「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに特許法の概要」 TNY Group Newsletter No.21
第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制 |
1.日本
現在、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は出されていませんが、政府からは、感染再拡大防止のための取り組みとして、引き続き、飲食店等に対する制限(感染拡大が見られる場合の時短営業や人数制限)、施設の使用制限等、イベント等の開催制限(人数制限、感染防止の取り組み)、外出・移動、職場への出勤等(テレワークや時差出勤、感染防止の取り組み等)が求められています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。
1.2 入国規制
オミクロン株に対する水際措置の強化として、これまでの緩和措置が停止され、外国人の新規入国停止など、新たな措置が取れられています。
(1) オミクロン株に対する指定国・地域
オミクロン株に対する指定国・地域ついて、別途指定されています。
(2) 外国人の新規入国停止
11月30日午前0時(日本時間)以降、外国人の新規入国が停止されています。
(3) モニタリングの強化等
オミクロン株に係る指定国・地域からの帰国者・入国者について、入国者健康確認センターの健康フォローアップを強化するとともに、変異株サーベイランス体制が強化されます。
(参考サイト)
外務省HP 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について
厚生労働省HP 新型コロナウイルス感染症について
出入国在留管理庁 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否等について
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2.タイ
2.1 COVID-19関連の規制状況
タイのCOVID-19の累計感染者数は2,204,672名です。この内、2,144,952名が回復し、累計死亡者数は21,528名となっています。規制緩和の流れがありましたが、オミクロン株のタイ国内感染者が報告されたこと等を受け、今後規制が強化される可能性があります。
2.2 入国規制
タイ政府は、12月21日、タイ入国システムであるThailand Passのシステムの運用方針の変更について発表しました。隔離免除での入国(Test and Go)及び、サンドボックス・プログラム(プーケットを除く)の新規受付を、一時的に停止することを決定しました。
強制隔離による入国及びプーケット・サンドボックス制度での入国については引き続き継続されています。
(参考サイト)
在タイ日本国大使館HP:タイ入国のための「Thailand Pass」の運用方針の変更等について
3.マレーシア
3.1 COVID-19関連の規制状況
12月23日の新規感染者数は、3,510人であり、ピーク時の5分の1以下に落ち着いています。
新規感染者数やワクチン接種率等を基準に段階的に規制を設定した移動・活動制限であるFMCO(完全ロックダウン)は、クランタン州とサラワク州が第3段階の規制、残りの州が第4段階の規制下にあります。
ワクチン接種完了者には、州間移動が可能となり、COVID-19感染拡大前に行うことができた社会活動の多くが認められています。
3.2 入国規制
外国人渡航者の入国は原則禁止されています(注:出国は可能)。例外的に、以下1~5に該当する場合の入国を許可しています。
- MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)査証保有者の再入国
- 主要又は技術的ポストにある企業職員・技能労働者・知識労働者及びその扶養家族・使用人の入国(いずれも現地駐在者が対象。国籍は問わない。)
- 留学生(高等教育機関、インターナショナルスクール)及び医療ツーリズム目的の渡航者の入国
- 長期滞在ビザを保有していない外国人で、マレーシア人の配偶者及びその家族についての入国
- 永住者の入国
すべての渡航者は、出発前72時間以内にPCR検査を受ける必要があり、マレーシアに入国するためのフライトに搭乗できるのは陰性の検査結果を有する者のみとなります。ワクチン接種完了者の隔離期間は7日間ですが、ワクチン接種未完了者の隔離期間は10日間となります。また、一定の要件をみたす者は自宅隔離を申請することができ、保健省のリスク評価次第で自宅隔離が認められる可能性があります。
4.ミャンマー
4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況
COVID-19 の陽性率は落ち着いてきています。ヤンゴン市内は車・人の往来も普段と変わらず、日常化している印象を受けます。
