願公開、4実体審査という手順で進められます。方式審査が終了後、改めて実体審査の請求をする必要がある点に注意が必要となります。実体審査においては、新規性、進歩性、産業上の利用可能性等が審査されます。また、実体審査の請求には、工業所有権所轄当局(日本で登録されている特許であれば日本国特許庁)における特許の出願番号及び出願日に関する情報等を添付しなければなりません(特許規則27条(3))。 

2 修正実体審査

日本において当該発明について特許を受けている場合、実体審査に代えて修正実体審査を請求することもできます。修正実体審査の場合は、特許を受けることができない発明か否か(特許法13条)及び新規性(特許法14条)については審査しますが、進歩性、産業上の利用可能性及び発明の単一性等の審査がないため(特許規則27D条(1))迅速に特許権を獲得することができます。

3 早期審査制度

以下のいずれかの場合には、早期審査を申し立てることができます(特許規則27E条(3))。

  1. 国家又は公衆の利益となる場合(同項(a))
  2. 登録出願する特許について、侵害行為が発生しているか、侵害行為が発生する可能性を示す証拠のある場合(同項(b))
  3. 出願人が当該発明を既に商品化しているか、早期審査請求日から2年以内に商品化する予定である場合(同項(c))
  4. 特許登録出願が政府又は登録局の認める機関から金銭的利益を得るための条件となっている場合(同項(d))
  5. 当該発明が環境保護又はエネルギー資源保全に資するグリーン技術に関連するものである場合(同項(e))
  6. その他早期審査を裏付ける合理的な理由のある場合(同項(f))
  7. 特許審査ハイウェイ

日本の特許庁はマレーシア知的財産公社との間で、2020年10月1日より特許審査ハイウェイは本格実施されています。同制度では、以下の要件を満たす特許出願の審査を大幅に短縮させ迅速な権利実現を図ることができます。

  1. 申請する日本出願及び対応するマレーシア出願において、優先日又は出願日のうち、最先の日付が同一であること
  2. 対応するマレーシア出願が存在し、既に特許可能と判断された一つ又は複数の請求項を有すること
  3. 審査を申請する当該出願のすべての請求項が、対応するマレーシア出願の特許可能と判断された一つ又は複数の請求項と十分に対応しているか、十分に対応するように補正されている
  4. 申請時において、当該出願に関し日本の特許庁における審査が着手されていないこと
  5. 申請時又はその前に、日本の特許庁において、審査請求が行われていること

(3) 特許権者の権利

特許権者は、以下の事項について排他的権利を有しています(特許法36条)。

1 特許発明を実施すること(同条(1)(a))

  1. 製品に関して付与する場合(同条(3)(a))
  • その製品を製造、輸入、販売の申出、販売又は使用すること
  • その製品を、販売の申出、販売又は使用のために保管すること
  1. 方法に関して付与する場合(同条(3)(b))
  • その方法を使用すること
  • その方法によって直接に取得された製品に関し、(a)にいう行為のいずれかを行うこと

2 特許を譲渡又は移転すること(同条(1)(b))

3 ライセンス契約を締結すること(同条(1)(c))

 

4.ミャンマー

特許法は2019年3月11日に公布されました。しかし、施行時期は未定です。

出願に当たり、必要書類は以下のとおりです。

  1. 登録出願申請書(英語またはミャンマー語)
  2. 出願人による署名の付された翻訳文(登録官から要求された場合)
  3. 法人の登記番号、種類、設立国(法人が出願する場合)
  4. 優先権証明書、優先権の存在を示す確たる証拠(優先権を主張する場合)
  5. 博覧会出品を示す確たる証拠(博覧会出品の仮保護を主張する場合)
  6. 共同出願人の同意書(共同出願人の1人が他の共同出願人を代表して願書に署名した場合)
  7. 宣言書(伝統的知識の合法的使用、または当該資産の直接的/間接的な使用である場合)
  8. 公開請求(早期公開を求める場合)
  9. 明細書
  10. 発明の図面(任意)

特許と実用新案(petty patents)が存在し、特許の保護期間は出願日から20年、実用新案の保護期間は出願日から10年間です。

1つの出願で1つの特許発明あるいは1つの実用新案をカバーでき、同じ発明を特許と実用新案の両方で登録することはできません。

手続き言語は英語またはミャンマー語です。

出願日/優先日から18か月経過後に出願公開され、出願日から36か月以内に出願人が審査請求を行うことにより、実体審査が行われます。

出願に対して拒絶理由通知(Office Action)が発行された場合、60日以内に応答が必要です。

 

5.メキシコ

(1) 関連する法令

メキシコにおいて、特許は、連邦産業財産保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial)及び産業財産法規則(Reglamento a la Ley de Propiedad Industrial)に規定されています。職務発明に関しては、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)に関連する条文が設けられています。

(2) メキシコで保護される特許 

 特許によって保護される発明とは、「自然界に存在する材料若しくはエネルギーを人の特定の需要を満たすよう使用することができる形に変える人の創造」であると定義されています。すべての技術分野における発明のうち、新規性があり、発明的活動の結果であり、かつ産業上の利用が可能なものは、特許を受けることができます。

 ただし、次のものは発明とはみなされません。

    1. 科学理論や原則の発見
    2. 数学的方法
    3. 文学、芸術作品、又はその他の美的創造物
    4. ゲームや経済的商業活動のための知的活動を実施するスキーム、計画、規則、方法
    5. コンピュータプログラム
    6. 情報を提示する方法
    7. 自然界に見られる生物学的及び遺伝的物質
    8. 既知の発明の並置又は既知の製品の組み合わせ。ただし、個別に機能できない組み合わせの場合、それらの特徴的な性質又は機能が、当該分野の技術に熟知する者にとっても自明でない産業上の成果や利用法を生み出すように変更されている場合を除く

また、次の場合は特許性を有するとはみなされません。

    1. 商業的利用が公序良俗に反し、又は法律の規定に反する発明(人、動物、植物の健康若しくは生命を保護するため、又は環境への深刻な損害を回避するために利用を阻止しなければならないものを含む)であって、特に、ヒト及びその製品のクローン作成手順、ヒト及びその製品の生殖上の遺伝的同一性を修正する手順で、これらがヒトを開発する可能性を示唆する場合、工業的又は商業的目的のためのヒト胚の使用、動物の遺伝的同一性を修正する手順で、ヒト又は動物にとって実質的な医学的又は獣医学的有用性がなく苦痛を伴うもの、及び当該手順の結果として生じる動物
    2. 植物の品種及び動物の品種(微生物の場合を除く)
    3. 植物又は動物を得るための本質的に生物学的な手順、及びこれらの手順から得られる生成物。ただし、微生物学的手順、その他の技術的手順、又はこれらの手順によって得られた生成物を目的とする発明は除く
    4. 人又は動物の身体の外科的又は治療的処置の方法、及びそれらに適用される診断方法
    5. 構成や発展の異なる段階における人体、ゲノムの全体又は部分的つながりを含む人体の構成の単純な発見(ただし、自然環境から分離され、技術的な手順を経て得られた生物材料は、それが自然界に既に存在している場合でも、特許可能な発明の対象となりえる)。なお、核酸又はタンパク質の全配列又は部分配列の産業上の利用は、特許出願において明示的に開示されなければならない

(3) 特許を受けることができる者

 発明を行った自然人又はその承継人は、自己又は他者の利益のために、特許を得ることによって、その発明を利用する独占的な権利を有することになります。二人以上のものが共同して発明を行った場合は、特許を受ける権利は、これらのものが共有することになります。

 労働者が職務において行った発明の名称、権利、使用については、次のように連邦労働法に規定されています。

1 発明者は、発明者として自らの名前を表示する権利を有する

2 労働者が研究業務又は企業で使用されるプロセスの改良に従事する場合、発明の権利及び特許を利用する権利は使用者に帰属する。発明者は、発明の重要性及びそれが使用者にもたらす利益が発明者の受領する給与とつり合いがとれていない場合には、当事者間の合意又は裁判所によって定められる補完的な報酬を受ける権利を有する。

3 2以外の場合において、発明の所有権はその発明をした者に帰属するが、使用者は、その発明及び対応する特許の独占的な使用又は取得について優先的な権利を有する

(4) 特許出願から登録までの手続

 メキシコでの出願から登録までの手続きは、主管官庁であるメキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial、以下「IMPI」)に対して行わなければなりません。特許出願の手続の流れは次のとおりです。

1 願書の提出

2 方式審査

3 特許公報への出願公開

4 異議申立(出願公開から2か月間、当該出願に対する異議の受付)

5 実体審査

要件を満たしていない場合、拒絶理由通知が出され2か月間の回答期間が与えられる

要件を満たしている場合、特許査定となる

6 特許年金の納付

特許権の維持には、特許査定の通知を受領後2か月以内に1回目の特許年金を支払わなければならない

年金の支払いは5年ごと

7 特許証発行と特許公報掲載

特許出願は、方式審査を通過し、出願日又は優先権を主張する日から18ヶ月が経過すると公開されます。また、申請により早期公開も可能です。なお、すべての出願が実体審査の対象であり、審査請求は要しません。

 また、メキシコ又は外国において特許出願をした発明と同一の発明に関し、最初の出願をした出願人又はその承継人は、当該同一の発明のメキシコにおける出願について、最初の出願の出願日から起算して12ヶ月の期間内に出願することを条件に、優先権(先の出願と後の出願との間の期間に行われた行為によって不利な取り扱いを受けないとする権利)を有します。

