マレーシア法律情報Q&A

【マレーシア進出方法に関するQ&A】

Q1. マレーシアで事業を行う場合、どのような形態がありますか?
A1: マレーシアに進出する際の形態としては、以下の4つのいずれかとなります。
(1)パートナーシップ
(2)個人事業
(3)現地法人
(4)支店
 
Q2. 個人事業やパートナーシップの場合の責任負担はどうなりますか?
A2:個人事業における個人経営者及びパートナーシップにおけるパートナーは、事業に関する債務について直接責任を負います。なお、個人事業やパートナーシップの場合、事業登録法(Registration of Business Act 1956)に基づきマレーシア企業委員会(CCM)の登録を行う必要があります。
 
Q3. マレーシアの会社形態はどのような形態がありますか?
A3: 以下の3つの形態があります。
(1) 株式有限責任会社
(2) 保証有限責任会社
(3) 無限責任会社
 
Q4. マレーシアの公開会社と非公開会社の違いは何ですか?
A4: 非公開会社(private company)とは、その付属定款において、株主による株式の譲渡を制限し、株主数を50名以下に制限し、かつ、その株式若しくは社債の引受け又は金銭の預託の公募を禁止している会社を意味します。
他方、公開会社(public company)とは、公衆からの資本調達を行おうとする会社です。
 
Q5. 外国会社の支店であっても現地法人と同様に事業は可能ですか?
A5:国内取引・協同組合・消費者省(Ministry of Domestic Trade Co-operatives and Consumerism)が公表しているマレーシア流通取引サービスへの外国資本参入に関するガイドライン(Guideline on Foreign Participation in the Distributive Trade Services Malaysia)においては、外国資本の流通取引業者は会社法に基づく現地法人でなければならない旨規定しているため、流通取引業を行う場合には支店ではなく、現地法人の形態を採る必要があります。
 
Q6. 会社の商号は自由に決めることができますか?
A6: 会社の商号は以下の場合を除き、原則として自由に決めることができます。
(1) 望ましくない場合または容認できない場合
(2) 既存の会社または法人、事業体と同じ名称の場合
(3) 法律に基づき保有されている商号と同じ場合
(4) 担当大臣が登録を容認しないよう登記官に指示した商号
 
実務上は、商号使用の可否について、CCMに対して確認書を提出します。
 
Q7. 会社設立時の申請書においてどのような事項を記載する必要がありますか?
A7:申請書には以下の事項を記載する必要があります。
(1) 申請する会社の名称
(2) 申請する会社が公開か未公開か
(3) 申請する会社の事業内容
(4) 登記上の事務所の予定住所
(5) 株主が個人の場合、各株主の氏名、身分、国籍、居住地の住所。
株主が法人である場合、法人名、登記番号、法人の登記上の住所
(6) 取締役となる者の氏名、国籍、居住地の住所
(7) 会社秘書役の氏名、国籍、居住地の住所
(8) 株主有限責任会社の場合、株主が保有する予定の株式の種類および保有予定数などの詳細
(9) 登記官が求めるその他の情報
 
Q8. 会社秘書役とは何ですか?
A8: 日本には存在しない制度なので馴染みがないと思われますが、マレーシアでは必ず会社秘書役を1名は選任する必要があります。
会社秘書役とは、マレーシア国内に主たる居住地を有している18歳以上のマレーシア国籍の者で、かつマレーシア公認秘書役協会、マレーシア会計士協会、マレーシア弁護士協会、マレーシア会社秘書役協会、マレーシア公認会計士協会、サバ法律協会、サラワク弁護士協会の会員またはCCMが承認した者を意味します。
 
Q9. マレーシアにおいて種類株を発行することは可能ですか?
A9: 会社は株式ごとに異なる権利が付与された異なる種類の株式を発行することができます。
 
Q10. マレーシアで会社を設立する際の最低資本金はいくらですか?
A10: 現地法人を設立するための最低資本金はありません。しかし、外国人がビザを取得する関係で、一定の金額以上の資本金が要求されます。
詳細については、「ビザに関するQ&A」をご参照下さい。
 
Q11. マレーシアで会社を設立する際に必ずマレーシア人を株主に入れる必要はありますか?
A11: 原則として株主にマレーシア人を入れることは必要ではありません。
 
Q12. マレーシアにおいて監査役を選任する必要はありますか?
A12:監査役の選任が必要です。ただし、登記官は、小規模会社 休眠会社、免除対象会社などの非公開会社に対して監査役の選任を免除する権限を有しており、選任が不要となることがあります。
 
Q13. マレーシアにおける小規模会社にはどのような会社が該当しますか?
A13: 会計年度内で会社が非公開会社である場合、小規模会社とみなされます。 また、現在の会計年度より直近の 2 会計年度において以下の要件のうち 2 項目を満たしている場合も小規模会社となります。
 
(1) 各会計年度において、会社の収益が 30 万リンギ以下である場合
(2) 各会計年度末において、会社の全資産が 50 万リンギ以下である場合
(3) 各会計年度末において、従業員が 5名以下である場合
 
Q14. マレーシアにおいて休眠会社という概念はありますか?
A14:休眠会社とは、設立以来または過去 3 会計年度にわたって休眠している会社を意味します。 また、会計取引が発生しない場合も休眠会社となります。

【マレーシアの会社法に関するQ&A】

Q1:マレーシアの会社法が最近変更されたと聞きましたが本当ですか?
A1:2017年1月31日、1965年会社法を改正する形で、会社秘書役及び企業再生などの一部の条文を除き、新たな会社法が施行されました。
 
Q2:株主は何名必要ですか?
A2:1965年会社法では、会社設立時に2名以上の株主が必要であったため、最初から1人株主にする形態が認められていませんでした。しかし、新会社法では設立時から株主は1名で良いこととなったため、100%子会社も最初から設立できるようになりました。
 
Q3:額面株式制度はありますか?
A3:1965年会社法では額面株式制度が存在しましたが、新会社法により廃止されました。これに伴い、授権資本制度も廃止されました。今後は柔軟な資金調達を行うことができるようになります。
 
Q4:株主の書面決議は可能ですか?
A4:1965年会社法では常に全株主の署名が必要でしたが、新会社法では、普通決議は過半数、特別決議は75%以上の株主の署名で有効となる旨規定されています。
 
Q5:減資手続きは難しいですか?
A5:1965年会社法では裁判所の承認が常に必要でした。しかし、新会社法では、3つの要件(①株主総会の特別決議による承認、②①の決議から7日以内に内国歳入庁長官(Director General of the Inland Revenue Board)及びマレーシア会社法委員会(Companies Commission of Malaysia)のCEOへの通知、③全ての取締役が減資に関する支払能力宣誓書宣誓書を作成することによって、裁判所の承認を得ずに減資が可能となりました。
 
