インド法律情報Q&A
【インド進出方法に関するQ&A】
Q1. インドで事業を行う場合、どのような形態がありますか?
A1: インドに進出する際の形態としては、原則として、以下の4つのいずれかとなります。
(1) 現地法人(株式会社)
(2) 駐在員事務所(Liaison Office)
(3) 支店(Branch Office)
(4) プロジェクトオフィス(Project office)
(5) 有限事業組合
Q2. 駐在員事務所(Liaison Office)の特徴は何ですか?
A2: 駐在員事務所では、インドのビジネス環境や投資環境を理解するための情報収集・調査等の本社の出先機関としての活動を行うことができます。一方で、駐在員事務所での営業・商業活動は認められません。
期間は、3年間(3年ごとに延長の申請が可能)であり、この間、収益を得る活動はできませんが、進出のための準備を行うことができます。
Q3. 支店(Branch Office)の特徴は何ですか?
A3: 支店は、営業・商業活動が可能であり販売などの営利活動の拠点とすることができます。この点で、駐在員事務所よりも広範な活動が可能といえます。もっとも、製造や加工等の活動は行うことができません。
親会社が存続する限り支店も存続するため、駐在事務所のような期間の制限はありません。
Q4. プロジェクトオフィス(Project office)の特徴は何ですか?
A4: プロジェクトオフィスとは、インフラ事業などの特定のプロジェクトを行うためのオフィスとなります。実施するプロジェクトにおいては収益を得ることが可能ですが、実施するプロジェクト以外で収益を得る活動はできません。
存続期間は、実施するプロジェクトの期間になります。
Q5. インドの公開会社と非公開会社の違いは何ですか?
A5: インドの会社の種類は、公開会社(Public Company)と非公開会社(Private Company)に分類されます。公開会社と非公開会社では、会社法上要求される株主及び取締役の員数が異なります。
| 株主の員数 | 取締役の員数 | 居住取締役の員数 | |
| 公開会社 | 7人以上必要 | 3人以上必要 | 取締役のうち居住取締役1人 |
| 非公開会社 | 2人以上必要 最大200人 |
2人以上必要 | 取締役のうち居住取締役1人 |
※居住取締役とは、当会計年度中182日以上インドに滞在した取締役のことをいいます。
上場会社、一定規模以上の公開会社は独立取締役及び女性取締役の選任、指名・報酬委員会及び監査委員会の設置が要求される場合があります。
Q6. 会社設立にはどのような手続が必要ですか?
A6:会社設立には以下の手続が必要となります。
(1) 取締役識別番号(DIN)及びデジタル署名(DSC)の取得
まず、取締役に就任する者の取締役識別番号(Director Identification Number:DIN)及びデジタル署名証明書(Digital Signature Certificate:DSC)を取得する必要があります。
(2) 会社名の申請
企業省のウェブサイト上で申請することができます。一度に申請できる社名は2つまでとなり、既に登録されている他社名や商標と酷似していれば承認されません。
(3) 基本定款及び附属定款の作成及び提出
基本定款には、会社名、住所、目的、資本金が記載されます。附属定款には、株主総会や取締役会に関する規定等の会社運営上の事項が記載されます。基本定款及び附属定款は、登記住所を設置する州ごとの会社登記局に他の必要書類と併せて提出する必要があります。
(4) 銀行口座開設、資本金送金、インド準備銀行への報告
資本金を送金するための銀行口座を開設する必要があります。資本金送金後から30日以内にインド準備銀行に資本金着金及び株式割り当ての報告を行う必要があります。
(5) 納税者番号(PAN)及び源泉徴収番号(TAN)の取得
会社の納税者番号(Permanent Account Number:PAN)及び源泉徴収番号(Tax Deduction Account Number:TAN)を取得する必要があります。
(6) 事業開始届の提出
登記完了後180日以内に事業開始届を会社登記局のウェブサイト上で提出する必要があります。
Q7. 株式の種類にはどのようなものがありますか?
A7: 会社法上、資本株式(Equity Share)と優先株式(Preference Share)の2種類が規定されています。資本株式には、さらに普通株式とクラス株式の2種類があります。普通株式は、日本の普通株式と同様の権利を株主に付与します。クラス株式とは、資本株式の中で配当及び議決権に関する権利が普通株式とは異なる定めで発行された株式となります。
優先株式とは、附属定款で規定された権利についてのみ議決権を行使できますが、優先的に配当を受けることが認められます。
Q8. インドで会社を設立する際の最低資本金はいくらですか?
A8: 最低払込資本金の制限はありません。
Q9: LLP(Limited Liability Partnership/有限事業組合)の特徴は何ですか?
A9:特徴として、メリットとデメリットの2種類が挙げられます。
<メリット>
(1)設立コストが比較的安価
(2)利益分配比率を出資比率でなく、LLP 契約で自由に定めることができる
(3)所有と経営の分離がない(パートナーが所有権を持ち、自ら経営する)
(4)株式会社に比べ、遵守すべきコンプライアンスや規制が少ない
(5)会計年度の年間売上高が400万ルピーを超えない場合、または出資額が250万ルピーを超えない場合は会計監査義務がない
<デメリット>
- 資金調達の選択肢が限定的
- 軽減税率のルールが適用されず、法人税率が比較的高い
- 指定社員の給与に対する経費計上について、所得に応じて上限が設けられている
以上の8点がLLP(有限事業組合)特徴として挙げられます。
Q10:インド現地法人の設立後に必要な手続きはありますか?
A10:インド現地法人の設立後には下記の手続きが必要になります。
1. 第1回取締役会の開催
会社が設立されるとインド企業省より会社設立証明書(COI)が送付され、COIに記載された会社設立日から30日以内に第1回取締役会を開催し、法定監査人を任命、登記局に報告しなければなりません。
2. 銀行口座開設と出資金の送金
設立後、現地法人名義で銀行口座を開設します。 口座の開設後、各株主から資本金の送金を受けることができます。
3. 株式割当に関するRBIへの報告
設立後60日以内に株式割当を行い、株式割当から30日以内に、RBI(インド準備銀行)に対して資本金着金および株主割当に関する報告をします。その際、新株発行による外国直接投資の報告書(FCGPR)というフォームで、取引銀行を通じて申告します。
以上が、インド現地法人の設立後に必要な大まかな流れとなります。
Q11:取締役のデジタル署名証明DSC(Digital Signature Certificate)とは何ですか?
