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「各国のトピック、最新の法令等の紹介」TNY Group Newsletter No.76

1.日本

(1) 生成AIと著作権                                                              

 文章生成・画像生成等の生成AIの業務利用が急速に拡大する一方、企業現場において生成AIが出力したコンテンツが他人の著作権を侵害していないか、どのように確認・管理すべきか、という実務上の対応に注目が集まっています。

(2) 著作権侵害の成立要件と免責事由

著作権侵害は、①創作性が認められる他人の「著作物」に対し、②既存の表現の本質的な特徴と類似しているという「類似性」が存在し、③既存の著作物に基づいて作成されたという「依拠性」が認められ、その上で④許諾や引用などの「正当な権限・免責事由が存在しない」場合に成立します。日本の著作権法では、公共の利益や技術振興の観点から、例外的に許諾なく著作物を利用できる「権利制限(免責)規定」が第30条以降(第30条-第50条)において定められています。AIと著作権の関係についても、この第30条以下の枠組みに基づき、「学習段階」と「生成・利用段階」に分けて判断されます。具体的には、学習段階については、著作物の表現そのものを「享受」することを目的としない技術開発や情報解析のための学習は、原則として著作権者の許諾なく行える(侵害とならない)旨が第30条の4で定められています(ただし、著作権者の利益を不当に害する場合等の例外を除きます)。これに対し、生成・利用段階については、第30条の4等は適用されず、前記の一般的な著作権の侵害基準に基づき判断されます。

(3)実務上の注意点

既存の著作物名を直接プロンプトに入力して「〇〇風の画像を生成させる」「〇〇の文章を真似て作成させる」といった指示を出す行為は、依拠性および類似性を肯定させる要因になりますので、そのようなプロンプトを入力しないよう意識することが必要です。また、権利侵害を主張された場合に反論できるよう備えるために、プロンプトの入力履歴や生成プロセスを記録・保存しておくことも有用であるといえるでしょう。

2.タイ

(1)タイの個人情報保護法に違反した場合の刑事罰について

タイの個人情報保護法(以下「PDPA」といいます。)は、違反時のペナルティが多様です。「行政罰」「刑事罰」「懲罰的損害賠償制度」が定められていますが、場合によっては多層的に責任を負う場合があります。このうち、「刑事罰」についてはPDPAの第79条から第81条にかけて規定されており、今回は、第79条と第80条についてご紹介します。

(2)第79条と第80条

ア PDPA第79条は、データ管理者が、PDPA第26条が定める政治信条や犯罪歴などのセンシティブデータに関する同意のない利用や目的外利用等の違反行為((第27条違反)、または不適切な国外移転(第28条違反)についての罰則を定める規定です。第1項で、違反行為により他人の名誉を傷つけたり、社会的嫌悪・侮辱の対象にさせたり、損害を与えるおそれがある場合に、最長 6ヶ月の懲役又は最高50万バーツの罰金あるいはその両方が科されるとされています。

また、第2項では、違反行為により自分自身や第三者のために不正な利益を得る目的であった場合には最高1年の懲役又は最高100万バーツの罰金が科されると規定されています。また、第3項で、本条に関しては当事者同士での和解(示談)が可能とされています。

 イ PDPA第80条では、PDPAに基づく職務を遂行する中で個人データを知り得た者が職務上アクセスできた個人データを、正当な理由なく第三者に公開した場合に、最長 6ヶ月の懲役又は最高50万バーツの罰金あるいはその両方が科されるとされています。同条については、第79条のように示談が可能であるというような定めはありません。

 ウ PDPA第79条は罰則の対象がセンシティブデータに限定される点、不正の目的の立証の難しさ、和解が可能であり立件前に示談で被害届が取下げられるケースがあること等を考慮すると、同条のみを根拠に検察が立件・起訴を行うハードルは高いと考えられます。他方対象データの制限がなく示談も不可とされる第80条はこのようなハードルが低いといえるでしょう。

3.マレーシア

⑴ 2026年政府調達法(Government Procurement Act 2026)の概要

 2026年5月26日、2026年政府調達法(Government Procurement Act 2026。以下「GPA」という)が公布されました。従来、政府調達は主として財務省が発出する指示、通達および規則によって規律されていましたが、GPAの制定により政府調達に関する包括的な法的枠組みが整備されることになりました。

