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「COVID-19関連の規制状況及び入国規制並びに監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限」 TNY Group Newsletter No.28

第1.各国の国内のCOVID-19関連の規制状況及び入国規制

1.日本

1.1 COVID-19関連の規制状況

 7月28日、全国で114人の死亡、23万3094人の感染が発表されています。特に行動制限は出されておらず、基本的な感染拡大防止対策(「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の手指衛生」、「換気」等)が求められ、ワクチンのブースター接種が推奨されています(新型コロナウイルス感染症対策(内閣官房HP))。

1.2 入国規制

(1) 外国人の入国制限について

外国人の入国について、下記(a)(b)又は(c)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めています。

(a) 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国

(b) 長期間の滞在の新規入国

(c) 観光目的の短期間の滞在の新規入国(旅行代理店等を受入責任者とする場合)

厚生労働省HP 外国人の新規入国制限の見直しについて

(2) 日本入国時の検疫措置について

 厚生労働省は、滞在していた国・地域を3区分(青・黄・赤)に分け、入国時の検疫措置を定めています。なお、出国前72時間以内の陰性証明書は、滞在していた国・地域にかかわらず全員が提出必要です。

滞在していた国・地域の区分
有効なワクチン
接種証明
入国時の検疫措置
出国前検査
(全員必須)
到着時検査 待機

(タイ、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、メキシコほか)
問わない × ×

(ベトナム、インドほか)
あり × ×
なし 自宅3日間 ※1

(アルバニア、シエラレオネ)
あり 自宅3日間 ※1
なし 施設3日間 ※2

厚生労働省HP 水際対策

※1 待機3日目に検査を受検し陰性を確認した場合。検査を受検しない場合は7日間。

※2 施設待機3日目に検査を受検し陰性であれば、待機解除。

 

2.タイ

2.1 COVID-19関連の規制状況

 タイのCOVID-19の累計感染者数は4,579,421名です。この内、4,524,592名が回復し、累計死亡者数は31,227名となっています。現在、1日の感染者数の週平均は2,000人程度で推移しており、減少傾向にあります。

2.2 入国規制

 7月1日より以下のとおり入国規制が緩和されました。

・入国申請システム「Thailand Pass」廃止

・COVID-19の治療費等を含む医療保険への加入不要

ただし、入国時に、ワクチン接種証明書または渡航前72時間以内に受検した陰性証明書の提示は引き続き必要です。

2.3 日本入国規制

 5月26日に、日本政府は、6月1日以降の日本入国時の水際措置の変更を発表いたしました。

 タイは「赤」、「黄」、「青」の区分の内、一番リスクの低い「青」区分に指定されています。日本への入国時に必要とされていた、入国時検査およびワクチン3回未接種者の入国後原則7日間の自宅等待機期間は廃止されております。

 ただ、日本入国時の渡航前72時間以内の有効な検査証明書の提示は引き続き必要とされますので、ご注意下さい。

詳細については以下をご参照下さい。

外務省海外安全ホームページ

 

3.マレーシア

3.1 COVID-19関連規制

 7月25日の新規感染者数は、3,300人でした。直近7日間(19日~25日)の平均は4,127人であり先月に比べ増加傾向にあります。もっとも、現在はエンデミックの段階にあるとして、以前のMCO(新型コロナウイルス流行に伴い設けられた活動制限令)下で導入されていた厳格な活動制限等の規制は撤廃されています。現在は、屋内や公共交通機関等でのマスクの着用義務や店舗入店時のMySejahteraアプリ(マレーシア政府開発の新型コロナウイルス対策アプリ)の提示、ソーシャルディスタンスの要請などに留まります。

3.2 入国規制

 3月までは、労働ビザを持つ者や永住者等一部の外国人に入国を認めていましたが、4月1日からは観光目的の入国が可能となっています。

 渡航前には、英文での陰性証明書の取得、及びMySejahteraアプリをダウンロードし、健康情報やワクチン接種状況等の必要事項を入力しておくことが必要となります。ワクチン接種完了者には、同アプリ上でデジタルトラベラーズカード(青)が発行され、ワクチン接種未完了者には、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行されます。デジタルトラベラーズカード(青)が発行された場合(ワクチン接種完了者)は、渡航前の陰性証明の取得及び入国後の隔離が不要となりますが、デジタルトラベラーズカード(赤)が発行された場合は、渡航前の陰性証明書の取得及び入国後検査及び隔離が必要となります。なお、ワクチン接種完了者に加えて、17歳以下の者、COVID-19に感染し回復から6~60日以内の者は、渡航前の陰性証明書の取得及び渡航後の入国時検査が不要となります。