A11:DSC(Digital Signature Certificate)とは、デジタルで文書に署名するためのもので、主にインド企業省での手続きを中心に利用されています。特に、インドの法律において規定された各種フォーマットに基づき、オンラインで登記や申告、提出する際にデジタルで署名するために使用します。
近年では、税務申告書のアップロードなどにも利用されています。
Q12:取締役のデジタル署名証明DSC(Digital Signature Certificate)の取得に必要な書類は何ですか?
A12:外国人非居住者の場合、以下の3つが必要です。
(1)写真付きID原本
パスポートを使用することが一般的です。
(2)住所証明の原本
一般的には、公共料金請求書(電気代や水道代等、現住所と名前が明記されているもの)が使用されます。
(3)証明写真
パスポートサイズの証明写真が必要です。
Q13:商号名の事前承認はどのようにして申請しますか?
A13:インド企業省が規定するMCAのWebサイトのRUN-LLPフォームにて申請をします。希望される商号名と類似した企業名がすでに存在している等の理由で第一希望の商号名の承認が得られない可能性があります。そのため、前もって候補名を複数用意する、当該サイト内であらかじめ調査をする、申請に期限の余裕を持つ、といった対策が必要です。
Q14:商号名の事前承認に必要な書類は何ですか?
A14:(1)株主の登記簿謄本の英訳コピー
(2)株主側の取締役会での現地法人設立に関する決議の抜粋
以上の2つが必要です。
Q15:商号名の事前承認取得後の法人登記はどのようにして申請しますか?
A15:インドの会社登記局に申請された商号名は、20日間有効です。したがって、承認を取得後、20日以内に必要登記申請書類を用意し、申請しなければなりません。
申請に当たっては、法人登記用フォーム「SPICe (INC-32)」を使用します。
Q16:インドで駐在員事務所に認められる活動範囲を教えてください。
A16:駐在員事務所は、インド国外の本社との連絡拠点として機能する事務所として設立されます。したがって、営業活動や売買活動などの商業活動は、直接的であれ間接的であれ、一切禁止されています。インドでできる活動は市場調査、情報収集、親会社とその製品に関する情報提供などに限定され、原則、経費はすべて親会社からの送金で賄う必要があります。
Q17:具体的には、主に下記の4つの活動に限定されています。
A17:(1)インドにおける親会社・グループ会社の代理店業務
(2)インドでの輸出入の促進
(3)親会社・グループ会社とインド企業との技術・資金面での協業の推進
(4)親会社とインド企業とのコミュニケーション窓口としての活動
Q18:駐在員事務所の設立要件はありますか?
A18:インドで駐在員事務所を設立するには、以下の2つの財政上の要件があります。
(1)本国において直前の3年間に連続して利益を計上した実績を持っていること
(2)最低50,000米ドルの純資産を持っていること
駐在員事務所は、活動費用について、外国本社からの送金によってその全額を調達しなければなりません。
Q19:支店の設立要件はありますか?
A19:インドで支店を設立するには、以下の2つの財政上の要件があります。
(1)本国において直前の5年間に連続して利益を計上した実績を持っていること
(2)最低100,000米ドルの純資産を持っていること
支店はそれ自体法人格を有しません。したがって、インド国内の銀行から借り入れを行うことはできません。
Q20:インドで支店に認められる活動範囲を教えてください。
A20:支店は、通達によって規定される一定の事業活動のみ行うことが許されています。
具体的には、下記の活動が認められています。
(1)商品の輸出入
(2)専門的なサービスまたはコンサルタント業務の提供
(3)親会社が従事している研究業務の遂行
(4)インド企業と親会社または海外グループ会社との間の技術的または財政的な協力関係の促進
(5)インドでの親会社の代理店業務及びインドでの購買・販売代理店業務
(6)インドにおける情報技術サービスの提供およびソフトウェア開発
(7)親会社・グループ会社が提供する製品の技術サポート業務
(8)外資系航空会社・運送会社の代理店業務
【インドの会社法に関するQ&A】
Q1:株主は何名必要ですか?
A1: 公開会社であれば最低7名の株主が必要となります。非公開会社の場合は、最低2名以上の株主が必要となります。
Q2:減資手続きは難しいですか?
A2:取締役会の承認、株主総会特別決議、会社法審判所(NCLT:National Company Law Tribunal)からの認可の取得が必要となります。
Q3:取締役は何名必要ですか?
A3:公開会社であれば最低3名以上必要となります。非公開会社の場合は、最低2名以上の取締役が必要となります。
Q4:定款を作成する必要がありますか?
A4:会社設立申請のために基本定款と附属定款を作成し会社登記局に提出する必要があります。基本定款には、会社名、住所、目的、資本金が記載されます。附属定款には、株主総会や取締役会に関する規定等の会社運営上の事項が記載されます。
Q5:株主総会を定期的に開催する必要がありますか?
A5:毎年1回定時株主総会を開催する必要があります。時期は、会計年度の終了から6か月以内となります。ただし、会社設立後最初の定時株主総会については、会計年度の終了から9か月以内の開催でもよいとされています。
Q6. インドにおいて監査役を選任する必要はありますか?
A6: 監査役設置義務があります。勅許会計士(chartered accountant)又は会計士がパートナーの過半数を務める会計事務所を選任する必要があります。インドの監査役は、日本の業務監査を行う監査役というよりも会計監査人に近い業務を行います。
Q7:取締役の報酬は自由に決めて良いのですか?
A7:附属定款又は株主総会の普通決議により決定されます。附属定款で株主総会特別決議で決定すると規定する場合は、株主総会特別決議により決定されます。そして、公開会社では、原則、取締役の報酬総額が当該会計年度における純利益の11%を超えることはできません。非公開会社の場合は、純利益を基準とした制限はありません。
Q8. インドの会社法で特別決議の対象となるのはどのような事項でしょうか?
A8: インド会社法では少数株主を保護するため、広範囲な事項が特別決議(Special Resolution)の対象となっています。例えば、基本定款の変更、設立後の新規事業開始の承認、商号の変更、株式資本の減額などが特別決議の対象となる事項として挙げられます。
Q9:取締役会の開催頻度に関しての規定はありますか?
