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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに労務における休日・休暇の法制度」 TNY Group Newsletter No.18

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

27の都道府県に実施されていた緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置は、9月30日にすべて解除されることが発表されました。解除後も1カ月をめどに飲食店の営業時間短縮要請やイベントなど一定の制限を設け、対策の緩和は段階的に行うとされています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 検疫の強化

1 検査証明書の提示

海外から日本への全ての入国者は、国籍を問わず、検疫所へ「出国前72時間以内の検査証明書」の提出が必要です。有効な検体、検査方法等が記載された検査証明書のみ有効と取り扱われるため、事前に満たすべき要件を十分に確認する必要があります。

2 誓約書の提出

検疫所へ「誓約書」の提出が必要です。14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の保存、接触確認アプリの導入等について誓約することになります。また、誓約に違反した場合は、検疫法に基づく停留措置の対象となり得るほか、(a)日本人については、氏名や、感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、(b)在留資格保持者については、氏名、国籍や感染拡大防止に資する情報が公開され得ること、また、在留資格取消手続及び退去強制手続等の対象となり得ることがあります。

3 スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用

誓約書の誓約事項を実施するため、位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。検疫手続きの際に、必要なアプリを利用できるスマートフォンの所持を確認できない場合は、入国前に、空港内でスマートフォンを自己負担でレンタルしなければなりません。

4 質問票の提出

 入国後14日間の健康フォローアップのため、検疫時にメールアドレス、電話番号等の連絡の確認があります。

5 ワクチン接種証明書の「写し」の提出

 入国時・帰国時の検疫で、有効なワクチン接種証明書の「写し」を提出する場合、検疫所が確保する宿泊施設での3日間の待機の免除や、入国後14日間の待機期間の一部が短縮されます(ワクチン接種証明書の「写し」の提出について(厚生労働省))

6 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策措置

検疫措置として、「水際対策上特に対応すべき変異株等に対する指定国・地域」及び「水際対策上特に対応すべき変異株以外の新型コロナウイルスに対する指定国・地域」からの入国者は、検疫所長の指定する場所での3日間又は6日間の待機が求められます。本Newsletterでご紹介する国のうち対象国は、フィリピン(6日間待機)、マレーシア及びバングラデシュ(ともに3日間待機)です(対象の国又は地域については、新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について(外務省HP)に詳細)。

(2) 上陸の拒否

日本上陸前14日以内に上陸拒否の対象国・地域に滞在歴がある外国人は、当分の間、「特段の事情」がない限り、上陸を拒否されます。ただし、上陸拒否対象地域でない地域から、上陸拒否対象地域を給油や乗り継ぎ目的で経由(経由地で入国する場合は除く)した後に日本に到着する場合は、上陸拒否対象地域での滞在歴があるとはみなされません。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について(出入国在留管理庁HP)

水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省HP)

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

タイのCOVID-19の累計感染者数は1,591,829名です。この内、1,459,786名が回復し、累計死亡者数は16,620名となっています。また、非常事態宣言は、11月30日まで延長されています。

タイ政府は、9月27日、規制を緩和する措置を発表しており、ダークレッド・ゾーンについて、10月1日より、外出禁止措置の開始時間を、午後9時から午後10時へ変更し、午後10時から翌朝午前4時まで外出禁止とするとしています。そして、スーパーやデパート、ショッピングモール、コンビニエンスストアなど、午後9時まで営業可能としています。

また、以下の各施設について、緩和措置が発表されています。

常にマスクを着用し、4平方メートルあたり1人、定員の75%以下など、限られた人数での利用可。食事禁止。

事前予約で利用可能。

事前予約で利用可能。ワクチン接種証明か、72時間以内のPCR検査結果が必要。

事前予約にて2時間以内の利用に限る。ワクチン接種証明か、72時間以内のPCR検査結果が必要。

常にマスクを着用し、少なくとも1メートルの距離を置くか、定員の50%以下など、限られた人数での利用可。食事禁止。21時までの営業可。

演奏者は3人以下。演奏家は常にマスクを着用。歌手は歌う時のみ、マスクを外すことが可能。

2.2 入国規制

 タイ政府は、9月27日、タイへの入国者の隔離措置について、10月1日から、ワクチン接種証明書を条件として14日間から7日間に短縮する方針を決定しました。また、ワクチン未接種者で空路での入国者については、10日間に短縮するとされています。陸路での入国の場合は、14日間の隔離措置とされています。また、隔離期間中に2回のPCR検査が義務付けられます。

この入国規制の変更については、随時最新の情報を確認する必要がありますので、在東京タイ王国大使館又は、在タイ日本大使館のHPをご参照下さい。

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連の規制状況

 9月27日の新規感染者数は、10,959人であり、ピーク時の6割ほどに落ち着いています。現在マレーシア国内で施行されているFMCO(完全ロックダウン)は、第一段階から第四段階まで設定され、新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を緩和する仕組みとなっています。現在、第一段階はケダ州のみであり、ペラ州、クランタン州、ペナン州、サバ州(南部エリアを除く)、マラッカ州、スランゴール州、クアラルンプール州、プトラジャヤ州、ジョホール州が第二段階、ペルリス州、サラワク州、トレガンヌ州、パハン州が第三段階、ラブアン、ヌグリ・スンビラン州が第四段階となっております。