4.2 入国規制
12月は 3日、17日、24日にANA 便が飛びました。1月は 6 日、20 日に救援便が運航予定です。ミャンマーへの入国は日本からの救援便以外に方法はない状況です。国際旅客便の着陸禁止措置も継続しています。ミャンマー入国後のホテル隔離は、11日間となります。
5.メキシコ
メキシコのCOVID-19感染リスクを示す連邦政府の信号(赤、橙、黄、緑の4段階があり、赤が最も深刻)は、12月13日の週は、前回と変わらず黄色が5州、緑が27州となりましたが、アグアスカリエンテス州が前回の緑から黄色に変更されるなど、感染リスクが高くなる州も見られます。連邦政府による新たな規制は見られませんが、引き続き、予防措置の継続が呼びかけられています。各州においては、商業施設等に対する収容人数の制限などの規制を緩和する傾向がみられますが、マスクの着用などの要請は引き続き継続されています。
5.2 入国規制
メキシコへの入国については、政府による外国人への入国制限等は行われていません。メキシコ国内の各空港では体調や渡航履歴に関するアンケートへの回答や検温によるスクリーニングが実施されています。
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6.バングラデシュ
バングラデシュにおけるCOVID-19の新規感染者数、死者数、陽性率は減少傾向にあり、政府による行動規制は緩和されています。12月11日に、ジンバブエから帰国したクリケット選手2名のオミクロン株の感染が確認され、隔離されていましたが、検査結果も陰性となり、20日に隔離を終えました。
6.2 入国規制
バングラデシュ民間航空局(CAAB)による、新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際措置が、12月4日から有効となっています。日本からの渡航者については、隔離が免除されていますが、PCR検査が出発前72時間から48時間前と変更となっていますので注意が必要です。なお、詳細については、こちらをご参照ください。
- オミクロン株の発生に伴い、過去14日以内にボツワナ、エスワティニ、ガーナ、レソト、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエを出発・経由・訪問した全てのバングラデシュへの入国者は、費用自己負担にて、政府指定のホテルにて14日間の隔離を行わなければならない。また、隔離7日目と14日目に、費用自己負担で、PCR検査を受けなければならない。7日目の検査で陽性反応が出た場合は、更に厳格な隔離とされる。
- 更に、上記7か国からの入国者は、搭乗手続きの際に、ホテル予約証明書を提示しなければならない。また、航空会社はバングラデシュの保健当局に対し、搭乗者の旅券情報、バングラデシュの住所(滞在先)及び連絡先を知らせなければならない。
- 入国に際し、12歳以上の渡航者は、搭乗48時間以内に行ったCOVID-19のRT-PCR検査の陰性証明を携帯すること。
7.フィリピン
7.1 COVID-19関連の規制状況
フィリピンの COVID-19 感染者は累計283万7784人で、死者数は累計50,916人です(2021年12月22日現在)。新規感染者は2021年9月初旬をピークとして減少傾向にあり、現在は1日約100~300人前後の新規感染者が報告されています。これは、9月初旬のピーク時の約1~2%にあたります。
マニラについては、「NCR における COVID-19 対応のための警戒レベル・システムのパイロット実施に関するガイドライン」に従う必要があります。
12月14日、フィリピン政府は、12月16日から12月31日まで、フィリピン全ての地域の警戒レベルについて、「レベル2」の継続を発表しました。フェイス・シールド使用に関する規則によると、現時点で警戒レベル2の地域においては、フェイス・シールドの着用は任意となっています。
7.2 入国規制
フィリピン政府は、各国(管轄区域・地域)を「グリーン」・「イエロー」・「レッド」に区分しており、日本は、「グリーン」国(管轄区域・地域)に該当します。
「グリーン」(管轄区域・地域)からフィリピンに入国する渡航者の検査・検疫規則は、以下のとおりです。
- 完全にワクチン接種した、出発国出発前72時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果を提示する渡航者は、到着日を含めて3日目に行われるRT-PCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要がある。その後、到着日を初日として、10日目まで自宅検疫を行う必要がある。
