台湾の法律情報
【台湾進出方法に関するQ&A】
Q1.台湾で事業を行う場合、どのような形態がありますか?
A1.日本企業が台湾に進出する場合、おもに5つの会社形態から設立することができます。具体的には、営利活動ができない会社形態と営利活動が可能な会社形態で分けることができます。
営利活動が可能な事業形態は3種類あり、以下のとおりです。
① 現地法人 / 有限責任組合
② 支店
③ 工事事務所
また、営利活動できない事業形態は2種類あり、以下のとおりです。
④ 駐在員事務所(代表者事務所)
⑤ 連絡事務所 のように分類されます。
Q2.駐在員事務所(Liaison Office)の特徴は何ですか?
A2.台湾での駐在事務所には、連絡事務所(Liaison Office)と代表者事務所(Representative Office)の形態があります。
連絡事務所と代表者事務所の設置後の活動内容は区別されており、代表者事務所は台湾に代表者を正式に登録した場合の駐在事務所であり、本店の訴訟代理人として登録されるので、台湾で本店のための営業行為ではない法律行為を行うことができます。
本店の補助的な業務を行うだけの場合は、法人税は免除されます。
また、不動産の購入や賃貸借契約により一定の場所を確保して、事務所を置けば設置が完了するように、設立手続きが簡単なことも特徴です。
Q3.支店(Branch Office)の特徴は何ですか?
A3.支店(Branch Office)は、法律上は本店と同一法人扱いになるので、営業行為ができますが、範囲が本店の営業範囲の行為に限定されることが特徴です。
また、外国会社の台湾支店の場合は、必ず「外国会社の登記国籍名」+「外国会社名の中国語訳」+「支店名」の形式で名を付けなければなりません。
加えて、支店名称の登記前に、台湾経済部商業司(台湾会社登記の主管機関)の許可を取得する必要があります。
Q4.現地法人の特徴は何ですか?
A4.資本金は基本的には1元から、株主も1社(法人株主)又は2名(個人株主)以上で設立可能です。業種もネガティブリスト(武器・弾薬の製造等)に列挙されている項目以外は自由に行うことができます。現地法人は、日本企業単独での進出でも、台湾企業との合弁でも可能で、定款は現地法人としての定款が必要です。
Q5.台湾の公開会社と非公開会社の違いは何ですか?
A5.株式の公開発行の場合には、証券交易法に基づき行う必要がありますが、非公開発行の場合は、原則として会社法に基づき行うことになっています。
また、2021年12月末に改正会社法が施行され、公開会社においてテレビ会議による株主総会の開催が可能となり、非公開会社においては、天災、事変又はその他不可抗力の状況がある場合、一定期間内は定款の定めがなくてもテレビ会議による株主総会の開催が可能となりました。
書面決議も、公開会社では不可能ですが、非公開会社では可能となっています。
Q6.会社設立にはどのような手続が必要ですか?
A6.
●現地法人、支店の場合
・事前審査(中国語表記の会社名と営業項目の確認)
・投資申請(FIA申請)
・銀行口座の開設・資本金の払込・審査
・有限責任組合の設立申請(現地法人設立の場合は会社登記申請)
・税籍登記(営業登記)
・英語での会社名審査
・貿易申請
●駐在員事務所の場合
・税籍登記に加えて、設立申請が必要
Q7.株式の種類にはどのようなものがありますか?
A7.台湾では、日本と同様に、普通株式とは権利内容の異なる種類株式を発行することが可能です。種類株式を発行するには、権利内容を定款に具体的に明記する必要があります(会社法第157条第1項)。
種類株式の種類として、議決制限株式、自己株式、複数議決権株式、優先株式等を発行できます。
Q8.台湾で会社を設立する際の最低資本金はいくらですか?
A8.台湾では資本金がいくら以上という最低資本金の規定がありませんが、資本金額を設定する際に会社設立後に支払うべき維持費用を考慮に入れる必要があります。
【台湾の会社法に関するQ&A】
Q1.株主は何名必要ですか?
A1.発起人及び株主は、政府または法人株主の場合1名以上、個人の場合は2人以上必要とされています。
Q2.減資手続きは難しいですか?
A2.株式会社が減資を行う場合、同時に会社の定款を変更しなければならないため、台湾の会社法第277条に従い、当該減資について株主会(株主総会)の特別決議を行わなければなりません。これはすなわち、特別決議において、発行済み株式総数の3分の2以上を代表する株主の出席、出席株主の議決権の過半数の同意が必要であることを意味します。
また、賃借対照表および財産目録を作成し、各債権者にそれぞれ通知および公告し、かつ30日以上の期限を指定して、債権者が期限内に異議を申し立てることができる旨を表明しなければならず、そうしない場合は、減資をもって債権者に対抗することができません。
したがって、特別決議で承認されたら難しくはありませんが、一定の手続きを経る必要があります。
Q3.取締役は何名必要ですか?