⑵ 政府調達の定義

 政府調達(Government procurement)とは、連邦政府もしくは州政府の資金配分によって全部もしくは一部が賄われる、または連邦政府もしくは州政府が所有する資産を使用した、物品・サービスの供給または工事のための調達と定義されています(GPA5条⑴)。

⑶ 適用範囲

 GPAは、政府調達を管理・実施する者および参加する者の双方に適用されます(GPA2条⑴)。ただし、国際機関・外国機関の融資条件に従う調達は適用除外とされています(GPA3条)。

⑷ 政府調達手続きのアウトライン

 政府調達手続きは以下の段階を経て進められます。

 ① 調達を実施する調達主体(procuring entity)の特定

 ② 供給業者(supplier)または請負業者(contractor)による登録官(Registrar)への事前登 

   録(GPA17条~19条)

 ③ 調達方式の決定(GPA28条~31条)

 ④ 利益相反の開示(GPA37条) 

 ⑤ 承認権限者による承認(GPA10条~13条)

 ⑥ 契約の締結(GPA33条)

⑸ 登録制度

 政府調達への参加には、登録が必須とされています(GPA17条)。登録官は申請者が適格かつ適切な者であること等を確認のうえ登録証明書を発行します(GPA18条⑷)。

 なお、登録拒否事由として、申請者がマレーシア国内外の汚職関連犯罪による有罪判決を受けている場合、競争法違反の認定をされている場合、破産または清算手続き中である場合等があげられています(GPA19条)。

⑹ 公正性確保措置

① 利益相反の開示義務

 政府調達に関与する者に対し、直接および間接の実質的所有権にかかる利害関係ならびに利益相反を生じさせる可能性のある関係を含む利害関係の開示が義務付けられています(GPA37条⑴)。この開示義務に違反した場合は、25万リンギット以下の罰金もしくは5年以下の禁錮またはその両方が科せられます(GPA37条⑸)。

② 調達プロセスへの介入禁止

 調達手続きの進行中に、直接もしくは間接に、脅迫、不当な影響力若しくはその他の方法により、調達への介入しまたは干渉することは禁止されています(GPA38条⑴)。違反した場合は50万リンギット以下の罰金若しくは5年以下の禁錮またはその両方が科せられます(GPA38条2項)。

⑺ 不服申立・紛争解決制度

 GPAは三段階の救済制度を導入しました。

 第一に、政府調達に不服のある者は、調達機関に対して異議を申し立てることができます(GPA61条⑴、⑵)。第二に、調達機関の決定に不服がある場合には審査委員会による審査を求めることができます(GPA61条⑶)。第三に、審査委員会の決定に不服がある場合は、政府調達審査審判所(Appeal Tribunal)に審査請求することができます。この場合、審査委員会の決定から14日以内に申立てを行う必要があります(GPA68条⑵)。

4.ミャンマー

携帯端末の携帯品申告(旅客申告)が義務化へ

2026年7月14日、中央機器識別登録(CEIR)およびEIRシステムプロジェクト運営委員会は、国際空港(ヤンゴン、ネピドー、マンダレー)からミャンマーに入国する旅客に対し、CEIRに登録されていない携帯端末について「携帯品申告書(PDフォーム)」の提出を義務付けると発表しました。また同発表では、各旅客は最初のPDフォーム提出日から1年以内に、最大2台までの携帯端末を登録できるとされています。

主な要件:この発表に基づき、ミャンマーの国際空港から入国する旅客で、CEIRに登録されていない携帯端末を所持している場合は、以下の要件を遵守する必要があります。

また、旅客は携帯端末の課税価格に基づき、CEIRシステムで査定される適用税の全額を支払う必要がある点にも留意が必要です。これらの税金には、PDフォームの提出日から30日以内に支払うべき5%の関税(CD)、5%の商業税(CT)、2% border 前払所得税(AIT)、および該当する場合は没収免除罰金(redemption fine)が含まれます。所定の期間内に登録手続きを完了しなかった場合、または適用される税金を支払わなかった場合は、CEIRシステムを通じて罰則が科される可能性があります。