- ワクチン接種を受けていない、部分的にワクチン接種を受けた、またはワクチン接種状況の有効性、信憑性が検証・確認できないが、出発国出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果を提示する渡航者は、到着日を初日として、7日目に行われるRT-PCR検査の陰性結果を受けるまで施設における検疫を受ける必要がある。その後、到着日を初日として、14日目まで自宅検疫を行う必要がある。
- 「グリーン」国(管轄区域・地域)を通過するだけの全ての渡航者(フィリピン人、外国人を問わない)は、空港内のみに滞在していた場合、また、入国管理局によってそのような国(管轄区域・地域)への入国を許可されていない場合、その国(管轄区域・地域)から来た、または行ったことがあるとは見なされない。
- 施設における検疫期間中は、フィリピン検疫局(BOQ)によって厳密な症状の監視が行われる。陽性であることが判明した場合、規定された隔離規則に従う必要がある。検疫完了後、BOQ渡航者個人の予防接種状況を示す検疫証明書が発行される。
- フィリピン運輸省は、航空会社に対し、出発国出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果の要件に準拠する渡航者(乗客)のみに搭乗することを保証させる。ただし、症状がない3歳以下の子供は、出発国に関係なく、出発前72時間以内の陰性のRT-PCR検査結果の提示要件が免除される。
- 未成年者に対する検査・検疫規則は、未成年者のワクチン接種状況及び出発国に関係なく、同行する親/保護者の検査・検疫規則に従う。
第2.各国の特許法の概要 |
1.日本
特許に関する事項は、特許法にて定められており、その目的は、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」と定義されています(特許法第1条)。特許を受ける権利は発明者にあり(特許法第29条第1項柱書)、その権利は、移転することができます(特許法第33条第1項)。特許権の効力として、特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有しますが、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りではありません(特許法第68条)。特許権の存続期間は、出願の日から20年ですが(特許法第67条第1項)、特許権の設定の登録が特許出願の日から5年を経過した日又は出願審査の請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日以後にされたときは、延長登録の出願により延長することができます(同条第2項)。
(1) 特許法上の発明
特許法で保護対象となりうる発明について「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています(特許法第2条第1項)。
(2) 特許を受けることができる発明とは
特許を受けることができる発明の要件は以下の通りです。
1 産業上利用することができるかどうか(特許法第29条第1項柱書)
2 新規性(特許法第29条第1項)
新しいものであるかどうかで新規性が判断されます。以下の場合は、特許を受けることはできません。
- 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(特許法第29条第1項第1号)
- 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(同項第2号)
- 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(同項第3号)
3 進歩性(特許法第29条第2項)
「容易に発明をすることができた」かどうかで進歩性が判断されます。特許出願前に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、上記の発明(特許法第29条第1項第1号~第3号)に基づいて容易に発明をすることができたときは、特許を受けることはできません。
その他、公序良俗に反する発明は特許を受けることはできません(特許法第32条)。また、先願主義が採用されており、先に出願されていた場合も、特許を受けることはできません(特許法第39条及び特許法第29条の2)。
(3) 職務発明
使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有すると定められています(特許法第35条第1項)。これに対して、従業者等は「相当の利益」を受ける権利を有し(同条第4項)、「相当の利益」の決定は、原則として使用者等と従業者等との間の自主的な取決めに委ねられていますが、自主的な取決めに従って利益を付与することが不合理である場合や、自主的な取決めが存在しなかった場合は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が負う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して決定されます(同条第7項)。
