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「 COVID-19関連の規制状況及び入国規制並び解雇手続き」 TNY Group Newsletter No.3

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) 入国規制

6月29日、日本において「水際対策強化に係る新たな措置」が決定され、入国拒否対象地域に新たに18か国が追加されました。入国拒否措置の期間は当面の間とされています。検疫の強化、査証の制限、航空機の到着空港の限定等及び到着旅客数の抑制の措置については、7月末日まで延長されました。

今後は一般の国際的往来とは別に、ビジネス上の出入国について例外的な枠を設置することを予定しています。感染状況が落ち着いている入国拒否対象地域を対象国として、追加的な防疫措置を条件とし、ビジネス上の往来を可能にするような仕組みを協議・調整中です。

・日本における新型コロナウイルスに関する水際対策強化(新たな措置)(外務省海外安全ホームページ)

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C057.html

・第38回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)

https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020618.pdf

・第39回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)

https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020629.pdf

(2) 外出自粛の緩和

6月19日に全国を対象に県をまたぐ移動の自粛が解除されました。外出自粛の段階的緩和は、7月31日までを移行期間としており、これが終了した8月1日を目途に、通常に戻ることを予定しています。

・第36回新型コロナウイルス感染症対策本部配布資料(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)
https://corona.go.jp/expert-meeting/pdf/sidai_r020525.pdf

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制

 6月15日より、タイ政府は非常事態令を緩和し、以下の事項を適用しています。

  1. 夜間外出禁止令の撤廃

6月14日23時以降より、タイ全土における夜間外出禁止令を解除しました。

  1. 学校及び教育機関の施設使用の緩和

インターナショナルスクール、外国の教育課程の大学等や、生徒数が120名以下の学校について、学習や授業のための施設使用を認めました。

  1. 施設の営業及び活動の実施

以下の活動等について、その実施を認めました。

・会議、研修、セミナー、コンサート、ホテル、劇場、映画館等の施設での活動

・食堂、フードコート、ホテル、レストラン、アルコールの提供が認められた場所における、営業時間内でのアルコール飲料の消費(パブ、バー、カラオケ等の活動は認められていません)

・託児所、保育所、幼稚園、高齢者施設、介護施設等の福祉施設での、デイケア活動

・健康増進施設内での、サウナ、スパ、タイ古式マッサージ施設等の営業

・公園、公共の活動場所、屋外のスポーツ競技場等における集団での運動

・ウォーターパーク、児童公園、遊技場の営業

・スポーツ指導のための競技場、運動用の施設での活動

  1. 県境をまたぐ移動に関する基準の制定

車両、鉄道、航空機等の移動制限の緩和に伴い、待合場所、座席および乗客数の制限等が緩和されています。

(2) 入国規制

タイ民間航空公社(CATT)は、タイに到着する全ての国際旅客便の飛行を禁止する措置を取っており、その期限は6月30日までとなっています。7月1日以降の詳細については、まだ発表されておりませんが、外国人渡航者の入国制限を一部緩和する方向で検討に入ったとの報道がなされています。

3.マレーシア

(1) 回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)

 2020年6月10日、回復のための活動制限令(Recovery Movement Control Order)(以下「RMCO」)が施行されました。このRMCOは、同年8月31日まで効力を有するものとされています。

 RMCOの施行により、州間の移動や理髪店の営業等多くの活動を再開することが可能となります。他方、強化された移動制限令(enhanced movement control order)の対象となる場所への出入りや行列・行進への参加のほか、以下の行為はなお禁止されています。

  • スポーツイベント・大会への参加及びそれらの開催
  • 接触型スポーツ
  • ウォーターテーマパークやウォーターパークでの活動
  • スイミングプールでの活動(個人の住宅及び宿泊施設での活動、東京オリンピックに参加する代表選手の練習を除く)
  • マレーシア国民による観光目的での海外渡航及び外国人による観光目的でのマレーシアへの入国
  • カラオケ、ショッピングモールでの子供向け運動場、家族向けエンターテイメント施設での活動
  • パブ及びナイトクラブでの活動(パブ及びナイトクラブ内のレストラン営業を除く)
  • 服のフィッティング、服飾店内での試着室の利用、店内でのアクセサリーの試着、店内での化粧品テスターの提供
  • 美容健康施設内でのリフレクソロジー及びマッサージ
  • クルーズ船での活動
  • その他一か所に多くの人が集まりソーシャルディスタンスの実現及び公衆衛生局長の指示の遵守を困難にする活動

 もっとも、マッサージ店の営業再開を許可する見通しであるとの発表が6月15日になされていること等から、8月31日を待たずに禁止行為に該当する行為が再開できるようになる可能性もあります。

 また、RMCOの施行により、集会を開くこと及び集会に参加することも可能となりましたが、公衆衛生局長の指示に従うことが必要とされています。

(2) 外国人の入国について

 ア 入国許可の要否

 (ア) 入国許可が不要なパス

  以下の区分に該当する場合、マレーシア入国管理局からの入国許可は不要とされています。

  • 雇用パス(カテゴリー1)(Employment Pass Category I (EP I))、その扶養家族(Dependants)及び外国人メイド(Foreign Maids)
  • 居住者パス(技能)(Residence Pass-Talent (RP-T))、その扶養家族及び外国人メイド

 (イ) 入国許可が必要なパス

  以下の区分に該当する場合、マレーシア入国管理局からの入国許可が必要となります。

  • 専門職訪問パス(Professional Visit Pass (PVP))
  • 雇用パス(カテゴリー2)(Employment Pass Category II (EP II))及び扶養家族
  • 雇用パス(カテゴリー3)(Employment Pass Category III (EP III))
  • 長期ソーシャルビジットパス(Long Term Social Visit Pass (LTSVP))を有する18歳以上の子供、両親及び義理の両親

 (ウ) マレーシアマイセカンドホーム(MM2H)パスについて

 現在公表されている情報によれば、MM2Hパスの保有者は、入国管理局からの入国許可によってではなく、観光・芸術・文化省からの入国許可に基づき入国が可能とされています。

 イ 入国許可のための手続

  • 事業に関係する省庁の駐在者委員会(EC)から承認状(Approval Letter)を受領する(新規でない駐在者については不要)。
  • 事業に関係する省庁からサポートレター(Support Letter)を受領する。
  • 電子メールで入国許可申請を行い、入国承認状(Entry Approval Letter)を受領する。
  • 入国前3日以内にPCR検査を受け,陰性証明書を受領する(※日本国籍者については6月24日から適用除外。もっとも、入国後に「PCR検査陰性結果」が無い者として抗原検査を受ける必要がある。)。
  • マレーシア到着時に入国承認状を提示する。

 ウ 入国後の手続

  • 14日間の自宅隔離を行う。
  • 自宅隔離に際しては、給付されたリストバンドを着用する。
  • 自宅隔離13日目に抗体検査を行う。

4.ミャンマー

ミャンマーのCOVID-19の感染者数は299名です。新規の市中感染者は1週間以上存在せず、海外から戻ってきた者のみです。ミャンマー国内においては、職場やレストランにおけるCOVID-19予防のためのガイドラインが出されており、それを順守すれば事業を行うことができます。そのため、5月下旬よりレストランは徐々に再開しており、6月からは多くの日系企業も徐々に在宅から事務所勤務に戻りつつあります。もっとも、未だに1地区における自宅待機措置及び夜間外出禁止要請は残っており、7月15日まで延長されています。

他方、海外からの入国については、7月31日まで国際商業航空機の着陸禁止やビザ発給停止が延長されています。また、唯一の直行便のANAも7月末まで運休する旨発表済みです。そのため、現実的にミャンマーに行くための飛行機がない状況ですが、飛行機の運航が再開された際の入国に関する規制が6月9日に在日本ミャンマー大使館より以下のとおり発表されております。

1.出国前に準備すべき書類

a. 新型コロナウイルス陰性証明書(Laboratory Evidence of Absence of COVID-19)

 この医療機関の証明書(Laboratory Certificate)は、国立国際医療研究センター病院やトラベルクリニック等で発行が可能です。証明書は搭乗前72時間以内に発行される必要があります。以下の国立国際医療研究センター病院のホームページを確認の上参考としてください。

http://travelclinic.ncgm.go.jp/009/index.html

b. 1週間の自宅隔離を行ったことについての所属機関による推薦書(Office Recommendation Letter on One Week Home Quarantine)

 今次渡航前1週間の間に他国へ渡航していないこと及び自宅に滞在していたことを証明する書類。

2.ヤンゴン国際空港到着後の隔離措置

a. 指定された施設での1週間の隔離措置を実施していただきます。隔離中に、PCR検査のための検体を採取します。

b. 施設隔離中に行われたPCR検査の結果が陰性だった場合、職務復帰前に1週間の自宅隔離を行うことが義務づけられます。

5.メキシコ

(1) Nueva normalidad始動

3月24日から続いた「Jornada Nacioanl de Sana Distacia」の期間が終わり、6月1日より、5月14日、15日、29日に官報公示された保健省令に基づく、社会活動再開に向けた「Nueva normalidad」の期間が始まりました。

社会活動再開に向けたレベルを赤・橙・黄・緑と4つの色で示し、連邦政府が発表する色に基づき、段階的に活動の範囲を広げていく計画で、経済活動においては、以下の範囲で活動が許されうるとしています。

Máximo  赤 Alto  橙 Intermedio  黄 Cotidiano  緑
必要不可欠な事業のみ

◆1.5mの間隔の維持もしくは保護具の提供
◆感染リスクの高い人は在宅勤務
◆入退管理
◆時差を設けたシフトやワークスケジュールの確立etc.