特許権の存続期間は、特許出願日から 20 年間であり、この期間を延長することはできません。ただし、特許から取得までの手続きにおいて、IMPIに直接起因する理由によって、5年以上の遅延がある場合には、出願人は補完証明書(certificado complementario)の発行を申請することができ、この付与が決定された場合は、特許出願日から20年経過後、5年を超えない範囲(補完証明書において定められた期間)、その発明を利用する独占的な権利を有することができます。

 

 

6.バングラデシュ

(1) 概要

特許に関する事項は、特許意匠法((The Patents and Designs Act, 1911)及び特許意匠規則(The Patent and Designs Rules, 1933)が適用されます。特許及び意匠の政府担当機関は、特許意匠商標局です。なお、2021年2月に特許法案及び工業意匠法案が提出され、内閣に承認されました。法案では、特許の登録期間が、20年認められています(現在は16年間)。

特許は、バングラデシュ国民であるか否か、個人又は共同での申請かにかかわらず、所定の方法で特許意匠商標局に特許を出願することができます(特許意匠法3条(1)(2))。出願書には、出願人が発明を所有し、真正かつ最初の発明者であることの宣言を含み、仮又は完全明細書によって出願されなければなりません(同条(3))。真正かつ最初の発明者でない者も出願の当事者となることができますが、譲渡契約など、真正かつ最初の発明者からの同意を提示しなければなりません(同条(4))(特許意匠規則10条(2))。特許の登録が認められる場合、基本的に出願日から24ヶ月以内に登録されなければならないと定められており(特許意匠法10条(2))、前述の通り、登録期間は16年間です(特許意匠法14条(1))。また、特許の効果として、特許意匠商標局の公印が捺印された特許は、バングラデシュ全土で発明を生産、販売、使用すること及びそれらを他の者に許可する排他的特権を特許権者に与えます(特許意匠法12条(1))。

(2) 出願から登録までの手続き

 出願人は必要書類を提出し、要件を満たしていない場合は、拒絶又は補正が求められます。出願日から18ヶ月以内に出願人が要件を満たし、受理されない限り、(出願人が決定に対して申し立てを提起した場合を除き)拒絶されたものとみなされますが、期間満了前又は満了後3ヶ月以内に請求した場合は、3ヶ月以下の延長が認められます(特許意匠法第5条(4))。

 出願が受理されると、公告され、当該出願に異議のある者は、4ヶ月以内に異議申し立てを行うことができます(特許意匠法9条(1))。異議申立てがなされた場合、登録官は、出願人に異議申立てを通知し、出願人及び異議申立人が聴聞を希望する場合は、聴聞を行った後、当該事案について決定が下されます(同条(2))。

異議がない場合、又は異議が申し立てられた場合で特許の付与に有利な決定がなされた場合、規定の登録料の支払いをもって、政府が適切と考える条件(もしあれば)に従い特許権が付与されるものとし、登録官は特許を特許意匠商標局の公印で捺印します(特許意匠法10条(1))。

特許の登録は、基本的に出願日から24ヶ月以内でなければならないとされていますが、登録官が認めた場合など、法律に規定された要件を満たした場合は延長されます(特許意匠法10条(2))。

また、法律に別段の規定がない限り、特許は、出願日をもって登録されますが、出願受理の公告の前に行われた侵害については、法的措置をとることができないことに注意が必要です(特許意匠法11条)。

(3) 特許侵害訴訟

特許権者は、管轄権を有する地方裁判所において、発明に関して特許意匠法に基づいて取得した特許期間の継続中に、特許権者の利用許諾なく、発明を製造、販売、若しくは使用、又は偽造、模倣した者に対して訴訟を起こすことができます(特許意匠法29条(1))。ただし、特許権者は、被告人からのいかなる侵害についても、侵害の日に特許の存在を認識していない、又は侵害を認識する合理的な手段を持っていなかったことを被告人が証明した場合は、損害賠償を請求する権利を有しないとされています(特許意匠法第30条)。

特許侵害訴訟において、裁判所は、いずれかの当事者による請求があれば、裁判所が適切とみなす差し止め、検査、算定を求める命令を下し、適切とみなす条件を課すことができ、当該差止・検査・算定及びその手続きについて適切とみなす指示を与えることができます(特許意匠法31条)。

 

7.フィリピン

 特許権は知的財産権の一種で、共和国法第8293号(通称「知的財産法」)において規定されています。人間のあらゆる活動分野における問題の技術的解決であって、1) 新規性があり、2) 進歩性があり、3) 産業上適用可能であるものが特許性のある発明と認められ、同法によって保護されます。知的財産法22条には特許性を認められない発明が列挙されています。

 特許権は発明者本人、承継人、あるいは譲受人に属します。二人以上が同様の発明を独立して行った場合、その権利は出願日の最も早い者、あるいは優先日の最も早い者に与えられます。依頼にもとづく制作物については依頼主に、被雇用者が雇用期間中に制作した物については雇用者に、それぞれ特許権が属することになります。

 特許権の保護を受けるためには、知的財産庁(IPOPHL)の支局である特許局に対して特許出願する必要があります。またフィリピンは1970年に作成された特許協力条約(PCT)の加盟国でもあり、国際特許出願および登録を行うことで他の加盟国内においても同時に保護を受けることができるようになります。

 特許を取得するためには、1) 特許を求める申請書(申請者の氏名その他の情報、発明者、代理人申請の場合は代理人の名称及び発明の名称を含む。)、2)発明品の説明、3)発明品を説明するために必要な図面、4) クレーム、5)特許の要旨を知的財産庁に対し申請しなければなりません。申請においては、必要十分な方法をもって、当該技術に熟練した者が実施できるように、発明内容が開示される必要があります。

 特許の要旨は、可能な限り150語を越えない範囲で、発明品の説明、クレーム及び図面に記載の発明の内容に関する簡潔なまとめを含んでいることが要求され、また、技術的な課題、発明が提示する問題解決の要旨及び発明の主たる用途を明確に説明する必要があります。

 必要書類の提出日を出願日として、当該出願日から18ヶ月後、知的財産庁の公報に申請内容及び先行技術に関する調査結果が公表されます。当該公報の発行後、申請者は、クレームの範囲内において、当該発明の特許権を、権限のない第三者に対して行使できるようになります。ただし、当該第三者が、その使用する発明が広報において公開された申請内容であることを実際に知っていた場合又はその旨の通知を書面で受け取っていた場合に限られます。利害関係を有する第三者は、申請書類を確認し、発明の特許性について見解を述べることができます。

 申請が認められると、知的財産庁の公報にて公開され、公開日をもって当該特許は有効となります。仮に申請が拒絶された場合、申請者は知的財産庁長官に異議申し立てすることができます。

 特許はフィリピン共和国の名で付与され、知的財産庁長官の署名及び知的財産庁によって押印されます。そして、発明の説明、クレーム及び図面と共に登録され、出願日から20年、特許協力条約にもとづく申請は当該出願をした日から20年間有効です。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

Newsletterの記載内容は2021年12月24日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

現在、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は出されていませんが、政府からは、感染再拡大防止のための取り組みとして、引き続き、飲食店等に対する制限(感染拡大が見られる場合の時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

オミクロン株に対する水際措置の強化として、これまでの緩和措置が停止され、外国人の新規入国停止など、新たな措置が取れられています。

(1) オミクロン株に対する指定国・地域

オミクロン株に対する指定国・地域ついて、別途指定されています(水際強化措置に係る指定国・地域一覧)。

(2) 外国人の新規入国停止

11月30日午前0時(日本時間)以降、外国人の新規入国が停止されています。

(3) 有効なワクチン接種証明保持者に対する行動制限緩和措置の見直し

11月30日午前0時(日本時間)以降、有効なワクチン接種証明保持者に対する行動制限緩和措置に係る新規申請受付及び審査済証の交付が停止されます。また、12月1日午前0時(日本時間)以降の帰国者・再入国者等について、有効なワクチン接種証明保持者に対する3日間停留措置の免除及び待機期間短縮措置(14日→10日)が停止されます。

(4) モニタリングの強化等

オミクロン株に係る指定国・地域からの帰国者・入国者について、入国者健康確認センターの健康フォローアップを強化するとともに、変異株サーベイランス体制が強化されます。

(5) 入国者総数の引下げ

12月1日午前0時(日本時間)以降、日本に到着する航空便について、既存の予約について配慮しつつ、新規予約が抑制されます。

(参考サイト)

外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(オミクロン株に対する水際措置の強化)

厚生労働省HP 水際対策強化に係る新たな措置(19)について

出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は2,111,566名です。この内、2,013,021名が回復し、累計死亡者数は20,732名となっています。

タイ政府は、11月12日、新たな規制緩和措置を発表し、ダークレッドゾーン6県、レッドゾーン39県等を再指定するなどしています。

2.2 入国規制

タイ政府は、11月1日より、新たな入国システムであるThailand Passのシステムを開始しています。日本からの入国者は、ワクチン接種完了している場合、隔離1泊及びPCR検査により陰性となればその後の隔離はなしとなります。

Thailand Pass案内(在東京タイ王国大使館HP)

タイ入国の隔離免除について(在タイ日本国大使館HP)