Q6:取締役の定義
A6:登記上の取締役のみならず、新会社法においては、取締役の過半数がその指示に従って行動することが常態化していれば、当該指示する者も取締役に該当する旨規定しています。
 
Q7:取締役は何名必要ですか?
A7:1965年会社法では2名以上の居住取締役が必要とされていました。しかし、新会社法では、非公開会社(非公開会社とは、株主数が50名以下の会社で、株式の譲渡が制限されており、株式等を公開市場に対して募集してはならないなどの一定の要件を満たす会社)においては、居住取締役は1名で足りることとなりました。なお、新会社法においても、公開会社においては居住取締役が2名以上必要となります。
 
Q8:取締役の報酬は自由に決めて良いのですか?
A8:公開会社、上場会社及びその子会社では、取締役の報酬は株主総会で承認される必要があります。
それ以外の非公開会社では、取締役報酬は取締役会の承認で足り、株主総会の承認は不要です。しかし、当該取締役会決議の14日以内に取締役議事録を株主に通知する義務があり、10%以上の議決権を保有する非公開会社の株主が取締役会で承認された報酬が公正ではないと考える場合、株主総会の承認を得るよう求める権利が規定されています。
 
 
Q9:取締役の年齢に規制はありますか?
A9:1965年会社法では、原則として70歳以上の者は取締役に就任できませんでした。しかし、新会社法では年齢の上限に関する規定は削除され、18歳以上であれば取締役になることができる旨規定されています。
 
Q10:定款を作成する必要がありますか?
A10:1965年会社法では定款を必ず作成する必要がありました。しかし、新会社法では会社が定款を作成するかは任意となりました。なお、既に定款を作成している会社は、新会社法施工後も、当該会社が定款を変更しない限り、そのまま有効なものとしいて取り扱われます。
 
Q11:株主総会を定期的に開催する必要がありますか?
A11:新会社法においては、非公開会社の定時株主総会開催義務が免除されたため、非公開会社の場合には定期的に株主総会を開催する義務はありません。
 
Q12:社印を作成する必要はありますか?
A12:1965年会社法においては、会社はコモンシール(日本の社印類似のもの)を作成する義務が規定されていました。しかし、新会社法では、会社がコモンシールを保有しないことを認め、コモンシールを保有するか否かは会社の任意とされました。コモンシールを保有しない会社の場合、少なくとも2名の権限ある「authorized officer」(取締役、会社秘書役又は取締役会において承認されたその他の者を意味します。)が署名するか、取締役が1名の会社の場合にはその取締役が証人の面前で署名することにより、会社は有効に文書を作成したものとみなされます。