必要不可欠な事業、その他の事業については出勤率30%での活動可◆1.5mの間隔の維持もしくは保護具の提供
◆入退管理
◆時差を設けたシフトやワークスケジュールの確立
◆感染リスクの高い人
には最大の注意を払うetc.

全事業活動可
(在宅勤務の推奨)

◆1.5mの間隔の維持
もしくは保護具の提供
◆入退管理
◆時差を設けたシフトやワークスケジュールの確立
◆感染リスクの高い人には最大の注意を払うetc.

全事業活動可
(全従業員の出勤可)

◆感染防止策の徹底
◆感染リスクの高い人には最大の注意を払う

ただ、依然としてメキシコ国内の感染者数は増加傾向を見せており、特に、これまで比較的感染者が少なかった地域でも感染者の増加が目立ち国土全体への感染拡大が懸念されています。6月15日の週はメキシコ全32州(メキシコシティ含む)の内、半数の16州が橙とされ、翌週には赤15州、橙17州、6月29日の週は赤14州、橙18州となりましたが、それぞれ、これまで赤だったコリマ州とイダルゴ州が橙になった一方、前週に橙だったタバスコ州が赤に、これまで赤だったメキシコ市やケレタロ州など4州が橙に,前週に橙だったヌエボレオン州、イダルゴ州、コリマ州が橙から赤になり、一進一退の状況です。

また企業活動の再開にあたっては、連邦政府が発表したガイドラインに従い、経済活動の種類、事業所の規模、事業所の特徴を鑑みた対策が必要となりますが、具体的な方針は州政府が決めることとなり、また連邦政府の発表する色とは異なる対応をとる州政府もあることから、事業所所在地における州政府の指針も踏まえた内容の対策をとることが必要です。

例えば、メキシコシティの場合、連邦政府が定める産業に加え、ビール製造業と自転車販売業を「必要不可欠な活動」として6月1日から赤色下での操業を認めています。また、メキシコシティ独自に社会活動再開に向けた赤・橙・黄・緑のレベルを設定し社会活動再開を進めていくこととしていますが、特設プラットフォームでの事業者登録や市が定める産業別衛生対策の実施、経済活動再開後の事業者に対しては、新型コロナウイルス感染が疑われる労働者を発見した場合の報告や従業員が30人以上の事業所の場合の感染の有無を確認する検査の実施(毎週もしくは隔週1回)を義務付けています。メキシコシティは6月26日の定例首長会見で6月29日より再開レベルを橙とし、商業施設や飲食店、ホテルなどの部分的営業再開を発表し、同日付の同市官報にて公示されました。例えば、7月1日よりホテルは宿泊客30%まで、レストランは収容人数30~40%まで、7月6日よりショッピングセンターや百貨店が収容人数30%までで事業を再開することができますが、前述の通り市が定める衛生対策の実施等のルールに従った対応が必要です。

(2) 入国規制

 メキシコ政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、6月16日にメキシコ政府合意のもと7月21日までの延長が決定されました。なお、本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされていますが、在メキシコ米国大使館の発表では、米墨間の航空便の運航状況は、今年1月と比較し80%減少していることから、渡航にあたっては十分な計画が必要とされています。なお、空路によるメキシコの出入国においては、体調や渡航履歴に関するアンケートの記入・提出や検温によるスクリーニングが実施されています。

グアテマラ、ベリーズ国境においては、各政府によるその閉鎖が継続されています。

6.バングラデシュ

バングラデシュのCOVID-19の感染者は13万7787名です。依然として感染は拡大しており、6月10日からは連日1日あたり3,000~4,000名の新規感染者が報告されております。

 新型コロナウイルスの蔓延を防ぐための措置として、バングラデシュ全土で、6月30日まで、午後8時から翌日午前6時までは、真に必要な場合を除き外出禁止です。外出の際はマスク着用等の衛生措置を講じることが必要で、違反者に対しては法的措置(罰金、懲役刑)が取られます。同期間、教育機関は開校できません。また、6月15日、バングラデシュ政府はゾーン分け規制を含む感染拡大予防措置を講じると発表しました。赤、黄、緑ゾーンに分けて、赤ゾーンに指定された地域では、政府機関や民間企業などは政府指定休日となり、人々の移動や生活も厳格に制限されます、黄・緑ゾーンでは政府機関や民間企業は限定的に業務を行うことができますが、人々の移動や生活も一部制限されます。

バングラデシュへの入国については、一部の国・地域(中国、英国、カタール、アラブ首長国連邦)を除いて、無期限での国際フライトの乗り入れ停止措置をとっております。海外投資家およびビジネス関係者はオンアライバルビザの発給が再開されていますが、ビザの申請時には、これまでの必要申請書類に加え、渡航前72時間以内に取得したPCR検査で新型コロナウイルス陰性であることが記載された英訳付きの診断書、投資・ビジネス目的を立証する書類が必要です。また、コロナ感染国からの入国者に対しては、入国後2週間の自主的な隔離措置が要請されます。

第2.各国の解雇手続き

1.日本

(1) 解雇の通則

「使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了」を解雇といい、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)と規定されています。

日本において解雇は、使用者が自由に行えるものではなく、「社会通念上相当」と認められる客観的で合理的な理由が必要です。

(2) 解雇の種類

解雇には下記の3種類があります。

1.普通解雇

 能力不足、勤務成績不良、業務命令・指示違反、傷病、私生活上の非行を理由とする解雇

2.懲戒解雇

 使用者の懲戒権発動による解雇

3.整理解雇

 経営上の必要性から行われる解雇

(3) 整理解雇

上記(2)の3種類の解雇のうち、COVID-19による経営難による人員整理等を理由とする解雇は、「整理解雇」となります。整理解雇を行う為には下記の4要件を満たすことが必要です。

1.人員削減(解雇)の必要性

2.解雇回避の努力

3.人選の基準及び人選の合理性

4.手続の合理性

この4要件に照らして、上記(1)解雇の通則(労働契約法第16条)の「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない」かどうかにより、整理解雇が有効であるか否かが判断されます。

(4) 解雇予告手当

通常、使用者が従業員を解雇しようとする場合、30日前までには、解雇の予告をしなければなりません。この予告を行わずに解雇する場合、使用者には最低30日分の平均賃金を従業員に支払う義務が生じます。

(5) 有期契約における解雇

「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむをえない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」(労働契約法第17条)と規定されています。

有期契約の契約期間途中に従業員を解雇しようとする場合、労働契約法第16条で定められた解雇の通則の規定に加え、「やむをえない事由」が必要となってくることから、解雇の有効性はより厳しく判断されることとなります。

2.タイ

 タイ労働者保護法上、解雇とは、「雇用契約の終了、またはその他理由を問わず、使用者が労働者を以後働かせず、賃金を支払わない行為のことをいい、使用者が事業を継続することができないために労働者が労働せず、かつ賃金を受け取らない場合を含む」とされており、解雇する場合には、通常、以下の手続を取る必要があります。

  1. 事前通告

雇用契約に期間の定めがない場合、使用者は、労働者に対して、一賃金支払期間前の書面による解雇通告をする必要があります。

例外的に、事前通告から雇用契約終了の日までに得られるはずの賃金と同額の金銭を支払う場合には、即時の解雇が可能です。また、後述する、119条に定める違反行為がある場合についても、事前通告が不要となります。

