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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに各国のフランチャイズによってビジネス展開を試みる場合の注意すべき規制」 TNY Group Newsletter No.16

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

(1) COVID-19関連の規制状況

現時点で沖縄県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府に緊急事態宣言が実施されており、8月31日までが実施期間となっています。また、まん延防止等重点措置は、北海道、石川県、京都府、兵庫県、福岡県で8月31日までを対象に実施されています。飲食店への休業又は時短要請、酒類提供の制限、イベントの収容率及び人数制限など、各都道府県の自治体が措置を講じるほか、ワクチン接種の円滑化・加速化の取り組みが進められています。(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP)

(2) 入国規制

1 検疫の強化

(a) 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

(b) 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

(c) スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

(d) 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

(e) 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

インド、ネパール、モルディブ、スリランカ、アフガニスタン、インドネシア、キルギス、ザンビアの8か国からのすべての入国者及び帰国者については、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で 10 日間待機し、入国後3日目、6日目及び 10 日目に改めて検査を受け、いずれの検査においても陰性と判定された場合は、検疫所が確保する宿泊施設を退所し、入国後14日間の自宅等待機を求められます。

マレーシア、英国、バングラデシュ、アラブ首長国連邦、ロシア(モスクワ市)、パキスタン、ミャンマーの7か国・地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)で6日間待機し、入国後3日目及び6日目に改めて検査を受けることになります。

その他、別途指定される国又は地域からのすべての入国者及び帰国者について、検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る)当面待機し、入国後3日目に改めて検査を受けることになります(新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

2 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

2.タイ

(1) COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は578,375名です。この内、381,170名が回復し、累計死亡者数は4,679名となっています。また、非常事態宣言は、9月30日まで延長されています。

タイ政府は、7月17日、新たな措置を公表し、13都県(バンコク、チョンブリ、アユタヤ、サムットプラカーン、ノンタブリー、パトゥムタニー等)をダークレッドゾーンに再指定しました。ダークレッドゾーンでは、レストラン等での店内飲食が禁止で、持ち帰りのみの営業が可能となっています。ショッピングモール等はドラッグストアやスーパーマーケット等を除き閉鎖、コンビニ等を含む全ての店舗が20時から翌4時まで閉店とされています。また、21時から翌4時までの夜間外出禁止措置も発表されています。

バンコク都は、7月21日に新たな規制として施設の閉鎖措置を発表しています。屋内外の競技施設、運動場、公園、展示場、美術館、図書館、博物館、託児所、理髪店、美容院、ネイルサロン、プール等が閉鎖対象となっています。

(2) 入国規制

 タイへの入国については、引き続き、オンラインでの入国許可証(COE)申請システムを用いて手続きを進める必要があります。渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、及びCOVID-19の関連疾患を含む医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等が必要です。タイ入国後は、隔離(ASQ)ホテルにて14日間の隔離となります。

 7月1日よりプーケットサンドボックス制度が、7月17日よりサムイ・プラス制度が開始されています。これは、渡航日の14日前までに、COVID-19ワクチン接種を規定回数終えている者を、検疫隔離なしでプーケットまたはサムイ島・パンガン島・タオ島に受け入れる、検疫隔離免除の制度となります。ワクチン接種証明書の提示が必要となります。また、通常の入国時と同様、COEの申請、渡航時間前72時間以内発行のRT-PCR検査結果証明書、医療費10万米ドル以上を保証する医療保険証等の提示も必要となります。詳細情報については、在京タイ王国大使館のHPを参照下さい。

3.マレーシア

(1) COVID-19関連の規制状況

 7月29日の新規感染者数は、17,170人でした。現在マレーシア国内で施行されているFMCO(完全ロックダウン)は、第一段階から第四段階まで設定され、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。7月中に、ペルリス州、ペラ州、クランタン州、トレガンヌ州、パハン州、ペナン州、サバ州、サラワク州が第二段階に移行しました。これら以外の地域は、現在も第一段階の規制が施行されます。

 第一段階の規制では、必要不可欠なサービスとして指定されたものを除き全ての社会・経済活動は許可されません。また、州・地区間の移動は原則禁止されています。

(2) 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にRT-PCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。すべての渡航者は、国際線での到着後、RT-PCR検査を受ける必要があり、到着後2回目のRT-PCR検査は10日目に実施されます。隔離期間が21日間まで延長された場合には、18日目に再検査が行われます。