【マレーシアの労働法に関するQ&A】


Q1. マレーシアの最低賃金額はいくらですか?
A1: マレーシアの最低賃金額は全国一律ではありません。
2016年7月1日より、マレー半島部における最低賃金は1時間当たり4.81リンギ(現行4.33リンギ)、月額では1,000リンギ(900リンギ)に、東マレーシアのサバ州、サラワク州およびラブアン連邦直轄地では4.42リンギ(3.85リンギ)、月額920リンギ(800リンギ)となっています。なお、最低賃金は従業員の人数にかかわらず、家事手伝いを除く全ての民間企業に適用されます。最低賃金制度に違反した会社には、2万リンギの罰金、または5年以下の禁錮が科せられます。
Q2. マレーシアの労働法はどのようなものがあるのですか?
A2: 1つの統一された労働法典があるわけではなく、多くの労働関連法が存在します。
主な労働関連の法令は以下のとおりです。
(1) 1955 年雇用法(The Employment Act 1955:EA)
(2) 1952 年労働者災害補償法(Workmen’s Compensation Act 1952)
(3) 1947 年賃金評議会法(The Wages Council Act 1947)
(4) 1950 年週休法(Weekly Holidays Act 1950)
(5) 1990 年住居設備に関する労働者の最低基準法( Workers’ Minimum
Standards of Housing Amenities Act 1990)
(6) 1966 年未成年者雇用法(The Children & Young Persons (Employment) Act
1966)
(7) 1981 年民間職業紹介業法(Private Employment Agencies Act 1981)
(8) 1953 年雇用情報法(Employment Information Act 1953)
(9) 1965 年労働法令(Labour Ordinance (Sabah Cap 67) 1965)
(10) サラワク労働法令(Labour Ordinance Sarawak)
(11) 1999 年職場のセクシャルハラスメントの防止と取り扱いに関する行為準則
(Code of Practice for the Prevention and Handling of Sexual Harassment
at the Workplace 1999)
(12) 1980 年年金法(The Pensions Act 1980)
(13) 1991 年従業員積立基金(The Employees Provident Fund Act 1991 :EPF)
(14) 1969 年労働者社会保障法(The Employees’ Social Security Act 1969)
(15) 1994 年労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act 1994)
(16) 1967 年工場法(Factories and Machinery Act 1967)
(17) 1959 年労働組合法(Trade Unions Act 1959)
(18) 1967 年労使関係法(The Industrial Relations Act 1967)
(19) 1959 年移民法(Immigration Act 1959)
Q3. マレーシアで雇用契約書の締結は必須ですか?
A3: 1955年労働法において、1カ月を超える期間の雇用契約はすべて書面にする必要がある旨規定されています。
Q4. マレーシアにおいて試用期間の規制はありますか?
A4: 試用期間は最長6か月とされています。
Q5. マレーシアの労働時間の規制は日本と同じですか?
A5: 1955年雇用法(月額賃金2,000リンギ以下の労働者に適用される)において、法定労働時間は1日8時間、かつ、週48時間を超えない旨規定されています。
Q6. マレーシアの休憩時間の規制はありますか?
A6: 連続5時間の労働に対して30分以上の休憩を付与する必要があります。
Q7. マレーシアの時間外労働の上限はありますか?
A7: 原則として、時間外労働を含めて1日の最長は10時間とされています。しかし、業務内容によっては12時間まで認められます。この場合、3週間の平均で週48時間を超えないことが要件となります。1か月当たりの時間外労働の上限は104時間となります。
Q8. マレーシアの時間外労働手当の割増率はいくらですか?
A8: 1日当たり8時間を超えた場合、時間外労働手当として通常賃金の50%を支払う必要があります。
休みの日に労働をさせた場合の割増率は当該休みが単なる休日であるか国が定めた祝日であるかによって異なります。
祝日以外の休日労働の場合、4時間未満の労働は通常賃金の半日分、4~8時間の労働は通常賃金の1日分、8時間以上の労働は通常賃金の200%を下回らない金額を支払う必要があります。
祝日労働の場合、8時間未満の労働は通常賃金の300%を下回らない金額、8時間以上の労働は通常賃金450%を下回らない金額を支払う必要があります。
Q.9 マレーシアの有給休暇は何日ですか?
A9: 勤続1 年以上の労働者は、有給休暇を取得する権利が法律上保障されています。取得できる休暇日数は勤続期間によって異なり、勤続2 年未満の場合は8 日、勤続2年以上5 年未満は12 日、勤続5 年以上は16 日とされています。有給休暇の対象期間に労働者が有給休暇の権利を行使しなかった場合は、権利を喪失します。但し、会社の要請により、労働者が有給休暇の権利の全部又は一部を行使しない旨を書面により同意した場合は当該有給休暇に代わる金銭による支払いを受けることができます。
Q10. マレーシアは有給休暇以外にどのような休暇がありますか?
A10: 病気休暇や出産育児休暇があります。
病気休暇の日数も勤続期間によって異なり、勤続2 年未満の場合は年間14 日、勤続2 年以上5 年未満の場合は年間18 日、勤続5 年以上の場合は年間22 日の取得が認められます。入院が必要な場合には、60 日まで認められます。
出産休暇中の被雇用者は、いかなる理由でも解雇されることは認められません。5 人目の子どもまでは、出産の都度60 日(休日、祭日を含む)の出産休暇が取得できます。
男性労働者の場合、子供が生まれる度に、最大7 日の父親休暇が取得できます。
Q11. マレーシアにおいて雇用契約が終了する場合としてどのような場合が規定されていますか?
A11: 1955年雇用法は雇用契約の終了の形態を以下のとおり4つ規定しています。
•定年退職(Retirement)
•自己都合退職(Resignation)
•予告解雇(Retrenchment)
•懲戒解雇(Dismissal)
Q12. マレーシアの解雇規制はどのような内容ですか?
A12: 予告解雇とは、会社が業績不振などで、会社都合により労働者を解雇する場合です。1955年雇用法では予告期間と解雇に伴う手当について、勤続期間に応じて規定しています。
勤続2年未満の場合:予告期間4週間前、解雇手当は月額賃金10日分×勤続年数
勤続2~5年未満の場合:予告期間6週間前、解雇手当は月額賃金の15日分×勤続年数
勤続5年以上の場合:予告期間8週間前、解雇手当は月額賃金の20日分×勤続年数
会社は、解雇実施30日前までに労働局に事前通知し、解雇後14日以内に結果を報告する義務を課されている。また、当該会社に外国人労働者が雇用されている場合、外国人労働者(永住権権保持者は除く)から解雇する必要があります。
懲戒解雇の場合、懲戒解雇に関する手続きを就業規則又は労働協約の中で規定し、同規則に則って解雇する必要があります。
Q13. マレーシアも社会保障制度がありますか?
A13: 1969年被用者社会保障法に基づき、1971年に人的資源省の下に設置された社会保障機構(Social Security Organization:SOCSO/PERKESO)により、民間労働者を対象とする労災給付制度が運営されています。
月給3,000リンギ以下の労働者及びその会社に対して社会保障への加入が義務付けられており、自営業者、家事手伝い又は外国人労働者等は対象外となります。月給3,000リンギを超える労働者は会社と合意の上で任意に加入できます。他方、加入後に月給3,000リンギを超えた者は継続して加入する必要があります。
負担率は、労働者が月給の0.5%、会社が同1.75%(疾病保険制度への拠出分1.25%、疾病年金制度の拠出分0.5%)となります。
社会保障制度の内容は、労災保険制度(Employment Injury Insurance scheme)と疾病年金制度(Invalidity Pension Scheme)の2種類があります。
労災保険制度は、労働者の勤務に関連する負傷、疾病、障害、死亡に対する補償です。医療給付、障害給付、葬祭給付、遺族給付リハビリテーション給付及び教育ローン給付があります。
疾病年金制度は、勤務に起因するか否かを問わず、重度の身体障害や治療困難な疾病が原因で収入が3分の1以下になった場合に補償を行うものであり、給付を受けるにあたっては55歳未満であること、医療評議会の審査を経ること等の要件を満たす必要があります。疾病年金(一時金)、介護給付、葬祭給付、遺族給付、遺族給付リハビリテーション給付及び教育ローン給付があります。
Q14. マレーシアの年金制度の根拠法はありますか?
A14: 公務員については1980年年金法、主に民間労働者に対しては1991年従業員積立基金法が年金制度について規定しています。1991年従業員積立基金法において、すべての会社にEPFへの登録及び拠出が義務付けられています。
拠出額は現時点では以下のとおりですが、定期的に見直されます。
(1) 60歳未満、月収5000リンギ以下の場合  会社:月収の13%、被雇用者:月収の11%
(2) 60歳未満、月収5000リンギ超の場合   会社:月収の12%、被雇用者:月収の11%
(3) 60歳以上、月収5000リンギ以下の場合  会社:月収の6.5%、被雇用者:5.5%
(4) 60歳以上、月収5000リンギ超の場合   会社:月収の6%、被雇用者:5.5%
(5) 自営業者等の場合 政府:拠出額の5% 相当額(年間最大60リンギ)、本人:任意の額(50 リンギ~)
(6) 外国人労働者の場合  会社:月額5リンギ、被雇用者:月収の11%
いずれの場合も、労働者自身が定められた額以上を拠出することが可能であり、会社拠出は税控除の対象(給与総額の19%相当まで)であり、また被用者はEPF拠出と生命保険料とを併せた最大6,000リンギまでが税控除の対象になります。
Q15. マレーシアの定年について規制はありますか?
A15: 2012年8月に民間企業の最低退職年齢を60歳とする法律が公布され、2013年7月に施行されています。
Q16. マレーシアにおいて女性労働者に対してのみ適用される法令はありますか?
A16: 1955年雇用法において、午後10 時から午前5時までは、会社は女性労働者に対して工業や農業における労働を要求してはならず、また、連続11 時間以上労働させることはできない旨規定されています。但し、会社は当該条項の適用免除を、人的資源省労働力局長に文書で申請することができます。
また、いかなる場合においても女性を坑内作業に従事させることはできません。

【マレーシアのビザに関するQ&A】


Q1. マレーシアで働く場合、どのようなビザを取得する必要がありますか?
A1: 就労を目的としてマレーシアに来る場合、たとえ短期間でも就労ビザの取得が必要です。就労ビザは、雇用パス、プロフェッショナル・パス、外国人労働者(ワーカー)に対するワークパーミットなどが主なものとして存在します。

Q2. マレーシアの雇用パスを取得するための要件はどのようなものがありますか?
A2: マレーシアで就労する場合に一般的に取得するビザは雇用パスです。雇用パスは、通常マレーシアの雇用主に雇用される管理職・専門職の外国人に発給されます。
内務省は2015年7月より、外国人の雇用パスの発給について、最低月額給与(リンギ)をベースに以下の3つのカテゴリーに分けています。