  1. 有給休暇の買取り

119条に定める場合によらず使用者が労働者を解雇する場合、使用者は労働者が有する年次有給休暇に応じた賃金を支払う必要があります。

繰越年次休暇がある場合は、それに応じた賃金を支払う必要があります。

       2. 解雇補償金

 使用者は、解雇する労働者に対して、以下の解雇補償金を支払う必要があります。有期雇用契約が満了により終了する場合についても支払義務があることに注意が必要です(特定の条件に該当する有期の雇用契約を除く)。しかし、労働者側からの辞職の場合は、解雇補償金の支払義務は生じません。

 また、使用者に対して故意に損害を与えた場合や、過失により重大な損害を与えた場合等、119条に定められている事項により労働者を解雇する場合については、解雇補償金の支払義務は生じません。

勤続期間120日以上1年未満:  最終賃金の30日分以上

勤続期間1年以上3年未満: 最終賃金の90日分以上

勤続期間3年以上6年未満:  最終賃金の180日分以上

勤続期間6年以上10年未満:  最終賃金の240日分以上

勤続期間10年以上20年未満:  最終賃金の300日分以上

勤続期間20年以上:  最終賃金の400日分以上

     3. 事業移転に伴う解雇

 使用者が事業所を移転する場合で、労働者が新たな事業所での就労を望まない場合、労働者は書面により雇用契約の終了を通知することができます。その場合、使用者は当該労働者に対して、(3)の解雇補償金の額と同額以上の特別解雇補償金を支払う必要があります。

     4. 機械導入、技術更新に伴う解雇

機械導入、技術更新等により、使用者が組織、製造工程等を改変し、使用者が労働者を減少させる必要があることを理由として、労働者を解雇する場合、使用者は、解雇の日の60日以上前に、労働監督官及び当該労働者に対して、解雇日、解雇理由、当該労働者名を通知する必要があります。

上記の事前通知をしない場合、使用者は当該労働者に対して、(3)の解雇補償金に加えて、最終賃金の60日分と同額の特別解雇補償金を支払う必要があります。

当該労働者が6年以上勤続している場合には、勤続満1年あたり最終賃金の15日分以上の特別解雇補償金を支払う必要があります(最大360日分)。

3.マレーシア

マレーシアにおける解雇も、日本と同様に、概ね1.普通解雇、2.懲戒解雇、3.整理解雇の3つの類型に分けることができます。いずれの類型においても、解雇が有効となるためには解雇を正当化できるだけの事由が必要となります。

(1) 普通解雇

 労働者が雇用契約に基づく労務の提供をしない(又は、できない)場合に雇用契約を解消するものです。懲戒解雇・整理解雇以外の解雇と表現されることもあります。

 雇用契約で定める予告期間に従って、事前通知の形で解雇を通知します。雇用法が適用される労働者(月額賃金RM2,000以下の労働者や肉体労働者等)の場合で、契約において予告期間の定めがない場合等には、雇用法が定める予告期間を下回ることができません(勤続2年未満の場合4週間、勤続2年以上5年未満の場合6週間、勤続5年以上の場合8週間)。ただし、対応する期間の賃金の支払いをすることで、予告期間を短縮することはできます。

 また、雇用法が適用される労働者については、法定の解雇手当を支払う必要があります(勤続1年以上2年未満の場合1年につき10日分、勤続2年以上5年未満の場合1年につき15日分、勤続5年以上の場合1年につき20日分)。

(2) 懲戒解雇

 懲戒解雇は、懲戒処分の1つとして行われる解雇です。

 雇用法14条は、不正行為があった場合には適正な調査を行ったうえで労働者を予告なく解雇することができるとしています(この場合には、解雇予告手当の支払いも不要とされています)。実務上は、雇用法の適用の有無に拘らず、不正行為があったと使用者が考える場合には、不正行為の有無を調査のうえ、当該労働者に問題となっている不正行為について理由呈示書(Show Cause Letter)の発行を通じて弁明の機会を付与し、社内審問手続(Domestic Inquiry)を経た上で解雇をするという流れが一般的です。

 雇用法は、懲戒処分の決定まで2週間を限度として停職処分を行うことも可能であるとしていますが、当該期間について賃金の半額以上を支払わなければならないとしています。雇用法の適用がない労働者については、雇用契約において特段の定めを置いていない限り、停職期間中も賃金の全額につき支払義務が存続するものと考えらます。

(3) 整理解雇

 人員が余剰であることを理由として行われる解雇です。

 整理解雇については、労使協調のための行為規範(The Code of Conduct for Industrial Harmony 1975)及び整理解雇管理ガイドライン(Guidelines on Restrnchment Management)といった規定が用意されており、整理解雇に臨む際にはこれらの規定に沿って手続を進める必要があります。

 これらの規定は、労働者の余剰が生じた場合、まずは解雇を回避するための措置(新規雇用の停止、残業・休日出勤の制限等)をとる必要があるとしています。またこれらの規定は、そのような解雇回避措置をとったにもかかわらず一部の従業員の解雇が必要になった場合には解雇の30日以上前に労働局に届出をしなければならないものと定めるほか、解雇の対象となる従業員の選定に関するルール(直近に雇用された者から順に解雇の対象とすべきという「Last In, First Out」等)についても定めています。

整理解雇における解雇予告期間・解雇手当については、普通解雇に準じます。

4.ミャンマー

日本と異なり、解雇理由及び手続きに関する法令上の明確な規制は存在しません。また、COVID-19を理由とする特別な対応や整理解雇も存在しません。したがって、一般的な解雇規制について、解雇手当を支払う場合と不要な場合に分けてご説明します。

1.解雇手当を支払う場合

実務上、合理的理由が必要とされていますが、その理由について明確な規定や裁判例も特に存在しません。手続きとしては、1か月前の通知が必要であり、かつ、労働者の勤続期間に応じて以下の解雇手当を支払う必要があります。

(a)勤続期間が6か月以上1年未満の場合、0.5か月分の給与の支払い

(b)勤続期間が1年以上2年未満の場合、1か月分の給与の支払い

(c)勤続期間が2年以上3年未満の場合、1.5か月分の給与の支払い

(d)勤続期間が3年以上4年未満の場合、3か月分の給与の支払い

(e)勤続期間が4年以上6年未満の場合、4か月分の給与の支払い

(f)勤続期間が6年以上8年未満の場合、5か月分の給与の支払い

(g)勤続期間が8年以上10年未満の場合、6か月分の給与の支払い

(h)勤続期間が10年以上20年未満の場合、8か月分の給与の支払い

(i)勤続期間が20年以上25年未満の場合、10か月分の給与の支払い

(j)勤続期間が25年以上の場合、13か月分の給与の支払い

2.解雇手当が不要な場合

解雇手当が不要な場合について、刑事罰に該当する行為を行うような非常に悪質な場合には直ちに懲戒解雇が可能です。

他方、懲戒解雇に該当する程悪質でない場合には、通常解雇となります。

通常解雇の手続きについて、法令上の規定はないものの、労働・入国管理・人口省が出しているモデル雇用契約書第15条(b)(ii)において、「雇用契約の規則に違反した従業員に対して、1 度目は口頭での警告、2 度目は書面による警告がなされる。3 度目は、通常の規定違反に関する誓約書に署名を命じられることとなる。3 度目の警告から、12 か月以内に、労働者が通常の違反を再度犯した場合、使用者は、当該労働者との契約を、解雇手当を与えることなく解除できる。」と規定されています。したがって、4回目の違反で漸く解雇できることから、非常に時間がかかる手続きとなっております。

5.メキシコ

(1) 使用者の都合による雇用契約の終了

労働法では、使用者の破産や財務状況の悪化を理由とした雇用契約の終了や、機械の導入や業務改善による雇用契約の終了が認められています。この場合、労働調停仲裁委員会の許可もしくは承認を得たうえで解雇(雇用契約の終了)を実施することが可能です。

解雇時には、未払分の給与や解雇する年の勤務日数に応じた割合の有給休暇手当の額とアギナルド(年次法定賞与)額、その他、会社独自に定めた手当などがある場合はそれらの受け取り分等の精算を行い、加えて、3か月分(機械の導入や業務改善が理由の場合は、4か月分)の給与額や勤続年数に応じた勤続手当額(給与額が最低賃金の2倍を超える場合は、勤続年数に応じて12日分の最低賃金額の2倍の額、給与額が最低賃金の2倍以下の場合は、勤続年数に応じて12日分の賃金額)を解雇手当として支払う必要があります。

(2) 労働者の責めに帰すべき事由による解雇

労働者が就労の際に虚偽を用いた場合や、不正行為または脅迫、侮辱などを含む暴力的行為を行った場合、企業秘密や守秘義務を負う情報について漏洩した場合、30日間のうち4日以上の正当な理由のない欠勤があった場合など、労働法第47条に定める事由による場合は、使用者はその責めを負うことなく解雇することが可能です。すなわち、使用者は、解雇時に未払い給与や手当の精算のみ行うこととなります。

