「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに労働組合及びストライキに関する法制度の概要」 TNY Group Newsletter No.20
第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制 |
1.日本
現在、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は出されていませんが、政府からは、感染再拡大防止のための取り組みとして、引き続き、飲食店等に対する制限(感染拡大が見られる場合の時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。
1.2 入国規制
オミクロン株に対する水際措置の強化として、これまでの緩和措置が停止され、外国人の新規入国停止など、新たな措置が取れられています。
(1) オミクロン株に対する指定国・地域
オミクロン株に対する指定国・地域ついて、別途指定されています(水際強化措置に係る指定国・地域一覧)。
(2) 外国人の新規入国停止
11月30日午前0時(日本時間)以降、外国人の新規入国が停止されています。
(3) 有効なワクチン接種証明保持者に対する行動制限緩和措置の見直し
11月30日午前0時(日本時間)以降、有効なワクチン接種証明保持者に対する行動制限緩和措置に係る新規申請受付及び審査済証の交付が停止されます。また、12月1日午前0時(日本時間)以降の帰国者・再入国者等について、有効なワクチン接種証明保持者に対する3日間停留措置の免除及び待機期間短縮措置(14日→10日)が停止されます。
(4) モニタリングの強化等
オミクロン株に係る指定国・地域からの帰国者・入国者について、入国者健康確認センターの健康フォローアップを強化するとともに、変異株サーベイランス体制が強化されます。
(5) 入国者総数の引下げ
12月1日午前0時(日本時間)以降、日本に到着する航空便について、既存の予約について配慮しつつ、新規予約が抑制されます。
(参考サイト)
外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置(オミクロン株に対する水際措置の強化)
厚生労働省HP 水際対策強化に係る新たな措置(19)について
出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について
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2.タイ
2.1 COVID-19関連の規制状況
タイのCOVID-19の累計感染者数は2,111,566名です。この内、2,013,021名が回復し、累計死亡者数は20,732名となっています。
タイ政府は、11月12日、新たな規制緩和措置を発表し、ダークレッドゾーン6県、レッドゾーン39県等を再指定するなどしています。
2.2 入国規制
タイ政府は、11月1日より、新たな入国システムであるThailand Passのシステムを開始しています。日本からの入国者は、ワクチン接種完了している場合、隔離1泊及びPCR検査により陰性となればその後の隔離はなしとなります。
(Thailand Pass案内(在東京タイ王国大使館HP))
2.3必要書類
Thailand Pass申請ページにて、以下書類をアップロードする必要があります。
- パスポート
- ビザ(必要な場合)
- ワクチン接種証明(出国前14日以上前に必要回数接種を終えていること)
- ホテル予約確認書(AQまたはSHA+、支払い済み(Paid)の記載があるもの、内容は1泊およびRT-PCR検査が含まれるもの)
- 50,000 USD以上の医療保険
医療保険については以下の取り扱いとなっています。
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- 年齢にかかわらず加入必要(12歳未満も)
- タイ在住外国人で社会保険加入者はSSOカードの提示で可(カードない場合は雇用主が発行した保険加入証明書)
- 同伴家族はSSO加入でないため、その場合は通常通り保険加入が必要
(タイ入国時のThailand Pass登録時に必要な医療保険に関する追加情報(在タイ日本国大使館HP))
- 出国前72時間以内のPCR検査証明
PCR検査証明について、要件がRT-PCR方式であることとなっています。
- ビザ
通常の就労のためのビザのほか、出張者の方については商談ビザが引き続き利用可能となっています。
この入国規制の変更については、随時最新の情報を確認する必要がありますので、在東京タイ王国大使館または、在タイ日本大使館のHPをご参照下さい。
3.マレーシア
3.1 COVID-19関連の規制状況
11月27日の新規感染者数は、5,097人であり、ピーク時の4分の1程度に落ち着いています。
新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限であるFMCO(完全ロックダウン)は、クランタン州とサラワク州が第3段階の規制、残りの州が第4段階の規制に移行しています。
ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、Covid-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。
3.2 入国規制
外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。
- MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
- 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
- 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
- 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
- 永住者の入国
すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。ワクチン接種完了者の隔離期間は7日間ですが、ワクチン接種未完了者の隔離期間は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。
11月29日より、ワクチン接種者を対象としたマレーシア・シンガポール間の渡航における入国後の隔離が不要となるワクチン・トラベル・レーンが開始されると発表されています。
4.ミャンマー
4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況
COVID-19 の陽性率は落ち着いてきています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらず、日常化している印象を受けます。また、ミャンマー保健省は、新型コロナウイルス対策としての自宅待機措置を一部地区で解除する旨を発表しました。
4.2 入国規制
11月は 11日、25日にANA 便が飛びました。12 月は 3 日、17日、24 日に救援便が運航予定です。マレーシアやシンガポール等を経由する便が新型コロナウイルスの入国規制との関係で難しくなっていますが、シンガポール経由による帰国便が10月29日(金)から解禁され、その後水・金の週二便が運航される予定です。搭乗にあたっては48時間以内のPCR検査陰性証明書が必要となりますのでご留意ください。
ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続して
います。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。
5.メキシコ
メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、11月15日の週には31州が緑になり、人の移動も活発化しているように見受けられます。しかし、新規感染者数が増加傾向にある州もあり、11月29日の週には黄色が5州、緑が27州となりました。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、リスクレベルの引き下げに伴い、商業施設等に対する収容人数の制限などの規制を緩和する傾向がみられますが、マスクの着用などの要請は引き続き継続されています。
5.2 入国規制
メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。
また、2020年3月21日より米国政府による米墨国境における不要不急の渡航制限が行われていましたが、米国政府は、11月8日よりワクチン接種を完了していることを条件に、観光などの必要不可欠でない陸路・フェリーでの越境を認めています。
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6.バングラデシュ
バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。また、日本政府は「有効と認められる新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種証明書発行国・地域」に、新たにバングラデシュを含む計13か国・地域を追加することを決定し、バングラデシュ政府が発行するワクチン接種証明書も、11月22日から有効となっています。ただし、有効と認められるワクチンの種類や、日本入国・帰国時点で2回目の接種日から14日以上経過していること等の条件がありますので、詳細は、外務省のサイトをご確認ください。
6.2 入国規制
バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置が、10月23日付で発表されました。規制が緩和されています。なお、詳細については、こちらをご参照ください。
- グループBに属する国(日本はグループBに該当)からの渡航者で、出発の14日前までにWHO認可COVID-19ワクチンの接種が完了している者は、バングラデシュ入国後の隔離が免除される。ワクチン接種証明を携帯すること。ワクチン接種が完了していない者は、14日間の自宅隔離が必要である。