A9:会社は 1 年に 4 回以上取締役会を開催しなければならず、前の取締役会から 120 日以上の期間を空けることができません(会社法 173 条 1 項)。
また、第一回取締役会は、会社設立登記後 30 日以内に開催する必要があります(同項)。
Q10:取締役会の招集方法について規定はありますか?
A10:取締役は会社秘書役等へ要請することによりいつでも取締役会を招集することができます(会社法スケジュールテーブル F67 条 2 項)。招集通知は、取締役会決議開催日の少なくとも 7 日前に会社に登録された各取締役の住所宛てに書面で送付されなければなりません(会社法 173 条 3 項)。この招集通知は、手渡し、郵送、又は電子メールの形で送付することができます(同項)。
Q11:取締役会の開催地及び開催方法について規定はありますか?
A11:開催地は、法令の特段の規制はなく、ビデオ会議でも可能であり、インド国外での開催も可能となります。年次財務諸表の承認等一部の議題については、物理的な取締役会での決議が必要とされていましたが、2021年改正取締役会及びその権限に関する規則により、そのような規制もなくなりました。現在は、全ての議題がビデオ会議で行うことが可能となっています。
また、取締役会決議の草案を各取締役の登録された住所宛てに手渡し、郵送、又は電子メールの形で送付し、過半数の賛成を得た場合は有効な書面決議となります(会社法 175 条 1 項)。
Q12:書面決議が認められない事項はありますか?
A12:以下の事項については書面決議で行うことができません。
① 株主への未払株式の払込請求
② 有価証券の買戻しの承認
③ 社債を含む有価証券の発行
④ 借入
⑤ 会社資金の投資
⑥ 融資、融資の保証又は担保の提供
⑦ 財務諸表及び取締役会報告書の承認
⑧ 事業の多角化
⑨ 合併等の組織再編
⑩ 会社の買収又は支配権の取得
⑪ その他規定される事項
Q13:定時株主総会の招集通知は、何日前までに送付する必要がありますか?
A13:インド会社法において、定時株主総会の招集通知は、開催日の21日前までに全株主に送る必要があります。ただし、95%以上の株主の同意があれば、招集通知の期間を短縮することも可能です。
Q14:株主総会決議にはどのような要件・方法がありますか?
A14:株主総会決議には、普通決議と特別決議があります。普通決議の決議要件は、出席株主の過半数の賛成、特別決議は、出席株主の4分の3以上の賛成で成立します。原則として頭数ベースで計算します。ただし、定款に規定がある場合、またはインド会社法上投票による決議が必要とされる場合、株主総会決議は投票により行われ、この場合には多数決の基準は議決権数となります。代表的な普通決議事項としては、取締役選任・解任、監査人の選任、年次決算書類承認、利益配当等が挙げられます。他方、特別決議事項の代表例としては、基本定款 (MOA) もしくは附属定款 (AOA) の改正、合併・会社分割などの組織再編、会社の清算等が含まれます。決議方法は、会社法上の原則は出席株主の挙手による投票によるとされているため、保有する株式数に応じた議決権数に関係なく、出席株主1者につき1票の議決権を有しています。また、付属定款(AOA)に規定することで、保有株式数に応じた、投票による決議とすることも可能です。
Q15:株主総会決議が必要な事項としてどのようなものがありますか?
A15:株主総会決議が必要な事項として以下のようなものが挙げられます。
- 授権資本引き上げ
- 定款変更・決済承認
- 州を越える住所変更
- 社名変更
- 取締役の選解任・追認
- 監査人の選任
Q16:株主総会を開催するにあたって留意すべきことはありますか?
A16: ビデオ会議での記録の保管や取締役会の議事録の記録漏れの場合は、罰則の対象となり、会社に対して25,000ルピー、不履行の各役員に対しては、5,000ルピーの罰則がそれぞれ科されます。株主総会で可決されたすべての決議は、30日以内に会社登記局(ROC)にオンラインでの提出が義務づけられています。また、その議事録は会社規則25条1項により、タイムスタンプを付した上で永久保存と定められています。
Q17:インドの会社法により保存義務が定められている文書は具体的にはどのような文書ですか?
A17: インドの会社法で定められている法定文書は、インド会社法及びその下位規則に定められており、内容は以下の通りです。
| 文書 | 保存期間 | 法律名/条文番号 |
| 設立に関する文書及び情報の写し (定款、取締役等のDeclaration、 犯罪歴がないことの宣誓供述書、 株主の基本情報、取締役の基本情報、 取締役の他の会社との利害関係に 関する情報) |
会社が解散するまで永久に | 会社法7条4項等 |
| 株券 | 30 年間 | 会社(株式資本および債権)規則7条 |
| 株主総会議事録 | 会社が解散するまで永久に | 会社(経営・管理)規則25条1項 |
| 取締役会議事録 | 会社が解散するまで永久に | 会社(経営・管理)規則25条1項 |
| 担保の付与又は変更に関する文書 | 会社により請求が履行された 日から8年間 |
会社法85条 会社(経営・管理)規則3条、 15条1項 |
| 年次報告書の写し | 登記官へのファイリングから8年間 | |
| 取締役の利害関係の開示に関する フォーム |
関連する会計年度の終了から8年間 | |
| 取締役会の出席簿 | 最終記入日から8会計年度、 その後取締役会の承認で破棄可能 |
会社法170条1項 会社(取締役の選任と資格) 規則17条 |
| 取締役会招集通知、議題、 その他関連文書の写し |
8会計年度、その後取締役会の 承認で破棄可能 |
|
| 株主総会招集通知、監査報告書、 その他関連文書の写し |
8会計年度 | |
| 会計帳簿 | 8会計年度 | 会社法128条5項 |
| その他法令で要求される文書 | 8会計年度 |
Q18:インドの会社法により保存義務が定められている文書を電磁的記録により保存することも認められていますか?
A18:原本だけでなく電磁的記録により保存することも認められています。IT法の具体的な規定として、当該情報が①電子的形態で提供され、利用可能であること、②後日閲覧できる状態でアクセス可能であること、以上の2つを満たすものであれば、その電子記録は法的に有効とみなされます。
Q19.インドには競業避止義務に関する規定はありますか?