2.3必要書類

Thailand Pass申請ページにて、以下書類をアップロードする必要があります。

  • パスポート
  • ビザ(必要な場合)
  • ワクチン接種証明(出国前14日以上前に必要回数接種を終えていること)
  • ホテル予約確認書(AQまたはSHA+、支払い済み(Paid)の記載があるもの、内容は1泊およびRT-PCR検査が含まれるもの)
  • 50,000 USD以上の医療保険

医療保険については以下の取り扱いとなっています。

    • 年齢にかかわらず加入必要(12歳未満も)
    • タイ在住外国人で社会保険加入者はSSOカードの提示で可(カードない場合は雇用主が発行した保険加入証明書)
    • 同伴家族はSSO加入でないため、その場合は通常通り保険加入が必要

タイ入国時のThailand Pass登録時に必要な医療保険に関する追加情報(在タイ日本国大使館HP)

  • 出国前72時間以内のPCR検査証明

PCR検査証明について、要件がRT-PCR方式であることとなっています。

  • ビザ

通常の就労のためのビザのほか、出張者の方については商談ビザが引き続き利用可能となっています。

この入国規制の変更については、随時最新の情報を確認する必要がありますので、在東京タイ王国大使館または、在タイ日本大使館のHPをご参照下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連の規制状況

 11月27日の新規感染者数は、5,097人であり、ピーク時の4分の1程度に落ち着いています。

 新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限であるFMCO(完全ロックダウン)は、クランタン州とサラワク州が第3段階の規制、残りの州が第4段階の規制に移行しています。

 ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、Covid-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。

3.2 入国規制

外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。ワクチン接種完了者の隔離期間は7日間ですが、ワクチン接種未完了者の隔離期間は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

11月29日より、ワクチン接種者を対象としたマレーシア・シンガポール間の渡航における入国後の隔離が不要となるワクチン・トラベル・レーンが開始されると発表されています。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

 COVID-19 の陽性率は落ち着いてきています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらず、日常化している印象を受けます。また、ミャンマー保健省は、新型コロナウイルス対策としての自宅待機措置を一部地区で解除する旨を発表しました。

4.2 入国規制

11月は 11日、25日にANA 便が飛びました。12 月は 3 日、17日、24 日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっていますが、シンガポール経由による帰国便が10月29日(金)から解禁され、その後水・金の週二便が運航される予定です。搭乗にあたっては48時間以内のPCR検査陰性証明書が必要となりますのでご留意ください。

ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続して

います。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、11月15日の週には31州が緑になり、人の移動も活発化しているように見受けられます。しかし、新規感染者数が増加傾向にある州もあり、11月29日の週には黄色が5州、緑が27州となりました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、リスクレベルの引き下げに伴い、商業施設等に対する収容人数の制限などの規制を緩和する傾向がみられますが、マスクの着用などの要請は引き続き継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

また、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われていましたが、米国政府は、11月8日よりワクチン接種を完了していることを条件に、観光などの必要不可欠でない陸路・フェリーでの越境を認めています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。また、日本政府は「有効と認められる新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種証明書発行国・地域」に、新たにバングラデシュを含む計13か国・地域を追加することを決定し、バングラデシュ政府が発行するワクチン接種証明書も、11月22日から有効となっています。ただし、有効と認められるワクチンの種類や、日本入国・帰国時点で2回目の接種日から14日以上経過していること等の条件がありますので、詳細は、外務省のサイトをご確認ください。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置が、10月23日付で発表されました。規制が緩和されています。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループBに属する国(日本はグループBに該当)からの渡航者で、出発の14日前までにWHO認可COVID-19ワクチンの接種が完了している者は、バングラデシュ入国後の隔離が免除される。ワクチン接種証明を携帯すること。ワクチン接種が完了していない者は、14日間の自宅隔離が必要である。
  2. 入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗72時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明を携帯すること。なお、トランジット先によっては「出発48時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明」の提示を求めている国もありますので、確認が必要です。
 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計約283万人で、死者数は累計48,361人です(2021年11月28日現在)。新規感染者は9月初旬をピークとして減少傾向にあり、平均で1日771人の新規感染者が報告されています。これは、9月初旬のピーク時の約4%にあたります。

 マニラについては、「NCR における COVID-19 対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。11月30日まで、マニラ首都圏(NCR)における警戒レベルはレベル2であると発表されています。

 フィリピン政府は、フェイス・シールド使用に関する規則を発表し、現時点でNCRに適用される警戒レベル2の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。

7.2 入国規制

 フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「グリーン」国(管轄区域・地域)に該当します。

 11月25日、フィリピン政府は、12月1日から12月15日までの間、完全にワクチン接種し、グリーン国に直前の14日間以上滞在した渡航者に対し、特定の条件を満たす場合にビザなしでの入国を許可することを発表しましたが、一転、11月28日、新しいCOVID-19変異体(オミクロン株)が検出されたことにより、12月15日まで、直ちに国境管理措置を実施することを発表し、11月25日発表のビザなし渡航の許可は一時停止となりました。

第2.各国の労働組合及びストライキに関する法制度の概要

1.日本

 労働組合は「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」と定義されています(労働組合法第2条)。日本国憲法第28条では、労働者の団結する権利(団結権)、労働者が使用者と団体交渉する権利(団体交渉権)、労働者が要求実現のため団体行動をする権利(団体行動権(争議権))の労働三権を保障しています。ただし、公務員などの労働三権に関しては特別法が設けられており、一部の権利が制限されている場合があります。この労働三権を具体的に保障するため、一般法として「労働組合法」などが定められており、労働組合法は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的としています(労働組合法第1条)。労働組合やストライキについて規制する主な法律は、労働組合法及び労働関係調整法です。

(1) 労働組合の条件

 上記の通り、憲法第28条では、労働者が労働組合を結成する権利(団結権)を保障していますが、一方、労働組合法では、労働組合として認められない条件を以下の通り規定しています。

  1. 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接に抵触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すこと(労働組合法第2条第1号)
  2. 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けること(第2号)
  3. 共済事業その他福利事業のみを目的とすること(第3号)
  4. 主として政治活動や社会運動を目的とすること(第4号)

(2) 労働組合の争議権

 労働組合の争議行為は、ストライキ、サボタージュ(怠業)、ロックアウト(作業所閉鎖)その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいいます(労働関係調整法第7条)。憲法第28条(勤労者の団結権)、労働組合法第1条第2項及び第8条(損害賠償)は、争議行為が正当なものであれば、労働組合又はその組合員は民事上・刑事上の責任を免責されると定めています。また、使用者は、正当な争議行為を理由に、組合員に不利益な扱いをしてはいけません(労働組合法第7条)。

逆に、争議行為が正当性を欠く場合は、不法行為に基づく損害賠償が可能となります。争議行為は団体交渉による労働条件の対等決定を実現するために使用者に圧力をかける行為であり、その正当性は、「団交のための圧力行為」といえるか否かにあります。具体的には、ⅰ)主体、ⅱ)目的、ⅲ)手続、ⅳ)態様の4点から判断されます。ⅰ)主体については、団体交渉の当事者となり得る者でなければならず、ⅱ)目的は、団体交渉の対象となるべき事項(労働者の労働条件その他の経済的地位に関する事項及び労使関係に関する事項)に限定されます。ⅲ)手続としては、争議行為は団体交渉を経て行われるものでなければならず、ⅳ)態様は、暴力を伴うもの等不当なものは認められません。ストライキをはじめとした争議行為の正当性は、上記4つの観点から、個々の事案ごとに判断されます。いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為とは解釈されません(労働組合法第1条第2項)。

(3) 不当労働行為

労働組合法では、使用者が以下の行為を行うことは禁止されています。

  1. 労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことにより、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取り扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること(労働組合法第7条第1号)
  2. 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉を正当な理由なく拒否すること(第2号)
  3. 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること(第3号)
  4. 労働者が労働委員会に対し使用者が労働組合法第7条に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること(第4号)
 

2.タイ

(1) 関連する法令

タイにおける労働組合やストライキ等に関する法律として、労働関係法(Labor Relations Act B.E.2518 (1975))が定められています。

(2) 労働組合

 労働組合は、雇用条件に関する利益を求め、これを保護し、使用者と被用者との間および被用者間の良好な関係を促進することを目的として設立することができます(同法第86条)。労働組合は同一使用者の被雇用者による結成、及び、同一業種において労働する被雇用者による結成が定められており、労働組合の発起人は、成人かつタイ国籍者である必要があります(同法第88条)。

 労働組合を設立する場合、当該労働組合の規約を作成し、登録をする必要があります(同法第87条)。登録申請にあたり、少なくとも10名以上が発起人となり、申請書には発起人全ての氏名、年齢、職業、住所を記載する必要があります(同法第89条)。

 労働組合の組合員は、労働組合の登録申請者と同一使用者の被雇用者、または同一業種において労働する被雇用者で、かつ15歳以上の者でなければならないとされています(同法第95条)。労働組合の組合員資格は、死亡、辞任、総会による除名、または労働組合の規則に基づいて終了します(同法第97条)。