- 入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗72時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明を携帯すること。なお、トランジット先によっては「出発48時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明」の提示を求めている国もありますので、確認が必要です。
7.フィリピン
7.1 COVID-19関連の規制状況
フィリピンの COVID-19 感染者は累計約283万人で、死者数は累計48,361人です(2021年11月28日現在)。新規感染者は9月初旬をピークとして減少傾向にあり、平均で1日771人の新規感染者が報告されています。これは、9月初旬のピーク時の約4%にあたります。
マニラについては、「NCR における COVID-19 対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。11月30日まで、マニラ首都圏(NCR)における警戒レベルはレベル2であると発表されています。
フィリピン政府は、フェイス・シールド使用に関する規則を発表し、現時点でNCRに適用される警戒レベル2の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。
7.2 入国規制
フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「グリーン」国(管轄区域・地域)に該当します。
11月25日、フィリピン政府は、12月1日から12月15日までの間、完全にワクチン接種し、グリーン国に直前の14日間以上滞在した渡航者に対し、特定の条件を満たす場合にビザなしでの入国を許可することを発表しましたが、一転、11月28日、新しいCOVID-19変異体(オミクロン株)が検出されたことにより、12月15日まで、直ちに国境管理措置を実施することを発表し、11月25日発表のビザなし渡航の許可は一時停止となりました。
第2.各国の労働組合及びストライキに関する法制度の概要 |
1.日本
労働組合は「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」と定義されています(労働組合法第2条)。日本国憲法第28条では、労働者の団結する権利(団結権)、労働者が使用者と団体交渉する権利(団体交渉権)、労働者が要求実現のため団体行動をする権利(団体行動権(争議権))の労働三権を保障しています。ただし、公務員などの労働三権に関しては特別法が設けられており、一部の権利が制限されている場合があります。この労働三権を具体的に保障するため、一般法として「労働組合法」などが定められており、労働組合法は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的としています(労働組合法第1条)。労働組合やストライキについて規制する主な法律は、労働組合法及び労働関係調整法です。
(1) 労働組合の条件
上記の通り、憲法第28条では、労働者が労働組合を結成する権利(団結権)を保障していますが、一方、労働組合法では、労働組合として認められない条件を以下の通り規定しています。
- 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接に抵触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すこと(労働組合法第2条第1号)
- 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けること(第2号)
- 共済事業その他福利事業のみを目的とすること(第3号)
- 主として政治活動や社会運動を目的とすること(第4号)
(2) 労働組合の争議権
労働組合の争議行為は、ストライキ、サボタージュ(怠業)、ロックアウト(作業所閉鎖)その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいいます(労働関係調整法第7条)。憲法第28条(勤労者の団結権)、労働組合法第1条第2項及び第8条(損害賠償)は、争議行為が正当なものであれば、労働組合又はその組合員は民事上・刑事上の責任を免責されると定めています。また、使用者は、正当な争議行為を理由に、組合員に不利益な扱いをしてはいけません(労働組合法第7条)。
逆に、争議行為が正当性を欠く場合は、不法行為に基づく損害賠償が可能となります。争議行為は団体交渉による労働条件の対等決定を実現するために使用者に圧力をかける行為であり、その正当性は、「団交のための圧力行為」といえるか否かにあります。具体的には、ⅰ)主体、ⅱ)目的、ⅲ)手続、ⅳ)態様の4点から判断されます。ⅰ)主体については、団体交渉の当事者となり得る者でなければならず、ⅱ)目的は、団体交渉の対象となるべき事項(労働者の労働条件その他の経済的地位に関する事項及び労使関係に関する事項)に限定されます。ⅲ)手続としては、争議行為は団体交渉を経て行われるものでなければならず、ⅳ)態様は、暴力を伴うもの等不当なものは認められません。ストライキをはじめとした争議行為の正当性は、上記4つの観点から、個々の事案ごとに判断されます。いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為とは解釈されません(労働組合法第1条第2項)。