  • カテゴリー   最低月額給与   雇用期間    家族帯同   メイド雇用       更新
  • カテゴリーⅠ   5,000以上     2年以上     可       可      更新時に考慮される
  • カテゴリーⅡ   5,000以上     2年未満     可       可      更新時に考慮される
  • カテゴリーⅢ  2,500~4,999    1年以下     不可      不可     更新は最高2回まで


雇用パスを取得するための最低資本金は以下のとおりです。

  • 資本構成                              払込資本金

・100%内資(マレーシア)                      25万リンギ
・内資と外資の合弁(外資30%以上)                  35万リンギ
・100%外国資本                           50万リンギ
・流通・サービス取引を行う
外資51%以上の会社およびレストラン                 100万リンギ
・国内取引・協同組合・消費者省(MDTCC)の管轄下に
新たに入った他の法令で規定されていないサブセクターに        100万リンギ
おいてサービス取引を行う外資51%以上の会社
・外資との合弁会社でManaging Director等の重要ポストを
占める外国人の雇用パスを申請する場合                 50万リンギ
(外資保有分につき)
出所:入国管理局の外国人サービス部門(Expatriate Service Division:ESD)

Q3. 雇用パスの申請はどのように行うのですか?
A3: オンラインでの申請が導入されており、雇用パス申請は新規、更新のいずれの場合においてもオンラインでの申請が必須です。まず、入国管理局の外国人サービス部門(Expatriate Service Division:ESD)にオンラインで会社を登録し、登録完了後、申請者の雇用パス申請をオンラインで行うことになります。

Q4. 雇用パス申請のための必要書類は何ですか?
A4: 一般的には以下の書類が必要になります。
(1) ビザ申請書 2部
(2) 雇用契約書(給与額及び雇用年数の記載が必要であり、申請するカテゴリーの所定の要件を満たす必要があります。)
(3) パスポート写真2枚(白黒不可。3ヶ月以内に撮影されたもの。)
(4) パスポート原本
(5) パスポートコピー(全ページ)
(6) 最終学歴の英文卒業証明書

Q5. 雇用パスを取得する場合、家族の同伴も可能ですか?
A5: 雇用パス取得後、帯同する家族は、滞在ビザ(ディペンデントパス)を申請し発給を受け、マレーシア滞在が可能になります。当該パスの有効期間は、駐在員の雇用パスの有効期間と一致します。

Q6. プロフェッショナル・パス(Professional Visit Pass)の申請はどのように行うのですか?
A6: プロフェッショナル・パスは、マレーシア国外の会社に籍を置いたまま、マレーシア国内で短期就労を行う外国人に発給されるビザです。プロフェッショナル・パスについてもオンライン申請が導入されており、申請する会社は、初めに入国管理局のESDにオンラインで会社を登録する必要があります。

【マレーシアの土地法制に関するQ&A】


Q1. 外国会社がマレーシアの土地を取得できますか?
A1: 不動産取得に関するガイドラインによれば、土地の取得はマレーシアに設立された法人でなければ認められない。その上で、マレーシアに設立された外国法人が土地を取得するに当たって2つの外資規制が存在します。
(1)国家土地法
外国人又は外国会社が土地を取得する場合、州正津の事前承認が必要です。外国会社とは、外国法に基づき設立された会社、又は、外国人と合わせて直接又は間接的に50%以上の議決権を有するマレーシアに設立された法人を意味します。
(2)EPUガイドライン
ガイドライン上、2千万リンギット超の土地であり、その土地の直接の取得の結果ブミプトラ・政府機関の持ち分が減少する場合、又はその土地を主な保有資産とする会社の株式の取得の結果ブミプトラ・政府機関の支配権が変更される場合、①EPUによる事前承認、②ブミプトラ資本による30%以上の出資の維持、③最低払込済み資本金25万リンギット以上という要件を満たす必要があります。

Q2. マレーシアの土地取得に関して最低取得額の規制はありますか?
A2: 2014年3月1日より、外国会社などによる不動産取引については、最低取得額が100万リンギ以上とされている。外国会社による100万リンギ以上の不動産取得については、EPUへの申請は不要であるものの、州政府、他の所轄官庁の認可は必要です。

Q3. マレーシアの土地を取得する際の申請先はどの機関ですか?
A3: 各州の土地登記局など各州の当局が申請先となります。また、EPUガイドラインが適用される場合は首相府経済企画庁(Economic Planning Unit)にも申請が必要となります。

Q4. マレーシアの土地の登記はどのような効力を有していますか?
A4. マレーシアの土地法はトレンスシステムを採用しており、不動産に関する権利は原則として登記によって終局的に確定されます。例えば、土地の権利譲渡、3年を超える賃貸借の設定は登記によってはじめて効力を生じます。

Q5. マレーシアの土地の登記は第三者も閲覧できますか?
A5: 土地登記簿は管轄の土地局において第三者も閲覧可能です。しかし、閲覧する対象を特定する必要があり、権利証番号及び区画番号が必要になります。したがって、実務上は、土地の権利関係の調査は、権利者からTitle Deedの写しを得た上で実施することが一般的です。なお、登記簿はマレー語です。

Q6. マレーシアにおいて土地と建物は別個の権利対象となりますか?
A6. マレーシア法上、土地と建物は別個の不動産ではなく、建物は土地の一部として取り扱われます。また、実務上も別個の取引対象となりません。しかし、コンドミニアムなどの区分所有権は例外的に別個の権利として扱われます。

Q7. マレーシアの土地の賃貸借に規制はありますか?
A7: 国家土地法上、土地の賃貸借期間の加減は3年超、上限については賃貸借の対象が土地全部である場合には99年、土地の一部の場合には30年と規定されています。3年以下の期間の賃借の場合、登記の対象とならず、口頭又は書面の合意のみにより成立します。

Q8. マレーシアにおいて、日本の借地借家法のように賃借人を保護する法令はありますか?
A8: マレーシアにおいては賃借人保護に関する特別な法令は存在しません。

Q9. マレーシアに不動産鑑定士はいますか?
A9: 不動産鑑定士は国家資格として存在します。財務省の権限下にある鑑定委員会(Board of Valuers, Appraisers and Estate Agents)に登録されています。

Q10. マレーシアで不動産を取得する場合の印紙税率はいくらですか?
A10: 不動産の譲渡契約書に課税される印紙税は累進課税となっており、以下のとおりです。
(1) 譲渡価格10万リンギまで:100リンギごと(100リンギ未満切り上げ、以下同)に印紙税1リンギ
(2) 譲渡価格10万リンギ超、50万リンギまで:100リンギごとに印紙税2リンギ
(2) 譲渡価格50万リンギを超過する額:100リンギごとに印紙税3リンギ