4.ミャンマー

(1) COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19の陽性者数が急増しており、死者も増加しています。病院の稼働状況もCDMの関係でまだ完全に元通りにはなっていないことから感染しても入院できず、感染予防のため、7月19日~8月1日までの2週間が祝日となりました。

(2) 入国規制

 7月は3日のANA便が飛び、24日は見送りとなりました。8月は6日、13日及び20日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっています。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。

5.メキシコ

(1) COVID-19関連の規制状況

6月以降、増加傾向を見せていたメキシコ国内のCOVID-19新規感染者数は、7月に入り急増し、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いの実施など、予防策の徹底が呼びかけられています。

メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、7月19日の更新が見送られ、7月23日付で 「COVID-19感染リスクを示す地域別信号の決定指針」を更新し、その評価基準が見直されました。新たな基準のもと発表された7月26日から2週間適用される信号は、赤1州、橙13州、黄15州、緑3州と多くの州で警戒色が引き上げられました。また、7月27日には保健省令が公布され、感染リスクの高い人(60歳以の人、妊娠中、授乳中の女性、5歳未満の子供、障がいのある人、肥満の人、高血圧、腎不全、癌、糖尿病、肝臓または代謝不全、心臓病などを患う人)とされる人のうち、ワクチンの接種を完了し2週間が経過した人は、この感染リスクの高い人とみなす必要がないとし、更に、2020年5月14日付保健省令に付属されていた地域別信号色及び認められる経済活動の表が廃止されました。なお、当該指針(7月27日付Ver.6.1が最新)に示される社会経済活動の推奨事項において、これまで赤信号下では認められていなかった必要不可欠でない経済活動について、「当局の指示に基づく操業」と赤信号下での操業の可能性が示されています。しかしながら、最終的には州が定める規制に従うことになりますので、事業活動を行う州の決定に注視する必要があります。

(2) 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、8月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路での移動については適用しないとされています。また、3月19日から実施されているメキシコ政府によるグアテマラ及びベリーズ国境における陸路での不要不急の移動制限についてついては、6月21日以降その延長は発表されていないものの、在メキシコ日本大使館によると、解除の通知が為されていないことから、これまでと同様の制限が継続されると考えられるとのことです。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

6.バングラデシュ

(1) COVID-19関連の規制状況

バングラデシュ政府(内閣府)は、新型コロナウイルスの感染状況を受け、7月23日以降、全ての政府系機関、民間の事務所の閉鎖、全ての産業活動および工場の稼働の停止など、厳格な行動規制が発表されましたが、8月1日から、輸出向け縫製工場は再開が認められました。

(2) 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置としての渡航や入国規制は、下記の通りです。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループAに属する国(インドやマレーシアなどの計11か国)へのバングラデシュからの出国、グループAの国からのバングラデシュ入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(ベルギーやデンマークなどの計8か国)へのバングラデシュからの出国、グループBの国からのダッカへの渡航は認められる。ただし、入国後、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。

第2.各国のフランチャイズによってビジネス展開を試みる場合の注意すべき規制

1.日本

フランチャイズとは、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によると、「事業者(「フランチャイザー」)が他の事業者(「フランチャイジー」)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう」と定義されています。

フランチャイズに関する主な法律として、中小小売商業振興法及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」)が挙げられます。

(1) 中小小売商業振興法

 商店街の整備、店舗の集団化、共同店舗等の整備等の事業の実施を円滑にし、中小小売商業者の経営の近代化を促進すること等により、中小小売商業の振興を図り、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています(中小小売商業振興法1条)。中小小売商業振興法4条5項に「連鎖化事業(主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に、商品を販売し、又は販売をあっせんし、かつ、経営に関する指導を行う事業をいう。以下同じ。)を行う者は、当該連鎖化事業の用に供する倉庫その他の施設又は設備を設置する事業について、連鎖化事業計画を作成し、これを主務大臣に提出して、当該連鎖化事業計画が政令で定める基準に適合するものである旨の認定を受けることができる」とあり、「連鎖化事業」にフランチャイズ・システムが含まれます。

1 特定連鎖化事業の運営の適正化(中小小売商業振興法11条、12条)