(4) 出願から特許権取得までの流れ
特許権を出願(特許法第36条)すると、方式審査が行われ、出願書類が審査されます。さらに審査請求(特許法第48条の3第1項)をすると審査官による実体審査が行われ、特許を受けることができる発明の要件を満たしているか、拒絶理由がないかどうか調べられます。特許の要件を満たしている場合又は拒絶の理由が解消された場合は特許査定がなされ(特許法第51条)、特許料の納付により特許原簿に登録されると特許権が発生します(特許法第66条)。特許の要件を満たしていないものは、拒絶査定が出されます(特許法第49条)。拒絶査定を受けた者で、その査定に不服がある場合は、その査定の謄本の送達があった日から3ヶ月以内に拒絶査定不服審判を請求することができます(特許法第121条)。
2.タイ
タイにおける発明を保護する法律として、特許法(Patent Act B.E.2522)が制定されています。
(1) 登録要件
特許権は、創作の時点で発生する著作権とは異なり、商標権等と同様に、登録によって権利が発生します。発明が特許として登録を受けるためには、以下の登録要件を満たす必要があります(特許法第5条)。
発明に1新規性、2進歩性が認められ、3産業上利用可能であること
(2) 特許と認められない発明
以下の発明は、特許の対象外とされています(同法第9条)。
- 天然の微生物および微生物、植物、動物や植物からの抽出物を構成するもの
- 科学的、数学的な法則や理論
- コンピュータプログラム
- 人の疾病または動物の疾病の診断、治療または治癒の方法
- 公序良俗に反する発明、健康や福祉に反する発明
(3) 発明者の権利
発明者は、特許を受ける権利を有し、当該権利は、譲渡または承継可能とされています。ただし、当該権利を譲渡する場合には、書面にて行われる必要があり、譲渡人と譲受人が当該書類に署名する必要があります(同法第10条)。
(4) 職務発明
職務発明とは、会社の従業者等が職務上行った発明をいいます。
- 特許を受ける権利
雇用契約または業務委託契約の履行においてなされた発明について特許を受ける権利は、契約に別段の定めがない限り、使用者または業務委託者に帰属します。この点について、日本とタイでは特許を受ける権利の帰属者の定めが逆となっているため、注意が必要です。
2. 報酬請求権
タイの特許法においては特許を受ける権利が原則、使用者等に帰属しますが、発明活動を促進し、従業者等に公正な分配を与えるために、発明者である従業者等は、使用者等が当該発明から利益を得る場合には、通常の給与以外の報酬を請求する権利を有します(同法第12条1項、2項)。この報酬請求権は、契約上の規定によっても妨げることはできないとされています(同条3項)。
(5) 特許出願手続き
特許出願書類には、次の事項が含まれている必要があります(同法第17条)。
- 発明の名称
- 発明の性質と目的
- 当該技術分野またはその他の関連技術の通常の知識を有する者が、本発明を作成し実施することができるような、完全かつ簡潔で明確な記述を含む本発明の詳細な説明であって、本発明を実施するために発明者が知っている最良の態様を示すもの
- 1つ又は複数の明確かつ簡潔な請求項
- その他省令で定める事項
(6) 方式審査
出願がされた特許については、DIP(知的財産局:Department of Intellectual Property)の担当官により、出願書類が同法第17条の規定を満たしているか、また同法第9条の、特許と認められない発明の事由(不特許事由)に該当しないどうかについて審査がなされます。
(7) 拒絶通知
同法第17条の規定が遵守されていないと思われる場合、または本発明が同法第9条に基づく不特許事由に該当すると思われる場合、事務局長は当該出願を拒絶し、担当官は事務局長による拒絶の日から15日以内に、書留郵便または事務局長が定めるその他の方法により、拒絶があった旨を出願人に通知することとされています(同法第28条第1項第1号)。
(8) 出願公告
同法第17条の規定が遵守されており、本発明が同法第9条に基づく不特許事由に該当しないと認められる場合、事務局長は省令で定める規則および手続きに従って、出願公告するように命じることとされています。当該公告が行われる前に、担当官は、事務局長が定める方法または書留郵便により、出願人に対して公告手数料を支払うよう通知をします。出願人が通知を受領した日から60日以内に公告手数料を支払わない場合、担当官により出願人に対して、再度、書留郵便で通知がなされます。出願人がその通知を受領した日から60日以内に公告手数料を支払わない場合は、当該出願を放棄したものとみなされます(同法第28条第1項第2号)。
(9) 出願公告後の手続き