A19:インドでは、1872 年契約法(THE INDIAN CONTRACT ACT, 1872)27 条に競業避止義務に関する規定があります。契約法 27 条は、「ある者が合法的な職業、取引、又はあらゆる種類の事業を行うことを拘束されるあらゆる合意は、その限りにおいて無効である。」と規定しています。同条に基づき、裁判例では、契約期の間は有効であるが、契約が終了したあとは基本的に無効とされます。したがって、雇用契約終了後に従業員に対して競合他社において働くことを禁止する旨の条項は無効であると解されます。また契約法 27 条は、あらゆる種類の取引を制限する合意を無効とするものであり、その対象は雇用契約に限られません。一般的に契約書上で競合避止義務を課すことは慣習として行われています。
Q20:インドには、営業秘密の保護に関する法律はありますか?
A20:インドには、営業秘密の保護に関する法律はありません。しかし、インドはWTO の加盟国であり、TRIPS 協定に従い、衡平法及び慣習法・判例法に基づき、営業秘密を保護しています。営業秘密の保護に関する特別な法令が存在しないことから、営業秘密の保護は、裁判所の判断及び判例を根拠としています。営業秘密は、本質的に、組織や企業にとって極めて重要なものであり、法的、倫理的、又はその他の理由で公になることなく秘密に保たれてきたものであり、営業秘密の例としては、ビジネスプロセス、顧客リスト、製品構造、製造工程、ソフトウェアコード、技術データなどがあります。営業秘密を保護するための手段として、秘密保持契約、雇用契約、研究開発契約等のそれぞれの契約において秘密保持条項を定めることが重要です。契約に規定された秘密保持条項に反して第三者に営業秘密を開示した場合は、契約法に基づいて損害賠償請求をすることが可能です。裁判例では、営業秘密に該当するかどうかの判断において、当該情報が秘密であること(既に公知となっている等の事情がないこと)、情報の開示により損害が生じる又は競争相手が利益を得ること等の事情を考慮しています。インドの裁判所は、広くイギリスの判例法に依拠してきましたが、現在では、増加する営業秘密保護に関する国内判例に依拠することが増えています。
Q19:インドでは会社の合併に関してどのような規定がありますか?
A19. インドでは、合併については吸収合併と新設合併があります。吸収合併では、合併によって消滅する対象会社の権利義務を存続会社が包括的に承継することになります。新設合併では、合併によって消滅する会社の権利義務を合併によって新たに設立する会社に承継させるものとなります。
Q20:会社の合併を行う場合、どのような手続きを要しますか?
A20:合併については、会社法審判所(National Company Law Tribunal)による承認を得なければなりません。会社法審判所は、合併承認の申請に対して、株主総会や債権者集会の招集を命ずる場合があります。会社法審判所に対して上記申請を行うものは会社の財務状況等を宣誓供述書により開示する必要があります。上記手続により招集された株主総会及び債権者集会により 4 分の 3 以上の賛成(株主総会の場合議決権の4分の3以上、債権者集会の場合総債権額の4分の3以上)により会社法審判所が命令により合併を承認します。会社は合併の命令を受領してから 30 日以内に登記官に当該命令を提出しなければなりません。合併は会社登記所の命令を必要とし完了まで約180日から200日程度とある程度長い時間がかかり、また会社法審判所の認可を得るためのコストもかかります。
【インドの労働法に関するQ&A】
Q1. インドの新労働法について教えてください・
A1. 近年、29の労働法(連邦法)を4つの法典に整理統合することが行われました。
4法典は、それぞれ
・2019年賃金法 (Code on Wages, 2019)(以下、「賃金法」といいます)
・2020年労使関係法 (Industrial Relations Code, 2020) (以下、「労使関係法」といいま
す)
・2020年社会保障法(Code on Social Security, 2020) (以下、「社会保障法」といいま
す)
・2020年労働安全衛生法(Occupational Safety, Health and Working Conditions Code,
2020)(以下、「労働安全衛生法」といいます)
といい、いずれも2020年9月頃までには成立しており、その後、2025年11月21日に、同日付で施行が発表されました。
Q2. インドで雇用契約書の締結は必須ですか?
A2. 労働安全衛生法では、雇用契約の締結にあたってはAppointment Letterと呼ばれる雇用契約書の作成が求められます。
旧法下では、雇用契約であっても口頭の成立が認められていましたが、新法下では書面が必要となる形となります。また、すでに採用した従業員についてAppointment Letterを作成していない場合には、同法施行後 3 カ月以内に作成しなければならないこととなっています。
Q3. インドにおける労働者の定義を教えてください。
A3. インドでは労働者をワーカー(Worker)とノン・ワーカー(Non Worker)に区別しています。
ワーカーとは、あらゆる産業において、非熟練・熟練、技術的、作業的、監督的または事務的業務のために雇用されている者と定義されています。
そして、ノン・ワーカーとは、ワーカー以外の者をいい、これには、
①経営的または管理者的立場にある者(managerial or administrative capacity)や
②監督的立場(supervisory capacity)にある者であって賃金が月18,000ルピー(これについては、旧法では10,000ルピーでしたが、新法から18,000ルピーに変わっています)を超えている者、
等が含まれています。
Q4. ワーカーとノン・ワーカーで、雇用条件等に違いはあるのですか?
A4. ワーカーについては、使用者よりも立場の弱い者として、労働条件や解雇規制等の面において法令上、手厚い保護が与えられています。他方、ノンワーカーについては、使用者と対等に近い立場の者として、その労働条件は、主に当事者間の雇用契約によって規定されることとなります。
Q5. ワーカーとノン・ワーカーを区別する方法はありますか?
A5. ある従業員がワーカーであるか、ノン・ワーカーであるかは、当該従業員の職務の性質、報酬額、権限等、様々な要素を考慮して判断されます。
しかし、このような判断は法的判断であり、ある従業員がワーカーであるか、ノン・ワーカーであるかを区別するのは事実上容易ではありません。
ある従業員をノン・ワーカーとして扱っていても、当該従業員が自らはワーカーであることを主張して、関連法令に基づく保護を求め紛争が生じるリスクも考えられます。
そのため、ワーカーであるかノン・ワーカーであるか判断に迷う場合には、ワーカーとして扱う方が安全です。
Q6. インドにおいて試用期間の規制はありますか?
A6. インドの法令上、試用期間については、特段の規制はありません。
しかし、労使関係法や各州の店舗施設法上、一定期間雇用された労働者を解雇する際には、法定の解雇規制(正当な理由や解雇通知等)を遵守することが求められるため、当該期間を下回る範囲で試用期間を設定することが通常です。
この点、各州の店舗施設法では、3~6か月以上継続雇用された労働者の解雇には、正当な理由や事前の通知等が求められていることが多いです。
そのため、実務上、試用期間は3~6か月程度の範囲で設定されることが一般的です。
Q7. インドで就業規則の作成義務はありますか?