Q11. マレーシアで不動産を譲渡して利益が出た場合、課税額はいくらですか?
A11. 不動産譲渡益税(Real Property Gains Tax)について、不動産の取得日を基準として譲渡日までの期間に応じて異なり、法人の場合の税率は以下のとおりです。
(1) 取得日より3年以内 30%
(2) 4年目 20%
(3) 5年目 15%
(4) 6年目以降 5%

【マレーシアの外資規制に関するQ&A】


Q1. マレーシアで外資が製造業を行うことは可能ですか?
A1. 原則として100%外資で製造業を実施することは可能です。自動車の製造についても、2010年の自動車政策の実施により、自動車組み立て等の一部を除いて資本条件が課されなくなりました。また、一部の事業を除き、事業拡張と多角化に向けた投資、すなわち追加増資分については、100%の外国資本保有が認められます。
工業調整法では、250万リンギ以上の資本金または75人以上の常勤従業員を雇用している製造業に、製造業ライセンスの取得を義務付けています。

Q2. マレーシアで外資がサービス業を行うことは可能ですか?
A2.国内取引・協同組合・消費者省(Ministry of Domestic Trade, Co-operatives & Consumerism:MDTCC)は、2010年5月12日付で「流通取引・サービスへの外国資本参入に関するガイドライン(Guidelines on Foreign Participation in the Distributive Trade Services Malaysia、MDTCCガイドライン)」を発布しています。同ガイドラインが適用される非製造業の範囲は広く、小売業やサービス業が広く含まれ、ハイパーマーケット、スーパーストアを除き、ブミプトラ(マレー系と先住民族の総称)資本30%の最低条件はなくなりました。当該ガイドラインによれば、100%外資による事業が原則として可能となっております。ただし、以下の業種は外資が認められていません。
(1) スーパーマーケット/ミニマーケット(販売フロア面積が3,000㎡未満)
(2) 食料品店/一般販売店
(3) コンビニエンスストア
(3) 新聞販売店、雑貨品の販売店
(4) 薬局(伝統的なハーブや漢方薬を取り扱う薬局)
(5) ガソリンスタンド
(6) 常設の市場、路上店舗
(7) 国家戦略的利益に関与する事業
(8) 布地屋、レストラン(高級店でない)、ビストロ、宝石店など

Q3. マレーシアで外資が飲食業を行うことは可能ですか?
A3: 原則として、高級レストランであれば100%外資にて実施可能です。ただし、外資が50%を超える場合、監督当局の認可が必要であり、最低RM100万の資本金も必要となります。
また、アルコール類の販売にはリカーライセンスが必要となり、外資による取得は実務上困難です。

Q4. マレーシアで外資が小売業を行うことは可能ですか?
A4: 3,000㎡未満の小売店等の場合を除き、外資にて実施可能です。外資が50%を超える場合、監督当局の認可が必要であり、販売面積に応じた最低資本金、国内産品取り扱い義務などが課せられる。

Q5. マレーシアで外資が理美容業を行うことは可能ですか?
A5: 原則として、100%外資にて実施可能です。外資が50%を超える場合、監督当局の認可が必要であり、最低RM100万の資本金も必要となります。なお、業務を実施する者は年に1度、政府認定の医師の健康診断書を政府自治体に提出する必要があります。

Q6. マレーシアで外資がマッサージ事業を行うことは可能ですか?
A6: 現在、新規ライセンスの発行が停止されているため、新規にライセンスを取得して実施することは困難です。

Q7. マレーシアで外資がジム等の事業を行うことは可能ですか?
A7: 外資100%で実施可能です。

Q8. マレーシアで外資が学習塾を行うことは可能ですか?
A8: 外資が行うことはできません。マレーシア資本100%(うち30%以上がブミプトラ資本)の場合のみ可能です。また、管轄州の教育局より認可を得て登録を行うことが必要です。

Q9. マレーシアで外資が金融業を行うことは可能ですか?
A9: 2013年金融サービス法により、法律上は外資規制が廃止されました。同法によれば、外資・内資にかかわらず、5%以上の株式取得に際し、マレーシア中央銀行の事前承認が必要です。したがって、マレーシア中央銀行が承認するか否かの判断の際に外資などが裁量として考慮されることとなります。

Q10. マレーシアでフランチャイズ規制はありますか?
A10: マレーシアではフランチャイズ規制が存在します。内資・外資を問わず、フランチャイザーはフランチャイズ事業開始前またはフランチャイズ募集開始前にフランチャイズ朗徳局に登録する必要があります。登録にあたって、契約書などの情報を開示する必要があります。
一方、フランチャイジーに関しても、外国のフランチャイザーとフランチャイズ契約を締結した場合には事業開始前までに登録しなければならず、登録官の許可も必要です。
また、フランチャイジーがマレーシア国内のフランチャイザーまたはマスターフランチャイジーとフランチャイズ契約を締結した場合には、契約締結後14日以内に登録しなければなりません。
フランチャイザーである外国の会社の子会社がマスターフランチャイジーとして店舗運営を行うことはできません。ただし、子会社は、フランチャイジーに対して物品の提供や研修・技術などのサービスの提供を行い、マレーシアにおけるフランチャイズ事業の管理を行うことは可能です。