出願人は、当該出願の公告後5年以内、または異議申立があり審判請求が行われた場合にはその最終決定後1年以内のいずれか遅くに満了する期間内に、本発明が同法第5条の登録要件(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)に適合するか否かの審査を進めるよう担当官に請求することができます。出願人がこの期間内に当該要求をしなかった場合には、当該出願を放棄したものとみなされます(第29条第1項)。
(10) 存続期間
特許件の存続期間は、特許出願日から20年間とされています(法第35条)。
3.マレーシア
マレーシアにおける特許制度は、特許法(Patents Act 1983)によって規律されています。
(1) 概要
特許法は、発明が新規性、進歩性及び産業上の利用可能性を有している場合は、その発明は特許を受けることができるとしています(特許法11条)。
- 発明及び発明の単一性
特許法により保護する発明とは、発明者の思想であって、当該技術の分野における一定の課題についての解決を実際に可能にするものをいうと定義されます(特許法12条(1))。そして、特許の出願は、1の発明又は単一の一般的発明概念を形成するように関連している一群の発明について認められます(特許法26条)。
2. 新規性
発明が先行技術により予測されないものであるときはその発明は新規性を有するものと認められます(特許法14条(1))。
3. 進歩性
先行技術を構成するすべての事項を考慮した場合に、その進歩性がそれにかかる技術において通常の技量を有する者にとって自明でないときは、その発明は進歩性を有するものとみなされます(特許法15条)。先行技術とは、その発明をクレームする特許出願の優先日前に、世界の何れかの場所において、書面による発表、口頭の開示、使用その他の方法で公衆に開示されたすべてのものをいいます(特許法14条(2)(a))。
4. 産業上の利用
発明が、いかなる種類の産業においてでも、製造又は使用することができる場合には、産業上の利用可能性があるものとみなされます(特許法16条)。
(2) 登録
1 基本的な審査手続
特許の登録手続は1出願要件審査、2方式審査、3出願公開、4実体審査という手順で進められます。方式審査が終了後、改めて実体審査の請求をする必要がある点に注意が必要となります。実体審査においては、新規性、進歩性、産業上の利用可能性等が審査されます。また、実体審査の請求には、工業所有権所轄当局(日本で登録されている特許であれば日本国特許庁)における特許の出願番号及び出願日に関する情報等を添付しなければなりません(特許規則27条(3))。
2 修正実体審査
日本において当該発明について特許を受けている場合、実体審査に代えて修正実体審査を請求することもできます。修正実体審査の場合は、特許を受けることができない発明か否か(特許法13条)及び新規性(特許法14条)については審査しますが、進歩性、産業上の利用可能性及び発明の単一性等の審査がないため(特許規則27D条(1))迅速に特許権を獲得することができます。
3 早期審査制度
以下のいずれかの場合には、早期審査を申し立てることができます(特許規則27E条(3))。
- 国家又は公衆の利益となる場合(同項(a))
- 登録出願する特許について、侵害行為が発生しているか、侵害行為が発生する可能性を示す証拠のある場合(同項(b))
- 出願人が当該発明を既に商品化しているか、早期審査請求日から2年以内に商品化する予定である場合(同項(c))
- 特許登録出願が政府又は登録局の認める機関から金銭的利益を得るための条件となっている場合(同項(d))
- 当該発明が環境保護又はエネルギー資源保全に資するグリーン技術に関連するものである場合(同項(e))
- その他早期審査を裏付ける合理的な理由のある場合(同項(f))
- 特許審査ハイウェイ
日本の特許庁はマレーシア知的財産公社との間で、2020年10月1日より特許審査ハイウェイは本格実施されています。同制度では、以下の要件を満たす特許出願の審査を大幅に短縮させ迅速な権利実現を図ることができます。
- 申請する日本出願及び対応するマレーシア出願において、優先日又は出願日のうち、最先の日付が同一であること
- 対応するマレーシア出願が存在し、既に特許可能と判断された一つ又は複数の請求項を有すること
- 審査を申請する当該出願のすべての請求項が、対応するマレーシア出願の特許可能と判断された一つ又は複数の請求項と十分に対応しているか、十分に対応するように補正されている
- 申請時において、当該出願に関し日本の特許庁における審査が着手されていないこと
- 申請時又はその前に、日本の特許庁において、審査請求が行われていること
(3) 特許権者の権利
特許権者は、以下の事項について排他的権利を有しています(特許法36条)。
1 特許発明を実施すること(同条(1)(a))
- 製品に関して付与する場合(同条(3)(a))
- その製品を製造、輸入、販売の申出、販売又は使用すること
- その製品を、販売の申出、販売又は使用のために保管すること
- 方法に関して付与する場合(同条(3)(b))