A7. 労使関係法が適用される場合を除いて、就業規則の作成義務はありません。
しかし、雇用条件や社内ルールの明確化、全ての雇用条件を個別契約で定めることの煩雑さ等から、任意で就業規則を作成することが実務上一般的です。
Q8. 法令上、就業規則の作成義務が生じるのはどのような場合でしょうか?
A8. 300人以上のワーカーが雇用されているか、過去12か月間のいずれかの日において雇用されていた産業施設の場合、労使関係法上、スタンディング・オーダー(Standing Order)と呼ばれる就業規則を作成し、認証を得ることを義務付けられています。
スタンディング・オーダーを作成する際には、労使関係法に基づいて政府が策定するモデル・スタンディング・オーダーに準拠する必要があり、内容がモデル・スタンディング・オーダーから離れている場合、修正を求められる可能性もあります。
Q9. インドの労働時間の規制は日本と同じですか?
A9. 労働安全衛生法では、労働者の労働時間は1日8時間を超えてはならず、週6日を超えて働かせてはならないものとされています。旧法下の工場法では1日9時間労働であったところ、労働者により有利に改正されています。なお、州によって異なる規制が存在する可能性もありますので、個別の確認が必要です。
Q10. インドの休憩時間の規制はありますか?
A10. 休憩時間については、労働安全衛生法上の明確な規定がなく、今後各州政府等により定められる可能性があります。
Q11. インドの時間外労働手当の割増率はいくらですか?
A11. 時間外労働には2倍の賃金を支払う必要があります。
Q12. インドの有給休暇は何日ですか?
A12. 年間180日以上労働した労働者は、20日毎に1日の有給休暇が付与されます。付与された有給休暇を取得しなかった場合は、年間30日を超えない限度で翌年に繰り越すことができるほか、30日を超える有給休暇については、買取請求が認められます。旧法下の工場法では、前暦年240日以上労働した者は、翌暦年において労働日数20日ごとに1日の有給休暇が付与されることとなっていましたが、労働者にとってより有利な改正となっています。
Q13. インドでは、解雇についてどのような種類がありますか?
A13. 解雇には以下のものがあります。
・普通解雇(Retrenchment)
・懲戒解雇
・レイ・オフ(Lay Off)
Q14. 普通解雇(Retrenchment)とは何ですか?
A14. 労使関係法では、普通解雇を、「懲戒以外の理由による労働者の雇用(こよう)の終了」と定義しており、以下の場合は、普通解雇には該当しないものとしています。
・懲戒解雇
・自主退職
・定年退職
・契約の更新がされないことによる雇用の終了
・継続的な健康不良に基づく雇用の終了
Q15. 普通解雇の手続きを教えてください。
A15. 継続して1年以上勤務(きんむ)しているワーカーを解雇する場合、1か月前の通知または、その代わりに1か月分の賃金の支払いが必要です。
また、一定の解雇補償の支払いも必要です。。
この他、所定の様式による州労働局長への届出も求められます。
Q16. 懲戒解雇の手続きを教えてください。
A16. まず、懲戒事由が、就業規則や雇用契約上、明確に示されている必要があります。
また、労使関係法の適用を受ける場合、懲戒解雇はスタンディング・オーダーが定める手続きに従う必要があります。そのため、懲戒事由の書面通知、弁明の機会の付与、調査等の実施が求められます。
また、労使関係法の適用を受けない産業施設であっても、懲戒手続きには判例上、適正手続きが求められているため、上記手続きと同程度の手続きを実施する必要があります。
Q17. レイ・オフ(Lay Off)とは何ですか?
A17. レイ・オフとは、雇用関係の一時的停止のことです。石炭・電力・原材料の不足、過剰在庫、機械の故障、自然災害、その他の理由に基づいて行うことができます。
Q18. インドには社会保障制度がありますか?
A18. インドの社会保障制度の主なものとしては、以下のものがあります。
・従業員積立基金(EPF: Employees’ Provident Funds):解雇、定年退職、障害による就労不能等の場合の給付金制度。従業員と使用者が毎月一定の割合の拠出金を基金に収める。
・従業員年金(EPS:Employees’ Pension Scheme):年金制度。
・従業員国家保険(ESI: Employees’ State Insurance ):病気、出産、労働災害等による一時的または恒久的な身体障害、労働災害による死亡および病気治療等に備えた保険金制度。
Q19. 賃金支払い期間について規制はありますか?
A19. 賃金の支払いについて、使用者は、従業員の賃金支払期間を日払い、週払い、隔週払い、または月払いのいずれかで定めることができます。ただし、いかなる従業員の賃金支払期間も 1 か月を超えてはなりません。
また、各支払期限は以下のとおりです。
・日払い:シフト終了時
・週払い:週の最後の営業日
・隔週払い:2週目の終了後2日目までに
・月払い:翌月の7日目の満了までに
なお、解雇や自主退職した従業員については、雇用終了日から2営業日以内に未払い賃金を支払わなければなりません。
Q20. 賃金の支払い方法については、どのような規定がありますか?
A20. 賃金法上、すべての賃金は、現金、小切手、従業員の銀行口座への振り込み、または電子的方法で支払われるものとされています。
Q21. 賃金から控除することは認められていますか?
A21. 賃金の控除については、罰金、立替金、社会保障基金(Provident Fund)の拠出金等、賃金法上認められるもの以外の控除は認められません。加えて、控除の合計額は賃金額の50%を超えないものとしなければなりません。
Q22. インドの最低賃金について教えてください。
A22. これまで、特定の範囲の従業員のみに最低賃金が定められていましたが、賃金法では、中央政府がすべての従業員について最低賃金を定めるものとしています。また、州政府も最低賃金を定めることができますが、これは中央政府が定める最低賃金を下回ってはなりません。
Q23. インドにおいて賞与に関する法規制はありますか?