5.メキシコ

(1) メキシコ産業財産庁の特許協力条約の国際調査機関および予備審査機関への指定

2026年7月、世界知的所有権機関(以下、「WIPO」という)の特許協力条約(以下、「PCT」という)同盟総会は、メキシコ産業財産庁(以下、「IMPI」という)を、PCTに基づく国際調査機関(以下、「ISA」という)および国際予備審査機関(以下、「IPEA」という)に指定することを承認しました。IMPIが実際に業務を開始した場合、ISA・IPEAとして世界で26番目、中南米地域では、ブラジル、チリに次ぐ3番目の機関となります。IMPIは、2025年12月にISAおよびIPEAとしての指定を申請しました。これを受け、2026年2月に開催されたPCT技術協力委員会は、IMPIの指定を全会一致でPCT同盟総会に勧告していました。

PCT国際出願では、ISAが、出願された発明に関連する先行技術を調査し、国際調査報告および新規性、進歩性、産業上の利用可能性等に関する見解を作成します。また、出願人が国際予備審査を請求した場合には、IPEAが国際予備審査を行います。これらの調査・審査結果は、出願人が各国・地域において国内段階へ移行するかを判断するための資料となりますが、各国・地域の特許庁はその結論に拘束されず、特許の付与または拒絶は、各国・地域の法令に基づいて判断されます。

承認された協定案によると、IMPIは、中南米・カリブ地域のPCT締約国の受理官庁がIMPIを管轄ISAとして指定し、国際出願または国際調査用の翻訳文がスペイン語である場合に、国際調査を行います。複数のISAが利用可能な場合には、出願人がIMPIを選択します。IPEAについては、同様の条件のもと、IMPIが国際調査報告を作成した国際出願について、国際予備審査を行うことが予定されています。

(2) 特許協力条約に基づく国際出願・国内段階移行の動向

WIPOは2026年6月、「PCT Yearly Review 2026」を公表しました。同報告書は、PCT制度を通じた特許出願の動向を分析する年次報告書です。なお、国際段階の出願件数は2025年の推計値、国内段階移行件数は2024年のデータであり、対象年および集計基準が異なるため、両者を一連の手続における連続した件数として直接比較することはできません。

受理官庁別の集計では、IMPIに提出されたPCT国際出願は、2024年の94件から2025年には121件となり、28.7%増加しました。一方、出願人の居住国を基準とする集計では、メキシコ居住者によるPCT国際出願は、2024年の154件から2025年には180件となり、16.9%増加しました。中南米地域における割合は14.3%で、ブラジルの619件およびチリの202件に次ぐ件数となっています。 国内段階については、2024年にIMPIへ移行したPCT出願が12,325件で、前年の12,567件から1.9%減少しました。IMPIは、国内段階移行件数の多い上位20官庁のうち10位でした。また、2024年にIMPIに対して行われた非居住者による特許出願のうち、PCT国内段階移行によるものの割合は81.9%でした。

6.バングラデシュ

⑴ 2023年バングラデシュ特許法の概要

 2023年バングラデシュ特許法(Bangladesh Patents Act, 2023)は、2023年11月13日に国会で可決され、2025年2月27日より施行されています。同法により、2022年に制定されたバングラデシュ特許法は廃止されました。

⑵ 所管官庁

 同法に基づく特許行政は、従来と同様、特許意匠商標局(DPDT:Department of Patents, Industrial Designs and Trademarks)が所管します(同法3条)。DPDT局長(Director General)には、証拠調べや召喚などに関して民事裁判所に準じる権限が付与されており(同法56条)、出願審査から異議申立ての処理(同法19条、同法20条)まで、一元的に対応する行政体制が敷かれています。

⑶ 特許を受けられない発明

 同法6条は、特許の対象とならない事項として、発見・科学理論・数学的方法、事業方法・コンピュータプログラム自体、治療・診断方法、公序良俗違反の発明などを列挙しています。また、原子力の利用に関する発明については、特許付与が認められません(同法7条)。