 この段階的な規制は、第二段階において出勤率最大80%を上限に経済活動を段階的に許可し、第三段階において出勤率最大80%を上限に全ての産業の稼働、議会開会、教育・社会・スポーツ活動を段階的に許可し、第四段階において全ての産業の稼働、州間移動が許可するとしています。

 第二段階の規制では、生活必需品のための外出は、一世帯から2名までと制限がありますが、ワクチン接種完了者については、地区間移動も許可されています。また、ワクチン接種完了者は、店内飲食も許可されています。

3.2 入国規制

 外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。

  1. MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
  2. 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
  3. 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
  4. 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
  5. 永住者の入国

 すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。入国後は、14日間の強制隔離期間があり、14日目のリスク評価の結果によっては、必要に応じて7日間延長される可能性があります。もっとも、ワクチン接種完了等の一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19及びクーデターの規制状況

COVID-19 の陽性者数は1日あたり2,000人以下、陽性率は約8%と落ち着きを見せています。感染予防のための祝日も9月10日で終了したことから、政府機関も動き出しており、ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらない状況に戻ってきています。

4.2 入国規制

9月は 10日及び 24 日の ANA便が飛びました。10月は 8日、15日、22日、29日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっています。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。またミャンマー入国後のホテル隔離について、これまで隔離日数は 10 日でしたが、今後 11 日に変更になりました。(ヤンゴン保健当局から各ホテルに、到着日の翌日を1日目とカウントし、隔離先ホテルのチェックアウト日は 11 日目であるとの通知が出されたためです)

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

COVID-19感染者数の増加は落ち着きを見せ始め、メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、9月6日の更新で、赤の州が0州になりました。9月20日の更新では黄色の州が24州となるなど、改善を見せています。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、マスクの着用や不要不急の外出の自粛、商業施設等に対する収容人数の制限などの要請、規制が行われています。

5.2 入国規制

メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていませんが、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われており、10月21日までの延長が決定されました。本制限は、空路や海路(ただし、フェリーでの移動を除く)での移動については適用しないとされています。また、3月19日から実施されているメキシコ政府によるグアテマラ及びベリーズ国境における陸路での不要不急の移動制限についてついては、6月21日以降その延長は発表されていないものの、在メキシコ日本大使館によると、解除の通知が為されていないことからこれまでと同様の制限が継続されると考えられるとのことです。空路による出入国には制限がなく、各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。

6.2 入国規制

 バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染拡大の予防措置としての渡航や入国規制(8月16日付)が、継続されています。なお、詳細については、こちらをご参照ください。

  1. グループAに属する国(モンゴルやマレーシアなどの計11か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了していない者の入国は、基本的に認められない。
  2. グループBに属する国(英国やタイなどの計16か国)からの渡航者で、出発の14日前までにCOVID19ワクチンの接種が完了している者は、自宅での14日間の隔離、ワクチン接種が完了していない者は、政府指定施設で自己負担による14日間の施設隔離が必要である。また、出発地の空港チェックインカウンターでは、ホテルの予約証明書を提示する必要がある。グループBの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  3. グループCに属する国(日本を含む、グループA・B以外の国)へのバングラデシュからの出国、グループCの国からのバングラデシュ入国は認められる。ただし、入国者は、14日間の厳格な自宅隔離を行う必要がある。到着時に新型コロナウイルスの症状が確認された場合は、政府指定施設での更なる検査や、施設隔離が必要になる。グループCの国からの乗客は、乗り継ぎの際に空港内に留まることを条件に、グループAやBの国を経由してバングラデシュに入国することができる。
  4. 10歳未満の子供を除く全ての入国者・出国者は、出発72時間以内に実施された新型コロナウイルスのPCR検査に基づく陰性証明書を持参する必要がある。なお、トランジット先によっては「出発48時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明」の提示を求めている国もありますので、注意が必要です。

その他、バングラデシュ‐インド間のエアバブル(二国間の商用旅客便の再開を目的とした取り決め)フライトが9月5日に再開しました。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

フィリピンのCOVID-19感染者は累計2,552,965人で、死者数は累計37,686人です。新規感染者は9月初旬をピークにやや減少傾向がみられるものの、依然として高い数値です。フィリピン政府はコミュニティ隔離措置として、地域ごとに、移動の制限や飲食店の営業制限等を課しています。マニラについては、「NCRにおけるCOVID-19対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。

7.2 入国規制

(1) 入国が認められる区分及び条件

1 外交官と外国政府職員、その家族

2 フィリピン国籍を有する重国籍者

(a) 有効なフィリピン政府発行のパスポート

(b) フィリピン国籍者であることの身分証明書(IC)

(c) フィリピン国籍者認定証明書(RC)、もしくは、2003年(共和国法9225)による国籍維持・再取得証明書(CRPC)

3 入国時に有効かつ現存するビザを保有する外国籍者(9aビザを除く。5、6を参照すること)