(3) 不当労働行為
労働組合法では、使用者が以下の行為を行うことは禁止されています。
- 労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことにより、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取り扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること(労働組合法第7条第1号)
- 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉を正当な理由なく拒否すること(第2号)
- 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること(第3号)
- 労働者が労働委員会に対し使用者が労働組合法第7条に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること(第4号)
2.タイ
(1) 関連する法令
タイにおける労働組合やストライキ等に関する法律として、労働関係法(Labor Relations Act B.E.2518 (1975))が定められています。
(2) 労働組合
労働組合は、雇用条件に関する利益を求め、これを保護し、使用者と被用者との間および被用者間の良好な関係を促進することを目的として設立することができます(同法第86条)。労働組合は同一使用者の被雇用者による結成、及び、同一業種において労働する被雇用者による結成が定められており、労働組合の発起人は、成人かつタイ国籍者である必要があります(同法第88条)。
労働組合を設立する場合、当該労働組合の規約を作成し、登録をする必要があります(同法第87条)。登録申請にあたり、少なくとも10名以上が発起人となり、申請書には発起人全ての氏名、年齢、職業、住所を記載する必要があります(同法第89条)。
労働組合の組合員は、労働組合の登録申請者と同一使用者の被雇用者、または同一業種において労働する被雇用者で、かつ15歳以上の者でなければならないとされています(同法第95条)。労働組合の組合員資格は、死亡、辞任、総会による除名、または労働組合の規則に基づいて終了します(同法第97条)。
- ストライキ
ストライキについては、以下の所定の手続きを経て行う必要があります。
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- 労働協約(雇用条件に関する使用者と被雇用者との間の合意事項)の規程に関する要求や修正を要望する場合、使用者又は被雇用者は書面にて相手方に当該要望を提出します(同法第13条)。
- 被雇用者側が要望書を提出する場合、全被雇用者数の15%以上の被雇用者の氏名と署名が必要となります。労働組合が被雇用者を代表して要望書を提出する場合、当該組合の組合員数は、全被雇用者数の20%以上である必要があります。この場合、要望書には被雇用者の氏名及び署名を記載する必要はありません(同法第15条)。
- 要望書を受け取った当事者は、要望書を提出した当事者に対し、遅滞なく受領者の氏名または代表者の氏名を書面で通知し、両当事者は要望書を受領した日から3日以内に協議を開始します(同法第16条)。
- 3の期間内に協議がなされなかった場合、または協議がなされたが合意に至らなかった場合、労働争議が発生したものとみなされ、要望を行った当事者は、3の期間が経過した時点、または合意に至らなかった時点から24時間以内に、労働争議調停官に書面で通知する必要があります(同法第21条)。
- 4の通知を受けた労働争議調停官は、通知を受け取った日から5日以内に、調停を行います。この期間内に両当事者が合意できない場合は、被雇用者は、ストライキを行うことができます(同法第22条)。
- ストライキをする場合、被雇用者側は、ストライキ開始の24時間以上前までに、労働争議調停官及び使用者へ、文書により通知をする必要があります(同法第34条)。また、ストライキを行う場合には、労働組合の総会にて労働組合員総数の2分の1以上の承認を得なければならず、投票は無記名投票で行われるとされています(同法第103条8号)。
3.マレーシア
マレーシアにおいて、労働組合は労働組合法(Trade Unions Act 1959)及び労使関係法(The Industrial Relations Act 1967)によって規律されています。 (1) 労働組合 1 概要 労働組合法上の労働組合とは、以下のうちいずれか又は複数の目的を有していなければならないと規定しています(労働組合法2条)。