 

4.ミャンマー

4.1 COVID-19 及びクーデターの規制状況

  COVID-19 の陽性率は低くなり、感染状況は落ち着いております。また、夜間外出禁止令について、22時以降が禁止されていた規制が24時以降の外出禁止となり、緩和されました。

4.2 入国規制

国際旅客便の着陸禁止措置が4月17日で解除され、タイやマレーシア等の周辺国からのフライトの運航が再開されています。日本からの直行便のANA便は直行便が廃止になり、6月よりタイ経由便が再開されました。

e-visa申請も4月1日から再開されています。取得に当たり、ミャンマー国営保険会社の保険の購入が必須となっています。入国後の隔離措置について、6月17日より空港到着時の迅速抗原検査(RDT 検査)が不要となり、指定の施設等での隔離は不要なりました。

 

5.メキシコ

5.1 COVID-19関連の規制状況

7月もCOVID-19新規感染者数は増加の傾向を見せ、7月13日には新規感染者数が37,346 人を記録しました。連邦政府による新たな規制はありませんが、施設内の収容人数制限などを再開した州も見られます。

5.2 入国規制

メキシコへの入国について、政府による外国人への入国制限等は行われていません。

 

6.バングラデシュ

6.1 COVID-19関連の規制状況

 バングラデシュでは、感染者が増加しておりましたが、現在は落ち着いており、7月28日、24時間以内に報告されたCOVID-19による死亡は5名、陽性者は626名で、陽性率は6.83%となりました。

6.2 入国規制

 WHOが承認したCOVID-19ワクチン接種を完了した者は、公式なワクチン接種証明書を持参することでバングラデシュ入国が認められ、PCR検査の陰性証明書は必要とされません。3回目のブースター接種まで完了している必要はないとされています。ワクチン接種を完了していない者は、出発72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明書を持参していれば、入国が認められます。

 また、バングラデシュに入国するすべての者は、渡航出発前3日以内にオンライン上(https://healthdeclaration.dghs.gov.bd/)で必要事項を入力し、QRコード付きの健康申告書(Health Declaration Form)の画像データ又は印刷したコピーを、入国後にイミグレーションで提示する必要があります。

 また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い停止していた到着時ビザ(オンアライバルビザ)が、5月17日から全面再開されています。

 

7.フィリピン

7.1 COVID-19関連の規制状況

 フィリピンの COVID-19 感染者は累計376万488人で、死者数は累計60,694人です(2022年7月27日現在)。新規感染者は2021年の年末以降急激に増加し、2022年1月中旬をピークとしてその後減少傾向にあります。現在は1日約1500~3000人程度の新規感染者が報告されています。

7.2 入国規制

 ワクチン接種等の要件を満たす外国人の、商用・観光目的の査証免除による入国及び既存の有効な査証による入国が認められています(日本は査証免除対象国です)。出発国出発日時から14日間以上前に、2回接種するワクチンを2回接種済みであること、あるいは1回接種するワクチンを接種済みであることが必要です。また、フィリピン到着時、出発国出発前48時間以内の陰性のポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査結果、または検査室における24時間以内に陰性の抗原検査を提示することが必要です。

さらに、4月1日00時01分以降、海外から入国する外国人は入国免除文書(EED)を必要とせずにフィリピンに入国することができます。

 

8.ベトナム

8.1 COVID-19関連の規制状況

  ベトナムにおける2022年7月26日午前9時の時点での累計感染者数は1076万8844人で、1か月前の6月25日の時点より2万5953人増加しました。今年3月末から4月末の1か月間では100万人以上増加していたことに比べると、ベトナムにおける新規感染者数は大幅に減少しており、6月に入ってからは、多くの日で1000人を下回っていますが、7月下旬からはやや増加傾向にあります(7月26日の新規感染者数は1460人でした。)。

 ベトナムでは、4月頃から社会・経済活動や市民生活における新型コロナに関連する規制はほぼ撤廃されています。日常生活におけるマスクの着用は一応推奨されており、多くの市民は、商業施設や商店などではマスクを着用していますが、着用していない者も少しずつですが増えているように思われます。

8.2 入国規制

 新型コロナウイルス感染拡大防止のために実施されていた外国からの入国制限はすべて撤廃され、コロナ前の入国手続に戻っています。日本国籍者の入国については、入国の目的にかかわらず(すなわち観光目的であっても)、