4 バリクバヤンプログラムによる入国が認められた外国籍者(行政令408号の査証免除国の国籍者であること)(元フィリピン国籍者と渡航する元フィリピン国籍者の配偶者とその子供(年齢不問)、フィリピン国籍者と渡航するフィリピン国籍者の配偶者とその子供(年齢不問))

5 フィリピン国籍者と渡航しないが、フィリピン入国後にフィリピン国籍者と一緒に滞在する予定の外国籍者(フィリピン国籍者の外国人配偶者、フィリピン国籍者の外国籍の子供(未成年)、フィリピン国籍者の介助等が必要な外国籍の子供(年齢問わず)、介助等を必要とするフィリピン国籍者(年齢問わず)の外国籍の親)

6 有効かつ現存する9(A)ビザ保有者(上記5番に記載の者を除く)

※ 到着時にフィリピン入国管理局に入国免除文書を提示することが条件。

注意:入国免除文書は、関連するフィリピン官庁(NGA)や機関より推薦を受けた上で、フィリピン外務省(DFA)より発行されます。

(2) 入国が許可されない場合

新型コロナウィルス感染症に関する省庁間タスクフォース(IATF-EID)第136号に従い、ワクチンの接種状況に関わらず、レッドリストに分類された国(現時点で日本は含まれていません)から出発した全ての外国籍のフィリピン入国を禁止されています。入国禁止が免除されるのは、ビザ発給国政府が実施する送還、民間による送還、バヤニハンフライトで帰国するフィリピン国籍者です。

ワクチン接種の状況に関わらず、日本からフィリピンへの渡航者は、14日間の強制隔離が求められ、検査結果が陰性であれば、11日目から14日目まで自宅または宿泊施設にて隔離措置を継続することができます。

第2.各国の労務における休日・休暇の法制度

1.日本

(1) 休日

1 休日とは

休日とは、労働義務のない日として、使用者が労働者全体に付与するものです。労働基準法(以下「労基法」)では、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日か、4週間を通じて4日以上の休日(変形週休制)を与えなければならないと定めており(労基法第35条)、それを法定休日と呼びます。変形週休制を採用する場合は、就業規則その他において、4日以上の休日を与えることとする4週間の起算日を明らかにする必要があります(労基法施行規則第12条の2第2項)。休日の曜日は定められていません。また、法定休日以外に、会社が任意で与えている休日を所定休日と呼びます。週休2日制の会社の場合いずれか1日、(法定休日と重複する日を除く)会社の創立記念日やお盆や年末年始の休業日は、所定休日です。

2 法定休日に労働させること(休日労働)の要件

労働者を法定休日に労働させることができる要件として、以下が定められています。

(a) 労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ること(労基法第36条第1項))

「使用者」と「事業場の労働者の過半数を組織する労働組合」又は「労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」との間で書面による協定をし、労働基準監督署に届け出ること。

(b) 割増賃金を支払うこと

法定休日に勤務した場合は、通常の賃金の1.35倍以上の割増賃金を支払う必要があります(労基法第37条第1項、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。なお、法定休日に深夜労働となる午後10時から午前5時までの間において労働させた場合は、割増賃金が加算されます。

3 所定休日に労働させる場合

所定休日の労働は「休日労働」に該当しないため、割増賃金を支払う必要はありませんが、法定労働時間(1日8時間又は週40時間)を超えた分について、通常の賃金の1.25倍以上の割増賃金を支払う必要があります(労基法第37条第1項、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。所定休日を含む法定時間外労働が月60時間を超えた場合は、割増率は1.5倍以上です(ただし、一定の要件を満たした中小企業は、2023年3月末までは最低の割増率は1.25倍です(労働基準法附則第138条))。所定休日に深夜労働となる午後10時から午前5時までの間において労働させた場合も、割増賃金は加算されます。

4 振替休日・代休

 法定休日に出勤する代わりに、別の出勤日をあらかじめ振替休日に設定する場合、休日労働の割増賃金は発生しません。一方、あらかじめ振替休日を設定せずに、法定休日に出勤した場合は、休日労働として割増賃金が発生します。休日労働の前に振替休日を設定するか、後に代休を設定するかで、割増賃金の扱いが異なりますので、注意が必要です。

(2) 休暇

1 休暇とは

 使用者が労働者に対して、労働義務を免除する期間をいい、法定休暇(法律上定めがある)と特別休暇に分類されます。法定休暇として、年次有給休暇(労基法第39条)、産前産後の休業(労基法第65条)、生理日の休暇(労基法第68条)、育児・介護休業(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育児・介護休業法」)、子の看護休暇(育児・介護休業法)、介護休暇(育児・介護休業法)が定められています。特別休暇としては、夏季休暇や慶弔休暇、年末年始休暇等が挙げられます。なお、産休・育休の詳細につきましては、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

2 年次有給休暇

使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません(労基法第39条第1項)。さらに勤続年数が増えていくと、8割以上の出勤の条件を満たしている限り、20日を上限とし、1年ごとに取れる休暇日数は増えていきます(労基法第39条第2項)。また、本Newsletterの冒頭に記載の通り、2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました(労基法第39条第7項)。