- その方法を使用すること
- その方法によって直接に取得された製品に関し、(a)にいう行為のいずれかを行うこと
2 特許を譲渡又は移転すること(同条(1)(b))
3 ライセンス契約を締結すること(同条(1)(c))
4.ミャンマー
特許法は2019年3月11日に公布されました。しかし、施行時期は未定です。
出願に当たり、必要書類は以下のとおりです。
- 登録出願申請書(英語またはミャンマー語)
- 出願人による署名の付された翻訳文(登録官から要求された場合)
- 法人の登記番号、種類、設立国(法人が出願する場合)
- 優先権証明書、優先権の存在を示す確たる証拠(優先権を主張する場合)
- 博覧会出品を示す確たる証拠(博覧会出品の仮保護を主張する場合)
- 共同出願人の同意書(共同出願人の1人が他の共同出願人を代表して願書に署名した場合)
- 宣言書(伝統的知識の合法的使用、または当該資産の直接的/間接的な使用である場合)
- 公開請求(早期公開を求める場合)
- 明細書
- 発明の図面(任意)
特許と実用新案(petty patents)が存在し、特許の保護期間は出願日から20年、実用新案の保護期間は出願日から10年間です。
1つの出願で1つの特許発明あるいは1つの実用新案をカバーでき、同じ発明を特許と実用新案の両方で登録することはできません。
手続き言語は英語またはミャンマー語です。
出願日/優先日から18か月経過後に出願公開され、出願日から36か月以内に出願人が審査請求を行うことにより、実体審査が行われます。
出願に対して拒絶理由通知(Office Action)が発行された場合、60日以内に応答が必要です。
5.メキシコ
(1) 関連する法令
メキシコにおいて、特許は、連邦産業財産保護法(Ley Federal de Protección a la Propiedad Industrial)及び産業財産法規則(Reglamento a la Ley de Propiedad Industrial)に規定されています。職務発明に関しては、連邦労働法(Ley Federal del Trabajo)に関連する条文が設けられています。
(2) メキシコで保護される特許
特許によって保護される発明とは、「自然界に存在する材料若しくはエネルギーを人の特定の需要を満たすよう使用することができる形に変える人の創造」であると定義されています。すべての技術分野における発明のうち、新規性があり、発明的活動の結果であり、かつ産業上の利用が可能なものは、特許を受けることができます。
ただし、次のものは発明とはみなされません。
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- 科学理論や原則の発見
- 数学的方法
- 文学、芸術作品、又はその他の美的創造物
- ゲームや経済的商業活動のための知的活動を実施するスキーム、計画、規則、方法
- コンピュータプログラム
- 情報を提示する方法
- 自然界に見られる生物学的及び遺伝的物質
- 既知の発明の並置又は既知の製品の組み合わせ。ただし、個別に機能できない組み合わせの場合、それらの特徴的な性質又は機能が、当該分野の技術に熟知する者にとっても自明でない産業上の成果や利用法を生み出すように変更されている場合を除く
また、次の場合は特許性を有するとはみなされません。
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- 商業的利用が公序良俗に反し、又は法律の規定に反する発明(人、動物、植物の健康若しくは生命を保護するため、又は環境への深刻な損害を回避するために利用を阻止しなければならないものを含む)であって、特に、ヒト及びその製品のクローン作成手順、ヒト及びその製品の生殖上の遺伝的同一性を修正する手順で、これらがヒトを開発する可能性を示唆する場合、工業的又は商業的目的のためのヒト胚の使用、動物の遺伝的同一性を修正する手順で、ヒト又は動物にとって実質的な医学的又は獣医学的有用性がなく苦痛を伴うもの、及び当該手順の結果として生じる動物
- 植物の品種及び動物の品種(微生物の場合を除く)
- 植物又は動物を得るための本質的に生物学的な手順、及びこれらの手順から得られる生成物。ただし、微生物学的手順、その他の技術的手順、又はこれらの手順によって得られた生成物を目的とする発明は除く
- 人又は動物の身体の外科的又は治療的処置の方法、及びそれらに適用される診断方法
- 構成や発展の異なる段階における人体、ゲノムの全体又は部分的つながりを含む人体の構成の単純な発見(ただし、自然環境から分離され、技術的な手順を経て得られた生物材料は、それが自然界に既に存在している場合でも、特許可能な発明の対象となりえる)。なお、核酸又はタンパク質の全配列又は部分配列の産業上の利用は、特許出願において明示的に開示されなければならない