連鎖化事業のなかで、フランチャイズ・システムは「特定連鎖化事業」にあたり、中小小売商業振興法で、運営の適正化について定められています(中小小売商業振興法11条1項)。本部が加盟者と契約を締結する際に含めなければならない事項が定められ、従わない場合は、勧告を受け、勧告に従わない場合は、その旨を公表されることがあります(中小小売商業振興法12条1項、2項)。以下の通り、規定されています。

(a) 中小小売商業振興法11条1項

1 連鎖化事業であって、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの(以下「特定連鎖化事業」という。)を行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。

一 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項

二 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項

三 経営の指導に関する事項

四 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項

五 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項

六 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項

(b) 中小小売商業振興法12条1項2項)

1 主務大臣は、特定連鎖化事業を行なう者が11条1項の規定に従っていないと認めるときは、その者に対し、同項の規定に従うべきことを勧告することができる(中小小売商業振興法12条1項)。

2 主務大臣は、前項の規定による勧告をした場合において、特定連鎖化事業を行なう者がその勧告に従っていないと認めるときは、その旨を公表することができる(中小小売商業振興法12条2項)。

(2) 独禁法

 フランチャイズ・システムでは、本部と加盟者は、あたかも通常の企業における本店と支店のような外観を呈していますが、両者は法律的には独立した事業者であり、本部と加盟者間の取引関係については独占禁止法が適用されます。独禁法に規定されている不正な取引方法を行った場合は、課徴金の対象となるほか、被害者に対する損害賠償の責任を負います。

1 優越的地位の濫用

  1. 独禁法2条9項5号

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

  1. 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
  2. 継続して取引する相手方に対して自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
  3. 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
  4. 該当する又は該当しうる行為の例

本部による加盟者に対する取引先の制限、仕入れ数量の強制、見切り販売の制限、営業時間の短縮にかかる協議拒絶、フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更などが該当します。

2 拘束条件付取引

  1. 独禁法2条9項6号

独禁法2条9項1号から5号において「不公正な取引方法」と定めているもののほか、次のいずれかに該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

  1. 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
  2. 不当な対価をもつて取引すること。
  3. 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
  4. 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
  5. 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
  6. 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。
  7. 不公平な取引方法12項

(拘束条件付取引)

独禁法2条9項4号(再販価格の拘束・次項参照)又は不公平な取引方法11項(排他条件付取引)に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。

※ 11項 (排他条件付取引) 不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。

(c) 該当する又は該当しうる行為の例

フランチャイズ契約に基づく営業のノウハウの供与に併せて、本部が、加盟者に対し、自己や自己の指定する事業者から商品、原材料等の供給を受けさせるようにすることが該当する場合があります。

3 再販価格の拘束

  1. 独禁法2条9項4号

自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。

  1. 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
  2. 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
  3. 該当する又は該当しうる行為の例

本部が加盟者に商品を供給している場合、加盟者の販売価格(再販売価格)を拘束すること等が該当します。

4 不当な取引拒絶

  1. 独禁法2条9項1号

正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。

  1. ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
  2. 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
  3. 不公平な取引方法1項・2項

(共同の取引拒絶)

正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。

一 ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

二 他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。

(その他の取引拒絶)

不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。

5 ぎまん的顧客誘引

  1. 不公正な取引方法8項

(ぎまん的顧客誘引)

自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。

  1. 該当する又は該当しうる行為の例

加盟者に対する事業活動上の指導や費用負担に関する事項、加盟後のロイヤルティに関する事項、契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項、その他重要な事項について、十分な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行い、これらにより、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、ぎまん的顧客誘引に該当します。

2.タイ

(1) フランチャイズガイドライン

タイでは、フランチャイズ事業における不公正な取引方法の検討に関するガイドライン(The Trade Competition Commission Notice on Guidelines for the Assessment of Unfair Trade Practices in Franchising B.E. 2562 (2019))が2020年2月4日に発効されています。本ガイドラインは、フランチャイズを許諾するフランチャイザーが、フランチャイズ加盟者(フランチャイジー)に損害を与える可能性のある、過度に制限的で不公正な契約条件が採用されることを防ぐことを目的としています。本ガイドラインは、取引競争法(Trade Competition Act B.E. 2560)に基づき設置されている取引競争委員会により発効されています。