 有給休暇は、原則として、利用目的を問わず、取得することができますが、会社の正常な運営を妨げるときに限っては、別の時期に休暇日を変更させることができます(労基法第39条第5項)。また、使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはなりません(労働基準法附則第136条)。

 なお、年次有給休暇は、発生の日から2年間で時効により消滅します(労働基準法第115条)。有給休暇は労働者を休ませることを目的としているため、会社が有給休暇の買い取りをすることは原則として認められませんが、転職等を理由に退職する労働者が退職時点で消化していない有給休暇や、2年が経過して時効消滅した有給休暇の買い取りなど、労働者の不利益にならない場合は、例外的に認められることがあります。なお、会社には有給休暇の買い取り義務はありません。

 パートタイム労働者(短時間労働者)でも、(a) 6か月間の継続勤務、(b) 全労働日の8割以上の出勤、という要件を満たせば、週の所定労働時間や所定労働日数に応じた日数の有給休暇が付与されることになります。

3 産前産後の休業

 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者を就業させることはできず(労基法第65条第1項)、また、産後8週間を経過しない女性を就業させることはできないと定められています(ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合で、その者について、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは可能)(労基法第65条第2項)。

4 生理日の休暇

使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならないと規定されています(労基法第68条)。

5 育児・介護休業

労働者は、その養育する1歳に満たない子について、事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができます。有期契約労働者については、雇用期間など一定の要件が定められています(育児・介護休業法第5条第1項)。育児休業の期間は、子が1歳に達するまでの間で本人が申し出た期間ですが、期間の延長や特例(パパ・ママ育休プラス)が定められています。育児休業期間中の賃金の支払い義務はありません。

また、労働者は、事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができます。有期契約労働者については、雇用期間など一定の要件が定められています(育児・介護休業法第11条第1項)。利用期間は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業することができます。介護休業期間中の賃金の支払い義務はありません。

なお、令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日から段階的に施行されます。主な改正点は以下の通りですが、適宜、省令を確認し、必要に応じて法律事務所へ相談するなどして、就業規則等の見直しや、必要に応じて改正が必要です。

  1. 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
  2. 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
  3. 育児休業の分割取得
  4. 育児休業の取得の状況の公表の義務付け
  5. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

6 子の看護休暇

 小学校就学前の子を養育する労働者が、病気やケガをした子の世話のほか、予防接種や健康診断の受診のために取得できる休暇で、1年度につき5日(小学校就学前の子供が2人以上の場合は10日)の休暇取得が認められており(育児・介護休業法第16条の2第1項)、使用者は、労働者から子の看護休暇の申し出があったときは、その申し出を拒むことはできません(育児・介護休業法第16条の3第1項)。

7 介護休暇

 要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者が、通院の付き添いや介護保険に関する手続き等のために取得することができる休暇で、1年度につき5日(対象家族が2人以上の場合は10日)の休暇取得が認められています(育児・介護休業法第16条の5)。なお、「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態を意味します(育児・介護休業法第2条第3号)。使用者は、労働者から介護休暇の申し出があったときは、その申し出を拒むことはできません(育児・介護休業法第16条の6第1項)。

 

2.タイ

 タイにおいては、労働者保護法(Labour Protection Act B.E.2541 以下、「法」といいます)にて、休日・休暇に関する定めがなされています。

(1) 休日

法上、週休日、祝日及び年次休暇日が、休日と定められています。

  1. 週休日

週休日は、原則として1週間に1日以上付与する必要があります。また、週休日と次の週休日との間隔は、6日以内である必要があります。

     2. 祝日

祝日は、国民労働者の日(5月1日)を含め、年間13日以上を定め、事前に従業員に対して周知する必要があります。祝日と週休日が重複した場合、その翌労働日に、祝日の振替休日を付与する必要があります。

     3. 年次休暇日

年次休暇は、満1年以上継続して勤務した労働者に対して、年間6労働日以上を付与する必要があります。法上、会社と従業員は、その年に使用しなかった年次休暇を翌年に繰越すことについて事前に合意することができると定められていますが、未使用の年次休暇の繰越し、買取りについては会社の義務とはなっていません。

     4. 休日労働

会社は、業務の内容又は性質上、継続して作業を行う必要があり、作業を中断すると損害が生じる可能性がある場合、又は緊急の作業である場合を除き、従業員に休日労働をさせてはならないとされています(ホテル業、運送業、飲食業、医療機関、その他省令で定められた事業においては休日に労働させることは可能とされています)。ただし、 時間外・休日労働の合計時間は、週 36時間を超えてはならないとされています。

    5. 休日労働手当

休日に賃金を受領する権利を有する従業員に、休日労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の1倍以上の休日労働手当を支払う必要があります。

休日に賃金を受領する権利を有しない従業員に、休日労働をさせた場合には、労働日の時間当たりの賃金の2倍以上の休日労働手当を支払う必要があります。

    6. 休日時間外労働手当

休日の労働時間外に、従業員に休日時間外労働をさせた場合、会社は従業員に対して、労働日の時間当たりの賃金の3倍以上の休日時間外労働手当を支払う必要があります。

(2) 休暇

 法上、従業員は以下の各休暇を取得することができると定められています。法に定めのない休暇日を会社が独自に設定することもでき、出家休暇等を定める会社もみられます。

  1. 病気休暇

従業員は、病気である場合には、病気休暇を取得することができます。しかし、3労働日以上連続で病気休暇を取得する場合には、会社は従業員に対して、第1級医師免許を有する医師又は公立病院による診断書の提出を求めることができます。会社は、年間30日までは、病気休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。