発明を行った自然人又はその承継人は、自己又は他者の利益のために、特許を得ることによって、その発明を利用する独占的な権利を有することになります。二人以上のものが共同して発明を行った場合は、特許を受ける権利は、これらのものが共有することになります。
労働者が職務において行った発明の名称、権利、使用については、次のように連邦労働法に規定されています。
1 発明者は、発明者として自らの名前を表示する権利を有する
2 労働者が研究業務又は企業で使用されるプロセスの改良に従事する場合、発明の権利及び特許を利用する権利は使用者に帰属する。発明者は、発明の重要性及びそれが使用者にもたらす利益が発明者の受領する給与とつり合いがとれていない場合には、当事者間の合意又は裁判所によって定められる補完的な報酬を受ける権利を有する。
3 2以外の場合において、発明の所有権はその発明をした者に帰属するが、使用者は、その発明及び対応する特許の独占的な使用又は取得について優先的な権利を有する
(4) 特許出願から登録までの手続
メキシコでの出願から登録までの手続きは、主管官庁であるメキシコ産業財産庁(Instituto Mexicano de la Propiedad Industrial、以下「IMPI」)に対して行わなければなりません。特許出願の手続の流れは次のとおりです。
1 願書の提出
2 方式審査
3 特許公報への出願公開
4 異議申立(出願公開から2か月間、当該出願に対する異議の受付)
5 実体審査
要件を満たしていない場合、拒絶理由通知が出され2か月間の回答期間が与えられる
要件を満たしている場合、特許査定となる
6 特許年金の納付
特許権の維持には、特許査定の通知を受領後2か月以内に1回目の特許年金を支払わなければならない
年金の支払いは5年ごと
7 特許証発行と特許公報掲載
特許出願は、方式審査を通過し、出願日又は優先権を主張する日から18ヶ月が経過すると公開されます。また、申請により早期公開も可能です。なお、すべての出願が実体審査の対象であり、審査請求は要しません。
また、メキシコ又は外国において特許出願をした発明と同一の発明に関し、最初の出願をした出願人又はその承継人は、当該同一の発明のメキシコにおける出願について、最初の出願の出願日から起算して12ヶ月の期間内に出願することを条件に、優先権(先の出願と後の出願との間の期間に行われた行為によって不利な取り扱いを受けないとする権利)を有します。
特許権の存続期間は、特許出願日から 20 年間であり、この期間を延長することはできません。ただし、特許から取得までの手続きにおいて、IMPIに直接起因する理由によって、5年以上の遅延がある場合には、出願人は補完証明書(certificado complementario)の発行を申請することができ、この付与が決定された場合は、特許出願日から20年経過後、5年を超えない範囲(補完証明書において定められた期間)、その発明を利用する独占的な権利を有することができます。
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6.バングラデシュ
(1) 概要
特許に関する事項は、特許意匠法((The Patents and Designs Act, 1911)及び特許意匠規則(The Patent and Designs Rules, 1933)が適用されます。特許及び意匠の政府担当機関は、特許意匠商標局です。なお、2021年2月に特許法案及び工業意匠法案が提出され、内閣に承認されました。法案では、特許の登録期間が、20年認められています(現在は16年間)。
特許は、バングラデシュ国民であるか否か、個人又は共同での申請かにかかわらず、所定の方法で特許意匠商標局に特許を出願することができます(特許意匠法3条(1)(2))。出願書には、出願人が発明を所有し、真正かつ最初の発明者であることの宣言を含み、仮又は完全明細書によって出願されなければなりません(同条(3))。真正かつ最初の発明者でない者も出願の当事者となることができますが、譲渡契約など、真正かつ最初の発明者からの同意を提示しなければなりません(同条(4))(特許意匠規則10条(2))。特許の登録が認められる場合、基本的に出願日から24ヶ月以内に登録されなければならないと定められており(特許意匠法10条(2))、前述の通り、登録期間は16年間です(特許意匠法14条(1))。また、特許の効果として、特許意匠商標局の公印が捺印された特許は、バングラデシュ全土で発明を生産、販売、使用すること及びそれらを他の者に許可する排他的特権を特許権者に与えます(特許意匠法12条(1))。
(2) 出願から登録までの手続き
出願人は必要書類を提出し、要件を満たしていない場合は、拒絶又は補正が求められます。出願日から18ヶ月以内に出願人が要件を満たし、受理されない限り、(出願人が決定に対して申し立てを提起した場合を除き)拒絶されたものとみなされますが、期間満了前又は満了後3ヶ月以内に請求した場合は、3ヶ月以下の延長が認められます(特許意匠法第5条(4))。