この場合、使用者は当該労働者に対して、当該事由及びその事由が発生した日付や期間を記した書面によって解雇を即日かつ直接通知するか、解雇日から5営業日以内に労働紛争調停員会に当該労働者の住所と併せて届出なければなりません。この場合は、使用者に代わって当該労働紛争調停員会が労働者に当該解雇通知を送達することとなり、労働者が通知を受け取った時にこの解雇の効果が生じることとなります。

ただし、解雇通知を受け取った労働者は、解雇の日から2か月間、労働紛争調停員会を通じ、復職か3か月分の給与相当額の補償金の支払を請求する権利を有します。解雇事由の立証責任は使用者にあり、使用者がこれを証明することができず、不当解雇と認定された場合は、当該請求に加えて、復職するか否かにかかわらず、上限を12か月分として解雇日から調停が終了するまでに得られたであろう賃金額を支払わなければなりません。その調停が12か月以上に及んだ場合は、12か月分の賃金額の支払いに併せて、15か月分の賃金額の2%を超過月数分支払うこととなります。

また、一定の条件を満たす労働者の場合や労働裁判によって雇用関係の継続が困難と判断された場合には、使用者は、例えば無期雇用の場合は、20日分の給与額に勤続年数を乗じた額の補償金を支払うことによって、労働者の復職の希望を拒否することも可能です。

(3) 使用者の都合による解雇

以上のほか、使用者の都合によって労働者を解雇する場合は、労働者が享受できるすべての権利を害することなく解雇することになります。つまり、前述したような労働者が得られる補償金等のすべてを支払い解雇する方法です。なお、補償金の額は、雇用契約の形態や労働者の給与額、勤続年数、職種によって異なってきますので、個別具体的な確認、検討が必要になります。なお、メキシコの労働法では、雇用契約終了の事由として「使用者と労働者の合意による場合」を規定していますが、本規定は、一般に労働者が退職の意思を示し、これに使用者が同意した場合と考えられており、使用者の都合による退職要請への労働者の同意がある場合を含んでいないと解されています。

6.バングラデシュ

バングラデシュ労働法で規定されている解雇として、(1)使用者による雇用契約の終了、(2)一時解雇、(3)人員整理、(4)労働者の精神的または身体的な障害により就労が不能な場合、(5)労働者の不正行為や違法行為による解雇、が挙げられます。新型コロナウイルス感染拡大の影響による解雇の場合は、(1)使用者による雇用契約の終了、(2)一時解雇、(3)人員整理が該当すると考えられます。

(1) 使用者による雇用の終了

解雇の理由についての規制は定められておらず、使用者は、以下の措置をとることで、解雇が可能です。

  1. 無期雇用労働者の雇用を終了する場合

月給労働者の場合は、120日前までの書面による通知、その他の労働者は、60日前までの書面による通知が必要です。労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金または一時給付金の高額な方を補償金として支払わなければなりません。補償金は労働法にて定められている他の給付に加えて支払われます。

       2. 非正規雇用労働者の雇用を終了する場合

月給労働者の場合は、30日前までの書面による通知、その他の労働者は、14日前までの書面による通知が必要です。

無期雇用および非正規雇用ともに、通知せずに労働者の雇用を終了したい場合は、上記の通知期間日数の賃金を支払うことで、可能です。

(2)一時解雇

感染症の拡大は、労働法で規定されている一時解雇の理由に該当しませんが、使用者の力が及ばない不測の事態による事業の停止が認められています。業務停止が3日を超える場合は、一時解雇の扱いとなり、更に一時解雇が45日を超える場合は、人員整理により解雇することができます。

勤務期間が1年以上の労働者を一時解雇する場合は、以下の補償金を支払わなければなりません。

      1. 一時解雇の期間が1日から45日の場合

週休を除く一時解雇の期間、基本給および手当の半額と住宅手当全額

       2. 一時解雇の期間が45日を超えた場合

別段の合意がない限り、46日目以降は、基本給および手当の4分の1と住宅手当の全額

(3)人員整理による解雇

勤務期間が1年以上の労働者に対しては、1か月前に文書による通知または1か月の賃金を支給し、検査官および労働組合(あれば)に通知を提出し、労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金にあたる補償金または一時給付金の高い方を支給しなければなりません。人員整理が一時解雇の代わりになされるときは、通知は不要ですが、さらに15日分の賃金にあたる補償金を上乗せして支払う必要があります。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

・TNY Group

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・日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

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・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

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・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

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Newsletterの記載内容は2020年6月29日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。

 第1. 各国の2020年5月に発布されたCOVID-19関連の法令

1.日本

(1) 水際対策強化に係る新たな措置

 5月14日、及び5月25日、「水際対策強化に係る新たな措置」が決定されました。

これらの措置により、入国拒否対象地域に14日時点で13か国、25日時点で11か国が新たに追加されました。また、5月末日までの間実施することとしていた、ビザの効力やビザ免除を停止する措置が6月末日までに延長されました。

日本国籍者を含む全ての入国者に対する検疫の強化に関しては、引き続き、健康状態に異常のない者も含め、検疫所長の指定する場所(自宅など)での14 日間待機、及び空港等からの移動も含め公共交通機関を使用しないことが求められます。また、入国した日の過去14日以内に入管法に基づく「入国制限対象地域」に滞在歴のある者については、全員にPCR検査が実施され、検査結果が出るまで、自宅、空港内のスペース、検疫所が指定した施設等での待機が求められます。

・日本における新型コロナウイルスに関する水際対策強化(新たな措置)(外務省海外安全ホームページ)

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C051.html

・水際対策の抜本的強化に関するQ&A-令和2年5月15日時点版(厚生労働省ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html

(2) 緊急事態宣言解除

4月7日に発令された緊急事態宣言が5月25日に解除されました。5月25日から7月31日までの約2か月間を移行期間とし、外出の自粛や施設の使用制限の要請等を段階的に緩和していく方針です。

・新型コロナウイルス感染症緊急事態解除宣言(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)

https://corona.go.jp/

・移行期間における都道府県の対応について

https://corona.go.jp/news/pdf/ikoukikan_taiou_0525.pdf

(3) 補助金

2020年1月から12月までの間で、月間事業収入が、前年同月比50%以下となる月があった事業者に対し、中小法人等は最大200万円、個人事業主は最大100万円の持続化給付金が給付されることとなりました。

 個人に対しては、一律一人当たり10万円の特別定額給付金、子育て世代を対象とした子供一人当たり1万円の臨時特別給付金等の制度が新たに追加されました。

・新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室)

https://corona.go.jp/action/

2.タイ

5月15日、タイ政府は、非常事態宣言の制限措置の緩和を定めた決定を発表し、17日から以下の緩和措置が適用されています(第2フェーズ)。また、第2フェーズ移行に伴い、事業者向けアプリ「タイ・チャナ」の導入も発表されました。消費者が店舗の入店・出店の際にQRコードを読み取り、その情報を登録することで、政府がCOVID-19の感染疑いのある者の行動把握をすることができるアプリとなっています。

・夜間外出禁止: 外出制限を1時間短縮(午後11時から翌日午前4時までの外出禁止)

・経済活動:   レストラン、フードコート等の飲食店(酒類の販売は禁止)の営業再開

         ショッピングモールの営業再開(営業時間は午後8時まで)

         小売店・卸売店・卸売市場、ホテル内の会議室・会議場の営業再開

・運動、健康増進:美容医療クリニック、美容増進施設、ネイルショップ等の営業再開

         フィットネス場(ヨガとフリーウエイトに限る)の営業再開

         屋内運動場(選手同士の接触を伴わない競技、1チーム3人までに限る)の営業再開

         屋外及び屋内の公共プールの営業再開

         植物園、博物館、図書館などの営業再開

16日、タイ民間航空公社(CATT)は、タイに到着する全ての国際旅客便の飛行を禁止する措置を、6月30日まで延長する通達を発付しました。

26日、タイ政府の閣議決定において、3月26日に発令した非常事態宣言を6月30日まで延長する決定をしました。

3.マレーシア

5月4日、条件付活動制限令(Conditional Movement Control Order:CMCO)が施行され、禁止行為として指定された行為を含まない事業については、標準営業手順(Standard Operating Procedure; SOP)の遵守を条件に営業が可能となりました。また、強化された移動制限令(enhanced movement control order)の対象となる場所への出入りや集会・禁止行為を目的とする移動を除き、同一の伝染病流行地内での移動が可能となりました。