⑷ 出願・審査手続

ア 出願

 特許出願をなしうるのは、発明者本人のほか、発明の所有権を主張する者、死亡した発明者の法定代理人、共同発明者、雇用契約に別段の定めがない限り職務発明における雇用者です(同法4条)。出願は1発明1件を原則とし、所定様式でDPDTに提出する必要があります(同法8条⑴)。

 優先期間は12か月で(同法5条(e))、出願日は受理日をもって確定します(同法16条)。分割出願は最初の出願から3年以内に最大3件まですることができ(同法14条)、明細書等の補正は新規事項の追加にあたらない範囲でのみ認められます(同法11条、12条)。

イ 出願の公開及び審査 

 出願は原則として出願日から18か月経過後に公開されます。出願人の請求により早期公開も可能です(同法17条⑴、⑷)。国家安全保障に関わる発明は非公開のまま関係当局の審査に付されます(同法18条)。審査請求は出願日から36か月以内(延長時は最長39か月)に行う必要があり、請求がなければ出願は放棄したものとみなされます(同法21条)。審査では新規性・進歩性・産業上の利用可能性等が審査されます(同法22条、23条)。

 審査の結果は付与・拒絶いずれも書面で通知され(同法24条)、特許権の存続期間は出願日または優先日から20年です(同法28条⑴)。

ウ 異議申し立て 

 特許付与前は、出願公開後、いつでも利害関係人が異議を申し立てることができますが、出願公開から少なくとも6か月を経過するまでは特許を付与することはできません。(同法19条)。特許付与後は、公表から24か月以内であれば異議申立てができます(同法20条)。

⑸ 強制実施権

 強制実施権とは、特許権者の意思にかかわらず、一定の要件のもとで政府機関の決定により第三者に特許発明の実施を認める制度です。主な申請事由として、①公共の利益(国家安全保障・栄養・保健・国民経済の発展等)、②裁判所または管轄権を有する行政機関による不公正競争の認定、③特許権者による排他的権利の濫用、④輸入以外の方法によりバングラデシュ国内で特許発明が実施されておらず、かつ特許権者が国内製造が経済的または技術的に実行可能であることを立証できない場合、⑤後願特許が先願特許と比較して経済的に重要な技術的進歩を伴う発明を主張しており、当該先願特許を侵害することなくしては実施できない場合、⑥許諾申込みから4か月以内の正当理由なき拒否、⑦固定用量配合医薬品の製造および販売を含む必需品または必需サービスの供給を確保する必要がある場合が挙げられています(同法36条⑴各号)。半導体技術については、政府の非商業的使用または不公正競争是正の場合に限定されます(同条⑺)。

 このほか、国家的緊急事態や公衆衛生上の緊急事態(HIV・結核・マラリア等の感染症、癌・糖尿病・循環器疾患等の非感染性疾患を含む)が認められる場合には、官報告示により60日以内という迅速な手続きで強制実施権が設定されます(同法38条)。

 強制実施権は原則として非独占的で、事業の一部としてでない限り譲渡できません(同法36条⑸)。

⑹ 救済措置

ア 侵害訴訟・差止命令

 特許権者は、製品特許・方法特許それぞれの排他的権利(同法25条)を侵害する者に対し、管轄権のある裁判所(地方裁判所に限らない)に訴訟を提起できます(同法44条⑴、45条)。

 仮差止めは、相手方に審尋の機会を与えずに一方的に発することは原則として認められず(同法47条⑴、⑵)、その許否は一応の証拠の有無、当事者の利益衡量、回復不能な損害、医薬品訴訟であれば入手可能性への影響等を考慮して判断されます(同条⑶)。特許権者が国内で実施していない場合など、一定の場合には差止め・特定の救済が制限されます(同条⑺)。

イ 特許の取消

 特許の効力自体を争う手段としては、利害関係人による裁判所への取消申立てのほか(同法32条)、公衆衛生等の公益を害する場合の政府による取消宣言があります(同法34条)。

ウ 損害賠償等の救済  特許権侵害が認められた場合、裁判所は恒久的差止めに加え、損害賠償または利益の返還を命じることができます(同法49条⑴、⑵)、賠償額は公表日、侵害者への通知日、価格の妥当性、国内製造の有無等を考慮して算定されます(同条⑶)。