A23. 賃金法上、州政府が法定賞与支給の要件として通知によって定める額を下回る賃金の従業員で、会計年度中に30日以上働いた者については、その会計年度における従業員の賃金の8.33%又は100ルピーのいずれか高い方の額の賞与を支払わなければなりません。
旧法下の賞与支払法は、月額21,000ルピー以下の従業員に対し法定賞与を支払うことを義務付けていましたが、新法下では各州が通知で基準となる賃金額を定めることとなります。
Q24. 賞与の支払い方法について規定はありますか。
A24. 賃金法上、賞与は当該会計年度末尾から 8 カ月以内に従業員の口座に支払われなければなりません。
Q25. インドにおいて退職金支払義務はありますか?
A25. 社会保障法上、工場や過去12ヶ月間のいずれかの日に10人以上の従業員が雇用されている又は雇用されていた事業所・店舗等で、5年以上継続して勤務した従業員については、定年退職、辞職、事故や病気による死亡・障害、有期雇用契約の満了等の事由で雇用が終了した場合、退職金の支払いを受ける権利を有します。
Q26. インドにおいて、配転に関する規制はありますか?
A26. 配転を規制する明文上の法令はありません。労働者を配転する使用者の権利は、雇用契約や就業規則に定められた条件から生じると考えられます。裁判所は、使用者による配転の決定が誠実な管理上の理由と業務の緊急性からなされたものである限り、不当なものとは判断しないと考えられています。
Q27. インドにおいて、出向・転籍に関する規制はありますか?
A27. 出向・転籍を規制する明文上の法令はありません。異なる使用者の下で労働者を就労させるためには、新たな雇用主の下での雇用契約書を締結し直す必要があるため、労働者の同意が必要となります。
Q28. インドにおいて労働組合を組成する要件はありますか?
A28. 法令上、労働組合を組成するにあたり、特定の要件は定められておらず、組成自体は自由です。ただし、労使関係法(又は旧法である労働組合法)に基づく登録を行った労働組合でなければ、労働争議に関して刑事上、民事上の免責を受けられないため、労働組合として活動するためには法律に基づく登録を行うことが重要です。
Q29. 労働組合登録の要件を教えてください。
A29. 労働組合の登録を行うためには、組合員数が7名以上であり、なおかつ、当該施設に従事する者のうち10%又は100名のいずれか少ない方の人数が当該労働組合に加入していることが要件となります。
Q30. ストライキの実施に関して規制はありますか?
A30. 労使関係法上、ストライキを実施するためには、ストライキ開始の14日前から60日前までの間に使用者に対する通知を行わなければならず、また、通知したストライキ実施日よりも前にストライキを実施することはできません。
従来は、公共事業に従事する者を除いて、ストライキの実施にあたって事前の通知は求められていませんでしたが、労使関係法では通知が必要となります。
また、以下の期間におけるストライキの実施は禁止されています。
・調停手続きの係属中及び終了後7日間
・産業審判所(Industrial Tribunal)における審判手続きの係属中及び終了後60日間
・仲裁手続き中及び終了後60日間
・和解及び裁定の効力期間中
Q31. インドにおいて労使紛争の解決機関にはどのようなものがありますか。
A31. 労使関係法は、労使紛争の解決機関として以下のものを定めています。
・中央政府又は州政府が任命する調停官(Conciliation Officer)
・産業審判所(Industrial Tribunal)
・全国産業審判所(National Industrial Tribunal)
また、このほかに当事者間の合意に基づき、労使紛争を仲裁手続きに付すことも可能です。
Q32. 労使紛争解決の手続きを教えてください。
A32. 紛争解決手続きの通常の流れとしては、まずは調停官の下での調停手続きで解決が図られます。調停官は両当事者の間に入り、当事者間の合意を目指します。
しかし、調停が不成立となった場合、当事者は産業審判所への申立てを行うことができます。
また、事案が国家的重要性を含む問題であったり、複数の州にまたがっている場合には、全国産業審判所が当該事案を管轄することができます。
Q33. インドにも派遣労働の制度はありますか。
A33. インドにもContract Labourとよばれる派遣労働に似た制度があります。 Contract Labourは「契約労働者」,「請負労働者」、「派遣労働者」等様々に訳されておりますが、ここでは、「派遣労働者」と訳すことにします。
派遣労働とは、使用者が労働者を直接雇用するのではなく、派遣元である派遣業者(Contractor)から派遣された労働者(派遣労働者)を受け入れて働かせる制度です。
派遣された労働者の直接的な雇用者は派遣元です。
そのため、派遣先企業との間には直接的な雇用関係がありません。
したがって、派遣先企業が派遣労働者の使用をやめたとしても、それは解雇には該当しません。
Q34. 派遣労働者を受け入れるにあたって派遣先が負う義務はありますか?
A34. 派遣労働者の雇用主は、派遣元ですが、職場における健康・安全環境の整備や、福利施設の提供は、派遣先の責任です。
また、派遣元が派遣労働者に賃金を支払わなかった場合、または少額しか支払わなかった場合、派遣先は未払いの賃金を支払う義務があります。
なお、派遣先がそのような賃金を支払った場合、派遣元へ補償を請求することができます。
【インドのビザに関するQ&A】
Q1. インドで働く場合、どのようなビザを取得する必要がありますか?
A1: 就労を目的としてインドに来る場合は、就労ビザを取得する必要があります。
Q2. 就労ビザの取得要件はありますか?
A2: 原則として、就労ビザを取得する外国人は、産業分野に関わらず年間USD25,000以上の給与を受け取っている必要があります。また、申請者は高度な技術や資格を持つ専門家である外国人である必要があります。さらに、申請者の出身国又は居住国から発行されたものでなければならず、その国での申請者の居住期間が2年以上であることが条件となります。
Q3. 就労ビザの有効期限はありますか?
A3: 所定の技能を有する日本人への就労ビザの有効期間は3年間となります。ただし、インド政府と日本政府の二国間協定に基づき入国する日本人労働者は、協定に記載された期間又は5年間のいずれか短い方となります。
Q4. 就労ビザの申請手続はどのように行うのですか?
A4: 申請者は、オンラインシステム(Indianvisaonline.gov.in)を通じて申請書を作成し提出します。また、申請者は印刷した申請書と必要書類をインド大使館に提出する必要があります。申請が承認された後、申請者は大使館でビザを受領するか、大使館が申請者に郵送で送付します。就労ビザを得てインドに入国した後、14日以内に外国人地域登録局(FRRO)、外国人登録事務所(FRO)に登録する必要があります。
Q5. 就労ビザの申請のための必要書類は何ですか?