  • ストライキ

 ストライキについては、以下の所定の手続きを経て行う必要があります。

    1. 労働協約(雇用条件に関する使用者と被雇用者との間の合意事項)の規程に関する要求や修正を要望する場合、使用者又は被雇用者は書面にて相手方に当該要望を提出します(同法第13条)。
    2. 被雇用者側が要望書を提出する場合、全被雇用者数の15%以上の被雇用者の氏名と署名が必要となります。労働組合が被雇用者を代表して要望書を提出する場合、当該組合の組合員数は、全被雇用者数の20%以上である必要があります。この場合、要望書には被雇用者の氏名及び署名を記載する必要はありません(同法第15条)。
    3. 要望書を受け取った当事者は、要望書を提出した当事者に対し、遅滞なく受領者の氏名または代表者の氏名を書面で通知し、両当事者は要望書を受領した日から3日以内に協議を開始します(同法第16条)。
    4. 3の期間内に協議がなされなかった場合、または協議がなされたが合意に至らなかった場合、労働争議が発生したものとみなされ、要望を行った当事者は、3の期間が経過した時点、または合意に至らなかった時点から24時間以内に、労働争議調停官に書面で通知する必要があります(同法第21条)。
    5. 4の通知を受けた労働争議調停官は、通知を受け取った日から5日以内に、調停を行います。この期間内に両当事者が合意できない場合は、被雇用者は、ストライキを行うことができます(同法第22条)。
    6. ストライキをする場合、被雇用者側は、ストライキ開始の24時間以上前までに、労働争議調停官及び使用者へ、文書により通知をする必要があります(同法第34条)。また、ストライキを行う場合には、労働組合の総会にて労働組合員総数の2分の1以上の承認を得なければならず、投票は無記名投票で行われるとされています(同法第103条8号)。
 

3.マレーシア

マレーシアにおいて、労働組合は労働組合法(Trade Unions Act 1959)及び労使関係法(The Industrial Relations Act 1967)によって規律されています。

(1) 労働組合

1 概要

労働組合法上の労働組合とは、以下のうちいずれか又は複数の目的を有していなければならないと規定しています(労働組合法2条)。

  1. 労働者と使用者間の良好で調和のとれた労使関係の促進、労働者の労働条件の改善、経済的社会的地位の向上又は生産性の向上を目的とした労働者と使用者の関係の規律
  2. 労働者と労働者の間、又は使用者と使用者の間の関係の規制
  3. 労働紛争における労働者又は使用者の代理
  4. 労働紛争及びそれに関連する事項の実施又は処理
  5. 特定の職業又は業界におけるストライキ又はロックアウトの促進、組織化又は資金調達、あるいはストライキ又はロックアウト中の組合員に対する給与その他の手当の提供

2 労働組合の登録

労働組合は、一時的か恒久的かを問わず、労働者や使用者が特定の産業、職業又は組織の中に組合を設立することを合意することにより設立されます(労働組合法9条1項)。全ての労働組合は設立日から1カ月以内に、同法に基づき労使関係局長に対し登録の申請をしなければなりません(労働組合法8条1項)。申請には最低でも構成員7名の署名、労働組合規則の添付及び手数料の支払いが必要となります(労働組合法10条1項)。

登録を受けた労働組合は自身の名で訴え又は訴えられることができます(労働組合法25条1項)。

3 使用者の禁止行為

使用者は、労働組合の活動に対して以下の行為を行うことができません(労使関係法5条1項)。

  1. 雇用契約において労働組合への加入を禁止すること
  2. 労働組合の組合員であることを理由に採用を断ること
  3. 労働組合の組合員であることを理由に労働条件を差別すること
  4. 以下の理由により労働者を解雇すること
  • 組合員である、組合員になろうとすること、他の労働者に対し労働組合に加入するよう説得したこと
  • 労働組合の活動に参加したこと

(2) ストライキ及びロックアウト

以下の状況下においては、労働者の労働組合はストライキを召集することができず、労働組合の構成員はストライキに参加することができず、使用者の労働組合はロックアウトを宣言することができません(労働組合法25A条1項)。

  1. 労働者の労働組合においては、ストライキへの参加資格を有する組合員の2/3以上の同意を秘密投票において得ていない場合
  2. 使用者の労働組合においては投票権を有する組合員の2/3以上の同意を秘密投票において得ていない場合
  3. 労使関係局長に秘密投票の結果を提出してから7日間が経過していない場合
  4. 秘密投票の要件を満たしていなかったことによりストライキ又はロックアウトについての秘密投票が無効になった場合
  5. 労働組合規則に違反している場合
  6. 人的資源省大臣によってなされた指示又は決定に含まれる事項に関するものである場合
  7. 同法その他の法律に違反するものである場合

4.ミャンマー

(1) 関連する法令

労働組合に関する法律として、労働組合法が存在する。現在の労働組合法は、労働組合法(The Trade Union Act, 1926年)を改正する形で、2011年10月11日に成立しました。同法は、1962年以降結成が禁止されていた労働組合の結成について、一定の条件を満たした場合には認めています。

(2) 労働組合の結成及び権利

労働組合に関して、複数の階層の労働組合が予定されており、単位労働組合、タウンシップの労働組合、地域または州の労働組合、労働連盟、ミャンマー労働連合が存在する。基本となる単位労働組合の組成については、30人以上の労働者によって結成する必要があり、かつ、関連する事業または活動の単位の10%以上の労働者からの推挙が必要となります。労働者が30人未満の事業または活動の場合、同じ性質の他の事業または活動の単位と共に結成することができます。単位は、工場、事業場、製造業等の職業である。結成した労働組合は、訴訟を起こし、訴えられる権利を有しています。また、労働組合は登録を強制されており、登録官または主任登録官に登録を申請しなければなりません。

労働組合は、労働者が解雇された場合、解雇理由が労働組合員であること等を理由とすると信ずるに足る理由がある場合、使用者に再雇用を求めることができます。また、労使間の紛争や政府に対する不服申し立ての場合等に代表者を参加させる権利および団体交渉権を有します。

(3) ストライキ

ストライキとは、紛争事項に関係する生産やサービスを低下させる意図を持って、一部または全員の労働者の決定による労務提供の拒否、または仕事の能率低下、その他の集団的行為と定義されています。但し、労務提供拒否によって生命や健康に突然申告な危険をもたらす恐れがあると信じる正当な理由がある場合の労務提供拒否は含まれません。

ストライキ権を行使するためには、所定の手続を経て行わなければなりません。この手続は公益事業か否かで異なります。公益事業とは、運輸業、港湾業および港での荷物運搬業、郵便、テレックス、ファックス業、情報・通信技術に関する事業、石油採掘・石油配送業、糞尿処理業・清掃業、電気または燃料の生産、配送、分配に関わる事業、金融業および政府によって公益事業と指定される事業をいいます。

公益事業以外の事業においては、労働組合は、過半数以上の組合員の賛成によって、少なくとも3日前に関連する使用者および管轄調停機関に対して予告することによってストライキを実行することができる。予告内容として、日、場所、参加者数、方法および時間が要求されます。

公益事業の場合、過半数以上の組合員の賛成に基づきストライキを行うときは、関連する労働連盟の指令に従い、少なくともストライキの14日前までに関連する使用者および管轄調停機関に通知を行う必要があります。

 

5.メキシコ

(1) 関連する法令

メキシコでは、労働組合を結成する権利やストライキの権利はメキシコ合衆国憲法(Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)第123条により保障されています。また、労働組合やストライキに関しては、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)に規定されていますので、その内容を紹介します。

(2) 労働組合の結成及び権利

労働組合は、15歳以上の労働者20人以上で構成することができます。連邦労働法には、労働組合の種類として、職業別労働組合(同一の職種・職業に従事する労働者により組織されるもの)、企業別労働組合(同じ企業に勤める労働者により組織されるもの)、産業別労働組合(同一の産業に従事する労働者により組織されるもの)、全国的産業別労働組合(全国的な大規模産業に従事する労働者により組織されるもの)、小規模職業別労働組合(同一地区内の同一職業に従事する労働者により組織されるもの)が例示されていますが、これら以外の労働組合も組織されうると規定されています。

一般に指揮、管理、監査、監督や、会社や事業所内での使用者の業務に関連する職務を行う信任労働者(trabajador de confianza)は労働組合の組合員にはなれません。また、外国人労働者は、労働組合の役員となることはできません。

労働組合は、労働組合結成議事録の認証済み謄本、組合員リスト、組合規約の認証済み謄本、組合役員を選出した際の会議議事録の認証済み謄本を提出し、連邦労働調停登録センター(Centro Federal de Conciliación y Registro Laboral、以下「CFCRL」といいます。) に登録しなければなりません。

労働組合は、労働協約の締結主体であり、使用者との間で団体交渉を行うことができます。労働組合の組合員たる労働者を雇用する使用者は、労働者の要請に応じて労働組合と労働協約を締結する義務を負うとされており、使用者がこれを拒んだ場合、労働者はストライキを実施することができます。したがって、使用者は、労働協約の締結の申し出があった場合には真摯な対応が求められます。

(3) ストライキ

 ストライキとは、労働組合を含む、2名以上の労働者の同盟によって行われる一時的な業務の停止と定義され、単なる業務停止行為に限定されなければならないと規定されています。すなわち、暴力行為は行いえず、大多数のストライキ参加者が人や財産に対して暴力的な行為を行った場合は、当該ストライキは違法となります。

 ストライキの手続は、請願書の提出によって開始され、1請願書は使用者に宛てた書面であり、ストライキを行う意思の表明、ストライキの目的、仕事を中断する日と時間あるいはストライキが行われるまでの期間を示すこと、2請願書の写しが管轄裁判所へ提出されること、3業務停止の通知が、請願書に明示された業務停止日の6日前までに、公務にあっては10日前までになされること、4ストライキの目的に応じた必要書類を添付する、といった要件を満たす必要があります。