(2) フランチャイザーの義務

 本ガイドラインは、フランチャイザーに以下の2つの主な義務を課しています。

  1. フランチャイズに関する重要情報の開示義務(本ガイドライン第3条)

フランチャイズ契約を締結する前に、フランチャイザーはフランチャイジーに対して、フランチャイズ・システムの性質及び運営に関する重要な関連情報を開示しなければなりません。

例えば、(a)フランチャイズ事業の運営に関連するロイヤリティおよびその他の費用、(b)フランチャイズの事業計画、(c)関連する知的財産権、(d)フランチャイズ契約の更新および終了に関する事項などです。

    2. 近隣のフランチャイジーへの通知および優先権の提供義務(同第4条)

フランチャイザーが、フランチャイジーの営業地域の近隣に新たな店舗を開設しようとする場合、フランチャイザーはまず、その近隣地域のフランチャイジーに新店舗開設に関して通知を行い、当該店舗の経営権を優先的に提案することが求められます。

(3) 不公正取引に関するガイドライン(同第5条)

また、本ガイドラインでは、取引競争法第57条の不公正取引に該当するかどうかの評価に関するガイドラインとして、フランチャイザーがフランチャイジーに損害を与える可能性のある以下の行為を挙げています。

  1. フランチャイジーに対して、正当な理由なく、以下のような制限的な条件を設定すること。
  2. フランチャイズ契約で指定された製品/サービスとは無関係の製品/サービスを、フランチャイザーまたはフランチャイザーが指定した者からのみ購入することをフランチャイジーに要求すること。
  3. フランチャイジーに対して、実際のフランチャイジーの事業に必要な量を超える製品または原材料を購入することを要求し、それら過剰な量の製品または原材料の返品を禁止すること。
  4. フランチャイズ契約が締結された後に、フランチャイジーに他の製品やサービスの購入、フランチャイズ契約に明記されている以上の行為を行うことを要求するなど、フランチャイジーが遵守すべき追加条件を課すこと。ただし、合理的なビジネス上の理由がある場合、またはフランチャイズの評判、品質、水準を維持する目的がある場合はこの限りではなく、これらの追加条件は書面で作成されるものとする。
  5. フランチャイジーが、正当な理由なく、同等の品質でより低価格の商品を提供する他の事業者から商品を購入することを制限すること。
  6. 正当な理由なく、フランチャイジーが生鮮品や賞味期限切れ間近の商品を値引きすることを制限すること。
  7. 正当な理由なく、フランチャイジー間で差別的な条件を課し、取引上の不当な差別を引き起こすこと。
  8. フランチャイザーの評判、品質、水準を維持する以外の目的で、不当な条件を課すこと。

3.マレーシア

(1) フランチャイズ法

フランチャイズ契約とは、対価の支払いを条件として、フランチャイザーが確立したフランチャイズシステム及びフランチャイザーの商標、知見、知的財産権等を利用して事業を運営する権利(以下「フランチャイズ」といいます)をフランチャイジーに与える契約をいいます。フランチャイズの形態による進出については、フランチャイズ法(Franchise Act 1998)による規制があります。以下、フランチャイズ法の規制を紹介いたします。

(2) 登録

外国企業がマレーシア国内で又はマレーシア国民に対してフランチャイズの販売を行う場合、フランチャイズ登録局に対し登録申請を行い、承認を得なければなりません。

この登録の申請には、以下の書面を添付する必要があります。

  1. レター・オブ・インテント(Letter of Intent)
  2. 会社の設立証明書(認証付き写し)
  3. 商標の登録証明書(認証付き写し)
  4. 会社のパンフレット
  5. 事業所の写真

同申請に対し、フランチャイズ登録官は理由を示すことなく登録を承認又は拒否することができます。また、外国企業のフランチャイジーも、そのフランチャイズ事業の登録申請をし、承認を得なければなりません。

(3) 契約内容の規制

フランチャイズ法は、フランチャイズ契約書の記載事項について詳細な規定を置いています(対象商品・事業、地域、ロイヤリティその他の報酬、契約期間及び更新等)。

フランチャイズ契約の契約期間は5年以上とされており、正当な理由がある場合を除き解約はできません。また、同法はフランチャイジーの更新請求権やフランチャイザーが更新を拒絶する場合の補償についても定めています。