出願が受理されると、公告され、当該出願に異議のある者は、4ヶ月以内に異議申し立てを行うことができます(特許意匠法9条(1))。異議申立てがなされた場合、登録官は、出願人に異議申立てを通知し、出願人及び異議申立人が聴聞を希望する場合は、聴聞を行った後、当該事案について決定が下されます(同条(2))。
異議がない場合、又は異議が申し立てられた場合で特許の付与に有利な決定がなされた場合、規定の登録料の支払いをもって、政府が適切と考える条件(もしあれば)に従い特許権が付与されるものとし、登録官は特許を特許意匠商標局の公印で捺印します(特許意匠法10条(1))。
特許の登録は、基本的に出願日から24ヶ月以内でなければならないとされていますが、登録官が認めた場合など、法律に規定された要件を満たした場合は延長されます(特許意匠法10条(2))。
また、法律に別段の規定がない限り、特許は、出願日をもって登録されますが、出願受理の公告の前に行われた侵害については、法的措置をとることができないことに注意が必要です(特許意匠法11条)。
(3) 特許侵害訴訟
特許権者は、管轄権を有する地方裁判所において、発明に関して特許意匠法に基づいて取得した特許期間の継続中に、特許権者の利用許諾なく、発明を製造、販売、若しくは使用、又は偽造、模倣した者に対して訴訟を起こすことができます(特許意匠法29条(1))。ただし、特許権者は、被告人からのいかなる侵害についても、侵害の日に特許の存在を認識していない、又は侵害を認識する合理的な手段を持っていなかったことを被告人が証明した場合は、損害賠償を請求する権利を有しないとされています(特許意匠法第30条)。
特許侵害訴訟において、裁判所は、いずれかの当事者による請求があれば、裁判所が適切とみなす差し止め、検査、算定を求める命令を下し、適切とみなす条件を課すことができ、当該差止・検査・算定及びその手続きについて適切とみなす指示を与えることができます(特許意匠法31条)。
7.フィリピン
特許権は知的財産権の一種で、共和国法第8293号(通称「知的財産法」)において規定されています。人間のあらゆる活動分野における問題の技術的解決であって、1) 新規性があり、2) 進歩性があり、3) 産業上適用可能であるものが特許性のある発明と認められ、同法によって保護されます。知的財産法22条には特許性を認められない発明が列挙されています。
特許権は発明者本人、承継人、あるいは譲受人に属します。二人以上が同様の発明を独立して行った場合、その権利は出願日の最も早い者、あるいは優先日の最も早い者に与えられます。依頼にもとづく制作物については依頼主に、被雇用者が雇用期間中に制作した物については雇用者に、それぞれ特許権が属することになります。
特許権の保護を受けるためには、知的財産庁(IPOPHL)の支局である特許局に対して特許出願する必要があります。またフィリピンは1970年に作成された特許協力条約(PCT)の加盟国でもあり、国際特許出願および登録を行うことで他の加盟国内においても同時に保護を受けることができるようになります。
特許を取得するためには、1) 特許を求める申請書(申請者の氏名その他の情報、発明者、代理人申請の場合は代理人の名称及び発明の名称を含む。)、2)発明品の説明、3)発明品を説明するために必要な図面、4) クレーム、5)特許の要旨を知的財産庁に対し申請しなければなりません。申請においては、必要十分な方法をもって、当該技術に熟練した者が実施できるように、発明内容が開示される必要があります。
特許の要旨は、可能な限り150語を越えない範囲で、発明品の説明、クレーム及び図面に記載の発明の内容に関する簡潔なまとめを含んでいることが要求され、また、技術的な課題、発明が提示する問題解決の要旨及び発明の主たる用途を明確に説明する必要があります。
必要書類の提出日を出願日として、当該出願日から18ヶ月後、知的財産庁の公報に申請内容及び先行技術に関する調査結果が公表されます。当該公報の発行後、申請者は、クレームの範囲内において、当該発明の特許権を、権限のない第三者に対して行使できるようになります。ただし、当該第三者が、その使用する発明が広報において公開された申請内容であることを実際に知っていた場合又はその旨の通知を書面で受け取っていた場合に限られます。利害関係を有する第三者は、申請書類を確認し、発明の特許性について見解を述べることができます。
申請が認められると、知的財産庁の公報にて公開され、公開日をもって当該特許は有効となります。仮に申請が拒絶された場合、申請者は知的財産庁長官に異議申し立てすることができます。
特許はフィリピン共和国の名で付与され、知的財産庁長官の署名及び知的財産庁によって押印されます。そして、発明の説明、クレーム及び図面と共に登録され、出願日から20年、特許協力条約にもとづく申請は当該出願をした日から20年間有効です。
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