Q11. マレーシアにおいて外国人雇用規制はありますか?
A11: 外国人雇用は業種によって制限があり、小売りにおいては認められません。

【マレーシアの解散、清算及び破産に関するQ&A】


Q1. マレーシアにおける解散や清算はどのような種類が存在しますか?
A1: 法律上、解散及び清算には2種類存在します。すなわち、裁判所による清算と任意清算です。
Q2. 裁判所による清算とはどのような手続きですか?
A2: 裁判所による清算とは、債権者、株主、清算人、会社登記所又は担当大臣の申立によって、裁判により会社の意思に関わらず清算されるものです。
裁判所は以下の場合に解散命令を行うことができます。
(1) 会社が裁判所により解散させられることになっているとの特別決議により、会社が決議した場合
(2) 会社法第 190 条第3 項に基づく法定宣誓書の提出を怠っている場合
(3) 会社が設立から 1 年以内に事業を開始しない場合や、通年にわたり業務を停止している場合
(4) 会社に株主がいない場合
(5) 会社が負債を支払うことができない場合
(6) 取締役が株主の利益ではなく、自身の利益のために会社運営を行っている場合、または株主に対して不公平で不当な方法を行っている場合
(7) 会社の定款において会社の存続期間が規定されており、当該期間を過ぎた場合、または会社が解散される場合の事項が会社の定款で定められ、当該事項が発生した場合
(8) 裁判所が会社の解散は正当で公平であると判断した場合
(9) 2013 年金融サービス法または 2013 年イスラム金融サービス法に基づく免許を保有 しているが、その免許が剥奪または停止された場合
(10) 無免許で免許事業を会社が行っている場合、若しくは2013 年金融サービス法または 2013 年イスラム金融サービス法に違反して、会社がマレーシア国内で預金を受け取った場合
(11) 不法な目的または平和や繁栄、安全、公益、公序、安寧秩序、高い道徳性に対して 損害または相容れない目的のために会社が利用されている場合
(12) 会社法第 590 条により担当大臣が宣言した場合
通常は、支払不能、株主間の紛争、法定要件の不遵守又は不法な目的などを理由として申立がなされます。
Q3. 裁判所による解散の場合、取締役や会社の権限はどうなりますか?
A3: 清算人が任命されたときに取締役の権限は停止されます。また、解散命令が下された日に会社の業務が停止されます。
Q4. 任意清算とはどのような手続きですか?
A4: 任意清算とは、株主が会社を解散し、会社財産を分配する清算の方法です。会社が支払能力を有する場合、清算手続は株主が主導して行われます。そのような清算手続は、株主による任意清算といいます。支払能力のある場合の清算においては、会社状況の調査を実施したこと、及び、会社が全ての負債を清算開始から12か月を超えない期間内に支払うことができるという取締役会の意見が成立したことが書かれた宣誓書に取締役の過半数が署名しなければなりません。清算を開始するにあたって暫定清算人を任命する必要があります。
Q5. 債務超過の場合の解散も同じ手続きですか?
A5: 会社が債務超過か否かで異なります。会社が債務超過の場合、債権者が清算手続を主導する権利を有します。この清算の形態は、債権者による任意清算といいます。また、会社が債務超過であるが、支払不能の宣言ができない場合、会社債権者は清算人を指名し、管理する権利を有します。会社は、必要な債権者集会を招集し、会社運営に関する明細書を債権者に提出するとともに、提案の清算に至るまでの状況を開示する必要があります。債権者による任意清算において指名された暫定清算人は承認された清算人である必要があります。
Q6. 任意清算の場合、取締役や会社の権限はどうなりますか?
A6: 清算人が任命されたときに取締役の権限は停止されます。また、解散決議がなされた日に会社の業務が停止されます。
Q7. マレーシアで破産する場合の手続きはどうなりますか?
A7: マレーシアにおける破産手続は、破産法(Bankruptcy Act, 1967)に基づきます。
破産手続は、裁判所に対する破産申立によって開始されます。破産の申立を希望する債権者は、債務者が最低30,000リンギットの債務を有し、当該債務を支払うことができないことを示す必要があります。財産管理命令及び破産命令が裁判所から発せられると、当該債務者には破産が宣告されます。財産管理命令及び破産命令が発せられた場合、破産財団は破産管財人の管理下におかれ、破産者は法律によって破産管財人に報告することが義務付けられ、財務状況に関する明細及び情報を提供する必要があります。

【マレーシアのラブアン法人及び財団に関するQ&A】

Q1.ラブアン法人とは何ですか?
A:1 ラブアン法人とは、東マレーシアの経済特区ラブアン島において設立する法人を意味します。

Q2. ラブアン法人は通常のマレーシア法人と違うのですか?
A2: ラブアン法人は税制優遇措置が適用され、税金が安く設定されています。

Q3. ラブアン法人の法人税率はいくらですか?
A3: 法人税率3%または定額20,000リンギットのいずれかを選択する形です。

Q4. ラブアン法人の株主についての規制はどのようになっていますか?
A4: 株主は1名で足り、かつ、非居住者でも問題ありません。

Q5. ラブアン法人の取締役についての規制はどのようになっていますか?
A5: 通常のマレーシア法人と異なり、取締役は1名で足り、かつ、非居住者でも問題ありません。

Q6. ラブアン法人設立の際にオフィスは必須ですか?
A6: ラブアン法人設立の際に、ラブアン島内に登録住所が必要になりますが、事務所の物理的な設置は必須ではありません。通常は、法人設立の際に契約するラブアン信託会社のラブアン島住所が当該ラブアン法人の登録住所になります。

Q7. ラブアン法人の最低資本金はいくらですか?
A7:最低資本金の要件はなく、資本金USD1での設立も可能です。ただし、就労ビザを申請する場合には、RM25万以上の資本金が必要となります。

Q8. ラブアン法人における労働者の雇用は必須ですか?
A8: ラブアン法人において従業員を雇用することは必須ではありません。

Q9. ラブアン法人の個人の所得税はいくらですか?
A9: 給与所得については、RM4,000が上限の所得税額です。取締役の役員報酬については非課税です。

Q10. ラブアン法人は銀行口座を開設できますか?
A10: ラブアン島内の銀行は勿論、クアラルンプールにある銀行においても口座を開設することが可能です。マレーシアリンギット口座を開設することも可能です。なお、ラブアン法人はリンギットでの取引は原則として禁じられていますが、事業経費などの支払いについてはリンギットで支払うことが認められています。

Q11. ラブアン法人で就労ビザを取得することはできますか?
A11: ラブアン法人で就労ビザを取得することが可能です。しかし、以下の条件を満たす必要があります。
(1) RM25万以上の資本金
(2) ラブアン島内にオフィスと居住用住所を別々に設定する
また、就労ビザ認可後、ラブアン島のイミグレーションへ実際に行く必要があります。

Q12. ラブアン法人の事業活動に制限はありませんか?
A12: ラブアン法人の事業活動には制限が存在します。すなわち、ラブアン法人は原則としてマレーシア人やマレーシア現地法人との取引が認められていません。例外として、弁護士費用、事務費用、会社秘書役費用などの運営に関する取引は認められています。
そのため、コンサルタント、海外との輸出入、インターネット関連事業、トレーダーなど、海外との取引がメインの事業に適しています。

Q13.ラブアン財団とは何ですか?
A13: ラブアン財団とは、東マレーシアの経済特区ラブアン島において設立する財団を意味します。

Q14. 財団と法人は何が違うのですか?
A14:財団は法人と異なり、設立者が株式のような持ち分を有しません。そのため、財団に寄与された財産は、個人の財産から法的に切り離され、仮に個人が破産などしたとしても財団には影響しません。また、個人が死亡した場合の相続手続きも不要です。