5月13日、条件付活動制限令が改定され、セランゴール州,クアラルンプール及びプトラジャヤが1つの感染地域と見なされるようになり、同地域内での移動が可能となりました。

5月14日より、セランゴール州及びクアラルンプールにおいて操業している建設及び警備産業企業における外国人労働者を対象として、社会保障機構(SOCSO)による COVID-19 スクリーニングプログラムが優先的・集中的に実施されています。

5月16日、マレーシア観光・芸術・文化省は、マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)パス保有者のマレーシアへの再入国を5月17日から許可すると発表しました。もっとも、入国は許可制とされており、許可が下りるまでの日数は明らかにされていません。

5月22日、条件付活動制限令が改定され、観光サービスが禁止行為の指定対象から除外されました。

5月25日、6月1日以降にマレーシアへの入国を希望する者に対し出発前に最寄りの在外マレーシア大使館等においてマレーシア到着後の隔離に係る宿泊費用の支払いに関する約定書に署名することが義務づけられ、また、マレーシア大使館等から発行される入国の承認状を得たうえで渡航の際に携行することが航空機に搭乗するための条件となる旨が発表されました。

現在の条件付活動制限令は6月9日まで有効とされていますが、その後も延長される可能性があります。

4.ミャンマー

5月3日、労働・入国管理・人口省より、検査待機期間中も事業を継続できる必要不可欠な業務、多くの国民に関係するサービス及び多くの国民にとって必要な業務の指定がなされました。

5日、同省より、社会保障基金から支援を得ることに関して使用者が遵守すべき事項を規定した通知が出されました。

7日、計画財務省より保険事業者及びマイクロファイナンス事業者がCOVID-19に関連して遵守すべき事項に関して通知が出されました。

11日、ヤンゴン管区において13日以降外出時のマスク着用を義務付け通知が出され、違反した場合には罰金が科されることとなりました。

14日、各種制限措置の期間を5月31日まで延長する旨が発表されました。ビザ停止や商用の国際旅客航空便の到着禁止も含まれます。

他方、同日、15日以降、これまで夜10時から朝4時までであった外出制限を、深夜0時から朝4時までに変更する旨の通知が出されました。さらに、これまでヤンゴン管区の10群区及びザガイン管区の1群区において自宅待機措置を課していましたが、過去21日間に新規の要請のケースや集団感染がなかった等の一定の基準を満たしたとして、5つの地区を自宅待機措置の対象から除外する旨の通知が出されました。

5月1日時点での感染者数は151名でしたが、5月26日時点では206名となっております。感染者数は増加しているものの、その多くは海外から戻ってきたミャンマー人であり、感染経路も確認されています。15日に外出制限が緩和されており、街中の交通量も増加し、飲食店も徐々に営業を再開していることから、徐々に経済活動が再開されると思われます。

5.メキシコ

(1) 連邦政府による社会活動再開に向けた指針

5月13日、大統領定例早朝会見にて、5月18日以降に次の3つの段階に分け社会活動の再開を目指す指針が発表され、翌14日保健省令として官報公示されました。

ステージ1 5月18日 COVID-19の症例報告がなく、
かつCOVID-19の症例報告のある
自治体に隣接しない自治体での活動の再開
(下表、緑の状態)
ステージ2 5月18日~5月31日 活動再開に向けた準備期間
(企業等における感染拡大
防止施策の構築)
ステージ3 6月1日~ 各地域での活動再開に向けた
信号システムの運用開始
当システムの示す色に基づく
活動の再開

なお、信号システムでは活動再開に向けたレベルを赤・橙・黄・緑と4つに分けており、以下の範囲で活動が許されうるとしています。

 
経済活動 必要不可欠な事業のみ 必要不可欠な事業、その他の事業については制限あり 全事業活動可 全事業活動可
教育機関 閉鎖 閉鎖 閉鎖 再開
公共施設 利用不可 制限付きで屋外の利用可、
屋内の利用は不可
屋外の利用可、制限付
きで屋内の利用可
利用可

また、本保健省令では必要不可欠な事業とみなされるものとして、建設業、鉱業、運輸機器の製造に関連する産業が追加され、翌15日付保健省令にて、保健省が中心となり策定した「職場の安全衛生のための技術的ガイドライン」に沿った感染防止対策を策定し、原則、6月1日以降に活動を再開できることが示されました。

この方針を受け、各州政府においても、独自の信号システムを設けたり、活動できる業種を追加もしくは制限したり、独自の承認プロセスを設けたりと、各々の社会活動再開計画が立てられており、企業活動の再開においては州政府の指針に従う必要があります。

5月20日には、保健省と観光省の連名で、観光産業における再開のためのガイドラインが発表されました。本ガイドラインは、航空輸送、空港、クルーズ船、遊覧船や港の運営、ホテル、レストランやバー、ゴルフクラブ、ディスコやナイトクラブ、イベント会場、コンベンションセンター、ビジネスセンター、陸上輸送、観光ガイド、デジタルプラットフォーム、テーマパーク、ウォーターパーク、ビーチ、スパ、定期市、競技場、コンサートや大規模なスポーツイベントや博物館といったすべての観光産業を対象とし、6月1日より適用されるとされています。

(2) 入国規制

 メキシコ政府による国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていませんが、米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限(3月21日より30日間、4月20日付で30日間延長)は、メキシコ政府合意のもと6月22日までの延長が決定されました。

第2.各国の撤退手続き

1.日本

 外国企業が日本での事業から撤退する場合,いくつかのパターンが考えられます。日本の事業の全部から撤退する場合の主なものとしては,日本支店の閉鎖,日本法人の解散,株式譲渡があります。
 日本支店を閉鎖する場合,日本における全ての代表者の退任の登記のみをする方法で行うことも可能です。 日本法人の解散をする場合,資産が負債を超過していれば通常清算,負債が資産を超過していれば特別清算か破産を選択することになります。
 通常清算は,残余財産を株主に分配する手続であり,裁判所の関与なく進めることができますが,2か月以上の期間を設けた債権者保護手続が必要です。
 特別清算は,裁判所の関与を受けながら,債権者との和解または協定を経て清算を結了させる手続きです。そのため,債権者の同意を得ているか,同意を得られる可能性が高い場合に選択し,債権者の同意を得られる見込みが低ければ破産申立を選択すべきです。また,特別清算は,公租公課,社会保険料,従業員の給料等の優先権のある債権を弁済するだけの残存資産がある場合にのみ選択可能です。
 破産は,裁判所への申立により始まり,裁判所より選ばれた破産管財人が会社の財産の処分・換価をし,配当できる原資が確保できた場合には配当をしたのち,法人を消滅させる手続です。破産により会社の債務はすべて消滅し,滞納税金等の租税債務も消滅します。
 会社に買い手がつくのであれば,株式譲渡により撤退することが可能です。
 日本での一部の事業から撤退する場合には,事業の買い手をみつけ,事業譲渡を選択することがありえます。事業のうち,資産や契約上の地位など何を譲渡するのかは,専ら譲受人との契約によって定まります。ただし,譲受人に契約上の地位や債務を移転するためには,個別に契約の相手方からの同意を得る必要があります。

2.タイ

撤退手続きについて、1.株主総会特別決議による解散・清算手続、2.破産法による破産手続、3.破産法による事業更生手続などの方法が存在します。

 これらのうち、1.株主総会特別決議による解散・清算手続が、一般的に行われる手続きとなります。手続きの主な流れは以下のとおりです。

(1) 株主総会招集通知送付、新聞での公告:(2)の株主総会開催日の14日前まで

(2) 株主総会の開催:会社の解散についての株主総会特別決議が必要

(3) 解散および清算人の登記:(2)の解散決議日から14日以内

(4) 解散について新聞での公告:(2)の解散決議日から14日以内

(5) 解散について債権者への通知:(2)の解散決議日から14日以内

(6) 歳入局においてVAT登録の抹消申請手続:(3)の解散の登記日から15日以内

(7) 歳入局において納税者IDを返還:(3)の解散の登記日から60日以内

(8) 歳入局に法人税確定申告書、決算報告書を提出:(3)の解散の登記日から150日以内

清算人は、(3)の解散の登記日から3か月毎に、商務省(DBD)に清算の進捗状況を報告

(9) 歳入局よりVAT登録抹消完了の通知を受領

(10) 株主総会招集通知送付、新聞での公告:(11)の株主総会開催日の7日前まで

(11) 株主総会の開催:清算完了の承認を受ける

(12) 清算完了の登記:(11)の株主総会開催日から14日以内

 なお、これらの清算手続きに入る前には、従業員の解雇に伴う解雇補償金の支払い、BOI奨励取得会社であればBOIキャンセル申請手続き、また債務整理等が必要となります。