7.フィリピン

(1) フィリピンにおける公務員への贈答――実務上の判断ポイント

海外で事業を行う際、公務員への贈答について、「食品であれば問題ない」「一定金額以下であれば許容される」といった明確な基準があるかどうかは、実務上気になるところです。

しかし、フィリピンでは、公務員への贈り物について、品目や金額による一律の基準は設けられていません。

この点においてフィリピンは、公務員に対する贈収賄について全体として厳格な立場を取っています。そのため、「少額だから問題ない」と安易に判断することは避ける必要があります。

(2)「社会的儀礼の範囲」であれば許容される可能性

フィリピンでも、社会的な儀礼や通常の感謝の範囲にとどまる贈答については、贈収賄に該当しないと評価される余地があります。

もっとも、その判断は金額の多寡だけで決まるものではありません。次のような事情を総合的に考慮し、「社会的儀礼の範囲内といえるか」が判断されます。

(3)判断にあたって確認すべき4つのポイント

1.公務員側から要求されたものではないこと

公務員本人から、贈り物や接待を明示的または黙示的に求められている場合、社会的儀礼として説明することは難しくなります。贈答は、あくまでも自発的なものである必要があります。

2.名目的・些少な価値にとどまること

贈り物が「些少な価値」といえるかは、単純に金額だけで判断されるわけではありません。受領者の給与水準、贈答の頻度、贈答によって期待される便益なども含めて、総合的に判断されます。

特に、1回あたりの金額が少額であっても、同じ相手に繰り返し贈答を行う場合には、全体として「些少」とはいえない方向に評価される可能性があります。

フィリピンでは一律の金額基準が設けられていないため、特定の金額をもって「ここまでなら安全」と判断することは困難です。

3.便宜の期待や見返りと結びついていないこと

許認可、入札、検査、契約、税務対応など、何らかの案件が係属中である場合や、近い将来に手続が予定されている場合には、贈答が便宜の提供を期待したものと受け取られるおそれが非常に高まります。

案件の完了後に、純粋な感謝として行われる贈答については許容される可能性がありますが、その場合でも、金額、時期、頻度、相手方との関係などを慎重に検討する必要があります。

4.慣習に沿った通常の感謝の範囲であること

贈答の内容やタイミングが、現地の社会的慣習に沿ったものであるかも判断要素となります。

ただし、「現地では一般的に行われている」という事情だけで、直ちに適法性が認められるわけではありません。慣習に沿っている場合でも、見返りの期待や職務上の影響が疑われる状況であれば、贈収賄と評価されるリスクが残ります。

(4)実務上はどのように対応すべきか

実務上、最も安全なのは、現在係属している案件、または今後予定されている案件の関係者には、食品や記念品を含め、原則として贈り物をしない運用です。

また、金額だけで機械的に判断するのではなく、少なくとも次の点を事前に確認することが重要です。

さらに、贈答を行う場合には、贈答の目的、相手方、金額、時期、関連案件の有無、社内承認の経緯などを記録として残しておくことが強く推奨されます。

8.ベトナム

ベトナムの現行労働法上、労働契約は、原則として、使用者と労働者との間で書面により締結する必要があります。ここでいう「書面」とは、物理形式又は電子形式のいずれによっても作成することが可能です。ただし、電子形式による場合は、電子取引に関する法令上の要件も満たす必要があります。

以下では、電子労働契約を締結する際に考慮すべき主要な法的及び実務的事項を紹介します。

(1) 労働法令上の基本要件

電子労働契約は、物理的な書面形式で締結される労働契約と同様に、ベトナムの労働法令に基づき労働契約に適用されるすべての法定要件を満たさなければなりません。

(2) 電子労働契約の有効要件

電子労働契約が法的に有効となるためには、さらに、以下の要件を満たす必要があります。

電子取引、サイバー情報セキュリティ、データ、個人情報保護及び文書保存に関する現行法令その他の関連規定に従い、労働契約を締結すること。

レベル2のVNeIDアカウントを保有し、有効なデジタル署名及びタイムスタンプサービスを利用し、政令第337/2025/ND-CP号に規定されるその他の技術的及び法的要件を満たす方法により、労働契約を締結すること。