(4) 年次報告書の提出

フランチャイザーは、フランチャイズ事業の各会計年度の年度末から6カ月以内に、所定の形式でフランチャイズ登録官に報告書を提出する必要があります。

(5) 2020年フランチャイズ改正法

 2020年3月6日に2020年フランチャイズ改正法(Franchise (Amendment) Act 2020)が公布されました。以下で、改正法の中でも重要な規制を紹介いたします。

1 外国人フランチャイザーの登録

 現行法6条は、フランチャイザーは、そのフランチャイズ事業の運営・販売申出に先立ち、フランチャイズの登録を行わなければならないものとしており、同現行法54条は、マレーシア国内で又はマレーシア国民にフランチャイズを販売しようとする外国籍の者(以下「外国人フランチャイザー」という。)は、あらかじめフランチャイズ登録局に申請をし、承認を得なければならない旨を定めています。

 外国人フランチャイザーが同法54条に基づく承認の取得のほかに同法6条に基づく登録をする必要があるか否かについては現行法上不明確であり、運用上登録は不要とされてきましたが、改正法は6条を改め外国人フランチャイザーについても6条に基づく登録が必要である旨を明示しました。そのため、改正法施行後は、外国人フランチャイザーは同法54条に基づく承認の取得のほか、同法6条に基づく登録を行う必要があります。

2 登録期間及び更新

 現行法は、フランチャイズ登録局による取消等が行われない限り、フランチャイズの登録は存続するものと定めています。これに対して、改正法は、登録は規則で定められた期間のみ有効とし、登録の継続を希望する者は有効期間の満了日から30日以内に更新の申請をしなければならない旨を定めています。

3 登録証の掲示

また、改正法は、フランチャイザー、フランチャイジー、フランチャイズブローカー、フランチャイズコンサルタントは、事業所の見えやすい場所に登録証を掲示しなければならない旨を定めています。

4.ミャンマー

ミャンマーでは、フランチャイズに対する外資規制はなく、通常の会社設立手続きで事業が可能です。但し、小売業については外資規制があるため、内国資本の会社との間でフランチャイズ契約を締結してミャンマー国内で展開する外国会社が存在します。

5.メキシコ

(1) フランチャイズに対する法的規制

メキシコにはフランチャイズビジネスに対する外資規制は存在しません。そのため、メキシコ人またはメキシコ法人とフランチャイズ契約を締結する、メキシコに現地子会社を設立のうえフランチャイズ契約を締結するといったいずれの方法も採りえます。ただし、後者の場合において、事業自体が外国投資法(Ley de Inversión Extranjera)上規制を受ける場合には、当該子会社は外国投資法上の許可を要します。

 フランチャイズの内容は、連邦産業財産保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial、以下「法」といいます。)やその規則において規制をうけますので、以下でその内容を説明します。

(2) 情報開示

フランチャイザーは、契約締結の少なくとも30日前に、フランチャイジーに対し、自らの会社の状況に関する情報を提供しなければならないとされています。

提供しなければならない情報とは、(i)フランチャイザーの氏名、名称、会社名、住所、国籍、(ii)フランチャイズの説明、(iii)フランチャイザーおよび該当する場合にはマスターフランチャイザーの企業年齢、(iv)フランチャイズに関わる知的財産権、(v)フランチャイジーがフランチャイザーに支払わなければならない金額とその費目、(vi)フランチャイザーがフランチャイジーに提供しなければならない技術援助およびサービスの種類、(vii)フランチャイズを展開する営業地域の定義、(viii)フランチャイジーが第三者にサブフランチャイズを付与する権利、または付与しない権利、および該当する場合には、付与するために満たすべき要件、(ix)フランチャイザーから提供された機密情報に関するフランチャイジーの義務、(x)フランチャイズ契約の締結から派生するフランチャイジーの義務と権利全般です。

これらの情報に真実性がない場合、フランチャイジーは、(i)契約の無効を要求するほか、(ii)適切な情報開示を怠ったことによって生じた損害の支払いを要求することができます。フランチャージ―は、(ii)の損害賠償請求の権利を、契約締結から1年間行使することができます。この期間が経過した後は、フランチャイジーは(i)契約の無効を要求する権利しかありません。