    2. 不妊手術休暇

従業員は、第1級医師免許を有する医師が定める期間について、不妊手術のための休暇を取得することができます。会社は、当該期間に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。

    3. 用事休暇

従業員は、就業規則に基づき、年間3日以上、必要な用事のための用事休暇を取得することができます。会社は、年間3日までは、用事休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。従前は、用事休暇の日数について、法上定められていませんでしたが、2019年の法改正により、年間3日以上の取得が認められました。

    4. 兵役休暇

従業員は、兵役に関する法律に基づく、検査、軍事訓練又は招集のために、兵役休暇を取得することができます。会社は、年間60日までは、兵役休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。

    5. 研修休暇

従業員は、労働省令で定める規則、手続きに基づき、研修又は技能開発のための、研修休暇を取得することができます。この休暇に対して、会社は労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う義務はありません。

    6. 出産休暇

従業員は、1回の出産につき、98日まで(休暇期間中の休日も含む)出産休暇を取得することができます(同法改正により、従前の90日から98日まで延長されました)。この出産休暇には、出産前の検査のための休暇も含まれます。会社は、年間45日までは、出産休暇に対して労働日の賃金と同額の賃金を従業員に支払う必要があります。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

 

3.マレーシア

(1) 休日

マレーシアの雇用法(Employment Act 1955)は、使用者は労働者に週に1日の休日を与えなければならないと規定しています(雇用法59条1項)。そして、使用者は、原則として休日における勤務を労働者に強いることはできませんが、一定の場合(時間外労働を認める場合と同様の場合等)には例外が認められます(雇用法60条1項)。

 使用者が労働者を休日に労働させた場合には、休日割増手当を支払わなければなりません。具体的には、月給制により雇用されている労働者の場合、休日における労働時間が「所定労働時間」の半分以下であれば賃金の半日分、労働時間が「所定労働時間」の半分を超えて1日以下の場合は通常の賃金の1日分、労働時間が「所定労働時間」を上回る場合には通常の時間給の2倍以上の時給額で計算された金額を支払う必要があります(雇用法60条3項)。

(2) 祝日

労働者は、雇用法に基づき、1 公示された祝日のうち11日、及び2 祝日法(Holidays Act 1951)に基づいて指定される祝日について、有給休暇を取得する権利を有します(雇用法60D条1項)。1については、国家記念日・国王誕生日・州首長の誕生日(又は連邦直轄市デー)・メーデー・マレーシアデーの5日間が必ず含まれます(同項)。残りの6日については一次的には雇用者が指定しますが、雇用者と労働者の合意により他の日に置き換えることができます(同条1A項)。また、2についても、使用者は指定された祝日に代えて、別の日を休みとすることができます(同項)。

 使用者は労働者に対して祝日における勤務を求めることができますが、その場合には、有給休暇としての1日分の賃金の支払いに加え(実際の就業時間が「所定労働時間」下回る場合も含む)通常の賃金額の2日分を支払わなければならなりません(60D条3項)。また、その日の勤務時間が「所定労働時間」を超える場合、使用者は通常の時給額の3倍以上の時給額で計算した金額を支払わなければならなりません(同項)。

(3) 年次有給休暇

 労働者には、勤続年数が2年未満の場合は年8日、2年以上5年未満の場合は年12日、5年以上は年16日の年次有給休暇が与えられます(雇用法60E条1項)。また、労働者は、有給取得権を与えられた年又はそれに続く1年の間に有給休暇を取得しなければならず、当該期間内に有給休暇を取得しなかったときはその権利を喪失することとなります(雇用法60E条2項)。もっとも、労働者が会社の要請により有給休暇の取得権の全部又は一部を行使しない旨を書面により同意した場合は、労働者は会社から有給休暇に代わる手当の支払いを受けることができます(同項)。

 不正行為を理由とする解雇による場合を除き、雇用契約がいずれかの当事者からの申入れによって終了されたときは、使用者には労働者に対し未取得の有給休暇の日数に対応する賃金相当額を支払う義務が生じます(雇用法60E条3A項)。

(4) 病気休暇

 病気休暇は医師による診断を条件に付与される(雇用法60F条1項)もので、その日数は勤続年数が2年未満の場合には年14日、2年以上5年未満の場合は年18日、5年以上の場合は年22日まで取得が認められます(同項(b))。また、入院が必要な場合には、年60日まで取得が認められます(同項)。

 病気休暇は医師による診断を受けていることを条件とするものであるため、そもそも医師による診断を受けていない場合には無断欠勤とみなされます(雇用法60F条2項)。また、診断を受けていたとしても休暇の開始から48時間以内に使用者に連絡をせず、かつ、連絡をしようとしなかった場合も同様に扱われます(同項)。