なお、VNeIDとは、Vietnam Electronic Identification(ベトナム電子識別)を意味し、ベトナム公安省傘下の国家人口データセンターによって開発されたモバイルアプリケーションです。VNeIDは、人口、電子識別及び電子認証に関するベトナムの国家データベースを基盤として構築されたデジタル識別プラットフォームであり、従来の物理的な身分証明書に代わる電子的な本人確認手段として利用されます。ベトナム国民、ベトナム法に基づき適法に設立された組織(企業その他の組織を含みます。)及び法定要件を満たすベトナム居住外国人は、それぞれに対応するVNeIDアカウントを取得することができます。

契約当事者間に別段の合意がない限り、電子労働契約は、最後の契約当事者がデジタル署名を付した時点で効力を生じます。ただし、すべての契約当事者のデジタル署名にタイムスタンプが適切に付され、データメッセージが認可を受けた電子契約サービス提供者によって認証され、かつ、当該認証が電子労働契約に組み込まれていることを条件とします。

適切に締結され、認証された電子労働契約を、認可を受けた電子契約サービス提供者を通じて、ベトナム内務省が管理する電子労働契約プラットフォーム(https://hopdonglaodong.moha.gov.vn/landing-page/)へ送信し、当該電子労働契約に係る識別コードを取得すること。

なお、電子労働契約プラットフォームは、電子労働契約に関するデータを一元的に管理するシステムであり、電子労働契約の検索、検証及び認証を容易にする機能を有します。

(3) 契約当事者への送付

電子労働契約は、当事者間で合意した電子的方法により、データメッセージの形式で、労働者及び使用者の双方に送付されなければなりません。

(4) 電子労働契約の保存 適法に締結された電子労働契約は、その終了日から少なくとも10年間保存する必要があります。使用者と労働者が複数の電子労働契約を連続して締結した場合、当該10年間の保存期間は、最後の労働契約の終了日から起算されます。

9.インド

⑴ 2026年改正倒産・破産法典の概要

 2026年4月6日、2026年改正倒産・破産法典(Insolvency and Bankruptcy Code(Amendment)Act, 2026( (以下、「本改正法」といいます)が公布されました。現時点では一部の規定のみが施行されており、段階的な施行が予定されています。

 本改正は、2016年に制定された倒産・破産法(以下、「IBC」といいます)の大規模な改正であり、取引先企業の倒産リスク管理、債権回収実務、および保証債務の履行の観点から重要なものとなっています。IBC自体は廃止されず、引き続き効力を有します。

⑵ 定義規定の整備

 会社法上の評価人と同義である「登録評価人」の概念、および倒産専門家、倒産専門家機関、情報機関、登録評価人等を包含する「サービス提供者」の概念が新たに導入され、規制上の監督が一本化されました(本改正法2条(IBC3条(27A)、(31A)[新設]))。

 また、「担保権」には、当事者間の合意や取り決めなしに単に法律の作用によって生じる担保権は含まれない旨が明確化されました(本改正法2条(IBC3条(31)Explanation[新設]))。

 さらに、「否認対象取引」が新たに定義されました。優先取引(IBC43条)、過小評価取引(IBC45条)、債権者詐害取引(IBC49条)および高利与信取引(IBC50条)に規定される取引を併せて否認対象取引として構成するとしています(本改正法3条(IBC5条(2A)[新設]))。

⑶ 企業倒産処理手続(CIRP)の迅速化

 審判機関は企業倒産処理手続(CIRP)申立受理から14日以内に許可・却下を決定する義務を負い、決定できない場合は理由を書面で記録しなければなりません(本改正法4条(ICB7条(5)[新設])。却下は7日間の補正機会付与後にのみ可能で、情報照会機関の債務不履行記録があれば原則それのみで不履行が認定されます(本改正法4条(IBC7条(5)Explanation II[新設])。同様の期限・記録義務は運営債権者申立て・債務者自身の申立てにも拡張されました (本改正法5条(IBC9条(5)ただし書[新設])、本改正法6条(IBC10条(4)但ただし書[新設]))。