2 労働組合の登録 労働組合は、一時的か恒久的かを問わず、労働者や使用者が特定の産業、職業又は組織の中に組合を設立することを合意することにより設立されます(労働組合法9条1項)。全ての労働組合は設立日から1カ月以内に、同法に基づき労使関係局長に対し登録の申請をしなければなりません(労働組合法8条1項)。申請には最低でも構成員7名の署名、労働組合規則の添付及び手数料の支払いが必要となります(労働組合法10条1項)。 登録を受けた労働組合は自身の名で訴え又は訴えられることができます(労働組合法25条1項)。 3 使用者の禁止行為 使用者は、労働組合の活動に対して以下の行為を行うことができません(労使関係法5条1項)。
(2) ストライキ及びロックアウト 以下の状況下においては、労働者の労働組合はストライキを召集することができず、労働組合の構成員はストライキに参加することができず、使用者の労働組合はロックアウトを宣言することができません(労働組合法25A条1項)。
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4.ミャンマー
(1) 関連する法令
労働組合に関する法律として、労働組合法が存在する。現在の労働組合法は、労働組合法(The Trade Union Act, 1926年)を改正する形で、2011年10月11日に成立しました。同法は、1962年以降結成が禁止されていた労働組合の結成について、一定の条件を満たした場合には認めています。
(2) 労働組合の結成及び権利
労働組合に関して、複数の階層の労働組合が予定されており、単位労働組合、タウンシップの労働組合、地域または州の労働組合、労働連盟、ミャンマー労働連合が存在する。基本となる単位労働組合の組成については、30人以上の労働者によって結成する必要があり、かつ、関連する事業または活動の単位の10%以上の労働者からの推挙が必要となります。労働者が30人未満の事業または活動の場合、同じ性質の他の事業または活動の単位と共に結成することができます。単位は、工場、事業場、製造業等の職業である。結成した労働組合は、訴訟を起こし、訴えられる権利を有しています。また、労働組合は登録を強制されており、登録官または主任登録官に登録を申請しなければなりません。
労働組合は、労働者が解雇された場合、解雇理由が労働組合員であること等を理由とすると信ずるに足る理由がある場合、使用者に再雇用を求めることができます。また、労使間の紛争や政府に対する不服申し立ての場合等に代表者を参加させる権利および団体交渉権を有します。
(3) ストライキ
ストライキとは、紛争事項に関係する生産やサービスを低下させる意図を持って、一部または全員の労働者の決定による労務提供の拒否、または仕事の能率低下、その他の集団的行為と定義されています。但し、労務提供拒否によって生命や健康に突然申告な危険をもたらす恐れがあると信じる正当な理由がある場合の労務提供拒否は含まれません。
ストライキ権を行使するためには、所定の手続を経て行わなければなりません。この手続は公益事業か否かで異なります。公益事業とは、運輸業、港湾業および港での荷物運搬業、郵便、テレックス、ファックス業、情報・通信技術に関する事業、石油採掘・石油配送業、糞尿処理業・清掃業、電気または燃料の生産、配送、分配に関わる事業、金融業および政府によって公益事業と指定される事業をいいます。
公益事業以外の事業においては、労働組合は、過半数以上の組合員の賛成によって、少なくとも3日前に関連する使用者および管轄調停機関に対して予告することによってストライキを実行することができる。予告内容として、日、場所、参加者数、方法および時間が要求されます。
公益事業の場合、過半数以上の組合員の賛成に基づきストライキを行うときは、関連する労働連盟の指令に従い、少なくともストライキの14日前までに関連する使用者および管轄調停機関に通知を行う必要があります。
5.メキシコ
(1) 関連する法令
メキシコでは、労働組合を結成する権利やストライキの権利はメキシコ合衆国憲法(Constitución Política de los Estados Unidos Mexicanos)第123条により保障されています。また、労働組合やストライキに関しては、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)に規定されていますので、その内容を紹介します。
(2) 労働組合の結成及び権利
労働組合は、15歳以上の労働者20人以上で構成することができます。連邦労働法には、労働組合の種類として、職業別労働組合(同一の職種・職業に従事する労働者により組織されるもの)、企業別労働組合(同じ企業に勤める労働者により組織されるもの)、産業別労働組合(同一の産業に従事する労働者により組織されるもの)、全国的産業別労働組合(全国的な大規模産業に従事する労働者により組織されるもの)、小規模職業別労働組合(同一地区内の同一職業に従事する労働者により組織されるもの)が例示されていますが、これら以外の労働組合も組織されうると規定されています。
一般に指揮、管理、監査、監督や、会社や事業所内での使用者の業務に関連する職務を行う信任労働者(trabajador de confianza)は労働組合の組合員にはなれません。また、外国人労働者は、労働組合の役員となることはできません。