(5) 出産休暇

雇用法は、前記の休日・休暇のほかに、女性労働者に対して60日間の出産休暇を取得する権利を付与しています(雇用法37条1項)。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

 

4.ミャンマー

ミャンマーでは、休暇及び休日法(Leave and Holidays Act)において休日・休暇について規定されています。

(1) 週休

使用者は、労働者に1週間に1日以上有給休暇を与えなければなりません(休暇及び休日法第3条(4))。

労働者が週休に労働した場合、当該労働者は祝日でない週休前後3日のうち1日を代休として付与されます。当該代休に関し、残業代は支払われません。また、労働者が連続して10日間を超えて労働することになる代替を行ってはいけません。

(2) 休暇

 休暇及び休日法では、法定休暇として、有給休暇、臨時休暇、医療休暇、出産休暇が定められています。

1 有給休暇

年間10日の有給休暇が認められており、有給休暇は、12カ月連続の業務期間を完了し、かつ各月20日以上働いた場合に付与されます。20日間働いていない月においては、月ごとに1日の有給休暇を失います(休暇及び休日法第4条(2))。

労働者が有給休暇を全て取得する前に、退職、解雇、死亡した場合、残存有給休暇日数に対して当該事由発生日直前の30日間の平均日給により計算した額を使用者は労働者に対して支払わなければなりません。当該支払いは、退職又は解雇の場合は2日以内に、死亡の場合には請求受領後できる限り早く支払わなければなりません(同法第4条(5)及び休暇及び休日規則第40条)。

2 臨時休暇

1年で合計6日間の有給の臨時休暇が認められていますが、臨時休暇1回あたりの取得期間は最大3日間となっています。臨時休暇は他の種類の休暇と合わせて取得することは認められておらず、また翌年に繰り越すことはできません(休暇及び休日法第5条)。

3 医療休暇

全ての労働者は、1年間に30日を超えない範囲で有給の医療休暇が認められています。社会保障の対象でなく、かつ、6か月の勤務を完了していない労働者は、無給の医療休暇を要求することができます(休暇及び休日法第6条(1))。医療休暇は翌年に繰り越すことはできません(同法第6条(4))。

4 産休

休暇及び休日法にて、産前6週間、産後8週間の有給での産休が認められており、産休は、医療休暇と合わせて取得することができます(休暇及び休日法第7 条(A))。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

 

5.メキシコ

メキシコでは、休日及び休暇は、連邦労働法上に規定されるため、以下、その内容を紹介します。なお妊娠した女性が取得できる産前産後各6週間の休暇については、TNY Group Newsletter No.10において解説していますので、そちらをご参照ください。

(1) 休日

労働者は、6日の勤務毎に、少なくとも1日の休日を享受できます。労働者と使用者は、合意により、週休日を定めなければならず、また、労働者は、この週休日に労務を提供する義務を負いません。この規定に違反した場合、使用者は労働者に対し、通常の賃金のほか、賃金の2倍の額の手当を支払わなければなりません。

なお、法定の週休日は日曜日と定められています。日曜日に勤務する労働者は、通常の労働日の給与に加え、少なくとも25%の追加割増賃金を受ける権利を有します。

 義務的な休日(いわゆる祝日)は、1月1日(新年)、2月の第1月曜日(憲法記念日)、3月の第3月曜日(ベニートフアレス生誕日)、5月1日(メーデー)、9月16日(独立記念日)、11月の第3月曜日(革命記念日)、大統領の任期の6年ごとの12月1日、12月25日(クリスマス)、連邦及び地方選挙の選挙投票日と定められています。義務的な休日には労働の義務がありません。しかし、労働者を働かせる必要がある場合には、労働者及び使用者は、その役務を提供する労働者の数を定めなければならないとされています。また、この日に働く労働者は、労務を提供する義務があり、通常の賃金のほか、賃金の2倍の額の手当を支払われる権利を有します。

(2) 有給休暇

勤続年数が1年以上の労働者は、有給休暇取得の権利を得ます。この有給休暇は6労働日未満であってはならず、その後の勤続年数ごとに2日ずつ増加し、勤続5年以降は5年ごとに2日が追加されます。なお、季節的な労働者は、年間の労働日数に比例して、有給休暇を得る権利を有します。労働者は、有給休暇を取得すると、有給休暇手当として賃金の25%以上の額の手当を受け取る権利を有します。

有給休暇は、労働者の1年間の勤務が経過した日から、6ヶ月以内に行使する機会を与えなければなりません。使用者は毎年、労働者の勤続年数とそれに基づく休暇日数、その取得(推奨)日を記載した証明書を労働者に交付するものとされています。

(3) 癌と診断された子どものための休暇

癌と診断された16歳までの子の父親又は母親は、その子が療養や入院を必要とする場合には、治療を担当する医師の指示に従って、治療に付き添うことを目的として、休暇を受ける権利を有します。これに該当する場合は、社会保障法(Ley del Seguro Social)の定めるところにより、社会保険庁が発行する証書を以て、休暇を取得することができます。証書の有効期間は最大28日間であり、合計364日を超えない範囲で最大3年間申請することができます。なお、使用者は、この休暇取得中の労働者に対して給与を支払う義務はなく、労働者にとっては無給の休暇となりますが、一定の条件を満たす労働者は社会保険の受給が可能です。