A3.台湾においては、取締役は3名以上必要です(会社法第192条第1項)。
Q4.定款を作成する必要がありますか?
A4.株式会社形態、会社設立の際に必要な書類として定款が必須事項となっています。
Q5.株主総会を定期的に開催する必要がありますか?
A5.株主総会は、定時と臨時の2種類があります。
定時株主総会は、少なくとも毎年1回は招集しなければなりません。定時株主総会を開催しなかった場合、会社代表者は過料を課される可能性があります。
会社法170条の規定によれば、定時株主総会は原則として、各会計年度が終了した後、6か月以内に開催しなければなりません。
台湾では、会計年度として「暦年制」(毎年1月1日から12月31日を一年度とする)を採用しているため、各年度における定時株主総会開催の最終期限は、翌年の6月30日となります。
臨時株主総会は、必要なときはいつでも招集することができます。
Q6.台湾において監査役を選任する必要はありますか?
A6.2018年の改正により、株主が単一法人の会社(完全子会社)は、定款に定めることにより、監査役を置かないことも可能となりました。これは、完全子会社の場合、1人の株主が取締役の人選について完全な決定権を有しており、また、保護すべき他の株主が存在しないことから、監査役の設置に実益が無いという考えに基づくものです。
これに対し、株主が2人以上存在する株式会社については、株主の権益を保護するため、監査役の設置義務を排除することができません。
Q7.取締役の報酬は自由に決めて良いのですか?
A7.取締役の報酬等については、定款で定めていない場合は株主総会の決議によって定めるとされています(台湾会社法第196条)。しかし株主総会は、決議をもってしても、取締役の報酬額について、取締役会が自ら決定するよう委任することはできません。
【台湾の労働法に関するQ&A】
Q1.台湾の最低賃金額はいくらですか?
A1.現在の最低賃金は月額2万6,400元(約12万1440円)ですが、2024年1月1日から約4.05%引き上げた月額2万7,470元(約12万6,362円、1台湾元=約4.6円)とされます。時給ベースでは、現行の176元(約810円)から183元(約842円)に引き上げられます。
Q2.台湾で雇用契約書の締結は必須ですか?
A2.台湾では労働基準法上、書面にて労働契約を作成しなくてはならないという規定はありません。しかし実務上、労使間の権利義務関係を明確にするために、書面明記によって契約書を作成する企業が一般的です。
Q3.台湾において外国人雇用規制はありますか?
A3.台湾では労働力不足に対応するため、台湾人の雇用に影響を及ぼさないという条件で、民間人材仲介会社を通した方式などで外国人労働者の受入れを制度化しています。受入れにあたっては、対象業種や受入れ枠を規制しています。
外国人が台湾で就業する場合、有償または無償にかかわらず、原則労働部に許可申請が必要で、外国人が就業可能な職種は次のとおりです〔就業服務法第46条〕。
1.専門性または技術性を有する職業
2.政府の認可を受けて出資または設立する事業の主管者
3.次の学校の教師(以下「外国人教師」)
a.公立または公認の私立短期大学以上の学校または外国人学校の教師
b.公立または公認の私立高等学校以下の学校の外国語教師の免許をもつ教師
c.公立または公認の私立実験高等学校のバイリンガル部またはバイリンガル学校の学科教師
4.補習教育法に基づく公認の短期補習クラスの専任教師
5.スポーツコーチおよび選手
6.宗教、芸術、および演芸に関する職業
7.商船、作業船およびその他交通部から特別許可を得た船舶の船員
8.海洋漁労の労働
9.家政および看護の労働
10.台湾の重大建設プロジェクトや経済社会の発展に必要であり、中央主管機関が指定する職業
11.その他特殊な性質により、外国人の雇用が必要であり、中央主管機関の個別許可を得た者
Q4.台湾において試用期間の規制はありますか?
A4.台湾の労働基準法は、試用期間を定めることを明確に禁止してはいません。実務上も、多くの会社が 3ヶ月間の試用期間を設けています。 なお、試用期間中に労働者を不採用にする場合、労働基準法第 16 条により、事前の通知が必要な解雇の基準に基づき対応する必要があります。
Q5.台湾の労働時間の規制は日本と同じですか?
A5.台湾の労働基準法の規定によると、労働者の通常労働時間は 1 日 8 時間を超えてはならず、1 週間で最長 40 時間となっています(労働基準法第 30 条第 1 項)。
日本では、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけないと規定しています。
したがって、台湾の労働時間の規制は日本と類似しています。
Q6.台湾の休憩時間の規制はありますか?