    ・ ベトナム滞在期間が15日以内であること

 ・ ベトナム入国の時点でパスポートの有効期間が6か月以上あること

 ・ ベトナムの法令の規定により入国禁止措置の対象となっていないこと

という要件を満たせば、ビザなしでベトナムへの入国が認められます。また、以前は必要とされていた陰性証明書の取得、ワクチン接種証明書の提示、入国前のオンライン医療申告も不要で、入国後の隔離もありません。

 なお、従前、ビザなし入国については「前回のベトナム出国時から30日以上経過していること」という条件が付されていましたが、この条件は撤廃されています。

 また、APECビジネストラベルカード(ABTC)の所持者についてはビザ免除で最大90日目まで滞在できる措置についても復活しています。

8.3 ベトナムから日本への帰国者・入国者に対する規制

 日本では、7月26日現在、国籍を問わず外国からの入国者に対する水際対策措置が実施されており、ベトナムは「黄」区分に指定されています。したがって、ワクチン3回目接種者については、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機も不要となっています。ワクチン3回目接種者でない場合は、入国時検査を実施した上で、原則、7日間の自宅等待機を求めることとし、入国後3日目以降に自主的に受けた検査の結果が陰性であれば、その後の自宅等待機の継続を求めないこととされていいます。

第2.各国の監査役等の設置条件と監査役等の資格や権限

1.日本

 監査役は、一般的には「取締役の職務の執行を監査する業務監査」の権限を有します(会社法381条1項(以下、「会社法」省略します))が、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。監査役の設置義務や、監査権限の範囲などは、会社の形態によって異なる定めがおかれています。

  1. 監査役の設置義務

 取締役会設置会社及び会計監査人設置会社(それぞれ監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)では、監査役を置かなければならないとされています(327条2項本文、同条3項)。ただし、取締役会設置会社であっても、公開会社でない会計参与設置会社では、監査役を置く必要はありません(同条2項ただし書)。なお、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役は置くことができません(同条4項)。

  1. 監査役の選任及び解任

 監査役は、株主総会の普通決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数)で選任されます(329条1項、309条1項、341条)。ただし、解任の場合には、特別決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数)によらなければなりません(339条1項、309条2項7号)。

  1. 監査役の資格等

 監査役の資格等については取締役の規定が準用されており(335条1項)、以下に該当する場合は、監査役となることができません。

  1. 法人(331条1項1号)
  2. 会社法若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、又は金融商品取引法に規定されている罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者(同項3号)
  3. (b)以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)(同項4号)
  4. 成年被後見人が取締役に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合は、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない(331条の2、1項)
  5. 被保佐人が取締役に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない(同条2項)

 監査役の任期は、基本的に、選任後4年以内に終了する事業年度のうち、最終の定時株主総会の終結の時までですが(336条1項)、公開会社でない株式会社において、定款によって、その任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時まで伸長することができます(同条2項)。 

  1. 監査役の権限

 監査役は、取締役の職務の執行を監査することにあります(381条1項)。ただし、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(389条1項)。また、監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができ(381条2項)、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます(381条3項)。

 取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができます(385条1項)。

 その他、会計監査人が、職務上の義務に違反し又は職務を怠ったときや会計監査人としてふさわしくない非行があったとき、心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないときは、当該会計監査人を解任することができます(340条1項)。

  1. 監査役の義務

 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社の場合は、取締役会)に報告しなければなりません(382条)。また、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければなりません(383条1項)。さらに、監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならず、この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければなりません(384条)。

 

2.タイ

(1) 業務監査を行う機関

 タイでは、日本の監査役のように業務監査を行う機関はありません。取締役の任免は株主総会においてなされることとされており(民商法典1151条)、株主が業務監査の機能を果たしています。

 一方で、上場会社では、独立取締役3人以上から構成される監査委員会の設置が必要です(Notification of the Capital Market Supervisory Board No. Tor Jor. 39/2559 17条3号)。

(2) 会計監査を行う機関(監査人)の設置条件、資格および権限

 タイでは、全ての会社が監査人(Auditor)を設置しなければならず、創立総会において、最初の監査人の選任をすることが定められています(民商法典1108条6号、公開会社法35条7号)。監査人は、定時株主総会において選任され、再任することができます(同法1209条、公開会社法120条)。

 会社との間に利害関係を有する者、取締役、従業員などは、監査人になることができません(民商法典1208条、公開会社法121条)。また、監査人は、原則として、タイ国公認会計士でなければなりません(会計法11条)。