Q15. ラブアン財団を設立する場合の最低資本金はいくらですか?
A15:最低資本金の要件はなく、資本金USD1での設立も可能です。

Q16. ラブアン財団にはどのような機関を設置する必要がありますか?
A16: 設立者、受益者、役員、評議員、秘書役が主な機関となります。
(1) 設立者
設立者とは、ラブアン財団を設立した個人または法人であり、1名で足ります。また、国籍要件や居住要件はありません。ラブアン財団の運営方法を規定する定款を作成し、当該内容を変更する権限を有します。
創設者は、受益者、役員または評議員に就任することも可能です。
(2) 受益者
ラブアン財団からの利益を受け取ることができ、1名で足ります。また、個人または法人のいずれでも構わず、国籍要件や居住要件はありません。
定款に基づいて利益を受領する権限は有しますが、財団の有する財産に対する直接的な権利は有しません。また、財団の運営についても権限を有しません。
(3) 役員
定款に従い、ラブアン財団の管理運営を行い、1名で足ります。個人または法人のいずれでも構わず、国籍要件や居住要件はありません。
(4) 評議員
評議員は、役員が定款に基づき適切に財団の運営を行っているかについて監督する役割を有し1名で足ります。また、個人または法人のいずれでも構わず、国籍要件や居住要件はありません。ただし、監督する役割との関係上、役員が評議員を兼任することはできません。

Q17. ラブアン財団の情報は公開されますか?
A17: ラブアン財団の設立者、受益者、役員などの情報は、公開されず、第三者が取得することはできません。

Q18. ラブアン財団の存続期間の上限はありますか?
A18: ラブアン財団は、存続期間を永久とすることも可能です。

【マレーシアの裁判及び仲裁制度に関するQ&A】

Q1. マレーシアの裁判制度はどのようになっていますか?
A1: 判所は、高等裁判所と下級裁判所で構成されています。さらに独立したものとして、イスラム教同士の訴訟を取り扱うイスラム裁判所も存在します。
Q2. マレーシアの民事訴訟制度はどのようになっていますか?
A2: 民事上の請求は、原告が訴訟費用を支払い、訴状を裁判所に提出することにより開始される。訴訟開始は、高等裁判所においては、召喚令状、呼出状、請願書などにより、下級裁判所においては、召喚状により行われます。
請求書に対し反論する意向を有する被告は、出廷予告書を裁判所に提出する必要があり、提出しない場合、欠席判決が下されます
その後、相互に答弁書を提出し、書類の証拠開示手続が行われ、証拠が交換されます。これらの手続を経て、事実審理が行われます。
Q3. マレーシアにおいて日本の判決は執行されますか?
A3: 外国の判決をマレーシアで執行するためには、マレーシアの裁判所で承認または認証されることが必要です。
英国などの英連邦国又は地域で取得した判決であれば、判決相互執行法(Reciprocal Enforcement of Judgment Act 1958)に基づき登録し、マレーシアの裁判所が行った判決と同様に執行することが可能です。しかし、日本は当該法律において規定されておらず、日本の判決の執行については、コモンローに従うことになります。
Q4. マレーシアにおいて労働事件に関する特別な取扱は存在しますか?
A4: 人的資源省労使関係局の斡旋、労働仲裁裁判所(Industrial Court)、労働審判所(Labour Court)が存在します。
流れとしては、労使紛争が発生し、当事者間で解決できない場合、労使いずれかが斡旋を申請します。それに基づき労使関係局長が労使を呼んで斡旋を行います。斡旋によっても合意に至らない場合、労使関係局長はその旨を人的資源相に報告し、人的資源相は案件を労働仲裁裁判所に付託します。州政府、地方行政機関は通常、労使紛争に直接介入しません。労使紛争は連邦政府が全国を直接所管しています。
労働仲裁裁判所は判事および労使委員で構成される司法機関であり、下級裁判所の機能を有します。したがって、労働仲裁裁判所の判決に不服の場合は、高等裁判所に上訴することができます。
労働仲裁裁判所と異なる制度として、労働審判所が存在します。労働審判所は人的資源省労働局が所管する準司法機関です。1955年雇用法に規定された労働条件の最低基準を使用者が遵守しないなどの労働者の苦情を審査する機関であり労働局担当官が判事の役割を果たします。当該苦情が個別的事件であっても、紛争になった場合は、所定の手続きを経て労働仲裁裁判所で取り扱われます。
Q5. マレーシアに調停制度は存在しますか?
A5:マレーシア弁護士協会により設立されたマレーシア調停センターが存在します。民事事件及び商事事件の両方を取り扱っています。
Q6. マレーシアにおける仲裁制度はどのようになっていますか?
A6: 仲裁法(Arbitration Act 2005)が存在し、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の国際商事仲裁に関するモデル法を基に作成されています。仲裁法に基づき作成された申請書が高等裁判所に提出されると、国内又は外国の仲裁判断は、拘束力を有しかつ執行可能であるものとして承認されます。外国とは、1958年の国際商事仲裁に関する国連会議で採択された外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(Convention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards)における当事国を意味します。
また、高等裁判所は以下のいずれかに該当する場合には仲裁地にかかわらず、仲裁判断の認証又は執行を拒絶することができる旨規定されています。
(1) 仲裁判断の行使対象である当事者が、仲裁法37条に基づき仲裁判断の無効事由の1つを示した場合、若しくは、当該仲裁判断が当事者に対する拘束力を有していない場合、または、仲裁国の裁判所若しくは仲裁判断の準拠法により当該仲裁判断を無効若しくは停止された場合。
(1) 高等裁判所が以下の判断を行った場合
(i) 当該紛争の対象事項がマレーシア法の下で仲裁による解決ができない場合、または
(ii) 仲裁判断がマレーシアの公序良俗に反する場合。

【マレーシアの特許法に関するQ&A】

Q1.どのような発明なら、特許を取得できますか?
A1.発明が、新規性・進歩性及び産業上利用可能であれば、その発明は特許を受ける事ができます(特許法11条)。
 
Q2.発明とは、どのように定義されていますか?
A2.マレーシアでの発明の定義は、
「技術の分野における一定の課題についての解決を実際に可能にするものであり、発明者の思想(特許法12条)」の事をいいます。
 
Q3.特許を受ける事ができない発明はありますか?
A3.特許を受ける事ができない発明として、以下(1)~(4)は、特許を受ける事ができません。
(1)発見、科学的理論及び数学的方法
(2)植物・動物の品種、又は、それらを生産するための本質的に生物学的な方法
(3)事業や純精な精神的な行為、又は、ゲームを行うための計画や規則、又は、方法
(4)人、又は、動物の手術・治療方法及び診断方法
 
Q4.出願する際の言語は、何ですか?
A4.出願言語は、英語、又は、マレーシア語になります。
 
Q5.特許出願の際、必要となる公的費用はいくらですか?
A5.出願は、「電子形式」及び「紙形式」で提出可能。電子形式で提出した場合、紙形式で提出した場合に比べ、料金が割引されます。
出願料:   260MYR(290MYR)
実体審査請求料:  1100MYR(950MYR)
修正実体審査請求料:640MYR(600MYR)
なお、クレーム数が10を超えた場合、1クレームに付き20MYRの追加料金が必要になります。
 