 そして、裁判所は、上記2の請願書の受領から48時間以内に、その写しを使用者に交付します。これを受領した使用者は、その後48時間以内に、裁判所に回答書を提出しなければなりません。また、CFCRLあるいは調停センターは、ストライキ開始までの期間に、当事者を召喚し、交渉や調停協議を行う権限を有しており、裁判所は、請願書の受領から24時間以内に、当事者が和解を行う機会を設けることができるよう、管轄のCFCRLや調停センターにこれを通知します。なお、CFCRLや調停センターは2019年5月の連邦労働法改正により新設された機関であり、これまではその機能を労働調停仲裁委員会が担っていました。当該改正労働法にもとづく運用の開始は、3段階に分け進められており、2020年11月に第1フェーズ、2021年11月に第2フェーズが開始され、21州(ゲレロ州とバハカリフォルニアスル州においては、連邦管轄の業務のみ)において新体制での運用が始まっています。残る、チワワ州、メキシコシティ、コアウイラ州、ハリスコ州、ミチョアカン州、ナヤリット州、ヌエボレオン州、ソノラ州、シナロア州、タマウリパス州、ユカタン州においては、2022年5月に予定される第3フェーズの開始までは、依然、労働調停仲裁委員会がこれを担うこととなります。

その後、調停において和解に達すれば、ストライキは行われませんが、和解に達せず、設定されたストライキ実施予定日を迎えると、ストライキが開始されます。

 

6.バングラデシュ

バングラデシュの労働組合や労働争議については、2006年労働法(以下「労働法」)に定められています。

(1) 労働組合の設立要件

労働法にて、全ての労働者は労働組合を設立し、加入する権利を有すると規定されています(労働法第176条)。労働組合は、役員の情報、加入者の誓約書や規約等を提出の上登録しなければなりません(労働法第177条、第178条)。労働組合の登録には、事業場で雇用されている労働者の20%以上が加入していることが要件のひとつですが、同一の使用者のもと、事業場に複数の労働組合が存在し、同一業界で連携して活動している場合は、1つの労働組合とみなされます(労働法第179条(2))。1事業場又は複数の事業場につき、労働組合を3組織まで登録できます(同条(5))。

(2) ストライキ

1 事前通知の義務

当事者は、事前の話し合いや調停を経ずに、ストライキを行うことはできません。労働法の規定に基づく調停により合意に至らなかった場合、相手方にストライキについて通知することができ、通知には開始日を記載する必要があります。なお、ストライキの開始日は当該通知の後7日~14日の間でなければなりません。また、ストライキの通知には、規定された方法で実施された秘密投票にて組合員の3分の2の同意が必要です。当事者は、労働裁判所に裁定を申し立てることもできます(労働法第211条(1))。仲裁の継続中、労働裁判所又は労働上訴審判所で係争中に、ストライキの通知を出すことは認められていません(労働法第225条)。

2 政府による禁止

ストライキが30日を超えて実施された場合は、政府は書面にて禁止することが認められていますが、ストライキの継続が公共の生活に深刻な問題又は国益の損害を引き起こすと認めた場合は、30日以内であってもいつでも書面にて禁止することができます(労働法第211条(3))。公共サービスの場合は、政府は書面により、いつでもストライキを禁止することができます(同条(4))。

3 一定期間の禁止

事業所が新しいものであるか、外国人に所有されている、または外国人と共同で設立されている場合、ストライキは、生産を開始して3年間は禁止されますが、他の労働争議解決に関する規定は適用されます(労働法第211条(8))。

4 違法なストライキ

労働法第227条に、違法なストライキについて規定されています。

  • 規定された方法に基づく通知なしに又は通知に記載したストライキの日付の前後に又は労働法第225条(上記1事前通知の義務)に違反して、労働争議の宣言、開始または継続した場合
  • 労働法第209条(規定に従い使用者又は団体交渉代理人により提起された労働争議でなければ、労働争議とみなされない)に規定された方法以外で提起された労働争議の結果として宣言、開始又は継続した場合
  • 労働法第211条(労働争議の解決)又は第226条(ストライキ又はロックアウトを禁止する労働裁判所及び労働上訴裁判所の権限)に基づき発出された命令に違反して継続した場合
  • 当該労働争議について調停又は裁定が実施されている期間中に宣言、開始又は継続した場合

なお、違法なストライキの結果として宣言されたロックアウト、違法なロックアウトの結果として宣言されたストライキは違法とはみなされません。

違法なストライキを開始、継続、推進した労働者は、6ヶ月以下の懲役もしくは5,000タカ以下の罰金またはその両方が科されます(労働法第294条(1))。

 

 

7.フィリピン

(1) 団結権

フィリピンでは1987年憲法により、すべての労働者について、団結権、団体交渉権及び平和的な団体活動を行う権利、例えば合法的ストライキを行う権利など、労働者の権利利益に影響を与えうる使用者の意思決定プロセスに関与する権利を認めています。とりわけ労働法においては、団体交渉を行う自由、団結する自由、労働者の啓発といったものが国家の重要政策として位置づけられています。また、国際労働機関(ILO)の加盟国として、フィリピン法は、労働者が自ら団体を設立し、それに加入することのできる自由及び団体の規約を作り、活動内容を決定する自由を保護しています。

 労働組合は、組合員の賃金、労働時間その他の雇用状況について好ましい条件を勝ち取ることを第一目的とし、組合費を納める労働者自身によって組織され、投票で選ばれた役員を中心に運営されます。労働組合は、労働雇用省(DOLE)の労使関係局(BLR)に登録されて初めて「合法的な労働組合」(”LLO”と呼ばれます)として認められ、労働法下における代表権や団体交渉権を行使するための法的資格を与えられます。

 組合を自発的に解散するためには、解散を目的として招集された大会において、一般組合員の3分の2以上の賛成を得る必要があります。また組合の強制的解散事由としては、組合員リストや組合役員選挙に関する不実記載、偽りの記述、欺罔行為などが挙げられます(労働法第239条)。

(2) 団体交渉権

団体交渉は、労使関係の安定化などをその目的として認められている権利です。団体交渉を通じて合意に至った内容は労働協約(CBA)としてまとめられ、使用者と組合の双方に対する権利及び義務として拘束力を持ちます。団体交渉そのものの拒否、交渉における強制的議題の忌避、交渉時の不実な行為、及び労働協約の違反といったものはすべて団体交渉義務違反とされ、労働法における不当労働行為とみなされます。労使間での交渉が行き詰まった場合には、第三者たる仲裁者が介入することで交渉継続が図られます。

(3) ストライキとロックアウト

 労働法は、団体交渉などの目的で労働者が団結権を行使し活動することを認めています。ここでいう行動とは例えばストライキのことで、労使紛争の結果として従業員が労働を一時的に停止することを指します。他方、使用者に認められた権利としてロックアウトがあり、これは、労働者による労働力の供給を一時的に拒否することを指します。

 ストライキ及びロックアウトは、団体交渉が行き詰まった場合や、不当労働行為が行われた場合にその実施が認められています。労働協約の内容に違反しただけでは直ちにストライキやロックアウトの正当な事由とはなりませんが、労働協約で定められた経済条項に関する悪意ある違反、重大な違反が見られた場合は正当な事由として認められることになります。また、組合内部及び組合間における紛争は正当な事由とは認められません。ストライキ及びロックアウトの実施にあたっては事前に労働雇用省への通知が必要で、通知には使用者の名前と住所、組合の名称と住所、使用者の属する産業の性質、組合員の数及び組合内の交渉部門にいる従業員数、その他紛争解決に関わる諸情報が含まれなければいけません。

 ストライキ及びロックアウトを実施する場合、交渉行き詰まりを原因とする場合は30日以上前、不当労働行為を原因とする場合は15日以上前に中央斡旋調停委員会(NCMB)へ事前通知をする必要があります。通知から実施までの期間は「クーリングオフ期間」と呼ばれており、この期間、中央斡旋調停委員会は両者の斡旋・調停に努めるものとされています。なお非合法なストライキ活動や、ストライキ中の非合法な行為は、ストライキを強制的に解散させる事由となります。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

 URL: http://www.tnygroup.biz

・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

 URL: http://progress.tny-legal.com/

・佐賀(TNY国際法律事務所)
URL: https://tny-saga.com/

・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

 URL: http://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

 URL: http://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL: http://tny-myanmar.com

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

 URL: http://tny-mexico.com

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

 URL: http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL: http://estonia.tny-legal.com/

・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

 URL: https://www.tny-bangladesh.com/

・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

 URL: https://www.tnygroup.biz/pg550.html

Newsletterの記載内容は2021年11月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

これまでに発出された緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置は、9月30日にすべて解除されました。マスクの着用やこまめな換気、密を避けるなど、引き続き感染拡大防止対策が取られていますが、コロナ禍の前の生活や消費が戻りつつあります(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 検疫の強化

1 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。要件を満たしている場合でも、検疫所が指定する様式でないと航空会社が搭乗を受け付けない又は日本到着後に拒否された等のトラブルが発生していますので、医療機関に対して、検疫所指定の様式での記載を依頼したほうがスムーズです。