3.マレーシア

 撤退手続は、会社法に規定されており、それぞれ1.株主による任意清算、2.債権者による任意清算、3.裁判所命令による清算(強制清算)、4.ストライク・オフに分かれます。また、5.会社は存続させた上で、株式譲渡により会社の運営から離脱する方法も存在します。

 上記の手続きのうち、一般的に取られる手続きは、1.株主による任意清算又です。

 株主による任意清算は以下の流れで進められます。

(1) 支払能力表明・臨時総会株主開催のための取締役会開催

(2) 支払能力表明書を作成し、会社登記所(CCM)へ提出する

(3) 臨時株主総会を開催し、清算の特別決議(議決権総数の75%)及び清算人の選任、清算人の報酬の決定を行う

(4) 株主総会決議書を会社登記所へ提出する

(5) 株主総会決議の新聞(マレー語及び英語)への公告

(6) 清算人選任の社登記所へ通知

(7) 清算人が21日以内の債権証明提出を依頼する通知を債権者に対して行い、当該通知を新聞に掲載する

(8) 清算人は、以下の優先順位に従い弁済を行う。

‧ 担保債権者

‧ 優先債権者

‧ 一般債権者

‧ 株主

(9) 内国歳入庁、EPF、SOCSO、税関等の関係官庁から、全ての債務を支払っている旨のクリアランスを取得する。

(10) 清算人は、会社に関する事項が全て清算された場合、速やかに最終株主総会を開催し、開催後7日以内に最終株主総会の報告書並びに清算過程及び資産処分方法に関する報告書を会社登記所及び公定管財人に提出する

(11) 最終株主総会の報告書並びに清算過程及び資産処分方法に関する報告書の提出から3か月経過後、会社は解散消滅する

 2.債権者による任意清算は、会社が債務全額を弁済することが困難である場合に取る手続であり、支払能力表明書が作成されない、清算人が債権者集会により選任される等の違いがあります。

 3.裁判所による強制清算は、労力と期間を要するため、実務上使用されることはまれですが、株主間で対立が存在する場合には選択肢の一つとなりえます。

 4.ストライク・オフは、債権債務及び資産のない休眠状態の会社のみが、登記を抹消により会社を消滅させることができる簡易な手続です。

 5.株式譲渡は、買受人と株式譲渡契約及び譲渡証書を締結し、会社登記所に変更の申請をすることにより完了します。

4.ミャンマー

撤退続きとして、大きく分けると1.会社法に基づく株主または債権者による任意清算、2.会社法に基づく裁判所が関与する強制清算、3.倒産法に基づく倒産、4.株式譲渡の4つの方法が存在します。

これらのうち、実務上は多くの外国会社が1.会社法に基づく任意清算によって撤退します。任意清算の際の前提として、清算が開始された場合、会社は、清算開始時点から、清算にとって有益となる場合を除き、事業を中止する必要があります。会社法上の株主による任意清算の主な流れは以下のとおりです。

(1) 清算のための取締役会を開催する。

(2) 取締役による弁済能力宣誓書の作成。

(3) Myanmar Companies Online(以下「MyCO」という)を通じて任意清算を支持する弁済能力宣誓書(J-4 Form)及び監査報告書の写しなどを提出する。

(4) 株主総会を開催し、清算のための特別決議を行い、清算人を任命する。弁護士が清算人となることが実務上一般的。

(5) MyCOで清算人の任命通知書(J-7 Form)を提出する。

(6) 日刊新聞または官報に、清算のための特別決議を公告する。

(7) 最終の株主総会の招集通知を、官報または日刊新聞に公告し、最終の株主総会を開催する。

(8) MyCOで、最終の株主総会の開催通知(J-5A Form)を提出する。その際に、清算人の当該清算の実施方法及び会社財産の処分方法について示す清算手続の記録の写し、会社の税務処理書類の写しを添付する。

2.会社法に基づく裁判所が関与する強制清算は実務上あまり使用されない手段です。3.倒産法に基づく倒産について、倒産法は2020年3月25日に施行されたばかりであり、現時点においては実例が存在せず、運用が不明確です。4.株式譲渡の方法については、株式を買い取る譲受人を見つける必要がありますが、見つかった場合には株式譲渡契約を締結した上でMyCOを通じて株主変更手続きを行うことで株式譲渡が可能です。

5.メキシコ

撤退手続として、一般に1.株式会社(S.A.)等の現地法人については解散・清算の手続を、2.外国会社の支店・駐在員事務所については閉鎖の手続をとることになります。

1.商事会社一般法に基づいて、株式会社を主体的に解散・清算手続きを行う場合の流れは以下の通りです。

(1) 特別株主総会を開催し、解散決議を行い、清算人を指名し、その商業登記を行う。

(2) 解散決議の商業登記が完了した場合、直ちに財務省(Secretaría de Hacienda y Crédito Público)に清算手続き開始の通知を行う。

(3) 清算人が指名された場合、取締役は会社のすべての資産、負債の目録、帳簿及び文書を清算人に引き渡さなければならず、これらの書類を受け取った清算人は、定款の定め、これがない場合は会社法の定めに従って清算事務を進める。具体的には、清算各種取引の停止、債権者への債務の支払い、債務者からの債権の回収、会社の資産の売却、清算貸借対照表の作成など。

(4) 最終の清算貸借対照表は経済省(Secretaría de Economía)の電子システムで公表する。

(5) 清算特別株主総会を招集し、清算貸借対照表や会社消滅の承認を決議する。

(6) この決議を公証し、商業登記所に届出て会社が消滅する。あわせて、財務省にも清算結了の通知を行いRFC(納税者登録番号)の抹消を行う。

(7) 清算株主総会で決定された内容に基づき、株主への残余財産への分配を行う。

(8) 清算人は、清算結了後も10年間、帳簿等の資料を保管しなければならない。

 他方、2.外国会社の支店・駐在員事務所の閉鎖の手続の流れは、明確なルールはないものの、概ね以下のとおりとなります。

(1) 本国での支店・駐在員事務所の閉鎖に関する取締役会等を行い、同議事録の公証人及び外務省による認証を行う。

(2) メキシコ国内で上記議事録の公証手続を行う。

(3) 各種機関での登録や登記の抹消手続きを行う。

 

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・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

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・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

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・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

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・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

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第1.各国の入国規制

1.日本

4月27日、「水際対策強化に係る新たな措置」が決定され、入国拒否対象地域が新たに14カ国追加されました。日本上陸前14日以内に入国拒否対象地域に滞在歴のある外国人は、特段の事情がない限り、入国拒否対象となり、期間は当面の間とされています。また、4月末日までの間実施することとしていた、ビザの効力やビザ免除を停止する措置が5月末日までに延長されました。 さらに、検疫の強化対策として、全ての国または地域から入国した者について、検疫法に基づく隔離(入院)・停留が必要となる場合があるほか、検疫所長が指定する場所(自宅等)において14日間の待機、及び空港等からの移動も含め公共交通機関を使用しないこと等が求められます。

・日本における新型コロナウイルスに関する水際対策強化(新たな措置)(外務省海外安全ホームページ) https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo_2020C048.html

・水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)(厚生労働省ホームページ) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00098.html

2.タイ

3月25日付の発表により、3月26日から、全ての外国人のタイへの陸路・海路・空路での入国が禁止されています。ただし、物流・旅客関係者、外交官・国際機関職員とその家族などの他、労働許可証を有する外国人などは除かれています。労働許可証を有する外国人などについては、渡航日の72時間以内に発行された、空路での移動に適した健康状態であることを示す健康証明書(Fit to Fly)をチェックイン時に提示し、日本からタイ入国後は、自宅等における14日間の自己観察を実施することが要請されています。さらに、タイ民間航空公社(CATT)は、4月4日より、全ての国際旅客便のタイへの飛行を禁じる措置を発表しています。

上記の措置については4月30日までとされていましたが、4月27日のタイ非常事態対策本部の会議により、5月末まで適用を延長することが決定されました。

3.マレーシア

3月20日付で公表された「出入国管理に関する内務省大臣の声明」によれば就労パス(駐在者パス)の保持者を含め全ての外国人の入国が認められないものとされています。 5月5日時点で施行されている条件付活動制限令(Conditional Movement Control Order:CMCO)によれば就労パス(駐在者パス)の保持者は入国が認められる余地があるように思われますが、実際の運用上、外国人の入国は認められていません。 国外から帰国したマレーシア国籍者及びマレーシア永住者はマレーシア到着時に入国審査を受ける前に健康診断を受けなければならないものとされています。また、3月20日付「出入国管理に関する内務省大臣の声明」によれば、帰国者は14日間の自主隔離を行う必要があるものとされています。