(3) フランチャイズ契約に記載が要求される事項

フランチャイズ契約は書面で行われることが要求されます。法に規定される最低限の記載事項は、以下の通りです。

(i)フランチャイジーが活動を行う地域、(ii)フランチャイジーが契約の目的から派生した活動を行う施設に関する最小規模および特性、ならびにその場所、(iii)在庫管理、マーケティングおよび広告に関する方針、ならびに該当する場合には商品の供給およびサプライヤーとの契約に関する規定、(iv)返済、融資、その他の考慮事項に関する方針、手続、条件、(v)フランチャイジーの利益率または手数料の決定に適用される基準および方法、(vi)フランチャイジーの従業員に対する技術および業務上の研修の特徴、ならびにフランチャイザーが技術支援を行う方法または形態、(vii)フランチャイザーおよびフランチャイジーが担当するサービスの品質、パフォーマンスの監督、報告、評価に関する基準、方法および手順、(viii)当事者が合意した場合のサブフランチャイズに関する条件、(ix)フランチャイズ契約の解除となる事由、(x)フランチャイズ契約に関連する条件を修正し、該当する場合には相互の合意により修正することができる旨。

(4) フランチャイジーの義務

フランチャイジーの義務は、個々のフランチャイズ契約で設定することができます。ただし、法は、契約期間中及び契約期間後も、フランチャイジーに当該フランチャイズ事業に関連し知り得た情報や業務内容などについて秘密保持義務を課しています。

(5) フランチャイザーの権利

フランチャイザーは、契約で定められた内容に従って、管理基準およびフランチャイズイメージを守ることを保証する目的を以てのみ、フランチャイジーの組織および運営に干渉することができます。

フランチャイジーの合併、会社分割、組織変更、定款の変更、会社の持分または株式の譲渡、または担保の設定については、フランチャイズ契約を決定づける要因としてフランチャイジーの特性を変更する場合でも、契約で規定されていない限り、フランチャイザーはいかなる干渉もしないものとされています。

(6) 解約

フランチャイザーとフランチャイジーは、契約が無期限で合意されている場合や、正当な理由がある場合を除き、一方的に契約を解除または取り消すことはできません。フランチャイジーまたはフランチャイザーが契約期間満了前に契約を解除するためには、契約で合意された事由と手続きによる必要があります。

これに違反するフランチャイザーまたはフランチャイジーによる中途解約は、契約で合意された従来の違約金を支払うか、またはそれに代えて、生じた損害および不利益に対する補償を行うものとされています。

(7) 商標権

フランチャイズビジネスを展開するにあたっては、商標登録が重要です。フランチャイザーは、フランチャイジーに対し独自の経営ノウハウや商品を提供しビジネスを許諾することにより対価を得ますので、ブランド力の向上や独占的販売の効果を生むためには、関連する商標をメキシコ国内で登録することが必要となってきます(商標出願については、TNY Group Newsletter No.6を参照)。更に、フランチャイジーが当該商標を用いるにあたっては、メキシコ産業財産庁(IMPI)に対しその使用許諾を登録する必要があります。フランチャイズの商標使用許諾の登録申請書には、フランチャイズに係る契約書の原本または公証人により公証された写しを添付しなければなりません。なお、フランチャイジーが支払うロイヤルティ、秘密情報や商品やサービス、技術情報を含む部分は省略することができます。この登録申請は、フランチャイズに関わるいずれの当事者も提出することができます。

6.バングラデシュ

バングラデシュでは、フランチャイズに対する外資規制はなく、通常の会社設立手続きで事業が可能です。外資系の飲食店は、ケンタッキー・フライド・チキンやバーガーキングなど、小売店では、フットウェアのBATAや雑貨販売のMINISO(中国)などが進出しています。バングラデシュの2018-2019年度のGDP成長率は8.19%で他の南アジア諸国と比較しても高く、COVID-19感染拡大の影響により、2020年はGDPが減少したものの、2020-2021年度の一人当たりの収入は2,227ドルで、成長率は9%であり、回復傾向がみられます。バングラデシュの人口は1億6,500万人を超え、そのうち富裕層および中間層の数は平均で年10.5%増加しており、消費市場としての拡大も期待できます。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループおよびTNYグループ各社】

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・佐賀(TNY国際法律事務所)
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・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

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・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

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・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

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