2 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

3 スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

4 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

5 ワクチン接種証明書の「写し」の提出

 入国時・帰国時の検疫で、有効なワクチン接種証明書の「写し」を提出する場合、検疫所が確保する宿泊施設での3日間の待機の免除や、入国後14日間の待機期間の一部が短縮されます(ワクチン接種証明書の「写し」の提出について(厚生労働省))

6 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

検疫措置として、「水際対策上特に対応すべき変異株等に対する指定国・地域」及び「水際対策上特に対応すべき変異株以外の新型コロナウイルスに対する指定国・地域」からの入国者は、検疫所長の指定する場所での3日間又は6日間の待機が求められます。本Newsletterでご紹介する国のうち対象国は、フィリピン(6日間待機)、マレーシア及びバングラデシュ(ともに3日間待機)です(対象の国又は地域については、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

(2) 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は1,893,941名です。この内、1,775,570名が回復し、累計死亡者数は19,070名となっています。また、非常事態宣言は、11月30日まで延長されています。

タイ政府は、10月21日、バンコク都と16県の観光地エリアについて夜間外出禁止令を撤廃することを発表しました。バンコク都の他、クラビ、チョンブリ、チェンマイ、プーケットなどの観光地が対象となります。この撤廃は、10月31日23:00より適用されます。

2.2 入国規制

タイ政府は、10月21日、タイへの入国者の隔離措置に関して、11月1日より、日本を含む46の国・地域からの飛行機での入国者について、隔離免除にて入国可能とすることを発表しました。主な条件は以下の通りです。

  • タイ政府もしくはWHO承認のCOVID-19ワクチンを、渡航の14日前までに接種完了し、英文のワクチン接種証明を所持
  • 46の国・地域に連続して21日以上滞在
  • タイ滞在期間を対象とするCOVID-19関連の治療費を含む最低5万米ドルの医療保険に加入
  • 渡航前72時間以内のPCR検査陰性証明を所持
  • タイ到着時にPCR検査を行い、検査結果が出るまで指定ホテルで一晩待機

ワクチンの接種が完了していない者等については、10日間の隔離措置が適用されます。

この入国規制の変更については、随時最新の情報を確認する必要がありますので、在東京タイ王国大使館または、在タイ日本大使館のHPをご参照下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連の規制状況

 10月28日の新規感染者数は、6,377人であり、ピーク時の3分の1以下に落ち着いています。

 マレーシアでは、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的(第一段階から第四段階まである)に規制を緩和するFMCO(完全ロックダウン)が施行されていますが、感染状況の改善により、第一段階、第二段階の規制が適用される州はなくなりました。現在は、ペルリス州、サラワク州、クランタン州、ペラ州、ペナン州、サバ州、ケダ州が第三段階、その他の州が第四段階にあります。規制緩和により、州内での地区間移動などが可能となっています。またワクチン接種完了者には、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められるようになってきています。

3.2 入国規制

外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。ワクチン接種完了者の隔離期間は7日間ですが、ワクチン接種未完了者の隔離期間は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

COVID-19 の陽性率は落ち着いており、7%前後で推移しています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変

わららず、日常化している印象を受けます。

またミャンマー保健省は、新型コロナウイルス対策としての自宅待機措置を、10月28日午前4時から一部地区で解除する旨を発表しました。

4.2 入国規制

10月は 8日、15日、22日、29日にANA 便が飛びました。11 月は 11 日、25 日に救援便が運航予定で

す。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっていますが、シンガポール経由による帰国便が10月29日(金)から解禁され、その後水・金の週二便が運航される予定です。搭乗にあたっては48時間以内のPCR検査陰性証明書が必要となりますのでご留意ください。

ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続して

います。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

COVID-19感染者数の増加は落ち着きを見せ始め、メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、10月4日の更新で橙の州が1州になり、10月29日には、11月1日から2週間適用される信号色が、29の州で緑となることが発表されました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、リスクレベルの引き下げに伴い、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制を緩和する傾向がみられますが、マスクの着用などの要請は引き続き継続されています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

また、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われておりましたが、米国政府は11月よりワクチン接種を完了していることを条件に、不要不急ではない陸路・フェリーでの移動を段階的に認めていく方針を発表しました。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置が、10月23日付で発表されました。規制が緩和されています。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループBに属する国(日本はグループBに該当)からの渡航者で、出発の14日前までにWHO認可COVID-19ワクチンの接種が完了している者は、バングラデシュ入国後の隔離が免除される。ワクチン接種証明を携帯すること。ワクチン接種が完了していない者は、14日間の自宅隔離が必要である。
  2. 入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗72時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明を携帯すること。なお、トランジット先によっては「出発48時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明」の提示を求めている国もありますので、確認が必要です。
 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計2,772,067人で、死者数は累計42,348人です(2021年10月27日現在)。新規感染者は9月初旬をピークとして減少傾向にあり、平均で1日4,625人の新規感染者が報告されています。これは、9月初旬のピーク時の約20%にあたります。

 マニラについては、「NCR における COVID-19 対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。11月14日まで、マニラ首都圏(NCR)における警戒レベルはレベル3であると発表されています。

また、コミュニティ隔離措置として、引き続き、地域ごとに、移動の制限や飲食店の営業制限等が課されています。

7.2 入国規制

 フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「イエロー」国(管轄区域・地域)に該当します。

 「イエロー」国(管轄区域・地域)から入国する渡航者のプロトコルは以下のとおりです。

 1 「イエロー」国(管轄区域・地域)から入国する完全にワクチン接種をした渡航者は、到着日から5日目に行われるPCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要があります。その後、到着日を初日として、10日目まで自宅での検疫を行う必要があります。施設の検疫中の症状の監視はフィリピン検疫局(BOQ)により厳密に行われます。

  なお、外国人は少なくとも6日間、宿泊施設を事前に予約する必要があります。

 2 ワクチン接種を受けていない、または部分的にワクチン接種を受けた、または「イエロー」国(管轄区域・地域)から入国するフィリピン当局が独自にワクチン接種状況についてその有効性、信憑性が検証・確認できない渡航者は、到着日から7日目に行われるPCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要があります。その後、到着日を初日として、14日目まで自宅において検疫を行う必要があります。

  なお、外国人は少なくとも8日間、宿泊施設を事前に予約する必要があります。

第2.各国の遺言に関する法制度の概要

1.日本

遺言制度は、遺言者の生前の最終意思を尊重してその効力を認めるもので、生前にいつでも遺言を撤回し(民法第1022条)変更することができ、遺言者の死亡によって効力が生じます(民法第985条第1項)。

遺言の法的効力が認められる事項は、1 相続に関する事項(相続分の指定又は指定の委託(民法第902条)、遺産分割方法の指定又は委託(民法第908条前段)、推定相続人の廃除(民法第893条)とその取り消し(民法第894条))、2 財産処分に関する事項(包括遺贈及び特定遺贈(民法第964条)等)、3 身分に関する事項(認知(民法第781条1項2項)、未成年後見人(民法第839条)・未成年後見監督人の指定(民法第848条))、4 遺言執行に関する事項(遺言執行者の指定又はその委託(民法第1006条第1項)、特定財産の遺言執行に関する特別の定め(民法第1014条))などが挙げられ、主に民法によって定められています。

(1) 遺言書の種類及び作成要件

1 普通方式

(a) 自筆証書遺言

 遺言者が相続財産について、作成日付及び氏名を自書し押印する、簡単な方式の遺言です。一方で、方式の不備により無効となるおそれや紛失の可能性などがあります。作成要件は以下の通りです。

  • 遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法第968条第1項)。ただし、自筆証書に一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合、遺言者は、その目録の毎葉に署名し、印を押さなければならない(同条第2項)。
  • 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない(同条第3項)。

(b) 公正証書遺言

 公証人が内容を含めて作成に携わり、公証人役場で遺言を保管しますので、安全な作成方法と言えます。作成要件は以下の通りです。

  • 証人2人以上の立会いがあること(民法第969条第1号)
  • 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること(第2号)
  • 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させること(第3号)
  • 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる(第4号)
  • 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと(第5号)

(c) 秘密証書遺言

公証人や証人の前に封印した遺言書を提出し、その内容を秘密にして遺言書を保管することができる方式の遺言です。作成要件は以下の通りです。

  • 遺言者がその証書に署名し押印すること(民法第970条第1項第1号)
  • 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印象をもってこれに封印すること(同項第2号)
  • 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること(同項第3号)
  • 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、押印すること(同項第4号)

2 特別方式

遺言の特別方式として、死亡の危急に迫った者の遺言(民法第976条)、伝染病隔離者の遺言(民法第977条)、在船者の遺言(民法978条)、船舶遭難者の遺言(民法第979条)が定められており、証人の立会いをもって遺言書を作成することができます。

(2) 遺言の執行

1 遺言の検認手続き

遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません、遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様です(民法第1004条第1項)。ただし、公正証書による遺言については、適用しません(同条第2項)。

2 遺言執行者

 遺言者は、遺言で、1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に寄託することができます(民法第1006条第1項)。遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、選任することができます(民法第1010条)。遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有すると定められています(民法第1012条第1項)。

 