 監査人は、いつでも会社の帳簿を閲覧する権利を有します(民商法典1213条、公開会社法126条)。また、会社の帳簿などの閲覧について、監査人は、会社の取締役、従業員、代理人などに対して質問し、関連する証拠書類の提出を求める権利を有します(民商法典1213条、公開会社法122条)。

 非公開会社では、監査人により作成された財務諸表は、その基準日の4か月以内に株主総会において承認を受ける必要があります(民商法典1197条)。

公開会社では、監査人は、会計監査法に基づいて作成した報告書を定時株主総会に提出する必要があります(公開会社法123条)。また、監査人により作成された財務諸表は、年度末日後4か月以内に開催する定時株主総会において承認を受ける必要があります(同法112条1項)。

 

3.マレーシア

 マレーシアにおいては、日本の監査役のように業務監査を行う監査役は会社法上存在しません。マレーシア会社法(Companies Act 2016)では、会計面での監査を行う監査人を規定しています。

(1) 監査人の選任

 マレーシアでは、原則として全ての会社は最低1名の監査人を選任し、会社の会計を監査させなければなりません。

 会社は、各会計年度に監査人を選任しなければならず(会社法267条1項及び271条1項)、株主総会普通決議により選任されます(会社法267条4項及び271条4項)。新しく設立された会社の場合は、公開会社であれば年次株主総会の前に(会社法271条2項)、非公開会社であれば最初の財務諸表を会社登記官に提出する30日前に(会社法267条3項)、取締役が監査人を選任する必要があります。

(2) 監査人の権限・義務

 コモンロー上、監査人は、能力及び注意力のある監査人が用いると考えられる技量及び注意を用いなければならならないとされます。また、会社法上も監査人は会社に対して以下の義務を負っています。

 監査人は、決算報告書及び会社の会計及び決算報告書に関する記録について株主に報告しなければなりません(会社法266条1項)。公開会社の場合、監査済会計書類は、年次株主総会で審議される必要があり、非公開会社の場合は、会計済監査書類は株主に回付されるか、又は株主総会で審議される必要があります(同項)。

 なお、会社法266条7項により、監査人は自己が関係する議案について、株主総会に出席して発言する権利を有しています。

 また、会社法285条1項は、公開会社の監査人に対して年次総会に出席する義務を課しています。監査人は、総会において、会計書類について株主の質疑に応答する必要があります(同項)。非公開会社については、年次総会は開催されませんが、株主総会において会計書類の監査に関する審議がされる場合、監査人は出席する義務を負います(会社法285条2項)。

(3) 監査人事務所

 会社法264条4項に基づき、会社は事務所(firm)を監査人として選任することが認められています。事務所を監査人とする場合、選任時に当該事務所のパートナーだった者を監査人に選任したのと同等の効果を有します(会社法264条6項)。したがって、事務所のパートナー全員が監査人として承認され、かつ、欠格事由に該当しないことが必要となります。

 また、会社はLLP(Limited Liability Partnership)を監査人として選任することも可能です(同条7項)。

 

4.ミャンマー

(1) 監査役の有無

 ミャンマーにおいては日本の監査役のように業務監査を行う監査役は会社法上存在せず、会計面での監査を行う監査人(auditor)が規定されています。

(2) 監査人の設置条件、資格および権限

 会社は、株主総会において次年度の株主総会まで任期を務める監査人を選任しなければならず、監査人は必要的機関です。なお、監査人は、清算に関する会社法235条、236条及び237条の場合を除き、役員には含まれません。

公開会社(公開会社の子会社である非公開会社を含む)の場合は、大統領により会社の監査人として行為する証明書を交付された者でなければならないものの、非公開会社の場合にはかかる制限規定は存在しません。

 また、以下の者は監査人に就任できません。

【監査人非適格者】

1 当該会社の取締役又は役員
2 当該会社の取締役又は役員の配偶者
3 公開会社(公開会社の子会社を含む)の場合、上記取締役又は役員により雇用されている者
4 当該会社の債務者

(3) 監査人選任手続

定時株主総会において監査人を選任します。選任方法としては、株主は、会社に対し、定時株主総会開催日の14日前までに監査人の職に任命する候補者を通知します。会社は、退任する監査人に当該通知の写しを送付し、かつ、公告又は附属定款で規定するその他の方法により、定時株主総会の7日前までに株主に通知します。