(4) 制裁

6日の勤務毎の1日の休日、勤続1年以上の労働者が有する有給休暇取得の権利及び季節労働者の有給休暇取得の権利に関する規定の違反の場合には、UMA(罰金や制裁金、社会保障費の支払い額など様々に使用される単位)の50から250倍の過料が定められています。

 

6.バングラデシュ

バングラデシュでは、労働法にて、休日・休暇について規定されていますが、同法で保護の対象とされている「労働者」に、管理職レベルの従業員は含まれないとされています。

(1) 週休

店舗や商業施設、工業施設の労働者は週に1.5日、工場の労働者は週に1日、週休を取得する権利が与えられています。いずれも、週休に対して賃金から控除することはできません(労働法第103条)。事情により週休が取得できない場合は、3日以内に他の日に代替して取得させなければならず(労働法第104条、労働規則第101条)、週休をとらずに連続して10日以上の労働をさせることはできません(労働規則第101条)。なお、バングラデシュでは、政府機関や銀行を含め、一般的な週休は金曜日及び土曜日です。

(2) 休暇

 労働法では、法定休暇として、年次有給休暇、臨時休暇、病気休暇、祝祭休暇のほか産前産後休業が定められています。

1 年次有給休暇

1年間継続勤務した労働者に対し、翌年から、直近12か月の勤務日数を基本に、店舗、商業施設、工業施設、工場、道路交通施設の労働者は、18日の勤務日数ごとに1日有給休暇が与えられます(労働法第117条(1))。年次有給休暇の間に週休や祝祭日があたる場合は、これらの休日も年次有給休暇に含まれます(同条(3))。労働者が12か月以内に有給休暇を消化しなかった場合は、翌年に繰り越すことができますが(同条(4))、有給休暇が一定の日数に達した場合は、それ以上取得することはできません。年次有給休暇取得の条件である勤務期間について、次の理由で勤務が中断された場合も、継続勤務期間とみなされます。

a) 週休や祝日、b) 有給休暇、c) 病気又は事故による有給又は無給の休暇、d) 16週を超えない産休、e) 一時解雇期間、f) 合法ストライキ又は違法なロックアウト(同条(8))。

労働者が未消化の年次有給休暇の換金を希望した場合、年に1回まで、全年次有給休暇の半分まで換金ができます(労働規則第107条(2))。労働者が死亡した場合、未消化の休暇分の賃金は、指定又は法定の受取人に支払われます(同条(3))。

2 臨時休暇

年間10日の有給の臨時休暇が認められており、翌年に繰り越すことはできません(労働法第115条)。年の途中で採用された労働者は、勤務期間の割合に応じた日数を臨時休暇として取得することができます(労働規則第106条)。

3 病気休暇

新聞労働者を除き、全ての労働者は年間14日の有給の病気休暇が認められています。病気休暇の取得にあたり、使用者が指定した医師による診断が必要で、診断書に記載されている療養に必要な期間の休暇を取得することができます。病気休暇は翌年に繰り越すことはできません(労働法第116条)。また、臨時休暇と同様に、年の途中で採用された労働者は、割合に応じた日数を病気休暇として取得することができます(労働規則第106条)。

4 祝祭休暇

年間11日の有給の祝祭休暇が認められており、祝祭休暇に勤務する場合は、2日の補償休暇及び代休が与えられなければならないとされています(労働法第118条)。使用者は、団体交渉代理人と協議のうえ、毎年12月31日までに翌年の祝祭休暇(11日以上)を決定しなければなりません。団体交渉代理人が存在しない場合は参加委員会と協議し、同委員会が存在しない場合は、労働者と可能な限り協議し、使用者が祝祭休暇を決定しなければなりません(労働規則第110条)。

5 産休

労働法にて、産前産後8 週間ずつの産休が定められています(労働法第47 条(3))。詳細は、TNY Group Newsletter No.10をご参照ください。

⑥ 未消化の年次有給休暇の扱い

 退職又は解雇で雇用が終了した労働者で、利用していない年次有給休暇がある場合は、相当する賃金が支払われます(労働法第11条)。

 

7.フィリピン

(1) 週休に関するルール

フィリピンでは、使用者は従業員に6日の労働日ごとに24時間以上の休日を与えることとされています(労働法91条(a))。予定された休日に労働者が働く場合には30%の休日手当を支払う必要があります。

(2) 祝日に関するルール

フィリピンでは労働法の規定によって、原則あらゆる職種の従業員が、有給休暇及び祝日労働における給与支払ルールの対象となります。また、ボーナスやインセンティブのように使用者が自由に定められるものとは異なり、有給休暇は労働者に認められた当然の権利とされています(労働法94条)。ただし、政府職員、マネジメント層の従業員、事業所外従業員、使用者の家族である従業員、家事使用人、他人に対して個人的なサービスを提供する者、及び、出来高払いを受けるものとして労働雇用長官が決定した者についてはこの適用を受けないとされています(労働法82条)。