A5: 一般的には以下の書類が必要になります。
(1) 申請書
(2) パスポート(有効期間が1年以上あり、空白ページが3ページ以上あるもの)
(3) 雇用契約書(インドの法人との雇用関係を証明する書類)
(4) 学歴証明書
(5) 会社登記書類
(6) 履歴書
Q6. 就労ビザを取得する場合、家族の同伴も可能ですか?
A6: 就労ビザを取得した外国人の家族は、就労ビザと同期間有効の帯同ビザの発給を受けることができます。
Q7. インドでのビザにはどのような種類がありますか?
A7. インドでのビザは就労ビザ、居住許可証、学生ビザといったカテゴリに分類されます。期間は一般的に3カ月、6カ月、1年、3年、5年間となっています。20174月から、1年間有効の「インターンビザ」という新しい種類のビザが導入されました。
Q8. インターンビザとはどのようなものですか?
A8: インド企業研修インターンビザとは、学校卒業後2年以内にインドでインターンとして渡航する方を対象として発給されるビザです。卒業・修了からインターン開始までの期間は1年以内、また、ビザの期間は、インターンシッププログラム期間または1年間のいずれか短い方に限られます。企業でのインターンの場合は、対象になる申請者の所得が年間78万ルピ―以上であることを保証する必要があります。このビザ・カテゴリは、2017年4月に新設されましたが、申請枠がかなり狭くなっています。
Q9. 就労ビザを延長することは可能ですか?
A9: インドの就労ビザは延長できます。就労ビザは、国籍に応じて初回は1年までの数次ビザが発給され、以後、最大10年まで延長が可能です。就労ビザあるいは帯同ビザを持つ日本人の在留許可期間は、就労ビザと同じになり、1年ごとの在留許可の更新も必要なくなりました。また、所定の技能を有する日本人の場合、初回は3年有効のビザも可能となっています。提出する必要があるのは、延長申請書と雇用主からの手紙です。
【インドの不動産法制に関するQ&A】
Q1. 外国会社がインド国内の土地を取得できますか?
A1: RBI(インド準備銀行)から許可を取得することにより外資であってもインド国内の土地を取得することができます。
Q2. インドの土地の登記はどのような効力を有していますか?
A2. 売買契約書や賃貸契約書が登記の対象となります。登記簿上では、不動産の権利関係が記録されているわけではないため、登録された契約書を遡ることにより現在の権利関係を把握することになります。そのため、日本のように登記に公信力が認められているとはいえません。また、登記を怠るとこれらの売買契約書や賃貸契約書は訴訟において証拠として認められません。
Q3. インドの不動産の登記は第三者も閲覧できますか?
A3: インドでは、売買契約書や賃貸借契約書が登記の対象となり、これらの登録された契約書は州の登録所において公衆の閲覧に供されています。登記簿を見て現在の不動産の権利関係を即座に把握することはできませんが、これらの登録された契約書を確認することはできます。
Q4. インドにおいて土地と建物は別個の権利対象となりますか?
A4. インドの不動産法制上、土地と建物は別個の権利対象として扱われています。そのため、土地と建物は別個の主体による所有が可能となります。
【インドの外資規制に関するQ&A】
Q1. インドでは外資はどのような業種を行うことが可能ですか?
A1. 商工省が外国直接投資に関する政策文書を発表しており、当該政策文書にネガティブリストとして外国直接投資の禁止・規制対象となる業種が記載されています。外国投資が禁止されている業種は以下の通りです。
①宝くじ(政府・民間宝くじ、オンライン宝くじなど含む)
②ギャンブル・賭博場
③チットファンド事業
④ニディ会社
⑤譲渡可能な開発権の取引
⑥不動産業又は農家の建設
⑦煙草、葉巻、チェルート、シガロ、シガレット及びその他の煙草代替品の製造
⑧原子力産業及び鉄道事業等の民間投資が認められない分野
Q2. 出資比率に上限がある業種はありますか?
A2. 以下の業種についは、外国直接投資に関する政策文書に規定される条件の下で一定の制限が設けられており、外国投資が100%まで認められない場合があります。
①石油天然ガス
②ブロードキャスティング
③印刷出版
④民間警備会社
⑤通信サービス業
⑥小売業(複数ブランド)
⑦銀行業
⑧証券
⑨保険業
⑩年金
⑪電力取引
⑫民間航空業
⑬防衛機器産業
⑭医薬品
Q3. インドでフランチャイズ規制はありますか?
A3: インドには、フランチャイズを特別に規制する法律はありません。そのため、フランチャイズの当事者は、契約法等の一般的な法律に従う必要があります。もっとも、1999年財政法には、フランチャイズは、商標やロゴに関係なくフランチャイジーに商品の販売、製造、サービスの提供、又はフランチャイザーと識別されるプロセスを実行する権利を付与する契約であるとのフランチャイズの定義として参照できる規定があります。
インド国外のフランチャイザーは、当該事業をはじめるにあたり外国直接投資に関する政策文書の規定に従う必要があります。
Q4. インドにおいて外国人雇用規制はありますか?
A4: 公務員等の外国人が就くことができない職種があります。また、外国人を雇用する際や解雇する際に従うべき規制もあります。
Q5. 現地人の雇用義務は法で定められていますか?
A5: インドでは、外国企業に対する現地労働者雇用規制は存在しないことから、連邦レベルでの義務はありません。しかし、州レベルでの義務がある場合があります。日本人に発給されるVISAの数に関わらず、現地法 人においてインド人労働者を雇用することが可能です。
【インドの弁護士制度に関するQ&A】
Q1:インドの弁護士資格はどうすれば取得できますか?
A1:21歳以上でインド弁護士会が承認している大学で法学の学位 (3 年又は 5 年) を取得していることで弁護士会に登録することができます。また、All India Bar Examinationという弁護士資格試験に合格することで法定代理人として訴訟業務を行うことが可能となります。
Q2:インドに弁護士会はありますか?
A2:インドの弁護士法に基づき、インド法曹評議会と州法曹評議会が設立されています。これらの法曹評議会は、弁護士の規律の策定や弁護士の利益を保護するための活動を行っています。
Q3:インドに司法書士や行政書士等の隣接法律職はありますか?