会社設立後最初の株主総会までの期間を任期とする監査人は取締役が任命することができます。 また、監査人の補充の必要が生じた場合、取締役は監査人を補充できます。

 

5.メキシコ

本稿では、商事会社一般法(Ley General Sociedades Mercantiles)に定める監査機関を解説します。

(1) 監査を行う機関

メキシコには、日本の監査役に相当する取締役の職務執行の監査を担う機関として、監査役(Comisario)という機関が存在します。

一部、証券市場法(Ley de Mercado de Valores)などに従い、一定の条件を満たす機関設計を行った法人の場合、当該監査役とは異なる監査機関の設置が求められますが、本稿ではその詳細は割愛します。

(2) 監査役

① 設置が求められる会社形態

監査役は、株式会社(Sociedad Anónima)および株式合資会社(Sociedad en Comandita por Acciones)において設置が求められます。日本とは異なり、メキシコにおいては、取締役会が設置されなくても株式会社あるいは株式合資会社であれば監査役の設置が求められます。

② 監査役の資格

監査役には、公認会計士などの資格は要求されておらず、株主または第三者であってもよいとされています。ただし、次の者は監査役にはなれません。

取引を行う資格がない者は、公的仲介人(Corredor Público:商取引において、鑑定人としての役割、法的助言を与える役割、紛争の仲介人としての役割および公証人としての役割を果たすメキシコ連邦政府から認可された法律の専門家)、更生していない破産者、偽造、横領、収賄、強要など財産に対する犯罪で有罪判決を受けた者と規定されています。

③ 監査役の権限および義務

監査役は、取締役の職務執行および会計の監査を行うために、以下のような権限および義務を有します。

 

 

6.バングラデシュ

 バングラデシュの会社法では、会計書類を調査する監査人(Auditor)の設置が義務づけられていますが、日本の会社法上の監査役のように、業務監査を行う機関は定められていません。会社法にて規定されている会社秘書役(Company Secretary)の主な役割や責任のひとつに「会社のコンプライアンスに関する対応」があり、Chartered Secretaries Act 2010に基づき設立されたInstitute of Chartered Secretaries of Bangladesh (ICSB)が発行している「BANGLADESH SECRETARIAL STANDARD(BSS)」にて、会社秘書役によって会社が遵守すべき事項が定められております。コンプライアンスという観点で、会社が任意に会社秘書役を選任することができます。なお、公開会社では、会社秘書役の選任が必要とされています。

  1. 監査人の適格要件

 監査人は、バングラデシュ公認会計士法(Bangladesh Chartered Accountants Order, 1973)における公認会計士またはパートナー全員が公認会計士である会計事務所のいずれかであることが要件となっています(会社法212条(1)(以下、本項において会社法については条文番号のみを記すものとします))。また、当該会社の役員又は従業員、当該会社の役員又は従業員のパートナーもしくは雇用関係にある者、当該会社に債務がある者若しくは当該会社に対する第三者の債務を保証している者、当該会社のマネージングエージェントである法人の取締役や株主である者等は、監査人に就任することができません(同条(2))。

     2. 監査人の選任と報酬

 会社は、株主総会にて、次の株主総会までが任期となる1人または複数の監査人を選任し、選任から7日以内に、選任した監査人にその旨を通知しなければなりません。なお、選任のためには、本人が事前に書面で同意する必要があります(210条(1))。選任された監査人は、選任の通知を受けた日から30日以内に、商業登記所に対して書面にて諾否について通知しなければなりません(同条(2))。なお、株主総会にて監査人が選任されない場合、政府が任命することができます(同条(4))。

会社の最初の監査人は会社の登記の日から1か月以内に取締役会により任命され、任命された監査人の任期は、最初の定時株主総会の終結時までとされています(同条(6))。取締役会は、監査人に欠員が生じた場合、当該欠員を補充することができますが、欠員が続く場合、残存する監査人が務めることができ(同条(7))、任期は次の定時株主総会までとなります(同条(8))。任期中の解任は、株主総会の特別決議によってのみ行うことができます(同条(9))。

株主総会にて任期が終了する監査人は、次に該当する場合を除き、再任されなければならないとされています。① 再任の不適格事由に該当することとなった場合、② 監査人本人による再任を受諾しない旨の書面による通知、③ 他の者を任命する決議又は現在の監査人を再任しない旨を明示的に示した決議がなされたこと。また、会社は、監査人の死亡、能力欠如、不正等を理由に再任しないことを決議することができます(同条(3))。