1 通常祝日

従業員が通常祝日に労働した場合、通常の日給の200%相当額が支給されなければならず、労働しなかった場合でも有給(通常の日給の100%)扱いとなります(労働法94条)。ただし、小売又はサービス業で、常時雇用する従業員が10人未満の事業を除きます。通常祝日は以下のとおりです(共和国法第9492号及び9849号)。

 

(1) 正月(New Years Day) – 1月1日

(2) 聖木曜日(Maundy Thursday) – 年ごとに異なる

(3) 聖金曜日(Good Friday) – 年ごとに異なる

(4) 勇者の日(Araw ng Kagitingan) – 4月9日に一番近い月曜日

(5)メーデー(Labor Day) – 5月1日に一番近い月曜日

(6) 独立記念日(Independence Day) – 6月12日に一番近い月曜日

(7) イスラム教断食明け大祭(Eidul Fitr) – 年ごとに異なる

(8) イスラム教犠牲祭(Eidul Adha) – 年ごとに異なる

(9) 英雄の日(National Heroes Day) – 8月の最後の月曜日

(10) ボニファシオ記念日(Bonifacio Day) – 11月30日に一番近い月曜日

(11) クリスマス(Christmas Day) – 12月25日

(12) リサール記念日(Rizal Day) – 12月30日に一番近い月曜日

2 特別祝日

特別祝日に労務を提供した場合には、通常の日給の130%相当額が支給されなければなりません。通常祝日とは異なり、既存の会社慣行又は労働協約(CBA)がない限り、ノーワーク・ノーペイ原則が適用されますが、実際には通常祝日と同様、労務の提供をしなくても有給としている企業が多くみられます。フィリピンにおける特別祝日は以下のとおりです(共和国法第9492号及び10966号)。

(1) ニノイ・アキノの日(Ninoy Aquino Day) – 8月21日に一番近い月曜日

(2) 諸聖人の日(All Saints Day) – 11月1日

(3) 無原罪の聖マリアの日(Feast of the Immaculate Conception of Mary) – 12月8日

(4) 大晦日(Last Day of the Year) – 12月31日

(3) 休暇に関するルール

以下、フィリピン労働法によって労働者に付与される休暇とその取扱いについて説明します。

1 サービスインセンティブ休暇

勤続1年以上の労働者はサービスインセンティブ休暇(通称SIL)を取得できます(労働法第95条(a))。これはいわゆる年次有給休暇にあたるものです。「勤続1年以上」とは勤務開始日から起算して12ヶ月以上の勤続(承認された欠勤、休日、有給の通常祝日を含む)を意味し、勤務は連続的に行われなくてもかまいません。年末時点で消化されなかった分については使用者に買取を要求することができます。

2 一人親休暇

父親であるか母親であるかを問わず、一人親は1年あたり7日の育児休暇を有給で取得することができます(共和国法第8972号)。当該休暇の取得には、勤続1年以上であること、十分な余裕をもって雇用者に通知をしていること、さらに一人親証明書(居住地の社会福祉・開発省のオフィスで取得可能)を雇用者に提示していることが必要となります。当該権利を現金に代えることはできません。

3 出産休暇

出産休暇は105日分が有給で付与され、労働者の意思で無給分をさらに30日分取得することができます(共和国法第11210号)。当該権利は非公式な労働(課税されず、国民総生産にも現れない種類の労働)を含むあらゆる女性労働者について、さらに民法上の身分、嫡出子であるかどうかなどに関わらず認められており、流産や緊急妊娠中絶に至った場合も対象となります。また一人親の出産である場合にはさらに15日分が追加されます。なお、婚姻関係にない男性パートナーに対して7日分までの有給を分け与えることもできます。

4 婦人疾患に関わる休暇

婦人疾患に関する手術を受けた女性労働者は、2ヶ月間の有給休暇を取得する権利を有します(共和国法第9710号)。労働雇用省(DOLE)のガイドラインによれば、婦人疾患には、子宮内容除去術、子宮摘出、卵巣摘出又は乳房切除その他の外科的処置を要するものを含みます。この休暇を取得するためには、手術直前の12ヶ月間で少なくとも6ヶ月間の継続勤務を行ったこと、婦人疾患に関する休暇の申請を行っていること、及び資格を有する医師による婦人疾患の手術を受けたことが必要となります。

5 父親休暇

法律上婚姻している男性の労働者は、7日間の父親休暇を有給で取得する権利があります(共和国法第8187号)。この休暇を取得するためには、当該労働者が出産時に雇用状態にあること、妻の妊娠及び出産予定日について使用者に通知すること、妻が出産、流産又は中絶に至ったことが必要となります。当該権利を現金に代えることはできません。

⑥ 家庭内暴力の被害女性のための休暇

家庭内暴力の被害を受けた女性は、通常の有給休暇に加えて10日間まで有給休暇を取得することができ、保護命令の内容によってはさらに延長が可能です(共和国法9262号)。当該休暇の取得には、バランガイ議長若しくは議員、検察官、裁判所事務官から、被害者の使用者に対して証明書が提示される必要があります。当該権利を現金に代えることはできません。

 

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