4.ミャンマー

3月24日付で、外務省より同月25日から全ての入国する外国人(外交団及び国連職員を除く)に対して、COVID-19陰性証明書の提示及び14日間の施設検疫を義務付ける旨発表されました。その後、4月11日より隔離期間を合計28日に延長する旨発表されました。更に、国際旅客航空便のミャンマーへの着陸禁止措置及び各種ビザの発給停止措置がとられており、当該措置は当初は4月30日までとされていましたが、5月15日まで延長される旨発表されています。

5.メキシコ

4月30日時点においては、諸外国に見られるような国境閉鎖や外国人の入国制限等は行われていません。米国との国境においては、3月21日より30日間の不要不急の渡航を制限する米墨の共同声明が発表されており、4月20日付で30日間延長されていますが、貿易は制限されず、必要不可欠や緊急の理由による渡航は影響を受けません。また、グアテマラ及びベリーズとの国境については、グアテマラ政府は3月16日より無期限の国境閉鎖措置をとっており、永住権を持つ外国人及び外交団以外の外国人の入国を禁じています。また、ベリーズ政府においては3月21日より国境閉鎖措置を取っており、ベリーズ居住者でない外国人の入国や緊急事態を除くベリーズ国民や居住者の国境の往来を禁止しています。

第2.各国の国内の外出規制

1.日本

4月7日に緊急事態宣言が発令されました。当初、緊急事態措置の期間は5月6日までとされていましたが、5月4日の発表でこれが延長され、5月31日まで引き延ばされることとなりました。期間中、特定警戒都道府県に指定された地域では、引き続き外出の自粛について協力要請が行われています。一方、特定警戒都道府県以外の地域では、都道府県をまたいでの移動や、接待を伴う飲食店の利用等については引き続き自粛を促していますが、それ以外の外出については制限を緩和しています。

・緊急事態措置の維持及び緩和等に関して(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室) https://www.caicm.go.jp/index.html

2.タイ

4月2日付の夜間外出禁止令により、4月3日以降、午後10時から翌朝午前4時までの時間帯での外出が、タイ全土で原則禁止とされています。違反者は2年未満の禁錮刑、もしくは4万バーツ未満の罰金、またはその両方が科せられます。夜間外出禁止令は、4月30日までとされていましたが、4月27日のタイ非常事態対策本部の会議により、5月末まで適用を延長することが決定されました。また、県をまたいだ移動の制限の要請、少なくとも50%以上の在宅勤務の要請、人が集まる場所への外出自粛の要請についても、5月末まで継続される旨が発表されています。

3.マレーシア

5月5日時点で施行されている条件付活動制限令(Conditional Movement Control Order:CMCO)の内容は以下のとおりです。但し、州又は連邦直轄区ごとに独自の規制が課される可能性があります。

(1)伝染病流行地 以下の地域が伝染病流行地として指定されています。

  • Johore
  • Kedah
  • Kelantan
  • Malacca
  • Negeri Sembilan
  • Pahang
  • Penang
  • Perak
  • Perlis
  • Sabah
  • Sarawak
  • Selangor
  • Terengganu
  • Federal Territory of Kuala Lumpur
  • Federal Territory of Putrajaya
  • Federal Territory of Labuan

伝染病流行地間の移動は、職場への往復及び移動制限令により帰宅できなかった者の帰宅に関する場合を除き、書面による警察の事前許可が必要とされています。

他方、1つの伝染病流行地内での移動は、強化された移動制限令(enhanced movement control order)の対象となる場所への出入り、集会や禁止行為を目的とする移動を除き、制限されていません。

(2)集会の禁止

何人も、集会又は行列に参加し又は関与してはならないものとされています。もっとも、葬儀については、出席者が20名を超えないことを条件に執り行うことが認められています。

(3)禁止行為

以下の行為が、禁止行為として指定されています。

  • 群衆が集まる可能性のある娯楽,レジャー,娯楽活動
  • 宗教的,文化的,芸術的な祭典に関する活動であって,群衆が集まる可能性のあるもの
  • 群衆が集まる可能性のある事業活動
  • 群衆が集まる可能性のある中央労働宿舎,従業員宿舎,寮での活動
  • 洋服のフィッティング,衣料品店のフィッティングルームの利用,店頭でのファッション小物の試着,店頭での化粧品テスターの提供
  • 理容室・美容室でのサービス
  • 映画,ドラマ,ドキュメンタリー,広告の撮影
  • クルーズ船の活動,観光サービス,観光産業法に基づく宿泊施設でのサービス
  • 集団が集合するおそれのある以下の機械類(エレベーター,エスカレーター,ボイラー等)及び建設現場におけるクレーンタワーの設置及び保守作業
  • 鉱山・採石業向け発破の理論と実技試験
  • 農産物の承認
  • 金融機関や銀行の敷地内又は公共の場所以外での販売やマーケティングを伴う金融サービス業や銀行の活動
  • 事業所内又は公共の場所以外での販売やマーケティングを含む商業活動(フードコート,ホーカーセンター,屋台,フードトラックなどでの食品事業を含まない)

(4)交通機関の利用

ア 自家用車

自家用車の運転者は3名以上の同乗者を乗せてはならず,また同乗者は運転者と同一の家屋に居住する者でなければなりません。

イ 公共交通機関

公共交通機関は、本来乗せることができる旅客の総定員の半分を超えないようにしなければなりません。また、タクシーやGrab等のe-ハイリング車は、1回の移動につき2人を超える乗客を乗せてはならないものとされています。

4.ミャンマー

現時点では全国的な外出禁止は出されていないものの、指定された地区においては自宅待機要請が出されています。その場合も会社への出勤は認められていましたが、4月19日付けで、労働・入国管理・人口省よりミャンマーにある工場、ワークショップ、商業施設は保健・スポーツ省が発表しているインストラクション及び指示に遵守している場合のみ、再開が認められる旨の通知が突如発布されました。現在は多くの工場は既に検査を終えて再開が認められています。ヤンゴン管区の各地区で6月22日まで夜間(午後10時から午前4時)外出禁止の通達が出されました。

5.メキシコ

3月31日に緊急事態宣言下での措置を定める保健省令が公布され、必要不可欠でない活動の停止、個人、一人一人の外出自粛、感染リスクが高い人(60歳以の人、妊娠中、授乳中の女性、5歳未満の子供、障がいのある人、肥満の人、高血圧、腎不全、癌、糖尿病、肝臓または代謝不全、心臓病などを患う人)の厳格な外出自粛などが要請され、4月21日付保健省令において、「必要不可欠でない活動の停止」の期間を原則5月30日まで延長すること、感染リスクの高い人については、どのような場合であっても新たな通知があるまでは厳粛な外出自粛に努めること、各州(メキシコ市を含む)政府に対し、COVID-19の感染状況に応じた適切な感染拡大防止措置の導入・実施、感染の度合いが異なる自治体間における人の移動を抑制するための効果的なメカニズムの構築及び実行などを義務付けることが定められました。これにより、各々の州において外出規制の強化や自動車走行規制、企業活動の継続に対する査察の強化や制裁措置、 マスク装着の義務化、 州境における検査(問診や検温、越境目的の確認など)の実施などこれまで以上に厳しい措置が導入されています。

第3.各国の税務上の猶予措置及び補助金

1.日本

新型コロナウイルスの影響により事業収入に相当の減少があった個人・法人は、1年間国税の納付を猶予することができます。2020年2月1日から2021年1月31日までに納付期限が到来する所得税、法人税、消費税等ほぼすべての税目(印紙で納めるもの等を除く)が対象になります。また、売上が一定程度減少した中小・小規模事業者を対象に、来年度の固定資産税を2分の1又はゼロにする減免措置が行われています。

補助金としては、前年より売上が50%減少した事業者への持続化給付金、雇用を維持できない事業者への雇用調整助成金等があり、実質無利子・無担保貸付も行われています。

・新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室) https://corona.go.jp/action/

2.タイ

(1)税務上の猶予措置

a. 法人(財団、協会は対象外)