⑷ 申立ての取下げ

 債権者委員会(Committee of Creditors)の議決権の90%の承認を要するという原則を維持しつつ、委員会の構成前、または解決計画(resolution plan)提出の最初の招請が発せられた後は、取下げが認められない旨が明文で規定されました。審判機関は、取下げ申立てを受理してから30日以内に決定を下す義務を負い、この期間内に決定できない場合は、遅延の理由を書面で記録しなければなりません(本改正法8条(IBC12A条(2)、(3)[改正])。

⑸ 否認対象取引および詐欺的・不正取引に関する制度の統合

ア 統一的な申立て制度の創設

 優先的取引(IBC43条)、過小評価取引(IBC45条)、搾取的信用取引(IBC50条)、および詐欺的または不正な取引(IBC66条)に関して、統一的な申立て制度が創設されました(本改正法28条(IBC47条⑴[改正]))。これにより、清算人または解決専門家(resolution professional)がかかる取引を審判機関に報告しなかった場合、債権者(単独または共同で)、企業債務者の構成員またはパートナーが自ら裁定機関に申立てを行うことが可能となりました。

イ 審判機関の認定と懲戒手続への連動

 審判機関が、本改正法28条(IBC47条⑴[改正])に規定される取引が存在すると認定した場合、清算人または解決専門家によって申立てがなされた場合と同一の効果を有する命令を発することができます(本改正法28条(IBC47条(2)[改正]))。さらに、清算人または解決専門家が、十分な情報または機会を有していたにもかかわらず報告義務を履行しなかったと認められる場合、審判機関はインド倒産破産委員会(IBBI)に対し、当該専門家に対する懲戒手続を開始するよう指示しなければなりません(本改正法28条(IBC47条(3)[改正]))。

 かかる取引に関する手続は、CIRPまたは清算手続の終了後も継続します(本改正法16条(IBC26条[改正]))。

⑹ 保証人の資産の譲渡

 企業債務者のCIRP係属中に、企業債務者の個人保証人または法人保証人の資産について、担保権の実行によりすでに占有を取得した債権者が、債権者委員会の事前承認を条件として、当該資産を解決計画の一部として譲渡することを認める制度が新たに導入されました(本改正法17条(IBC28A条(1)[新設]))。

 法人保証人自体が倒産手続に付されている場合には、当該保証人の債権者委員会の議決権の66%以上の承認が必要であり、個人保証人の場合には、当該保証人の債権者の価額の4分の3を超える承認が必要です。譲渡により得られた金額は保証人の債務に充当され、剰余金があれば保証人に返還されます(本改正法17条(IBC28A条(3)[新設]))。

10.アラブ首長国連邦(ドバイ)

(1) 子どものSNS利用禁止

 アラブ首長国連邦では、子どものデジタル安全保障に関する連邦令2025年第26号に引き続き、2026年6月17日に15歳以下の子どものSNS使用を一律禁止する閣議決定(2026年第106号)が発表されました。

(2) 制限内容

 サービス提供者の設立場所、業務形態、サービスの提供方法またはその運営に用いられる技術インフラの別に関わらず、公的または準公的なアカウントまたはプロファイルの開設を可能とし、社会的交流を促進し、内容の公開または配布を可能とし、若しくはアルゴリズムまたは自動化技術によって内容を表示、順位付け若しくは推奨するもの、をソーシャル・メディア・プラットフォーム(「SMP」))と定義し、15歳未満の子どもの、個人アカウントの開設、利用および運営を禁止しました。 また、15歳以上16歳未満の子供については、その個人アカウントに強化されたデジタル保護が確保され、年齢層に相応した特別の規制と対応を施されることを条件に、SMPへのアクセスを許容されます。

(3) プロバイダーの対応

 上記の規制を実行化するため、SMPには、15歳未満の子どものアカウント開設を許容せず、SMPの全機能へのアクセスを遮断する措置をとることが求められるとともに、15歳以上16歳未満の子どものために、視聴可能なコンテンツの分類と制限のための効果的なメカニズムの適用、子ども及びその保護者に知られていない利用者との共有・交流の制限、アクセス可能な時間の制御または特定のための技術手法の提供等、子どもの保護を確保するために必要な措置を講じることが求められます。