労働組合は、労働組合結成議事録の認証済み謄本、組合員リスト、組合規約の認証済み謄本、組合役員を選出した際の会議議事録の認証済み謄本を提出し、連邦労働調停登録センター(Centro Federal de Conciliación y Registro Laboral、以下「CFCRL」といいます。) に登録しなければなりません。
労働組合は、労働協約の締結主体であり、使用者との間で団体交渉を行うことができます。労働組合の組合員たる労働者を雇用する使用者は、労働者の要請に応じて労働組合と労働協約を締結する義務を負うとされており、使用者がこれを拒んだ場合、労働者はストライキを実施することができます。したがって、使用者は、労働協約の締結の申し出があった場合には真摯な対応が求められます。
(3) ストライキ
ストライキとは、労働組合を含む、2名以上の労働者の同盟によって行われる一時的な業務の停止と定義され、単なる業務停止行為に限定されなければならないと規定されています。すなわち、暴力行為は行いえず、大多数のストライキ参加者が人や財産に対して暴力的な行為を行った場合は、当該ストライキは違法となります。
ストライキの手続は、請願書の提出によって開始され、1請願書は使用者に宛てた書面であり、ストライキを行う意思の表明、ストライキの目的、仕事を中断する日と時間あるいはストライキが行われるまでの期間を示すこと、2請願書の写しが管轄裁判所へ提出されること、3業務停止の通知が、請願書に明示された業務停止日の6日前までに、公務にあっては10日前までになされること、4ストライキの目的に応じた必要書類を添付する、といった要件を満たす必要があります。
そして、裁判所は、上記2の請願書の受領から48時間以内に、その写しを使用者に交付します。これを受領した使用者は、その後48時間以内に、裁判所に回答書を提出しなければなりません。また、CFCRLあるいは調停センターは、ストライキ開始までの期間に、当事者を召喚し、交渉や調停協議を行う権限を有しており、裁判所は、請願書の受領から24時間以内に、当事者が和解を行う機会を設けることができるよう、管轄のCFCRLや調停センターにこれを通知します。なお、CFCRLや調停センターは2019年5月の連邦労働法改正により新設された機関であり、これまではその機能を労働調停仲裁委員会が担っていました。当該改正労働法にもとづく運用の開始は、3段階に分け進められており、2020年11月に第1フェーズ、2021年11月に第2フェーズが開始され、21州(ゲレロ州とバハカリフォルニアスル州においては、連邦管轄の業務のみ)において新体制での運用が始まっています。残る、チワワ州、メキシコシティ、コアウイラ州、ハリスコ州、ミチョアカン州、ナヤリット州、ヌエボレオン州、ソノラ州、シナロア州、タマウリパス州、ユカタン州においては、2022年5月に予定される第3フェーズの開始までは、依然、労働調停仲裁委員会がこれを担うこととなります。
その後、調停において和解に達すれば、ストライキは行われませんが、和解に達せず、設定されたストライキ実施予定日を迎えると、ストライキが開始されます。
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6.バングラデシュ
バングラデシュの労働組合や労働争議については、2006年労働法(以下「労働法」)に定められています。
(1) 労働組合の設立要件
労働法にて、全ての労働者は労働組合を設立し、加入する権利を有すると規定されています(労働法第176条)。労働組合は、役員の情報、加入者の誓約書や規約等を提出の上登録しなければなりません(労働法第177条、第178条)。労働組合の登録には、事業場で雇用されている労働者の20%以上が加入していることが要件のひとつですが、同一の使用者のもと、事業場に複数の労働組合が存在し、同一業界で連携して活動している場合は、1つの労働組合とみなされます(労働法第179条(2))。1事業場又は複数の事業場につき、労働組合を3組織まで登録できます(同条(5))。
(2) ストライキ
1 事前通知の義務
当事者は、事前の話し合いや調停を経ずに、ストライキを行うことはできません。労働法の規定に基づく調停により合意に至らなかった場合、相手方にストライキについて通知することができ、通知には開始日を記載する必要があります。なお、ストライキの開始日は当該通知の後7日~14日の間でなければなりません。また、ストライキの通知には、規定された方法で実施された秘密投票にて組合員の3分の2の同意が必要です。当事者は、労働裁判所に裁定を申し立てることもできます(労働法第211条(1))。仲裁の継続中、労働裁判所又は労働上訴審判所で係争中に、ストライキの通知を出すことは認められていません(労働法第225条)。
2 政府による禁止
ストライキが30日を超えて実施された場合は、政府は書面にて禁止することが認められていますが、ストライキの継続が公共の生活に深刻な問題又は国益の損害を引き起こすと認めた場合は、30日以内であってもいつでも書面にて禁止することができます(労働法第211条(3))。公共サービスの場合は、政府は書面により、いつでもストライキを禁止することができます(同条(4))。