・源泉徴収税を3%から1.5%に引き下げ

b. タイ証券取引所(SET)に登録されていない会社または法人パートナーシップ

・法人所得税納税期限の延長

c. 内務省、地方自治体、保健省等政府の命令により事業所が閉鎖された事業者 、延長する合理的な理由があるCOVID-19の影響を受けたその他の事業者

・国税局への納税申告期限の延長

d. 以下に該当する法人

当該会社の前会計年度の売上が5憶バーツを超えないこと、合計従業員が200名を超えないこと、従業員が社会保険に加入していることなど

・申告期限の延長、ならびに人件費の300%を税務上の費用に計上することが可能

e. 全ての法人

・3月及び4月の源泉徴収税、付加価値税の納付期限を5月15日に延長

・3月及び4月の特別事業税の納付期限を5月23日に延長(商業用不動産の売却など一部対象外あり)

・印紙税の納付期限を5月15日延長

f. ノンバンクの債務者

・ノンバンクの債務再編を支援するための税金、手数料に関する措置

・債務に関連する所得税等の免除など

・不動産の登記手数料の引き下げなど

(2) 補助金等

a. 公共料金

・2020年4月~6月の電気料金を3%引き下げ

・住宅、中小企業の保証金支払者の、電気使用保証金の返金

・2020年4月~6月の水道料金を3%引き下げ

・住宅の水道使用者の、水道使用保証金の返金

b. 雇用関係

・事業停止等により、賃金を受け取れない労働者で、社会保険加入者については、月給の62%(最大9,300バーツ)を最長90日間補償

・2020年3月~5月の社会保険料拠出金を雇用主は月額4%、社会保険法第33条被保険者は1%に引き下げ、第39条被保険者は、月額86バーツに引き下げ

・社会保険料納付期限を3か月延長

3.マレーシア

(1) 所得税の分割払の延期

2020年4月1日から3か月間、中小企業が納付すべき所得税について納付の延期が可能とされています。

(2) 人頭税の減額

2020年4月1日から2020年12月31日の間に就労許可が失効する外国人労働者(家事労働者を除く)についての人頭税が25%削減されます。

(3) EPF

2020年4月15日にEmployer Advisory Services(EAS)プログラムが導入され、EPF拠出金の雇用者負担分の納付の繰延等が可能となります。

(4) 人的資源開発基金

2020年4月から6か月間、人的資源開発基金(HRDF)の拠出金の支払いが免除されます。

(5) 賃金補助制度(Wage Subsidy Programme)

一定の雇用主に対して従業員の雇用を継続できるようにするために給付される補助金で、概要は以下の通り。

(6) 雇用維持プログラム (ERP)

無給休暇を取得した従業員に対して賃金の一部を補助する制度で、1か月あたりRM600が最大6か月間支払われます。 <主な条件>

・給与がRM4,000以下の従業員であること

・少なくとも 30 日間の無給休暇を取得したこと

(7) 零細企業(Micro SME)への助成金

零細企業(売上高RM300,000未満 または 従業員5名未満の企業。ただし、多国籍企業の子会社等は除く。)は、特別助成金としてRM3,000を受けることができるものとされています。

(8) 賃料の減額または免除

政府関連会社等が所有する建物で小売業を営んでいる中小企業(SME)(売上高RM20,000,000未満 または 従業員75名未満の企業。ただし、多国籍企業の子会社等は除く。)は、賃料の割引または免除を受けることができるものとされています。

4.ミャンマー

CMP企業、ホテル及び観光業、中小企業のいずれかに該当する場合、所得税及び商業税の支払い期限が2020年9月末まで延長されます。貧困層に対する食糧支給やミャンマー企業に対する低利の貸付は行われていますが、外国企業に対する補助は現時点においては発表されていません。

5.メキシコ

連邦政府における税務上の猶予措置は現在取られていません。2020年度第1四半期に従業員の減少がなく、また給与支払額も減少していない零細事業者を対象とした融資プログラムが発表されましたが、融資額は2万5千ペソと小さいものとなっています。また、社会保障費の内、雇用主が全額負担する労働者住宅基金(通称INFONAVIT)の拠出金の支払いについて、申請することにより、従業員が250人以下の企業については9月まで、従業員が250人超の企業については7月まで繰り延べが可能となっています。

また、州政府においては、給与税支払いの繰り延べや減免措置などをとる州もあり、例えば、グアナファト州は3月及び4月の給与税について、7月以降に6回に分けて支払うことができるとする措置を取っています。アグアスカリエンテス州では、従業員が20人以下の事業者に対して、4月以降、年内の給与税について30%を割り引く減税措置をとっており、また、事前に書面申請を行った事業者は、4月~6月の給与税について支払いを繰り延べることができ、それぞれを8回払いとすることができます。ヌエボレオン州においては、所得税の対象となる2019年の収入が400万ペソ未満かつ従業員が10人以下の企業、もしくは、レストラン、バー、ホテル、カジノ、ジム、劇場、映画館、娯楽サービスを行う事業者は3月から5月の給与税が免除されます。なお、本稿では一例を紹介しておりますが、それぞれに適用される場合の条件が設定されておりますので、あらかじめご留意ください。

第4.各国の休業時の給与支払い義務

1.日本

日本においては通常、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。しかし、今回の新型コロナウイルスの影響により休業した場合の従業員の給与等の支払いについては明確な規定がされておらず、厚生労働省も、個別ケースごとに労使で話し合うよう勧めています。雇用維持対策として、都道府県の休業要請を受けている中小事業者で、休業手当100%で雇用維持をしている場合、最大10割助成される制度(雇用調整助成金)が設けられています。

・新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(厚生労働省ホームページ)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html

・新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室) https://www.caicm.go.jp/index.html

2.タイ

労働者保護法第75条により、不可抗力ではなく、一時的に事業の全部または一部を停止する場合は、企業は労働者に対し、事業停止前の賃金の75%以上の額を支払わなければならないと定められています。タイ政府機関の命令により、営業禁止となっている業種については、事業の停止が「不可抗力」と評価される可能性が高く、上記の75%以上の賃金支払いは不要であると考えられます。しかし、自主的に事業を停止している場合は「不可抗力」として認められない可能性が高く、75%以上の賃金支払いが必要であると考えられます。

3.マレーシア

3月19日付で人的資源省が公表した「移動制限令に関する人的資源省関係のよくあるご質問」によれば、移動制限令中も雇用主は賃金の全額を支払わなければならないものとされています。また、雇用主は、従業員に対し有給休暇または無給休暇を強制的に取得させることはできません。 同月31日付で公表された「活動制限令に関する人的資源省関係のよくあるご質問(第3号)」によれば、雇用主は両当事者の合意に基づく完全な有給休暇、半額の有給休暇または無給休暇のいずれかを従業員に申し出ることができるものとされています。

4.ミャンマー

ミャンマーにおいては休業時の補償について法律上は規定されていません。したがって、企業が一方的に休業を理由として自宅待機を労働者に命じた場合には法律上は休業期間中も企業が全額賃金を支払う必要があると解されます。当局によれば、休業前に労使間で協議を行い、休業期間中は賃金を●%カットするなどの形で合意することは認められます。また、政府の命令に基づく閉鎖の場合には給与の支払い義務が生じないとの見解を有する当局担当者も存在することから、管轄の当局に対応について確認することが望ましいです。

5.メキシコ

COVID-19の感染拡大を受け3月30日付で「不可抗力による緊急事態」が宣言されました。労働法第427条は一時的に雇用関係を中断できる場合を「雇用主に責任のない不可抗力や偶発的事件による場合」(第1号)と規定しており、労働法第429条と430条により、使用者は管轄の労働裁判所へ通知し承認をもらうことにより、雇用関係の一時的な中断ができ、その間、裁判所が決定する補償を支払うこととなっています。なお、この労働裁判所は2019年の労働法改正により新設された機関であり、現在はまだ運用に至っておらず、これまでその役割を担ってきた労働調停仲裁員会(Junta de Conciliación y Arbitraje)において手続きをとることとなりますが、この労働調停仲裁委員会も、ストライキにかかるものを除いて5月30日まで業務を中止しており、現時点では労使間の十分な協議のもとに賃金の支払いについて決める必要があります。

発行 TNY Group
【TNYグループおよびTNYグループ各社】・TNY Group

URL:https://tnygroup.biz/

・日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

URL:https://progress.tny-legal.com/

・タイ(TNY Legal Co.,Ltd.)

URL:https://www.tny-legal.com/

・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

URL:https://www.tny-malaysia.com/

・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

URL:https://tny-myanmar.com/

・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

URL:https://tny-mexico.com/

・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

URL:http://www.tny-israel.com/

・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

URL:http://estonia.tny-legal.com/

Newsletterの記載内容は2020年4月30日現在のものです。情報の正確性については細心の注意を払っておりますが、詳細については各オフィスにお問合せください。