Q6.実用新案出願から特許出願への変更はできますか?
A6.変更はできます。また、特許出願から実用新案出願への変更も可能です。
 
 

 
 

【マレーシアの商標法に関するQ&A】

Q1. 商標を登録すると,どんなメリットがありますか?
A1.商標が登録されれば,その商標を侵害している者に対して,民事訴訟,又は,刑事訴訟を通して権利行使をする事ができます。さらに,商標権に基づく権利行使をサポートする行政手続も存在しています。

Q2. 商標出願時の必要書類は,どのような書類を準備する必要がありますか?
A2.必要書類としては,
(1)願書(出願人の名称や優先権主張の情報等を記載)
(2)商標を使用する商品またはサービスのリスト
(3)商標見本
(4)宣誓書(出願人が商標を善意で所有している事を宣誓する書面。なお,公証認証が必要)
(5)優先権証明書(提出要求があった場合のみ)
(6)委任状(認証は不要)です。
なお,使用する言語は,マレー語又は,英語である必要があります。もし,商標にそれ以外の言語が使用されている場合,訳文が必要になります。

Q3. 商標出願時の公的機関への費用はいくらですか?
A3.公的機関への主な費用は,下記の通りです。(電子申請の場合の費用)
・出願費用  330リンギッド
・早期審査承認費用  200リンギッド
・早期審査請求費用  1,060リンギッド
・補正申請費用  130リンギッド
・登録費用 600リンギッド
・維持費用 550リンギッド

Q4. 商標の出願の流れは,どのようになっていますか?
A4.「出願→方式審査→実体審査→公告→異議申立期間(公告から2か月)→登録」という流れになっております。なお、出願から登録までの所用期間(目安)は12~18ヶ月です。
 なお、マレーシアでは,一定の要件を満たす場合(侵害のおそれを示す証拠がある等),早期審査が認められ,実体審査に入るまでの期間を短縮する事が可能となっております。

Q5. 実体審査では,どのような事が審査されますか?
A5.実体審査として,不登録事由、識別力の有無,先行商標との類似性等について審査されます。

Q6. 出願予定の商標が識別性を有しているかどうかの判断が難しい場合,出願する以外の方法はありますか?
A6.出願予定の商標が識別力を有しているかの判断について,登録官に対し,予備的助言を求める事ができます。
 なお,商標の識別力について登録官から肯定的な助言を受けたにも係らず,識別力を否定する拒絶理由通知が送られた場合,出願手数料の返還を受ける事ができます。

Q7. 登録できない商標としてはどのようなものがありますか?
A7.登録されない商標としては,主に
・既に登録となっている商標と同一又は類似の商標
・マレーシアで周知となっている商標
・地理的表示の商標
・法律に反する標章
・中傷的又は攻撃的な標章
・国益又は国の安全保障を損なう標章
・王室の紋章を表す標章 等は登録できません。

Q8. 指定商品・指定役務を指定する際,どのように指定すれば良いですか?
A8.マレーシアでは,ニース協定に基づく分類一覧に従う必要性があるため,その分類に沿って指定する必要があります。また,マレーシアでは1出願1区分制が採用されているため,多区分にわたる指定商品・指定役務を指定した場合,1区分に限定するよう求められ,削除する必要もあるので注意が必要になります。

Q9. マレーシアへ商標出願する際,マドプロ制度を利用する事はできますか?
A9.マレーシアはマドプロには加盟していないため,直接,出願する必要があります。

【マレーシアの弁護士制度に関するQ&A】

Q1: マレーシアの弁護士資格はどうすれば取得できますか?
A1:マレーシア法の弁護士資格は、法学部(4年制)を卒業したのち、7年以上の経験を有する弁護士の事務所で9ヶ月間の実務研修を受ければ取得できます。研修後、裁判所で資格付与の命令書を受け取り、資格は毎年更新が必要です。
 
Q2:マレーシアに弁護士会はありますか?
A2:マレーシアでは、管轄地域によって2つの弁護士会があります。
Advocates and Solicitors of the High Court of Malayaはマレーシア半島での業務が認められています。
Advocates and Solicitors of the High Court of Sabah and Sarawakは東マレーシアのサバ州及びサラワク州での業務が認められています。
 
Q3:マレーシアで外国の法律事務所は活動できますか?
A3:改正「1976年法律専門家法」(LPA)および「2014年法律専門家(国際パートナーシップおよび有資格外国法律事務所の免許、外国人弁護士の登録)規則」が2014年6月3日に発効し、これらの要件を満たす場合には、マレーシア半島部で外国法律事務所と外国人弁護士が活動できます。
 
Q4:マレーシアに司法書士や行政書士と同様の資格はありますか?
A4:マレーシアには、司法書士や行政書士のような隣接法律職は存在せず、弁護士がこれらの職務も包括して行います。

 【マレーシアの新会社法の主な改正点に関するQ&A】

Q1: 必要な居住取締役の人数が変更されたのですか?
A1:旧会社法では2名以上の居住取締役が必要とされていました。しかし、新会社法では、非公開会社においては、居住取締役は1名で足りることとなりました。なお、新会社法においても、公開会社は居住取締役が2名以上必要となります。
 
Q2:取締役の定義が変更されたのですか?
A2:登記上の取締役のみならず、新会社法においては、取締役の過半数がその指示に従って行動することが常態化していれば、当該指示する者も取締役に該当することが規定されました。
 
Q3:取締役の年齢制限が変更されたのですか?
A3:旧会社法では、原則として70歳以上の者は取締役に就任できませんでした。しかし、新会社法では年齢の上限に関する規定は削除され、18歳以上であれば取締役になることができる旨規定されています。
 
Q4:額面株式制度はありますか?
A4:旧会社法では額面株式制度が存在しましたが、新会社法により廃止されました。これに伴い、授権資本制度も廃止されました。
 
Q5:株主の書面決議の要件はどのように規定されていますか?
A5:旧会社法では全株主の署名が必要でしたが、新会社法では、普通決議は過半数、特別決議は75%以上の株主の署名で有効となる旨規定されています。
 
Q6:定款を作成する必要がありますか?
A6:旧会社法では定款を必ず作成する必要がありましたが、新会社法では定款を作成するかは任意となりました。なお、既に定款を作成している会社は、新会社法施行後も、当該会社が定款を変更しない限り、そのまま有効なものとして取り扱われます。
 
Q7:株主総会を定期的に開催する必要がありますか?
A7:新会社法においては、非公開会社の定時株主総会開催義務が免除されたため、非公開会社の場合には定期的に株主総会を開催する義務はありません。
 
 
 
 
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