 また、SMPには、個人情報の取得・利用の最小化等に配慮した有効な年齢確認方法を導入し、規定以下の年齢の子どもが所有するアカウントを探査して、それを直ちに利用できないようにする措置をとり、子どもを商業目的で実施する追跡・行動プロファイル等に基づく直接広告の対象とすることを回避し、子どもに関連したデジタル安全保障上のリスクを定期的に評価して、報告書を提出すること等が義務付けられます。

 これらの措置をとる猶予期間は12カ月とされています。

(4) 保護者の監督責任

 子どもの保護者には、子どもがアカウントを開設・利用しないよう、子どもがデジタル・リスクにさらされることないように有効な監督を行い、子どもの年齢と成熟度に応じた自覚を醸成することが求められます。

11. インドネシア

1.定款変更や会社設立、解散などの手続きに関して

インドネシア法務人権大臣令2025年第49号(以後、「新規則」といいます)が施行されており、定款変更や会社設立、解散などの手続きが規定されました。

新規則では、定款や会社データ修正時の行政審査が加わり、従来と比べ審査プロセスの長期化が予想されるため、余裕を持ったスケジュール管理が必要となります。

また、年次報告義務や実質的支配者(Beneficial Owner)に関する報告義務に関する規定がより厳格化され、より一層コンプライアンス体制の整備が求められます。

2. 年次報告義務

会社法2007年第40号(以下、「会社法」といいます)において、取締役は、監査役会の審査後、会社の事業年度終了から最長6か月以内に、年次報告書を株主総会に提出しなければなりません(会社法第66条)。本手続きに加え、新規則では、年次報告書に対する株主総会の承認を公正証書に記載する必要があり、公証人を通じて取締役が公正証書の署名日から最長30日以内に法務人権大臣へ提出しなければなりません(新規則第16条)。

3. 罰則

有限責任株式会社が年次報告の提出義務を怠った場合、または提出期限を徒過した場合には、行政制裁として書面による警告(SABHのシステム上、または電子メール)が付されます。当該通知を受領したにもかかわらず、受領日から30日以内に義務が履行されない場合、当該会社はSABHへのアクセスが停止され、登記変更や役員変更等の各種会社手続を行うことができなくなります(新規則第18条)。

 アクセス停止の制裁を受けた場合、アクセス停止解除の申請を行えば再度アクセスが可能です。停止解除の申請には、オンライン上での所定フォームの入力と、年次報告書のアップロードが必要です(新規則第19条)。

4. 実質的支配者(Beneficial Owner)報告義務

実質的支配者(Beneficial Owner)の報告義務に関しては、新規則の制定以前にも、マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策の一環として、規定されていましたが(マネーロンダリング罪およびテロ資金供与罪の予防と撲滅の枠組みにおける法人の実質的支配者認知原則の適用に関する大統領令2018年第13号〈以下、「大統領令2018年第13号」といいます〉第3条)、具体的な報告手続きや運用について整備が不十分でした。

新規則では、当該報告の手続きについてより具体的に規定され、会社設立時、実質的支配者の変更時に関連する書類として、a)取締役から公証人への実質的支配者についての情報提出に関する委任状、b) 実質的支配者の氏名を記載した取締役の宣誓書、c) 実質的支配者本人の同意書の提出が必要となりました(新規則第6条)。

会社における実質的支配者の定義は大統領令2018年第13号第4条に記載されており、定款に基づき25%を超える株式を保有する者や、25%を超える議決権を有する者、取締役または監査役の任命、交代または解任の権限を有する者などが該当します。

実質的支配者に関する報告義務については、年次報告義務のような明確な行政制裁が詳細に規定されているわけではありません。しかし、当該義務を怠った場合には、会社設立や各種届出、ライセンス関係等の行政手続きが進まなくなる可能性があり、形式的な義務にとどまらず、実務上の前提条件として機能している点に留意が必要です。会社設立を検討している場合または実質的支配者に変更がある場合には、当該手続きへの適切な対応が求められます。