2.タイ

(1) 遺言の種類

タイの法律によると、遺言書には5つのタイプがあります。主に使用されているのは「普通遺言」です(タイ民商法典1656条)。その他の種類の遺言は、以下のとおりです。

  1. 「自筆証書遺言」(1657条):遺言者が自筆で遺言書を作成しなければなりません
  2. 「公正証書遺言」(1658条):遺言者が公証人の面前で遺言内容を口述し、公証人が作成します
  3. 「秘密証書遺言」(1660条):遺言者が遺言を封印し、遺言の内容を秘密にして保管することができます
  4. 「特別な方式の遺言」(1663条):伝染病や戦争など特別な状況下にある場合に行うことができます
  5. 自筆証書遺言は、遺言書について証言する証人がいない可能性が高く、遺言書に記載されている署名や筆跡が裁判所の専門家によって100%真正で正確であることが確認できないため、遺言書の真正性・正確性を理由に他の当事者から異議を申し立てられることがあるため注意が必要となります。

(2) 普通遺言の作成方法

普通遺言は、次のような内容で作成しなければなりません(1656条)。

  1. 遺言書の作成された年月日
  2. 遺言者が死亡した場合の財産の分配方法等についての意思表示
  3. 二人以上の証人による遺言書への署名
  4. 遺言者のために遺言書を書く/タイプする者は、遺言書に署名することが必要(1671条)

これらに従わない場合、遺言書は無効となります(1705条)。

タイの裁判所は、判例上、この要件を非常に重視していると思われます。遺言者が1人の証人の立会いのもとで遺言書に署名し、もう1人の証人はその5分程度後に立会った事案があります。この事案では、2人目の証人は遺言者が署名した瞬間には立ち会っていなかったため、当該遺言書は無効であると判断された判例があります。

(3) 注意点

  1. 遺言書を書いたり、タイプしたり、証人として遺言書に署名した者は、遺言書に記載された財産を受け取ることができません(1653条)。
  2. 遺言者が複数の遺言書を作成した場合で、両方の遺言書の記載内容が異なる場合には、古い方の遺言書は、最新の遺言書によって撤回されたものとみなされます(1697条)。

受遺者が遺言者より先に死亡した場合(1698条)、遺言書に記載された財産が遺言者の死亡前に他人に譲渡された場合(1696条)など、何らかの理由で遺言書のいずれかの条項が無効となった場合、当該財産は、遺言書が存在しなかったかものとして、相続人に相続されます(その割合は法律に記載されている通りとなります。1699条)。

 

 

3.マレーシア

(1) 概要

 マレーシアの遺言は、イスラム教徒の遺言と非イスラム教徒の遺言があります。イスラム教徒の遺言については州ごとの異なる法令により規定されています。一方、非イスラム教徒の遺言は、遺言法(Wills Act 1959)により定められています。

 そして、遺言とは、遺言者の財産その他の事項について、遺言者がその死後に効力を生じさせることを望む意図をもった宣言をいいます(遺言法2条)。被相続人の遺言が存在すれば、原則、遺言の内容に従い被相続人の財産が分配されます。

(2) 遺言の作成

 有効な遺言を作成するためには、遺言者は以下の要件・能力が必要となります。

  1. 遺言を書いた時点で18歳以上であること(遺言法4条)。
  2. 判断能力を有する健全な精神の持ち主であること(遺言法3条)。
  3. 遺言書を書面で残し、署名することができること(遺言法5条)。

 このほか、有効な遺言書を作成するためには、2人の証人(遺言者及び受益者を除く)が署名する必要があります。そして、署名中は、全ての当事者が立ち会う必要があり、個別に署名することはできません(遺言法5条)。

(3) 遺言の執行

 全ての遺言は、遺言によって反対の意思が示されない限り、遺言者の死亡直前に執行され効力が生じると解釈されます(遺言法18条)。遺言は、故意に撤回したり、結婚したり、イスラム教に改宗したりしない限り有効となります。

遺言者が死亡した場合、遺言執行者に指名された者は、遺言者が遺言書で述べた通りに遺産分配の手続を開始するため、裁判所に検認(Grant of Probate)を申請します。

なお、遺言執行者については、証人の要件とは異なり、受益者を指名することができます。

 

4.ミャンマー

ミャンマーにおいて遺言は、1925年相続法(The Succession Act(以下、「相続法」という))にて定められています。

遺言には、非特権遺言と特権遺言の2種類があり、非特権遺言とは、遠征に従事した又は実際の戦争に従事した兵士、又はそのように雇用された又は従事した空軍兵、又は海上での船員を除く遺言者が、以下の規則に従い遺言を実行することを意味します。

  1. 遺言者は、遺言に自身の署名又は押印を行う又は、遺言者の立会いの下、他の者が署名する。
  2. 遺言者の署名又は押印、遺言者の代わりに署名した者の署名は、遺言として書かれていることに影響を与えることを意図して見えるように配置する。
  3. 遺言は、2人又はそれ以上の証人により証明され、それぞれが、遺言者が遺言に署名又は押印すること、または遺言者の立会いの下他の者が遺言に署名することを見届ける、または遺言者の署名又は押印、または当該他の者の署名の個人的な承認を遺言者が受け取ったことを証明する。また各証人は、遺言者の面前で遺言に署名しなければならないが、同時に複数の証人が立ち会う必要はなく、特定の形式の証明は必要ない。(相続法第61条)

特権遺言とは、遠征に従事した又は実際の戦争に従事した兵士、又はそのように雇用された又は従事した空軍兵、又は海上での船員が未成年(18歳未満)ではない場合、第66条による規定に従い、遺言によって財産の処分をすることができると定められています。(相続法第65条)

しかし、相続法第4条にて、ヒンズー教徒、ムハンマダン教徒、仏教徒、シーク教徒、またはジャイナ教徒に関して遺言による継承は認められていません。また、ミャンマーの人口の半数以上を占める仏教徒を含む上記教徒は、法的に遺言を行うことは認められていないとの判例があります。したがって、ミャンマーにおいては遺言を活用することは実務上難しく、相続制度を理解した上で、事前に株式や不動産について契約書上適切な対応を行う必要があります。

 

5.メキシコ

メキシコの遺言に関する規定は民法に定められています。連邦民法(Código Civil Federal)のほか、各州の民法にも遺言の規定があり、原則、遺言者の所在するメキシコの各州の民法に従います。本ニュースレターにおいては紙幅の関係から、連邦民法に基づいた遺言書の形式のみをご紹介させていただきます。

メキシコでは遺言は、通常の状況下で作成される普通方式と特定の状況においてのみ作成を認められる特別方式の2種類に分類されます。 普通方式には、被封緘遺言、封緘遺言、簡易遺言、自筆証書遺言があり、特別方式の遺言には、私的遺言、軍人の遺言、海上遺言、外国で作成された遺言があります。以下では、軍人の遺言、海上遺言以外の各遺言の形式について解説いたします。

(1)非封緘遺言(Testamento Público Abierto)

非封緘遺言は、法律の規定に従い、公証人の面前で行う遺言です。遺言者は、公証人に明確かつ確実に遺言を述べなければなりません。公証人は、遺言書の条項を遺言者の意思に厳密に沿って書面に作成し、遺言者が同意しているかどうかを述べるために読み上げを行います。遺言書には、遺言者及び公証人のほか、必要に応じて証人及び通訳が署名し、場所、年月日、時間を記録しなければならないとされています。

遺言者がスペイン語を知らない場合には、遺言者は遺言書を書き、その遺言書は遺言作成のために読み上げに立ち会う通訳者によってスペイン語に翻訳されます。翻訳はそれぞれの公証原簿と原本に遺言として転記され、遺言者、通訳者、公証人によって署名され、行為に関与する公証人の対応する付録に保管されます。

この手続きは、遺言書の朗読から始まる単一の行為で行われ、公証人はそれらが完了したことを証明しなければならないとされています。

この厳格な形式に従わなかった場合、遺言書は無効となり、公証人は損害賠償責任を負うとともに、公証人の職を失うとされています。

(2)封緘遺言(Testamento Público Cerrado)

 封緘遺言は、遺言者又は遺言者の依頼を受けた他の人が書面に書く遺言で、遺言書は封緘され、証人3人の立会いの下に公証人に提示します。遺言者は、提示をするときは、その用紙に遺言書が記載されていることを宣言します。

この宣言の証明は、押印された遺言書の表紙に行われ、遺言者、証人及び公証人が署名し、公証人も押印をしなければなりません。形式を欠いた封緘遺言は効力を有さず、そのような遺言の宣言に携わった公証人は損害賠償責任を負うとともに、公証人の職を失うとされています。

遺言書が封緘され、承認されると、遺言者に交付され、公証人は遺言書が承認され交付された場所、時間、年月日を公証原簿に記録します。

遺言者は、遺言書を自分の手元に保管するか、自分が信頼する者に保管させるか、または司法記録保管所(archivo judical)に預けることができます。遺言者が自分の遺言書を司法記録保管所に預けるときは、遺言書を持って司法記録保管所の担当者の面前に出頭しなければいけません。担当者は、預かり又は引渡しをファイルに記録し、その記録には担当者と遺言者が署名し、遺言者には謄本が渡されます。

この封緘遺言は、公証人及び証人が裁判官の前で、遺言者又は遺言者のために署名した者の署名を確認し、自分の意思に基づき、引渡時と同様に封緘され、封印されているかどうかを宣言した後でなければ、開封することができません。

封緘遺言は、内容に不備がなくても、中紙が破られたり、表紙が開かれたり、それを承認する署名が消されたり、傷がついたり、修正されたりすると、無効になります。

(3)簡易遺言(Testamento público simplificado)