A6.労働者は4時間労働するごとに30分の休憩時間を与えられます(労働基準法第35条)。ただしシフト制又は作業に連続性があるか緊急性がある場合、使用者は勤務時間内において別途休憩時間を調整できます。
Q7.台湾の時間外労働手当の割増率はいくらですか?
A7.残業代については、1日につき最初の2時間までが通常の労働時間に対する賃金プラスその1.33倍(1/3)以上、次の2時間までが通常の労働時間に対する賃金額プラスその1.67倍(2/3)以上、休日は2倍以上(通常賃金と同額以上の割増)を増加支給するとされています。(台湾労働基準法24条)
Q8.台湾の有給休暇は何日ですか?
A8.労働者には勤続年数に応じて以下表のように特別休暇(有給休暇)が与えられます。
勤続年数 | 休暇日数 |
6か月以上1年未満 | 3日 |
1年以上2年未満 | 7日 |
2年以上3年未満 | 10日 |
3年以上5年未満 | 毎年14日 |
5年以上10年未満 | 毎年15日 |
10年以上(*) | 16日~30日 |
(*)10年以上の勤続者には毎年1日追加され、最高で30日となる。
Q9.台湾では、どのような場合に解雇が認められていますか?
A9.台湾では法律上確立された合法的解雇方法によらない限り、従業員の解雇は認められません。労働基準法において、法律上認められる解雇事由が明確に定められています。
・予告が必要な解雇
営業損失、事業縮小、不可抗力による 1か月を超える事業中断、事業の性質の変化により、やむを得ず人員を削減する場合であって、労働者を他の職務に配置転換する事ができず、または当該労働者がその他の業務を引き受ける能力がない時(労働基準法第11条)。
・予告が必要ない解雇
雇用時の虚偽申告、著しい法令違反や暴力行為、懲役刑、会社の就業規則からの著しい逸脱、会社財産の損壊、守秘義務違反、休暇以外の不当な職場離脱の事由がある時(労働基準法第12条)。
・大量解雇
大量解雇労働者保護法に基づき行う必要があります。
【ビザに関するQ&A】
Q1.台湾で働く場合、どのようなビザを取得する必要がありますか?
A1.日本人が台湾へ行く場合、ビザが無くても90日以内の滞在日数であれば渡航が可能です。たとえば、商談や展示会参加などの日本本社からの出張の場合は、ビザの必要はありませんが、90日を超えて滞在し、かつ、台湾で仕事を得て働くためには、就労ビザ、ワーキングホリデー制度を利用するビザ、台湾戸籍を持っている人と結婚する配偶者ビザなどが必要です。
その他、就労ビザは主に、(1)120日未満の短期滞在を前提とした停留ビザ(2)180日以上の長期滞在を前提とした長期ビザの2種類に分けられます。
Q2.就労ビザの取得要件はありますか?
A2.就労ビザの申請条件としては、台湾国外の大学卒の場合は、4年生大学卒かつ2年間以上の就業経験があること(大学院卒の場合は就業経験不問)、高卒・短大卒ならば5年以上の就業経験があることなど、学歴・就業経験が問われます。
日本語教師の場合、日本国籍であること、日本語教育に関する訓練を受けていることなどが問われます。
Q3.就労ビザの有効期限はありますか?
A3.ワーキングホリデービザは最大180日間で、更新すればさらに180日滞在期間が付与されます。
現地でワーホリビザから就労ビザへ切り替えることも可能です。
また、商用シングルビザは有効期限90日、商用マルチプルビザは1年、居留ビザは有効期限90日です。
Q4.就労ビザの申請手続はどのように行うのですか?
A4.外国人が経営や就労のために長期駐在する場合のビザ取得は、労働部の就業許可証の取得後、就労ビザの取得の2段階が必要です。
① 現地で労働許可(許可公文書)の取得
必要書類を揃えて、事業主が労働部へ許可証の申請を行います。その際は審査には約10日程度かかります。
② 就労ビザの取得
審査に通り、許可証が取得できたら、続いて外交部領事事務局へ就労ビザの申請を行います(日本国内にいる場合は台北駐日経済文化代表処などの駐在機関へ申請)。発行までには約10日~14日程度かかります。許可が得られると就労ビザが発行されます。
また、就労ビザが取得できた後は、入国後15日以内に移民署へ行き、外僑居留証を取得する必要があります。これに必要な日数は5日~2週間程度です。
Q5.就労ビザの申請のための必要書類は何ですか?