株主総会にて、現任の監査人以外の者を任命するまたは現任の監査人を再任しない決議のためには、特別な通知が必要で(211条(1))、当該通知を受けた監査人は、株主に対して意見を表明することを要求できます。会社は、当該要求を受けた場合は、期限を過ぎたものでない限り、株主総会の招集通知において、意見がなされた旨およびその内容を記載しなければなりません(同条(3))。

監査人の報酬は、原則として株主総会の決議又は株主総会で決定された方法により決定されますが、監査人が取締役会又は政府により任命された場合は、それぞれ取締役会又は政府により決定されます(210条(10))。

      3. 監査人の権限および責務

 会社の監査人は、会社の財務諸表、帳簿及び帳票をいつでも閲覧できる権利を有し、また、会社の役員に対して、監査人の職務遂行のために必要な情報及び説明を求める権利を有します(213条(1))。監査人は会社が作成する決算書や会計帳簿などの監査を行い、監査報告書を作成し、貸借対照表や損益計算書とともに、株主総会に提出し、決算書について監査人としての適正な意見を表明しなければなりません(同条(3))。 

 

7.フィリピン

  1. 財務役(Treasurer)制度

フィリピンでは、株式会社は、役員として、社長、財務役及び秘書役を選任する必要があります。社長は、財務役を兼任することはできませんが、財務役は、取締役である必要はありません。財務役は、国籍及びフィリピン国内居住の有無を問わず就任することができます。

財務役は、財務報告書類の正確性を確認し、署名・提出する義務や、会社預金の管理、会計帳簿の保管する職務を担いますが、それを監査をする権限及び義務を負いません。

      2. 財務諸表の監査制度

フィリピンでは、事業年度の終了日から120日以内に、監査済財務諸表をSECに提出する必要があります。かかる監査は、監査役等のような会社内部の役員によってなされるのではなく、原則独立した外部の資格のある公認会計士によってされる必要があり、株主総会による承認を得る必要があります。

 

8.ベトナム

(1) 有限責任会社の監査役

 日系企業がベトナム設立する現地法人の多くは1人社員有限責任会社又は2人以上社員有限責任会社ですが、いずれの形式であっても監査役を設置する義務はありません(2020年に企業法が改正される前は、社員が11名以上の有限責任会社については監査役・監査役会の設置が義務付けられていましたが、改正により撤廃されました。)。

 但し、国営企業が会社所有者である1名有限責任会社、国家が定款資本若しくは議決権の50%を超えて有する2名以上社員有限責任会社、又は国営企業の子会社である2名以上社員有限責任会社については、監査役・監査役会の設置が義務付けられています。

(2) 株式会社の監査役

 株式会社の場合、株主数が11名未満であり、かつ、各株主の保有株式数が会社の株式総数の50%未満である場合、監査役・監査役会の設置は任意とされています。その他の場合、監査役を選任して監査役会を設置するか、取締役の20%以上を独立取締役(会社と一定の関係を有しない取締役)とし、かつ、取締役会に直属する会計監査委員会を設置しなければならないとされています。

 監査役会を設置する場合、監査役の人数は3名から5名とし、任期は5年を超えない範囲とされています(再任は可能)。また、監査役会の過半数はベトナムに常駐している監査役でなければならず、監査役会の長は、経済、財政、会計、監査、法律、企業管理の専門又は企業の経営活動と関連する専門の中の1つに属する大学以上を卒業していなければならないとされています。

 一方、会計監査委員会を設置する場合、構成員は2名以上とし、会計監査委員会の会長は独立取締役(一定の要件を満たし、就任前に会社と密接な関係を有していない取締役)でなければならず、また、会長以外の構成員は、非常勤の取締役会の構成員でなければならないとされています。

 

発行 TNY Group

 

【TNYグループ及びTNYグループ各社】

・TNY Group

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・東京・大阪(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所(東京及び大阪)、永田国際特許事務所)

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・佐賀(TNY国際法律事務所)
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・タイ(TNY Legal Co., Ltd.)

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・マレーシア(TNY Consulting (Malaysia) SDN.BHD.)

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・ミャンマー(TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.)

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・メキシコ(TNY LEGAL MEXICO S.A. DE C.V.)

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・イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co.,Ltd.)

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・エストニア(TNY Legal Estonia OU)

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・バングラデシュ(TNY Legal Bangladesh)

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・フィリピン(GVA TNY Consulting Philippines, Inc.)

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・ベトナム(KAGAYAKI TNY LEGAL (VIETNAM) CO., Ltd.)

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