3 一定期間の禁止
事業所が新しいものであるか、外国人に所有されている、または外国人と共同で設立されている場合、ストライキは、生産を開始して3年間は禁止されますが、他の労働争議解決に関する規定は適用されます(労働法第211条(8))。
4 違法なストライキ
労働法第227条に、違法なストライキについて規定されています。
- 規定された方法に基づく通知なしに又は通知に記載したストライキの日付の前後に又は労働法第225条(上記1事前通知の義務)に違反して、労働争議の宣言、開始または継続した場合
- 労働法第209条(規定に従い使用者又は団体交渉代理人により提起された労働争議でなければ、労働争議とみなされない)に規定された方法以外で提起された労働争議の結果として宣言、開始又は継続した場合
- 労働法第211条(労働争議の解決)又は第226条(ストライキ又はロックアウトを禁止する労働裁判所及び労働上訴裁判所の権限)に基づき発出された命令に違反して継続した場合
- 当該労働争議について調停又は裁定が実施されている期間中に宣言、開始又は継続した場合
なお、違法なストライキの結果として宣言されたロックアウト、違法なロックアウトの結果として宣言されたストライキは違法とはみなされません。
違法なストライキを開始、継続、推進した労働者は、6ヶ月以下の懲役もしくは5,000タカ以下の罰金またはその両方が科されます(労働法第294条(1))。
7.フィリピン
(1) 団結権
フィリピンでは1987年憲法により、すべての労働者について、団結権、団体交渉権及び平和的な団体活動を行う権利、例えば合法的ストライキを行う権利など、労働者の権利利益に影響を与えうる使用者の意思決定プロセスに関与する権利を認めています。とりわけ労働法においては、団体交渉を行う自由、団結する自由、労働者の啓発といったものが国家の重要政策として位置づけられています。また、国際労働機関(ILO)の加盟国として、フィリピン法は、労働者が自ら団体を設立し、それに加入することのできる自由及び団体の規約を作り、活動内容を決定する自由を保護しています。
労働組合は、組合員の賃金、労働時間その他の雇用状況について好ましい条件を勝ち取ることを第一目的とし、組合費を納める労働者自身によって組織され、投票で選ばれた役員を中心に運営されます。労働組合は、労働雇用省(DOLE)の労使関係局(BLR)に登録されて初めて「合法的な労働組合」(”LLO”と呼ばれます)として認められ、労働法下における代表権や団体交渉権を行使するための法的資格を与えられます。
組合を自発的に解散するためには、解散を目的として招集された大会において、一般組合員の3分の2以上の賛成を得る必要があります。また組合の強制的解散事由としては、組合員リストや組合役員選挙に関する不実記載、偽りの記述、欺罔行為などが挙げられます(労働法第239条)。
(2) 団体交渉権
団体交渉は、労使関係の安定化などをその目的として認められている権利です。団体交渉を通じて合意に至った内容は労働協約(CBA)としてまとめられ、使用者と組合の双方に対する権利及び義務として拘束力を持ちます。団体交渉そのものの拒否、交渉における強制的議題の忌避、交渉時の不実な行為、及び労働協約の違反といったものはすべて団体交渉義務違反とされ、労働法における不当労働行為とみなされます。労使間での交渉が行き詰まった場合には、第三者たる仲裁者が介入することで交渉継続が図られます。
(3) ストライキとロックアウト
労働法は、団体交渉などの目的で労働者が団結権を行使し活動することを認めています。ここでいう行動とは例えばストライキのことで、労使紛争の結果として従業員が労働を一時的に停止することを指します。他方、使用者に認められた権利としてロックアウトがあり、これは、労働者による労働力の供給を一時的に拒否することを指します。
ストライキ及びロックアウトは、団体交渉が行き詰まった場合や、不当労働行為が行われた場合にその実施が認められています。労働協約の内容に違反しただけでは直ちにストライキやロックアウトの正当な事由とはなりませんが、労働協約で定められた経済条項に関する悪意ある違反、重大な違反が見られた場合は正当な事由として認められることになります。また、組合内部及び組合間における紛争は正当な事由とは認められません。ストライキ及びロックアウトの実施にあたっては事前に労働雇用省への通知が必要で、通知には使用者の名前と住所、組合の名称と住所、使用者の属する産業の性質、組合員の数及び組合内の交渉部門にいる従業員数、その他紛争解決に関わる諸情報が含まれなければいけません。
ストライキ及びロックアウトを実施する場合、交渉行き詰まりを原因とする場合は30日以上前、不当労働行為を原因とする場合は15日以上前に中央斡旋調停委員会(NCMB)へ事前通知をする必要があります。通知から実施までの期間は「クーリングオフ期間」と呼ばれており、この期間、中央斡旋調停委員会は両者の斡旋・調停に努めるものとされています。なお非合法なストライキ活動や、ストライキ中の非合法な行為は、ストライキを強制的に解散させる事由となります。
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