A5.就労ビザ申請には、
① 申請書
② 最近6カ月以内に撮影されたカラー写真2枚
③ 有効期限まで6カ月以上のパスポートおよびその写し
④ 労働許可書およびその写し
⑤ 現住所証明
*本人申請・・・原本要提示 [住民票・運転免許証・健康保険証・マイナンバーカード](いずれか1点)
*代理申請・・・申請者の上記証明書いずれかの全頁コピー [住民票のみ要原本]
代理人の身分証明書/委任状は不要
が必要です。
【外資規制に関するQ&A】
Q1.出資比率に上限がある業種はありますか?
A1.基本的には、会社法上、外国人投資条例による出資比率、出資額、投資家の国内住所保有などの制限はなく、出資比率は100%に達することも可能です。
しかし、ラジオ、テレビ経営業及び第1類電気通信等一部業種、航空や配電などに関連する業種に出資比率制限が設けられています。
各業種別の制限項目および外国人出資比率の詳細については、経済部投資審議委員会へ問い合わせが必要です。
Q2.台湾でフランチャイズ規制はありますか?
A2.日本と同様に台湾では、フランチャイズ事業を規制する特別な法律はありません。
【台湾の弁護士制度に関するQ&A】
Q1.台湾の弁護士資格はどうすれば取得できますか?
A1.台湾では、法学部を卒業して司法試験を受けるのが原則ですが、他学部生もロースクールを修了すれば司法試験を受験することができます。
台湾の司法試験は、2006年までは司法 官試験と弁護士試験との二本立てで実施されていましたが、2007年から新たに司法官と弁護士との統一試験(新司法試験)が実施されています。
まず、第一段階の択一式試験で受験者の基本的な法的知識を確認します。第二段階で記述式試験と口述試験が行われ、合計成績上位者が司法修習を受ける資格を取得します。
合格者は司法研修を受け、弁護士資格を取得します。
Q2.台湾に弁護士会はありますか?
A2.1948年に設立された、中華民国律師公会全国連合会(Taiwan Bar Association)という全国規模の弁護士会があり、弁護士個人ではなく、台湾の各県市にある全16地方弁護士会が会員です。
弁護士法に従い、律師懲戒委員会及び律師懲戒覆審委員会が弁護士業務を行っている弁護士に対する懲戒権を持っています。
Q3.台湾に司法書士や行政書士等の隣接法律職はありますか?
A3.台湾では、非弁活動の禁止がないことから、様々な代理業が開業され、社会問題化しているものもあります。例えば、台湾には「社会保険労務士」の資格制度は存在しませんが、「労働保険代理人」という名称で代理人業を開業する者がいます。この者は労災不服申立や示談の代理を行い、高い手数料を得ています。労働保険代理人の元祖は労働保険局(県の外局)OBであり、現在、そのOBの 「教え子」が労働保険代理人の大半を占めています。この OB は職員時代の人脈などを使ってブローカー的な業務を行って問題視されています。他にも、司法書士に相当する「土地家屋登録代理人」、「会計士」などが隣接法律職としてあります。
現在、弁理士に相当する「特許代理人」についての法案(専理師法)が国会に上程されていますが、審理未了です。
現行制度では、特許登録代理業務は、特許代 理人規則(省令相当の行政命令)により主管官庁で代理人登録して行うことができます。
【台湾の清算及び破産に関するQ&A】
Q1.台湾では会社の清算方法はどのようなものがありますか?
A1.台湾において外国企業の現地法人を清算する手続きには、以下の3つの段階があります。
(1)登記の取り消し
(2)税金に関する処理
(3)法院(裁判所)へ清算が完了したことを報告
Q2.破産法による清算はどのような手続ですか?
A2.台湾の破産手続きの進行について、具体的には、破産財団に属する財産の範囲を確定し、裁判所から選任された破産管財人が破産財団に属する財産を競売などの方法で売却し、それによって取得した金銭から、破産管財人が破産財団の処分および管理などによって生じた費用を控除し、残った部分を各債権者に分配することになります。
なお、破産者が債務弁済に供する財産を有しておらず、破産財団を破産管財人の管理費用に供することができないときには、裁判所は、破産法第63条の規定により、破産の申し立てを棄却することができます。
破産管財人は前述の手続きに基づいて破産財団に属する財産を清算し、各債権者の債権額の割合に応じて分配した後、裁判所に報告しなければなりません。
裁判所は当該報告書を受領した後、破産手続きを終結させる裁定を下すことが可能です。
通常、台湾企業は既存の債務を弁済するため、正式な破産手続きに入る前に、当該企業の経営陣が会社の資産について買主を探し、可能な限り有利な価格で処分することが一般的です。
その理由としては、破産手続きに入ると、企業の資産に対する管理・処分権が、当該企業の経営陣から、裁判所が選任した破産管財人に移るからです。
次に、破産手続きに入った後の破産管財人の役割として、公平中立の原則の下、各債権者の利益を配慮する立場に立ち、各債権者に対して弁済または配当をします。