A3:インドには、会社法や労働法等の法的な情報提供、コンプライアンス体制構築のサポート、紛争解決のための助言や書面の作成等の業務が弁護士のみならず会計事務所、会社秘書役、コンサルタント等が行っているとの実態が存在します。もっとも、業務内容によっては、弁護士法に抵触するといわれております。裁判所も原則として弁護士以外の者の法律業務を認めていません。
Q4. インドの弁護士資格にちがいはありますか?
A4: インド弁護士は、法廷で陳述ができるBarrister (法廷弁護士)と陳述できないSolicitor(事務弁護士)に分かれます。具体的には、法廷弁護士は、弁護を専門とし、クライアントに代わって法廷に出廷します。その仕事内容は、証人の尋問や裁判の準備から裁判官や陪審員への提出に至るまで、法的プロセスのあらゆる段階でクライアントの代理を務めることになります。事務弁護士はクライアントに助言し、交渉を引き受け、法的文書を起草します。仕事内容は、主にデスクワークですが、クライアントに会いに行ったり、法廷でクライアントの弁護をしたりすることもあります。
【インドの清算及び破産に関するQ&A】
Q1. インドでは会社の清算方法はどのようなものがありますか?
A1: 概ね以下の4つの清算方法が定められています。
(1)会社法審判所による清算
(2)企業登録局(ROC)による会社登録簿からの社名削除
(3)破産法による清算
(4)自主清算
Q2. 会社法審判所による清算はどのような場合に行われますか?
A2: 下記事由が生じた場合、会社等は会社法審判所に清算を申立てることができます。
- 会社が債務不履行に陥った場合
- 会社が株主総会特別決議により清算することを決議した場合
- 会社が、 インドの主権及び威信、 国の安全、 外国との友好関係、 公序良俗に反する行為を行った場合
- 登記官等の申請に基づき、会社法審判所が、会社の業務が不正な方法で行われた、 会社が不正かつ違法な目的で設立された、 又は会社の設立若しくは業務運営に関与した者が、 詐欺、 不正行為若しくは不正行為に関連し、 会社を清算することが適切である判断した場合
- 会社が直前5会計年度の財務諸表または年次申告書を登記官に提出しなかった場合
- 会社法審判所が、 会社を清算することが公正かつ衡平であると判断した場合
Q3. 企業登録局(ROC)による会社登録簿からの社名削除はどのような場合に行われますか?
A3: 登記官が以下の事由に該当すると判断する合理的な理由がある場合に社名削除が行われます。
- 会社設立後1年以内に事業を開始しなかった
- 直前2会計年度の間に事業を行っておらず、その期間内に休眠会社とする申請を行わなかった場合
Q4. 破産法による清算はどのような手続ですか?
A4: 債務者や金融債権者等の申請者は、会社法審判所に対して再建型の破産処理手続を申請する必要があり、当該手続内で会社法審判所が再建計画案を受領しなかった場合又は同所により同計画案が承認されなかった場合に清算手続に移行します。
Q5. 再建型の破産処理手続はどのような手続ですか?
A5: INR10万以上の債務不履行がある場合、債務者(会社)や金融債権者等は会社法審判所に対して破産処理手続の開始を申立てることができます。会社法審判所による破産処理手続開始決定が行われた場合、債務者(会社)の財産の保全命令、暫定再建専門家を選任します。暫定再建専門家は、債務者の財産状況を把握・管理し債権者委員会を構成し、債権者委員会が再建専門家を選任します。破産処理手続の申請者は、再建専門家の要求に応じて再建計画案作成し、同計画案が債権者委員会に提出されます。債権者委員会において承認を得られた場合に、会社法審判所に再建計画案が提出され、同所においても承認されれば債務者・債権者は同再建計画案に従い再建型の破産処理手続が進められます。
Q6. 自主清算はどのような手続ですか?
A6: 自主清算は、会社が債務不履行に陥っていなくても行うことができる清算手続です。定款で定められた期間が満了した、又は株主総
【インドの裁判及び仲裁制度に関するQ&A】
Q1. インドの裁判制度はどのようになっていますか?
A1: インドの司法権を担う機関は、最高裁判所、最高裁判所の下に位置づけられる裁判所で構成されています。最高裁判所の下には、各州に高等裁判所があり、その下に下級裁判所があります。他にも準司法機関である会社法審判所、労働審判所、直接税審判所、間接税審判所等があります。
Q2.インドの民事訴訟制度はどのようになっていますか?
A2: 民事裁判の手続に関しては、民事訴訟法(Code of Civil Procedure, 1908)に規定されています。原告が裁判所に訴状を提出することにより開始されます。訴状が提出されると裁判所は被告に召喚状を発行し、書面で訴状に対する答弁書を提出することを求めます。原告と被告それぞれが訴答書面を提出すると裁判所は争点を整理し、証拠開示と承認尋問が行われ、最終弁論を経て判決が下されます。
Q3.インドにおいて日本の判決は執行されますか?
A3: 日本はインドと判決の執行における相互主義に関する二国間条約を締結していないため日本の判決をインドで執行することはできません。裁判所による解決を図るためには、改めてインドの裁判所に訴訟を提起する必要があります。
Q4. インドにおいて労働事件に関する訴訟制度はどのようになっていますか?
A4: 労働争議の当事者は、共同又は個別に所定の方法で当該紛争を労働裁判所(Labour Court)労働審判所(Tribunal)又は全国労働審判所(National Tribunal)に申立てることができます。当事者や事業場等が複数の施設にまたがる場合等は、全国労働審判所が利用されます。労働裁判は、関係当局によって任命される1名の裁判官により構成されます。労働審判も関係当局により任命される1名の審判官により構成されます。
労働争議の解決手段として調停手続きにおける和解も存在します。調停委員は、委員長1名と関係当局が適当と考える員数2名又は4名で構成されます。もっとも、和解は調停手続きによらなくとも使用者と労働者が書面による合意があり、両者の署名がなされた当該書面の写しが関係当局及び調停官に送付された場合も成立が認められます。
Q5. インドにおける仲裁制度はどのようになっていますか?
A5: インドの仲裁法は、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の国際商事仲裁に関するモデル法にほぼ準拠しています。インドはまた、外国仲裁判断の承認および執行に関する条約(ニューヨーク条約)を批准しているため、同条約および仲裁法の拒絶事由に該当しない限り、JCAA(日本商事仲裁協会)、SIAC(シンガポール国際仲裁センター)などの外国仲裁機関の行った仲裁判断をインドネシア国内で承認および執行することができます。
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