簡易遺言は住宅を目的とし、または目的としようとする不動産の取得の際に、同じ証書で相続人を確定するもので、公証人の面前で作成されます。不動産価格またはその評価額が、取得時に年額UMA(Unidad de Medida y Actualizaciónの略。2021年の年額は32,693.40ペソ)の25倍相当額を超えていないことなどの要件を満たす必要があります。

(4)自筆証書遺言(Testamento Ológrafo)

自筆証書遺言は、遺言者の自筆で書かれた遺言書であり、公証記録保管所(Archivo General de Notarías)に預けなければ、その効力を生じません。

他の形式の遺言は16歳以上であれば遺言を行いえますが、自筆証書遺言は、18歳に達している者のみが行うことができ、有効であるためには、遺言者が全文を書き、署名し、その年月日が記載されなければなりません。外国人の場合は、自国語での自筆遺言を作成することができます。

遺言者は、自筆証書遺言を2部作成し、それぞれに自分の指紋を捺印しなければなりません。原本については、遺言者は、遺言書の原本を入れた封筒に、「この封筒の中身は私の遺言書です。」と自筆し、預ける場所と日付を記入します。付記は、遺言者と公証記録保管所所の担当者によって署名され、身分証明の証人がいる場合は、その人も署名しなければなりません。そのうえで、封緘された封筒に入った原本は公証記録保管所に預けます。

封緘された封筒に入った副本は、公証事務所の担当者による「私は、….(遺言者)….. 氏が自筆証書遺言の原本が入っていると宣言した封緘された封筒を受け取った。また、同氏によれば、この封筒の中には複製が存在する。」 との表紙の注記とともに遺言者に返却されます。遺言者は、遺言書の入った封筒に、違反を防止するために必要と思われる署名などを付けることができます。

相続発生時、遺言書の複製を所持している者、または自筆証書遺言を預けていることを知っている者は、管轄の裁判官に通知しなければならず、裁判官は遺言書がある公証記録保管所の担当者に遺言書を送るよう要請しなければなりません。

遺言書が受理されると裁判官は遺言書が入っている表紙を調べて要件を満たしていることを確認し、その場所に居住する身元確認証人にその署名と遺言者の署名を認識させ、検察官、利害関係者として出頭した者及び前述の証人の立会いのもと、遺言書が入っている封筒を開封します。要件を満たし、遺言者が預けたものと同一であることが確認された場合には、遺言者の遺言は正式なものであると宣言されます。

(5)私的遺言(Testamento Privado)

私的遺言は、遺言者が非常に深刻な病気にかかり、公証人の面前で遺言書を作成する時間がない場合など、遺言者が自筆証書遺言を作成することができない限定的な場合にのみ認められます。

私的遺言をする場合になった遺言者は、原則5人の適当な証人の立会いのもとに、自分の遺言を宣言し、遺言者が文字を書くことができない場合には、そのうちの1人が書面を作成しなければなりません。

私的遺言を作成する場合には、非封緘遺言の手続を準用することとされていますので、遺言者は、証人に明確かつ確実に遺言を述べることを要求されます。証人は、遺言書の条項を遺言者の意思に厳密に沿って書面に作成し、遺言者が同意しているかどうかを述べるために読み上げを行います。遺言者及び証人のほか、必要に応じて通訳が署名し、場所、年月日、時間を記録しなければなりません。

私的遺言は、遺言者があった病気や危険な状態により死亡した場合、または私的遺言を認める原因が消滅した後1ヶ月以内に死亡した場合にのみ有効となります。

遺言者の死亡後に私的遺言が有効であるためには、申請を行うことが必要です。 この申請は、遺言者の死亡およびその処分の方法を知ったときに、利害関係者が直ちに請求するものとされています。私的遺言に立ち会った証人は、1遺言書が交付された場所・時間・年月日、2遺言者をはっきりと認識し、見て、聞いたかどうか、3処分の内容、4遺言者が健全な精神状態にあり、強制されていなかったかどうか、5私的遺言がなされた理由、⑥遺言者が病気で亡くなったことを知っているかどうか、危険な状態にあったことを知っているかどうかなどの事項を届申請なければなりません。

 これらの申請事項が確認された場合、裁判官は、正式な遺言であると宣言します。

(6)外国で作られた遺言

外国で作成された遺言書は、その遺言書が作成された国の法律に基づいて作成された場合、メキシコシティで効力を有します。公使の書記官、メキシコ領事および副領事は、遺言書がメキシコシティで執行されなければならない場合に、在外国民の遺言書の公証人または受取人を務めることができます。

なお、メキシコは、ハーグ条約のうち、「遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約」を批准していません。

 

6.バングラデシュ

バングラデシュにおいて、遺言は、1925年相続法(The Succession Act, 1925(以下、「相続法」という))にて定められていますが、イスラム法の影響を大きく受けます。

相続法第2条(h)にて、「遺言」は、遺言者が死後に効力をもつことを望む、財産に関する遺言者の意思の法的宣言を意味する、と定義されています。また、同法第59条にて、未成年(18歳未満)ではない健全な精神をもつ全ての者は、遺言によって財産の処分をすることができると定められています。

遺言には、特権遺言(遺言者が遠征に従事した又は実際の戦争に従事した兵士、又はそのように雇用された又は従事した空軍兵、又は海上での船員である場合)と非特権遺言(特権遺言以外)が規定されています。相続法第63条では非特権遺言について規定しており、遺言者が署名又は押印又は遺言者の立会いのもと他の者が署名するものとしています(相続法第63条(a))。また、少なくとも2人の証人が署名又は押印しなければならないと規定しています(同条(c))。特権遺言は相続法第66条にて、死亡の危急に迫った場合などを想定して定められています。遺言は、遺言者が任命する「遺言執行者」によって執行され(相続法第2条(c))、遺言執行者が任命されていない場合は、管轄機関が、遺言を執行する者を任命します(相続法第2条8(a))。遺言者の死後、検認によって遺言執行者の行為が有効となります(相続法第227条)。

 

7.フィリピン

(1) 遺言の形式

フィリピンでは遺言は例外なく文書でなければならず、厳格なフォーマットを要件とすることでその有効性を担保しています。動画や音声の形式をとった遺言は認められません。遺言には公証遺言と自筆遺言の二種類があります。

1 公証遺言

公証遺言には以下のとおり厳格な定めがあります。

  1. 文書の最末尾に遺言者本人が署名を行うか、遺言者同席のもと、遺言者の指示によって、かつ遺言者の名において、別の人物が署名すること。
  2. 最低3名の信頼できる証人が、遺言者および他の証人同席のもと、文書末尾で署名および宣誓を行うこと。
  3. 遺言者、または遺言者からの依頼により遺言者の名で署名を行う者、および証人が、最後のページを除く全てのページの左側余白に署名をすること。
  4. すべてのページの上部にアルファベット表記でページ番号を振ること(例: “Page ONE”)。
  5. 宣誓部分には、(i)遺言の全ページ数、(ii)証人同席のもと、遺言者が末尾および全ページに署名を行ったか、明確な指示のもとで他の者に署名を行わせた旨、および(c)遺言者と他の証人同席のもと、証人が末尾および全ページに署名を行った旨を含めること。宣誓部分が証人の理解できる言語で書かれていない場合は、これを翻訳すること。
  6. 公証人の前で、遺言者および証人によって承認されること。

2 自筆遺言

他方、自筆遺言には以下の要件があります。

  1. すべて手書きであること。
  2. 遺言者によって日付と署名が付されること。

自筆遺言はフィリピン国内で行われる必要はなく、証人も必要ありません。しかし、その有効性を証明するにあたっては、遺言者の筆跡および署名を知る者が最低1名、遺言とその署名が遺言者本人の手で書かれたものであることを明示的に宣言する必要があります。また、遺言の有効性が争われる場合には、上記の宣言は最低3名によってなされなければなりません。

自筆遺言の場合、署名より下の部分に書かれた遺産の譲渡については、あらためて日付および署名が伴われなければ有効な譲渡として扱われません。なお、すべての編集、追加、削除箇所には遺言者の署名と日付が付されなければなりません。

どちらの遺言形式をとる場合であっても、遺留分及び相続人廃除に関するフィリピン国内法の規定の適用を受けます。

(2) 海外で行われた遺言および外国人による遺言

海外で行われた遺言もフィリピン国内で法的効力を持つことがあります。原則として、遺言の方式は遺言がなされる国の法律の定めに従うことになります。なお、フィリピン共和国の外交官または領事官員同席のもとで、海外で遺言が行われる場合には、フィリピン法が定める方式が採用されます。

これと同様、外国人がフィリピン国内で実施した遺言についても、それが本国法に則った方式で行われ、かつ同国の法律によって認められうるものであるならば、フィリピン法に則って行われたのと同様の効力を持つことになります。

ただし、相続順位、相続分、遺言内容に関する実質的有効性については、遺産の性質や遺産が存在する国にかかわらず、遺産相続者となりうる者の本国法が適用されます。

(3) 遺言の検認

遺言内容の実行にあたってはまず、裁判所による検認手続が必要となります。この手続により、遺言が然るべき形式および要件を満たしており、したがって有効なものであるという事実が確認されます。裁判所による承認なしには、遺言に沿った動産および不動産の承継を行うことはできません。

 

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